1: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 21:54:16.66 ID:dARErU8o0
・MGSとTRICKのクロスです

・オリジナルキャラが数人登場しますので、苦手な方は注意

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1374584056

引用元: スネーク「なぜベストを尽くさないのか」 

 

2: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 21:57:06.37 ID:dARErU8o0
オタコン「スネーク、ちょっといいかい?」

スネーク「どうしたんだ」

オタコン「実は、ノーマッドのエンジンが不調でね‥何処かに降り立って点検しなきゃならない」

スネーク「おいおい、これから任務に赴こうって時にいきなりの災難だな。それで、飛行場にでも立ち寄るのか?」

オタコン「それがベストなんだけど、生憎近場にこいつを整備できるだけの施設が無い。
     だから何処かの無人島にこっそり降り立って、僕と君とで対処しようと思う」

スネーク「このデカイ機体を下ろせるだけの開けた島があるのか?」

オタコン「日本のオキナワってところに丁度良さそうな無人島を見つけたから、そこに降りるよ」

3: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:01:01.43 ID:dARErU8o0
スネーク「人の手が全く入っていないな。見渡す限り水平線が続いている、辺鄙な所だ」

オタコン「だからこそ人目を気にせずノーマッドを下ろせたわけだけどね」

スネーク「! オタコン‥どうやら此処は、無人島じゃなさそうだぞ」


島民A「何だぁありゃあ」

島民B「でっけぇ飛行機が……」

島民C「あれ、外人じゃないか」


オタコン「えっ!? そんなバカな、ちゃんと調べたのに……」

スネーク「‥嫌な予感がするな」

4: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:04:17.77 ID:dARErU8o0
スネーク(老人がこちらに近付いてくる)

???「は‥はーい、はーあーゆー?」

サニー「?」

スネーク「‥日本語なら話せる」

???「しゃ、しゃべったぁぁぁぁぁ!!」ガクガク

島民C「長老(オサ)、気を確かに!」

スネーク「話しかけといてそれはないだろう」

5: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:07:59.36 ID:dARErU8o0
長老「失礼‥わしは黒津という者だ。アンタらは何もんだ?」

オタコン「僕はエメリッヒといいます。僕達は‥ボランティア団体として世界中の紛争地域を回っています」

長老「ほー、ボランティア。それはそれは。あぁ、他の奴等も紹介しとこうかね。
   隣にいる島民Aがわしの息子で長男の大(ひろし)」

大「うす」

長老「その隣の島民Bが次男の中(あたる)」

中「うす」

長老「そしてその隣の島民Cが脱サラリーマン・小暮さんだ」

小暮「うす」

スネーク・オタコン「!?」

6: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:12:31.86 ID:dARErU8o0
長老「その飛行機を修理するまでの間、ここに居させてほしいというわけか」

オタコン「はい。すぐに終えますから、決して皆さんの邪魔はしません」

大「本当だろうな?」

オタコン「えぇ、約束します(敵対心丸出しの目だなぁ……)」

小暮「長老、どうしましょう」

長老「‥お前達、食いものは自分で何とかできるか?」

オタコン「備蓄はありますから、その点は大丈夫です」

長老「なら修理が終わるまではゆっくりしていいが‥あまり島の中をうろつかない方が良い。よそ者じゃ怪我をする」

7: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:15:32.75 ID:dARErU8o0
スネーク「何とも胡散臭い島を探り当てたもんだな、オタコン」

オタコン「あの人達、ずっと僕らをじろじろ見てて気味が悪かったよ」

スネーク「無人島扱いの島に住む、奇妙な男達……何も起こらなければいいが」

8: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:20:00.83 ID:dARErU8o0
―この出来事より少し遡って……日本科学技術大学―

   コンコンコンッ

次郎「はい、こちらは『どん超』や『なぜベス』でお馴染み、天才物理学者上田次郎の研究室ですが」

???「あの、私、先生のご本を読んで、ぜひとも先生のお力を貸してほしいなと思って、やって来ました」

次郎「(むっ、若い女性の声)そうですか。ではお話を伺いましょう。どうぞお入りください」

   ガチャッ

美女「はじめまして、上田先生」

次郎「おぉうっ……!」

9: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:24:21.12 ID:dARErU8o0
次郎「“開かずの岩戸”?」

美女「はい。私の生まれ故郷にある、小さな一枚岩の事です」

美女「その一枚岩の奥には、私の故郷の命運を左右するほどの物が眠っているそうなんですが‥
   昔の人の手によって扉に封印がされていて、中を見た人は誰もいません」

次郎「封印……そこまでしてあるという事は、中にあるのはその‥危険な物かもしれませんよね?」

美女「そうかもしれないんですけど‥その一枚岩がある土地を整備することになったみたいで、
   どうしても中を確かめないとダメなんです」

美女「だけど私達じゃ封印がどうしても解けなくて……そんな時に思い出したんです、先生の『どんと来い超常現象』!」

美女「そしてティンと来たんです! 先生ならきっと封印の暗号を解いてくれるって!」

次郎「暗号‥あー、いやぁ、私の専攻はその、物理学でして」

美女「ダメでしょうか……?」ウルウル

次郎「とんでもない。この上田次郎にお任せあーれ! はっはっは!」

10: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:28:31.28 ID:dARErU8o0
―エコメゾン池田荘―

ハル「山田ァ! いるのはわかってるんだよォ! 先月と先々月の家賃、今日~こそ払ってもらうからねェ!」

ジャーミー「ヤイ、貧 ヤイ! オトナシク出テコイ!」

奈緒子(開けちゃだめだ開けちゃだめだ開けちゃだめだ……)

次郎「何やら騒がしいですね」

ハル「あらっ、先せ~い! いやだわぁ~お見苦しいところを!」

次郎「おおかた山田が先月と先々月の家賃を滞納しているんでしょう。いやはや、こいつと知人なのが恥ずかしい」

次郎「ですがそこは私、上田次郎。二つの意味で懐が貧しい知人の為に、立て替えてやりましょう」

ハル「あらまっ! 先生太っ腹ねェ~!」

11: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:33:04.56 ID:dARErU8o0
奈緒子「‥いったい何のつもりだ」

次郎「別に。あのままではお隣さんへの騒音問題になると危惧しただけだ」

次郎「ときにユー、『開かずの岩戸』って知ってるか?」

奈緒子「ほら来た。やっぱりいかがわしい依頼絡みじゃないか」

次郎「一人の女性がわざわざ俺の元まで遠路はるばるやってきたんだ。見過ごすなんて出来ないだろう」

奈緒子「どうせその女性が美人だったんでしょう? とにかく、もうその手の厄介事をもってくるのは」

次郎「ヤイ、貧 ヤイ!」

奈緒子「んなっ!」

次郎「まぁどうしても手伝えないというなら仕方ないが、その場合は俺が立て替えた家賃を今ここで払ってもらおうか」

奈緒子「……出世払い」

次郎「駄目だ」

12: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:38:03.05 ID:dARErU8o0
―翌朝―

美女「お待ちしてました先生! あら‥お隣の女性は誰ですか?」

次郎「これですか。こいつは1980番目の助手の山田です」

奈緒子「イチキュッパ‥お買い得感が否めないな」

美女「私の故郷まではこの船で行きます。あ、これ酔い止めドリンクです。お二人ともどうぞ」

次郎「これはどうも。……おや? 貴女は飲まないのですか?」

美女「あ、私は用事があって、ご一緒できないんです」

次郎「な……ジーザスっ!」

美女「代わりに島民D~Fがご一緒しますから、安心してください」

島民D~F「「「うす」」」

13: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:44:26.09 ID:dARErU8o0
美女「それじゃあ、いってらっしゃーい」

   ~~~

奈緒子「ねぇ、上田さん」

次郎「ホームシックか? 早いぞ」

奈緒子「違います! ‥ふと気になったんですけど、
    さっきの女の人、どうして“私の分のドリンク”まで用意できてたんでしょう」

奈緒子「あの人には、私が一緒に行くってこと、伝えてませんでしたよね?」

次郎「それは……二つの味を用意しておいたんだよ。グレープフルーツ味と、何か味を」

奈緒子「私と上田さんが飲んだの、どっちもグレープフルーツ味って書いてありました」

次郎「‥疑問に思ったというのに何故一気飲みしてたんだ」

奈緒子「だってタダで貰ったのに飲まないなんてもったいないし」

14: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:49:50.36 ID:dARErU8o0
次郎「ユーの気にし過ぎだ……フア~ァ」

奈緒子「情けないあくび……フア~ァ。むぅ‥なんか‥すごい、ねむ……」

次郎「酔い止めの、副作用‥だろ……」

次郎「zzz……」

奈緒子「zzz……むあ、金さん……そこは地雷原……」

島民D~F「「「……」」」ニヤリ

15: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:53:33.25 ID:dARErU8o0
   「……ろ……きろ……」

奈緒子「zzz……黄門様……ギリースーツ……」

長老「起きろ!!」

奈緒子「にゃむっ!? ……あれ、ここはどこだ?」

長老「おはようさん」

奈緒子「あ、あれ!? いつの間にか縛り上げられてるしっ!」

次郎「やっと起きたか、寝汚い貧 め」

奈緒子「‥同じく縛り上げられてるじゃないか、でくの巨棒」

長老「よぉ~こそ、山田奈緒子。いんや、カミヌーリ!」

16: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 22:57:37.20 ID:dARErU8o0
奈緒子「!? まさか、黒門島の人間……?」

長老「わし等は黒津の人間‥といっても分家も分家、末端だがね」

奈緒子「‥最初っから私を拉致る為に上田さんに近付いたんだな」

長老「いやいや、上田先生にも力を貸してほしいから二人とも引っ張ってきたんだよ」

長老「美女から話は聞いてるだろう、開かずの岩戸と、その封印。
   わし等がどれだけ頭をひねっても開かなかった封印だ。東京のエラーイ学者先生の頭なら、開くかもしれない」

次郎「HAHAHA、それほどでもありますん」

奈緒子「この状況でなに天狗になってんだ。‥てゆーかそれならコイツだけ連れてくればよかっただろ。何で私まで」

長老「お前はカミヌーリの血族。いざという時は何かの力になるかもしれないでしょーよ」

奈緒子「……そんな力なんて、あるはずない。この世に、霊能力なんて存在しない」

長老「なら頭を使って暗号を解いてもらおうか。それまでは、じぇじぇじぇじぇ~ったいに帰さないからな」

17: ◆GmgU93SCyE 2013/07/23(火) 23:01:15.57 ID:dARErU8o0
奈緒子「上田さん、隙を突いてこいつらをボコボコにできませんか?」ヒソヒソ

次郎「ふん、その位なら元素記号をそらんじながらでも出来る」ヒソヒソ

大「おい、逃げようなんて思うなよ? 島のあちこちにはいろーんなトラップをしかけてあるんだ」

中「島から逃げる為の船だって、武装した島民D~“F”が常に見張ってる」

小暮「もしもトラップに引っかかったら『痛い』じゃ済まないぞ?」

奈緒子「それってどのくらいヤバいんだ。分かりやすく例えろ」

小暮「残機は常に0、一発食らえば即ゲームオーバー」

奈緒子「オワター!」

24: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 17:25:51.32 ID:I3qsmqLV0
奈緒子「これが“開かずの岩戸”‥すぐ傍の滝が雰囲気かもしてて、なかなか雅だな」

次郎「大きさはユーと同じくらいか」

長老「岩戸の前に石碑があるだろう。それが封印の要だ」

奈緒子「変わった形してますね。こういうの何て言うんですっけ、ニャンちゅう?」

次郎「三角柱だ。何々……」

 『滝清浄にして
  忍び難きは水底の石
  瞬き此の世に落ち
  望むは得難き光
  鬼神は飢えた利き駒と
  只有り難き星霜を偲ぶ

  天と向かいし刃に浮かぶは
  鬼神の声なき言霊』

奈緒子「‥たつあおそうにして」

次郎「わざとやってるだろ」

長老「この暗号を解けば、わし等は素晴らしい力を得る事ができる……」

奈緒子「素晴らしい力?」

長老「この奥には‥かつて黒津家の人間が隠したという、“古代兵器”が眠っているんだ」

25: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 17:29:08.02 ID:I3qsmqLV0
次郎「古代兵器!? そんな、あの美女はそんなこと一言も」

大「彼女はなーんも知んねぇさぁ。お前達をおびき寄せる為だけに雇った、昨年度のミス・もち米だもの」

奈緒子「何だそりゃ」

次郎「もっちりとした白い肌を持つ人だと思ったら、成る程、そういう事だったのか」

奈緒子「納得すんな、おい」

長老「黒津本家から盗んだ密書によれば、ここがその兵器が眠る秘密の地」

奈緒子「小島に封印された代物って‥“神の象の像”じゃあるまいし、どうしてこう封印したがるんだ」

中「“神の象の像”の一件で分家の大半が自滅してくれたおかげで、今こうして俺達が堂々と動けるのよ」

長老「カミヌーリ無き黒津本家が衰退し、分家の大半も勢力を無くした今、
   長年分家の末席に名を連ねていた我が一家が、いよいよ登りつめる……」

長老・大・中「「「エヘヘヘヘ!!」」」

小暮「ヌルフフフ」

奈緒子・次郎「!?」

26: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 17:33:53.97 ID:I3qsmqLV0
―そして現在―

スネーク「エンジンの様子はどうだ、オタコン」

オタコン「一部のパーツが劣化してたみたいだね。予備のパーツがあるから、交換すればすぐ動かせるよ」

スネーク「そうか。ならここに長居する必要は無いな」

サニー「ハル兄さん、スネーク‥焼けたよ」つ目玉焼き

スネーク「ん、あぁ……」

スネーク「‥サニー、たまには違うものを調理してみないか?」

サニー「えっ?」

スネーク「これほどの自然があるなら、人が食える植物も自生してるはずだ。俺が取ってきてやろう」

サニー「ほんと……? 野菜や、果物もある?」

スネーク「探せばあるだろう。今から取ってくる。直ぐに戻るさ」イソイソ

オタコン(ずるい、目玉焼きから逃げた!)

27: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 17:36:26.09 ID:I3qsmqLV0
スネーク(……何なんだこの島は)

スネーク(食い物を求めてあちこちを彷徨ったら、次から次へとトラップが出てきた。
     警戒心の表れか‥もしくはこの島から何かを逃がさないよう閉じ込める為か……)

スネーク(プレイボーイを拾おうとしてクレイモアが目に入った時は、流石に肝が冷えたぞ)

スネーク「ん? 何だアレは‥櫓?」

   コンコンコンッカリカリカリッコンコンコンッ……コンコンコンッカリカリカリッコンコンコンッ……

スネーク(櫓に誰か居るのか? 木の板を叩く音と引っかく音が、絶え間なく聞こえる)

   コンコンコンッカリカリカリッコンコンコンッ……

スネーク(もしやこれは‥モールス信号か!? 3短点、3長点、3短点と考えれば、“SOS”のサインだ)

28: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 17:41:00.46 ID:I3qsmqLV0
―櫓の中―

次郎「暗号が解けるまで、ユーと一つ屋根の下に監禁か」

奈緒子「大声出しますよ」

次郎「何もしてないだろ! そもそもユーなど俺のアウトオブ眼中だ」

奈緒子「ここ、風呂トイレ別なのにテレビは無いって、これじゃ暴れん坊将軍も見られないじゃないか」

次郎「無視か。ならば俺も無視を決め込んでモールス信号で遊ぶとしよう」

 コンコンコンッカリカリカリッコンコンコンッ コンコンコンッカリカリカリッコンコンコンッ

奈緒子「うるさいなー、キツツキの真似とか寂しい一人遊びですね‥って誰がアウトオブ眼中だ!」

次郎「遅い! あと寂しくなんかない!」

29: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 17:48:33.03 ID:I3qsmqLV0
奈緒子「‥上田さん、格闘においては優れてますよね。頑丈だし」

次郎「格闘において“も”な。それがどうした」コンコンコンッカリカリカリッコンコンコンッ

奈緒子「周りはトラップばかりですけど‥上田さん一人なら逃げ出せるんじゃないかな、って、思っただけです」

次郎「……はぁ。まただな」

次郎「黒門島や黒津絡みとなるとすぐに焦る。ここに非力で無智なユーを一人置いていけば、
   慈悲深い俺の夢見が悪くなる様な鬱展開になるに決まっているだろ」

奈緒子「何をさりげなく失礼なこと言」

次郎「少しは俺を頼ってみろ。この、超ド級天才物理学者、上田次郎が目に入らぬか!」

奈緒子「……」

奈緒子「わ、私を跪かせたいなら、葵の御紋を持ってこい! それまでは……しょうがないから傍においてやる!」

次郎「‥ふん」コンコンコンッカリカリカリッコンコンコンッ

奈緒子「かっこつけながらキツツキの真似再開しないでください」

次郎「だから違う!」

30: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 17:52:51.05 ID:I3qsmqLV0
   コンコンッ

次郎「ん?」

???「救難信号を受け取った」

奈緒子「な、何奴!? 名を名乗れ!」

スネーク「‥スネークとでも言っておこう。お前は何者だ」

奈緒子「私は世界的マジシャンの山田だ」

次郎「おい」

スネーク「(男女二人の声……)世界的マジシャンとやらが、何故こんな所に居る」

奈緒子「兵器がどうのこうの言うジジイどもに拉致された」

スネーク「兵器だと?」

奈緒子「なんかこの島にはなまらすごい兵器が眠ってるとかジジイが寝言をほざいていたな」

次郎「おいユー、そんな突拍子もない言い方じゃ頭のおかしい奴と思われるだろうが」

スネーク「……詳しく話を聞こう」

次郎「何・・・だと…!?」

31: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:00:09.00 ID:I3qsmqLV0
スネーク「あの長老‥腹に一物あったわけか」

奈緒子「は、腹の中に、いちもつ……!?」

次郎「言っておくが、この場合の一物は“企み”という意味だぞ」

スネーク「‥大学教授の上田が連れてこられるのは分かるが、山田が連れて来られたのは何故だ?
     どう見ても売れないマジシャンにしか見えないぞ」

奈緒子「失敬な! 売れてないんじゃなくて、その……まだスカウトが来てないだけだ!」

次郎「みっともない見栄を張るこいつに代わって私が説明しましょう。
   貴方が会った黒津家の人間は、沖縄の黒門島という島に住んでいる一族で、山田とは遠い親戚に当たります。
   黒門島にはかつて“カミヌーリ”と呼ばれるシャーマンがいて、コイツのお母様はそのカミヌーリだった。
   しかしお母様は島の人間が決めた婚約者ではなく、島の外の人間と恋に落ち、駆け落ちをした。
   カミヌーリの力を信じている島の連中は、事ある毎にカミヌーリの血を引くコイツに島の厄介事を押し付けに来る
   ‥という感じです」

スネーク「アンタ“も”厄介な因果を背負ってるもんだな」

奈緒子「も?」

スネーク「いや、何でもない」

32: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:07:15.75 ID:I3qsmqLV0
スネーク「兵器を封印している暗号とやらは、どんなものなんだ」

次郎「それならメモを取っていますよ。これです」

スネーク「……ふむ」

奈緒子「分かるんですか?」

スネーク「さっぱり分からない」

奈緒子「大したことないなお前」

次郎「おい」

スネーク「……」ジーッ

奈緒子「な、何ですか」

スネーク「大したことないな」フンッ

奈緒子「何がじゃっ!!」

33: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:13:21.30 ID:I3qsmqLV0
スネーク「謎解きは後にして、ひとまずここから脱出するぞ」

次郎「しかし、この櫓の周囲にはいくつものトラップが……ん?」

奈緒子「トラップだらけのここに、どうやって無傷でやって来れたんですか?」

スネーク「回避は俺の得意分野だ」

スネーク「お前達は俺の後に続いて歩け。俺の通る道はそれらのトラップが解除されている」

スネーク「だが、そこ以外はトラップの地雷原‥万が一遅れたり、はぐれたりした場合は置いていく。いいな?」

次郎「‥分かりました(有無を言わせぬ迫力だ……)」

34: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:17:52.90 ID:I3qsmqLV0
―約1時間後―

大「おい出て来い! 外人ども!!」

スネーク「何だ」

大「お前等‥島の中心部に踏み込んだか?」

スネーク「いいや。『余所者じゃ怪我をするぞ』と忠告されたからな」

中「なら、俺達以外の人間を見かけなかったか? のっぽの男と貧 の女だ」

スネーク「そんな人間は見ていない」

中「……お前達の飛行機の中を見せてもらおうか」

スネーク「そののっぽと貧 を探してるのか?」

大「アンタには関係ねぇ。けど後ろめたい事が無いなら、『見せられない』なんて言わないよなぁ?」

スネーク「‥いいだろう。気が済むまで見ていけばいい」

35: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:23:48.62 ID:I3qsmqLV0
大・中「「な、何じゃこりゃあ……」」

スネーク「どうした、飛行機は初めてか?」

大「馬鹿にすんな! 中学の修学旅行で鹿児島まで飛んだことあるんだぞ!」

サニー「ハル兄さん……」

オタコン「大丈夫だよ。すぐに終わるさ」

   ~~~

大「どうだ、中」

中「ダメだぁ。シーサー一匹いやしねぇ」

スネーク「満足したか?」

大「……行くぞ中」

中「……うす」

36: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:28:44.38 ID:I3qsmqLV0
スネーク「‥行ったな。おい、もういいぞ」


   「……すりすりすりすりすりすりスリットォッ!」


奈緒子「ぶはーっ、やっと出て行ったか」

スネーク「何だ今の掛け声は」

奈緒子「ん? 儀式、かな?」

次郎「ステルス迷彩……研究所にひとつ欲しい」

スネーク「それはやらんぞ。前に苦労して手に入れたクリアボーナスだからな」

37: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:34:16.45 ID:I3qsmqLV0
オタコン「ノーマッドに乗り込んでくるとは。油断ならない連中だね」

奈緒子「いざとなればコイツを囮にして逃げれば大丈夫です」

次郎「おい!」

オタコン「暫くはノーマッドに寝泊りするといい。狭く感じるかもしれないけど、外よりかは安全だ」

次郎「感謝します、ハル・エメリッヒ博士」

奈緒子「!」ビクッ

次郎「ところで“ハル”・エメリッヒ博士、メタルギアMk.IIとやらはもう岩戸に着きましたか“ハル”・エメリッヒ博士」

奈緒子「は、はる‥さん……」

オタコン「上田教授、その‥何で執拗にフルネームで僕を呼ぶんだい?」

次郎「ああ、いやいや何でも。なー山田ァ」

奈緒子「こいつ……」

38: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:39:50.28 ID:I3qsmqLV0
オタコン「Mk.IIが目的地に到着した。これが例の石碑だね」

スネーク「どうだ、石碑に何か変わった点はないか?」

オタコン「……赤外線センサーでは変化なし。磁場の乱れといったのも観測出来ない」

奈緒子「エメリッヒさん、そんなの分かるんですか」

オタコン「一応これでも科学者の端くれだからね」

奈緒子「この物理学者の端くれと変わってほしい」

次郎「博士、こいつの言う事はお気になさらずに。口汚くて卑しい貧乏人のたわ言ですから」

奈緒子「何でそこまで言われなくちゃならないんですかっ」

次郎「自分の胸に手を当てて考え‥おっと、ユーには触れるだけの胸が無かった」

奈緒子「ムッカー……あ、あんな所に清楚系 女が!」

次郎「何っ、清楚なのに 女だと!?」

奈緒子「隙ありゃっ!!」キック!!

次郎「うぉうっ……!!」コカーン!!

スネーク(この女、躊躇いも無く金的をかました……どういう関係なんだ、こいつ等は)

39: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:45:14.81 ID:I3qsmqLV0
オタコン「こんな所に“古代兵器”が実在するとして、どんな代物なんだろう」

次郎「‥助けてもらった上に今更ですが、何故貴方がたは暗号解読に協力してくださるんですか?」

奈緒子「まさか……」

スネーク「勘違いするな。俺達は兵器を利用したいわけじゃない」

スネーク「詳しい事は言えないが、俺とオタ‥ハルは“ある兵器”の根絶に力を注いできた。
     過ぎた力は人を狂わせ、新たな過ちを生む……それは兵器全般に言える事だが、だからこそ、
     目の前に在るかもしれない“古代兵器”とやらも見過ごす気にはなれなかった」

オタコン「それに、さっきの黒津分家の連中を見て確信したよ。“こいつ等に渡しちゃ駄目だ”って」

奈緒子「もしも兵器が実在したら、どうするつもりなんですか?」

スネーク「破壊か、それに近い手段で世間から抹消する。悪いが異論は聞けないぞ」

次郎「異論なんてとんでもない。兵器なんて、我々日本人が持ったって仕方無い。
   特に私には無用ですよ。明晰な頭脳と強靭な肉体を持つ、最終兵器彼氏こと上田次郎にはね」

奈緒子「そうすることであいつ等をぎゃふんと言わせられるんなら、それでいい」

40: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:49:45.51 ID:I3qsmqLV0
奈緒子「ちなみに‥ちなみになんですけど、兵器のお値段ってどれくらいのもんなんですか?」

スネーク「性能によりけりだが、小国の国家予算レベルってものも少なくはない」

奈緒子「こ、国家予算……! あのアパートの家賃何年分‥いや一生分はあるか……!?」

次郎「一生あのぼろアパートに住む人生計画なのか。悲しい奴だな」

奈緒子「うるさいっ! 家賃を押さえた分、三度の食事には豪華に金粉をかけるんだっ!」

スネーク(あいつ等と同じく、こいつにも注意した方がいいのかもしれない)

41: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 18:54:42.21 ID:I3qsmqLV0
オタコン「んー‥石碑の含有物質にも特筆すべき点は無いね。変わってるのは石碑の形くらいだ」

スネーク「暗号を解く他、手がかり無しか。まるで推理小説の世界だ」

オタコン「……あ。ちょっと閃いたんだけど、いいかな」

スネーク「どうした?」

オタコン「日本ではこういう文章って“縦読み”が仕込まれてる事が多いんだよ」

スネーク「縦読み?」

オタコン「一行ずつ頭文字を取って、上から読むんだ」

次郎「この文章を縦読みするとしたら、
   『滝・忍・瞬・望・鬼・只・天・鬼』か、もしくは
   『た・し・ま・の・き・た・て・き』……ほほう、なるほど」

オタコン「何かピンときたかい?」

次郎「さっぱり分からない」

奈緒子「てゆうか、その程度なら黒津のアホ共もとっくに試してると思います」

オタコン「そ、そう……」ショボン

45: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 19:35:02.24 ID:I3qsmqLV0
スネーク「文章がニ段落に分かれているのには、何か意味がありそうだな」

次郎「おや、奇遇ですね。図らずも今まさに同じ事を考えていました」

奈緒子「じゃあどういう意味がありそうか、上田さんのご意見をどうぞ」

次郎「……」

奈緒子「あれれ~? もしかして何にも考えてないんですかぁ?」

次郎「そそんな訳な無いだろう、ちょっとっと考察をふかふか深めてるだけだ!」

スネーク・オタコン(分かり易い……)

46: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 19:40:45.09 ID:I3qsmqLV0
奈緒子「上田は放っておくとして、暗号の中の『利き駒』って一体何なんでしょうか」

次郎「ふん、学の無い奴め。利き駒というのは将棋用語で、金将や飛車といった攻守に優れた駒のことだ」

奈緒子「私はオセロ派だ」

次郎「ボードゲーム繋がりってだけじゃないか」

奈緒子「あと気になるのが『天と向かいし』ってトコなんですよ。
    『天“に”向かいし』の方が文章的にいけてると思いません?」

次郎「これは暗号なんだ、『と』と『に』じゃ文章の意味合いが違って暗号の意味にも影響……」

次郎「……はっ! 閃いた!」

次郎「はっはっは‥亀山歌の神髄を極めたこの上田次郎に、読み取れない意図など無い!」

47: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 19:48:42.48 ID:I3qsmqLV0
次郎「スネークさんの仰る通り、前段と後段に分かれているのには意味があったんです」

次郎「前段は“兵器の在り処についての情報”を、
   後段は“その情報を導き出す為のヒント”を表している」

スネーク「ヒント……『声なき言霊』はその暗喩(メタファー)か」

奈緒子「メタ……メタモン?」

次郎「『鬼神』を『この暗号の作り手』と置き換えれば、しっくりきますからね」

オタコン「ということは『天と向かいし刃』が何か分かれば、ヒントが分かるって事だね」

次郎「そうです。そして私、上田次郎は、既にその謎を暴いているっ!」

奈緒子「メタモン進化ぁぁぁっ!」

オタコン「いろいろ間違ってるし、いま叫ぶ事でもないよ!?」

48: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 19:53:43.88 ID:I3qsmqLV0
次郎「おい助手ナンバー1980、ちょっとこっちに来い」

奈緒子「誰が助手じゃっ。ちょ、襟首ひっぱるな!」

次郎「こいつを『刃』、すなわち“刃物”に見立てて説明します。頭が刃物の切っ先、背中が刃背と考えてください」

次郎「『天“と”向かいし刃』‥これは、“天と向かい合っている”という意味なのです。
   刃物が天と向かい合うとはどういう事かというと」

   グイッ

奈緒子「へっ!?(お、押し倒され……!?)」ドサッ

次郎「‥このように、刃背を下にして寝転がるという事です」

奈緒子(こ、このやろ‥ちょっとドキッとしたじゃないか……って何ドキッとしてんだ私は!!)バチコーン!

スネーク「刃物が自分に平手打ちをしたぞ」

次郎「何やってんだユー」

49: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 19:57:52.06 ID:I3qsmqLV0
次郎「さて、これで『天と向かいし』となりました。そして肝心の『刃』が何かについてですが‥
   それは刃物の形状を考えれば分かります」

次郎「物を切断する方は鋭利でなければならないから厚みは薄く、尖っている。例えるなら、三角形の様に」

奈緒子「三角……」

奈緒子・オタコン「「あっ」」

オタコン「上田教授、つまりこういうことかい? 『刃とは石碑の事を示している…』」

次郎「Exactly(そのとおりでございます)」

奈緒子「じゃあさっそく石碑を押し倒しに」

次郎「馬鹿か君は。『天と向かいし』のくだりは“ヒント”だと言っただろ」

スネーク「石碑を物理的に横倒しにするんじゃなく、“文章”の向きを変えろということか?」

次郎「マーベラス! そこの貧 とは大違いです」

奈緒子「おいっ!」

次郎「横書きになっている暗号文を縦書きに変え‥
   そこに『浮かぶ』、すなわち“一番上にやってくる文字”を読めばいい」

50: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:01:25.78 ID:I3qsmqLV0
次郎「さきほどエメリッヒ博士が縦読みを閃いたのは、実に良い点を突いていたわけです」

次郎「だが実に惜しかった! 縦ではなく横! いやー惜しい!」

オタコン「あの、失敗を思い出して恥ずかしくなるから、止めてもらえないかな……」

次郎「おっと失礼。そういうわけで、浮かぶ文字を繋げて読むと‥」


   只 鬼 望 瞬 忍 滝

   た き の ま し た


奈緒子「“滝の真下”? 滝……」

奈緒子「あっ、滝あった! 岩戸の横!」

51: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:06:02.16 ID:I3qsmqLV0
オタコン「Mk.IIで確認してみよう」カチャカチャ

スネーク「……本当にあったな」

次郎「その滝の真下‥つまりは滝壺に、古代兵器は眠っている!」

オタコン「調べてみる価値はあるね。‥けどMk.II(コイツ)じゃあ水中の探索は無理だ」

スネーク「俺が行って調べてこよう。上田達だと黒津の連中に気付かれる恐れがある」

次郎「それなら先ほどのステルス迷彩を貸してもらえれば」

スネーク「姿は消せても“その場に居た痕跡”まで消すのは、お前達には難しいだろう。
     痕跡が残れば尾行され、再びここに踏み込まれる恐れがある。ここは俺に任せろ」

スネーク「それにあの滝は、O2ゲージの心配をするほど深くはなさそうだ」

奈緒子「おーつーげーじ? 何だそれ。うまいのか?」

52: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:10:57.24 ID:I3qsmqLV0
スネーク「お前達はここで待っていろ。いいな」

   フィンッ

奈緒子「わ……ステルス迷彩使った瞬間、気配すらなくなった」

次郎「‥エメリッヒ博士。スネークさんはどういう方なんですか?」

オタコン「……彼について語ろうと思えば長くなるけど‥一言で言うなら“伝説の英雄”だ」

奈緒子「英雄?」

オタコン「スネークにその呼び名は使っちゃ駄目だよ。彼はそう呼ばれるのを嫌ってるからさ」

オタコン「でも彼は、伝説と呼ばれるだけの男だよ。戦闘においても、スニーキングミッションにおいても」

奈緒子「スキーニングミッションって何だ」

次郎「スニーキング、“潜入任務”だ。‥しかしそれなら、櫓の周囲のトラップを無傷ですり抜けたのも頷ける」

奈緒子「よし、お前も頑張れ上田。根性見せて地雷原をシャトルランしてこい」

次郎「おとこわりだ」

53: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:16:45.62 ID:I3qsmqLV0
―約2時間後―

   [CALL]

オタコン「あ、終わったみたいだね。どうだいスネーク、収穫はあった?」

スネーク『滝の中をあらかた探ってみたが‥兵器どころか、人工物すら見つからなかったぞ』

次郎「ばんなそかな!」

スネーク『念の為に滝の周囲も見てみたが、アイテムの一つも落ちていない』

奈緒子「はずれみたいだな、上田」

次郎「ばんなそかなー……」

オタコン「いや、上田教授の推理はかなり良い線を行っていたと思うよ。
     ただ結果的に違ってたってだけさ。いやぁ惜しかったね」

奈緒子「‥お主、なかなか悪よのぉ」

オタコン「え、何の事?」

サニー(ハル兄さん‥いきいきしてる……)

54: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:20:54.21 ID:I3qsmqLV0
オタコン「おかえりスネーク。お疲れ様」

スネーク「そう簡単にはいかなかったな」

サニー「スネーク‥さっき、採ってきてくれた野菜、ソテーにしてみた」

スネーク「あぁ‥悪いな、わざわざ(炒め過ぎて見るからにベチャベチャだ……)」

サニー「二人も、ど、どうぞ」

次郎「どうも……はっ、いけない、私はこの野菜はアレルギーで食べられないんだ。
   しかしこのままではサニー君に申し訳ない‥だから山田、代わりに食べてくれ」

オタコン(大人気無い……)

奈緒子「やった、いただきます」ヒョイパクパク

奈緒子「うん、マズイこれ」

サニー「!?」ガーンッ!!

スネーク・オタコン(包み隠さず言った!?)

55: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:25:06.78 ID:I3qsmqLV0
奈緒子「緑黄色野菜摂ったの久しぶりだなー。んーマズイ」ムッシャムッシャ

オタコン「言葉と裏腹に満面の笑みで完食した……」

奈緒子「……」ジーッ

   シャシャッ!

オタコン「あっ! 僕達の皿まで……!?」

奈緒子「ハフハフ、もぐもぐ……ぶはーっ、食った食った」

奈緒子「サニーちゃん、これってお持ち帰りとかある? ‥あれ、いない」

次郎「お前が『マズイ』とか言うから、上に引きこもっちゃったんだよ」

奈緒子「サニーちゃーん、後でまたご飯ちょーだいねー」

次郎「すいませんねウチの助手が浅ましくて」

オタコン「あ、いや……」

56: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:30:56.43 ID:I3qsmqLV0
奈緒子「腹いっぱいになったら眠くなってきた。上田、私は仮眠を取るからグー……」

次郎「早いな寝るの!」

スネーク「つくづく変わった女だ」

オタコン「彼女はシャーマンの家系だって聞いたけど、とてもそうとは思えないよね」

スネーク「確か『カミヌーリ』と言ったか。黒津の奴等はカミヌーリの力を本当に信じているのか?」

次郎「信じている人間もいましたが‥財宝やらを手に入れる為の道具みたいにこいつを扱う奴等もいました」

オタコン「‥彼女“にも”深い因縁があるんだね」

次郎「……」

   ―『アンタ“も”厄介な因果を背負ってるもんだな』―

次郎(彼等が協力してくれるのは、こいつにシンパシーを覚えたからだろうか……)

57: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:36:28.87 ID:I3qsmqLV0
スネーク「上田の口振りだと、どうも黒津絡みのいざこざは一度や二度じゃなさそうだな」

次郎「そりゃあもう、幾度と無くコイツには迷惑をかけられました。まぁその度に私が解決してやりましたが」

次郎「あぁそうだ。お二人ともこれをどうぞ。私の活躍と信念の数々を綴った
   『どんと来い、超常現象』と『なぜベストを尽くさないのか』、豪華サイン入り二冊セットです」

オタコン「あぁ、うん……字が大きくて読み易いね」

次郎「私にかかれば解けない謎はありません。どんとこーい超常現象! さぁ皆さんもご一緒に。
   どんとこーい! あっはっはっはっは!!」

スネーク・オタコン「「……」」



サニー「ど、どんとこーい……」コッソリ

58: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:40:38.71 ID:I3qsmqLV0
―30分後―

奈緒子「zzz……ぬあ‥歌麿さん、警部だったんですか……はいぃっ? あ、いや、やめて逮捕しないで……」

奈緒子「ハッ! ‥あれ、何で私、階段に這いつくばってんだ?」

次郎「相変わらず奇抜な寝相で奇抜な夢を見やがって。
   喜多川歌麿と織田信長が警察官になって難事件を解決‥ってどんなストーリーだ」

奈緒子「なっ!? 何で私の見た夢の内容を知ってるんですか!」

スネーク「寝言で逐一聞かせてくれてたじゃないか」

サニー「寝言、すごいね……」

奈緒子「そ、そんなことより、暗号の謎は解けたのかっ!?」

次郎「そう焦るなユー」

奈緒子「解けてないんだな。このダメ上田が」

次郎「様々な視点から文章を読み解こうとしてる最中なんだっ! 君も少しは参加しろ!」

59: ◆GmgU93SCyE 2013/07/27(土) 20:45:42.22 ID:I3qsmqLV0
オタコン「『利き駒』なんて耳慣れない単語が使われているのには、やっぱり裏があるんじゃないかな」

次郎「“将棋”がヒントか……ぐぬぬ‥小学生の時に大学生を将棋で打ちのめした頭脳よ、閃け!」

サニー「暗号がデジタルだったら、私にも、手伝えるのに……」

奈緒子「デジタルって、野菜の親戚か何か?」

次郎「ベジタブルと混同するな。どうやらサニー君は俺と同じ天才らしく、パソコンを使わせたら一級品らしいぞ」

奈緒子「パソコン使って暗号とか、小難しそうなイメージがあるけど」

サニー「ふ、複雑なプログラムを組んでるのもあるけど、意外と簡単な変換で解読できるのも、多いよ」

奈緒子「あぁ、簡単なトリックほど見逃しちゃうものね。“東大デモクラシー”ってやつだな」

次郎「“灯台下暗し”だ」

62: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 16:53:58.53 ID:2zuDFwNa0
スネーク「オタコン、ここに置いていたタバコを知らないか?」

オタコン「サニーが仕舞っちゃったよ。『ここは禁煙だから』って」

奈緒子「オタコン? 何ですかそれ」

スネーク「こいつのあだ名だ。‥気にするな」

奈緒子「へー、変なあだ名。何か『オタク』っぽいですね」

オタコン「(配慮って言葉を知らないのかな、この人……)
     ま、まぁ、そんなことより、スネークもタバコ吸ってないで何かアイデアを出してよ」

スネーク「学者二人が頭を捻って分からんものが、俺に分かると思うか?
     だいたい日本語は文字の種類が多過ぎて、読むのすら難解で疲れる」

スネーク「いっそ英語の様に一種類の文字に統一してほしいな。漢字の意味をいちいち調べるのも面倒だ」

オタコン「わがまま言わないで少しは考」

奈緒子「ハッ! ちょ、何か書くものないですか!?」

オタコン「え? あ、水性ペンならあるけど」

63: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 16:59:13.98 ID:2zuDFwNa0
奈緒子「貸せっ!」バッ

   キュキュキュキュキュッ……

オタコン「あ、ちょっと! 床に何を書いてるんだ!?」

次郎「こ、これは……!」

スネーク「上田、こいつは一体何を書き出しているんだ?」

次郎「霊山寺、極楽寺、金泉寺、大日寺、地蔵寺‥お遍路さんじゃないか、これ」

奈緒子「ドラマで、壁とかにサラサラーッといっぱい文字書いてるやつ見て、一度やってみたかったから」

次郎「てっきり何か閃いたのかと思いきや、こんな落書きに逃げるなんて、君は本当に卑怯だな」

奈緒子「ひ、卑怯じゃない! ちゃんと閃いた上で遊んでるんだ!」

オタコン「じゃあ君の意見を聞かせてくれ。その後で落書きはきちんと消してもらうからね」

64: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:03:21.32 ID:2zuDFwNa0
奈緒子「えー、コホンッ‥私が思うに、これは難しく考える程解けないんじゃないかと思うんです」

次郎「この優れた頭脳を以てしても解けないだと?」

奈緒子「そうやってインテリぶるほどドツボにハマるんですよ」

奈緒子「だって、この暗号文には意味なんてほとんど無いんですから」

スネーク「意味が無いだって?」

奈緒子「正確に言うと、意味が無いのはやたら小難しい文章で書かれた“前段”です。
    後段は、上田さんの推理通りの意味だと思います」

オタコン「上田教授の推理通りって‥『滝の真下』ってこと?」

奈緒子「ええ。『たきのました』、そこに“答え”があります」

65: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:09:13.90 ID:2zuDFwNa0
次郎「スネークさんがあれだけ探して何も無かったんだぞ」

奈緒子「あの“滝”じゃありません。文字通り“『たき』の真下”です」

オタコン「文字通り?」

奈緒子「これを‥」

 『滝清浄にして
  忍び難きは水底の石
  瞬き此の世に落ち
  望むは得難き光
  鬼神は飢えた利き駒と
  只有り難き星霜を偲ぶ

  天と向かいし刃に浮かぶは
  鬼神の声なき言霊』

奈緒子「こうしちゃうんです」キュキュキュッ

 『たきせいじょうにして
  しのびがたきはみなぞこのいし
  またたきこのよにおち
  のぞむはえがたきひかり
  きしんはうえたききごまと
  ただありがたきせいそうをしのぶ』

66: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:13:38.17 ID:2zuDFwNa0
次郎「! 全ての行に『たき』がある……」

奈緒子「そうです。それらの真下にある字を繋げて読めば」

次郎「せはこひきせ」

奈緒子「違う! 縦読みじゃなくて横だってお前が言ってただろ」

次郎「 冗談だ。ユーモアという物が分からないのか?」

スネーク(あからさまに間が空いた‥コイツ、素で間違えたな)

次郎「では改めて‥
   『せきひこはせ』……『石碑壊せ』!?」

奈緒子「あの石碑自体が岩戸を開けるスイッチなんですよ。多分! きっと!」

67: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:18:22.44 ID:2zuDFwNa0
オタコン「壊す……暗号解読の唯一の手掛かりだから気が引けるよ」

奈緒子「間違ってたらそれでいいじゃないですか。兵器が日の目を見なくなるんですし」

次郎「あの長老、密書がどうこう言っていたな。つまり、兵器の存在は我々を含めたごく少数しか知らない」

オタコン「僕達が口を噤めば迷宮入りってことか‥スネークはどう思う?」

スネーク「折角だ、やるだけやってみていいんじゃないか」

奈緒子「よぉし、そうと決まればいざ出陣!」

スネーク「待て。お前達はここに居ろ。あれは俺が壊してくる」

次郎「どうやって壊すんです?」

スネーク「TNT辺りでも使って」

オタコン「ここにはTNTなんて無いよ」

奈緒子「T・M・レボリューションかなにか知りませんけど、お困りでしたらこいつをどうぞ。
    必殺技はからてチョップのかくとうタイプです」

次郎「俺は行かんぞ!」

68: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:25:00.50 ID:2zuDFwNa0
奈緒子「もしかして外に出るのが怖いんですか?」

次郎「 そんな訳あるか。スネークさんがここに居ろと言うからであって怖い訳では」

奈緒子「なぜ、ベストを尽くさないのか」

次郎「!? べ、ベスト……」

奈緒子「ホワーイ・ドンチュー・ドゥー・ユア・ベスト!?」

スネーク「今度は何の儀しk」

次郎「おおおおお……! ベストだぁぁぁぁぁ!!」バリィィィンッ!!

オタコン「う、上田教授が半裸になった!?」

次郎「俺の拳は岩をも砕くっ!!」ダッ!!

スネーク「おい待て! ‥くそっ! 俺は奴を追い掛ける。お前達はここで待て!」

69: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:30:38.70 ID:2zuDFwNa0
―岩戸前―

次郎「この拳に我が生涯の全てを込めて……」コオオオオ

スネーク(何だこの無駄に溢れ出ている骨太なオーラは)

次郎「ほゎちゃぁっ!!」

   バキィッ!!

オタコン『ほ、本当に素手で岩を砕いた!?』←Mk.Ⅱで中継


   ズズズズズ……


スネーク「岩戸が開いた‥山田の見立ては正しかったわけか」

70: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:36:50.32 ID:2zuDFwNa0
長老「ご苦労だったねぇ、上田先生」

スネーク「! いつの間に」

中「けたたましい足音がこっちに向かっていくから、もしやと思ってやって来たのさぁ」

小暮「まさか石碑を壊す事がスイッチになるなんて、驚いた」

大「この野郎、やっぱりのっぽを匿ってやがったな! 貧 は何処だ!?」

奈緒子『誰が貧 じゃっ!』

大「何だ!? 変な機械が喋った!」

オタコン『変じゃない!』

中「違う声になった!?」

長老「そんな事はどうでもいい! 上田先生、後はわし等に預けてもらおう」

71: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:42:37.86 ID:2zuDFwNa0
次郎「兵器を手にして、どうするおつもりですか」

長老「そこまで説明する義務はないね」

次郎「‥私は物理学者でね、何事もブッツリと明確にしたい。その説明じゃあ納得出来ませんよ」

長老「別に納得しなくてもいい。ただ、ここでの事は黙っていてほしい」

次郎「そいつは無理な相談です」

長老「‥じゃあ、仕方ないねぇ。島民D~F、やっておしまいなさい!」

島民D~F「「「うす!」」」バババッ!

次郎「アタァッ!」バキッ!

島民D「ぎゃあっ!」

島民E「このっ!」

スネーク「甘い」ブオンッ!

島民E「ぐわっ!」ビタァンッ!

次郎「スネークさん、なかなかやりますね」

スネーク「お前もな」

72: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 17:48:49.04 ID:2zuDFwNa0
島民F「く‥くそぉぉぉっ!」

次郎・スネーク「「アタァッ!!」」バキィンッ!!

島民F「がふっ……」

中「畜生! 俺がやってやる!」

スネーク「ふんっ!」ガシッ!

中「ぐへっ!」ビターンッ!

中「ま、まだまだ……」

スネーク「悪いな」ギュッ!

次郎(彼のおいなりさんを握りつぶした!?)

中「おほぉっ……!」ガクッ

大「そこを狙うか普通!?」

スネーク「気絶させておかないと後ろから撃たれそうで、気になるんでな」

奈緒子『身動き取れない相手の股握るとか最低じゃないか……』

75: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:01:22.52 ID:2zuDFwNa0
大「俺はそう簡単に潰されやしないぞ」バッ

スネーク(一瞬で妙な装束に着替えた! あの格好、何かで見たような……)

次郎「ドーモ、ヒロシ=サン。ウエダ・ジロウです」ペコリ

スネーク「何をしているんだ上田」

次郎「ニンジャの戦いにおいて、アイサツは神聖不可侵の行為なのです」

次郎「奴からニンジャソウルを感じる。私には分かる‥奴はニンジャだ」

スネーク「“ニンジャ”だと?」

大「ドーモ、ウエダ・ジロウ=サン。クロヅ・ヒロシです」ペコリ

大「お前もニンジャだったとはな‥今まで全く気付かなかった」

次郎「気取らせないよう気を押さえる程度、リアルニンジャたる俺にはベイビーサブミッション」

オタコン『二人は何を言っているんだい?』

奈緒子『私にはニントモカントモ』

76: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:06:34.32 ID:2zuDFwNa0
大「イヤーッ!」

スネーク(両者がチョップを繰り出す!)

次郎「イヤーッ!」

スネーク(しかしリーチで勝る上田の右手が大の左肩を砕く!)

大「グワーッ!」

次郎「イヤーッ!」

スネーク(上田が左手でチョップを繰り出し、大の右肩を砕く!)

大「グワーッ!」

スネーク(膝を付いた大を前にした上田は、右手にパワーを集中させる。掌底打ちの構えだ!)

次郎「Wasshoi!」ドゴォンッ!

大「ヤ・ラ・レ・ター!」

スネーク「ゴウランガ!」

オタコン『す、スネーク!? 何だいその掛け声は!?』

スネーク「分からん‥口を衝いて出てきたというか、言わなければならない気がしたというか……」

77: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:12:08.17 ID:2zuDFwNa0
長老「息子二人を倒すとは……だが甘い! 小暮さん!」

小暮「うす!」

スネーク「悪いがお前も気絶してもらうぞ」

小暮「ヌルフフフ‥そう簡単にいくかな」

   フッ

スネーク(消えた!?)

小暮「ここですよ」

次郎「! いつの間に俺達の背後に……」

長老「小暮さんは音速で移動出来る程の健脚を持つ超人。上田先生とて敵いはしない!」

78: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:17:27.86 ID:2zuDFwNa0
次郎「『敵わない』……?」

次郎「ふ、ふっふっふ‥はーっはっはっは!!」

小暮「何がおかしい」

次郎「私は、どんな困難もたちどころに吹き飛ばず、魔法の呪文を知っている」

次郎「“なぜベストを尽くさないのか”」

次郎「ベストだ……ベストを尽くせ上田次郎……! イヤーッ!」

小暮「そんな遅いチョップ、当たりませんね」ヒョイッ

次郎「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

小暮「馬鹿の一つ覚えだ」ヒョイヒョイヒョイッ

オタコン『スピードが桁違いだ‥まずいよスネーク……』

スネーク「‥いいやオタコン、まだだ。まだ終わってない」

79: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:23:30.31 ID:2zuDFwNa0
次郎「イヤーッ!」

小暮「いいかげん諦めろ」

   トンッ

小暮(え、何で後ろに下がれな)

次郎「イヤーッ!」ドゴォッ!

小暮「グワーッ!」

オタコン『背後に木立が迫っている事に気付いてなかったのか……
     いや、上田教授があいつを壁際まで追い込んだのか!?』

奈緒子「たぶん偶然だろうけど、そのまま一気に畳み掛けろ上田!」

小暮(一撃が重い……あ、足がもつれて、動けない……)

次郎「ハイクを詠め。カイシャクしてやる」

小暮「ぐ……一句詠めたぞ……

   “ファントムペインも ラストステージも よろしく、ね!”」

次郎「イヤーッ!」ドゴォッ!!

小暮「サヨナラ……!」ガクッ

80: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:28:58.61 ID:2zuDFwNa0
次郎「残るは長老一人」

オタコン『あれ? 長老の姿が無い!?』

長老「遅いわ馬鹿ども!」

スネーク「しまった、目を離した隙に岩戸へ近付かれた!」

長老「兵器はわしの物だ! この奥に、力が……」


   ズドドドッ!


長老「へ? い、痛い……」

スネーク「!?(長老の身体に、矢が……!?)」

81: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:34:12.85 ID:2zuDFwNa0
スネーク「‥駄目だ。死んでいる」

次郎「なぜ岩戸の奥から矢が飛んできたのか……」

オタコン『まだ仕掛けがあるかもしれない。僕がMk.Ⅱで中を探ってくる』

オタコン『……矢は飛んでこない‥一発限りのトラップだったのか。
     洞窟内にも、他に仕掛けはなさそ……え?』

スネーク「オタコン、どうした?」

オタコン『‥洞窟の奥に、人骨がある。それも二体分だ』

82: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:39:29.40 ID:2zuDFwNa0
次郎「着ている衣服もだいぶ朽ちていますね‥しかし、この人達は一体誰なのか……」

スネーク「! ……上田、入り口の方を見てみろ」

次郎「!?」

オタコン『な、何だこれは……岩戸の裏に、文字がびっしり書かれてる……』

スネーク「‥酸化した血に似ている。上田、ここには何と書かれて……上田?」

次郎「」チーン

奈緒子『あまりの禍々しさに気絶しちゃったみたいです』

83: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:45:37.49 ID:2zuDFwNa0
スネーク「山田、代わりにこの文字を読んでくれ」

奈緒子『‥“許さない 彼女を追い詰めた黒津家を 絶対に許さない
    なぜ私は彼女と一緒になってはいけない 島の人間ではないのがいけないのか
    私が本家の長子だからいけないのか
    やっと島から逃れられると思ったのに 彼女は衰弱し 力尽きてしまった
    もう嫌だ 彼女と共に私も眠る”』

奈緒子『“これを見ることになるのは黒津の人間だろう
    ありもしない宝物を探す気分はどうだった 目の前で仲間が死ぬのはどうだった
    私の置き土産 楽しかったか”』

奈緒子『読めるのは、ここまでです。後は‥文字なのかも分からない、殴り書きです』

スネーク「‥駆け落ちの末路、か」

奈緒子『……』

―――――
―――
――

里見「あなた! しっかりして!!」

剛三「俺は‥間違っていた……! 居るんだよ、この世には‥本物の霊能力者、が……」

里見「あなた!! ……いやよ、お願い、目を開けて……!!」

――
―――
―――――

84: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:51:07.87 ID:2zuDFwNa0
―数時間後 沖縄本土の警察署内―

矢部「これはこれは上田先生やないですかぁ~!!」

次郎「矢部さん? なぜ貴方が沖縄に」

矢部「たまには日頃の激務を忘れて旅でもしたいなぁ~と思い立ちまして、有給とってやって来たんですわ。
   名所はあらかた回ってきたんで、わしが優雅に休んどる間も働いとる所轄の人間を冷やかし‥ん゛んっ!
   激励したろかと思ってたまたま立ち寄ったら、上田先生とお会いしたっちゅうわけです」

奈緒子「日頃の激務? 激励? 冗談は頭髪だけにしろ」

矢部「やかましゃぁアホ!! 頭髪が冗談ってどういうこっちゃボケェ!!」

次郎「冗談は置いといて。我々は一体いつまでここに留め置かれるんでしょう」

矢部「冗談やないですから……。まぁ、“先生と山田の二人”で解決したっちゅう事ですし、
   聴取がある程度長くなるのはしゃあないですって」

85: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 19:55:25.35 ID:2zuDFwNa0
―数時間前―

スネーク「こいつ等と‥この遺体はどうする」

次郎「‥敵対する人間とはいえ、死者と遺体が出た以上は、警察に届け出るべきかと」

スネーク「法治国家ならば、そうするのが普通だな」

スネーク「上田、そして山田‥後のことは、お前達に任せてもいいか?」

奈緒子「え? それってどういう」

スネーク「複雑な事情があってな、俺達は警察の世話にはなれない。それに、すぐにでも向かわねばならない場所がある」

スネーク「“俺達はこの島に居なかった”。そういう事にしてほしい」

次郎「……」

奈緒子「‥いいですよ。誰にも知られず去っていくとか、仕事人みたいでカッコいいしな」

86: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 20:01:39.68 ID:2zuDFwNa0
矢部「しっかしまぁーた黒門島の奴等とは。もう警察としても真面目に聴取する気も起こらんわ」

秋葉「矢部さん矢部さん! 後はこちらの署の方で対応するそうですよ!」

矢部「おう、そうか。よっしゃ、今から泡盛を浴びるほど飲みにいくで!」

秋葉「僕らは優雅に“ずらかる”としましょう」

矢部「ほわっちゃぁ!!」バキィッ!

秋葉「へぶっ!? や、矢部さん、僕はなぜ殴られたのでありますか!?」

矢部「お前『ヅラ狩る』言うたか!? “ヅラを狩る”やと!? 全国の薄毛に悩む大きいお友達を駆逐する気か!?」

秋葉「あの、今のは“立ち去る”って意味の『ずらかる』で」

矢部「また言うたな!?」バキィッ!

秋葉「ぎゃんっ!!」

87: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 20:07:36.77 ID:2zuDFwNa0
―同時刻 中東―

ジョニー「痛っ!」

メリル「アキバ! まさか、狙撃!?」

ジョニー「あ、いや‥頬を思い切りぶたれた様な痛みが不意に走って、つい……」

メリル「何よ、警戒して損したわ。けど、どうして怪我も無いのにそんな痛みが?」

ジョニー「さっぱり分か、いったぁっ!!」

メリル「また!?」

ジョニー「何なんだよもぉ~っ!」

88: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 20:12:01.31 ID:2zuDFwNa0
奈緒子「あ゛ー……やっと解放されたぁ~。さぁーて、帰って時代劇でも観るか」

次郎「どうやって帰るつもりだ? 貧乏人」

奈緒子「へ? ……あ」

次郎「家賃も払えないんじゃ、到底本土行きの飛行機代も持ち合わせていないだろ」

奈緒子「ぐ……上田‥私のこと、アパートまで送り届けさせてやってもいいぞ」

次郎「自力で帰れ」

奈緒子「ぬう! ……ふ、ふふふ。いいのかなぁ~、送ってくれたら“いい物”やろうと思ったのに」

次郎「何?」

89: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 20:17:37.56 ID:2zuDFwNa0
   フィンッ

次郎「消えた!? って、これはまさか……」

奈緒子「ステルス迷彩だ!」

次郎「ノーマッドから持ち出したのか!? このコソドロ!」

奈緒子「盗んでない! 永遠に借りるだけだ! とにかく、これが欲しかったんじゃないのかお前」

次郎「ぬぬ……」

奈緒子「私を送り届けてくれるんなら、あげちゃうんだけどなぁ~」

次郎「ふ‥ふん。そんな安い手が通用すると思ったか」クルッ

次郎「……まぁ、ユーがどうしても俺に付いて来たいというなら、ついでに送ってやるのも吝かではないが」

奈緒子「‥素直に『欲しい』って言え」

次郎「馬鹿言え」スタスタスタ

奈緒子「ちょっ、置いてくな! あ、あとミミガー食いたい!」

次郎「静かにしろっ! 全く、わざと騒ぎ立ててるのか……好きなのか、俺が」

奈緒子「 ん、んなワケあるかっ!!」

90: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 20:22:06.10 ID:2zuDFwNa0
―――――
―――
――

―アウターヘイブン―

オタコン『スネーク、立って!』

スネーク「ぐ……!(電子レンジなんてもんじゃない……体が……)」

   バチィッ!

スネーク「ぐあっ!?」

オタコン『スネークっ!?』

91: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 20:27:23.01 ID:2zuDFwNa0
スネーク「が、あ……」ガクッ

オタコン『お願いだ‥立ってくれ、スネーク!!』

スネーク「……」ゼェ……ゼェ……

スネーク「……を……」

スネーク「すと、を‥つく‥か……」

オタコン『スネーク……?』

スネーク「なぜ‥ベストを‥尽くさないのか……!」

オタコン『!!』

スネーク「ベストを‥尽くせぇぇぇぇぇ!!」

92: ◆GmgU93SCyE 2013/07/28(日) 20:32:26.73 ID:2zuDFwNa0
――
―――
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サニー「みんなー、早くー! 焼けたよーっ!」

スネーク「む……おぉ、今日のは一段と上手に焼けたじゃないか」

オタコン「卵料理はマスターできたみたいだね」

サニー「ふふっ。どーんとこーい!」


                              終