1: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 16:11:39.68 ID:xmAJ40mn0

コンコン

叢雲「入るわよ。遠征の報告なんだけど……って」ガチャ

叢雲「誰も居ない……あの馬鹿、またサボってるわね」


※注意※

・初スレ、初SSです

・趣味満載、キャラ崩壊有り

・そもそも>>1は艦これ初心者

もし良ければお付き合いください。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431673886

引用元: 夕張「クルマ買いました!」 

 

2: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 16:16:04.38 ID:xmAJ40mn0

夕張「だから提督、この際だから大きめのタービンに換えてパワーアップを図るべきです」

提督「いや、これ以上は要らないよ。むしろ今のでもちょっと大げさな位だと思ってるんだから」

夕張「でも折角ここまで仕上がっているんだから勿体無いですよー」

提督「そうは言ってもなぁ」

夕張「ここは一つ、更なる高みを目指してもっと貪欲に 叢雲「何をしているの」

提・夕「「あ」」

叢雲「工廠を私的な理由で使うなと何回言ったら分かるのかしら、アンタら……!!」

夕張「アハハー……」

提督「いや、まあ……」メソラシー


深紫色の180SX←提督のクルマ

黄色の180SX←夕張のクルマ


3: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 16:22:59.16 ID:xmAJ40mn0

叢雲「いいこと?ここは建造・開発をする施設であって、アンタら馬鹿二人のガレージじゃない」

提・夕「ハイ」

叢雲「しかもやるべき執務を放って愛車の整備に没頭とは随分いいご身分ね」

提督「でもさ、むらk……」

叢雲「あ゙?」

提督「スミマセンでした」

叢雲「で、夕張。秘書艦の役目はあくまで執務の補佐であって提督個人の趣味にまで付き合う必要は無いの」

夕張「ハイ」

叢雲「自由時間内なら構わないけど、今は執務中よ。それ位分かっているわよね?」

夕張「仰る通りです……」

叢雲「だったら……さっさと片付けて持ち場に戻りなさい!」

提・夕「は、はいいぃぃっっ!!」

叢雲「それと……瑞鳳」

瑞鳳「!?」ビクッ

叢雲「隠れているつもりだろうけど、バレバレだからね」

瑞鳳「ア、アハハー……面白そうだったからつい」

叢雲「あのねぇ……アナタもそういうのに興味を持つことは構わないけど、上司と秘書艦が職務放棄しているのを物陰から見ているだけだったら、アナタもあの馬鹿二人と同罪よ。分かった?」

瑞鳳「はぁい、気をつけまーす」

叢雲「全く……頭が痛くなるわ」

4: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 16:33:46.51 ID:xmAJ40mn0

執務室

提督「やれやれ、相変わらず叢雲は怒らせると怖いよなぁ」

夕張「私達に非がある以上仕方ありませんね」

提督「でも、ウチは普段装備の開発位しか工廠を使わないし、設備も充実しているんだから余っているスペースも使わないと勿体無いよな」

夕張「懲りませんねぇ」

提督「だって勿体無いのは事実じゃん」

夕張「確かに。溶接機器もあるから、板金作業も出来ますし」

提督「あとはリフトがあれば最高だな」

夕張「それも同意しますが、ますます何の為の工廠か分からなくなりますね」

提督「というか、強制撤去された上めちゃめちゃ怒られそう」

夕張「ですが提督、リフトは無理ですが先日あるモノを発注しておきました」

提督「ほぅ……して、あるモノとは?」

夕張「エンジンクレーン」

提督「何でまたそんなもんを」

夕張「折角だからエンジン降ろして色々手を入れようかと」

提督「スゲエなお前……流石に自分でそこまでやる気力は無いわぁ」

夕張「あと、タイヤチェンジャーも一緒に」

提督「お、そっちは有り難い」

夕張「安価な製品なので手動ですが、無いよりマシかと思いまして」

提督「ビート落とすの面倒だからなぁ」

5: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 16:47:11.65 ID:xmAJ40mn0

夕張「驚くにはまだ早いですよ、提督」

提督「まだ何かあるのか」

夕張「実はですね、ゆくゆくあのワンエイティでやりたいことがあるんですよ」

提督「やりたいこと?」

夕張「ええ。実はRB26を載せようと画策しておりまして……」

提督「え、お前それ本気で言ってるの?」

夕張「モチのロンです。出力を上げるなら一番手っ取り早い方法かと」

提督「そりゃあRB26ならSR20以上に頑丈でパワーもあるけど」


RB26=R32~R34までの第二世代GT-Rに搭載されていた直列6気筒エンジン。強い。速い。

SR20=180SXを含む様々な車種に搭載されていた直列4気筒エンジン。素ではそこそこだけどパーツは豊富。たまに化ける。


夕張「小さい車体に大出力のエンジン!これこそ最大にして究極の形!実に試し甲斐があるってものじゃないですか!」キラキラ

提督「夕張らしいと言えばらしいな、そのコンセプト」

夕張「そうでしょそうでしょ?」

提督「今となってはそこまで珍しくない気もするが」

夕張「実践しているのは一握りです」

6: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 17:07:41.26 ID:xmAJ40mn0

提督「しっかし、以前から工作や機械弄りが好きなのは知ってはいたが……クルマ買った途端見事にどハマりしたなぁ」

夕張「提督の影響も大きいです」

提督「うーむ……仲間が出来て嬉しい反面、引き釣り込んでしまった罪悪感も少々」

夕張「提督が気に病む必要は無いでしょ。遅かれ早かれこうなってましたよ」

提督「そうかなぁ」

夕張「そうですよ。むしろ、感謝している位です」

提督「感謝?」

夕張「私は艦娘、元はと云えば人間とはいえ、やはり兵器として戦うことが前提です」

提督「そんなこと……っ」

夕張「勿論、提督が私達をそんな風に見ていないことは分かっていますよ」

提督「あ、ああ……」

夕張「提督から色々教わって私はクルマを、時雨ちゃんはギターを弾く様になったりしてますし」

提督(凛として時雨ってネタのつもりで教えたとは云うまい……)

夕張「何よりこうして提督と過ごす時間はとても楽しくて、私……いえ、私達にとって、かけがえの無い日常になっているんです」

提督 ←何故か涙ぐんでいる

夕張「本当に……ありがとうございます」

提督「夕張……!」

夕張「提督……さぁ行きましょう、スピードの向こう側へ!」

提督「いや、その台詞は無いわぁ」シレッ

夕張「 」

7: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 17:24:23.22 ID:xmAJ40mn0

談話室

叢雲「全く。あの馬鹿二人はホンットにどうしようもないわね」

古鷹「また……提督と夕張、かな?」

叢雲「ええ、一人ずつなら何てことないけど、組んだ途端一気にタチが悪くなってウンザリだわ」

古鷹「提督と夕張って一番趣味が合うみたいだし……」ニガワライ

叢雲「クルマ、音楽、蕎麦屋の食べ歩きにマンガと、やったら合うのよねアイツら」

古鷹「でも、ここの艦娘は提督の影響受けた子は結構居るよね」

叢雲「だから余計に腹が立つのよ。初期艦であるこの私を差し置いて」

古鷹「あ、気にしてるのそこなんだ……」

叢雲「……今の無し」

古鷹(可愛い)

古鷹「でも、私も実は夕張のこと……ちょっと羨ましいなって」

叢雲「羨ましい?古鷹さんが?」

古鷹「うん」

叢雲「どうして?」

古鷹「提督と趣味の話で盛り上がっているのを見ていると、スゴく楽しそうだから。私はこれといって特に趣味は無い分、余計に……かな」

叢雲「古鷹さんでもそんなこと思うのね」

古鷹「これでもこの鎮守府では古参だからね。叢雲ちゃん程ではないにしても」

叢雲「それって関係あるのかしら……」

古鷹「そういうものなの。ねっ?」

叢雲「何か釈然としないわね……」

8: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 17:36:07.04 ID:xmAJ40mn0

夜・鎮守府裏

夕張「提督!準備完了です!」ビシィッ

提督「よし!ではこれより、湾岸線に向けて出発する!」ビシィッ

夕張「了解です!」

「ちょーっと待ったー!!」

夕張「ムムッ!?」

提督「ナニヤツ!?」

青葉「呼ばれなくても登場!青葉ですぅ!」

提督「なんだ青葉か。この前頼まれたスクエアプッシャーのCDなら山城が返してくれないから無いぞ」

青葉「頼んだ覚えないですけど!?」

夕張「というか山城さんって、そういうのも聴くんだ……」

提督「ん?意外か?」

夕張「バーガーナッズやシロップ16gが好きなのは知ってました」

提督「元はと云えば俺の趣味だけどな」

夕張「毒されてますねぇ」

提督「でもアイツ邦洋問わず割と何でも聴くぞ。この前なんかマンサンの『ネガティブe.p.』持ち出してたし」

夕張「それはむしろイメージ通りなんですが(タイトル的な意味で)」


その頃の山城―

山城「トゥデーイ……バリ島で死にたいよー……」

時雨「その選曲、山城が歌うと余計に重いよ」

14: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 20:30:43.87 ID:xmAJ40mn0

青葉「山城さんの音楽の趣味なんかどうでもいいですよ!」

提督「俺としては勝手にCD持って行くから、かなり困ってるんだけど……」

青葉「それより!最近お二人が夜な夜な出掛けているとの情報を掴んだので、事実関係の調査をですね……」

夕張「随分と今更ね……」

提督「だなぁ」

青葉「えっ」

提督「最初に言っておくが、別に逢引してるとか恋仲になっているとかそういうアレじゃないぞ」

夕張「一緒に出てはいるけど、別行動というか別空間というか……」

青葉「??」

提督「要するに、それぞれのクルマで夜中の高速をドライブ。深夜徘徊だ」

青葉「……ど、ドライブデートってことですか?」

提督「広く取ればそう言えるかもしれんが……」

夕張「世間一般的におけるドライブデートで、わざわざクルマを2台出す必要はある?」

青葉「無い……ですね」

提督「だろう?やましい事なんて一つも無いっ」ドン

夕張(公道を[ヒエー]キロで走ることはやましい事ではないのかしら……)



15: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 20:36:07.06 ID:xmAJ40mn0

青葉「グヌヌ……折角良いスクープが手に入ると思ったのに……!」

提督「まあ夕張と二人だけで出ているから、そう捉えられても仕方ない」

夕張「むしろ今まで知らなかったことに驚きね」

青葉「しかしこの青葉……このまま引き下がるわけにも行きません」

提督「うん、お前の性格からしてそうだろうな」

青葉「なので今夜は、お二人に同行させて頂きます!」

提督「別にいいけど」

青葉「意外とアッサリ!?」

夕張「提督がいいのであれば構わないけど……」

提督「いや、だって見られて困ることもないしな」

夕張(公道でゼロヨンをやっているのは見られても困らないのかしら……)

16: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 20:39:29.48 ID:xmAJ40mn0

提督「とりあえず青葉は俺の横に乗りな。夕張の隣はまだ危ない」

夕張「下手だと言いたいんですね」

提督「いや、青葉乗せたらうるさくて集中出来ないだろう?」

夕張「んー……確かに」

青葉「ひどっ」

提督「行けば分かるさ。さて、ぼちぼち行こう」


17: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 20:44:52.29 ID:xmAJ40mn0

青葉「あのー……提督」

提督「ん、何だ?」

青葉「どうして提督はそんなジェットコースターのガードみたいなシートベルトをしているんですか?」

提督「何でって、そりゃあ運転中に身体をしっかり固定する為だ」

青葉「では何故青葉の席には無いのでしょうか?」

提督「普段助手席に人乗せないから着けてないんだ……一応純正とはいえRのシートだから、普通のクルマに比べればホールド性は高いと思うぞ」

青葉「では、この後部座席とシート横に張り巡らされた鉄棒はなんでしょうか?ジャングルジムですか?」

提督「ボディの剛性アップと横転時の保護にも役立つ5点式ロールバーと後付のサイドバーだな」

青葉「……横転するんですか?」

提督「俺は無いけど、もしもってこともあるからな。ホントは着けたくないのヨ」

青葉「……青葉は生きて帰って来れますか?」

提督「生きて帰る事はクルマの運転においての鉄則です。お、夕張が踏み始めた」

青葉「え、ちょっとクルマってあんな速く加速するものなんですか……」

提督「あれでもまだ全然。というか、喋ってると舌噛むぞ」

青葉「いや、待ってやっぱり降りイヤアアアアアァァァァ!!!!」


18: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 20:55:05.69 ID:xmAJ40mn0

某パーキングエリア

青葉「 」チーン

夕張「あらら、やっぱり伸びてますね」

提督「見出しはあれだな、『深夜の都心高速に木霊する絶叫!青葉・提督のクルマで失神事件!』ってとこか」

夕張「イニDじゃないんですから……」

提督「しかもド初期のネタだ」

青葉「 」

提督「まあ、普通あんなスピードで走り回るなんて恐怖以外の何者でもないだろう」

夕張「慣れって怖いですねー……」

提督「おっと、慣れた頃が危ないんだ。慢心ダメ、ゼッタイ」

夕張「精進しますね」

提督「そもそもこんな事しないのが一番なんだけどな」

青葉「ダメ……クルマが……壁が……迫ってくる……」

19: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 20:59:59.08 ID:xmAJ40mn0

青葉「うぅー……この青葉、気絶するとは情けない」

提督「その割には走行時の動画はバッチリ撮れているのには驚きだ」カメラチェック

夕張「よく見えますねぇ」カメラチェック

青葉「それは青葉の台詞ですよ!?」

提督「ハハハ、で感想は?」

青葉「未知との遭遇とでも云いましょうか……お二人はいつもこんなことを?」

提督「そうだな。夕張がクルマ乗るようになってから週1、2日ペースかな」

夕張「たまに箱根の方にも行きますしね」

青葉「鎮守府内で他に同じ事をする人は?」
 
提督「今のところ夕張だけだな」

夕張「でも、時々瑞鳳が物陰から覗いている時もありますよ?」

提督「え、マジ?」

夕張「艦載機が好きな分、実は機械そのものにも興味あるんじゃないかしら」

提督「全然気付かなかったー……」

21: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 21:14:35.88 ID:xmAJ40mn0

青葉「そういえば、今まであまり気にしていませんでしたがお二人は同じクルマなんですね」

提督「そ。年式で細かい違いはあるけど同じ180SX……通称、ワンエイティだ」


提督のワンエイティ

ミッドナイトパープルに塗装された中期型

それなりにチューニングを施しているが見た目は恐ろしく地味

前期バンパー+R32リップ、スモークテールが特徴

必死で探したインパルのホイールがポイントらしい

約400ps程度


夕張のワンエイティ

パステルイエローに塗装された後期型

開口部の大きなFバンパー、カーボンボンネット、低めのGTウィングを装備

まだ実験・製作途中の為パワーは控えめで、空力や足回りを重視しているとか

約300ps程度


青葉「同じ車種でも随分対照的ですねー」

提督「コイツみたいに見た目を派手にするのが嫌なんだよ」

夕張「提督が地味過ぎるんですよ。何でわざわざ前期のバンパーにしているんですか」

提督「俺の中で180SXと云えばこの顔なの!」

夕張「ただでさえ古臭いのに暗い色にするから余計に地味じゃないですか!」

青葉(クルマ知らない人からすればどーでもいいですねー)

23: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 21:31:51.85 ID:xmAJ40mn0

>>20 HKSのドラッグ仕様180SXがまさにそれでしたねw


提督「グヌヌ……この渋さが分からんとは。これでも現役の頃は有名だったんだぞぅ」

青葉「現役って……提督は以前から?」

提督「免許取ってから4年位はしょっちゅう来てたよ。もう10年以上前だ」

青葉「ほえー……」

提督「当時は黒だったから『ステルス』とか言われてたらしい」

夕張「今でも変わらないじゃない……」

提督「あと『環状のインターセプター』とか、紫にしてからは『紫電』とかもあったな」

夕張「……通り名って、ゲームだけじゃなかったのね」

青葉「紫電に至っては安直ですねぇ」

提督「ま、深海棲艦が出るようになってから、それどころじゃなくなったったけどな」

青葉「あー……なるほどぉ」メモメモ

夕張「ところで提督、この後どうしましょうか?」

提督「そうだな……もういい時間だし、あと一周したら帰るか」

夕張「了解です……って、あら?」


26: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 21:55:01.36 ID:xmAJ40mn0

ブーン……

夕張「赤い……雨宮エアロのFDですね」

提督「随分気合入ってそうだな。この時間に珍しい」

青葉「FD?」

提督「車名はRX-7なんだけど、あれは三代目のFD3S型だから通称FDなワケよ」

青葉「どうして型式で呼ぶんですか?」

提督「一口にRX-7と云っても、初代のSA22C、二代目のFC3Sもあるから、混同するのを避けて……かな。別にセブンでもいいんだけどさ」

夕張「私達のワンエイティはS13型の一代限りだから、そういうことは無いんだけどね」

青葉「なるほどー……」メモメモ

提督「でもこれもまた時々面倒で、シビックにもFD型があるからなぁ」

夕張「普通FDと云ったらセブンですよ」

提督「そうなんだけど、前にもナナマルっていうから70スープラの話かと思ったら、実は70ランクルだったってこともあったから……」

夕張「そしたら、セブンと云ったらスーパーセブンとかもあるんですか?」

提督「それも体験済みだが」

夕張「いやいやいや……」

青葉「???」


27: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 22:14:30.67 ID:xmAJ40mn0

提督「ところでさー……」

夕張「はい?」

提督「もしあのFDから艦娘が出てきたら面白くない?」

青葉「まっさかー」

夕張「そうですよー。こんなことしてるの私達位……」ハッ

提督「……気付いたか、夕張」

夕張「いえ、まさかとは思いますが、色は違えどあのエアロって……」

提督「そうだ。例の兄弟の弟が乗っていたFDと同じだ」

夕張「そして……彼らが元々ホームにしていたのは……」

提・夕「「赤城山!!」

提督「……って、あるわけないってwww」

夕張「幾らなんでもそれはwww」

青葉「あのー……何の話ですか?」

提督「ああスマンwww後で俺の部屋にあるマンガを見せるからwww」

夕張「もー提督くだらな過ぎですよwww」

青葉「あ、ドライバーが降りてきました。女性のようd……」

提督「んwwwどうした青葉www」

青葉「 」ユビサシ

提督「ん?」

夕張「へ?」

赤城(私服)

提督「 」

夕張「 」




28: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 22:26:07.64 ID:xmAJ40mn0

提督「イ、イヤーキレイナオネーサンデスネー」

夕張「ソーデスネーアコガレチャウー」

青葉「いや、あれ私服ですがどう見てもあk 提督「言うな!言えば現実になる!」

夕張「えー、そんな同じ赤城だからって、えー……」

提督「いや、きっとあれは赤城さんによく似た綺麗なお姉さんだ。そうに決まってる」

青葉「ではもう一人助手席から降りたサイドポニーの女性は加賀さん似の綺麗なお姉さんですね」

加賀(私服)

提督「 」

夕張「うわー……」

青葉(とりあえず写真撮っておこう)

赤城「あら?」

加賀「ふむ……」

赤城「あそこに居るのはもしかして、以前演習で相手になった……」

加賀「どうやらそのようですね」

29: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/15(金) 22:57:54.23 ID:xmAJ40mn0

※赤城さん・加賀さんの私服は各自補完でお願いします


提督「おー……やっぱり気付いた」

夕張「そういえば、私も私服の方がいいでしょうか?」

提督「うーん……考えたこと無かった」

青葉「あのお二人の格好は外を出歩くには流石に不自然ですからね」

提督「思いっきり浮くよな、どう考えても」

夕張「それにしても、艦娘でこういうクルマに乗ってる人が他にも居たなんて……」

提督「そういえばあそこの鎮守府の提督もクルマ好きなんだよなー。確かエリーゼに乗っていたハズ」

夕張「エンジンがトヨタのヤツでしたっけ」

提督「2ZZだな」

青葉「どうするんですか?」

提督「どうするもこうするも、顔を合わせた以上挨拶はしておこう」

夕張「逃げる方が怪しいですからね」

提督「そうそう。たまたま見知った顔に会っただけの話だ」

青葉「その割には随分慌てていたような……」

提督「そりゃあだって、こんな夜中に高速で[ヒエー]キロで走ってるなんて公に出来ないだろ」

夕張「ましてや他の鎮守府の人達だし……」

青葉「出る前に『やましいことは無い!』って言ってませんでしたか!?」


47: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 09:08:54.35 ID:e/Rn2V3r0

由良「ワンエイティこと180SXは1989年、S13シルビアの姉妹車種として発売されたスポーティ・クーペです。発売当初の言い方をすると、スペシャリティ・カーに分類されます」

由良「車名の180は排気量、SXは当時の日産に存在したNX・SX・ZXのクーペがあり、この内の中型車両を指すのがSXでした。ZXは言わずもがなフェアレディZのことですが、NXクーペって日本では……うん」

由良「生産期間はおよそ10年。当初は車名の由来ともなるCA18エンジンを搭載していましたが、91年にマイナーチェンジを受けた際にお馴染みのSR20にスイッチ。さらに96年には外観に大幅な改修を受け、今でも見かけるあの丸テールになりました」

由良「排気量が2Lになったらワンエイティじゃないじゃんとは言ってはいけないお約束。ねっ?」

※シルビアの最終型になったS15の輸出名は200SXだったりします

由良「さて、特徴はリトラクタブル・ヘッドライトにハッチバックのスポーツカーらしいスタイル。前代のS12にもリトラ・ハッチバックのスタイルはあったので、それを踏襲したものともいえますね。ちなみにアメリカでは名前や外見の類似性から『240ZXの再来』とも言われていたようです」

由良「日本においても人気は絶大で、姉妹車種のシルビアと共に小型かつ当時としては高出力なFRとしてスポーツ走行の定番となり、あらゆるシーンにおいて活躍しました」

由良「特にドリフトにおいては、ハッチバック故にシルビアよりタイヤを多く積める利点もあったそうです。恐らく提督のワンエイティも>>1が栃木出身ということもあり、ドリフト界隈においてワンエイティ使いとしてその名を轟かせた古口・平岡両氏のかつての仕様を参考にしたものと思われます」

由良「余談になりますが、幼い頃の>>1はワンエイティという名称を知らず、『イチハチオーエスエックス』と呼んでいて、シルエイティが流行りだした頃にその呼称が間違いだったとようやく気付いたり」

由良「街中で見かければルーフ(正確にはピラー部分)が黒く、リトラのライトと外見に微妙に共通点のあるNSXだと思い込んだりと今となっては微笑ましい勘違いエピソードが多数あったようです」クスクス

由良「以上で簡単ながら、180SXの紹介を終わりにしたいと思います。ご清聴有難うございました」


52: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 09:49:00.97 ID:e/Rn2V3r0

赤城「こんばんわ。以前お会いしたこと、ありましたよね?」

加賀 ペコリ

提督「ええ、その節はお世話になりました。そちらの提督さんはお元気で?」

赤城「はい。元気過ぎて困るくらいですよ」

加賀「少しは年齢を考えて落ち着いてほしいものです」ハァ

提督「いやあ……あの方が静かになったら、それはそれで怖いですよ」

赤城「ウフフ、それもそうですね」

青葉「結構普通に談笑してますね」ヒソヒソ

夕張「提督って意外とコミュ力高いから」ヒソヒソ

青葉「その割には浮いた話がありませんね」ヒソヒソ

夕張「基本ヘタレだからいつも良い人止まりなのよ」ヒソヒソ

青葉「押しが弱そうですもんねぇ」ヒソヒソ

53: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 09:52:31.28 ID:e/Rn2V3r0

提督「(全部聞こえてるぞクソが)ところで随分気合の入ったFDに乗っているみたいだけど……」

赤城「ええ。当初は普通のクルマを買おうと思っていたのですが、提督に相談したら『是非乗ってみてくれ』と勧めてきまして」

提督「勧められたって、それ多分……」

加賀「恐らく、ウチの提督が乗ってみたかったってだけでしょうね」

提督「だよなぁ。あの人昔からロータリーも好きとは聞いていたが……」

赤城「それ以上にロータスが好きでエリーゼにしたみたいですが、心の何処かに引っかかっていたのでしょう」

加賀「赤城さん、最初は気乗りしなかったみたいですが……日を追うごとにのめり込みましたね」

赤城「お恥ずかしながら、今ではあのような形になりました」

提督「いえいえ、ウチの夕張も似たようなもんですから」



55: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 10:09:47.61 ID:e/Rn2V3r0

青葉「夕張さん、ロータリンだかロリータだかとは一体何ですか?」ヒソヒソ

夕張「ロータリーとロータス。ロータリーはエンジンの形式で、ロータスはイギリスの自動車メーカーのことよ」ヒソヒソ

青葉「で、そのロータリーって普通のエンジンとはどう違うんですか?」ヒソヒソ

夕張「通常のレシプロエンジンは一つの燃焼室で圧縮・燃焼・爆発・吸排気と4つの工程を分別してピストンを動かし、動力を得ているの。これが現在主流の所謂4サイクルね」

夕張「一方ロータリーはその名の通り、おにぎり型のローターが繭型の燃焼室を一回転する間にその工程をほぼ同時にこなすことが出来るの」

青葉「同時に、ですか」

夕張「そういう意味では2サイクルも似たようになっちゃうけど、今はロータリーの話だから説明はナシ」

夕張「ロータリーの利点はレシプロみたいにピストンの上下運動を回転運動に変換する必要が無い分、エネルギーのロスも少ないことね」

青葉「うーん……分かったような分からないような」

夕張「本当は図で書いた方が分かりやすいんだけど」

青葉「でも要するに、スゴく効率の良いエンジンってことですね」

夕張「とりあえずそう思ってもらっていいわ。更に構造もシンプルで軽量。水素燃料でも動かせるらしいの」

56: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 10:24:02.19 ID:e/Rn2V3r0

青葉「へえぇ……その割にはあまり普及しているようには思えませんが」

夕張「レシプロに比べるとデリケートだったのよ」

青葉「ほう」

夕張「とてつもない精度が必要だったの。当初は未来のエンジンと期待され、各国のメーカーはこぞって開発に乗り出したものの、とても採算が取れるものではないと見放された」

夕張「最終的に残っていたマツダだけが実用化に成功したのよ。開発秘話はプロジェクトⅩにも取り上げられたわね」

夕張「その後ル・マンで日本車唯一の総合優勝を飾った787Bを始め、小型車からレーシングカー、果てはマイクロバスまでマツダは様々な車種に載せられたわ」

青葉 メモメモ

夕張「あと燃費が悪くなりやすい、低回転域が弱いというのもデメリットね。RX-8の生産が終わっているから今現在ロータリーエンジンは途絶えてしまったけど、その魅力に取り憑かれるファンは後を絶たないわ。赤城さんもその口じゃない?」

夕張「まあ、若干語弊があるかも知れないけど、大方こんな具合ね」

提督「長々と説明有難う」ツーバーメヨー

夕張「あれ?聞いてました?」タカーイソーラカーラー

提督「呼びかけても応じなさそうだから、終わるまで待ってたんだ」オシエーテヨー

夕張「あら、それは失礼しました」チジョウノホシヲー

提督「それより……って青葉歌うな。帰る前にちょっとした演習だ」

夕張「演習?」

57: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 10:28:34.18 ID:e/Rn2V3r0

赤城「私と夕張さん。ここから環状線までの一周を一緒に走らせてもらおうと」

夕張「それって、もしかしてバトルじゃ……」

提督「バトルってそんなゲームやマンガじゃあるまいし。ただいつもよりハイペースで並走するだけだ」

夕張「同じじゃないですかぁ!!」

赤城「どう?加賀さん?」

加賀「……入電が来ました。現在流れは良好」

加賀「通行量も少なく、事故・工事・移動オービス等の取締りをしている箇所も無いそうです」

赤城「了解です。行けますね」

青葉「あの、加賀さんは何を……?」

加賀「彩雲を飛ばして交通状況の確認をしていました」ドヤッ

青葉「使い方!」

58: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 10:36:39.77 ID:e/Rn2V3r0

赤城「では、私が先行しますね」

夕張「……了解です」

提督「どうした、浮かない顔して」

夕張「そりゃあ、勝手に演習という名のバトルをさせられることになったんですから……」ハァ

提督「だからバトルじゃないって」

夕張「いい加減引っ叩きますよ?」

夕張「というか!私提督以外の人と走るの初めて!」

提督「そうだっけ?前に俺の友達の岩崎に乗せてもらったことあるじゃないか」

夕張「私の意識が速攻で壱・撃・離・脱したからノーカンです!」

青葉「なんだ、夕張さんも気絶してたんですね」プッ

提督「アイツは色々キレ過ぎだからなぁ」

加賀「盛り上がっているようですが、そちらの提督はどうするんですか?私は赤城さんに同乗しますが」

提督「折角だから、後ろに着いてって観戦させてもらうよ」

青葉「撮影は青葉にお任せ!」

赤城「ふふ。では、行きましょうか」

夕張「もー……」


71: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:03:46.74 ID:Ue8nxK3S0

青葉「それで、夕張さんに勝機はあるんですか?」

提督「どうだろな。パッと見た限り赤城さんが優勢かな」

青葉「と、言いマスと?」

提督「FDとワンエイティではクルマの基礎からして違うのだが、ここはサーキットじゃないんだからそこはあえて考慮しないとして」

提督「クルマの動きを見ている限り、赤城さんは無駄が無い。策敵で鍛えたのか、周りの流れがよく見えている。この場所を走る上で大きな武器だ」

青葉「今はまだ流す程度の速度ですが、それでも分かるんですか」

提督「まあね。青葉もよく見ていてごらん。ホラ、今何かちょうど……」

青葉「言われてみると、夕張さんは少し躊躇しているようにも見えますね」

提督「アイツは感覚だけで判断するのを嫌うからな。まあ、無理はしないと散々教え込んだってのもある」

青葉「ふむ……」

提督「何が起こるか分からない以上、行かないと決めたら絶対に行かない。それも大事なことなんだけど、アイツの場合良くも悪くも慎重過ぎるんだよ」

青葉「一方の赤城さんはスパッと行きますね」

提督「クルマも良く作りこまれているから、足も綺麗に動いているな。FR乗りなら誰もが見習いたいものだ」

72: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:09:24.20 ID:Ue8nxK3S0

青葉「まるで地上の戦闘機、といったところでしょうか」

提督「良いこと言うな。実はFDってゼロ戦を参考にしているんだ」

青葉「ゼロ戦を?」

提督「ゼロ戦と云えば、徹底的な軽量化を施して性能を向上させたことで有名だろう?」

青葉「ええ、開戦当初は無敵でした」

提督「FDの開発チームはわざわざ渡米して、僅かに残っていたゼロ戦を見て、軽量化の技術を学んだらしい」

青葉「なんと……現代にまで技術が繋がれているんですねぇ」

提督「終戦後に飛行機屋がクルマ屋になっていたりする例もあるぞ。BMWのエンブレムも元はと云えばプロペラがモチーフだ」

提督「日本では中島飛行機が解散した後、スバルとプリンス自動車に別れている。まあ、プリンスは日産と合併したけど」

青葉「そう考えると、感慨深いものですね」

提督「その大戦で沈んだ艦の魂を背負う艦娘に言うのも変だけどな」

青葉「艦娘も元は人間ですから」

提督「ん……そうだ、ちょっと夕張に電話を繋いでくれ」

青葉「今運転中ですよ?」

提督「ハンズフリーだから大丈夫だ。早くかけてかけて」

73: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:11:34.64 ID:Ue8nxK3S0

ピロリロ

夕張「あーっ!こんな時に電話なんて誰よ!」ピッ

提督『もしもーし、夕張ー聞こえるかー』

青葉『青葉も居まーすっ』

夕張「何ですか提督!もうすぐスタート地点なんですから!」

提督『おお怖い怖い』

夕張「チャカすだけなら切りますよ!」

提督『いいから落ち着け。冷静さを欠いたら勝てるモンも勝てん』

夕張「……私、勝てるんですか?」

提督『俺の見込みでは7:3でお前の負けだな』

夕張「キーッ!!」

提督『だから落ち着けって。いいか、赤城の方がクルマも腕も恐らく上だ。ソレばかりはどうしようもならん』

74: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:14:29.26 ID:Ue8nxK3S0

夕張「じゃあ、どうすればいいんですか……」

提督『言ったろ?これは演習だって。お前なら勝てはしなくても離されることもない。いつも通り楽にすればいい』

夕張「楽に……」

提督『深呼吸してからいつもの三か条、言ってごらん』

夕張「スー……ハー……」

夕張「一つ、周りをよく見ること」

提督『うむ』

夕張「一つ、迷った時は止めること」

提督『よし』

青葉『スタート地点到達!赤城さん加速を始めました!』

夕張「一つ……楽しむこと!」

提督『そうだ!行って来い!』

夕張「はい!」

75: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:17:45.55 ID:Ue8nxK3S0

青葉「あわわ……は、はやいぃっ……」ガチガチ

提督「ワハハ!赤城さん完全バトルモードだな!お淑やかな顔してとんでもねえ踏みっぷりだ!」

青葉「スピードが違いすぎるゥ!」

提督「青葉うっさい!」

青葉「でっでででも、さっきより夕張さんの動きにキレがありますね」

提督「流石青葉!しっかり見とけよ!」

青葉「……っ!……っ!」

提督「今俺達がやっていることは救いの無い愚かな行為だ!」

青葉「はいぃ!」

提督「だが今この瞬間は全員本気だ!例え一瞬で全てを無に返してしまうことになったとしても!」


提督「こんな飛び切りの時間、人生において味わえる機会なんざ早々ねえ!」


提督「その目で!カメラで!しっかり焼き付けておけ!」

青葉「提督!何かキャラ違いませんかあぁぁぁ~……っ」

76: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:21:51.22 ID:Ue8nxK3S0

青葉『ヒエエエエエエー……』ピッ

夕張「心が軽い……いつもより動ける……」

夕張「もう何も怖く……ってフラグ乙っと」

夕張「無駄口を叩ける位、リラックスできているわ 」

夕張「それでも、体の中の圧が高くなる感じ……テンションとは違う」

夕張「奥底から湧き上がるような、この高揚感」

夕張「……悪くないわね」

夕張「こうして見ると、赤城さんのFDってホント良く出来てるわねー……」

夕張「FDとワンエイティの差かしら?パワーは向こうの方が出ていそうだけど……」

夕張「出口からのトラクションの掛け方が上手いわね。見習うべき点は多そう……」フム

夕張「でも、私の方が入り口で一瞬追いつく。ブレーキングは私の方が上?」

夕張「ああ、向こうは加賀さんも乗っているんだった。それを差し引いたらほぼ互角ってことね」

夕張「よし!ピッタリ着いてデータを取って、私のワンエイティの礎にさせてもらうわ!」


77: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:25:56.16 ID:Ue8nxK3S0

赤城「ふふっ」

加賀「楽しそうね、赤城さん」

赤城「勿論。普段の戦闘とはまた違った緊張感、何だか心地良いの」

加賀「……やはり私には理解しかねるわ」

赤城「あら、どうして?」

加賀「無益だからよ」

赤城「趣味なんて大抵無益なものじゃない?」

加賀「それは分かります。が、これは得るものより失うものの方が遥かに勝る」

加賀「出来れば降りて欲しいの、私は」

赤城「それが……いつも横に乗る理由?」

加賀「分かりましたか?」

赤城「長い付き合いだもの」

加賀「勿論、この程度で降りてくれるなんて思っていません」

赤城「そうね。とっくに止めていると思うわ」

加賀「だから……どんな形であれ、いずれ訪れる最期の時まで、隣で見届けましょう」

赤城「……ゴメンなさいね、ワガママで」

加賀「お互い様です」

79: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:31:32.27 ID:Ue8nxK3S0

提督「オイオイ、マジー……?」

青葉「 」ミギニフラレ

提督「夕張のヤツ、いつもより速いんじゃないのー……?」

青葉「 」ヒダリニフラレ

青葉「って、提督ー」

提督「どしたァ!」

青葉「何ですかその青い炎を操る赤髪のバンドマンみたいな返事!百八式ですか!?」

提督「お前また人のゲームを勝手にやってたな!ネタが分かりづらいんだからヤメレそういうの!」

青葉「それより!都心高速って!何でこんな入り組んでいるんですかぁー!?」

提督「突貫工事で作ったからだよ!新規に道路を通す暇が無くて、川を埋め立てたりして作ったからな!今となっちゃ欠陥だと認める始末だ!」

80: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:35:02.82 ID:Ue8nxK3S0

青葉「な、なんでー!?」

提督「一番はオリンピックじゃないか!?当時はクルマが増え始めた頃でもあったから、それに対応するためにも大慌てだったらしい!」

提督「だが当時のクルマはてんとう虫だのそんなんばっかだ!出しても精々60キロ!こんな造りでも充分だった!」

提督「ところが今はどうだ!同じ軽自動車の括りでもパワーは十倍近い!この狭い国で横幅1.8メートルあるクルマもザラにある!」

提督「交通量は格段に増え、一家に一台どころか一人一台持っていてもおかしくない時代!」

提督「半世紀近くで自動車は格段に性能が上がった!しかし縦横無尽に無理くり繋げてしまった道をイチから建て直すことも出来ない!」

提督「そして今では高速道路とは名ばかりの、都会の迷宮となったわけだ!」


81: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:39:33.92 ID:Ue8nxK3S0

青葉「その結果がこれですかぁ!?」

提督「このジャンクションのコーナーを抜ければ、外回りで一番速度がノる下りのストレートだ!」

提督「下った先に川だった頃の名残の橋桁がある!」

青葉「な、何で橋桁が!?」

提督「無理矢理作ったって言ったろ!ここからが難所よ!」

提督「ただでさえ見通しの悪いS字に橋桁の威圧感ったら、規制速度内でも怖いぞぉ!」

青葉「ならスピード落としてぇ!」

提督「アホ言え!丁度一般車両も居ない!間違いなく二人とも踏み抜く!」

青葉「うひぃいぃいぃぃ」

提督「下りのストレート……!オールクリア!」

82: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:42:05.21 ID:Ue8nxK3S0

夕張「前方車両無し……オールクリア」

夕張「ここから先なら、この子でもFDに着いていける……っ」

夕張「いける……並べる……っ」


加賀「……並ばれましたね」

赤城「そうね」

加賀「本当に楽しそうなんだから……」

赤城「これでも抑えている方よ?この状況では、流石に気分が高揚します」

加賀「え、それ私の……」


夕張「もう少しで……っ!」

夕張「ああーっ!もう!もっとパワーが欲しい!」

83: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:46:48.68 ID:Ue8nxK3S0

提督「あ、マズイ」

青葉(え、急に声のトーンが)

提督「夕張、そっちのラインを選ぶと……飛ぶぞ」

青葉「と、飛ぶって……!?」

提督「文字通りだよ。橋桁抜けた直後のS字は酷くうねっているんだ」

提督「角度によっちゃあ最悪出口で分離帯に……刺さる」

青葉「さ、刺さる!?」

提督「夕張め、赤城さんのペースに釣られて、実力以上の域に入ってる!」

提督「事によっては二台が絡むぞ!」

青葉「えええぇぇぇっ!?ヤバいじゃないですかぁ!」

提督「……そこは引けぇ!夕張ぃ!」

84: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:49:44.76 ID:Ue8nxK3S0

夕張「S字手前で前に出れる……そういえば、こっちのラインってあんまり通らないようにしていたな……」

夕張でも「今なら行ける……かつてない程乗れている……」

夕張「行け……行けっ……行け――っ!」


赤城「……!?」

加賀「どうかしました?」

赤城「………」

加賀「?」

赤城「……ここは譲れませんっ」

加賀「また……私の……」


85: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/16(土) 22:53:37.74 ID:Ue8nxK3S0

コーナー入り口、先に進入したのはワンエイティだった。

赤城のラインを潰す様に鼻先を突っ込む。

前へ、前へ、前へ―っ

夕張(動きがスローモーションに見える……)

夕張(タイヤが跳ねている……手に取るように分かる)

夕張(フロントの接地感が無い……)

夕張(……飛ぶっ!)

コンマ数秒の中、夕張の頭の中でこの後起こりうるクルマの挙動は予測できた。

車体全体がスライドしたまま宙に浮き、制御不能に陥る。

この速度では、無理に立て直そうとすれば余計に悪化する恐れがある。

更にすぐ後ろには赤城のRX-7……続けて提督の180SXが。

自分に何かあれば、最悪後続を巻き込みかねない。

ならば最小限の被害に抑えるためには……

86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/16(土) 22:56:23.69 ID:Ue8nxK3S0

ガツンッ!!

夕張「~~~っっ!!」


青葉「横から壁に突っ込んだーっ!!」ギャー

提督「おいいぃぃっっ!!それ元々俺が買ったエアロだぞーっ!?」

青葉「……え?」


加賀「……赤城さんっ」

赤城「終わり、ですね……」


夕張の選択。

コーナー出口の側面に車体を押し付け、無理矢理体勢を整える自滅の方法だった。

ただ壁に当てるだけではダメ。角度が深ければ反対方向に吹っ飛ばされかねない。

無残にも壁に車体を打ち付けるワンエイティを尻目に、赤城の赤いRX-7が通り過ぎる……。

夕張「……やっちゃった」

夕張「一番近いランプは芝ふ公園か……何とか自走はできそうだけど」

93: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 00:59:16.61 ID:Z270vncJ0

芝ふ公園ランプ

提督「夕張ー!!」ドアバン

青葉「夕張さーん!!」ドアバン

夕張「アッハハー……やっちゃいましたー……」

提督「こんの馬鹿!何ともないか!?」

夕張「全然、ピンピンしてますよ」

提督「俺の買ったエアロ……テメ、割れてたら弁償だからな!」

夕張「 」

青葉「薄情な人ですねぇ。さっきは貶すようなこと言っておいて」

夕張「使ってないからって私が勝手に着けちゃったから、仕方ないです」

94: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 01:01:26.18 ID:Z270vncJ0

青葉「そう云えば、赤城さんと加賀さんは?」

夕張「あの二人なら、あそこに……」

赤城 ペコ
加賀 ペコ

提督「赤城さんにも感謝だな……最悪FDも巻き込むところだった」

夕張「私が体勢を崩す中、上手く避けてくれましたからね……ビックリしました」

提督「とりあえず挨拶してくる。夕張はそのままでいいから。青葉、行こう」

青葉「ハイ!」

タッタッタッ……

夕張「それにしても……」

夕張「最初の台詞がホントにフラグになるとはネ……」フッ

夕張「もう何も怖くないって……メチャメチャ怖かったんですけど!」


95: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 01:03:53.60 ID:Z270vncJ0

提督「とりあえず、赤城さん達には帰ってもらったよ」タバコトリダシ

夕張「青葉は?」

提督「コンビニに行ってもらってる。喉渇いたしナ」ジッポーシュボ

提督「それと赤城さんからの伝言。『楽しかった。またご一緒しましょう』だと」

夕張「………」

夕張「……提督」

提督「なんだ」フー

夕張「負けちゃいました……」

提督「完膚無く、お前の負けだ」

夕張「乗れている……と思ったんですけどねぇ」

提督「そうだな。見事に赤城さんにノせられていた」

夕張「……そう、ですよね……」

夕張「あの瞬間……凄く怖かった」

提督 スパー

夕張「でもそれ以上に……負けたことが悔しいです」

提督「あァ」

夕張「僅かでも自惚れていた、自分にも腹が立ちます」ジワッ

提督「あァ」

夕張「自分のミスで……この子もボロボロにしたことに……もっと腹が立ちます」
ポロポロ

提督「……なら、やめるか」フー

96: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 01:06:28.87 ID:Z270vncJ0

夕張 グシュッ

提督「お前が今片足突っ込んでいるのは、こういう世界だ」

提督「俺が現役の頃にもナ、事故起こしたヤツは何人も居た」

提督「何人かはケロッとした顔でまた戻ってきた。中には、重い障害を持ったヤツ、死んだヤツも居た」

提督「お前だって艦娘である前に一人の人間だ。本音を言えば、ただでさえ明日も分からない場所に居るのに、わざわざこんなキナ臭い所に置いておきたくはないのヨ」

夕張「じゃあ、どうして……提督はここに……」

提督「さぁねェ。気付いたらココに居たし、また気付いたら舞い戻っちまった」

提督「本当はお前をダシに、戻りたかっただけかも知れん」

提督「夕張。さっきは完膚無く負けたとは云ったけどな、でも勝者は居ないんだ。誰一人として」

提督「残るか降りるか……選択肢はそれだけ」

夕張 ウゥッ

提督「これを機会に降りるのなら俺は止めはしない。丁度良い機会だしナ」

提督「それでも残るというなら、それを咎める気も無い。俺にはその権利は無い」

提督「いつだって、お前次第だ……」


さあ――お前はどうする――?


97: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 01:08:02.87 ID:Z270vncJ0

夕張 ウエェェェン

提督 タバコポロッ

提督「ちょ、え。何で泣くんだよ」

夕張「だってぇぇ~……」ウエェェン

提督「ああ、もう落ち着けって。今このタイミングで青葉が帰って来たら……」

青葉「提督ぅー!ウーロン茶ー……って、ああ!提督が夕張さん泣かしてるー!」

提督「ちがっ……夕張が勝手に……ってオイ!写真撮るな!」

青葉「ナイスデスネー。ナイスデスネー」パシャパシャ

夕張 オーイオイオイ

提督「ギャーッ!ヤメレー!」


夕張180SX vs 赤城RX-7

対戦結果……D 敗北

98: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 01:09:09.54 ID:Z270vncJ0

GSしとくかい?

YES ←
NO

103: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 08:31:45.13 ID:pk6/ckzy0

翌日 工廠

夕張「ハアァァァー……」

由良「ああ居た居た夕張……って何その顔!?」

夕張「なにー……なんかよーうかーい……?」

由良「夕張の顔が妖怪じみてるわ。目は真っ赤だしクマはスゴいし……」

夕張「あー……昨日思いっきり泣いたから寝不足で……」

由良「その顔、女子としては色々アウトよ」

夕張「いや、うん……分かってるけど……コレ見たらまた泣けてきた……」


左サイド全体に大きく擦り傷がついたワンエイティ

酷い所は塗装の下地まで剥げ、凹みもある


由良「ああ、コレ。話には聞いていたけど、随分派手にいったみたいね」

夕張「……誰から聞いたの」

由良「今朝早くから、青葉が動画付きで皆に吹いて回っていたから」

夕張「アオバワレェ……」

104: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 08:33:28.15 ID:pk6/ckzy0

由良「で、コレどうするの?」

夕張「直すに決まってるじゃない。この際だからボディ補強もしっかりやって……」

由良「ということは、まだ夜中のドンチャン騒ぎを続けるってことね」ハァ

夕張「ドンチャン騒ぎって」

由良「提督もそうだけど、ウルサイのよこのクルマ。夜中にウルサイのは川内だけで充分ですっ」

川内「なにー……よんだー……?」

由良「呼んでないからっ。どっから出てきたの、この夜行性の生き物」

川内「呼んでないのー……今は眠いんだからさー……」フアァー

由良「もう昼過ぎよ」

夕張「川内と同レベル……不幸だわ」

川内「ねむねむねむ……」

由良「何なのウチの軽巡は……っ」

105: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 08:37:08.25 ID:pk6/ckzy0

若葉 トコトコ

由良「また増えた」

川内「夕張を励ますんじゃないのー……」

由良「タンバリン持ってるけど?」

川内「……陽気に踊るんじゃない?」

由良「若葉ってそんなキャラじゃないでしょ」

若葉 ツンツン

夕張「なーに……若葉ちゃ 若葉「いじけるなベイビー」

若葉 トコトコ

夕張「……?」

川内「……え」

由良「今の何」

若葉 クルッ

若葉「エレクトリックサーカス」

ピシャッ

夕張「 」

川内「……もう一回寝直してくるわ」

由良「由良も……」

106: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 08:38:44.61 ID:pk6/ckzy0

鎮守府・外

青葉「ですからっ!青葉見たんです!」

古鷹「そ、そう……」

最上「もう、朝から聞いてるよー」

青葉「深夜の都心高速は、ドラマが一杯だったんです!」

青葉「不肖、青葉!感動しました!」

古鷹「う、うん……」

最上「それはいいんだけどね」

青葉onママチャリ

青葉「さっきからどうしたんですか二人とも。青葉の話も上の空じゃないですか!」

最上「いや、だってさ……」

古鷹「ねえ青葉、その自転車で何処へ行くの?」

青葉「取材に決まってるじゃないですか!」

107: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 08:41:22.64 ID:pk6/ckzy0

最上「まさかとは思うけどさー……青葉、それ乗って都心高速行く気じゃ……」

青葉「何を今更」シレッ

最上「うわぁ!?」

古鷹「やっぱり!」

青葉「これから様々な都高ランナーの方達に突撃取材を敢行して!」

青葉「同乗させてもらい、その様子を撮影していく所存です!」

古鷹「待って青葉!それ自転車だよ!?」

最上「そうだよ!それに都心高速は高速道路だよ!?」

青葉「それ位知ってます」ハン

古鷹「 」

最上「 」

青葉「幸いこの鎮守府から湾岸線は近いですからね!いざ、出撃しちゃいま~す!」チリンチリン

古・最 ハッ

青葉「ぱーぱーぱぱぱ・ぱーぱーぱっぱ♪」←ロッキーっぽいテーマ

最上「う、うわあぁ~!!?」ガシッ

古鷹「ダメェ~!」ガシッ

青葉「何ですかさっきから!離してくださいよぉ!」ググッ

摩耶「……ああ?さっきから、うるせえなぁ……」

最上「あ!摩耶!いい所に!」

古鷹「お願い!青葉を止めるの手伝ってぇ!」

摩耶「止めるって……コイツ何する気だよ」

古鷹「自転車で都心高速に行こうとしてるの!」

摩耶「提督っ!それか叢雲呼べっ!この馬鹿どうにかしろーっ!!」


―余談。

その後、深夜になると多数の撮影機材を持ったセーラー服の少女が出没し、

出くわすやいなや「画を撮らせてください!青葉の趣味なんです!」と同乗走行を求められるという噂が実しやかに噂され、

某自動車雑誌の読者投稿コーナーにおいて「湾岸の青葉さんを探せ!」という題目で大喜利のネタにされるようになるのは、また別のお話である。

108: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 08:44:01.56 ID:pk6/ckzy0

執務室

ワーギャー

提督 カリカリ

叢雲 カリカリ

提督「……何か呼ばれた気がする」

叢雲「気のせいじゃない」カリカリ

提督「ちょっと行って来る」ガタッ

叢雲「待ちなさい」

提督 ピタッ

叢雲「昨晩、夕張が事故起こしたそうじゃない」カリカリ

提督「まあ、盛大な自爆だな。青葉の映像でも見るか?」

叢雲「その映像を見て知ったのよ」カリカリ

提督「さいですか」

叢雲「アンタ、自分の立場を分かっているんでしょうね?」

提督「一応、小さい鎮守府ながらも提督であります……」

叢雲「そうよ。アンタがこの鎮守府の代表。責任者よ」

提督「ハイ、そうですね……」

109: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/17(日) 08:46:10.54 ID:pk6/ckzy0

叢雲「個人の趣味だからとやかく言うつもりは無い。だけど、アンタの場合は度が過ぎている」

叢雲「挙句部下の艦娘を連れ出し、その艦娘が事故を起こした。大したスキャンダルだわ」

叢雲「今回は幸い怪我人は無し。夕張は……まあ見れたモンじゃないけど」

叢雲「しかし、一歩間違えれば大惨事。護るべき立場の人間が壊す・犯す」

叢雲「この言葉の意味、分かるわよね?」

提督(ヤッベェ……これ一番怒ってる時の顔だ)

コンコン

時雨「提督!凛として時雨の『テレキャスターの真実』を間違えずに弾けるようになったよ……って、あ」ガチャ

提督「やぁ時雨……おめでとう」

時雨「……お邪魔だったかな?」

叢雲「いいえ、そんなことないわ。丁度終わったところよ」

時雨「そう……ならいいんだけど」

叢雲「ところで、さっきから外で騒いでいる連中は何をしているの?私と提督を呼んでいたみたいだけど」

提督(さっき気のせいって言ってたじゃん)

時雨「ああ……青葉が自転車で都心高速に行くって聞かないんだ。最上や古鷹が必死で抑えているところさ」

提督「何してるんだアイツ……」

叢雲「あまり黙らないようなら、酸素魚雷をお見舞いしてやりなさい。私が許可するわ」

提督「え、ちょ」

時雨「了解。ちょっと入渠させて頭を冷やしてもらおう」

叢雲「お願いね、時雨」

時雨「大丈夫、行ってくるよ」バタン

提督「え、えー……」

叢雲「いつまでつっ立ってるの?片付ける書類はまだあるんだから、早く執務に戻りなさい」

提督「は、はーい……」

117: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 09:23:21.00 ID:vFMI5Ywl0

鎮守府・外 喫煙所

提督「あー……やっと一服できる」

山城・摩耶・龍驤 スパー

提督「……何だこの組み合わせ」

龍驤「いや、何でただタバコ吹かしてるだけでそんな顔されなアカンの」

提督「だって妙な威圧感があるんだもん、この面子」

龍驤「そらまあ、こんな綺麗どころが集まっとるんやし?怖気づくのもしゃーないで自分」

提督「そういう意味じゃねーよ。どう見てもレディースの集会だよコレ」

摩耶「つーかさぁ、ここで吸ってるのアタシら位しか居ないんだから今更文句言うんじゃねーよ」

提督「ならせめてキティッパ(キティちゃんのスリッパ)履いてうろつくの止めてもらえませんかね」

摩耶「関係ないだろ。それに楽だし可愛いから別にいいじゃん」

提督「可愛いって言う割にはキティちゃんの顔、汚れてないか?」

龍驤「ホンマや。それやただの野良猫やんけ」

摩耶「うわ、ホントだ。しかもちょっと剥がれてる」

山城 スパー

118: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 09:26:18.03 ID:vFMI5Ywl0

提督「で、我関せずみたいに振舞ってる山城よ。お前また勝手にCD持ち出したろ」

山城「あら、そうでしたっけ」

山城「最近CDがやたらと増えて、部屋にあるカラーボックスに収まりきらなくなって不幸だと思っていたけど……提督のCDも混ざっていたから急に増えたのね」

提督「どんだけ持って行っているんだよ」

山城「さあ?今まで食べたパンの枚数よりは少ないんじゃない?」フー

提督「ハァ……まあいいや」

山城「提督は簡単に折れてくれるから楽だわー幸運だわー」

提督「黙ってればつけ上がりやがってコイツ……美人だけど」

摩耶「結局顔かよ」

龍驤「まあ、たかがCD如きでネチネチつまらんこと言うても、器が小っさく見られるだけやしね」

摩耶「そもそも提督に器なんてあったのか?」

龍驤「そらーアレや、どんな海より深ぁい色の器を持っとるわ」

摩耶「へー……そうは見えないけどな」

提督「いや、よく聞け摩耶。海より深い色だからね?器の深さじゃなくて色の深さだからね?」

摩耶「ああ色か。ややこしい」

山城「今の楽しみは、提督が予約しているシロップ16gの新譜を先に聴いて独占することね。ウフフ……幸福だわ」

提督「おい!」

若葉「スモーキン・ビリー」

龍驤「今の何?」

摩耶「知らね」モウイッポンスオウ


119: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 09:28:46.52 ID:vFMI5Ywl0

談話室

瑞鳳 ジー

瑞鳳 ジーー

浜風「瑞鳳さん、まだ青葉さんの映像見てらしたんですか」

浦風「ほんまによう飽きんわいねぇ」

瑞鳳 ジーーー

浜風「聞こえていない……?」

浦風「もっしもーし?」

瑞鳳 ジジジー

浜風「ダメね」

浦風「ごっつい集中力じゃ」

瑞鳳 ボソボソ

浜風「??」

浦風「何じゃろ?」

瑞鳳「赤城さんのFD……サイドポート加工で約400馬力位かな。そうするとタービンは多分T04Z辺りを組んでいるハズね。だとすればまだ余力がある。足回りはそれほど締めてなさそう……フロント10にリヤは8キロ……いや、それよりもう少し硬いか。判別が難しいところね……」ブツブツ

浜風「!?」ビクッ

浦風「怖っ!なんか怖いわっ!」

120: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 09:30:24.49 ID:vFMI5Ywl0

瑞鳳「あら?二人とも、どうかしたの?」

浜風「それはこちらの台詞ですよ」

浦風「急に呪文みたいなもんぼやき始めよるき、ビックリしたわ」

瑞鳳「赤城さんのFDを研究していただけで、何をそんなに驚いているのよ」キョトン

浜風「研究……ですか」

浦風「研究してどうするん?」

瑞鳳「え?面白くない?」

浜風「ごめんなさい、よく分かりません」

浦風「ウチには警察24時で流れとる暴走族の映像にしか見えんわ」

瑞鳳「それは……行為自体は褒められたものではないけど」

瑞鳳「この映像には様々な情報が集約されているの。提督と夕張のワンエイティは大体の仕様は知っているからいいんだけど、他の鎮守府の、それも一航戦として名高い赤城さんよ。その赤城さんのFDならば実に興味深いじゃない?例えばここのシーン、夕張のワンエイティが跳ねているギャップも赤城さんのFDはショックをスッと吸収している。夕張はまだ仕上がっていないから仕方ないにしても、この動き一つとっても得られることは沢山ある。これは私の推測だけど、赤城さんは都高環状線に絞ってFDを弄っているわ。都高環状で通用すれば、どんなステージでも対応出来るなんて聞いたことあるけど、大袈裟でもなさそうね。あとこのシーンもうんたらかんたら」

浜・浦「はぁ……」

若葉「サタニック・ブンブン・ヘッド」

浜風「何ですか今の」

浦風「知らんわ」

126: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 20:54:30.80 ID:vFMI5Ywl0

夜・執務室

提督「んん~……っ、さて、今日はそろそろ休むかなぁ」

叢雲「そうね。キリもいいし終わりにしましょ」

提督「何か一杯呑みたい気分」

叢雲「呑むの?今日も出るかと思ったのに」

提督「流石に昨日の今日では出ないって」

叢雲「あら意外。ま、大人しくしてくれるなら何よりだわ」

提督「じゃ、とりあえず何かもっt 川内「提督!」バアン

提督「どわっ!?何だよ川内」

叢雲「ノックくらいしてから入りなさいよ」

川内「そんなことよりさ!私に隠れて夜戦してるでしょ!」

提督「……はぁ?」

叢雲「何を言ってるの」

川内「とぼけても無駄だからね!夜に夕張と一緒に出掛けて、夜戦しているの知ってるんだから!」

提督「……叢雲、コイツも俺と夕張が何をやってるのか知らないクチ?」

叢雲「さあ?この様子じゃ本気で知らないんじゃない?」

提督「朝から青葉があんだけ宣伝しておいて?」

叢雲「この子、昼間は寝惚けているから憶えていないんじゃないの?」

提督「んなアホな」


127: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 20:59:31.63 ID:vFMI5Ywl0

川内「二人でコソコソ何話してるのさ……あ!さてはこれからの夜戦の打ち合わせね!ずるい!」

提督「行かないっての。今日はもう休むんだから」

叢雲「いいんじゃない?口で説明するより、実際に見せてあげた方が早いわ」

提督「いやいや、お前俺のこと止める側だろ?促してどうするんだよ」

叢雲「言ったでしょ?節度さえ守ってくれれば口出ししないって。それに……」チラ

川内 ジトー

叢雲「川内が黙って退くタイプに見える?」

提督「ええぇぇー……」

川内「さあさあさあ!」

提督「ああー……もう分かったよ!可愛い川内の為だ!着いて来い!」

128: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:01:21.78 ID:vFMI5Ywl0
工廠

夕張 ワンエイティ修復中

提督「夕張ぃ」

夕張「ん?どうしたんですか提督?」

提督「前に買ったアレさ……何処に置いたっけ?」

夕張「アレ……?もしかして、買うだけ買って放置してるアレですか?」

提督「そうそう。と言うか、今すぐ動かせる?」

夕張「提督が放置しているから、代わりに私が面倒見てますので大丈夫です」

提督「ああ……すまん」

夕張「そうですよー?感謝してくださいね」

川内「うわっ!?夕張のワンエイティ傷だらけじゃん!ナニコレ!?」

夕張「アンタ昼間も見てるでしょうが」

提督「……ホントに何も知らないんだな」

129: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:03:30.26 ID:vFMI5Ywl0

夕張「……っと、アレでしたね。持って来ますよ」

提督「ああ、頼むよ」

川内「てーいーとーくー。それより何の為にココに来たのー?早く行こうよぉ」

提督「せっかちさんだな。お前に渡したいモノがあるから少し待ってろって」

川内「それって夜戦に関係あるの?」

提督「あるとも。これが無くちゃあ始まらない」

川内「……じゃあ待つ」

提督「よしよし……っと、来たな」

川内「?」

パアアァァァァン……

夕張「お待たせしました。例のアレです」

提督「おおう、スゴい調子が良さそうだな。アイドリングも安定しているし」

夕張「でしょー?色々苦労したんですよ?」

130: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:05:52.93 ID:vFMI5Ywl0

川内「ねえ、なにこれ?」

提督「NSR250、しかもまさかのハチハチ(88年式)だ!今となっては超貴重だぞ?」

夕張「古さは否めないけど、バッチリ仕上げてあるから峠辺りなら良い線行くんじゃないかしら?」

川内「え?峠……?」

夕張「あとは装備ね。まずはこのヘルメット。半ヘルじゃ危ないから当然フルフェイス」

川内「ああ……うん???」カポ

夕張「それとコレ、ツナギも着ておきなさい。いくら艦娘だからと言っても、肌を露出したまま乗るのは危ないし」

提督「これらの装備は妖精さん達が一瞬で作ってくれました」

妖精ズ イエーイ

川内「着替えればいいの?」

提督「おう。俺達はここで待ってるから」

川内「よく分からないけど分かった」

艦娘着替え中

131: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:07:45.00 ID:vFMI5Ywl0

川内「終わったよー」←ライダースーツ&フルフェイス装備

提督「おお、カッコいいカッコいい」

夕張「似合うじゃない」

川内「え、うん。ありがと……?」

提督「事態を飲み込めていないようだな」

夕張「それでもちゃんと着て跨る辺り律儀ね」

川内「ねえ、これどういうこと?何で今私バイクに乗せられているの?」 

提督「だからお前ご所望の夜戦装備だ。なかなか様になってるぞ」

川内「これと夜戦がどう繋がるのか、さっぱり分からないんだけど……」

提督「だから、俺と夕張が普段やっていることを体験してもらう為さ」

川内「???」


132: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:09:30.12 ID:vFMI5Ywl0

提督「夕張のクルマは今修復中で出せないから、代わりにそのNSRに乗ってもらって、川内にも体験してもらおうという俺の粋な計らい」

川内「ええと……これはアレなの?所謂走り屋ってヤツ?」

提督「今あんまりその言葉使わない気もするが、まあそうなるな」

川内「で、たまに提督と夕張が出かけていたのは、峠を走り回る為?」

夕張「基本は都高だけど、たまに行くわね」

川内「つまり、夜戦じゃない……?」

提督「ある意味夜戦だけどな」

夕張「間違ってはいないですね」

川内「………」

川内「騙したなあぁっ!!!」

133: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:17:20.37 ID:vFMI5Ywl0

提督「騙したも何も、お前が勘違いしてただけだろうに」タバコスパー

夕張「皆知ってると思ったんだけど、アンタといい青葉といい知らない子もいるみたいだけど」

提・夕「ねー?」

川内「何か腹立つ!特に提督!いい歳して何が『ねー?』だよ!」

提督「人は誰でも平等に歳を取るものさ。特にハタチ越えたらあっという間だよ」

夕張「あんまり怒ると肌荒れるわよ?アンタは只でさえ夜型なんだから」

提督「夜な夜な走り回っているお前も変わらないだろ」

夕張「そこが悩みというか、ジレンマなんですよね。お肌の曲がり角も実は20歳位から始まるらしいし」

川内「ムキー!私まだピチピチの十代だもん!那珂程じゃなくても多少は気使ってるし!」

提督「十代がピチピチて」

夕張「ちゃんと気にしている辺りは川内も単なる夜戦馬鹿じゃないんですね」

川内「うぅー……っ」

川内「何なら触る!?触って確かめる!?見てこの肌の輝き!」ヌギヌギ

夕張「止めなさい馬鹿!」

134: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:21:47.59 ID:vFMI5Ywl0

5分後……

川内「取り乱しました」

提督「落ち着いて何よりだ」

夕張「け、軽巡の中じゃアンタが一番錬度高いんだから、暴れられると困るのよ……」ゼーゼー

提督「それでも被害を出さずキッチリ止めたのは、常日頃の鍛錬の賜物だな」

夕張「どうも……」ハーハー

提督「でも、本人同意の上で川内の肌に触れられるチャンスだったのに……惜しいことをした」チェッ

夕張「なんだとこの野郎」

提督「悪ノリが過ぎたな。で、どうする川内?」

川内「何が?」

提督「いや、お前が望んでいた夜戦ではないのは分かってもらえたわけだし、今日はお開きにするか?」

川内「うーん……確かにそうだけど。ねえ、このバイクって私が乗ってもいいの?」

夕張「元は提督がたまたま見つけて、盆栽にでもしようと思ってたみたいだから、アンタが乗っていても別にいいんじゃない?」

川内「盆栽?植えるの?」

夕張「盆栽みたいに、自分で手を入れて飾り物にすることね」

提督「2ストってあんまり乗ったことないから怖いんだよ」

川内「へー……」

135: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:29:59.74 ID:vFMI5Ywl0

夕張「ただでさえ貴重なレーサーレプリカだから気持ちは分からなくもないけどね」

提督「おうよ。国内で2ストが絶滅した今、こんな刺激的なモノは二度と出ないだろう」

夕張「でも走る為のバイクなんだから、乗らなきゃ勿体無いわ」

川内「うーん……二輪の講習は訓練生時代に受けたから、一応乗れるんだよね」

提督「え?そんな講習あったの?」

夕張「有事の際、陸での移動手段として運転講習が組み込まれていました」

提督「マジか」

夕張「大型は乗れませんけど、免許もありますよ」

川内「折角貰えるんなら、貰っちゃおうかな」

提督「誰もあげるとは 夕張「決まりね!今日からそのNSRはアナタのモノよ!」

川内「わーい!やったー!」

提督「それ、100万近くしたんだけど……」

夕張「あら?あの子の顔見ても断れます?」

川内 キラキラ

提督「無理」

夕張「でしょ?」

川内「ねえ!これから出かけようよ!」

136: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:36:35.23 ID:vFMI5Ywl0

Hakone

提督「ということでHakoneにやって来た」

川内 フンス

提督「ここまでそこそこの距離があったけど、運転には慣れたか?」

川内「そうだなぁ……最初は戸惑ったけど、一定の回転数以下に落とさなければ良いんだね」

提督「2ストはパワーバンドに入った途端別次元の加速だからな。俺はその感覚に慣れなくて未だに怖い」

夕張「それが楽しいんじゃないですか」

提督「クルマも二輪も全域フラットな特性の方が乗りやすくて楽だ」

川内「じゃあ提督は、それが弱点だと思うの?」

提督「言い方を変えれば、な」

川内「でもさー、それを分かっているんだったらそれに合わせればいいだけじゃない?」

提督「ぬ?」

川内「その特性を理解してるんだったら、別に弱点っていう風にはならないと思うけどなぁ」

提督「ぬおっ!乗り始めて小一時間程度の娘っこのクセに、鋭いことを」

夕張「なかなかの着眼点ね」

提督「……ま、まあこんな所で立ち話してもなんだしな。早速上ってみようか」

川内「オー!」

「Hey!ちょーっと待つデース!」

137: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:43:58.69 ID:vFMI5Ywl0

提督「このパターンは……」

夕張「昨日の青葉と同じですね」

提督「でも今日は居ないぞ」

夕張「湾岸にチャリで行こうとしてたらしいじゃないですか」

提督「時雨に酸素魚雷ぶち込まれてドッグ行きだ」

夕張「何それ怖い」

「ゴチャゴチャウルサイですネー!シャラップ!」

提督「ところでさ、このカタコトな口調って……」

夕張「どう考えても、あの鎮守府の……」

川内「誰だ!姿を見せろ!」

ライトピカーッ!

提督「うおっ眩し」

夕張「なにアレ」

川内「クッ……照明弾!?」

提督「よく見ろ、クルマのヘッドライトだ」

夕張「四台分ですね」

138: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:47:43.23 ID:vFMI5Ywl0

「アナタ達ですネー!最近この辺りを荒らしているというのは!」カーン

川内「あ!武器持ってる!ヤる気!?」

提督「何で角材持ってるのあの人」

夕張「というか何この茶番」

川内「誰だ!」


「一号!金剛!」

「二号!比叡!」

「さ、三号!榛名です!」

「四号!霧島!」


四人「我ら、金剛レーシング!」ビシィッ


提督「 」

夕張「 」

川内「こ、金剛レーシング!?」

139: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:52:18.75 ID:vFMI5Ywl0

コンゴウレーシングダ!
ココイラデハトップトウワサノアノ!?
キャーステキー!
バーニングラーブ!

提督「い、いつの間にギャラリーが!?」

夕張「私帰ってもいいですか?提督は川内とタンデムして帰って来てください」

提督「置いてかないで。あとレーレプでニケツは無理」

川内「それで、その金剛レーシングが何の用よ!?」

金剛「フッフッフッ。ワタシ達はこの辺りではナンバーワンを自負させてもらってマース」

比叡「そして最近、何処の馬の骨とも分からないヤツが暴れ回っていると聞いて!」

霧島「この金剛レーシング!キッチリ落とし前をつけさせるべく立ち上がったのよ!」

三人「ワーッハッハッ!」

提・夕(帰りたい……)

榛名「……あの、金剛お姉さま」

金剛「どしたネ榛名」

榛名「いえ、あちらの方って以前演習でお会いした市川鎮守府の提督さんでは?」

金剛「ワッツ?」

提督「ヘロー、ミス・コンゴー。ハウワイユー?」

金剛「 」

比叡「 」

霧島「 」

金剛「……ち、違うネー。ワタシ、イギリス人と日本人のハーフ、カレンといいマース」

金剛「ホラ、見てくだサーイ。このユニオンジャックのパーカー。可愛いデショー?」

提督「おう、各所で言われているネタを自分から言うのやめーや」

川内「何の話?」

夕張「中の人の話よ」

川内「中?那珂?」

140: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 21:55:28.89 ID:vFMI5Ywl0

提督「お前達はあの鎮守府の金剛姉妹か。ホントに何やってんの?」

金剛「Oh……まさかこんな所で」

比叡「どうしましょう、お姉様」

提督「別に上に報告するとかそうことはしないよ。俺らだって普段同じ様なもんだからな」

夕張「私なんか昨日事故ってますしね」ズーン

金剛「それなら安心デース!」

提督「……で、見たところ金剛はハチロクか」

夕張「赤城さんもFDだったし、流れ的に榛名さんがハチロクに乗っていても別に不思議は……あれ?」

金剛レビン
比叡レビン
榛名86
霧島86

提督「……違う86だな」

霧島「私はBRZです」

提督「ハチロクですらない!」

夕張「せめてそこは統一しましょうよ!」

141: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 22:03:14.03 ID:vFMI5Ywl0

夕張「せめてそこは統一しましょうよ!」

金剛「そんなことより!ワタシ達自慢のマシーンを紹介しまショウ!」

提督「いや、もうホント結構ですから……」

金剛「遠慮しないネー!」


金剛のAE86レビン
前期型のホワイトツートン
4A-G改スーパーチャージャー仕様で推定260馬力
内装は不必要なものは全て取り外され、ロールゲージが張り巡らされたスパルタンな仕様
見た目はノーマル風だが、N2仕様同等の幅まで拡がる純正形状ワイドフェンダーを装備
自慢はオルガン式フットペダルとサイド管

比叡のAE85レビン
ホワイトツートンの後期型
金剛とほぼ同仕様ながらパワーが若干下で推定250馬力
違いはフットペダルとサイド管か否か
見た目には分からないが、実はハチゴーベースなのは内緒の話


提督「思っていた以上に本気仕様だぞコレは」

川内「中がガラガラ」

夕張「金剛さんなんかサイド管ですよ。車検通らないんじゃ……」

金剛「その時は通常のモノに戻していマース」

提督「ご苦労なことで」

144: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/18(月) 22:10:07.79 ID:vFMI5Ywl0

榛名の86
カラーはレッド
ボルトオンターボ仕様で約320馬力
金剛・比叡とは違い内装や快適装備も残っている

霧島のBRZ
カラーはブラック
遠心式スーパーチャージャー仕様で約300馬力
後部座席を取り払いロールバーを装備しているが、榛名同様快適装備は残したまま


提督「民間造船所組は86とBRZか」

夕張「榛名さんはてっきりパンダトレノだとばっかり」

榛名「確かに以前はトレノに乗っていましたが、数ヶ月程前にエンジンブローしまして」

霧島「榛名が今の86に乗り換えたのはつい最近なんですよ」

提督「だから榛名の方は作りかけな感じがするのか」

榛名「トレノの時は5A-G仕様にしていました」

提督「イナゴか。そりゃまた渋い」

川内「イナゴ?バッタ?」

提督「5A-G仕様の排気量だよ。1750ccだからイナゴ」

川内「成る程」


154: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:23:35.18 ID:6wXEgdsR0

提督「さて、金剛達のクルマも見終わったし、俺達は帰らせてもらおうか」

夕張「そうですね」

川内「えーっ?もう帰るのー?」

提督「……いや、なんかもう疲れたし」

夕張「これ以上居ると厄介事に巻き込まれそうですしね」

川内「まだ全然走ってないけど!」

提督「帰ろう。帰ればまた来れるから。な?」

霧島「……『ステルス』に『インターセプター』」メガネクイッ

提・夕 ピクッ

霧島「かつて都高ランナーの間では『迅帝』と並び、誰しも一度は耳にしたと伺っています」

金剛「何のことデスか?」

榛名「『迅帝』なら榛名も聞いたことがあります。800馬力を優に超える青色のGT-Rを操っていた、とか」

155: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:28:22.22 ID:6wXEgdsR0

霧島「ええ。そのモンスター級のRと同等の実力を持ち、環状においては敵は無しと謳われた脅威のワンエイティ」

霧島「互いに壱撃離脱をモットーとしていた為、実際にその姿を見た者はごく僅かとも」

比叡「文字通りの存在だったのね」

霧島「それ故噂だけが独り歩きして、通り名も幾つかあったようですが」

金剛「それで、その話に何の関係があるデスか霧島」

霧島「分かりませんか?『ステルス』と呼ばれたのはブラック、そして『インターセプター』と呼ばれたのはミッドナイトパープル……それぞれカラーリングは違いますが、同一人物と見て間違いないでしょう」

榛名「そのワンエイティって……」

比叡「え、嘘……」

金剛「そう云えば、提督もパープルのワンエイティネー」


156: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:30:39.94 ID:6wXEgdsR0

霧島「しかし、二台は突然姿を消しました。『迅帝』はクルマが炎上する程の大事故を起こし死亡。『インターセプター』も同時期に行方をくらませています」

夕張「死亡って……岩崎さん生きてるじゃないですか」ヒソヒソ

提督「コラ、シーッ!」ヒソヒソ

霧島 メガネキラーン

夕張 ムグッ

提督「ほら見ろ……」

川内「ねえ?さっきから何の話?」

提督「あー……うん。まあ……」

霧島「そちらの提督の過去の話ですよ」

金剛「霧島、それリアリー?」

霧島「あくまで憶測でしたが、その反応を見るにカマ掛けて正解だったようですね」

157: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:37:45.64 ID:6wXEgdsR0

提督「夕張が余計なこと言うから……」

夕張「ごめんなさーい……」

比叡「ということは、ホントに提督がその『インターセプター』なの!?」

榛名「す、スゴい……そんな話が、本当にあるなんて」

霧島「以前演習で伺った際、そのワンエイティを見かけてふと、今の話を思い出したんです」

霧島「何せ十年以上前の事だから、それを知る人も少なく……確たる証拠も見つけていません」

提督「精々都市伝説程度にしか思っていないヤツが殆どだっていうのに、よく調べたなぁ」

霧島「戦況分析が得意なものですから。そのテの話は勝手に舞い込んで来るんですよ」

提督「そういうもんかね……」

158: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:40:41.18 ID:6wXEgdsR0

金剛「ヌッフッフ……そんな話を聞いてしまったら、こちらも黙っていられませんネ!」

提督「ホレ見ろ、完全に面倒臭そうな方向に進んでるぞ」

夕張「冗談じゃねえ」

提督「これは最早避けられないディスティニーなのさ……」

川内「二人して急に何なの、その口調……」

金剛「こちらもナンバーワンとして……そーんなレジェンドな人を目の前にしたら、居ても立ってもいられませんヨ!」

金剛「さあ!ワタシと勝負しt 提督「断る」

金剛「ワッツ!?」

提督「やる気無い」

金剛「 」

提督「まあ、それで退くとは思えんからな。仕方ないから相手してやろう」

提督「夕張が」

夕張「……え?」

159: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:45:32.48 ID:6wXEgdsR0

提督「頑張れよ夕張」

夕張「アイエエエエエ!?ワタシ!?ワタシナンデ!?」

提督「しんどい」

夕張「嫌ですよ!私のはあんあ状態ですし、提督のクルマに乗って来ただけですよ!?」

提督「俺のでやればいい。同じワンエイティだ、苦労はしないだろ」

夕張「……仮に私が乗るとして、金剛さんに勝てますか?」

提督「100パー無理。相手が悪過ぎる」タバコスパー

夕張「尚更拒否します!」

提督「拒否を拒否!」

夕張「ひでぶ」


160: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:48:14.81 ID:6wXEgdsR0

提督「考えてみろ。相手はここらで一番だぞ。どうしたってお前が敵う相手じゃない」

夕張「なら提督が行けばいいじゃないですか」

提督「話は最後まで聞け。その一番の走りを間近で見るチャンスだ」

夕張「そりゃあ、まあ……そうですけど」

提督「しかも、以前から俺のワンエイティを運転してみたかったんだろ?ダブルチャンスだ」

夕張「う……それは……」

提督「これからまた新しくクルマを作り直すんだ。何かの参考になればと思い、俺はあえてお前を推しているんだぞ」

夕張「ああ、もう……分かりました。分かりましたよ。私が乗ればいいんでしょ乗れば」

提督「それでこそ我が艦隊の一員だ!」

夕張「何でこんなことに……」

提督「これが逃れられないディスティニーさ。あ、そうそう」

夕張「……まだ何かあるんですか?」

提督「さっき100パー勝てないって云ったけど、俺のクルマに乗る以上負けは認めない」

夕張「……は?」

提督「繰り返す。負けは認めない」

夕張「慈悲は無いんですか」

161: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:50:21.71 ID:6wXEgdsR0

「おい!金剛さんが出るぞ!」
「マジかよ!相手は誰だ!」
「都高から来たワンエイティだってよ!」
「急げ!見逃すぞ!」

提督「おうおう、スゴい人気だ。流石金剛姉妹」

夕張 ←顔面蒼白

提督「どうした夕張。真っ青だぞ」

夕張「アハハー……ホント、誰かさんのせいで」ナミダメ

提督「心配するな。心細いと思って隣に川内を乗せてやった」

川内 サムズアップ

夕張「ちょ!?仮にも昨日事故ってる人の横に乗せますか!?」

提督「だからこそだ。川内が乗っていることでストッパーになる」

夕張「あとついでに撮影係も兼ねてるからな。川内はウチじゃ一番肝が据わってるし、青葉みたいに気絶することもないだろ」

川内「ま、よろしくねっ」

夕張「もう帰りたい……」

162: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:52:14.19 ID:6wXEgdsR0

提督「いいか夕張。お前は日が浅い分、まだまだ未熟だ」

夕張「今度は何ですか……」

提督「お前は未熟だ。未熟故に勝負所を見誤る」

夕張「ウッ」グサッ

提督「昨日の結果がまさにそれだ。普段は慎重過ぎる位なのに、無理して突っ込めばどうなるか、分かることだろ」

夕張「ウゥッ」グサッ

提督「ま、そもそも相手のペースにノせられていただけなのに、それを自分の実力と勘違いしていた時点でお察しだな。胸は小さいクセに自意識過剰だな」

川内「何それダサい。胸は小さいクセに」

夕張 チーン

川内「夕張轟沈確認。合掌」

提督「南ー無ー」

163: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:54:33.87 ID:6wXEgdsR0

金剛「ヘイヘイ!敵を前にして戦意消失デスかー?情けないデース」

夕張「もう止めて……私のライフはゼロよ……」

提督「ではここでいつもの三か条。峠編復唱開始」

夕張「ひとーつ。センターラインは割らないこと……」

提督「基本中の基本。対向車が来ることを常に想定しろ」

夕張「ひとーつ。スローインファストアウトを心がけること……」

提督「そうだ。出口が見えてからアクセルオンだ」

夕張「ひとーつ。交通ルールを守ること……」

川内「え?最後ウソでしょ?」

提督「おっと。今日は相手が居るから違うな」

夕張「え?何ですか?」

提督「テールライトを追うな。前を見ろ、だ」

164: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 00:56:50.11 ID:6wXEgdsR0

比叡「お姉様!比叡も着いていってよろしいですか!?」

金剛「んー……夕張さんは、イエスorノー?」

夕張「別に構わないですよ……その代わり私を後追いにさせてください」

比叡「よしっ!気合!入れます!」

金剛「比叡は元気だけど、夕張さんはダウナーですネ」

夕張「お気遣いなく……ああ、不幸だわ……」

川内「山城みたいになってる……」


夕張with川内(提督の)180SX vs 金剛レビン&比叡レビン


165: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 01:07:15.06 ID:6wXEgdsR0

榛名「上り一本勝負!二本目の街灯を目安に加速開始のローリングスタートでお願いします!」

金剛「イエーイ!すぐにミラーの点にしてあげますヨー!」

比叡「お姉様が見てる前で無様な真似は出来ない!最初から全力で行きますよ!」

荒々しい咆哮を上げる二台のレビン―


川内「夕張。目標は?」●REC

夕張「谷底に落ちないこと……」フフフ

川内「冗談でもやめてよ」

テンションだだ下がりの夕張……


提督「流石にサイド管はウルサイな」

霧島「比叡姉さんもほぼストレートの直管ですよ」

提督「マジか。それ聞いたら余計やかましく感じる」

傍観者気分の提督―


金剛「さあ!ワタシの実力、見せてあげるネー!」


173: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 21:43:02.33 ID:6wXEgdsR0

夕張「うぅ……」

川内「ちょっといい加減にしなよ。乗ってる私まで不安になるでしょ」

夕張「だって勝てない相手に負けるなって、ただの嫌がらせじゃない……」

川内「ええー?そうは思わないけど」

夕張「他人事だと思って適当なこと言ってるでしょ」ジトー

川内「違う違う。要するに心理戦じゃない?」

夕張「……心理戦?」

川内「クルマはよく分からないけど、勝負事なら私にも分かるよ」

川内「つまりさ、相手に『勝った』と思わせないことが重要でしょ」

夕張「……言ってることが分からないんだけど」

川内「じゃあ夕張はこの場合、どうやったら勝ちなのさ?」

夕張「それは……金剛さん達を抜いてトップでゴール」

川内「でもセンターラインを越えちゃダメなら、抜くのは無理でしょ」

夕張「そうね……登山車線で抜くって方法もあるけど、余程のパワー差がなければ無理だろうし、みすみすそんなチャンスを貰えるとも思えない」

川内「そしたら、夕張の言う条件だと負け確定だね」

夕張「結局ダメじゃない……」


174: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 21:50:09.81 ID:6wXEgdsR0

川内「じゃあ、抜く事が無理でも終始後ろに着けていたら、相手はどう思う?」

夕張「……ん?」

川内「ここって云わば、金剛さん達のホームでしょ?」

川内「戦艦クラスの艦娘は大抵そうだけど、よその話を聞く限り、とりわけ金剛の艤装に適合した人達は自分に絶対の自信を持っていて、あらゆる面で積極的な性格の人が多いみたいでさ」

川内「それでいて、あの金剛さんは走りの実力もトップレベル」

川内「でも、そのホームでよそ者相手に完全に振り切ることが出来なかったら」

川内「そんな性格の金剛さんなら、この事実をどう思うかな?」

夕張「……多分、悔しがるわね」

川内「ピンポーン」

夕張「……うそ?そういうことなの?」

川内「抜けないなら離されなければいい。そしたら、あの二人は内心勝ったとは思わないんじゃない?」

夕張「……川内。アンタただの夜戦馬鹿じゃなかったのね」

川内「ふふん。勝負はココも使わなきゃ」アタマトントン

川内「相手をよく見て状況を把握する。戦闘においての基本でしょ」

夕張「それでもキツいことには変わらないけど……」

川内「そこはそれ。でも、少しは見方が変わったでしょ?」

夕張「そうね……何とか喰らいつかなきゃ!」

175: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 22:13:10.23 ID:6wXEgdsR0

二つ目の街灯を過ぎた途端、金剛・比叡の駆る二台のレビンは猛然と加速を始めた。

上りでの勝負なので一見すれば出力の高い180SXが有利に見える。

しかし、相手は自他共に認めるこの場所トップの実力者二人組。

とりわけ金剛レーシングのリーダー、金剛の速さは頭一つ飛び抜けている。

パワーの差は当然考慮した上で、むしろその程度の要素は彼女にとっては些細なことかも知れない。

川内も語る通り、金剛の性格は云わば情熱的。明るく親しみやすい人当たりで、妹達を含め尊敬の念を集めている。

ドライビングにもその性格は現れており、積極的にガンガン攻めるタイプ。

比叡はそんな金剛仕込みのドラテクで、豪快かつ攻撃的。

どちらも一度波にのってしまえば手が付けられない、凄まじいまでの速さでコースを駆け上がるのだ。

そんな彼女達が駆るAE86もまた、彼女達のスペシャルマシンに仕立てあがっている。

元々1トンを切るAE86に徹底的な軽量化を施し、パワーも推定ながらノーマル比の2倍以上(AE86の馬力表示はグロス値=エンジン単体での計測。現代はネット値=車体搭載時に近い状態での計測。AE86はグロス値で130馬力、ネット値に換算すると約110馬力程度になる)。

ロールケージで張り巡らされた室内は、まさにレーシングカーの様相。

――これで遅いわけがない。

点と点を飛ぶように旋回する様は、研ぎ澄まされた日本刀の如く。

小型な車体のレビンながら、高速戦艦・金剛型の愛機として相応しい圧倒的な戦闘力を有していた。

176: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 22:17:19.31 ID:6wXEgdsR0

夕張「何なのアレ!ホントにハチロク!?」

川内「おーっ!はっやーい!楽しーい!」

夕張「こっちの方が出力が上な分、なんとかついて行けているけど……離されるのは時間の問題だわ……!」

川内「あのハチロクっていうの?漫画とかで有名みたいだけど、実際そんな速いもんなの?」

夕張「まさか。このワンエイティも20年以上前の古いクルマだけど、ハチロクはそれより更に前。もう旧車の域よ」

夕張「今となっては有利な部分は車体の軽さだけ。4A-Gは確かに良いエンジンかもしれないけど、それ以外はほぼ並よ」

川内「でも素人目の私から見ても速いって」

夕張「だから驚いているのよ!」

川内「クルマってあんな動きするんだ……もうワープだね」

夕張「あのコーナリングは反則モノだわ……見た目以上に何か仕込んでいる様ね……」

177: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 22:20:18.81 ID:6wXEgdsR0
麓付近

提督「あの二台……特に金剛のハチロク、リヤの足回りごっそりと変えているだろ」

霧島「よく気が付きましたね。以前金剛姉さんが何処からか廃車のS14を持って来て、リヤメンバーを移植しました」

榛名「比叡お姉様も同じ様なことをしようとしたのですが、あまりに挙動が違い過ぎるからと見送られ、ホーシングの強化程度に留めています」

提督「馬鹿だねえ……そこまでやるかね普通」

霧島「目下の目標として全国制覇を掲げていますから、生半可なモノには乗れないそうです」

榛名「ですが、それ故代償も大きく……」

提督「代償?」

霧島「見ての通り内装はドンガラ状態、快適装備も一切無し。加えて直管の爆音マフラーにSタイヤ……日常生活では到底乗れる代物ではありません」

榛名「その為金剛お姉様も比叡お姉様も、普段の移動手段はオンボロの小型スクーター……」

提督「……うん?」

榛名「しかも半ヘルで二人乗り……」ブワッ

霧島「金剛型の長女・次女ともあろう人が情けない」ハァ

提督「……想像するとシュールだな」

178: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 22:26:02.09 ID:6wXEgdsR0

提督「それにしたって、ハチロクのマルチリンク化なんて最早魔改造じゃねえか」

榛名「お姉様達は、一度決めたらとことん一直線ですから」

霧島「既にハチロクの形をした何かです」

榛名「私と霧島は、そこまで踏み切ることが出来ませんし……流石としか言いようがありません」

提督「で、廃車のシルビア持って来たんだろ?その内4A-G捨ててSR20でも載せるんじゃないのか?」ハハハ

霧島「……どうやらそれも計画してるみたいですね」

榛名「流石に次はナンバー切って、サーキット専用にするとも言っていました」

提督「ハチロク乗るのやめちまえよ、もう」

榛名「でも、提督もワンエイティにかなり拘りがある方だとお見受けしますが」

提督「他のクルマより愛着があるって程度だよ。そこまで拘りがあるわけじゃない」

霧島「ふむ……」

179: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 22:30:24.21 ID:6wXEgdsR0

榛名「どうしたの霧島?」

霧島「成る程、今の提督の発言で一つ確信が得られました」

榛名「確信?」

提督「………」タバコクワエ

霧島「確かに『ステルス』はワンエイティとしては奇跡的な速さを誇っていたのは事実です。これは間違いありません」

霧島「しかし、それにも限界があります。ましてや都高という他に類を見ない特殊なステージです」

霧島「仮に極限までチューニングされたとしても、ワンエイティで800馬力級のGT-Rと肩を並べるというのは、到底不可能だと考えます」

榛名「それはそうだけど……」

霧島「……実は『ステルス』と『インターセプター』の調べを進めている内に、時期によってある食い違いがありました。それは『インターセプター』は色だけでなく、全く別の姿であったと」

榛名「別の姿?」

180: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 22:33:15.67 ID:6wXEgdsR0

提督「回りくどいな……何が言いたい」シュボッ

霧島「真の『インターセプター』は青いBNR32……いいえ、『魔王GT-R』と呼ばれていた」

榛名「魔王……GT-R……」

提督「オイオイ、何だその魔王Rって。大鶴義丹がやってた頃のVシネ版湾岸ミッドナイトか?」

霧島「ええ、名前の由来はまさにそれです。劇中では悪魔のZに代わって主人公が新たに託されたクルマでしたね」

霧島「RB26改2.7LにTD06ツインターボ……ブースト2キロ時には800馬力。これは劇中での設定ではなく実際に同仕様の車両を製作、撮影に使用されていた。90年代においては魔王の名に恥じぬスペックです」

霧島「一方実際に都高に存在した魔王は詳細こそ不明ですが、一説によると800馬力弱。これでも充分以上ですね」

霧島「そんな魔王を従えていたのが、それまで『ステルス』『インターセプター』と呼ばれていた人物……他でもなく提督、貴方です」

181: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 22:36:35.95 ID:6wXEgdsR0

提督「……750」

提督「………2.8L仕様のRX6タービン二機掛けで750馬力」スパー

榛名「……え?」

提督「魔王の仕様だ。全部説明したら夜が明ける」

霧島「否定しないんですね」

提督「……そこまで調べたのには改めて驚かされたが、それも十年以上前だ。昔乗っていたクルマを知られたところで、別にどうってことはないよ」

榛名「確かにそれほどまでのGT-Rなら、ワンエイティでトップレベルだった提督ならば本当に敵無しになりますよ」

提督「ああ。ワンエイティが途端に色褪せたヨ」

霧島「それが何故またワンエイティに?」

提督「言ったろ?愛着があるって。ただそれだけの話だ」

霧島「ですが、それだけが本当の 提督「霧島」

提督「これは俺がまだ一般人だった頃の話だ。軍に入ってからの経歴なら兎も角、これ以上の詮索は不躾だとは思わないか?」

霧島「……出過ぎた真似をして、申し訳ありません」

提督「いや、こちらこそスマンな。あのクルマにはどうにも良い思い出が無くてな……出来れば忘れたかったんだ」

182: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/20(水) 22:43:51.30 ID:6wXEgdsR0

提督「調べの通り、迅帝とは交友関係があってな」

提督「『ステルス』は黒くて目立たないからっていつの間にか勝手に呼び始められたけど、『インターセプター』は自分から名乗ってたんだ」

提督「考えたのはアイツだけどな。隠密偵察機よりも迎撃機の方が似合うってね」

提督「その友人が大事故を起こした。それも目の前でな」

提督「ま、今じゃアイツもピンピンしているが、名が知られて粋がっていた小僧からすれば、ショッキングな出来事には違いない」

提督「次は自分がそうなるかもしれない……そう考えたら、とてもじゃないが正気で居られなかった。心底恐怖した俺はやがてRを手放し、都高を降りた」

提督「それから歳を取ってある程度心に余裕が出来た。クルマは嫌いになれなかったし、今度は無理しない程度に……どうせなら、青春時代を共に駆け抜けた思い出のクルマにもう一度乗ろうと」

提督「それが今のワンエイティってわけ。どうだ、よくあるオッサンの小話だろ?」

榛名「い、いえ……」

提督「長くなったナ。どうだ霧島、これで納得してもらえたか?」

霧島「ええ……」

提督「それなら良かった」ニコ

霧島「………」

提督「それよりも今走っている連中を気にしようぜ?今どうなってるかな」

189: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:04:16.41 ID:I+jvhBBR0

小ネタ 湾岸の青葉さん


「フッフッフッ……潜入成功」

青葉「やって来ました湾岸線!いやあ、それっぽいクルマも多いですねぇ」

青葉「古鷹さんと最上さんには全力で止められましたが、やはり知ってしまった以上は自分の目で!五感で!取材するべきです」

青葉「そういえば来る途中、料金所から大量の白煙が出ていたけど……あれは何だったのでしょう?火事ではないみたいだし、それに何だかゴムの焼き切れる匂いがしたけど」

青葉「後で映像を確認してみましょう……何か映っているかも」

青葉「さて、ただパーキングに来ただけでは何の意味もありません。早速取材を受けてくれそうな人を探さないと!」

青葉「お、あの人なんか良さそうですね。見た目は中々の爽やかなイケメンさんです」

青葉「スミマセーン!そこのお兄さん、ちょっとお時間よろしいですか?」

「ん?僕のこと?」

青葉「そうです!ずばり聞きますがお兄さんは走り屋の人ですか!?」

「一応、そうなるかな……最近はあまり来ないけどね」

青葉「ビンゴ!実は青葉、走り屋さん達の取材をしたくてですね。記念すべき第一号として、是非お兄さんを取材させていただければと」

「走り屋の取材なんて珍しいね。で、僕はどうすればいいかな?」

青葉「そうですね。まずはお兄さんのクルマを拝見させてください」

「いいよ。ちょうどそこに停めてある青いのが僕のクルマだよ」

190: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:08:18.30 ID:I+jvhBBR0

青葉「これは……インプレッサですね?それも最新型!」

「んー、ちょっと惜しい。これはインプレッサじゃなくて、WRXっモデルだね」

青葉「それは失礼しました。まだまだ勉強不足ですね」

「ベースはインプレッサだから、間違いないではないけどね。正直僕も人に説明する時にはインプって言っちゃうし、他の人もそう呼んでいるんじゃないかな」

青葉「なるほどぉ。それにしてもカッコいいですね。何か手を入れられているんですか?」

「車高落としてブーストアップをした位だよ。今のクルマってこれだけでも相当速いから驚いたよ」

青葉「以前はどのようなクルマに?」

「インプレッサはGDB……二世代前の丸目から順に乗り継いで、これで三台目。その前はサンヨンのRに乗っていたよ。Rも速かったけど、インプは軽くてよく曲がってくれるから、操る楽しさみたいなのはこちらが上かな」

「あとV35のクーペにも乗っていたけど、パワーがあってもちょっと重かったね。快適だけどさ(笑)」

青葉「ほほう。そういえば、元レーサーの土屋圭市氏が90年代当時の国産各メーカーのスポーツカーを試乗した際に、初代インプレッサでドリフトしながら『楽しーい!GT-R要らなーい!』とはしゃいでいたことがありましたね。動画サイトで見ました」

「それ僕も見た。当時とはモデルが違うとはいえ、乗り継いでみて気持ちが分かったヨ」

青葉「いやあ、しかしカッコいいですねえ。このリヤバンパーに小さく貼られた『壱・撃・離・脱』のステッカー……も?」

「どうかしたかい?」

青葉「あ、いえ。おかまいなく」

青葉(この言葉、最近何処かで聞きましたね。はて?)

191: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:10:05.56 ID:I+jvhBBR0

青葉「それよりお兄さん、折り入ってお願いがあります。よろしければ青葉を横に乗せていただいて、走行シーンを撮影させてもらうことは可能でしょうか?」

「本当に変わってるね、君。そんなお願いされるの初めてだ」

青葉「画を集めるのが好きなんです。趣味なんです。勿論決して悪用したり、お兄さんに害を与えることはしません。何なら誓約書も用意してありますよ!」ピラ

「そこまでしなくても、こんな可愛い子のお願いなら喜んで受けさせてもらうよ。じゃあ、この辺を軽く回る感じでいいかな?」

青葉「本当ですか!?有難うございます!」

青葉「そういえばお兄さんのお名前を伺っていませんね」

「そういえばそうだね。君は……青葉ちゃんでいいのかな?」

青葉「はい!この近くの鎮守府に所属する艦娘です!」

「艦娘……もしかして、提督の所の?」

青葉「おや?提督をご存知なのですか?」

「彼とは十年来の付き合いがあるよ。昔は一緒に無茶もしたもんだ」

青葉「ほえー……まさかこんな形で提督のご友人に会えるとは。世間は狭いもんですねえ」ハッ

192: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:11:54.98 ID:I+jvhBBR0

>>58回想

提督「そうだっけ?前に俺の友達の岩崎に乗せてもらったことあるじゃないか」

夕張「私の意識が速攻で壱・撃・離・脱したからノーカンです!」

青葉「なんだ、夕張さんも気絶してたんですね」プッ

提督「アイツは色々キレ過ぎだからなぁ」

回想終了


青葉 ダラダラ

「そういえば、ちょっと前にも艦娘……夕張ちゃんだっけ。会ったことがあるよ。彼女、ワンエイティぶつけちゃったらしいけど、大丈夫だった?」

青葉「え、ええ……幸い怪我などは無かったのですが、クルマ以上に本人の方が凹んでいます」

「そうだよねえ。僕も昔はよくクルマをぶつけたりして……その度に泣きたくなったよ」シミジミ

青葉「あ、あははー……」

「さて、じゃあ早速行こうか。乗って乗って」

青葉「ところで……お兄さんのお名前は……」

「そうだったね。危うく忘れるところだった」


迅帝「僕は岩崎。宜しくね、青葉ちゃん」

青葉「 」

193: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:17:12.57 ID:I+jvhBBR0

ホンペンダヨー


夕張「あーっもう!コーナー抜ける度にジリジリ離されてる!」

川内「あはは、夕張が焦ってるー」

夕張「アンタは何でそんな楽しそうなのよ!」

川内「こんな非現実なスピード感、つまらないワケないっしょ。艤装もこれ位のスピード出たら楽しいのに」

夕張「戦闘の前に身体が吹っ飛ばされるわ!」

川内「というかさ、何でそんな焦ってるの?」

夕張「このままじゃ負け確定だからよ!今あんまり話しかけないで!」

川内「いや、負けたところで別に命取られるんじゃないんだからさ。気にしなくていいと思うけど?」

夕張「……提督の性格を考えてみなさい」

夕張「ただでさえ昨日は事故ったのに、今日提督のクルマで負けたりしたら……一週間位は延々とバカにし続けてくるわ」

川内「まあ、そうなるね」

夕張「あと、三式爆雷と三式ソナーを駆逐・軽巡全員分一晩で作れとか長10センチ砲作れとかもあったわ。次は53センチ艦首魚雷でも作れとか言い出すんじゃ……」

川内「それは酷い」

194: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:21:23.55 ID:I+jvhBBR0

夕張「……っと、無駄話してたら余計に離される!」

川内「あ、そうそう。私気になってたんだけどさー」

夕張「今度は何!?」

川内「出る前に提督が最後に言ってた『テールライトを追うな。前を見ろ』ってどういう意味かな」

川内「運転してたら前を見るなんて当たり前でしょ?何でわざわざそんなこと言ったのかなーってさ」

夕張「そういえばそんなこと言ってたわね……あまり気にしてなかった」

川内「提督って普段は適当だけど、こういう事に関しては意味の無いことってあまり言わないでしょ」

夕張「うん……まあ……そうだっけ?」

川内「とにかく、現状打破するヒントがあるかもよ?」

夕張「うーん……」

195: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:27:37.15 ID:I+jvhBBR0

金剛「ちゃんと着いて来ている。意外とデきるみたいネ」

比叡『お姉様!悠長に構えていると追いつかれますよ!』デンワゴシ

金剛「何も焦る必要ないデスよ比叡。ジリ貧なのはアチラの方ネ」

金剛「それにあの子のテクニックというより、あのワンエイティの性能に助けてもらっている……そんな風に見えるネ」

比叡『流石お姉様!バトルの最中でも素晴らしい観察眼です!』

金剛「それでも油断はノーよ比叡。ワタシ達はパワーで劣る以上、少しミスでワンチャンありマスよ」

比叡『お姉様!ワンチャンは英語ではないと思います!』

金剛「そんな事気にする暇があるなら集中するネ比叡」

比叡『ハイ!スミマセン!』

196: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:29:24.78 ID:I+jvhBBR0

金剛(それにしても……)

金剛(あのワンエイティ、いくらオーナーではない夕張が乗っているからとはいえ、あの程度なの?)

金剛(最も、彼女自身のテクニックは別に悪くない。充分評価出来るレベル)

金剛(それでも、どうにも腑に落ちない)

金剛(仮にも難関とされるループウェイで一時代を築いたマシン。確かに完成度は高いようだけど、それでも常識の範囲内。特に際立った『何か』を感じない)

金剛(どれだけ提督の腕が立つかは知らないけど、あのマシンでトップになるには難しい。実は何か隠して……いや、意図的に抑えている?)

金剛「比叡」

比叡『何でしょうかお姉様』

金剛「より注意深く後ろの動きを見てほしいヨ。変わったことがあればすぐフォローするネ。OK?」

比叡『了解です!任せてください!』

金剛(杞憂であればいいけど、このままイージーに終わるのもつまらない)

金剛(さあ、夕張さん。私をもっと楽しませてくれることが出来るかしら?)

197: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:31:48.50 ID:I+jvhBBR0

夕張(確かに提督の言葉も引っかかるけど、それ以上にこのワンエイティが気になる)

夕張(エンジンは私のより全然力があるし、足もしなやかに動く。これだけパワーがあるのに動きが破綻することもない)

夕張(すごく乗りやすい。本当によく出来ている)

夕張(その反面……何か違和感があるのよね)

夕張(思えばこのクルマ、結構大きめのタービンが組んであった。提督はもっと小さいのに変えたがってたけど)

夕張(どうも、タービンの大きさに対してブースト圧が低く設定されている気がする)

夕張(そういえば、このセンターコンソールに付いてるキルスイッチは何に使うのかしら?聞いた事無かったな)

川内「どしたの夕張。何か考え事?」

夕張「まあ、ちょっと気になることが」

川内「ダメだよ集中しなきゃ。また少し差が開いてるよ」

夕張「それはそうだけど……というか、アンタはホント平然としてるわね」

アッサリーシッジミーハマグリサーン♪

川内「あ、提督から着信だ」

夕張「何よ今の歌……」

198: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:35:04.43 ID:I+jvhBBR0

川内「こちら川内です。こんな時にどうしたの?」

川内「今?少しずつ離されてるよ。うん。分かった」

夕張「なに?冷やかし!?」

川内「提督が夕張に伝えたいことがあるって。スピーカーに切り替えるよ」

提督『おう夕張。今どの辺だ?』

夕張「中腹を過ぎた位です!というか、こんな時に電話なんか掛けて来ないでよ!用件は何ですか!?」

提督『じゃあ簡潔に言うけど、そこにキルスイッチがあるじゃろ?』

夕張「あ、ちょうど気になってたんですよ。コレ何ですか?」

提督『そのクルマの隠し機能♪それをONにして、シフトノブのとこのフタを開けて、中にあるスイッチを押せば起動だ』

夕張「何この無駄なギミック……」カチッパカッ

川内「スゲー!カッケー!」

提督『ワハハ、川内はコレの良さを分かってくれたか。ところで、さっきの三か条ちゃんと憶えてるか?特に最後』

夕張「『テールを追うな。前を見ろ』ですか。何だったんですかアレ」

提督『目が良くなるオマジナイかナ。そのボタン押した後は特に意識しろ』

夕張「どういうことですか……じゃあ、押しますよ」ポチッ

提督『最後に一つ……振り落とされるなよ?』プツッツーツー

ブースト圧1.2キロ→1.7キロ

夕張「……は?え――っ」

川内「~~っ!??」

199: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/22(金) 09:40:58.79 ID:I+jvhBBR0

ピッ

提督「やれやれ、アイツ上手く使えるかな」

榛名「あの、何が起きるんですか?」

提督「あのワンエイティね、普段の状態だと半分位しかエンジンを使い切れてないのヨ」

榛名「半分……ですか?」

提督「まあ半分ってのは言い過ぎだけど、実際乗ると全然違うからなぁ」

霧島「つまり……意図的に押さえていた性能を開放する、ということですか」

提督「そういうこと。あのクルマの場合、ブースト圧の増加とそれ用に合わせた燃調セッティングにECUのマッピングを変更だ」

榛名「それで、どれ位の差が?」

提督「んー。普段が400ちょいなんだけど、確か500馬力超える位は出たかなぁ」

榛名「ご……ッ!?」

提督「だって東名の2.2LコンプリートSRにT67だぜ?この組み合わせでパワーが出ない方がおかしい」

霧島「そこは流石に、かつて『インターセプター』と呼ばれていたワンエイティ……と云ったところですか」

提督「俺の名が売れたのは、Rじゃなくてワンエイティのおかげだ。あの場所を走る以上パワーはある程度必要になる」

提督「まあ、当時とは違うクルマだけどな」

提督「エンジンは買った方が安いからってコンプリートエンジンにして、あとは手元に残っていたパーツを使って組んだ。差異はあれど仕様はほぼ一緒だヨ」


207: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/23(土) 00:18:35.62 ID:DGqOWpUO0

夕張 ←エンジン特性が急に変わって驚いてる

川内 ←体感する加速Gが強くなって驚いてる

夕張「速い速い速い!目が追いつかないって!」

川内「おぅ……」

夕張「何なのよコレ!もう違うクルマじゃない!」

川内「アッハハー……マジで凄いや」

左コーナー出口、アクセルオンで滑り始めるリヤタイヤ――

夕張「――ッ!」

まるっきり性格が変わった180SXを必死で乗りこなそうとする夕張。

右に左に振られる車体を何とかコントロールしていく。

夕張「……3速からホイールスピンってバカじゃないの!?どれだけパワー出てるのよコレ!」

川内「ハラショー。コイツは力を感じる……」

夕張「無理しておどけなくていいから!」

川内「いや……どうなってるのコレ」

夕張「さっきのボタン押したらブーストアップしたのよ!多分これが本来のこの子の姿ってことでしょ!」

川内「……行ける?」

夕張「戻し方分からないし、やるだけやってみせる」

川内「無理しないでよ?ホントに谷底なんて嫌だからね」

夕張「わ、私だって嫌よそんなの!」

208: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/23(土) 00:20:42.66 ID:DGqOWpUO0

比叡『お姉様!ワンエイティの挙動が不安定になっています!』

金剛「Mu……オーケー、そのまま様子を見ててネ」

比叡『何かトラブルでしょうか?』

金剛「それは分からないケド、何か動きがあったと見て間違いないヨ」

比叡『タイヤの熱ダレやモチベーションの低下も考えられますが』

金剛「確かに有り得るネ。バット、もう終盤……何か仕掛けてくる可能性も充分ありマス」

比叡『用心するに越した事はない、ということですね!』

金剛「イエス。引き続き警戒をお願いしマス」

比叡『分っかりました!』

金剛(さて、どうなりますかね……)

金剛(比叡の言う通り、何かトラブルがあったと考えるのが普通だわ)

金剛(しかし……私の中で何かが告げている。まだ終わりじゃない、と)

金剛(まだまだ足りないの……もっと、もっとよ!)

209: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/23(土) 00:22:46.04 ID:DGqOWpUO0

バトルは終盤に差し掛かっていた。

当初は予期せぬ出力特性に翻弄されていた夕張だが、ある程度落ち着きを取り戻し、徐々にこの180SXを理解し始める。

自らが所有する180SXと、同じ車種だとは到底思えない。

何から何まで似ても似つかないのだ。

それは同時に今後自分のクルマを仕上げていく上で、大いなる指針になったと後に彼女は振り返る。

大型タービンを軽々と回す2.2Lの強靭なエンジン。

意のままに無駄なく動く完成されたサスペンション。

それらに対して若干柔いが、芯がブレることなく入力を受け止めるボディ。

どれ一つとっても、夕張にとって新鮮だった。

夕張(乗り方が分かってきた……この子は乗り手次第で、善にも悪にもなる)

210: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/23(土) 00:27:11.89 ID:DGqOWpUO0

夕張(決して誤魔化さず、きちんと乗れば想像以上に応えてくれる……いや、この子が応えているのか、私が導かれているのか)

夕張(だからこそ、少しでも楽をしようとすれば、途端に牙を向く)

夕張(アクセル、ブレーキ、ハンドル……一つ一つの動作で、この子の意を汲み取って)

夕張(捻じ伏せるのではなく理解する。これが『クルマとの対話』ってことかしらね)

夕張(ワンエイティでも、ここまで出来るんだ……)

夕張は、このクルマに惹かれていた。

そして同時に、これは自分と愛機の一つの可能性でもある――と

川内「追いついてるよ!やるじゃん!」

夕張「まだ気は抜けない……最後まで分からないって!」

夕張(終わりも近い……お願いっ!力を貸して!)

211: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/23(土) 00:29:34.49 ID:DGqOWpUO0

比叡『………!?お姉様!ワンエイティが近付いてきています!』

金剛「やはり来たネ……随分待たせてくれたじゃないデスか」

比叡『いずれ抑えることが出来なくなる……しかし、このまま何とか逃げ切って 金剛「退きなさい、比叡」

比叡『……お姉様?何を?』

金剛「ソーリーね比叡……ちょっと1on1でバトルしてみたくなったヨ」

比叡『……私ならまだイケます!だからそんなこと……』

金剛「違うデス比叡。貴方のせいじゃない……」

比叡『ならば、どういう……!?』

金剛「私がね、抑えられないのよ。この昂ぶる感情を、この湧き上がる高揚感を。血肉が沸騰しそうで……ゾクゾクしてくるの(英語)」

比叡『お姉様……?』

金剛「自分でもおかしいとは思うのよ?でも、こうなってしまってはもう止められないし、止まらない。私の性格を分かっているでしょ?欲しいものはどんな手段でも手に入れる。徹底的にやらないと気が済まないの」

金剛「強欲なの、とても……こ。れが私の背負ったカルマなのかもね(英語)」クスクス

比叡『ですが……』

金剛「……これは私自身の問題なの。良い子だから、一歩退いてもらえる?(英語)」

比叡『分かり……ました』

金剛「サンクス。後でとっておきの紅茶を入れてあげるネー」

比叡『お姉様……どうかご武運を!』


川内「左ウインカー……?比叡さん、どうしたんだろ」

夕張「道を譲ってくれるみたいね……」

川内「何かあったのかな?」

夕張「トラブルでもなさそうだけど……譲ってくれるなら、遠慮なく前に出ましょ!」

212: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/23(土) 00:32:40.74 ID:DGqOWpUO0

麓付近

霧島「しかし、ちょっと心配になるわね……」

榛名「そうね。何も起こらなければいいけど……」

提督「何の話だ?」

榛名「実は金剛お姉様、相手が強ければ強い程燃えてくるタイプなのですが……」

霧島「先程の電話のせいで、火に油を注いでしまっていないかと心配で」

提督「要は負けず嫌いなんだろ?別に珍しくもない」

榛名「それが普通の負けず嫌いなら良いのですが……」

霧島「良くも悪くも、金剛という人物は快活で積極的。非常にエネルギッシュかつアグレッシブな女性です」

霧島「しかし裏を返せば熾烈とも言えます。まるで全てを焼き尽くす業火のように……火に油とは、まさにこのことです」

榛名「かつて艦だった頃は『鬼の山城』と並び『地獄の金剛』と謳われ恐れられていました。一度はお聞きになられたことがあるのでは?」

提督「戦艦は出撃が無い分、乗組員への訓練が半端じゃなかったらしいな。というか訓練というよりただのシゴキ、イジメみたいなもんだったと」

榛名「金剛お姉様の名誉の為にも申し上げますが、勿論普段その様なことはありませんよ?」

榛名「いつも相手を気遣い、時には一歩退いて相手を立てることも出来る、素敵な女性です!」

霧島「ただ自分が興味有る事には一切の妥協無く徹底的に熱を入れるものですから……」

提督「まあ、あんな思い切りのいいハチロク乗ってる時点で察しがつくナ」

226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 11:11:01.33 ID:HkVD8Ika0


――バトルは最終局面に突入する。

提督の180SX「インターセプター」に順応し、確実に差を詰めてきた夕張に対して、金剛は突如比叡を下げて一対一の真っ向勝負を仕掛けた。

勝負の流れは夕張に向きつつある。

それでも金剛は不敵な笑みを浮かべていた。

このステージは高速コーナーが主体で道幅も広く、スピードレンジは周辺のステージと比べても圧倒的に高い。

そんな環境でも、自らの名前を用いた金剛レーシングを率いる金剛は無類の強さを誇っている。

一見すれば不利とされる旧式のAE86をベースに、レーシングカーさながらのボディワークにS14のリヤメンバー移植と、ストリートマシンとしては過激なメイキングを施し、どんなに最新鋭の車種だろうと、どんなにパワーがある相手だろうと難無く蹴散らしてきた。

勿論、金剛自身の驚異的なドライビングテクニックが重なった上での結果であることも付け加えておこう。

特にブレーキングの技術と思い切りの良いコーナーへの進入は、後に川内が撮影した映像を確認した提督が「同じクルマでも俺にはムリ」と圧倒されたほどだ。

「あの場所にはハチロクの皮を被った魔王が住んでいる」と冗談交じりに揶揄されているのも納得出来る(全くの出鱈目でもないが)。

常に格上の車種を手玉にしてきた彼女にとって、所詮2L級のターボ車を相手にするのはいつもの日常……ごく当たり前のプロセスなのだ。

227: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 11:13:05.83 ID:HkVD8Ika0

では、今回はどうだろうか。

提督本人が相手をしていたら状況はまた変化していただろう。

しかし、実際に乗り込んでいるのは彼の部下であり、自分と同じ艦娘の夕張だ。

彼女も同じく180SXに乗り、提督の手解きを受けながら腕を磨いてはいるものの、経験が浅く際立った技術を持っているわけでもない。

金剛からすれば、いつも軽くあしらう凡庸な連中と然したる差は無い。

ましてや他人のクルマで、しかも助手席に同僚の艦娘・川内を乗せているのだ。

いくら都高で「忘れられた伝説」の逸話を持つ180SXであっても、自分が負ける要素は無い。そう考えていた。

しかし現に、夕張が背後に迫っているのだ。

金剛「いい。いいネ……最高ヨこのバトル!」

彼女の熱量はピークに達していた。

自らが追い込まれている状況でも尚、沸き立つ感情を曝け出す。

それは走りにも表れ、より攻めの姿勢となりペースが上がる。

追随する夕張達の眼に映るのはレビンのテールランプが残す一閃の赤い光だけだった。

逃げる、逃げる、逃げる。

228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 11:14:37.66 ID:HkVD8Ika0

夕張「ムリムリムリムリ!」

川内「流石に向こうも本気だねえ……追いつきそうで追いつかない」

夕張「何であんな速度で平気なのよ!?」

川内「でも、このままじゃ負けちゃうよ?」

夕張「それは嫌……ってうわ!?もうあんなトコに!?」

川内「残りあとどれ位?」

夕張「このコーナー含めてもあと数箇所!最後に短いストレートで終わり!」

川内「ふーん……それにしても、こんな暗い所をよくこんな速度で走れるよね」

夕張「夜戦馬鹿のアンタがそんなこと言っても説得力無いっての」

川内「いやいや、感覚が全然違うもん。ホラ、夜戦って風の匂いや波の立ち方とか、兎に角五感フルに働かせて相手の状況を察知したりするじゃん?」

川内「でも今は助手席に座って撮影しているだけだからね。自分で運転しているならまた違う感覚だろうけど、さっきから金剛さんのテールランプしか見えなくてこう……視界が狭まる感じがして怖いもん」

夕張「……あっ」

川内「ん?どしたの?」

夕張「提督の言ってたことって、そういうことだったんだ……」

川内「え?何が?」

夕張「『テールを見るな、前を見ろ』よ!それどころじゃなくなって意味を考えてなかったけど!」

夕張「ただでさえ暗い峠道をこの速度で走るのよ?自ずと視界が狭まる状況で前のテールランプばかりを見ていたら……!」

川内「見えるものも余計に見えなくなるってことね」

夕張「そういうこと!それに相手との距離を意識し過ぎて焦ってミスをする可能性も高くなる!」

川内「でも今更分かっても遅くない?もう終わりでしょ?」

夕張「意味は分からなくても実践していたから問題無し!」

川内「あ、そう……」

229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 11:17:53.46 ID:HkVD8Ika0

金剛「このまま終わってしまうのが勿体無いデス……最高の夜だったネ」

金剛「でもバトルはバトル!これでフィニッシュするネー!」

金剛「このコーナーでラスト!踏み抜くヨ!」

「おい!来たぞ!」
「どっちが前だ!?」
「金剛さんだ!」
「速えぇ……あれホントにハチロクか!?」
「コウチャガノミタイネー」

コーナーを抜け、猛然と加速するレビン。少し遅れて180SXが続く。

二台はゴール手前の短いストレートに突入……パワー差があっても追いつくには厳しい距離だ。

川内「これが最後のストレート?短っ!」

夕張「ダメ……届かないっ」

誰しもが金剛の勝利を確信し、夕張も自身の敗北を悟った。

あの提督、今度は何を作れと言い始めるのだろうか……そこまでシミュレートしていた。

金剛「アイ!アム!ザ!ゴーッッッド!!」


――ボフンッ!


夕張「へ?」

川内「なに?爆発?」

夕張「私じゃないよね……?」

川内「うわっ、あれ下から火噴いてない?」


金剛「NOOOOOOOOOOOO!!!!!??」


山頂付近に、エンジン以上の音量で金剛の絶叫が響いた。

230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 11:19:56.41 ID:HkVD8Ika0

ゴール地点

霧島「一体何回目だと思ってるんですか!エンジンだってタダじゃないんですよ!?」

金剛 シュン

霧島「だから毎回熱くなり過ぎるなと毎回毎回ッ!」

金剛「霧島ヨぉ……声が聞こえるんデース」

霧島「何ですか?言い分があるならどうぞ」

金剛「……頭の中で『もっと熱くなれよぉ』って声が聞こえるんデース」

霧島 プチッ

霧島「姉さんの頭には炎の妖精でも住んでいるんですか!?それともディアブロですか!?難波先輩ですか!?そもそも貴女は今怒られている自覚はあるんですかぁ!?」グリグリ

金剛「ノー!ふざけた事は謝るからグリグリはノーよ!」

霧島「そんなにお望みならば横浜の海にダイブして頭を冷やしてもらいましょうか!?」グリグリ

金剛「イタイイタイ!ちょ、やめアッー!」

比叡「ヒエー!霧島、ストップストップ!」


231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 11:22:52.91 ID:HkVD8Ika0
ギャーギャー

夕張「この幕切れは予想外だったわ……」

川内「試合に勝って勝負に負けたって感じだね。あ、コーラ買ったけど飲みゅ?」クピクピ

夕張「頂くわ。あと瑞鳳の真似のつもりなら止めなさい。アンタがやるとキモい」

川内「………」クピクピ

夕張「なに?何見てんのよ」

川内「キャハッ☆」

夕張「決めた。はっ倒す」

提督「おう、お疲れ二人とも」

川内「あ、提督だ」

夕張「お疲れ様です。どうやって来たんですか?」

提督「榛名の86に乗せてもらってな。金剛のハチロクが大破炎上なんて比叡が電話掛けてくるもんだから、大慌てで飛んできたんだがな……」

榛名「大事にならずに済んで良かったです」

232: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 11:25:54.97 ID:HkVD8Ika0

夕張「それにしても……霧島さんのあの怒り方を見るに、もしかして金剛さんは何度も?」

榛名「ええ、今回で11回目ですね」

夕張「じゅ、11回も……」

提督「どうしたらそんな回数になるんだよ。俺だって2回位しかないってのに」

榛名「金剛お姉様は熱くなると周りが見えなくなるタイプですので、エンジンの不調も気付いてなかったのかと」

川内「エンジンってそんなに壊れるもんなの?」

夕張「個体差にもよるけど、よほど無理なことしなければそんなに壊れることはないわ……」

提督「まさか榛名のエンジンブローも金剛のせいだったりして」

榛名「はい。金剛お姉様が試乗中、シフトチェンジをミスしてオーバーレブを……」

提督「マジだった」

夕張「お気の毒に……」

比叡「お、お姉様あぁぁ……」

霧島「フン!」

金剛 チーン

242: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/26(火) 16:50:30.87 ID:zrfqmN8g0

金剛「まだ頭が痛いネー」

霧島「自業自得です!」

金剛「ただでさえエンジンブローしてバトルにも負けたのに、この仕打ちはあんまりデース」

夕張「ちょっと待ってください!私の勝ちなんですか!?」

金剛「先にゴールしたのは夕張さんネ。バトルは結果が全てヨ」

夕張「えー……勝った気なんて全然しないんだけど……」

川内「相手が負けって認めているんだし、ここは素直に喜んでおけば?」

夕張「でもさぁ……」

川内「そうじゃないと提督からの条件未達成ってことで、明日から烈風作れとか無茶吹っかけてくるんじゃない?」

提督 ニヤリ

夕張「……わ、わーい勝ったー嬉しいなー(棒)」

金剛「イエース!ユーアービクトリー!」

比叡「全く嬉しそうじゃないんだけど……」

霧島「向こうにも何か事情があるようですね」

提督「で、金剛のハチロクはどうするんだ?とても自走して帰れるような壊れ方じゃないぞ」

霧島「ご心配には及びません。金剛姉様がクルマを壊すのは日常茶飯事なので、牽引ロープは各自一本必ず載せてあります」

榛名「普段だったらローダーを手配するところですが、流石にこの時間に頼むのは非常識ですし」

霧島「そもそも今回のブローも本人の責任ですから、独りで押して帰ればいいんですよ」ケッ

金剛「やめてください死んでしまいマス」

提督「それなら別に構わんが、金剛よ」

金剛「ワッツ?」

提督「公道で走るなら、自走して帰るまでが一つのコースだと思え」

提督「今回は大した事にならなくて良かったが、ただでさえ一般住民に迷惑を掛けるようなことをしているんだ。責任感っていうのもおかしいけど、走る以上はその意識を強く持たないと」

提督「もしかしたら壊れた拍子に操縦不能になって事故、最悪関係のない人までも巻き込みかねなかったんだからな」

金剛「反省しマス……」

夕張 グサッ

川内「何で夕張まで落ち込んでいるの?」

夕張「いやホラ、昨日の今日だからさ……」

243: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/26(火) 16:54:03.27 ID:zrfqmN8g0

金剛「それにしても、途中でワンエイティが速くなったのは一体どんなマジックデスか?」

比叡「あ、それ私も気になる!途中で挙動がおかしくなっていたし……」

夕張「ああ、あれは急にパワーが出るようになったから、ちょっと戸惑っちゃいまして」

提督「俺が電話を掛けて、ブースト圧を上げる為の操作をさせたのよ。普段は400よりちょい上だけど、フルで使ったら500馬力以上は難いな」

金剛「ワオ!」

夕張「500!?そんなに出るなんて初めて聞きましたけど!?」

提督「ん?そうだっけ?」

夕張「そうですよ!乗ってみて分かりましたけど、今までサバ読んでましたね!?」

提督「約400馬力(400とは言っていない)」

夕張「括弧を使うな!」

比叡「ヒエー。急に100馬力も上がったら、誰だってああなりますねぇ」

金剛「ハチロク一台分のパワーアップネー……」

提督「まあここは高速コースだけど、普段の仕様じゃあ夕張だとちょっちキツいと思ってね」

川内「提督ならそのままでも行けたの?」

提督「さあて、どうかな?」ニヤリ

244: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/26(火) 16:55:35.05 ID:zrfqmN8g0

金剛「……都高には提督みたいな人が沢山居るんデスか?」

提督「今はどうだか知らないけど、現役の頃は俺より速いヤツなんてゴロゴロ居たよ。それこそさっき言ってた岩崎もそうだし、カリスマと呼ばれた白いFDとか、環状の四天王と言われていた33Rの福田さん、アリスト乗っている佐々木に、フザけた見た目してるけどバカっ速な赤い34Rの宮川だろ。ハチロクで有名な小早川兄は確かレーサーになったらしいし。あと、S14の黒江って子や帰国子女の美津江も速かった。それとBMW乗ってる志穂ちゃんとか可愛かったなぁ……あとレースクイーンのマミちゃん(ry」

金剛「ストップ!もう沢山デス」

夕張「最後の方女性の名前ばっかりでしたけど」

川内「都高に出会いを求めるのは間違っているだろうか?」

提督「……兎に角、それだけ多く居たってことだ」

金剛「Mu……」

比叡「お姉様、どうかしましたか?」

金剛「He that stays in the valley, shall never get over the hill.」

提督「なんだって?」

比叡「『井の中の蛙』ってことですか」

金剛「イエス!どうやらワタシはフロッグだったようネー」

榛名「どういうことですか?」

金剛「確かにワタシはココではナンバーワン。ですが、そう言い切れるのはココだけってことヨ。今回のバトルで分かったデス」

提督「だがハチロクでその地位まで上り詰めたのは間違いなくお前の腕だろ。他でも充分通じるハズだ」

金剛「それでも納得出来ないヨ。満足した時点で終わりネー」

提督「満足したら終わり、か……それは一理あるな」

金剛「そこで提督!ゼヒ弟子にして下サイ!」

245: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/26(火) 17:01:01.31 ID:x2UW5gUu0

提督「ハイ?」

金剛「市川鎮守府に異動願いを出しマス!それで手取り足取り教えて欲しいネ!」フカブカー

提督「手取り足取り……ホホウ、悪くな痛いっ!」

夕張「あら、提督どうかしました?」

川内「スカート覗きじゃない?」

夕張「ヤダーキモーイ」

川内「スカート覗きが許されるのは小学生までよねー」

提督「お前ら……どっちがケリ入れたんだ」

夕張「川内」
川内「夕張」

提督「つまりどっちもだな……憶えておけよコノヤロー」

金剛「ダメですか……?」

提督「上目遣いはアカン反則だ……」

金剛「じゃあ脱ぎますか!?」ヌギヌギ

提督「何が『じゃあ』だよもっと止めないでください!」

夕張「本音が出てるわ」

川内「明日叢雲に言いつけてやろう」

246: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/26(火) 17:04:15.35 ID:x2UW5gUu0

提督「まあ走りの部分は置いといて、戦艦が増えると心強いな。今は扶桑姉妹しか居ないし」

金剛「モチロン!比叡達もそれでいいデスよネ!」

比・榛・霧「え?」

提督「ん?」

金剛「ワッツ……?」

霧島「何言ってるんですか?」

金剛「何かおかしいデス?」

提督「ホントに来れるなら有り難いけどさ……」チラ

霧島「いきなり戦艦クラス四隻が異動出来る訳ないでしょう。行くならお独りでお願いします」

榛名「例え金剛お姉様が抜けても榛名は大丈夫です!」

比叡「金剛レーシングの看板は私達が守ってみせます」

金剛「……んん?」

提督「ここまで人望が無い金剛って初めて見た」

金剛「え、嘘?皆本気で言ってる?ホントにワタシだけ?」

夕張「キャラを忘れてかけてる……」

川内「だいぶ動揺してるのね」

金剛「え?マジ?」

247: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/26(火) 17:08:57.76 ID:x2UW5gUu0

叢雲「で?」

提督「そんなワケで金剛が着任しました」

金剛 ズーン

叢雲「で?」

提督「妹達に異動することを止められなかったので、ガチ凹みしています」

金剛 ズーン

叢雲「で?」

提督「ギャグ要員が増えました」

金剛「誰がギャグ要員デスか」

叢雲「そう、分かったわ」

金剛「スルーしないでくださいヨ!」

叢雲「で、何で工廠にクルマが五台も並んでいるのかしら?」

提督「は?」

叢雲「なに?知らないの?」

提督「全く存じ上げません」

金剛「ココにあるクルマは何台あるデスか?」

提督「俺と夕張、あと作業用のサニトラがある。それにお前のが増えたから四台だ」

金剛「アンノウンカーですネ!」

叢雲「そもそも工廠はアンタ達のガレージじゃないって何度も言ってるんだけど」

夕張「提督、何か知らないクルマが置いてあるんですけど」ガチャ

提督「今聞いた」

金剛「どんなクルマですカー?」

提督「……クルマとカーを掛けた駄洒落か?」

叢雲「早速ギャグ要員の仕事をこなしているわね。ギャグはお寒いけど」

金剛「違いマスって!」

提督「で、車種は?」

金剛「無視しないでくだサーイ!」

叢雲「金剛、ちょっとうるさい」

夕張「鉄仮面!鉄仮面です!」


254: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/26(火) 21:51:00.26 ID:GwT7E6WT0

続・湾岸の青葉さん


青葉「うう……酷い目にあいました」

青葉「まさかあの人が夕張さんを気絶させた岩崎さんだったとは……確かに意識が壱・撃・離・脱しても仕方ありませんね」

青葉「しかし!今回は気絶しなかった!青葉、成長しています!」

青葉「……でも次はもう少しソフトな方にしたいですね」

青葉「さて、次は……おおっ?」

青葉「なにやら珍しそうなクルマが入って来ましたねー」

青葉「見た目からすると結構古い型のようですが、丸目のライトが可愛らしいです」

青葉「車種はー……あれは確か、フェアレディZでしたか」

青葉「それにしても、今日は青色のクルマに縁がありますねぇ」

青葉「あ、止まりました。チャンスですね!」

青葉「そこのお兄さーん!ちょっとインタビューさせてもらってもいいですか!?」

――翌日 食堂

提督「そういえば青葉の姿がないようだが、アイツ今日非番だっけ?」モグモグ

最上「よく分からないけど『あれはクルマじゃない……まるで悪魔のような……』って、変なこと呟いて引きこもっていたよ」

提督「なんだそりゃ」

最上「あ、提督。醤油取って」




255: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/26(火) 22:24:08.10 ID:GwT7E6WT0

小ネタ 違いの分かる女


由良「ふぅ……遠征の後に飲むコーヒーは美味しいわ」

コソコソ……

夕張「由良がコーヒーを飲んでいる」

川内「よし。今こそ作戦決行だね」つラジカセ

夕張「カメラのセットもオッケー。じゃあ再生っと」カチャッ


♪ダバダーダーバダバダーダバダー


由良「!?」キョロキョロ

夕張「キタキタ。今の十代には確実に通じない由良ネタよ!」

川内「実際私達もリアルタイムでは見てないからね!」

夕張「でも分かる人には出オチよね」

川内「それは言わないの」

由良 ←満更でもなさそうにコーヒーを飲む

夕張「なんかその気になって優雅に飲んでいるけど、由良がやっても割と様になるものね」●REC

川内「どうでもいいけど由良って美 だよね」

由良 ←足を組む

夕張「クッ……見えそうで見えない」


♪ダバダーダバダーダー

川内「サバだーイカだーワー(同じ音程で)」

由良 ブハッ

夕張「何よその歌詞」

川内「提督が唄ってた」

由良「サバとイカってなによ……ククッ」

夕張「ツボに入ってるわね」

川内「必死で笑いを抑えようとしてるんだけど」

由良「……って、二人して達影でコソコソと何やってんのよ……」クククッ


今日も軽巡組は仲良しです。


263: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:06:39.46 ID:/TrVZE1F0

小ネタ 今の十代には分からないレースゲームネタ


夕張「そういえば疑問だったんですが……」

提督「ん?どうした?」

夕張「いえ、提督が若い頃ってどうやってクルマのチューニング費用を賄っていたのかなって」

提督「なんだ、お前金無いのか?」

夕張「……自分でやるとはいえ、今回の修理費だけでも結構な額になりますから」

提督「まあ、この手のクルマだと余計に金が掛かるからな。俺もある程度は自分でやっていたよ」

夕張「なので、同じワンエイティだし一応参考になるかなーと思いまして」

提督「別に特別なことしてないって。バイトだよバイト」

夕張「どんなバイトですか?」

提督「ビルの警備。今思うと面白かったなアレ」

夕張「へー……ホントに普通ですね」

提督「ああ。夜勤だったんだけど、そのビルが最初はおっかないところでさ。デカいネズミが居たり、泥棒が居たり……」

夕張「なんだか物騒ですね」

提督「おお。慣れてきた頃には毘沙門天が出てきてさ。どうしようかと思ったよ」

夕張「……んん?」

提督「その後三人で組んで回ったけど、そこもとんでもない所でさ。死神や自縛霊とかの化け物に混じって女王様だのカーニバル女だの……」

夕張「ちょちょちょ!」

提督「あと金粉に塗れた女も居たな!最初は笑ったけど、ソイツを倒すとなかなか……」

夕張「ストップストップ!何ですかそれ!」

提督「だからビルの警備だって。その時使ってた剣は今でも大切に持っているぞ」

夕張「剣!?警備のバイトに剣!?」

提督「あかねとマリアン、元気かなぁ……」


普通に考えればあのゲームは色々おかしい。

264: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:09:06.72 ID:/TrVZE1F0

ホンペンハジマリマス


工廠

夕張「ホラ、アレですよアレ」

提督「銀黒のDR30スカイライン後期型……間違いなく『鉄仮面』だな」

金剛「なんで鉄仮面と云うデス?」

提督「ヘッドライトの間にある開口部、つまりフロントグリルだ。前期型には大きなグリルがあるのだが、マイナーチェンジ後の鉄仮面は見ての通りグリルレスになってナ。より無骨な印象になったことから、そう呼ばれるようになったっぽい」

金剛「確かに『カタハ』な感じがするネー」

夕張「硬派って云いたいんですか?」

提督「しっかし渋いなぁ……俺、歴代スカイラインの中だとサンニーと同じ位好きなんだ」

夕張「しかも見た目ピカピカですよ。とても30年前のクルマとは思えない……」

金剛「ワタシのハチロクと大違いヨ」

夕張「金剛さんのは特殊過ぎます」

提督「内装、鉄板剥き出しだもんな」

夕張「ん?中で寝てるのは……瑞鳳?」

瑞鳳 ムニャムニャ……


265: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:11:44.20 ID:/TrVZE1F0

提督「何でこんな所で寝てるんだ?」

金剛「可愛い寝顔ネ」

夕張「コレ、瑞鳳が買ったのでしょうか?」

提督「とりあえず起こすか。お、鍵開いてる」ガチャ

瑞鳳「ムニャ……」Zzz

提督「ヅホー。起きろー」ユサユサ

瑞鳳「瑞鳳のクルマ……古くても活躍出来るんだからぁ……」Zzz

夕張「起きませんね」

夕張「とても幸せそうヨ」

提督「起きないとチューしちゃうぞー」

夕張「瑞鳳!今すぐ起きなさい!●されるわよ!」ガシッ

瑞鳳「 」ユッサユッサ

金剛「提督、まさか……」

提督「濡れ衣です。露骨に引かないでもらえますか」

266: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:13:51.84 ID:/TrVZE1F0

瑞鳳「んぅ……はれぇ、提督さんに夕張ぃ……?」

夕張「おはよう瑞鳳。何でこんな所で寝ているのよ?」

瑞鳳「ああそうだぁ……夕べ納車されたのが嬉しくって、中でそのまま寝ちゃったんだぁ」ファー

提督「気持ちは分かるが、いくら暖かくなったとは云え艦娘といえど風邪引くぞ?」

瑞鳳「ふぁーい……」

提督「で、早速だがヅホよ。この鉄仮面はどうしたんだ」

瑞鳳「えーっとね、提督さんと夕張がいつも楽しそうにクルマの話しているから、つい……エヘヘ」

夕張「よく物陰から覗いていたものね」

金剛「随分な物好きですネー」

提督「その物好きの所に自ら異動して来たのはどこのドイツだ」

金剛「ドイツじゃないヨ。イギリスネ」

提督「そういう意味じゃない」

瑞鳳「何で金剛さんが居るの?」

夕張「話せば長くなるけど、提督の下で修行をしたいって」

瑞鳳「修行?」

267: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:16:34.92 ID:/TrVZE1F0

提督「それにしてもホントに綺麗だなー。よく見つけてきたもんだ」

瑞鳳「あ、うん。頑張って探したんだから!」


瑞鳳のDR30スカイライン
後期2ドアのシルバーツートン
ダウンサス、エアクリ&マフラー交換程度のライトチューン
お約束のエイトスポーク、R32風大型リヤスポイラーが目を惹く
モデル末期のターボCなのでかなり貴重
パワーは推定約220馬力


夕張「でも、どうして鉄仮面なの?同じ価格帯でもっと良いモノもあったでしょう」

瑞鳳「うーん……最初はZ31や20ソアラ、あとサイバーCR-Xも考えたんだけど、どうにもピンと来るのが無くて」

夕張「どっちにしても古いクルマばっかりね……」

瑞鳳「それにこの目!四角いシルエット!レトロで可愛いでしょ?」

提督「可愛いっていうのか、それ」

夕張「……分からない」

金剛「ワタシは分かるネ。カクカクした形がブロックアートみたいでキュート」

瑞鳳「やっぱり!?流石ハチロク乗り!」

金剛「ヤーヤー、どうもデース」

夕張「思わぬところで打ち解けてる……」

268: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:22:13.94 ID:/TrVZE1F0

提督「それにしても……今は西暦何年だっけ」

夕張「どうしたんですか急に」

提督「いや、ホラ……並んでいるクルマがさ」

180SX ←89年デビュー

AE86 ←83年デビュー

DR30 ←81年デビュー

提督「夕張のワンエイティは今風だからいいけどさ……」

夕張「ああ、確かに」

瑞鳳「狙ったように昭和のクルマばっかりね」

夕張「ワンエイティも中身はS13だから実質昭和のクルマよね」

提督「ココだけあれか?平成初期の大黒パーキングか、開始当初のいか天か?」

金剛「ハチ○ヒーローとか、高速○鉛が取材に来るかも知れまセーン」



269: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:24:44.17 ID:/TrVZE1F0

提督「やれやれ、一挙に二台も増えるとは思わなんだ」

夕張「叢雲ちゃんの頭痛が酷くなりそうな……」

提督「だが俺は謝らない」

夕張「何故か瑞鳳と金剛さんは仲良くなってるし」

瑞鳳「うわぁ、金剛さんのハチロクスゴーい!」キャイキャイ

金剛「ベリー苦労したからネ!」

提督「さて……鉄仮面の謎も解けたことだし、お前ら散れ!仕事するぞー」

夕張「あら、提督からそんなこと云うなんて珍しい」

提督「一応提督だからな。書類も溜まっているし、放って置くと叢雲が怖い……」

金剛「尻に敷かれてマスね」

瑞鳳「今に始まったことじゃないよ」

270: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:26:55.15 ID:/TrVZE1F0

提督「俺は執務室に戻るとして……意気投合したついでだ、ヅホは金剛に施設の案内をしてやってくれ」

瑞鳳「はーい!」

金剛「宜しくデース!」

提督「それと午後には大型輸送船が湾内に入ってくる予定だからそれの受け入れ警備な。お前ら二人とも艦隊に入れるから準備しておいて」

金剛「警備任務にワタシも入れるのデスか?」

提督「戦艦が増えたとなっちゃあ、深海棲艦も迂闊に手を出しづらくなるだろうからな。抑止力の為にも金剛にはドンと構えていて欲しいのヨ」

金剛「了解デス!」

夕張「じゃあ私はワンエイティの整備に戻りm 提督「お前も書類の整理だ」ガシッ

夕張「そういう事務仕事なら由良とか古鷹さんに任せればいいじゃないですかー……」

提督「今日は二人とも非番なの!それに……叢雲と二人だとまたチクチク言われそうで心細いんだよ……」

夕張「尚更行きたくないですよ。冗談じゃねぇ」

提督「唐突なレーラグはやめれ。この前美味しい蕎麦屋見つけたから、奢ってやるって……な?」

夕張「……まだ足りませんね」

提督「よし、じゃあ耳貸せ」ボソボソ

夕張「……っ!仕方ないですねー……今回だけですよ?」ニヤニヤ

金剛「急に態度が変わったネ」

瑞鳳「買収よ、きっと」

271: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:35:08.30 ID:/TrVZE1F0

瑞鳳案内中……

金剛「ココはそれほど大きな所ではないデスが、艦娘はどれ位居るんデスか?」

瑞鳳「んー……大体20人位じゃないかな?」

金剛「随分少ないデスね」

瑞鳳「鎮守府とは銘打っているけど、あくまで横須賀からの分署だからね。基本的には横須賀のサポートだったり、湾周辺の護衛・警備が主な仕事よ。たまに新人の育成とかもあるよ」

金剛「ワッツ!?そうだったんデスか!?」

瑞鳳「皆略して市川鎮守府って呼んでるから、ややこしいのよね」

金剛「知らなかったデース……」

瑞鳳「こんな感じね。何か質問はある?」

金剛「Mu……そういえば正規空母が居ない気がするネ」

瑞鳳「基本的には私や龍驤、あと千歳さんで賄ってるの。扶桑さん達やモガミンも居るけどね」

金剛「正規空母が居ないとは……驚きネ」

瑞鳳「大体横須賀とかに回っちゃうから仕方ないよ」

金剛「成る程ネー」

瑞鳳「他の所よりは暇だしちょっと退屈かも知れないけど、その分提督さんには色々自由にさせてもらっているの。何だかんだで良い所だよ!」

金剛「提督からしてアレですからネ」

瑞鳳「アハハ。でもそんな所に異動願いを出すなんて、金剛さんも似たようなものじゃない」

金剛「イエース!変わっているのは充分承知ネ!」

272: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:37:39.71 ID:/TrVZE1F0

浦風「……ありゃ?金剛姉さん?」ヒョコッ

金剛「ワオ浦風!そういえば市川に所属してたネ!」

浦風「浜風もおるよ。しかし急にどしたんけ。突然コッチに異動するー聞いた時は驚いたきぃ」

金剛「この鎮守府に興味が出たんデスよ!元気だったネ?」

浦風「モチロンじゃ!金剛姉さんも相変わらずじゃねえ」

金剛「ワタシはいつでもワタシネ!」

瑞鳳 ジー

浦風「瑞鳳?何見とるん?」

金剛「どうかしましたカ?」

瑞鳳「いや、二人とも羨ましいなーって。何とは言わないけど」ジー

浦・金「??」

瑞鳳(胸……)

273: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:38:45.13 ID:/TrVZE1F0

執務室

叢雲「ハイ次。ここにサイン」

提督「ん。あ、この任務報告書も送っておいて」

叢雲「こっちの整備記録は?」

提督「それはまだ最終確認が終わってないから出しちゃダメ」

叢雲「了解」

夕張(実際仕事してみると、私が手伝うことってあんまり無いんだよなー……)

叢雲「夕張、手が止まっているわ」

夕張「あ、ゴメン」

叢雲「全く……いつも好き勝手しているんだから、執務の手伝い位しっかりやってよね」

夕張「面目ない」

274: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/28(木) 18:40:02.88 ID:/TrVZE1F0

提督「そう言うなって。元はと云えば俺が巻き込んでいるようなもんだし」

叢雲「それもそうね。どっかのバカが普段から真面目にやれば、私もここまで苦労することもないんだけど」

提督「仰るとおりです……叢雲様にはいつも助けられています。感謝しきれません正に女神様ですハイ」

叢雲「ハイハイ、言ってなさい」

提督「凛とした佇まい、仕事上での実力、あと黒タイツ(ボソッ)、どれをとってもこんな自分には勿体無い程です有難うございます」

叢雲「……ホント、次から次へと口だけは達者ね」

夕張(途中で何か聞こえたけど……)

叢雲「ま、いいわ。これ送ってくるから、ちゃんとやってなさいよ」バタン

提督「………」

夕張「………あの、黒タイツって……」

提督「………」

夕張「……提督?」

提督 ニヤッ

夕張「ヒィッ!?」


286: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 12:55:05.83 ID:CjO7z6Xj0

夜・食堂

扶桑「ごちそうさまでした」

山城「姉様、もう召し上がらないんですか?」

扶桑「ええ。ちょっと出掛けて来るわ。デザートのプリンあげる」

山城「えっ、ウソそんな……!姉様がプリンを!?こ、幸福だわ!」

提督「……あいつの幸福指数って低すぎやしないか」モグモグ

最上「だって山城だもん」モグモグ

時雨「仕方ないよ」モグモグ

夕張「あれ?川内が居ないんだけど」

由良「摩耶さんとバイクで何処かに行ったわ」ズズー

提督「ん?摩耶も単車乗ってたっけ?」

最上「昔から乗ってたみたいだよ。ボクはよく分からないけど、ファミマレプリカだっけ?」モグモグ

提督「『エディ・ローソン』のローソンな。色合い似てるけどコンビニじゃない」

夕張「カワサキか……」


287: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 12:57:17.79 ID:CjO7z6Xj0

山城「……ちょっといいかしら」

提督「どうした山城。プリンならやらんぞ」

山城「違うわよ。姉様のことなんだけど……最近夜外出することが多くて」

提督「え?そうなの?」

山城「昨夜も喫煙所に向かう途中、マッドハニーの『ヒア・カムズ・シックネス』を口ずさんでいたら……姉様がフラッと出掛けて行くところを見かけて……」ハァ

提督「それより、お前のその選曲の方が気になるわ」

山城「元はと云えば提督の趣味じゃない」ムスッ

最上「どんな曲なの?」

夕張「『レンコン好きです!』って空耳で有名な曲よ」

時雨「シアトル出身のガレージバンドさ。ニルヴァーナのカート・コベインにも影響を与えたんだよ。演奏は下手だけどカッコいいんだ」

最上「へー。皆詳しいね」

若葉 ヒョコッ

由良「あら、若葉」

若葉「THERE GOES SICKNESS IN MY DADDY'S CAR」ヒュンッ

由良「!?」ビクッ

288: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 13:00:11.33 ID:CjO7z6Xj0

山城「マッドハニーはどうでもいいの。姉様が夜に何してるか知らない?」

提督「姉バカのお前が知らないのに俺が知るわけないだろ」

由良「若葉はなんだったの……」

時雨「気にしなくていいと思うよ」

提督「そもそも、何で俺に聞けば分かると思ったんだよ」

山城「提督が無理矢理連れ出して、やらしいことしているんでしょ!」

提督「俺のこと何だと思ってるんだ」

山城「クルマと音楽好きの●●●●星人」サラリ

提督「ぐっ……当たりだよチクショウめ」

夕張「昼間、黒タイツがどうとか言ってましたよね……?」

提督「女性の美しさを愛でて何が悪い」

夕張「その結果が胸と黒タイツ?」ジトーッ

山城「兎に角、姉様に何かあったらただじゃおかないから!覚悟なさい!」

提督「そんなに心配なら扶桑さんに首輪でも付けておけよ」

夕張「ちょっ……!」

山城「姉様に首輪……?」

モウソウチュウ……

シミュレーション

山城「アリねそれ……ウフフ、ウフフフフ……」

提督「うん、たまんねえ。しょーりゅーけんだ」

夕張「ダメだコイツら、早く何とかしないと」

若葉「サタニック・ブンブン・ヘッド」

由良「若葉まだ居たの!?」ビクッ


289: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 13:02:40.73 ID:CjO7z6Xj0

工廠

夕張「ああー……今日はやたら疲れた。でもクルマ直さないとなぁ……」

金剛「Mu……今回ばかりはダメかしら……(英語)」

夕張「あら?金剛さん?」

金剛「Oh!夕張さん!どうしましたカ?」

夕張「私はワンエイティの修理を。金剛さんこそ、難しい顔してどうしたんです?」

金剛「エンジンを見てたんデスが、ハチロクも限界かナーって」

夕張「そんなことないですよ。とてつもなく速かったじゃないですか」

金剛「デスが、エンジンだけじゃなくボディもボロボロネ。これを機に乗り換えも考えてマース」

夕張「まだまだイけると思うけど……」

金剛「……この子には少し無理させ過ぎたネ。それに都高に上がるなら、その内限界が来るヨ」

夕張「そうですか……新しいクルマに候補はあるんですか?」

金剛「考え中ネー。S2000かNSXか……」

夕張「また随分性格が違うクルマを」

金剛「都高、特にループウェイにステージを絞ったら、ハイパワーよりもトータルバランスが大事だと思うネ」

金剛「しっかり踏めて、ちゃんと曲がる。何よりスタビリティが必要ヨ」

夕張「スタビリティ……安定性ですね」

金剛「イエース。AWD(オール・ホイール・ドライブ)の方が有利なのは分かりマスが、ワタシはあくまでリヤ・ドライブのマシンで勝負したいネ」

290: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 13:05:05.64 ID:CjO7z6Xj0

夕張「金剛さんは、そもそも何で走るようになったんですか?」

金剛「ワタシ?最初はマンガの影響ネ」

夕張「ああ……だからハチロクですか」

金剛「デヘヘ……でも、ある時見たんですヨ。スゴいクルマを」

夕張「スゴいクルマ?」

金剛「古いフェアレディZとポルシェ。たまたまシーサイドをドライブしてたら見かけたネ」

夕張「そ、その組み合わせって、まさか……」

金剛「ノンノン!Zはレッド!ポルシェはマルーンだったヨ!」

夕張「流石にそうですよね……ハハ」

金剛「イエー。その二台が目の前を通り過ぎた時、ゾクッと来ました」

金剛「とてもビューティフルで、震えたネ。ワタシが知らなかっただけで、こんなマシンが本当に存在するんだって……感動したんデスよ」

夕張「そんなクルマが……提督なら何か知ってるかな」

金剛「だから、都高は少し憧れだったネ。ワインディングにも速い人は沢山居たけど、あの二台のようなマシンは未だに見たことないヨ」

夕張「じゃあ、今はその二台に会うことが目的ですか?」

金剛「それもありマス。でも、ここまでやった以上はハンパな状態で終わらせたくないからデスね」

金剛「それに……降りる時はきっと、自分で分かるハズデース」

291: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 13:06:35.47 ID:CjO7z6Xj0

金剛「夕張さんはどうデスか?」

夕張「え、私?」

金剛「イエス。夕張さんは何で走っていマスか?」

夕張「私かぁ……何でだろ。元々機械弄りが好きだから、その延長だったけど」

夕張「クルマ買って色々弄っていたら、提督が『じゃあ都高に上がってみる?』って云われて、何となく走って」

金剛「そこで都高に上がろうと誘う提督もどうかしてるネー」

夕張「そうですよね。でも、誘いに乗って走っている内にどんどん楽しくなって今に至るんですけど……あんまり理由になってないですね」

金剛「グッド!良いと思うヨ!」

夕張「そうですか?」

金剛「理由なんて無理に探す必要無いネ!やってる内にきっと見つかるヨ!」

夕張「うーん……そんなもんですかね?」

金剛「まずは何事も楽しまなくちゃ!損デスよ!」

夕張「……なんだか金剛さんと話してると、元気がもらえるなぁ」

金剛「よく言われるネ。それってどういうことデス?」

夕張「言葉通りですよ。まるで、太陽みたい」

金剛「Oh!サンシャイン!それは嬉しいデース」

夕張(走る理由か……あんまり考えたことなかったけど、私にも見つかるかな)

金剛「でもまず、お互い修理デスね」ハァ

夕張「……ですね」

292: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 13:08:50.08 ID:CjO7z6Xj0

喫煙所

提督 写真を眺めてる

龍驤「なんや、まだ起きとったんかい」

提督「そういうお前はどうなんだよ」

龍驤「それもそうやな。で、何見とったんよ?んん?」

提督「……昔の写真だよ」

龍驤「ほっほう。見してみぃ……って、扶桑さんが写っとるやん」

提督「やっぱ似てるよな。別人だぜソレ」

龍驤「似とるゆうレベルちゃうで!瓜二つやん!誰だれ!?」

提督「……昔の恋人。たまたま見つけてさ」

龍驤「不躾かも知れへんが、なんで別れたん?」

提督「俺があまりにもクルマにのめり込むもんだからさ。愛想尽かされて居なくなった」タバコスパー

龍驤「キミも罪作りな男やなぁ。こんな別嬪さん放って置いて」

提督「だろ?で、今こうして眺めてたわけ。女々しいだろ」

龍驤「ホンマや。あまりに女々しうてコッチが辛いわ」ワハハ

提督「……だから時々、扶桑さんを見るとドキっとするんだよ。仕草から口調からソックリでビビるんだ」

龍驤「ほーん。でもまあ、キミには叢雲みたいなキツめの性格の方が合ってるわ」

提督「やっぱり?分かる?」

龍驤「そらウチかて付き合い長いんやから見てれば分かる」タバコトリダシ

龍驤「……大方、何も言わずに受け入れてくれるもんやから、調子こいて走り回っとったんやろ。で、爆発」

提督「大正解。流石我が隊のご意見番」

龍驤「誰が呼んでんねんソレ」

293: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 13:10:59.25 ID:CjO7z6Xj0

龍驤「夕張もそやけど、ウチには分からん世界やで。同じトコグルグル周って何がオモロイん?」

提督「そりゃあ、やってみないことには分からないわな。今度横に乗るか?」

龍驤「嫌や。あんなケッタイなクルマ、乗りとうないわ」

提督「ケッタイ言うなや。あれでも相当金掛かってるんだぞ」

龍驤「知らんわそんなん。嫌なもんは嫌や」

提督「なんだよ、たまにはドライブデートにでも誘ってやろうと思っても皆断るんだから」

龍驤「……ホンマに何でやねん。付きおうた恋人にもそれが原因で逃げられとるのに、何で降りようとせんねん」

提督「……さて、ね。降りる気が無いからじゃないか?」

龍驤「阿呆。答えになっとらんわ」

提督「俺自身が分かってないんだ。一回降りたってのに、いい歳してまた戻ってるんだ。自分でもワケ分からん」

龍驤「なんや。一回は止めてるんか」

提督「つるんでたヤツが目の前で事故ってな。その時は二度と走らないと思ってた」

龍驤「せやけどまた戻ってるやん」

提督「だーかーら、自分でも分からないんだよ」

294: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 13:14:26.71 ID:CjO7z6Xj0

龍驤「……ウチのオトンが若い時、浪速環状でヤンチャしとったらしいんや」

提督「親父さん環状族だったのか?」

龍驤「写真しか見とらんから知らんわ。当時シビック云うたら環状族みたいなノリやったんやろ?」

提督「らしいな。府警のシビック狩りは有名だったみたいだし。で、それがなんだよ」

龍驤「そこそこ大きなチームに入って、先輩にもそれなりに着いて行けるようになった頃な、大事故に巻き込まれてん」

龍驤「まあオトンとクルマは無傷やった。けどその事故の当事者やった連れのクルマはアタマからひしゃげてしもてな。助手席乗ってたヤツが前のガラス突き破って明後日の方向向いて転がってたらしいわ」

提督「何したらそんなになるんだよ」

龍驤「止まってたトラックに突っ込んだらしいで。危うくオトンもぶつけるトコやったと」

龍驤「で、そんなんやから助手席のヤツは即死。運転してたのもロールバーやっけ?あれに頭を強く打って間もなく死んだそうや」

龍驤「その光景見たオトンは大層震え上がってその場でゲーゲー吐いたそうや。人の命なんてこんな簡単なもんなんかって。んで、ほとぼり冷める頃には降りたと」

龍驤「ああ、それ以来肉がダメになったとも言っとったわ」

295: ◆v5iNaFrKLk 2015/05/30(土) 13:20:34.06 ID:CjO7z6Xj0

龍驤「ここまで聞いて感想は?」

提督「人の命は尊いものだなぁ。僕にはとても出来ない」

龍驤「小坊が無理矢理書いた作文かいっ。しかもワケ分からんし」

提督「……別に、よく聞く話だからな。実際、顔見知りに死んだヤツも居たし」

龍驤「そんなら、何でや」

提督「……ケリ、つけたいのかね」

龍驤「ケリ?」

提督「ああ。あの日置き忘れてしまった自分に、ケリをつけたいのかも」

龍驤「うわっ、クッサ~。鼻が曲がる~」

提督「人がちょっとセンチメンタルな気分に浸って喋ったっていうのに台無しじゃねえか」

龍驤「ウォエ~」

提督「そんなに!?と言うか、年頃の女の子がそんな声出しちゃいけません!」

龍驤「冗談や。でも、そんなん要らんねん。君が死んだらどうするんやって話や」

提督「けどそんなこと云ったら、お前らだって明日轟沈して居なくなるかもしれないだろ」

龍驤「そんなんキミは望んでないやろ」

提督「ああ。誰一人欠けるのは嫌だ」

龍驤「ウチかて誰かが死ぬところなんて見とうない。ウチだけやない。皆そう思っとる」

龍驤「だからこそ、これだけは約束してな。ちゃんと帰って来ること。そうすれば、多少のお痛は目を瞑ってやるわ」

提督「……約束するよ」

龍驤「もし死んだりしたら、あの世まで艦載機飛ばしたる。安心して寝れると思わんことや」

提督「お前ならやれそうで怖いわ」

龍驤「……そんで一生恨むからな」

提督「そうしてくれ。出来る限りナ」


310: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/01(月) 23:27:25.89 ID:H52/il9L0

工廠

夕張「とりあえず、今日はこんなもんかな」

金剛 Zzz

夕張「金剛さん寝ちゃってるし……毛布あったっけ?」

由良「夕張?まだやってたの?」

夕張「ん?何か用事?」

由良「用事も何も、時計見てる?」

夕張「ゲッ、もうこんな時間なの」

由良「没頭するのもいいけど、普段の仕事に支障が出ないようにね」

夕張「アハハー……努力はする」

由良「それとコレ、提督からの預かり物」ヒョイ

夕張「おっと。キー?」

由良「提督のクルマのスペアキーだって。修理している間なら乗っててもいいって」

夕張「んふー。そうそう、この為に今日の執務手伝ったんだから」

由良「あと伝言。『交通ルールは守りましょう』だって」

夕張「自分から嗾けといてよく言うわ……」

由良「全くよ。川内も帰って来ないし」

夕張「えー……あの二人まだ帰って来てないの?」

由良「明日非番だからじゃない?この鎮守府は暴走族しか居ないのかしらね」

夕張「否定できない……」

由良「あ、でも直ったら隣乗ってみたいかな」

夕張「モチロン」

夕・由「「後で感想聞かせてね」あげる」

夕張「分かってるじゃない」

由良「付き合い長いからね」

金剛「ダメダメ……ワタシが前を走るネー……」Zzz

夕張「あー……とりあえず、金剛さん運ぶの手伝って」

由良「そうね」

311: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/01(月) 23:31:03.66 ID:H52/il9L0

その頃の川内・摩耶in埠頭

川内「っぷー……」

摩耶「だいぶ慣れてきたみたいだな」

川内「番長!ハングオンの仕方が分かりません!」

摩耶「上半身だけで動くからダメなんだ。腰で移動だ腰で。あと番長言うな」

川内「というかさぁ、摩耶さんのバイク速過ぎだよー。何なのそれ」

摩耶「そりゃあ排気量からして全然違うからな」

川内「どれ位違うの?」

摩耶「それ(NSR)4台分」

川内「なにそれずるいー」

摩耶「ズルでもなんでもねーよ。リッターとニーハン比べること自体間違ってるっての」


摩耶のZRX1200
カラーはライムグリーン(ローソンレプリカカラー)
パッと見では分からないが、色々と改造されているらしい
エンジン周りよりも足回り、ブレーキ等を強化している

川内のNSR250
カラーはホワイト/レッドのレプリカカラー(所謂赤テラ)
提督が買って来て放置していたものを川内が譲り受けた
レストアついでに夕張がキャブとチャンバーを交換した以外はほぼノーマル


312: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/01(月) 23:33:52.41 ID:H52/il9L0

摩耶「そもそも、20年以上前のレーサーレプリカ相手に摩耶様が負けるかっての」

川内「摩耶さんのだって古そうじゃん……」

摩耶「そりゃ確かに10年前の型だから古いことには違いないけど、NSRよりマシだ」

川内「88年式とか言ってた」

摩耶「マジかよ。またとんでもないモン見つけてきたな」

川内「提督も自慢げに言ってたけど、これってそんなにスゴいの?」

摩耶「アタシが驚いてるのは程度が良いってとこなんだが……まあ、88に限らずNSRは確かにスゴかったらしいぜ」

摩耶「かつてレーサーレプリカブームってのがあってな。今と比べモンにならない位二輪が売れてた時代にヨ、ホンダはまんまレーサー仕様を放り込んできたって。とりわけ、ハチハチが一番過激だったと。あまりに市販車の状態で速過ぎるもんだから他のメーカーからバッシングを受けたって話だ」

川内「へー。じゃあこれスゴいバイクなんだ」

摩耶「あくまで当時の話だ。その後NSRは色々改良してより速くて扱いやすくなったみたいだし、バイクそのものも進化してるからな。今じゃインジェクション、ABSは当たり前だ。昔じゃ考えられないぜ」

摩耶「だから伝説と謳われた88も、今となっちゃただピーキーなだけの古いバイクだってこと」

川内「えー。何かショック……」

摩耶「何言ってんだ。確かに過去のバイクにはなったが、今でも充分速くて楽しいと思うぜ?」

川内「……そりゃあ、訓練生時代に乗ったバイクよりは全然速いけどさ」

摩耶「だから腕次第じゃ峠で最新SSにも……って流石に無理か。まあ格上相手でも結構イイ線行くと思うわ」

川内「そっかー。でも乗ってる分には楽しいから別にいっか」

摩耶「そうそう。結局は自分が気に入ったモンに乗るのが一番だ」

313: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/01(月) 23:35:23.80 ID:H52/il9L0

川内「よーし!もう一本!川内、行きます!」

摩耶「オイオイ勘弁してくれよ……お前は非番だろうけどアタシは出撃だってーの」

川内「そんなこと言わずにぃ。これでラストにするから」

摩耶「カーッ……そういうヤツは絶対言うこと守らないってのが相場なんだよ」

川内「ホントにこれで最後!お願い!」

摩耶「わーったわーった……ったく。ただ、何もなけりゃあな」

川内「??」

摩耶「一台なんか来るぞ……ヨシムラの音だなこりゃあ」

キィッ!

「おうおう、俺のシマを荒らしてるのは何処の誰だ!?」

摩耶「あん?」

川内「変なの来た」

天龍「俺の名は 川内「あ、天龍だ。久しぶり」

摩耶「なんだお前か。こんな時間に何やってるんだよ」

天龍「 」

314: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/01(月) 23:37:18.35 ID:H52/il9L0

川内「あれ?摩耶さん、天龍のこと知ってるの?」

摩耶「一応な。お前らは同期だっけ?」

川内「そうだよ」

天龍「せ、川内に摩耶さん……二人して何やってんだよ……」

川内「摩耶さんにバイクの乗り方教わってた!」ドヤ

摩耶「アタシは付き合わされてる。眠い」

天龍「あ、そう……」

摩耶「で、お前はなんだ?シマがどうとか」

天龍「あぁ、いや言葉の綾っつーか何ていうか……」

摩耶「いや別にどうでもいいんだけどさ。そのカタナ、まだ乗ってたのか」

天龍「いやあ、最近暇になったからまた乗り始めて」

摩耶「ふーん……」

川内「どしたの天龍?さっきから挙動不審だけど」

天龍「ばっ……バカ言うな!俺に怖いもんなんてねえ!」

川内「何言ってんの?」

天龍「大体、何でお前が単車乗ってんだよ!しかもNSRて」

川内「いやさぁ、ウチの提督が物好きで。買ったはいいけど乗ってなかったのが余ってたから、譲ってもらったんだ」

天龍「そう云えばお前んとこの提督はそんなんだったな」

川内「で、乗ってみたら楽しくてさ」

315: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/01(月) 23:39:21.02 ID:H52/il9L0

天龍「ところで川内……ちょっとこっち来い」ガシッ

川内「なに?夜戦?」

天龍「いいからっ」

摩耶「眠ぃ……」オオアクビ

天龍「お前、摩耶さんに乗り方教わってるって正気か」ヒソヒソ

川内「なんでさ。問題あるの?」

天龍「大アリだっ!摩耶さんはかつて『荒武者』と呼ばれ、地元では泣く子はもっと泣くトンでもないお方だったんだぞ!」

川内「訳が分からないよ」

天龍「走りに関しちゃ色々逸話があるってことだよ!俺なんか恐れ多くて目も合わせられねえ……」

川内「5へぇ」

天龍「ふざけんな!いいから、乗り方なら俺が教えてやっから。あの人は止めとけって」

川内「そんなこと言っても、天龍とじゃ所属が違うし」

天龍「そんなもん予定合わそうと思えばいくらでも合わせられるだろ。兎に角、怪我する前に止めとけ」

摩耶「……天龍」

川内「別に摩耶さん優しいよ?口は悪いけど」

天龍「バッカ、お前は全盛期のあの人を知らないから…… 摩耶「天龍!」

天龍「ひゃい!?」ビクゥ

摩耶「……火ぃ貸せ。オイル切れた」

天龍「は、はい!」

川内(番長と子分……)

316: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/01(月) 23:42:43.98 ID:H52/il9L0

摩耶「……お前、川内に余計なこと吹き込んでるんじゃないだろうな?」フー

天龍「滅相も無い!」

摩耶「あ、そ。別にどーでもいいけど」

天龍「はぁ。しかし何でまた川内に……」

摩耶「ただの興味本位。2ストって乗ったことなかったからな。教えるついでに乗らせてもらった」

天龍「ところで、前のマークⅡはどうしたんスか?」

摩耶「古くなったから売った」フー

川内「摩耶さーん。ラスト一本はー?」

摩耶「吸ったら行くよ。あ、折角来たんだからお前も付き合え」

天龍「あの、何を?」

摩耶「川内の相手。アイツ呑み込み早いし、お前となら結構良い勝負になると思うけど」

天龍「……ハッ。摩耶さんであっても流石に聞き捨てならないッスね。アイツと俺とじゃ歴が違いますよ歴が」

摩耶「速いヤツは最初から速いぜ?」

天龍「そんなヤツ摩耶さん以外で見たことないスねぇ……川内如き、俺の敵じゃねぇ!」

摩耶「おーおー言い切ったな。じゃあやってもらうか」

川内「なになに?」

摩耶「喜べ川内。天龍が夜戦の相手してくれるってよ」

317: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/01(月) 23:46:06.97 ID:H52/il9L0

川内「ホント?天龍が?」

天龍「おうよ。お前との力の差を見せてやるぜ」

摩耶「あ、そいつのカタナな。パッと見ヨシムラ1135Rだけど、中身はナナハンのパチモンだからNSRでも充分勝てる見込みがあるぞ」

天龍「ちょっ」

川内「そのヨシムラなんたらを知らないからよく分かんない」

摩耶「乗ってるヤツと同じでビッグマウスってことだ」ケラケラ

川内「ふーん?」

天龍「ぬぐぐ……」


天龍のGSX750カタナ改
カラーはブラックメタリック
一見するとヨシムラのコンプリートマシン「1135R」だが中身は別物
だが改造点は多岐に渡りパワーはそれなりに出ている模様
自慢はクァンタムのサスと完全コピーの外装


天龍「ま、中身は違えどこのカタナも世界水準軽く超えてるからな。四半世紀前のレーレプなんて子供騙しだぜ!」

摩耶「カタナの方が古いだろうがアホ」

川内「やったー!夜戦だー!」

天龍「ブッちぎってやんぜ!」

摩耶「(ブッちぎるなんて久々に聞いた)で、コースだがその辺周って先にここに戻って来たヤツが勝ち」

川内「番長!説明が大雑把過ぎてコースが分かりません!」

摩耶「うっせぇ眠ぃんだ。最初の信号左行って二個目を右。しばらく道なりに行った後、S字の先でUターンで帰ってくる。分かったか?」

川内「押忍!」

摩耶「あと対向車来るかもしれないからセンター割るなよ。特に天龍」

天龍「げっ、俺?」

摩耶「お前は昔から先走ってすっ転ぶようなタイプだからな。直線勝負ならお前の方が分があるんだから、無理に抜こうとすんなよ」

天龍「うーっす……」

327: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/03(水) 23:21:53.67 ID:e1TAfNTq0

小ネタ 鈴谷建造したから前から考えていた鈴谷ネタ雑談


提督「オーバーレブ!ってあるじゃん」

夕張「ああ、前から>>1がネタ出しに困っているマンガですね」

提督「放って置いてやれ。湾岸とかの汎用性が高すぎるんだ」

夕張「内容はMR2乗ってる女の子が主人公で、確かそのMR2に名前付いてましたね……パトリックさんだっけ」

提督「それブルヴァールだから。確かにあれもMR2だけど、SWだから」

夕張「知ってて言ってます」

提督「まあいい。それで、もしオーバーレブの主要キャラを艦娘に置き換えたら誰だろうと思ってナ」

夕張「ふむ……ではまず主人公の涼子ですね。元陸上選手ということで、スポーツ女子となれば……」

提督「やっぱり長良だろう。多分異論は無いと思う」

夕張「同感です。じゃあ次。S14のサワコ」

提督「足柄」

夕張「ほう。そのチョイスは何故に?」

提督「イメージ的にはイケイケお姉さんって感じだから」

夕張「あー……あの人がお立ち台女王とか言われても、何か想像出来るかも」

提督「だろ?今は何かお局様みたいな扱いばっかりな印象だけど、サワコのキャラにピッタリだと思うんだ」

夕張「では次。EG6のアイカさんは?」

提督「こっからが難しいんだよなぁ。最初の二人はすぐ思い浮かんだんだけど」

夕張「私的には、那智さんとかあなぁって」

提督「男勝りでクールな感じってなると、その辺りだよなぁ」

夕張「プジョーのサリは?」

提督「天然お嬢様だから、熊野か?」

夕張「熊野さんがメイド喫茶で働いたりネットアイドルやったりしますかね」

提督「それな。ノリの良さで云ったら愛宕だろうけどなぁ」

夕張「難しいですね……最後、FDの亜美」

提督「関西弁キャラだからな。それだけなら龍驤か黒潮だけど無理がある」

夕張「あの二人がセクシーパブ従業員だったら完全に犯罪の匂いしかしませんからね」

提督「となると……浦風」

夕張「いや、彼女駆逐艦ですよ。しかも広島弁だし」

提督「だって他に目立った方言キャラって思いつかないし」

夕張「確かに胸は戦艦クラスだからセクシーパブでも売れっ子になるでしょうけど、どのみちアウトでしょ」

提督「最初の二人が決まりすぎてるだけに、難しいなぁ」


329: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/03(水) 23:49:09.20 ID:e1TAfNTq0

夕張「で、それがタイトルの鈴谷さんとどう繋がるんですか?」

提督「いやね、実は鈴谷にピッタリなオーバーレブのキャラ居るんだよ」

夕張「ほぉう」

提督「単行本が手元に無いから巻数は忘れたけど、中盤で出て来た青木カンナってヤツ」

夕張「あれ?どんなキャラでしたっけ?」

提督「あれ、最後に涼子とド突き合いしてたサンニー乗ってる●●●」

夕張「アウトォ!」

提督「でも、鈴谷にピッタリだと……」

夕張「謝れ!今すぐ全国の鈴谷提督に謝りなさい!」

提督「で、熊野を掛けて長良とバトルする、と」

夕張「熊野さんは沙璃じゃないの!?」

提督「だから熊野か愛宕で悩んでたんじゃん。鈴谷がカンナだとしたら、奪い合いになる秀明ポジは熊野にしかならんし」

提督「涼子=長良に嫉妬ってなったら、それまで自分がアイドルだったのにって感じで那珂でも良いかなって思ったけど……流石に那珂に●●●キャラには合わないからなぁ」

夕張「鈴谷さんだって勝手に●●●扱いされたら迷惑ですって!」

提督「でも鈴谷の●●同人ってプリンツや愛宕並に多い気がするけど。>>1が好きなサークルでも鈴谷本出てたしな」

夕張「ノリも良いし重巡トップクラスの巨 だからでしょうけど、そういうの風評被害っていうんですよ!」

提督「じゃあ鈴谷は処 ●●●?」

夕張「せめて耳年増程度の表現にしてください」

夕張「というか散々引っ張ってこんなオチ!?信じられない!」


何かスミマセンでした。

330: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/03(水) 23:57:01.60 ID:e1TAfNTq0

キヲトリナオシテホンペン


ウォンウォン……

天龍「やっぱ2ストはうるせぇなぁ。その辺にオイル撒き散らすなよぉ?」

川内「天龍のだって充分うるさいよ!」

摩耶「ハイハイ、やるぞー。3、2、1……」


摩耶「GO!」


川内「いっけえぇぇ!!」

天龍「行くぜオラァ!」

フロントをリフト気味にスタートする川内NSR。
750ccの排気量を持つ天龍のカタナに引けを取らない加速だ。

摩耶「おー速い速い。天龍のヤツ、口だけじゃないみたいだな」

摩耶「川内にはまだキツかったかぁ。でも天龍だしなぁ」スパー

最初の信号、左の直角コーナーに先に飛び込んだのは天龍のカタナだった。
スタートこそ互角だった両者だが、直線が続くにつれ徐々に排気量による地力の差が出始め、コーナー手前では天龍のカタナが前を行く形となった。
決して軽くない車体をヒラリと倒し、後輪を僅かに滑らせながらクリアーしていく。

331: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/03(水) 23:58:58.03 ID:e1TAfNTq0

続く川内は――

川内「うわっ、後輪滑ってた!あんなのアリ!?」

川内「でもあれで行けるってことは、私にも出来そうね」

2サイクルエンジン特有の乾いた音を響かせ、川内もコーナーへ進入。
まだぎこちないライディングフォームだが、持ち前の運動神経を武器に見よう見真似で天龍のラインをなぞる。
後輪が滑り出す予兆はみられない。

川内「……いけたっ!よしっ!」

直線を挟んで次の右コーナー。
再び天龍は後輪を滑らせつつ駆け抜ける。
負けじと川内も突っ込み重視のラインで暴れるNSRを捻じ伏せる。
年々進化していたNSRの中で最もピーキーな特性を持つと云われた88年式MC18型だが、既に彼女の手中に収まっているようだ。

2コーナー目を抜けたところで、カタナが直線で稼いだアドバンテージは削られ、さながら戦闘機の攻防を思わせる接近戦と化していた。

天龍「なんだよアイツ、しっかり着いて来てんじゃねぇか」

天龍「フフフ……そうじゃなくっちゃ面白くねぇ。ここからが俺の本気だ!」←既に割と本気

パワーに任せて逃げようとする天龍のカタナ。
しかし川内のNSRは全く離れない。

川内「集中集中……」スーハー

川内「勝負どころを見誤るな、テールを追うな、前を見ろ……今は着いて行けているんじゃない、まだ引っ張られているだけ……」ブツブツ

自他共に認める夜戦バカな川内は、裏を返せば好戦的な性格とも取れる。
しかし夜戦という特殊な環境下。漆黒の闇の中で肌に受ける感覚を常に研ぎ澄ましてきた彼女は、同時に状況を冷静な判断力と大胆な即決性を身に付けていた。
特に改二改修を受けてからはその能力は更に磨かれ、豊富な運動量と相まってか冗談でも何でもなく正に「忍者」と呼ぶに相応しい。
最も、それが走りに直接影響するかは別問題ではあるが。

332: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/04(木) 00:00:25.51 ID:lrtWV+UT0

摩耶「そろそろUターン付近か」スパー

摩耶「アイツ、普段はああなのに勝負事に関しちゃクレバーだからなぁ……仕掛けるとしたら、案外あの辺りだろうな」

Uターン前のS字コーナー。
天龍のカタナがアプローチで挙動を乱す。

天龍「ちぃっ!言うこと聞けってぇ、の!」

思いの他離れない川内NSRに焦りが出たのか。強引に車体を引き戻す。
一瞬のロス……川内がほぼノーブレーキで追走する。

川内「ブレーキミスったね……逃さないよ!」

天龍「流石に見逃さねえか……やっちまったな。だが!」

Uターン間際で二台が並ぶ。
インを取ったのは川内NSRだ。
しかし天龍のカタナがラインを潰すように被せて来る。

天龍「これでどうよ!?」

川内「………っ!」

逃げ場が無くなる川内。

333: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/04(木) 00:02:27.45 ID:lrtWV+UT0

しかし彼女は――笑った。

川内「待ってました!」

天龍「……は?」

川内NSRがアウト側へ……二台のラインが交差する。

天龍「なんだそりゃあ!?」

仕掛けたつもりが思わぬカウンター攻撃。
突っ込み重視のライン取りをしていた天龍のカタナはまたも体勢を崩し、その隙にNSRが悠然と旋回。
2ストの瞬発力を活かして一気に加速する。

天龍「クソッ!なめた真似を……!」

慌てて加速体勢に移行する天龍だったが時既に遅し。
NSRは遥か前方へ。

川内「バイバーイ!」ノシ

天龍「ヌガーッ!潰す!絶っっ対潰す!」

しかしこの差は大きかった。
コツを掴んだのか、川内NSRは往路時よりも高いスピードレンジで旋回していく。
直線区間では天龍のカタナが若干差を詰めるものの、結局川内を捉えるまでには至らなかった。

334: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/04(木) 00:04:09.21 ID:lrtWV+UT0

……パァーン

摩耶「おつ、来た来た。ああ?川内が頭かよ」

キィッ!

川内「勝利のV!」

摩耶「あれま。まさか勝てると思わなかった」

川内「えぇっ!?摩耶さん勝てる見込みあるって言ったじゃん!」

摩耶「見込みであって断言はしてねえよ」

天龍「チックショー!川内なんかに負けたぁ!!」

摩耶 m9(^Д^)

天龍「ええいっ指差して笑うな!」

摩耶「だってあんだけ大口叩いといて結局負けてんじゃねえか。てか、何で負けてんだよ」

335: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/04(木) 00:05:33.84 ID:lrtWV+UT0

天龍「……摩耶さんはどっちが勝つと思ってたんスか?」

摩耶「普通に考えればお前だろ。あらゆる面で川内の方が分悪ぃし」

天龍 ガーン

摩耶「で、どこで差したのよ?」

川内「Uターン手前」

摩耶「やっぱそこか」

川内「その前に天龍がミスったから並べたけど、あれ無かったらちょっとキツかったかなぁ」

天龍「……Uターンする時、俺が川内のライン潰したんスよ。そしたら裏をかかれて、アウトからそのままスパーンと」

摩耶「お前のミスが発端か。ザマぁねえな」

天龍「ぬー……」

摩耶「まあソレ抜きで考えても、川内の大金星には違いないな」

天龍「確かに全然振り切れなかったから……どっかでヤられてかもしれないしなぁ」

摩耶「なんだ、今日は随分素直だな」

川内「Uターンまでは天龍の圧勝だったじゃない」

天龍「いや、そもそもミスったのだって俺自身が未熟だったんだし、あんだけ綺麗に抜かれりゃ認めざるを得ないっつーか……」

摩耶「ハハ、こりゃあ明日は嵐だな」

天龍「ひでぇ」

川内「でも楽しかったぁ。こういう夜戦もアリだね」

天龍「まあ、何だかんだで俺も楽しかったよ。またやろうぜ」

川内「うん!次も私が勝つからね!」

天龍「何言ってやがる。次は俺が勝つに決まってんだろ!」

摩耶「眠……」ファー


戦果報告

川内NSR vs 天龍GSX750カタナ改

対戦結果……S 勝利!!

343: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/05(金) 16:08:49.56 ID:WrUaXWUM0

小ネタ そういえば赤城FDの紹介してなかった

「おう赤城ちゃん。よく来たね」

赤城「こんにちはオジ様」
 
「クルマ見せてもらったけど、だいぶ上手くなったみたいだね」

赤城「分かるんですか?」

「伊達に長くこの業界やってないからね。丁寧に乗ってくれているみたいで嬉しいよ」

赤城「いえいえそんな。オジ様方の手腕があってこそです」

「なんのなんの。赤城ちゃんみたいな美人さんに頼まれたらさぁ、こっちもやる気になっちゃうからねぇ!」

赤城「もう、お上手なんですから」

「で、今回ちょっと仕様変更してみたよ。もう少し下からトルクが出るようになったから、だいぶ乗りやすくなってるハズだよ」

「それと、エアロも手を加えてみたんだ。カッコいいでしょ?」

赤城「ええ、流石の一言です。だいぶ印象が変わりました」

「FDも古さは否めないからねぇ。勿論見た目だけじゃないよ。効果は僕自身が実証済だww」

赤城「オジ様もまだまだ元気ですね」

「いやあ、やっぱり好きだからね。でもやってることはタダの暴走行為なわけだし、赤城ちゃんも無理は禁物だよぉ」

赤城「肝に銘じておきますわ」

「まあ僕が云える義理じゃないけどねぇ。頑張ってよぉ赤城ちゃん」

赤城「ハイ!有難うございますオジ様」

「いやぁアッハッハッハ」

加賀(あの人……髭の無いジャ○おじさんみたい)


赤城FD3S RX-7改
RE雨宮フルエアロの赤いV型
内装や快適装備を残しつつ、サイドポート加工、V字マウントの冷却系、大型シングルタービンで武装した本気仕様
パワーは最大450馬力
 

344: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/05(金) 16:13:56.61 ID:WrUaXWUM0

小ネタ 時雨がバンドやったらめっちゃエモそうという妄想

~~♪

提督「ん?なんだこの音」

金剛 ジー

提督「金剛?なにやってんだそんな所で」

金剛「シャラップ提督。今良いトコロネー」

提督「なんだよ、何があるってんだ……」

金剛「バンドよバンド。時雨がギターで浦風がベースネ」

提督「そういえばアイツ、永ちゃんのファンだったな……前に琵琶型ベースを自慢された」

金剛「えいちゃん……?榮倉奈々デスか?」

提督「その発想は無かった」

金剛「でも二人ともカッコいいネ!ブンブンサテライツみたいデース」

提督「ブンブンってことは打ち込みか?というか、金剛もそういうの聴くんだ」

金剛「ドライブ中にかけるとテンションMAXネ!」

提督「お前のハチロク、カーステはおろかエアコンすら無いじゃん……」

金剛「MP3プレイヤー持ち込んで聴いてマース」

提督「素直にオーディオ載せとけよ。どれ、二人の演奏は……?」

浦風 ←踊りながら機材を操作

時雨 ←不規則なステップを踏みながらテレキャスターを振り回している

提督「なにこれ」

345: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/05(金) 16:23:24.61 ID:WrUaXWUM0

提督「え?え?●●●●揺れてるのは嬉しいけど……え?」

金剛「ワンダフォー。リズムにノってるヨ」

提督「いや、時雨はハードコアバンドのギタリストか?ATDIの頃のオマー・ロドリゲスみたいになってるじゃん」

金剛「もしくはレディオヘッドのトムかジョニーネ」

提督「あんだけ暴れて音外さないとかどういうことなの」

金剛「OH!浦風もベースに持ち替えたネ!」

提督「ピックガード無しのプレベってやっぱり永ちゃんか……つうか浦風も上手ぇな」

金剛「浦風はスティングも好きでしたヨ」

提督「アイツの趣味、年齢的に渋すぎだろ」

金剛「イイヨイイヨ!」

提督「……時雨が絶叫してる……」

金剛「FOO!」

提督 ←衝撃的過ぎて呆然

金剛「曲が終わったネ」

時雨「ん?やあ提督、金剛。どうしたんだい?」

提督「……むしろコッチがどうしたんだって聞きたい」

金剛「二人ともカッコ良かったデース!最高にエキサイトネー!」

時雨「え?二人とも僕達の演奏を見ていたのかい?ちょっと恥ずかしいな……」テレテレ

浦風「まだまだ下手じゃき、隠れて練習しとったのにぃ」

金剛「演奏終えたらいつもの二人ネ」

提督「……ど、どうしたんだ時雨!何か嫌なことでもあったのか!?山城にいびられたのか!?」ガシッ

時雨「??」

346: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/05(金) 16:26:14.07 ID:WrUaXWUM0

朝・工廠

夕張「ボディは何とかなりそうね。良かったぁ……リヤゲート歪んでる位は覚悟してたけど」

夕張「あとはエンジンホルダーも来たことだし、一回エンジン降ろしてみようかしら。そうなるとやること多いなぁ」

川内「あ、夕張だ。またやってるの?」

夕張「またっていうか、夜通しやってたから……そっちは?摩耶さんと出かけてたんでしょ?」

川内「まあね。天龍に会ったから一戦交えちゃった」

夕張「マジ?どうなったの?」

川内「勝ちっ!」ブイッ

夕張「おーやるぅ」

川内「ま、実のところあっちがミスってくれたおかげで勝てたようなもんだけどね」

夕張「それにしたって、乗り始めて数日しか経ってないんだから上々じゃない」

川内「まあまあ、そんなに褒めないでよ」テレテレ

夕張「それに比べて私は……初戦でぶつけて……」

川内「夕張って結構自虐的だよね」

夕張「あ、でNSRはどう?」

川内「バッチリ!直線は天龍の……カタナだっけ?ちょっと離されたけど、思った通りに動いてくれるし」

夕張「それなら何より。でも只でさえ古いバイクだし、2ストは今となっては気難しい所もあるから、メンテナンスは怠っちゃダメよ?」

川内「えー。夕張が直してくれるんじゃないのぉ?」

夕張「工具貸すから自分で直せる様にしなさい」

川内「ぶーっ。ケチ」

夕張「私は私で忙しいの。ワンエイティもこんな状態だっていうのに」

347: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/05(金) 16:29:43.81 ID:WrUaXWUM0

川内「そっちはどうなの?」

夕張「奇跡的に見た目ほどダメージは無いわ。正直ダメかと思ったけど」

川内「ふーん。どうせなら新しいボディにしちゃえばいいのに。こうパカッと」

夕張「……チョロQか何かと勘違いしてない?」

川内「え?出来ないの?」

夕張「アンタねえ……」

川内「ね、ね。直ったら、私と勝負する?」

夕張「一回勝った位で調子に乗らない」

川内「テヘッ。だよね」

夕張「そもそもバイクとバトルなんて怖すぎるから嫌だ」

川内「なんで?」

夕張「スピードレンジ、ブレーキのタイミング、ライン取り……全部が全部違うもの」

川内「そうなの?」

夕張「提督が言うにはね。確かに都高で見かけることもあるけど、お互いのことを信頼してないと絡んで走るのも難しいわ」

川内「夕張は私のこと信頼できないの?」

夕張「川内のことは信頼してるわよ。でもアンタはまだまだ初心者、私は……自分の腕そのものにまだ自信が無いし、当分は無理ね」

川内「ふーん。そんなもんかぁ」

夕張「ところで、立ち話する位なら手伝ってもいいのよ?」

川内「別にいいよ。どうせ暇だし」

由良「夕張、差し入れ持って来……って、川内も来てたの?」


348: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/05(金) 16:31:21.98 ID:WrUaXWUM0

執務室

提督「ヅホー。鉄火面乗らせてくんない?」ヘケー

瑞鳳「えー……どうせ都高とかで飛ばすんでしょ?」

提督「否定はしない」

瑞鳳「じゃあヤダ」

提督「何でだよぉ。夕張にクルマ貸しちゃったから乗るもん無いんだよぉ」

瑞鳳「嫌ですぅ。私は提督さんや夕張と違って普通に乗りたいからダメ」

提督「お前RSターボだぞ?ちょっとは踏みたくなるだろ」

瑞鳳「気持ちは分からなくないけど、公道でレースするような人は信用出来ませーん」

提督「サーキットだったら?」

瑞鳳「タイヤとオイル代出してくれるなら考えてあげる」

提督「むぅ……」

コンコン

瑞鳳「ハーイ、どうぞー」

金剛「Hey提督!ご機嫌イカがー!?」

提督「イカは嫌いなのです」

瑞鳳「そうなの?」

提督「いや、普通に食べるけど」

金剛「今はイカの話じゃないネ!ちょっと相談にのって欲しいヨ」

349: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/05(金) 16:34:25.96 ID:WrUaXWUM0

提督「は?クルマ買い換える?」

金剛「イエス!それで、どんなクルマがベストチョイスか考えているネ」

瑞鳳「ハチロクはどうするの?」

金剛「使えるパーツは比叡に譲るつもりデス」

提督「あんな仕様じゃ売るに売れないだろうしなぁ。で、候補はあるのか?」

金剛「NSXかS2000で考えてるヨ。他に良いのがあればそれも検討するネ」

提督「その二台を選択した理由は?」

金剛「コーナリング性能と、何処からでも踏めるパワーが欲しいヨ」

提督「フム……その二台ならS2かな」

瑞鳳「NSXじゃないの?排気量も大きくてミッドシップだし、条件的には有利だと思うけど」

提督「どっちに乗りたい?って聞かれたらNSX一択だけどナ、そういう次元の話をしてるわけじゃないだろ?」

金剛「イエー。どちらがより実戦的かデス」

瑞鳳「どういうこと?」

提督「どっちも乗ったこと無いから、あくまで仮定の話になるけどな。二台ともホンダが送り出したピュアスポーツには違いないけど、スタート地点が異なる」

提督「特に初期のNSXはラグジュアリー思考が強い。本気になったのはタイプR以降と考えて良い。それでも最初から本気だった32Rのニュルのタイムが殆ど変わらないってのもスゴいけどナ」

提督「一方S2は最初からマジだ。ホンダのFRはS800が最後だったせいか、過剰な程にナ」

提督「ただ瑞鳳の言う通り、NSXが有利な部分もある。排気量の差はどうしたってデカい」

提督「本当に速いエンジンってのは、俺はトルクが重要だと思ってるのヨ。だからってディーゼルが良いって話じゃないぞ?」

提督「金剛は分かるだろ。ハチロクにスーパーチャージャー付けてたしな」

金剛「イエス。低回転域からでもパワーが出るようにしたかったからネ」

提督「どんなにパワーがあるエンジンでも、ピークまで回せるトルクが無きゃ宝の持ち腐れだ。まあパワー出せばトルクはある程度ついて来るし、ノーマルならさほど気にしなくていいだろうけど」

瑞鳳「ああ……だからレブチューンモーターの評価ってボロクソなのね」

提督「ありゃあ最高回転数も低い上に上位互換が多過ぎるから……ってお前、ミニ四駆やるんか」

瑞鳳「嗜む程度にねっ☆」

350: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/05(金) 16:39:06.29 ID:WrUaXWUM0

提督「で、話を戻すと……S2が優れていると思うのはパッケージングだ。それに尽きる」

瑞鳳「NSXは?」

提督「本気で造る気があったら既存のシャシーなんて使わずに最初からエンジン縦置きだろ。ちょうどホンダはF1で常勝、日本経済もバブル期で上昇中の頃だし。その分クッソ高くなるけど、ポルシェやフェラーリの層は取り込めたハズだ」

金剛「途中で韻を踏みましたネ」

提督「うるせえ。事実、JGTCでは最速の車両と評されたが、初年度はマクラーレンF1にはRとスープラと共にフルボッコにされて、後年は横置き故の重量バランスに頭を悩まし、結局は縦置きになった。他のMRもそうだったけどな」

瑞鳳「マクラーレンは仕方ないんじゃ……」

提督「まあな。でもNSXだって最初はル・マンGT2車両使ってたんだぜ?スープラに到っては原型が無いし」

瑞鳳「あー……エンジン3Sだし、グループCの足回り使ったりしてたものねぇ」

提督「別にNSXのネガキャンをしたいわけじゃないけど、その点S2のパッケージングは最初から完成されている。S2の方がよっぽど採算度外視ってわけ」

提督「あとは整備性だな。横置きミッドは狭くて面倒だし」

金剛「ふむ……」

提督「最初にも言ったけど、俺はどっちも乗ったことないからあくまで仮定の話だ。所詮スペックの数字だけで判断するガキンチョと変わらない意見だと思ってくれ」

金剛「例えば……排気量アップしてターボorスーパーチャージャーを付けたとして、ループウェイでインターセプターに勝つ事は可能デスか?」

瑞鳳「インターセプター?月光?雷電?」

提督「……まあそこまで仕上げることが出来るなら、な。NSXでもS2でもお前なら圧勝だろう」

提督「勿論、タダで墜とされないけどな」ニヤッ

金剛「上等ネ」ニヤリ

ドドドドドド……

瑞鳳「ふぇ!?なに!?ジョ○ョ!?」

叢雲「うっさい!仕事しろ!」←非番

提・金「アッハイ」

若葉「ブライアン・ダウン」

357: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:04:50.95 ID:GXWyvtea0

夜・由良部屋

由良「……何でいつの間にか私の部屋が溜まり部屋になってるの」

川内「気にしナーイ」ピコピコ

夕張「ちょっと!ぶつけてこないでよ!」ピコピコ

由良「ゲームなら自分の部屋でやりなさい!」

川内「だって夕張の部屋散らかってるし」

夕張「川内の部屋は何か……うん」

由良「……ほっんとにもう。コイツらは……」

川内「あ、ここってこんな感じで曲がれる?」

夕張「あー。そこ出口に大きめのギャップがあるから実際に通ったら死ぬ」

川内「おk、把握」

由良「さっきから何のゲームやってるの?」

川内「都高速バトル」

夕張「イメトレよ。イ・メ・ト・レ」

由良「ホントに自分の部屋でやってよ……んもぅ」

川内「由良もやる?」

由良「結構です」

夕張「由良さんったら付き合い悪いと思いませんこと?川内さん」ヒソヒソ

川内「ええ全くですわね夕張さん」ヒソヒソ

由良「いい加減にしないと引っ叩くわよ」

夕・川「キャーコワーイ><」

由良「何なのこの無駄に息の合ったコンビネーション……あとその顔やめて」

358: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:07:17.10 ID:GXWyvtea0

由良「というか、所詮ゲームでしょ?そんなんで何か分かるの?」

川内「んー……道を覚えてられる」

夕張「ぶっちゃけ私もこれで覚えました」

由良「地図でも見てればいいじゃない」

川内「でもさー、ほら……地図上じゃ予測は出来ても、見える風景って見ないと分からないしさ」

夕張「これが結構リアルでさ、行って見ると『ああ、ここか』って分かるのよ。十年前のゲームだけど、よく出来てるわ」

由良「ふーん……」

川内「いっそハンドル型のコントローラーでも使ってみよっか?」

夕張「アリねそれ」

由良「それは自分の部屋でやってよね、マジで」

夕張「それでも由良が言う通り、所詮ゲームっては思うよ。いくらリアルって云っても、やっぱり仮想現実でしかないから」

由良「クルマぶつけてもリスクがないって?」

夕張「そー。だからコイツ、わざと私にぶつけて無理矢理コーナリングしようとするし」

川内「勝てば官軍っしょ!というか、夕張が遅いんだって」

夕張「アンタがオーバースピードで突っ込み過ぎなだけでしょ」

由良「リアルファイトになりそうね」

夕張「……それと、百聞は一見にしかずでさ。実際に目で肌で経験したことには勝てないのね、やっぱり」

川内「ゲームでは最速でも実際は鈍足的なね」

夕張「ありがちww」

359: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:08:36.15 ID:GXWyvtea0

由良「じゃあ二人に質問。体験した結果、何処が違ったの?」

夕張「……視点かな。当たり前な話だけど、仮想と現実はイコールではないじゃない」

夕張「やっぱりゲームはゲームで楽しむ為に作られているからさ、全体がハッキリ見渡せるるように出来ている。で、いざ現実を目の当たりにすると見えないものの方が多い。カーブの曲線率や圧迫感も全然違う。初めて走った時は、こんなん命が幾つあっても足りないわって思ったわ。今でもそうだけど」

川内「私はまだ乗り始めたばっかりだからあんまり小難しいこと考えられないけど、空気感っていうのかな。それかなぁ」

川内「でも夕張の云うこともすっごく分かる。実践したらやっぱ怖いもん。特にバイクじゃ生身だし、伝わってくる空気は体験しなくちゃ分からないよね。所詮コントローラーじゃただ押すだけで何も伝わってこないよ」

由良「あら、川内にも怖いものがあるのね」

川内「艦娘とはいえ人間ですからww」

川内「一歩間違えれば命を落とす。戦場だってそれを忘れたら怪我だけで済まないでしょ。それと同じじゃない?」

360: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:09:30.28 ID:GXWyvtea0

夕張「と言うか、由良のその質問の意図がよく分からないんだけど」

由良「ん?なんとなくね、気になったから」

夕張「さいですか」

由良「夕張はまだしも、川内までハマり始めてるんだもの。ちょっとは理解したいかなって」

夕・川「……ほー」

由良「な、なによ二人して」

夕張「いや、だってやってることは違法行為だよ?普通止めない?」

川内「由良は真面目だからねー」

由良「止めたって聞かないじゃないアンタ達」

夕張「この前だって私のクルマ見てドンチャン騒ぎって言ってたじゃない」

由良「それはそうよ。ホントにウルサイんだから。川内のバイクはもっとウルサイし」

由良「でも頭ごなしに否定するより、相手を知ることもしなくちゃね。いつまで経っても、何で二人がそこまで入れ込むのか分からないもの」

夕張「むぅ……」

由良「本音を言えば賛成出来ないけど、そんなに楽しそうにされちゃ嫌でも気になっちゃうでしょ」

361: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:10:59.56 ID:GXWyvtea0

由良「それにホントは、私も巻き込みたいんじゃない?」

夕張 ギクッ

川内「え?マジなの?」

夕張「だってぇ……やっぱりウチで一番信用出来る人ってやっぱり由良だし、川内はバカだし……」

川内「オイコラww」

由良「うん。それで?」

夕張「その……由良が居たら、ちょっと……心強いなぁって……///」

由良「……なんでそんな乙女な顔してるのよ」

川内「もはや愛の告白だねこりゃ」

夕張「そ、そんなんじゃないもん!」

川内「ヒューヒュー」

夕張「うっさい!」

由良「もう……別に作業を手伝う位ならいつでもやってあげるから」

夕張「ホント!?」

由良「タダじゃやらないけど」

夕張「う……何が条件……?」

由良「そうね……じゃあ、今度の休み、ちょっと付き合って欲しいの。あ、川内もね?」

川内「え?私も?」

夕張「なにするの?

由良「ふふっ。秘密。ねっ?」

362: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:12:17.59 ID:GXWyvtea0

工廠

由良「ところで、ワンエイティは何か手を入れるんでしょ?」

夕張「まあねぇ……最初はいっそ全部作り変えてやろうと思ったけど、ちょっと考えが変わった」

川内「ああー……提督のせい?」

夕張「正解」

由良「どういうこと?」

川内「正確には提督のクルマ、だね」

夕張「この前Hakone行った時に、提督のクルマでバトルしたのよ、金剛さんと」

川内「ゴール手前でハチロクがエンジンブロー。姉妹にまで呆れられる始末で散々だったよね」ニヒヒ

由良「ああ、それがキッカケで金剛さんはココに異動したんだっけ」

夕張「そー。それはいいとして、提督のワンエイティがさ……スゴかった。ホントに同じクルマかって位に」

夕張「ワンエイティってさ、基本的にはスポーツカーじゃないのよ。あくまでスポーツも出来る安価なクーペなの」

由良「あおつらむきにスポーツカーな格好してるのに?」

夕張「確かに見た目はね。足回りも『901活動』のお陰で実は凝った造りをしてるんだけど」

川内「901活動?」

夕張「90年代までに、シャシー性能世界一を目指そうっていう日産独自の取り組みよ。R32系を筆頭に様々な車種にこの考えが取り入れられたわ」

夕張「で、S13系の発端はホンダのプレリュードにあるの。シルビア自体は元々人気車種だったけど、プレリュードの登場によってメインターゲットである若い世代の顧客をガバっと取られたの。そこで日産はそれを奪還しようと、割と本気で作ったのがS13シルビアであり、姉妹車のワンエイティね」

夕張「結果は当たりどころか、大ヒット。見た目もさることながら、素性の良いFR車ってこともあって、見事にプレリュードをやっつけたの。更に売れれば中古市場にも安価で出回るから、そこに走り屋系の兄ちゃん達が目を付けてまた人気が上がる。売れている車種だから色んなメーカーからもアフターパーツが販売されて……という具合に、今日までのイチサン人気を支えているってわけ」

363: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:16:01.26 ID:GXWyvtea0

夕張「これは余談だけど、プレリュードはデートカーとして市場を席巻していたワケですが、実は運転席側から助手席を倒せる機能があったらしくて……」

川内「ほう!」

由良「何のメリットがあるのよそれ」

夕張「分からない?若い男女がドライブデート、良い感じになったところで突然シートごと押し倒されたら……」ガバッ

川内「……優しくしてね///」

夕張「と、このように最強のナンパマシンとして大ヒットしたわけです」

由良「川内の小芝居はなんなの?」

夕張「そして車名の通り、まさに男女の前奏曲が……」ドヤッ

川内「これは夜戦突入不可避ですわ」ドヤッ

由良「顔がうるさい」

364: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:18:24.68 ID:GXWyvtea0

由良「話がとんでもない勢いで脱線しているんだけど」

夕張「おっと、そうだった。まあそんな時代背景もあってかS13って割と本格的に作られているんだけど、やっぱり走りが良いクーペってだけでスポーツカーではないのよ」

由良「でも人気があってアフターパーツも多いなら、ある程度は補えるでしょ?」

夕張「そうね。事実S13系はステージ問わずあらゆる所で使われているし、クルマ自体の懐はかなり広いわ」

夕張「で、提督のワンエイティね。そういう意味ではワンエイティ離れしているのよ」

由良「どういうこと?」

夕張「このクルマ、最大で500馬力オーバーなんだけど……」

由良「500って……あんまりピンと来ないんだけど、そんなにスゴイの?」

夕張「あー……艦とは桁が違うからねぇ。言うなれば、軽巡が戦艦クラスにまでパワーアップさせた機関を載せていると思って」

由良「つまりノーマルに対して遥かにキャパオーバーってことか」

川内「最初めっちゃ振り回されてたもんね、夕張」

由良「川内も乗ったの?」

川内「隣にね。面白かったよ」

365: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:19:40.19 ID:GXWyvtea0

夕張「それでも何とか乗りこなせたのが今では不思議でね……その時はあまりに必死で考えられなかったけど」

由良「ちなみに、夕張のクルマでどれ位出てるの?」

夕張「300ちょいってとこかな。エンジンはあんまり手を入れてないけど、ノーマルのカダロク値が205だから、およそ100馬力の差。コンパクトカー一台分のパワーアップね」

由良「クルマってそんな簡単にパワーが上がるんだ……」

夕張「車種にもよるけど、ワンエイティはターボ車だからね。今となってはSR20で500馬力を出すこと自体は難しくないわ。遥かに手間がかかるだけで」

夕張「私が注目したのはボディ。これがワンエイティ離れしている要因と考えているわ」

夕張「見てもらえば分かる通り、ワンエイティはファストバックスタイル……つまり、荷台との区切りが無いハッチバックなんだけど、後ろの開口部が広いからボディ剛性が弱いの。それがワンエイティの特徴であり弱点とも云えるわ」

夕張「ところが提督のワンエイティはその弱さを感じられない。だから私でも500馬力の高出力車でも乗ることが出来た」

川内「なんで?」

夕張「結局どんなにパワーがあっても、それを伝え受け止めるのは四つのタイヤとボディでしょ。ハチハチのNSRがピーキーと呼ばれる所以もそこにあって、足回りの剛性が高過ぎるから、その分限界を越えると一気に破綻するの」

由良「力の逃げ場が無い分、反動が一瞬で自分に返って来るってことね」

夕張「そういうこと」

川内「よく分からない……」

夕張「手押し相撲だと思えばいいわ。お互いが押している分には倒れたりしないけど、少しタイミングを外されたら押していた方がバランスを崩しちゃうでしょ?」

川内「あー……なるほど」

366: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:21:33.33 ID:GXWyvtea0

夕張「提督のクルマは、それが絶妙なの」

川内「剛性って結局硬さなの?」

夕張「半分正解。それだけならむしろ強度って云うべきね」

夕張「例えばダイヤモンド。鉱物最高の硬度を持っているけど、それはあくまで摩擦や引っかき傷だけで、瞬間的に与えられる力……靱性って云うんだけど、これはそんなに強くないの」

川内「靱性?」

由良「ダイヤは刀で切ることは出来ないけど、ハンマーでは簡単に砕くことが出来るってこと」

川内「マジで!?勿体無い!」

由良「驚くポイント間違っているわよ」

夕張「クルマにおける剛性はボディの強度は勿論だけど、この靱性も重要なの。いかに強大な入力を効率良く受け止めることが出来るか……その点に置いて、提督のワンエイティとしては有り得ない程ズバ抜けている」

由良「海外のクルマは兎に角強度重視らしいね」

夕張「おっ、よくご存知で。特に欧州車は硬さを重視する傾向があって、力を「いなす」っていうのはどっちかと云うと日本的な考えだね」

川内「なんでそんなこと知ってるの?」

由良「TVでヨーロッパの工業特集みたいな番組があったんだけど、向こうだとクルマをガンガンぶつけるのが日常茶飯事だって……」

川内「うわぁ……」

夕張「その国の交通事情もあるけど、バンパーはぶつける為に付いているって考え方だからねww」

夕張「提督のクルマはパッと見だとリヤ周りにロールバーが付いているだけだけど、見えない所には丁寧な補強がされていたの」

夕張「それもただ補強をするだけでは、さっきの靱性が失われてしまう。そこで力をいなす、逃がす部分を作ってあった。これによって粘りを生んでいたの。クルマをよく知り尽くした素晴らしい内容だったわ」

川内「それと夕張が乗れたことに何の関係があるの?」

夕張「さっきも言った通り、ハチハチのピーキーさは剛性の高さに関係しているもの。つまり、限界を超えるとあっという間に破綻するんだけど、ここに粘りが加わることで限界を超えても破綻するまでにまだ幅がある」

夕張「全体的に踏んで安定させる方向に振ってあるけど、それを作り出しているのがボディだったのよ!」

367: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/07(日) 20:22:49.82 ID:GXWyvtea0

川内「お、おー……」

夕張「フッ、私としたことが熱くなり過ぎたわね……」

由良「理屈は分かったわ。要するに、提督のクルマを参考に改めて作り直すってことね?」

夕張「まあそういうことね。特にシャシー側に重点を置いて補強を見直していくわ」

由良「ふーん……じゃあ、エンジン関係はやらないの?」

夕張「うーん……今回はまずそっちかな」

由良「じゃあ、あそこにあるエンジン用と思われるクレーンはなに?」

夕張「そ、それは後々やりたいから買っておきました……」

由良「あんまり工廠を私物化すると、また叢雲に怒られるわよ」

川内「今更な気がするけどね」

夕張「あと、なるべくクルマ全体の重心を下になるようにすれば、少ないパワーでも充分速くする事が出来るはずよ」

川内「ハーイ。重心を下にすると何が起こるの?」

夕張「一番の恩賜は安定性ね。車高を下げても重心は下がるけど、あくまで車高が下がっただけだから効果は薄いわ。更にサスのストローク量が足りなくなったり、最悪それが原因で姿勢を崩す可能性もある。サーキットならまだしも、都高がメインである以上、それは避けるべきよ」

由良「具体的にはどうするの?」

夕張「まずはボディ各部の軽量化ね。上が軽くなれば自ずと重心は下がるし。勿論ただ軽くすればいいってわけじゃないから、各部のバランスを見ながらね」

夕張「それで……実はここに、余っているボーキを使って作り上げたルーフパネルがありまして……これを使おうかと」フフフ

由良「資源を勝手にくすねるな」

夕張「欲を言えばカーボンが良いんだけどね……工廠にオートクレープ(焼き入れする釜)置かせてくれるなら、いくらでも作れるんだけどなぁ」

由良「ピザ釜でも作ってなさい」

川内「カーボンってススのことでしょ?砲身掃除すれば幾らでも出るけど?」

由良「そのカーボンじゃないって」

夕張「やることは沢山あるわよぉ。ウフフ、燃えてきたぁ!」スパナクルクル

由良「ま、手伝うって言っちゃったからね……やりますか」

川内「私のNSRは?」

由良「工具貸すから自分でやりなさい」

川内「えーっ!贔屓だ差別だ横暴だー!」

376: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/08(月) 20:07:40.55 ID:9w/g1U0c0

小ネタ 時雨の演奏動画投稿

時雨「青葉に手伝ってもらって、演奏動画を撮ってみたよ」

提督「ほう、動画ねぇ……」

時雨「映像によって客観的に見ることで、また新たな発見があると思ったんだ」

提督「そうだな。自分では普通だと思っていたことが実は悪癖だったりすることもあるしな」

時雨「ただ……それを青葉が勝手に投稿サイトにアップしてしまったらしいんだ」

提督「またアイツは……」

時雨「僕もアップされたものはまだ見てないんだ。よければ提督も見てみないかい?」

提督「おう。いいぞ。そういえば何を弾いたんだ?」

時雨「ミッシェルのシャンデリヤだよ」

提督「お前、よくあんな鬼畜カッティング曲を弾く気になったな……」

時雨「カッティングはちょっと自信があったからね。でも右手首が捥げるかと思ったよ」

提督「とりあえずシャンデリヤだな……検索っと」


【TMGE】艦娘(白露型)のコスプレでギターを弾いてみた【シャンデリヤ】


377: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/08(月) 20:10:21.37 ID:9w/g1U0c0

時雨「……コスプレ……」

提督「まあ、青葉なりに気を使ったんじゃないか?」メソラシ

時雨「でもコスプレとは心外だね」

提督「とりあえず、動画を見てみよう」


登録タグ 演奏してみた TMGE 時雨(艦娘) カッティングの鬼 駆逐弦鬼 全編ギターソロ
俺の時雨がこんなにアベフトシなわけがない 時雨ちゃんprpr


時雨「タグからしてバレてるじゃないか……」

提督「最後のタグは見なかったことにしよう」

再生……

提督「おー、綺麗に撮れてるな」

時雨「なんだか恥ずかしいかな……」///

提督「しっかし、ホントよく弾けるなこんなん……俺なんか速攻で諦め……ん?」


しぐれぇぇぇ    時雨ちゃんマジ天使  しれぇ    カッケエェェェ
     那珂ちゃんのファンやめて時雨ちゃんのファンになります
  カッティングスゲー 上手い       何で弾けるのwww


提督「おお、コメントも賞賛の嵐だな」

時雨「ぼ、僕はあくまで技術の評価をしてもらいたいんだけどな……」


  時雨ちゃんprpr 時雨ちゃんprpr 時雨ちゃんprpr
 rpr   時雨ちゃんprpr 時雨ちゃんprpr   時雨たーん  prpr
 白露型って意外と●●●●大きいよね しれぇ  さっきから雪風が混じってるぞwww
     


提督「」

時雨「」


この動画は、現在ご視聴することが出来ません(BGM 蛍の光)

378: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/08(月) 20:13:04.18 ID:9w/g1U0c0

朝・食堂

山城「ハァ……不幸だわ……」

最上「山城のソレ、久々だね……急にどうしたのさ」

山城「あら最上……居たの。ハァァァァー……」

最上「今に始まったことじゃないけど、人前でそんな大きな溜め息吐かれると、こっちまで気が滅入っちゃうよ」

山城「ならば他人にこの不幸をばら撒くまでよ……ウフフ……」

最上「ただのテロだね」

山城「私より幸福な人間は皆肥溜めに落ちて養分になってしまえばいいのよ……」

最上「今ドキ肥溜めがある所の方が少ないんじゃないかな……」

山城「だからこそよ……不幸の極みじゃない」

最上「それにホラ、溜め息吐くと幸せが逃げるって言うじゃないか」

山城「逃げるだけの幸せが私にまだ残っているのかしらね……」

最上「……ボクで良ければ、はn 山城「聞いてくれるの!?」

最上「え、あ、うん。ボクと山城の仲じゃないか」

山城「流石最上ね……後で山城スタンプを贈呈してあげる」

最上「山城スタンプって何!?」

山城「姉様が夜な夜な何処かに出掛けているの……帰って来るのはいつも朝方だし」

最上「ボクはスタンプの方が気になるんだけど」

山城「問い詰めても上手い具合にハグらかされるの……こんなこと今まで無かったのに」

最上「扶桑にだって知られたくないこともあるんだよ。山城にだってあるでしょ?」

山城「私が姉様に隠し事……?そんな罪深いこと出来るわけないじゃない!」

最上「あ、そう……」

379: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/08(月) 20:16:01.87 ID:9w/g1U0c0

山城「いっそのこと尾行でもしようかしら……」

最上「瑞雲飛ばせばいいんじゃない?」

山城「ダメよ。すぐバレるわ」

最上「じゃあ……川内に頼んでみる?」

山城「何で夜戦バカが出て来るのよ……」

最上「ホラ、改二になってから忍者っぽくなったでしょ。尾行なんかもお手の物かなーなんて」

山城「あのねぇ……いくらそれっぽい格好してるからって、流石にそれは無理でしょ」

川内「出来るよ」

最上「うわ、ビックリ」

川内「扶桑さんの尾行でしょ?多分出来るよ」

山城「どうやって?」

川内「例えばー……こんなんとか」

ヒュンッ

最上「す、スゴいっ!天井から逆さになってぶら下がってる!忍者だ!」

川内(反転)「どう?名付けて忍法『逆さまになっても髪の毛下がらない』の術」

最上「そっちなの!?」

川内(反転)「夕張が見てたアニメにこんなん出てきて、試しにやったら出来ちゃった」

最上「え、えー……」

山城「ふざけないでちょうだい」

最上「山城……」

山城「スカートも下がってないじゃない!」

最上「真顔で何言ってるのさ!?」

川内(反転)「まあ、どうせ下はスパッツだから捲れても問題ないけどねぇ」ピラ

最上「川内は少し恥じらいを持とうよ!」

380: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/08(月) 20:18:11.98 ID:9w/g1U0c0

川内「で、なんだっけ。扶桑さんの尾行?」

山城「ええ、お願いできる?相応の謝礼なら出すわ」

最上「あのー山城……提案しといてなんだけど、やっぱり扶桑にだってプライバシーがあるんだし……」

山城「……貴方も西村艦隊の一員なら、姉様の最期は分かっているハズでしょ?」

最上「……!」

山城「私はもう……二度と姉様を見失うようなことはしたくないの」

川内「でも艦娘じゃなかったら赤の他人でしょ」ケロ

最上「 」

山城「余 計 な こ と 言 わ な い で く れ る ?」 

川内「ま……艦娘である以上、艦の頃の因果からは逃れられないよねぇ」

最上「ボク、時々川内の性格が怖いとさえ思うよ……」

川内「で、さ。尾行するにしても何か前情報みたいなのないの?何時頃出掛けるとか、行きそうな所とか」

山城「いつも23時頃に出かけているわ。行き先はサッパリね」

川内「ふーん……出かける日に法則性は?何曜日に出るとかさ」

山城「以前は週の中頃だったけど、ここ最近はほぼ連日よ。恐らく今日も出るわ」

川内「了解。じゃあ今夜早速だね」

最上「ホントに大丈夫なの……?」

川内「どうだろうね……尾行するのって初めてだし」

山城「少しでも何か情報が手に入れば構わない。深追いはしなくていいわ」

川内「あら、いざという時はとっ捕まえる位は考えていたけど」

山城「それは貴方の判断に任せる。私用で同僚を使っているのだから、事を大きくするのは避けたいもの」

最上「その辺りの分別はあるんだね」

山城「これでも旗艦経験者ですから。例え姉様であっても冷静さを欠いてはダメよ」

最上(川内を尾行につける時点で冷静では無い気がするけど……扶桑のことだから仕方ないか)

川内「ま、やるだけやってみるけど、期待しないでよね」

385: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:20:39.72 ID:6QV8hbTj0

小ネタ 鈴谷リベンジ

鈴谷「ちょっと提督!この前の何よアレ!」

提督「んん?なんのことですかな?」

鈴谷「惚けるなっ!>>327の鈴谷雑談!建造記念とか言ってひとッつも鈴谷が出てきてないじゃん!」

提督「何を言ってる。ネタとしてちゃんと出ているだろう」

鈴谷「私そのものを出せ私をぉぉぉ!!」

提督「そんなこと言っても、基本的には由良張内の軽巡三人で話を進めたいみたいだしなぁ」

鈴谷「それなら最上型も一応軽巡!艦これでは重巡・航巡だけど!」

提督「とは云ってもなぁ……」

鈴谷「キャラ的にも鈴谷は動かしやすいでしょ!ホラ、出番を!」

提督「仕方ない、こんなこともあろうと一応用意しておいたモノが……」

鈴谷「なになに!?」

HCR32スカイラインGTS-t タイプM

提督「どうだ。バリモンのサンニーだぞ」

鈴谷「 」

提督「やっぱりお前に似合うクルマはこれしか無いと思ってな。いやぁ、探すの大変だったわぁ」

鈴谷「提督……このクルマってさ……」

提督「ああ、そうだ。例のビッt 鈴谷「鈴谷パンチッ!」ドゴォ

鈴谷「鈴谷パンチッ!鈴谷パンチッ!鈴谷パンチッ!」ドドドド

最上「いけない!鈴谷が寝惚けて鈴谷パンチを乱発している!」

熊野「起きなさい鈴谷!今日の占い・カウントダウンが始まりますわよ!」


ネタにしているけど、鈴谷は結構好きなんだ。




386: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:22:35.11 ID:6QV8hbTj0

昼・執務室

金剛「ヌワー……デスクワークは慣れてない分、疲れるネー……」グデー

提督「慣れてないって、前の鎮守府でやってなかったのか?」

金剛「榛名と霧島がやってたヨ」

提督「全く、お前もココに来た以上はそれなりに秘書艦の仕事もしてもらうからな。ちゃんと覚えろよ」

金剛「Mu……出撃するか走りたいデース……」

提督「そういえば気になっていたんだが、Hakoneで会った時に『この辺荒らしまわってるヤツが居る』とか言ってたよな」

金剛「Oh!そうデース。ワタシは会ったことないデスが」

提督「ふーん……じゃあ、どんなヤツか分からないのか」

金剛「イエース。霧島はエンカウントしたみたいだけど、着いて行けなかったと言ってたネ」

提督「霧島もそこそこ腕は立つ方だろ?それが着いて行けなかったって相当だな」

金剛「そうネー。そこらの連中に負けることはまず無いデス。例えプロジェ○トDが来ても沈まないヨ」

提督「ハイハイ。で、俺らを見て反応したって事はソイツもワンエイティなのか?」

金剛「……ん?」

提督「車種だよ車種。霧島のことだから調べてある筈だろ」

金剛「アー……うん、そうですネー……」メソラシ

提督「お前、まさか知らないのに絡んで来たのかよ」

金剛「イヤー……アンノウンなワンエイティが居るから、てっきり……」

提督「あのなぁ……」

金剛「そのお陰で思わぬ大物が掛かったのでノープロブレムネー!」

提督「まあ、そういうことにしておいてやる」

金剛「でもでも、ちゃんと霧島が調べてくれたネ。確かグレーのGTOヨ」

提督「は?GTO?」

387: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:23:57.02 ID:6QV8hbTj0

提督「よりにもよって一番峠に似合わないのが来たな……」

金剛「ワタシ、そのGTOってクルマをよく知らないのデスが、速いんデスか?」

提督「ノーマルはな。当時32Rと真っ向から張り合えた数少ないクルマだ」

提督「3LのV6ツインターボで280馬力にトルクは43.5キロ。80スープラの2JZが登場するまで国内最高値だ。三菱らしく電子制御満載の4WDに、国産初のアルミ4ポット異径対向キャリパー、マイチェンしてからはこれも国産初のゲトラグミッション、純正でも18インチで武装して……挙句オプションにAPロッキードの6ポットまで用意していた。このキャリパーのせいでRがブレンボを付けるようになったとも言われている」

金剛「聞くだけだとかなりのハイスペックネー」

提督「そう、数値上はな」

金剛「どういうことデス?」

提督「兎に角重いんだよ。そんだけ詰め込んだせいか車重は1.7トンだ。今となっては35Rもそれ位あるから気にならないだろうけど、重さの大半がフロントに寄ってるもんだから、まあフロントヘビーで曲がらない。しかもエンジンルームはFFベースの横置きだからギッチギチに詰まっていて整備的にも排熱的にもしんどい。本気で速くしようとするとそれらが足を引っ張るのよ」

提督「そんなもんで三菱の旗艦は後発のランエボに奪われ、GTOはマイナー扱い。今ではGTOと云えば鬼塚になり、ネットでは『神のGTO』とネタにされる始末。華々しいデビューとは裏腹に、実に淋しい終わりを迎えている」

金剛「どこぞの不幸姉妹の様ですネー」

提督「だが性能そのものは侮りがたいぞ?エンジン自体は頑丈、戦車のようなボディ、何よりハイパワー4WDだ。N1耐久(スーパー耐久の前身)ではRキラーの筆頭として凌ぎを削っていた。結局勝てなかったけどな」

金剛「それでも、霧島が負けるとは思えないヨ」

提督「それな。確かにちょっと考えにくい」

金剛「マシンがモンスターか、ドライバーがモンスターか……」

提督「本当にGTOだとしたら、どっちも当てはまりそうだな」

388: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:26:35.20 ID:6QV8hbTj0

夜・工廠

川内「夕張ー、夜偵って何処置いてあったっけ?」

夕張「何に使うのよ」

川内「山城に扶桑さんの尾行を頼まれた」

夕張「何の為に……」

川内「扶桑さんが夜中黙って出掛けるから、何処に行ってるのか突き止めて欲しいってさ」

夕張「どうせ安請け合いしたんでしょ」

川内「だって山城スタンプ貰えるって云うからさあ」

夕張「山城スタンプってなに……」

川内「そもそも最初に質問していたのは私!で、夜偵何処だっけ?」

夕張「ハイハイ……右の棚の上から三段目。これ、鍵」

川内「ホイホイ、サンキュ」

由良「なに?どうしたの?」ガラガラ

川内「うわっ!由良がクルマの下から出て来た!」

由良「そんなに驚かなくたっていいでしょ。足回りを弄ってたのよ」

川内「何に乗ってるのそれ。楽しそう」

由良「この油塗れの姿を見て楽しそうと思うの?」

川内「でも楽しんでるでしょ」

由良「ええ、まあ」キリッ

夕張「それよりアンタも少しは手伝ってくれてもいいのよ?」

川内「私のNSRは?」

夕張「工具貸すから以下略」

川内「絶対やるもんか」

由良(その台詞、湾岸が元ネタだって何人気付いているのかしらね……あえて突っ込まないだけかもしれないけど)

389: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:28:13.84 ID:6QV8hbTj0

鎮守府外

扶桑(私服) キョロキョロ

川内「目標確認。これから尾行に当たります」

山城『了解。くれぐれも注意するように』

川内「あいよー。いやぁ、私服の扶桑さんって新鮮だわぁ。何あの超弩級美人」

山城『何を今更。姉様の美しさは今に始まったことじゃないわ』

川内「ところでさー」

山城『何よ。あんまり無駄口叩かないで頂戴』

川内「いや、今時トランシーバーて……」

山城『倉庫に転がってたのを拝借してきたわ』

川内「携帯あるんだから、そっちにすればいいじゃん」

山城『こういうのは雰囲気作りも大事なのよ』

川内「実は結構楽しんでいるでしょ……」

山城『細かいこと気にしてないで、黙って姉様を追いなさい』

川内「へいへーい……とりあえず目標は市街地に向け移動中」

山城『姉様の様子は?』

川内「何か妙に警戒しているね」

山城『姉様は案外目ざといから、気を抜いたら見つかるわよ』

川内「分かってるってもう……」

川内 トランシーバーを見つめる

川内 トランシーバーを口元へ

川内「ドラーゲナイ……ドラーゲナイ」

山城『ぶっ飛ばすわよアンタ』

390: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:30:36.16 ID:6QV8hbTj0

川内「目標、大通りから埠頭方面へ移動」

山城『姉様の様子に変化は?』

川内「んー……鼻歌交じりに歩いているね」

扶桑「未来だの……願いだの……今にも……ああいう風になりそう……」

川内「でも何か唄が暗いって云うかダークな感じ」

山城『それはいつものことよ。カラオケに行こうもんなら空気を一瞬で御通夜モードに叩き込むことが出来るわ』

川内「扶桑さんもカラオケ行くんだ……」

山城『お世辞抜きで半端じゃなく上手いわよ』

川内「へー……って、あれ?」

山城『どうしたの?』

川内「目標消失。どっか建物入った?」

山城『ちょっと何してるのよ!?』

川内「おかしいなぁ……今まで居たのに」

山城『アンタがお喋りばっかりしてるから!』

川内「山城だって普通に会話してたじゃんよ……」

山城『いいから探しなさい!草の根分けてでも探しなさい!』

川内「草の根って……この辺倉庫ばっかだし」

山城『倉庫ですって?何でそんな所に』

川内「こっちが聞きたいよ。着けてったらココだったんだもん」

山城『周辺に不審な点は?』

川内「なーんも。人っ子一人居ないし……待って。何か聞こえる」

山城『……なに?』

川内「野太い獣の咆哮の様な……なんだろ。動物が居るとは思えないし」

山城『それより姉様!姉様は!?』

川内「だからちょっと待ってって。近付いて来る……」

ヴォオォォォォー……

川内「なに……あれ……」ゾクッ

山城『ちょっと何この音!?』

川内「クルマ……クルマ……なの?」

山城『川内!川内!?何が起きてるの!?』

川内「はは……あんなのが居るんだ……あんなのが……」

山城『応答しなさい川内!川内!?』

391: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:32:18.59 ID:6QV8hbTj0

朝・工廠

川内「……ということで、写真の解析お願いします」

夕張「はぁ。まあお疲れ」

川内「いやー、あんなトンでもないクルマが居るんだね。柄にもなくビビッたわぁ」

夕張「結局扶桑さんは見つからなかったんでしょ?」

川内「まあね。明け方まで粘ったけど成果無し。念の為夜偵を飛ばしてそのクルマを追跡したけど、何枚か写真撮った後に振り切られちゃったみたい」

夕張「夜偵を振り切るって、どんなクルマなのよ……」

川内「だから解析してもらうんじゃない。せめてあのクルマの正体だけでも知りたくて」

夕張「ハイハイ。お、取り込み完了っと」カチッ

川内「で、どう?これで何か分かる?」

夕張「画像が暗いから、車種位しか分からないわね」カタカタ

川内「何てクルマ?」

夕張「これは……三菱のGTOね。最近殆ど見ないけど」

川内「だからロンリロンリー切なくてぇ」

夕張「そっちじゃねえ」

川内「だってクルマは全然知らないし」

夕張「それにしても、そんなに怖がるようなシロモノではないと思うけど……これが一体どうしたのよ」

川内「何て云うかさ……コイツが居る間鳥肌が止まらなかった」

夕張「風邪でも引いたんじゃない?」

川内「レ級を目の前にして同じこと言える?」

夕張「考えたくないわね……」

川内「つまり、そういう寒気がしたのよ。このGTOとかいうのに」

夕張「へー……だとしたら、ある意味レアなモノを見たわね」

川内「どうせならもっと面白い方が良かったけどなー。山城スタンプも貰えなかったしさぁ」

夕張「欲しかったのね……スタンプ」

392: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:33:35.34 ID:6QV8hbTj0

提督「GTOねぇ」

夕張「ええ。提督なら何かご存知かと思いまして」

提督「俺が現役の頃なら兎も角、今聞かれたところで大した情報は持ちえてないぞ?」

夕張「ですよねー……」

提督「岩崎にでも連絡してみるかー……まだアイツの方が詳しいだろうし」

川内「あんな只ならぬ雰囲気を持ったクルマなら、提督も知ってると思ったのにぃ」

提督「しっかしHakoneに現れるっていうののと恐らく同一だろうなぁ」

夕張「Hakoneでも?」

提督「ホラ、最初金剛姉妹と遭遇した時、この辺を荒らしている~とか言ってただろ?どうやらそれも黒いGTOなんだと」

夕張「車種が車種だけに、そう考えるのが妥当ですよね」

川内「そんなにマイナーなのコレ」

提督「ここまで本気仕様のGTOは、現役の頃でも滅多に居なかったな。昔はRと並ぶ湾岸マシンだったんだけど」

夕張「どっちかって云うと、ドレスアップマシンですからねぇ……白色のフルエアロでN 提督「神ネタは嫌いなのです」

川内「丁度扶桑さんを見失ってからコイツに出くわしたんだけど、まさかこれに扶桑さんが乗ってるとか有り得ないよね?」

夕張「まっさかー」

提督「……境遇的に似ているし、何より三菱だからな。有り得なくない」

夕張「ああ、『フソウ』繋がりで……って馬鹿!」

川内「はぁしれはしれ~いすゞのトラック~♪」

夕張「川内も歌わない!しかも違うし!」

夕張「そもそも!ホントに不幸なクルマと云ったら、ST205セリカでしょ!異論は認めない!」

川内「なにそれ」

提督「レギュレーション違反をやっちまった挙句、美味しい所を全てインプやランエボに持って行かれた悲しきWRCマシンよ……先代がチャンピオンマシンだから、余計に悲惨に見えるのな」

川内「違反は自業自得じゃないの?」

提督「トヨタはWRC復帰するみたいだし、次は『バレないように』やれよと言いたいところだ……」

393: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/11(木) 22:35:20.56 ID:6QV8hbTj0

提督「あと個人的にはパルサーGTi-Rとかも不幸キャラっぽい気がする。外車ならフォードRS200とか」

川内「へー。よく知らないけど」

夕張「何で全部ラリーカーなんですか」

提督「だってお前がセリカとか言うから。WRCは珍車・迷車・不幸車の宝庫だぞ?」

夕張「どうでもいいですよ。それにF1だって充分酷いじゃないですか。ファンカーとか六輪車とか」

提督「ティレルP34は名車だろいい加減にしろ」

川内「話に全く着いて行けないんだけど」

提督「おっとスマン。まあGTOについては知り合いに聞いてみるわ」

川内「結局扶桑さんもクルマも分からず仕舞いかぁ」

提督「さっきは冗談のつもりで言ったけど、扶桑さんを見失ってからソレが現れたんだろ?偶然かも知れんが、その辺りも調べてみた方がいいかもな」

夕張「流石に扶桑さんがそういうのに乗るとは思えませんけど……」

提督「人通りの無い埠頭で、入れ替わるように出て来たならちょっとは疑いもするさ」

川内「ねえ提督。提督が現役の頃にも、こういう雰囲気のクルマって居たの?こう見るとゾクッって来るような」

提督「……居たよ」

川内「どんなのどんなの?」

提督「魔物さ……Rの形をした、な」

川内「ふーん?」

夕張「提督?」

提督「いや、何でもない。とりあえず扶桑さんも気になるけど、この件は一旦保留だ」

夕・川「ハーイ……?」



407: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/12(金) 20:00:18.82 ID:XzOq+Vt/0

都高速・湾岸線 大黒々PA

夕張「さて、大黒々に来たわけだけど」

由良「何しに?」

川内「勿論、聞き込み調査!」

由良「何の?」

川内「GTOに決まってるでしょ!」

夕張「川内たっての希望です」

由良「何で私まで……」

川内「まあまあ。たまには三人で出掛けるのもいいでしょ?」

由良「いいけどさ……でも、ここに来てどうするの?」

夕張「実は提督の友人、岩崎さんにアポを取ってもらってあるの」

川内「その岩崎って人の方が詳しいこと知ってるかもって、提督が言ってたからね」

由良「じゃあ、提督はどうして来なかったの?」

川内「面倒だって」

由良「ハァ。で、岩崎さんってどんな人なの?」

夕張「提督と同年代の、爽やかイケメン開業医。ちなみに未婚」

川内「これはなかなかの優良物件ですよお姉さん」

由良「ふむ……確かにアリね」

川内「思いの他喰いついた」

夕張「ただしスピード狂だけど」

由良「……やっぱ無いわ」

川内「手のひら返しキタ」

由良「イケメン開業医でも、スピード狂の方はちょっと」

夕張「でも実物はホントにカッコいいよ?提督なんて鼻くそレベル」

由良「由良はリアリストなので、そういうことする人はご遠慮願いたいわ」

夕張「さいですか」

川内「でもそんなにカッコいい人なら、ちょっと気になるかな」

夕張「そういえば川内も初対面よね。ビックリするよ?」

川内「マジか」

由良「むしろ川内の方が喰いついてる気がするんだけど」

川内「これでも女ですからねっ!」

408: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/12(金) 20:01:27.99 ID:XzOq+Vt/0

由良「で、その岩崎さんは何処に居るの?」

夕張「約束した時間はそろそろだけど……あの人、気配消すの上手いから」

川内「そうなの?」

夕張「かつて都高で名を馳せた時は『ある暑い夜の日、突如現れて最速になった』なんて噂があったらしいし……現れる時はいつも唐突なのよ」

「そうかなぁ」

夕張「そうですよ。最後に会った時も提督と一緒になって私にドッキリ仕掛けてくるし……」

川内「結構お茶目な人なのかな」

由良「その辺はやっぱり提督さんの友達ね」

「まあね。提督とは気が合うんだ」

夕張「提督もだけど、歳を考えてちょっとは自重してください!」

「善処はしてみるよ」

夕張「お願いしまs……って!?」バッ

由・川「へ?」クル

岩崎「やぁ夕張ちゃん。久しぶり」

川内「うわっ!いつの間に背後に!?」

由良「全然気付かなかった……」

夕張「ちょっと岩崎さん!居るなら普通に声掛けてくださいよ!」

岩崎「アハハ、ゴメンゴメン。ところで、君達二人は初めましてだね」

川内「あ……川内型軽巡洋艦、一番艦の川内です!」

由良「同じく軽巡洋艦、長良型四番艦・由良です。はじめまして」

岩崎「うん、よろしく。ところで由良ってことは改長良型で由良型一番艦になるんじゃなかったっけ?」

由良「細かく分類するとそうなりますが、艦娘としては長良型に属しています」

岩崎「そうなんだ。やっぱり勝手が違うのかな」

川内「へー。だから長良達と制服違うんだ。知らなかったよ」ポエ

由良「おい現役艦娘」

夕張「岩崎さん、何でそんなことを知ってるんですか?」

岩崎「読書が趣味だからね。大戦期の本や小説も色々読んで、気になったことは自分で調べていたんだよ」

409: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/12(金) 20:02:47.69 ID:XzOq+Vt/0

川内「それにしても……」

由良「ホントにカッコいい人が来た……」

岩崎「そうかな?提督だって、なかなか男前だと思うけど」

夕・由・川 ( ´_ゝ`)

岩崎「三人とも、どうしたんだい?」

川内「いや、提督●●●●星人だし」

由良「タバコ臭いし」

夕張「最近お腹出てきてるし」

川内「聴いてる音楽はみんな変なのばっかりだし」

由良「オナラも臭いし」

夕張「その上子供っぽいし」

夕・由・川「ナイナイナイ……」

岩崎「見事な全否定だね。提督泣いちゃうよ?」アハハ

川内「それより!聞きたいことがありまーす!」

岩崎「川内さんは元気だね。僕に分かることであれば」

川内「まずはコチラの写真をご覧ください……」ピカー

夕張「なんで探照灯なんか持って来てるのよ。下から照らすな」

由良「小芝居入れないと死ぬ病気なの?」

川内「雰囲気が大切って山城が言ってたから」ピカー

夕張「いいからソレしまって。眩しい」

410: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/12(金) 20:03:59.37 ID:XzOq+Vt/0

岩崎「ふむ、これが提督が言っていた例のGTOかい?」

夕張「ええ。岩崎さんなら何か知ってるんじゃないかと提督が……」

川内「ね!ね!どうなの!ねぇ!」

由良「川内は少し落ち着きなさい」

岩崎「残念だけど僕も詳細は分からないな」

川内「そんなぁ……」

岩崎「ゴメンね。僕も何度か見かけた位だから」

夕張「……え?」

川内「見かけたって、ホントに!?」

岩崎「うん」

川内「どうだった!?どうだった!?」

由良「さっきから川内は何でそんな食い気味なの?」

夕張「知らない」

岩崎「そうだね。確かに川内さんはどうしてこのGTOが気になるんだい?」

川内「……そのクルマを見た時、すっごい寒気がしたんだ。夜戦でも体験することがない程の、強烈な寒気」

岩崎「うんうん」

川内「でもその寒気の正体が分からないのも嫌だし……それに、何て云うのかな。すごく、惹かれる」

岩崎「惹かれる?このクルマにかい?」

川内「うん。だからこそ、このクルマが何なのか知りたい。じゃないと気持ち悪い」

411: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/12(金) 20:04:51.95 ID:XzOq+Vt/0

岩崎「……成る程。よく分かったよ」

由良「私には川内の言ってることがよく分からないんだけど……」

岩崎「由良さんの言う事は最もだと思うヨ。クルマは所詮機械、無機物の集合体でしかない」

岩崎「だけどね、あまりに高度な機械は時として得体の知れない何かに変貌するのも事実さ。例えば君達が使っている艤装……だっけ。愛着を持ったりしないかい?」

由良「え、それはまぁ……」

岩崎「ならばその逆の感情。川内さんが感じた寒気を覚えるような機械があっても不思議ではないと思わないかい?」

由良「ちょっとオカルト染みてませんか?」

岩崎「うん。僕もそう思うよ」クス

夕張「私はちょっと分かるかな。たまにこう……感動したり高揚感を覚えたり、無機物なのにまるで意思を持って問いかけられるような、そんなことがあるの」

由良「そりゃあ、造りに感動したりはするけど……」

岩崎「実はね、僕も昔そういうクルマに出会ったことがあるんだ。そういう魔力みたいなものを持ち合わせたクルマって、確かに存在するよ」

岩崎「そして……このGTOにも、同じものを感じた」

川内「やっぱり!」

岩崎「僕もコイツを見た時は身体が震えたね。川内さんと同じく寒気で震えたのか、それとも武者震いか、あるいは両方か。ああいう感情は久々に体験したよ」

夕張「………!」

由良「どうしたの、夕張」

夕張「ううん……何でもない」

412: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/12(金) 20:05:47.72 ID:XzOq+Vt/0

岩崎「そういえば、夕張ちゃんのワンエイティは大丈夫なの?」

夕張「え、ああハイ。あともう少しで直りそうです。でも、どうしてそれを?」

岩崎「黄色のワンエイティが事故ったって聞いたから、もしかしてと思ったんだ。そういう情報って案外耳に入るんだよ」

夕張「えー……じゃあ私がぶつけたって話、結構広まってるのー……恥ずかしい……」アタマカカエ

岩崎「広いようで狭いコミュニティだからね。あと、この前青葉ちゃんって云ったかな。その娘に会った時にも聞いたんだ」

川内「何故ここで青葉の名前が……」

由良「都高に自転車で行こうとして、時雨に酸素魚雷を撃たれてドッグ行きになったハズじゃなかったっけ」

川内「言葉だけ聞くとまるで意味が分からないね」

岩崎「じゃあ、今日は何で来たの?代車かい?」

夕張「代車と云えば代車ですね……提督のクルマですから」

川内「私は自分のNSRで来たよ!」

岩崎「若いのにまたスゴイのに乗ってるね。懐かしいなぁ」

川内「岩崎さんもNSRに乗ってたの?」

岩崎「いや、僕が乗っていたのはスズキのガンマっていう、NSRのライバルだよ」

川内「へー、やっぱりライバルとか居るんだぁ」

夕張「……あの、岩崎さん。もしかして、あのGTO……」

岩崎「うん。撃墜す(おとす)よ」

夕・由・川「!!」

岩崎「まあ、僕も歳を取ったからね。相手になるかは分からないけど」

夕張「……負ける気なんか無いのに。さっき笑ってましたよ」

岩崎「よく気付いたね」

夕張「何て云うか……GTOを見たって話をしている最中、ふと岩崎さんの雰囲気が変わったんです。そしたら、少し笑っていたから……」

岩崎「……いい歳して、公道レースなんて馬鹿げているだろう?」

夕張「いえ、そんな」

岩崎「……僕はもう降りれない。死んでも悲しむ人は居ないからね。例え愚かな行為だと分かっていても尚、どうしようもなく血が滾るんだ」

岩崎「皆も僕みたいになっちゃダメだよ。折角可愛く生まれたんだから」

夕・由・川「………」

岩崎「それと、提督に伝えておいてくれ。『ケリを着けるなら今だ』って」

夕張「……ケリ?」

岩崎「詳しいことは本人に聞いてごらん。なかなか口を開かないと思うけど」

418: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 01:37:22.08 ID:IWKn6AW+0

執務室

コンコン

夕張「夕張です。提督、起きてますか?」

提督「ん。おお早かったナ。入っていいよ」

夕張「失礼します」ガチャ

提督「おかえり」

夕張「ただいまです」

提督「で、どうだ。岩崎のヤツ何か知ってたか?」

夕張「数回目撃しただけで、詳しい事は何も……」

提督「ま、だろうな」

夕張「ただ、自分が撃墜すると言ってました」

提督「それも予想通りだ」

夕張「あと……ケリを着けるなら今だ、とも」

提督「……それは俺宛か」

夕張「ハイ……」

提督「余計なことを」チッ

夕張「あの、提督……」

提督「ああ、どうせ聞きたいんだろ?顔に書いてある」

夕張「……スミマセン」

提督「ま、別にいいけどさ。昔のことだし」ボリボリ

夕張「提督?何処へ?」

提督「黙って着いて来な。見せたいモンがある」


419: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 01:40:01.73 ID:IWKn6AW+0

街外れ・貸しガレージ

夕張「あの、ここは?」

提督「俺が借りてるガレージ。たまに来ては中のモンを動かしている」

夕張「中のモノ……?」

提督「まあ、見てみりゃ分かる」

ガラガラガラ……

夕張 ゾクッ

夕張(な、何よこの威圧感……っ)

提督「……昔、俺が乗っていたクルマだ」

シャッターを開けた途端、むせ返るような……それでいて鋭利で冷たい空気に、思わず夕張は慄いてしまう。

狭く薄暗いガレージの中、ひっそりと佇むソレはまさしく得体の知れない機械だった。

ただ息を殺し、しかしいつでも飛びかかれる臨戦状態を保った獣……
いや、獣という表現すら生ぬるい。

これは、本当にクルマなのか――?

提督「魔王……かつて、そう呼ばれたクルマだ」

夕張「魔……王……?」

ミッドナイトブルーに包まれたBNR32――。

月夜の仄暗い空の下……魔王と呼ばれるクルマが、そこに居た。

420: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 01:41:30.22 ID:IWKn6AW+0

夕張「なん……なんですか、これ……」

提督「Rだよ。今更珍しいもんでもないだろ」

夕張「見れば分かりますよ!そうじゃなくて……!」

提督「それ以上に何があるんだ」

夕張「こんな殺気を放つようなR、普通なワケがないでしょ!」

提督「クルマは機械だ。人間と違って、殺気なんか放つわけないだろ」

夕張「でも、この雰囲気は異常です!深海棲艦じゃあるまいし、こんな……!」

提督「なあ夕張。アイツ、GTOを撃墜(おとす)って言ったんだろ?」

夕張「え……ええ、ハイ……」

提督「それな、遠回しに『関わるな』っていう忠告だぞ?」

夕張「……は?」

提督「アイツ女には甘いからなぁ。だから結婚出来ないんだよ」

夕張「どういう意味ですか……あとその言葉、完全にブーメランですけど」

提督「人間の感覚ってのは案外正確なもんでさ。お前にとってこのRが本当に殺気を放っているように感じるなら、それは事実でもあり、場に呑まれているだけでもある」

夕張「どっちですかそれ……」

提督「まあ聞け。川内がGTOに感じた寒気みたいなもんは、今まさにお前が感じているものと同等だろう。で、そういうモンに関わると大抵ロクでもない目に合う」

提督「そりゃあ、普段深海棲艦とも対峙するお前らにとったら何を今更って思うだろうが、たかが移動手段の機械がそんな空気を放つなんてやっぱり異常なわけ」

夕張「だから、そう言ってるじゃありませんか!」

提督「もう一度言うぞ?機械が殺気を放つなんて有り得ないんだ」

夕張「っ!?」

提督「お前、神社にあるお稲荷さんとか壊す事出来る?」

夕張「触らぬ神に祟りなし……ってことですか?」

提督「そういうこと。ま、勉強になったろ」

夕張「……全然納得いかないんですけど」

提督「いずれ分かるさ。今の生活を続ける限り、な」

421: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 01:43:58.56 ID:IWKn6AW+0

それから数日後!

夕張「……で?」

由良「なあに?」

川内「何でクルマ屋?」

夕張「むしろショップって感じね」

由良「ちょっと考えていたんだけど、二人ともダートに興味ない?」

夕・川「ダート?」

夕張「なに?ダートラでもやるの?」

由良「正確に言えばラリーね。まずは地方大会のラリーに出てみようと」

夕張「ラリーねぇ……」

川内「卓球やテニスで打ち返し続けることでしょ?」

由良「そっちじゃない」

夕張「面白そうだけど……やっていいものなの?」

由良「提督さんに確認したよ。そしたら……」

(提督「米空軍だってNASCARのスポンサーやってたんだし余裕っしょ」)

由良「……って、鼻ほじりながら応えてくれたわ」

川内「容易に光景が想像出来る分、絵面が酷い」

由良「念の為大本営にも確認したら、常識の範囲であれば普段の趣味にまで言及しないし、艦娘のイメージアップにも繋がるからって快くOKしてくれたよ」

夕張「という事は、スポンサーも……!?」

由良「あ、流石に普通の部費程度しか出ないって。但しちゃんと宣伝してこいとのご通達です」

夕張「そういうことなら金をくれ!!」デチクショオォ

川内「でさー、このクルマ屋に来たのは何の為?」

由良「提督さんの知り合いに、そういうのに強い人が居るからって紹介してもらったの。ベース車両も見つけてもらったの」

夕張「妙に仕事が早いわね……実は結構前から計画してたでしょ」

由良「ふっふーん♪」

422: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 01:45:12.70 ID:IWKn6AW+0

川内「ねえねえ。そのラリーに強いってどんな人?哀○翔?」

由良「その人はカブトムシに強い人じゃない?」

夕張「SSの撮影した後、ホントにラリーやるようになったんだっけ……」

由良「えーとね、その人元艦娘らしいんだけど、今はこのショップの専属ドライバーとして雇われているんだって」

川内「元艦娘!?スゴいじゃん!」

「どーもー。お待たせしましたー」

由良「あ、はじめまして。市川鎮守府所属、長良型軽巡四番艦の由良です。本日は宜しくお願いします」フカブカ

「ワタシはフランスから来た元・アッガーノ型四番艦、ピャン・ラニョティです。どうぞゴヒイキに」

夕張「おうコラ待てや」

「なんですカー。そんなに怖いカオしてー」

夕張「色々アウトだからでしょ!何よアッガーノ型って!?」

川内「むしろイタリアっぽい」

「退役こそしていますが、これでも貴方達の先輩ですヨー」

夕張「アンタ男じゃない!私達は艦・娘!これじゃあ漢隊コレクションになるでしょうが!」

由良「なにをグダグダ言っているの夕張。折角ピャンさんのご好意でクルマも安く譲って頂けるのに」

夕張「このツッコミ所しかない状況で何でそんな普通なの!?」

由良「ピャンさんはスゴい人なのよ。モンテカルロラリーをルノー・5で制したり、晩年はクリオ・マキシを巧みに操りFFの神様とまで呼ばれていたの」

「後輪?なにそれ?美味しいの?」

夕張「完全にジャン・ラニョッティじゃない!」ガビーン

夕張「愛称で考えたらジャコウでも良かったでしょ!?シャポウ・ジャコーみたいな!」

423: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 01:48:53.20 ID:IWKn6AW+0

由良「よく分からないけど、まずはクルマを見せてもらいましょう。お願いします、ピャンさん」

「OK!こちらネー」

川内「アハハ。楽しいね」

夕張「私がおかしいの……?この状況に着いて行けない私がおかしいの……?」

由良「もう。夕張ったら、いい加減にしなさい」

川内「細かいこと気にしすぎだよぉ」

夕張「アンタ達が大雑把過ぎるのよ……」

「今回キミ達に紹介するのは、このマッスィーンさ!」

由・川「ぉおーっ!」

夕張「何よもうー……って、インテR?」

「ウイー!DC2インテグラ・タイプR!98スペックですヨー」


DC2インテグラ・タイプR
インテRをラリー競技用に改造したマシン。
内装はロールケージが張り巡らされ、助手席側にはラリーコンピューターも装備。
エンジンはレギュレーション上ほぼノーマルだが、その他必要な装備は全て揃っている。
ラリーカーなので勿論ナンバー付き。
カラーはホワイト。

424: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 01:52:07.32 ID:IWKn6AW+0

夕張「……思っていた以上に本格的ぃ……」

「このままでも充分ラリーに参加できますヨー」

「ただし、パーツは殆どリビルド品や他の選手が使わなくなった余りモノだから、古いモノも多いヨ。気に入らない所は自分達でどんどん変えてクダサイ」

川内「スッゲー!カッコイー!」

由良「まさかここまでのモノを……本当にあの金額でいいんですか?」

「ウイー!提督さんにはお世話になったから、大丈夫ハカセよ!」

夕張「アンタ絶対日本人だろ」

川内「ねえ由良。どれ位の金額なの?」

由良「ちょっと耳貸して」ゴニョゴニョ

川内「うー……それって安いの?」

夕張「え?幾ら?」

川内 ゴニョゴニョ

夕張「……は?ここまで揃ってるのに?ウソでしょ?」

川内「あ、やっぱ安いんだ」

夕張「ピャン様。先程までの数々の非礼、心よりお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした」ドゲザ

「全く気にしてないので顔を上げてくださーい。ワタシこまりんこネ」


こうして我らが三水軽巡トリオは新たなマシンを手に入れ、
未踏のステージに向け着々と準備を進めるのであった!

頑張れ軽巡!負けるな軽巡!
市川鎮守府艦娘ラリー部の戦いは、これからだ!

続く!

435: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 22:07:32.17 ID:NBjQKiM40

小ネタ ジャン・ラニョッティ

フランスの英雄。元プロレーサー。
ラリードライバーのイメージが強いが、ル・マン等の耐久レース、フォーミュラにも参戦していたりする。
ルノーのワークスドライバーとしてその名を轟かせ、96年に引退後はルノー名誉広報部長に任命されている。
WRCドライバーの例に漏れず、頭のネジが全部ぶっ飛んでいるようなドラテクの持ち主だが、特に晩年のクリオ・マキシでのドライビングは圧巻で「これホントにFF?」と目を疑いたくなる、有り得ない挙動と速度でドリフトをかましていた。
その前は5ターボを操っていたので駆動方式は問わず人々を魅了していたが、一部では彼をFF神と崇めているとか。
陽気でサービス精神旺盛な人柄。得意技は360度ターン。
ちなみに、TAXiのスタントドライバーもこなしている。


「これがワタシの簡単なプロフィールです」フゴフゴ

夕張「何でメロン熊の頭被っているのよ」

※被り物が好きらしい。

436: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 22:08:47.98 ID:NBjQKiM40

小ネタ2 重大な事実

工廠にて夕張ワンエイティを整備中……

由良「ところで夕張」

夕張「ん?どっか分からないことある?」

由良「じゃなくて、提督のクルマ。>>364で軽巡が戦艦並みの機関を載せた感じって説明したでしょ?」

夕張「ええ。ワンエイティはミドルクラスだし、例えとしてはピッタリだと思うけど」

由良「由良って九万馬力あるんだけど」

夕張「へ?」

由良「長門さん(=八万二千馬力)より出力あるんだけど、この場合ってどうなのかな?」

夕張「 」←五万七千馬力

全 く 知 ら な か っ た 。

437: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 22:10:14.28 ID:NBjQKiM40

朝・工廠

夕張「あー……っ」

由良「やっと終わったね……」

夕張「長かったぁ……ありがとね、由良」

由良「どういたしまして」

叢雲「夕張、装備開発依頼書よ……ってアンタ達、またやってたの」

夕張「あ、おはよー……」

由良「眠ーい……」

叢雲「徹夜明けの割には随分清々しい顔してるわね。修復終わったの?」

夕張「何とかね。由良が手伝ってくれなきゃ、まだ半分も終わってなかったわ」

叢雲「そう。ところで……何でまたクルマが増えているのかしら」

由良「ああ……その件については提督さんにも許可を貰っているけど」

叢雲「それはおかしな話ね。私が聞いたのはあくまで競技用のクルマだけで、そこのオレンジ色のオープンカーについては知らされていないわ」

由良「オレンジ?」

夕張「へ?そんなの何処に……」

提督のワンエイティ
瑞鳳の鉄火面
金剛のハチロク
ラリー用インテR

何処かで見たようなオレンジ色のS2000 ←New!

夕張「何か有名レースゲームにも出てきた某峠の魔王号みたいなS2が居るーっ!?」

由良「そんな!?いつの間に……!?」

叢雲「あんな派手なクルマなのに、今まで気付かなかったわけ?」


438: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 22:11:36.06 ID:NBjQKiM40

叢雲「アンタ達じゃないなら、一体誰のクルマなのよ?」

夕張「そういえば金剛さんがS2かNSXに乗り換えるとか言ってたような……」

叢雲「へえ。じゃあそこのオンボロは処分するのかしら」

夕張「さあ……どうだろ」

叢雲「ま、この際どうでもいいわ。いちいち注意するのも面倒になってきたし。はいコレ、今日中にお願いね」

夕張「あ、うん」

叢雲「……それと」

夕張「?」

叢雲「ラリーの方だったら、私も応援するわ。頑張ってね」ニコッ

コツコツコツ……

夕・由「………」

夕張「……デレ?」

由良「由良、わかんない」

夕張「あの娘、ホントに駆逐艦よね……?」

由良「改二になってから色気増したよね」

夕・由良(私達も改二……なりたいなぁ)

439: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/13(土) 22:12:31.70 ID:NBjQKiM40

提督「お、ようやく直ったか」

由良「あ、提督。おはようございます」

夕張「……おはようございます」

提督「何か立ち姿が変わった様な……気のせいか」

由良「補強の部分を見直したので、その影響もあるかもしれないですね」

夕張「………」

由良「夕張?」

夕張「ひゅいっ!?」

由良「どうしたの、ボーっとして」

夕張「寝てない!寝てないってば!」

由良「え?寝てたの?」

提督「ま、どうせ今日も徹夜してたんだろ。今日は暇だからのんびりしてな」

由良「それはちょっと嬉しいかも」

金剛「Hey!提督!ワタシのニューマシン見てくれました!?」バァン

提督「むしろ年中通して暇な方だから、平常運転とも云えるけどな。アイツみたいに」

由良「アハハ……」

金剛「ムム、何かバカにされた気がするデース」

提督「そんなことはないよ。ハハッ」


金剛のS2000
カラーはオレンジ。
どう見てもアレにしか見えないが別モノである。
エンジンは2.4L化、ボディ各部にカーボンを奢る。勿論GTウイングもカーボン。
ハチロクとは違い今回は快適装備も残している。
NAながら約300馬力を発生。

提督「あれ・スーチャーは?」

金剛「とりあえずNAのまま様子をみて、改めて考えるネ」

提督「どうせ付けるだろ」

金剛「タブンネ」

由良「カッコ良いですね、このクルマ」

金剛「イエー!良いマシンに出会えましたヨー!」

445: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/16(火) 03:48:29.82 ID:zNf9hmrg0

小ネタ ここの人達ならやりかねない

瑞鳳「んぅ~……」

川内「あれヅホにゃん。難しい顔してどうしたの?」

瑞鳳「今ネットオークションで競り合ってるんだけど……何なのコイツ、サクラかな」

川内「私のこと?」

瑞鳳「何の話?」

川内「で、どんなの落とそうとしてるの?」

瑞鳳「中古のザウルス・ジュニア」

川内「なにそれ」

瑞鳳「日産の入門者向けレーシングカーだよ」

川内「へー。ヅホにゃんレースに出るの?」

瑞鳳「んっとね。レースはレースなんだけど、これを使って面白いことしようかなって」

川内「なになに?」

瑞鳳「これをベースに、小さなグループCレプリカを思ってるんだ」

川内「グループC?」

瑞鳳「プロトタイプスポーツカーとも云うんだけど、80年代から90年代初期まであったカテゴリーで、速さだけじゃなく燃費の良さも要求されたレーシンカーよ」

瑞鳳「日本車ではロータリーとして唯一ル・マンを制した787Bが有名ね。でもこのカテゴリーで特に猛威を振るったのはポルシェの956/962Cかな」

瑞鳳「基本的には長距離の耐久レースなんだけど、最終的に予選セッティング用のブースト時には1000馬力を軽くオーバー。最高速は富士のストレート(約1.5キロ程度)で400キロを超えたりと、グループBと並ぶモータスポーツ狂気の歴史と云っても過言ではないわね」

川内「なにそれこわい」

瑞鳳「全くね。当時日産ワークスとして参戦していたレーシングドライバー、星野一義氏と長谷見昌弘氏に『生きて帰って来れてて良かった』と言わしめるほど、アホみたいな速さだったらしいわ。ぶっちゃけ終わってくれて心から安堵したって」

446: ◆v5iNaFrKLk 2015/06/16(火) 03:49:37.61 ID:zNf9hmrg0

川内「……で、何で終わっちゃったの?速過ぎるから?」

瑞鳳「それもあるだろうけど、終了直前に当時F1がターボを禁止したこともあって、F1と一部を共有出来るような大幅なレギュレーション改正を行ったの。でも、それまでのグループCの有り方を全面否定するような改正だったし、日本のメーカーもバブル崩壊によってそれどころじゃなくなったからねぇ……目論見は大失敗して、グループCは衰退。あっけなく幕を下ろしたわ」

川内「はー……そんなのがあったんだねぇ」

瑞鳳「カテゴリ自体は無くなったけど、今でもプロトタイプスポーツカーは数多く存在するし、スーパーGTに出場していた紫電やモスラーなんかは見た目はまんまグループCだったけどね」

川内「ほんでほんで?それがどうしたの?」

瑞鳳「うん。FRPで新しくボディを形成して、それをザウルスのシャシーに載せ変えて小さいグループCマシンを作ろうかなって。だからザウルスじゃなくてもいいんだけど……あっ」

瑞鳳「やったー!落とせたーっ!」

川内「おお、おめでと」

瑞鳳「よーし。これでマーチ85Gジュニアが作れる……っ!」

川内「あ、それが作ろうとしているグループCのクルマ?」

瑞鳳「うん。85年に日産がマーチ社のシャシーを使って作製したマシンで、参戦初年度はスカイラインとシルビアの名を冠していたの」つ模型

川内「スカイラインってヅホにゃんのクルマだよね?前面に名前が書いてあるのに、全く面影無いんだけど……」

瑞鳳「あくまで名前だけ借りた別のクルマだよ。次の年からはR85Vって名前になってたし」


次回 夕張「クルマ買いました!」 後編