役者「監督、お疲れ様です」


監督「おう、お疲れ」


役者「いやー、いつにも増して指導に熱が入っていましたね」


監督「あ？・・・別にいつも通りだと思うが？」


役者「いやいや、普段静かな監督があんなに声を張り上げる事なんて滅多にないですよ」


監督「・・・そうか」


役者「特に・・・本田さんを指導する時とか」


監督「それはあいつが下手くそだからだろ」


役者「そうですかねぇ・・・確かに最初の頃は酷かったけど、今は大分上手くなってきたと思いますよ？」


監督「・・・・・・」


役者「監督も結構、本田さんに期待しちゃったりしてますか？」


監督「・・・これ以上くだらん事言うなら、これからお前に熱血指導してやろうか？」


役者「あはは・・・それじゃ、そろそろ失礼しまーす」ｽﾀｽﾀ


監督「たくっ・・・」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

～346プロ入り口～


監督（さて帰るか、今何時だ・・・あれ？腕時計は・・・）


監督（しまった、練習場に忘れてきた・・・取りにもどるか）

～練習場前～



監督（ん？明かりがついてやがる・・・まだ誰かいるのか？）ｶﾞﾁｬｯ


未央「アンタみたいに勝手な人なんて、もう知らないわ！！」


監督「！？」ﾋﾞｸｯ


未央「アンタの病気の半分は、アンタ自身よ！自分に呪いをかけてるんだわ！！」


監督「・・・・・・」


未央「アタシだってここに来た時は体も弱くて･･･それに、外だって大嫌いだったわ、でも･･･」


未央「マーサやディコンが教えてくれたの、外は宝物でいっぱいだって！！」

未央「・・・う～ん、こんな感じかな・・・」


監督「・・・本田」


未央「え？・・・か、監督！？」


監督「お前、一人で何やってる？」


未央「え、えっと・・・ちょっとだけ、自主練を・・・」


監督「・・・今日の稽古終わってから３時間経ってるが？」


未央「あ、いや、その・・・」

監督「・・・いつも稽古が終わった後、一人で練習をしてたのか？」


未央「いや！一人じゃなくて、今日もさっきまで藍子さんや茜さんが付き合ってくれていたんです」


未央「ただ、私はまだまだ演技が上手く出来ないのでもうちょっと練習していこうかなって思いまして・・・」


監督「・・・」

監督「・・・今日は後、どれくらい練習する予定だ？」


未央「えっと・・・後、１時間くらいしようかと・・・」


監督「そうか・・・４２ページのシーン、やってみろ」


未央「え？・・・で、でも・・・」


監督「いいか本田、未成年であるお前が、一人で残って練習をしている時に何かあった場合、責任は俺にまわってくるんだ」


監督「これから残って練習するときは必ず俺に報告しろ・・・予定が合えば練習に付き合ってやる」


未央「監督・・・」


監督「勘違いするな、まだまだお前は下手くそだから上手くなってもらわないと困るんだ、ただそれだけの事だ」


未央「・・・はい！！」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

～１時間後～



未央「花園は・・・私たちの、こころ・・・」


監督「・・・まあ、及第点だろう」


未央「あ、ありがとうございます！」


監督「さて、１時間たったし、お前は早く帰れ、明日に響くぞ」


未央「はい！・・・あの、監督」


監督「何だ？」


未央「その・・・本当に、迷惑掛けてばかりですみません・・・」


監督「・・・本田」


未央「は、はい」


監督「俺はな・・・本当にどうしようもなく下手くそな奴は即刻切り捨てて別の人にその役をやらせる様な人間だ」


未央「・・・・・・」


監督「だが、今は下手くそでも光るものを感じた奴には全力で指導する、それが俺のやり方だ」


監督「お前がどっちかは・・・聞かなくてもわかるだろ？」


未央「監督・・・」


監督「・・・ちっ、余計な事を喋ったな・・・もういいから早く帰れ」


未央「は、はい！これからもよろしくお願いします！お疲れ様でした！」ｶﾞﾁｬｯ


監督「たくっ・・・俺もどうかしたかな・・・」


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～数ヵ月後、千秋楽公演終了後～



劇団員「「「お疲れ様でした！！！！」」」



日野茜「未央ちゃん！！藍子ちゃん！！お疲れ様でした！！」


未央「お疲れ様ー！ついにやり遂げたねー」


高森藍子「ふふふ、お疲れ様です」


未央「茜ちん、あーちゃん、今まで私の練習に付き合ってくれてありがとう、本当に助かったよ！」


茜「いえいえ！！困ったときはお互い様です！！」


藍子「こちらこそ、私も楽しかったです」


未央「えへへー２人と共演出来て本当によかったよー」


藍子「それにしても・・・突然、居残り練習を監督さんが見てくれるようになった時は驚いちゃいました」


茜「そうですね！！私もビックリしちゃいました！！」


未央「あはは・・・監督には本当にお世話になっちゃったよ・・・」


監督「俺がどうしたって？」


未央「！？」

茜「監督！お疲れ様です！」


藍子「お疲れ様です」


監督「お疲れ・・・本田もお疲れ」


未央「は、はい！お疲れ様です！」


監督「・・・本田、今回初めて挑戦した演劇、どうだった？」


未央「・・・最初は上手く出来なくて、皆さんに迷惑を掛けてしまっている事がとても辛かったです」


監督「・・・」


未央「それでも、あーちゃ・・・藍子さんや茜さん、役者の皆さん、大道具や衣装担当の方々が励ましてくれて」


未央「そして、監督も下手な私を見捨てないで本気で指導してくれました」


未央「たくさんの方々に受けた恩を返せる様に必死に練習している内に、辛い気持ちが「楽しい」に変わっていたんです」


監督「楽しい・・・か」


未央「はい！皆に・・・皆と進んできたこの演劇は、すごく、すごく楽しかったです！！」


未央「監督！皆さん！こんなに素敵な経験をさせて頂き、ありがとうございました！！」

藍子「未央ちゃん・・・」


茜「こちらこそ！私も楽しかったです！！」


役者Ａ「未央ちゃんのメアリ、とてもよかったよー」


役者Ｂ「俺も楽しかったぞ！」


未央「えへへ・・・」


監督「・・・本田」


未央「はい！」


監督「俺も・・・成長していくお前を見ているのは・・・楽しかったぞ」


未央「監督・・・あ、ありがとうございます」ｸﾞｽｯ

監督「あー・・・湿っぽくなっちまったな・・・お前ら！」


監督「今回の『秘密の花園』公演は大成功と言っても過言じゃない出来だった！」


監督「それを祝し、この後、豪華な打ち上げを予定している！俺の奢りだから、遠慮せず盛り上がってくれ！！」


劇団員「「「「ゴチになりまーす！！！！」」」」

茜「うおおお！！燃えてきました！！未央ちゃん！藍子ちゃん！行きましょう」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ


藍子「茜ちゃん、ゆっくり行きましょうー」ﾃｸﾃｸ


未央「あはは・・・うん」

未央「やっぱり、私・・・今、すごく楽しい」




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

終わり

～おまけ、打ち上げ会場～




未央「皆さん！！盛り上がっている所ですが！！私からお知らせがあります！！」


役者Ａ「お！なんだなんだー？」


未央「この度！私が所属する、シンデレラプロジェクト１期生がメインとなるライブを行う事となりました！」


未央「そのチケットを用意しましたので、興味がある方は是非、私たちのライブを見て下さい！」


役者Ｂ「いいねー、俺、見に行くよ」


役者Ｃ「実は私の娘がＮＧのファンでね、喜んで行かせてもらうよ」


未央「ありがとうございます！！」

監督「・・・・・・」


未央「監督！よければチケットどうですか？」


監督「あー・・・悪いがあまりアイドルには詳しくないんだか・・・」


未央「それなら・・・私達ＣＰの曲が入ったアルバムもプレゼントしちゃいます！」


未央「もしよければ、ライブに来てください！」


監督「・・・まあ、考えとくよ」


未央「はい！」



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～数日後、監督の家～


監督「・・・今日は暇だな・・・」


監督「そういえば、本田からＣＤ貰ってたな・・・」


監督「暇つぶしに聞いてみるか・・・」


監督「・・・とりあえず、本田の曲は・・・『ミツボシ☆☆★』・・・よくわからん曲名だな・・・」

　　『燃やせ！友情！パッションはミツボシ☆☆★』


監督「おお・・・はは、騒がしい曲だな・・・」

　　『ミツボシ☆☆★→パッて弾けて飛び乗って　流星』ﾘｭｰｾｰ


監督「・・・なかなか面白い歌詞だな・・・」

　　『ミツボシ☆☆★＝そろって光ってまぶしい！って　ＹＯＵ ＳＡＹ？』ﾕｰｾｰ


監督「・・・結構コールが激しいな・・・」

　　『君がくれた勇気にありがとう！　隣に並ぶみんなの笑顔に感謝ありがとう！！！』


監督「・・・・・・」

　　『ミツボシ☆☆★＝願って頑張って叶えちゃえ！ってＣＡＮ ＳＡＹ！』ｷｬﾝｾｰ


監督「・・・ｷｬﾝｾｰ」ﾎﾞｿｯ

　　『スーパースター　目指すは　六つ星☆☆☆☆★★』


監督「・・・終わったか・・・はは、元気な曲だ・・・」


監督「・・・・・・」


監督「も、もう１回だけ聴くか・・・」

～数十分後～



　　『ミツボシ☆☆★　やっと出会えた鳴り響く歓声！』


監督「うおおおおおおおおおお！！！！！」


奥さん「うるさいよアンタ！！」