前回 【ミリマス】P「次の公演での漫才の事なんだけど」茜「あのさあ」

1: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:38:06.31 ID:Km8gaIol0
茜「ねえプロちゃん、しょうがないからこの前ネタ番組で漫才やったけどさ」

P「ああ、見事だったぞ」

茜「芸人に混じって平然と他所のネタ番組に参加して本日のMVP掻っ攫うアイドルって今までにいたのかな?」

P「少なくとも俺は聞いた事がないな。誇っていいぞ!」

茜「名誉な事だけど!素直に喜べないよ!」

P「茜の漫才のためだけに公演に来てくれるファンもいるくらいだからな」

茜「複雑だよ!そのせいでチケット取れなかった人に申し訳が立たないよ!」

P「そうそう、麗花なんだが」

 麗花『ちょっと北海道に地質調査に行かなきゃいけないので漫才はまた今度ですねー』

P「って訳だから今回も漫才はできないぞ」

茜「麗花ちゃん地質調査するような学部じゃないはずなんだけどなー何発掘するつもりなのかなー」

P「さあ、今回の相方に入ってもらおうか。おーい、入ってくれ」

百合子「失礼します!」ガチャッ

茜「グッ……茜ちゃんの胃が疼く……ッ!」

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引用元: 【ミリマス】P「次の公演での漫才の事なんだけど」 茜「うんうん」 

 

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2: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:39:38.45 ID:Km8gaIol0
P「じゃあ、後は二人でよろしくな」バタン

茜「何故だユリッチ!どうしてこの漫才次元に来た!」

百合子「何故……?愚問ですね。それを知ってどうするんですか?」

茜「ここは生身の人間が理由もなくいていい所じゃない!」

百合子「っ……!……私、人見知りで。アイドルになったら直るかもって思ってたけど、でもダメで。もがいてもがいて、気付いたらここにいたんです!」

茜「つまり人見知り克服のために漫才がしたいと!」

百合子「そうですっ!」

茜「ようしわかった!その熱意、確かに茜ちゃんに届いたよ!」

百合子「ありがとうございます!」

茜「さて、頭悪そうな寸劇はやめてそろそろ真面目にやろっか」

百合子「そうですね」

3: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:41:30.25 ID:Km8gaIol0
茜「ユリッチはお笑いはわかるの?」

百合子「うーん……人並み程度かそれ以下な気がします……」

茜「じゃあとりあえずは色々見てみよう。ちゃんと納得の行くネタ作った方が練習とかも気分が乗るしさ」

百合子「わかりました!」

――――
――

P「うんうん、今回もしっかりやってくれそうだな。百合子に」

 百合子『私、茜さんと漫才をやって自分の殻を破りたいんです!』

P「って言われた時は『漫才じゃなきゃダメか?』と思ったが、この分なら大丈夫だろう!」

――数分後――

百合子「ふはっ!?何で!?どうやったらそんな……そうか、きっとこの警官は既に宇宙から飛来した未確認生物に洗脳されてるに違いない……!となるとこの犯人も危ない!?ああっ、早く逃げないと!今にも警官の身体が裂けて触手で雁字搦めにされて同じように脳を」

茜「戻って来いユリッチ!戻って来ーい!」

――――
――

P「久々に不安な奴が来たな……」

4: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:43:53.57 ID:Km8gaIol0
――当日・舞台袖――

茜「ユリッチ、準備はオーケー?」

百合子「は、はい!だ、だ、大丈夫ですっ!」

茜「……あのさ、この前すばるんとひびきんが事務所で騒いでたんだよ」

百合子「?……はい」

茜「何かと思ったらハム蔵が人の言葉を喋ったとか言っててさ。そんな訳ないと思うじゃん?」

百合子「えっ……!?」

茜「でさ、よくよく聞いてみたら」

 昴『でも、確かに春香が来た時「おはようございまーす!」って挨拶してたんだよ!』

茜「って……」

百合子「そうか……やっぱりハム蔵は人工的に作られた非常に知能の高い突然変異種……おかしいと思ったもん。きっと響さんを利用して劇場で何かを企んで……はっ!な、何でしたっけ!?」

茜「いや……うん、何でもない、何でもないよ。さあ、そろそろ出番だよ!」

百合子「えぇっ!?も、もうですか!?ちょ、ちょっと待ってくださーい!」


まつり『続いては、茜ちゃんと百合子ちゃんの漫才なのです!』

ロコ『アカネとユリコ……とてもアーティスティックな漫才になる予感がします!』

恵美『それじゃ、バトンタッチと行きますか!』

まつり『「文学少女あかね☆ゆりこ」どうぞなのです!』

5: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:45:41.49 ID:Km8gaIol0
イズガンガンガンガンガンガンガンガンガーン オオッ オオッ

茜「はいどーもー!文学少女あかね☆ゆりこでーっす!」

百合子「よろしくお願いしまーす!」

茜「いやー茜ちゃん今日も可愛過ぎて困っちゃうよねー!」

百合子「シェイクスピア『ハムレット』より」

茜「何が!?え、何!?」

百合子「実は昨日、台詞の後に作家と作品を続けると何でも名言っぽくなる事に気付いたんですよ!」

茜「せめて使い時選んで!四大悲劇にあんな台詞出てきたらこっ恥ずかしくて仕方ないよ!」

百合子「まあまあ茜さん、それよりですね。私この間、素晴らしい作家さんを見つけてしまったんですよ」

茜「へえ?百合子ちゃんがそんなに褒めるんならさぞ面白い作家なんだろうねー」

百合子「ただ、いかんせんマイナーなので……皆さん知ってるかどうかわからないんですけど」

茜「まあまあ話してみてよ!知らなくても新しい本との出会いになるしさ!」

百合子「夏目漱石って知ってます?」

茜「知ってるよ!ここにいる誰もが知ってるよ!」

6: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:48:02.27 ID:Km8gaIol0
百合子「漱石というのはペンネームで、本名は闇金の『金』に『之』を『助』けると書いて金之助と言うんですけど」

茜「言葉のチョイス!闇金の助けとか印象最悪だよ!」

百合子「漱石は元々は英語教師でして、その時の有名な逸話があるんですよ」

茜「それ茜ちゃんも知ってるよ!あれだよね、『I love you.』を『我君を愛す』って訳して来た生徒にさー」

百合子「『日本人はそんなことを言わない。脚が綺麗ですね、とでもしておきなさい』」

茜「『月』でしょ!?別に漱石脚フェチな訳じゃないと思う!」

百合子「この教師時代に高浜虚子に勧められて書いたのがかの有名な『我輩は下戸である』なんです」

茜「『猫』ね!お酒飲めない事を偉そうに言うんじゃないよ!」

百合子「この作品は冒頭の一文が非常に有名なんですよ。えーと……あれ……すいません、今ちょっと出て来ないんですけど」

茜「何で出て来ないの!タイトルそのまんまだよ!」

百合子「この『我輩はエコである』が非常に好評を得まして」

茜「『猫』だって!環境保護は勝手にやっててよ!」

百合子「ここから漱石は小説家を志し、『倫敦塔』『坊っちゃーん』と立て続けに作品を発表して行くんです」

茜「『坊っちゃん』だよ!そこ伸ばしたら水に落っこちたみたいになっちゃうから!」

百合子「こちらも冒頭部分はそこそこ有名でして。『親譲りの鉄砲で小供の時から損ばかりしている。』」

茜「『無鉄砲』!子供に銃持たすんじゃないよ!」

百合子「その後漱石は教職を辞してアサヒビールに入社、本格的に職業作家としての道を歩んで行くんです!」

茜「朝日新聞でしょ!ビール会社入ったって小説書けないでしょ!」

7: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:51:17.69 ID:Km8gaIol0
百合子「後ですね、漱石の教員時代の弟子に芥川龍之介という作家さんがいるんですけど……知ってるって方いますかね?」

茜「だから知ってるよ!何で知らないと思ってるの!」

百合子「芥川は基本的に短編小説を書いていて、その中で私は『蜘蛛の糸』という作品がお気に入りなんです」

茜「あーそれも知ってる。あれだよ、お釈迦様が極楽から地獄を覗いてさ」

百合子「はい!カンダタという男が、不忍池で溺れているのを見つけるんです」

茜「血の池だったよね!?不忍池は現世にあるからね!」

百合子「カンダタは生前極悪人でしたが、ひとつだけ善行をした事があるのをお釈迦様は覚えていたんです」

茜「それがタイトルにある蜘蛛に関係あるんだよね。森の中で小さな蜘蛛を一度は踏み殺そうとしたんだけどさ」

百合子「『心の中のリトル・カンダタに聞きました。そうしたら「かわいそうだ」と答えた』」

茜「何で本田チックなの!?誰にインタビューされてんの!」

百合子「とうとうカンダタはその蜘蛛を握り潰して助けてやったんです」

茜「それ助けてないよ!思いっ切り殺しちゃってるよ!」

百合子「後は『羅生マン』という作品を知ってる方も多いんじゃないかと」

茜「『羅生門』!そんなキン肉マンに出てきそうな名前じゃないよ!」

百合子「あらすじだけ紹介しますと、若い男が老婆の衣服を剥ぎ取って素っ裸にしてしまう作品なんですね」

茜「間違ってないけど!間違ってはいないけど!」

百合子「後は『トシちゃん』ですかねー」

茜「『杜子春』だよ!そんな親しい間柄じゃないでしょ!」

百合子「こちらは『何があっても喋るな』と言いつけられた杜子春が、両親のSMプレイを見せられて堪らず声を上げてしまうという話なんです!」

茜「断じて違う!美しい親子の愛の話を汚すな!」

8: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:53:00.51 ID:Km8gaIol0
百合子「とまあ、二人の作家さんを紹介してきた訳なんですが、少しでも興味を持っていただけたでしょうか?」

茜「無理だよ!あの紹介で読みたいと思う訳ないよ!」

百合子「そんなわけで、太宰治と森鴎外をどうぞよろしくお願いします!」

茜「いい加減にして!」

百合子「シェイクスピア『リア王』より」

茜「もういいよ!」

茜・百合子「どうもありがとうございましたー!」

パチパチパチパチパチ

9: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:56:11.94 ID:Km8gaIol0
茜「お疲れユリッチー!どうよどうよ?漫才を終えた感想は?」

百合子「すっごいです!興奮が止まりません!漫才って何かこう……最高ですね!」

茜「ユリッチが満足してくれたなら茜ちゃんとしても何よりだよ」

百合子「そういえば茜さん、今更なんですけど茜さんってこんなに本に詳しかったんですね。知らなかったです」

茜「まあ茜ちゃんだしー?茜ちゃんに苦手な分野なんかないっていうかー?」

百合子「嬉しいです……!こんなに近くに、本の事を語り合える仲間がいたなんて!」

茜「いやーまあね!それほどでもあるけどね!」

百合子「茜さん!今日はとことん語り合いましょう!」ガシッ

茜「ん?あれ?」

百合子「私が思うに、近現代の日本文学って言うのはですね……」

茜「あれ?あれあれあれあれ?」

クドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクド

10: ◆48hmBD0EUg 2015/11/12(木) 23:57:07.69 ID:Km8gaIol0
――後日――

P「茜。百合子とのコンビ、すごく良かったぞ!」ナデナデ

茜「茜ちゃんとユリッチだもの。あかね」

P「次の改築では漫才用の小ホールを作ろうって話もあるぞ!頑張ろうな!」

茜「プロちゃん、茜ちゃん今日は気の済むまで思いっきり寝たい気分なんだよねえプロちゃん頼むよ本当今日は勘弁してよ」

P「次の公演での漫才なんだが――――」


おわり


次回 【ミリマス】P「次の公演での漫才の事なんだけど」 茜「そうかそうか」