ウルトラマミさん 前編

296: 1 2013/08/18(日) 13:13:25.46 ID:pnDgegG70
マミ「今よ!」

杏子「はあああぁぁっ!」

マミ「……」

杏子「や……、やったっ!」

マミ「うふふっ、お見事ね!」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1375281006

引用元: ウルトラマミさん 


 

297: 1 2013/08/18(日) 13:18:27.21 ID:pnDgegG70
マミ「―改めまして。
私は、巴マミ」

杏子「あたし、佐倉杏子。
隣町の風見野で魔法少女をやってるんだ。
さっきは……、ありがと。
あんたが来てくれなかったら、あたし、やられてたよ……」

マミ「どういたしまして。
うん、間に合って良かったわ……」

杏子「ほんと助かったよ。
ていうか、見滝原にこんなすごい“魔法少女”がいるなんて知らなかったな……」

マミ「……」

杏子「あれ?
あたし、何か失礼なことでも言っちゃった?」

マミ「……ううん、何でもないわ。
それより……、佐倉さんはどうして見滝原に?」

杏子「あー……。
その、あたし、さっきの魔女を追いかけてきたんだよね。
あの魔女、あたしが魔法少女になって初めて戦った相手なんだけどさ。
一度ヘマして、逃げられちゃったんだ。
自分の縄張りから踏み出すのは、行儀が悪いと思ったんだけど……。
どうしても、落とし前つけたかったから……」

マミ「そう……」

杏子「結局、それであんたに迷惑かけちゃったよね……」

マミ「そんな事、全く気にしなくていいのよ。
大事なのは、一人でも多くの人々の命を守ることなんだもの。
だから……。
やっぱり仲間同士で縄張り争いなんて、本当ならすべきではないはずよ」

杏子「……うん、そうかもね……」

298: 1 2013/08/18(日) 13:24:26.28 ID:pnDgegG70
杏子「……それじゃあ、お陰で魔女も倒せたし、あたしはこれで……」

マミ「待って」

杏子「何?」

マミ「あなた、結構魔力を消耗しちゃったでしょう?
これでソウルジェムの濁りを浄化しておいた方がいいわ」

杏子「?
でも、今日のあたしにそれを貰う資格は……」

マミ「二人で倒した成果でしょう?」

杏子「……いいの?」

マミ「ええ、もちろんよ!
はい、どうぞ」

杏子「……ありがと」

299: 1 2013/08/18(日) 13:31:27.01 ID:pnDgegG70
マミ「……ねぇ、佐倉さん
このあとなんだけど、まだお時間は平気かしら?」

杏子「うん、別にあたしは大丈夫だけど……。
何か?」

マミ「うふふ……」

300: 1 2013/08/18(日) 13:45:38.98 ID:pnDgegG70
 マミの部屋

杏子「うわぁ……!」

マミ「どうぞ、召し上がって?
特製のピーチパイよ」

杏子「うん。
これ、ちょーおいしい!」

マミ「まだまだあるから遠慮しないでね。
私一人じゃ食べきれないし」

杏子「……あ、えっと……」

マミ「なぁに、佐倉さん?」

杏子「助けてもらった上に、ケーキまでご馳走になっちゃって……。
なんだかずうずうしいよね、あたしって」

マミ「いえ、招待したのはこっちなんだし、気にしないで。
それに私も、魔法少女の子と一緒にお茶できてとっても楽しいもの……」

杏子「……そっか。
なら、いいんだけど……」

301: 1 2013/08/18(日) 13:49:04.45 ID:pnDgegG70
杏子「……ねぇ、マミさん?」

マミ「どうかしたの?」

杏子「こういうのも……。
一目ぼれ、っていうのかな……。
なんて言うか、その……。
まず最初に、マミさんを見た時に……。
すごい、かっこいいと思ったんだ」

マミ「……」

杏子「それと、あたしは魔法少女としてはまだ半人前だからさ……。
こうやって、マミさんとお茶しながら色んな話を聞かせてもらって、ほんとに勉強になったよ。
何も考えずに。ただ闇雲に戦ってたあたしに比べて……。
マミさんは、今までの魔女の戦いを自己分析してちゃんと研究してるし、戦いに必要な心構えもしっかり持ってて……。
その上、実戦においても強くて頼りになる。
こんなにすごい人が隣町にいたなんて、あたし、ほんと驚いたよ!」

マミ「佐倉さん……」

杏子「だから、その……。
マミさんにお願い、っていうか……。
ずうずうしいついでっていうのもなんだけど……」

マミ「?」

302: 1 2013/08/18(日) 13:50:21.39 ID:pnDgegG70
杏子「……あたしを、マミさんの弟子にしてもらえないかな?」

303: 1 2013/08/18(日) 14:02:21.13 ID:pnDgegG70
マミ「えっ!?
で……、弟子?」

杏子「そう!
マミさんは、どこをとってもあたしの理想なんだ。
だから、迷惑じゃなかったらって……」

マミ「……」

杏子「……駄目、かな?」

マミ「……その、弟子っていうのとは違うのかもしれないけど……。
……私もずっと前から、魔法少女のお友達がいてくれたらなって、実は思ってたの」

杏子「それって……」

マミ「ええ。
私に出来ることなら、魔法少―
……先輩として、アドバイスさせてもらうわ」

杏子「!
ありがとう、マミさん!!」

マミ「いえ……。
それじゃあ、これからよろしくね!」

杏子「うん、あたしの方こそ、これからよろしくお願いします!
……マミ先輩!!」

マミ「!」

杏子「それじゃあ、また明日!」

マミ「……せ、先輩、かぁ///」

310: 1 2013/08/18(日) 19:03:37.09 ID:pnDgegG70
(それから私達は、“二人”で協力して、魔女と戦うようになっていた)


(彼女のことは、こちらに来てから常に“独り”で戦ってきた私にとっては、とてもかけがえのない存在になっていった……)

311: 1 2013/08/18(日) 19:07:57.21 ID:pnDgegG70
杏子「うわぁぁぁっ!
あっ、行っちまった……」

マミ「大丈夫!?
佐倉さん」

杏子「あ、ああ……。
ごめん、あたしのミスで使い魔を逃がしちゃった……」

マミ「気に病むことはないわ。
また、探せばいいんだから。
あなたに怪我さえなければ、それが何より」

杏子「マミさん……」

マミ「……それに、ミスをすることなんて誰にでもあるものよ。
大切なのはね、それをしっかりと反省して、どうやって次に活かせるかを考えていくことだわ」

杏子「うん、そうだね……」

マミ「さ、遠くへ逃げないうちに急いで追いかけましょう!」

杏子(あたしのミスなのに……。
マミさん、なんて優しいんだ……)

312: 1 2013/08/18(日) 19:10:18.38 ID:pnDgegG70
杏子(何だかマミさん、あたしの本当の“お姉さん”みたいだな……)

313: 1 2013/08/18(日) 19:19:13.24 ID:pnDgegG70
杏子「……そういえば、マミさん?」

マミ「なぁに?」

杏子「マミさんは、いつもグリーフシードを全部あたしに譲ってくれるけど……。
自分の魔力は、どうやって回復してるの?」

マミ「えっ?」

杏子「だって、魔力を回復しなかったら魔法が使えないから、魔女とも戦えないでしょ?
でも、あたしの前でグリーフシードを使ったことは一度も無いし……。
かといって、こっそり一人で使ってるって様子でもなさそうだから、ちょっと不思議に思って……」

マミ「……」

杏子「あっ……!
もしかして、マズい事聞いちゃった?」

マミ「……いえ、丁度いいわ。
あなたには、いつか言っておかなくちゃいけないって思ってたし……」

杏子「えっ、何を?」

マミ「……実は、私ね?
あなた達のように、キュゥべえと契約した魔法少女ではないの。
だから、グリーフシードを使う必要も無いのよ」

杏子「……えっと、どういうこと?」

マミ「ごめんなさい、それ以上のことは言えないの」

杏子「……そっか」

マミ「……ごめんね、佐倉さん」

杏子「ううん、気にしないでよ。
そりゃ、誰だって他人に教えたくないことの一つや二つはあるもんだろうしさ……」

マミ「……あら。
ということは、あなたにも私に隠してることがあるのかしら?」

杏子「……それはナイショ」

マミ「そういう風に言うってことは、やっぱり隠し事があるってことよね……」

杏子「もう!
それはお互い様なんだからいいでしょ?」

マミ「そうね……。
この話は、もう終わりにしましょうか」

杏子「うん、そうだね……」

マミ「……さ、そろそろ今日も帰ってお茶にしましょう?」

杏子「……あのさ」

マミ「?」

杏子「今日は、マミさんの所じゃなくて……。
良かったら、ウチに来ない?」

マミ「!」

314: 1 2013/08/18(日) 19:25:06.71 ID:pnDgegG70
モモ「マミおねえちゃーん!
あそんで、あそんでー!」

杏子「こら、モモ!
夕食が終わったばっかりなんだから、あとにしな!!」

モモ「え~!」

佐倉(母)「すみませんね。
下の子は、お客様が来るといつもはしゃいでしまうんですよ」

マミ「賑やかでとても楽しいです。
それに、お食事まで頂いてしまって……。
何だか、すみません」

佐倉(母)「いえ、そんな……。
もう、杏子?
先に言っておいてくれれば、もっと豪華な食事にしたのに……」

杏子「いつもどおりがよかったの!
マミさんだって、来づらくなっちゃうでしょ?」

マミ「こんなに、明るくて楽しい食事は久しぶりで……。
……本当に、感謝してます」

佐倉(父)「喜んでもらえてよかった。
実は我が家も、お客さんを呼んでも恥ずかしくないような食卓になったのは、つい最近のことなんだよ」

マミ「……本当ですか?」

佐倉(父)「ああ。
私は教会で牧師をしていてね。
世の中の幸せのためにと説いてきた私の教えは……。
長年世間には受け入れてもらえず、家族に辛い思いをさせてしまっていたんだ」

マミ「……」

佐倉(父)「ところがある日、私の話を聞いてくれる人が現れ始めたのさ」

マミ「!」

佐倉(父)「……本当に、信じられない光景だったよ。
朝、目が覚めたら……。
私の話を聞かせて欲しいと、大勢の人が集まっていたんだ」

佐倉(母)「自分を信じ、幸せの種を蒔き続けていたのが……。
やっと、花開いたんだって、私は主人に言っているの」

マミ「……そうですか」

佐倉(母)「……そういえば、杏子がお友達を連れてくるなんて初めてよね?」

杏子「あーっ!
それはナイショだってば!!」

佐倉(父)「マミさん、杏子とこれからも仲良くしてやって下さいね」

マミ「……はい!」

315: 1 2013/08/18(日) 19:32:08.41 ID:pnDgegG70
杏子「ごめんねマミさん。
すっかり遅くなっちゃって……。
でもさ、ウチなんかでよければまた来てよね!」

マミ「ええ……」

杏子「?」

マミ「ねぇ、佐倉さん。
あなたが、魔法少女になった時の願いって……」

杏子「……うん。
あたしは、裕福になりたいとか願ったわけじゃないんだ。
ただ……、『父さんの話をみんなが聞いてくれますように』ってさ」

マミ「……」

杏子「誰一人、父さんの話を理解するどころか耳を傾けさえしなかったのが……。
ずっと、悔しくて。
あたしには、耐えられなかったんだ」

マミ「……そう。
あなたは、お父様のために……」

杏子「あの、マミさん?」

マミ「なぁに?」

杏子「他人の願いを叶えるのって、そんなにおかしい事?」

マミ「……ううん。
ただ、私はね……。
その願い事が、同時に自分の願いを叶えてくれるものだったとしたら、もっと素敵だなって思っただけよ」

杏子「……」

マミ「魔女との戦いは、当然危険を伴うし……、自分を、犠牲にしなくちゃならないこともある。
それが……、自分の願い事の対価なのだと思えれば、我慢も出来るんだろうけど……。
もしも、そうでないとしたら……」

杏子「……だったら、あたしは大丈夫だね。
あたしは、みんなの幸せの為に頑張ってる父さんを、小さい頃からずっと見てて……。
だから、あたしもみんなに幸せになってもらいたいって思ってた。
そして……、その実現の一歩が、父さんを幸せにすることだったんじゃないかな?」

マミ「……」

杏子「うん、そうだよ。
『みんなの幸せを守る』
それが、あたしの願いなんだ!」

マミ「そう……。
あなたなら、大丈夫よね」

杏子「それに……。
これで、あたしとマミさんの戦う理由は同じだよね?」

マミ「えっ?」

杏子「改めて、これからもよろしく!」

マミ「……ええ、よろしくね!」

316: 1 2013/08/18(日) 19:35:06.03 ID:pnDgegG70
【数週間後】

杏子「はい、一丁上がり!
やっぱりさ……。
あたしとマミさんのコンビなら、向かうところ敵なしだよね!」

マミ「もう……!
油断は禁物よ?」

杏子「分かってるって!
でも、今のあたし達ならさ……。
……“ワルプルギスの夜”だって、倒せるんじゃないかな?」

マミ「えっ……?
……“ワルプルギスの夜”?」

杏子「えっ、もしかしてマミさん……。
知らなかったの?」

マミ「ええ、ごめんなさい」

杏子「いや、謝らないでよ。
ただ、マミさんなら知ってると思ってたから、ちょっと意外だなって」

マミ「もう、私のことを買い被り過ぎよ。
……それで、“ワルプルギスの夜”って?」

杏子「……そいつはね。
魔法少女の間で噂されてる、超弩級の大物魔女なんだ」

マミ「!
……本当に、そんな魔女が存在するの?」

杏子「うーん、あくまでも噂だからね……。
でもさ、こう言っちゃあ大袈裟かもしれないけど……。
あたし達だったら、もしもそんな大物の魔女が来たとしても目じゃないって。
……きっとさ、世界だって救えるんじゃないかって、そう思うんだよね」

マミ「……ふふふ。
あなた、随分と大きく出たわね」

杏子「ちょっと調子に乗り過ぎちゃったかな?」

マミ「ううん、そんなことないわよ。
目標は、大きい方がいいんじゃないかしら?
うふふっ!」

杏子「でも、マミさん笑い過ぎじゃない?」

マミ「ふふっ、そうかしら?」

杏子「やっぱり笑い過ぎだって!」

マミ「あら、ごめんね」

杏子「もう……!」

317: 1 2013/08/18(日) 19:39:19.68 ID:pnDgegG70
マミ「……でも、本当にそうかもね」

杏子「?」

マミ「私達だったら、きっと倒せると思うわ」

杏子「マミさん……」

マミ「だから……。
もしもいつか、本当にその“ワルプルギスの夜”がやってくる時が来たとしたら……。
その時は、一緒にこの世界を守りましょう」

杏子「うん!
あたし達“二人”で、絶対に守ってみせようよ!!」

320: 1 2013/08/18(日) 22:22:11.66 ID:pnDgegG70
【一週間後】

―あたしとマミさんは、いつものように魔女の結界を見つけて侵入していた―

杏子「よし、魔女はあそこだね!」

マミ(!?
こ、この魔女は……!)

杏子「……マミさん、どうしたの?」

マミ(間違いない、あの時の……!
でも、どうして……?
この魔女は、私が……)

杏子「?」

マミ「キュゥべえ!」

キュゥべえ「何だい?」

マミ「どうして……、この魔女が生きているの!?
この魔女は、前に私が倒したはずよ!」

キュゥべえ「おそらく、使い魔の生き残りが成長したものか……。
もしくは、君があの時そのままにしていたグリーフシードを誰かが使ってから放置して、それで再び魔女の姿に戻ったかのどちらかだろうね」

マミ「そんな……!
……今更、また出てくるなんて!!」

―今回の魔女は、どうやらマミさんが前に戦ったことのあるやつだったみたいで―

杏子「マミさん」

マミ「……」

杏子「マミさん!」

マミ「えっ?」

杏子「マミさん。
何か良く分かんないけど、早く倒しちゃおうよ!」

マミ「え、ええ。
そ、そうね……」

321: 1 2013/08/18(日) 22:25:12.03 ID:pnDgegG70
杏子「おし!
マミさん、早くいつもの技を!!」

マミ「分かったわ!」

―でも、マミさんは何故かその魔女に攻撃することをためらっているみたいだった―

杏子「……マミさん?」

マミ「!
きゃあっ!!」

杏子「マミさん!」

322: 1 2013/08/18(日) 22:30:40.01 ID:pnDgegG70
杏子「……マミさん、一体どうしちゃったのさ?
いつものマミさんらしくないよ……」

キュゥべえ「そうだね、普段の君ならあの程度の魔女を倒すことなんて造作も無いはずだよ」

杏子「キュゥべえはちょっと黙っててよ!」

キュゥべえ「分かった」

マミ「あの、私、私……」

杏子「……仕方ないね。
マミさん、今日はいったん退こう?」

マミ「えっ!?」

杏子「そんな調子で魔女と戦っても、返り討ちにされるだけだよ」

マミ「でも、私……」

杏子「あたしはパートナーとして、マミさんに言ってるんだよ。
それに……、たまにはあたしのアドバイスも聞いてくれたっていいでしょ?」

マミ「……うん、そうだね……」

杏子「それじゃあ、早くここを出よう」

マミ「ええ……」

323: 1 2013/08/18(日) 22:33:14.51 ID:pnDgegG70
【数日後】

杏子「……マミさん。
今日は、行けそう?」

マミ「ええ、私はもう大丈夫よ」

杏子「それじゃあ、まずは―」

マミ「!」

杏子「……マミさん?」

マミ(……誰かが、私を呼んでいる?)

杏子「マミさん?」

マミ「……ごめんなさい、佐倉さん。
私、ちょっと用事を思い出しちゃったから、行ってくるわね!」

杏子「ああ、ちょっと!」

杏子(あのマミさんが、魔女探索を中断しようとするなんて……。
一体、何の用事かな……?)

324: 1 2013/08/18(日) 22:44:12.61 ID:pnDgegG70
―そしてあたしは、こっそりとマミさんを追いかけていた―

杏子(……うーん。
マミさんは、何だってこんな人気の無いところに来たんだろう……?
やっぱり魔女を倒しにでも来たのかと思ったけど、特に魔女の痕跡なんかも無いみたいだしさ……)

マミ「……あ、あなただったんですか!?
私を呼んでいたのは……」

杏子(あれ……。
あのおじさん、マミさんの知り合いなのかな……?)

??「マミ……。
光の国以来だな」

マミ「どうして、ここに来たんですか!?」

??「お前と戦う為だ」

マミ「えっ……。
私と、あなたが?」

??「ああ、そうだ」

マミ「そんな……。
私はあなたと戦うことなんて出来ません!」

??「この前お前が“魔女”とやらに負けたように、俺にも勝てないからか?」

マミ「えっ!?
どうして、その事を……」

杏子「おい、おっさん!」

マミ「さ、佐倉さん!?」

杏子「アンタ、黙って聞いていればマミさんのことを好き放題言いやがって!
大体ね、別にマミさんはまだ負けたわけじゃないし!!」

マミ「あの、佐倉さん……。
私をかばってくれるのは嬉しいんだけど、それくらいに……」

??「マミ、この娘は誰だ?」

マミ「あの、その……」

杏子「あたしはね、マミさんの弟子だよ!」

??「ほう、弟子か……」

杏子「ていうか、マミさん。
コイツ、誰なのさ?」

マミ「この人の、名前は……」

325: 1 2013/08/18(日) 22:45:16.20 ID:pnDgegG70
ゲン「レオーーー!」

332: 1 2013/08/24(土) 01:51:09.48 ID:Eauollx20
―あたしは、その男が全身真っ赤の宇宙人みたいな姿に変身したのを見て、しばらくの間呆然としていた―

レオ「ここなら、俺たち以外の誰かに見つかることは無いだろう。
さぁ、変身してかかって来い!」

杏子(なっ……!
……一体、何なんだよこいつ!?
ただ、普通の言葉で喋ってるし、どうやら魔女ってわけでもなさそうだよな……)

―そしてあたしは、何とか落ち着きを取り戻して魔法少女に変身し、槍を構えて攻撃しようと思ったんだけど―

マミ「……待って、佐倉さん。
ここは、私に任せてちょうだい」

杏子「えっ?」

―マミさんは、そう言った後も何故だか少しだけ迷っているような感じだったけど、
 やがて、何かを決意したかのような表情を見せると、それから“変身”していた―

333: 1 2013/08/24(土) 01:54:40.56 ID:Eauollx20
杏子(!
……マミさん、なの……!?)

レオ「やっと変身したか。
まずは、お前の方から攻撃してみろ!」

―私は、相手との距離を慎重に測りながら近付いた後、まずはキック【黄金の美脚】で攻撃した―

レオ「……動きは悪くないが、やはり一撃の重みが足らんな」

―続けて私は、右ストレートを放った後、さらに連続でパンチを何発も繰り出した―

レオ「今度は手数で勝負か。
だが……」

―でも、ウルトラマンレオは私の攻撃を全て受け流すと、遂に反撃してきた―

マミ「きゃっ!」

レオ「どうした?
その程度の連続攻撃では、俺は倒せん!」

マミ(……ウルトラマンレオは、宇宙拳法の使い手で、近接戦闘のスペシャリスト。
それに加えて、間違いなく腕力の差もあるわけだし、どう考えたって接近戦ではこちらが不利よね……。
だったら……、これしかない!)

―そして、私はスラッガーを構えると、ウルトラマンレオに向かって投げつけた―

334: 1 2013/08/24(土) 01:57:38.48 ID:Eauollx20
―でも……、ウルトラマンレオはいとも簡単に私のスラッガーを弾き返してみせていた―

マミ(嘘!?)

―私は、素早く反対側に回って弾かれたスラッガーを拾った後、今度は思い切って直接的に攻撃しようとした―

レオ「……武器に頼れば、隙が生じる」

―そう言いながら、ウルトラマンレオはスラッガーを真剣白刃取りのような動作で受け止めていた―

レオ「……マミ、お前はそのスラッガーに頼り過ぎている。
そればかりに頼っていては、あらゆる敵と戦っていくことは出来んぞ」

マミ「……」

335: 1 2013/08/24(土) 02:02:24.46 ID:Eauollx20
マミ(そんな、私の技が全て見切られてしまうなんて……)。

―その時ウルトラマンレオは、既に“必殺技”の体制に入っているようだった―

マミ(……そういえば、ウルトラマンレオは光線技があまり得意ではなかったはず。
こうなったら、私が先に“あの技”を使うしかない!)

―私は、必殺光線【アルティマシュート】を撃とうとした、のだったけれど―

マミ(……やっぱり、撃てない!)

―そして、ウルトラマンレオの“レオキック”が、私に迫ってきていた―

339: 1 2013/08/26(月) 01:11:49.74 ID:Mzj2M4fH0
マミ(あれっ?
私……)

杏子「……マミさん、大丈夫!?」

マミ「え、ええ……」

ゲン「……やはり、今のお前は光線技が使えなくなっているようだな」

マミ「えっ?
……はい、その通りです。
でも、どうして……?」

ゲン「……俺は、別にお前を打ちのめす為に来たわけではない。
お前に“この宇宙の地球”を託せるかどうか、試めさせてもらっただけだ」

マミ「そうですか……」

ゲン「……兄さん達は許したそうだが……、俺は許さん!」

マミ「!」

杏子「アンタ、いきなり何を言い出すのかと思ったら……。
宇宙がどうとか……、地球を託す、だって?
一体何の話をしてんのさ!?」

ゲン「済まないが、君は少し黙っていてくれないか?
俺は今、マミと話をしている」

杏子「はん、そんなわけにはいかないよ!
あたしは、大切な師匠をここまで侮辱されて、黙ってられるほどいい子じゃないんでね」

マミ「佐倉さん……」

340: 1 2013/08/26(月) 01:39:31.48 ID:Mzj2M4fH0
ゲン「……まぁ、いいだろう。
とにかく、マミ。
今のお前に、この星を任せることは出来んな」

杏子「は、だから何でさ?
今まであたしとマミさんは、二人で立派に魔女と戦って来たんだ!
まぁ、確かにこの前はちょっと失敗しちゃったけど……。
今度は、必ず―」

ゲン「それは、たまたま運が良かっただけだ。
確かに今までは無事で済んでいたようだが、もっと強い敵が現れたらどうなる?
万全の状態で戦えない者に、勝てるはずがない!」

杏子「こいつ!
言わせておけば―」

マミ「駄目よ、佐倉さん。
……ウルトラマンレオの、言う通りよ」

杏子「でも……」

マミ「ねっ?」

杏子「……分かった」

マミ「……」

341: 1 2013/08/26(月) 01:51:08.42 ID:Mzj2M4fH0
ゲン「……その顔は何だ?」

マミ(えっ?)

ゲン「その目は!
その涙は何だ!?
そのお前の涙で……、この地球が救えるのか? 」

マミ「……」

ゲン「……まずは、その“魔女”とやらを倒してみろ。
さもなくば、お前には帰還してもらうことになる」

杏子「なっ……」

マミ「でも、私の任務は―」

ゲン「それは、他の誰かが引き継ぐことになるだろう」

マミ「……そうですか」

杏子「何だよそれ!?
そんなんで、あたし達が納得出来るわけ―」

ゲン「いいな、マミ?」

マミ「はい、分かりました……」

342: 1 2013/08/26(月) 02:00:40.91 ID:Mzj2M4fH0
 マミの部屋

杏子「……ったく。
あのおっさん、一体何様?
急に来たと思ったら、偉そうに色々言ってくれちゃってさ……」

マミ「……」

杏子「……あの、マミさん。
あたしの話、聞いてる?」

マミ「う、うん。
ちゃんと聞いてるわよ」

杏子「なら、いいんだけどさ……」

343: 1 2013/08/26(月) 02:03:33.76 ID:Mzj2M4fH0
マミ「……あの、佐倉さん?」

杏子「ん、何?」

―気がつくと、マミさんの顔があたしの顔のすぐ隣にあった―

杏子「!
……ま、マミさん?」

マミ「……ごめんね」

―マミさんはそう言った後、あたしの唇に向かって―

杏子「!!」

348: 1 2013/08/27(火) 00:51:15.20 ID:kC30ef4l0
杏子「……ぷはっ。
ちょ、マミさん!
いきなり何すんのさ!?」

マミ「えっ、どうして……?」

杏子「『どうして』って、それはこっちの台詞だよ!
その……、キスしてくるなんて、一体どういうつもりなの!?」

マミ「……ごめんなさい」

杏子「いや、あたしは謝って欲しいんじゃなくて、事情を聞かせて欲しいんだけど」

マミ「ええっと、その……」

杏子「“お願い”だから、今度はちゃんと教えて」

マミ「……ええ、分かったわ」

349: 1 2013/08/27(火) 01:17:21.57 ID:kC30ef4l0
―それからあたしは、マミさんの素性とか能力、ここへやってきた目的や、
 さらには“光の国”のこと等、色々な事を説明してもらっていた―

杏子「うーん、話が壮大すぎてちょっとついていけないところはあるけど……。
まぁ、大体のことは理解出来たかな」

マミ「……そう」

杏子「でも、まだ肝心な事を聞かせてもらってないよ」

マミ「なぁに?」

杏子「どうして、あたしの記憶を消そうとしたの?」

マミ「どうしてって……。
あなたに、“私のもう一つの姿”を見られちゃったし……」

杏子「あたしがそれを知ったら、何か問題でもあるの?」

マミ「いや、だって……。
“本当のこと”を知られてしまったら、あなたに嫌われちゃうんじゃないかって思っ―」

杏子「あたしのこと、見くびらないでくれる?」

マミ「えっ?」

杏子「まぁ、確かにちょっとはびっくりしちゃったけどさ……。
例えあんたの正体が何であったとしても、あたしを助けてくれた命の恩人で、大切な師匠だってことに変わりは無い。
それにそんなこと言ったら、あたしだって魔法少女なんだよ?
一般人からしたら、あたしだってもう普通の人間とは言えないだろうし……。
いや、そんな細かいことはどうでもいいんだよ。
とにかく、あたしがそんなことでマミさんを嫌いになるわけないじゃん!」

マミ「さ、佐倉さん……」

350: 1 2013/08/27(火) 01:23:39.38 ID:kC30ef4l0
杏子「ていうかさ、ちょっとくらいはあたしのことも信じてくれたっていいじゃんか……」

マミ「?
ちょっと良く聞こえなかったのだけど、何て言ったのかしら?」

杏子「いや、何でもない!」

マミ「あら、そう……」

351: 1 2013/08/27(火) 01:25:11.74 ID:kC30ef4l0
杏子「それじゃああたし、今日はもう帰るからね!」

マミ「えっ、もう?」

杏子「じゃあね!」

マミ「あっ、もう行っちゃった……」

355: 1 2013/08/31(土) 22:50:23.74 ID:pXaqT1Yr0
―あたしはマミさんの部屋を出てから家へ帰宅する途中で、
 突然、使い魔の反応を見付けて、結界へと向かっていた―

杏子「よし、ここら辺かな……。
!」

―そしてあたしは、結界に“先客”が来ていたことに気付いた―

ゲン「……」

杏子(あれは、さっきの……。
……どうやら、使い魔と戦うつもりのようだね。
まぁ、お手並み拝見といきますか……)

356: 1 2013/08/31(土) 22:55:42.24 ID:pXaqT1Yr0
―そして、そいつは―

ゲン「ハァッ!」

杏子(なっ!?
……あいつ、変身もせずに素手と蹴り技だけで使い魔を倒しやがった!)

357: 1 2013/08/31(土) 23:00:47.24 ID:pXaqT1Yr0
杏子「……なかなかやるじゃんか、あんた」

ゲン「……見ていたのか」

杏子「まあね。
とりあえず、口だけ達者なトーシロではない、ってことは分かったよ」

ゲン「そうか」

杏子「うん」

ゲン「……」

358: 1 2013/08/31(土) 23:11:30.69 ID:pXaqT1Yr0
杏子「……あのさ。
ちょっと、聞いておきたいことがあるんだけど……。

ゲン「何だ?」

杏子「あの、どうしてあんたは、あんなにマミさんに厳しくするのさ?」

ゲン「……そうだな。
マミには、俺と同じような思いをして欲しくないからだ」

杏子「えっ……。
それは、どういうこと?」

ゲン「かつて、俺は……。
邪悪な侵略者達の策略にはまり、大切な人達を守れなかった……」

杏子「……」

359: 1 2013/09/01(日) 00:20:23.65 ID:U95sho3a0
マミ(……あれは、佐倉さんと、ウルトラマンレオ!?
一体、二人で何の話をしてるのかしら……?)

ゲン「―だが……、俺はその経験から自分の弱さと愚かさを思い知り、人々を守るために戦っていくことの重大さと責任を、本当の意味で学ぶことが出来た。
そしてマミにも、その事を十分に分かっていてもらう必要がある」

杏子「あんたの言いたい事は、何となく分かったけどさ……。
でも、マミさんはそのことをちゃんと分かってるはずだよ!
それに、マミさんはもう充分辛い目にあってて―」

ゲン「確かに、マミはあの年で既に辛い経験を何度もしてきている。
だが、やがてはそれを乗り越えて行かなければ、さらなる困難に直面した時、対処出来なくなってしまうだろう。
だからこそ、あいつには強くなってもらわねばならんのだ!」

マミ(……)

杏子「……そっか。
やり方はちょっとあれな気もするけど、あんたはあんたなりにマミさんの事を考えてくれてたんだね……」

360: 1 2013/09/01(日) 00:23:48.75 ID:U95sho3a0
杏子「……そういやあたし、まだあんたに名前を教えてなかったよね?」

ゲン「?」

杏子「……あたしの名前は、佐倉杏子」

ゲン「……そうか。
ちなみに俺の名前は、おおとりゲンだ」

杏子「ゲン、か。
まぁ、よろしくね」

ゲン「ああ」

364: 1 2013/09/05(木) 00:05:13.58 ID:4zHX0z9A0
―結局あたしは次の日も、一人で魔女探索に向かうことにしていた―

杏子(これは……、この前と同じ魔力パターン!
間違いない、あの時の魔女だ……)

―そしてあたしは、すぐにその場で魔法少女に変身した―

杏子(……大丈夫。
こんな魔女、あたし一人でも簡単に―)

マミ「待って、佐倉さん」

杏子「なっ、マミさん!?」

マミ「佐倉さん、お願い。
この魔女とは、私一人で戦わせてくれない?」

杏子「えっ、でも……」

マミ「心配しなくても、ちゃんとグリーフシードはあなたにあげるから」

杏子「いや、あたしはそんな事を心配してるんじゃないってば!」

マミ「……分かってるわ。
でも、私はもう大丈夫だから」

杏子「……本当に?」

マミ「ええ、本当よ」

杏子「……分かった。
あんたを信じるよ」

マミ「……ありがとう」

365: 1 2013/09/05(木) 00:45:19.13 ID:4zHX0z9A0
―それからあたし達は、結界の中に入ってすぐに魔女を見付けた―

マミ「佐倉さん、あなたは使い魔をお願い!」

杏子「うん、分かった!」

―そしてマミさんは“もう一つの姿”に変身すると、銀の魔女の反応をじっくりと観察していた―

マミ(……今回は、誰かが捕らわれている様子も無いみたい。
だったら、今度こそこれで終わりにしてみせるわ!)

マミ「ハッ!【ミラクルマミスラッガー】」

―マミさんの放った無数の光の刃が、銀の魔女に向かって一斉に降り注いだ―

366: 1 2013/09/05(木) 01:15:32.93 ID:4zHX0z9A0
杏子「おし!」

マミ「ふぅ……」

杏子「いや……。
マミさん、そいつはまだ生きてる!」

―マミさんの攻撃は、表面のさびみたいなものを削りはしたけど致命傷を与えることは出来なかったらしく、
 しかも、運の悪いことにさびが落ちた後の魔女は、素早い動きの出来るバイクのような形態に変化していた―

マミ「えっ……?
きゃあっ!」

杏子「マミさん!」

―そして、銀の魔女はマミさんを轢いた後、今度はそのままあたしの方に遅いかかってきた―

杏子「ちっ、離せよ!」

―マミさんがやられて動揺していたあたしは、とっさの判断が遅れてしまったせいで魔女に捕まっていた―

杏子「ううっ……!」

マミ(そんな……!
このままでは、佐倉さんが……)

369: 1 2013/09/06(金) 23:23:21.84 ID:70pkrFsx0
「最後まであきらめるな!」

370: 1 2013/09/06(金) 23:26:21.14 ID:70pkrFsx0

マミ(えっ?)

レオ「イーヤァァー!」

―ウルトラマンレオが、一点を打ち抜くような正確な攻撃によって魔女の中から佐倉さんだけを切り離し、見事に救い出すことに成功していた―

371: 1 2013/09/06(金) 23:30:10.62 ID:70pkrFsx0
杏子「あれ、あたし……」

レオ「大丈夫か、杏子?」

杏子「う、うん。
……ありがと」

レオ「よし。
……マミ、ダブルフラッシャーで片を付けるぞ!
出来るな?」

マミ「……はい!」

372: 1 2013/09/06(金) 23:32:39.35 ID:70pkrFsx0
レオ・マミ「はぁっー・おりゃー!!【レオマミダブルフラッシャー】」

―そして、私とレオさんの二人で放った合体光線が、今度こそ、銀の魔女を完全に撃破していた―

杏子「おし……、やった!」

373: 1 2013/09/06(金) 23:56:39.37 ID:70pkrFsx0
マミ「あの……、ありがとうございました!」

ゲン「礼を言われるほどの事でもない」

マミ「いえ、あなたのおかげで私は……。
本当の意味で、過去の失敗に向き合うことが出来ました!」

ゲン「そうか……」

杏子「それに……。
あたしも、あんたにはほんとに感謝してるんだ。
あんたが来てくれなかったら、多分あたし達二人ともやられてたかも……」

ゲン「……」

マミ「レオ先輩!
この地球は、私がきっと……!」

ゲン「ああ。
今のお前達になら、ここを託せそうだな」

マミ「ええ、約束します!」

ゲン「それから……、杏子」

杏子「ん、何?」

ゲン「マミのこと……、よろしく頼んだぞ!」

杏子「うん、任せてよ!」

378: 1 2013/09/09(月) 21:50:49.41 ID:AZ9Lstxq0
―ある日のこと、あたしとマミさんは早めに魔女を倒した後、マミさんの要望でデパートに買い物に来ていた―

マミ「お待たせしてごめんね、佐倉さん」

杏子「えっ、あっ、うん……」

マミ「どうしたの、佐倉さん?」

杏子「どうしたって、何が?」

マミ「あなた、何かを見てたでしょう?」

杏子「いや、その……」

マミ(ええっと、あそこにあるのは……。
ちょっとしたゲームコーナーのようね)

マミ「もしかして、佐倉さん。
あそこにあるゲームをやってみたかったの?」

杏子「……うん。
あたし、ああいうのってやったこと無かったからさ……」

マミ「……しょうがないわね。
ほら、これでやってきなさい」

―マミさんは、小銭をいくつかあたしに差し出した―

杏子「えっ、でも……。
ほんとにいいの?」

マミ「こういう時は、素直に先輩に甘えておくものよ」

杏子「ありがとう、マミさん!」

―そしてあたしは、目的のゲーム機に向かって走っていった―

379: 1 2013/09/09(月) 21:57:08.43 ID:AZ9Lstxq0
杏子「あっ!
駄目か……。
おし、次こそは!!」

マミ「佐倉さん、私もこういうのはあまり詳しいわけではないのだけれど……。
もう少し、落ち着いてやった方がいいんじゃない?」

杏子「ごめん、マミさん。
今回はあたしの力だけで取りたいから、アドバイスはしないで!」

マミ「ふふっ、分かったわ」

380: 1 2013/09/09(月) 22:11:36.35 ID:AZ9Lstxq0
杏子「いいぞ、そのまま行け……。
おし、やったっ!」

マミ「あら、取れたの?」

杏子「うん!
ただ、さっきマミさんから貰ったお金を全部使っちゃったけどね……」

マミ「あれはあなたにあげたお金なんだから、好きに使って構わないのよ」

杏子「ありがと、マミさん。
それじゃあ……、はい!」

―あたしは、クレーンゲームで取ったクマのぬいぐるみをマミさんに差し出した―

マミ「えっ?
これ……」

杏子「あたしは、あのゲームをしてみたかっただけだから……。
それに、マミさんも欲しそうにしてたでしょ?
だからさ、受け取ってよ!」

マミ「……うん。
ありがとう、佐倉さん。
大切にするわね」

384: 1 2013/09/14(土) 01:03:57.84 ID:UY00Xnzj0
杏子「!?」

―妹と一緒に部屋で寝ていたあたしは、いきなり魔女の反応を感知して目を覚ましていた―

キュゥべえ(テレパシー:杏子、大変だ!)

杏子(テレパシー:分かった、すぐ行く!)

385: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/14(土) 01:06:06.79 ID:UY00Xnzj0
杏子「何……、この臭い?
!?
そんなバカな!」

信者A「俺達には、神様の教えなんて必要なかったんだ。
そんなものに頼らなくても、簡単に幸せになれる方法を知ってるんだから……」

信者B「ええ、その通りですよ……」

杏子「なっ、何だよあいつら……」

キュゥべえ「これも魔女の呪いだよ」

杏子「ちっ……」

―そこにいた男の一人が、今にもマッチで火を付けようとしていた―

杏子(この教会ごと燃やすつもりだ……。
でも……、そんなことさせるもんか!)

―あたしは、幻惑魔法の力を使って男を動揺させた隙にマッチを取り上げた―

杏子「よし!
次は―」

386: 1 2013/09/14(土) 01:07:12.66 ID:UY00Xnzj0
杏子「……さてと。
そこのテメェ、もちろん覚悟は出来てるんだよな?」

杏子「あたしの父さんの大切な教会を、ふざけた呪いで汚しやがって……。
絶対に、タダじゃ済まさねぇ!」

―そしてあたしは、教会の中で魔法少女の姿に変身していた―

387: 1 2013/09/14(土) 01:32:29.31 ID:UY00Xnzj0
―あたしが使い魔達を倒しながら様子を伺っていると、すぐに鳥のような姿をした魔女がその姿を現した―

杏子「フン……。
なんだ、わざわざそっちから出向いてくれるなんて手間が省けるよっ!」

―あたしは槍の穂先で魔女の体を薙ぎ払おうとしたけど、予想よりもダメージが少なかったみたいで、
 魔女はすぐに体勢を立て直した後、あたしの槍を噛んで無理やり押さえつけて動かし、そのままあたしを足場の無いところまで追いやった―

杏子「なっ……。
アイツ!」

―そして、その魔女は使い魔を差し向けてあたしを撹乱させた後、トドメをさそうと直接襲い掛かってきた―

388: 1 2013/09/14(土) 01:51:07.25 ID:UY00Xnzj0
―でも、あたしが咄嗟に発現させた複数の槍で魔女の体を一斉に貫くと、
 流石にダメージが蓄積してきたのか、魔女もよろめき始めていた―

杏子「……ったく。
随分と食い意地張ったやつだよね……。
エサたちを喰い損ねたのが、そんなに悔しいかい?
だけどさ……、悪いけど、一人たりとも喰わせちゃやれないよ!」

―あたしは、マミさんとの修行によって上達させてきた幻惑の魔法による分身技【ロッソ・ファンタズマ】を発動させた―

杏子「……魔女なんかに、こんな場所で好き放題させてたまるかよ。
父さんの教会も、家族も、みんな……。
あたしの手で、守るんだから!」

―そしてあたしは、その鳥のような姿をした魔女にトドメをさした―

389: 1 2013/09/14(土) 01:54:25.93 ID:UY00Xnzj0
杏子「はぁー、やっぱあたし一人で魔女と戦うのはちょっときつかったぁ……。
まぁ、それよりも―」

杏子(……厄介なもの、残されたな。
いや、大丈夫。
まだ夜明けまで時間もあるし、騒ぎになる前に―)

佐倉(父)「……杏子?」

杏子「!
父さん……」

392: 1 2013/09/14(土) 20:10:17.35 ID:UY00Xnzj0
マミ「……佐倉さん。
今日も来てくれなかったな……」

マミ(……大丈夫よね。
佐倉さんは、他の子達とは違ったもの……)

マミ「……よし。
今日も、頑張らなくっちゃね!」

393: 1 2013/09/14(土) 20:15:11.94 ID:UY00Xnzj0
ニュースキャスター「―それでは、次のニュースです。
昨夜未明、○○県風見野市の民家で火災が発生しているとの通報がありました。
駆けつけた消防隊員によって火は間もなく消し止められましたが、建物の一部を焼失。
民家からは、この家に住む一家三人の遺体が発見されました。
遺体で見つかったのは、佐倉―」

マミ「!」

ニュースキャスター「現場の状況から、警察は無理心中を図った可能性が高いとみて捜査を続け―」

マミ「佐倉……、さん?」

394: 1 2013/09/14(土) 20:33:02.40 ID:UY00Xnzj0
キュゥべえ「―厄介なことになったね、杏子」

杏子「……キュゥべえ」

キュゥべえ「魔法が使えなくなってしまったんだろう?」

杏子「どうして……?」

キュゥべえ「君がいらないと言ったからさ」

杏子「!」

キュゥべえ「君の願いが生み出した能力は“幻惑”だ。
おそらく君は、自らの願いを潜在意識で拒絶してしまったんだろう。
本来、魔法少女に与えられる魔法の属性は叶えた願いの内容と直結しているからね」

杏子「……」

キュゥべえ「能力を取り戻さない限り、今後の戦いにおいては大きなハンデとなるだろうね」

杏子「……はは、そっか。
全部、自業自得だ。
本当に、救いようないや……。
父さんと……、家族みんなを守りたくて、魔法少女になったのに……。
……こんなザマじゃあ、自分すらも満足に守れやしないじゃないか……」

395: 1 2013/09/14(土) 20:55:10.94 ID:UY00Xnzj0
マミ「佐倉さん!」

杏子「マミ、さ……」

マミ「すごく冷たい……、震えちゃってるじゃない。
それに、ひどい怪我だわ……。
魔女に、やられたのね?
すぐに治すからね……」

杏子「……」

マミ「無事でよかった。
ずっと顔見せてくれなかったから、心配してたのよ?」

杏子「……ごめん、マミさん。
あたしはもう、あんたとは……」

マミ「……ごめんね。
一人で辛かったでしょ……。
先輩、失格だよね?
本当なら、すぐにでも駆けつけてあげなくちゃいけなかったのにね……」

杏子「マミさん……」

マミ「……あなただけでも、生きていてよかった」

杏子「!
…………ぜんぶ、全部、あたしのせいなんだ……。
あたしが、みんなを死なせちゃったんだ……」

396: 1 2013/09/15(日) 00:00:43.75 ID:66v0KfC+0
【数日後】

マミ「佐倉さん、今日の戦いは何?
……どうして、幻惑の魔法を使わなかったの?」

杏子「……あんなもん使わなくたって、魔女くらい倒せるんだよ」

マミ「え?
でも、分身技を使えばその傷だって負わずに済―」

杏子「どんな敵だって、真正面から突っ込んでぶっ叩きゃあいいんだよ!」

マミ「佐倉さん……」

杏子「あー、そうだ。
あんたに言っておきたかったことがあるんだよね」

マミ「?」

杏子「今後の戦い方の方針なんだけどさ……。
これからは、魔女も使い魔もみんな倒すんじゃなくて、魔女一本に絞ろうよ?」

マミ「!」

杏子「グリーフシードを落としもしない使い魔なんて、倒すだけ無駄さ。
ああ、そうか。
そりゃあ、あんたにはグリーフシードなんて必要ないから関係無いかもしれないけどさぁ……。
あたしは雑魚を狩るのに余計な魔力を使いたくないんだよね」

マミ「どうしたの、佐倉さ―」

杏子「地球の平和だか、正義の為だか知らないけどさ。
正直言って、これ以上あんたみたいなヒーロー様の道楽に付き合うのは面倒なんだよね。
やっぱり、あたしには性に合わないっていうかさぁ……」

マミ「……なにを言ってるの……?
確かに、あなた達魔法少女にとってグリーフシードが重要なものだということは聞いてるわ。
でも、だからといって魔女も使い魔も関係ないでしょう?
放っておいたら、犠牲が出るのよ!
私達が、やらなくちゃ―」

杏子「だからって、誰も彼も救うことなんてできっこないだろ!?」

マミ「……」

397: 1 2013/09/15(日) 00:03:22.28 ID:66v0KfC+0
杏子「魔女に取り憑かれようが憑かれまいが、死にたがるヤツは死んじまうんだ。
……そんな奴ら、命張って助ける必要なんてあるのかよ?
だったら、放っといて使い魔に食わせてグリーフシードの元にしちまえばいいんだ!」

マミ「……佐倉さん。
ご家族のこと……、あなたの気持ちは私にも分かる。
だけど、そんな風に自暴自棄になっては駄目よ」

杏子「ハァ?
何が分かるんだよ……!
事故で家族を失ったのと……。
自分のせいで家族が死んだのじゃ、全然違うだろ?」

マミ「!」

杏子「あんたに言われた通り、あたしは最初から自分のためだけの願いを叶えるべきだったんだよ。
そうすれば、傷つくのは自分だけで済んだんだ……。
他人の都合もおかまいなしに身勝手な幸せを押し付けたから、家族みんなをあたしの不幸に巻き込んだんだ……」

マミ「……」

杏子「ざまあないよ。
全部あたしの魔法が引き起こしたんだ。
……あんただって、ハラの中じゃ当然の結果だろって、そう思ってんだろ……?」

マミ「そんな、こと……」

杏子「だからあたしは決めたんだよ。
……もう二度と、誰かの幸せのためだとか、他人の命を救う為だとか、そんな理由で魔法は使わない。
この力は……、自分の為だけのものにするんだ、って……」

マミ「さ、佐倉さ―」

杏子「だからもうあんたと一緒には戦えない。
コンビは解消だ、じゃあな」

398: 1 2013/09/15(日) 00:06:18.94 ID:66v0KfC+0
マミ「待ちなさい!」

杏子「なっ!?
掴むな、離せっ!」

マミ「駄目よ。
今のあなたを放っておくことなんて、私に出来るわけないでしょう!」

杏子「うるさい!
魔法少女でも無いくせに、これ以上あたしに口出しすんな!!」

マミ「!」

杏子「……そうだよ。
そういやあんたは魔法少女どころか、この星の人間かどうかも怪しいんだったよねぇ……。
そんなヤツに、あたし達魔法少女のことをとやかく言われたくねぇんだよ!」

マミ「……」

399: 1 2013/09/15(日) 00:12:45.47 ID:66v0KfC+0
マミ「…………そう、よね。
あなたの、言う通りだったわ……」

杏子「?」

マミ「私……。
……私達は、本来ならあなた達のような魔法少女の行動に干渉するべきでは無かったのよね……」

杏子「あ……」

マミ「分かったわ。
私は、今まで通りに魔女と使い魔を倒していくつもりだけど……。
これからは、あなたのやり方に口を挟んだりはしないし、もちろんあなたの縄張りにも手を出したりしないわ。
ただ……、その代わりにあなたもこの街にはもう来ないで。
お互い、相互不干渉ということにしましょう」

杏子「……」

マミ「それじゃあ……。
さよなら、佐倉さん」

杏子「…………クソ……」

400: 1 2013/09/15(日) 00:15:07.54 ID:66v0KfC+0
―この後私は、この時に佐倉さんを引きとめておかなかったことを……。
 一生、後悔する羽目になってしまった―

401: 1 2013/09/15(日) 00:30:22.94 ID:66v0KfC+0
―それからも私は、独りで魔女と使い魔の退治を続けていた―

マミ「― finale !」

少女(す、すっごーい……!)

マミ「大丈夫?」

少女「……は、はい。
あの……、ありがとうございました!」

マミ「いいのよ。
……それより、急いでいたんでしょ?
お行きなさい」

少女「!」

マミ「気をつけてね」

少女「はい、お姉さんも!」

402: 1 2013/09/15(日) 00:39:42.50 ID:66v0KfC+0
魔法少女「……ふぅーん。
あれが噂の、“グリーフシードを必要としない魔法少女”、ですかぁ……」

キュゥべえ「正確には、彼女のことは魔法少女と呼ぶべきでは無いと思うんだけどね」

魔法少女「それって、どういうことですかぁ?」

キュゥべえ「まず彼女は、僕と契約した魔法少女ではないし……。
彼女が使っている力も、君達魔法少女の魔力とは明らかに異なる性質のものなんだ。
まぁ、僕が見えると言うことは、今でも魔法少女の素質があるみたいだし、本人も魔法少女と名乗っているから―」

魔法少女「なあんだ。
別にそんなことはどうでもいいんですよぉ!
重要なのは、私の下僕としてふさわしい力があるかどうか、だけですから……」

405: 1 2013/09/16(月) 23:14:02.68 ID:MkegkcKp0
【数ヵ月後】

マミ「あら……」

魔法少女「マミさん。
お昼、いっしょしましょ!」

マミ「ええ、そうしましょうか」

406: 1 2013/09/16(月) 23:20:08.33 ID:MkegkcKp0
魔法少女「……まったく、みんなひどい人達ですよね!
マミさんが頑張って魔女を退治してくれているから平和に過ごせているのに、あんなによそよそしい態度を取ってくるなんて……」

マミ「でも、それは仕方ないわ。
放課後は遊ぶ暇も無いから、お誘いとかがあっても断らざるを得ないし……。
それで付き合いが悪いと思われて、みんなと疎遠になっちゃうのも―」

魔法少女「でもっ!
マミさんは何も悪くないじゃないですか!!」

マミ「……」

魔法少女「わたし、マミさんのことはお姉ちゃんみたいに思ってるし……。
どんな理由があろうとそういう態度を取るのは許せません!」

マミ(お姉ちゃん、かぁ……)

魔法少女「マミさん、どうかしましたか?」

マミ「……いえ。
あなたのような、心強い味方がいてくれて良かったな、って思って……」

魔法少女「えへへー、まかせてくださいっ!
わたしは、マミさんの一番の味方ですからねっ!!」

マミ「……ありがとう」

407: 1 2013/09/16(月) 23:23:10.61 ID:MkegkcKp0
マミ「……あら、もう時間ね。
そろそろ戻りましょうか?」

魔法少女「はいっ、マミさん!
…………。
……くふふっ」

408: 1 2013/09/16(月) 23:32:35.04 ID:MkegkcKp0
【数週間後】

マミ「…………。
はぁ……。
いつまで隠れて見ているつもり?」

杏子「久しぶり……。
相変わらず、すかしてんじゃん」

マミ「あなたは、変わってしまったわね。
粗暴で利己的になってしまった……」

杏子「うるせーなぁ!
あんたに何がわかるのさ!!」

マミ「まさか、今ので怒ったの?
……図星をつかれたから?」

杏子「テメェ……!
あんまり、調子に乗ってんじゃねぇ!!」

マミ「……朝から力を使って悪目立ちするつもり?
あなたらしいわね。
……まぁ、たとえ誰かに見つかったとしても……、私とあなた、周囲の人はどちらを信用するかしら?」

杏子「……クソッ、面白くねぇ!」

409: 1 2013/09/16(月) 23:35:12.11 ID:MkegkcKp0
マミ「……本当に、変わったわね」

杏子「……あんたが変わらなさ過ぎるんだよ」

マミ「…………」

杏子「まぁ、結局あたしとあんたじゃさ、合わなかっただけさ。
だから、別れた……、それだけじゃん」

マミ「……。
それで、何の用?
どうして、あなたがこの見滝原に?」

杏子「ふん、あたしがどこに居ようがあたしの勝手じゃん。
それが魔法少女ってもんなのさ」

マミ「……」

杏子「……わかってる……。
あたしはさ、ただ、見に来ただけ……」

マミ「?」

杏子「ふふん……、キュゥべえから聞いたぜ?
また一人お仲間が増えたらしいじゃん」

マミ「!」

杏子「せっかくだからさ、どんな奴か見物していこうと思ってさ。
巴マミと一緒にいることができる奴を」

マミ「彼女に近寄らないで」

杏子「何だよ……。
そんなに大事な奴だって言うのか?」

マミ「…………」

杏子「ふーん……。
あんたが一目置くくらいじゃん?
ぜひとも実力を見てみたいけどねぇ」

マミ「……もし、彼女になにかしてご覧なさい。
絶対に許さない。
たとえあなたであっても容赦しないわ」

杏子「……っ、くだらねーよ。
本当にくだらねぇ!
勘違いしてんじゃねぇ。
ちょっかい出す気なんてさ、ハナからねぇ」

マミ「……そう、ならいいの」

杏子「あんたに頼るくらいの弱っちい魔法少女なんて、わざわざ見るまでもねぇ」

マミ「じゃあ、用はそれで終わりね。
私急いでるから、ごきげんよう。
……佐倉杏子さん」

杏子「ちっ!
面白くねぇ……」

414: 1 2013/09/17(火) 23:23:14.71 ID:ouQplIgR0
杏子(くそっ……、何やってるのさ、あたし……。
もう一度マミに会ったって、ロクなことにならないってわかってたはずだろ……。
……未練がましい真似してんじゃねぇよ)

415: 1 2013/09/17(火) 23:34:47.00 ID:ouQplIgR0
【数分後】

杏子「!」

―その時あたしは、近くに結界が出現したことに気付いていた―

杏子(こいつは……、使い魔か。
だが……)

―幼い子供が一人、結界に巻き込まれているところを目撃してしまったあたしは、
 何となく、いつものように立ち去ることが出来なかった―

杏子(ちっ……。
巻き込まれるところを直接見ちまった後で見捨てたら、流石にこっちの寝覚めも悪くなっちまうよな……。
しゃあねぇ、今日くらいは―)

魔法少女「うーん、反応があったのはここら辺ですよねぇ……」

杏子(……他の魔法少女が来たのか。
それなら、あたしの出る幕は―)

魔法少女「なーんだ、また使い魔ですかぁ……。
……帰っちゃおっと」

―そいつはそう言うと、踵を返してそのまま結界から離れていった―

杏子(なっ、アイツ……!
だが、まずはこっちを何とかするのが先か……)

―あたしは急いで結界の中に入ると、すぐに槍を使い魔に向けて投げつけて一瞬で倒した―

子供「あっ、ああ……」

杏子「さっさとこっから逃げな」

―その子供は無言のままうなずくと、その場から走り去っていった―

杏子(よし、次は―)

416: 1 2013/09/17(火) 23:39:41.13 ID:ouQplIgR0
杏子「おい、そこのアンタ!」

魔法少女「えっ、もしかして私のことですかぁ?」

杏子「ああ、そうだよ。
……アンタ、何でさっきの使い魔を無視したりしやがった?」

魔法少女「はぁ?
いきなり何言って―
あっ!
もしかしてあなた、新人さんですかぁ?」

杏子「ふん、違うっつーの。
これでもアタシは、魔法少女としての経験はそこそこ積んでる方だしさ」

魔法少女「だったら……。
使い魔を逃がすことの意味くらい、いちいち言わなくても分かりませんかぁ?」

杏子「…………。
……もちろん、そんなことは分かってるよ。
だが、この街は―」

魔法少女「言っておきますけど、ここは私の縄張りなんですよ?
だから、私がどうしようと勝手じゃないですかぁ!」

杏子「は?
アンタ、何言ってんだ?
この街は、マミの―

……もしかして、アンタがマミのパートナーなのか?」

魔法少女(テレパシー:くふふっ……。
パートナー?)

杏子(こいつ、何で急にテレパシーを―)

魔法少女(テレパシー:アンタ、何言ってるんですかぁ?
巴マミはですね、ただの下僕に過ぎませんよぉ?)

杏子「!
テメェ!!」

―あたしは、思わずそいつの胸倉に掴みかかっていた―

魔法少女(テレパシー:くふふっ……、やっぱり手を出してきましたか。
でも―)

杏子「?」

魔法少女「やっ、止めて下さい~!
殺さないでぇ~」

杏子(なっ、いきなり何を―)

417: 1 2013/09/17(火) 23:48:33.04 ID:ouQplIgR0
マミ「ハッ!」

杏子「!
マミ、いきなり何しやがんだ!!」

マミ「あなたこそ、どういうつもり?
その子に近寄らないで、って警告したはずよ」

杏子「なっ……!
違う、これは―」

マミ「言い訳なんて聞きたくないわ。
今すぐにここを立ち去りなさい。
そうすれば、今回だけは見逃してあげるわ」

杏子「ちっ、クソッ……!」

418: 1 2013/09/17(火) 23:53:03.20 ID:ouQplIgR0
マミ「ふぅ……。
怪我は無い?」

魔法少女「……ええ、無いです」

マミ「そう、良かったわ……」

魔法少女「……」

419: 1 2013/09/17(火) 23:54:59.13 ID:ouQplIgR0
魔法少女(テレパシー:……キュゥべえ。
さっきの女は、一体誰なんですか?
どうやら、巴マミの知り合いみたいでしたけど……)

キュゥべえ(テレパシー:彼女は風見野の魔法少女で、名前は佐倉杏子。
ちなみに巴マミとは、かつて師弟関係だったことがある)

魔法少女(テレパシー:なるほど、お弟子さんですかぁ……。
だから、あんなにしつこく突っかかってきたわけですね。
…………)

キュゥべえ(テレパシー:何か、考えがあるようだね。
どうするつもりだい?)

魔法少女(テレパシー:いえ。
ただ、危険分子は早めに排除しておいた方がいいかもしれないと思いましてねぇ……)

423: 1 2013/09/18(水) 23:55:50.93 ID:lyOIRyes0
―ひとまず風見野に戻ったあたしは、これからどう行動すべきかについて、
 何とか考えを巡らせようとしていた―

杏子(……どう考えても、マミはあの魔法少女に騙されてる。
だが……、今のあたしがそれを伝えようとしたところで、信じてもらえるわけもないしな……)

杏子「クソッ、どうすればいいんだよ……!」

魔法少女「何をどうするんですかぁ?」

杏子「なっ……。
テメェは!」

―あたしの背後には、いつの間にか先程の魔法少女が現れていた―

杏子「……テメェ、一体何のつもりだ?
あたしの縄張りに直接乗り込んでくるなんて、いい度胸してんじゃねぇか……」

―あたしは魔法少女の姿に変身し、いつでも対処出来るように身構えた―

魔法少女「まぁまぁ、落ち着いて下さい。
今日はあなたと争う為にここへ来たわけではないんですよ」

杏子「何?
まさか、あたしに謝りに来たとでも言うつもりじゃないよねぇ?」

魔法少女「ええっと、そうですね……。
とりあえず、私の目を見て下さい」

杏子「!」

424: 1 2013/09/18(水) 23:58:18.30 ID:lyOIRyes0
杏子「ふーん、なるほどねぇ……。
そうやって洗脳魔法を使って、あいつのことも操ったってわけ?」

魔法少女「!
なんで!?」

杏子「悪いけど、あたしはそういう魔法には耐性があるんでね。
残念でした!」

魔法少女「ちっ……!
……仕方ありませんね。
だったら、別の方法を使いますか……」

―そいつはそう言うと、魔法少女の姿へと変身した―

杏子「ふん、このあたしと戦うつもりか?」

魔法少女「いや、あなたと戦うのは私じゃありませんよぉ?
あなたと戦う相手は……、あなたが大切に思ってるこの人です!」

杏子「?
……まさか!」

―あたしの目の前には、瞳から輝きの失せたマミが立ちはだかっていた―

427: 1 2013/09/19(木) 23:49:53.18 ID:8o2rUKKT0
杏子「おいおい、嘘だろ……?」

魔法少女「私には、幻覚を見せる力はありませんからね……。
残念ですけど、本物ですよ?
……さぁ、行きなさい!」

―そいつがそう言うと、ブーメランのような形の刃物を持ったマミがあたしに襲い掛かってきた―

杏子「ちっ……」

428: 1 2013/09/20(金) 00:24:39.89 ID:zuHnYOtv0
―そして、あたしはマミと少しの間戦っていたけど、
 今操られている状態のマミには、かつてあたしと一緒に戦っていた時の強さは全く感じられなかった―

杏子(……まるで、マミの影と戦ってるみたいだ。
本当のマミの強さは……、こんなもんじゃない!)

杏子「おい、マミ!
さっさと正気に戻りやがれ!!」

魔法少女「くふふふふっ。
そんな呼びかけだけで、元に戻ると本気で思ってるんですかぁ?
無理無理、無理ですってぇ!

杏子「だったら……。
こうするまでだよ!」

―あたしは槍の柄を多節棍状に変形させると、その鎖をマミの体に巻きつけて動きを封じた―

魔法少女「!」

―あたしはそのまま柄の方でマミを拘束しながら、素早い動きで移動して、槍の穂先部分をそいつの首の前に突き付けた―

杏子「死にたくないなら、さっさとこいつを元に戻しな」

魔法少女「ぐ……。
うぐぐ……」

429: 1 2013/09/20(金) 00:39:38.77 ID:zuHnYOtv0
魔法少女「も……。
申し訳ありませんでしたぁ~!」

杏子「は?」

魔法少女「降参です……。
あなた達の前には二度と現れませんから、許してください~」

杏子「……
まぁ、それはあいつを元に戻してから―
!」

―マミがあたしの拘束を力ずくで引き千切った後、残った柄の部分ごとあたしを振りまわして遠くへと投げつけた―

杏子「うっ!」

魔法少女「やりましたっ!
さぁ、今が反撃のチャンスですよ!!
さっさと“全力”で倒しちゃって下さい!!!」

―マミは虚ろな目をしたまま頷くと、服の中から“何か”を取りだした―

杏子(!
ここであいつが変身しちまったら……)

―あたしは魔力を使ってスピードを上乗せすると、何とか変身する前に全速力でマミに近付こうとした―

432: 1 2013/09/20(金) 23:13:29.98 ID:zuHnYOtv0
―そしてあたしは、何とかマミの手から変身道具を奪うことに成功した―

杏子「ぐっ……、うう!」

―だが、あたしは接近した時にマミの攻撃によって深手を負わされてしまっていた―

杏子(ちょっと不用意に近付き過ぎちまったか……)

―あたしは、痛覚を遮断しながら何とかマミと距離を取り、そのまま物陰に隠れた―

杏子(……よし、これで何とか―)

―だが、その時マミが念力のような技を使ってくると、あたしは流石に堪えきれず、隠れていた場所から落下していた―

杏子「うっ……!」

433: 1 2013/09/20(金) 23:18:23.50 ID:zuHnYOtv0
杏子(畜生っ……。
どうしたら、マミを元に戻せ―
……そうか!
マミじゃなくて、あいつを直接攻撃すれば……)

―あたしはもう一度立ち上がると、その魔法少女に向かって突進しようとした―

魔法少女「!」

―だが、当然のごとくマミに行く手を阻まれてしまい、あたしは再びマミと戦わざるを得なかった―

杏子(やっぱり、さっきの怪我のダメージがでかいな……。
このままじゃ、あたしの方がやられちまう……。
どうすればいい……?)

434: 1 2013/09/20(金) 23:23:13.10 ID:zuHnYOtv0
魔法少女「よし、今ですっ!」

杏子(やばっ……!)

―あたしはマミに吹っ飛ばされ、盛大に尻餅をついて倒れこんだ―

杏子「!」

―そして、マミが持っている武器の刃が、あたしの体を真っ二つに切り裂こうとしていた―

435: 1 2013/09/20(金) 23:45:44.40 ID:zuHnYOtv0
―でも、その刃があたしの体を切断することはなかった―

魔法少女「!
なっ、何が起こったんですかぁ!?」

杏子「はん、ばーか」

魔法少女「!?」

杏子「あたしの固有魔法は、幻惑の力。
あんたはそいつにまんまと引っ掛かったってわけさ……」

―あたしは、ギリギリのタイミングで幻惑魔法をわずかに取り戻し、その力を使って何とか難を逃れることが出来た―

魔法少女「ちっ……!」

―さらにあたしは、そいつの頭から槍の柄でソウルジェムだけを弾き飛ばしてキャッチし、再び槍の穂先を首に突き付けた―

杏子「おーっと、それ以上動くんじゃないよ。
余計な真似をしたら、今度こそテメェを殺す」

魔法少女「ぐっ……」

杏子「よし、いい子だ。
死にたくなかったら、今すぐにこっから出てけ。
それと、二度とあたし達の前に姿を現すんじゃねぇぞ。
もしもそいつを守らなかったら、テメェの命は無いものと思いな。
分かったか!?」

魔法少女「はっ、はい!」

杏子「それじゃあ、さっさと失せなよ」

魔法少女「でも、私のソウルジェムは―」

杏子「こいつは、しばらくの間あたしが預かっとく。
心配すんなよ、あんたが反省してるようなら後でキュゥべえのやつにでも届けさせるからさ。
さぁ、早く行きなよ」

魔法少女「わっ、分かりました……」

436: 1 2013/09/20(金) 23:56:29.03 ID:zuHnYOtv0
マミ「ううーん……」

杏子「目、覚めたかい?」

マミ「えっ……?
……佐倉さん、なの?」

杏子「ああ、そうだよ」

マミ「どうして、ここに―」

―でも、佐倉さんは私のその問いに答えることが出来なかった―

マミ「!
佐倉さん!!」

439: 1 2013/09/21(土) 22:22:25.26 ID:1/xlRO740
―佐倉さんが急に倒れたのを確認した私は、自分の動きのスピードを加速させ、
 佐倉さんの体がそのまま地面にぶつかってしまう前に何とか受け止めていた―

マミ「佐倉さん!」

杏子「ま、マミ……」

マミ「ひどい怪我だわ……。
誰にやられたの!?」

杏子(……さっきまでの記憶、無いみたいだね。
まぁ、その方がいいよな……)

マミ「とにかく、すぐに治すから―」

杏子「もう、いいんだ」

マミ「えっ?」

杏子「もう、手遅れだよ。
だから、無駄なエネルギーを使わなくても―」

マミ「そんなことないわ!
このくらいの怪我、私なら治せ―」

杏子「……そっちじゃないよ。
ほら、これを見て」

―佐倉さんはそう言うと、自らのソウルジェムを私に持たせた―

マミ「!!」

―ひどく穢れが溜まったそのソウルジェムを見た瞬間、
 私は、佐倉さんが言った言葉の意味を理解してしまった―

マミ「そんな……。
嘘でしょ?」

杏子「いや、おそらくあんたの考えてる通りで合ってるだろうね。
ったく、キュゥべえの奴もほんとひでぇ真似をしてくれたよな……」

マミ「で、でも!
まだ何か方法があるはず―」

杏子「もう、間に合わないよ。
……だから、マミ。
最後に一つだけ、あんたに頼みたいことがある」

マミ「……何?」

杏子「……あたしを、殺してくれ」

マミ「!
……何を言ってるの!?
そんなこと、出来るわけないじゃない!!」

杏子「……何言ってんだよ。
あんたなら簡単に出来るだろ?」

マミ「ふざけないで!」

杏子「別にふざけてなんかないって。
それに今すぐやらないと、あんたにもっと迷惑かけちゃうよ?」

マミ「迷惑なんて、いくらでもかけなさいよ!
だから、簡単に諦めちゃ駄目!!」

杏子「はは、参ったな……。
全く、あんたも無茶なことを言ってくれるよね……」

マミ「…………」

杏子「分かった、あたし―
……う、ううっ!」

マミ「佐倉さん!?」

杏子「あっ、ちくしょうっ……。
うあああーっ!!!」

449: 1 2013/09/23(月) 00:41:16.63 ID:bIvb/dT90
杏子「そうだ、マミ」

マミ「なぁに、佐倉さん?」

杏子「あたしの目を見てくれる?」

―佐倉さんはそう言った後、私に何らかの魔法を掛けたようだった―

マミ「……何をしたの?」

杏子「ちょっとした、おまじないみたいなもんかな……。
大丈夫、あんたに害はないはずだよ」

マミ「?」

440: 1 2013/09/21(土) 22:24:57.68 ID:1/xlRO740
杏子(ごめん、マミさん……)

441: 1 2013/09/21(土) 22:30:21.14 ID:1/xlRO740
(そして、佐倉さんは……。
 ……私の目の前で、“魔女”になってしまった……)

450: 1 2013/09/23(月) 00:55:19.56 ID:bIvb/dT90
魔法少女(クソッ、佐倉杏子め……!
私をとことんバカにしやがって……)

魔法少女(どうにか、隙をついてソウルジェムを……。
なっ……、佐倉杏子が、魔女になった!?
……ヤバいっ、さっさとここから逃げ切って……)

魔法少女(!?
意識が―)

442: 1 2013/09/21(土) 23:33:02.01 ID:1/xlRO740
―私がしばらくの間呆然としていると、
 いつのまにか、私の足元にキュゥべえが現れていた―

マミ「……キュゥべえ!
どうして……、佐倉さんは魔女になったの!?」

キュゥべえ「君との戦いで、彼女は魔力を大量に消費してしまったからだろうね」

マミ「……“私との、戦い”?
一体、何の話なの!?」

キュゥべえ「そうか、君にはさっきまでの記憶が無いんだね。
それじゃあ、簡単に説明させてもらうよ。
君はね、ある魔法少女の洗脳魔法の影響を受けて、今までほとんど自我を失っていたんだ。
そして、それを不満に思った杏子がその魔法少女と対立したことで、君と杏子は戦うことになった。
結局勝利したのは杏子の方だったから、君は元の状態に戻る事が出来たんだよ」

マミ「それじゃあ……。
佐倉さんが魔女になってしまったのは、私のせいだっていうの!?」

キュゥべえ「ある意味では、そうだと言えるかもしれないね。
君が見滝原周辺の魔女と使い魔をほとんど一人で倒し尽くしていたことも、少なからず影響しているだろうし」

マミ「……どういうこと?」

キュゥべえ「君が見滝原とその周辺の魔女と使い魔を倒し続けたことで、魔法少女と魔女の数のバランスが極端に崩れてしまったんだよ。
まぁ、君は風見野だけは避けていたようだけど……、それでも君の影響が全く無いわけはないだろうしね」

マミ(そんな……。
私の行動は、魔法少女のみんなを追い詰めているだけだというの……?)

マミ「いや、待って!
そもそも、どうして魔法少女が魔女になるの!?」

キュゥべえ「そもそも魔法少女は、いずれは魔女になる運命を背負った存在だからね」

マミ「……あなた、一体何を言ってるの!?
だったら、どうしてあの子達を魔法少女にしたの?
あなたの目的は、一体何だと言うの?
もしかして、人類を滅ぼして、この星を侵略しようとでもしているの?」
答えなさい!」

キュゥべえ「勘違いしないで欲しいんだが、僕らは何も、人類に対して悪意を持っている訳じゃないし、ましてや、侵略しようなんて、全く思ってないよ。
全てはね、この宇宙の寿命を伸ばすためなんだ」

マミ「“この宇宙”の……、寿命?
それが、魔法少女のこととどう関係があるというの!?」

キュゥべえ「君も他の星へ行ったことがあるのなら、知ってる可能性もあるのかな?
今、この宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方なんだよね。
だから僕達は、熱力学の法則に縛られないエネルギーを探し求めて来た。
そうして見つけたのが、魔法少女の魔力だよ」

マミ「?」

キュゥべえ「僕達の文明は、知的生命体の感情を、エネルギーに変換するテクノロジーを発明した。
ところが生憎、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった。
そこで、この宇宙の様々な異種族を調査して、この星に住む人類という種族を見出したんだ。
人類の個体数と繁殖力を鑑みれば、一人の人間が生み出す感情エネルギーは、その個体が誕生し、成長するまでに要したエネルギーを凌駕する。
人間達の魂は、エントロピーを覆す、エネルギー源たりうるんだよ。
とりわけ最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女の、希望と絶望の相転移だ。
ソウルジェムになった少女達の魂は、燃え尽きてグリーフシードへと変わるその瞬間に、膨大なエネルギーを発生させる。
それを回収するのが、僕達、インキュベーターの役割なんだ」

マミ「…………」

443: 1 2013/09/21(土) 23:54:28.30 ID:1/xlRO740
マミ「……あなた達の目的については、理解したわ」

キュゥべえ「そうか、良かったよ」

マミ「でも……。
今のあなた達のやり方を認めるわけにはいかないわ!」

キュゥべえ「どうしてだい?」

マミ「あなた達のやり方は、この星の人達を犠牲にすることが前提でしょう?
そんなやり方を許すなんて、私には―」

キュゥべえ「確かに犠牲と言えるかもしれないが、その代わりに素晴らしい物をもたらしてくれるんだし、
少しくらい犠牲が出ることも、別に構わないと思うんだけど……。
もちろん、人類にとってもメリットがないわけじゃないしね。
そもそも人類は、今現在で69億人、しかも、4秒に10人づつ増え続けている。
それなのに、どうして単一個体の生き死にでそこまで大騒ぎする必要があるんだい?
それに僕達はね、あくまで彼女達の合意を前提に契約しているんだよ?
それだけでも、充分に良心的なはずなんだが……」

マミ「でも、それは彼女達を騙してたようなものでしょう!?」

キュゥべえ「騙すという行為自体、僕達には理解出来ない」

マミ「……」

444: 1 2013/09/22(日) 00:04:55.29 ID:PYR/JjN60
キュゥべえ「そういえば、“あの魔女”を倒さなくてもいいのかい?」

マミ「!」

キュゥべえ「まぁ、僕としては別に君がどうしようと構わないけどね。
……いや、やっぱり少し訂正するよ。
君が今まで通りに魔女と使い魔を倒し続けてくれれば、グリーフシードが枯渇していき、それだけ新しい魔女が生まれる可能性も増えるからね」

マミ「…………」

キュゥべえ「それで、君はどうするんだい?」

―そして私は、少し悩んだ後に変身すると、“目の前にいる魔女”に向かって、必殺光線を放った―

445: 1 2013/09/22(日) 00:31:29.60 ID:PYR/JjN60
キュゥべえ「魔女を一撃で倒すとは、流石だね」

マミ「…………」

キュゥべえ「君が魔法少女でないというのが、本当に惜しいよ。
君ほどの力を持っていれば、それはきっと素晴らしい魔女になってくれただろうしね。
いや、今からでも遅くはないのか。
君が“普通の人間”とは異なる存在になったからと言って、魔法少女の素質が消えたわけではないんだし。
むしろ、新しい因果を背負ってくれたことで、より大きな素質を得ているはずだ。
どうだい、君も今から僕と契約を―」

マミ「……キュゥべえ」

キュゥべえ「何だい?」

マミ「今から、あなたは……。
私達……、いえ、“私”の敵よ」

キュゥべえ「それはどういう意味だい?」

マミ「これからは、あなた達が新しい魔法少女を生みだそうとするのを全力で阻止させてもらう。
そして、この星に存在する魔女も使い魔も、全て私が倒して、魔法少女が魔女との戦いで魔力を使わないようにさせる。
これ以上……、あなた達の思い通りには、絶対にさせない!」

キュゥべえ「でも、魔法少女は魔女と戦わなくても魔力を使うんだよ?」

マミ「その分は、私が倒した魔女のグリーフシードで補ってもらうわ」

キュゥべえ「だとしても、いずれは限界が来るよ。
そもそも、君一人でそんなことが本当に出来ると思っているのかい?」

マミ「……一人じゃないわ」

―私はそう言った後、佐倉さんの形見である黒いリボンと髪飾りを身につけ、
 さらに、目の前にあったグリーフシードを拾った―

キュゥべえ「まだ使っていないグリーフシードだね。
出来れば、使用してから僕に渡してくれると助かるんだけど―」

マミ「あなたには、絶対に渡さないわ」

キュゥべえ「……」

マミ「それじゃあ、さよなら。
“インキュベーター”」

451: 1 2013/09/23(月) 01:00:02.62 ID:bIvb/dT90
魔法少女(あれ、私……?)

キュゥべえ「意識が戻ったようだね」

魔法少女「キュゥべえ……!
さっ、さっきのは一体どういうことなんですか!?」

キュゥべえ「“さっきの”とは、一体何のことだい?」

魔法少女「だから!
佐倉杏子は、どうして魔女になったんですか!?」

キュゥべえ「そうか、君もまだ知らなかったのか。
別に魔法少女が魔女になるのは珍しいことではないよ。
そもそも全ての魔法少女は、やがては魔女になる運命を背負っている存在だからね」

魔法少女「なっ……!
う、嘘ですよね?」

キュゥべえ「いや、間違いなく本当のことだよ」

魔法少女「そんな……!
だっ、騙したのかっ!?」

キュゥべえ「騙すという行為自体、僕たちには理解出来ないんだ。
認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は、他者を憎悪するんだよね」

魔法少女「ふ、ふざけるなっ!
……い、いやだっ!
魔女になんかなりたくない!」

―彼女はそう言うと、自らの手でソウルジェムを砕いた―

キュゥべえ「……わけがわからないよ」

452: 1 2013/09/23(月) 01:11:30.84 ID:bIvb/dT90
【数ヵ月後】(>>451の後)

マミ(反応があったのは、ここね。
……あら、あの子達は……?)

さやか「―何それ?
ぬいぐるみじゃないよね?
生き物?」

まどか「わかんない。
わかんないけど……。
この子、助けなきゃ!」

マミ(あれは、インキュベーター……!)

さやか「あれ、非常口は?
どこよここ!?」

まどか「変だよ、ここ。
どんどん広くなってる……」

さやか「あーもう、どうなってんのさ!」

まどか「やだっ、何かいる……」

マミ(とにかく、あの子達を助けないと!)

>>5に続く

457: 1 2013/09/23(月) 21:03:31.31 ID:bIvb/dT90
【現在】

ほむら(もうすぐ、“ワルプルギスの夜”が来る。
佐倉杏子が死に……、巴さんもあんな状態では、戦力的には厳しいと言わざるを得ない。
だけど、今回はまどかだけでなく美樹さやかのことも契約させずに済んでいる……。
それだけでも、十分よね……。
だからこそ、私は最後まで諦めるわけにはいかない)

―私がそんな風に考えていたその時、突然私の家のチャイムが鳴らされた―

ほむら「?
こんな時間に誰?」

まどか「……こんばんは、ほむらちゃん」

ほむら「……鹿目さん!
どうして、ここが分かったの?」

まどか「えっと、早乙女先生に聞いたの……。
プリントを届けたいって言ったら、教えてくれたんだよ」

ほむら「……そう」

まどか「……入って、いいかな?」

ほむら「……ええ、どうぞ」

458: 1 2013/09/23(月) 21:13:26.98 ID:bIvb/dT90
まどか「これが……、『ワルプルギスの夜』?」

ほむら「どうして、その名前を?」

まどか「マミさんから、聞いてたの。
凄く強い魔女をやっつけるために、ほむらちゃんと二人で戦うんだって。
だから、ずっとここで準備してたんだね」

ほむら「……」

まどか「街中が、危ないの?」

ほむら「今までの魔女と違って、こいつは結界に隠れて身を守る必要なんてない。
ただ一度具現しただけでも、何千人という人が犠牲になる。
相変わらず普通の人には見えないから、被害は地震とか竜巻とか、そういった大災害として誤解されるだけ」

まどか「なら、絶対にやっつけなきゃダメだよね……。
でも、戦える魔法少女はもうほむらちゃんだけしか残ってないよね?
だったら……!」

ほむら「一人で十分よ!
巴さんがいなくても、私一人でワルプルギスの夜を撃退出来る」

まどか「ほんとに?」

ほむら「ええ」

まどか「何でだろ……?
わたし、ほむらちゃんのこと信じたいのに……。
嘘つきだなんて思いたくないのに、全然大丈夫だって気持ちになれない。
ほむらちゃんの言ってることが、本当だって思えない」

ほむら「本当の気持ちなんて、伝えられるわけないのよ……」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「だって、私は……。
私はまどかとは、違う時間を生きてるんだもの!」

まどか「えっ…?」

459: 1 2013/09/23(月) 21:17:22.45 ID:bIvb/dT90
ほむら「……私ね、未来から来たんだよ?
何度も何度もまどかと出会って……。
それと同じ回数だけ、あなたが死ぬところを見てきたの……。
どうすればあなたが助かるのか、どうすれば運命を変えられるのか……。
その答えだけを探して、何度も始めからやり直して……」

まどか「それって……、え?」

ほむら「ごめんね。
わけわかんないよね……、気持ち悪いよね?
まどかにとっての私は、出会ってからまだ一ヶ月も経ってない転校生でしかないものね……」

ほむら「だけど私は……、私にとってのあなたは……。
同じ時間を何度も何度も……、何度も繰り返して……。
それでも救えなかった、私の大切な友達……」

まどか「……ほむらちゃん。
まさか……、ほむらちゃんはわたしのために魔法少女に……」

ほむら「……でもね、繰り返せば繰り返すほど、あなたと私が過ごした時間はずれていく。
気持ちもずれて、言葉も通じなくなっていく。
……たぶん私は、もうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う」

まどか「ほむら、ちゃん……」

ほむら「……あなたを救う、それが私の最初の気持ち。
今となっては、たったひとつだけ最後に残った、道しるべ……。
わからなくてもいい、何も伝わらなくてもいい。
それでもどうか、お願いだから……。
まどか、あなたを私に守らせて」

まどか「…………」

460: 1 2013/09/23(月) 22:08:16.26 ID:bIvb/dT90
短い上にまたもやほとんどアニメと変わらない展開で申し訳ありませんが、今日はここまで。

SSの投下はこれだけですが、代わりにちょっと“過去編”についての補足説明(というか言い訳)を行います。

まずは、このSS中での“マミさんの使い魔狩りが及ぼす影響”の解釈について。

“過去編”の元ネタの一つであるTDS(『まどか☆マギカ』の公式スピンオフ漫画)では、
“マミさんが使い魔を倒すことは、結果的にライバルの魔法少女がグリーフシードを得るチャンスを減らしていることになり、
悪意が無いとはいえ、マミさんが自分以外の魔法少女の魔女化を促進させることに一役買ってしまっているのでは?”
という可能性が示唆されています(見滝原が優れた魔女の狩り場であるのも、このことが理由の一つになっている、という説まであります)。

そして、このSSではその説を拡大解釈して、“マミさんが魔法少女の時以上の大いなる力を持った状態で、同じように使い魔を借り続けたら、どのような結果を引き起こす可能性があるのか?”
と考えた結果、原作以上の残酷な事態になってしまうこともありうるのではないかと思い、このような展開にしました。

また、ウルトラ化した状態のマミさんは魔力を必要としないので、本来ならばそれでまだバランスが取れるのかもしれませんが、
ここでは、マミさんを操っていた魔法少女がグリーフシードを独占していた為に他の魔法少女に行き渡らなくなった(グリーフシードを独り占め出来るので、使い魔狩りもある程度は自由にやらせていた)という解釈にしています。

もちろん、上記の解釈は極限まで悪い方に考えた場合の解釈なので、これが真実という風に断言することは出来ませんが、
もしもこの説が少しでも正しかったら、“マミさんが一般人を助ける為に頑張って使い魔を倒せば倒すほど、間接的とはいえ、その分だけ魔法少女が犠牲になってしまう”ということになり、
インキュベーター達は本当に酷いシステムを作ったものだな、と思わされます。

462: 1 2013/09/23(月) 22:58:38.30 ID:bIvb/dT90
それともう一つは、“過去編”終盤での“真実を知った後のマミさんの選択”について。

このSSでは、ウルトラ化したマミさんに“全ての魔女と使い魔を、自分の手で殲滅させる”という、
一見すると、アニメ最終回におけるまどかと類似しているようにも思える選択をさせましたが、当然、これが最適解であるという風に思っているわけではありません。

もちろん、キュゥべえに“万能の神にだってなれるかもしれない”とまで評されるほどの素質を持ち、
実際に“神のような存在”にまでなってしまったまどかにとっては“悪くない選択”(脚本を担当した、虚淵さん自身による評価)だったのかもしれませんが、
ここでのマミさんは、ウルトラ化してはいても、あくまで神ではありませんし、
今後の展開のネタばれになってしまうのでまだ詳しくは書けませんが、“ウルトラマミさんの選択”には、重大な欠点があります。

それと、マミさんが“先輩達”に助けを求めようとしなかったことの理由については、ウルトラ兄弟達が“別の任務”で忙しいことに加えて、
杏子ちゃんとの離別時に“個人ではなく組織の一員である”ということを重視して行動した結果、
最悪の事態を引き起こしてしまった(もちろん、自分を拒絶した杏子ちゃんを許しきれなかったというのもありますが)ということや、
また、インキュベーターが侵略を目的とした宇宙人ではなく、半分騙したような形であるとはいえ、少女本人達の合意を得て契約を成立させている上、
目的そのものも悪い事ではない為、インキュベーターを簡単に断罪することは出来ないと判断し、
さらに、自分が規律違反を犯してしまう可能性(今後の展開で出てきます)も考慮して、
組織の一員としてではなく、巴マミ個人として、インキュベーター達と敵対するという選択を選んだ、という風にしています。

もちろん、ウルトラ兄弟や先輩達にちゃんと事情を話せば助けてくれた可能性もありますが、
極限まで追い込まれてしまったせいで、アニメ本編のほむらちゃんのように、“誰にも頼らない(頼れない)”状態の思考になってしまった、という感じです。

少し強引な解釈が含まれる上にかなりの長文になってしまいましたが、“過去編”の補足説明についてはこれで終わりです。

なお、次回の投下に関しては、また今週中を予定しています。

464: 1 2013/09/25(水) 00:52:29.90 ID:RrQc0QoP0
【次の日】

―私は、巴さんの容体を確かめるべく、彼女の住むマンションへと足を運んだ―

さやか「ん、やっぱりまどかも来たの?
あっ……」

ほむら「……。
あなたも、来てたのね」

さやか「あー、うん、そうなんだ。
なるべくマミさんと一緒にいてあげた方がいいんじゃないかと思って、あたしとまどかが交代で出来る限りここに来るようにしてたんだよね。
事情を知ってるのはあたし達しかいないし、他の誰かに頼むわけにもいかないでしょ?」

ほむら「そうね。
……ありがとう。
きっと、巴さんも感謝してるはずだわ」

さやか「いや、これくらい当然のことだよ。
マミさんには、いっぱい迷惑かけちゃったしさ……」

ほむら「……」

さやか「……」

465: 1 2013/09/25(水) 00:56:01.83 ID:RrQc0QoP0
さやか「……ねぇ、転校生?」

ほむら「何かしら?」

さやか「この街に、何かすっごいヤバい魔女が来るって聞いたんだけど、ほんとなの?」

ほむら「ええ、本当よ。
……鹿目さんに聞いたの?」

さやか「うん、そうだよ」

ほむら「そう……」

さやか「……」

ほむら「……」

466: 1 2013/09/25(水) 01:00:08.82 ID:RrQc0QoP0
さやか「あのさ。
ちょっと、あんたに相談したいことがあるんだけど……」

ほむら「……何のこと?」

さやか「ええっと、その……。
あたしも、あんたと一緒に戦うことって出来ないかな?」

ほむら「!
あなた、何を言ってるの?」

さやか「いや、その、『ワルプルギス』の何とかっていう魔女、ものすごく強いんでしょ?
だからさ、あたしが魔法少女になって、あんたと協力して戦えば、少しは―」

ほむら「絶対に駄目よ!」

さやか「えっ?」

ほむら「あなた、これまで一体何を見てきたの?
魔法少女になるというのは、たった一つの希望と引き換えに、全てを諦めなくてはならないのと等しいこと。
一度魔法少女になってしまったら、もう救われる望みなんてない。
あなたは今までさんざん私達のことを見てきたはずで、“今回”はちゃんと説明もしたのに……。
あなたには、それが少しも分からなかったの!?」

さやか「あたしだって、魔法少女になることが大変だってことくらい分かってるわよ!
でも―」

ほむら「それに、あなたみたいな初心者が仲間になったところで、まともな戦力になんてなるはずもない。
むしろ、足手まといになる可能性の方がずっと高い。
それなら、私一人で戦った方がマシだわ」

さやか「っ!
あんた、そこまで言う!?
あたしだって、あんたの―
!」

ほむら「だから、あなたは絶対に契約なんてしては駄目よ……」

さやか「…………」

467: 1 2013/09/25(水) 01:03:26.84 ID:RrQc0QoP0
さやか「……本当に、あんた一人で『ワルプルギスの夜』に勝てるんだよね?」

ほむら「……ええ、保障するわ」

さやか「……そっか、分かったよ」

ほむら「そう。
それなら、私はこれで―」

さやか「ねぇ、“ほむら”」

ほむら「!
……何かしら?」

さやか「あたしもあんたのこと、信じるからね……」

ほむら「…………そう」

さやか「……」

ほむら「……それじゃあ、私はもう帰るわ」

さやか「うん、またね……」

468: 1 2013/09/25(水) 01:04:56.48 ID:RrQc0QoP0
さやか(……バカ、無理してんのバレバレだっての。
でも、今回だけはあんたの言う通りにしておくよ……)

472: 1 2013/09/25(水) 23:52:24.19 ID:RrQc0QoP0
 ほむらの部屋【回想】

キュゥべえ「……時間遡行者、暁美ほむら。
過去の可能性を切り替えることで、数多の並行世界を横断し、君が望む結末を求めて、この一ヶ月間を繰り返してきたんだね。
どうりで、僕に君との契約の記憶がない筈だ」

ほむら「……」

キュゥべえ「ただね、君の存在が一つの疑問に答えを出してくれたよ。
何故、鹿目まどかが魔法少女としてあれほど破格の素質を備えていたのか?
今なら、納得いく仮説が立てられる」

ほむら「?」

キュゥべえ「魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる。
一国の女王や救世主ならともかく、ごく平凡な人生だけを与えられてきたまどかに、どうしてあれほど膨大な因果の糸が集中してしまったのか不可解だった。
だが……、ねぇ、ほむら。
ひょっとしてまどかは、君が同じ時間を繰り返すごとに……、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい?」

ほむら「……ッ!」

キュゥべえ「……やっぱりね。
原因は君にあったんだ。
正しくは、君の魔法の副作用と言うべきかな?」

ほむら「……どういうこと?」

キュゥべえ「君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ、鹿目まどかの安否だ……。
同じ理由と目的で、何度も時間を遡るうちに……、君はいくつもの並行世界を螺旋状に束ねてしまったんだろう。
……鹿目まどかの存在を中心軸にして、ね。
その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら……。
彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく。
君が繰り返してきた時間……、その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだ。
あらゆる出来事の元凶としてね」

ほむら「……ッ」

キュゥべえ「お手柄だよ、ほむら。
君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

ほむら「!!」

473: 1 2013/09/25(水) 23:54:37.39 ID:RrQc0QoP0
ほむら(そんな、私のせいで……。
まどかは、強力な魔法少女としての素質をもってしまったというの!?
キュゥべえが執拗にまどかを魔法少女にしたがったのは、私が原因……?)

ほむら(……大丈夫。
いくらまどかが強力な魔法少女になれるとしても、魔法少女そのものにしなければ関係ないわ……)

ほむら(私が……。
『ワルプルギスの夜』を倒せれば問題ない。
そう……、問題ない、筈……)

474: 1 2013/09/25(水) 23:56:30.44 ID:RrQc0QoP0
ほむら「……話は、それだけ?」

キュゥべえ「ああ、そうだよ」

ほむら「なら、早く帰って」

キュゥべえ「……分かったよ」

ほむら「いや、やっぱり待ってちょうだい。
一つだけ、あなたに確認しておきたいことがある」

キュゥべえ「何だい?」

ほむら「『ワルプルギスの夜』にも、巴さん用の“対策”をしてあるの?」

キュゥべえ「いや、何もしてないはずだ。
元々『ワルプルギスの夜』は、光の巨人の姿に変身した巴マミが万全の状態で戦ったとしても、間違いなく苦戦は免れないほどに強力な魔女なんだ。
そして、彼女があのような状態になって戦えないと分かった今、そんな小細工をする必要もないと思うしね」

ほむら「……そう。
それだけ聞ければ、もうあなたに用はないわ」

キュゥべえ「……」

475: 1 2013/09/25(水) 23:57:09.69 ID:RrQc0QoP0
キュゥべえ「……本当に、君一人で戦うつもりなのかい?」

ほむら「ええ、もちろんよ」

キュゥべえ「そうか。
ほむら、君の健闘を祈っておくとするよ」

ほむら「…………」

476: 1 2013/09/26(木) 00:00:31.12 ID:cKJ0/rol0
 マミの部屋【現在】

まどか「……マミさん。
わたし、マミさんに話しておかなくちゃならないことがあるんです」

マミ「……」

まどか「“私”、魔法少女になろうとおもってるんです」

477: 1 2013/09/26(木) 00:03:39.43 ID:cKJ0/rol0
まどか「……多分、マミさんは反対ですよね?
でも……、私はやっと、本当に叶えたい願い事を見つけたんです。


マミ「……」

まどか「それと、もう一つだけ。
私、マミさんには、普通の女の子に戻って欲しいんです」

マミ「……」

478: 1 2013/09/26(木) 00:07:56.54 ID:cKJ0/rol0
【数分後】

まどか「……これからは、私がマミさんの代わりに戦います。
だから、マミさんは今までずっと頑張ってくれていた分まで、しっかりと休んでいて下さいね」

マミ「……」

まどか「それじゃあ、マミさん。
また あした、ここに来ますから」

マミ「…………」

482: 1 2013/09/26(木) 23:47:42.03 ID:cKJ0/rol0
【数日後】

広報車「本日午前7時、突発的異常気象に伴う避難指示が発令されました。
付近にお住まいの皆様は、速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。
こちらは、見滝原市役所広報車です。本日、午前7時―」

483: 1 2013/09/26(木) 23:53:06.40 ID:cKJ0/rol0
ほむら(……いよいよだわ。
結局、巴さんは今日になっても目を覚まさなかった。
残されたのは、私一人……。
それでも……。
私一人でも、戦うしかない!)

ほむら(まどか……。
あなたの運命を変えられるのなら……。
この命、捨ててもいい)

―でも、その時―

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「……まどか、どうしてあなたがここに!?
街の人は皆、避難した筈よ。
早く避難所に戻って!」

まどか「一人で戦うなんて無理だよ。
だから、私も一緒に―」

ほむら「絶対に駄目!!」

まどか「どうして……?」

ほむら「私は、運命を変えたいの。
あなたの、運命を……」

まどか「運命なんて変わらなくたっていい。
平凡で幸せな鹿目まどかのままでいられなくてもいい。
だから、私は―」

ほむら「私にとって、あなただけが唯一の希望なの」

まどか「……希望?」

ほむら「前に言ったわよね?
あなたは最後に残った、道しるべだって……。
あなたを守ることは、私自身の救いでもあるのよ。
だから、早く避難所に戻って」

まどか「だったら……。
お願い、約束して。
絶対、無事に戻って来てくれるって。
それが約束出来ないのなら、戦うのをやめて。
……一緒に、避難所に行こう」

ほむら「……わかった、約束する」

ほむら(ごめんなさい、まどか。
私は―)

まどか「わたし、祈ってるから……。
ほむらちゃんがわたしの元に帰って来てくれるよう、ずっとずっと祈ってるから」

ほむら(でも、これでいい。
まどか……。
あなたが魔法少女にならなければ、無事でいてくれさえすれば……)

489: 1 2013/10/06(日) 00:30:04.24 ID:DUeTBZLG0
―私は、盛大なパレードのように行進していく使い魔達を無視し、そのまま『ワルプルギスの夜』のいる方向へと前進し始めた―

490: 1 2013/10/06(日) 00:32:36.87 ID:DUeTBZLG0

491: 1 2013/10/06(日) 00:33:17.91 ID:DUeTBZLG0


492: 1 2013/10/06(日) 00:33:56.90 ID:DUeTBZLG0
―やがて、私が『ワルプルギスの夜』の膨大な魔力の波動を察知して立ち止まると、
『ワルプルギスの夜』は、その圧倒的な魔力を使って周囲の瓦礫やビルを浮遊させ始めた―

493: 1 2013/10/06(日) 00:34:57.49 ID:DUeTBZLG0


494: 1 2013/10/06(日) 00:36:22.31 ID:DUeTBZLG0


495: 1 2013/10/06(日) 00:37:52.89 ID:DUeTBZLG0
―『ワルプルギスの夜』が自身の歯車を動かすと、浮遊させられていた瓦礫やビル等の全てが禍々しい炎で包まれた―

496: 1 2013/10/06(日) 00:39:05.18 ID:DUeTBZLG0
―そして、私は魔法少女の姿へと変身した―

484: 1 2013/09/26(木) 23:55:31.92 ID:cKJ0/rol0
ほむら(ついに……。
現れたわね、『ワルプルギスの夜』!
私一人だけしかいないけど、その分これまで以上の準備をしてあるわ。
だから、今度こそ……) 

497: 1 2013/10/06(日) 00:39:38.83 ID:DUeTBZLG0
ほむら「今度こそ、決着をつけてやる!」

498: 1 2013/10/06(日) 00:53:05.77 ID:DUeTBZLG0
―まず私は、盾の中から大量の対戦車兵器【RPG-7 & AT-4】を取り出して並べた後、すぐに時間停止の魔法を発動させ、
  時間が止まっている隙にそれら全てを『ワルプルギスの夜』に向けて発射した―

―私が時間停止を解除したのと同時に全てのロケット弾が一斉に直撃し、その影響で横に移動した『ワルプルギスの夜』に対し、
  続けて私は、あらかじめ設置しておいた迫撃砲【L16】による追撃を加えた―

―対戦車兵器と迫撃砲を使った連続攻撃を受けて『ワルプルギスの夜』が巨大な塔の付近まで移動したのを確認した私は、爆薬【C-4】を使ってその塔を破壊し、
  それが倒れていく時の衝撃で押し潰そうとしたけど、相手の反撃によって塔は破壊されてしまっていた―

―その後も私は、そのまま焦らずに機械操作の魔法を使って燃料【危険物第四類】が満たされた状態のタンクローリーを操作し、
  鉄橋の近くまで移動していた『ワルプルギスの夜』の頭部に直撃させた―

―さらに私は、水中に忍ばせておいた対艦ミサイル【SSM-1】と巡航ミサイル【トマホーク】を機械操作の魔法で起動させ、
  先にSSM-1を直撃させた後、その衝撃で押された場所の途中にある送電線の切断時の電撃も加えさせながら『ワルプルギスの夜』を遠ざけ、それからトマホークを二発同時に発射した―

―そして、一連の攻撃によって『ワルプルギスの夜』がその地点へ到達するであろうと私が予測していた場所に配置していた大量の地雷が計算通りに作動し、
 『ワルプルギスの夜』は、その爆発による焔に包まれた―

ほむら「…………」

499: 1 2013/10/06(日) 01:03:13.27 ID:DUeTBZLG0
―自分の攻撃が、『ワルプルギスの夜』に絶大なダメージを与えることが出来たはず、と思いこみ、すっかり油断していた私は、
  その後、すぐにそれが間違いであったことを思い知らされる羽目になった―

ほむら「!
うっ……」

―私は、『ワルプルギスの夜』の使い魔達を利用した攻撃によって盛大に吹っ飛ばされていた―

500: 1 2013/10/06(日) 01:05:38.82 ID:DUeTBZLG0
ほむら(どうして……。
どうしてなの?
何度やっても、“あいつ”に勝てない……)

501: 1 2013/10/06(日) 01:09:20.73 ID:DUeTBZLG0
ほむら(また時間を戻して……、駄目。
同じ時間を繰り返せば、それだけまどかの因果が増えていく……。
私がやってきたことは結局、まどかを苦しめているだけ?)

―私のソウルジェムが、ゆっくりと穢れ出していた―

502: 1 2013/10/06(日) 01:10:59.92 ID:DUeTBZLG0
ほむら(いけない!
希望を捨てては……。
私まで、絶望しては……)

ほむら「私は……。
まだ、戦える!」

503: 1 2013/10/06(日) 01:12:21.97 ID:DUeTBZLG0
―でも、その時―

まどか「ほむらちゃーん!」

ほむら「あの声は……?」

まどか「はぁ、はぁ……。
ほむらちゃん!」

ほむら「!
まどか……?」

507: 1 2013/10/06(日) 17:46:48.25 ID:DUeTBZLG0
まどか「ほむらちゃん、ごめんね」

ほむら「まどか……?
まさか!?」

まどか「“私”、魔法少女になる」

508: 1 2013/10/06(日) 17:49:21.14 ID:DUeTBZLG0
ほむら「……あなた、何を言ってるの!?
私は、まだ戦えるわ!
だから―」

まどか「もういい。
もういいんだよ、ほむらちゃん。
私、やっとわかったの。
叶えたい願い事、見つけたの。
だからそのために、この命を使うね」

ほむら「やめて!
それじゃあ……。
それじゃ私は、何のために……」

まどか「ごめん、本当にごめん。
これまでずっと、ずっとずっと、ほむらちゃんに守られて、望まれてきたから、今の私があるんだと思う。
そんな私が、やっと見つけ出した答えなの。
信じて。
絶対に、今日までのほむらちゃんを無駄にしたりしないから」

ほむら「まどか……」

509: 1 2013/10/06(日) 17:50:12.77 ID:DUeTBZLG0
―そして、インキュベーターが覚悟を決めたまどかの前に進み出ていた―

まどか「…………」

キュゥべえ「数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みだろうと、叶えられるだろう」

まどか「……本当だね?」

キュゥべえ「さあ、鹿目まどか。
その魂を代価にして、君は何を希う?」

まどか「“わたし―」

510: 1 2013/10/06(日) 17:53:30.00 ID:DUeTBZLG0
??「“その必要は無いわ!”」

515: 1 2013/10/07(月) 00:12:18.88 ID:L/ftRJ/c0
まどか・ほむら「その声は……。
マミさん(巴さん)!?」

マミ「二人とも、お待たせ!」

まどか「どうして―」

マミ「……そうね。
私は、暁美さんとの約束を守りに来たの」

ほむら「えっ?」

マミ「約束したでしょう?
私達“二人”で『ワルプルギスの夜』と戦う、って」

ほむら「巴さん……」

まどか「でも、マミさんは―」

マミ「私なら、もう大丈夫よ。
十分休んだし、ちゃんと戦えるわ」

まどか「……」

516: 1 2013/10/07(月) 00:15:29.63 ID:L/ftRJ/c0
マミ「それじゃあ、行きましょう!
って言いたいところだけど……。
暁美さんは、ちょっと休んでいた方が良さそうね」

ほむら「私はまだ、戦えます」

マミ「もう、無理しないの。
後は先輩の私に任せなさい」

ほむら「でも―」

マミ「ねっ?」

ほむら「はっ、はい……」

517: 1 2013/10/07(月) 00:18:10.45 ID:L/ftRJ/c0
キュゥべえ「巴マミ」

マミ「……キュゥべえ」

キュゥべえ「どうして君は、その二人に嘘をついてまで戦おうとするんだい?」

まどか・ほむら「えっ?」

マミ「キュゥべえ、余計なことを言わないで」

まどか「ちょっと待って下さい!
キュゥべえ、どういうこと?」

キュゥべえ「今の彼女は、とても一人で『ワルプルギスの夜』と戦える状態とは言えないんだよ」

マミ「黙りなさい」

まどか「やっぱり、マミさん……」

キュゥべえ「暁美ほむらに無理をするなと言っていたけど……。
無理をしてるのは、どう考えても君の方なんじゃないのかい?」

マミ「黙りなさい、と言ったでしょう!」

518: 1 2013/10/07(月) 00:21:27.44 ID:L/ftRJ/c0
―マミさんがキュゥべえに向かって大声で怒鳴ったその時、ちょうど、息を切らした様子のさやかちゃんが私達がいる場所の近くまで来ていました―

さやか「わっ、びっくりした……。
って、マミさん!
やっぱり、ここにいたんですね……」

マミ「美樹さん……」

まどか「…………」

さやか「あの……。
あたし、何か邪魔しちゃいました?」

マミ「いえ、大丈夫よ」

さやか「なら、いいんだけど……」

519: 1 2013/10/07(月) 00:24:17.21 ID:L/ftRJ/c0
マミ「……とにかく、みんな。
私は、大丈夫だから」

まどか「いや、駄目です!
やっぱり、私が―」

マミ「鹿目さん。
……あなたが私の代わりに戦うって言ってくれた時は、本当に嬉しかったわ」

まどか「!
だったら―」

マミ「“昔”の私だったら、あなたの申し出を受け入れていたかもしれない。
でも、“今”の私には、どうしても出来ないの」

まどか「……どうしてですか?」

マミ「私にも、本当に守りたいと思えるものが出来たから、かしら……」

まどか「でも、でも―」

さやか「まどか」

まどか「さやかちゃん……」

520: 1 2013/10/07(月) 00:25:17.91 ID:L/ftRJ/c0
キュゥべえ「全く、本当に訳が分からないよ。
どうして君達は、そうやって勝ち目のない、無意味な戦いに挑もうとするんだい?」

マミ「勝ち目がないなんて、分からないじゃない……」

521: 1 2013/10/07(月) 00:27:11.99 ID:L/ftRJ/c0
ほむら「……巴さん」

マミ「なぁに?
暁美さん」

ほむら「必ず、勝って下さい」

マミ「ええ、もちろんよ。
私は―」

ほむら「そして、絶対に私達の元へ戻って来て下さい」

マミ「…………」

ほむら「巴さん?」

マミ「……ええ、分かったわ。
それじゃあ、行ってくるわね!」

522: 1 2013/10/07(月) 00:28:10.33 ID:L/ftRJ/c0
―そして、巴さんは光の巨人の姿に変身すると、
 『ワルプルギスの夜』に立ち向かって行った―

526: 1 2013/10/07(月) 22:13:40.43 ID:L/ftRJ/c0
―まず最初に巴さんは、光の鎖に変形させた腕輪で『ワルプルギスの夜』を拘束しようとしたけど、残念ながらその拘束は一瞬で破られてしまい、巴さんは驚いているようだった―

ほむら(そういえば、“私が最初に三人で『ワルプルギスの夜』と戦った時”も、巴さんの拘束技は全く通用しなかった。
そのことを、事前に伝えておくべきだったわ……)

―続けて巴さんは、『ワルプルギスの夜』に対して光弾を放ったけど、その攻撃もわずかに怯ませることが出来ただけで、ほとんどダメージは無いようだった―

―やがて、今度は『ワルプルギスの夜』の方が真っ黒な触手を伸ばして攻撃してくると、巴さんは私の時と同じように吹っ飛ばされていた―

まどか・さやか「マミさん!」

―巴さんはすぐに立ち上がろうとしていたけど、『ワルプルギスの夜』の触手から変形した使い魔が、巴さんの体に纏わり付き始めると―

マミ(何、これ……?
体の自由が、全く利かない!?)

ほむら(巴さん……!)

527: 1 2013/10/07(月) 22:22:54.81 ID:L/ftRJ/c0
―『ワルプルギスの夜』は、そのまま動けなくなってしまった巴さんに対して、容赦なく攻撃を放ち続けていた―

マミ「ぐっ……!」

―そして、巴さんの胸元に付いている発光体の色が赤に変わると、さらに点滅し始めた―

ほむら(そんな……)

528: 1 2013/10/07(月) 22:39:40.21 ID:L/ftRJ/c0
―そして、私が諦めかけていた、その時―

まどか「マミさん、がんばって!」

ほむら「!」

さやか「そうだ、そんな魔女なんかに負けないで下さい!」

まどか・さやか「マミさん!!」

―二人が応援し始めると、驚くべきことに、巴さんの体が僅かに動いた―

さやか「ほら、ほむらも」

ほむら「えっ?」

さやか「早く!」

ほむら「……ええ、分かったわ。
巴さん!」

―巴さんは、間違いなく先程よりも力強く頷いたように見えた―

529: 1 2013/10/07(月) 22:52:14.28 ID:L/ftRJ/c0
―巴さんは、薔薇園の魔女と戦った時と同じように、頭頂部の飾り【マミスラッガー】を念力で動かして使い魔達を一掃し、再び立ち上がった―

さやか「よっしゃあ!」

―そして、巴さんはそのままその武器を使って『ワルプルギスの夜』を攻撃した後、
  残っていたエネルギーを溜め、遂には必殺光線【アルティマシュート】を『ワルプルギスの夜』に向けて放った―

まどか・さやか「やったぁーー!!」

530: 1 2013/10/07(月) 23:03:10.04 ID:L/ftRJ/c0
ほむら「いや、まだよ!」

まどか・さやか「えっ?」

―『ワルプルギスの夜』は、巴さんの必殺光線を受けてもなお、原形を留めた状態で浮遊していた―

まどか・さやか「そんな……」

―しかも『ワルプルギスの夜』は、これまで常に逆さまの状態だったその姿を、
 遂に、“逆の向き”に動かしていた―

531: 1 2013/10/07(月) 23:06:55.70 ID:L/ftRJ/c0
―そして、遂に“本気を出した”『ワルプルギスの夜』が、これまでとは比べ物にならない程の激しい攻撃を巴さんに加え始めた―

532: 1 2013/10/07(月) 23:12:29.52 ID:L/ftRJ/c0
マミ「う、ううっ……!」

―“本気を出した”『ワルプルギスの夜』の怒涛の連続攻撃によって、
  多大なダメージを受けてしまった巴さんは、“人の姿”に戻った状態でその場に倒れていた―

まどか「マミさん!」

―まどかが、真っ先に巴さんの元に駆け寄ろうとした―

ほむら・さやか「まどか、危ない!!」

まどか「えっ?
!」

―『ワルプルギスの夜』が巴さんにとどめを刺すべく放った巨大な火球が、まどかに迫っていた―

533: 1 2013/10/07(月) 23:15:02.73 ID:L/ftRJ/c0
ほむら(お願い、間に合って……!)

―私は、既に時間停止能力の失われてしまった盾を使って、何とかその攻撃を防ぐ為に動こうとしたけど、
  巴さんは、私よりも先に“自分の身体”を使って火球を受けとめようとしていた―

マミ「鹿目さんっ!」

ほむら「!」

まどか・さやか「マミさん!!」

536: 1 2013/10/08(火) 00:42:03.92 ID:/05OD0ia0
―でも、『ワルプルギスの夜』の火球攻撃が、私達を傷つけることはなかった―

マミ(私……。
まだ、生きてる?)

まどか・さやか「?」

ほむら(一体、何が―)

??「ったく、何やられちゃってんのさ……」

マミ・まどか・ほむら・さやか「!!!!」

537: 1 2013/10/08(火) 00:45:13.09 ID:/05OD0ia0
杏子「やっぱり、あんたにはあたしがついててやんないと駄目みたいだね……。
マミ先輩?」

542: 1 2013/10/09(水) 23:01:32.54 ID:FSi9hE8n0
マミ・まどか・ほむら・さやか「佐倉さん・杏子(ちゃん)!!」

杏子「待たせちまったね。
まぁ、何とかギリギリで間に合ったからいいか……」

マミ「ええ、ちょっと危なかったけどね。
それより、あなたの方こそ無事だったのね!」

杏子「ああ、あんたのおかげでね」

マミ「?」

543: 1 2013/10/09(水) 23:07:14.41 ID:FSi9hE8n0
杏子「……あんたがくれた“光”が、あたしを助けてくれたんだ。
だから、これはその恩返しだよ」

―杏子はそう言うと、手の先から出した光のエネルギーを巴さんに向かって照射していた―

マミ「力が……!
……ありがとう、佐倉さん」

杏子「礼を言わなきゃいけないのは、あたしの方さ。
それにさ、昔あんたと約束したじゃん?
一緒に『ワルプルギスの夜』を倒そう、ってさ……」

マミ「佐倉さん……」

杏子「というわけで、ほむら。
返事が遅れちまったけど、今からあたし達もあんたとマミのチームに加わるってことでいいかい?」

ほむら「ええ、もちろん―
ちょっと待って……。
“達”?」

杏子「ああ、ええっと……。
実はさ、その……、あたしの仲間にも、一緒に来てもらったんだよね」

マミ・ほむら「佐倉さん(あなた)の……。
仲間?」

544: 1 2013/10/09(水) 23:11:11.70 ID:FSi9hE8n0
???「チャオ、見滝原のみなさん!」

546: 1 2013/10/10(木) 00:55:23.41 ID:Pcz7SULJ0
海香「初めまして。
私達はあすなろ市から来た魔法少女で、私の名前は御崎海香よ」

カオル「同じく、あたしは牧カオルでっす!」

かずみ「わたしは、昴かずみです!
みなさん、よろしくね!!」

547: 1 2013/10/10(木) 01:02:03.57 ID:Pcz7SULJ0
さやか「御崎海香って、あのベストセラー作家の!?」

海香「ええ、そうよ」

カオル「やっぱ海香先生は有名なんだなー!」

マミ「あすなろ市、ね……」

まどか「マミさん、どうしました?」

マミ「いえ、私も遠足でそこに行ったことが―

そういえば、あなたはあの時の……」

かずみ「え、わたしですか?」

マミ「ええ、昴さん。
私のこと、覚えてない?」

かずみ「うーん……」

548: 1 2013/10/10(木) 01:17:15.37 ID:Pcz7SULJ0
カオル(テレパシー:なぁ、海香。
もしかして、この人……)

海香(テレパシー:ええ、おそらくそうでしょうね)

カオル(テレパシー:どうする?)

海香(テレパシー:私に任せて)

海香「ちょっと、説明させて頂いてもいいかしら?」

マミ「ええ、どうぞ」

海香「あなたと前に会ったことがあるのは、かずみじゃなくて……。
おそらくこの子の“姉”だと思います」

マミ「あら、そうだったの……」

かずみ「……」

549: 1 2013/10/10(木) 01:23:31.87 ID:Pcz7SULJ0
杏子「ちょっとちょっと。
悪いけど、そういう話は後にしてくんない?
いい加減、こっちもきつくなってきたんだけど!」

マミ「あっ、ごめんなさい……」

杏子「ったく、今は先にやるべきことがあるだろ?」

マミ「分かってるわ。
……ハァッ!」

―巴さんが再び光の巨人の姿へと変身し、そこには二人が並び立つことになった―

杏子「さぁ、久しぶりに名コンビを見せ付けてやろうじゃんか」

マミ「ええ。
行くわよ、佐倉さん!」

杏子「おう!」

554: 1 2013/10/11(金) 19:40:07.57 ID:wSh3SlkZ0
―まず巴さんと杏子は、それぞれ牽制用に何発か光弾を放って『ワルプルギスの夜』を攻撃していた―

マミ「……?」

ほむら(……何かかがおかしい。
先程までは、あれだけ激しく巴さんを攻撃していたはずなのに……)

―何故か『ワルプルギスの夜』は、やかましく笑い続けていることを除けば、ほとんど何もせずに浮遊していた―

杏子「何だ、思ったより大した事も無さそうだね……。
こうなったら、一気に決めさせてもらうよ!」

マミ「佐倉さん、待って―」

―近付いてきた杏子に対して、『ワルプルギスの夜』は“例の触手”で攻撃を仕掛けた―

杏子「はんっ、遅い!」

―杏子は触手の攻撃をかわしたけど、『ワルプルギスの夜』は、またもや触手を使い魔に変化させて襲わせていた―

杏子「うわっ!
何だよ、こいつら!?
体が、動かねぇ!!」

マミ「佐倉さん!
待ってて、今私が―
えっ、そんな……」

―杏子の身を案じて思わず隙を見せてしまった巴さんも、再び使い魔に捕まってしまっていた―

555: 1 2013/10/11(金) 19:46:23.11 ID:wSh3SlkZ0
ほむら(ちっ……)

―私は、まだ残されている“切り札”を使って、二人を助けに行こうとしたのだけど―

海香「ちょっと、お待ちを。
ここは、私達が」

ほむら「……ええ、お願いするわ」

かずみ「よし、それじゃあ“あれ”で行くよ!
海香、カオル、力を貸して!!」

海香・カオル「うん・OK!!」

かずみ「合体魔法……」

かずみ・海香・カオル「メテオーラ・フィナーレ!!!」

マミ「!」

まどか・さやか「すごーい……!」

―三人の魔法少女達による強力な合体魔法が、『ワルプルギスの夜』の使い魔達を一掃していた―

カオル「使い魔は、あたし達に任せて!」

―巴さんと杏子は頷くと、『ワルプルギスの夜』に近付いていった―

562: 1 2013/10/11(金) 23:23:15.89 ID:wSh3SlkZ0


>>555 の舞台裏

かずみ・海香・カオル「メテオーラ・フィナーレ!!!」

マミ(あの子達、いいセンスしてるじゃない……)

杏子(多分、この顔はまた何か変なこと考えてる感じだな……)

556: 1 2013/10/11(金) 19:48:48.76 ID:wSh3SlkZ0
マミ(佐倉さん、私達も合体攻撃をするわよ!)

杏子(……ああ、分かった!)

557: 1 2013/10/11(金) 19:51:21.66 ID:wSh3SlkZ0
杏子「こいつを喰らいな……」マミ「Meteora doppietta !!【フライングダブルパンチ(メテオツイン)】」

558: 1 2013/10/11(金) 19:54:32.73 ID:wSh3SlkZ0
―二人の合体攻撃をまともに喰らった『ワルプルギスの夜』は、遂に、大きく怯んでいた―

ほむら「(一瞬だけど、『ワルプルギスの夜』の笑いが止まっていた……)
巴さん、杏子!!」

―再び二人は頷くと、必殺技のチャージを始めた―

559: 1 2013/10/11(金) 19:57:51.27 ID:wSh3SlkZ0
―そして、二人が同時に放った合体光線【KMスペシャル】が『ワルプルギスの夜』に直撃した―

563: 1 2013/10/12(土) 00:00:18.98 ID:QeR+syXQ0
―でも、それでも『ワルプルギスの夜』は、まだ倒れてはいなかった―

杏子(ちくしょう、これだけ攻撃してもまだ生きてやがるのか……。
なんてしぶとい奴なんだよ!)

マミ(でも、確実にダメージを与えられているはず。
だから、もう一度攻撃すれば、もしかすると……)

564: 1 2013/10/12(土) 00:03:30.84 ID:QeR+syXQ0
マミ(……佐倉さん、今度はダブルフラッシャーよ!)

杏子(分かった!)

565: 1 2013/10/12(土) 00:05:16.39 ID:QeR+syXQ0
マミ(……いや、やっぱり待って!)

杏子(……何だよ急に)

マミ(『ワルプルギスの夜』の様子が、何だか変だわ……)

―『ワルプルギスの夜』の笑い声が、何だかノイズの入ったような、歪なものへと変化していた―

杏子(あたし達にやられて、弱ってきたからじゃねぇの?)

マミ(えっと、そうなのかしら……?)

杏子(とにかく、さっさと倒し―
!)

マミ(どうしたの、佐倉さん?)

杏子(あいつは……!)

―いつのまにか、『ワルプルギスの夜』の近くには、おそらく私達と同じくらいの年齢と思われる少女が立っていた―

566: 1 2013/10/12(土) 00:07:10.01 ID:QeR+syXQ0
マミ(あれは……、魔法少女!?
一体、あんなところで何を……。
それより佐倉さん、知ってる子なの?)

杏子(……記憶が無い時のあたしがあんた達を殺そうとしたのは、あいつにけしかけられたからなんだ!)

マミ(何ですって!?)

かずみ「!
あそこにいるのは……、そんな!!」

571: 1 2013/10/18(金) 00:12:41.18 ID:KFXP2Kcr0
海香「かずみ、どうし―
あれは!」

まどか「……もしかして、知ってる子なんですか?」

かずみ「……うん。
あの子は、私達と同じあすなろ市の魔法少女だよ。
でも―」

572: 1 2013/10/18(金) 00:15:23.08 ID:KFXP2Kcr0
さやか「ていうかあいつ、この前あたしにイーブルナッツを植え付けたやつじゃん!」

ほむら「!
それは本当なの!?」

さやか「うん、間違いない」

573: 1 2013/10/18(金) 00:22:29.76 ID:KFXP2Kcr0
カオル「ニコ……。
いや、イーブルナッツを使っていたというのなら、
カンナ、なのか?」

??「残念だが、“私”は、そのどちらでもない。
……この娘の体を借りているだけだ」

574: 1 2013/10/18(金) 00:31:43.86 ID:KFXP2Kcr0
マミ「……それなら、あなたは一体誰なの?」

575: 1 2013/10/18(金) 00:39:50.05 ID:KFXP2Kcr0
ザギ「……ダーク、ザギ」

580: 1 2013/10/18(金) 20:40:12.05 ID:KFXP2Kcr0
ほむら「……ダーク、ザギ?」

マミ「……もしかして、あなたがキュゥべえの言っていた“協力者”なの?」

ザギ「ああ、その通りだ」

マミ「……では、何故あなたはキュゥべえに協力して、私達皆を陥れるような行動をしてきたというの?」

ザギ「ふっ……」

マミ「答えなさい!」

ザギ「私とインキュベーターは、お互いの目的を達成させる為に協力していた。
だが……、巴マミ。
貴様の存在が、私達双方にとっての障害となっていた。
だから、お前を排除する為に、魔女達を巨大化させ、美樹さやかや志筑仁美を魔女モドキにし……。
そして、“その娘”を創り出して差し向けた」

マミ・杏子・ほむら「!!!」

582: 1 2013/10/19(土) 00:45:10.91 ID:MgK/ChCO0
杏子「……そいつは、どういう意味だ……!?」

ザギ「お前は、この私が創り出した、人形。
つまり、お前はただの道具だということだ」

杏子「ハァッ!?
……あたしが、“人形”?
テメェは、一体何を言ってやがんだ……!?」

ザギ「インキュベーター、詳しく説明してやってくれ」

キュゥべえ「分かったよ。
君はね、巴マミが保管していたグリーフシードの情報を使って、ザギが創り出した合成魔法少女。
もう少し分かりやすいように説明するとすれば、佐倉杏子のクローンというべきかな」

杏子「何、だと……!」

マミ「やっぱり、あのグリーフシードはあなた達が……。
でも、そんなの嘘だわ!」

キュゥべえ「今、僕達が言っていることは全て真実だよ。
大体、一度魔女になってしまった者が元の魔法少女に戻る事なんて、僕との契約による願い事以外の方法では出来るはずもない。
その事実を踏まえた上で考えれば、彼女が“本物の佐倉杏子”でないことくらいは、簡単に分かるだろう?」

マミ「でも、だって……。
佐倉さんには、私と一緒にいた時の記憶だってちゃんと残って―」

ザギ「確かに“オリジナルの佐倉杏子”の記憶が残っていたのは予想外だった。
だが、今のお前達の様子を見る限りだと、そのこともかえって好都合に働いてくれたようだな」

マミ「そんな……!」

583: 1 2013/10/19(土) 00:50:21.78 ID:MgK/ChCO0
マミ「でも、どうして―」

ザギ「もちろん、貴様を動揺させて精神的に追いつめる為だが……。
インキュベーターの方には、別の理由もあるそうだ」

ほむら「……それは、一体何の理由なの?」

キュゥべえ「僕達が考えた“新しいシステム”の根幹要素となる、合成魔法少女の量産に向けた、言わばテストのようなものかな」

ほむら「……合成魔法少女の、量産?」

キュゥべえ「彼女のような“合成魔法少女”の存在が、僕達の戦略に新たな道筋を示してくれたんだ」

かずみ・海香・カオル「!!!」

キュゥべえ「やっぱり、君達は気付いたようだね。
僕達が新しいシステムを思い付くことが出来たのは、君達プレイアデス星団のおかげだよ」

ほむら「……彼女達のおかげとは、一体どういうこと?」

海香「くっ……」

カオル「それは……」

かずみ「……海香、カオル。
別に、隠さなくてもいいよ」

海香・カオル「かずみ……」

かずみ「……元々わたしも、海香とカオルの友達だった子から生まれた、合成魔法少女。
そして、キュゥべえと契約することで“本物の魔法少女”になったんだ……」

まどか・さやか・ほむら「……」

584: 1 2013/10/19(土) 00:55:51.41 ID:MgK/ChCO0
キュゥべえ「そうして、君達プレイアデス星団がかずみを誕生させ、
やがて、かずみが契約して魔法少女になったおかげで、僕は新しいシステムを思い付くことが出来た。
それが、合成魔法少女の量産による、エネルギーの収集だ」

ほむら「……」

キュゥべえ「もちろん、合成魔法少女の生産というのは、決して簡単なものではないのだけど……。
ザギが協力してくれたおかげで、その問題もほぼ解決出来ていた。
そして、そのシステムが完成すれば、君達一人一人といちいち契約を結ぶ必要も無くなるし、僕達もより効率的にエネルギーを回収することが出来る。
君達人類にとっても、その方がいいんじゃないのかい?」

全員「…………」

ほむら「……だったら、そのシステムを見付けた後も、執拗にまどかへ契約を迫っていたのはどうして?」

キュゥべえ「彼女は特別だよ。
まどかとの契約によって得られるエネルギーの量は、それだけ魅力的なものだということさ。
確かにそのシステムが完成すれば、効率的なエネルギーの回収が期待出来るけど、あくまでまだ未完成でただの構想に過ぎないことだし、
僕達にとっても、得られるエネルギーがより多ければ、それに越したことはないからね」

585: 1 2013/10/19(土) 01:11:44.85 ID:MgK/ChCO0
マミ「……もしかして、あなたが新しい契約をしていなかったのも、そのことが関係していたというの……?」

キュゥべえ「うん、そういうことになるね」

マミ「それじゃあ、私がやってきたことは、ただの無意味な戦いだったというの?」

キュゥべえ「無意味なんかじゃないよ。
君に邪魔されたから、というのも、全く関係無いわけではないし、
現に、その影響で新しいシステムの実用化と導入の作業は遅れていたわけだしね。
ただ、君が魔女を狩ってグリーフシードを集めてくれていたことは、僕達にとっても好都合だった」

マミ「!」

―インキュベーターがそう言うと、その場に隠されていた大量のグリーフシードのビジョンが見えるようになった―

ほむら「一体、何をするつもりなの!?」

キュゥべえ「何って、今まで説明していたシステムの実行に決まってるじゃないか。
『ワルプルギスの夜』の魔力をザギの闇の力でグリーフシードと連結させ、合成魔法少女を量産させるんだよ」

ザギ「残念だが、それは違う」

キュゥべえ「ザギ、どういうことだい?」

ザギ「今回のエネルギーは、全てこの私が使わせてもらう」

キュゥべえ「それは、この前の契約の内容と違うじゃないか」

ザギ「元より、貴様との契約など守るつもりはない。
全ては、私が元の姿を取り戻す為の……。
いや、前以上の力を手に入れた上で復活する為の、道具だ!」

―ダークザギはそう言うと、目を赤く光らせ、凄まじい闇の力を発生させた―

588: 1 2013/10/19(土) 15:33:39.27 ID:MgK/ChCO0
ザギ「……そういえば、巴マミ。
貴様には、一つだけ感謝しておくべきかもしれない」

マミ「?」

ザギ「私が“この世界”に来ることが出来たのは、貴様のおかげとも言えるからな」

マミ「何ですって!」

ほむら「……それは、どういうこと?」

ザギ「巴マミが時空移動をしたことによる影響が、私を“この世界”へと導いてくれた」

マミ「そんな……!」

589: 1 2013/10/19(土) 15:43:45.98 ID:MgK/ChCO0
マミ「……それじゃあ、あなたが“この世界”に来てしまったのは、私が原因だというの……?」

ザギ「ああ、その通りだ」

590: 1 2013/10/19(土) 15:59:50.26 ID:MgK/ChCO0
マミ「だったら……。
私は、“この世界”に戻ってくるべきではなかったのね……」

まどか「そんなこと、無いです!」

マミ「えっ?」

まどか「マミさんが、ずっとみんなの為に頑張って戦ってくれてたこと、私は知ってます。
だから、そんなこと言わないで下さい!」
     
マミ「鹿目さん……」

さやか・ほむら「あたし(私)もまどかと同意見だよ(わ)」

ほむら「あいつらの言葉に、騙されては駄目よ。
確かに、あなたが来たことの影響が、全て良い方向に働いたとは言えないのかもしれない。
でも、あなたがそれ以上に大勢の命を救ってきたことも、私も知ってるわ」

さやか「あたしも、マミさんがいてくれなかったら、今頃どうなってるか分かんないしさ。
だから、マミさんには本当に感謝してるんだ」

マミ「暁美さん、美樹さん……」

海香・カオル「私(あたし)達からも、一言言わせて下さい。
あなたがミチルを助けてくれなかったら、私(あたし)達は魔女に食われて死んでいたはず。
それに、この子と出会うことも出来なかった。
だから、私(あたし)達もあなたには感謝してます」

かずみ「……それに、ミチルもきっとそう思ってたはずだよ」

マミ「みんな……」

591: 1 2013/10/19(土) 16:06:30.49 ID:MgK/ChCO0
ザギ「フフッ……」

ほむら「何が可笑しいの?」

ザギ「急に何を言い出すかと思ったら、揃いも揃ってそんな現実逃避のような意味の無い話を始めるとはな。
もっと、今の現状に目を向けた方がいいんじゃないのか?」

全員「……」

ザギ「まぁいい。
下らない茶番は、ここまでだ!」

―ダークザギが、再び『ワルプルギスの夜』に近付いて行った―

マミ「!!」

592: 1 2013/10/19(土) 16:10:08.10 ID:MgK/ChCO0
ザギ「復活の時だぁあああーーー!!!」

593: 1 2013/10/19(土) 16:16:46.28 ID:MgK/ChCO0
今回はここまでですが、その代わりに“このSS”中の時系列の流れについて、少し書きます。

・マミさん、事故で瀕死の重傷を負うが、偶然他の任務で“まどか☆マギカの世界”へ来ていたウルトラ兄弟に助けられ、“光の国”(M78ワールドの世界)へ

・ウルトラの母の“奇跡”によって、“ウルトラマミ”として生まれ変わる

・ウルトラ化したマミさん、調査任務の為に“まどか☆マギカの世界”へ帰ってくる
↓(ダークザギ、ノアに敗北した後に再び力を失った状態で宇宙を彷徨っていたが、マミさんの時空移動のエネルギー波を感知し、その後を追う)
・マミさん、“魔法少女”(優木沙々?)及び、キュゥべえと遭遇

・数か月後、魔女に苦戦中の杏子ちゃんとマミさんが出会い、ウルトラの力を隠して師弟関係に

・さらに数か月後、佐倉家の一家心中をきっかけにマミさんと杏子ちゃんが離別

・マミさん、“少女”(和紗ミチル)を助ける
↓(その後、あすなろ市では『かずみ☆マギカ』とほぼ同様の出来事が展開)
・マミさん、“魔法少女”に洗脳される
↓(かずみ達とラスボスの最終決戦時、ちょうどダークザギが“まどか☆マギカの世界”へ到着し、“魂”を失った状態のカンナの体を乗っ取ってインキュベーターと“契約”)
・杏子ちゃん、再び見滝原へ

・マミさん、“インキュベーター”と敵対していく決意を固める

・暁美ほむら、別の時間軸(平行世界)から到着

・マミさん、薔薇園の魔女の結界の中で“後輩達”と遭遇

という感じの流れになっています。

それと、もしかしたら本日中にもう一度更新するかもしれません。

594: 1 2013/10/19(土) 19:06:07.14 ID:MgK/ChCO0
マミ(なんて凄い闇の波動なの……!
今までの相手とは、桁違いだわ……)

―ダークザギは、所々に『ワルプルギスの夜』と似たような特徴も併せ持った、闇の巨人の姿に変化していた―

キュゥべえ「……ダークザギ。
今の君が、本当の姿というわけかい?」

?「いや、今の私はもはやザギではない」

キュゥべえ「どういうことだい?」

?「魔女の力は、予想以上のものだった。
だから、改めて名前も変えさせてもらうとしよう」

595: 1 2013/10/19(土) 19:11:21.77 ID:MgK/ChCO0
ルシフェル「私の名は、ダークルシフェルだ」

596: 1 2013/10/19(土) 19:17:34.12 ID:MgK/ChCO0
杏子「……巴マミ」

マミ「……どうしたの?」

杏子「あんたの武器、ちょっと貸してもらうよ」

マミ「佐倉さん、あなたまさか―」

杏子「その呼び方は止めろ!
……あたしは、“佐倉杏子”じゃない」

マミ「っ……」

杏子「さぁて……。
テメェ、覚悟は出来てるよな?」

ルシフェル「……何のことだ?」

杏子「もちろん、このあたしにぶっ潰される覚悟に決まってんじゃん。
……テメェだけは、絶対に許すことなんて出来ねぇからさぁ!」

―“杏子”はそう言って槍【ウルトラランス】を構えると、ダークルシフェルに向かって突進していた―

599: 1 2013/10/22(火) 22:22:24.24 ID:qCpL79cT0
―でも、“杏子”が決死の覚悟で放ったその一撃は、ダークルシフェルにあっさりと受け止められてしまっていた―

杏子「くっ……!」

ルシフェル「まさか、お前がそんな風に無策で私を攻撃してくるとはな……。
どうした、幻惑の力は使わないのか?」

杏子(コイツ……!)

ルシフェル「……なるほど、記憶が戻ったことで再び力を失ったということか。
もっとも、その“記憶”はお前の物ではないのだが……」

杏子「……黙れ」

ルシフェル「何か言ったか?」

杏子「黙れっつってんだろうが!」

―そして“杏子”は、常人どころか魔法少女の感覚をもってしても簡単には認識出来ない程の速度で動いて、
  何度も何度も攻撃を試みていたけど、残念ながら、全て避けられてしまっていた―

600: 1 2013/10/22(火) 23:08:54.49 ID:qCpL79cT0
ルシフェル「……創造主である私にすらも歯向かおうとする、その反骨精神だけは認めてやろう。
だが、もう無駄なことはやめたらどうだ?
残念ながら、今のお前の力では、私を倒すどころか傷一つ負わせることも出来ないと思うが……」

杏子「ふざけるな!
テメェの指図なんか、絶対に受けてたまるかつーの!!」

ルシフェル「……仕方無いな。
だったら、こうするまでだ!」

杏子「!」

―ルシフェルはそう言うと、“杏子”の体を掴んで押さえつけた―

ルシフェル「お前の光も、この私が貰い受けるとしよう」

杏子「ぐっ……。
うわあああっ!」

マミ「佐倉さん!」

―光を失った“杏子”に対して、ルシフェルがとどめを刺そうと近づいていた―

ルシフェル「……せめてもの餞だ。
この私が、直接お前に手を下してやるとしよう」

杏子「ちっ、くそっ……」

601: 1 2013/10/22(火) 23:23:16.69 ID:qCpL79cT0
―でも、ルシフェルが“杏子”に向けて放った闇のエネルギー弾は、突然飛んできた“盾”によって阻まれた―

ルシフェル「何……!?」

―続けて、無数の“ブーメランのような刃物”がルシフェルに襲いかかり、一時的なものではあったけど、確かにその動きを止めていた―

ルシフェル「ぐっ……」

―そして、“光”が“杏子”の体を覆い、安全な場所へと運んで行った―

602: 1 2013/10/22(火) 23:32:19.83 ID:qCpL79cT0
マミ「怪我は無い?」

杏子「……どうして、アタシを助けたりしたんだよ……?」

マミ「えっ!?
何を、言ってるの……?」

杏子「……アタシは、今までずっと奴の手で踊らされていただけの、哀れな人形。
そしてもう、アタシの役目は終わったんだ。
だからアタシは、もう生きてる意味なんて無い!」

マミ「そんなこと無い!
あなたは―」

杏子「いいからもう、アタシのことはほっといてくれ!」

マミ「駄目よ!
待って、佐倉さ―」

杏子「アタシは、アンタの知ってる“佐倉杏子”じゃない!
それどころか、アタシは人間ですら無いんだ!!
だから……、アタシには、“佐倉”の姓を名乗る資格なんてないんだ……」

マミ「っ……」

杏子「だからもう、そうやって呼ぶのもやめてくれ!」

603: 1 2013/10/22(火) 23:39:22.43 ID:qCpL79cT0
マミ「だったら……」

杏子「……だったら、何だってんだよ?」

604: 1 2013/10/22(火) 23:45:11.52 ID:qCpL79cT0
マミ「……私と、同じ名字になってみる?」

605: 1 2013/10/22(火) 23:50:08.45 ID:qCpL79cT0
杏子「………………!?」

606: 1 2013/10/23(水) 00:06:06.50 ID:VTGXBpEi0
杏子「なっ……。
アンタ、いきなり何言ってんのさ?
こんな状況で、冗談なんか言ってる場合かよ!」

マミ「あら、私は結構本気で言ってるのよ?
だって、あなたが私の“妹”になってくれたとしたら、とっても嬉しい事だもの……」

杏子「!
マミ……」

607: 1 2013/10/23(水) 00:25:15.38 ID:VTGXBpEi0
マミ「……私があなたを、絶対に一人ぼっちになんてさせないわ。
だから、もう生きてる意味が無いなんて言わないで」

杏子「分かったよ。
……マミ、さん」

608: 1 2013/10/23(水) 00:35:19.63 ID:VTGXBpEi0
ルシフェル「ふふっ……」

マミ「……何が、可笑しいの?」

ルシフェル「いや、急に何をしだすのかと思って黙っていたら、まさか、私の創った“人形”と家族ごっこを始めるとはな……。
つくづく、人間とは理解しがたいものだと―」

マミ「謝りなさい」

ルシフェル「何?」

マミ「この子に、謝りなさい!」

ルシフェル「何故だ?」

マミ「これ以上、この子のことを侮辱するのは許さない……。
今すぐに、謝って!
……さもないと―」

ルシフェル「さもないと、どうする?」

マミ「……私が、あなたを叩きのめすわ!」

ルシフェル「……貴様が、この私を叩きのめすだと?」

マミ「ええ、そうよ」

ルシフェル「笑わせるな。
本当に、そんなことが出来るとでも?」

マミ「……だったら、試してみる?」

ルシフェル「……いいだろう。
貴様がこの私に歯向かったこと、後悔させてやる!」

609: 1 2013/10/23(水) 00:49:53.22 ID:VTGXBpEi0
杏子「マミ!」

マミ「なぁに?」

杏子「いくらアンタでも、ソイツには勝てっこない!
だから、無茶な真似はやめてくれ!!」

マミ「私が戦わなかったら、この星の生命が全滅させられてしまうわ。
いえ、それだけじゃない。
他の星、他の世界だって―」

杏子「だとしても、あたしは“家族”を失いたくない」

マミ「……それは、私も同じよ」

杏子「だったら―」

マミ「……大丈夫。
“家族”は、お互いを心配させたりしないものよ。
だから、私は絶対に勝ってみせるわ!」

杏子「……本当に、勝てるんだな?」

マミ「……ええ、約束するわ」

杏子「分かった、行ってきなよ」

610: 1 2013/10/23(水) 01:15:44.88 ID:VTGXBpEi0
ルシフェル「別れの言葉は、済ませてきたようだな」

マミ「いえ、まだよ。
それに、あなたとのお別れの方が先になるんじゃないかしら?」

ルシフェル「随分と、自信があるようだな」

マミ「ええ、そうね。
今の私は、もう何も恐れるものは無いわ。
……行くわよ!」

―巴さんはそう言うと、両腕をXの形にクロスさせ、強化必殺光線【ネオアルティマシュート】を放った―

ルシフェル「フッ!」

―そして、光と闇の強大なエネルギー波が、盛大にぶつかり合った―

611: 1 2013/10/23(水) 01:21:10.38 ID:VTGXBpEi0
―そして、その争いを制したのは……、闇の力の方だった―

614: 1 2013/10/23(水) 14:27:42.99 ID:VTGXBpEi0
―ダークルシフェルの放った闇のエネルギー波が、光線【ネオアルティマシュート】を押し返してそのまま上半身に直撃すると、その衝撃で巴さんは倒れこんでいた―

マミ「ぐっ!」

―そして、巴さんの胸元に付いている発光体が放っている光の点滅速度も次第に早まっていき、
  やがては、完全に消えてしまっていた―

杏子「マミぃぃぃっっっ!!!」

―杏子の悲痛な叫び声が、その場に響き渡っていた―

615: 1 2013/10/24(木) 00:03:36.41 ID:i7zMy+6i0
―既に動かなくなっていた巴さんに対して、ルシフェルがさらに追い討ちをかけるように胸元の発光体を足で踏み潰したことで、
 “光”を完全に失ってしまった巴さんは、再び“人の姿”に戻っていた―

まどか「マミさん!」

―先程と同じように、まどかが巴さんの元に駆け寄ろうとしていたけど、今回は杏子の方が先に動いていた―

杏子「マミ!!」

―杏子は、冷たくなってしまった巴さんの体を強く抱きしめながら、沈痛な表情で泣き叫んでいた―

杏子「おい、冗談だろ……!?
ついさっき、あたしを一人にしないって約束したばっかりじゃんか……。
ふざけんじゃねぇぞ!
……あたしはもう、あんたがいないと駄目なんだ。
だから、さっさと目を覚ましやがれ!!」

まどか「杏子ちゃん……」

617: 1 2013/10/24(木) 00:57:57.55 ID:i7zMy+6i0
ルシフェル「これでもう、邪魔者は全て消えた……。
あとは―
ぐっ!」

―どういうわけか、ダークルシフェルが急に苦しみ出していた―

ほむら(一体、何が起こったというの……?)

618: 1 2013/10/24(木) 01:19:50.89 ID:i7zMy+6i0
さやか「あいつ、いきなりどうしたんだろ?」

キュゥべえ「おそらく、無理に取り込んだ魔女達の力が、反発し始めたようだね」

ルシフェル「何!?」

キュゥべえ「いくら君の力が強大でも、流石に“伝説の魔女”を完全に制御することは出来なかったということさ」

ルシフェル「……だったら、こうするまでだ!」

まどか「えっ……、きゃあっ!」

―ダークルシフェルは、大きな手でまどかを掴んで持ち上げていた―

ほむら「まどか!」

―私は、急いで僅かに弾が残っていた自動小銃【89式小銃】を構えたけど、まどかに当たってしまう可能性を考えると、撃つことが出来なかった―

619: 1 2013/10/24(木) 01:33:01.64 ID:i7zMy+6i0
―ダークルシフェルは、まどかをその体に取り込むことで、再び魔女達の力を制御し始めていた―

キュゥべえ「なるほど、まどかの力を使って魔力を制御したというわけか。
でも、君一人でエネルギーを独占されると、流石に困るんだけど……」

ルシフェル「安心しろ。
私の“目的”を達成した後でも良ければ、もう一度お前達インキュベーターの計画に協力してやってもいい。
お前達には、まだ利用価値がありそうだからな」

キュゥべえ「そうか。
それでは、君の目的が成就することを祈っておくとするよ」

ほむら「…………」

623: 1 2013/10/24(木) 19:30:01.56 ID:i7zMy+6i0
ほむら(もう、これまでだというの……?)

―巴さんが倒され、杏子の“光”も奪われ、さらにはまどかまで奪われてしまったという絶望的な状況に陥ったことで、
  私の心は、既に折れる寸前まで追い詰められていた―

ほむら(もう、私には時間を戻してやり直すチャンスすらも残されていない。
私は結局、まどかを救うことなんて出来なかった……)

―再び、私のソウルジェムが穢れを溜め込み始めていた―

ほむら(せめて、私がみんなに迷惑をかけてしまわないようにしないと……)

―私は、隠し持っていた拳銃【ワルサーP5】を左手に持ち、魔女になってしまう前に自らのソウルジェムを破壊すべく、狙いをつけた―

624: 1 2013/10/24(木) 20:23:03.13 ID:i7zMy+6i0
かずみ「あきらめるな!」

625: 1 2013/10/24(木) 20:30:50.10 ID:i7zMy+6i0
ほむら「えっ……?」

かずみ「間にあった……」

―昴かずみが、私の拳銃を奪い取り、ソウルジェムの破壊を阻止していた―

ほむら「……どうして、私の邪魔をしたの?
私が魔女になったら、あなた達にも迷惑がかかるでしょう!?」

かずみ「でも、あなたはまだ魔女になってない!」

ほむら「……もう、それも時間の問題だわ。
それにこのまま生きてたって、どうせ私は何も出来ないのよ」

かずみ「そんなこと無い!
わたし達はまだ、戦える!!」

ほむら「……どうしてあなたは、こんな状況でもまだ戦うことが出来るの?」

かずみ「……わたしはね、前に“大切な友達”と“約束”したんだ。
わたしはわたしの力の続く限り、その子が大好きだった人たちの笑顔を守るって。
だからわたしは、最後まであきらめたくない!」

ほむら「!」

かずみ「……生きようとする限り、わたし達は絶望なんてしない。
希望はまだ、必ずあるはずだよ!」

海香・カオル(かずみ……)

626: 1 2013/10/24(木) 20:35:28.98 ID:i7zMy+6i0
まどか「……かずみちゃんの、言う通りだよ」

ほむら「まどか!?
良かった、まだ生きてたのね!」

まどか「うん、ほむらちゃん」

ルシフェル「……貴様、私の闇を受けてもまだ、自我を保っていられるというのか!?」

まどか「私も“みんな”のこと、信じてるから……」

ほむら「まどか……」

627: 1 2013/10/24(木) 20:39:00.34 ID:i7zMy+6i0
ほむら「……そうね。
私が、間違ってたわ。
私もまだ、戦える!」

さやか「ほむら……!」

ほむら「大切なことを思い出させてくれて、ありがとう。
“かずみ”」

かずみ「!
どういたしまして、“ほむら”」

ほむら「……それじゃあ、改めて言うわね。
あなた達も、私と一緒に戦ってくれる?」

かずみ・海香・カオル「うん(ええ・ああ)
もちろん!!!」

628: 1 2013/10/24(木) 20:55:52.59 ID:i7zMy+6i0
ルシフェル「どうしてだ……?
何故お前達は、この状況で絶望せずにいられる!?」

まどか「みんなが、今までずっと希望を信じて戦ってきた、“魔法少女”だからだよ」

ルシフェル「……希望、だと?
そんな脆弱で不確かなもの、抱くだけ無駄だ!」

まどか「希望を抱くのが間違いだなんて、そんなの絶対に違うよ」

ルシフェル「何?」

まどか「……みんな、希望を信じて戦おうとしてくれてる。
だから私だって、もう絶望する必要なんて、ない!!」

―まどかがそう言い放った瞬間、ルシフェルの体から、桃色の“光”が発生していた―

629: 1 2013/10/24(木) 21:00:09.86 ID:i7zMy+6i0
タイムリミットの関係で若干駆け足気味でしたが、とりあえずはここまで。

『まどか☆マギカ』本編のキャラクターを差し置いて、ちょっとかずみを目立たせ過ぎちゃった気もしますが、
「あきらめるな!」という言葉は、『かずみ☆マギカ』でも“和紗ミチル”の台詞として出ていたので、どうしても“かずみ”にも言わせたくなり、こういう展開にしました。

なお、数時間程休憩を挟みますが、本日中にまだ少しだけ投下する予定です。

630: 1 2013/10/24(木) 23:55:44.15 ID:i7zMy+6i0
まどか「……そっか。
これが、マミさんの言ってた“光”なんだね……」

ルシフェル「……貴様、闇の力を“光”に変換したというのか!?」

―まどかの“光”が、巴さんの体に注がれていく―

さやか「ほむら!
あんたからも、“光”が……」

ほむら「えっ?」

―いつのまにか、私の体からも“光”が発生していた―

さやか「すっご……!」

ほむら「驚いてるようだけど、あなたからも“光”が出てるわよ」

さやか「あっ、ほんとだ……」

海香「私達からも、“光”が……」

―気がつけば、その場にいる全員から“光”が発生していた―

カオル「見ろ!
あそこにあるグリーフシードからも、“光”が……」

キュゥべえ「……バカな。
あのグリーフシードには、もうエネルギーなんて残ってないはずだ」

さやか「だったら、これはどう説明すんのよ?」

キュゥべえ「それは……」

かずみ「きっと、みんなもあのお姉さんに感謝してるんだよ……」

キュゥべえ「前も言ったけど、グリーフシードに感情なんて無いよ」

杏子「テメェは、少し黙ってろ」

―そして、私達から放たれた“七色の光”が、巴さんを中心にして集まっていき、やがて、一つの大きな“光”となっていた―

631: 1 2013/10/25(金) 00:03:48.44 ID:HQEALUFv0
―そこには、輝く光の鎧を纏って復活した巴さんが立っていた―

632: 1 2013/10/25(金) 00:07:46.54 ID:HQEALUFv0
というわけで、“ハイパーアルティメットグリッタールミナスシャイニングウルトラマミ、スプリームエスペシャリーコネクトブレイブ(仮)”誕生!!

ウルトラマミさんの最強形態の名称に関しては、思い付いたオマージュ要素をどれも使いたくなってしまった為にすごく悩んだのですが、最終的には全部採用しちゃいました。

なお、次回(明日)の投下分で、いよいよ“この戦い”に決着を付けます。

644: 1 2013/10/31(木) 02:31:39.96 ID:cwRE2Ze/0
―復活した巴さんは、先程の杏子の動きを遥かに凌駕するスピードで、ダークルシフェルに接近していた―

ルシフェル「貴様、一体何を―」

―そして巴さんは、相手の胸部にあるY字型の窪みに手を入れると、その付近に囚われていたまどかを救い出していた―

ルシフェル「やめろ、グワァァッッ!!」

―さらに巴さんは、華麗にムーンサルトキックを放ってダークルシフェルを盛大に吹っ飛ばしていた―

さやか「マミさん、すっごーい……!」

―その後巴さんは、救い出したまどかを私達に託し、一度だけ頷いた後、再び上空へと戻っていった―

645: 1 2013/10/31(木) 02:35:32.92 ID:cwRE2Ze/0
マミ「今度こそ……。
一気に決めさせて、もらうわよ!」

―巴さんがそう言うと、纏っていた鎧が次第に変形を始め、やがて、最後には変身した巴さんの身体よりも大きい“大砲”のような形状に変化していた―

646: 1 2013/10/31(木) 02:40:04.34 ID:cwRE2Ze/0
―そして、その“大砲”をダークルシフェルに向けると、“光”のエネルギーを溜め始めた―

ルシフェル「フン、そうはさせるか!」

―ダークルシフェルが、巴さんを迎え撃つべく、“闇”のエネルギーを溜め始めた―

さやか「ヤバっ、あれじゃあ先に撃たれ―」

―その光景を見た私は、巴さんの為に少しでも時間を稼ぐべく、まどかをさやかに任せて走り出した―

さやか「あっ……。
ほむら!?」

ほむら「……まどかのこと、頼んだわよ!」

647: 1 2013/10/31(木) 02:46:12.19 ID:cwRE2Ze/0
―そして、ダークルシフェルは私の“準備”が完了するよりも早く、“必殺技”を放とうとしたが―

ルシフェル「ぐっ……」

さやか「なっ、何が起こったの!?」

キュゥべえ「おそらく、まどかの力を失ったことで再び魔女の力が暴走し始めたんじゃないかな?」

さやか「だったら、その内に―」

ルシフェル「……なめるなよ。
魔女の力くらい、私の手で制御出来る!」

―ルシフェルはそう言うと、もう一度強引にエネルギーのチャージを始めた―

648: 1 2013/10/31(木) 02:50:08.41 ID:cwRE2Ze/0
かずみ「……それじゃあ、わたしも行ってくるね」

海香「だったら、私達も……」

かずみ「海香とカオルは、ここで二人を守ってあげて」

カオル「……分かった。
って、かずみ!」

かずみ「ん?」

海香「どうして、“それ”を……」

かずみ「えっ、何―
!」

―かずみの左手には、“本物の魔法少女”になった時に失われたはずの、“黒い十字架のような杖”が出現していた―

かずみ「……そっか。
“ミチル”もあのお姉さんに恩返しがしたいんだね……」

海香・カオル「……」

かずみ「……分かった。
今回は、二人で一緒に戦おう!」

―かずみは、右手に“自らの杖”を持ち、光の道を作り出す魔法を発動させた―

かずみ「スカーラ・ア・パラディーゾ!」

―そして、もう一方の手に持った“黒い杖”に魔力を溜めて“必殺技”を放った―

かずみ「リーミティ・エステールニ!!」

649: 1 2013/10/31(木) 02:55:39.35 ID:cwRE2Ze/0
―かずみの放った光線は、ダークルシフェルに直撃して見事に闇のエネルギー波のチャージを中断させることに成功していた―

ルシフェル「ぐっ……。
貴様―」

ほむら「……どこを見ているの?
こっちよ」

―そして私も、対ワルプルギスの為に用意していた“最後の切り札”を使って、ダークルシフェルを攻撃した―

さやか「せ、戦闘機っ!?」

ほむら「……私の本気を、見せてあげるわ!」

650: 1 2013/10/31(木) 03:01:26.86 ID:cwRE2Ze/0
―でも、私達が時間を稼げたのはわずかの間だけだった―

ルシフェル「目障りだ!」

かずみ「きゃあっ!」

海香・カオル「かずみ!!」

ルシフェル「貴様もだ!」

ほむら「くっ……!」

―そして、邪魔者を排除したルシフェルは、再び“巴さん”に向けて闇のエネルギー波を放った―

651: 1 2013/10/31(木) 03:05:16.45 ID:cwRE2Ze/0
杏子(……ちくしょう!
あたしは、ただここで見てるしかないってのかよ……)

??(そんなこと、ないんじゃない?)

杏子(!
あんたは、まさか……)

652: 1 2013/10/31(木) 03:23:46.96 ID:cwRE2Ze/0
杏子(……“本物”の、佐倉杏子なのか?)

(そういう言い方は、やめなって。
  あんただって、“本物”だよ)

杏子(……)

(それに今はあたしの方こそ、もうただの幽霊みたいなもんだしさ……)

杏子(……それじゃあ、あんたはマジで“ロッソ・ファンタズマ”になっちまったってわけか)

(ははっ、そういやそういうことになるかもね)

杏子(……ふふっ)

(あっ、笑いやがったな!)

杏子(……いや、まさかあんたとこんな風に話せるなんて思ってなかったからさ。
でも、あんたがこうして来たってことは、ただおしゃべりしに来たってわけじゃないんでしょ?)

(ああ、そうだね。
  単刀直入に言うと、マミを助ける為にあんたの力を貸して欲しいんだ)

杏子(まぁ、元よりあたしもそのつもりだったけどさ。
でも、どうやってマミを助ければいい?
今のあたしに、出来ることなんて―)

(それについては、いちいち言わなくったって、本当は分かってるだろ?)

杏子(……まぁね。
でも、“あの力”は―)

(心配すんなって。
  あたし達“二人”で力を合わせれば、きっと大丈夫だよ)

杏子(……ああ、そうだな。
よし、それじゃあさっさとあいつを助けに行こうぜっ!)

(ああ!!)

653: 1 2013/10/31(木) 03:29:38.48 ID:cwRE2Ze/0
―そして、“巴さん”に直撃したと思われていた攻撃は、実際には空を切っただけの結果に終わっていた―

ルシフェル「何……!?」

杏子「“あたし達”の得意技は、幻惑の力。
……あれ、そういやアンタも知ってたんじゃなかったっけ?」

ルシフェル「貴様……!」

654: 1 2013/10/31(木) 03:33:14.68 ID:cwRE2Ze/0
杏子「……マミ、今だ!」

マミ「ええ、分かってるわ!
……これが、私達の“絆”が繋いできた、輝かしき“光”の力よ。
受けてみなさい、ティロ・フィナーレ!!」

659: 1 2013/11/07(木) 00:50:22.41 ID:fkPTSOi30
まどか「ううーん……」

さやか「まどか!」

まどか「さやかちゃん……?」

ほむら「良かった、無事に目を覚ましてくれたのね……」

まどか「……ほむらちゃん!
その怪我、どうしたの?
それに、ソウルジェムが―」

―私のソウルジェムは、既に限界に近い状態まで魔力を消費していた―

さやか「あんた、何ボサっとしてんのよ!
早くソウルジェムを浄化しなってば!!」

―私は、黙って首を横に振った―

まどか「ほむらちゃん、まさか……!」

ほむら「……ええ、もうグリーフシードのストックは使い切ってしまったわ。
でも、安心してちょうだい。
私は、いつでも用意は出来てるから……」

―私はそう言って、二人に拳銃を見せた―

まどか・さやか「そんな……」

660: 1 2013/11/07(木) 00:55:25.82 ID:fkPTSOi30
マミ「いえ、その必要は無いわ。
……というよりも、そんなの私が許しません!」

―ダークルシフェルを倒した巴さんが、いつの間にか私達の元に近付いてきていた―

ほむら「巴さん……」

マミ「待ってて、暁美さん」

―巴さんはそう言うと、両手を私のソウルジェムの前にかざし、驚くべき力を発揮させて穢れを浄化してしまっていた―

まどか・さやか「すごーい……!!」

―さらに巴さんは、その場にいた魔法少女達全員にも、同じことを行っていた―

661: 1 2013/11/07(木) 01:03:19.28 ID:fkPTSOi30
キュゥべえ「……なるほどね。
グリーフシードから発せられたエネルギーによる影響も受けたことによって、君はソウルジェムの浄化能力までも得てしまったというわけか。
これでは、今まで通りのシステムで感情エネルギーを集めていくことは困難になってしまいそうだ……」

さやか「へっ、ざまぁみろってんだ!」

キュゥべえ「宇宙全体にとって深刻な不利益が生じてしまう可能性がある事態だというのに、そんな感想を抱くなんてわけがわからないよ。
ただ、元プレイアデス星団のみんなにとっては、非常に喜ばしいことだというのは分かるよ。
彼女のおかげで、君達の目指していた“ボク抜きの魔法少女システム”が完成することになるからね」

かずみ・海香・カオル「!!!」

マミ「……いえ、まだ“完成”とは言えないわ」

キュゥべえ「どういうことだい?」

マミ「今の私の力では、魔女になってしまった子を元の姿に戻してあげることは出来ない。
それにね、一度魔法少女になってしまった子を、その宿命から解放してあげることも出来ないの……」

キュゥべえ「まぁ、確かにそれは当然のことだろうね。
僕達ですら、契約による願い事以外でそんなことをする方法については、全く知らないわけだし」

マミ「……だとしても。
いつか必ず、“私”がその方法を見つけてみせるわ……」

664: 1 2013/11/07(木) 21:50:13.62 ID:fkPTSOi30
キュゥべえ「……とにかく、君がこの星にいる限り、僕達のエネルギー回収のノルマを達成させることは難しそうだね。
だから、僕達はとりあえずこの星から撤退させてもらうとするよ」

ほむら「!」

―インキュベーターはそういうと、すぐさま私達の前から姿を消し、宇宙のどこかへと向かおうとしていた―

マミ「待ちなさい!」

―巴さんが、インキュベーターを追いかけて宇宙へと飛び立っていった―

665: 1 2013/11/07(木) 21:55:52.82 ID:fkPTSOi30
キュゥべえ「……おや、君が僕達を追いかけてくるとはね。
一体、何のつもりだい?」

マミ「一つだけ、あなたに確認しておきたいことがあるの」

キュゥべえ「……何かな?」

マミ「……本当に、魔法少女や魔女になってしまった子を元に戻すことは出来ないの?」

キュゥべえ「ああ、もちろんだよ」

マミ「みんなを魔法少女にしたのは、あなただというのに?」

キュゥべえ「確かに、魔法少女と魔女にまつわるシステムは、僕達インキュベーターの作り出した技術によるものだ。
でも、人間から魔法少女へ、そして魔法少女から魔女へと変化するプロセスは不可逆なものだから、僕達の手でも逆の変化を起こすことは出来ないんだよ」

マミ「……そう」

キュゥべえ「でも、一つだけ方法が無いわけではないよ」

マミ「えっ!?
……その、方法は?」

キュゥべえ「君が魔法少女になって、その願い事で魔法少女や魔女達を元の人間に戻すという方法だよ」

マミ「!!」

666: 1 2013/11/07(木) 22:11:37.54 ID:fkPTSOi30
マミ「……私が、魔法少女に?」

キュゥべえ「前にも言ったけど、君の魔法少女としての素質は、その新しい姿となった現在でも、未だに消えてはいない。
いや、むしろ君の潜在能力はね、今でも、ずっと増え続けているんだ。
なぜなら、君は鹿目まどかの持つ途方もない因果すらも受け継いでしまったからね。
だから、今の君が僕と契約してくれれば、どんな願い事だって叶えられるだろう」

マミ「……でも、あなたの目的は私を魔女にすることでしょう?」

キュゥべえ「うん、その通りだね」

マミ「……私が魔女になってしまったら、誰が私の事を止めるというの?」

キュゥべえ「前に君が言っていた、“先輩達”とやらにでも頼めばいいじゃないか」

マミ「それは……」

キュゥべえ「どうだい?
僕と契約して、この宇宙のために死んでくれる気になったかい?」

マミ「…………」

669: 1 2013/11/09(土) 07:55:28.69 ID:Trv2DE0m0
―私が“ある違和感”に気付いたのは、巴さんがインキュベーターを追いかけて宇宙空間に向かってから、少し経った後のことだった―

ほむら「……!」

まどか「どうしたの、ほむらちゃん?」

ほむら「私のソウルジェムが、無い……!」

さやか「ちょっとほむら、まさか無くしたってわけじゃないよね!?」

ほむら「もちろん、そうではないわ。
急に、消えて無くなったのよ……!」

杏子「……なんだと!?」

カオル「嘘だろ。
あたしのソウルジェムも、無い……!」

海香「私も……」

杏子「一体、何が起こってやがんだ……?」

670: 1 2013/11/09(土) 08:13:20.07 ID:Trv2DE0m0
マミ「……私が、キュゥべえにお願いしたのよ」

ほむら「巴さん……!
でも、どうしてあいつが急に―」

マミ「あなた達がこの星から撤退するというのなら、みんなを人間に戻してからにして、って頼んできたの。
どうやら、私との“約束”はちゃんと守ってくれたようね……」

まどか「良かったね、ほむらちゃん!」

ほむら「あっ、ええ……」

杏子「……マミ―」

マミ「そうだわ、みんな!
このあと、時間は大丈夫よね?」

さやか「マミさん、どうしたの?」

マミ「私の家で、ささやかな祝勝会でもしようかな、と思って。
あっ、でも鹿目さんと美樹さんは、一度ご家族と連絡を取らないと駄目よね?」

まどか「あっ、そうですね……」

さやか「それじゃあ、あたし達は一旦避難所に戻ろうか」

まどか「うん、そうだね」

マミ「他のみんなは、大丈夫?」

かずみ「わたし達は、大丈夫です」

ほむら「……私も、大丈夫」

マミ「それじゃあ、決まりね!」

杏子「……」

673: 1 2013/11/17(日) 00:42:15.04 ID:4dsmErBR0
マミ「……昴さん達、もうあすなろ市に着いたころかしら?」

杏子「心配しなくても、あいつらなら大丈夫だよ。
……それより、マミ。
あんたに一つ、聞いておきたいことがある」

マミ「あら、なぁに?」

杏子「……あんた、一体何をしたんだよ?」

マミ「えっ?
一体、何のこと―」

杏子「ごまかそうとしたって無駄だよ。
あのキュゥべえが、何のメリットもなしに魔法少女を元の人間に戻すわけないだろ」

マミ「……」

杏子「あいつと、何か取引でもしたのか?
……頼むから、教えてよ」

マミ「やっぱりあなたには、隠し事は出来そうにないわね……」

―マミはそう言うと、左手の指にある“指輪”をあたしに見せてきた―

杏子「!
そいつは―」

マミ「私、“魔法少女”になっちゃった……」

674: 1 2013/11/17(日) 00:50:08.58 ID:4dsmErBR0
杏子「マミ、どうしてあんた―」

マミ「……みんなを助けるには、こうするしかなかったの。
それにね、どうせもう私には、どこにも居場所なんて無いもの……」

杏子「……そいつは、どういう意味だよ?」

マミ「私が“ここ”に来てしまったことは、あの“闇の存在”を呼びよせる結果を招いてしまった」

杏子「!
でも、そいつはあんたがわざとやったことじゃないだろ?
そんなことで、あんたが責任を感じる必要なんて―」

マミ「確かに、それだけならまだ許されるかもしれないわね。
ここへの派遣は私の一存で決めたことではないし、“彼”がやってきたことも、事前に想定出来たことではないから。
……でもね、私がやってしまったことは、それだけじゃないわ。
私は、独断でインキュベーター達と敵対することを決め、その過程で得たグリーフシードを、勝手に自分で保管していた。
その行為が、危険であると分かっていたはずなのに。
実際、もう少しでそれを利用されるところだったでしょう?
そして今、私は自らが宇宙の脅威になりかねない選択をしてしまったわ。
だから、ここだけでなく、あちらに戻ったとしても、みんなに許してもらえないかもしれない……」

杏子「そんな、嘘だろ……」

マミ「……だから、あなたに一つお願いしたいことがあるの」

杏子「……なっ、何だよ?」

マミ「あなたの手で、私を殺してちょうだい」

―マミは、腕輪を変形させた槍をあたしに差し出しながら、そう言ってきた―

675: 1 2013/11/17(日) 00:55:22.04 ID:4dsmErBR0
杏子「……は?
あんた、いきなり何言ってんだよ……」

マミ「……もしも、私が魔女になってしまったとしたら、みんなに迷惑がかかるどころの話では済まないわ。
本当に、この星を滅ぼしてしまうかもしれない。
いえ、それどころか、もっと酷い―」

杏子「でも!
あんたが魔女にならなければ、それで済む話じゃないか!!」

マミ「……ええ、その通りよ。
だから私はあなたに―」

杏子「ふざけんな!
あたしは、そんなの絶対に嫌だぞ!!」

マミ「お願いだから、私の話を聞いて。
今の私は、いつ爆発するか分からない爆弾みたいな存在なの。
だからこそ、今のうちに―」

杏子「だったら、あたしとの“約束”はどうなるんだよ?
あんた、あたしを一人にしないって言ってただろ!?」

マミ「それは……」

杏子「それに昔、確かあんたは“あいつ”にもこう言ったんだろ?
『迷惑なんていくらでもかけていいから、簡単にあきらめるな』ってさ……」

マミ「……」

杏子「……マミ。
あんたのことは、このあたしが守ってやるよ。
それに、あんたが魔女にならない方法だって、いつか必ず見つけてみせる。
だからあんたも、そう簡単にあきらめるんじゃねぇよ。
希望を捨てたりなんか、しないでくれよ……」

676: 1 2013/11/17(日) 01:12:47.71 ID:4dsmErBR0
マミ「……ええ、そうね。
私も、最後まで希望を捨てないことにするわ」

杏子「マミ……」

マミ「……ありがとう。
でも、やっぱり私はここを離れるわ」

杏子「!
あんた、まさか……」

マミ「安心して。
改めて色々と考えてみたら、一度はあちらに戻ってみるのも悪くないかなって思い直せただけよ。
だって、もしかしたらまだ許して貰える可能性だってあるかもしれないし……。
それに、あちらなら魔女化を防ぐ技術だって見つけられるかもしれない。
だから、必ず私はあなたの元に帰ってくるわ」

杏子「……そっか。
だったら、必ず帰ってこいよ。
“マミ姉さん”」

マミ「!
……ええ、絶対にそうしてみせるわ。
“杏子”」

677: 1 2013/11/17(日) 01:25:50.24 ID:4dsmErBR0
とりあえず、ここまで。

実は『叛逆の物語』の鑑賞前に想定していた内容では、別にマミさんは契約したりせず、
普通にインキュベーター達と和解する的なエンド(一応、完全な和解ではなく、いつか分かりあえる日が来るかも的な終わり方ではありますが)を考えていました。

でも、『叛逆』の鑑賞を終えた後では、ネタばれになるので詳しい言及はしませんが、劇中のキュゥべえの“ある行動”を見るとそれは無いな、と思えてしまい、急遽展開を変更しました。

その為、またもや色々と不自然な点が生じているかもしれませんが、どうか、その点についてはご了承ください。
(例:戦い続けると誓ったのにも関わらず、魔法少女でなくなってしまったかずみ達に関するフォローが無いことや、
 マミさんの言動が一部おかしいこと等々……)

なお、本日中にもう一度エピローグ部分を投下する予定です。

679: 1 2013/11/17(日) 14:58:13.67 ID:4dsmErBR0
【一か月後】

―巴さんが地球を去った後、私達は“魔女”の脅威にさらされることもなく、平和に暮らしていた―

―まだ“使い魔”に関しては残っていたようだったけど、どうやら、巴さんの“光”の一部を受け継いだ杏子が世界中を旅しながら討伐してくれているらしかった―

―そして私は、遂に手に入れること出来た“まどか達との平和な日常生活”を、十二分過ぎる程に謳歌していた―

まどか「ほむらちゃん。
今日も、一緒に帰ろう?」

ほむら「ええ、まどか」

―でも私は、今の“平和過ぎる日常”というものに対して、漠然としたものではあったけど、どういうわけか“不安”のようなものをずっと抱え続けていた―

まどか「……それでね。
今日はわたし、あそこのクレープ屋さんに行きたいなって思ってたんだけど……。
ほむらちゃんは―」

ほむら「……」

まどか「……あの、ほむらちゃん?」

ほむら「……ああ、ごめんなさい。
ちょっと考え事をしていたの」

―やがて、私のその“不安”は、思いがけない形で、現実のものとなるのだった―

680: 1 2013/11/17(日) 15:20:58.58 ID:4dsmErBR0
まどか「そっか、それでほむ―」

ほむら「!」

―その時、突然地面が大きく揺れ出していた―

まどか「地震!?」

ほむら(いや、違う!
これは―)

―さらに揺れは大きくなり、やがて、私達の立っていた場所に地割れが生じて、私とまどかは分断されてしまった―

ほむら「まどか!」

まどか「ほむらちゃ―
!」

―そして、その地割れの中から姿を現したのは―

ほむら「!!
……か、怪獣!?」

681: 1 2013/11/17(日) 15:25:56.80 ID:4dsmErBR0
―私達の目の前には、光の巨人になった時の巴さんよりも大きな“怪獣”が出現していた―

ほむら「まどか、ここから逃げて!」

まどか「で、でも……」

ほむら「早く!」

―それから私は、まだ一丁だけ護身用に隠し持っていた小型の拳銃を撃とうとしたのだけど―

ほむら「きゃっ……!」

―既に“魔法少女”では無くなってしまった私の身体能力では、まともに狙いをつけてその拳銃を撃つことすらも出来ず、反動で倒れこんでしまっていた―

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら(そんな……!)

―そして“怪獣”が、私に襲いかかろうと近付いてきた―

ほむら(もう、これで終わりね……)

682: 1 2013/11/17(日) 15:48:15.84 ID:4dsmErBR0
??「あきらめるな!」

683: 1 2013/11/17(日) 16:09:54.82 ID:4dsmErBR0
ほむら(この、声は―)

??「間一髪、ってところね。
でも、もう大丈夫」

まどか「マミさん!」

マミ「二人とも、久しぶりね」

ほむら「……お帰りなさい、巴さん。
また、あなたと会えて嬉しいわ」

マミ「!
……ありがとう、暁美さん」

まどか「わたしも、マミさんとまた会えてとっても嬉しいです!」

マミ「ええ、私もあなた達とまたこうして会うことが出来て本当に嬉しいわ。
また、みんなでお茶会をしましょうね。
でも、その前に!
ちょっと一仕事、片付けちゃっていいかしら?」

まどか・ほむら「はい(ええ)!!」

マミ「それじゃあ、行ってくるわね!」

―巴さんはそう言うと、再び“光の巨人”の姿に変身して、その“怪獣”に立ち向かっていった―

THE END