1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:22:50 ID:0eQ.HRUI
※狂ってます

引用元: 男「愛してた。愛してる。だから、さようなら」 


 

日本人はなぜ「さようなら」と別れるのか (ちくま新書)
竹内 整一
筑摩書房
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2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:24:33 ID:0eQ.HRUI
※薄暗い部屋。

prrrrr...


男「…はい。ああ…。うん。」

男「…またその話?」

男「嫌だって言ってるじゃないか。」


男「…え? …うるさいな! ほっておいてくれよ!」

男「わかってるよ! 大丈夫だから気にしないでくれ!!」


男「…やめろ! そんなことしてみろ!どうなるか…っ」


男「…………っ。」

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:25:18 ID:0eQ.HRUI

男「スー…はぁ…。 …やめてくれ。わかってるから…。」

男「…うん。うん。………うん、大丈夫。……またね」


pi.


男「………ああ。ごめん、心配させたかな」ナデナデ

男「大丈夫だよ。君は僕のそばにいてくれていいんだ。」


男「………可愛いね。君は最初からずっと可愛い。」

男「好きだよ。ずっと僕のものでいてね。」


男「…………」


男「やっぱり返事はしてくれないんだね。少し寂しいよ。」

男「いいんだ。……別に、僕は言葉なんか望んで無いから。」


男「……」ナデナデ

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:25:52 ID:0eQ.HRUI
※夜


男「今日は……なんだか、疲れたね。もう、寝ようか。」

男「動けないよね。大丈夫だよ。ちゃんと僕が、連れてってあげるから。」

ゴソゴソ…

男「これでいいかな。ほら、布団をかけて…ああ。脚は伸ばして。うん、そう。」



男「おやすみ。愛してる」

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:26:22 ID:0eQ.HRUI
※翌日


男「おはよう。今日も可愛いね。」


男「髪を、梳かしてあげよう。」

シュ、シュ…

男「ほら、綺麗になった。今度、花でも買ってこようか。君に似合うよ。」


男「じゃあ、僕は出掛けてくるから。…ちゃんと、待っていてね。」


男「行ってきます。」

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:26:52 ID:0eQ.HRUI
※夕方


男「ただいま。」


男「ほら、ちゃんと君のもとに帰ってきたよ。大丈夫。」

男「………」


男「あ。そうだ、暑くなかった? もうそろそろ、春も終わるね。」

男「窓を開けようか。ああ、いい風だ。わかる?」


男「気持ちよさそうだね。気に入ったかな」

男「うん。また窓は開けてあげる。」


男「……少し、寒いかな。っていっても、君にはわからないか。」


男「…………ううん。きっと、わかるよね」

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:27:23 ID:0eQ.HRUI
※季節が経過して


男「大型連休か。君はどこかに行きたい?」

男「あはは。うん、君は家の中がいいかもね。」


男「…………」


男「でも、きっと君は海でも山でも川でも…花畑でも星空でも、なんでも似合うよ。」


男「一緒に、見に行きたい。そんな君を、見てみたいんだ。」


男「だから、だから僕ねーー…」


ヒュウウ………


男「あ……風で、髪が。待って。」

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:27:59 ID:0eQ.HRUI

パタン

男「……髪が乱れちゃったね。梳かしてあげるから安心してね。」


男「……綺麗だね。やっぱり君はとても可愛い。大好きだよ……」


男「愛してる。」


prrrr


男「っ」ビクッ

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:28:31 ID:0eQ.HRUI

男「あ……びっくり、した。電話か。」

男「ごめんね、待ってて。」


男「はい……。え? あ、はい、そうです。いえ……。」

男「…… そうですか。はい。」

男「……わかりました、その……いつまでに……?」


男「……ああ、ええ。わかりました。……はい、…はい。」

男「…はい、すぐにお伺いします……。」


pi.

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:29:03 ID:0eQ.HRUI

男「ごめん。急に出かけなくちゃいけなくなったんだ。」

男「あは……いつもの電話じゃなくて安心してる。うん、君にはバレバレだね。」


男「えっと……ここで、待っててね。」

男「……帰ったら、髪を梳かす続きをしてあげるね。そうだ、花も買ってくるよ。」


男「大丈夫。……じゃあ、行ってくるね。」


バタバタ…… ギィ、バタン。

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:29:37 ID:0eQ.HRUI
※夜

男「ただいま。今、帰ったよ。お待た……せ……?」


男「………………っ!!」


キョロキョロ


男「待って。何処?」

男「なんで……。 ……っ!!」


男「窓が……。っそうか、僕、鍵を………」



男「嘘だろ……?」

13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:30:10 ID:0eQ.HRUI

男「花も、買ってきたんだよ……?」

男「帰ったら……髪を梳かす続きをしようって言ったのに。」

男「さっきだって……君と出掛けるために、車の免許を取るために必要だったから行ったのに……。」


男「大丈夫だって………言って聞かせたのに………こんなの……。」

男「どうして………。」


シーン……


男「……僕が遠くに行こうなんて思わなければ………まだ、君といられたのかな」

男「僕がやっぱり何処にも出掛けずに……君とだけ居れば……!」

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:31:14 ID:0eQ.HRUI

男「…………っ」グッ


男「スー、はぁ。 ……違う。ごめん。僕のせいだよね。大丈夫。わかってる。それじゃいけないんだ。」


男「………でも……………っ。」


男「……」

男「……何処に行ったのかな……。」


男「ああ、そうか」

男「そうなんですね、ゼペットおじいさん。」

男「貴方と彼が女神様から授かった幸運を、僕たちも貰えたんですね。」


男「だって、彼女は居なくなったんです。」


男「きっと……魔法の力で動き出したんです。それだけ、ですよね?」

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:32:21 ID:0eQ.HRUI

男「そっか……うん。なら仕方ない。」


男「女神様の魔法なんて人には言えないから……迎えに行けないよ。」

男「ああ、ごめん………迎えに来て欲しかったのなら……ごめんね…。」


男「…………っ、ごめん……」


男「ごめん……愛していてはいけないと、わかってたんだ。今のは言い訳だ。ごめん。逃げた。」


男「………せめて……素直に、あの電話で言うことを聞いておけば、こんなことには……。」ギリ…


男「スー、はぁ。………違う…そうじゃない。大丈夫…考えるな……。」

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:33:26 ID:0eQ.HRUI

男「ああ……そうだ。まずは部屋を、片付けなくちゃ。」


男「…………………通帳まで、持ってったのか。」

男「……足跡。大きな、足跡」


男「………っ」グッ…


男「……彼女は魔法の力で本物になって、出て行ったんだ。そうだろう。そのはずだ。そう、僕たちは幸運を授かっただけ。」

男「そうだ、彼女は自分で出て行ったんだ。 ただ、僕が彼女にフラれただけの話なんだ。大丈夫……」

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:34:43 ID:0eQ.HRUI
男「大丈夫…大丈夫…大丈夫…。」

男「……」グッ


男「~~~っ気にするな! 大丈夫だ! 」

男「違う……違う、違う、違う!!」

男「大丈夫なんだ!! ◯◯◯てなんかいない!! ◯◯◯たりしない!! そうだろう! 大丈夫だ!!」


男「…………」はっ

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:38:06 ID:0eQ.HRUI

男「…………僕……何、言ってるんだろう。」


男「………泥だらけの部屋を見れば、一目瞭然だよね。 泥棒だ。彼女は盗まれたんだ…。」

男「…いっそ、妹の言うとおり。預けてしまえば…よかったのかな…」


男「そうすれば…彼女は…。 少なくとも、今頃、ひどい、目、に…は…・・・ っぐ」


うえっ、げぇっ! げぇっ!!


男「はぁ… はぁ・・・っ」


男「だめだ…。 いや、最初からだめだった」

男「家族の説得すら聞かずに、強情にこんな生活を何年も……どっちみち、続くわけなかったんだ。」

19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/03(木) 19:40:26 ID:0eQ.HRUI

男「だけど……愛してしまったんだっ! 自分でも、どうしていいのか…っ!」

男「……………っ」


男「だめだ……君が居ないのが、辛くて……っ」

男「君の今の現状を……考えたりするのでさえ……耐えられない……っ」


……スッ、カチャカチャ……


男「………愛してたよ。愛してるよ。」


男「……………うん。大丈夫。僕ならもうすぐ、楽になる」


男「ああ。君といられた日々は、幸せだったな…。」


ザク。


※おわり