本田未央「プロデューサーとのごはん」 前編

464: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:16:03.59 ID:gtcZb9iG0
未央「うぐぐ……でも、あーちゃんは『ゆるふわお散歩』でたまに食レポみたいなことやってるじゃん! だから私たちが負けるのは仕方ないの!」

P「あれは食レポの番組じゃないし藍子もそこまで食レポめいたことやってないがな……まあ、藍子が立ち寄って『おいしいです』って言った店は放送翌日から売上がとんでもないことになるらしいが」

藍子「えっ……そうなんですか?」

P「藍子は本当にうまそうに……というか、幸せそうに食べるからな。今も幸せそうだし、見てるこっちが幸せになる」

藍子「そ、それは……あの、ありがとうございます」

P「なんで藍子が礼を言うんだよ……」

茜「でも、本当においし――あ! プロデューサー!」

P「なんだ、茜?」

茜「餃子、忘れてませんか!?」

P「あ……そういやそうだな。この量だと……うん、まあいいか。じゃあ、そろそろ入れるか」

未央「時間ってどれくらいかかるの?」

P「……適当じゃダメか?」

未央「だと思った。プロデューサーって割りと適当だよねー」

P「お前らのプロデュースはちゃんとやってるからいいだろ」

未央「うん。そこのところは感謝してるよ、プロデューサーくん♪」

P「何様だよ……」

藍子「私も感謝してますっ!」

茜「私も、感謝してますよ!」

P「お、おう……なんか、気恥ずかしいな。とりあえず、ちょっと蓋をしといて、待つぞ」

引用元: 本田未央「プロデューサーとのごはん」 

 

465: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:20:33.59 ID:gtcZb9iG0

――

P「よし、時間だ……」

茜「おお! おいしそうです!」

未央「おいしそ……なんか、ちょっとにおうね……」

藍子「においますね……」

P「餃子を鍋に入れるとおいしいんだが、これが欠点……いや、俺としてはこれもまた楽しみなんだが、好みはわかれるだろうな。つまり、一回餃子を入れたが最後、その鍋の味が『餃子』に染まるということだ……」

未央「……正直、思った以上に染まってるね」

藍子「ここまで変わるものなんですね……」

P「実際食べてないのに言うなよ……というか、もうよそっていいか? 箸で取るのは……できなくもないだろうが、難しいだろうしな。俺が入れるよ」

未央「いいの? じゃあ、お願いね」

藍子「お願いします」

茜「お願いします!」

P「はいはーい……っと。さすがに四人で分けるとこれくらいか」

未央「十分多いと思いますけど?」

P「俺からしたら少ない」

藍子「あの……食べ切れなかったら、私のを」

P「ん、食べるよ」

茜「私は大丈夫です!」

P「だろうな!」

茜「はい!」

P「よし! じゃあ食べるか!」

茜「はい!」

467: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:23:28.62 ID:gtcZb9iG0
未央「……じゃあ未央ちゃんもいただきまーす」パクッ

未央「……おお! 思ったよりもおいしい!」

P「だろー!?」

茜「でしょう!?」

未央「うわっ、二人になってうるささが2倍に……」

藍子「……でも、本当に思ったよりも合いますね。餃子とお鍋。餃子にもそもそも味が付いていますし、それがお鍋のスープの味ととっても合っています」

未央「割りとにんにく強い感じの餃子っぽい? なんか、思ったよりも『餃子!』って感じなんだけど、思ったよりも『餃子』って感じじゃないよね。矛盾したことを言ってるような気がするけど……」

茜「水餃子とも違いますね! 元は焼き餃子用、だからでしょうか」

P「かもな。でも、これは確か水餃子にしても食べれるタイプだから……よくわからん。水餃子の方ならもっと食感はモチモチしている印象だけどな。本当の水餃子の方が鍋には向いているのかもしれないし、一回試したこともあるんだが……俺はこっちのが好きなんだよな」

未央「水餃子をあんまり食べたことがない未央ちゃんが言うのもなんだけど、水餃子よりも焼き餃子の方が皮って薄いよね? これは薄い……というか、お箸で持つのも割りと難しいし。持ち方間違えるとすぐに破れちゃうし?」

藍子「お鍋の中にも破れているものもありますからね……」

茜「だからより餃子の味や風味がお鍋全体に溶け出すんでしょうね!」

468: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:25:42.57 ID:gtcZb9iG0
P「……もしかしたら俺は餃子の味がする鍋が好きなのかもしれない」

未央「普通の鍋は?」

P「好きだ」

未央「だろうね」

P「もうなんでもいいのかもしれない……」

藍子「なんでもいいんですか……」

茜「でも、なんでも好きな方が幸せだと思いますよ! きっと!」

P「実際幸せだからな」

未央「こんな美少女たちと一緒にお鍋を囲めて?」

P「幸せだ。今世界で一番幸せなのは俺だな」

未央「えへへっ……素直なプロデューサーは好きだよ♪」

藍子「ふふっ……世界で一番、は言い過ぎかもしれませんけどね。私も、今、幸せですから」

茜「じゃあ、私たちは世界で一番幸せですね!」

P「かもな。……なんか恥ずかしくなってきた。ちょっと黙って食べるぞ」

469: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:31:32.38 ID:gtcZb9iG0

――

P「……よし、そろそろいいか」

未央「お、するの?」

藍子「するんですか?」

茜「雑炊、ですか!?」

P「ああ。そのつもりだ……ってことで、まずはごはんやら卵やらを持って来て、っと」

未央「手伝うことは?」

P「べつにないな。……ありがとうな」

未央「えっ……うん。えへへ」

P「3人の家のやり方と違ったらごめんな?」

茜「大丈夫です!」

藍子「はい。大丈夫ですっ」

未央「問題ナッシングだよ!」

470: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:37:41.84 ID:gtcZb9iG0
P「ん……じゃあ、まずはこの鍋の汁を沸騰させて、それから白ご飯を入れて混ぜて、また沸騰させる。それから溶き卵を入れて、すぐに蓋をする。で、ちょっと待って……蓋を開けて刻んだ青ネギを入れて火を止めて、混ぜる。で、もみのりを適当に散らして、完成だ」

未央「……やっぱりプロデューサーってなんか手際良いよね」

P「割りと作ってるもんは、な……あと、これは本当に簡単だからそこまで驚くようなことじゃないだろ?」

未央「そうかもしれないけどさあ……」

P「とりあえず、よそうぞ」

茜「はい! お願いします!」

藍子「お願いします」

未央「お願い、ね」

471: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:42:26.87 ID:gtcZb9iG0
P「……よし、食べるか」

未央「じゃあいただきまーす……ん! おいしい!」

茜「やっぱりおいしいですね! 雑炊は雑炊でおいしいです!」

藍子「お鍋の味がしっかりと付いていて……たまに、お鍋の底に残っていたりした具材が混ざっていたりして。それがまた良いですね……」

P「やっぱり雑炊はうまいよなぁ……一つ難点を挙げるとすれば、かなり腹が膨れることだが」

未央「それは確かに……でも、おいしいよ。一口入れてすぐに『おいしい!』ってわかるくらいにしっかりした味なんだけれど、濃いわけじゃなくて、でも薄いわけじゃなくて……あっさりとしながらもしっかり? とかそんな感じ?」

P「……なんか食レポっぽいがめちゃくちゃ適当だな」

未央「文句言われた!?」

472: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:44:48.78 ID:gtcZb9iG0
藍子「でも、『おいしい』ってことはわかりますよね。……飾った言葉じゃないからかな。本当にそう思っている感じで、とっても良いって思います」

未央「あーちゃん……うわーん! あーちゃーん! プロデューサーがいじめるよー!」

藍子「Pさん? 未央ちゃんをいじめちゃダメですよ?」

P「今の流れぜんぶ把握していてそれを言うか……藍子、お前もずいぶん染まってきたな……」

藍子「ふふっ……ごめんなさい」

P「かわいいから許す」

藍子「ありがとうございます♪」

茜「プロデューサー! おかわり、お願いしていいですか!?」

P「早いな!」

茜「おいしかったので!」

P「そうか! 茜! お前はやっぱり愛おしいな! もっと食え!」

茜「いとっ……あ、ありがとうございます! 食べます!」

P「ああ! でも、そこそこにな!」

茜「はい!」

未央「……そう言えば、割りと餃子の味は感じないね」

藍子「そう言えば……確かに、そうかもしれません」

P「それに関しては俺も毎回不思議でな……なんでだろうな」

未央「まあ、おいしいからいいんだけどね!」

P「確かにな! よし、まだまだ……はないが、割りとあるぞ! 腹いっぱい食べろ!」

未央「はーい」

茜「はい!」

藍子「……は、はいっ」

473: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:57:29.99 ID:gtcZb9iG0

――

藍子「……お腹、いっぱいです」

未央「……私も」

P「……俺も割りといっぱいだな」

茜「大丈夫ですか!? 三人とも!」

P「茜は優しいな……俺は大丈夫だ。二人は結構キツそうだが」

未央「私もまあ大丈夫だよー……あーちゃんは……うん……」

藍子「少し……食べ過ぎました……」

P「無理して食べることなかったんだぞ?」

藍子「おいしかったので……」

P「……気持ちがわかるからそこまで強く言えないが、本当に、無理はするなよ?」

未央(私も気持ちがわかる……というかつい最近そうなったばかりだからあんまり言えない)

474: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/05(土) 23:59:18.23 ID:gtcZb9iG0
P「うーん……三人とも、送ろうか? ちょっと時間はかかるかもしれないが……」

未央「あ、それは大丈夫。私たち、今日は三人でお泊り会なので」

P「……初耳だが」

未央「言ってないからねー……プロデューサーも来る?」

P「冗談はやめろ。……でも、そこまでは送っていくよ」

未央「……優しいね、プロデューサー」

P「プロデューサーだからな、当然だ。……じゃあ、片付けたら行くから、準備しとけよ」

未央「はーい」

藍子「はい……」

茜「あ、プロデューサー! 後片付けなら私も手伝います!」

P「……ああ、ありがとう。じゃあ、さっさと片付けて、帰るか」

茜「はい!」

475: ◆Tw7kfjMAJk 2015/09/06(日) 00:01:44.28 ID:8B8qwkmg0

未央「……ねぇ、あーちゃん」

藍子「なんですか?」

未央「本当にプロデューサーも一緒にお泊り会してもいいんじゃない?」

藍子「うーん……いいかもしれませんが、Pさんは言っても来てくれないと思いますよ?

未央「それは未央ちゃんにも策がありまして……」コソコソ

藍子「……それなら、来てくれるかもしれませんね。いいと思います」

未央「よし! それじゃあ、『プロデューサーお泊り会お誘い作戦』……略して『POOO』、始動!」

藍子「おー♪」




497: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 22:23:53.37 ID:ldJgQQnE0

――撮影所

未央「ねぇねぇプロデューサー、今日の撮影、どうだった?」

P「ん? 良かったよ」

未央「む……なんか適当じゃない?」

P「適当じゃない」

未央「それならもっとこう……具体的にどこが良かったとか、ないの?」

P「聞きたいのか?」

未央「聞きたい!」

500: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 22:28:32.04 ID:ldJgQQnE0
P「今回は秋服の撮影だったが、いつもとは違う感じで良かったよ。未央は明るさだけじゃないってことがアピールできた。これは大きいが……誰かに教えてもらったのか? 美嘉……いや、違うな。美嘉もできるだろうが、教えるとなったら……楓さんか泰葉あたりか? どう教えてもらったのかは知らないが、確実に被写体としての意識が変わっていたな。専門外の俺が口出しすることはもうほとんどなくなったってくらい良かったよ。いつもの明るい笑顔もかわいいが、今回見せてくれた控えめな感じの微笑みには惚れそうになった。確実にファンが増える出来だし、仕事も増える出来だろう。……これくらいでいいか?」

未央「……思った以上にベタ褒めだね」

P「それくらい良かったからな。文句あるか?」

未央「いや、ちょっと恥ずかしくて……。それでも、嬉しいの方が上なんだけどね。えへへ」

P「……その笑顔も良いな。女の子が恥じらっている姿っていうのはやっぱり良い」

未央「……これも撮影で見せた方が良かった?」

P「場合によっては、な」

501: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 22:33:45.19 ID:ldJgQQnE0
未央「他の人に見せたくない?」

P「……ノーコメント」

未央「プロデューサーくん、素直じゃないのは感心しませんよ? えへへ☆」

P「……あー、そうだな、未央、何か食べたくないか?」

未央「ちょっと話の変え方強引じゃない? でも、何か食べたいっていうのは確かにあるかも。割りと疲れましたし?」

P「で、何が食べたい?」

未央「いつも通りプロデューサーに任せるよっ」

P「んー……あ、そうだ、ラーメンはどうだ?」

未央「おいしいところ?」

P「たぶん」

未央「たぶんなの?」

502: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 22:38:57.13 ID:ldJgQQnE0
P「実は俺も行ったことがないんだが……前に教えてもらったんだよ。『おいしい』って」

未央「へぇー……誰に教えてもらったの?」

P「別のプロダクションのプロデューサー、だな」

未央「そうなんだ。信頼できる?」

P「ああ。未央が好きな人間に悪い奴は居ないからな」

未央「そういう繋がりなんだ……」

P「で、行くか?」

未央「うん。プロデューサーも初めての店、っていうのは初めてだしね」

P「よし。それじゃあ、行くか」

503: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 22:48:05.67 ID:ldJgQQnE0

――電車

未央「プロデューサーって、ひとりだと色んなお店に行ったりするの? えっと、初めての店。行ったことのない店に」

P「んー……最近はそこまででもないが、ある程度はな。行ったことのない店にふらっと行く、みたいなことにハマっていた時期もあった。ある漫画の影響が大きいと思うが……今はドラマの方が有名かもしれないな」

未央「漫画の影響なんだ……プロデューサーって割りと漫画とか好きだよね」

P「未央も読んでるだろ?」

未央「プロデューサーの影響もあるかもだけどねー……まさかアイドルになって兄弟よりも少年漫画に詳しくなるとは思わなかったよ」

P「置いている漫画の数だけならそんじょそこらのプロダクションには負けない自信がある」

未央「自慢できるかどうかは別だけどねー」

P「まあな」

504: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 22:51:10.26 ID:ldJgQQnE0
未央「そう言えば、電車に乗ったけど……今から行く店って、どこにあるの?」

P「確か新宿だな」

未央「新宿……夜の街だね」

P「一人ではあんまり行くなよ? いや、夜ならどこにも一人ではできるだけ行ってほしくないんだが……」

未央「わかってるよ。行かないって」

P「本当に行くなよ?」

未央「行かないって。未央ちゃんを信頼できないのかなー?」

P「……そうだな。悪かった。担当アイドルを信頼できないプロデューサーなんて……な」

未央「あっ……ううん、私こそ、ごめんね。今のは卑怯だった。プロデューサーは、私を心配してくれただけなんだよね。……ありがとね、プロデューサー」

P「いや、未央が謝ることじゃ……なあ、未央」

未央「なに?」

P「ラーメンを食いに行くだけなのに俺たちはどうしてこんな良い雰囲気になってるんだ?」

未央「……それ、今言う? せっかく良い雰囲気だったのにー」

505: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 22:54:55.03 ID:ldJgQQnE0
P「いや、冷静に考えるとおかしくなってな……未央も思わないか? 俺たち、ラーメンを食いに行こうとしてるだけなんだぞ?」

未央「……確かに、私たち、これからラーメン食べるんだよね。むしろ良い雰囲気のままだったら変な感じだったかもしれない……?」

P「別れ際とかならまだしも、ラーメンを食いに行くわけだからな。良い雰囲気って言ったら聞こえはいいが、バカ話なんかは絶対できない雰囲気っていうのは確かだろ? それはちょっと、な」

未央「そうだね。うん、それを考えるといい雰囲気になっちゃダメだね。プロデューサー、何いい雰囲気にしてるのさー」

P「俺か? ……いや、確かに俺かもな。でも未央にも原因があるだろ?」

未央「えー? 私は――あー、もうちょっとぐだぐだ続けたかったけど、そろそろ新宿だね」

P「ん……そうだな。じゃ、この話はいったん切り上げるか」

未央「そうしよそうしよー」

506: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 22:58:44.28 ID:ldJgQQnE0

――駅

未央「道はわかってるの?」

P「ん、一応……えーと、この出口から出てすぐ……らしい」

未央「らしい、って……もっと詳しくわからないの?」

P「いや、このサイトには『出てすぐ』としか書いてなくてな……」

未央「……下調べは大事だよ? プロデューサー」

P「うっ……ごめんなさい」

未央「うんうん、素直に謝る子は未央ちゃん好きですよ? じゃあ、適当に探そっか」

P「適当に?」

未央「すぐそこにあるんでしょ? どこにあるかはわからなくても、適当に探しておけばいつか見付かるって。時間もないわけじゃないんだし」

P「未央、お前……いや、そうかもな。じゃ、ちょっと歩くか」

未央「うん。……ねぇ、プロデューサー」

P「ん?」

未央「夜道をこうして歩いていると、私たち、どう見えるかな?」

P「兄妹じゃないか?」

未央「恋人? もう、そんなことをアイドルに言っちゃダメだぞ、プロデューサーくん?」

P「言ってないぞ」

507: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:00:02.89 ID:ldJgQQnE0
未央「もー、ノリが悪いなぁ、プロデューサー。せっかくこんな美少女と夜の街を二人で歩けるんだから、もっと嬉しそうにしてもいいじゃん」

P「嬉しい嬉しい」

未央「うわ、すっごく適当だ。そんなに適当に扱われると、未央ちゃん、拗ねちゃいますよ?」

P「じゃあどうしろって言うんだよ……」

未央「え? ……えー、と」

P「考えてなかったのかよ……」

未央「……あ! そうだ。手。手、繋ご?」

P「何がどうなってその発想になったんだよ」

未央「手を繋ぐのって適当な扱いじゃないでしょ? それに、手を繋いでくれないと、私、どこかに行っちゃうかもよ?」

P「……それは困るな。かなり困る」

508: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:00:32.30 ID:ldJgQQnE0
未央「でしょ? だから、さ」

P「ああ。つな――あ」

未央「? どうかした? プロデューサー」

P「いや、見付けた」

未央「……え」

P「……あー、手、繋ぐか?」

未央「……もういいや」

509: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:01:35.41 ID:ldJgQQnE0

――店の前

未央「でも、本当に近いね。『すぐ』って言っても、ここまで近いとは思わなかったよ」

P「まあ、『すぐ』って言ったら本当にすぐってことも多いからな……『すぐ』って書いてあるくせに結構歩かされるようなところもあるが」

未央「あはは、確かに。で、この店は……あら炊きらーめん? の、店、なの? ……あら炊きらーめんって、何?」

P「その名前の通り『あら』で炊いてるんじゃないのか? いや、そういうことを聞きたいか。要するに塩ラーメンだな」

未央「塩ラーメンなんだ」

P「ああ。……ま、とりあえず中に入ってみよう」

未央「ん、そだね。えっと、この階段の上、かな?」

P「だろうな。じゃ、上がるか」

未央「うん」

510: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:02:37.70 ID:ldJgQQnE0

――

未央「ちょっと並んでるね」

P「むしろ『ちょっと』で幸運だったかもしれないがな」

未央「確かにね。正直、めちゃくちゃ並んでたら他の店に行ってたかもしれないもんね」

P「未央は店に並ぶのとかは苦痛なタイプか?」

未央「んー……友達とかが居たらそこまで苦痛じゃないかな。ただ、今日は疲れてるからさー」

P「確かに疲れている時に行列に並びたくはないな……ん、割りと出て行くっぽいぞ」

未央「ということは、そろそろ順番?」

P「たぶんな」

未央「……どういう店なんだろ」

P「……俺もわからん」

511: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:08:23.27 ID:ldJgQQnE0

――店内

未央「……割りと小さい?」

P「外観からしてこれくらいだとは思っていたけどな」

未央「ん、まあそうだよね。で、何を頼む?」

P「この『あら炊き塩ラーメン』でいいんじゃないか?」

未央「この『へしこ焼きおにぎり』っていうのは?」

P「もちろん付ける」

未央「じゃ、私もそれで」

P「じゃあ……ん、大盛り無料って書いてあるが、どうする?」

未央「大盛り……んー……ん。する!」

P「大丈夫か?」

未央「……たぶん」

P「……まあ、もし無理だったら俺が食うから問題ないか。じゃ、注文するぞ」

未央「うん」

P「よし……すみませーん」

512: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:14:28.97 ID:ldJgQQnE0

――

P「……本日のアラ、真鯛・鮭・平政・鰈・間八、か」

未央「わかるの?」

P「たぶんわからん」

未央「わからないんだ……」

P「未央もわからないだろ?」

未央「わからないけどさー」

P「本来は繊細な味の違いがわかるような人が来るべき店なのかもな……でもなー、繊細な味の違いがわかりすぎると今のように何でもおいしいって楽しめなくなるような気もするんだよなー」

未央「あ、わかるかも。繊細な味の違いがわかるようになったらその分おいしいものを食べる時は楽しめそうだけれど、おいしいと感じていたものも変なところが気になっておいしく感じないようになるかもしれないのがこわいんだよね」

P「まあ、今のところは今の舌で満足してるからそれでいい、か」

未央「結局はそういうことかもねー」

513: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:29:02.45 ID:h39Lv7rz0

――

P「ん、来たな」

未央「ほうほう……スープが綺麗な色ですなぁ。具材は……えっと、つみれとつくね、あと、薬味が白髪ねぎとみょうが、針しょうが、大葉、糸唐辛子……」

P「よくわかったな。俺は全然わからなかったぞ」

未央「いや、ここに書いてるからさー。あと、正直どれがどれかってわかってなかったり」

P「わかってないのかよ……あー、何が入ってるのかわかればまあどれがどれなのかは説明できるぞ。ねぎはわかるだろうし、まあ糸唐辛子と大葉もわかるだろ。で、こっちがみょうがでこっちが針しょうが……って、名前さえわかればわからないか?」

未央「……わかったね!」

P「わかったのかよ……」

未央「ま、まあ、早く食べないと麺が伸びちゃうし、早く食べようよ、ねっ」

P「……まあ、そうだな」

未央「うんうん素直な人は未央ちゃん好きですよ? じゃあ、いただきまーす」

514: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:32:43.00 ID:h39Lv7rz0

未央(ふむふむ……改めて見たらなんかすっごくおいしそうなんだよねー)

未央(細めの麺に黄金のスープ。上に乗っている薬味とつみれとつくね。それにへしこ焼きおにぎり? っていうものが別のお皿に付いている)

未央(おにぎりの方は最後に入れるっぽいけど……うーん、なんだか今から楽しみかも)

未央(まあ、とりあえず、スープから……)ズズ……

515: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:34:30.83 ID:h39Lv7rz0
未央「熱っ……んん!?」

未央(え? 何、これ……すっごいおいしい! いや、本当に……なんか、『おいしい』って言葉を気軽に使えないくらいおいしい)

未央(塩ラーメンを食べたことはそこそこにあるけど……少なくとも、今までに食べた塩ラーメンのスープとは全然違う)

未央(何と言うか、めちゃくちゃ上品というか……でも、だからと言って物足りないわけじゃなくて、あっさりとはしているんだけれど、ちゃんと旨味はあるっていうか? ちょっと塩辛い感じなんだけど、口に入れただけでじわーって魚の旨味とかそういうのが広がっていくというか……うん、説明しにくいけど、そんな感じ)

未央(というか、旨味がすごい……この味のどれがどの魚の味か、なんてことはわからないし、そもそも『どの味』なんて味を分けて考えることもできないけど、ただ『おいしい』ってことだけがわかる。魚だと生臭さみたいなものが出てもおかしくないような気がするけど、少なくとも私の舌だとそういうのはまったく感じない。本当に上品な、でもしっかりと味がある、そんなスープ)

未央(……改めて見ると、本当に綺麗なスープだ。透き通っていて、澄んでいる。私は食べたことないけど、日本料理のお高いお店はこんな感じのものを……まあ、ラーメンではないだろうけど、こういう味のものが出されるんじゃないかなーって感じ?)

未央(この時点でもうおいしいことはわかっているけど、次は麺……っと)ズルル……

516: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:37:58.86 ID:h39Lv7rz0
未央「うん……うん!」

未央(やっぱりおいしい! わかってたけど、やっぱりスープと麺があってこそのラーメンだよね! ちょっとお行儀は悪いかもしれないけど、ズルズルと音を立てて麺を啜る。これはとっても気持ち良い。この麺は……単純な『味』というよりは、喉越し? いや、それもちょっと違うかもしれないけど……とにかく! 麺を啜ると気持ち良いしめちゃくちゃおいしい!)

未央(スープも麺もおいしいっていうのは最高だよねー……っと。シコシコした麺は喉越しだけじゃなくて食感も良い……はっきり言って、麺自体がすごい特徴的ってわけじゃないんだけど、スープにすごく合ってるっていうか? いやでも、少なくとも私が今までに食べてきた麺の中ではめちゃくちゃおいしくはあるんだよね……)

未央(そう言えば、プロデューサーは、っと)チラッ

P「……」ズルルルル

未央(……いつもなら話しかけられたり、話しかけたりするところだけれど、今日はプロデューサーも初めてのお店だからか、一心不乱って感じ?)

未央(まあ、おいしいもんね……プロデューサーに感想を聞きたいところではあるけど、それよりも先にまず食べたいっていうのも確かにあるし。よし、食べよう)

未央(この薬味も一緒に食べたらたぶんおいしいんだろうなぁ……ってことで、ちょっと一緒に食べてみる)ズルズル

517: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:38:57.63 ID:h39Lv7rz0
未央「……ほほーう!」

未央(こうきましたかー! うん! いいアクセント! 食感のアクセントでもあるし、味のアクセントでもある! うん? なんか『アクセント』しか言ってないような気がするけど、いい仕事してる!)

未央(飽きがこないというか……ちょっと舌がリセットされるというか? うん、大好き!)

未央(……さて、そろそろこのつみれさんとつくねさんに手を付けるとしましょうか)

未央(なになに……『鱈のすり身に海老を練り込んだつみれ』。それと『細かく叩いた軟骨を散りばめた鶏つくね』……と。ふむふむ、この時点でおいしそうじゃないですかー。もー)

未央(というか、チャーシューじゃないのって最初は意外だったけど、改めて考えると、チャーシューよりもこっちの方が合ってるような気がする)

未央(この魚の感じにチャーシューっていうよりはこっちの方が良さそう……って、まだ食べてないんですけどねー)

未央(よし、とりあえず……えっと、ピンクっぽいからこっちが海老の方かな。よし、じゃあこっちから……)パクッ

518: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:42:11.02 ID:h39Lv7rz0
未央「……んぅ!?」

未央(えっちょっなにこれ『ぶわっ』って『ぶわっ』って……! 一気に旨味というか香りというか、一気においしさが広がったというか。一口かじっただけでここまで……って、えぇー……)

未央(いや……あの……正直、信じられないくらいおいしいんだけど……もう、何て言ったらいいかわかんない。食べなくても味は想像できるし、実際、想像していたのからそこまで離れた味じゃなかった。ただ、そのレベルが本当に異次元レベルというか)

未央(ここまでおいしいってちょっと信じられないというか……『絶品』っていう言葉はこういう料理のためにあるんだと思う)

未央(高級な日本料理で出そうな味……めちゃくちゃ高そうな味なんだけど、実際はこの値段なんだよね……)

未央(……すっごく上品な味で、すっごく旨味があって、風味とかそういうのが一口かじっただけでぶわっと広がるというか……本当に、『絶品』)

未央(……ヤバい、これ……この値段でこんなにおいしいものが食べられるなら、一人でも来れる時に来ちゃうかも)

519: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:43:40.75 ID:h39Lv7rz0

――

未央「……ふぅ」

未央(おいしかった……でも、ちょっとお腹いっぱいかも? まあ、そんなの気にならないくらいおいしいんだけど)

P「お、一段落したか?」

未央「プロデューサー……うん。あとはこの、へしこ焼きおにぎり? だけだねー。というか、プロデューサーはもう食べ終わったんだね」

P「まあな。……そこまで急いで食べなくてもいいが、冷める前に食べといた方がいいぞ」

未央「うん。わかってるよ。ありがと、プロデューサー……で、これってこのまま入れちゃったらいいのかな?」

P「ああ。というか、それ以外にどうするんだ?」

未央「まあ、そうだよねー。……じゃあ、っと」ドボッ

未央(んー……『へしこ』っていうのが何なのかはわからないけど、こんなスープにごはんを入れたらおいしいって決まってるんだよねー)

未央(さて……えっと、とりあえずほぐして、崩しちゃって……いただきます)パクッ

520: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:44:52.68 ID:h39Lv7rz0
未央「……うん!」

未央(知ってた! おいしい! うーん、最高! これは『へしこ』ってやつの味なのかな。というか、香ばしさ? 何と言うか、ちょっと癖のある味かも。ほぐしたその時点でスープの色がちょっと変わったけど……ほうほう、これはガラッと味が変わった、ってほどじゃないけど、やっぱりおいしいなー)

未央(ふんふむ……お焦げっぽいところの食感もあっておいしい……うーん、満足!)

521: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:48:07.17 ID:h39Lv7rz0

――店の外

未央「はー、お腹いっぱい! おいしかったね、プロデューサー!」

P「ああ! ずっとずっと話したかったんだがもうこの店最高じゃないか? 正直今まで知らなかったことが恥ずかしいレベルだ。スープはあっさり系ではあるんだがそれでもしっかりと味が付いていたよな。塩味がちょっと強めだったが、啜るごとに塩辛さなんてものは感じなくなっていった。というかそもそも魚の旨味が尋常じゃない。あと、雑味がまったくと言ってなかったんだがあれはどういうことなんだろうな。魚介系のスープだとほとんどが雑味や生臭さみたいなものが含まれるはずなんだが、俺の舌では感じ取れないくらいにはなかった。麺も良かった。このラーメンに絶妙に合ってるって感じだ。もしかしたら時間をかければ麺が伸びるかもしれないが、伸びてなければ最高だ。コシがあって、喉越しが良い。薬味も良い仕事してたよな~! あれで味の変化を楽しめるってのはやっぱり良い。あと、あのつみれとつくね。あれはまさしく『絶品』だな。そもそもからしてこのラーメンの味自体が仕事で連れて行ってもらった料亭とかで食べた味に近いんだが、このつみれとつくねに関しては特別そう思ったな。つくねのあの軟骨の食感もまた言い様がないほどで……つみれのあの海老と鱈の、口を入れた瞬間にぶわっと広がる風味! あれは最高だった……! 最後のへしこ焼きおにぎりってのもうまかったよな。へしこって言うのが何なのかはよくわかってないんだが、あの独特の風味、良いよなー。飲んだ後に食べたら最高な気がする……とにかく! この値段でこんな味が食べられるとは信じられないくらいのところだったな! 未央!」

未央「……あ、うん。そうだね」

522: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:53:22.34 ID:h39Lv7rz0
P「なっ……!? どうした、未央! うまかっただろ!?」

未央「いや、めちゃくちゃおいしかったんだけどね……プロデューサー、熱すぎだよ……」

P「いや、だって……おいしかったし……」

未央「正直それくらい興奮してもおかしくないくらいおいしかったのは確かだけどさー」

P「だろ!?」

未央「でもちょっとうざい」

P「……ごめん」

未央「いや、そこまで落ち込まなくてもいいんですけどね? ……ただ、未央ちゃんとしては、もっと一緒に、一つずつ、ゆっくり話したいかなーって」

P「……そうだな。すまん。熱くなりすぎた。ゆっくり、話そうか」

未央「うん。まあ、プロデューサーにぜんぶ言われちゃった感じはあるけどねー」

P「……すまん」

523: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:55:52.22 ID:h39Lv7rz0
未央「いや、そういう意味じゃなくてね? ……プロデューサー、やっぱり食に関しては熱くなりやすいし、落ち込みやすいよねー」

P「食にだけじゃないが」

未央「私たちのことでも、かな?」

P「……そうだが、先に言われると複雑だな」

未央「えへへー。まあ、結構こういうパターンがありましたからねー。未央ちゃんも学ぶのです」

P「……じゃあ、未央のことに関しては、食よりも、特に、って言ったら?」

未央「えっ……そ、それは、ちょっとずるくない?」

524: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:58:01.78 ID:h39Lv7rz0
P「……そうだな。うん、すまん、卑怯だった」

未央「そうだよー……嬉しいけど、ね」

P「そうか」

未央「うん」

P「……」

未央「……」

P「……そういや、『へしこ』ってなんなんだろうな!」

未央「なんなんだろうね! うん! 気になるかも!」

P「よし、じゃあ調べよう! 今の時代、検索すればすぐにわかるはず……!」

525: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/17(土) 23:59:45.78 ID:h39Lv7rz0
未央「よし! じゃあ、未央ちゃんも調べちゃうぞー!」

P「そうか! どっちが先に検索できるか勝負だ!」

未央「ふっふっふ……現役女子高生の速度を舐めてもらっちゃ困るよ!」

P「くっ……俺だって、仕事でどんだけ使ってると思ってるんだ!」

未央「よし、わかった!」

未央・P「「鯖に塩を振って塩漬けにし、さらに糠漬けにした郷土料理!」」

未央「なっ……!?」

P「ふぅ……どうやら、互角だったようだな」

未央「引き分け……だと……? ま、まさか未央ちゃんが引き分けになるとは……しかし、私はニュージェネの中でも最強! しぶりんやしまむーがプロデューサーにけちょんけちょんにされることだろう……!」

P「実際、凛と卯月はそこまで早くなさそうだよな……卯月はすぐに電話しそうだし、凛は未央ほどは携帯を触ってないような気がする」

527: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/18(日) 00:04:34.12 ID:y8nqM4000
未央「まあ、実はめちゃくちゃ早かったりするかもしれないけどねー。……でも、引き分けかー。どうしよ? 罰ゲーム」

P「罰ゲームなんてするつもりだったのかよ……」

未央「うん。絶対私が勝つつもりだったから、何でも一つ命令できる権みたいなのを強引に使おうと思ってた」

P「強引にかよ……」

未央「うーん、引き分けになっちゃったし……もういっか。普通にさっきのお店の話をしよー」

P「……まあ、そうだな。ラーメンに関しては俺が話しまくったから……あ、思ったんだが、そもそも、あの味ならあれだけしか並んでなかったってのも変な感じだよな」

未央「あ、確かに! それ思ったかも。あの値段であの味で、あれだけしか並んでなかったっていうのは意外だよねー」

528: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/18(日) 00:08:37.80 ID:y8nqM4000
P「まあ、たまたまこの時間は、ってだけだったような気もするが……それとも、新宿ってところはこういう店がゴロゴロしてたりするのか……?」

未央「もしそうだったら新宿すごすぎない……?」

P「うーむ……これはまた、開拓していかなくちゃいけないかもな」

未央「それなら、私も付いて行きたいなー」

P「……そうだな。うん。初めての店は一人よりも何人かで行った方が色々と頼めるしな。また行く時は言うよ」

未央「約束だよ?」

P「ああ」

未央「えへへ……あ、また店の話に戻るんだけどね――」




540: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 17:45:58.33 ID:13lP+gKW0
――スタジオ

未央「――でさ、さっき話してたことだけどね。実は後日談がありまして……」

李衣菜「後日談? そんなのあったんだ……それじゃあ、どうしておまけ放送でも話さなかったの?」

未央「いやー、これ話したのバレたら絶対しぶりんに怒られるからさー……」

李衣菜「割りといつものことじゃない?」

未央「まあ、そうなんですけどね――って、プロデューサー?」

李衣菜「え? あっ、ホントだ。Pさーん」

P「未央、李衣菜。お疲れ様」

李衣菜「ありがとうございます! Pさん」

未央「ありがと、プロデューサー♪ でも、珍しいね。デレパを収録する時って、最近は私たち二人に任せてたような気がするけど……どうしたの?」

541: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 17:51:26.20 ID:13lP+gKW0
P「前に……って言ってもかなり前だが、未央、お前、『デレラジ組だけごはんに連れて行ってもらってずるい』みたいなこと言ってただろ? デレパも一周年を迎えたわけだし、ちょっと遅いが、そのお祝い、ってことでな」

李衣菜「え? なんですか、その話……私、初耳なんですけど」

P「まあ、言ってなかったからな」

未央「言ってなかったしね」

李衣菜「えぇー……なんか、私だけ仲間外れみたいなんですけどー」

P「たまたまその話をしている時にお前が居なかっただけだ。で、お前ら、どうだ? この後、暇か?」

未央「私は暇だよー。お腹もぺこぺこ」

李衣菜「私も大丈夫です。お腹も空いてますし……今日の収録はちょっと遅めでしたしね」

542: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 18:01:43.82 ID:13lP+gKW0
P「それも俺が来た理由の一つだしな……って言っても、まだ空が暗くなり始めたくらいだが」

未央「Twilight Sky?」

P「って言うには暗いがな……ん? どうした、李衣菜」

李衣菜「……私が言おうと思ったことを未央ちゃんに言われたので」

P「マジかよ……お前、あんなつまらないこと言おうとしてたのかよ」

未央「んん!? ちょっと聞き捨てならない言葉が聞こえたんですけど!?」

李衣菜「でも、『Twilight Sky』は私の曲ですし……未央ちゃんが言うよりは面白くなったと思うんです」

未央「りーなまで!?」

543: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 18:20:47.39 ID:13lP+gKW0
P「んー……いや、面白くないと思うぞ、李衣菜。デレパの影響か……未央に毒されてるんじゃないか?」

李衣菜「そうなんですかね……」

未央「二人ともひどくない? 未央ちゃん、泣いちゃいますよ? というか、無視しないでよー」

P「悪い悪い。許してくれ」

李衣菜「ごめんね、未央ちゃん。許して?」

未央「仕方ないなあ。優しい優しい未央ちゃんに感謝してよね」

P「ああ、ありがとう、未央」

李衣菜「ありがと、未央ちゃん」

未央「どういたしまして……っと、こんなことはこれくらいにして、そろそろ行かない? さっきも言ったけど、私、お腹空いちゃって……」

李衣菜「私もですね……そろそろ行きましょう」

P「そうだな。じゃあ、行くか」

544: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 18:39:19.95 ID:13lP+gKW0

――電車

未央「今日はどういうところなの?」

P「ん? そうだな……李衣菜が好きそうなところだな」

李衣菜「私ですか? 私が好きそうなところ……つまり、ロックなところですか?」

P「そうだな」

李衣菜「えっ……ほ、本当ですか!?」

未央「……なんでりーなが驚いてるの? 自分で言ったんじゃん」

李衣菜「い、いや、冗談のつもりだったから……まさか本当にロックなところだとは思わなくて……」

546: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 18:52:52.29 ID:13lP+gKW0
未央「まあ、食べるところの話だもんねー。それでロックなところって……確かにどういうところかわからないかも。どういうところなの? プロデューサー」

P「見れば確実にわかる」

未央「見てわかるロック……?」

李衣菜「うーん……あ、わかりました! 店の前にギターが置いてるんですね!」

P「近いな」

未央「近いの!?」

李衣菜「近いんですか!?」

P「いや、これくらいで驚くなよ……店の前にギターを置いてるところなんていくらでもあるだろ。今から行くところはそういうわけじゃないが……いや、ある意味そうとも言えるか」

未央「どういうこと……?」

李衣菜「私、Pさんが言ってることがよくわからないんですけど……」

P「んー……まあ、行ったらわかる。たぶん、すぐにな」

547: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 18:59:00.92 ID:13lP+gKW0

――店の前

李衣菜「……」

未央「……」

P「な? わかっただろ? 明らかに『ロック』だ」

未央「確かにね!? というか、さすがにこれは予想してなかったんだけど! ギター……確かにギターだけど! めちゃくちゃ大きいギターなんだけど!」

P「やっぱりこのド派手なギターネオンが良いよなぁ……あれを見ると『ここ』って感じがする。わかりやすい」

未央「確かにわかりやすい……というか、わかりやすすぎるけどね? ……りーなは、どう思――」

548: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 19:05:29.49 ID:13lP+gKW0
李衣菜「うわぁ……すごいですね! Pさん! ギター! ギターです! 何と言うか……『ロック』です!」

P「だろ? うん、絶対李衣菜ならここを気に入ると思ったんだよ……先に夏樹に連れて来られたりしてないかちょっと気になってたが、そんなことはなかったみたいだな」

李衣菜「はい! 私、知りませんでした……こんな店があるんですね!」

P「ああ。……思った以上に気に入ってくれたみたいで嬉しいよ、李衣菜」

李衣菜「はい! 私、もう見ただけでこのお店のことが好きになりました!」

P「あ、一人では来るなよ? 夏樹と、ってのも心配だな……来る時は誰か大人と、だ」

李衣菜「はい! わかりました! ……Pさんは、来てくれますか?」

P「都合が合えば、な……色々な都合が、だが」

李衣菜「……ありがとうございます、Pさん!」

549: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 19:12:22.30 ID:13lP+gKW0
未央「……興奮しているところに口を挟むのは悪いんだけどさ、お二人さん? まだ入ってないんだよ? 外から見ただけだよ? それなのに、どうしてそこまで興奮してるの……?」

P・李衣菜「「ロックだから!」」

未央「うわ、ハモった……いや、うん。興奮してるのはいいけどさ。そろそろ入らない? なんか嫌な予感するけど……」

P「嫌な予感って……未央は気に入らないのか?」

李衣菜「未央ちゃんは感じないの? この、外から見てるだけでもガンガン響いてくる、ロックなビートをさ……」

未央「いや、気に入らないわけじゃないし、ロックなビート的なものを感じるから言ってるんだけど……もう、とにかく入ろうよ」

P「……まあ、そうだな。入るか」

李衣菜「はい! ……楽しみだなぁ」

未央(心配だなぁ……)

550: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 19:34:25.61 ID:13lP+gKW0

――店内

李衣菜「Pさん! すごい! すごいですね! ロックです!」

P「だよなぁ……展示されているあのギターとか、色々あるだろ? あれも結構有名な人たちのもんだったりするんだよ。興奮するよな……」

李衣菜「はい! 私はあんまり知りませんが……それでも、興奮しますね!」

P「俺だってこの飾ってあるのが誰のか、ってまではわからないからなぁ……それでも、感じるものがある。見てるだけで血が滾る。良いよなぁ」

未央(やっぱりこうなった……)

551: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 19:38:42.71 ID:13lP+gKW0
李衣菜「このかかってる音楽もいいですね! ロックです!」

P「実際ロックがかかってるからなぁ……うるさいって思えるくらいなんだけど、それもまたここらしいって感じがするよ」

李衣菜「はぁ……本当、ここ、いい店ですね。なつきちも好きそうだなぁ……」

P「夏樹は来たことが……いや、どうかわからんが、まあ、また聞いてみるか。知ってはいると思うがな」

未央「……お二人さーん、そろそろ、メニューを見ませんかー? 私たち、ごはんを食べに来たんだよね……?」

P「ん、そうだな。見るか」

李衣菜「はい。……で、何を頼めばいいんですかね」

552: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 19:43:39.20 ID:13lP+gKW0
P「何を、って……あー、そうだな、とりあえずバーガーとサラダ……くらいか? フィッシュアンドチップスなんかもいいが……あ、チキンなんかもあるな……うーん……」

未央「お、珍しく迷ってるね、プロデューサー」

P「……いや、正直、最後に来たのがかなり前だったからな、迷ってる。確か、結構な量があるんだよなぁ……頼み過ぎたら俺でも食い切れないからな……」

未央「プロデューサーが食べ切れないんだ……」

李衣菜「プロデューサー、そんなに大食いでしたっけ?」

P「大食いってほどじゃないが、まあ、そこそこに食べる方ではあるかもしれないな」

未央「そこそこ……?」

P「なんだよ、何か文句あるのか?」

未央「いや、ないですよ? ……というか、最初にぜんぶ頼まなくても、一回頼んで、それを食べてから考えたらいいんじゃない?」

P「……それもそうだな」

553: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 19:51:01.83 ID:13lP+gKW0

――

P「ってことで、来たな。コブサラダだ」

未央「おおう、ボリューミー……いや、本当に量あるね、これ」

李衣菜「ここまで量があるサラダっていうのは初めてかも……」

P「で、ドレッシングだな。とりあえずシーザードレッシングにしたが、よかったのか?」

未央「うん。あれだけ種類があると迷うしねー。他のも気になったと言えば気になったけど……」

李衣菜「店員さんも『何種類か持ってきますよ?』って言ってくれましたけどね。まあ、結局一つにしましたけど」

P「だって、何種類か頼んでも混ざったら嫌じゃないか? せっかくだから、まだ知ってる味にしたんだよ……」

未央「まあ、それが懸命な判断かもしれませんねー。……でも、本当に、こんなサラダは初めてかも。アメリカンサイズ?」

554: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 19:57:10.20 ID:13lP+gKW0
李衣菜「豪快だよねー。レタスの上に、チキンと、アボカド? それと、トマトに……玉ねぎ? これは……チーズかな。あと……えーっと、ベーコンに、ゆで卵?」

P「の、細かく切ったやつがたっぷり乗せられてるな。……いや、改めて見るとすごいな。これだけで十分『一食』にできそうなくらいだ」

未央「まあ、三人で分けますし? とりあえず、ドレッシングをかけて、混ぜて、食べる……でいい?」

P「ああ。俺はそれでいいぞ」

李衣菜「うん。私もそれで」

未央「よし。じゃ、まぜまぜ……っと」

P「ありがとな、未央」

李衣菜「ありがと、未央ちゃん」

未央「どういたしまして♪ じゃあ、食べよう食べようー」

556: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 20:09:33.00 ID:13lP+gKW0

――

未央(さて、食べよう……って言っても、どうしよ。まあ、とりあえず食べるしかないんだけど……どこから手を付けたものか)

未央(……うん、もうどこでもいいや。とりあえず、食べよう)パクッ

未央「……おお!」

未央(おいしい! 見るだけで楽しいサラダだったけど、食感も楽しいかも。彩りもあって、味もおいしくて、って結構理想的なサラダだなー……量はちょっと多過ぎかもしれないけど)

未央(まあ、何人かで分けるってなったらこれくらいがいいのかも? プロデューサーなら一人で食べてもおかしくなさそう……というか、これを食べても足りない、とか言いそうだけど)

未央(さて、二口目……っと、お、鶏肉が付いてきた。さてさて、鶏肉大好き未央ちゃんのお眼鏡に敵うかどうか……)パクッ

557: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 20:12:15.17 ID:13lP+gKW0
未央「んっ……おっ!」

未央(思ってたのと違ってちょっと熱い。でも、この熱々な感じがまたいいかも。香ばしくて、柔らかくて、ジューシーで……うん! 良いね! 未央ちゃんも認めちゃう!)

未央(チキン以外もおいしいけど、このチキンは未央ちゃんお気に入りですよー。他のトッピング……なのか本体なのかわからないものもおいしいし……混ざってるのがおいしいのかな。わからないけど、とにかく、おいしい)

未央(口いっぱいにほおばって、口の中で卵やらアボカドやらチーズやらが一緒になってて……もぐもぐ、というか、もっさもっさと? そうやって食べるのは、傍から見るとちょっと不格好かもしれないけど、でも、気持ち良いなー)

未央(めちゃくちゃ豪快なんだけど、それなのにすっごくバランスも良いかも。……うん、一通り食べたけど、やっぱりおいしい! 私の知ってる『サラダ』っぽくはないんだけど、野菜もたっぷり入ってることは確かだし……うん、こんなサラダだったら、私、いくらでも食べれるかも! ……いや、まあ、本当にいくらでもって言うと嘘だけど、この一皿くらいなら一人で食べ切れるね)

未央(……でも、ちょっとここまでおいしいのは意外かも。店員さんの接客も良かったし……正直、『ロック!』ってだけで、そこまで味は良くないのまで想像してたからなー。さすがプロデューサー、ってことなのかな?)

未央(これはハンバーガーも期待できますなぁ……ハンバーガーもアメリカンサイズなのかな。どれくらいの大きさなのかわからないけど、まあ、さすがにそこまで大きくはないでしょ)

558: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 20:20:27.03 ID:13lP+gKW0
P「……うん、うまいな。食べたことはある……と思うんだが、改めて、うまい」

未央「うん、おいしいよ、プロデューサー。私としてはこのチキンがたまりませんなあ」

李衣菜「本当に、おいしいですね、Pさん。このお店、ロックだとは思ってましたけど、料理もロックですね!」

P「そのロックの使い方は……いや、合ってる、のか? まあ、ちょっと値段は張るがな。その分味はうまい。……正直、こういうところは料理の味なんてどうでもいいって人も居るだろうが、俺としては料理がまずかったらそれだけで台無しになる可能性もあるから、やっぱりうまいに越したことはないよな」

未央「こういうのを食べれるところってそんなに多くはないもんねー。いや、私が知らないだけでいっぱいあるのかもしれないけどさ」

P「まあ、あるだろうな。俺もそこまで知ってるわけじゃないが……思い当たるところはいくつかある」

李衣菜「うーん……でも、本当においしいですね、このサラダ。未央ちゃんはチキンって言ってましたし、私もチキンはおいしかったと思いますけど、全体的に?」

P「ああ。……正直、他のドレッシングももらっとけばよかったって思うくらいには、な。他の味ってどうなんだろうな……気になるところだ」

未央「わかることがあるとすれば、たぶんおいしい、ってことかな」

P「違いないな――っと、そんなことを言ってたら、あれ、たぶん俺らだな」

未央「お、ハンバーガー? ようやく……ん?」

李衣菜「? 未央ちゃん、どうしたの? えっと……え?」

559: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 20:29:16.67 ID:13lP+gKW0
店員「お待たせしましたー、レジェンダリーバーガーが三つです」

P「ありがとうございます。……さて、これがレジェンダリーバーガー、だ」

李衣菜「……」

未央「……ねぇ、プロデューサー」

P「ん? なんだ、未央」

未央「……このハンバーガー、めちゃくちゃ大きくない?」

P「ん? ……まあ、そうだな。ファストフード店のと比べたらそりゃあでかいだろうな」

李衣菜「いや、それにしても大きすぎじゃ……私、こんなの初めて見たんですけど」

P「これが本物のハンバーガー、ってな。ファストフード店のハンバーガーが偽物って言うわけじゃないが……俺としてはこっちこそが『ハンバーガー!』って感じなんだよなあ」

未央「……確かに、どれもこれもこれくらいのサイズなんだったら、迷うよね。正直、私はこれだけでお腹いっぱいになりそうだもん」

李衣菜「私も、かな……さすがに大きいですし」

P「まあ、そうかもな」

未央「あと、ポテトも割りとあるよね……これ、食べ切れるかな……」

P「無理だったら俺が食べるから問題ない」

李衣菜「……食べ切れるんですか?」

P「たぶんな」

李衣菜「……じゃあ、その時はお願いしますよ?」

P「任せとけ。……とりあえず、いただくとするか」

未央「うん、そうだね。いただきまーす、っと」

李衣菜「い、いただきます」

560: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 20:34:44.26 ID:13lP+gKW0
未央(……とは言ったものの、これはさっきよりもどうやって食べたらいいのかわからないなー)

未央(ハンバーガーなんだけど、えっと、下からレタスとトマトと、パティとチーズと……ベーコン? とオニオンリング……? 持てるかどうかわからないくらいに大きいし、かぶりついても食べられるかわかんないくらい分厚い)

未央(でも、ハンバーガーだし、ナイフとかフォークを使うっていうのはなぁ……うーん、とりあえず、ポテトでも食べとこ)パクッ

未央「……おおー」

未央(おいしい。なんか、『ポテト』って感じ。いや、ポテトなんだから当然なんだけど……大ぶりだから? でもそこまで衝撃的ってわけじゃないかも?)

561: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 20:39:05.68 ID:13lP+gKW0
P「あ、未央」

未央「ん、何? プロデューサー」

P「ポテトなら……というか、バーガーにもかもしれんが、ケチャップとマスタードがあるからそれを皿に出して付けて食ったらいいぞ」

未央「ケチャップ……あ、これか。……どう使うの?」

P「いや、そのままだが……とりあえず開けて、出すだけだ」

未央「……じゃ、じゃあ、やってみるよ」

未央(えっと、開けて……出す、だけ)

未央「わっ」

未央(ぶりゅって出た。結構勢いあるなあ……この調子でマスタードも、っと)

未央(……それで、これに付けて、食べる)パクッ

562: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 20:44:39.10 ID:13lP+gKW0
未央「……うん!」

未央(やっぱりケチャップなんかに付けるとおいしいなー。『めちゃくちゃおいしい!』ってわけじゃなくて、普通においしい。でも、なんか安心する味……ほくほくしたフライドポテトに、たっぷりのケチャップやマスタードを付けて食べる。うん、こうしているだけで、なんか『アメリカ』って感じ。こういう雰囲気を楽しむべきなのかも)

未央(……さて、ポテトばっかり食べていても、だから、次はハンバーガーだなー)

未央(プロデューサーやりーなはどう食べてるんだろ……お、プロデューサーはかぶりついてるけど、りーなは切り分けてる。まあ、最初はそうしないと口の大きさを考えても無理かなー……)

未央(えっと……む、切るのも結構難しいかも。……あっ! オニオンリングが抜けた! んぐぐ……ん? お、もしかして、これ、オニオンリングが抜けたら……)ヒョイ

未央(あ、思った通り、安定した。……オニオンリングは後でいいや。これなら、かぶりつけるかも)

未央(えっと……プロデューサーが言うには、これにケチャップとかマスタードを付けるんだっけ? ……でも、プロデューサーは付けてないし、りーなも付けてないっぽい? ……というか、おいしそうだなー……食べよう)ガブッ

563: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 20:49:47.30 ID:13lP+gKW0
未央「んっ……んぅ!?」

未央(うっわすごい! これすごい! 『肉』だ! 本当、すっごく『肉』って感じ! こんなの初めてかも! ジューシーというか、うん、本当にジューシー。噛んだだけで口いっぱいにお肉の味が広がって……本当に『肉』って感じ!)

未央(おお……これ、すごいかも。ケチャップとかマスタードは……どうしよう。確かにこれだけだとそこまで味が付いてるわけじゃないんだけど……この、ものすごい『肉』感でそんなことが気にならなくなるというか。この肉々しさを味わうためにはむしろこっちの方がいいのでは? って感じもあるというか?)

未央(でも、ちょっとくらい付けてもいいかなー……あ、でも、どうやって付けようかな。直接出すっていうのは、さっきのを考えるといっぱいになっちゃう気がするし、ハンバーガーを持ってさっき出したケチャップとかに付けるのはなかなかに難しいし……)

未央(……あ、そうだ。ポテトですくって、それで付けよう。おお、未央ちゃん頭良い。冴えてるね。ってことで、ポテトにたっぷりのケチャップを付けて、それをハンバーガーに付けて、それで、食べる)ガブッ

564: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:00:04.35 ID:13lP+gKW0
未央「……うん!」

未央(何と言うか、思った通りの味、って感じ! 思った通り、おいしい。でも、個人的にはケチャップがなくてもいいかも? あってもいいけど……これは好みかも)

未央(あと、そう言えばベーコンとチーズはそこまで強さを感じないかも? 『ベーコン!』って感じや『チーズ!』って感じはなくて、あくまでアクセントって感じ? でも、これがまた良い感じかも……っと、そう言えば、挟んであるものと言えば、オニオンリングを忘れてた。……もうそこそこ食べ進めたし、今なら、入れられる!)

未央(……よし、バランスも崩れてない。これなら……いける!)ガブッ

未央「……ほうほう」

未央(オニオンリングの食感が加わって、それが快感かも! カリッとしたオニオンリングはやっぱりおいしいよねー。まあそれでも、このお肉の強さには勝てないんですけど? ……うん、やっぱりこのハンバーガー、『お肉』がいちばん大きいや。今までに食べたことがないくらい『肉!』って感じのするハンバーガー)

未央(お肉が好きな人はたまらないだろうし、未央ちゃんもたまらない! うん、満足!)

565: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:05:32.59 ID:13lP+gKW0

――

未央「……ふぅ。おいしかったけど、結構食べたねー」

李衣菜「うん……なんか、すっごく『お肉』って感じだったね。というか、『アメリカ』って感じ?」

P「でも、それがいいんだよなぁ……店の雰囲気といい、料理といい、本当にロックで、アメリカって感じがする。……いや、本当にこれが『アメリカ』なのかどうかは知らないが」

未央「でも、量は間違いなくアメリカンだったと思うなー……私、お腹いっぱいだもん」

李衣菜「私もですね……もう、何も入らないって感じです」

P「ん? そうか……いや、でもなー……」

未央「? どうしたの? プロデューサー」

P「いや、俺一人で食べるのはちょっとキツイが、食ってみたいもんがあってな……どうしようか迷ってるんだが」

李衣菜「まだ食べるんですか……ちなみに、何を?」

566: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:08:57.54 ID:13lP+gKW0
P「いや、この、『ホームメイドブラウニー』っていうのを」

未央「食べよう」

P「え?」

李衣菜「食べましょう、Pさん」

P「は? いや、でもお腹いっぱいって……」

未央「それとこれとは別なの! 甘いものは別腹なの!」

李衣菜「そうです! 甘いものは別腹なんです! どうせ量はめちゃくちゃ多いんでしょうけど、三人なら大丈夫です! 食べましょう!」

P「……まあ、俺としては願ったり叶ったりだからいいんだが」

567: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:19:44.27 ID:13lP+gKW0

――

P「……これが、そうか」

未央「おおー……これはなかなか」

李衣菜「ブラウニー……があるはずなんですけど、ブラウニーが見えないくらいのホイップクリームとアイス、それにチョコソースがかかってますね。あと、ナッツと、チェリー?」

P「……まあ、とりあえず食べるか」

李衣菜「はい!」

未央「うん、食べよー!」

未央(ってことで、食べる……って、どう食べよう? まあ、最初はブラウニーを発掘するところから、っと……見付けた見付けた。そんなところに隠れてましたか、ブラウニーちゃん)

未央(で、たっぷりのチョコソースがかかったブラウニーとホイップクリームを一緒に、口の中へ、っと)パクッ

568: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:24:17.71 ID:13lP+gKW0
未央「あまっ……うん!」

未央(おいしい! めちゃくちゃ甘いんだけど、それでも、おいしい。噛んだ時に『サクッ』ってなる食感はポイント高いし、それなのに中がしっとりしているのもポイント高い。あと、あったかいのもいいなー……あと、ホイップクリームがまた良い。結構軽いホイップクリームなんだけど、やっぱり甘い。本当に甘い。もう『甘ったるい』ってくらいに甘い)

未央(んー……やっぱりアメリカとかの外国の甘いものってものは甘ったるいものなのかな? でも、この意味わからないくらいの甘ったるさがまた良いんだよねー)

未央(ブラウニーとホイップクリームの相性がまた良いなー……どうして一緒に食べるとここまでおいしくなるんだろ)

未央(よし、じゃあ次は、アイスと一緒に……って、こんなの絶対おいしいじゃーん)

未央(あったかいブラウニーと冷たいアイス……もうそれだけでおいしいっていうのがわかるけど……よし、いただきます!)パクッ

569: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:31:32.63 ID:13lP+gKW0
未央「んっ……ん~!」

未央(おいっっしい! あったかいブラウニーに、冷たいアイス。それもまた甘いんだけど、不快じゃない。もう最高。口の中であたたかいのと冷たいのが一緒になって……どうしてあたたかいものと冷たいものを一緒に食べるとこんなにおいしいんだろう。最初にあたたかいブラウニーとアイスを一緒に食べた人はこの世界で最大級の幸せを発明した人として表彰されるべきだよ……)

未央(いや、でも、本当においしい! このブラウニーがいいのかな? あんまり『詰まって』ない。ぎゅうぎゅうに詰まった、かたい感じのブラウニーっていうのもそれはそれで好きなんだけれど、このブラウニーはそこそこに軽いブラウニーで、いやまあ味とか食感なんかは重いんだけれど、かたくはないというか。だから、アイスとの相性が本当に良い)

未央(だから……なんていったらいいのかな。口の中でアイスとブラウニーが溶け合うというか? チョコの熱を持った甘みとバニラアイスの冷たい甘みが口の中で溶け合って……とにかく、本当においしい!)

未央(あー……やっぱり、甘いものは女の子の元気の源、だね!)

570: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:34:21.85 ID:13lP+gKW0

――店の外

未央「……お腹いっぱいだよー」

李衣菜「私も……ちょっと、食べ過ぎたかもしれません」

未央「最後のブラウニーが重かったなー……あのホイップクリームの量はちょっと凶悪だよね」

李衣菜「甘さもね……すっごく甘かったから、結構、重い……」

P「……そうは言うが、お前ら、俺よりも食べてただろ」

未央「だって、おいしかったんだもん!」

李衣菜「おいしかったんだから仕方ないじゃないですか!」

P「なんで俺が怒られてるんだ……?」

571: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:38:43.30 ID:13lP+gKW0
未央「うぅ……今更だけど、あれ、めちゃくちゃカロリーあったよね……いつもそうだけど、今回はさすがに心配かも……」

李衣菜「未央ちゃん、それ、思い出させないでよー……うぅ、レッスン頑張らなきゃ……」

P「いや、食べたのはお前ら……」

未央「プロデューサーは黙ってて!」

李衣菜「私たちだってわかってますよ! でも……でもっ、あんなにおいしいものを前にして、我慢できるわけがないんですよ!」

未央「そうだよ! プロデューサーも想像してみてよ! 自分の大好物を前にして我慢できる!?」

P「……場合によるが、難しいな」

未央「でしょ!? それと同じだよ!」

李衣菜「そうですよ! 自分の好きなものを前にして我慢するなんて……そんなの、ロックじゃないですし!」

P「そこでロックって使ってもいいのか……?」

未央「いいよ! ロックだよ!」

李衣菜「うん! だよね、未央ちゃん!」

未央「やっぱり!」

李衣菜「私たち!」

未央・李衣菜「「ズッ友~!」」

572: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:43:26.76 ID:13lP+gKW0
P「……終わったか?」

未央「……うん。なんか、ちょっと気持ち悪くなってきた」

李衣菜「うぅ……お腹いっぱいなのにテンション上げすぎた……」

P「あー……とりあえず、帰るか」

未央「うん……」

李衣菜「はーい……」

P「あと、未央、李衣菜。お前らに言っておくことがある」

未央「? なに? プロデューサー」

李衣菜「なんですか? Pさん」

573: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:50:59.78 ID:13lP+gKW0
P「デレパ一周年、おめでとう。そして、ありがとう。ここまであの番組を続けられたのは応援してくれたファンと、番組を支えてくれたスタッフさん……そして、ここまで頑張ってくれた二人のおかげだ。プロデューサーとして感謝する。本当に、ありがとう」

未央「プロデューサー……」

李衣菜「Pさん……」

未央「……えへへ。何を言ってるんだい、プロデューサーくん? これくらいで満足されちゃ困りますよ?」

李衣菜「未央ちゃん……うん。そうですよ、Pさん。それに、あの番組が続けられたのは、ファンのみんなと私たち、それに、スタッフさん……それだけじゃなくて、Pさんのおかげでもあるんです。そもそも、Pさんが仕事を取ってきてくれたから、私たちは今もあの番組を続けられているんです」

P「……未央、李衣菜」

未央「そう考えると、むしろ私たちが感謝する方かもねー。プロデューサーのおかげで、今の私たちがあるわけだし? アイドルとしてもそうだし……あの番組がなければ、りーなともここまで仲良くならなかったかもしれないしねー」

李衣菜「……うん。そう……そうなんです。Pさんのおかげで、今の私たちがあるんです。……ありがとうございます、Pさん」

未央「ありがとね、プロデューサー」

574: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/25(日) 21:52:45.28 ID:13lP+gKW0
P「……俺がお前らに感謝しなきゃいけないのに、どうして感謝されてるんだよ」

未央「ダメ?」

李衣菜「べつに、感謝し合ってもいいじゃないですか。だって、どっちの気持ちも本物なんですから」

P「……そう、だな。……すまん。少し、先に行っていてくれ。電話だ」

未央「……うん。ちょっとだけ、ね」

李衣菜「……はい。少しだけ、ですよ」

P「ああ。……すぐに、行くよ」




585: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:09:06.85 ID:aJSjeX3h0

――事務所

未央「プロデューサー、冷蔵庫の前でどうしたの?」

P「……なんだ、未央か」

未央「なんだ、って何? ひどくない?」

P「いや、安心したんだよ。ちひろさんかと思ってな……」

ちひろ「私がどうかしましたか?」

P「っ! ……ち、ちひろさん、居たんですか」

ちひろ「もう……べつに隠れなくてもいいのに、どうして隠れるんですか」

P「……だって、バレたらちひろさんも欲しいって言うじゃないですか」

ちひろ「言いますけど……」

P「だから嫌なんですよ」

586: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:16:27.14 ID:aJSjeX3h0
未央「……? 何? どういうこと?」

P「あー……べつに大したことじゃない」

未央「絶対嘘だよね?」

ちひろ「まあ、確かに大したことではないですけど……隠すようなことですか?」

P「いや……だって、未央も知ったら、食べたくなるかもしれないじゃないですか」

ちひろ「そうかもしれませんが……。そもそも、未央ちゃんは知ってるんじゃないですか?」

P「知ってても同じじゃないですか……?」

ちひろ「それは、確かに」

587: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:21:19.33 ID:aJSjeX3h0
未央「あの、私、まだ何のことかよくわかってないんだけど……」

P「ん、ああ、そうだな。俺が食べようとしてたのは、これだ」

未央「……Raps?」

P「ああ。ブリトーみたいなもんだな。というかほとんどブリトーだと俺は思っているが」

未央「……ブリトー?」

P「あ、知らないのか? 女子高生なのに……」

ちひろ「女子高生はあまり関係ないと思うんですが……」

未央「知らないものは知らないもん。で、何なの? それ」

588: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:27:03.68 ID:aJSjeX3h0
P「んー……トルティーヤで具材を巻いた料理? 本場のは知らんが……」

未央「トルティーヤ……っていうと、なんだか聞いたことあるような……」

ちひろ「メキシコ料理などでよく使われていますね。使われている料理ではタコスがいちばん有名でしょうか……って、タコスもそれほど有名かどうかはわかりませんが」

未央「あ、タコスならわかるよ。そんなに食べたことはないけど、事務所に置いてある漫画で見たよ。食べると麻雀が強くなるんでしょ?」

P「ならない」

ちひろ「あはは……まあ、とにかく、そのトルティーヤ……トウモロコシや小麦粉で作られた薄焼きのパンに具材を乗せて巻いた料理がブリトーですね」

未央「あれ? でも、タコスっていうのもトルティーヤっていうのに具材を包むんじゃ……」

ちひろ「……あれ? 確かにそうですね。違うんですが、言われてみれば似ているかも……」

P「俺の認識ではブリトーは完全に包み込む、って感じですが、詳しくないので合っているかわかりませんね。まあ、そんなことはどうでもいい。このRapsってのはブリトーと同じような感じで、トルティーヤで色んな具材を包んだシリーズ、ってところだな」

未央「ふーん……でも、どうして『Raps』って名前なの?」

P「たぶん他のコンビニで『ブリトー』って名前を使ってるからだが、べつに使わなくちゃいけないってわけじゃないだろうから俺も理由はわからん。いや、実際に食べ比べる……というか、見比べると違うってわかるから、単にここのは『ブリトー』ではないってことなのかもしれないが」

未央「……つまり、そういうことは気にしなくてもいいってこと?」

P「そういうことだな」

589: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:27:37.82 ID:aJSjeX3h0
未央「へぇ……それで、おいしいの?」

P「俺は好きだ。色んなコンビニにこういう『ブリトー』系の商品はあるし、どれもなかなかにおいしい。俺はここの『厚切りハム&チーズソース』ってのが好きだが……そこらへんは好みだろうな」

ちひろ「私は他のコンビニの『ハム&チーズ』の方が好きですしね、って、どっちもハム&チーズですけど」

P「こっちのは『チーズソース』だから違いますね……というか、そっちのが好きなんだったらべつに俺のを食べなくても」

ちひろ「そっちも好きなんです♪」

P「……まあ、いいんですけどね。俺ももらうことありますし」

ちひろ「そうそう。Win-Winですよ、Win-Win」

未央「ハム&チーズ……ん? どういう風に包んでるの? なんか、ちょっと今まで想像してたのから外れたような」

P「あー……タコスみたいなのを想像してるとそうなるか。こっちはもっと薄い、板状の……って、もう実物を見せた方がいいな。こういうのだ」

未央「あ、こういうのなんだ。だったら納得かも……うん、おいしそうだね。温めるんだ」

P「ああ。電子レンジで書いてある時間温めたら完成だな。これはチーズソースだが、温めるとチーズがとろける。めちゃくちゃ熱いんだが、うまいんだよな、これが」

未央「……なんだか、食べたくなってきちゃった。私、ちょっと買ってこようかな……」

590: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:36:29.70 ID:aJSjeX3h0
ちひろ「あ、それなら問題ないですよ」

未央「え、でも、今二個しかないんじゃないの? プロデューサーとちひろさんで、二個じゃ……」

P「いや、今だと五個くらいあるな」

未央「なんで!?」

P「だっておいしいし……小腹が空いた時にちょうどいいんだよ、これ」

ちひろ「他の種類を入れたらもっとありますけどね……まあ、アイドルの皆さんが食べることもありますし、今までに賞味期限が過ぎちゃったことはありませんけど」

未央「つまり、それだけおいしいと?」

P「俺やちひろさんはそう思っている、ってのが正確だな。レンジで温めるだけで、ってのが良い」

未央「そうなんだ……ということは、その、もらってもいいの?」

P「ああ。いいぞ」

ちひろ「私ももらっていいですか?」

P「……いいですよ。ただ、俺もまたもらいますからね」

591: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:37:20.66 ID:aJSjeX3h0
ちひろ「はい♪ じゃあ、ハサミで切って、レンジに入れて、温めて……っと。はい、完成です」

P「未央から食べたらどうだ?」

未央「えっ……いいの? 元々、プロデューサーが食べるためだったんじゃ……」

P「そんなに急いでないから気を遣うな」

ちひろ「私はもちろん、後でいいですからね。食べたことない未央ちゃんの反応も見たいですし、どうぞどうぞ」

未央「じゃあ、お言葉に甘えて……」

未央(ブリトー……いや、Rapsだったっけ? どうなんだろう、これ……えっと、まずは袋から出さなきゃ――)

未央「熱っ」

P「あ、結構熱いから気を付けろよ」

未央「遅いよー……」

592: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:40:29.15 ID:aJSjeX3h0
P「すまん、忘れてた」

未央「未央ちゃんは優しいから許してあげましょう」

P「ありがとな、未央」

未央「えへへ……かわいいかわいいアイドルが火傷したら危ないんだから、今度からはちゃんと言ってよね?」

P「自分で言うか? まあ、お前がかわいいアイドルだってのは事実だが……あ、食べる時も注意しろよ。熱い」

未央「触った時点でそれはわかってるけどねー……でも、冷めたらダメなんでしょ?」

P「まあな」

未央「ですよね。ってことで、いただきまーす」

593: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:43:48.12 ID:aJSjeX3h0
未央「熱っ! ……んぅ、んー!」

未央(ハムが思ったよりも分厚い! あと、チーズソースが結構出てくる! 熱い! でもおいしい!)

未央(この分厚いハムが良いね。ジューシーな感じ。チーズソースもとろけていていい感じかも。あと、『チーズ』じゃなくて『チーズソース』っていうのが結構気になっていたけど、これは確かに『チーズソース』だね。『チーズ』じゃない。でも、これが合ってる!)

未央(『チーズ』でもおいしいんだろうけど、このままでもいいかも。このチーズソース、なかなかのなかなかですよ)

未央(コショウも結構効いてるかも。ブラックペッパー? 食べる前はそこまでしっかりとした味じゃなくて、あっさりした味を想像してたんだけれど、このブラックペッパーが一気に味を強くしてる。これがポイントなのかなー)

594: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:44:16.57 ID:aJSjeX3h0
P「どうだ?」

未央「おいしい! 今までコンビニにこれが置いてあったことに気付かなかった自分が恥ずかしいくらいかも!」

ちひろ「実際、あんまり気付かないんですよね。ちょっとわかりにくいところにあるというか。一度知ったらもう忘れないんですが……」

P「目当てのものじゃなかったら、というか、知らなかったらたとえ目に付いていても認識できないものですしね」

未央「でも、本当においしいよ、プロデューサー。ありがとね!」

P「どういたしまして、っと、ちひろさん、できましたよ」

ちひろ「次はプロデューサーさんが食べて下さいよ。私は後でもいいですから」

P「女性を待たせたくはないんですよ。あと、どうせ俺は食べるのが早いんで後からでも食べ終わるのは先だと思いますし」

ちひろ「……ありがとうございます」

P「いえ、お気になさらず」

595: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:45:08.51 ID:aJSjeX3h0
未央「でも、本当においし……っとと」パクッ

未央(チーズソースが垂れちゃうところだった……これ、気を付けないとダメだね)

P「そうなんだよなあ……結構、チーズソースが垂れるんだよな。あと、ハムが抜けることとか、厚紙にトルティーヤがくっつくこととかがある。厚紙にトルティーヤがくっついて、それを剥がそうとしたらトルティーヤが破けてチーズソースが垂れてきた時とかは焦ったよな……」

未央「そういうこともあるんだ……」

P「ああ。そういう欠点はあるが、うまいだろ? だからやめられないんだよなぁ……」

未央「うん。おいしい。……他のも食べたくなったかも」

P「……今は食べるなよ?」

未央「さすがに食べないよ。でも、レッスン後とかには良さそうだなー、って」

P「まあ、レッスン後には確かに良さそうだな……結構腹も膨れるしな」

未央「……私はそうだけど、プロデューサーは本当に?」

P「いや、ちょっとだけだ」

未央「やっぱり」

P「でも、未央は膨れるんだろ? なら、それでいいんだよ」

未央「そうなのかなあ……」

P「そうだ。……そう言えば、ちひろさん、それ、成功でしたか?」

596: ◆Tw7kfjMAJk 2015/10/29(木) 02:46:49.51 ID:aJSjeX3h0
ちひろ「ふぁい? ……だ、大丈夫です!」

P「そうですか。良かったです……って、なんで顔を赤らめてるんですか?」

未央「いや、『ふぁい?』なんて言っちゃったからでしょ……」

ちひろ「み、未央ちゃん、言わないで……」

P「あー……かわいかったですよ」

ちひろ「……プロデューサーさん、意地悪です」

P「実際、かわいかったですからね。なあ未央」

未央「うんうん。ちひろさん、かわいかったよー? これはもうCuteアイドルだね!」

ちひろ「うぅ……ぷ、プロデューサーさんと未央ちゃんのばかー!」




615: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 22:13:36.81 ID:QAm/osKx0

――店の前

P「お、こんなところに駄菓子屋、か」

未央「え? ……あ、ほんとだ。初めて見たかも」

P「初めて? ……いや、そうか。初めてでもおかしくはないのかもしれないな」

未央「なんだか、雰囲気あるね。懐かしい……って、私が言うのは違うと思うけど」

P「わかるよ。実際に体験したことがなくても、こういう雰囲気を懐かしいと感じることはある。生まれる前に発売したようなレトロゲーとか、生まれる前に連載していた漫画に対して『懐かしい』って思うようなものだろうな」

未央「あー……確かに。結構昔の少女漫画とかを読んだりすると、読んだこともないのに『懐かしい』って感じるもんね。それと同じかー……」

616: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 22:20:11.82 ID:QAm/osKx0
P「入るか?」

未央「いいの?」

P「むしろ俺が入りたい」

未央「駄菓子屋の懐かしさに涙する、って?」

P「それに近いな。俺の場合、涙するってほど幼少時代を駄菓子屋とともに過ごしてはいないが、それでも思うところはある」

未央「泣いちゃいそう?」

P「そこまでじゃないな」

未央「そっか。とりあえず、入ろっか」

P「ああ」

617: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 22:26:59.54 ID:QAm/osKx0

――店の中

未央(おお……中に入ると、ますます雰囲気が出てますなあ)

未央(棚に並んだいっぱいのお菓子と、おもちゃ? あと、何に使うかわからないものとかが、いっぱい……)

未央(むきだしの蛍光灯が、切れかけなのかどうかわからないけど、たまにジジッて音と一緒に点滅してる。ほこり……はさすがに舞ってないけど、何と言うか、うん、やっぱり『雰囲気ある』)

未央(どうして、こういうところに来たことがないはずなのに、懐かしく感じるんだろう。さっきプロデューサーが言ってたことが答えなのかもしれないけど……私も覚えてないくらいの昔に、来たことがあったりするのかもしれない。物心がつくより前に、どこかで、こういったところに来ていたのかもしれない)

618: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 22:33:36.72 ID:QAm/osKx0
未央(まあ、覚えてないんですけどねー……というか、見たことのないお菓子がいっぱいあるなー……この、きなこ? にむき出しで置いてある爪楊枝みたいなのとか、なんなんだろう)

P「お、きなこ棒か」

未央「きなこ棒?」

P「ああ。包装されてないきなこ棒を見ると、何と言うか、『駄菓子屋』って感じがするな。その場で買って、食べるんだよ」

未央「おいしいの?」

P「おいしい、って言うと、ちょっと言葉にし難いが、まあ、駄菓子屋に来たらとりあえず食べてはいたな」

未央「そうなんだ……じゃあ、一つ、もらおうかな」

P「じゃあ俺ももらおうかな。すみませーん!」

619: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 22:37:54.28 ID:QAm/osKx0

――

未央(きなこが付いてる……何と言うか、棒? 本当に、きなこが付いてる棒だ……うん、見た感じ、それ以上のことは言えない)

未央(とりあえず、食べてみよう)パクッ

未央「……うん」

未央(甘い。おいしい……のかな? わからないかも。でも、なんか、こういうのもいいな。懐かしい、って、食べたこともないようなものに言うのもなんだけど、素朴な味? 甘い……水飴かな。ちょっとだけ、ねちょってするかも。それに、きなこがまぶしてあるから……きなこ餅、とは違うだろうけど、ちょっとだけ、、似た感じかも)

未央「……あれ?」

未央(なんか、爪楊枝に印が付いてる。これって……)

620: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 22:42:52.07 ID:QAm/osKx0
P「お、当たりだな」

未央「当たり?」

P「爪楊枝に印が入ってると当たりでもう一本食べられるんだよ。店員さんに見せると、な」

未央「へぇ……」

未央(それは、なんか、楽しいかも。当たり付き、って、そりゃ、漫画とかでなら見たことがあるけど、初めてやったかも)

未央「というか、もしかして、これ、当て続ければ食べ続けることができたりするの?」

P「ん……まあ、そうだな。理論上は」

未央「ほほーう……それじゃあ、見せてあげましょう。未央ちゃんの、運命力というものを!」パクッ

621: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 22:49:28.09 ID:QAm/osKx0
未央「……はずれだ」

P「だろうな」

未央「うー……こんなことなら、当たりの時に、先に、知っておきたかったよ。そっちの方が楽しかったし、嬉しかったのにー」

P「まあ、物欲センサー、ってやつかもな」

未央「物欲センサーかー……じゃあ、プロデューサーが何も言わなかったらまた当たったのかな」

P「その時はまず二本目がないだろ」

未央「あ、そっか。確かに、そうだね」

P「しかし、懐かしい味だな……おいしいか、ってなると、今はもうもっとおいしいものも知ってしまってるんだが、そういうことじゃなく、な」

未央「おいしいかどうか、っていうのは、こういうところではそんなに重要じゃないのかもね。まあ、おいしいと言えばおいしいんだけど?」

P「そうなんだよなあ……もっとおいしいものを知ってるはずなのに、おいしいと感じるというか」

未央「甘いものはなんでもおいしいってことなのかも?」

P「かもな……次、未央は何を食べるんだ?」

622: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 22:54:48.52 ID:QAm/osKx0
未央「プロデューサーのおすすめとか、ある?」

P「おすすめ? ……いや、難しいな。きなこ棒と同じ、当たり付き、みたいなもんならあるが」

未央「おっ! それは気になるかも。どれどれ?」

P「色々あるが……この『ヤッターメン』とか、どうだ? 当たればお金がもらえる」

未央「お金がもらえちゃうの!? それは、何と言うか、すごいね」

P「確か、10円、20円、50円、100円、だったか。100円を当てた奴はヒーローだったな……」

未央「ほうほう……で、そのヤッターメンっていうのは何円なの?」

P「10円だな」

未央「えっ……それって、元、取れてるの?」

P「元が取れなきゃそんな商売なんてしないさ。入っている量自体は少ないし、そこまで当たるわけでもない」

未央「ほうほう……それじゃ、買っちゃおうかなー」

P「買うのか」

未央「うん。100円、見せてあげるよ。すみませーん!」

623: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:00:16.27 ID:QAm/osKx0

――

未央「……はずれだった」

P「あ、当たった」

未央「え!? 何円? 何円当たったの!?」

P「おおう……お前、本当に高校生か? 最高で100円だってのに、そこまで興奮することじゃないだろ……」

未央「それはそうだけどさー、こういうのって、どんどん盛り上がった方が楽しくない?」

P「あー、確かにな。少年時代に戻る、ってのも、確かに必要かもしれない」

未央「うんうん、そうですよ、プロデューサーくん? で、何円当たったの?」

P「100円」

未央「……え? いや、ちょっと待ってよ。100円、当てたの!?」

P「ああ。……しかし、昔は『いつか絶対100円を当てて豪遊してやるんだー』なんて思ってたが、今当たっても、そこそこしか嬉しくはないな」

未央「うわぁ……それ、子供の前とかで言ったら怒られるよ?」

P「昔の俺なら殺意を抱くレベルだろうな」

未央「そんなに……?」

624: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:03:04.30 ID:QAm/osKx0
P「というか、未央。食べないのか?」

未央「食べるけど……量、少ないね」

P「駄菓子だからな。まあ、量を求めるならそこの『らあめんババア』とかがいいんじゃないか? 『ヤッターメン』じゃあ物足りなくてあれを買った記憶があるな」

未央「あ、これなら見たことあるかも。昔、食べたことがあるような」

P「そうか? スーパーとかにも置いてたっけな。さすがに覚えてないが」

未央「まあ、とりあえず先にこっちを食べるよ、ヤッターメン」

P「ん、そうだな。俺も食うか」

未央(ってことで……これ、一口でいけそうだなー。よし、一口で食べちゃおう)パクッ

625: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:06:29.70 ID:QAm/osKx0
未央「……ふんふむ」

未央(うん。よくある感じの味だ。でも、ちゃんと味わう前に口から消えちゃった。……やっぱり、量、少ないなあ。これのすぐ近くに『らあめんババア』とか『ベビースター』とかを置いてるのは、そういうことなのかも)

未央(うーん、でも、他にも食べたいしなぁ……うん、ここは、他のを食べよう。ここでしか食べられないやつ、とか!)

P「お、うまい棒」

未央「んっ……うまい棒、ですか」

P「ですか、って……どうしたんだよ、未央。うまい棒なら、知ってるだろ?」

未央「知ってるけど……」

未央(ここでしか食べられないもの、って話をしてる時に言われると、ちょっと困ると言いますか。出鼻を挫かれた? 使い方を間違ってるかもしれないけど、そんな気持ちかも)

626: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:11:08.17 ID:QAm/osKx0
P「うまい棒はその名前の通りうまいよなあ……個人的には、うまい棒こそ駄菓子の王道、って感じだ。10円で、色んな味があって、しかも、うまい。外せないよな……未央は、何味がいちばん好きだ?」

未央「え? えっと……そうだね、コーンポタージュ味、かな」

P「コンポタか……わかるぞ。あれはうまい。誰に聞いても五指に入るんじゃないか、って味だ」

未央「プロデューサーは?」

P「俺は……そうだな、めんたい味とか、なっとう味とかか」

未央「……なっとう味?」

P「ん? なんだ、知らないか? って、確かに、スーパーとかではあんまり並んでないかもな。正確には、取り扱っているところもあるが、そんなに多くはない、か」

627: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:20:44.24 ID:QAm/osKx0
未央「……本当においしいの?」

P「俺は好きだな。割りと本当に『納豆』っぽい」

未央「それ、今食べても大丈夫なの? においとか」

P「そこまでにおいは強くなかった気がするが……」

未央「……とりあえず、食べてみようかな。何事も挑戦ってことで」

P「挑戦って……まあ、食べてみろ」

未央「うん!」

628: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:21:14.44 ID:QAm/osKx0
未央(でも、なっとう……なっとうかあ。うまい棒、色んな味があるってことは知ってたし、私の知らない味もいっぱいあるとは思ってたけど、なっとう味なんてものがあるとは)

未央(でも、よく考えてみると、聞いたことはあったような……なかったような。うん、よく覚えてない。とりあえず、食べたことはないってことだけははっきりしてるし、食べてみよう)パクッ

未央「んっ……おおっ!」

未央(本当に『納豆』だ! 何と言うか、ねばりもあるし、納豆の風味もしっかりしてる。このピリッとちょっとだけ辛いのは……からし? あ、そうか。納豆のからしだ! そこまでこだわってるんだ。思った以上にすごいかも!)

P「どうだ?」

未央「思った以上に納豆だったよ! うん……おいしかったよ、プロデューサー」

P「だろ? 俺も最初はネタで食べたんだが、これが案外うまいんだよな。納豆が苦手な人はダメかもしれないし、好きでも苦手な人は居るかもしれないが、俺は好きだ」

未央「うん。なんか、ちょっとねばっとしてたし……って、それを気にしちゃうと、ちょっと、口の中が気持ち悪いかも」

629: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:25:15.98 ID:QAm/osKx0
P「ん? それなら、なんか、飲むか?」

未央「飲み物、って……自動販売機? そう言えば、そこのところにあったような……」

P「じゃなくて、ラムネだ。今は冬だからあるかわからないが……あったら、な」

未央「ラムネかー……飲むの、かなり久しぶりかも」

P「お、そうか。じゃあ、俺も飲むかな」

630: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:26:02.51 ID:QAm/osKx0

――

P「ラムネとサイダーの違いって、入ってる容器だけなんだよな。初めて知った時はびっくりしたよ」

未央「え? そうなの? 知らなかったかも」

P「ん、知らなかったか。ってことは、まあ、今までの反応からしてもそうなんだが、あの漫画、読んでないんだな」

未央「漫画……?」

P「駄菓子の漫画、だな。事務所に置いてるから読んでみるといい。面白いし、懐かしい。確かアニメ化も決まってたっけな。それから見てもいいかもしれない」

未央「アニメかー……そう言えば、プロデューサーの影響かもしれないけど、アニメも見るようになったなー」

P「ウチの事務所には声優の仕事をしてるアイドルも居るし、俺だけの影響じゃないと思うが。最近あんまり追っかけてないが、今言ってた漫画のやつは、たぶん、見る。期待してるしな」

未央「ふーん……それって、漫画から読んでも大丈夫な感じ?」

P「一話完結ものだし、大丈夫じゃないか? 先に漫画を読んでると、『あのキャラクターが動いてる!』って感動もあるしな。アニメの途中から原作を、ってなるとまた別だが」

未央「そっか。じゃあ、読んでみようかな」

P「ああ、そうしろ……って、なんで漫画の話になったんだ」

631: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:29:14.50 ID:QAm/osKx0
未央「プロデューサーが話し始めたんでしょ? 確か……ラムネとサイダーは一緒って話だったっけ」

P「あ、そうそう。でも、実際のところ、飲んだ感じは違うと思うんだよなあ……」

未央「うん、違うよね。味もなんか違う気がするんだけど……中身は一緒なんでしょ?」

P「らしい。まあ、容器によって口当たりとかも変わるから、それで、なのか?」

未央「ま、そんなこと気にしなくてもいいんじゃない? おいしいことは確かなんだし」

P「……それもそうだな。じゃあ、開けるか。未央は開け方、わかるか?」

未央「うん。キャップを外して、あの、突起の付いたやつをラムネの口に当てて、押しこめばいいんでしょ?」

P「ああ。しばらく押し込めたままにしなくちゃならんが、な」

未央「あー……子供の頃、よく失敗したよ。どうすればいいのかわかんなくなっちゃったり、床にこぼして、お母さんに怒られたり」

P「それは俺も経験があるな……いつの世代も、これは変わらないんだな」

未央「だね。じゃ、開けよっか」

P「ああ」

632: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:29:45.70 ID:QAm/osKx0
未央「よい、しょ、っと」

P「『よいしょ』って……女子高生の言葉かよ」

未央「女子高生の言葉ですよ? 未央ちゃん、キャピキャピでナウいヤングですから」

P「絶対違うな……そろそろいいんじゃないか?」

未央「かな? じゃ、そーっと……お、いいみたい」

P「それじゃ、飲むか」

未央「うん」

未央(ラムネ、かぁ……飲むの、久しぶりかも。昔はこのビー玉が邪魔だったなー……どうすればいいのか、わからなかったり。こんなわかりやすいくぼみがあるのに、どうしてわからなかったんだろ)

未央(とりあえず、いただきます……っと)ゴクッ

633: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:30:12.77 ID:QAm/osKx0
未央「……ん~!」

未央(シュワシュワだ。炭酸が弾けて、ちょっと痛くて、でも、気持よくて。爽やかな感じ。もう冬って言ってもいい季節だけど、こんな季節に飲むラムネも、いい感じかも)

未央(……うん、やっぱり、サイダーとは、ちょっと違うような気がする。『気がする』だけ、なのかな。あと、銘柄とか? 会社によって味は違うだろうし……それが原因なのかも)

未央(でも、サイダーって言うと、やっぱり、あれだよね。美嘉ねー。『サイダーみたいに弾ける恋モード♪』って。サイダーを見かけると、いつもあれを思い出しちゃう。美嘉ねー大好き未央ちゃんとしては、あれのせいでサイダーの購入量が増えちゃいましたよ)

未央(でも、これからはラムネもオッケーだね。ラムネとサイダーが同じなら、って。まあ、ラムネは夏以外には置いてないような気がするけれど……いや、なぜかここには置いてたけど。駄菓子屋って、ラムネを年中置いてるものなのかな? それとも、この店がたまたま? よくわからないや)

P「ふぅ……ラムネも飲んだところで、そろそろ、帰るか?」

未央「えっ? ちょっと、早くない? 未央ちゃん、まだお腹いっぱいではないですよ?」

P「なんで駄菓子屋で腹を膨らませようとしてるんだよ……というか、それを聞いたらもっと帰らせたくなったんだが」

未央「えー……まだまだ楽しめそうなのにー……」

P「また連れて来てやるから今日はここらで我慢しろ」

未央「うー……でも、最後にちょっと甘いものが食べたいなー。……チラッ」

634: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:30:41.99 ID:QAm/osKx0
P「口で言いやがった……まあ、うん、そうだな。確かに、塩辛いものばっかり……ってほどじゃないが、そういうものを食べた後は甘いものが欲しくなるよな」

未央「そして甘いものの後にはしょっぱいものが欲しくなるという……」

P「さすがにこれ以上はダメだけどな」

未央「ちぇー」

P「で、何にする? 5円チョコとか? チョコバットもあるな。いや、それ以外にも色々……って、未央、どこに行こうとしてるんだ?」

未央「え? 確か、外にアイス、なかったっけ?」

P「アイス? ……お前、この季節にアイスを食べるつもりかよ」

未央「冬だからこそのアイスですよ。冬に暖房の効いた部屋で食べるアイス……最高でしょ?」

P「わかるが、ここは特別暖房が効いてるとは思えないんだが」

未央「とにかく! 駄菓子屋さんのアイスが私は気になってるから、ちょっと、見てみたいのですよ」

P「ああ、そういう……まあ、うん。それもいいかもな」

未央「よし、それじゃあ、見に行くね!」

635: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:35:35.68 ID:QAm/osKx0

――

未央(……ほうほう、見覚えのないアイスがいっぱい……ん? これは……)

P「お、●●●●アイスか。懐かしいな」

未央「ん!? ぷ、プロデューサー……お、●●●●って、いきなり、何を」

P「ん? ……あ、いや、違うぞ? べつにセクハラとかじゃなくて、実際、そのアイスはそう呼ばれているんだよ。色んな呼び方があってだな……」

未央「……プロデューサー、アイドルにセクハラをやっちゃダメだと思うよ?」

P「だから、セクハラじゃないってのに……」

未央「だって、色んな呼び方があるってことは、他にも呼び方があるってことじゃん。それなのに『●●●●アイス』って名前を選んだのはプロデューサーだと思うけど?」

P「いや、それは俺が昔そう呼んでいたからで……ああ、もう、すまん。すみませんでした。俺が悪かったよ。これでいいか?」

未央「うん、よろしい。……で、これ、おいしいの?」

636: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:36:22.16 ID:QAm/osKx0
P「あー……まあ、おいしいな。俺は好きだった。ただ、食べにくい。注意しないと、爆発する」

未央「爆発?」

P「そうだな……これはゴム状の容器に入っているアイスで、先っぽを切って、そこから吸っていくタイプのアイスなんだが、最後の方に溶けていた部分がゴムの圧力やら何やらで一気に飛び出すことがあるんだよ。それから『ばくだんアイス』とも呼ばれているな」

未央「あー……どっちの名前もなんか理解できたよ。そういう意味なんだね」

P「ああ。……で、食べるのか?」

未央「うん! 何事も挑戦、だしね」

P「じゃ、買って、ハサミを借りて、切って、食べるか」

638: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:40:59.92 ID:QAm/osKx0

――

未央「冷たっ」

未央(やっぱり、この季節にアイスはダメだったかな。冷たいし……吸うタイプのアイスだったら、手の体温で溶かしていかないと食べていけないし)

未央(……なかなか出てこない。これは持久戦になるかも)

P「んー……なかなか出てこないな。というか、冷たい。手で触ってられん」

未央「あ、プロデューサーも? まあ、これがこういうアイスを食べる時の宿命? なのかもねー」

P「宿命ってのはなんか違うような気もするが……まあ、駄菓子ってのは長く楽しむのも重要だからな。これもまた、正しい駄菓子の楽しみ方なのかもしれない」

未央「へぇ……長く楽しむのが重要、か。それは、やっぱり、少ないお金でどれだけ楽しめるか、っていう?」

P「たぶんな。って、これはさっき言ってた漫画に書いてあったことなんだが」

未央「漫画なんだ……」

639: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:43:00.81 ID:QAm/osKx0
P「でも、事実だとも思うよ。面倒くさかったりするからこその駄菓子だってな。大人になった今だと、煩わしくも思ってしまうが、あの頃はこんな面倒くささも楽しんでたような気がしないでもない」

未央「面倒くさいものは面倒くさいだけかもしれないけどね」

P「まあ、そうかもな。思い出が美化されているだけかもしれない」

未央「昔は良かった、ってやつ?」

P「そこまでじゃないが、子供の頃に戻りたいと思うことはあるな。実際に戻れるってなっても戻りたくはないがな」

未央「それはまた、どうして?」

P「未央が子供の頃に戻りたいかどうか、ってのと、たぶん、同じだな」

未央「……そっか。うん。そうだね」

P「ああ……っと、ちょっと、溶けてきたな。食べるか」

未央「うん」

640: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:43:34.44 ID:QAm/osKx0
未央(えーっと、力を入れて、手をむぎゅむぎゅ……っと、お、出てきた出てきた)チュー……

未央「……ん」

未央(おいしい。普通においしい。さっぱりしてる? 素朴な味って感じで、うん、おいしい)

未央(なかなか出てこなくて、でも、おいしい。うん、結構、いい感じかも)

未央(……でも、手が冷たいのはそうなんだけど、口も冷たくなってきたかも。ちょっとだけ離そうかな。でも、爆発するとか何とか言ってたしなー……)

未央(……いや、うん、もうちょっと無理。一瞬だけなら、大丈夫、だよね?)

未央(……よし、一瞬だけ、一瞬だけ――)パッ

未央「あ」

641: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:44:33.34 ID:QAm/osKx0
P「……何やってんだ、未央」

未央「……いや、その、冷たくて」

P「……気持ちはわからんでもないが、ハンカチ、貸してやるから、拭いとけ。少しべとつくかもしれんが……それは、まあ、事務所まで我慢しろ」

未央「うん……」

未央(……なんか、テンション、下がるかも。顔にちょっとかかったし……うー、プロデューサーの言うこと、ちゃんと聞いておけばよかったかも)

P「……しかし、もっとちゃんと注意しておくべきだったな。こうなることは予測できたのに……ごめんな、未央」

未央「え? ……ううん、私が不注意だっただけだし、これもまた経験ですよ、経験」

P「……ありがとな、未央」

未央「なんのことかわかりませんなあ」

P「……そうか」

未央「うん、そうなのです。だから――クシュッ」

未央(ん……アイスを食べたからかな。ちょっと、寒くなってきたかも。ぶるっとしてきた)

642: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:45:10.75 ID:QAm/osKx0
P「アイスなんか食べるからだ……って、俺も食べたんだが」

未央「だって、食べたかったんだもん」

P「『もん』って、子供か」

未央「女子高生はまだまだ子供だよ。未成年ですし?」

P「開き直るなよ……」

未央「でも、本当に寒いなー……あ、ねぇねぇプロデューサー」

P「ん?」

643: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:45:39.48 ID:QAm/osKx0
未央「私の身体、あたためてくれない?」

P「なっ……未央、お前、大人をからかうなよ」

未央「あはは。からかってないですよ? ただ、寒いから、あたためてくれないかなーと思いまして――んっ」ブルッ

P「……本当に寒いんだな。そうか、スカートだし、な」

未央「えへへ……まあ、美嘉ねーリスペクトと言いますか、ファッションのためなら多少の我慢は必要と言いますか? だから、寒いから、あたためてくれないかなーって」

P「……そうだな」

未央「……え?」

P「未央、ちょっと、目、つぶっとけ」

未央「え? ……いや、その……は、はい」ギュッ

645: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:47:01.54 ID:QAm/osKx0
未央(え? え? どういうこと? 確かに私から言ったけど、プロデューサーが応えるなんて思ってなかったし、というか、いつもならさっきみたいに言ったはずだし……え? なんで? どうして? どうして、いきなり、こんなことになってるんだろ。嫌というわけじゃないけど……で、でも、その、時と場所がちょっと理想と違うと言いますか……こ、こんなところで、私――)バサッ

未央「……へ?」パチッ

P「俺のコートだ。それでも羽織って、あたたまっとけ」

未央(……え? っていうことは、つまり……)

未央「……プロデューサー!」

P「先にやったのはお前だし、勘違いしたのもお前だ」

未央「目をつぶらせる必要はなかったと思うんだけど」

P「ん……確かにそうだな。じゃあ、ただのやり返しだ」

未央「開き直った……」

646: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:48:16.00 ID:QAm/osKx0
未央(……もー、プロデューサーってばー……)

未央(……でも、あたたかい、な。これが、プロデューサーのあたたかさ、なのかな――って、何思ってるんだ、私。ちょっと、変態みたいじゃん)

P「じゃあ、さっさと帰るぞ。着替えも早くした方がいいだろうし、な」

未央「えっ、あ、うん」

未央(……私はあったかいけど、そう言えば、プロデューサーもアイス、食べてたんだよね……)

未央(……よし)

未央「プロデューサー!」ギュッ

P「んっ!? ……いきなりなんだ、未央」

未央「えへへ……くっついてたら、あたたかいでしょ? コートを貸してもらったお礼だよ」

P「くっついてたら、って……お前、何度も言ってるが、アイドルなんだから……」

未央「大丈夫だって。こうしていると、顔は見えないし。……それに、私のせいで、プロデューサーが寒がってるとか、嫌だもん」

647: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:48:48.71 ID:QAm/osKx0
P「……とりあえず、離れろ。そのままじゃ、前が見えなくて危ないだろうし……」

未央「でも、それじゃあ、プロデューサーが……」

P「あー……そうだな、手を繋ぐくらいなら、変装もしてるから、大丈夫かも、しれないな」

未央「……それはつまり、手を繋いで欲しい、ということかな?」

P「そういうわけじゃ……ああ、そうだな。手を繋いでくれませんか、本田未央さん」

未央「いいよ、プロデューサー。……これくらいで、身体があったまるかは、わからないけど、ね」

P「……確かに、身体は、わからないな。でも、ちゃんと、あったかいよ」

未央「……そっか」

P「ああ」

648: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/05(木) 23:49:41.33 ID:QAm/osKx0
未央「……このまま帰ったら、何か、言われるかな」

P「かもな」

未央「……でも、寒いから、仕方ないよね」

P「……そうだな」

未央「……えへへ」

P「どうした?」

未央「ううん、なんでもない。……ただ、あったかいな、って、思って」

P「……そうだな。うん。とても、あたたかい」




660: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 20:12:38.70 ID:2XJiWiTu0

――事務所

未央「ポッキーの日だよ、プロデューサー!」

P「え? ……ああ、そうだな。凛がそれで仕事だったからな」

未央「えっ……未央ちゃん、知らないんですけど」

P「いや、お前は呼ばれてないからな……」

661: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 20:19:12.35 ID:2XJiWiTu0
未央「えー。どうして私じゃなくてしぶりんなのー? ぶーぶー」

P「そりゃ、凛がチョコレート好きだからだろ。仕事が決まった時、あいつ、目をキラキラさせてたからな……」

未央「しぶりん、そんなにポッキー好きだったっけ?」

P「凛が言うには、『ポッキーはすごいよ、プロデューサー。元々ポッキーは「プリッツ」にチョコレートをコーティングさせるという発想から作られたお菓子だったんだけれど、最初は全体にチョコをコーティングさせる、って考えられていたんだよね。でも、コンセプトとして「手を汚さないこと」っていうのがあったから、そこで色んな議論があったみたい。銀紙で包むとか、色々な方法が考えられた結果、今のチョコがコーティングされていない部分を作って、そこを持たせるというスタイルになったんだよ。この「手を汚さずに食べられる」っていうのはすごいよね。手を汚さずに食べられるから、いつでもどこでも食べることができる。手を汚さずにチョコレートを食べられるなんて……ポッキーは、人類の至宝だよ』らしい」

未央「愛が深すぎでしょしぶりん……そこまで深いと逆に心配だよ……」

P「実際はこの後に種類毎の良さを語られたりしたからな……あと、どうしてポッキーっていう名前になったか、なんて豆知識をつらつらと……」

662: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 20:25:45.90 ID:2XJiWiTu0
未央「そこまでいくともうこわいんだけど……プロデューサー、その仕事、どうだったの?」

P「完璧だったよ。いつも通りでいて、チョコレート愛が深いことはわかるような、絶妙な感じだった」

未央「あ、ちゃんとできたんだ……」

P「ああ。凛にも『仕事なんだから私情を出したりなんてしないよ』なんて言われたからな」

未央「……しぶりん、あれで結構プロ意識高いよね。プロ意識というか、アイドル意識?」

P「そうだな。最初はもうちょっと不真面目な、今時の女子高生って感じの子だと思っていたんだが、実際は事務所でも上位に入るくらい真面目だからな」

未央「ま、未央ちゃんほどは真面目じゃないですけどね?」

P「……あ、うん。そうだな」

未央「ちょ! 何その反応! 突っ込んでくれないと未央ちゃんが可哀想な人みたいになっちゃうじゃん!」

P「いや、さすがに白々過ぎてな……」

663: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 20:32:05.09 ID:2XJiWiTu0
未央「むー……そんな意地悪なプロデューサーにはもうポッキーあげないもん」

P「ん? あ、買ってきたのか」

未央「そうだよ。せっかく未央ちゃんとポッキーゲームをさせてあげようとしたのになー。残念だなー」

P「いや、アイドルとプロデューサーがポッキーゲームとかするわけないだろ……あと、ポッキーなら凛の仕事で山程もらってきたからべつにいらん」

未央「えー!? じゃあ、この未央ちゃんが買ってきたポッキーはどうすればいいのさー!」

P「食べればいいだろ」

未央「そうだけどさー……なんか、買わなくてもよかったってなると、後悔しない?」

P「……まあ、するな」

未央「だから、プロデューサーがそれを言わなかったら未央ちゃんは幸せなままだったんですよ。プロデューサー、責任、とってよね!」

P「嫌だ」

未央「冷たっ! プロデューサー、冷たくない!? 大事な大事なアイドルが傷付いてるっていうのにー」

664: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 20:36:56.23 ID:2XJiWiTu0
P「……はぁ。それで、何をしろって言うんだ」

未央「おっ、乗ってくれるの? プロデューサー」

P「しつこいからな……」

未央「ふっふっふ、さすがのプロデューサーくんも未央ちゃんの美貌には逆らえなかったみたいですなぁ」

P「違うが」

未央「照れない照れない♪ それで、お願いだけど……ポッキーゲーム、しよっ」

P「それはしない」

未央「えー……何でもするって言ったのにー」

665: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 20:50:39.87 ID:2XJiWiTu0
P「言ってないだろ……あー、もう、ポッキーでも食っとけ。凛が結構な量を持って帰ったが、それでも残ってるからな」

未央「しぶりん、持って帰ったんだ……」

P「まあ、好きらしいからな。さすがに常識的な量だったが」

未央「あ、常識的な量だったんだ。てっきり100箱以上持って帰ったのかと思ったよ」

P「はっはっは。……それで、ポッキーだが」

未央「ん!? 今、なんで笑ったの? なんで否定しなかったの!? というか、100箱もくれたの? 太っ腹過ぎない?」

P「いや、凛の仕事の出来が本当に完璧だったからな……凛のポッキー愛にえらく感動されたようで、一年分、くれたんだよ」

未央「一年分……って、つまり」

P「……まあ、そういうことだな」

未央「えぇー……しぶりん、どんな仕事やったの。かなり気になるんだけど……」

P「どうせまたニュースか何かでやると思うぞ。あと、CMの起用も決まったからな」

未央「しぶりん本当にどんな仕事やったの!?」

P「また見ればわかるさ。……それで、ポッキーだが、未央は何が好きなんだ? ポッキーにも色々あるが」

666: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 21:06:37.73 ID:2XJiWiTu0
未央「んー……プロデューサーのおすすめは?」

P「またそれかよ……こういう菓子に関しては、未央の方が詳しそうなんだが」

未央「でも、プロデューサーも結構お菓子好きでしょ? ポッキーは昔からあるし、プロデューサーの方が詳しいんじゃないかなーって」

P「それはどうだろうな……あー、そうだな。俺は結構『極細』とか、好きだぞ」

未央「おっ、極細ですか。それはまた良いところを……何本かを一気に食べると爽快だよね」

P「ああ。冷蔵庫で冷やしておいたのを食べると、『ポキッ』と良い音が鳴るんだよな。『ポッキー』って名前になった理由を強く実感するよ」

未央「……冷蔵庫で冷やすんだ。夏じゃなくても」

P「いや、だって、冷蔵庫で冷やしておいた方が食感がいいだろ? しないか?」

未央「あんまりしないかな。だって、ポッキーって他のチョコレートのお菓子と違って、あんまり冷やさなくてもいいイメージない?」

P「んー……確かにあるかもな。人による、ってことなんだろうが……あ、そうだ、じゃあ食べてみるか? 冷やしておいてるんだよ」

未央「用意周到だね」

P「自分のためでもあるからな……っと、これだこれ、食べてみろよ」

667: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 21:08:57.13 ID:2XJiWiTu0
未央「ん。それじゃあ、失礼して……」ポキッ

未央「あ、本当に『ポキッ』ってなった。一本なのに」

P「そうなんだよな。極細は何本か一気に食べてこそ、って感じがするが、あらかじめ冷蔵庫で冷やしておいたりすると一本でも十分『ポキッ』となる食感が味わえるんだよ」

未央「あと、口当たりがちょっと違うね。何と言うか、表面がやわらかくなくて、かたいというか」

P「凛が言うには、『それがあるからどっちにするか迷うんだよね』って要素らしいがな。どっちも好きだけれど、チョコレートのじんわりと溶けていくような感触を味わうためには冷蔵庫で冷やさない方がいいとか。でも、それは極細じゃなくても味わえるから……ってなんだか悩んでいたよ」

未央「……やっぱり、しぶりん、チョコレートのことに関してはちょっとおかしくない?」

P「それ、凛の前で言うなよ?」

未央「言わないけどさー……」

668: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 21:09:36.75 ID:2XJiWiTu0
P「それで、未央はどうだ? どっちが好きだ?」

未央「どっちが、って……うーん、私はそこまでこだわりないかな……」

P「なっ……お前、まさか、きのこの山とたけのこの里のどっちが好きかもこだわりがないタイプか……?」

未央「それは……って、これ言ったら戦争が始まるような気がするからやめておくよ」

P「……確かにな。戦争が始まるとダメだからな」

未央「うん……でも、しぶりんってどうなんだろ」

P「どっちのことも絶賛してた」

未央「あ、だと思った」

P「本当、『何言ってるの?』って感じだったからな……どうでもいいと思っているわけじゃなくて、どっちのことも俺よりずっと思い入れが深そうだったから何も言えなかったよ……何か言ったら逆に論破されそうだったからな……」

669: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 21:11:31.42 ID:2XJiWiTu0
未央「……プロデューサー、そういうこと、気にするタイプ?」

P「んー……いや、まあ、本当に気にしてるかってなるとそこまで気にしてるわけじゃないが……何と言ったらいいんだろうな、こういうことでの争いを戦争って言うことで、ストレスとかを解消しているというか……擬似的な戦争を行うことによって闘争本能を満足させているのか?」

未央「聞かれてもわからないけど……人は、戦争を求めてしまう、ってことだね……それは、悲しいことだね……ううっ、未央ちゃん、涙が出ちゃうよ」

P「白々しいにも程があるぞ……」

未央「えー……未央ちゃん、一世一代の大芝居だったのにー」

670: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 21:12:09.22 ID:2XJiWiTu0
P「あれで一世一代の大芝居だったら演技に興味を持ってるとか口が裂けても言えないレベルなんだが……泰葉とかに師事した方がいいんじゃないのか?」

未央「そこまで言われるほど……? というか、冗談だってわかってるのにそこまで言われると傷付くんだけど」

P「じゃあ、泰葉に師事する話はなしってことでいいか」

未央「いやいや! それはかなり興味があるから! お願いします!」

P「ん? そうか。じゃあ、トレーナーさんなんかにも話して色々と都合を合わせておくよ。ちゃんと泰葉に聞いてから、だが……というか、未央の性格なら、もう何か聞いていてもおかしくなさそうだが」

未央「えー……モデルとか、そっちではちょっと聞いたことあるんだけど、さすがに演技指導まで、っていうのは気が引けて」

P「さすがの未央も、か。まあ、泰葉も泰葉で忙しいからな……泰葉も未央に聞きたいことは多そうだが」

未央「そうかな……正直、教わることしかなさそうだけど」

P「芸歴は長くてもアイドル歴はお前より短いだろ。それに、だからこそ、ってこともあるしな」

未央「……うん。それなら、この才色兼備な未央ちゃんが教えられることなら何でも教えて上げちゃいますよ。任せて、プロデューサー」

671: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/11(水) 21:14:37.83 ID:2XJiWiTu0
P「ああ。……っと、そろそろ出る時間だな。未央、ずっと話してたが、準備できてるか?」

未央「大丈夫。ポッキーゲームの準備ならいつでもできてるよ!」

P「それはしないが」

未央「こんなかわいいアイドルが言ってるのに、したくないの?」

P「したくてもしないに決まってんだろ」

未央「んん? それはつまり、したいということかな? かな?」

P「……行くぞ、未央。遅刻するわけにはいかないからな」

未央「えっ!? いや、まだまだ時間は余裕が……って、プロデューサー! 早い! 早いって! 待ってよー! 謝るから~!」




679: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/12(木) 00:51:13.02 ID:1A/0Ekwq0

――外

未央「ずいぶん寒くなってきたね、プロデューサー」

P「ん? 確かにそうだが……どうした、いきなり」

未央「どうした、って、私が寒くなってきたって言うことが何かおかしい?」

P「ついさっきまで卯月や凛の話をしていたのに話題が変わるのがいきなり過ぎる、ってことだな」

未央「だって、唐突にそう思ったんだもん。仕方ないでしょ?」

P「コンビニが見えるようになって、唐突に?」

未央「……バレてた?」

P「もう付き合いも長いしな。まあ、何か買って温まるとするか」

未央「やったっ。プロデューサー、ありがとね♪」

680: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/12(木) 00:51:44.35 ID:1A/0Ekwq0

P「……ほんと、調子良いよな、お前は」

未央「お褒めいただき光栄です」

P「褒めてない」

未央「わかってる♪」

P「……ったく、本当にお前はずるいよ。むかつくが、かわいいから許せてしまう」

未央「まあ、未央ちゃんは美少女ですからねー。まさに『美しさは罪』、だねっ!」

P「うわっ、うざい」

未央「でも、許せるんでしょ?」

P「それなんだよな。本当、チョロ過ぎて自分で自分が嫌になるよ」

未央「私は好きだから大丈夫だよ」

P「……未央。やっぱり、お前はずるいよ」

未央「えへへ……」

P「とりあえず、入るか」

未央「うん」

681: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/12(木) 00:52:10.27 ID:1A/0Ekwq0

――コンビニ

未央「コンビニも色々あるよねー……温まるって言ったら、なんだろ。おでんとか? 実は私、コンビニのおでんって食べたことないんだよねー」

P「そうなのか。じゃあ、おでんにするか?」

未央「そうしよっかなー……あ、やっぱりこれにする! 肉まん!」

P「ん、肉まんか……確かに、寒くなってくると食べたくなるよな」

未央「未央ちゃんと言えばフライドチキンだからフライドチキンを頼むのもいいんだけど、うん、今日は肉まんの気分かなー……それで、どれがオススメ?」

P「オススメって言ってもな……好みによる、としか言えない。俺も好みで買ってるからな」

未央「そっかー……じゃあ、今日は普通のにしよっかな」

P「そうか。じゃあ、買うか」

未央「うん」

682: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/12(木) 00:53:12.93 ID:1A/0Ekwq0

――外

P「でも、未央はピザまんを頼むのかと思ってたよ」

未央「え? どうして?」

P「だって、女の子ってチーズとか好きだろ? だから、ピザまんが好きなのかな、って思ってたんだよ」

未央「いや、まあ、好きだけど……今は普通の肉まんが食べたかったんだもん」

P「その時の気分による、って?」

未央「そういうことです。わかっているじゃないですか、プロデューサーくん」

P「とりあえず、食べるか」

未央「うんうん。食べよー食べよー」

683: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/12(木) 00:53:42.63 ID:1A/0Ekwq0

未央「あったかい……というか、ちょっと熱いね、プロデューサー」

P「冷たいよりはいいだろ?」

未央「まあ、そうだけどね」

P「これくらいなら、口の中に入れたらちょうどいいくらいだろ」

未央「……だね。それじゃあ、いただきます」パクッ


684: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/12(木) 00:54:13.12 ID:1A/0Ekwq0
未央「あふっ……うん」

未央(うん、おいしい。この寒空の下で食べる肉まんは、どうしてこんなにおいしいんだろう。皮がふっくらもちもちとしていて、餡もしっかり味が付いている。そりゃ、コンビニとかじゃない、ちゃんとした肉まんとは全然違うんだろうけれど、コンビニの肉まんはもう『コンビニの肉まん』というジャンルだと思う)

未央(この……何て言ったら良いんだろう。『ジャンク感』とでも言ったらいいのかな。この、チープさというか、何と言うか。この感じが良いんだよね)

未央(コンビニのフライヤー商品といえばチキンもあるけど、あれもチープさが良いんだし。フライドチキン専門店のちゃんとした、って言い方はさすがにダメなような気がするけど、しっかりしたのじゃなくて、薄い鶏肉を使っていたりする、成型肉なんじゃないか、って思えるような、食感からして違うような、そんなチープさ。たまにそれがたまらなく恋しくなる。だから、コンビニのフライヤー商品はコンビニのフライヤー商品で好きなんだよね)

未央(この肉まんもそう。いや、まあ、チキンに比べるとこっちのチープさはそこまでだけど、うん、しっかりしてると思うけど、それでも、餡のあたりはやっぱりジャンクな感じがする。味が濃くて、お肉の量はそこそこで、他の具材も入っていて。たけのこの食感が特徴的かも。ザクザクとしていて、でも、そこまで多いわけじゃないから、アクセント程度かな。うん、やっぱり、おいしい。この肉まんだけで、十分、おいしい)

未央(でも、こんなにおいしいと思うのは、きっと、寒い空の下で、この熱々なものを食べているから。それから――)

685: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/12(木) 00:55:26.64 ID:1A/0Ekwq0
P「ん? なんだ、未央。こっちを見て。あ、口に付いてるか?」

未央「……えへへ」

P「おい、なんだよ。付いてるなら付いてるって言ってくれよ」

未央「べつに、付いてないよ、プロデューサー」

P「……じゃあ、どうして笑ってるんだよ」

未央「んー……ナイショ、かな」

P「はぁ?」

未央「未央ちゃんも乙女ですからねー、隠しておきたいことはあるのですよ」

P「隠しておきたいこと、って……俺の方を見て笑っていてそれは、何と言うか、めちゃくちゃ気になるんだが」

未央「んー……それじゃあ、今から事務所まで鬼ごっこね。私を捕まえられたら、教えてあげる」

P「は?」

未央「じゃあ、いくよ。プロデューサーはちゃんと10秒数えてから、だからね」

P「いや、お前、いきなり」

未央「じゃあ……スタート!」タッタッタッ

P「だから……くそっ、10、9……」


未央(――それから、大切な人と一緒に、食べているから)





713: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 01:12:32.60 ID:Pe6XRR2i0

――事務所

未央「おつかれー」

P「ああ、お疲れ――って、未央、お前、まだ居たのか」

未央「まだ居たのか、ってどういうことかな? 未央ちゃんはマジメに頑張ってたんですよ?」

P「しかし、こんな時間……終電、間に合うのか?」

未央「今日は寮に泊まるから大丈夫。……しかし、やすやす、思ったよりスパルタだね」

P「やすやす? ……もしかして、泰葉か?」

未央「そうそう。例の演技のレッスンに付き合ってもらっていたんだー。それが、なかなか厳しくてですね……」

P「まあ、あいつはな……というか、泰葉は? 一緒じゃないのか?」

未央「先に帰ったよ。あ、それと『Pさんに「お疲れ様です。夜遅くまで根を詰めて体調を崩してはいけませんよ」と伝えて下さい』って言われたから、伝えとくね。あと、これは私の言葉でもあるからね?」

P「……肝に銘じておく」

714: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 01:17:34.05 ID:Pe6XRR2i0
未央「そう言えば、ちひろさんは?」

P「さすがにもう帰ってる……というか、帰ってもらった。こんな時間まで付き合わせるのも悪いからな」

未央「……プロデューサーは、何、してるの?」

P「何って……仕事だが」

未央「こんな時間まで? ……さすがに、心配になるんだけど」

P「俺よりひどい人はいっぱい居るさ。それに、今日みたいなことはそんなにないよ。いつもはもっと早く帰ってるさ」

未央「そういうことを聞きたいんじゃないんだけど……まあいいや。こんな時間まで頑張っているプロデューサーくんには、ご褒美をあげましょう」

P「ご褒美? ……何をしようとしているのかは知らんが、早く帰れよ。さすがにこれ以上遅くなったら危ないだろうし」

未央「こんな時間に女の子一人で帰らせる方が危ないのでは?」

P「一人で帰らせるつもりはないし、泰葉は一人で帰ったんだろ? ――って、こんな時間に一人で帰ったのか。あいつのことだから大丈夫だろうが、少し心配だな……」

未央「あ、やすやすなら『こんなこともあろうかと、迎えを頼んでいますから』と言ってたよ。これも伝えておいて下さい、って言われたんだった。ごめんね、忘れてた」

P「いったい誰に……いや、そうか。それなら良かったよ」

未央「うんうん。でも、未央ちゃんにはお迎えなんてないのですよ。つまり、プロデューサーに送ってもらうしかないわけで」

716: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 01:29:44.06 ID:Pe6XRR2i0
P「ちょっと申し訳ないが、警備員さんに頼むよ。それか、俺が今すぐに送る。寮までならそこまで時間はかからないからな」

未央「……そんなに忙しいの?」

P「忙しいと言うよりは……ちょっと、今日中にまとめておきたかっただけだ。無理はしてない」

未央「本当に?」

P「本当だよ。だから、俺の心配なんてせずに帰ってくれ」

未央「……うん。でも、レッスン後で疲れているから、ちょっとだけ、居させてよ」

P「それは……ああ。だが、すぐに帰れよ」

未央「うん。……あ、ちょっとキッチン借りてもいい?」

P「キッチン?」

未央「お腹、空いたからさ。コンビニはダメ、なんでしょ?」

P「ダメってわけでもないが……料理した方がいいだろうな」

未央「ここなら食材もあるだろうから、ちょちょっと作って食べてから帰ろうかなー、と思いまして。……プロデューサーは」

P「食べたよ。一応」

未央「……そっか。わかった。じゃあ、キッチン、使うね」

P「ああ」

717: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 01:35:35.38 ID:Pe6XRR2i0

――キッチン

未央(一応、か……うーん、あの言い方、気になるなあ)

未央(まあ、どっちにしろ作ることは決まってるんですけどねー。と言っても、一応でも食べたのならちゃんとした料理を作っても迷惑かもしれないし……この時間だし、夜食、かな?)

未央(えーっと、ごはんは……お、まだ残ってる。というか、残ってるんだ……なんでだろ。まあ、残っているなら好都合、かな。ここは簡単に、おにぎりといきましょう)

未央(しかし、おにぎり……実は作る機会ってあんまりないよね。というか、具は何が残っているのかなー、っと)

未央(ふむふむ……あ、鮭がある。って、え、これ、切り身? なんであるの……? でも、これは確定かなー……あとは……ふむふむ。適当に入れていこー)

718: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 01:44:47.13 ID:Pe6XRR2i0

――

未央(お米よし、具よし……準備完了。さて、作りますか)

未央(えーと……水で手を濡らして、塩を付けて……っと。よし、握っていきますよー)

未央(ほっ、ほっ、ほっ……っと。あんまり力を入れずに、形を整える感じ……だったよね? って、おにぎりでそこまで考えることはないかな。でも、プロデューサーにはおいしいおにぎりを食べてほしいからなー……)

未央(……うん! 気合入れて、握ろう! ……あ、力は入れないけど)

719: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 01:49:15.79 ID:Pe6XRR2i0

――

未央「プロデューサー」

P「ん? 何……って、それは」

未央「えへへ……夜遅くまで頑張っているプロデューサーくんに差し入れですよー、っと。私も食べるけど、ね」

P「……」

未央「ん? どうして反応がないのかなー? 嬉しくない?」

P「いや、そんなことはないぞ! ただ……その、嬉しすぎて、な」

未央「……そ、そう?」

P「……ああ」

未央「……そんなによろこばれると、こっちも嬉しいよ。でも、できれば食べてから言ってほしいかも。あ、私も食べるけどね?」

P「ん、ああ。じゃあ、いただくよ」

未央「どうぞ召し上がれ♪」

720: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 01:58:47.67 ID:Pe6XRR2i0
P「いただきます……っと、そう言えば海苔は?」

未央「あ、それなら……なんか、二種類あったから、どっちも持ってきたよ。でも、どうして二種類……」

P「ああ、それは普通の焼き海苔を味付け海苔の違いだな」

未央「味付け海苔? っていうと……味付きの海苔?」

P「それ以外なんなんだよ……って、まあ、こっちじゃ、そこまで馴染み深くはないな。東日本では普通の焼き海苔、西日本では味付け海苔がよく使われている、って話を聞く」

未央「へぇ……確かに、味付け海苔はあんまり見たことないなぁ。どんな感じなの?」

P「どんな、って……甘辛い感じ?」

未央「それ、おにぎりで食べてもおいしいの? というか、触ったらべたべたしたりしない?」

P「べたべたは……そこまではしないが、ちょっとはするな。だが、おいしいぞ。少なくとも俺はおいしいと思ったな。普通の焼き海苔でのおにぎりも当然うまいんだが、味付け海苔は味付け海苔で良いというか……甘辛い味が邪魔をするかと思いきやあんまり邪魔をすることもないんだよな。一度食べてみてもいいと思うぞ?」

未央「そうなんだ……プロデューサーが言うなら、そうしてみようかな」

P「そうしろそうしろ。……で、具はなんだ? って、具があるのかどうかすら知らないが……まあ、入ってなくてもいいんだがな」

未央「入ってるよ。えっと……どれがどれなのか忘れたけど」

P「……そんなに種類あったか?」

未央「割りとあったよ。でも、使っちゃってよかった……んだよね? ここで料理したりすることってあんまりないから、ちょっと心配かも」

P「大丈夫だよ。使ってほしくなかったら名前を書いておけ、って言ってあるからな」

未央「よかった。そうだったはず……とは思っていたんだけれど、ちょっと心配だったからさー」

721: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:05:07.40 ID:Pe6XRR2i0
P「心配だったなら聞けばよかっただろ」

未央「だって、聞いちゃったらサプライズにならないでしょ?」

P「料理をするってことはわかってるんだから聞いてもサプライズは成立すると思うが」

未央「あー……確かに。聞けばよかったね」

P「気付いてなかったのかよ……」

未央「だって、プロデューサーのことしか考えてなかったからさー」

P「ん……そ、そうか」

未央「そうだ、よ……あの、プロデューサー。私、ちょっと、すごいこと言ったね」

P「……言ったな」

未央「……さ、さあ! 早く食べないと冷めちゃうから、食べようよ、プロデューサー!」

P「あ、ああ、そうだな! いただくよ!」

未央「どうぞ召し上がれ!」

722: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:09:18.79 ID:Pe6XRR2i0

――

P「じゃあ、まずは焼き海苔で……こいつをもらおうかな」ヒョイッ

P「とりあえず、巻いて……っと。いただきます」パクッ

P「……ん! うまい! まだ具にまで達してないから何の具かはわからないが……普通のおにぎりだけで十分うまいよ、未央」

未央「そ、そう? まあ、未央ちゃんですからねー」

未央(……良かった。というか、なんだろ、この気持ち……思ったよりも、嬉しい)

未央(安心もあるけど、それよりも嬉しい。プロデューサーだから、っていうのもあるんだろうけど……おいしいって言ってもらうのって、こんなに嬉しいことだったんだ……)

P「確かに、未央だからな。じゃあ、もう一口……」パクッ

P「……ん、鮭か。しかも、鮭フレークじゃなくて、切り身……? うん! 鮭フレークも鮭フレークでいいんだが、やっぱりこっちだよな。うまいよ、未央」

未央「そ、そう? えへへ……でも、どうして鮭なんてあったんだろ。誰か使ったのかな……?」

P「確かに、なんでだろうな。……まあ、今うまいものを食べることができているからいいってことで」

未央「確かにねー。……それじゃあ、私ももらおうかな」

P「ああ……って、俺が言うことでもないが」

未央「いやいや、べつにいいんですよ? とにかく、いただきます」

723: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:17:32.99 ID:Pe6XRR2i0
未央(えーっと……いきなり味付け海苔はさすがにこわいから、普通の海苔で、っと)

未央(うーん……自分で作ったのに、どれがどれなのかあんまりわかんない。ちょっと色が付いているやつもあるけど……正直、色々な具があったから、色が付いていてもどれがどれかまではわからないんだよね)

未央(……よし、とりあえず、食べよう)パクッ

未央「……あ、明太子だ」

P「明太子も入ってるのか……」

未央「うん。あったから……というか、この明太子おいしいね!?」

P「まあ、確か地元から送ってきてもらったのを、って話だったからな……そりゃ、うまいだろ」

724: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:18:19.29 ID:Pe6XRR2i0
未央「……そんなの使ってもよかったのかな?」

P「問題ないだろ。余ってるから持ってきたんだろうしな」

未央「そうかな? ……でも、もういただいちゃったからね。感謝しなきゃ」

P「誰が持ってきたのかは俺も知らないんだがな」

未央「……福岡出身の人って」

P「んー……鈴帆、アヤ、洋子、そら、千鶴、亜季、だな」

未央「……その誰か、ということですか。また聞いておかなくちゃいけないなー」

P「そこまで気にするんだったらホワイトボードに『ごちそうさまでした 未央』とでも書いておけばいいだろ」

未央「おっ、それもそうだね。じゃあ、後で『明太子、ごちそうさまでした☆ 未央&P』って書いておくね」

P「俺も……だな」

未央「うんうん、明太子はまだあるからねー」

725: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:23:12.29 ID:Pe6XRR2i0
P「……まあ、嬉しいんだが、っと」パクッ

P「ん……これは、ん? いや、なんだ、これ。うまいが……マヨネーズと、かつお節? それと醤油の味がするな……」

未央「あ、それはちょっと調べたら『これがおいしい』ってあったから作ってみたんだー。どう? おいしい?」

P「ああ。……ってことは、定番だけじゃなくてちょっとした変わり種もある、ってことか」

未央「具はいっぱいあったからねー。えっと……わさび菜と何かの魚の醤油漬けみたいなのがあったから、それを刻んでちょこっとごまを和えたもの……とかもあるよ」

P「は? なんだその凝った感じの料理。もうそれで白飯を食べたいんだが」

未央「いやー、なんだか色々あったから適当に作りたくなってきちゃいまして……でも、なんかおいしそうでしょ?」

P「おいしそう、って、食べてないのかよ」

未央「いや、そんな調子で食べていったらお腹いっぱいになっちゃうかなー、って……」

726: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:25:20.25 ID:Pe6XRR2i0
P「どんだけ作ったんだよ……じゃあ、とりあえず、もう一個」パクッ

P「……ん! 酸っぱ……! ……梅干しか」

未央「うん、梅干しですよ。やっぱり定番どころは必要かな、と思って」

P「まあな……しかし、酸っぱいがうまいな、この梅干し。楓さんのか?」

未央「かえ姉さまのだったの?」

P「わから……ないか。あの時にお前は居なかったしな。でも、凛や李衣菜から聞いてないか?」

未央「え? ……あ、聞いたかも。ああ、あの梅干しだったのかー……」

P「現物を見たわけじゃないからわからないが、たぶんな。しかし、うまいな、これ……未央のおにぎりがうまいってのもそうだが、かなり合ってる。もちろんそれだけで食べてもうまいんだろうが……」

未央「まあ、かえ姉さまの持ってくるようなものならなんでもおいしそうではあるけどねー」

P「あー……確かに。というか、ウチの大人組は割りとうまいものを知ってそうなんだよなあ。あるいは、俺よりも。のあとか絶対俺より知ってるぞ……」

未央「そうなの? あんまりイメージないけど……」

P「ああいう奴が意外と食に精通していたりするんだよ……っと、未央、俺ばっかりもらってるけど、食べないのか?」

未央「あ、そうだね。食べる食べる」

727: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:26:14.92 ID:Pe6XRR2i0
未央(っと、それじゃあ、次は……うん、味付け海苔に挑戦しよう)

未央(おにぎりは……っと、やっぱりどれがどれかわからないけど、味が付いているならあんまり味の濃さそうなのじゃなくて……よし、これにしよう)

未央(海苔を巻いて……っと、じゃあ、いただきます)パクッ

未央「……ん」

未央(おっ……ほうほう、こうきますか。確かにちょっと甘辛くて、この海苔単体でもおいしく食べられそうな感じ。普通の焼き海苔でも十分味はしっかりしてるんだから、こんな味付け海苔だと変な感じになっちゃいそうだけど……うん、合う。おいしい!)

未央(これは新たな発見かも! こういう味も良いなー。おいしいなー。というか、もうこの海苔が一つの具って感じ?)

未央(……っと、具といえば、まだ具を食べてなかった。えーっと、これの具は……っと。昆布だ。昆布の佃煮? ……濃いじゃん! 絶対濃いじゃん! 何が『濃そうなのじゃない』なの私!)

未央(……というか、この昆布の佃煮もあんまり見ない感じかも。細切りで、おにぎりに入れやすい感じだった)

728: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:31:44.45 ID:Pe6XRR2i0
未央(……とりあえず、食べよう)パクッ

未央「……あれ?」

未央(……なんでだろ。おいしい。プロデューサーの言った通り、邪魔してない。味付け海苔の甘辛い味が邪魔するかと思ったけど……おいしいや)

未央(うーむ……ただの塩むすびにだけかと思いきや、意外と万能なのかな、君は。味付け海苔くん、未央ちゃんは君のことを覚えましたよ)

P「ん、それ、味付け海苔か。どうだった?」

未央「おいしかったよ。というか、本当に合うんだね。今の具は昆布の佃煮だったんだけど、思ったよりもおいしかったよ」

P「そうだよな。俺も最初は合わないんじゃないかと思ってたんだが……というか、合わないと思う人も居るだろうが、俺はこれも良いと思ったな。どっちかしか受け付けないって人もそりゃ居るとは思うが……俺はどっちもおいしいと思う」

未央「私もそうかな。……うん、それじゃあ、まだまだはないけど、食べていこうか」

P「夜食にしては多いけど、な」

未央「私にとっては晩ごはんみたいなものだから大丈夫」

P「俺は夜食なんだが……」

未央「どうせプロデューサーはいっぱい食べるでしょ? さあ、食べよー食べよー」

P「……まあ、いっぱい食べるけどな。もらうよ、未央」

未央「うん、どうぞ♪」


729: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:35:39.35 ID:Pe6XRR2i0

――

P「ふぅ……割りと食べたな」

未央「うん、食べたね。まさかぜんぶなくなるとは……」

P「そんな量……だったな。でも、未央のおにぎりがうますぎたのが悪い。というか、具がずるいんだよ……お前、料理うまいだろ」

未央「そこそこだよ、そこそこ。適当にあったのを入れただけですし?」

P「それ、うまい奴の台詞だろ……」

未央「いやいや、プロデューサーもこういう感じのこと言ったことあるじゃん? それと同じですよ」

P「……そんなの言ったか?」

未央「言ったよー」

P「……そうか。でも、本当においしかった。それだけは本当だよ」

未央「……えへへ。褒められると悪い気分ではありませんなあ」

730: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:39:27.08 ID:Pe6XRR2i0
P「それじゃあ、未央。さすがにそろそろ帰れ。何だったら送るから、さ」

未央「……プロデューサーは」

P「まだ仕事、だな。……お前のおにぎりのおかげで、元気が出た。まだまだ頑張れるよ」

未央「そこまで頑張られると困るんだけど……でも、言っても、今日はやるんだよね」

P「ああ。今日は、どうしても譲れない」

未央「そっか。……じゃあ、帰るよ。一人で……でもいいんだけど、それはプロデューサーが許してくれないよね」

P「ああ。心配で心配でたまらないからな。今、ちょっと警備員さんに連絡してくるよ」

未央「警備員さん……そう言えば、警備員さんって言ってるけど、警備員さんって、そういうこともするの?」

P「ん? ……あー、ちょっと説明が難しいな。便宜上『警備員さん』って呼んでるだけで、正確には違う名前だったような……とりあえず、アイドルの送り迎えは業務内容に入っているから大丈夫だとは思うが」

未央「ふぅん……なんだか、ややこしいんだね」

P「ああ。ややこしい。……あ、もしもし、アイドルプロデュース部のPですが――」

未央(……プロデューサーが電話している内に何のお仕事か、って、ちょっと気になるけど、さすがに見ちゃダメだよね)

731: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:42:30.59 ID:Pe6XRR2i0
P「――はい、ではお願いします。……未央、ここまで来てくれるってさ。ちょっと時間はかかるらしいが……準備しておけよ」

未央「え? ……うん。わかった。待ってる」

P「ああ。……なあ、未央」

未央「なに?」

P「なんでずっと俺の方を見ているんだ?」

未央「んー……ダメ?」

P「いや、べつにダメじゃないが……何か用があるのかと思ってな」

未央「ううん、ないよ。ただ、プロデューサーの背中って、こんなのなんだなー、って」

P「……なんだか気恥ずかしいんだが」

未央「アイドルはいつもその視線に耐えてるんですよ? 我慢ですよ、我慢」

P「俺はアイドルじゃないんだが……」

未央「……少しだけ、だからさ。見せてよ、背中くらい」

P「……まあ、それで楽しいのなら、べつにいいんだが」

未央「楽しいかって言えば、べつに楽しくはないけどね」

P「楽しくないのかよ……じゃあ、どうしてやってるんだよ」

未央「んー……なんでだろ。でも、見てたいの」

P「はあ? ……いや、そうか。よくわからんが……」

未央「うん。よくわからないけど、ね」

P「……そうか」

未央「うん」

732: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/21(土) 02:46:21.50 ID:Pe6XRR2i0
未央(……プロデューサーの背中を、どうして見ていたいのか、か)

未央(その理由はよくわからない。でも、見ていたら、胸の奥が温かくなってくる。おいしいものをお腹いっぱい食べた時みたいに、幸せな気持ちになってくる)

未央(……それが理由、なのかな。よくわからないけど……ううん、わかってる。きっと、私はわかってる)

未央(……でも、それがなんなのかは考えずに、今はただ、この幸せに浸っていてもいいよね)




745: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/22(日) 00:18:17.15 ID:8s8rSRon0
P「お、復活したのか……」

未央「ん? どうしたのかな、プロデューサーくん?」

P「いや、ちょっと嬉しいニュースを知ってな……コンビニに寄りたいんだが、いいか?」

未央「コンビニ? いいけど……何か買いたいものがあるの?」

P「ああ。前に食べてうまかったものを、ちょっと、な」

未央「ほうほう……それ、未央ちゃんもちょっと気になるかも」

746: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/22(日) 00:20:30.74 ID:8s8rSRon0
P「未央も知ってるかもしれないが……あ、でも……」

未央「? どうかしたの?」

P「餃子だからな……におうかもしれん」

未央「餃子? それって、いつも売ってるやつ……じゃ、ないよね?」

P「ああ。正確には『鶏皮餃子』だな。皮が鶏の皮なんだが……うまいんだよ、あれが」

未央「へぇ……うーん、においは気になるけど、ブレスケア用品は持ってるし……うん、未央ちゃんも食べようかな」

P「そうか? ……とりあえず、まずはコンビニを、だな。確か、ここからいちばん近いのは――」

747: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/22(日) 00:24:37.09 ID:8s8rSRon0

――コンビニ

P「これだ、これ」

未央「あ、フライヤー商品……一個六十円? 安いね。……安いよね?」

P「少なくとも俺の感覚では安いな。うまいし。未央は他に買うものとかあるか?」

未央「うーん……べつにないかな」

P「そうか。じゃあ、これだけでいいか。何個頼む?」

未央「何個……?」

P「いや、一個じゃ……って、そうか。今すぐ食べるんだもんな。何個も買っても、か……一人一個でいいか。いや、でもなぁ……」

未央「……それじゃあ何個か買っちゃえば? 私は……おいしかったら二個目もあり、ってことで」

P「なんだよそれ……べつにいいが」

未央「いいんだ……プロデューサー、これ、かなり好きだったりする?」

P「好きだな……とりあえず、買おう」

未央「ん、そうだね」

748: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/22(日) 00:29:53.24 ID:8s8rSRon0

――外

P「じゃあ、ほら」

未央「ありがと、プロデューサー。……で、どうやって食べるの?」

P「いや、普通に食べるとしか言えないが……」

未央「まあ、そっか。じゃあ、いただきます」

P「いただきます、っと」

未央(ふんふむ……しかし、これは何と言うか、餃子っぽくないですなあ)

未央(餃子と言うよりはからあげっぽいビジュアル? いや、からあげではないんだけど……揚げ餃子みたいな? でもそういうのじゃなくて……うーん、なかなか説明しづらいかも)

未央(……まあ、鶏皮だよね。うん。鶏皮を餃子の形にしたみたいな。そういうビジュアル……って、そのまんま過ぎるけど、そのまんまとしか言えないかも。プロデューサーならもっといい言い方も思いつくのかもしれないけど……とりあえず、食べよう)パクッ

749: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/22(日) 00:33:31.05 ID:8s8rSRon0
未央「んっ……お!」

未央(ほうほう、こんな感じですか……うん、おいしい! 鶏皮の餃子……うん、そのまんまだね。でも、おいしい)

未央(何って言ったらいいだろう。餡がぎっしり詰まってて……ソーセージっぽい? でも、味はしっかり餃子で……これは確かに口がにおっちゃうかも)

未央(皮がぱりぱり? ぷりぷり? どっちもっていうのは変な感じだけど、どっちも感じる。揚げた鶏皮って感じ? もうこの皮の時点で結構ジューシーだよね。おいしい)

未央(まあ、食感もそうなんだけど……うん、これはもう味がおいしいね。おいしい餃子みたいな……でも、普通の餃子と同じかって言うと違うんだけど……言葉にしにくいな)

未央(結構においがするんだけど、その旨味がしっかり感じられるというか。つまりにんにくとかが結構効いているわけだけど……やっぱりおいしいんだよね)

未央(うん! これ、おいしい! 結構においがするからいつでも買えるというわけではないけれど……未央ちゃんのコンビニ行ったら買いたいランキング上位にランクインかな!)

750: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/22(日) 00:36:02.96 ID:8s8rSRon0
P「どうだ? 未央」

未央「ん、おいしいよ。思ったより。においは結構しそうだけどねー」

P「まあ、この時点でにおってるからな……しかし、未央がよろこんでくれて良かったよ。これが六十円って考えたら安くないか?」

未央「安いね。この味で、しかも、思ったよりもボリューミーだし? まさかあそこまでぎっしり餡が詰まっているとは思わなかったもん」

P「まあな。しかし、これを食うとごはんやらビールやらが欲しくなるよなぁ……あと、これにたれを付けてもうまいんだよな、これが」

未央「ビールはよくわからないけど……確かに、ごはんに合うような気がするね。あと、たれとかを付けてもいいかも。この時点でしっかり味は付いてるけどね」

P「うん、本当にな……あ、未央」

未央「ん? 何かね、プロデューサーくん?」

P「二個目、食べるか?」

未央「んー……うん。プロデューサーがいいなら、欲しいな」

P「それじゃ、ほら」

751: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/22(日) 00:40:10.64 ID:8s8rSRon0
未央「ありがと。……でも、私はブレスケア用品を持っているとして、プロデューサーはこの後の仕事、大丈夫なの?」

P「あ」

未央「……考えてなかったの?」

P「……その、未央。悪いんだが」

未央「……うん、いいよ。というか、プロデューサーたるもの、そういうものは持ち歩いていてもいいと思うんだけど?」

P「確かにな……このまま帰ったらちひろさんに怒られるところだった……」

未央「あはは。確かに、そんなにおいを口から漂わせられたら仕事が捗らないもんねー。あと、しぶりんとかも何か言いそうではあるよね」

P「確かにな……美嘉も言いそうだし、みくなんかにも。というか、言わないアイドルの方が少ないような気がしないでもないな……」

未央「まあ、私もそんなにおいを口から出されると文句を言っちゃうかもしれないしね」

P「未央までか……それだと、ほとんどのアイドルに言われそうな気がするな」

未央「む、何その基準。あ、しまむーとかは言わないような気がするよ。においがするとは思ってもプロデューサーが傷付いたらと思って言わないタイプじゃない?」

P「卯月にそんな気を遣わせるとか絶対嫌だな……未央、ブレスケア、させてくれ」

未央「うん。はい」

P「ありがとう。……ん、それじゃあ、帰るか、未央」

未央「はーい」




758: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 18:01:57.22 ID:m830Hzas0
P「からあげ、か……」

ちひろ「? いきなりどうしたんですか、プロデューサーさん」

P「え? ああ、聞こえちゃってましたか……その、いきなりなんですが、なんだかからあげが食べたいな、と思いまして」

ちひろ「本当にいきなりですね……でも、からあげ、ですか。それなら、ちょうどこんなものが……」

P「……からあげバーガー? へぇ、そんなものが……うん、食べたくなってきましたね」

ちひろ「でしょう? そして、プロデューサーさんは今から未央ちゃんを迎えに行くんでしたよね?」

P「……そういうことですか」

ちひろ「はい♪ 帰りに買ってきてもらえると嬉しいです」

P「わかりました。……でも、俺と未央はたぶんあっちで食べてきますよ? そりゃ、出来立ての方がおいしいでしょうし」

ちひろ「そうして下さい。じゃあ、楽しみに待ってますね」

759: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 18:11:53.76 ID:m830Hzas0
P「じゃあ……っと、それで、二種類あるみたいですけど、どっちを……」

ちひろ「うーん……プロデューサーさんのオススメでお願いします」

P「……それ、俺がどっちも食べるって想定ですか?」

ちひろ「食べないんですか?」

P「いえ、食べるとは思いますけど……」

ちひろ「プロデューサーさんならそうだと思ってました。それじゃ、よろしくお願いしますね」

P「なんだか釈然としませんが……はい。それじゃあ、まあ、行ってきます」

ちひろ「行ってらっしゃい。お気をつけて」

760: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 18:16:01.57 ID:m830Hzas0

――

未央「あ、プロデューサー!」

P「ああ、未央。お疲れ」

未央「お疲れお疲れー。いやぁ、今日のお仕事も未央ちゃんは完璧にこなしましたよ? まさに、パーフェクトスター! ってね」

P「らしいな。俺も鼻が高いよ」

未央「……あの、プロデューサー? ツッコミがないと恥ずかしいんだけど……」

P「実際、話を聞いた限りではそうだったからな。スタッフさんにあいさつしたらべた褒めされていたからな」

未央「そ、そうだったんだ? まあ、未央ちゃんですし? これも当然というか?」

P「……そこまで突っ込まれてほしいんか、お前は」

未央「いやー、だってスルーほど悲しいものはないですよ? よく言うじゃん。好きの反対は嫌いじゃなくて無関心、って」

P「それとこれは関係ないと思うが……」

未央「スルーは嫌われることより悲しいってことだよ! ……いや、嫌われることの方が悲しいけど!」

P「どっちだよ……」

761: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 18:22:21.42 ID:m830Hzas0
未央「いやぁ……もし『それじゃあ嫌ってやる』とか言われたら未央ちゃん泣いちゃうかもなー、と思いまして……」

P「俺が未央を嫌うわけないだろ……と言うか、いつまでもこんなところで話しているのもなんだし、そろそろ帰るぞ」

未央「ん、そだね。帰りましょー。……っと、その前に、プロデューサー。私、ちょっとお腹が空いたなー?」

P「言われなくてもそのつもりだ」

未央「本当? えへへ、やったー」

P「それじゃ、行くか」

未央「うんっ」

762: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 18:32:33.71 ID:m830Hzas0

――道中

未央「それで、今日行くところはどんなところなの?」

P「未央も知っている……というか、行ったことがあるだろうところだな。今、からあげバーガーとかやってる……」

未央「あ、あそこかー。ちょっと気になってたんだよねー」

P「ん、知ってたか……でも、その反応では食べてないんだな。未央ならもう食べていてもおかしくないかもしれないと思っていたが……」

未央「行きたかったんですけどねー。なかなか行く機会がなくて……」

P「まあ、そういうこともあるか。でも、それじゃあ未央を誘ってよかったよ。運が良いな」

未央「それはつまり、場合によっては連れて行ってもらえなかったということかな?」

P「今日ちひろさんに言われなかったら行かなかったかもしれないし、未央を迎えに来なければ未央を連れては行かなかったからな」

763: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 19:00:20.22 ID:m830Hzas0
未央「ん? ちひろさん? どうしてちひろさんが関係あるの?」

P「あ、それを言ってなかった。そもそも、からあげバーガーはちひろさんから聞いたんだよ。俺は知らなかったからな」

未央「え、知らなかったんだ。プロデューサーが? 珍しいね。そういうのには詳しそうなのに」

P「それは褒めてるのか? ……まあ、アンテナは張ってるつもりだが、ひっかからないこともあるからな」

未央「そっか。まあ、そうだよね。でも、ちひろさんから聞いたってことは、ちひろさんにも買っていくの? 持ち帰り?」

P「俺たちが店で食べて、ちひろさんの分だけ持ち帰り、だな」

未央「いいの?」

P「いい……というか、結果的にそうするしかなくなったな。あれ、二種類あっただろ? それで、どっちなんですか、って聞いたらオススメを、って返されたからな」

764: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 20:02:57.98 ID:m830Hzas0
未央「それって……ああ、プロデューサーはどうせ両方食べるもんねー」

P「お前からもその認識なのか……」

未央「合ってるでしょ? でも、未央ちゃんも両方気になってるんだよねー」

P「そうか。それじゃあ、二人で分けるか?」

未央「えっ……いいの? というか、足りるの?」

P「他のも頼むから問題ない」

未央「頼むんだ……」

P「せっかくだしな。行くのも結構久しぶりだし……未央は食べないのか?」

未央「さすがにねー。あ、でも、チキンは食べようかな。あそこのはあそこのでおいしいから」

P「からあげバーガーを食べるのに、か?」

未央「好きだから大丈夫だよ。……あ、おいしいから大丈夫だよ~」

P「わざわざ言い直す意味あるか? ……ん、見えてきたな」

未央「お、到着到着。事務所にいちばん近い店舗―」

P「って言っても、そこそこはかかるがな……それでも、これくらいの距離だったらちひろさんに渡すまでにそこまで冷めたりはしないだろう」

未央「だね。それにしても、プロデューサー、優しいね。わざわざ事務所の近くに……なんて」

P「お前でもそうしただろ? というか、仕事で疲れているのはお前の方だし、付き合ってくれてる未央の方が優しいくらいだ」

未央「まあ、未央ちゃんが優しいことは当然ですし? それはともかく、お腹も空いたし、入っちゃおー」


765: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 20:09:35.48 ID:m830Hzas0

――店内

未央「で、注文したわけだけど……ここは来るまでにちょっと時間がかかるよね。ファストフードかって言うと違う感じ?」

P「まあ、ハンバーガーを扱っているからファストフードみたいに言われていることはあるが、実際ファストフード店かって言うと……そこまで時間がかかるってわけでもないから微妙なところだが、かかる時はかかるのも確かだからな」

未央「べつに文句はないんだけどねー。そういう店だっていうのは知ってるし」

P「そうだな……っと、言っている間に、来たな」

未央「ん? あ、ぽいね」

766: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 20:16:13.88 ID:m830Hzas0

店員「お待たせしました」

P「はい、ありがとうございます。……ほうほう、こんな感じか」

未央「どれどれ? 見せて見せて」

P「こんな感じだな。……しかし、こっちの中津からあげバーガーとやらは、結構レモンの存在感があるな。バーガーに挟まってるのを見ると、なかなかに変な感じだ」

未央「実際見ると確かにね。でも、思ったよりも『からあげ』だね。それで、こっちが釧路ザンタレバーガー……ふむふむ、こっちはなんだか『からあげ』っぽくはないかも」

P「一応、からあげとザンギは別物だから……と言いたいところだが、からあげのザンギの違いってこういうものじゃなかったような気もするが」

未央「形だけじゃなくて味も違うっぽいから、べつにいいんじゃない? こっちは見た感じ一枚肉を使っているのかな。うん、こっちはこっちでおいしそうだね」

767: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 20:22:23.33 ID:m830Hzas0
P「それで、未央。お前はどっちから食べる?」

未央「んー、どうしよっかなー……あ、決めた。こっちの『中津からあげバーガー』の方からで!」

P「なんで……って、もしかして」

未央「たぶんプロデューサーの思ってる通りだね。こっちの方が味が薄そうだから!」

P「確かに濃いのから食べたら味がよくわからなくなる可能性があるからな……あ、でも未央、先にレモン絞るなよ? レモンなしの味も気になってるんだからな」

未央「わかってるわかってる。それじゃ、いただきまーす」

P「じゃあ、俺も……いただきます」

768: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 20:28:26.82 ID:m830Hzas0
未央(まずはレモンを取り除いて……っと)

未央(ふんふむ……しかし、思ったよりも『からあげ』って感じだなぁ。これはいったいどんなものなんだろう。とりあえず、いただきます)パクッ

未央「……うん!」

未央(からあげだこれ! 思った以上に見た目通りの味だね。でも、おいしい! 何と言うか、普通にすっごくおいしいからあげ。このからあげは醤油味? 他にも感じるけど、何の味だろ。未央ちゃんも合格点ですよ!)

未央(衣がサクサクしてて、でも、そこまで油っこくはないかも。思ったよりは、ってだけでそりゃあ油っこくはあるんだけど、それは一緒に挟まってる大量のキャベツで緩和されるというか?)

未央(ふんふむ……予想していたよりもおいしいなあ、これ。『からあげ!』って感じが強くて……このからあげでごはんとかを食べてもおいしいんじゃないかな。でも、『バーガー』だからこそのおいしさなのかも? どうなんだろ。ちょっと気になるかも……このからあげだけで販売してくれないかなぁ)

未央(下味がしっかりしていて、衣がサクサクしてて、カリッとしていて、肉厚でジューシーで……まさかハンバーガー屋さんでからあげのおいしさに感動することになるとは思わなかったって感じ)

未央(レモンを絞るとこれがどう変わるのか……予想はできているけれど、やっぱり気になる。……これは早くプロデューサーに食べてもらわないと!)

769: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 21:08:29.86 ID:m830Hzas0
P「未央、そっちはどうだった?」

未央「おいしかったよ。何と言うか、見た目通りの味? 未央ちゃん的には高得点ですよー。それで、そっちはどうだったの?」

P「こっちもうまかったぞ。思ったよりも濃い味じゃあなかったし……それでも、そっちのよりは濃いだろうけどな。テリヤキほどではないが、ってところだな」

未央「ほうほう……それじゃ、交換といきますか。あ、でもプロデューサー、ぜんぶ食べ切らないでよ? レモンは絞ってもいいけど、私もレモンを絞った後のを食べたいんだし」

P「わかってるよ。それじゃ、交換だな」

未央「うん。はい、どうぞ」

P「ああ、ありがとう。こっちも、ほら」

未央「うん、ありがと。ではでは、いただきまーす」

770: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 21:30:59.21 ID:m830Hzas0
未央(ほうほう……こっちは一枚肉なわけだけれど、『バーガー』にするならこっちの方が想像しやすいって感じではあるよね。あっちは思ったよりは食べやすかったけど……それでも、こっちの方が食べやすいとは思うな)

未央(プロデューサーの言葉では思ったよりは濃くないらしいけど……まあ、食べてみないとわからないよね。いただきます)パクッ

未央「ん……おおー」

未央(確かに、思ったよりは濃くないなー。でも、おいしい! テリヤキほどは濃くないこのタレが良いね。この濃さ、とってもうまいと思う。そこまで濃くないからこそ、このからあげ……というか、ザンギ? の味もわかるようになってる。これは一本取られましたなぁ)

未央(あと、さっきのと違ってサクサクしてなくて……衣はしっとり、って感じ。タレが絡むように、ってことなのかな。うんうん、これも良いね。じんわりと……いや、そこまで『じんわり』ってわけじゃないんだけど、味が広がっていく感じがする)

未央(テリヤキほど濃くはないと言っても薄いわけじゃないこのタレもいいなー。おいしい。というか、甘じょっぱいタレがおいしくないわけがないんだよね。甘じょっぱいというか甘酸っぱいというか? 酸味もちょっと感じるし……つまり、これは甘酢タレ、なのかな。でもただの甘酢タレかと言うと違う感じも……とにかく、日本人が好きな味って感じ? 少なくとも私は好きだなー)

未央(一枚肉だから食べやすくて、あと、ボリューミーな感じ? ザンタレは甘じょっぱくて、ジューシーで柔らかい鶏肉ともよく合っていて……うん、これはもうおいしいに決まってますよ!)

未央(ということでどっちも食べたわけですが……うーん、これはどっちの方が、っていうのは難しいなあ)

未央(何と言うか、本当に『好み』でしかどっちが上かって分けられない感じ? いや、まだからあげバーガーのレモンを絞った方は食べてないからわからないんだけど……うーん、とりあえず、レモンを絞った方を食べてから、かな)

771: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 21:49:38.63 ID:m830Hzas0
未央「プロデューサー、食べた?」

P「ん、食べたぞ。確かに『見た目通り』だ。レモンを絞ったのも予想通りと言えば予想通りだったが……まあ、これは食べた方が早いな」

未央「つまり、それだけではないと? それは気になってきましたなあ」

P「それじゃ、また交換するか。ほら」

未央「ん、ありがと」

未央(もうレモンは絞ってくれてる……んだよね? でも、一応もうちょっと絞っておこうかなー、っと)

未央(んー……もしかして、絞り過ぎた? かも? 失敗しちゃった? ……まあ、食べてみないとわからないかな。いざ!)パクッ

772: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 21:56:21.00 ID:m830Hzas0
未央「……お!」

未央(これ、いい! 酸味でサッパリしたって感じ! 絞ったのと絞らないのとではどっちが好きかわかれそうだけれど、私はどっちも好きかも)

未央(あと、思ったよりもからあげの味が消えないというか? 酸味で味が引き締まっているというか? うーん、これはこれで良いですなぁ……)

未央(今までで油っこくなっていた口の中もさっぱりするし……って、そうだそうだ、それじゃあこれはちょっと置いておこう、っと)

未央(実はそこそこお腹いっぱいになってるんだけど……頼んだし、これを食べなきゃモスチキン)

未央(何と言うか、『からあげ』『ザンギ』『フライドチキン』って、私、一食でどれだけ鶏肉食べてるんだーって感じだけど……いや、これは最初からわかっていたことだし、今更気にしちゃいけないよね)

未央(それじゃあ、食べよう)パクッ

未央「……ん」

未央(やっぱりおいしいなぁ、これ。表面はカリカリとしていて、中はジューシー。今のバーガーでも思ったけど、ここって割りとこういう揚げ物のクオリティ高いのかな? うん、おいしい)

未央(この味、この食感……定期的に食べたくなるなー)

未央(んー……油に油に油って感じで、身体には悪かった気はするけど、ちょっと、今、幸せかも!)

773: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 22:03:21.36 ID:m830Hzas0

――

P「うまかったな、未央」

未央「うん、おいしかった……アイドルとしてどうなのか、っていうのはちょっとあるけどね」

P「今更だがな。で、どっちを買って帰ったらいいと思う?」

未央「どっち、って……ちひろさんの? プロデューサーのオススメでしょ? プロデューサーが決めたら?」

P「決められるなら決める……が、どっちもうまかっただろ? 決めかねていてな……」

未央「確かにね。私もどっちの方がオススメか、って聞かれたら困るもん。好みによる、としか答えられないかなー」

P「だよなぁ……よし、この際、どっちも買って帰ろう」

未央「えっ……いや、さすがにちひろさん一人で二つは食べないでしょ……」

P「でも、どっちかを選ぶのは結構キツいだろ? それならとりあえず両方買って帰ればいい。残った分は食べればいいしな」

774: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 22:08:11.97 ID:m830Hzas0
未央「……プロデューサー、まだ食べるの?」

P「もう満足しているがまだ入る、って感じだな」

未央「プロデューサー、やっぱりいっぱい食べるよね」

P「そうか? 普通……かどうかはわからないな。そこそこ食べる方ではあるかもしれない」

未央「そこそこって、それで? ……でも、うん。なんか、男の人って感じだね」

P「いっぱい食べるのが男の人っていう基準はどうなんだ」

未央「でも、女の子よりは男の人の方がいっぱい食べるんじゃない? 傾向として」

P「まあ、確かに傾向としては、な……」

未央「だから、そういうことなのですよ」

775: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/26(木) 22:17:25.91 ID:m830Hzas0
P「どういうことだよ……とりあえず、両方頼むぞ。あと……ちひろさん、ポテトはいるかな?」

未央「どうだろ。気になるなら買っておいたら? 食べなかったら私が食べるし」

P「お前が食べるのかよ……それでよく俺に『まだ食べるの?』とか言ったな」

未央「いやいや、ポテトとバーガーは別でしょ?」

P「それはそうだが……それでも、未央もそこそこ食べてただろ?」

未央「む、それは確かに……プロデューサーの影響で、私も前よりも食べるようになったのかも?」

P「あー……かも、な。……なんかごめんな、未央」

未央「どうして謝るの? いっぱい食べる女の子、って、魅力的でしょ?」

P「それはそうなんだが……いや、そうだな。未央がそう言ってくれるなら、嬉しいよ」

未央「うんうん、いいってことですよ。……これ以上ちひろさんを待たせるのもなんだし、そろそろ注文しよっか」

P「そうだな……あ、すみません。この『中津からあげバーガー』と『釧路ザンタレバーガー』。それから――」




784: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:15:37.28 ID:ki1r8bBW0

――レッスン場

未央「――だって、そこに星は輝いているのだから……!」

泰葉「……はい。これで終わりです」

P「……うん」

泰葉「どうですか? Pさん」

P「お前が俺に聞くか? ……でも、そうだな。良かったよ」

785: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:24:59.57 ID:ki1r8bBW0
未央「本当!?」

P「んっ……未央、いつの間に」

未央「えへへ……気になったからさー。でも、良かったよ。プロデューサーにそう言ってもらって」

P「俺に、って……泰葉に比べれば、俺の目なんて何の信用もないぞ?」

未央「それは確かにそうかもしれないけど……でも、嬉しいの」

P「……そうか」

未央「うん! ……あ、やすやす、ありがとね! ずっと付き合ってもらっちゃったから、ちょっと悪いなー、とは思うけど……」

786: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:32:48.47 ID:ki1r8bBW0
泰葉「いえ、人に教えることが最良の勉強法と言いますし、実際、私にとっても良い勉強になりましたから。未央ちゃんの方も、飲み込みは早く、意欲的で……とっても良い生徒でしたよ」

未央「生徒ということはやすやすは先生ということかな? 泰葉先生だ」

泰葉「ふふっ、そうですね。先生です。今日は卒業式、ですけどね」

未央「卒業するにはまだ早いような気もするけどね……やすやすに比べたら、私なんてまだまだだし」

泰葉「さすがにこんな短期間で追いつかれるわけにはいきませんよ。と言っても、これからどうなるかはわかりませんが」

未央「おっ? そんなこと言っていいのかな、泰葉先生? 私、やすやすを追い抜いちゃいますよ? 師匠を超えちゃいますよ?」

泰葉「そう簡単にはさせません。私だって、努力を怠るつもりはありませんから」

未央「おお、譲らないね、やすやす。負けず嫌いだ」

泰葉「もちろんです。知りませんでしたか? 私、負けず嫌いなんです」

787: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:41:37.95 ID:ki1r8bBW0
P「……おーい」

泰葉「あっ……すみません、Pさん。無視していたわけではないのですが……」

P「いや、べつにいいんだがな。俺としても泰葉と未央が仲良くしているのは嬉しいし……」

未央「ほうほう。女の子同士がいちゃいちゃしているのを眺めるのが好き、と……」

P「そういう意味じゃないが」

泰葉「えっ、Pさん、そういう趣味があったんですか? 私も理解がないわけではありませんが……」

P「違うって言ってるだろ!? 泰葉まで何を言ってるんだよ……お前もずいぶん言うようになったよなぁ」

泰葉「かもしれませんね。Pさんはこんな私は嫌いですか?」

P「いや……お前、それはずるいぞ」

泰葉「そうですね。すみません」

788: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:45:24.99 ID:ki1r8bBW0
未央「でも、確かにやすやすは最初の印象からはかなり変わったような気がするなー……思ったよりも親しみやすいというか? テレビで見てた頃は別世界の住人だって思ってたけど……」

P「最初の印象ってその頃かよ……」

未央「いや、今のは冗談として、事務所で最初に見た時ともね? 最初はもうちょっと……何と言うか、もっとピシッとしていたというか? ちょっと近寄りがたかったかも……」

P「未央が『近寄りがたい』って……泰葉、お前、俺には割りと早くから打ち解けてたよな? 俺が居ないところでどういう風にしていたんだよ……」

泰葉「そ、そんな雰囲気を出していたつもりはないですよ? 未央ちゃんが言い過ぎなんです」

789: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:47:57.37 ID:ki1r8bBW0
未央「えー? でも、初期のやすやすって『子どもの頃からずっと芸能界で生きてきたんです。だから、華やかなだけの世界じゃないってわかってる……』みたいな感じじゃなかった?」

泰葉「なんでそれ知ってるんですか!?」

P「一応言っておくが、俺は知らんぞ」

未央「ちょっと聞く機会があってねー。他にもあるよ? 『パレードなんて全部造り物……』とか!」

泰葉「そ、それは……! ……もう! 未央ちゃん!」

未央「えへへ、ごめんなさーい」

泰葉「……次に言ったら、私が持っている未央ちゃんの弱みをぜんぶ言いますからね」

未央「ひぃっ! やすやすが言うとなんか本気っぽくてこわいんだけど!? ごめんなさい! もうしませんから許して下さい、泰葉先生!」

泰葉「約束ですよ? もう、未央ちゃんったら……」

790: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:49:40.61 ID:ki1r8bBW0
P「……そう言えば、泰葉。お前、未央は『ちゃん』付けで呼ぶんだな。珍しい」

泰葉「珍しいというほどではないと思いますが……いえ、確かに最初は『未央さん』と呼んでいたんですが」

未央「私が『さん』付けはやめてって言ったんだよ。距離を縮めるためというか?」

P「あー……確かに、未央ならそうか。泰葉は大丈夫か? うざいとか思ってないか?」

未央「うざっ……!? ねぇ、プロデューサー。それはさすがにひどくない?」

P「そうか? 当然の扱いだと思うが」

未央「ぐぬぬ……違うよね、やすやす!? 私、うざくなかったよね!?」

泰葉「えっ……は、はい、そうですね。うざくなかった……うざくなかったと思いますが」

未央「えっ、何その言い方……もしかして、うざかった? も、もしそうなら、ごめんね」

791: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:50:11.35 ID:ki1r8bBW0
泰葉「……ふふっ。ごめんなさい。冗談です。本当に、うざいなんて思ってはいませんよ。そもそも、Pさんなら未央さんがこの程度の距離感をわかっていないなんてことはないとわかっているでしょうに……意地悪なのはPさんです」

P「乗っかった泰葉も大概だろ」

未央「私からすればどっちもひどいよ……未央ちゃん、本当にショックだったんだからね? もしうざいと思われていたら……って。しくしく」

P「それ絶対思ってないだろ……」

泰葉「思ってないですね……」

未央「え? バレた? むぅ、おかしいなあ。私、演技力向上したと思うんだけど……」

792: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:51:03.23 ID:ki1r8bBW0
P「あれが本気の演技だったらレッスンも一からやり直しだな」

泰葉「そうですね。一から前よりも厳しくしなければなりません」

未央「ストップストップストップ! さすがにそれは無理だから!」

P「冗談だ」

泰葉「冗談です」

未央「もう……心臓に悪いんだけど。本当にやめてよね……」

793: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:52:03.23 ID:ki1r8bBW0
P「……なあ、泰葉。未央がこの反応って、お前、どれだけ厳しくしたんだよ」

泰葉「? 普通だと思いますが」

未央「えっ」

P「……今の未央の顔、本当に絶望したみたいな表情だったんだが」

泰葉「おかしいですね……私としては、本当に平均的なレッスンしかしていないつもりなんですが……」

未央「あ、あれが、平均……?」

P「……なあ、泰葉。お前、今までに人に教えたことは?」

泰葉「そうですね……演技に関しては、ここまで本格的に教えたのは初めてかもしれません。確かに未央ちゃんは飲み込みも早くて少々熱が入ってしまったとは思いますが……」

P「絶対それだろ……」

泰葉「そうですかね? では、今後は気を付けようと思います」

P「そうしてくれ……」

794: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:53:01.98 ID:ki1r8bBW0
未央「……プロデューサー! やすやす!」

P「ん? なんだ、いきなり」

泰葉「なんですか、未央ちゃん」

未央「お腹すいた! ごはん食べに行こ、ごはん!」

P「あー……まあ、そうか。未央も頑張ってたしな。そりゃ、腹も減るか」

泰葉「どこかに行くんですか?」

P「そのつもりだが……ん、そうだな。泰葉が居るなら……うん、決めた。とりあえず、二人は着替えてこい。俺も準備をしてくる」

未央「はーい」

泰葉「わかりました。ありがとうございます」

P「じゃ、また後で、な」

795: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:53:55.80 ID:ki1r8bBW0

――

未央「それで、結局どこに行くの?」

P「泰葉の出身地が関係している、って言えばわかるか?」

泰葉「私の……? あ、もしかして」

P「たぶんそこだな。長崎ちゃんぽんの店、とでも言ったらいいのか?」

泰葉「『長崎ちゃんぽん』も店名に含まれていますけどね。実は私もそこまで行ったことはないのですが……」

P「そうなのか? 意外だな。……でも、そうか。そう言えば、長崎の人は『ちゃんぽん』と言えば自分の家で作るもの、なんだったか」

泰葉「そうらしいですね。でも、それとはまた別の理由です」

P「それは……いや、すまん。配慮が足りなかったな」

796: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:54:42.83 ID:ki1r8bBW0
泰葉「いえ、気にするほどのことではありませんよ。あまり行ったことがないからこそ、楽しみでもありますし」

P「そうか? なら良かった。で、未央はどうだ?」

未央「えーっと、ですね……実は、私は行ったことなくて……聞いたことはあるんだけどね」

P「ん、そうか。『ちゃんぽん』は食べたことあるか?」

未央「それも、実は……」

P「そうなのか。って、まあ、そうか。関東とかだとあそこくらいしか食べる場所もないだろうからな。長崎だともっと食べるところもあるんだろうが……」

泰葉「と言っても、長崎の人に『長崎でおいしいちゃんぽんの店は』と聞いても今から行くところを挙げる方も多いみたいですからね。真奈美さんや柑奈さんもそう言っていましたから」

797: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:55:21.68 ID:ki1r8bBW0
P「そうなのか? 長崎にはもっとうまいところがあるのか、って思ってたんだが……」

泰葉「正確には「あそこがいちばん無難』ということみたいですけどね。他にもおいしい店はありますが、価格や誰の舌にも合うなどといった要素を組み合わせて、ということみたいです。そもそも、先程Pさんが言った通り本来は家庭料理ですからね。あまりオススメの店、というのもないのかもしれません」

P「ああ、そうも考えられるな。大阪に住んでいたからと言って誰でもオススメのたこ焼き屋を答えられるわけではない、みたいなもんか」

泰葉「大阪の事情は知りませんし、長崎の事情もあまり詳しいとは言えませんが、そういうことかもしれませんね」

P「俺も大阪の事情も長崎の事情もよくは知らんがな。前にみくに『オススメのたこ焼き屋は』って聞いても『……実はよく知らないにゃ。ナイショだよ』って言われたから言ってみただけで」

798: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 20:56:07.58 ID:ki1r8bBW0
未央「んん? プロデューサー? 今、ナイショって言われたのにバラしてるよね?」

P「あ。……ナイショだぞ?」

泰葉「わざとじゃなかったんですか……」

P「わざとそんなことをするわけないだろ?」

未央「いや、プロデューサーならやりそうだけど……相手、みくにゃんだし」

P「みくだからってからかってばかりはいないさ。俺は割りとみくに対して愛を持って接していると思うんだが」

未央「その愛、歪んでない? ……でも、さっきの話って、『地元民は意外とその土地の特産物に詳しくない』っていうよくある話だよね。長崎とか大阪だけじゃなくて」

P「お、確かにそうだな。そう考えると当然と言えば当然か」

泰葉「言われてみればその通りですね。……あ、見えてきましたが、あそこ、ですよね?」

P「そうだ。さて、何を頼むかな……」

799: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:01:04.74 ID:ki1r8bBW0

――店の中

P「さて、何を頼む?」

泰葉「いきなりですね……うーん、どうしましょうか」

未央「プロデューサーはどうするの? というか、あんまり種類はないけどね」

P「まあな。大きく分けて『ちゃんぽん』か『皿うどん』か、ってところで、あとは野菜たっぷりにするかどうかとか、か……個人的にここの餃子は好きだから頼みたいんだが」

未央「……プロデューサー? やすやすも居るのに、餃子は……」

泰葉「ここの餃子は確かにんにくを使っていないのでにおいに関しては気にする必要がありませんよ。ですよね? Pさん」

P「その通りだ。にんにくは使ってないんだが、うまいんだよな。にんにくのにおいを気にせず食べれてうまいってのは俺よりもお前らの方が嬉しいんじゃないか?」

未央「確かに……うん、嬉しいね」

800: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:02:01.95 ID:ki1r8bBW0
泰葉「それじゃあ、餃子は頼むとして……他のメニューはどうしましょうか」

P「それが悩みどころなんだよなぁ……普通のちゃんぽんなら大盛りにできるんだが、野菜たっぷりも良いんだよなぁ。皿うどんも皿うどんでうまいし……」

泰葉「Pさんがどれくらい食べるのか私は知りませんが、確かに食べる方なら大盛りにしたくはありますよね……私としては、普通のものを食べるだけで十分満足なんですが」

未央「ほうほう……正直私はここに来るのが初めてだからよくわからないけど、話の流れで何を頼めばいいのかはわかりましたよ?」

P「本当か? 未央」

未央「本当ですとも。ふっふっふ、教えて欲しければ――」


801: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:02:48.48 ID:ki1r8bBW0
泰葉「Pさんが大盛りにして私が皿うどんか野菜たっぷりの皿うどん、そしてここに来るのが初めてである未央ちゃんが普通のちゃんぽんか野菜たっぷりちゃんぽんを頼む、というのがいいのではないでしょうか。私はそこまで食べる方ではありませんし、Pさんにも未央ちゃんにも分けることができると思います」

P「おお、確かにそうだな。それだとうまくいく。ありがとう、泰葉」

泰葉「どういたしまして」

P「それで、未央。未央は普通のちゃんぽんか野菜たっぷりちゃんぽんのどっちにするんだ?」

未央「……未央ちゃんが言いたかったのに」

P「お前が面倒なことをするからだ。で、どうする?」

802: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:03:47.82 ID:ki1r8bBW0
未央「むぅ……野菜たっぷりっていうのは、そのまま野菜たっぷりってことだよね? つまり、ここは野菜が有名なの?」

P「野菜がおいしいことで有名ではあるな。あー……もし野菜たっぷりにして食べ切れなくなっても俺が食べるから、野菜たっぷりの方にしておくか?」

未央「んー……そだね。じゃあ、それで」

P「よし。で、泰葉はどうする? どっちにする?」

泰葉「そうですね……未央ちゃんがそっちを選ぶなら、私は普通の皿うどんを」

P「わかった。じゃ、決まりだな。あと、みんな餃子も付ける、でいいか?」

未央「うん。私はいいよ」

泰葉「私もです」

P「よし。じゃ、注文して待つとするか」

803: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:04:45.86 ID:ki1r8bBW0

――

P「で、来たわけだが……うん、久しぶりに見るとやっぱりうまそうだな」

未央「……ねぇ、プロデューサー」

P「ん? なんだ? 未央」

未央「……これ、野菜、思ったより多いんだけど……」

P「うまいから問題ない。余ったら俺も食べるしな」

泰葉「そこは『おいしいから大丈夫だよ~』じゃないんですか?」

P「泰葉……お前、そんなこと言うキャラだったか?」

泰葉「未央ちゃんに毒されましたね」

804: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:05:15.55 ID:ki1r8bBW0
未央「ちょっとやすやす? どうして勝手に私のせいにしているのかな?」

泰葉「実際、これに関しては未央ちゃんの影響もあるかと思いますが……未央ちゃん、たまに言っていたじゃないですか」

未央「う……ま、まあ、言ってたけど」

泰葉「なので、未央ちゃんのせいです。責任取って下さいね」

未央「せ、責任って……そ、それはつまり、私と結婚したい、ってこと……?」

泰葉「そういう意味ではありませんが……確かに未央ちゃんと結婚したら楽しそう……一考の価値はありますね」

805: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:06:05.48 ID:ki1r8bBW0
P「……お前ら、茶番もそこそこにして、食べろよ。冷めるし、伸びるぞ」

未央「はーい。じゃ、いただきまーす」

泰葉「はい。いただきます」

P「……いただきます」

未央(さてさて……って、いや、でもやっぱり野菜の量がめちゃくちゃ多いよね)

未央(うーん、これ、どこから手を付ければいいのか……とりあえず、混ぜとく?)

未央(まぜまぜ……っと、そうしたら、とりあえず野菜を……)パクッ

806: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:06:59.47 ID:ki1r8bBW0
未央「……えっ」

未央(おいしい……思った以上に、おいしい。ここ、チェーン店だったよね? それなのに野菜がこんなにおいしいって……そんなおいしい野菜がこんなに? ちょっと、思った以上にすごいかも)

未央(このスープは……なんか、スープと麺を見ていると、ちょっとラーメンっぽいなー。似た感じなのかな? 見た感じ……豚骨味のスープ? まあとにかく、一口……)ズズ……

未央「ん」

未央(豚骨。たぶん豚骨味だ。でも、それだけじゃないような気もする。ラーメンとかの豚骨味とは違う……なんて言ったらいいんだろ。とにかく、違う。違うんだけど、おいしいな。なんだかやわらかくて、優しい味、って感じ?)


807: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:07:53.31 ID:ki1r8bBW0
未央(今のところはとっても良い感じ。それじゃあ、麺は……っと)ズズ……

未央「……うん!」

未央(おいしい! ラーメンとはまた違う感じで、これが『ちゃんぽん』かぁ……うん、うん! おいしい! これはなかなかにポイント高いかも!)

未央(野菜以外の具材もあって……うん、これもおいしい。でも、長崎県では家庭料理、っていうのもちょっとわかるかも。この優しい感じの味は、なんだか家庭料理っぽい。でも、おいしい)

未央(野菜たっぷりにしているからかな。野菜の味もスープに溶け出しているみたいに感じる。このスープが良いんだよね。何と言うか、安心する味といいますか? ほっとするといいますか? 心も体も温まる、って言う感じ?)

未央(うーん……これは良いですなあ。思った以上に野菜がおいしいし……この量でも食べ切れるかも?)

808: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:09:02.02 ID:ki1r8bBW0
P「口には合ったか? 未央」

未央「うん。思ったよりもおいしいよ。最初この野菜の量を見た時にはびっくりしたけど……これだけおいしいなら、食べられるかもね」

P「余りそうだったら遠慮なく言えよ? 俺が食べるからな」

未央「うん。それは、言うよ。ありがとね」

泰葉「未央ちゃん、未央ちゃん」

未央「ん? なにかな、やすやす」

泰葉「この皿うどん、一口、どうですか? できれば私もちゃんぽんを一口いただきたいんですが……」

未央「いいの? じゃあ、お言葉に甘えよっかな―。交換しよっか」

泰葉「はい」

未央「あ、やすやす。野菜なら遠慮なく食べてね? いっぱいあるから、さ」

泰葉「そうですか? わかりました。ありがとうございます」

未央「どういたしまして」


809: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:09:30.93 ID:ki1r8bBW0
未央(それで、こっちが皿うどん……うん、揚げられた麺の上でちょっととろっとしたあんに具材が……って、この具材ってちゃんぽんのと同じ? 実はちゃんぽんと何か関係あるのかな……)

未央(ちょっと触ってみると……おお、パリパリしてそう。あんでちょっとしっとりはしてるけど、それでもパリパリしてそうだなー。これはなんだかおいしそうかも!)

未央(ということで、一口、いただきます……っと)パクッ

未央「……おお!」

未央(これはおいしい! ちゃんぽんとはかなり違うね。こっちの方が濃いというか、直接的というか? じんわりとかじゃなくて、ダイレクトに味を感じるといいますか。このとろっとしたあんがそうさせているのかな。この濃くて、甘い感じの味……好きだなー、これ)

未央(パリパリした麺もいいね。ちゃんぽんよりも細くてパリパリとして、でもちょっとしっとりとしていて……正直、この麺だけでもいい感じ! でも、具材も一緒に食べてもおいしいっていう? ……まあ、それはちゃんぽんでも一緒か)

未央(でも、これは思った以上のお店ですなぁ……ちゃんぽんも皿うどんもおいしいし、でも味は全然違っていて……うん! これはかなりの高得点だね!)

810: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:12:28.33 ID:ki1r8bBW0
未央(ふんふむ……これでまだ食べてないのは餃子だけ、っと。どうなんだろ、この餃子。まあ今までどっちもおいしかったんだから、これもおいしいような気がするけど……いざ)パクッ

未央「……ん!」

未央(やっぱりね! おいしい……これはおいしいですよ!)

未央(ちょっと小ぶりで、一口サイズ? でも……うん、これ、いいね。パリパリなところとちょっとふにゃふにゃしてるところがある? 具はしっかりは詰まってないけど……でも、うん、いいね)

未央(タレを多めに付けて、それで、食べる……んー! おいしい! しかも、これでにんにく使ってないんだよね。これは良いね! まさかこんなお店でこんなおいしい餃子が食べられるとは思っていませんでしたよ!)

未央(うん、未央ちゃん、大満足! って、まだまだ残っているんだけど、それがちょっと楽しみなくらいは満足だなー)

未央(さて、食べるぞー!)

811: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:14:02.97 ID:ki1r8bBW0

――店の外

未央「……さすがに、ちょっと多かったね」

P「キツかったんだったら言えよ……俺が食べる、って言ってただろ」

未央「いや、だって、おいしかったから……うー、野菜をいっぱい食べてなんだか健康的な気分だけど、お腹がいっぱいで不健康な気分……」

泰葉「見事に相殺してますね……」

812: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:16:06.07 ID:ki1r8bBW0
未央「うー……でも、おいしかったからいいもん! お腹いっぱいってことは満腹ってことですし! 満腹ってことはすなわち満足ってこと。満足ってことはつまり幸せってことだもん!」

P「どういう論法だよ……でも、そうだな、そこまでキツいなら――」

泰葉「? どうかしましたか? Pさん」

P「いや、何でもない……そうか、泰葉が居るんだよな……」

泰葉「聞こえてますよ? Pさん」

P「んっ!? い、いや、泰葉、勘違いするなよ? べつに泰葉の存在を忘れていたとか、そういうことじゃなくてだな……」

813: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:16:39.14 ID:ki1r8bBW0
泰葉「わかってますよ。Pさんがそんな人じゃないってことはわかってますから。でも、それならさっきの反応は……あ、Pさん」

P「な、なんだ?」

泰葉「未央ちゃんと二人きりでしかやらないこと、ありますか?」

P「なっ……い、いきなり何を言うんだ、泰葉」

泰葉「Pさん、やっぱり嘘は下手ですね。……でも、この状況で、二人きりでしかやらないこと……そういうことですか」

P「……何が『そういうこと』なんだ?」

泰葉「いえ、前に大阪に行った時のことを思い出しただけですよ。私はその現場を見たわけじゃありませんが、話には聞きましたので。あの時と同じことをしようとしていたんでしょう?」

814: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:17:13.75 ID:ki1r8bBW0
P「……お前は探偵か」

泰葉「アイドルです。あなたがプロデュースした、アイドルです。そんなことも忘れたんですか?」

P「いや……忘れるわけないだろ。お前は俺の大切なアイドルだよ、泰葉」

泰葉「ふふっ、ありがとうございます、Pさん。……でも、そう思っているのなら、私のことも信頼して下さい。大丈夫です、少し妬けちゃいますけど、自分のアイドルが困っているところを放っておくような人は、私のプロデューサーではありませんから」

P「……そうか。そう言ってくれるなら、ありがたいよ」

泰葉「どういたしまして」

815: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:17:44.77 ID:ki1r8bBW0
未央「……ねぇ、二人ともー? 未央ちゃんを放って何を喋っているのかなー? 未央ちゃん、ちょっと悲しくなってきたんだけど……」

P「いや、なんでもないよ。な、泰葉」

泰葉「なんでもはありますけど、未央ちゃんは知らなくてもいいことですよ」

未央「そんなこと言われたら気になるんだけど! どういうこと? 何を話してたの?」

P「だから、未央が知らなくてもいいことだ。……なあ、未央。お前、腹がいっぱいで苦しいんだよな」

未央「え? ……いや、苦しいってほどじゃないけどね。お腹はいっぱいだけど……」

P「あー……それでも、まあ、あのレッスンの後だからな。その、なんだ……背負ってやるから、乗れ」

816: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:18:11.35 ID:ki1r8bBW0
未央「……」

P「……は、早く乗れよ。この体勢でいるの、恥ずかしいんだか――」

未央「プロデューサー」ギュッ

P「んぅ!?」

未央「えへへ……ありがとね、プロデューサー。そういう優しいところ、好きだよ」

P「……その、未央? ちょっと、勢い、良すぎ……」

未央「……痛かった?」

P「……割りと」

未央「……ごめんなさい」

817: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:18:46.58 ID:ki1r8bBW0
P「いや、まあ、いいんだが……未央の方こそ、大丈夫だったか?」

未央「え? まあ、私は大丈夫だったけど……」

P「それならいい。……じゃあ、帰るか」

未央「うん」

818: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:19:45.43 ID:ki1r8bBW0
泰葉「……お二人さん、私を忘れていませんか?」

P「……忘れてないぞ」

未央「忘れてないよっ」

泰葉「そうですか。なんだか……いえ、言わないでおきます」

P「ん、なんだ? 気になるだろ」

未央「そうそう。気になるから言ってよー」

泰葉「たぶん、私が言うべきことではないので……そうですね、もし知りたいのなら、私を捕まえてみて下さい。では、よーい、どん」タッタッタッ……

819: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:20:28.47 ID:ki1r8bBW0
P「はぁ!? おい、俺は未央を背負ってるんだぞ?」

未央「プロデューサー! 早く早く! やすやす、逃げちゃうよ!」

P「未央、お前、乗せてもらっておいて……!」

未央「いいから! プロデューサー!」

P「ああ、もう! わかったよ! 追いかければいいんだろ!」ダッ

未央「そうそ――ひゃっ!」

P「ん? どうし……あ」

820: ◆Tw7kfjMAJk 2015/11/27(金) 21:21:21.59 ID:ki1r8bBW0
未央「……うぅ、じゃあ、こうすれば!」ムギュッ

P「んなっ……! 未央、お前、それ……」

未央「いいから! ほら、早く行かなきゃやすやすがどんどん先に行っちゃ……って、こっちを振り向いた……?」

P「……すごくわかりやすく煽ってるな」

未央「……プロデューサー! 行こう! これは負けてられないよ!」

P「……わかった。じゃあ、行くぞ!」

未央「おー!」




830: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:18:57.60 ID:yeHOFGM00
未央(この気持ちに気付いたのはいつのことだっただろう)

未央(この気持ちが芽生えたのはいつのことだっただろう)

未央(プロデューサーに出会ってから、色んなことがあった。しまむーやしぶりん、他にもたくさんの人たちと仲良くなることができた)

未央(私の笑顔でみんなが笑顔になってくれる。それは本当に楽しくて……幸せで)

未央(アイドルって、やっぱり私の天職だな、と思う。アイドルになって本当に良かった、って)

831: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:19:44.60 ID:yeHOFGM00
未央(だから、なのかな。……ううん、きっと、それだけじゃない)

未央(ただ、『アイドルにしてくれた』ってだけじゃない。そんなことはわかってる)

未央(でも、それ以外の何が理由なのか、なんて聞かれると困っちゃう。いくつも思いつくけれど、そのどれもがそれだけでは理由にはならないと思うから)

未央(CDデビューの日。ライブの日。そういったイベントだけじゃなくて、もっとたくさんの思い出がある)

未央(数え切れないほどの思い出。きっと、そのすべてがあるから、なんだと思う。そのすべてが、私の今の気持ちをつくっているんだと思う)

未央(この気持ちに名前を付けるとしたら……って、そんなの、わかりきっているよね)

未央(私は恋をしている)

832: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:20:56.83 ID:yeHOFGM00
未央(……アイドルなのに、こんな気持ちを抱いてはいけないってことはわかってる)

未央(でも、それでも、ダメだとわかっていて消すことができるようなものなら、誰も苦労はしないだろうし、誰も過ちを犯すことなんてないと思う)

未央(なんて、これはちょっと都合が良すぎるかな。自己正当化してるだけ、って感じ)

未央(……正当化とか、そんなことじゃなくて、単なる事実として、私は恋をしている。恋をしてしまっている)

未央(もちろん、ファンのみんなも、事務所のみんなも大切だから、今すぐにどうかしたいなんて思ってない)

未央(私にとっては、アイドルも同じくらい大切で……アイドルの方が、今は、大切だから)

未央(……普段プロデューサーにあんなことをしている私がこんなことを言っても説得力はないかもしれないけど、ね)

833: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:23:38.41 ID:yeHOFGM00
未央(と言っても、プロデューサーが私の気持ちに気付いているかって言うと……どうだろ。あそこまでアプローチしていて何も手を出されないってことは……でも、手を出されたら出されたで……)

未央(……私、面倒くさいかも。でも、恋って、こういうものなのかな)

未央(甘くて、苦い。心が浮き立つような幸せで、息が詰まるように苦しい)

未央(……恋って、こういうものだったんだ)

834: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:26:59.44 ID:yeHOFGM00

――事務所

未央「みんな、ありがとー! 私、今日は最高の誕生日だよ! 一生忘れないからねー!」

美嘉「なんかそれ、ライブでファンのみんなに言うみたいな言葉だね」

未央「いやいや美嘉ねー。みんなも未央ちゃんのファンでしょ? 私が美嘉ねーやみんなのファンなのと同じでさっ!」

美嘉「それとこれとは別だと思うけど……ま、未央がいいならいいんだけどね★」

未央「おー! 美嘉ねーわかってるぅ! そうそう、未央ちゃんがいいならいいんですよ! みんな、今日はたくさん楽しんで、たくさん未央ちゃんを祝ってねー!」

李衣菜「それ、自分で言う? 未央ちゃんらしいと言えばらしいけど……」

未央「えへへ、褒めてくれてありがと、りーな!」

李衣菜「いや、褒めてないけど……」

未央「えー? でも、私らしいんでしょ? 自分らしくいられるのって、最高じゃない?」

李衣菜「……確かに、そういう考え方もできるかも……?」

美嘉「ちょちょ、李衣菜ちゃん。流されないで。さっきの李衣菜ちゃん、明らかに褒めてなかったから……」

835: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:30:14.73 ID:yeHOFGM00

――

P「……」

凛「プロデューサー、どうしたの? 一人だけ離れた場所に居て」

P「ん、凛か……お前もどうした。あの中に入らなくてもいいのか?」

凛「うん。私たちはニュージェネでもう祝ったから……それに、今日は未央が主役なんだからさ。みんなも未央と話したいだろうしね」

P「なんだその言い方。暗に『未央は自分のもの』って言っているように聞こえるぞ」

凛「……そんなつもりはないけど」

P「そうか?」

凛「そうだよ。と言うか、私がそうなら、プロデューサーもそうならない?」

P「は? どういうことだ?」

凛「だって、プロデューサーが離れているのも私と同じ理由でしょ? ……それはつまり、『未央は自分のもの』って言っているようなものなのかな、って」

P「そんなことはないが……いや、ごめんな。さっきの俺は意地悪だった」

836: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:30:43.23 ID:yeHOFGM00
凛「いいよ、べつに。……未央、楽しそうだね」

P「……そうだな。本当に、未央はいつも楽しそうだ。そんな姿を見ていると、元気をもらえる。凛もそうだろ?」

凛「それは……うん、そうだね。未央はすごいよ。卯月もそうだけど……いつも笑顔で、楽しそうで、そんな姿がみんなを笑顔にする……やっぱり、『アイドル』だな、って思う」

P「おいおい、自分もアイドルのくせに何言ってるんだよ」

凛「……そうだね。今のは確かに、ちょっと、変だったかも」

P「そうだな、変だった」

凛「そこまで言う? ……もう」

P「すまんすまん、悪かったよ。許してくれ」

837: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:31:14.12 ID:yeHOFGM00
凛「……ふふっ、べつにいいよ。そこまで気にしてないから」

P「気にしてないのか……ならもっと言っても」

凛「それはダメ。私もちょっと怒るよ?」

P「それは嫌だな。やめるよ」

凛「うん。そうして」

P「ああ。そうする」

838: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:31:43.10 ID:yeHOFGM00
凛「……」

P「……」

凛「……ねぇ、プロデューサー」

P「ん?」

凛「この後、未央と二人でごはんを食べに行くんだよね」

P「まあ、そうだな」

凛「デート?」

P「……違う」

凛「違うんだ? ……ふふっ、ごめんね。今のは意地悪だったかも。でも、さっきのやり返しだから」

839: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:32:10.75 ID:yeHOFGM00
P「……そう言われると返しにくいな」

凛「そう? そうかな。そうかも」

P「そうだ」

凛「そっか。……ねぇ、プロデューサー」

P「ん?」

凛「二人きりだからって、未央に変なことはしないでね」

P「しないに決まってるだろ……俺を何だと思ってるんだよ」

凛「うん。プロデューサーなら絶対にしないと思ってる。……でも、何もしない、っていうのも、なしね」

P「どっちだよ」

凛「何もしないつもりだったの?」

P「……」

凛「……やっぱり、プロデューサー、わかりやすいね」

840: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:32:40.88 ID:yeHOFGM00
P「……くそっ。お前、未央や加蓮に影響されてるだろ。あと、奏なんかにも影響されてそうだな」

凛「影響は……うん、されてる、のかな。されてると思うよ。でも、もし私が変わったんだとしたら、それはプロデューサーのせいだと思うよ」

P「それは……いや、そうか。そうか?」

凛「そうだよ。プロデューサーのせいで、プロデューサーのおかげ。卯月や未央と会えたのも、プロデューサーのおかげだしね」

P「……まあ、俺はきっかけでしかないけどな。その後のことは、ぜんぶお前らが勝手にやったことだ」

凛「でも、プロデューサーが居たからだよ」

P「……それは、そうだが」

841: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:33:06.62 ID:yeHOFGM00
凛「……プロデューサー」

P「なんだ?」

凛「私たちをプロデュースしてくれてありがとうね」

P「……なんで今のタイミングで言ったんだよ」

凛「……確かに、未央の誕生日パーティーだって言うのに、ね」

P「本当にな」

凛「でも……そうだね。私が今言ったのは『わかってる』ってこと。少しは……うん。少し寂しいような気持ちにはなるけれど、それよりも、幸せだから」

P「……ちょっと、話が飛びすぎじゃないか?」

凛「でも、伝わってるでしょ?」

P「……まあ、な」

842: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:33:40.70 ID:yeHOFGM00
凛「じゃあ、いいでしょ? ……だから、プロデューサー」

P「……ああ」

凛「未央を、よろしくね」

P「……任せとけ。なんたって、俺はお前たちをプロデュースしてきたプロデューサーなんだからな」

凛「……プロデューサーがしていいことかは、わからないけどね」

P「それ言うか? 今の台詞で締めとけば格好も付いたのに……」

凛「それはプロデューサーらしくないから」

P「どういう意味だよ」

凛「そういう意味。……それじゃあ、そろそろ私もあそこに混ざってくるよ」

P「……ああ。楽しめよ」

凛「うん、楽しんでくるよ」

843: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:34:08.64 ID:yeHOFGM00

――

未央「茜ちん! あーちゃん! やっぱり私は、二人のことが大好きだー!」ギュッ

藍子「きゃっ……もう、未央ちゃんったら。……ふふっ」

茜「私もです! 未央ちゃん! 藍子ちゃん! 私も、二人のことが大好きです!」ギュゥゥゥ!!!

藍子「んっ!? ……あ、茜ちゃん、ちょっと、力、強すぎ……」ガクッ

未央「あ、あーちゃん!? あーちゃーん!」

茜「あ、藍子ちゃーん! ……ど、どうして、どうしてこんなことに……!」

未央「あーちゃん……君のことは、絶対に忘れないからね……!」

844: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:34:42.43 ID:yeHOFGM00
みく「……どうして今日の主役がコントをやってるの?」

未央「おっ、みくにゃーん。コントとは心外な。私たちは大真面目ですよ?」

みく「いや藍子チャン、ピンピンしてるし……何なら恥ずかしそうに笑ってるし……」

未央「ふっふっふ……あーちゃんも最近はノリが良くなってきましたからなあ。ゆるふわでちょっとマイペースだったりするところはそのままに、コントまでできるようになった……今のあーちゃんに隙はないよ!」

みく「さっきは否定したのに一瞬で認めたにゃ」

未央「だって事実ですし? 認めるしかないじゃないですか?」

みく「ちょっとうざいにゃ……」

845: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:35:10.17 ID:yeHOFGM00
未央「う、うざい!? 今日誕生日を迎える相手に、なんて言葉を……」ガクッ

みく「えー……何その反応」

泰葉「そうですよ、みくさん。いったい何をやってるんですか」

加蓮「そうそう。今日の主役に何をやってるのー」

みく「え、泰葉チャンに加蓮チャンまで乗……泰葉チャンまで乗るの!? ちょっとびっくりなんだけど!?」

泰葉「せっかく居るんですし、乗っておくべきかと思いまして」

加蓮「……なんだか私が無視されているみたいで癪だなあ。もっと衝撃的ないじりをした方がいいのか……」

みく「いや、加蓮チャンはこれ以上そっち方向に成長しないでほしいんだけど……」

846: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:35:39.06 ID:yeHOFGM00
加蓮「そう?」

未央「確かに! これ以上かれんが成長したらしぶりんとかみやんの精神がゴリゴリ削れていっちゃうからね!」

加蓮「Pさんは?」

未央「プロデューサーは……まあ、いいんじゃない?」

みく「いいんだ……」

泰葉「Pさん……ご愁傷様です」

未央「あはは。まあ、プロデューサーだし、大丈夫でしょ。……ん?」

847: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:36:09.07 ID:yeHOFGM00
未央(あれは……プロデューサーとしぶりん? 二人で部屋の隅に行って、何、話してるんだろ)

未央(なんだか……うーん)

未央「みんな、ちょっとごめん。少しだけ席を外すね。その間もどうぞ楽しんでいてくれたまえ」

みく「何そのノリ……でも、うん、わかったにゃ」

藍子「待ってますね、未央ちゃん」

未央「いやいや、だから待たなくてもいいんだけど……」

茜「いえ、今日の主役は未央ちゃんですから!」

未央「茜ちん……うぅ、やっぱりあーちゃんと茜ちんは最高だよー!」

加蓮「いいから早く行ったら?」

未央「あ、はい。すみません」

848: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:36:38.92 ID:yeHOFGM00

――

未央(……んー、でも、なんか良い感じっぽいし、話しかけるのもなぁ……)

未央(『未央ちゃんの誕生日なんだからもっと祝えー』みたいに突撃してもよかったんだけど……さすがに空気は読みますよ、っと)

未央(でも、せっかくだし、ちょっとお花を摘みにでも行ってこようかな――)

卯月「未央ちゃん?」

未央「ひゃっ!」

卯月「? どうかしましたか?」

未央「え? いや、なんでもないですよ? ただ、いきなりしまむーから話しかけられてびっくりしただけで……」

卯月「そんなに驚くようなところから声をかけたつもりはないですけど……」

未央「んー……確かにそうだけど、タイミング的に?」

卯月「タイミングですか……」

849: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:37:04.59 ID:yeHOFGM00
未央「そうそう。だから、しまむーが悪いんだよ」

卯月「私ですか!?」

未央「そうだよ? ……いや、冗談だけどね」

卯月「……未央ちゃん」

未央「あはは、ごめんごめん。しまむー、かわいいからさー」

卯月「かわ……か、かわいいって言われたからって、許してあげません!」

未央「……そっか。ごめんね。私、調子に乗り過ぎちゃったね……」

卯月「えっ……そ、その、ごめんなさい! 私、怒ってなんかいません! 許してます!」

未央「そう? やったー! しまむー、愛してるよー!」

卯月「本当ですか!? 私も未央ちゃんのことが大好きです!」

未央「ふっふっふ……チョロい」

卯月「あっ……未央ちゃん!」

未央「きゃー! しまむーが怒ったー! ……えへへ、さすがにちょっとくどい? そろそろ終わろっか」

卯月「続けたのは未央ちゃんじゃないですか……」

850: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:37:31.03 ID:yeHOFGM00
未央「まあ、そうなんですけどねー。あ、そうそう、しまむーは楽しんでるかい?」

卯月「はい! ……って、未央ちゃんが主役なのに私が楽しむというのもおかしいかもしれませんけど」

未央「いいのいいの! みんなが楽しんでいることが私の幸せだからさ!」

卯月「……未央ちゃんらしいですね。ありがとうございます」

未央「お礼を言うことではないよ? でも、どういたしまして」

卯月「はい。……未央ちゃんはこの後、プロデューサーさんとごはんを食べに行くんでしたっけ?」

未央「そうだね。羨ましい?」

卯月「……そうですね。少し」

未央「おっ、しまむーがそんなことを言うなんて……ちょっと意外かも」

卯月「そうですか?」

未央「うん。しまむーだったら『いえ、そんなことはないですよ。楽しんできて下さいね!』みたいに言うかと」

851: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:37:59.45 ID:yeHOFGM00
卯月「それも思ってはいますけど……でも、やっぱり、少し羨ましいです。未央ちゃんも、プロデューサーさんも」

未央「んん? プロデューサーも?」

卯月「はい。だって、未央ちゃんの誕生日に未央ちゃんを独占できるんですよ? 羨ましいじゃないですか」

未央「おおぅ、そんな考え方もあったか……ちょっと考えてなかったかも」

卯月「だから、今の内にいっぱい未央ちゃんとお話したいです!」

未央「しまむー……うん、そうだね! いっぱいいっぱい話しちゃおー!」

卯月「おー♪」

852: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:38:28.26 ID:yeHOFGM00

――外

未央「みんな、今日はありがとね。楽しかったよ!」

凛「未央はこれからお楽しみだけどね」

加蓮「そうそう。Pさんとお楽しみだなんて……不健全だね」

P「……お前ら、俺をなんだと思ってるんだよ」

美嘉「しょっちゅうアタシたちのことを●●●視線で見るプロデューサー?」

P「それはマジで誤解を招くからやめような美嘉」

美嘉「え? でも事実じゃん?」

P「だから誤解を招くんだよ……」

853: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:38:54.48 ID:yeHOFGM00
李衣菜「でも、二人きりで食事かぁ……なんか、ロックかも」

みく「どこが……?」

茜「いえ! 私はわかりますよ、李衣菜ちゃん! ロックです!」

藍子「茜ちゃんが乗るんですね……」

未央「うんうん、それもまたロックだよね」

P「未央も乗るのかよ……」

未央「えへへ。だって、こういうのは乗っておかないと損ですし?」

P「そうか……?」

854: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:39:25.02 ID:yeHOFGM00
泰葉「……みなさん、ずっと事務所の前でこうしているのも何ですし、そろそろ解散としませんか?」

P「ん? ……ああ、確かにな。邪魔になるか」

泰葉「はい。それに、予約の時間もあるでしょう?」

P「いや、それに関しては一応まだ大丈夫だが……」

泰葉「Pさんは今日誕生日の女性を急がせる気ですか? ……積もる話は、ないんですか?」

P「……まあ、そうだな」

855: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 22:40:34.76 ID:yeHOFGM00
凛「そうだよ。早く行きなよ、二人とも」

P「いや、元はと言えばお前からじゃなかったか?」

凛「そうかもね。でも、私は振り返ったりしないから」

P「なんだよそのかっこいい台詞……絶対ここで使う台詞じゃないだろ」

未央「さすがしぶりん……かっこいいですなぁ」

卯月「さすが凛ちゃんです!」

P「お前ら……いや、まあ、いいんだが」

卯月「……それじゃあ、そろそろ失礼しますね。二人とも、ゆっくり楽しんできて下さい!」

P「ん。ああ。楽しんでくるよ」

未央「楽しんできまーす!」

卯月「では、また明日!」

P「ああ。また明日」

未央「また明日―♪」

856: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:05:28.97 ID:yeHOFGM00

――道中

P「……未央、寒いか?」

未央「え? ……大丈夫だよ。ありがと、プロデューサー」

P「そうか」

未央「そうそう。でも、確かに寒くなってきたよね。いきなり寒くなってきちゃって、本当、12月だなー、って感じだよ」

P「誕生日が来ると冬を感じる、ってことか」

未央「そうかも。まあ、未央ちゃんは冬と言うよりは夏なイメージあるけれど?」

P「自分で言うか」

未央「違う?」

P「んー……俺はお前のプロデューサーだからな、どの季節でもイメージできる。夏と言われたら夏だが、春や秋、冬と言われたらそう思うよ」

未央「……それ、プロデューサー的には逆にダメじゃない?」

P「そうかもな。だけど、これが本心だよ」

未央「そんなので仕事は大丈夫なのかなー?」

P「仕事の時は仕事の時で言うことが違うから問題ない」

未央「うわ、悪い大人だ」

P「賢い大人と言ってくれ。実際、それで仕事は取れているからな」

857: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:06:11.58 ID:yeHOFGM00
未央「へぇ……この世界はやっぱり悪が栄えるということなのか……」

P「どんな解釈だよ、それ。と言うか、それならウチの事務所のアイドルたちが仕事をもらえてることに説明が付かないだろ」

未央「つまり、私たちはみんな悪ではなくて正義だと?」

P「正義なんて言うつもりはないが、少なくとも悪ではないだろ」

未央「まあ、確かにねー。悪役の演技が上手そうな人は居るけど……私とか?」

P「未央は下手そうじゃないか?」

未央「お、言ったなー? やすやすとのレッスンで身に付けた演技力、今こそ発揮する時か……」

P「べつにいい」

未央「ちぇー、つれないんだからー」

P「まあ、またいつか見る機会があれば、な」

未央「……そうだね。そのためにも、まだまだ頑張らなくちゃ!」

P「……そうだな」

858: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:06:37.70 ID:yeHOFGM00
未央「そう言えば、今日連れて行ってくれるところってどういうところなの?」

P「フレンチ……いや、イタリアンの店、か?」

未央「『か?』って聞かれてもわからないんだけど……でも、プロデューサーとそういう店、ってそう言えば行ったことないかも。プロデューサーはあんまり行かないのかな、って思ってたよ」

P「確かにそこまでは行かないが……俺もいくつか知ってるんだぞ?」

未央「本当にー? これはまた連れて行ってもらわなくてはいけませんなぁ」

P「……まあ、そのつもりだがな」

未央「やったー! ふっふっふ、いったいどんな高級店なのか……」

P「いや、高級店じゃないぞ? そこまで期待されると困るんだが……」

未央「えへへ、冗談冗談! プロデューサーと一緒なら、未央ちゃんはどんなところでも構いませんよー♪」

P「……」

未央「? プロデューサー、どうかした?」

P「いや……何でもないよ」

859: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:07:03.35 ID:yeHOFGM00
未央「ほんとにー? そういう時ってだいたい『何かある』って時じゃん?」

P「何かあっても言いたくない時、でもあるがな。……まあ、本当に大したことじゃあないからスルーしてくれ」

未央「……それなら、わかったけど」

P「ありがとな、未央」

未央「どういたしまして。……それに、こちらこそ、だよ」

P「は? なんでだよ」

未央「最高の誕生日をありがとう、ってことかな。……学校で祝われて、事務所で祝われて……本当に、最高の誕生日だな、って」

P「まだ終わってないけどな」

未央「それはわかってるよ? でも、今のうちに言っておこうかな、って思って」

860: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:07:30.60 ID:yeHOFGM00
P「……これくらいで満足してくれちゃ困るな」

未央「え?」

P「来年はもっと良い誕生日にしてやる、ってことだよ。今年は無理だったが、バースデーライブを開くことを目標に、な」

未央「……それ、すっごく良いね! 来年かぁ……できるように、頑張らなくちゃね!」

P「ああ。これからも一年……って、まだ店にも入っていないのに、何言ってるんだ、俺ら」

未央「確かに。……ねぇ、プロデューサー」

P「なんだ?」

未央「私たち、デートしてるみたいに見えるかな?」

P「見えたら問題だな」

未央「むぅ……誕生日なんだから、『そうかもしれない』くらいの返しはできないの?」

P「なら、兄妹くらいには見えるかも、でどうだ」

未央「全然よくないよ……」

861: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:07:56.67 ID:yeHOFGM00
P「よくないかもしれないが、見えたらダメってことも事実だろ? 俺たちはアイドルとプロデューサーなんだから」

未央「それはそうだけどさぁ……まったく、乙女心ってものを考えて欲しいんだけど?」

P「考えてもわからないんだよ。……ん、見えてきたな」

未央「え? 本当? ……え?」

P「あそこだ。高級店ではないが、良い感じだろ?」

未央「う、うん……思ったより良い感じで、びっくりしてる」

P「そうか。なら良かった。じゃあ、入るぞ」

未央「えっ……は、はい」

862: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:08:23.89 ID:yeHOFGM00

――店の中

未央「……プロデューサー、こういう店、知ってたんだね」

P「だから言っただろ? 俺も来ないわけじゃない、って」

未央「でも、こんな隠れ家的な店……本当に、意外かも」

P「それ、ちひろさんにも言われたな……そんなに意外なのか?」

未央「ちひろさん? ……ちひろさん、連れて来たことあるんだ」

P「ん? まあな」

未央「……誕生日の女性を連れて行って、他の女性と行ったことがある、って言うのはどうなの?」

P「ダメだったか?」

未央「ダメダメだよ。……ちょっと、ショックだもん」

P「いや、だって、せっかくの誕生日に俺のセンスだけで決めるってのはなぁ……ちひろさんが太鼓判を押した店なら、未央も絶対によろこんでくれるだろ? それに、ちひろさんを連れて来たのはランチだしな。って、これは言い訳にならないか」

未央「……ううん、ごめんなさい。その……嬉しいよ。ありがとう」

P「そうか? どういたしまして」

863: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:09:09.57 ID:yeHOFGM00
未央(……そっか。そうだったんだ。勝手に傷付いてた私がバカみたい)

未央(って、こんなことで傷付くのがもうダメなような気もするけれど……でも、そんな気持ちよりも今は嬉しいの方が強いんだから、私って都合が良いな、と思う)

未央(プロデューサーがきちんと考えてくれた。その結果なんだ。私のために、きちんと考えてくれた……それが、とても嬉しい)

P「? 未央? どうした、そんな顔をして」

未央「えっ!? ……わ、私、そんな変な顔してた?」

P「ああ。なんだか嬉しそうな……あ、そこまでこの店を気に入ってくれたのか? ふふん、そうだろ? 我ながら、この店は良い店だと思うんだよなぁ……」

未央「……ふふっ」

P「ん? なんで今笑ったんだ?」

未央「ううん、なんでもなーい。ただ、プロデューサーはプロデューサーだなー、って思って」

P「なんだよ、それ……まあ、未央が楽しんでいるならいいんだが」

未央「そうそう。未央ちゃんの誕生日なんだから、未央ちゃんを祝っておけばいいのです」

P「はいはい、そうですね、お姫様」

864: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:09:35.32 ID:yeHOFGM00
未央「それで、ここは……どういうシステムなの?」

P「システム?」

未央「いや、コースとかなのか、それとも……」

P「いや、コースではないな。コースもあるが、今日は違う」

未央「ってことは、このメニューを見て決めていく感じ? あと、あそこに貼ってあるメニュー……あれって、このメニューと同じなの?」

P「いや、違うな。そっちの、今未央が持っている方がパスタの種類だけが書いてある……はずだ。あそこに貼ってあるものはそれ以外、だな」

未央「パスタ……ってことは、ここはパスタが有名なお店?」

P「有名かどうかはわからんが、まあ、パスタが中心みたいなところはあるな」

865: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:10:02.59 ID:yeHOFGM00
未央「そうなんだ……これはどれにするか迷うね。プロデューサーのオススメは?」

P「オススメって言ってもなぁ……まあ、パスタ以外なら決められるが、パスタはお前が決めたらいいんじゃないか?」

未央「ふーん……じゃあ、そうしよっかな」

P「まあ、そうすればいいんじゃないか?」

未央「……でも、多いね。どれにしようか迷っちゃう」

P「迷えるだけあると嬉しいだろ?」

未央「それはそうなんだけど……うん、決めた、これにする」

P「そうか。じゃあ、頼んでもいいか?」

未央「うん、お願い」

P「わかった」

866: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:10:28.74 ID:yeHOFGM00

――

P「まずは前菜、ってことで、ブルスケッタだ」

未央「ブルスケッタ……? ブルスケッタ、って、何?」

P「そう聞かれると困るが、見ての通り、焼いたパンに具材が乗ってる、って感じだな」

未央「……でも、おいしそうだね。具材は海老とアボカド、なんだ」

P「他にもあるが、俺も海老は好きだしな。海老とアボカドって組み合わせは女性が好きそうだしな」

未央「女性が好きそうって……いや、私は好きだけどね?」

P「ならいいだろ?」

未央「いいけどさー……じゃあ、いただきます」

P「ああ。俺ももらうか」

867: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:10:57.58 ID:yeHOFGM00
未央(……でも、これ、どうやって食べようかな。って、プロデューサーは手で持って食べてる。こういう店でも、そういうのをやってもいいんだ)

未央(じゃあ、私も失礼して……具材が落ちないように気を付けて、手で持って、っと)

未央(……いただきます)パクッ

未央「……んん!」

未央(おいしい! うわっ、すっごくおいしい! あんまりこういう店に来たことないからかもしれないけど……これがブルスケッタ、良いね)

未央(軽く焼かれたフランスパンがカリカリと香ばしくて、でも海老の食感とアボカドの食感は全然違ってて。海老は結構ぷりっとしていて、アボカドは……アボカドの食感ってちょっと言葉にしにくいかも。ねっちょりって言うと悪く聞こえるけど……ねっとり? しっとり? とにかく、そんな感じ?)

未央(そのバランスがとっても良いんだよねー……あと、味もそれだけじゃないかも。これは……ガーリック? ……にんにくじゃん!)

未央(うぅ……でも、でもおいしい! パクパク食べれる!)

未央(噛むとまず海老のぷりっとした弾力を感じて、すぐにアボカドのねっとりとした食感。そしてフランスパンの香ばしさとガーリックの香りがふわっと抜けるというか……あ! 今のなんか食レポっぽい!)

未央(でも、食レポみたいなことを言っちゃいますよこれは! これが前菜……ふんふむ、これは楽しみになってきましたよー!)

868: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:11:25.68 ID:yeHOFGM00
店員「こちら、若鶏とソーセージの包み焼きでございます」

P「ありがとうございます……これも前菜だな」

未央「え? 今のブルスケッタ、っていうのも前菜じゃなかったっけ?」

P「いや、せっかく二人で来たんだし……二つ、頼みたくならないか?」

未央「……なるね!」

P「だろ!? じゃあ、食べるか」

未央「うん!」

未央(でも、これが前菜……確かにあんまり量はないけど、名前だけ聞くと絶対肉料理だよね)

未央(若鶏とソーセージの包み焼き……って、どういうのだろうって思ったら、ソーセージを鶏肉で包んでいるのかな? ほうほう、こんな料理が……)

未央(うーん……なんだかおいしそう。とりあえず、食べてみよっ)パクッ

869: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:11:51.67 ID:yeHOFGM00
未央「……ん!」

未央(おお……おいしい! なんだろ、どうしてソーセージを包むって発想になったんだろ……よくわかんないけど、おいしいよ!)

未央(鶏肉とソーセージで食感が全然違うからかな? 鶏肉はパリッとしていて、でも、鶏肉の弾力があって……ソーセージはソーセージなんだけど、とってもおいしいソーセージというか?)

未央(でも、前菜と言われれば前菜っぽいかも。いや、肉料理と言われれば完全に肉料理なんだけど……なんだか、『四天王の中でも最弱』どころか『四天王ですらない』って言われた気分)

未央(これは本当の肉料理はどんなものなのか……ちょっと、気になってきたかも!)

870: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:12:19.32 ID:yeHOFGM00

――

P「で、サラダだな」

未央「ふんふむ……なんだかおいしそうなサラダだね!」

P「ホタテとイカのサラダだな。普通のサラダでもいいんだが、俺はこれが好きなんだよなあ」

未央「ほうほう……ホタテとイカがおいしいの?」

P「ホタテとイカもおいしい、だな。……まあ、食べてみろ」

未央「……うん、そうだね。それじゃあ……っと」

未央(うーん……いきなりホタテとかイカとかと一緒に食べるのはちょっとなー)

未央(ってことで、まずはサラダだけを……)パクッ

871: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:12:46.25 ID:yeHOFGM00
未央「……ん?」

未央(あれ? もしかして……おいしい?)

未央(……おいしいじゃん! このサラダ! ほほーぅ、サラダでこんなにおいしいと来ましたかー!)

未央(ドレッシングがいいのかな? なんだろ、これ。オリーブオイル? わかんないや。でも、とにかくおいしい!)

未央(野菜がおいしいのかな? なんだろ。食感としてはそこまで主張していない感じなんだけど……だからかな? あんまりもっさもっさって感じにならなくて、軽く口の中を通り抜ける感じ?)

未央(……これでホタテとかイカを一緒に食べたら、どうなるんだろ)

未央(……いざ!)パクッ

未央「……うん!」

未央(ですよねー! わかってた! わかってましたよ未央ちゃんはー!)

未央(このちょっと酸味のあるドレッシング……これ、野菜だけじゃなくてホタテとかイカとも合うように調整されているんだね! そういうことかー、そういうことかー!)

未央(爽やかで、口の中がさっぱりする……さっきの鶏肉とソーセージの包み焼き? でちょっと油っこくなってた口の中が今ではもうさっぱり爽やかだもん。うーん、うまいなぁ。これで次の料理に備えるわけですかー……)

未央(……さてさて、次はなんだろう。パスタ? 肉料理? 魚料理? わからないけど……どれが来ても、楽しみかも!)

872: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:14:22.62 ID:yeHOFGM00

――

P「パスタだな」

未央「パスタだね」

P「とりあえず、自分のを食べてから交換するか」

未央「うん。……プロデューサーの、おいしそうだね」

P「お前のも、な」

未央「えへへ、そうでした。じゃあ、いただきまーす」

P「いただきます」

873: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:14:49.68 ID:yeHOFGM00
未央(これは確かアマトリチャーナ? だったっけ? トマトソースのパスタ、だよね?)

未央(厚切りのベーコンとか、じゃがいもとかが入ってる。……うんうん、それじゃ、いただきますか!)パクッ

未央「……~!」

未央(おいしい! そりゃあおいしいよね、うん! なんだろ、この甘み。玉ねぎ? 玉ねぎだ! 玉ねぎの甘さを感じる。トマトの旨味も感じるし……)

未央(パスタにソースが絡んでくる。パスタ自体もおいしい。ちょっともちもちとした食感? 弾力? うーん、これだけでもうとってもおいしいんだけど……)

未央(それでは、具材を一緒に絡ませて……)パクッ

未央「……はぁ」

未央(おいしい……。このベーコンの食感というか、ジューシーさというか……パスタだけで食べてもおいしいんだけど、一緒に食べると、もう……もう……!)

未央(……うーん、幸せ!)

874: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:15:18.46 ID:yeHOFGM00
P「そっちはどうだ? 未央」

未央「すっごくおいしい……プロデューサーのは?」

P「うまいぞ。そろそろ交換するか?」

未央「ん、そうだね……えっと、プロデューサーのは」

P「かぼちゃのクリームソース、だな。具材はひき肉とかが入ってる」

未央「ほうほう……それじゃあ、いただいちゃうよ?」

P「じゃあ、俺も未央のを……」

未央(……見た感じ、結構な『かぼちゃ』感……どうなんだろ、これ。よくわからないけど……)

未央(とりあえず、食べよう!)パクッ

875: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:15:45.61 ID:yeHOFGM00
未央「……!?」

未央(……え? ちょっと……ん?)

未央(どうしよう……すっごくおいしい……)

未央(かぼちゃって、パスタとこんなに合うんだ……。ソースがパスタにねっとりと絡みついてくる。甘みのようなうまみが舌に運ばれて、それがパスタに絡みついているのと同じように、舌にねっとりと絡みついてくるというか……)

未央(本当に、『味が絡みついてくる』って感じ。おいしさが口いっぱいに広がって……ずっと、残ってる)

未央(幸せがずっと続いているような感じ……ちょっと、ひき肉も一緒に口に……)パクッ

未央「……ふぅ」

未央(かぼちゃの甘みにひき肉が合ってる。ひき肉がかぼちゃの甘みを引き立てているのかかぼちゃがひき肉のうまみを引き立てているかもうわからない。でも、どっちも強く強く感じる)

未央(……これ、すごいなぁ。どっちもとってもおいしい。これが、そういう店のパスタ、なんだ)

未央(……なんだか、もう、すっかり魅了されちゃった……)

876: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:16:12.97 ID:yeHOFGM00

――

P「次は肉料理……と、魚料理だな」

未央「……そう言えば、こういうところでどっちも頼むのって、どうなの?」

P「二人だからいいんじゃないか?」

未央「んー……そうだね!」

P「だろ? で、どっちから食べるか……普通は魚から、か?」

未央「どうなんだろ。でも、まあ、そうなんじゃない?」

P「じゃあ、魚から……って、これは魚じゃないけどな」

877: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:16:39.76 ID:yeHOFGM00
未央「えーと……天使の海老とホタテのナージュ、だったっけ? 天使の海老って?」

P「よくわからんが、おいしい海老だな」

未央「すっごい適当なんだけど……じゃあ、ナージュは?」

P「んー……確か、野菜なんかのブイヨンと魚介類とか甲殻類とかの煮汁を生クリームなんかでつないだソースとした調理法、だった……はずだ」

未央「はず、って言う割にはなんか詳しいね」

P「気になったから調べた経験がある。忘れたが」

未央「忘れたんだ……でも、なんだかおいしそうだね。これは……なんか、薄く切られたフランスパンがあるけど、これに乗っけて食べるの?」

P「ああ。俺はいつもそうしてる。パンにソースをたっぷり付けて、上に食べやすく切った海老とかホタテを乗せて食べてる」

未央「ほうほう……じゃ、そうしてみるよ」

P「ああ、そうしろ」

878: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:17:10.64 ID:yeHOFGM00
未央(えーっと……まずはパンをソースにひたして、そこに具材を……まずは、そうだね、ホタテから、で)

未央(それで、これをなんとか持って……食べる)パクッ

未央「……んっ」

未央(……?! ん? え? おいしっ……おいしい!)

未央(何このソース……何このソース! ナージュ、すごいね! 何これ……本当、何これ!)

未央(もうちょっと未央ちゃんの言葉では表せないくらいおいしいんだけど……プロデューサーの言った通り、すっごく色んなうまみを感じるんだけど、どれがどれなのかわからない。ただただ、おいしい)

未央(生クリームでつないでいるからかな。その味がまた絡みついてきて……さっきのパスタとはまた違うんだけど、何と言うか、もう最高においしい!)

未央(ホタテもホタテでおいしいし……このパンはソースをより多く楽しむためのものかもしれないけど、このパンもやっぱり良い。おいしい)

879: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:17:36.36 ID:yeHOFGM00
未央(これで天使の海老なんてものを食べたらどうなるんだろう……いざ!)パクッ

未央「……ぅわ……」

未央(……もう、幸せ。それしか言えない。この海老、もしかしてかなりすごい海老なんじゃない?)

未央(旨みも香りも今までに感じたことがないくらい……食感も良いし、もう、本当に……これをこの意味わかんないくらいおいしいソースと一緒に食べる……なんて贅沢なんだろう)

未央(最高の素材に最高のソース、って……そう考えると、これはおいしくて当然だね)

未央(……はぁ。幸せ)

P「どうやら気に入ったみたいだな」

未央「うん……ちょっと、本当に、意味わからないくらいおいしいね、これ……びっくりした」

P「それは良かった。俺も嬉しいよ」

未央「うん……本当に、おいしかった……」

P「さて、まだ肉料理が残ってるぞ」

未央「うん……」

P「……食べるぞ? 食べるからな? ……いただきます」

880: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:18:03.95 ID:yeHOFGM00

――

未央「お肉もおいしかったね、プロデューサー……」

P「ああ……未央、お前、大丈夫か?」

未央「大丈夫だよ……それで、次はドルチェ、だったっけ?」

P「お前は桃のコンポート、だったか」

未央「プロデューサーは……キャラメルのジェラート、だったっけ?」

P「ああ。一口やるから一口くれ」

未央「うわぁ、直球……でも、うん。そうしよっか」

P「頼む。……じゃあ、食べるか」

未央「うん」

881: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:18:29.45 ID:yeHOFGM00
未央(桃のコンポート……うん、もう、こんなの絶対おいしいよね!)

未央(ということで……まずは一口!)パクッ

未央「……おぉ!」

未央(桃……桃だ! すっごく桃だし、すっごく甘いし、なのにどこか爽やかだし……すっごくおいしい!)

未央(え? 何、これ……コンポートってコンポート……コンポートだったんだ! 何言ってるんだ私! わかんない! とにかくおいしい!)

未央(なんか、今、脳内で幸福物質的なものがバンバン出ているような気がする。甘いものって……甘いものってやっぱりすごいね! もう、ダイレクトに『幸せ』って感じだもん!)

未央(だいぶ前にしぶりんがチョコレートのを飲んでた時に『幸せをそのまま飲んでるような』みたいなことを言ってたような気がするけど、それに近いかも。食べただけで幸せになる。幸せを食べている、っていうのとはちょっと違うかもしれないけど、そんな感じ。うわあ……こういう店って、ドルチェまでおいしいんだ……)

882: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:20:44.03 ID:yeHOFGM00
P「ん、未央。食べたんなら、一口、交換するか?」

未央「え? ……うん、する!」

未央(プロデューサーのはキャラメルのジェラート、だったよね。キャラメルのジェラート……いったいどういうものなのか、って、予想はできるけど、よし!)パクッ

未央「……えっ」

未央(……予想と違った、というか、おいし! 何これ……おいしい! すっごくおいしい! キャラメルの味がとっても甘くて、ジェラートはなんだかいくつもの氷の層が重なった感じ? 舌に乗せるだけで一層ずつ溶けていって、一層が溶ける度に甘みがじんわりと広がっていくというか? 一口食べるだけで何回も味が広がっていって……)

未央(ちょっとしゃりしゃりとした、シャーベット状みたいな感じ? でもシャーベットじゃなくて……何、これ。私の知ってるジェラートと違う! おいしい! 好き!)

未央(あー、もう! 最高!)

883: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:24:49.42 ID:yeHOFGM00

――店の外

未央「はぁ……おいしかったー!」

P「そうか……それは良かったよ」

未央「うんうん、まさかプロデューサーがこんな店を知ってるなんてね……ちひろさんもビックリだったんじゃない?」

P「あー……まあな。かなりビックリしてた」

未央「やっぱりー」

P「……その反応、失礼じゃないか?」

未央「失礼? いやいや、当然だと思いますけど?」

P「当然……当然か?」

未央「いやー、女の子をラーメン屋に連れて行く人に言われたくはないんですけど?」

P「……それを言われると反論できないからやめてくれ」

未央「でも、事実だし?」

P「……それはそうなんだけど、な」

884: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:25:17.36 ID:yeHOFGM00
未央「えへへ……でも、本当に良い店だったよ、プロデューサー。ありがとね、本当に」

P「ん……まあ、誕生日だからな。そりゃ、特別な店にも連れてくるさ」

未央「そっか……誕生日だから、か……」

未央(誕生日だから……それだけ、なのかな)

未央(誕生日に、二人きりで、こんな店に……ううん。そうだね。プロデューサーだもん。そりゃ、そうだよね)

未央(……でも、ちょっとむかつくから、からかってやろう)

未央「でもさ、プロデューサー? こんな店に誕生日の女の子を連れて行くなんて、他の子にはやっちゃいけませんよ?」

P「は? ……何か悪いところでもあったか?」

未央「ううん。完璧だったよ♪ 完璧だったからこそ……こんなことされたら、勘違い、しちゃうじゃん」

未央(……あれ?)

未央(なんでだろう……なんで、明るく言えなかったんだろう)

未央(……こんなつもりじゃなかったのに、私、どうして――)

885: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:26:06.10 ID:yeHOFGM00



P「――勘違いじゃないって言ったら、どうする?」



886: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:26:37.40 ID:yeHOFGM00
未央「……え?」

未央(プロデューサー、今、なんて……)

P「……勘違いじゃないよ、未央。俺も、さすがにそこまで鈍感じゃないからな……お前がどう思ってくれているかは、なんとなく、わかってた」

未央「……それ、って」

P「それも俺の勘違いだったら……なんて思おうともしたけどな。でも、それは逃げてるだけだ。だから、俺は俺なりに答えを出した」

未央「……」

P「……まだ、俺とお前がプロデューサーとアイドルである限りは、直接言葉にすることはできないけど、こんな遠回りな方法でしか、答えることはできないが……これが、俺の答えのつもりだ」

未央「……プロデューサー」

P「……我ながら、卑怯だとは思うけど、な。……もしも、お前がトップアイドルになって、その先の夢も叶えて……その時にもまだ同じ気持ちなら、その時こそ、直接言葉にして伝えるよ」

887: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:27:04.03 ID:yeHOFGM00
未央(……どうしよう)

P「だから、未央。……これからも、よろしくな」

未央(どうしよう)

未央「プロデューサー!」ギュッ

未央(――幸せ過ぎて、おかしくなりそう!)

P「なっ……!? おま、未央! 俺の言ってる意味、わかってるか!?」

未央「わかってる……わかってるけど、わかってるから……」

未央(わかってる。プロデューサーが言っていることがどういう意味か。『今はまだこういうことはできない』ということ。それはわかってる。でも……でも、それ以上に、今は……)

未央「今は……今だけは、こうさせてよ、プロデューサー」

888: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:27:31.60 ID:yeHOFGM00
P「……あー、その前に、だな。ちょっと、誕生日のイベントを忘れてないか?」

未央「……誕生日の、イベント?」

P「ほら……その、プレゼント」

未央「プレゼント……プレゼントなら、もう、もらったよ」

未央(これ以上ない……素敵な、素敵なプレゼントを……)

P「いや、そういう良い話じゃなくてな。……せっかく用意したんだから、もらってくれなきゃ困るんだよ」

未央「……そんなに?」

P「ああ」

未央「もしかして、高いものだったりする? それは嬉しいけど……でも」

P「いや、違う。そういうものじゃなくてだな……ああ、もう! 渡した方が早いな」

889: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:28:00.88 ID:yeHOFGM00
未央「? それ……紙? じゃなくて……台本? ――もしかして!」

P「ああ。……未央。舞台の仕事だ。正確には、そのオーディションだが、な」

未央「……」

P「……どうだ? 俺としては、とっておきのプレゼント、なんだが……」

未央「……えへへ。誕生日プレゼントに仕事、って、本当に、プロデューサーらしいね」

P「それ、どういう意味だ? ……いや、確かに俺も迷ったんだが……」

未央「わからない? 私の気持ちがわかってるなら、わかると思うけど?」

P「未央の気持ち……?」

未央(……本当にわかってないんだ。なら――)ギュッ

P「未央……?」

未央「私が大好きな人らしい、ってことだよ、プロデューサー! ……本当に、ありがとね。最高の……最高の、プレゼントだよ」

890: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:28:30.10 ID:yeHOFGM00
P「……そうか。それなら、良かったよ」

未央「……うん」

P「でも、そろそろ離れてくれ」

未央「……離れたいの?」

P「……答える必要、あるか?」

未央「……えへへ。ないね。もう」

P「そうだ。でも、俺は我慢してるんだから、お前も……」

未央「でも、さ」ギュッ

未央「……今日だけは、お願いだから、こうさせて」

P「……今日だけ、だからな」

未央「……ありがと、プロデューサー」

P「……礼を言われることじゃない」

未央「えへへ……でも、ありがと」

P「……どういたしまして」

891: ◆Tw7kfjMAJk 2015/12/01(火) 23:29:36.07 ID:yeHOFGM00

――

未央(アイドルになって、色んなことがあった)

未央(アイドルになってからの日々は、とても、とっても楽しくて……幸せで)

未央(それはたぶん、『アイドルとしての幸せ』。普通の女の子には、たぶん、なかなか体験できないような、すごい幸せだと思う)

未央(でも、私が今感じている幸せは、きっと、違う)

未央(これは、たぶん、普通の女の子が感じる幸せだ)

未央(大好きな人と一緒においしいものを食べる)

未央(大好きな人と、一緒に居られる)

未央(きっと、それは、普通の幸せ)

未央(でも、だからこそ……とっても大切で、貴重な、かけがえのない、幸せだ)

未央(……今日だけは、アイドルじゃなくて、普通の女の子としてこの幸せを満喫しても……いい、よね)