1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/10(水) 10:21:16.47 ID:IeSYQhiL0
志保「周防さん、聞こえていますか?」

桃子「聞こえてるけど……何、その呼び方。あと、どうして敬語なの?」

志保「周防さんは芸歴で言えば先輩なのでこうした方がいいかな、と思いまして」

桃子「今更過ぎるよ……」

志保「はい。確かに今更にも過ぎることだとは思いましたが、遅くてもやらないよりはいいと判断しました」

桃子「その判断間違ってるよ……志保さんに敬語をつかわれるの、なんだか気持ち悪いからいつも通りに戻してくれない?」


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引用元: 北沢志保「周防さん、私に演技を教えて下さい」周防桃子「……」 

 

2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/10(水) 10:21:44.79 ID:IeSYQhiL0
志保「でも、私は今から周防さんに演技を教えてもらおうとしているんですよ? 教えてもらう側なら敬語をつかうのは当然だと思うんですが」

桃子「教えてもらう側なら桃子の言うことを聞いてほしいんだけど……」

志保「……それもそうですね。いえ、それもそうね。じゃあ、今からはいつも通りでいくわ。それで、桃子。私に演技を教えてくれない?」

桃子「……なんだか言い方が気になるけど、うん、べつにいいよ。でも、ちょっと意外かも」

志保「意外?」

桃子「うん。昔の志保さんだったらこんなこと言わなかったと思うから」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/10(水) 10:22:10.46 ID:IeSYQhiL0
志保「それは桃子も……というか、桃子の方が、じゃない?」

桃子「……演技、教えてほしいんだよね?」

志保「そうね」

桃子「それなら桃子の言うことは聞いて」

志保「……オレンジジュース、買ってきた方がいい?」

桃子「どうして!?」

志保「伊織さんはよくオレンジジュースを買いに行かせるから、桃子もそうなのかな、と思って」

桃子「違うよ……というか、伊織さん、志保さんにまでそんなことやらせてるの?」

志保「いえ、もちろんプロデューサーさんに、だけど」

桃子「お兄ちゃん……いや、桃子が言えることじゃないけど……」

志保「それで、オレンジジュース、買ってきた方がいい?」

桃子「それはいいよ……桃子、喉かわいてないし」

志保「……つまり、喉がかわけば買ってこいということ?」

桃子「そういうことじゃないよ……」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/10(水) 10:22:36.60 ID:IeSYQhiL0

――

志保「それで、桃子。演技を教えてほしいんだけど」

桃子「うん。……でも、志保さんは結構演技は上手だよね。まだまだなところもあるけど、うん、桃子は上手いと思うよ」

志保「その『まだまだなところ』を直したいの」

桃子「……まあ、志保さんはそう受け取るよね。わかった。それじゃあ、ちょっと即興で演技してもらおうかな。お題は……なんでもいいや。好きにやってみて」

志保「好きに……わかったわ」

桃子「準備ができたら言ってね? 合図するから」

志保「……うん、準備できたわ」

桃子「もう? 早いね、志保さん。じゃあ、合図するよ。3、2、1……アクション」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/10(水) 10:23:04.16 ID:IeSYQhiL0
志保「『フッ……私はエージェント・S。トップシークレットの謎を追って、今日も夜を往く……』」

桃子「……うん?」

志保「『エージェントの仕事はタフじゃないとやっていられない。そう、素人にはおすすめできない。……はっ! あの影は……!』」

桃子「……志保さん?」

志保「『とうとう姿を現したわね、悪のエイリアンめ! CIA銃を『KILL』にセット! くらえっ、国家機密ビーム!』」

桃子「……」

志保「『……はあ、はあ……。フッ、取り逃がしたようね、でも心配は無用。あいつの逃げた方向には既に私の相棒が待ち構えているもの。後は頼んだわよ、エージェント・P……』」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/10(水) 10:23:31.54 ID:IeSYQhiL0
桃子「……終わり?」

志保「ええ」

桃子「……今のは?」

志保「昔、プロデューサーさんに見せた演技」

桃子「お兄ちゃんに……?」

志保「あの時は『CIAの女エージェント』というお題で演じたわね。……あの頃はこれをするのも恥ずかしかったけれど、今ではもう恥じらいなく演じることができたわ。私、成長してるのかも……」

桃子「成長……なのかな……?」

志保「それで、どうだった? 私の演技は」

桃子「……うん、まあ、演技自体は良かったと思うよ。熱も入っていたし。……台詞に関しては、うん、百合子さんに近いものを感じたけど」

志保「そう? ……私、脚本もやってみた方がいいのかしら」

桃子「そっちの意味でとらえちゃうんだ……志保さん、ポジティブだね」

志保「……そうかもしれないわね。私、昔よりはポジティブになったのかもしれない。この事務所で、みんなと一緒に過ごしてきて……そう考えられるようになったのかもしれないわ」フフッ

桃子「いや全然いい話にする流れじゃないからそういう台詞をここで使うのやめてくれない?」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/10(水) 10:24:12.14 ID:IeSYQhiL0

ガチャ

可奈「おはようございまーす! ……あれ? 桃子ちゃんと志保ちゃんだけ?」

桃子「可奈さん、おはようございます。うん、今は桃子たちだけだね」

志保「プロデューサーさんも小鳥さんも出かけているわね。小鳥さんはすぐに帰ってくると言っていたけれど……」

可奈「二人はお留守番、ってこと?」

桃子「まあ、そうだね。予定もそんなに詰まっているわけじゃないし……」

可奈「へぇ……二人は何してたの?」

志保「ちょっと、桃子に演技を教えてもらっていたの」

桃子「まだ何も教えてないけどね……」

可奈「そうなんだ! ……ねぇねぇ桃子ちゃん。私にも教えてくれないかな?」

桃子「……はぁ。べつにいいけど、桃子、厳しいと思うよ?」

可奈「き、厳しい……ううん、大丈夫! 私、頑張るから!」

桃子「……うん。じゃあ、せっかくだから基礎から見なおしてみよっか。とりあえずは小鳥さんが帰ってくるまで、ね」

志保「わかったわ」

可奈「わかりました!」

桃子「うん。それじゃあ、まずは発声から――」