2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:00:13.27 ID:FwxwMl4C0

―――事務所


育「うう~……」

桃子「これで、8戦8勝、桃子の圧勝だね」

育「な、なんで勝てないのかなぁ……。桃子ちゃん! もう一回!」

桃子「……まだやるの? どうせまた桃子の勝ちだよ」

育「そんなことない、わたしだって勝つもん! いくよ!」


「じゃんけんぽん!」


育「あっち向いてほい!」


「じゃんけんぽん!」


桃子「あっち向いてほい!」


「じゃんけんぽん!」

「あいこでしょ!」


育「あっち向いて――」

P「おーい、桃子と育、ちょっといいかー?」

桃子「え?」

育「ほい!」

桃子「……あっ!」

育「やった! やったやった! わたしの勝ちー!」

桃子「ちょ、ちょっと待ってよ、今のはずるくない? だって桃子……」

育「だめだめ、勝ちは勝ちだよ、桃子ちゃん!」

桃子「う……」

P「お? なんだ、何か勝負してたのか?」

桃子「もう、お兄ちゃん! お兄ちゃんがいきなり話しかけたせいだよ!」

P「えっ」

桃子「桃子が負けた責任、とってよ!」プンスカ

P「ええっ……ご、ごめん……」

引用元: 桃子「あつまれ!」莉緒「祭りだ!」千早「み、ミリオンライブ……!」 

 

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3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:02:57.63 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


P「みんないるかー? いるなー?」

莉緒「いるわよー。プロデューサーくん、話って何かな?」

千早「話があるから集まってくれ、とのことでしたが……」

育「もしかしてお仕事の話?」

律子「ええ、そうよ」

あずさ「今度は、どんなお仕事なんですか?」

P「そうだな、この時期ならではのイベントなんだけど……よし、クイズだ」

P「みんなは夏といえば何を思い浮かべる?」

環「カブトムシ!」

海美「私は海かな、やっぱり!」

響「自分も海が一番だぞ!」

桃子「そういう前置きはいいから、お兄ちゃん、話進めて」

P「桃子はつれないなぁ……。じゃあ言うか、今回の仕事では夏祭りに参加します」

育「お祭り!?」

環「お祭りかー!」

律子「そう、お祭り。盆踊りと花火大会も一緒にやる、大きなお祭りね」

未来「花火もやるんですか!? うわあ、楽しみ~っ!」

海美「今回も楽しそうなお仕事だねっ、プロデューサー!」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:05:55.55 ID:FwxwMl4C0

千早「それで、内容の方は……」

P「おっけー、大まかに説明しよう」

P「まず一番の目的。先方の依頼は、夏祭りを盛り上げてほしいとのことだ」

P「そのために、今集まってもらってるみんなには、それぞれ担当する役割がある」

P「育、海美、あずさ」

育「はいっ」

海美「呼んだ?」

あずさ「まあ、何でしょう?」

P「三人には、盆踊り会場の矢倉のところで、踊り見本として踊ってもらう」

海美「おっ、責任重大だね! 練習しなくっちゃ」

育「わたし、踊り方、知らないけど……今からでも大丈夫かな?」

あずさ「大丈夫よ~、みんなで教えてあげるから」

育「ありがとう、あずささん!」

P「それから、始まる前に、踊り方を知らない人のためにレクチャーをしてほしい。いいかな?」

海美「りょうかい!」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:06:55.66 ID:FwxwMl4C0

P「響には、矢倉の上で太鼓を叩いてもらう」

響「た、太鼓!? 自分が? 太鼓なんて触ったこともないぞ……」

P「練習すれば大丈夫だよ。それにこれは体力使うし、リズム感も必要だから、響が適任なんだ」

響「プロデューサーがそう言うなら……。まあ、自分は完璧だからなっ、任せてよ!」


P「環には、お面の屋台で売り手をやってもらう」

環「たまきが屋台のおじさんやるの? くふふ、面白そう!」

P「たぶん、環の好きな戦隊ヒーローのお面もあると思うぞ」

環「それたまきが買う! お面つけて屋台のおじさんやるぞ!」


P「未来には、今回の祭りのイメージガールになってもらう」

未来「私がイメージガールですか!? すごーい!」

P「まあ、未来の場合はポスターとかに出るだけだから、祭りの当日は空くよ」

未来「そうなんですか? じゃあ私、金魚すくいとか極めちゃおっかな~」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:08:08.89 ID:FwxwMl4C0

P「それで……桃子、千早、莉緒には、会場でミニライブをやってもらう」

千早「ミニライブ……ですか」

P「盆踊りの始まる前だから、どうしても短くなるけどね。……やっぱり短いと不満か?」

千早「いえ、そんなことは。歌える場所を頂けるだけ、ありがたいです」

桃子「桃子は大きなライブの方がいいけど……最近はお兄ちゃんも頑張ってるから、やってあげる」

莉緒「桃子ちゃんと千早ちゃんと一緒かー……。これは私、気が抜けないわね」

P「内容はこんなものかな。質問があれば、俺か律子に聞いてくれ」

P「そのためのスケジュールは追って連絡する。あとは……」

律子「プロデューサー、浴衣」

P「あ、そうそう。みんなには浴衣を着て参加してもらうから、そのつもりで」

海美「みんな浴衣着るんだね。うーん、夏祭りっぽい!」

あずさ「まだ入るかしら……」

千早「あの、浴衣を持っていない人は、どうすれば?」

P「その場合はレンタルかな。言ってくれれば手配しておくよ」

P「連絡事項は以上。それじゃあみんな、今日の活動を始めてくれ」

「「「はーい」」」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:09:17.53 ID:FwxwMl4C0

未来「おっまつり♪ おっまつり♪ たっのしみだなー」

育「未来さん、楽しそうだね」

響「浮かれすぎてイベントの前に失敗するなよー、春香みたいに」

未来「しないですよ~、私は春香さんとは違いますよ♪」

 「二人ともひどい!」

  「げっ、春香!?」

   「私だっていつも浮かれてるわけじゃ……」

     ガヤガヤ



千早「…………」

千早(夏祭り、ね……)

桃子「……千早さん?」

千早「え? 桃子、どうしたの?」

桃子「千早さんこそ、どうしたの」

千早「私はどうもしないわ」

桃子「ふうん……」


莉緒「(……プロデューサーくん)」ヒソ

P「(ん?)」

莉緒「(私と桃子ちゃんはいいとして、千早ちゃんを選んだのには、理由があるの?)」

P「(ああ)」

莉緒「(……そっか)」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:10:38.37 ID:FwxwMl4C0

莉緒「ま、それはそれとして」

莉緒「夏祭りの日は、プロデューサーくんも浴衣を着るのかしら?」

P「……は?」

莉緒「わ、冷たい返事」

P「あ、ああ、ごめん、予想外の質問だったから……」

莉緒「着ないの?」

P「着ません」

莉緒「絶対?」

P「絶対着ない。嫌だ」

莉緒(……うん? この反応……何かあるな)

莉緒「えー、着たらいいのに。桃子ちゃんもそう思うわよね?」

桃子「え? ……、……うん」

P「桃子、今ちょっとニヤッとしたな」

桃子「してないよ? なに言ってるの、お兄ちゃん。変な言いがかりつけないで」

莉緒「ほら、桃子ちゃんもこう言ってるんだから、着ましょうよ」

P「やだよ。おかしいだろこの歳で。なあ千早、俺が浴衣着たらおかしいよな」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:12:01.56 ID:FwxwMl4C0

千早「そうですね……ちょっと待ってください」

千早「律子、聞きたいことがあるのだけれど」

律子「何かしら?」

千早「律子も当日は浴衣を着るの?」

律子「着るわよ、もちろん」

千早「……だそうですから、同じプロデューサーとして、プロデューサーが着てもおかしくはないかと」

莉緒「ほーら」

P「ほーらじゃなくて! 俺は着ないぞ。恥ずかしいだろ!」

未来「ええーっ、プロデューサーさん、浴衣着ないんですか!? もったいなーい!」

育「わたしは見たいなあ、プロデューサーさんの浴衣姿」

P「いつの間に戻ってきた!?」

響「自分だけ着ないなんてずるいぞー」

P「いや、ずるいとかじゃなくて……」

莉緒「どうしてそんなに嫌がるのよ……別にいいじゃない、浴衣くらい」

桃子「桃子、お兄ちゃんが浴衣で来なかったら、お仕事しないよ」

P「やだって! 俺は着ないぞ! 絶対着ないからな!」

千早(子供みたい……)

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:31:10.43 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


―――夏祭り当日 会場入り口


律子「……で、結局着てきたんですか?」

P「…………だって着てこないとみんなでストライキするとか言うから」

海美「うわ、暗っ」

あずさ「げ、元気出してください、プロデューサーさん」

莉緒「そうよ、その柄だってなかなか、わ、悪くないと思うわよ」

P「声震えてんぞ莉緒」

莉緒「な、何のことか、かしら、……ふふっ」

海美「や、やめ、やめてよ莉緒さん、つ、つられちゃうよっ」

律子「二人とも、失礼よ。プロっ……プ、プロデューサーだってね……」プルプル

P「笑いたきゃ笑えよ」

響「あははははっ!」

環「あっはっはっは!」

育「プロデューサーさん、おもしろーい!」

千早「……っ、……!」プルプル

未来「もうみんな笑ってますよ♪」

P「…………」


桃子「……お兄ちゃん」ポン

P「桃子……」

桃子「これからお仕事なんだから、ちゃんとして」

P「……はい」

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:32:21.37 ID:FwxwMl4C0

未来「私はかわいくていいと思いますよ? そのどんちゃんかっちゃんの浴衣」

P「ありがとう」

律子「というより、どこで手に入れたんですか、そんなもの……」

P「真美とやよいのゲームイベントの仕事の記念にな、もらったんだ」

莉緒「それしかないなら、新しいもの買えばよかったじゃない」

P「そう言われちゃ、そのとおりなんだけどさあ……滅多に着ないものだし……」

P「……うん、まあ、俺の浴衣のことはおいとこう。聞いてくれ、みんな」

P「前にも伝えたとおり、盆踊りは19時から花火大会の20時までだから、それ以外の時間は自由行動でいい」

P「環は盆踊りが始まる前まで、屋台な。始まったら交替の人が来てくれるはずだ」

環「わかった!」

P「ミニライブは18時からだ。機材の関係もあるから、早めに集まってくれ」

千早「わかりました」

P「以上。解散」

響「よーし、自分が一番乗りだぞー!」ダッ

環「あーっ、たまきも一番乗りする!」ダダッ

育「ま、待って! わたしもー!」タタタッ

律子「こらー! その格好で走らないの!」ダッダッ

海美「自分も走ってる……」

未来「私たちも行きましょうよ、あずささん」

あずさ「どんな屋台があるのかしらね~」

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:37:01.07 ID:FwxwMl4C0

桃子「……」

P「ん、桃子は急がなくていいのか?」

桃子「い、いいの。桃子は大人だから、お祭りではしゃいだりしないし」

P「おー、向こうは水鉄砲売ってるんだなー。あ、そっちはヨーヨー釣りだ、ほら、桃子」

桃子「お兄ちゃん、桃子のこと馬鹿にしてるの? そ、そんなの、どうだって……」

P「そっかー……俺はやりたいんだけどなー」

桃子「……」

P「でもいい大人がこんな浴衣で遊んでたら恥ずかしいし、桃子が一緒にいてくれると、助かるんだけどなー」

桃子「……!」

桃子「ま、まあ桃子は全然はしゃいでないけど、お兄ちゃんがどうしてもって言うなら、つきあってあげるよ」

P「お、そうかー、ありがとう桃子」

桃子「じゃあ、まずはあそこからね! 行こうっ、お兄ちゃん!」



千早「…………」

莉緒「……千早ちゃん? 行かないの?」

千早「いえ、行きます」

千早「行きますが……あの二人を見ていると、昔を思い出してしまって……」

莉緒(それって……もしかして弟さんの)

千早「やはり、簡単には忘れられないですね……」

莉緒「千早ちゃん……」

千早「私も昔、仕事に駄々をこねるたび、あんな風にプロデューサーに上手いこと言いくるめられていました」

千早「思い出すだけで恥ずかしい……」

莉緒「……えっ? そっち?」

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:38:27.09 ID:FwxwMl4C0



桃子「千早さん! 莉緒さん!」

莉緒「あれ、戻ってきた」

桃子「何してるの? 早く行こうよ、お兄ちゃんも待ってるよ」

千早「……それは?」

桃子「え……これ? このヨーヨーは、桃子のためにお兄ちゃんが取ってくれたんだよ。どう?」


 『お姉ちゃん、見て見て! どうかな?』


千早「…………」

莉緒「……」

千早「……ふふっ」

桃子「?」

千早「……そうね、浴衣とお揃いで、とても可愛い」

桃子「本当? 桃子に似合ってるかな?」

千早「桃子にぴったりの、桃色でしょう? よく似合っているわ」

桃子「そ、そう? 千早さんに褒められると、悪い気はしないかな。二人とも、行こうっ」

千早「ええ」

莉緒「うふふ。あー、可愛いなあ……」

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 17:55:09.50 ID:FwxwMl4C0

―――屋台通り


P「おお……」

莉緒「わあ……」

千早「すごい数ですね……」

桃子「ぜんぶ別の屋台なのかな?」

P「そうかもなあ、見たところだと」

千早「ペンライトに、風車に、……あれは紙風船でしょうか」

桃子「りんご飴も売ってる! 桃子、一度あれ食べてみたかったんだよね」

莉緒「射的に、輪投げに、金魚すくいねー。あっ、ちょっとうずうずしてきたかも……」

P「目移りしちゃうな……さすがだ」


桃子「お兄ちゃん」

P「うん?」

桃子「桃子はりんご飴を買ってくるから、ここにいてね?」

P「わかった、いってらっしゃい」

千早「待って桃子、私も行くわ」

 「子供扱いしなくたって、桃子は平気だよ」

  「わかってる。私もりんご飴を久しぶりに買ってみようかと思って」

   「それなら、半分こにする?」

    「そうしようかしら……」



莉緒「……自然」

P「だな」

莉緒「千早ちゃんもあれで結構、年少組の扱いが上手よね」

P「根っこはずっとお姉さんだもんなぁ、千早」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:03:02.63 ID:FwxwMl4C0

「わぁ、これが提灯ですか? ぶらぶらしてて面白いです♪」

「何食べよ……おお、ここ、お好み焼きも売ってんねんな~」

「スーパーボールスクープ……ここは挑戦するのがベター……?」



莉緒「うちの事務所の子もちらちら見かけるわね……。あっ」

莉緒「見て見て、プロデューサーくん」

P「うん?」

莉緒「初々しいカップル発見」

P「…………」

莉緒「いいわねー、ああいうの。あの手の繋ぎ方なんて、私たちは初心ですってアピールしているようなものじゃない?」

P「…………」

莉緒「私にもあんな時期があったのかしらね」

P「……莉緒」

莉緒「んっ?」

P「人の恋愛に目敏い奴は、己の恋愛を疎かにするそうだ」

莉緒「う、うるさいなー……それは自分でもわかってるんだから……。あっ」

P「今度は何」

莉緒「生ビールの屋台発見」


莉緒「……」チラッ

P「ダメ」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:10:06.46 ID:FwxwMl4C0

莉緒「ね、ちょっとだけ」

P「ライブ前なのでお酒だけはダメです。終わってから」

莉緒「酔っ払うまでは飲まないから……」

P「ダメ」

莉緒「半分あげるから」

P「買収しようとしない」

莉緒「いいじゃない、お酒飲みながらライブするアイドルもいるんだし。ね?」

P「うちはうち、よそはよそだ」

莉緒「ちぇっ。……ケチ。プロデューサーくんのドケチー」

P「ダメなものはダメ」

莉緒「ドカター」

P「雪歩呼ぶか? あのな、莉緒……」



 「あ、いたいた。お~い!」

 「あっ! いたいたはこっちの台詞ですよ早苗さ……酒臭ッ!? また飲み過ぎましたね!?」

 「飲んでないわよそんなには~。せいぜい酒樽いっぱいぶーん!」

 「そんなに飲んだら死にます! この前の祭りだって出番の前に気持ち悪くなったくせに……!」

 「お? シメる? やってみる? 酔っててもあたしの方が強いわよー!」

 「わかってますよそんなことは……はい、しゃんとして! 小さい子もいるんだから、せめてあっちに!」

 「んー? あっちの茂みに連れこんで、どうするつもりかしら? お姉さんとよろしくやろうって!?」

 「この酔っ払い……!」



P「…………」

莉緒「…………」

P「……ああなりたくなかったら、やめとけ」

莉緒「……うん、そうするわ」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:15:49.20 ID:FwxwMl4C0

桃子「お待たせ、お兄ちゃん、莉緒さん……って」

千早「二人とも、どうしたんですか?」

P「ちょっと。酷い酔っ払いを見たんだ」

千早「酔っ払い……」

千早「……背が低いのに胸元がとんでもない人ですか?」

莉緒「あら、千早ちゃんも見たんだ?」

千早「……正直、あの着物の着方はどうかと思いました」

桃子「……何? なんの話、お兄ちゃん」

P「いや……桃子にはまだ早いかな……」

桃子「むっ」

莉緒「でも、浴衣は着崩してなんぼだと思うけどね。千早ちゃんはぴっちりしすぎなのよ」

千早「それが本来の着方だと思いま――ひゃっ!? やっ、ひ、引っ張らないでください!」

莉緒「こんなにきつくして、苦しくない?」

千早「で、ですから、それが本来の――ひゃうっ! ぷ、プロデューサー、助け……」

桃子「桃子にはまだ早いってどういうことなのよ!」

P「ご、ごめん……」

千早「くっ」



律子「……何してるのかしらあの人たち」

あずさ「さ、さあ……。桃子ちゃんに怒られているプロデューサーさんと……」

貴音「千早が莉緒嬢に襲われているように見えますね」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:19:17.86 ID:FwxwMl4C0

律子「ちょっとアンタたち、往来で騒ぐんじゃありません」

P「あ、律子……」

貴音「こんばんは、プロデューサー」

P「あずさと貴音もいるのか」

貴音「美味しそうな匂いに導かれたのです」

あずさ「なんだか、大変そうですね~」

千早「あ、あの、誰か、たす……」

律子「?」バイーン

貴音「?」ボイーン

あずさ「?」ドタプーン

千早「…………」

あずさ「千早ちゃん、どうしたの?」

千早「……いえ、なんでも」

律子「どうしたのよ。何か言いたげね」

千早「なんでもないわ」

貴音「……」モグモグ

P「莉緒、千早で遊ぶな。放してやれ」

莉緒「はぁ~い」

P「まったく……」

桃子「お に い ち ゃ ん!」

P「うっ」

桃子「そうやって桃子のこと適当にあしらおうとしたって、そうはいかないんだから!」

P「え、え~っと……」

P「あっ! 桃子、あっちに綿アメ売ってるぞ!」

桃子「えっ、どこ!?」

P「あっちだあっち。買ってやるから行こう、なっ?」

桃子「うん!」


莉緒(あしらわれてるわよー、桃子ちゃん)

律子(……桃子ってあんなに単純な子だったっけ?)

貴音(たこ焼きが尽きてしまいました……。例の屋台は、どちらに……)

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:23:48.42 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


育「がんばって、未来さん!」

ひなた「あたしも応援してるよぉ」

未来「う、うん。……いきます! それっ……」


 ボチャン


育「あー……」

ひなた「あちゃあ……」

未来「うう、またか……」

屋台のおじさん「残念だったなあお嬢ちゃん。どうする、もう一回挑戦するかい?」

未来「やります!」

育「フレー、フレー!」

ひなた「あたしには見てることしかできんけど、がんばってなー」

P「――金魚すくいか、今からやるのか?」

未来「あ、プロデューサーさん」

育「桃子ちゃんも」

ひなた「わ、おっきな綿アメだねぇ、どこに売っとったんだべか?」

桃子「向こうの、焼きとうもろこしの屋台の隣だよ。ちょっと食べる?」

育「桃子ちゃんのヨーヨー、可愛いね! あとでわたしにも屋台の場所教えて!」

桃子「うん、いいよ。……あと、桃子はそのお面も可愛いと思うよ」

育「ありがと! これ、環ちゃんにオススメを選んでもらったんだよ」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:28:21.65 ID:FwxwMl4C0

未来「むー、聞いてくださいよプロデューサーさん!」

P「どうした?」

未来「私、かれこれ5、6回は挑戦してるのに、1回もうまくいかないんです!」

P「なるほど。……桃子」

桃子「しょうがないなあ……お兄ちゃん、これ持ってて」

未来「えっ? ええ?」

育「桃子ちゃん?」

ひなた「なして桃子ちゃんを呼んだのさ?」

P「それはな、桃子が昔出たドラマに、金魚すくいをやるシーンがあったからさ」

P「桃子は上手いから見本になるぞ。まあ見てなって三人とも」

桃子「なんでお兄ちゃんが自慢気なのよ……。おじさん、桃子もやりたいな」

屋台のおじさん「おう、腕前のほどを見せてもらうよ」


桃子「…………」

桃子「……ふう」

未来「(プロデューサーさん、どうして桃子ちゃんはポイをじっと見てたんですか?)」ヒソ

P「(向きだよ。紙が貼ってある方を上にするんだ)」

未来「(ふんふん)」

育「(どうして?)」

ひなた「(そうしねっと、はじっこに水がたまっちゃうからでないの?)」

育「(あ、そっかぁ)」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:31:01.12 ID:FwxwMl4C0

桃子「……」

P「(次に、どの金魚を狙うか決める。聞いた話じゃ上にいる金魚の方が取りやすいらしい)」

未来「(下の方だと、すぐに上げられないからですか?)」

P「(かもね)」

桃子「……」スッ

P「(狙いをつけたら、静かに水につける)」

ひなた「(なぁんかあたしらまでドキドキするねぇ)」

P「(そうしたらあとは落ちついて……)」

桃子「……よっと」


 チャポン


育「わあ、桃子ちゃんすごい!」

ひなた「上手だわあ……」

桃子「まだまだ、桃子の実力はこんなものじゃないよ? ……えい」


 チャポン


育「2匹目だ!」

桃子「……それ」


 チャポン


屋台のおじさん「いいねえ、おみごと」

未来「はあ~、慣れてるんですね、桃子ちゃん。……ところでプロデューサーさんは?」

P「うん?」

ひなた「プロデューサーも上手いのかい?」

P「ああいや、俺は下手だよ。1匹も取れないんだ」

育「…………」

桃子「お兄ちゃん、それは堂々と言ってもかっこ悪いと思うな」

未来「あ、あはは……。よし、私ももう一回!」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:47:18.38 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………

「えー、まだ踊りじゃないの? 早く踊りたいヨー」

「カタヌキは、とても得意です。…………嘘です。見栄を張りました」

「おやおや? 皆さんとはぐれてしまいました~」



P(育と桃子はヨーヨー釣りに、未来とひなたはまだ残るという)

P(…………)

P(一人で廻るのも寂しいな、誰かいないか……)

海美「あっ、プロデューサー!」

P「ん、海美か……って」

海美「なに?」

P「ちょっと、それ、浴衣はだけすぎじゃないか?」

海美「そうかな? そうでもなくない?」

P「そうでもある。帯緩めただろ」

海美「だって動きにくいんだもんよ~。それに、響と環はもっとすごかったよ!」

P「あいつら……」

海美「そんなことより、プロデューサーは一人なの?」

P「まあ」

海美「……一人で寂しく焼きそば立ち食いしてるんだ」

P「うるせえやい」

海美「それならさっ、今から私と勝負しようよ~! 射的で!」

P「射的?」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 18:55:02.59 ID:FwxwMl4C0

海美「こっちこっち!」

P「ひっぱるな……俺の浴衣まではだけるから」

のり子「あれ? プロデューサーだ」

恵美「珍しい組み合わせだね」

P「ああ、二人もいたのか。……お、そのお面」

恵美「ああ、これ? 環の屋台で買ったんだ」

のり子「あの子、ねじりはちまき似合うよね! 浴衣とも合ってたし!」

P「それを見こんでの仕事だからな。でも、二人は浴衣じゃないんだな」

恵美「仕事だったら着てきたけどね。アタシはどっちかっていうとキャラじゃないし」

のり子「アタシには浴衣みたいな落ちついた服、あんまり似合わないからね……」

P「ああ、そうかも」

のり子「おっとそこは嘘でも否定してほしかったなっ」サッ

P「銃口を向けるな危ない」

のり子「入ってないよ」

海美「プロデューサー、こっちだよ!」

P「わかった、わかったって」

屋台のおばさん「兄さんもやるのかい? 格好いいとこ見せとくれよ」

恵美「かっこいいとこ見せとくれよー」

のり子「期待してるよっ、プロデューサー!」

P「お、おう、見せてやろうじゃないか」

海美「それじゃ、勝負開始ー!」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 19:03:25.44 ID:FwxwMl4C0

海美「……」

 パンッ

屋台のおばさん「13番の当たり~」


P「……」

 スカッ


海美「……」

 ペンッ

屋台のおばさん「2番の当たり~」


P「……」

 スカッ


海美「……」

 ポンッ

屋台のおばさん「6番の当たり~」


P「……」

 スカッ

屋台のおばさん「……惜しいねえ~」



のり子「…………」

恵美「…………」

P「…………」

海美「…………」

のり子「……プロデューサー、ちゃんと目開けて撃ってる?」

P「開けてるよ!」

海美「プロデューサー、なんか……ごめんね」

P「謝るなよ! まだ終わってないだろ!」

恵美「やー、もうコールドじゃない?」

P「みんなして酷いな!」

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 19:11:38.34 ID:FwxwMl4C0

P「くっ、こうなったら、本当に目を閉じて撃ってやる……!」

のり子「あーあー、自棄になっちゃって……」

恵美「プロデューサーの勝負だから、好きにさせてあげよう」


P「……」

 パンッ パン パ パ パ タン!


海美「えっ」

屋台のおばさん「こっ、これは……!?」

のり子「ええっ」

恵美「……嘘でしょ?」

P「……ん、なんだ? どうなった」

海美「すごい! すごいよ、プロデューサー!」

P「へっ?」

海美「今、プロデューサーの撃った弾が跳ね返って、ドミノみたいに全部倒したんだよ!」

屋台のおばさん「あ、あんた! あんたまさか伝説のシューター、射的屋潰しの弟子かい!?」

恵美(何それ)

P「え、何? 弟子?」

のり子「なーんだ、実は上手かったんだねっ!」

P「う、うーん……?」

屋台のおばさん「ふっ……あたしも長いことテキ屋をやってるけど、この目で見たのは初めてだよ。さ、持っていきな!」

のり子「初めてだって。やるじゃん!」

海美「見直しちゃった!」

のり子「よっ、日本一!」

P「……ま、まあな!」

恵美「……それはそうと、こんなにたくさんの景品、どうするの?」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 19:23:31.29 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


千早「…………」

千早(夏祭り……誰かと一緒に見て回るなら、まだいいけれど)

千早(何もせず歩くだけなら、ただの暇潰しと一緒ね……)

千早(……ライブまで、あと少――)


 ドン


千早「きゃっ……」

P「あ、ごめんなさい、大丈夫で……って千早か、ごめん」

千早「プロデューサー」

P「前が見づらかったんだ、ごめんな、大丈夫か?」

千早「平気です。それよりも、その大きな袋は……」

P「これか? ……はは、季節外れのサンタクロースみたいだよな。メリーサマー! なんちゃって」

千早「…………」

P「……そんな目で見るなよ……」

千早「その大きな袋は?」

P「これなあ、射的で取ったんだ」

千早「全部ですか」

P「うん」

千早「何回挑戦したんですか……」

P「そう思うだろ? そうじゃないんだこれが、自分でもびっくりだけど」

千早「?」

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 19:35:01.88 ID:FwxwMl4C0

P「千早は何をしてたんだ?」

千早「何というわけでも……。ただ、歩いていただけですが」

P「ふーん。あ、景品の中で欲しいものあるか? 光るリストバンドとか、色々あるけど」

千早「特にありません」

P「そうか……。さっきからうちのアイドルを見かけるたびに配ってるんだけど、なかなか減らないんだよ」

P「本当にいらない? この、びよんびよん伸びるゴムボールとか」

千早「貰っても、どうしようもないので……」

P「食べものは? 何か食べた?」

千早「四条さんにたこ焼きを分けてもらいましたが、他には何も」

P「何も? なら一緒に買いに行こう、お腹空くだろ」

千早「いえ、結構です」

P「フランクフルトは?」

千早「いりません」

P「チョコバナナ」

千早「いりません」

P「かき氷」

千早「い……いりません」

P「よし、かき氷なら食べるのか。行こう千早」

千早「あ、あの、私はいらないと言っ……」

P「聞こえません」スタスタ

千早「聞こえ……!? ま、待ってください、プロデューサー!」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 19:40:30.11 ID:FwxwMl4C0

屋台のお兄さん「へいおまち。イチゴとメロンね」

P「どうも」

千早「…………」

P「千早、はい」

千早「……ありがとうございます」

P「あのさ、せっかくおめかししたのに、そんな顔することないだろう」

千早「これは仕事の格好では……」

P「桃子じゃないけど、楽しむのも仕事のうちだよ」

P「ほら、おいしいぞかき氷」

千早「はあ……」

千早「……プロデューサーは、真面目なのか適当なのか、わかりません」

P「そうか?」

千早「ライブの前ですよ?」

P「うーん、ライブの前だからこそだと思うけどなあ……今日の場合は」

P「それに、俺はいつも真面目だよ。超がつくほどにな!」

千早「…………」

P「あ、そういえばメロン味は舌が緑になるんだっけ。千早、俺の舌、緑になってる?」

千早「どこが真面目なんですか……」

P「え?」

千早「なんでもありません」

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 19:45:14.57 ID:FwxwMl4C0

P「んー……」

P「なんだか、さっきと比べてやけに冷たいな?」

千早「私は、そんなつもりは」

P「かき氷だけに」

千早「…………」

P「……」

千早「……」

P「……」ジッ

千早「……」フイッ

P「千早、もしかして」

千早「……はい?」

P「一緒に回ってくれる人がいなくて……拗ねてたり、する?」

千早「違います」

P「そう?」

千早「…………」

千早「……そう見えますか?」

P「なんとなく……ボーカルレッスンがダンスに変更になったときと同じ顔してるから」

千早「…………」

千早「……プロデューサーがそう言うのなら、そうなのかもしれません」

P「……へえ」

千早「以前のメンバーなら、私からも話しかけることができたのですが……その」

千早「新しく人が入って、また、皆の輪に加わりにくくなったのではないかと、自分では……」

P「…………」

P(千早、変わったなあ……)


P「……まあ、千早と一緒にいたい子は少なからずいると思うけど」

千早「?」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 19:54:55.07 ID:FwxwMl4C0

可奈「あっ、千早さーん!」パタパタ

千早「矢吹さん」

可奈「ここにいたんですねっ千早さん、やっと見つけました!」

可奈「プロデューサーさんも。二人で何してたんですか?」

P「かき氷食べてたんだ」

可奈「かき氷かー。いいな~、私も食べたいなー」

P「買ってやろうか?」

可奈「奢ってくれるんですか!?」

P「ああ」

可奈「やったっ、ありがとうございます! 嬉しくて歌っちゃう気分!」

可奈「イチゴにレモンにブルーハワイ~♪ お好きなシロップ選びなさい~♪」

千早「…………」

P「…………」

千早(メロディーの音が不自然にずれている……)

P(ボイスレッスンの量もっと増やすか……)

可奈「はれっ? 二人とも、どうし……あれあれっ? なんで私の周りから人がいなくなってるんですかね?」

P「もはやテロだな」

可奈「急になんですか物騒な!?」

千早「大丈夫よ。春香だって上達したんだから、あなただってきっと」

可奈「えっ? ええっ? 意味がよくわからないですけど貶されているような気が……」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 22:12:25.34 ID:FwxwMl4C0

P「ところで可奈、千早のこと探してたのか?」

可奈「へっ? あ、そうでした! 千早さんに言いたいことがあって」

千早「私に?」

可奈「はい! あの、ライブ頑張ってください! 私、観に行きますから!」

千早「ライブ……」

可奈「今日は千早さんのライブが生で見られると思うと、もう、そればっかり考えちゃって!」

千早「ふふっ、ありがとう。頑張るわ」

可奈「あっ、も、もちろん私だけじゃなくて、春香さんとか、みんなも言ってましたよ!」

可奈「それで、えーと、そ、その……」

千早「?」

可奈「よかったら、私と一緒に屋台を廻ってもらえないかなー、な、なんて……」

千早「……」

P「……」

千早「ええ、喜んで」

可奈「ホントですか!? やったー! やったやった屋っ台~♪」

千早「…………」

P「…………」

可奈「……なんですかその顔?」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 22:17:41.28 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………

「うふふ、あっちにもこっちにも子豚ちゃん達がひしめいていますね~♪」

「浴衣を着て、巾着を持ち歩く……これが大和撫子の風情、でしょうか?」

「縁日の飾りつけは、なんて豪華な……はっ、み、見とれてなどいませんわ!」



―――盆踊り会場


P(しばらく時間を潰して、そろそろライブの準備が始まりそうな頃合い)

P(盆踊り会場に併設されたライブステージに向かってみると……)

育「あっ、プロデューサーさん!」

桃子「やっと来たの? お兄ちゃん」

P「ごめんごめん、二人は早いな」

桃子「お兄ちゃんは桃子のプロデューサーなんだから、桃子より先に着いてないとダメだと思うな」

育「そうだよ、プロデューサーさん。桃子ちゃん、さっきから『お兄ちゃんまだかなあ』って、そればっかり言って」

桃子「そ、そんなには言ってないよ!」

P「待たせてごめんな。あ、そうそう、二人にこれをあげよう」ガサゴソ

桃子「リストバンド?」

育「わ、光ってる! きれい~! どこで買ったの?」

P「買ったというか、射的の景品だよ」

桃子「ふうん……お兄ちゃん、射的は上手いんだ?」

P「…………まあな!」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 22:22:12.82 ID:FwxwMl4C0

莉緒「ライブ会場はここだったかな? あ、いたいた」

海美「みんなおまたせ! 私の出番はまだだけどねっ!」

P「おう、海美は元気だな」

海美「夏祭りだもん、当然! あ~っもう早く踊りたいなー!」

育「わたしも、早く踊りたい! この日のために、たっくさん練習したんだから!」

P「はは、もうちょっと待ってな」

莉緒「うーん、二人とも、エネルギッシュね……若いっていいなあ……」

P「……そんなことばかり言ってるから、男が寄りつかないんじゃないのか」

莉緒「うっ」

P「まあ、寄りつかれても困るけど……」

莉緒「…………」

莉緒「……ねえ、それって、プロデューサーとして? それとも、プロデューサーくん個人的に?」

P「ええ? それは――」

桃子「プロデューサーとして」

P「……桃子?」

桃子「プロデューサーとして!」

P「あ、ああ……そうだけど、どうしたんだ桃子?」

桃子「…………」

莉緒「ふふ、冗談よ桃子ちゃん。おませさんなんだから」

桃子「……」プイ

莉緒(かわいいなぁこの子……)

育「?」

海美「?」

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 22:26:23.16 ID:FwxwMl4C0

あずさ「あら~? ここは……」

千早「はあ……」

あずさ「盆踊り会場みたいね~。みんなはもういるかしら?」

P「二人とも、こっちだぞー」

千早「プロデューサー……」

P「千早? 大丈夫か?」

育「千早さん、どうしたの? 疲れた顔してるよ?」

千早「大丈夫ですが……」

千早「その……あずささんと一緒に迷子になってしまって」

P「…………」

千早「入り口の方まで戻ってしまったときは、遅刻するかと……」

あずさ「ごめんなさい、千早ちゃん……私が近道をしようなんて言ったばっかりに」

千早「いえ、間に合ったんですから、気にしないでください」

莉緒(へえ……話には聞いていたけど、あずさの方向音痴って)

桃子(あの千早さんが一緒に迷っちゃうくらいなんだ……)

海美「んー……ストレッチでもして待ってようかなー……。あっ」

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 22:30:42.24 ID:FwxwMl4C0

響「おーい、みんなー!」タッタッ

環「わーい! 速いぞ速いぞー!」

いぬ美「ばうっ!」ダッダッ

育「あーっ、いぬ美ちゃんだー!」

響「っとと……到着! あー、走った走った!」

千早「……我那覇さん、履き物が脱げているけれど……」

響「えっ? あ、ホントだ! 千早、ありがとな!」

響「それで、ライブはまだ始まってないのか? じゃ、間に合ったんだね!」

P「もう間もなくだよ。……どうだ、準備はできてるか?」

響「もちろん、ばっちりさー! 見てプロデューサー」

P「これは……割り箸? チョコバナナでも食べたのか」

響「この割り箸で、太鼓を叩くイメージトレーニングもしたし! 準備は万端!」

P「……それは心強いな」

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 22:35:49.59 ID:FwxwMl4C0

環「おやぶん!」

P「うん?」

環「くふふ、おやぶんにこれあげるっ! つけてみて!」

P「何だこれ……何のお面だ」

環「いいから、つけてつけて!」

P「つければいいのか? わかったよ……」スチャ

桃子「……っ」

海美「ぶふっ!」

千早「くふっ」

育「っ!」

環「あはははは!」

P「……え、え?」

P「……もしかして俺はまた笑われてるのか? 何がおかしいんだ?」

あずさ「プロデューサーさん、その、お面の種類がですね~……」

環「戦隊ヒーローの敵で出てくる、悪い顔のひょっとこだぞ! おやぶんに似合うと思って!」

千早「ふふっ、くっ、……! はっ……はっ、早く、そ、それを外し……ふふふふふっ」

莉緒「あらら、千早ちゃんがツボっちゃったわね」

P「なんなんだよ……」



律子「プロデューサー、ステージの最終設営が終わったそうです。私たちも入りましょう」

P「ああ、律子、ありがとう」

律子「…………」

P「……律子?」

律子「……それはウケ狙いですか? さすがに二度目は面白くないと思いますけど……」

P「違うぞ!?」

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 22:55:59.51 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


―――特設ステージ


P「……と、いうわけで」

莉緒「いよいよライブねぇ……うん、やっぱりこうじゃないと」

千早「全力を尽くします」

桃子「桃子の本領、みんなに思い知らせてあげる!」

育「みんな、がんばって!」

海美「う~っ、私まで今すぐにでも飛び出しちゃいそうだよー!」

あずさ「私たちも、準備しておくわね~」

P「天気よし、調子よし、お客さんの集まりも上々」

P「ベストコンディションだ。みんな、楽しんで歌っておいで」

桃子「うん!」

千早「はい!」

莉緒「わかった!」

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:01:53.11 ID:FwxwMl4C0


『こんばんは、皆さん! お祭り、楽しんでますか!?』


『でも、楽しむのはまだまだこれから! 今年の夏祭りは一味違うよ!』


『私たちのライブで、もっともっと盛り上げちゃうから……みんな、ついてきてね!』



P「……はあー」

律子「? どうしました?」

P「ん、いや……つくづく、うちのアイドルは粒ぞろいだと思って」

律子「あー……、ですね、魅力的な子たちがこれでもかってくらい入ってきて……」

P「知名度じゃまだまだだけど、きっとあの子たちの魅力に気づいてくれるファンがいるはずだ」

律子「ええ」

P「俺たちも頑張らないとなー……」

律子「ねー……」

律子「みんなの花、きちんと咲かせてあげましょうね、プロデューサー殿」

P「ああ」

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:03:18.04 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


『聴いてくれて、ありがとーっ!』


『765プロ特別ユニットによるライブ、楽しんでもらえたかな?』


『それでは、ここからはお待ちかね、盆踊りの時間です! 我那覇さん!』


『はいさーいっ!』

『みんな、自分がどこにいるかわかるかー?』


『――そう! ここだぞっ!』ドドン!


『太鼓は自分! 曲のスイッチはハム蔵! 盆踊りの演奏は自分たちに任せてね!』


『と、その前に……育!』ドンッ!

『はいっ!』


『あずさ!』ドンッ!

『は~い』


『海美!』ドンッ!

『はーいっ!』


『皆さんこんにちは! わたしのことが見えますかー?』


『始まる前に、みんなで盆踊りの練習をしてみましょう~』


『私たちがお手本を踊ってみせるから、がんばって覚えてね! いっくよー――』

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:04:26.80 ID:FwxwMl4C0

千早「…………」

桃子「ハァ~疲れた……」

莉緒「結構体力使ったわね……」

P「お疲れさま、三人とも。いい出来だったぞ」

千早「プロデューサー、お茶か何か、いただけますか?」

P「はいどうぞ」

千早「ありがとうございます」

桃子「桃子はラムネがいいな」

P「言うと思った。ほら」

桃子「桃子の気持ちがわかってるなんて、お兄ちゃん、さすがだね」

P「どういたしまして。莉緒はどうする?」

莉緒「うーん、そうねぇ」

莉緒「……さっきの生ビールが頭から離れないのよね、私」

P「…………っとに……今回だけだぞ」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:09:41.92 ID:FwxwMl4C0

『うんうん、その調子! よくできました!』


『それじゃ、だいたいみんなができたところで……響!』


『盆踊りの始まりさー!』ドンッドン!


  ♪~

P「……お、始まったみたいだな」

莉緒「このメロディ……いいわね、これぞ夏祭りって感じ。さ、私たちも行ってきましょう」

桃子「みんな、踊ってるみたいだね。桃子も行こうっと」

千早「……」

P「行くぞ、千早」

千早「ま、待ってください。あの、私、踊れないのですが……」

P「気にするな」

千早「気に……!? いや、ですから……」

P「踊れるかどうかなんて気にするな。お祭りなんだし」

P「……それに、俺だって踊れないしな。でも適当に手を上に下にやってれば何とかなるよ」

P「さ、行くぞ」

千早「……ふふっ。やっぱり、適当じゃないですか」

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:10:36.22 ID:FwxwMl4C0

  ♪~
          ♪~

海美「いよ~っと! ……あー、盆踊りって気持ちいい! おっ、プロデューサーもなかなか上手だね~」

P「……やめてくれ。下手なのはわかってるんだ」

海美「あははは! よし、一緒に踊ろ! ほーら、もっとくっついてっ!」

桃子「こうして、こう。同じことを繰りかえすだけだよ」

千早「え、ええと……こうして、こう……」

あずさ「そ~れそれ♪ 千早ちゃん、その調子よ~」

環「よいさっ、よいさっ♪」

いぬ美「わう」

育「環ちゃんも、いぬ美ちゃんも、上手だね!」

律子「え、犬……?」

未来「おっと、律子さん、手が止まってますよ~?」

    ♪~     
            ♪~…………

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:23:43.19 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


 ヒュ~~~~~~~
            ドドォン……


育「!」

あずさ「あらあら~」

環「花火だ!」

P「始まったかー……」

律子「片付けも終わりましたし、時間通りですね」

海美「よーし、近くまで行ってくる!」ダッ

響「自分も行くぞ!」ダッ

律子「あっ、また走って……! 待ちなさーい!」ダッ

P「さっきまで踊ってたってのに、元気余ってるなあ」

桃子「どこに行けば、一番よく見えるかな」

千早「打ち上げている場所は、向こうの川の中州だから……」

莉緒「川岸まで行ってみる?」

   ワイワイ ゾロゾロ



P(さて……みんな行ったかな? それじゃ、俺も……)

育(…………)

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:28:04.98 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


 ドォン……   ドドォン……


   ガサガサ

P「……お、予想通り。よく見えるなあ」


あずさ「プロデューサーさん」

P「あれ、あずさ、いたのか。一人か?」

あずさ「はい」

P「どうしてこんなところに……俺みたいに茂みを抜けないと来られないだろう、ここ」

あずさ「それが、自分でもよく分からなくて……」

あずさ「みんなのあとを追って川を目指していたら、いつの間にかこんな場所まで」

P「…………」

あずさ「でも、花火はよく見えますから、ここでもいいかな~と思って……プロデューサーさんも、座ります?」

P「ああ、失礼します」

あずさ「はい、どうぞ~」

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:29:07.46 ID:FwxwMl4C0

 ドドォン……

あずさ「迫力がありますね、花火……」

P「ああ……」

 ドォン……

あずさ「こんなに大きいと、私たちの上に降ってきちゃいそうですね……」

P「そうだなー……」

 ボォン……

あずさ「……」

P「……」

P「……この大きさの花火をあげるのに、いくらかかるんだろう」

あずさ「え?」

P「数百は下らないかなぁ……さすがに事務所主催でやるには無理があるか。いいイベントなんだけどなぁ……」

あずさ「…………」

あずさ「……」プクー

P「……あれ? あずさ、ほっぺた腫れてるけど……もしかしておたふくに」

あずさ「違いますっ。……もう」

あずさ「いいですか? プロデューサーさん」

あずさ「プロデューサーさんがお仕事熱心なのは、プロデューサーさんのステキなところです」

P「は、はあ……」

あずさ「でも、今だけはステキじゃありません」

あずさ「せっかく二人っきりでいるんですから……」

P「……ごめんなさい、情緒がありませんでした」

あずさ「わかってくれたらいいです」

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:30:45.14 ID:FwxwMl4C0

あずさ「……」

P「……」

あずさ「…………」

P「…………」

P(やらかした。気まずい……どうしたもんだろう)チラッ

あずさ「……」

P「……あっ。なあ、あずさ」

あずさ「はい?」

P「その浴衣、今日のために新しく買ったものじゃないか?」

あずさ「えっ……わ、わかるんですか?」

P「わかるというか……」

あずさ「あ、あの、プロデューサーさん」

P「うん?」

あずさ「その~、私の浴衣姿、どう思いますか? 一度、お聞きしたくって……」

P「よく似合ってると思うよ。そういう落ちついた柄の浴衣は、あずさが着るのが一番だな」

あずさ「あら、そうですか~。うふふっ」

P(わかりやすい……)

あずさ「それにしても、よくこの浴衣が新品だっておわかりになりましたね? やっぱり、いつも衣装を扱うから……」

P「ああ、いや、そういうのじゃなくて」

あずさ「?」

P「ほら、ここに値札付いてるから」

あずさ「え、ええっ!?」

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:31:39.25 ID:FwxwMl4C0

あずさ「……」

P「……」

あずさ「…………」

P「…………」

あずさ「………………」

P「………………」

P(またやらかした。空気が重い……どうしよう)

P「あの……えーと、あずささん?」

あずさ「……はい?」

P「ま、まあ、相手は俺なんだし、まだよかったじゃないか。そんなに気に病むことは……」

あずさ「…………」

あずさ(逆です……プロデューサーさん)

P(うつむいちゃったよ……どうしよう本当に)

あずさ「……」

P「……」

あずさ「…………」

P「…………」

P「……あずさ」

あずさ「……はい?」

P「立って」

あずさ「え?」

P「もう少し川の方、ギリギリまで行ってみよう。はい、立って」スッ

あずさ「は、はい……」

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:32:40.61 ID:FwxwMl4C0

  ドドォン……
               ドン ドン ドォン……

あずさ「……」

P「……」

あずさ「…………」

P「…………」

あずさ「……真上、ですね」

P「まるでなあ」

あずさ「……」

P「さっきよりもずっと近くて……本当に降ってきそうだよな」

あずさ「プロデューサーさん?」

P「何でしょう?」

あずさ「見上げすぎて、首が痛くなってきませんか?」

P「なってきた」

あずさ「でも、見上げていないと見えないですよね~」

P「そうだな……」

あずさ「ふふっ、綺麗ですね……」

P「ああ、本当に……」


桃子&育「「綺麗だねー」」


P「わっ!?」

あずさ「えっ!?」

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:33:22.97 ID:FwxwMl4C0

P「も、桃子と育、いつの間にこんなところに……?」

桃子「お兄ちゃんこそ、こんなところで何してるの? ……あずささんと、二人で」

あずさ「あ、あらあら」

育「わたし、プロデューサーさんだけ来ないから、どうしたのかなってちょっと心配してたのに……」

育「……みんなに内緒で、あずささんとデートしようとしてたんだ。ふーん、そうなんだー」

P「ちょっ、結果的にそうなってるけど、それは誤解……」

桃子「それに、……別にいいけど、桃子の浴衣のことは特に褒めてくれなかったよね?」

育「わたしの浴衣も!」

あずさ「あらあらまぁ……」

P「いや、その、人数多いからさ……き、聞かれれば答えたって」


莉緒「あら、それなら、私の浴衣姿はどうかしら、プロデューサーくん?」


P「!?」

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:38:04.23 ID:FwxwMl4C0

響「見て! 自分の浴衣は、沖縄風にしてあるんだ!」

未来「私の浴衣はどうですか? プロデューサーさん♪」

海美「ほらほら、私のも、これぞお祭りっ! って感じでしょ?」

環「おやぶーん! たまきたちも浴衣だぞっ!」

千早「わっ、ひ、引っ張らないで、私は別に……」

P「どこから出てきたんだみんな、って押すな、待ってくれ、一人ずつにしてくれ!」

 「プロデューサーさんっ! とびっきりの浴衣ですよ、浴衣!」

  「ボクも今日はお洒落してきました!」

   「プロデューサー、私のことも見てくださいっ!」



律子「……賑やかねぇ」

貴音「ええ、真に」

律子「育が『きんきゅうじたい!』って言うから、何かと思えば……」

貴音「……律子は行かなくともよいのですか?」

律子「い、行くわけないでしょ!? どうして私がわざわざプロデューサーに浴衣を褒めてもらいに」

貴音「ふふっ、伊織に似てきましたね、律子」

律子「なっ……」



   「プロデューサー!」

  「おやぶん!」

 「仕掛け人さま!」

P「ああ、もう! 好き勝手言ってくれるな!」

P「だいたいみんなだって、誰も俺の浴衣を褒めてくれなかっただろ!!」

52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:38:53.94 ID:FwxwMl4C0

 ――シーン……





育「……プロデューサーさん、褒めてほしかったの?」

P「そういうことでもないけど……」



桃子「お兄ちゃんの浴衣、かわいいよ」

千早「対象年齢は合っていないと思いますが、そう悪くはないかと」

莉緒「うん、かわいいかわいい♪」

P「だから、そうじゃなくって……!」

 ヤイノヤイノ



律子「今年も賑やかねぇ……」

あずさ「あらあらまぁまぁ……」

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/19(金) 23:40:50.31 ID:FwxwMl4C0

 ………………………… ◇ …………………………


―――屋台通り


小鳥「うーん、こういうところで飲む一杯もなかなかだわ~」

まつり「夏祭りに、まつりの出番がないなんて……あんびりーばぼーなのです……」

早苗「ぷっはァ~っ! うるさい彼がいないうちに、もう一杯!」

屋台のお姉さん(なんだこの人たち……)



 おわり