1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:35:42.23 ID:1S8pNreW0


唯「明日って和ちゃんの誕生日?」

和「そうね、それを直接本人に聞くとはいい度胸してるわ」


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引用元: 唯「もしかしてだけど」 

 

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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:36:04.98 ID:1S8pNreW0



12月25日 12:00



唯「確実だと思ってね!」

和「間違えようはないけど、もうちょっと方法あったでしょうに……」

唯「う~ん、そうかなあ……じゃあお詫びとして一番に和ちゃんの誕生日を祝うよ!」

和「いいわよそういうの。0時きっかりにメール送るとか、そういうことでしょ?」

唯「甘いよ……、ショートケーキのいちごぐらい甘いよ、和ちゃん!!」

和「はあ」

唯「それはそうとあの時のいちごを返して和ちゃん!!」

和「それいつの話よ! ……高校にいた頃の話じゃない」

唯「だっていちごはケーキのハートだよ、ソウルだよ、魂だよ!?」

和「後ろ二つはどっちも魂よ。っていうかあの日から全然成長してないわね」

唯「あの日のいちごの怨念は、まだ和ちゃんに憑りついたまま……」

和「……そんな恐ろしいものを食べたかったの?」

唯「ケーキの亡霊になら憑りつかれてもいいかも」

和「たとえ唯が憑りつかれたとしても、あまり変わりそうにないわね」

唯「それどういう意味ー?」

和「そのままの意味。ほら、ケーキでしょ。今から買って帰りましょう」

唯「わーい」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:36:42.92 ID:1S8pNreW0



12月25日 14:00



唯「お邪魔しますっ」

和「上着はこっちにかけて。洗面所はあっち」

唯「……」

和「唯?」

唯「いやあ、これが和ちゃんの新居なんだなあって……」

和「まだまだ家具も少ないから殺風景だけれど」

唯「それも含めて和ちゃんっぽいよ~」

和「……ありがとう、というべきなのかしら」

唯「うふふー、和ちゃんの家に初訪問~」

和「なにが嬉しいんだか。ま、あんたの前に澪とか来てくれたけどね」

唯「えぇ!?」

和「あら、聞いてなかったの。そんな驚くこと?」

唯「ひどいよ和ちゃん……わたしという人がいながら、先に澪ちゃんを誘うなんて……」

和「人の誕生日忘れてた口でよく言うわ」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:37:18.38 ID:1S8pNreW0



12月25日 16:00



和「唯も仕事大変そうね」

唯「うん。新任だからクラス担任じゃないけど、色々ね~」

和「懐かしいわね、学校。さわ子先生も元気かしら」

唯「結婚できたかなあ」

和「唯はどっちだと思う?」

唯「あ、じゃあさっき買ってきたケーキ半分を賭けてみよっか」

和「唯がいいならそれでもいいけど」

唯「んーと、じゃあね……」

和「……」

唯「あー……」

和「……」

唯「……和ちゃん。わたし、とんでもないことに気づいちゃったよ」

和「言ってみなさい」

唯「これ、賭けになってない」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:38:09.46 ID:1S8pNreW0



12月25日 18:00



唯「確かに誕生日は忘れてたわたしだけど、今日がクリスマスだってことは忘れてないよ!」

和「そうね、さすがの唯でもそこまではね」

唯「だけど肝心のクリスマスプレゼントを家に忘れてきたよ!」

和「さすがね」

唯「だから帰ったら郵送で送るね~」

和「なにをプレゼントするつもりでいたの?」

唯「うん、絶対に邪魔にならないものをって思って」

和「えぇ」

唯「焼き海苔100枚をプレゼント!」

和「……」

唯「これで来るお正月シーズンも大丈夫! お餅の強い味方!」

和「唯……」

唯「和ちゃん……?」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:38:48.95 ID:1S8pNreW0

和「……わかってるじゃない」

唯「……うん、和ちゃんならそう言ってくれるって信じてたよ」

和「じゃあわたしはマラカス送ってあげる」

唯「な、なんて地味な嫌がらせ……! というか本当は怒ってるでしょ!?」

和「それも毎年よ」

唯「一年に一個マラカスが増えるお家なんて嫌だよ!!」

和「誕生日プレゼントにも送りつけてあげるわ」

唯「二個に増えた」

和「暑中見舞い、寒中見舞い、事あるごとに送ってあげる。覚悟なさい」

唯「の、和ちゃんが社会に出て凶暴に……」

和「ちなみにあっちの部屋の隅を見てもらえるかしら」

唯「……あ、あれは……マラカス……!?」

和「前に澪がこの家に来たって言ったわね。あのときのものよ」

唯「澪ちゃんが」

和「その際のセリフは、これを振ってると落ち着くんだ、だったかしら」

唯「疲れてるんだね……」

和「きっとそうね。たまには唯から会いに行ってあげて」

唯「うん」

和「きっとマラカスをくれるはずよ」

唯「和ちゃんはどうしてもわたしにマラカスを受け取らせたいの?」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:39:25.40 ID:1S8pNreW0



12月25日 20:00



唯「晩ご飯も食べ終わったし、そろそろケーキタイムだね~」

和「ケーキといえば唯、本当によかったの? ショートケーキのほうが食べたかったんじゃないの?」

唯「うん、でも和ちゃんの誕生日もあるし、和ちゃんの好きなケーキを食べてほしかったから」

和「唯……」

唯「それにわたし、チーズケーキも好きだよ!」

和「このケーキ、いちごが乗ってないのよ」

唯「えっ」

和「……よく見てなかったのね」

唯「えっ?」

和「……」

唯「……えっ?」

和「………………」

唯「……ねえ和ちゃん、この近くのコンビニってどこかな?」

和「出たらすぐ右に曲がって、直進すれば見えてくるわ」

唯「ちょっと行ってくる」

和「いってらっしゃい……」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:40:33.75 ID:1S8pNreW0



12月25日 20:15



唯「いちご大福買ってきた!」

和「あんたはそれでいいの!?」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:41:03.75 ID:1S8pNreW0



12月25日 22:00



唯「そういえばこの家ってゲームないんだね?」

和「昔は唯かわたしの家でよく対戦ゲームをやってたけど、
 今じゃそんな機会もないもの」

唯「そうだねぇ。わたしもすっかりやらなくなっちゃったよ」

和「仕事が忙しくて?」

唯「うんうん」

和「お互い大変な身になっちゃったわね。
 そういえばゲームはゲームでも、テーブルゲームならあるわよ」

唯「……まーじゃんだ……」

和「この前遊びにきた大学の後輩が置いてったわ。
 また来るからそのときこれで遊びましょう、って」

唯「わたしに負けず劣らずのマイペースな子だね、その人」

和「その子大学に入ってすぐになにしてたと思う? 麻雀の役を覚えていたのよ」

唯「大学生と麻雀を安易に結びつけるのはどうかと思うよっ」

和「巻き込まれてわたしもいくつか覚えたわ」

唯「そんな、あの品行方正な和ちゃんが……」

和「なにゲーム一つで人の道外れたみたいな。それに役を二つ三つ覚えただけよ。
 それ以外の流れは全然」

唯「それなのに後輩は一式を置いてったんだ?」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:41:44.63 ID:1S8pNreW0

和「いわく、次の機会には一から十まで教えてくれるそうよ」

唯「なんでその子はそんな熱が入ってるの!?」

和「知らないわよ。麻雀に命でも救われたんじゃない?」

唯「和ちゃんの学校怖い……」

和「そうよね、唯には平和で穏やかな生活が似合ってるわ。
 これからも些細なことで怒ったりせず、平穏に生きていきなさい」

唯「うん、そうだね。些細なことで怒ったりせず……」

和「……」

唯「……そういえば和ちゃん、ケーキのいちご」

和「些細なことよ」

唯「なんでわたしはいちご大福を買って満足してたんだろう」

和「些細なことだったのよ」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:42:29.52 ID:1S8pNreW0



12月25日 23:58



和「あら、電話」

唯「誰から?」

和「例の麻雀に命を救われた女の子」

唯「殺伐としてるねえ」

和「わたしの学校はそんな世紀末じゃないわ」

唯「その子の周りだけが世紀末なの?」

和「多分ね。……はい、和です。久しぶり。えぇ、メリークリスマス」

唯「……」

和「え、明後日? 来るの?
 わたしは、仕事終わったあとでいいならいいけど」

唯「……」

和「まだ家に置いてあるわよ。捨ててもいいなら、すぐにでも捨てるけど?」

唯「和ちゃ……」

和「覚える暇ないわよ、それに覚えてもやる暇もない」

唯「……」

和「……あ、ちょっといいかしら。えぇ、少しだけ外すわ」

唯「……和ちゃん?」

和「唯、もう少しでクリスマスが終わるわ」

唯「そうだね」

和「ずっと一緒にいたくせに、そういえば一度も言ってなかったと思って。
 今日はありがとう、メリークリスマス」

唯「あ、うん、メリークリスマス!」

和「それと……」

唯「それと……?」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:43:01.62 ID:1S8pNreW0



12月26日 0:00



和「今日はわたしの誕生日らしいわよ」

唯「あ……、あっ、えっと、誕生日おめでとう、和ちゃん!!」

和「えぇ、ありがとう。その言葉が今年で一番嬉しいわ」

唯「……う、うん」

和「……あ、もしもし。え、今日? そうよ誕生日よ。
 ありがと、でも残念だったわね。一番に祝ったのはあなたじゃないわ」

唯「……?」

和「ふふ、ごめんなさい。今日は家に幼馴染が来てるの。
 ……ありがとう、それじゃおやすみ」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/12/25(金) 21:43:44.59 ID:1S8pNreW0



12月26日 0:05



唯「もしかしてだけど、和ちゃん」

和「一番に祝ってくれるって言ったものね?」

唯「全部お見通しだったんだ……」

和「サプライズのつもりだったの? だとしたらヒントを出し過ぎてるわね」

唯「こんなときにダメだしー!?」

和「でもホントに嬉しかったわ。一度は忘れてたとはいってもね」

唯「さ、些細なことで怒らないでね?」

和「そうね。だから唯も、プレゼントをちょっと間違えるような、
 些細なミスにも怒らないでちょうだいね?」

唯「マラカスを送り付けるつもりだ」

和「なんのことかしら」

唯「じゃあわたしも海苔送り付けるからっ」

和「あら、海苔なら普段から使えるし、わたしは大歓迎よ」

唯「あるぇ~?」

和「実用度に差がありすぎたようね」

唯「わかっていながら和ちゃんはマラカスを送ってくるわけか~……」

和「……そうそう、誕生日といえばケーキね。
 今晩食べたのはクリスマスケーキだし、明日の朝に改めてケーキを買いに行きましょう」

唯「おー」

和「唯もついて来てくれるわね?」

唯「え、いいけど、なんでわたしも?」

和「些細なことよ」

唯「……あ、もしかしてだけど!」

和「もちろん。買うのはいちごのショートケーキよ」

唯「さっすが和ちゃん! わかってる~!」

和「ついでにマラカスも買っておきましょう」

唯「それはもういいよっ!」



 おしまい