1: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 15:51:00.13 ID:R4BlRhuk0


扶桑「そうなの……」

扶桑「鎮守府でお借りしてる田んぼが、雪に埋もれちゃったらしくて……」

扶桑「今月は田植えを控えてるから、今朝あの子が見回りにいったんだけど……」

扶桑「さっき、あの子の携帯から帰れなくなったって連絡があったの……」

雪風「なにがあったんでしょう?」

扶桑「えぇ……」

扶桑「無事なことは無事みたいだから、安心はしたけど……」

雪風「ひとあんしんです!」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456815059

引用元: 雪風「えっ!山城さんが田んぼの様子を?」 


 

3: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 16:01:17.49 ID:R4BlRhuk0


扶桑「あの子の代わりに、また出撃することになったから……」

扶桑「私は迎えに行けないのよ……」

雪風「じゃあ、私がむかえにいきますね!」

扶桑「ほんと……?いつもごめんね……」シュン

雪風「ぜんぜん!へーきです!」

扶桑「帰ったら……間宮さんでなにかごちそうするわ……」フフ

雪風「わーい!」ニコッ

雪風「では、さっそくいってきますね!」

扶桑「うふふ……よろしくね」ニコ



27:   ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:38:02.84 ID:R4BlRhuk0


ザラ「あら!」 

初雪「……あ」 

ザラ「チャオ!」ペコ 

初雪「こん……にちは」ペコ 

ザラ「……」 

初雪「……」 

ザラ「え……えと……!」オロオロ 

初雪「……」 


初雪(……き、気まずい) 


28:  ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:38:48.35 ID:R4BlRhuk0


初雪(ザラさん……来た、ばかり) 

初雪(外国の子、話のタネがない……) 

初雪(初雪……会話、苦手) 

初雪(……ごめん) 

初雪(このまま……部屋戻る……)シュン 


トテトテ… 


雪風「あっ!」 

雪風「初雪とザラさん、こんにちは!」 

初雪「あ、雪風……」スッ 

ザラ「チャオ!」ペコ 


7: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 16:20:37.60 ID:R4BlRhuk0


雪風「……」ジー…

初雪「……どうした?」

雪風「ザラさんの髪型って、すっごくかわいいです!」ニコッ

ザラ「えっ、本当ですか?」

雪風「はい!ふわふわでお人形さんみたいです!」

ザラ「嬉しい……ありがとっ」ニコ

初雪「…………」シュン



ザラ「でも、ハツユキみたいなニホンらしい髪の降ろし方も……」

ザラ「ザラ、一度やってみたいな……」フフッ

初雪「!」

雪風「雪風はどっちもできません」シュン



8: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 16:28:05.71 ID:R4BlRhuk0


雪風「では、雪風は今からおむかえにいきます!」

雪風「もし髪をおろしたら、雪風にも見せてくださいね!」

ザラ「もちろん!」ニコッ

初雪「……いってら」フリフリ

雪風「いってきます!」


トテテ…



初雪「……よかったら」

初雪「おろし方……教える」

ザラ「え、本当!?」パァァ

ザラ「是非お願いしたいな!」ニコ

初雪「いい、よ」

初雪「部屋来て……」ニコ



9: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 16:37:09.58 ID:R4BlRhuk0


チラ… チラ…


雪風(まだ雪がちらついています!)

雪風(つもった雪はだいぶ溶けましたが……)

ツルツル

雪風(踏み固まってこけそうです!)

雪風(手に“かさ”ももってますから……)

雪風(気をつけて歩きます!)


……
…………
………………



10: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 16:46:50.92 ID:R4BlRhuk0


ズガガッ ドサッ


男(あぁーもう、やってられないよ!)

男(雪国でもないのに、若いのが雪かきをやらされるなんて……)ガッ

男(ちくしょう、だから僕はこんな田舎がいやなんだ……)ズガガ…

男(町内会も年寄りばっかりだし)

男(そのくせ“若いもん”は大事にしない……)ドサッ


男(……でも、もうすぐだ)

男(街にある大学への入学が決まっている)

男(大学の寮への下宿が始まれば、こんな未来の無い田舎とはおさらばだ!)



11: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 16:58:22.13 ID:R4BlRhuk0


男「わははは!」ズガガッ

ドサッ

雪風「きゃっ!」

男「あっ!」


男「ご……ごめん、大丈夫!?」

雪風「はい!かんいっぱつです!」ニコッ

男「そか、よかったぁ」ホッ



13: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 17:04:42.68 ID:R4BlRhuk0


雪風「何をしてるんですか?」

男「これは雪かきだよ」

男「めずらしく雪が積もったからね、こうやって道を作ら“されて”るんだ」

雪風「そうなんですか!」


雪風「ありがとうございます!」ペコリ

男「えぇ、なんでお礼してくれるの?」

雪風「さっきまで、道がつるつるしていたので……」

雪風「私もみんなも、転んでけがをしなかったのは」

雪風「こうして雪かきをして“もらった”おかげなんです!」

男「!」



14:   ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 17:14:27.24 ID:R4BlRhuk0


雪風「では、私はこれで!」

雪風「作業の方もおきをつけて!」

男「うん、君もね」フフ


スタスタ…


男「……」

老人「……若いの」ボソッ

男「!」

老人「すまないな……」

男「……いえ、そんな」

男(いつの間に後ろにいたんだろう……)


ヨロ…ヨロ…


男(……危なっかしいなぁ)



15: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 17:21:43.50 ID:R4BlRhuk0


男(……この村)

男(僕みたいな若いのがみんな出て行ったら、この先どうなるんだろうな……)

男(…………)

男(……僕が、ここを一旦出るのはやめない)

男(……でも大学で勉強したことは、ここの役に立てよう)


男(僕が今まで育てて“もらった”村なんだ)

男(今度はもっと若い人も住んでくれるような村に、僕がしていけばいいんだよな)


男「……さぁ、残りもがんばるぞー!」グッ


………………
…………
……



16: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 17:30:00.13 ID:R4BlRhuk0


雪風「」グゥー…

雪風(おなかがすきました!)

雪風(天気はくもり、でも……)

雪風(ちょうど雪もやんだので……)

雪風(雪風が握ったおにぎりを、いまからどこかで食べます!)


雪風(えぇと……いい場所いい場所……)キョロキョロ



17: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 17:46:59.69 ID:R4BlRhuk0


地蔵「……」


雪風(ありました!)

雪風(おじぞうさまのすぐとなりが座れそうです!)

雪風「おとなり失礼しますね!」チョコン

地蔵「……」


雪風「……あれっ」

地蔵「……」

雪風(“やね”がこわれて、おじぞうさまに雪が積もってます)ジー…

雪風(なんだかとても、寒そうです……)



18: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 17:55:33.58 ID:R4BlRhuk0


地蔵「……」

雪風「……あっ!」ピコーン


雪風(そうです!雪風も雪かきしちゃえばいいんです!)

雪風「こーやって、こうやって……♪」サッ サッ

地蔵「……」


……
…………
………………


雪風「できましたっ!」ニコッ

地蔵「……」



19: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:03:55.14 ID:R4BlRhuk0


雪風「……はむっ」

雪風「……うん!おいしい!」モグモグ

地蔵「……」

雪風「そういえば、おじぞうさま」

雪風「おそなえ物は……?」

地蔵「……」カラッポ

雪風「……誰にももらえなかったんですね」シュン



20: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:12:00.26 ID:R4BlRhuk0


雪風「じゃあ、雪風のおにぎりを一つおそなえします!」ニコッ

地蔵「……」

雪風「これはシーチキン入りですけど」

雪風「もしお口にあわなかったらごめんなさい!」ペコ

雪風「でも、雪風ががんばって作ったから」

雪風「きっと、おいしいですよ!」

雪風「……はい!どうぞ!」ス…

地蔵「……」



21: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:16:44.24 ID:R4BlRhuk0


雪風「“やね”も壊れたままだと、なんだかこころもとないですね!」

地蔵「……」

雪風「でも、雪風は大工さんじゃないので直してあげられません……」シュン

地蔵「……」

雪風「ですからこれ、子ども用の“かさ”でよかったらお貸しします!」


カチャ


雪風「これでひとあんしんですね!」ニコッ



地蔵「……」



22: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:17:39.93 ID:R4BlRhuk0


雪風「……あっ!」


パァァ…


雪風「すごい!くもがきれて、おひさまが出てきましたね!」

地蔵「……」


雪風「とてもあたたかいです!」ニコッ

雪風「今のうちに山城さんのところへむかいましょう!」

雪風「それでは、おじぞうさま!」

雪風「おひるごはんにつきあってもらって、ありがとうございました!」ペコッ

地蔵「……」


トテテ…


地蔵「……」


………………
…………
……



23: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:25:25.55 ID:R4BlRhuk0


ピョン ピョン

雪風(わっ!虫がたくさん出てきました……)

雪風(そういえば、初春がもうすぐ“けいちつ”だと言っていました!)

雪風(あたたかくなって、たくさんの生き物が土の中からでてくるそうです!)

雪風(雪風も、なんだかげんきになった気がします!)


雪風(さて、もうすぐ“かしすいでん”ですね!)


……
…………
………………



25: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:33:17.87 ID:R4BlRhuk0


女「……はぁ」

女(都会に行ってしまったあの人に届けようと)

女(今も田舎にいる私の想いを綴ったこの手紙……)

女(三日間かけて、がんばって書いたのに……)プルプル


女(この目の前の赤いポストに、投函するだけなのに……)

女(どうしてそこに手が伸びないの……)



26: >>24!!!! 2016/03/01(火) 18:34:50.58 ID:R4BlRhuk0


女(付き合うとか、付き合わないとか)

女(そんな話もしたことないのに……いきなり好きだなんて)

女(今どき手紙で想いを伝えるなんて……)

女(そんなことされても、困るよね……)


女(怖いよ……)

女(出したくないよ……)ガタガタ…





29: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:41:05.34 ID:R4BlRhuk0


女(付き合うとか、付き合わないとか)

女(そんな話もしたことないのに……いきなり好きだなんて)

女(今どき手紙で想いを伝えるなんて……)

女(そんなことされても、困るよね……)


女(怖いよ……)

女(出したくないよ……)ガタガタ…



31: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:46:17.88 ID:R4BlRhuk0


雪風「あっ……!」パクパク

女「……え?」

女(女の子?)

女(どうして私を指さしてるんだろう……)

女(やっぱり、私なんかが手紙なんて……ダサいんだろうな……)シュン


雪風「おねーさん、下!した……!」

女「……え?下?」チラ


まむし「」ニョローン



32: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:51:19.58 ID:R4BlRhuk0


女「っ!!」ビクッ

女「キャ――――!!」ポイッ



―――スコンッ


女「キャー!キャァァァ!!」

雪風「きゃー!!」

女「きゃああああああ!!」



「「キャ―――――!!」」バタバタバタ…


……
…………
………………



33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/01(火) 18:55:07.89 ID:R4BlRhuk0


女「やっと戻ってきた……」ハァ…ハァ…

女(やっぱり、下には落ちてない……!)

女(……ということは……)ハァ…ハァ…

女「……」ジッ

ポスト「……」


女(入っちゃった……のかぁ)



35: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 18:58:37.14 ID:R4BlRhuk0


女「……ふふっ」

女(そっか、入っちゃったのか……)クスッ

女(じゃあもう……前に進むしかない、よね……)


女(……大丈夫、きっと伝わるよ)

女(私の精一杯の気持ちを綴ったの……)


女(だからなにがあっても、もう後悔しないわ……!)


………………
…………
……



36: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 19:03:33.99 ID:R4BlRhuk0


雪風「はぁ……はぁ……」

雪風「まむしは噛まれると大変です……」

雪風「……はぁ……はぁ……」


雪風「山城さん……」

雪風「だいじょうぶでしょうか……」



37: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 19:04:49.83 ID:R4BlRhuk0





山城「……ふぇーん……」ポロ…ポロ…

山城「……だれか……たすけてぇぇ……」グスッ


山城(……雪解けのせいで、ぬかるんだ土にはまって動けなくなるなんて……)

山城「……やっぱり……不幸だわ……」グスッ



雪風「あぁ、いましたっ」

雪風「山城さーん!」

山城「そ、その声は……雪風!」



38: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 19:05:43.98 ID:R4BlRhuk0


山城「ゆきかぜぇ……そこから引っ張ってぇ……」グスッ

雪風「わかりました!今引き揚げますね!」


グググ……

ツルッ


雪風「きゃっ!」


バシャッ


山城「あ……」



39: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 19:06:18.64 ID:R4BlRhuk0


山城「た、助かったぁ……」ヘナッ

雪風「ふぅ……疲れましたぁ……」ヘナッ

山城「ごめんね雪風……あなたまでどろんこになっちゃったわ……」

雪風「えへへっ」


雪風「これで私たち、“おそろい”ですね!」

山城「……そっか」クス


山城「私たち、おそろいかぁ……」



40: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 19:09:05.36 ID:R4BlRhuk0


テクテク…


山城「あっ……雪風、見て!」

雪風「え?」

山城「お地蔵様のまわりに……椿がたくさん咲いてるわ……」

雪風「わぁ……!」


雪風「すごく……綺麗です!」

山城「えぇ、ついに春がやってきたんだわ……」

山城「でもなんだか、例年より早い気がするね」

雪風「あ!たしかに……」

雪風(それにさっきまで咲いてなかったような……?)

雪風(……でも、いいんです!)フフッ



41: ◆9l/Fpc6Qck 2016/03/01(火) 19:11:19.97 ID:R4BlRhuk0


雪風「雪風はあたたかい方がすきです!」

山城「ふふ……私も」ニコッ

雪風「えへへ!」ニコッ



山城「なんだか、お地蔵様も幸せそう……」ニコ

地蔵「……」


――――――――fin―――――――――