男「んぁ?ここは・・・」 犬娘「に、人間!?」 前編

242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/21(水) 21:54:21.62 ID:wH8W//ie0
牛頭1「うら!喰らえよ!」ブオン!

狸侍女「ふっ!」ガキィン!

牛頭1「はっはあ!やるねえ!まさか戦狸の一族が生き残っていたとはな!半信半疑だったよ!」グググ…!

狸侍女「わたくしが最後の生き残りです」グググ…!

牛頭1「へっ!なら、ここで戦狸の一族は終わりだな!」ギィン! バッ!

狸侍女「そうはいきませんよ。わたくしにはまだやりたいことが残っています!」バッ! ザザッ!

牛頭1「ははっ、そう来なくちゃな!」ブン!

狸侍女「・・・!」ヒュッ!

ガキィン!



 

引用元: 男「んぁ?ここは・・・」 犬娘「に、人間!?」 


 

うちの猫がまた変なことしてる。 (コミックエッセイ)
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243: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/21(水) 22:19:32.46 ID:wH8W//ie0
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーー

馬頭1「お嬢ちゃんの相手はオレがしようかねえ」

狐娘「あら、乱暴なお誘いは嫌いよ?」

馬頭1「ヒャハ!言うじゃないの。こりゃあ殺すのが惜しいな」チャキ

狐娘「ふふ。あなたに出来るかしら?馬面さん?」フワ…

馬頭1「な!?六尾だと!?おいおい、オレあ精々四尾までしか見たことねえぞ・・・」

狐娘「ふふ。良かったわね、五尾以上の狐族なんて、滅多に出会えないのよ?」

馬頭1「・・・ヒャハ!いいねえ!そんな高位の狐を殺せるなんて!」フォンフォンフォン!

狐娘「戦闘狂ね・・・。(あの青竜刀が厄介ね。すごい早さで振り回してる)」

馬頭1「ヒャハ!元々オレらは戦いたくて山賊紛いの事やってたんだ!こんな好機、逃がしてたまるか!」ダッ! ヒュン!

狐娘「っ!」バッ!

スパァン!!  スタッ!

狐娘「(参ったわね。私、近接戦は得意じゃないんだけれど)」ツー…

馬頭1「どしたい!?冷や汗かいて!見せてくれよ!六尾の力ってやつをさあ!!」ドンッ!

狐娘「くっ・・・!『狐流武舞・暮葉』!」ボウ…!

馬頭1「あん?」

狐娘「はっ!」ビッ!

ザアァァーーー!!

馬頭1「うお!?何だこれ!落ち葉がまとわりついて・・・!」ジタバタ

狐娘「(うまく幻術に掛かってくれたけど、精々時間稼ぎね・・・。何とかしないと・・・!)」


244: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/21(水) 23:07:13.30 ID:wH8W//ie0
狸侍女「はあっ!」ヒュン! ボッ!

牛頭1「うおっ!?く、やるじゃねえか・・・!」ギン! ガキィン!

狸侍女「(こちらは何とかなっていますが・・・。まずいですね。あちらは狐娘様が不利です・・・!)」チラッ

牛頭1「! はっはあ!相対中によそ見とはいえ余裕だな!」ブウン!

狸侍女「しまっ・・・!?」

???「そこまでだ!」ヒュッ! ギイン!

牛頭1「なっ・・・!?」

狸侍女「(どこから!?)」

???「やっと見つけたぞ!我ら鬼族の名を騙り、略奪を続けてきた悪党共よ!」

牛頭1「鬼族!?ちいっ!本物のお出ましかよ!しかもあの家紋、開祖直系じゃねえか!」

狸侍女「あ、あの・・・」

???「すまない。話は後だ。今は奴を捕らえる!」

狐娘「狸侍女さん!」タタッ

狸侍女「狐娘様!ご無事で!?」

狐娘「ええ。さっき、幻術で翻弄されていた馬頭を、あの妖(ひと)が・・・」スッ

馬頭1「が・・・か・・・!」ピクピク

牛頭1「何!?こうなったら、俺だけでも・・・!」

???「逃がさん!はあぁっ!」ビュッ! ドゴン!

牛頭1「ごぶぁっ!?・・・ごふっ・・・」ドサッ

???「・・・ふう。全く、鬼の名を騙るなど、呆れた連中だ」

245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/21(水) 23:08:59.97 ID:wH8W//ie0
狸侍女「・・・あ、あの」

???「ん?あ、ああ!すまない。私は鬼女。このところ巡山に出没するという山賊を追っていてたんだ」

狐娘「鬼女さん。助けて頂いて、ありがとうございました」ペコリ

狸侍女「ありがとうございます」ペコリ

鬼女「や、やめてくれ!私は私の目的のためにコイツらを追っていたのであって、礼を言われる為じゃない!」アセアセ

狐娘「いえ、理由はどうであれ、助けて頂いたのは事実ですから」

狸侍女「はい。ありがとうございます」

鬼女「むう・・・。な、何か照れるな///」



犬娘「おーい!狐娘ちゃーーん!」ダダダダ!

狸娘「はあっ、はあっ・・・!た、狸侍女・・・!無事ですの・・・!?」ゼハー ゼハー

男「た、狸娘も大丈夫?もう少しだから!おーい!二人ともー!無事かー!?」タッタッタ

狸侍女「男様!犬娘様に、お嬢様も!」

狐娘「良かった。三人も無事みたいね」

犬娘「狐娘ちゃん!」ガバッ!

狐娘「きゃっ!危ないわね、犬娘」ガシッ!ヨロロ…

犬娘「ぶ、無事でよかったよー」ヘナヘナ

狸娘「た、狸侍女も・・・!大事ありませんわね・・・?」ハァ…ハァ…

狸侍女「はい、お嬢様。ご心配ありがとうございます」ナデナデ

男「やっぱり、二人も襲われてたんだね。無事で良かった」ホウ…

鬼女「うむ。良かったな!」

男「あ、鬼女さん。どうもありがとうございました」

鬼女「だ、だから礼などいい!何か、むず痒くなる・・・!///」

男「あははっ」

鬼女「むう・・・。笑うなぁ・・・」


狸侍女「男様、鬼女様とはお知り合いで?」

男「いや、実はさっき俺達も襲われてさ。追われていたんだけど、その時鬼女さんが現れて、敵をやっつけてくれたんだ」

鬼女「まあ、あいつらもこの牛頭馬頭の部下でな。同じく追跡の対象だったのだ。気にするな」

狐娘「男さん達も?」

犬娘「うん!牛頭と馬頭の山賊だったよ!」 

狸娘「危ない連中でしたわ・・・」

鬼女「うん。奴らは、このところこの山に登る登山客を狙って略奪行為を繰り返していてな。この山を管理している私の家に、取り締まってくれとの連絡が来たのだ」

男「それで、今日にやっと足取りを掴んで、仕留めた、と・・・」

鬼女「ああ。あのまま放っておけば、鬼族に間違った想像をしてしまう妖々(ひとびと)が現れないとも限らないからな」

狐娘「成る程」

251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/22(木) 12:07:55.13 ID:uNHzkj/+0
鬼女「それにしても、男も、狸侍女も、狐娘も大したものだ。牛頭馬頭は私達鬼族に次ぐ戦闘系種族。それとあそこまで渡り合うとは」

狸侍女「はい。侍女ですので」

男「あ、何か久しぶりに聞いたような感じがする」

狐娘「まあ、私も六尾だし、あのくらいは・・・って、男さん?渡り合ったって、あなたも戦ったの?」

男「え?あ、いや、戦ったっていうか、逃げ回ってただけだよ」

鬼女「何を謙遜している。牛頭と馬頭、二人の攻撃をかすらせもせずに逃げ回るなど、並の者が出来ることではないぞ?」

男「いやいや。本当は立ち向かえたら良かったんですけどねえ・・・。あれが精一杯でしたよ」

犬娘「でも、男さんすごかったですよ!あんなに身軽に動き回って!」

狸娘「そうですわ。それに、何度かあの二人に攻撃もしていたではないですか」

男「あはは。全然効いてなかったけどね」

狐娘「それでもすごいわよ。牛頭と馬頭を相手に立ち回れるなんて」

狸侍女「ええ。ますます手合わせが楽しみになってきました」

男「いやいや。二人まで、勘弁してくださいよ・・・」

鬼女「それに、男は心も強いな!」

狐娘「心?」

鬼女「ああ。牛頭と馬頭が私達鬼族を騙って現れたとき、恐怖に流されたりせず、冷静に相手を判断していた。民間人が山賊に襲われれば恐慌状態に陥り、奴らの言うことを鵜呑みにして、鬼族の仕業だと思ってしまうところも、その強い心で恐怖心を押さえ、相手を論破さえしていた!」

男「いや、そんな大袈裟な事じゃないですよ!俺、もともと各種族の事とか疎いですし!」

鬼女「それでもだ!疎いからこそ囚われがちになる先入観にも惑わされず、相手を冷静に分析するその心力と観察眼。賞賛に値するぞ!」

犬娘「男さん、本当にスゴいんですね・・・!」キラキラ

狸娘「流石は男様ですわ・・・!」キラキラ

男「ああ!?二人が変な洗脳を受けたみたいになってる!?」

252: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/22(木) 12:33:47.14 ID:uNHzkj/+0
鬼女「それに、私は嬉しかったんだ」

狸侍女「嬉しかった、とは?」

鬼女「うん。あいつらに何と言われても、男は、鬼族の仕業だと言わなかった。今までに襲われてきた妖(ひと)達は、皆、鬼族がやったんだ、って言っていた。確かに、私達の中には、そうういったことをしてきた連中もいる。・・・でも、皆がそうだというわけではないんだ」

狐娘「・・・そうね」

鬼女「男は、それを分かってくれていた。むしろ鬼族を庇おうとまでしてくれた」

男「い、いや、鬼女さん。俺、そこまで考えてた訳じゃ・・・」

鬼女「それでも!・・・それでも、私は嬉しかった。鬼だからと、そんな判断をせずに鬼族の名誉を守ってくれた男に、私は本当に感謝しているんだ・・・」

男「鬼女さん・・・。むしろ、助けてもらった俺の方が礼を言わないといけないのに・・・」

狐娘「男さんはもう十分感謝したんでしょう?なら、お礼くらいは受け取っておきなさいな」

狸侍女「そうですね。男様にとっては大したことではなくても、この方にとっては大事なことだったようですよ」

鬼女「ああ。ありがとう、男・・・」

男「・・・はい。どういたしまして、鬼女さん」ニコッ

鬼女「!」ドキン!

男「鬼女さん?」

鬼女「う、うん!?何でもないぞ!?(な、何だ?今の感覚は)///」

犬娘「・・・! ま、また・・・!」ワナワナ

狸娘「こ、こんな所でまで・・・!」プルプル

狐娘「はあ・・・。あなた達も大変ねえ・・・」 

狸侍女「はい。ですが、あの様子ですと本人も自分の気持ちを理解していないようなので、さしたる障害ではないかと」

狐娘「あら。やっぱり狸侍女さんが一歩先んじていますね」

狸侍女「はい。この件に関しては負けるつもりはありませんから」

狐娘「ふふっ。頑張ってくださいね?」

狸侍女「はい」

253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/22(木) 13:38:19.09 ID:x06RRFKJ0
男「さて!結構時間過ぎちゃったけど、どうしようか?」

狐娘「そうねえ。そろそろ夕方になるし。山はすぐに暗くなるのよね」

狸娘「そうですわね。名残惜しいですが、そろそろ下山した方がいいかもしれませんわね」

犬娘「えー・・・」

鬼女「何だ、もう下りてしまうのか?」

男「んー、そうですね。また明日も朝から冬華村に行かなくちゃいけないし・・・」

鬼女「こ、この村からも出て行ってしまうのか!?」

犬娘「船が出ているのが祭りの期間だけですしね」 

狸娘「男さんをこの期間内に全島に案内するのですわ」

鬼女「そ、そうか・・・。祭りも三日目。あと二日しかないものな」

男「ええ。最終日には一度秋之村に戻って、犬父さんに、帰る手段が見つかったかどうかも聞かなくちゃ行けませんし」

鬼女「帰る?どこにだ?」

犬娘「どこ、って・・・」

狐娘「人間の世界ですよ?」

鬼女「人間!?」

男「あれ?言ってませんでしたっけ」

鬼女「き、聞いてないぞ!?」

狸侍女「それにしたって、今までで気付きそうなものですが」 

鬼女「い、いや、てっきり尻尾と耳を隠した獣人系種族か、油舐めとか小豆洗いとかの亜人系種族かと・・・」

狐娘「まあ、確かに人間だとは思わないわよねえ」

鬼女「お、男!さ、触ってみてもいいか?」

男「へ?ええ。構いませんけど」スッ

鬼女「・・・おお」チョンチョン

男「・・・」

鬼女「・・・おお?」ツンツン

男「うひっ!く、くすぐったいです・・・!」

鬼女「あ、ああ!すまない。ふむ。人間は私達と大して変わらないんだな」ギュウ

男「そうですね。鬼女さんも、柔らかくて、温かいです」ギュウ

鬼女「!///」ボッ!

犬娘「お、男さん!その辺で!」

狸娘「そ、そうですわ!少しくっつきすぎじゃありませんこと!?」

男「あ、ああ。すいませんね、鬼女さん」パッ

鬼女「あ・・・っ」

狐娘「・・・男さんって、たまにわざとやってるんじゃないかと思うわね」

男「?」

255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/22(木) 17:42:06.20 ID:nh7/ojMn0
男「さて。じゃあそろそろ下山しようか」

犬娘「そうですね。行きましょうか」

狸娘「確か、蜘蛛女さんも、夜になったら合流するんでしたわよね?」

狸侍女「はい。なんでも、夕飯と、今夜の宿を提供してくれるとか」

狐娘「あら、ありがたいわね」

男「それじゃあ、鬼女さん。改めて、どうもありがとうございました」

鬼女「あ、うん・・・」

狸侍女「ご縁がありましたら、またどこかで」

鬼女「・・・うん」

男「? 鬼女さん?どうかしましたか?」

鬼女「え・・・?あ、お、男達は、明日のいつの船で出るんだ?」 

男「俺達ですか?えーと、朝一の便です。だよね?狐娘」

狐娘「ええ。その通りよ」

鬼女「そうか。じゃあ、見送りに行くよ!」

男「本当ですか?嬉しいです。それじゃあ、また明日」

犬娘「失礼します、鬼女さん!ありがとうございました」

狸娘「さようなら」

テクテクテクテク………







鬼女「・・・・・・」

259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/23(金) 10:30:34.25 ID:18qnUQ160
ー春陽村・蜘蛛女宅ー
ガラガラ

男「こんばんはー」

犬娘「お邪魔しまーす」

蜘蛛女「あら、いらっしゃい。上がって上がって」

狸娘「こんばんは、蜘蛛女さん」

狐娘「お邪魔します」

蜘蛛女「はいこんばんは。くつろいでいってね」

狸侍女「蜘蛛女、今日はありがとうございます。助かります。土産と言うほどではありませんが、わたくしが造ったお酒です。どうぞ」スッ

蜘蛛女「あら、ありがたいわね。私、あなたが造ったお酒が一番好きよ」

狸侍女「そう言ってもらえると嬉しいです」

蜘蛛女「ふふっ。お世辞じゃないわよ?まあともかく、あなたもお上がりなさいな」

狸侍女「ええ。失礼します」

260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/23(金) 12:40:26.65 ID:18qnUQ160
ー蜘蛛女宅・居間ー
犬娘「ふぁー・・・。玄関でも思いましたけど、広いお家ですねー」

男「そうだね。立派なお家だねー」

蜘蛛女「ふふ。私は下半身がこうだから、どうしても普通の家じゃ暮らし辛いのよ。はい、お茶」コト…コト…

狐娘「成る程。あ、ありがとうございます」

蜘蛛女「それにしても、今日は災難だったわね」

狸侍女「ええ。お陰で巡山を登り切ることが出来ませんでした」

犬娘「あれ?蜘蛛女さん何で知ってるんですか?」

蜘蛛女「ふふ。だって、鬼族の方々に山賊討伐の以来を出したのは私だもの」

男「そうだったんですか!」

蜘蛛女「鬼女は、私の友達でもあってね。困ってたからお願いしたのよ」

狐娘「蜘蛛女さんは、暴れているのが牛頭馬頭だと気付いていたんですか?」

蜘蛛女「確証は無かったけどね。でも、鬼族とも付き合いがある私には、どうにも違和感があったのよ。それで、実際に鬼族の鬼女に聞いてみたら、向こうも向こうで怪しい奴らに困っている、って話だったから、正式に依頼を出したわけなのよ」

男「へー」

蜘蛛女「それにしても、牛頭と馬頭なんてね。あいつら、タチの悪い不良だから、一度懲らしめないと駄目よね」

狸娘「い、いえ。今日で十分懲りたんじゃありません?」

犬娘「鬼女さんにめちゃくちゃに殴られてたもんね・・・」

蜘蛛女「あら、そう?なら、お説教くらいで許してあげようかしら」

男「? 蜘蛛女さんは、牛頭や馬頭と知り合いなんですか?」

蜘蛛女「え? ああ、あいつらは、私の元部下なのよ」

男「え!?」

蜘蛛女「ふふ。私、昔はそれなりに名の知れた悪党だったのよ?」

狸娘「そ、そうなのですか?」

狸侍女「はい。春陽村で何か事件が起こると、真っ先疑われるくらいでした」

狐娘「えー・・・」

蜘蛛女「まあ、数年前に狸侍女に負けてから、足を洗ったけどね」

犬娘「そ、そうだったんですか・・・」

蜘蛛女「そうよ?私、今でも怒ると恐いわよー・・・?」

犬娘「ひい!」

狸侍女「蜘蛛女、あまりからかうものではありませんよ」

蜘蛛女「あははっ。そうね。ごめんね?犬娘ちゃん」ナデナデ

犬娘「あうあう・・・」ガクブル

男「あ、あはは・・・」

蜘蛛女「まあ、そんな感じで、あいつらは私の荒れていた時代の子分だったのよ。でも、私が狸侍女に負けて、率いていた一味を解散した時、あいつらは真っ当な道を生きず、そのまま馬鹿なことを続けているわ」

狸娘「そうだったんですの・・・」

261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/23(金) 12:40:53.72 ID:18qnUQ160
蜘蛛女「まあ、私も最後まで面倒見れなかった後ろめたさから、見逃してきたんだけどね。でも、流石に最近はやりすぎたわ。ここら辺で一度、しっかり話し合わなくちゃ」

男「そうですか。・・・何て言うか、その、頑張ってくださいね」

蜘蛛女「ええ、ありがとう。ごめんなさいね。本当なら、あなた達が命を狙われる前に私が止めるべきだったのに」

男「気にしないでください。そこまでやったのは彼等の責任であって、蜘蛛女さんのせいじゃないですよ。そのことで、あなたを恨んだりはしません」

犬娘「そうですよ!悪いのは牛頭さんと馬頭さんです!」

狸娘「そうですわ。お気になさらないでください」

蜘蛛女「あなた達・・・」

狐娘「と、いうことですよ」

狸侍女「あなたは、ちゃんと彼等と向き合おうとしている。それだけで、十分です」

蜘蛛女「・・・ええ。ありがとう」

男「いえいえ」

蜘蛛女「ふふっ。さて、それじゃあ、お夕飯にしましょうか。腕に寄りを掛けて作ったから、沢山食べてちょうだいね?」

全員『はい!』

262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/24(土) 09:05:27.32 ID:L9payCRO0
ー数十分後ー
男「ご馳走様でした!」

犬娘「美味しかったですー」コロン

狸娘「ご馳走様でした。って、い、犬娘さん、お行儀が悪いですわよ」

蜘蛛女「ふふ。お粗末様でした」 

狐娘「とっても美味しかったです。ご馳走様でした」

狸侍女「蜘蛛女、また腕を上げましたね」

蜘蛛女「ええ。私、料理屋の店長よ?それに、一人暮らしだから、家事や炊事は出来ないとね」

男「いいですね。家事や炊事が出来る女性って。なんか、家庭的って感じがして、憧れます」

犬娘「! あ、蜘蛛女さん、片付けは私がやります!」ガタッ

狸娘「わ、私も手伝いますわ!」ガタッ

狐娘「・・・単純ね」

蜘蛛女「あら、そう?それじゃあ、お願いしようかしら」

犬娘「はい!任せてください!お、男さん!私、お片付け得意なんですよ!」グイ

狸娘「わ、私だって、作るのはともかく、片すのは得意ですわ!」グイ

男「え、え?あ、うん。が、頑張って・・・?」

犬娘「はい!」

狸娘「お任せくださいませ!」

ガチャガチャ… スタスタスタ

蜘蛛女「ふふっ、なかなか面白いことになってるみたいね?男くん」 

男「へ?」キョトン

狐娘「(そういえば、狸侍女さんは行かなくていいの?)」ヒソヒソ

狸侍女「(ええ。今日は折角ですから、このまま男様の近くにいようかと)」ヒソヒソ

狐娘「(成る程ね・・・)」

263: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/24(土) 22:46:13.94 ID:pSMT/FN00
男「それにしても、明日は四つ目の村かー。この数日、本当にあっと言う間だったなー」

狸侍女「そうですね。わたくし達でもそう感じますから、男様は一層早く感じるのでしょうね」

蜘蛛女「明日は、どの村へ行くのかしら?」

狐娘「明日は、私の故郷、冬華村に行こうと思ってます」

蜘蛛女「あら、いいわね。あそこの清酒も美味しいのよねー」

狸侍女「まったく、あなたの酒好きにも呆れますね」ハァー

蜘蛛女「あら、好きな物は好きなんですもの。しょうがないことでしょう? と、いうわけで、あなたから頂いたお酒も開けさせて貰うわね」キュポン トクトクトク…

狸侍女「言いながらもう開けているじゃないですか・・・」

蜘蛛女「いいでしょう? 頂きます、と」クイッ コクン

男「蜘蛛女さんはお酒が好きなんですね」

蜘蛛女「んっ・・・、ふぅーー・・・。そうね、お酒を呑んでいるときが最高に幸せと言っても過言ではないわ」

狸侍女「蜘蛛女は昔からお酒に目がないのです。わたくしがお酒に強くなったのも、蜘蛛女に付き合わされてきたからなのです」

狐娘「でも、大人の女、って感じて格好良いじゃないですか」

蜘蛛女「あら、狐娘ちゃん分かるじゃない。どうかしら?一緒に飲む?」

狐娘「いえ、遠慮しておきますね」

蜘蛛女「あら残念。なら、男くんはどうかしら?」チャポチャポ

男「いえ、俺も未成年なんで。遠慮しておきます」

蜘蛛女「むー。つまらないわねえ。狸侍女、あなたはどう?」

狸侍女「そうですね。酌をする程度には付き合いますよ。一人で飲むのも味気ないでしょうし」

蜘蛛女「あら、嬉しいわね。じゃ、早速・・・」トクトク…

狸侍女「頂きましょうか」

クイッ コクン…

狸侍女「我ながら、中々いい出来ですね」

蜘蛛女「ええ、相変わらず美味しいわ」

男「あはは。本当に美味しそうに飲みますね」

狐娘「そうね。見ていて気持ちがいいわ」

狸侍女「! お二方、申し訳ございません。ただいまお茶を淹れて参ります。蜘蛛女?」

蜘蛛女「ええ。台所も好きに使ってくれて構わないわ」

男「あ、そんな気を使わないでくださいよ」

狸侍女「いえ、そういうわけにはいきません。では、蜘蛛女、少しお借りしますよ」ヒュッ

蜘蛛女「あら。相変わらず忙しないのね」クイッ

265: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/24(土) 23:45:37.41 ID:pSMT/FN00
ー少し前 蜘蛛女宅・台所ー
犬娘「・・・」ゴシゴシ ジャブジャブ

狸娘「・・・」フキフキ カチャカチャ

犬娘「・・・ねえ、狸娘ちゃん」

狸娘「・・・何ですの?」

犬娘「この、洗い物をして家庭的であることを示して男さんの好感度を上げよう作戦、実際に現場を男さんに見て貰わないと意味無いんじゃない?」

狸娘「・・・言おうか言うまいか迷っていたことを・・・」

犬娘「はあ・・・。男さん、全然私たちの気持ちに気付いてくれないよね・・・」ゴシゴ…

狸娘「そうですわね・・・」フキフ…

二人『はあー・・・』

狸娘「・・・そういえば、どうして犬娘さんは男様を?」

犬娘「え?あ、うん・・・。実はね・・・」

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

狸娘「成る程・・・。出会ったばかりの犬娘さんの為に、必死で走って・・・」

犬娘「う、うん。狸娘ちゃんみたいに命を救われたとか、大層な理由じゃないけど。それでも、私の為に必死で走ってくれた男さんを、あっと言う間に好きになっちゃった///」

狸娘「羨ましいですわねー。お姫様抱っこで運んでもらえたなんて・・・」

犬娘「えへへ。私の一生の思いでだよ///」

狸娘「羨ましいですわ・・・」

犬娘「そういえば、狸侍女さんも男さんのこと好きなんじゃないかな!?」

狸娘「そうですわね。今朝、男様と狸侍女の間に、一瞬でしたが変な空気が流れてましたわ。お互いがお互いを意識し合うような」

犬娘「も、もしかして、狸侍女さん、もう告白しちゃったのかな?」

狸娘「・・・有り得なくはないですわね」

犬娘「私、狸侍女さんまで男さんのこと好きなら、勝ち目が無い気がするよ・・・」

狸娘「あら。そんな心持ちでしたら、私が男様を頂いてしまいますわよ?」

犬娘「だ、ダメだよ!」

狸娘「ふふ。その意気ですわ」

犬娘「あ・・・」

狸娘「相手が誰であろうとも、男様を射止めるために頑張る。そうでしょう?」

犬娘「うん」

狸娘「なら、最後まで頑張りましょう?私だって、負けませんけどね?」

犬娘「わ、私だって負けないもん!よーし、ぱぱっと皿洗いを終わらせて、男さんの所に行こう!」ゴシゴシ! ジャブジャブ!

狸娘「ええ!」フキフキ! カチャカチャ








狸侍女「・・・」

狸侍女「(出るに出れませんでしたね・・・。もう少し時間を置いて、その時お茶を淹れに来たことにしましょう)」

266: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/25(日) 22:16:34.74 ID:vR3J5PYC0
ー蜘蛛女宅・居間ー
蜘蛛女「・・・」トクトク グイッ

男「蜘蛛女さん、少し飲み過ぎじゃないですか?」

蜘蛛女「何言ってるのよ。まだまだよ」

狐娘「蜘蛛女さん、お酒強いんですか?」 

蜘蛛女「ええ。そこらの上戸には負けないわよ?」トクトク

男「いや、だからって飲み過ぎは・・・」

蜘蛛女「いいの!飲みたいときに飲む!これが一番美味しく飲めるんだから!」グイッ

犬娘「ただいま戻りました!」

狸娘「それから、お茶をお持ちしましたわ」カチャカチャ

狸侍女「あ、蜘蛛女。少し飲む速度を落としなさい。少し早いですよ」

狸娘「はい、男様、狐娘さん。お茶ですわ」コト コト

男「うん、ありがとう」

狐娘「ありがとう」

犬娘「・・・お、男さん」

男「ん?」

犬娘「わ、私!お皿洗い頑張りました!」

男「うん。どうもありがとうね」

犬娘「・・・」

男「?」

犬娘「・・・が、頑張ったんですよ?」ソワソワ

男「・・・! うん。よく頑張ったね」ナデナデ

犬娘「ふわあ・・・。えへへー///」フリフリ

狸娘「お、男様!わ、私も頑張りましたわ!」ズイ

男「うん。狸娘も、ありがとうね」ナデナデ

狸娘「は、はい!///」

270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/25(日) 22:53:57.64 ID:vR3J5PYC0
蜘蛛女「・・・若いわねー」

狸侍女「蜘蛛女、あなたもまだ二十を過ぎたばかりでしょうに」

狐娘「そうですよ。蜘蛛女さんも若いじゃないですか」

蜘蛛女「でもらあの娘達に比べたら、十分年増よ」トクトク…クイッ

狸侍女「・・・その理屈だと、あなたと同い年のわたくしも年増ということになりますが?」

蜘蛛女「あ、そうね。あなたも年増だわ。あはは」トクトク…

狸侍女「蜘蛛女、あなた酔ってますね?」ハァー

蜘蛛女「そうね・・・。今日はお酒の回りが早いわ」

狐娘「蜘蛛女さんの飲む早さも早いんだと思いますよ?」

狸侍女「まったく、仕様のない」スッ

蜘蛛女「ふふ。そんなこと言って、酔い醒ましを作ってくれるあなたは、いい奥方になるわね」

狸侍女「ば、馬鹿なことを言わないでください///」

蜘蛛女「ふふ。男くんが羨ましいわね」

狸侍女「ちょ、蜘蛛女!?」チラッ

男「ふ、二人とも、そろそろいい?」ナデナデ

犬娘「も、もう少しだけ・・・」フリフリ パタパタ

狸娘「お願いしますわ・・・」ウットリ

男「あ、あはは・・・」ナデナデ

狐娘「それどころじゃないみたいですね」

蜘蛛女「良かったわね、狸侍女?」

狸侍女「正直複雑です・・・」

272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/26(月) 20:40:43.63 ID:2Twn/z5X0
ー数分後ー
男「う、腕が・・・!」プルプル

犬娘「はふう・・・///」ツヤツヤ

狸娘「満足ですわ・・・///」テカテカ

蜘蛛女「ふふ。二人も満足したみたいだし、お風呂にでも入らない?」

犬娘「あ、そうですね」

狐娘「じゃあ、誰から行きましょうか?」

蜘蛛女「あら。私は躰が大きいから、お風呂も広いわよ。だから、皆で入りましょうよ」

狸侍女「そうですね。折角ですし、そうしますか」

蜘蛛女「男くんも一緒に入る?」

男「入りませんよ!」

蜘蛛女「あら、そう?残念ね」クスクス

犬娘「男さんとお風呂・・・///」

狸娘「いいですわね・・・///」

狐娘「ほらほら、いいから行くわよ」

狸侍女「では、男様。お先に失礼いたします」

男「はいはい。行ってらっしゃい」フリフリ





狸娘「(・・・・・・)」

274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/27(火) 09:47:37.29 ID:6Xw3TAVs0
ー蜘蛛女宅・風呂場ー
カポーン

犬娘「確かに広いですねー」

蜘蛛女「でしょう?さ、入って入って」

狐娘「湯船もやっぱり大きいんですね」

蜘蛛女「ええ。お風呂は好きだから、よりゆったりと長く楽しめるように、私が入ってもまだ余裕があるくらいは広く作ってあるわ」ザブザブ

狸娘「・・・」

狸侍女「? いかがなさいましたか?お嬢様」チャポン

狸娘「い、いえ。何でもないですわ!(・・・くっ!この中で私と近い体型は犬娘さんだけですのね!?途方もない敗北感ですわ・・・)」

蜘蛛女「ふふ。大丈夫よ。あなたくらいの年頃なら、これから大きくなっていくわよ」クスクス

狸娘「な・・・っ!?///」

犬娘「頑張ろうね!狸娘ちゃん!」グッ!

狸娘「うぅ・・・。そうですわね・・・///」

狐娘「そんなに気にしなくてもいいと思うけどね」チャプン

狸娘「そ、それは持てる者のみが言える発言ですわ!」

犬娘「そうだよ!私たちもそんな台詞が言えるくらい大きくなりたいよ!」

狐娘「は、はい・・・。ごめんなさい」

狸侍女「まあまあ、お二方。体型の問題については時間に任せるしかありませんし」

狸娘「くっ!あなたも余裕のある胸で羨ましいですわ・・・!」

犬娘「私は全然大きくならないのに・・・」ズーン

狸侍女「い、いえ。これも自然とこうなったものですので・・・」

蜘蛛女「そういえば、殿方に揉まれると大きくなる、なんて話を聞いたことがあるわね」

狸娘「と、殿方に・・・///」

犬娘「胸を!?///」

蜘蛛女「ええ。私の友達が、結婚してから毎日のように旦那に胸を揉まれていたら、大きくなった、って。真偽の程は分からないけどね」

犬娘「・・・じ、自分で揉むのではダメなんですか?」

狸娘「そ、そうですわ。流石にいきなり殿方に揉んで貰うのは、ちょっと・・・」

蜘蛛女「さあ?それでもいいんじゃないかしら」

狐娘「・・・二人とも、取り敢えず裸で突っ立ってないで、お風呂に入ったら?」

狸侍女「お風邪を召してしまいますよ?」

犬娘「わっ、そうだね!」チャポン

狸娘「し、失礼しますわね」チャポン


全員『ふーー・・・』

カポーン

275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/27(火) 11:47:07.63 ID:6Xw3TAVs0
犬娘「でも、皆体型が整ってて羨ましいです・・・。私は、背も大きくないし、胸も小さいし、いつまでも子供の体つきです・・・」

狸娘「私も大して変わりませんわ。蜘蛛女さんや狸侍女並に、とは言いませんけど、せめて狐娘さんくらいは背も胸も欲しいですわ・・・」

狐娘「私は、ここ数年で成長したから。あなた達も、あと二、三年経てば育つでしょう」

狸侍女「ええ。まだ若いのですから、これからですよ」

犬娘「うぅ・・・。そうかなあ・・・?」

蜘蛛女「大丈夫よ。私もあなた達くらいの頃は全然お子様だったんだから」

狸娘「そ、そうなのですか?」

蜘蛛女「ええ。皆そんなものよ」

狐娘「だから気にしないでいいのよ」

犬娘「う、うん」

狸娘「そう、ですわね・・・」

狸侍女「時が過ぎるのを待ちましょう。そうすれば、自然と結果は出ますよ」

犬娘「そうですね。そうします」


全員『ふーー・・・』

カポーン












男「・・・皆、遅いな」ポツーン

277: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/27(火) 22:10:07.68 ID:WsegrKls0
ー数分後ー
犬娘「男さーん、上がりましたー/////」トタトタトタ

狸侍女「いいお湯でした・・・/////」ホカホカ

男「あ、皆出たんだ。なら、俺も入らせて貰おうかな」

狐娘「男さん、場所は・・・/////」ポカポカ

狸娘「あ、わ、私が案内しますわ!/////」ホカホカ

男「あ、本当?なら、お願いね」

蜘蛛女「ふふ。ゆっくりしてらっしゃいな/////」トクトク クイッ

狸侍女「あ! もう、あなたという妖(ひと)は・・・」

男「あはは。じゃあ、ちょっと行ってきますね」 

犬娘「行ってらっしゃいー」

狸娘「男様、こちらですわ」トコトコ

男「はーい」スタスタ

281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/28(水) 23:18:27.87 ID:N+4MVimX0
ー蜘蛛女宅・廊下ー
男「それにしても、廊下も広いね」

狸娘「そうですわね。蜘蛛女さんのお体を考えると、この位の広さは必要なのでしょう」

男「確かにねー」

狸娘「・・・」

男「・・・」

男「(な、何か空気が重い・・・!)」

狸娘「・・・男様、着きましたわ。ここがお風呂場ですわ」

男「え? あ、ああ、ありがとう。それじゃあ、行ってくるね」カラカラ

狸娘「行ってらっしゃいませ」カラカラ パタン









狸娘「・・・い、行きますわ・・・!」

283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/29(木) 11:05:39.03 ID:G2l//KSM0
ー蜘蛛女宅・風呂場ー
カポーン

男「おお、本当に広いなー」

男「何か、ここに来てからずっと広いお風呂にばかり入っている気がするなー。向こうに帰ったとき、めちゃくちゃ狭く感じそう」ワシャワシャ

男「んー、ここのお風呂は広いけど、シャワーが無いのが欠点だなー」ザバー

男「汲み置きのお湯で遣り繰りするのも、大変だよなー。保温とか」

狸娘「お、男様。お、お背中お流ししますわね・・・///」カラカラ

男「あ、本当? ありがとう、助かるぅわああ!?」ガタン!

狸娘「お、驚かせてすみません///」

男「いや、てか、え!? 狸娘!? 何、どうしたの!?」アセアセ クルッ ギュッ

狸娘「い、いえ。今日は、山で助けていただきましたし、お礼に、お背中をお流ししようかと・・・///」

男「(あ、危なかった! 危うく後ろに振り向くところだった・・・!)お、お礼? 別にいいのに」

狸娘「でも、私は命を救われました。これで二度目ですわ。このご恩は、ちゃんとお返しさせてください!」

男「い、いや、でも、これは流石に・・・///」

狸娘「で、では、失礼いたしますね///」イソイソ

男「(話を聞いてらっしゃらない!?)」

286: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/29(木) 16:35:29.08 ID:iblWVsiS0
狸娘「お、男様、お加減はいかがですか?」ゴシゴシ

男「あ、うん。気持ちいいよ」

狸娘「そ、そうですか。良かったですわ///」ゴシゴシ

男「(く、何だこれ。何がどうしてこうなった・・・!?)」

狸娘「んしょ、んしょ・・・」ゴシゴシ

男「(風呂場に入ってきてるけど、ちゃんと服は着てるんだろうな!?)」

狸娘「ん、少し泡が袖に付いてしまいますわね。男様、少し失礼いたしますね。袖を捲りたいので」

男「あ、うん。いいよ。(着てたー!)」

狸娘「で、では、続きを・・・」

男「あ、いや、もういいよ! 大丈夫! ありがとうね!」

狸娘「え? で、でも、まだ前が・・・」

男「前も洗うつもりだったの!?」

狸娘「え? あ、いえ! そ、そんなこと・・・!///」カアァ

男「と、とにかく、もう大丈夫だから。ありがとうね」

狸娘「・・・男様」

男「う、うん?」

狸娘「男様は、恋慕する女性はいらっしゃいますか?」

男「レンボ? あ、恋慕!? い、いやいや。いないけど・・・」

狸娘「で、では!」ガシッ

男「うお!?(後ろから両肩を抑えられた!?逃げられない!)」

狸娘「お、男様。わ、私と、お付き合いしては頂けませんか・・・!?///」

男「え!? あ、・・・え!?」

狸娘「な、何度も言わせないでくださいませ・・・///」

男「ご、ごめん。ちゃんと聞いてたよ! でも、俺?」

狸娘「はい。夏雨村の海で救われた時、男様こそが私の運命の方だと感じました。誰にでも分け隔てなく接する優しさ、山賊相手にも立ち向かう勇敢さ。とても素晴らしい方だと思います」

男「い、いや、流石に褒めすぎ・・・」

狸娘「その謙虚さも、また美徳だと思いますわ」

男「う、うーん・・・」

狸娘「す、すいません。出会ってまだ二日なのに、いきなりこんなこと。でも、私は男様が、す、好き、です・・・///」

男「う、うん・・・///」

狸娘「男様ったら、全然私達の気持ちに気付いてくださらないから、思い切ってこんな事をしてしまいましたわ///」

男「そ、そうだったんだ。ご、ごめんね?」

狸娘「ふふっ。いえ、いいんです。それに、いきなりお返事を頂こうとも思いませんわ。このお祭りの期間中に、答えを出していただければと思います」

男「・・・うん」

狸娘「それじゃあ、お先に失礼いたしますわね。皆さんに怪しまれてしまいますわ」カラカラ

男「う、うん・・・」カラカラ パタン

男「・・・」

男「・・・どうしよう」

カポーン

288: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/29(木) 18:07:33.17 ID:iblWVsiS0
ー蜘蛛女宅・居間ー
男「お風呂いただきましたー」

蜘蛛女「あら、お帰りなさい」

狸侍女「お帰りなさいませ、男様。お茶はいかがですか?」

男「あ、頂きます」

蜘蛛女「あら、湯上がりはお酒じゃないの?」

狸侍女「こら、蜘蛛女。やめなさい」

男「あはは。そういえば、他の皆は?」

蜘蛛女「先に寝室へ行ったわよ」

狸侍女「今日は登山したり、山賊に襲われたりで、皆さんお疲れのようでしたから。明日も早いですし、先に休むように伝えました」

蜘蛛女「で、私達は昔話に花を咲かせながら晩酌、ってわけよ」トクトク

男「ああ、なるほど」

蜘蛛女「ふふ。男くんも良かったら聞いていきなさいよ。お茶飲みながらでも、ね?」クイッ

狸侍女「蜘蛛女。男様もお疲れです。無理に誘いませんように」

男「いえ。お茶もまだありますし、少しだけなら、付き合いますよ」

蜘蛛女「あら、話が分かるわね。さ、飲むわよ狸侍女」トクトク

狸侍女「全く。わたくしも明日は早いのですから、少しですよ?」

蜘蛛女「どうせ酔わないクセに」クスッ

男「あはは」

293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/29(木) 20:57:48.91 ID:iblWVsiS0
ー数十分後ー
蜘蛛女「それでね? 狸侍女が「もう悪さをするな」、って言ってきたから、私達も「余所者が指図するな!」って言って、大喧嘩が始まったのよ/////」トクトク クイッ

狸侍女「蜘蛛女。その話は36回目です」

男「そ、そうですよ。飲み過ぎじゃないですか?」

蜘蛛女「何言ってるのよー。まだまだ平気よ。私は酔っ払ってなんかないんだから/////」

男「そ、それ典型的な酔っ払いの台詞ですよ!」

狸侍女「全く、あなたという妖(ひと)は・・・。ほら、そろそろ片付けますよ」

蜘蛛女「そんなあ・・・。あと一本だけ飲みましょうよー/////」ヒック

狸侍女「駄目です。・・・では、片付けて参りますので、男様、申し訳ありませんが、蜘蛛女を見ていてもらえませんか?」

男「あ、いいですよ。ちゃんと見ておきます」

狸侍女「ありがとうございます。では」ヒュッ

男「転がってたお銚子が一瞬で!?」

蜘蛛女「た、狸侍女の意地悪ー・・・/////」ウィー

男「酔うと、少し幼くなるのかこの妖(ひと)・・・」

蜘蛛女「わ、私のお酒達がー・・・/////」ヒック

男「ま、まあまあ。蜘蛛女さん、そろそろ寝ましょうよ。もう夜も遅いですよ」

蜘蛛女「うー・・・。じゃあ、男くんと一緒に寝るー/////」

男「はい!?」

294: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/29(木) 21:57:21.16 ID:iblWVsiS0
蜘蛛女「ふふふー。私からお酒を取り上げるなら、男くんの身柄を私が取り上げちゃうわー/////」ヒック

男「い、いやいや! 全然意味が分からないですよ!」

蜘蛛女「んー? 男くんは意外とお馬鹿さんなのかしら?/////」ヒック!

男「よ、酔っ払いに馬鹿にされた・・・」

蜘蛛女「ふふ。男くん、可愛いわよねー。食べたくなっちゃう/////」ペロリ

男「うっ!?(な、何か、かなり妖艶な雰囲気が・・・!)///」

蜘蛛女「・・・ねえ? 男くん・・・」ジリジリ

男「な、何です・・・?」タラー…

蜘蛛女「お姉さんと、い・い・こ・と。してみない・・・?/////」ソッ…

男「はぃい!?(ち、近い!)///」

蜘蛛女「何でかしら。さっきから、躰が火照るのよ・・・/////」

男「そ、それは酔いのせいじゃないですか?」アセアセ

蜘蛛女「ふふ。どうかしらね? 試してみる?/////」ツツー

男「あ、うあ・・・///」

犬娘「・・・男さん?」

男「い、犬娘!!?」

297: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/30(金) 10:10:51.60 ID:yqD0xEE40
ー数十分前 蜘蛛女宅・客間ー
狸娘「さ、いよいよ明日は冬華村ですわね」

狐娘「ええ。明日も早いわよ」

犬娘「明日は、どんな所を回るの?」

狐娘「そうね。取り敢えず、行ってから決める感じかしら・・・」

狸娘「あら、それで大丈夫ですの?」

狐娘「ええ。冬華村は実際はあまり見るところは無いのよ。寒さの厳しい所だしね。正直観光にはあまり向いていないわ」

犬娘「確かに、前に行ったときは寒かったねー。でも、雪がいっぱい積もってて楽しかったよー」

狐娘「あなたずっと外を走り回っていたわよね、そういえば・・・」

狸娘「流石は犬ですわね・・・」

犬娘「?」キョトン

狐娘「まあ、とにかくそんなわけで、どうするかは明日の朝、船の上で考えれば大丈夫よ」 

狸娘「なるほど」

狐娘「でも、祭りの日もあと二日。二日後には、また皆お別れね」

狸娘「そう、ですわね」

犬娘「そういえば、男さんはどうするのかな?」

狸娘「どうする、とは?」

犬娘「男さん、やっぱり人間の世界に帰りたいだろうし、帰る方法が見つかってたら、帰っちゃうよね・・・」

狸娘「それは・・・」

狐娘「そうね。いきなりこっちに来たんですもの。向こうでやり残してきたことも沢山あるはずよね」

犬娘「最終的にはどうなるか分からないけど・・・」

狸娘「けど?」

犬娘「・・・うん。ずっと、ここに居てくれたらなあ、って。そう思うんだ」

狐娘「そうね。そうなったらいいわよね」

狸娘「そうですわね。そうなったら、どれだけいいか」

狐娘「でも、私達がそれを考えても仕方ないわ。決めるのは男さんですもの」

犬娘「うん・・・」

狸娘「さ、なら早く寝てしまいましょう。明日にでもまた、話せばいいですわ」

298: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/30(金) 17:35:38.13 ID:yqD0xEE40
犬娘「そうだね・・・。お休みなさい!」ポフッ

狐娘「お休み、二人とも」

狸娘「ええ。お休みなさい・・・」


ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


犬娘「(・・・はっ! また私だけで寝ちゃうところだった!)」パチッ!

犬娘「(危ない危ない。今日こそ男さんと一緒に寝るんだ)」モゾモゾ

犬娘「(温かい男さんに、ぎゅってしてもらいながら寝るんだー・・・///)」コソコソ

犬娘「(くふふ・・・。早く男さんの所に行こう!)」スッ…パタン


ー蜘蛛女宅・客間前廊下ー
犬娘「えーと、男さんは・・・」クンクン

犬娘「まだ居間にいる・・・!」トコトコトコ

男『はぃい!?』

犬娘「ゎふっ!?」ビクッ

犬娘「お、男さん、何かあったのかな・・・!」タタッ!

犬娘「お、男さん!」スパアン!

蜘蛛女「ふふ。どうかしらね? 試してみる?」ツツー

男「あ、うあ・・・///」

犬娘「・・・男さん?」

男「い、犬娘!!?」

299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/31(土) 10:01:34.33 ID:J+OafZVh0
男「い、犬娘、これは・・・!」

蜘蛛女「ほらあ、男くん・・・。早くシましょう・・・/////」ヒック

男「だあ! ちょっと静かにしててくださいよ!」

犬娘「お、男さん、す、すすするって・・・!」ワナワナ

男「ち、違うよ!? 何もしないよ!? 蜘蛛女さんは酔っ払ってて、変なこと言ってるだけで・・・!」

蜘蛛女「あらー? 私は本気よ? ほら・・・/////」ガシッ ムニュウ

男「うわ!? む、胸・・・!///」

犬娘「!!」

蜘蛛女「ふふ。ほら、こんなにドキドキしてる・・・/////」ヒック

男「ちょ、離してくださいよ! ほら、犬娘が見てますって!」

蜘蛛女「あら、犬娘ちゃんー? どう? 一緒にスる?/////」ウィー ヒック

犬娘「な、ななな・・・///」

蜘蛛女「ふふ。三人で、っていうのも悪くはないんじゃない?/////」ヒック

男「悪いですよ!」 

蜘蛛女「あら。じゃあ、二人で・・・?/////」ヒック

男「そうじゃなくてえぇぇ!」

蜘蛛女「もう、わがままばっかり言う口は・・・!/////」ガシッ

男「へっ? んむっ!?」チュ…

犬娘「!!!?」

蜘蛛女「ん、む・・・、ふ・・・/////」チュク チュク

男「むーっ!? んむーっ!!」ジタバタ

蜘蛛女「ん、ぷはあっ・・・! もう、暴れちゃダメじゃない・・・/////」ツー…

犬娘「お、男さ・・・」ジワ

男「い、犬娘! これは・・・!」

犬娘「ご、ごめんなさい! 私、お邪魔しちゃって・・・!」ポロポロ 

男「ぅえ!? いや、だから・・・!」アセアセ

犬娘「お、お休、み・・・ ヒック なさい!」タタッ

男「い、犬む・・・ぅわっ!」ガシッ ズテン

蜘蛛女「うふふー。逃がさないわよー・・・?/////」ヒック ジリジリ

男「くっ! もういい加減に・・・!」バッ…

狸侍女「いい加減にしなさい、蜘蛛女・・・」ゴゴゴ…!!

300: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/31(土) 10:02:18.38 ID:J+OafZVh0
男「た、狸侍女さん!」

蜘蛛女「あれ? 狸侍女、あなたも・・・/////」ヒック

狸侍女「ふっ・・・!」ヒュッ ビシッ

蜘蛛女「! ・・・」バタン キュー…

男「た、狸侍女さん、ありがとうございます! 助かりました」

狸侍女「いえ、助けに参るのが遅くなり、申し訳ありませんでした」

男「いえ、そんな・・・。って、俺、犬娘を追いかけなきゃいけないんで、行ってきます!」ダッ 

狸侍女「犬娘様は、裏手に参られました!」

男「ありがとうございますー!」タッタッ ガラガラ

蜘蛛女「きゅー・・・/////」Zzz Zzz

狸侍女「・・・全く、あなたは本当に厄介な火種を残してくれましたね・・・」ハァ…

303: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/31(土) 22:25:38.23 ID:WLiaA69k0
ー蜘蛛女宅・裏庭ー
犬娘「うっ、ぐすっ・・・」トボトボ…

犬娘「・・・男さん、やっぱり蜘蛛女さんみたいな女の妖(ひと)が好きなのかな・・・」グスッ トボトボ…

犬娘「うぅ・・・。私だって、あと何年かすればきっと・・・」トボトボ…

犬娘「・・・・・・」ヘナヘナ

ポロポロ ポロポロ

犬娘「・・・辛いよぉ、男さん・・・!」グスッ エグッ

男『犬娘ー!』タッタッタッ

犬娘「! お、男さ・・・?」グスッ ヒック

男「いた! 犬娘!!」タッタッタッ

犬娘「ど、どうじで・・・?」エグエグ

男「ど、どうしても何も、あんな誤解をそのままにしてはおけないでしょ!」ハア、ハア…

犬娘「・・・ご、ごかい・・・?」ヒック グスッ

男「そうだよ・・・。いい? まず、俺と蜘蛛女さんは恋人だとか、そんな関係じゃない」

犬娘「で、でもさっき、せ、接吻じでたあ・・・!」ブワッ!

男「だあ! だ、だから、蜘蛛女さんはあの時滅茶苦茶酔っ払ってたの! それで、変な感じになっちゃって・・・!」

犬娘「む、胸も、ざわってだー!!」ワーン!

男「いや、だからさ、どっちも俺からじゃなかったでしょう!?」

犬娘「・・・!」ヒック! グスッ

男「ね・・・ね?」

犬娘「・・・」ヒック…

男「・・・」

犬娘「・・・でも嫌そうじゃながったー!」ブワッ!

男「うわあ!? えーと・・・!」アタフタ

304: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/08/31(土) 23:13:38.26 ID:bj5KLBYw0
犬娘「お、男ざん、く、蜘蛛女さんみだいなお、女の妖(ひと)が好みなんですか!?」エグエグ

男「い、いや。俺は、どっちかって言うと年上より年下が・・・」

犬娘「ほ、本当でずか!?」ヒック エグッ

男「ほ、本当だよ! って、何か恥ずかしいな・・・」

犬娘「く、蜘蛛女さんより、私が好きですか!?」

男「へっ? う、うん。もちろん」

犬娘「! ほ、本当ですか・・・?」ヒック

男「う、うん! 犬娘の方が好きだよ。初めて会ったときから、ずっと一緒にいるし、それに、可愛いし」

犬娘「・・・本当?」グスッ

男「うん、本当だよ。・・・ごめんね、犬娘。嫌な思いさせちゃって・・・」ポンポン

犬娘「男さん・・・」ヒック

男「うん? 何?」ナデナデ

犬娘「・・・ぎゅっ、てしてください・・・///」

男「・・・うん。いいよ」ギュッ

犬娘「ぐすっ・・・。えへへ///」ギュウー

男「よしよし」ポンポン

犬娘「お、男さん。約束、覚えていますか?」

男「うん。一緒に寝るんだよね?」

犬娘「は、はい・・・///」

男「・・・よし、それじゃあ行こうか。布団も敷かなくちゃね」

犬娘「は、はい! 私、お手伝いしますね!」

男「うん、ありがと。さ、行こう」キュッ スタスタ

犬娘「! はい///(男さんから、手を繋いでくれた///)」トコトコ

306: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/01(日) 08:15:58.69 ID:Yn9iikci0
ー蜘蛛女宅・居間ー
狸侍女「お帰りなさいませ」

男「あ、ただいま戻りました」

犬娘「た、ただいまです」

狸侍女「犬娘様、先程は蜘蛛女が失礼をいたしました。泥酔した上での行動でしたので、お気になされない方がよろしいかと」

犬娘「は、はい。大丈夫です。もう気にしてませんから」

狸侍女「・・・ありがとうございます。それでは、お休みなさいませ」ヒュッ

男「・・・こういう時は普通に行けばいいのに・・・」

犬娘「あ、あはは・・・」

307: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/01(日) 08:31:10.46 ID:Yn9iikci0
男「さて、それじゃあ俺達も寝ようか」 

犬娘「はい!」

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

男「よし、布団も敷き終わったし」

犬娘「寝ましょうか!」モゾモゾ

男「うん。お休み、犬娘」バフッ

犬娘「お休みなさい、男さん・・・」

犬娘「(今日は、色々大変だったなぁ。山賊に襲われたり、蜘蛛女さんが酔っ払ったり・・・)」

犬娘「(でも、最後にこんなにいいことがあって、良かったな・・・)」

犬娘「(男さんの隣で眠れて、寝顔が見られるなんて・・・///)」

男「Zzz…Zzz…」

犬娘「(ああ、やっぱり私は、この方が好きなんだな・・・///)」

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

308: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/01(日) 08:53:59.11 ID:Yn9iikci0
ー翌日 紫苑祭・四日目ー
チュンチュン チチチ

男「ん、ふあー・・・ぁふ。朝か・・・」ムクリ

犬娘「Zzz…Zzz…」

男「あれ?犬娘・・・ああ。そういえば昨日は一緒に寝たんだっけか」

犬娘「ん、んん・・・。あ、男しゃん・・・。おはようございまふ・・・」モゾモゾ

男「うん、おはよう。顔を洗ってこようと思うんだけど、一緒に行く?」

犬娘「はい。行きます・・・」ゴシゴシ

男「あ、目は掻いちゃだめだよ」

犬娘「はいー・・・」シパシパ

男「あはは。じゃあ、行こうか」スタスタ

犬娘「ゎふ・・・」ヨロヨロ

スラッ

狸娘「きゃっ!? お、男様!」

男「おっ、と! ごめん狸娘。驚かせたね」

狸娘「い、いえ。それより、犬娘さんがいなく・・・」

犬娘「あ、狸娘ちゃんおはよー・・・」

狸娘「!?」ガーン!

男「(あ、何かまた面倒なことになりそうな気がする・・・)」

309: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/03(火) 12:36:46.44 ID:uabfhhjq0
狸娘「い、犬娘さん・・・。な、なぜ男様の部屋に・・・!?」

男「あー、狸娘これは・・・」

犬娘「えへへ。昨日は男さんと一緒に寝たんだー・・・///」

狸娘「な!?」

男「あー・・・」

犬娘「えへへー///」

狸娘「お、男様!? どういうことですの!?」

男「いや、話せば長くなるんだよ・・・」

犬娘「うふふー。朝ご飯を食べに行きましょうー」ポヤポヤ

狸娘「・・・男様、後程詳しくお話を伺わせて頂きますからね・・・?」

男「あはは・・・」

310: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/03(火) 13:45:52.06 ID:uabfhhjq0
ー蜘蛛女宅・居間ー
男「おはようございます」

犬娘「おはようございまーす」

狸娘「おはようございます」

狐娘「あら、おはよう」

狸侍女「おはようございます、お二方。朝ご飯が出来ておりますので、お席にどうぞ」

狸娘「あら、蜘蛛女さんは?」

狸侍女「ああ、彼女なら・・・」

蜘蛛女「ぉ、おぉぉ・・・ぉはよぅ・・・」ズル…ズル…

犬娘「ひい!?」

狸娘「く、蜘蛛女さん!?」

蜘蛛女「あ、だめ・・・。大きな声出さないで・・・」ズキズキ

狸侍女「あれほど飲み過ぎるなと言ったのに聞かないからですよ、蜘蛛女」

狐娘「どれだけ飲んだんですか・・・」

蜘蛛女「うぅ・・・。お説教も聞きたくないわ・・・」ズルズル…

男「お水でも持ってきますか?」

蜘蛛女「ありがとー・・・」グデー

犬娘「お酒って怖いんですね・・・」

狸娘「こうはなりたくありませんわね・・・」

蜘蛛女「ふ、ふふ・・・。反面教師としての役割は果たせたみたいね・・・」

狸侍女「何を馬鹿なことを・・・」

男「はい、お水ですよ」

蜘蛛女「ありがとぅー・・・」コク…コク…

狸侍女「さて、では遅くなりましたが朝食にしましょう」

狐娘「そうですね」

全員『いただきまーす!』

311: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/03(火) 17:50:42.51 ID:XuidEM1c0
カチャカチャ モグモグ

男「それにしても、ついに紫苑祭も四日目かー」モグモグ

狸娘「そうですわね。残すところ、今日を含めても二日しかありませんわ」

犬娘「今日は冬華村に行くんだよね? 狐娘ちゃん」

狐娘「ええ。まあ、本当に見る物はそんなにないから、もしかしたら夜には秋之村に着くかもしれないわね」

男「あ、そうなんだ」パクパク

狸侍女「ならば、皆で一度秋之村に参りましょうか」

狸娘「そうですわね。私達はまだ行っていませんし」

狐娘「そうね。時間に余裕が出来たら、それでもいいかもね」

蜘蛛女「ぅー・・・。狸侍女ー、お水ちょうらい・・・」ズキズキ

狸侍女「・・・全く、本当に仕方のない妖(ひと)ですね」

312: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/06(金) 16:21:27.24 ID:IaLncJyy0
ー数十分後ー

全員『御馳走様でした!』

男「さて、それじゃあ歯を磨きに行こうか」

蜘蛛女「あー、食器は私が片付けておくからそのままでいいわよ・・・」ズキズキ

狸娘「い、いえ、それは・・・」

蜘蛛女「いいのよ・・・。あなた達はさっさと出掛ける準備をしちゃいなさい・・・。余裕があるわけではないんだから」ズキズキ

狸侍女「そうですね。わたくしも手伝って参りますので、皆様はお先にどうぞ」

男「・・・二人とも、すいません。よろしくお願いします」

狐娘「お願いします」

犬娘「ありがとうございます」

狸娘「それでは、行きましょうか」

スタスタ

狸侍女「では、片付けますよ、蜘蛛女」カチャカチャ

蜘蛛女「はいはい。昨夜の件の、せめてもの罪滅ぼしね・・・」ズキズキ カチャカチャ

狸侍女「このくらいのことでは、本当に『せめてもの』、ですけどね」

蜘蛛女「相変わらず容赦ないわねー・・・」

313: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/06(金) 16:30:04.68 ID:IaLncJyy0
ー春陽村・港ー
ワイワイ ガヤガヤ ザワザワ

男「それじゃあ蜘蛛女さん。本当に御世話になりました!」

犬娘「ありがとうございました!」

蜘蛛女「いいのよ。私こそ、悪かったわね。・・・色々と」

男「あ、あはは・・・」

狐娘「牛頭や馬頭に会いに行くんでしたよね?」

蜘蛛女「ええ。きっちり、絞ってくるわ」

狸娘「ふふ。頑張ってくださいね」

蜘蛛女「ええ。任せておきなさい」

狸侍女「それでは、そろそろ出発ですので」

蜘蛛女「ええ。・・・また顔を出しなさいよ、狸侍女」

狸侍女「はい、必ず。身体に気を付けるんですよ?」スッ

蜘蛛女「あなたこそ」ギュッ!

狐船頭「まもなくー、冬華村行きの便がー、出発いたしますー。お客様はー、ご搭乗になりー、お待ちくださいませー」

蜘蛛女「さ、時間よ。気を付けて行ってらっしゃい!」

全員『行ってきます!』ゾロゾロ

ガヤガヤ ザワザワ

???「み、見つけた・・・!」

314: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/08(日) 10:24:19.97 ID:vIYblYp60
ー船上ー
男「んーっ、船はいいなあ」ノビーッ

狸侍女「はい。海風が気持ちいいです」

男「あれ? そういえば犬娘達は?」

狸侍女「はい。なんでも、船内に大道芸人がおり、芸を見てくると」

男「ああ、そうなんですか。狸侍女さんはいいんですか?」

狸侍女「はい。わたくしはここで、男様のお側におります」ニコッ

男「っ・・・///」

狸侍女「? 男様?」

男「あ、いえ! 何でもないです!(この妖(ひと)、基本無表情なんだけど、たまに笑うと、すごく可愛いんだよなあ)///」

狸侍女「?」

???「あ、お、おお男!」スタスタ

男「? あ! 鬼女さん!」

鬼女「きき奇遇だな! こんな所で出会うなんて!」

男「本当ですね! でも、どうしてここに?」

鬼女「う、うむ! 折角の紫苑祭期間だからな! たまには他の村に行くのもいいものだと思ったんだ!」

狸侍女「牛頭や馬頭は・・・」

鬼女「あ、ああ。心配はいらない。既に私達で懲らしめたし、今頃は蜘蛛女に正座で説教を食らっている頃だと思う」

男「あはは。何となく想像できますね」

鬼女「う、うむ。ところで、お、男達はこのまま冬華村にむかうのだろう?」

男「ええ。そうですね」

鬼女「も、もしよければ、わ、私も一緒に行ってもいいか?///」

男「ええ、もちろんです。皆喜びますよ」ニコッ

鬼女「! そ、そうか・・・///」

狸侍女「(男様はそうやって無自覚に女性を虜にしていくから厄介ですね)」ハァ…

男「? 狸侍女さん?」

狸侍女「いえ。それでは、お嬢様達がお戻りになり次第、お伝えします」

鬼女「うむ。よろしく頼む!」スッ

男「こちらこそ」ギュッ!

鬼女「えへへ///」

男「? 鬼女さん?」

鬼女「え? あ、いや、何でもないぞ! うん」ゴホンゴホン!

男「?」

狸侍女「(本当に鈍感なのですね・・・)」ハァー…

316: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/08(日) 18:07:18.45 ID:N8KZGS1K0
犬娘「すごかったねー! あの大道芸人さん!」

狸娘「そうですわね! まさか口から刀を出すなんて」

狐娘「面白かったわね」

テクテク

男「あ、皆来たみたい。 オーイ、皆ー!」

犬娘「? 男さん?」

狐娘「どうしたのかしら?」

狸娘「まあ、ともかく行ってみ・・・鬼女さん!?」

鬼女「や、やあ! 皆、昨日ぶりだな!」

犬娘「どどどうしてここに・・・?」ワナワナ

鬼女「う、うむ。たまたまな? た・ま・た・ま! 偶然にも私も冬華村に行こうと思っていて、さらに偶然、船が一緒だったのだ!」

男「すごい偶然があるもんだよねー」アハハ

狐娘「・・・男さん、本気で言って・・・るわよね」

男「え?」

狸侍女「ちなみに、本日からご一緒に行動されます」

犬娘・狸娘「!!?」

鬼女「うむ。よ、よろしくな!」

狐娘「よろしくお願いします。(大変ね、三人とも・・・)」

男「じゃあ冬華村に着くまで、もう少し待ちましょうか」

鬼女「う、うむ! 男に、色々と聞きたいことがあるんだ。聞いてもいいか?」

男「答えられることなら」

ペチャクチャ

犬娘「・・・どうして、こんな事が・・・!」

狸娘「・・・まあ、もう驚きませんけど・・・」

狐娘「その、頑張ってくださいね」

狸侍女「はい。攻めあるのみです」ゴゴゴ…!

犬娘「私も、負けない!」ゴゴゴ!

狸娘「私だって、負けませんわ!」ゴゴゴ!








男「!?」ゾクッ!

319: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/11(水) 22:48:57.42 ID:WxVmNL+A0
ー冬華村・港ー
狸侍女「到着しました」ザクザク

男「わ、結構寒いですね! 雪も大分積もってるし」ヒュウゥゥー ザクザク

犬娘「ここは年中雪が降るくらいの気温ですから」ザクザク

狸娘「そ、それにしたって寒過ぎますわ・・・! き、狐娘さんはよくこんな環境で・・・狐娘さん?」ガタガタガタガタ

狐娘「・・・・・・」

犬娘「? 狐娘ちゃん?」

狐娘「え? あ、ああ、ごめんなさい。少し、ボーッとしてたわ」

狸娘「大丈夫ですの? 船内でも時折、何か考え事してましたけど」

狐娘「ええ、大丈夫よ。気にしないで。さ、行きましょうか」ザクザク

犬娘「あ、ま、待ってー」ザクザク

狸娘「お、お二人とも元気ですわね・・・」ザクザク



男「・・・」

狸侍女「気になりますか? 狐娘様が」

男「あ。ええ、やっぱり、どこか様子がおかしいです」

狸侍女「はい。この祭中も、時折考え込んでいる様子が見受けられました」

男「ちゃんと自分から話すから、それまで待っていて欲しいとは言われましたけど・・・」

狸侍女「もどかしいですね」

男「ええ。大したことじゃないといいんですけど」



犬娘「男さーーん! 狸侍女さーーん! 行きますよー!」ブンブン

男「はーい! 今行くよー! ・・・まあ、悩んでも仕方ないですね。話してくれるのを待ちましょう」ザクザク

狸侍女「そうですね。そうするのがよろしいかと」ザクザク

320: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/11(水) 22:53:55.34 ID:WxVmNL+A0
犬娘「何をお話してたんですか?」

男「うん、ここはすごく寒いね、って。それで、まずはどこに?」

狐娘「まずは、湖かしらね。そこで魚釣りが出来るのよ」

男「へー。面白そうだね」

狸娘「なんでも、その湖は凍っていて、上に乗って釣りをするらしいですわ」

犬娘「凍った湖に乗るのは初めてなので、楽しみです!」

男「そうだね。俺も楽しみだ」

狐娘「ふふ。行きましょうか」

ザクザクザクザク


ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

忍び狐1「ようやく見つけた」

忍び狐2「全く、手間を掛けさせる」

忍び狐3「まあそう言うな。あの方が逃げたくなるのも分かる」

忍び狐2「まあ、な・・・」

忍び狐1「ほら、無駄話は終わりだ。坊ちゃんに連絡、頼むぞ」

忍び狐3「はっ」ヒュッ

忍び狐2「・・・俺、正直今回の仕事、乗り気じゃないです」

忍び狐1「ああ。俺もさ。だが、我ら忍びにとって、主君の命令は絶対。逆らうわけにはいかんさ。例え主君がどんな奴でもな」

忍び狐2「辛いっすね・・・」

忍び狐1「それも忍びの仕事の内だ」

忍び狐2「妖狐様も、お辛いでしょうに・・・」

忍び狐1「それ以上言うな。仕事に支障を来すぞ」

忍び狐2「はっ・・・」ヒュッ

忍び狐1「・・・」

忍び狐1「仕えるべき相手を間違えた忍びというのは、本当にやるせないな・・・」ヒュッ

324: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/12(木) 08:52:13.34 ID:H+qL7aPB0
ー冬華村・白尾湖ー 
男「おー。結構広いねー」

狐娘「ええ。あ、ほら、他にも釣りに来ている妖(ひと)がちらほらと見えるわ」

狸侍女「ここでは何が釣れるんです?」

狸娘「そういえば、何でしょう?」

狐娘「ここでは、アジ、ボラ、キス、カレイ、クロダイ、メバルにスズキかしらね」

犬娘「結構釣れるんですねー」

鬼女「・・・」ガタガタガタガタ

男「そういえば、到着してからずっと静かだと思ってたら・・・」

鬼女「・・・!」ガタガタガタガタ…!

狸侍女「大丈夫ですか? 鬼女様」

鬼女「さ、さささ寒い・・・!」ガタガタ カチカチ

犬娘「わ、凄い震えてる」

狐娘「大丈夫ですか? これ、羽織っていてください」ゴソゴソ スッ

鬼女「あ、ああ、す、すすすまない・・・」ガタガタ ブルブル ファサ…

鬼女「お、おお。これは温かい・・・」

狐娘「この島に住むなら必ず必要になる防寒具です。皆も、寒さが酷くなったら言ってね。まだあるから」

男「俺は、まだ平気かな。少し厚着してきたし」

犬娘「私は元々寒いの平気です!」

狸娘「そうですわね。私もまだ平気ですわ」

狸侍女「同じく」

狐娘「そ。それじゃあ、釣り竿を借りてくるわね」スタスタ

鬼女「・・・ふう、ようやく落ち着いた。それにしても、皆よく平気だな」

男「人間の世界の冬も、これくらいですからね。慣れているんですよ」

犬娘「男さんは、人間の世界の冬華村みたいな所に住んでいたんですか?」

男「いや、人間の世界は、四季って言って、一年間で春、夏、秋、冬って順番に巡るんだよ」

狸娘「そうなのですか!?」

鬼女「なんと、四つの季節を味わえるとは! 羨ましいな」

男「そ、そんなに驚く事ですかね?」

狸侍女「四季が同じ場所を巡るのは、大変興味深いことかと」

犬娘「面白いですねー。一つの場所にいても、春夏秋冬味わえるんですかー」

男「価値観が違うって面白いなあ」

325: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/13(金) 22:56:59.72 ID:f01OMkok0
狐娘「あら? 皆どうしたの?」ガチャガチャ

男「いや、人と妖との価値観の違いについて考えてたんだよ。あ、手伝うよ」

狐娘「ありがとう、男さん。それで、価値観って?」

犬娘「人間の世界は、一つの村で春夏秋冬が味わえるんだってー!」

狸娘「面白いですわよね」

狐娘「確かに、それは面白いわね。でも、男さんからしてみれば、それは当たり前のことで、驚くような事じゃないから、価値観の違い、と」

狸侍女「はい。その通りです」

狐娘「なるほどね。確かに、私も興味あるけど、まあ、その話は釣りでもしながら、ね?


鬼女「うむ、そうだな!」

狐娘「あ、しまった。穴を開ける道具を借りてくるのを忘れちゃった。ごめん、もう少し待っててね」

鬼女「あ、その必要はないぞ。穴を開けるなら、私に任せてくれ!」ブン! バリィン!

男「うわ、力ずくで!?」

鬼女「ははは。この位なら簡単だぞ」ヒラヒラ

狸侍女「さすが、本家鬼族ですね」

狸娘「こんな分厚い氷を素手で割るなんて・・・」

狐娘「助かりました、鬼女さん」

鬼女「なんのなんの!」アハハ

犬娘「・・・あ、お魚!」

330: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/14(土) 19:27:28.54 ID:UIACkPG20
狐娘「それじゃあ鬼女さん、人数分穴を開けてもらってもいいですか?」

鬼女「ああ。任せてくれ!」ブン! バリィン!

犬娘「すごいですねー。あっという間に人数分の穴が」

狸侍女「それも、全部同じ大きさで開けられています」

鬼女「ふふん。この位は朝飯前だ」エヘン!

狸娘「お見事ですわ!」

鬼女「えへん!」

男「本当にすごいですよ、鬼女さん!」

鬼女「えっへ・・・あ、う、うん・・・。ほ、褒めてもらえると嬉しい・・・///」テレテレ

犬娘「!」

狸娘「!」

狸侍女「さ。取り敢えず釣りをしましょう」

狐娘「そうね。ほら、犬娘に狸娘。歯を食いしばってないで。竿」

犬娘「こ、こうなったら、沢山釣って男さんに褒めてもらう!」パシッ

狸娘「私も負けませんわ!」パシッ

狐娘「まったく、あなた達は・・・」ハァ…

狸侍女「鬼女様、男様、こちら竿です」スッ

鬼女「う、うん。ありがとう」チャッ

男「あ、ありがとうございます、狸侍女さん」チャッ

狐娘「それじゃあ、折角だから、誰が一番多く釣れるか競争しましょうか」

鬼女「それはいいな! よし、勝負だ!」チャポン

狸侍女「面白そうです。わたくしは負けませんよ?」チャポン

男「あはは。よーし、じゃあ・・・」チャポン

犬娘「釣り勝負、」チャポン

狸娘「開始ですわ!」チャポン

331: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/14(土) 23:14:57.73 ID:bZNsqCOR0
男「いやー、釣りなんて久し振りだなあ」

狐娘「そうなの?」

男「うん。俺の住んでいる所は、周りに海も川も無くてね。遠出しないといけなかったから」

狸侍女「成る程。それでは、釣りなどはなかなか出来ませんね」

鬼女「ふむ。それでは、男は不利か?」

男「いえいえ。気にしなくてもいいですよ」

犬娘「あ、かかった!」グイグイ

狸娘「もう!?」

男「お、犬娘が最初の釣果を挙げるかな?」

狐娘「結構大きそうね」

犬娘「むむむー・・・!」グググー……!

狐娘「犬娘、頑張って!」

犬娘「うーーん・・・!」グググー……!

鬼女「おお、かなりの大物か!?」

犬娘「えーーい!!」グイ! ザバー!

男「おお! 釣れた!」

狸侍女「やりましたね、犬娘様」

狐娘「かなり大きいわね」

犬娘「や、やったー・・・」ハァ…ハァ…

狸娘「これは何ていう魚ですの?」

鬼女「えーと・・・?」

犬娘「あ、あれ? このお魚・・・」ジー…

332: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/14(土) 23:17:26.72 ID:bZNsqCOR0

魚「んだよ・・・。旨そうな飯が漂ってると思ったら、釣り餌だったのかよ・・・。それもこんな嬢ちゃんに釣られちまうたあ、俺もヤキが回ったかねえ・・・」

全員『・・・』

魚「くそ・・・。俺の魚生もここまでか・・・。もう少し・・・。あともう少しだけ、自由でいたかったぜ・・・」

全員『・・・』

魚「いいぜ! 俺も男だ、腹ァ括ろうじゃねぇか! 煮るなり焼くなり好きにしろぃ!」デーン!

全員『・・・』

犬娘「・・・」ムンズ スタスタ

魚「ふっ。嬢ちゃん。アンタ、この俺を釣ったんだ。その誇り、忘れ・・・」

犬娘「・・・」ポイッ

魚「あ? え、ちょっ・・・!」ボチャン!

全員『・・・』

犬娘「・・・今のは、何ていうか・・・。全体的に無しの方向で・・・」

狸侍女「そ、そうですね・・・」

鬼女「狐娘。この湖では、言葉を話す魚が釣れるのか・・・?」

狐娘「い、いえ。私も初めて見ましたし、話に聞いたこともないです」

狸娘「突然変異、でしょうか?」

男「いや、それにしても何で言葉・・・。えー・・・?」

犬娘「と、取り敢えず今のは忘れて! 釣りを再開しましょう!」

狐娘「そ、そうね。そうしましょう」

鬼女「・・・もしかして、また誰か釣ったりして・・・」ボソッ

全員『・・・』

333: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/14(土) 23:33:56.29 ID:bZNsqCOR0
男「ま、まあ、普通に知能はあったし、二度も針に引っかからないでしょ!」

狸娘「そ、そうですわね! 次に釣れるのは普通の魚のはずですわ!」

鬼女「う、うむ。そうだな! おかしな事を言って済まない! さ、釣りを再開しよう!」

犬娘「次こそ、美味しいお魚を釣る!」フンス!

狸侍女「わたくしも、スズキなどを釣ってみたいものです」

狐娘「塩焼きで食べたいわ・・・」

全員『・・・』

ー数分後ー

狸娘「わ! か、掛かりましたわ!」グイー…

狸侍女「お嬢様、頑張ってください」

狐娘「あら、こちらも掛かったわ!」ググー…

男「二人とも、頑張って!」

犬娘「頑張ってー!」

狸娘「もう少しですわ!」グイグイ

鬼女「おお、もう魚影が見えてきた!」

狐娘「うーん・・・! こっちはまだね・・・」グイグイ

男「狐娘の方が大きいみたいだね」

狸娘「つ、れ・・・ましたわー!」グイ! ザパッ!

犬娘「あ、今度は普通のお魚!」

狸娘「これは・・・」

狸侍女「ボラ、ですね」

鬼女「おお、やったな!」

狸娘「え、ええ(正直パッとしませんわ・・・)」

狐娘「よい、しょっと!」ザパー!

男「あ、狐娘も釣れた?」

狐娘「ええ。キスが釣れたわ」

鬼女「おお! キスは天ぷらが美味しいんだ!」

狐娘「ええ。後で近くの食堂に持って行きましょう。そこで、釣った魚を調理してもらえますから」

犬娘「これで、狸娘ちゃんと狐娘ちゃんが、一歩先んじたね」

男「よーし、俺も釣るぞー!」

鬼女「む! 私もだ!」

狐娘「ふふ。次は何が釣れるかしら」

337: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/15(日) 13:34:47.55 ID:IqMaKZ/G0
ー数十分後ー
狐娘「それじゃあ、そこまでー!」

鬼女「お、もう終わりか」

狸娘「全員で沢山釣れましたわね」

犬娘「お刺身! 塩焼き! 煮付け!」ワーイ!

男「あはは。確かに、お腹空いてきたね」

狸侍女「それでは、皆様の釣果を、順番に発表していきましょう」

狐娘「そうね。まず私は・・・4匹ね」

鬼女「私は3匹だ・・・」

男「俺は5匹」

犬娘「わ、私は1匹です・・・」ショボーン

狸娘「私は3匹ですわ」

狸侍女「わたくしは8匹です」

男「それじゃあ・・・」

狐娘「優勝は、狸侍女さんです!」パチパチ

鬼女「すごいな! 8匹も釣るなんて!」

犬娘「あう。負けました・・・」

狸娘「流石は狸侍女ですわね」

狸侍女「はい。侍女ですので」

男「侍女って釣果すら操れるのか・・・」

狐娘「さて、それじゃあ、お昼には少し早いけど、魚を持って食堂に行きましょうか」

狸侍女「食堂の方々に言って、しばらくとっておいてもらいましょう。それに、24匹も食べられませんから、お客様皆に分けてあげましょう」

鬼女「うむ。それがいいな」

狸娘「それじゃあ、早速行きましょうか」


338: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/15(日) 13:49:29.96 ID:N5HZvFB80
ー食堂ー
狐娘「こんにちはー」ガラガラ

店主「へいらっしゃ・・・って! 妖狐さんとこの嬢ちゃんじゃねえか!」

狐娘「ええ。お久しぶりです、店主さん」

店主「本当に久し振りだなあ! いやー、大きくなったもんだ!」

男「あれ、狐娘の知り合い?」

狐娘「ええ。父の友人で、昔からその縁で付き合いがあるの」

店主「お、嬢ちゃんのお友達かい? よく来たなあ! ささ、座ってくれや!」

犬娘「はーい」

狸娘「随分と豪快な方ですわね」

店主「ガハハ! 褒め言葉と受け取っておくぜ!」

鬼女「店主殿。実は、私達は先ほど釣りをしてきてまして・・・」

狸侍女「こちらでお料理して頂けないかと思いまして」

狐娘「もちろん、沢山釣ってきましたから、そちらは差し上げます」

店主「ほう、どれどれ? おお、沢山釣れたもんだなあ! よし、任せておきな!すぐに作ってきてやるよ!」

男「ありがとうございます」

店主「ガハハ! いいってことよ! ちょっと待ってな!」スタスタ

犬娘「いい妖(ひと)そうですねー」

男「うん、そうだね」

狐娘「昔からずっと御世話になってるわ。頭が上がらないくらいね」

狸侍女「いいですね。そういった妖(ひと)がいるというのは」

鬼女「うん。そういった妖(ひと)との繋がりは、とても大切だからな!」

狐娘「ええ。感謝してます」

339: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/15(日) 13:57:13.35 ID:N5HZvFB80
男「ああいう妖(ひと)と友達ってことは、狐娘のお父さんもああいう感じなの?」

狐娘「いいえ。正反対って言ってもいいくらいかしらね。物静かで、頑固で」

狸娘「その正反対さが、逆に良かったのでしょうね」

鬼女「ふむ。正反対の性格の持ち主が友達か。互いにいい刺激を得ていたのだろうな」

狐娘「ええ。何でも、子供の頃からの付き合いだとか」

犬娘「へー!」

男「それじゃあ、もう一人のお父さんみたいな妖(ひと)なんだね」

狐娘「ええ。本当にそんな感じね」

狸侍女「そういえば、狐娘様はご実家に寄られなくてよろしいのですか?」

狐娘「・・・後で、ちゃんと顔は出しますよ」

狸侍女「? そうですか」

341: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/16(月) 12:58:11.55 ID:tqNRJVxG0

店主「ほいお待ち遠さん! とりあえず、簡単に刺身にしてみたぞ。ほれ、食いねえ!」ドン!

犬娘「お、美味しそー!」ジュルリ

男「うわあ、本当だ。すごく美味そうだ!」

狸娘「さ、早速頂きましょう!」

店主「おう! まだ他にも作ってるからな! どんどん食え!」スタスタ

狐娘「それじゃあ、頂きます」カチャカチャ パクッ

狸侍女「! 確かに、とても美味しいですね」モグモグ

鬼女「は、箸が止まらん!」パクパク ムシャムシャ

男「ちょ、鬼女さん一息に何枚も食べないでくださいよ!」

犬娘「ああ! お刺身がどんどん減っていく!」

鬼女「す、すまん。つい・・・!」モグモグ

狐娘「ああ、もうこんなに少なく・・・」

店主「はい追加お待ち遠・・・ってもうこんなに食ったのか!」

鬼女「す、すまない店主殿。あまりの美味さについ・・・」ソー…

狸侍女「鬼女様・・・?」

鬼女「はっ・・・!?」

店主「ガハハ! そんなに喜んで貰えたならよかったぜ。 ほら、追加だ。天ぷらに、蒲焼き。刺身もな!」ドン!

狐娘「わ、ありがとうございます」

342: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/16(月) 19:25:27.44 ID:ocPTM6nF0
ー数十分後ー
全員『ごちそうさまでしたー!』

店主「おう! よく食ったなあ、お前ら!」

犬娘「美味しかったですー・・・」

男「どうも、ありがとうございました」

狸侍女「御馳走様でした」

店主「ガハハ! 見ていて気持ちのいい食いっぷりだったぜ!」

狸娘「お箸が止まらなくなるほど美味しかったんですもの」

鬼女「うん。これからは毎年ここに来ようと思う」

男「確かに、そんな気持ちになりますね」

店主「嬉しいねえ。そういや嬢ちゃん、妖狐は元気かい? あいつ、前に借金の連帯保証人になっちまった、って言っていたが・・・」

男「!」

狐娘「だ、大丈夫です! そのことはもう何とかなりますから!」

店主「そうか? ならいいけどよ・・・」

男「狐娘・・・」

狐娘「さ、さあ! そろそろ行きましょう! 店主さん、御馳走様でした! お会計は・・・」

店主「水くせえ! んなもんいらねえよ!」

鬼女「おお! 店主殿は太っ腹だな!」

狸娘「で、でも・・・」

狐娘「ええ。そういう訳には・・・」

店主「いいんだよ! 嬢ちゃんは俺の娘みたいなものだ! 娘に飯食わせて金を取る親なんざいねえわな!」ガハハ!

犬娘「店主さん・・・」

狸侍女「ありがとうございます」

店主「おうよ! 魚も結構貰ったしな! お互い様だよ、嬢ちゃん」

狐娘「・・・ありがとうございます。店主さん」

狸侍女「それでは、そろそろ参りましょうか」

店主「お、出るか。まあ、あまり観光には向いてない所だが、いい所だぜ。楽しんできな!」

男「はい。それじゃあ・・・」ガラガラ

狐娘「行ってきます!」

店主「気い付けてなー!」ブンブン

343: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/16(月) 20:59:08.33 ID:ocPTM6nF0
ーその頃 冬華村・とある屋敷ー
ガシャアン!
麻呂狐「えぇーい! まだ狐娘ちゃんを連れ戻せぬでおじゃるか!?」

頭領狐「は・・・。この村に帰っていらした所までは確認しましたが、その後は・・・」

麻呂狐「くぅー! この無能共めが! 役立たず!」

頭領狐「・・・しかし主。この村におられる以上、もう時間の問題かと・・・」

麻呂狐「ならさっさと連れてくるでおじゃる! 麻呂の花嫁でおじゃるぞ!」

頭領狐「・・・しかし、ご本人がそれを望んでおられないのでは・・・」

麻呂狐「そんな訳無いでおじゃる! 無礼な!」

頭領狐「・・・しかし現に・・・」

麻呂狐「黙りゃ! 狐娘ちゃんはまだ16。ちいとばかり恥ずかしがっているだけでおじゃる!」

頭領狐「・・・」

麻呂狐「それに、そもそも借金を抱えた狐娘ちゃんの父君を助けてやったこの麻呂との結婚を、喜びこそすれど、嫌がることなど有り得ぬわ! 馬鹿者め!」

頭領狐「・・・はっ(・・・そもそも、そうなるように仕向けたのは貴様だろうに・・・)」

麻呂狐「いいでおじゃるか? 麻呂はもう待ち切れぬ! 今日中に連れ戻し、予定通り今夜には祝言を挙げるでおじゃるぞ!」

頭領狐「・・・御意に」

麻呂狐「・・・ふん! 貴様らのような薄汚ーい忍び風情を拾ってやった父上の恩、その父上の亡き今、息子であるこの麻呂に仕えることで返すでおじゃるぞ!」ドスドス…




頭領狐「・・・稲荷様の恩、か・・・。稲荷様。我等、貴方様に御仕えしたこと、微塵の後悔も御座いません・・・」

頭領狐「・・・しかし、貴方様の御子息は、どうしてこんな俗物になってしまわれた・・・」

ヒュッ!

忍び狐3「頭領! 狐娘様を確認。現在、白銀の里に向かわれております」

頭領狐「・・・承知。恐らく、父君と話をしに行かれるのだろう。その間に周囲を囲め。そのまま好機を待て。恐らく、いずれ妖狐様より合図が出る。そうしたら、狐娘様の確保に入れ」

忍び狐3「はっ・・・!」

頭領狐「・・・くれぐれも、丁重に行えよ。また、お連れ様にも手荒な真似は決してするな・・・」

忍び狐3「はっ。皆に徹底させます。では・・・!」ヒュッ!

頭領狐「・・・妖狐様。心中、お察しいたしますぞ・・・」

345: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/18(水) 22:16:12.11 ID:xsoPsc9c0
ー冬華村・白銀の里ー
狐娘「ここが、私の故郷の里よ」

男「うわ・・・。すごく綺麗だ・・・」

犬娘「やっぱり、いつ来てもいい所ですねー」

鬼女「すごいな。何というか、すごく幻想的だ」

狸娘「ええ。美しいですわ・・・」

狐娘「さ、私の家はこっちよ。着いてきて」スタスタ

男「あ、うん」

犬娘「はーい」

狸侍女「行きますよ、お嬢様、鬼女様」

鬼女「あ、ああ!」

狸娘「今行きますわ!」

ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー

忍び狐3「目標を確認しました」 

忍び狐1「よし。忍び隊47人、総員配置に着け。頭の言伝、努々忘れることの無いようにな」

忍び狐達『はっ・・・!』ヒュヒュッ!



忍び狐1「さて。お嬢さんには悪いが、こちらも仕事なんでね。手は抜かないぜ・・・」ヒュッ!

346: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/18(水) 22:57:07.33 ID:xsoPsc9c0
男「それにしても、何だか白川郷にすごく似てるなー」

狸侍女「しらかわごう、ですか?」

男「はい。俺の住んでいた国、えーと、村の、一つの地域なんですけどね、こことすごくそっくりなんですよ」

狸娘「男様の故郷にも、こういった素晴らしい風景があるのですか?」

男「うん。とても綺麗で、文化的に価値のある所だから、皆で大切にしているんだよ」

犬娘「そうなんですかー」

鬼女「興味深いな。人間の村にも、ここと同じような場所があるなんて」

狐娘「そうね。ふふ、いつか人間の世界にも行ってみたいわね」

犬娘「もしかしたら、今頃お父さんが人間の世界に行く方法を見つけているかもしれないしね!」

狸侍女「・・・男様の暮らしていた場所。是非、行ってみたいものです」

男「ええ。皆なら大歓迎ですよ。是非、いらしてください」

狸娘「その時は、男様のご両親にもご挨拶しなければいけませんわね」

男「あー、まあ、うん・・・」

狐娘「? 何か不都合でも?」

犬娘「私達が、妖族だからですか・・・?」ショボーン

男「いやいや! そうじゃなくて。俺、両親がいないからさ」挨拶しようにも、親はいないんだよ」

鬼女「そう、なのか・・・?」

狸侍女「それは・・・」

348: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/19(木) 10:43:28.90 ID:rAJspWzi0
男「いやあ、14の春に、朝起きたら親がいなくてさ。書き置きが一つあって、要するに借金が返せなくなっちゃって・・・」

狐娘「!!」

男「で、息子の俺に全部押し付けて消えちゃったんだよね」

犬娘「そんな・・・」ダバー

狸娘「酷すぎますわ・・・」ザバー

男「大号泣!?」

鬼女「酷い親もいたものだな・・・」

狸侍女「・・・それで、その借金は?」

男「うん。まだ全部は返し切れてないんだけど、周りの人達に助けられて、もう殆ど返済できてるよ。お金を貸してくれてた人達も、結構いい人達でさ。利息はいらない、って言ってくれてるし」

狐娘「・・・大変よね。借金の方に身を売られるなんて」

狸娘「そうですわ! 男様は何も悪くないのに!」

鬼女「そんな親には文句の一つでも言ってやった方がいいのではないか?」

男「いえ、いいんですよ。おかげで、早くから自立できましたし、色んな人達との繋がりも持てて、ある意味今の状況には感謝してるんです。まあ、何も言わずにいきなり出て行ったことは、少し腹立たしくも思いましたけど」

狸侍女「男様・・・」

男「あはは。ちょっと、格好つけた言い方ですけどね。一応、産んで、育ててくれた人達ですから。恨んだりはしてません」

狐娘「そう。大人なのね、男さんは・・・」

犬娘「男さん、格好いいですよ!」

鬼女「うむ! 立派なものだ!」

男「あ、ありがとうございます」

狸娘「男様はお強いのですね」

男「いやいや。逃げたくても逃げ場が無かっただけだよ」

狐娘「それでも、とても凄いことだわ。―その強さが、私にはとても羨ましい・・・」

男「狐娘・・・?」

狐娘「・・・何でもないわ。さ、あそこの屋敷が、私の家よ。行きましょう」

男「・・・?」

349: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/19(木) 11:00:39.90 ID:rAJspWzi0
ー冬華村・妖狐の屋敷ー
狐娘「ただいま戻りました」ガラガラ

犬娘「おじゃましまーす」

男「おじゃまします」

奉公狐「! お嬢様! お帰りなさいまし」パタパタ

鬼女「お、お嬢様?」

狸娘「狐娘さんの親御様は、もしかして・・・」

狐娘「違うわよ。ただ単に、大きなお店をやっているだけ。その店主の娘だからよ」

狸侍女「なるほど」

奉公狐「これはこれは! ご友人様方もご一緒で! ささ、お上がりになってください! 客間へご案内いたします!」ペコペコ

狐娘「ありがとう。私が父上と話をしている間、この妖(ひと)達のもてなしをお願いね」

奉公狐「はい。かしこまりました!」ペコペコ

狐娘「そういうことだから、皆は先に客間へ行っててちょうだい。私も、後から行くわ」スタスタ

狸娘「・・・狐娘さん、ご実家だというのに、あまり嬉しそうじゃありませんわね」

犬娘「うん。何だか、緊張してるみたいだった」

男「・・・」

鬼女「まあ、何かしらの事情があるにしても、私達が踏み込める話題ではないだろう」

狸侍女「はい。家庭の問題となると、さすがに・・・」

奉公狐「皆様、客間へご案内いたしますので、どうぞこちらへ」テクテク

犬娘「はーい」

鬼女「男? ほら、行くぞ?」

男「あ、はい。今行きます」

350: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/19(木) 11:27:46.40 ID:rAJspWzi0
ー妖狐の屋敷・客間ー
奉公狐「それでは、ただいまお茶を淹れて参りますので、どうぞおくつろぎになってお待ちくださいませ」ペコリ スー…トン

男「結構広いね、ここのお屋敷も」

犬娘「狐娘ちゃんのお父さん、妖狐さんは、この里でも有数の商家ですからね」

鬼女「なら、お嬢様というのも頷けるな」

狸娘「すごいですわね、商売でここまで成功するなんて」

狸侍女「わたくし達は、大狸様の高名でいい暮らしをしていたようなものでしたからね」

狸娘「そ、そういうことは言わなくてもいいことですわ!」

男「あはは」

鬼女「ん? 大狸とは、あの大狸様のことか?


犬娘「そうですよー」

鬼女「何と! 大狸様のご息女であらせられましたか! そうとは知らず、大変なご無礼を・・・!」ザザー

狸娘「ち、ちょっと! 頭を上げてください!」

鬼女「し、しかし!」

男「・・・何これ?」

狸侍女「鬼族は上下関係に重きを置く一族です。そのため、四神(ししん)とも呼ばれた、我ら妖族の英雄の一人の娘とあらば、尊敬の対象になるのかと。失礼、『の』が多かったですね。聞き取りづらかったでしょうか?」

男「あ、いや、そこはいいんですけど・・・」

狸娘「お、鬼女さん! 私は養子で貰われただけで、別に血縁というわけでもないんですのよ!?」

鬼女「されど、かの大狸様のご息女に間違いはなし! 軽々しく頭を上げるわけには・・・」

犬娘「わ、頭がだんだん畳にめり込んでる・・・」

男「わー! と、止めないと!」

狸侍女「・・・お嬢様」ゴニョゴニョ

狸娘「うぅー。お、鬼女さん!」

鬼女「はっ!」

狸娘「私からの命令です。私とは、今まで通り、普通に接しなさい」

鬼女「それは・・・!?」

狸娘「私の言うことが聞けませんか・・・?」

鬼女「・・・! お心遣い、感謝いたします!」

狸娘「・・・」ジトー

鬼女「え、えーと、ありがとう、狸娘」

狸娘「まったくもう・・・」

奉公狐「あ、あのー、もう入ってもよろしいでしょうか?」

狸侍女「ああ、失礼いたしました。どうぞ」

スー

奉公狐「失礼いたします。粗茶ですが、どうぞ」コト

狸侍女「ありがとうございます。後はこちらでやりますので、お仕事に戻ってください」ニコリ

奉公狐「! は、はははい!///」パタパタ ペコリ

狸侍女「? どうしたのでしょうか、あんなに慌てて」キョトン

男「あ、あはは・・・」

351: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/19(木) 12:06:19.19 ID:uFoCC7Ny0
ーその頃 妖狐の屋敷・茶室
妖狐「・・・」

スタスタ

狐娘「・・・父上。狐娘です」

妖狐「・・・入れ」

狐娘「失礼します」スッ トン

妖狐「今まで、どこをほっつき歩いていた・・・?」

狐娘「友人と、紫苑祭の期間を使い、各村を回っておりました」

妖狐「私に一言もなくか」

狐娘「言えば、父上は止めたでしょう?」

妖狐「では、止められる理由も分かっていよう?」

狐娘「・・・私は、まだ結婚などしたくはありません。ましてや、借金の末の婚姻など・・・」

妖狐「・・・正直な所、お前には申し訳なく思っている。私が取引先を見極めることが出来なかったせいで、借金を背負い、金の援助を得るために、貴様を嫁に出さねばならなくなった。全て、私が悪いのだ」

狐娘「では・・・!」

妖狐「しかしだ。しかし、相手はかの稲荷様のお家。その現当主様からの直々のご指名とあらば、断るわけにはいかんのだ・・・!断れば、たちまち私の店は潰される!」

狐娘「・・・そんなに、店が惜しいのですか」

妖狐「・・・何?」

狐娘「私に! 望まぬ結婚をさせてまで、この店が惜しいのですか!?」

妖狐「・・・」

狐娘「父上が、亡き母上との約束のため、この店を守ってきたのは知っております。しかし、それでも私は、あのような方と結婚などしたくはありません! 物事を全てお金で考え、自分の思い通りにならないものは排する。そんな殿方に嫁ぐなど、私は嫌です!」

妖狐「・・・」

狐娘「わがままでしょうか・・・。私は、店など無くともよいと思っています・・・。例え貧しくなっても、父上と、二人で笑って暮らせれば、それで十分なのです・・・。母上だって、きっと・・・」ポロ…ポロ…

妖狐「狐娘・・・」

狐娘「亡き母上より、今ここにいる私を、どうして見てくれないのですか・・・?」ヒクッ…グスッ…

妖狐「・・・すまぬ。私はもう、後には退けないのだ」

狐娘「え・・・?」

妖狐「どんな手を使ってでも、私はこの店を守る。守らねばならぬのだ」

狐娘「そんな・・・」

妖狐「お前を嫁に出せば、借金の肩代わりだけではない。今後も資金を援助してくださるとのことだ。それに、稲荷様のお家と縁が持てれば、まだ店は大きくなる! この好機、逃すわけにはいかぬ!」

狐娘「・・・では私は、この店を維持するための・・・。道具なのですか・・・?」ポロ…ポロ…

妖狐「・・・すまぬ」

狐娘「・・・っ!!」ダダッ! タッタッタッタ……

妖狐「許せ・・・。許せよ、狐娘・・・!!」

ヒュッ

忍び狐7「妖狐様・・・」

妖狐「・・・構わぬ。手筈通り、あれを連れて行くがいい・・・!」

忍び狐7「・・・この店への永続的な援助。決して違えぬと誓いましょう」ヒュッ





妖狐「・・・これで良いのだ。あ奴も、あの家に嫁げば何一つ不自由はせん。これで良いのだ。これで・・・」

355: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/19(木) 22:03:07.70 ID:rAJspWzi0
ー妖狐の屋敷・客間ー
犬娘「それにしても、狐娘ちゃん」遅いですねすズズー

狸娘「そうですわね。お父様とどんなお話をされているのでしょう?」ズズー

男「・・・」

鬼女「男? どうしたんだ?」

狸侍女「やはり、気になられますか?」

男「ええ。・・・余計なお世話かもしれないですけど、ちょっと様子を見に・・・」

奉公狐『あ!? お嬢様、どちらへ!?』

狐娘『どいて!』

ガラガラ! バン!

犬娘「! 今の・・・!」

鬼女「狐娘だな。何かあったのか?」

男「くっ、追いかけよう!」

狸侍女「はい・・・!」

狸娘「玄関から外に出ましたわ!」

タタタタ!

ガラガラ!

鬼女「!! あれは!?」

狐娘「な、何をするの!?」ジタバタ

忍び狐13「申し訳御座いません。少々、お静かに・・・」トン

狐娘「離し、うっ・・・!?」トサッ

忍び狐26「おい。頭は手荒な真似はするなと・・・!」

忍び狐13「だが、あのまま騒がれては、そもそも任務を遂行できない。最大限力は抜いた」

忍び狐5「話は後だ。頭に報告に・・・」

男「狐娘えぇぇー!!」

犬娘「狐娘ちゃーん!」

忍び狐7「くっ、彼らがお連れ様とやらか!」

忍び狐1「お前達は狐娘様をお連れして屋敷へ戻れ! 彼らは俺が足止めしておく! 第二、第三忍隊俺と共に彼らの足止めに入れ!」

356: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/19(木) 22:55:22.33 ID:rAJspWzi0
忍び狐13「はっ」タタタタタ……

忍び狐11「君達! すまないが、彼女の後を追わせるわけにはいかない!」バッ!

忍び狐1「悪いが、これも仕事なんだ。このまま大人しく引き下がってくれないか?」

忍び狐達「・・・」ザザザザッ!

狸侍女「囲まれましたか・・・」

男「仕事!? 狐娘を誘拐することがですか!?」

鬼女「仕事と言うからには雇い主がいるな!? どこのどいつだ!」

狸娘「ふ、二人とも落ち着いて!」

忍び狐1「すまないが、俺達は忍び。主の名は易々と口には出来ない」

鬼女「くっ・・・!」

犬娘「き、狐娘ちゃんが・・・。そうだ、よ、妖狐さんに・・・!」

狸侍女「いえ。この件、恐らく妖狐様も一枚噛んでおられますね?」

男「え!?」

忍び狐1「・・・ああ、そうだ。これは、俺達の雇い主だけでなく、妖狐様の希望でもあるのだ」

犬娘「そん、な・・・」

狸娘「ああ! 狐娘さんがもうあんなに遠くに!」

男「狐娘! くそ、そこをどいてください!」

忍び狐1「すまない」

鬼女「男、もはや言葉を聞かぬなら実力行使だ! 悪いが力尽くでも道を空けて貰うぞ!」ゴッ!

狸娘「そ、そんな・・・!」

男「くっ・・・! 確かに、言葉で伝わらないなら・・・!」バッ!

犬娘「あ、あわわ・・・」アセアセ

狸侍女「・・・お嬢様と犬娘様はわたくしの後ろに」

鬼女「道を空けろお!」ビュッ! ガン!

忍び狐4「ぐおっ! かはっ!」ドサッ! ヨロ…ヨロ…

男「そこをどいてください!」ヒュン! バキッ!

忍び狐16「うおっ!」ドサッ!

忍び狐22「この・・・!」ザッ!

忍び狐1「手は出すな!」

忍び狐9「しかし・・・!」

忍び狐1「ならぬ!」

忍び狐達『・・・はっ!』

鬼女「!? こいつら・・・!?」

男「受けるだけ!?」

357: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/19(木) 23:00:35.65 ID:rAJspWzi0
忍び狐1「俺達は、決して君達に手荒な真似はしない。だが、彼女を追わせるわけにもいかない」

男「何を・・・!」

忍び狐1「俺達は忍び。主君や上司の命令を確実に遂行する者だ」

狸侍女「・・・そこまで誇り高いあなた方が、どうしてこのような真似を?」

忍び狐3「・・・俺達だって、こんなことしたいわけじゃない・・・」

忍び狐35「でも、どんな奴でも、そいつが主君なら、命令を聞くしかないんだ・・・!」

忍び狐1「余計なことを言うな!」

忍び狐35「・・・すいませんっ」

狸侍女「・・・いいでしょう。ここはわたくし達が退きます」

鬼女「狸侍女!? 何を・・・!」

狸侍女「鬼女様、既に狐娘様を追える状況ではありません。ここは大人しく退がるのが得策かと。男様も、一度冷静になって考えてくださいませ」

鬼女「しかし・・・!」

男「・・・分かりました。ここは退がります」スッ…

鬼女「お、男まで・・・!」

狸娘「鬼女さん、お願いですから・・・!」ギュウ… ウルウル…

鬼女「ーーーーっ! 分かった・・・!」スッ…

忍び狐1「・・・すまない・・・!」ペコリ ヒュッ!

忍び狐達『・・・』ヒュヒュン!


ビュウゥゥーー………


犬娘「うっ、ぐすっ・・・。狐娘ちゃん・・・」ヒック エグッ…

狸娘「・・・犬娘さん・・・」ギュウ

犬娘「うぅ・・・。うぇーーーん・・・!」

鬼女「・・・!!」フゥーーー……!!

狸侍女「男様。辛い決断を迫り、申し訳ありませんでした」

男「そんなことないですよ。おかげで冷静になれました。ありがとうございます」

狸侍女「いえ・・・」

鬼女「だが、どうするのだ!? このまま見捨てるのか!?」

狸娘「そんなこと・・・! 狸侍女・・・?」

狸侍女「はい。あの場では、あの人数を相手に戦っても、時間の無駄でした。それより、手っ取り早く事情を伺った方がよろしいかと判断しましたので、一度退いたのです。このままにしておくつもりなど、毛頭ありませんよ」

鬼女「それでは、どうするのだ?」

男「彼らなりの罪滅ぼしの意志だったのかもしれませんね。重要な事を一つ、教えてくれました」

狸侍女「はい。わたくしが妖狐様の名を出したとき、白を切るでも、誤魔化すでもなく、素直に彼も関わっていると白状しました」

鬼女「そうか! 妖狐殿に話を聞くのだな!」

狸娘「狐娘さんの、お父上・・・」

犬娘「どうして、こんなことを・・・」エグッ グスッ…

男「・・・とにかく、いつまでも外にいても仕方ない。一度お屋敷に戻って、妖狐さんに話を聞こう。まずはそれからだ」

狸侍女「はい」

358: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/20(金) 08:45:08.20 ID:5Hc6gSve0
ー妖狐の屋敷・茶室ー
妖狐「それで・・・。何の用かね」

男「・・・単刀直入に聞きます。何故、忍びの皆さんに狐娘を誘拐させたのですか?」

妖狐「! 何故それを・・・!」

狸侍女「やはりそうでしたか」

妖狐「・・・! くっ!」

鬼女「呆れたものだな。よくそれで父を名乗れたものだ」

狸娘「そんな・・・」

犬娘「妖狐さん、どうして・・・!」

妖狐「・・・!」

男「話してもらいます。全て」

妖狐「・・・私が、借金の連帯保証人になってしまったという話は?」

男「白尾湖の近くの食堂の店主さんから、少し・・・」

妖狐「・・・うむ。私は、古い友人が作った借金の連帯保証人になってしまった。そいつは、すぐに返せるから、名前だけ貸してくれと言っていて、私は名を貸してしまったのだ」

男「・・・」

妖狐「元々、そいつは事業もいくつか持っていたし、確かに補填はすぐに出来るだろうと思っていた。が・・・」

狸侍女「その妖(ひと)は、行方を眩ましたと・・・」

妖狐「・・・ああ。あいつは、他にも多額の借金を抱えていてな。その全てを私に押し付け、姿を消したのだ」

男「・・・! だから、俺の話を聞いたときに・・・」

犬娘「男さん・・・?」

男「・・・何でもないよ。続けてください」

359: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/20(金) 08:49:23.23 ID:5Hc6gSve0
妖狐「・・・私は、頭を抱えたよ。多額の借金を背負わされ、それを返済する日々は、まさに地獄のようだった。どれだけ商品を売り上げても、借金の返済で殆ど消えてしまう。毎日のように赤字続きだった・・・」

狸娘「そんな・・・」

妖狐「しかし、ある時そんな私に声をかけて下さった方がいた」

狸侍女「それは?」

妖狐「・・・そこまでは、言えん」

男「・・・その方に恩義があるのは分かります。でも、本当にこれでいいんですか?」

妖狐「・・・何?」

鬼女「狐娘は、泣いていたぞ」

妖狐「!」

男「誘拐されるなんて、怖かっただろうに。それが親も黙認しているなんて、悲しくて、苦しくて・・・とても辛かったはずです・・・!」

妖狐「だが・・・、私は・・・!」

狸侍女「妖狐様。親とは、子供の幸せを祈り、生きるのではありませんか?」

鬼女「私達には、貴殿のしたことが、狐娘の幸せになるとは思えない」

妖狐「っ・・・」

男「妖狐さん・・・!」

妖狐「・・・資金援助の代わりに、狐娘と婚約したのは、麻呂狐様だ」

狸侍女「!」

鬼女「誰だ? そいつは」

狸娘「昔、お祖父様から聞いた話だと、この村で白狐姫様に次ぐ地位の持ち主ですわ」

犬娘「ええ!? 村長さんの次に!?」

狸娘「ええ。何でも、古くから続く由緒正しい家系だとか」

鬼女「確かに、そんな奴ならあれほどの忍びを抱え込んでいても不思議はないな・・・」

妖狐「・・・あの方は、『借金に困っているのだろう? 援助してやっても良い』と私に持ち掛けてきた」

男「それで・・・」

妖狐「ああ。『その代わり、娘を嫁に寄越せ』と、そうも言われた」

男「それで狐娘を!?」

狸侍女「おかしいとは思われなかったのですか?」

妖狐「私が借金に苦しんでいる時期と、麻呂狐様が私にこの話を申し込んできたことの繋がりを、だろう? その時は、おかしいなんて思う余裕すら無かったんだ。毎日の借金に頭を抱えていたからね」

犬娘「そんなに大変だったんですね・・・」

鬼女「だが、その行方を眩ました男と、麻呂狐とやらが裏で繋がっているのはほぼ明確ではないか。何故そんな奴の言いなりになる」

360: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/20(金) 08:50:56.35 ID:5Hc6gSve0
妖狐「相手は由緒正しい御家の当主だ。一介の商人風情に過ぎない私が刃向かえるわけがない。それに、証拠となる契約書が向こうに抑えられている以上、どうにも出来ん! ・・・私は、この店を守らねばならない。死んだ妻との約束なのだ。この店をずっと守っていくと。だから・・・」

男「だから、娘を無理矢理嫁がせたんですか・・・!」

妖狐「仕方がないんだ! 君達に何が分かる!? このまま借金にまみれ、惨めな生活を送れと!? それに娘を巻き込めと!?」

鬼女「それは貴殿の都合だろう。狐娘の意志は聞いたのか?」

妖狐「!」

男「狐娘なら、貧しくともあなたといっしょにいたい。それくらいは言ってのけたはずです」

妖狐「・・・しかし、親として、娘にそんな生活はさせられん。それに、あの家に嫁げば、生活も将来も安泰。狐娘のためにも、これが一番いいのだ・・・!」

狸娘「そんな・・・!」

犬娘「勝手なこ・・・」

男「勝手に子供の幸せを決めつけるな!!」ドン!

鬼女「! お、男?」

男「そんなことで、狐娘が本当に幸せになれると思っているんですか!?」

妖狐「無論だ!」

男「そんなことあるわけないでしょう・・・!」

妖狐「何を・・・!」

男「どんなに借金があったって、子供は親と過ごせればそれで良かったんです・・・。どんなに苦しくったって、家族がいれば、それで十分なのに・・・!」

狸侍女「男様・・・」

妖狐「・・・君は・・・」

男「・・・俺の親も、昔借金をしました。挙げ句、俺に全てを任せて、二人ともいなくなりました・・・」

妖狐「・・・」

男「あれは、本当に辛いんです・・・。信じていたものに裏切られて、独りぼっちになって・・・」

犬娘「男さん・・・」

男「妖狐さん。あなたがしたことは、俺の親と殆ど変わりません。娘を裏切って、借金の形に無理矢理嫁がせるなんて!」

妖狐「・・・私、は・・・」

鬼女「どの道、黒幕が分かった以上、私達は狐娘を助けに行く」スクッ

狸娘「そうですわね」スッ

犬娘「・・・うん」スクッ

妖狐「! そ、それは・・・!」

男「・・・お金やお店と、狐娘。どちらが本当に大切なのか、よく考えてください・・・。失礼します」ペコリ スクッ

スタスタスタスタ

狸侍女「・・・狐娘様は、妖狐様を本当に尊敬していましたよ」ペコリ スッ



妖狐「私は・・・間違っているのか・・・? だが・・・!」

362: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/20(金) 10:25:13.33 ID:5Hc6gSve0
ー妖狐の屋敷前ー
犬娘「男さん・・・」

男「うん。助けに行こう、狐娘を」

鬼女「ふっ。そうこなくてはな!」

狸娘「狸侍女、麻呂狐とやらの屋敷の場所は・・・」

狸侍女「かなりの御家ですからね。家の場所は、過去に聞いたことがあります」

鬼女「では、後は行くだけだな」

狸侍女「はい」

犬娘「狐娘ちゃん・・・。すぐに助けに行くからね!」

男「よし。皆、行こう!」

363: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/20(金) 10:33:40.65 ID:5Hc6gSve0
ー麻呂狐の屋敷・庭ー
ヒュッ!

忍び狐13「頭、狐娘様をお連れしました。今は、客間で・・・」

頭領狐「ご苦労。あの男には、俺から伝えておこう。皆は今日は休ませろ」

忍び狐13「はっ」ヒュッ!

頭領狐「・・・さて。またあの男と顔を合わせなくてはな・・・」

364: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/20(金) 10:43:59.43 ID:5Hc6gSve0
ー麻呂狐の屋敷 麻呂狐の部屋ー
麻呂狐「なんと! 狐娘ちゃんを連れ帰ったとな!?」

頭領狐「は・・・。今は、客間にて控えております」

麻呂狐「ほう! よくやったでおじゃる! 麻呂はそなたらを信じておったでおじゃる!」

頭領狐「・・・有り難いお言葉に御座います・・・」

麻呂狐「むふー! で、では早速、狐娘ちゃんに会いに行くでおじゃる!」

頭領狐「それは、お止めになった方が宜しいかと」

麻呂狐「何故でおじゃる!? 夫が妻となる者に会いに行って何が悪いでおじゃるか!?」

頭領狐「は。麻呂狐様は、今宵祝言を挙げると仰られました・・・。祝言前に花嫁に会うのは、縁起が悪いと、そういう風潮も御座います故、お止めになった方が宜しいかと・・・」

麻呂狐「むぅー! し、しかし・・・!」

頭領狐「麻呂狐様。狐娘様も、そういった縁起物を大切になさった方が、好ましく思うものかと・・・」

麻呂狐「えぇーい! 分かったでおじゃる! 祝言までは顔を合わせぬ! これでよいでおじゃるな!?」

頭領狐「は。それが最善に御座いますれば・・・」

麻呂狐「ふ、ふふ。よいよい。楽しみが増すというものよな! ホホホ!」スタスタ





頭領狐「・・・」

頭領狐「・・・来るなら、早く来い。彼女を、救ってやれ・・・」

365: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/20(金) 10:54:14.28 ID:5Hc6gSve0
ー麻呂狐の屋敷・客間ー
狐娘「ん、んん・・・。ここ、は・・・」ボー

忍び狐7「気が付かれましたか」

狐娘「! あ、あなた達は!」ガバッ!

忍び狐7「はい。主の命により、あなたを
ここまで連れてきました」

狐娘「主とは、父のことですか? それとも・・・」

忍び狐7「我等の主は、麻呂狐様にございます」

狐娘「じゃあ、ここは・・・」

忍び狐7「はい。麻呂狐様のお屋敷にございます」

狐娘「そんな・・・」

忍び狐7「現在の時刻は午後2時。四時間後の午後6時には、麻呂狐様と祝言を挙げることになっております」

狐娘「!」

忍び狐7「・・・私は、警備があるので、部屋を離れます。何かあれば、お声を掛けて下さればすぐに参ります。では」ヒュッ





狐娘「・・・」

狐娘「こんなの、嫌だ・・・。皆ぁ・・・」ポロ…ポロ…

368: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/20(金) 21:37:15.49 ID:5Hc6gSve0
ー冬華村・街道ー
男「はっ、はっ・・・。狸侍女さん! あとどの位ですか?」タッタッタッタ

狸侍女「はい。この街道を進むと、北の広場に出ます。そこを突っ切れば、もうすぐです」タタタタタ

犬娘「はぁっ、はぁっ・・・。狐娘ちゃん・・・!」タッタッタッタ…

狸娘「犬娘さん、頑張って!」タッタッタッタ…

鬼女「む。見えたぞ! あれが広場だな!」タタタタタ…

男「よし! あそこを抜ければ!」タッタッタッタ

忍び狐1「止まれ!」ヒュン!

男「うおっ!?」ズザザッ!

狸侍女「! 苦無!」バッ! キンッ!

ヒュンヒュンヒュン… トスッ

鬼女「ふん、やはり警護部隊をおいているか」ハア、ハア…

狸侍女「20人程、でしょうか・・・」フゥ、フゥ…

犬娘「はあ、はあっ・・・!」

狸娘「い、犬娘さん、こちらへ」

男「・・・やっぱり、素直に通してはくれませんか?」

忍び狐13「申し訳ありませんが、これも仕事の内なのです。主の屋敷に、侵入者を通す訳にはいきません」

忍び狐達『・・・』ズラリ!

鬼女「ふん、面白い。忍びが何人いようが、私には勝てぬと知れ!」ゴッ!

男「早く、狐娘を助けないといけないんです。道を空けて貰います!」バッ!

狸侍女「掛かってくるというのなら・・・。お怪我をされても知りませんからね・・・?」ヒンンヒュンヒュン……パシッ!

忍び狐2「今回は、こっちも手を出す。そっちこそ、怪我をしても後悔するなよ?」

忍び狐1「屋敷警護屋外部隊! 第一、第二忍隊、構え!」

忍び狐達『はっ!』チャキ チャキ ジャキ ジャキン!

男「!」ギュッ!

鬼女「ふふん・・・」ゴキゴキ

狸侍女「・・・」フゥーッ!

犬娘「私だって、少しは・・・!」ガルル

狸娘「犬娘さん、無理はしないように」バッ

忍び狐1「我等は総勢20名。易々とここを抜けると思うな・・・! かかれえぇぇ!」ビュッ!
し忍び狐達『おお!』ビュビュビュン! バババババ!

狸侍女「苦無や手裏剣などの飛び道具はわたくしが対応します! 接近してきた者達の対応をお願いします!」ダンッ! ガキキキキキン!

男「分かりました!」

鬼女「任せたぞ!」

犬娘「わ、私だってえ・・・!」ガルル

狸娘「い、犬娘さん! 私達は下がりますわよ!」グイグイ

犬娘「がるるぅー・・・!」ズリズリ

鬼女「行くぞ! はあっ!」ドンッ!

男「今行くから! 狐娘!」ダダッ!

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

371: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/21(土) 10:32:13.05 ID:6CapAipz0
ー麻呂狐の屋敷・庭ー
頭領狐「・・・始まったか」

ヒュッ

忍び狐21「頭。たった今、広場で交戦が・・・」

頭領狐「分かっている」

忍び狐21「・・・頭。私も、今回は・・・」

頭領狐「迷うな。忍びなのだ、切り替えろ」

忍び狐21「・・・はっ」ヒュッ

頭領狐「・・・思ったより、皆の志気が低いな。・・・麻呂狐様。因果応報の意味、その身で味わって頂くことになるやもしれませんぞ」

頭領狐「・・・ふっ。こんな事を考えている時点で、忍び失格だな・・・」

372: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/21(土) 12:10:46.17 ID:6CapAipz0
ー麻呂狐の屋敷・客間ー
狐娘「ぐすっ・・・。どうして、こんなことになっちゃったのかな・・・」

狐娘「父上と・・・。お父さんと二人で暮らせればそれで良かったのに・・・」

狐娘「何で、こんな・・・」

ワーー! トメロー! ニガスナ! カコメ!カコメ!

バタバタ

狐娘「・・・?」グスッ スタスタ… スラッ

男「狐娘ーー! どこだー!?」バキッ! ハア、ハア…

忍び狐9「ぐおっ!」ドサッ

鬼女「はは! その程度か、忍び!」ドゴン! フー、フー……

忍び狐達『うわあーー!!』ドカァン!

忍び狐11「くっ! そこおっ!」ヒュンッ!

狸侍女「ふっ・・・!」ガキン!

忍び狐11「何っ!?」

狸侍女「道を、空けなさい!」ビュッ!

忍び狐11「うっ・・・!」ドゴッ!

犬娘「狐娘ちゃーん! 助けに来たよー!」タッタッタ

狸娘「狐娘さん! 返事をしてください!」タッタッタッタ




狐娘「皆・・・!」ポロ…ポロ…

ヒュッ スタッ

忍び狐7「狐娘様。申し訳ありませんが、ここから離れていただきます」ガシッ

狐娘「! い、いや! 離して!」グイグイ

忍び狐7「! どうか大人しくなさってください・・・!」

狐娘「いやあ! 男さん! 犬娘! 皆ぁ」




男「! 今の声・・・! 狐娘!?」

鬼女「男、あそこだ!」

狸侍女「あの部屋です!」



狐娘「男さん!」



男「狐娘! 今行く!」ダッ!

犬娘「狸娘ちゃん!」タタッ!

狸娘「ええ! 私達も!」タッ!

忍び狐1「行かせるな! ここで食い止めろ!」

忍び狐達『はっ!』ビュビュン!

鬼女「狸侍女! 男達に道を作るぞ!」バッ!

狸侍女「心得ております!」チャキッ!

忍び狐1「くっ! 邪魔を!」

373: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/21(土) 12:33:25.72 ID:6CapAipz0
ー麻呂狐の屋敷・麻呂狐の部屋ー
麻呂狐「あ、あわわわ・・・! 賊が入り込んだでおじゃるか!?」

頭領狐「はっ・・・。我等忍軍の攻撃を潜り抜け、現在は庭中で戦闘が行われております」

麻呂狐「なななんと! もうすぐそこではないか! ええい、何故その前で止められなかったのじゃ! この無能共めが!」ベチン!

頭領狐「っ・・・! 申し訳御座いません」

麻呂狐「えぇい! もうよい! して、賊は何人じゃ!?」

頭領狐「はっ。戦闘に参加していない者も含めて、全員で五人です」

麻呂狐「なぬ!? たかが五人にここまで攻め込まれたでおじゃるか!?」

頭領狐「はっ。個々の戦力が著しく高く、足止めが精一杯です」

ドッゴォン! ウワアァァーー!

麻呂狐「ひいー! 奴らの目的は何じゃ!? 金か!? 金ならいくらでも用意してやる! さっさと消えてたもれ!」ブルブル

頭領狐「いえ。奴等の目的は狐娘様かと・・・」

麻呂狐「なぬ!? どういうことでおじゃるか!? 妖狐は狐娘ちゃんと麻呂の結婚を認めた筈では!?」

頭領狐「は。恐らくは、妖狐様のご指示ではなく、独断での侵攻かと」

麻呂狐「い、一体誰がそのような!」

頭領狐「狐娘様の御友人方でしょう」

麻呂狐「なぬ? では、賊は皆子供か!? ・・・むきー! 子供風情が麻呂と狐娘ちゃんの結婚を邪魔しに来たのでおじゃるか!?」

頭領狐「その通りかと・・・」

麻呂狐「何故じゃ! 麻呂と狐娘ちゃんは相思相愛! 親も認めた結婚でおじゃるぞ! 何故邪魔をするのじゃ!?」

頭領狐「それは・・・」

ヒュッ

忍び狐46「か、頭! 狐娘様が、攫われようとしております! どうか、お力添えを!」

麻呂狐「なぬー!? いくら狐娘ちゃんの友とはいえ、そのような事は許さぬぞ! 頭領狐、麻呂も行く! 警護に着け!」

頭領狐「しかし、相手は子供とはいえ、我等と渡り合う戦力の持ち主です。麻呂狐様が直々に出向かれるのは危険かと・・・」

麻呂狐「黙りゃ! 貴様等忍軍は、子供相手と油断し、知らずの内に力を抜いてしまっているだけでおじゃろう! ならば、実際は大したことないはずでおじゃる! これだから忍び風情は・・・!」

忍び狐46「・・・!」ギリッ!

頭領狐「(落ち着け・・・) では、参りましょう。くれぐれも、私から離れませんように」

麻呂狐「ふん! さっさと行くぞ!」ドスドス

頭領狐「(お前は表の戦闘に戻れ。いいな? 力一杯立ち回れよ?」

忍び狐46「(承知!)」ヒュッ!

麻呂狐「頭領狐! 早くするでおじゃる!」

頭領狐「ただいま・・・」

374: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/21(土) 14:49:00.56 ID:6CapAipz0
ー麻呂狐の屋敷・庭ー
忍び狐16「はっ!」ブン!

男「うあっ!」ズバッ!

鬼女「男! このお!」バキッ!

忍び狐16「ぐえっ!」ドゴン!

狸侍女「男様、ご無事ですか!?」タタッ

男「ぐ、ぅあ・・・。へ、平気です!」ヨロヨロ… ポタ…ポタ…

犬娘「! お、男さん、左目が!」

狸娘「狸侍女! 早く治療を・・・!」

男「いや、後にしてください! 何よりもまず、狐娘を!」

鬼女「しかし・・・!」

狸侍女「確かに、今の状況では、応急処置すらままなりませんね」

犬娘「じゃあ・・・」

男「狐娘を早く助け出してからだよ」

忍び狐47「うおお!」ブン!

狸侍女「はっ・・・! やあっ!」ギン! ブオン!

忍び狐47「う!? おあっ!」ドカッ!

忍び狐達『・・・!』ズラー!

鬼女「・・・くっ! あと少しだというのに!」

犬娘「狐娘ちゃん・・・!」

狸娘「どうしますの? 狸侍女」

狸侍女「・・・やはり、今まで通りの強行突破しか・・・」

377: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/22(日) 01:20:26.38 ID:7QQnpoDw0
狐娘「あ、あぁ・・・! 男さんが!」

忍び狐7「狐娘様、どうかこちらへ・・・!」グイッ!

狐娘「きゃっ!? こ、この! 離しなさい!」ブオッ!

忍び狐7「くっ!? 六尾の力・・・!」タジッ

狐娘「私だって・・・! いつまでもただ黙って泣いている訳じゃ・・・!」ゴゴ…!

麻呂狐「そこまででおじゃるうーー!!」

狐娘「!!?」

忍び狐7「! 麻呂狐様・・・」シュタッ

378: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/22(日) 01:23:30.39 ID:7QQnpoDw0
忍び狐達『・・・!』ズザザッ!

男「! 忍び狐さん達が一斉に膝を着いた・・・。ということは、あの妖(ひと)が・・・」

鬼女「今回の黒幕か!」

狸侍女「間違いありませんね。麻呂狐様です」

麻呂狐「まったく。貴様等忍びは子供を相手に一体何を遊んでいるでおじゃるか! 馬鹿共め!」ケッ!

忍び狐達『っ・・・!』

犬娘「ひどい・・・!」

狸娘「そんな言い方しなくても・・・!」

麻呂狐「ふん。まあよい。それより! そこな者ら。一体何故麻呂と狐娘ちゃんの結婚を邪魔するでおじゃるか?」

鬼女「決まっている! 狐娘を助けたいからだ!」

狸娘「そうですわ! 狐娘さんを返しなさい!」

麻呂狐「おやおや。何を言うでおじゃる? 此度の結婚、双方合意でおじゃるぞ? それを『助ける』とは。言葉の使い方がおかしいでおじゃるぞ? 近頃の若者は、正しい言葉遣いが出来ぬでおじゃるなあ。嘆かわしや・・・」クスクス

犬娘「・・・あの男すごい腹立つんですけど」

狸娘「無茶苦茶同意ですわ・・・」

男「・・・麻呂狐様。今回の結婚、狐娘は嫌がっておりました」

麻呂狐「・・・何じゃと?」

男「今回のご結婚、妖狐さんが借金の形に貴方に嫁がせたのだと、そう伺いました」

狸侍女「狐娘様自らの意志ではないものと存じます」

麻呂狐「ほほう? 借金の形の末の婚姻故、狐娘ちゃんの意志ではないと?」

鬼女「そうだ! 貴様が無理矢理に組んだ縁談だろう!」

麻呂狐「ホッホッホ・・・。なるほどなるほど・・・」

男「麻呂狐様・・・?」

麻呂狐「ホホ。・・・黙らぬか! この下賤の輩が!」ビリビリ!

男「!」

犬娘「ひっ!?」

379: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/22(日) 01:25:03.71 ID:7QQnpoDw0
麻呂狐「此度の結婚が麻呂からの一方的なものであると? 狐娘ちゃんの意志ではないと? 馬鹿を申すのも大概にするでおじゃる!」

狸娘「こ、この無駄な自信は一体どこから・・・!」

麻呂狐「そもそも! 今回の縁談は、借金を助けてやった麻呂に是非とも礼がしたいと、妖狐から申し込んできたもの! それを麻呂が受けてやったのでおじゃる! それを破談にするようなことがあれば、狐娘ちゃんだけでなく、妖狐の店も、名声的な致命傷を得るでおじゃろうなあ」

狸侍女「なるほど。用意周到ですね」

麻呂狐「ホホホ。ほれ、狐娘ちゃん? あの馬鹿共にハッキリと言うてやるでおじゃる。『私は麻呂狐様を心から愛している。助けなど余計なお世話だ』と、の」

狐娘「! そ、そんなこと・・・!」

麻呂狐「んんー? どうしたでおじゃるか? まさか、店の運命が掛かっているというのに、麻呂との結婚を嫌がっている訳ではあるまいの?」

狐娘「誰がお前なんかと・・・!」

麻呂狐「・・・おや、おかしいのう。麻呂には今、『この者達を殺せ』と聞こえたでおじゃるぞ?」

狐娘「な・・・っ!?」

鬼女「卑怯な・・・!!」

狸娘「この男は、どこまでも腐っていますわね・・・!」

犬娘「ーーー・・・っ!!」ガルル…!

狸侍女「この男・・・!」

男「麻呂狐様!?」

麻呂狐「うぅーむ。麻呂としては心苦しい故、手荒な真似はしたくないんじゃがの。妻となる者が言うのであれば仕方があるまい。忍軍、構えよ」

忍び狐達『・・・はっ』ジャキジャキジャキン!! ズラッ!

男「くっ! これは流石に・・・!」

鬼女「防ぎ切れんな!」

麻呂狐「ホホ。ではさらばじゃ、妻の友人達よ・・・」スッ…

380: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/22(日) 01:56:24.53 ID:7QQnpoDw0
狐娘「やめてえー!」

麻呂狐「ホホ。如何した? 我が『妻』よ」

狐娘「わた・・・は・・・麻呂、・・・を愛・・・て・・・」

麻呂狐「聞こえぬの」スッ

ヒュッ! グサッ!

男「!? うあぁ!」ドサッ!

狐娘「!? 男さん!」

麻呂狐「ホッホ。すまぬすまぬ。声が小さかった故、耳を済まそうと手を動かしたら、忍びが勘違いしてしもうたわ」

男「うぁあ・・・!」ドクドク…!

狸侍女「男様! しっかり!」バッ! テキパキ

鬼女「く! 何と汚い手を!」ギリッ!

犬娘「お、男さぁん!」

狸娘「大丈夫、左肩に刺さりはしましたが、致命傷ではありませんわ!」

狐娘「あぁ・・・! 男さん・・・!」

麻呂狐「ホホホ。さて、また耳を済まさねばならぬかな? こやつらは頭が悪い故、また勘違いをするやも知れぬなあ? 怖い怖い」ホホホ

狐娘「・・・わ、私、狐娘は・・・!」

麻呂狐「ふむ」

狐娘「ま、麻呂狐様を・・・心から、あ、あ・・・!」

麻呂狐「ホホ! 照れておるのか!? そのようなところも、また愛いものじゃのう!」

狐娘「あ、あい・・・あいし・・・」

男「・・・止めろ、狐娘・・・! 例え嘘でも・・・、そんな男の・・・。言う通りにする必要なんか・・・ない!」ヨロ…ヨロ…

狐娘「男さん・・・!?」

麻呂狐「・・・何じゃ? 小僧、何か言うたか?」

男「・・・狐娘。大丈夫だよ・・・。ごめん、心配掛けてるね・・・」

狐娘「男、さん・・・?」

男「ごめんね。俺、人間だから。男なのに、弱くてみっともないところ見せてるね・・・」ゲホッ! ゲホッ!

鬼女「! 男、余り無理は・・・。 ?」クイッ

犬娘「・・・」フルフル

男「でも、大丈夫だから・・・。必ず、俺達が、君をそこから助けるから・・・!」ヨロ… ポタ、ポタ…

麻呂狐「ふん! 満身創痍のそなたに何が出来ると!?」

男「大丈夫。心配いらない・・・。そんな奴の言いなりになることなんかないんだ・・・」

狐娘「おとこ、さ・・・」ポロポロ

男「・・・そこで待っていて・・・。必ず、助けるから・・・!!」バッ…!

381: 以下、新鯖からお送りいたします 2013/09/22(日) 01:57:20.62 ID:7QQnpoDw0
麻呂狐「むきぃーーっ! さっきから麻呂を無視しよって! えぇい構わぬ! 忍軍、あの不愉快な男を殺せ!」

忍び狐達『はっ!』ビュビュン!

狐娘「! お、男さん、危な・・・!!」

男「・・・!」ハア、ハア…

ガキキキキキン! トスッ トストストストス

麻呂狐「なぬ!?」

男「・・・ありがとうございます。狸侍女さん、鬼女さん」

狸侍女「いえ。この位は余裕です。侍女ですので」

鬼女「開戦直後に言ったろう? 何人いようが敵ではないと」

麻呂狐「くぅーっ! もう一度じゃ! 討て! 討つのじゃ!」

忍び狐達『はっ・・・!』ザザザッ…!

鬼女「! ここは私達が抑える!」バッ!

狸侍女「男様。お嬢様と犬娘様を連れ狐娘様の元へ!」ヒュンヒュンヒュンヒュン…パシッ!

男「・・・はい!」ダッ!

犬娘「男さん! 私が付いてますからね!」

狸娘「私もいますわ!」

男「うん。ありがとう・・・!」

麻呂狐「何をしておる! 早く討たんか!」

忍び狐達『はっ!』ビュビュン! ビュビュビュン!

鬼女「さて、狸侍女、やるぞ!」バッ!

狸侍女「はい。・・・男様、狐娘様はお願いいたします! はあっ!」ダンッ!

384: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/22(日) 09:38:25.35 ID:7QQnpoDw0
ワアァァァー……!! ガキィン! ギン! バキッ!

男「ふっ、ふっ・・・。狐娘・・・!」タタタタタ

麻呂狐「むぅ!? 頭領狐、こちらに向かってくるあの無礼な男を仕留めるでおじゃる!」

頭領狐「・・・御意」ズイッ

犬娘「頭領、ってことは・・・」タッタッタ

狸娘「この忍軍において最強、ということですわね・・・!」タッタッタ

麻呂狐「ホホ。麻呂と狐娘ちゃんは祝言の準備に入る故、ここで片付けておくでおじゃるぞ」スタスタ ガシッ

狐娘「! や、嫌! 離して!」ジタバタ

麻呂狐「えぇい! 暴れるでないわ!」バシッ!

狐娘「あっ・・・!」ヨロ…

男「!」ギリッ…

麻呂狐「全く・・・。ほれ、早ようこちらに来るでおじゃる!」ガシッ ズルズル

狐娘「痛い! か、髪、放して・・・!」ズリズリ

麻呂狐「ホホホ。素直に従わぬお主が悪て(おじゃる」

男「・・・」

犬娘「ひどい・・・!」

狸娘「何て事を!」

頭領狐「麻呂狐様、お早く奥へ・・・」

麻呂狐「分かっておる。ほれ、行くぞ、狐娘ちゃん」ズルズル

狐娘「痛あっ・・・! 嫌! 男さん! 皆あ!」

犬娘「狐娘ちゃん!」

狸娘「お待ちなさいな!」

頭領狐「憤っているところ悪いが、ここは通さんぞ!」バッ! ヒュンッ!

犬娘「消えた!?」

385: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/22(日) 09:40:35.73 ID:7QQnpoDw0
狸娘「犬娘さん、匂いで追えませんの!?」

犬娘「だめ、速すぎて・・・!」

男「・・・」

頭領狐「(まずは男、お前だ)」シュンッ! ブオッ……

犬娘「! 男さん、うし・・・」

男「!!」ボッ…!

バキッ!

頭領狐「ぐおっ!?」ズザザー…

犬娘「お、男さんすごい!」

狸娘「よく相手の居場所が・・・!」

男「・・・て・・・さぃ・・・」ボソッ

犬娘「男、さん・・・?」

頭領狐「ふん。まぐれで当てたか? だが、次はこうは行かんぞ・・・!」ヒュッ!

頭領狐「(間に狸の嬢ちゃんを挟んでの一撃! 気取ることすらできまい!」

男「ふっ・・・!」ゴッ!

頭領狐「なっ!?」バキッ! ドサッ

男「・・・そこを退いてください!!」ビュッ! ゴッ!

ドゴン!

頭領狐「・・・っ! ごはっ・・・!!」ドサッ

男「はあ、はあ・・・」

犬娘「お、男さんすごいですよ!」

狸娘「まさか、敵の頭領を倒すなんて・・・!」

男「・・・いや。手を抜いて貰っただけだよ・・・。じゃなきゃ、勝てなかった・・・」

犬娘「え?」

狸娘「それは・・・」

頭領狐「・・・いや。君は確かに強い。本気で戦っていたとしても、今の君には負けたかも知れんな・・・」スッ パチン!

ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー

ガシャン! ガチャン! ガチャガチャ…

鬼女「はあっ、はあっ・・・こ、これは?」

狸侍女「ぶ、武器を捨てた?」ハア、ハア…

忍び狐16「・・・数々の非礼、失礼いたしました」ザッ

忍び狐1「我等忍軍、頭領を失ったが故、敗北に御座います」ザッ

鬼女「では・・・」

狸侍女「はい。恐らく、男様達が」

忍び狐41「我等は敗者。もはや勝者たるあなた方に手は出せません」

忍び狐2「こんな事、言えた立場じゃないけど・・・。狐娘様を、救ってください」

鬼女「ああ!」

狸侍女「必ず・・・!」

386: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/22(日) 09:41:11.76 ID:7QQnpoDw0
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

頭領狐「・・・これで、我等忍軍は全滅。君達を阻む者はもう、いないだろう。ここから先は、彼女たちを待たずとも、君達だけで行けるはずだ」

男「あなた達は・・・」

頭領狐「すまない。私達は忍びなのだ。主に仕え、従うことこそ忍びの至上。例え、それが今回のようなことであってもな・・・」

犬娘「でも・・・」

狸娘「あなた方は、ちゃんと過ちに気付けましたわ・・・」

頭領狐「やめてくれ・・・。惨めな気持ちになる・・・」

男「・・・犬娘、狸娘。この妖(ひと)の治療をお願い」

犬娘「え?」

狸娘「は、はい。分かりましたわ」

男「俺は、あの男を一発ぶん殴ってくるから」

頭領狐「何故、私に治療を・・・?」

男「だって、あなたは本当はいい妖(ひと)だったから。・・・あなた達なら、忍び以外の生き方だって、きっと出来ますよ」ダッ!

犬娘「と、取り敢えず、ここで治療を・・・」

狸娘「そうですわね。狸侍女と鬼女さんも追い付くでしょうし」

犬娘「・・・一応縛っておく?」

狸娘「どうしましょうか」

二人『ジトー・・・』

頭領狐「ふっ。君達のような反応が当たり前だというのに。彼は随分と甘いな・・・。私を『いい妖(ひと)』などと・・・」

犬娘「・・・まあ、確かにそうですけど・・・。あ、ちょっと服を脱がせますよ?」スルスル

狸娘「そこが良いところでもあるんですわ」ガサゴソ

頭領狐「成る程。・・・良い男だな、彼は・・・」ホウ…

犬娘「(! ま、まさか遂に男の妖(ひと)まで!?)」

狸娘「(お、男様、何と恐ろしい!)」

頭領狐「・・・ん? どうかしたのか?」

犬娘「え!? あ、ああ、いえいえ! 何でも・・・って、あれ?」スルス…ピタッ

狸娘「? 犬娘さん? どうしまし、た、の・・・」

頭領狐「な、何だ? 私の胸をじっと見て・・・」

犬娘「今まで目しか出してなかったから分からなかったけど・・・」

狸娘「あなた・・・、女性でしたの?」

頭領狐「あ、ああ。忍びに性別は関係ないが、一応私は女だ」

犬娘「!!」ガーン!

狸娘「!!」ガーン!

頭領狐「な、何ださっきから!?」

犬娘「うぅ・・・。こうなったら・・・」

狸娘「このまま以後関わる事の無いように祈るしかありませんわ・・・」

頭領狐「??」キョトン

390: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/23(月) 10:07:19.64 ID:b0rZO/aI0
ー麻呂狐の屋敷・奥廊下ー
麻呂狐「全く・・・! どいつもこいつも麻呂を馬鹿にしくさりよってからに・・・!」

狐娘「い、たい・・・!」ズルズル

麻呂狐「くふふ。狐娘ちゃん、安心するでおじゃる。祝言を挙げて、すぐに麻呂に逆らえぬよう、躾てやる故、の。そうすれば、痛みさえも悦楽となり、麻呂に刃向かおうなどと思うことも無くなるでおじゃる」ホホホ

狐娘「!? い、嫌よ! 離して!」ジタバタ

麻呂狐「全く・・・。暴れるでないわ小娘ぇ!」バキッ!

狐娘「きゃっ! あぐっ・・・!」ズザー

麻呂狐「ふぅ、ふぅ・・・。いいでおじゃるか? お主はもはや逃れること叶わぬ身。大人しく麻呂と結婚するでおじゃる・・・!」

狐娘「うぅ・・・。そんなの・・・!」ポロポロ

麻呂狐「全く。何をそんなに嫌がっているでおじゃるか? 地位も、金もあるこの麻呂に嫁ぐなぞ、他の女が見れば嫉妬に荒れ狂う程の栄誉であるぞ?」

狐娘「私は・・・! そんな栄誉なんかいらない!」

麻呂狐「・・・照れ隠しにしては少し度が過ぎておるの。少々早いが、ここらで多少の躾が必要かの?」

狐娘「うっ・・・!(どうして!? 何でここだと力が出せないの!?)」

麻呂狐「ふふ、助けは来ないでおじゃる。まあ、しかしすぐに会えるでおじゃるが」

狐娘「え・・・?」

麻呂狐「くふふ・・・。まあ、会えるといっても、『首』だけ、じゃがの?」ホーッホッホッ!

狐娘「!!?」ゾッ!

麻呂狐「ホホ。もうすぐ頭領狐が首を持ってくるでおじゃろう。そうしたら、その首も並べて祝言じゃ」

狐娘「い、いや・・・。いや・・・!!」フルフル

麻呂狐「ホホ。あの男の首は特に可愛がってやらねばの」

狐娘「え!?」

麻呂狐「狐娘ちゃんを誑かすあの男。首だけとなっても麻呂は許さぬ!」

狐娘「そん、な・・・!」

ダダダダダ……

麻呂狐「む? ホホ、早速首が届いたようじゃの?」

狐娘「そんな・・・!?」

ダダダダダ……!!

麻呂狐「ホホ、最初は一体誰の首が・・・。!?」

男「狐娘えぇぇーー!!」ダダダダダ!!

狐娘「男さん!!」

麻呂狐「なぬーー!?」

391: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/23(月) 12:25:11.14 ID:0q2KY8iO0
麻呂狐「な、なな何故貴様が!? まさか忍び連中を倒したとでもいうでおじゃるか!?」

男「忍び部隊は全員俺達がやっつけた! あとはお前だけだ・・・!」ハア、ハア…

麻呂狐「そ、そんな! そんなはずが!」

男「・・・大人しく狐娘を返せ」ハア、ハア…

麻呂狐「ひい!? く、来るな! 狐娘ちゃんがどうなってもいいでおじゃるか!?」グイッ! ピタッ

狐娘「あっ・・・!」

男「くっ・・・!」

麻呂狐「ホホ! 麻呂とて護身用に刃物の一つくらい持っているでおじゃる!」

狐娘「お、男さ・・・」

男「・・・大丈夫。助けるよ、必ず」

狐娘「・・・はいっ!」

麻呂狐「ふ、ふふ。この状況で助けると!? 馬鹿者め、どう考えても麻呂が有利でおじゃる!」

男「麻呂狐。最後の忠告だ。大人しく狐娘を返せ」

麻呂狐「黙りゃ! 狐娘ちゃんを誑かす下衆が! 貴様こそとっとと消えるでおじゃる!」

392: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/23(月) 12:25:42.21 ID:0q2KY8iO0
男「・・・そうか。残念だ」スタスタ

麻呂狐「ち、近寄るな! この短刀で狐娘ちゃんを傷付けたいでおじゃるか!?」

ヒュッ!

狸侍女「背後から失礼いたします。狐娘様を返していただきます」ガシッ バッ!

狐娘「きゃっ!? た、狸侍女さん!」

狸侍女「はい。お待たせして申し訳ありませんでした」

麻呂狐「なあっ!? こ、この無礼者! 何を・・・!!」

男「・・・!」ダンッ!

麻呂狐「ひえっ!?」

男「一度頭を・・・冷やしてこい!」ビュッ…ドゴオ!

麻呂狐「ぶぇろばらぶへばっ!?」バキイッ! ドッ ズザザザー!

男「・・・っ! はあぁぁーー!」ヘナヘナ

麻呂狐「あが、か・・・」ピクピク

狐娘「男さん!」タタッ

狸侍女「男様、先程の怪我の手当なども行います。少々じっとしていてください」

男「あはは。すいません」

狐娘「男さん・・・! 本当にありがとうございます・・・!」ギュウ…!

男「あはは。狐娘、間に合ってよかったよ」ナデナデ

狐娘「! お、男、さん・・・」グスッ 

男「あ・・・。頬が、少し腫れてる。叩かれたりしたの・・・?」

狐娘「え、ええ・・・」

男「・・・ごめんね。怖かっただろうに・・・」ナデナデ

狐娘「いいの! ・・・いいんです。こうして皆で助けに来てくれて、本当に嬉しいです・・・。それに、男さん、目が・・・」

男「あー。ざっくりやられちゃったからね・・・」

狐娘「狸侍女さん、治りますか?」

狸侍女「・・・いえ。申し訳ありませんが、肩の刺し傷や他の傷は、痕が残るとは思いますが、何とか治ります。しかし、流石に目は、もう・・・」

狐娘「そんな・・・」

男「大丈夫。気にしないで。片目が見えれば充分だよ」

狐娘「でも・・・」

男「大丈夫。俺の目一つで狐娘が助けられたなら、安いもんだよ」ニコッ ポンポン

狐娘「男さん・・・///」

狸侍女「・・・そ、そろそろ鬼女様達が来る頃です。帰り支度を」

男「そうですね」

狐娘「は、はい!」

394: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/23(月) 17:42:45.22 ID:/VS+06Wy0
ー麿狐の屋敷・裏口ー
鬼女「・・・よし、誰もいない。脱出するぞ」

犬娘「はい!」

狸娘「や、やっと帰れますのね・・・」

狸侍女「はい。忍びの皆様は庭の整備や、主の治療で、他に手が回らない、だそうです」

男「あはは。ありがたいですね」

狐娘「あ、あの!」

鬼女「ん? どうした、狐娘」

狐娘「皆、本当にありがとうございました!」ガバッ!

犬娘「狐娘ちゃん・・・」

狸娘「そんな、私達は当然のことをしたまでですわ」

狐娘「いいえ。助けに来てくれて、本当に嬉しかった。ありがとう・・・!」

鬼女「はは! 気にするな!」ポンポン

狸侍女「はい。皆、自分の意志でしたことです」

男「うん。そうだよ、狐娘。無事に助けられて良かったよ」

狐娘「男さん。あなたは、片目まで失ったのに・・・」

男「あはは、大丈夫だよ。まあ、流石に元の世界に戻ったら皆に詰問されるかもしれないけど」

犬娘「! そういえば、紫苑祭も明日で最後・・・」

狸娘「男様も、帰ってしまわれるかもしれないのですわね・・・」

男「うん。犬父さんが変える方法を見つけていてくれるといいけど」

鬼女「そう、か・・・。もう帰ってしまうのか・・・」

狸侍女「狐娘様は、どうなさるのですか?」

男「そうだよ。これから、どうするの? 妖狐さんともう一度しっかり話した方が・・・」

狐娘「・・・いえ。私はもう、あの家には戻らないわ」

犬娘「え!? で、でも・・・」

狸娘「それは・・・」

狐娘「いいの。今回の縁談が持ち掛けられた時から、ずっと考えていたのよ。あの家を出ようって」

狸侍女「しかし、家を出てどうするのですか?」

狐娘「そうね。犬娘もいる秋之村にでも行って、暮らすわ」

鬼女「し、しかし、仕事などもこなさねば、生活できまい?」

狐娘「そう、ね・・・。まあ、ある程度の貯金はあらから、当面はそれで凌ぎながら、仕事も探すわ」

男「そんな大雑把な・・・」

狸娘「そ、それならお祖父様に頼んで、何か職に就けるように取り計らいましょうか?」

395: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/23(月) 18:13:35.53 ID:/VS+06Wy0
狐娘「それはありがたいけど、大丈夫よ。何とかするわ」

狸娘「でも・・・」

狸侍女「お嬢様。とりあえずここを去った方がよろしいかと」

男「そうですね。皆、早く行こう」

犬娘「はい!」

鬼女「でも、どうする? どこへ行くのだ?」

狐娘「取り敢えず、秋之村へ行きましょう。犬父さんや犬母さん、大狸様もいらっしゃるはずよ」

狸侍女「そうですね。主もいらっしゃるのでしたら、秋之村へ行った方がよろしいですね。男様の怪我も、応急処置しかしておりませんし・・・」

狸娘「では、早速秋之村へ!」

396: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/24(火) 00:43:27.46 ID:ZVazL++i0
ー秋之村行きの船・船上ー
男「・・・」ボー

男「っ! つつ・・・。やっぱり痛むな・・・」ズキズキ

狐娘「・・・男さん」スタスタ

男「え? あ、狐娘。どうしたの? 皆と一緒に船室で休んでたんじゃ・・・」

狐娘「いえ。少し、お話したくて」

男「そっか。まあ、あんな目に遭った直後だし、休みたくても休めないか」

狐娘「え、ええ。まあ、そんな感じ・・・」

男「うん、そうだよね」

ザザァ…ン……

狐娘「・・・あの、男さん?」

男「んー? 何ー・・・?」

狐娘「その、あの・・・。目、やっぱり痛むわよね?」

男「あー・・・、うん。まあね」

狐娘「・・・本当に、ごめんなさい。謝って済むことじゃないけど、それでも・・・」

男「いいって。この位、何ともないからさ」クシャクシャ

狐娘「あ・・・///」

男「ん? ああ、ごめん、つい犬娘や狸娘と同じ感じで」パッ

狐娘「あ!」

男「ん?」

狐娘「・・・もう少し、撫でてくれる・・・?」

男「ああ。構わないけど・・・」ナデ…ナデ…

狐娘「んっ・・・。ふふっ・・・///」クスクス

男「あれ? くすぐったかった?」

狐娘「ええ、少し。でも、とても落ち着くわ・・・」

男「・・・そっか。なら良かったよ」

ザザァ…ン…

狐娘「男さん。私、これからは一人で生きていこうと思ってるの」

男「うん。そう言ってたね」

狐娘「これからは、自分の力で、生きていく。言うほど簡単な話じゃ無いっていうのも分かってるけど、やるしかないの」

男「うん・・・」

狐娘「さっきは、狸娘にも『自分でやる』、なんて言っちゃったし・・・。・・・でもね。でも、やっぱり怖いの。今まで父上の庇護で生きてきた小娘ですもの。いきなりの独り立ちなんて、無謀だとふ自分でも分かってる・・・」

男「狐娘・・・」

狐娘「ふふ。おかしいわよね。男さんなんて全く知りもしない世界に放り込まれても、モノともせずに頑張ってきたのに、この世界に生きていた私が怖じ気つくなんて・・・」

男「いや、しょうがないと思うよ。誰だって、独り立ちは怖いものだよ、きっと。俺だってそうだったし」

397: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/24(火) 00:46:16.91 ID:ZVazL++i0
狐娘「そうね。男さんは、それを乗り越えてここまで来た。それだけじゃない。忍びの軍隊が相手でも、私を助けに来てくれた・・・。目に、こんな怪我をしてまで・・・」ソッ

男「そ、そんな大したことじゃないよ///」

狐娘「いいえ。私には、その勇気が羨ましい・・・」 

男「狐娘・・・?」

狐娘「お、男さん。・・・わ、私に、勇気をくれないかしら・・・!///」

男「え? ああ、俺ので良かったらいくらでも」

狐娘「ほ、本当・・・?///」

男「! あ、ああ。もちろん。で、でもどうしたらいいの? また、頭を撫でればいいのかな?」

狐娘「そ、その。この手の中を覗いてくれるかしら?」スッ

男「ての中? その、水を掬うような形をした手のひら、ってこと?」

狐娘「ええ・・・」

男「? 覗くって、覗き込めばいいんだよね?」

狐娘「そうよ・・・」

男「?? まあ、いいけど・・・んむっ!?」ズイッ チュッ…

狐娘「ん、ふ・・・(犬娘、狸娘、狸侍女さん、鬼女さん。ごめんなさいね・・・)」チュク…チュ…

男「!? !!? ぷはっ! き、ききき狐娘!? ななな・・・!?///」アタフタ

狐娘「・・・ふふ。言ったでしょう? 勇気をください、って///」

男「いや、でも、その、えーー?///」

狐娘「ふふ。これで、きっと大丈夫・・・。私は、きっとやっていけるわ」

男「あ、あははー・・・。?」

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

犬娘「・・・!!」ガーン!

狸侍女「・・・」ハァー……

犬娘「ち、ちょっと風に当たろうと外に出たら・・・!」ワナワナ

狸侍女「とんでもない場面に出くわしてしまいましたね・・・」

犬娘「うぅ・・・。狐娘ちゃんは完全に傍観者だと思っていたのに・・・」シクシク

狸侍女「まあまあ。今更一人増えたところで何も変わりませんよ」

犬娘「そうでしょうか・・・」ズーン…

狸侍女「(男様と接吻。心の底から羨ましいです・・・。次は、何とかして私も・・・!///)」ゴゴゴ…!

犬娘「た、狸侍女さんからとんでもない圧力が・・・!?」ビクッ!

401: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/24(火) 14:57:23.78 ID:ZVazL++i0
ー秋之村・港ー
狸娘「着きましたわね」

鬼女「ここが秋之村か。春陽村と似たような気候で過ごしやすいな」

男「ここに来たのが四日前・・・。たったそれだけなのに、何だか随分と長く過ごしたような気がするなあ」

犬娘「そういえば、まだそれだけしか経ってないんですね・・・」

狐娘「そうね」

狸侍女「今日を含めて五日間ですか・・・。(たったそれだけで、これだけの女性に好意を持たれるとは・・・。男様、恐るべしですね)」

男「っ! ぅあ・・・?」ヨロ…

犬娘「うわ!? お、男さん、傷が!? 早く男さんの治療に行きましょう!」

鬼女「わ、私が運ぼう! 行くぞ!」

狸娘「お、男様、しっかり!!」

402: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/24(火) 15:53:19.70 ID:ZVazL++i0
ー秋之村・診療所ー
犬医者「ほっほっほ、終わったぞい。まあ、まだ麻酔は抜けんから、暫く目は覚めんがの」ガラガラ

犬娘「先生!」

狸娘「お、男様の傷は!?」

犬医者「ほっほ。肩の刺し傷も、他の細かい切り傷も問題ないわい。化膿もしておらんかったしの。的確な応急処置のおかげじゃの」

狐娘「良かった・・・」

犬医者「ただ、傷痕は残る。消えることは無いわい」

狸侍女「そうですか・・・」

狐娘「そ、それで、目は・・・!?」

鬼女「目は、治ったのか!?」

犬医者「・・・いや。左目はどうにもならん。処置はしたが、眼球を半ばまで傷付けられておる。もうどうにもならんわ」

狐娘「・・・そう、ですか・・・」

鬼女「やはり、駄目だったか・・・」

犬医者「すまんね、助けられず・・・」

狸侍女「いえ。治療、有り難う御座いました」

犬娘「ありがとうございました・・・」

犬医者「それじゃあ、ワシは仕事があるでな」ヒョコヒョコ





狸娘「・・・取り敢えず、お見舞いにいきましょう」

狸侍女「そうですね」ガラガラ

犬娘「あ、私はお父さんとお母さんと大狸さんのお爺さんを呼んできますね」タッタッタ…

鬼女「ああ、すまない。頼む」

403: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/24(火) 16:41:25.13 ID:wlFzpbkZ0
男「Zzz… Zzz…」

鬼女「あはは・・・。気持ちよさそうに寝てるな」

狸娘「そうですわね」

狸侍女「(男様の、寝顔・・・///)」

狐娘「あ・・・」

狸娘「やっぱり、目の傷が痛々しいですわね・・・」

狐娘「もう、見えないのよね・・・。私を、助けに来たせいで・・・」スッ ポロポロ

鬼女「き、気にするな狐娘! 男は、傷の一つや二つ、背負って生きるものだ!」

狸侍女「そ、そうです。今の男様も、変わらず格好良くていらっしゃいます」

狸娘「ちょ、ふ、二人とも・・・!」

???「ふふ。二人の言う通りよ。男の子は、傷を持ってる方が格好いいし、強くなるのよ」ガラガラ

???「ワッハッハ! そうじゃ! 一段と男らしくなったのう!」

???「とにかく、無事に帰ってこれて良かったよ」

鬼女「え?」

狐娘「あ・・・」

犬娘「連れて来ました!」

犬父「やあ、狐娘ちゃん。久し振りだね」

犬母「うふふ。美人になって」

狐娘「犬父さん! 犬母さん!」

鬼女「おお。こちらが・・・」

大狸「ワッハッハ! 狸娘、狸侍女! 随分と楽しそうな祭りを過ごしておるのう!」

狸娘「お祖父様!」

狸侍女「主・・・」

鬼女「! お、おお大狸様!?」キラーン!

404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/24(火) 22:02:19.59 ID:ZVazL++i0
大狸「む? おお、鬼族の娘っ子か」

鬼女「は、はい! 鬼女と申します!」ザッ!

大狸「よいよい。堅苦しいのは苦手じゃ」

鬼女「は、はい・・・!」

狸娘「相変わらずですのね、鬼女さん・・・」

狸侍女「まあ、すぐには変わらないでしょう」

犬娘「そ、それより、父さん、母さん・・・」

犬父「うん。道中話は聞いていたけど・・・」

犬母「結構大変だったみたいね」

大狸「ワッハッハ! 男も立派な傷をこさえたもんじゃのう!」

狐娘「・・・すいません。私のせいなんです」

大狸「気にするな! お前さんのせいじゃないわい」

狐娘「でも・・・」

大狸「男が自分で選んだ末の結果じゃ。それは男自身の責任であり、他人からの同情など、言ってしまえば邪魔なだけじゃ」

狐娘「・・・」

男「そうだよ、狐娘。気にしないで・・・」

狐娘「え!」

犬娘「お、男さん!」

狸侍女「目が覚めたのですね・・・!」

鬼女「良かった・・・!」

狸娘「ど、どこか具合の悪いところはありますか?」

男「いや、大丈夫だよ。麻酔でちょっとボーッとするくらい・・・」

犬父「やあ男君。四日振りといったところかな」

犬母「うふふ。ちょっと見なかった間に、立派になって」

男「犬父さん。犬母さん・・・」

大狸「ワッハッハ! 忍びを相手によくその程度の怪我で帰って来たのう!」

男「大狸さんまで。何だか、随分と懐かしく感じます・・・」

405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/26(木) 09:49:41.96 ID:3vid3ZVh0
大狸「ワッハッハ! 何をしんみりとしておる!」

男「い、いえ・・・」

犬父「それより、男君。いくつか話があるんだ」

男「はい。聞かせてください」

犬娘「あ、えっと・・・」

狸娘「私達は・・・」

犬母「あら。一緒に聞いても平気よ? ねえ、あなた?」

犬父「ああ。勿論だ」

大狸「まあ、そんな難しい話しでもないしのう」

鬼女「そ、そうなのですか?」

狸侍女「では、このまま聞かせて頂きます」

406: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/26(木) 22:03:29.54 ID:3vid3ZVh0
大狸「うむ。では、簡単に説明すると・・・」

犬父「男君。あなたは元の世界に帰ることが出来ます」

男「ほ、本当ですか?」

犬母「嘘を言っても仕方ないでしょう」

男「そ、それはそうですけど・・・」

大狸「あの日男が現れたすすき野原の地点を捜索していたらのう。そこの座標に、何と言えばいいのか・・・」

犬父「空間に、穴が開いていたんだよ」

犬娘「穴?」

狸娘「それは・・・?」

犬父「言葉通りの意味だよ」

狸侍女「では、空中にぽっかりと穴が開いていて・・・」

鬼女「男はそこから来たと?」

犬母「まあ、そういうことね」

大狸「大方、男が寝返りをうった時にでも、転がり落ちてきたんじゃろう」ワッハッハ!

狐娘「でも、どうして人間の世界に繋がる穴が?」

狸侍女「今までに前例はあったのですか?」

犬父「多分、紫苑祭の時期には毎回開いていたんだと思う。でも、確認されたのは回が初めてだ」

大狸「それに、もう二度と無いやもしれん」

男「え?」

狐娘「に、二度と無いって・・・」

407: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/26(木) 22:07:36.34 ID:3vid3ZVh0
犬父「まあ聞いてくれ。今回の件は、紫苑祭の時期に高まる月の力が原因だと僕は考えている」

大狸「つまり、毎年この時期に高まる月の力、まあ妖力が結界内に満ち、この世界が破裂しないように、この世界のどこかに小さな穴を開けて、少しずつ容量を超えた分の妖力をにがしていたんじゃろうて」

犬母「妖力が多くなりすぎて結界が壊れると、人間の世界と隔てている壁がなくなってしまうでしょう?」

男「もしそうなったら・・・」

犬父「うん。また、人間と妖族との間で戦争が起きるかも知れない」

狐娘「そんなことに・・・」

鬼女「結界による、一種の自衛機能みたいなものか・・・」

大狸「そうなるの」

犬父「まあ、あくまで仮説なんだけどね」

狸娘「そ、それで、もう二度と無い、というのは?」

犬父「その件に関しても、仮説になるんだけど・・・」

大狸「恐らく、結界に開く穴の位置は決まっておらん」

犬娘「つまり?」

犬父「また来年開く穴が、今年と同じように男君に繋がっているとは限らない」

犬母「穴が開く位置の候補は、この世界の全域になるの」

大狸「今年は秋之村のすすき野原のあの位置じゃったが、来年は農業区かも知れん」

男「その理論で言えば、秋之村ですら無い可能性も充分にあると?」

犬父「その通りだ」

犬母「今まで確認されなかったのも、この世界の、例えば魔海の中や、海の上、空の上とか、色んな場所に穴が開いたからだと思うわ」

狸侍女「それでは、今回の件は奇跡としか言いようがありませんね」

大狸「全くよ! 男、お主は本当に面白いのう!」

男「あ、あはは・・・」

犬娘「それで、男さんが帰れるっていうのは・・・」

犬父「うん。恐らく穴は、この祭りの期間中はずっと開いていると思われる」

犬母「だから、明日の夜までに穴を潜れば、そのまま男君は元いた世界に帰ることが出来るわ」

狸娘「もうすぐではありませんか!」

狐娘「明日が最終日ですものね・・・」

犬娘「そ、そんなあ・・・」

男「明日の、夜・・・」

大狸「まあ、少し酷な言い方をすれば、本来儂らと関わることなど無かったはずじゃ。今回の件があくまで異例の事態。夢か何かだと思えば、元の暮らしに戻るだけで不都合はあるまいよ」

男「そう、ですね・・・」

狸侍女「男様・・・」

鬼女「男・・・」

犬父「もちろん、もしもこの世界に留まりたいと言うのなら、僕たちが協力しよう」

犬母「うふふ。私達の家にそのまま暮らして貰っても全然構わないんだからね? そうだ、いっそ犬娘の婿に・・・んむっ?」

犬娘「おかーさーーん!?///」ガバッ!

大狸「ワッハッハ! 儂の所に来ても構わんしのう! 狸娘と狸侍女、まとめて娶ってもいいじゃろうて!」

狸娘「お祖父様! こんな所で何を!///」

狸侍女「(男様と夫婦に・・・///)」ポッ///

狐娘「な、なら、私もこれから一人で暮らすのは寂しいから、男さんに一緒にいて欲しい、です・・・///」

鬼女「む。お、男は私がめんどうを見てやろう! 春陽村では私は鬼族の時期当主として、一族を繁栄させねばならん! 私の夫になって、私をさ、支えて欲しい・・・!///」

408: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/26(木) 22:09:07.13 ID:3vid3ZVh0
大狸「おお! 男、お主随分とモテるのう!」

犬父「これはこれは・・・」

犬母「うふふ。もう皆まとめてお嫁さんになっちゃえばいいんじゃないかしら?」

女衆『ええ!?///』

大狸「それはいい! どうじゃ男! ・・・男?」

男「・・・・・・」

犬母「男君?」

男「・・・え? あ、はい? す、すいません、ちょっと考え込んでて。 何ですか?」

女衆『・・・』

犬父「・・・いや、何でもないよ。取り敢えず、明日の夕方までに、帰るかどうかを決めておいてくれ」

犬母「今いきなり決めろ、って言っても無理でしょうしね」

大狸「まあ、怪我もある。今日の所は、ゆっくり休め」

男「は、はい」

犬父「男君。もし君が、『残る』という判断を下した場合は、僕たちが全力で君を支援する。それだけは覚えておいてくれ」

犬母「ふふ。男君可愛いですもの。応援したくなっちゃうわ」

大狸「無論、儂も協力するでな!」

男「皆さん・・・。ありがとうございます」

大狸「よいよい。ではの」ノッシノッシ

犬父「ゆっくり休んでくれ」ガラガラ

犬母「うふふ。また明日ね」スタスタ

ガラガラ ピシャッ

男「明日まで、か・・・」

女衆『じとー・・・』

男「? あ、あれ? 皆どうしたの?」

犬娘「・・・はー・・・」

狐娘「これですものね・・・」

狸娘「私達の一番大事な話を・・・」

狸侍女「まあ、確かにこれは・・・」

鬼女「酷いぞ、男!」

男「ご、ごめんなさい・・・?」

女衆『全くもう・・・』

男「え、えー・・・?」

411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/28(土) 10:16:56.87 ID:cqDO6DX30
狸侍女「さて。そろそろ面会時間も過ぎますし、帰りましょうか」

狸娘「そうですわね」

犬娘「あ、皆さん、今日はうちに泊まっていってください。父さんと母さんには伝えてありますから!」

鬼女「本当か? それは助かる」

狐娘「それじゃあ、お言葉に甘えましょうか」

狸侍女「それでは、男様。今日のところは失礼致します」

男「あ、はい。おやすみなさい」

犬娘「おやすみなさい、男さん!」ガラガラ

狐娘「明日の朝、また来るわね」

狸娘「今日はゆっくりお休みになってくださいな」

鬼女「では、また明日!」

ガラガラ ピシャッ

男「・・・」

男「・・・帰るか残るか、か・・・」

男「くぁ・・・ぁふ・・・。まあ、明日考えよう・・・」Zzz…Zzz…

412: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/28(土) 10:46:11.28 ID:cqDO6DX30
ー秋之村・居住区 中央通りー
鬼女「それにしても、明日で紫苑祭も終わりか」

犬娘「お祭りの時期って楽しいから、時間が経つのがとても早く感じます」

狸娘「そうですわね。この五日間、あっという間でしたわ」

狐娘「そうね・・・。ふふ、色々あり過ぎて、三日前の初日が、もっと前に感じるわ」

狸侍女「今年の紫苑祭は、内容がかなり充実していましたからね」

犬娘「やっぱり、男さんが来てくれたからですよねー・・・///」

狸娘「そうですわね・・・」

狐娘「やっぱり、男さんは帰っちゃうのかしら・・・?」

狸侍女「そうですね。その可能性が一番高いでしょう」

鬼女「まあ、自分が生まれ育った世界に帰りたいのは当然だろうしな」

犬娘「そうですよねえ・・・」

413: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/28(土) 11:02:13.07 ID:cqDO6DX30
鬼女「! そうだ。逆に考えればいいのではないか?」

狸娘「と言いますと?」

鬼女「男が残るかどうかではなく、私達が残るかどうか、ということだ!」

狐娘「つまり・・・」

狸侍女「わたくし達が、人間の世界に行くと?」

鬼女「うむ!」

犬娘「えぇー!?」

狐娘「その考えは無かったわね」

狸侍女「人間の、世界に・・・」

鬼女「我ながらいい考えだと思うのだが」

狸娘「で、でも、人間の世界に行って、それでどうしますの?」

鬼女「む? どう、とは?」

狸娘「いえ、単純に生活をどうするのか、ということですわ」

鬼女「む・・・」

犬娘「確かに、いきなり男さんにお世話になります! っていう訳にもいきませんし・・・」

狐娘「それに、前に男さんに聞いたけど、物価はここの約10倍。今の貯金じゃ、まず無理だわ」

鬼女「むむ・・・!」

狸侍女「そもそも、ここでの暮らしを捨てるにしても、今日明日でいきなり捨てる訳にもいきませんし」

鬼女「だ、駄目だったか・・・」ガックリ

犬娘「でも、いつかは人間の世界に行ってみたいです」

狐娘「そうね。男さんが生まれ、育った世界」

狸娘「どんなものか、見てみたいですわ」

鬼女「そ、そうだな・・・」

狸侍女「しかし、仮に来年の穴を狙おうにも、まず穴が現れる場所すら分からないのでは、行きようがありませんね」

鬼女「や、やはり、無理矢理にでも明日に・・・!」

狐娘「・・・そうするしか、ないのかしらね・・・」

414: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 09:33:42.80 ID:q3ySHBvR0
犬娘「あ。皆さん、うちが見えました。お話はまた、後にしましょう」

狸侍女「そうですね。一度落ち着いてから、また」

鬼女「おお。大きい家だな」

狸娘「あら、あそこ・・・」

犬母「あら。皆、いらっしゃい」

狐娘「犬母さん。お邪魔します」

犬娘「お母さんただいま!」

狸娘「こんばんは。お邪魔しますわ」

犬母「うふふ。可愛いお客さんね。ゆっくりしていってね」

鬼女「お邪魔します! 犬母殿!」

狸侍女「こんばんは。御世話になります」

犬母「あらあら。こちらは綺麗なお姉さん方だこと。犬娘もこうなるはずだったのにねえ・・・」

鬼女「え、ええ?///」

狸侍女「お褒めいただき、有り難う御座います」

犬娘「ちょ、お母さん!? まだこれからだよ私! 諦めるの早いよ!」

犬母「何言ってるのよ。私があなたくらいの歳の頃は、もう少しいい体してたわよ」

犬娘「・・・何か、親のそういう話は聞きたくないような・・・」

狐娘「相変わらず面白いお母さんね」

狸娘「ええ。個性的ですわ」

犬母「あら、ありがと」ウフフ

416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 20:55:21.19 ID:q3ySHBvR0
犬母「さ、立ち話も何だから、上がって上がって」

犬娘「それじゃあ皆さん、私の部屋に行きましょうか」

狐娘「お邪魔するわね」

狸娘「わ、玄関も広いですわね」

鬼女「おおー・・・。旅館みたいだ」

狸侍女「犬母様、台所をお借りしてもよろしいでしょうか? 御茶を淹れようと思いまして」

犬母「ええ、もちろん構わないわよ。でも、あなたもお客様なんだから、私が淹れて持って行くわよ?」

狸侍女「いえ、侍女として、このくらいはやらなければ。御茶っ葉は持参の物がありますので、お湯と湯飲みだけお貸しいただけますか?」

犬母「そういうことなら。台所に入って左の戸棚に入っているから、それを適当に使ってちょうだい」

狸侍女「はい。有り難う御座います。犬娘様・・・」

犬娘「はい、私達は先に行ってますね。部屋は二階の突き当たりですから」

タン タン タン タン…

狸侍女「犬母様も、ご一緒にいかがですか?」

犬母「いえいえ、いらないわ。今、うちの人と大狸様がお酒を飲み始めちゃったから、そっちの相手をしないといけないし」

狸侍女「・・・主がご迷惑をお掛けしまして、申し訳御座いません・・・」

犬母「いいのよ、気にしないで? もちろん、私も飲むしね。そ・れ・よ・り」

狸侍女「はい?」

犬母「明日の夜までに男君をどうやってモノにするか、皆としっかり決めなさいな」

狸侍女「はいっ!?///」

犬母「うふふ。さっき男君の病室で言った、『皆でお嫁さんに』っていうの、別に冗談で言った訳じゃないのよ?」

狸侍女「な、ななな///」

犬母「ふふ。そろそろ私は行くけど、しっかりね? ああいう鈍い男の子は、無理矢理にでも攻めないと駄目なんだから。頑張りなさいな」ポンポン スタスタ

狸侍女「は、はあ・・・」

狸侍女「・・・み、皆で、男様のお嫁に・・・///」ポー…

狸侍女「(わ、悪くない・・・かも・・・?)///」

狸侍女「・・・はっ! お、御茶を淹れなければ!」スタスタスタ

418: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/02(水) 09:19:03.96 ID:Iq7xcjOB0
ー犬娘の部屋ー
スッ

狸侍女「失礼します。御茶をお持ちいたしました」

犬娘「あ、狸侍女さん。ありがとうございます」

鬼女「ありがとう」

狸侍女「いえ、このくらい」

狐娘「頂きます」

狸娘「ありがとう、狸侍女」

狸侍女「はい、どうぞ。ところで、何かお話しをされていたようですが?」

狐娘「え、ええ。そのー・・・」

犬娘「やっぱり、男さんの事で・・・」

狸侍女「ああ、成る程・・・」

鬼女「ああ。それで、その前に改めて皆と確認していたのだが・・・」 

狸娘「狸侍女。あ、あなたも、男さんのことが、す、好きですか?」

狸侍女「はい。お慕い申し上げております。あの方に一生を捧げ、添い遂げたく思っております」

犬娘「わー・・・///」

狐娘「す、すごいわね・・・///」

421: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/08(火) 15:43:56.82 ID:jAECHNWO0
鬼女「やはり、こうなると・・・」

狸娘「誰かが諦めなければいけませんわね」

犬娘「でも・・・」

全員『・・・・・・』

狐娘「当然、諦める人なんかいないわよね」

狸侍女「そうですね」

狐娘「じゃあ、やっぱり男さんに直接聞くしか・・・」

犬娘「そうだね」

狸娘「・・・でも」

鬼女「どうした?」

狸娘「でも、そもそも男様はここに残ってくださるのでしょうか?」

犬娘「あ・・・」

狐娘「確かにね。でも、帰ってしまうなら、全員振られちゃった、ってことかしらね」

鬼女「むぅ・・・」

犬娘「あぅ・・・」

狸娘「そうなりますわね・・・」

狸侍女「全ては、明日の男様の決断次第、ですね」

422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/08(火) 15:53:00.67 ID:jAECHNWO0
大狸「何をしんみりとしておる小娘共お!」スパァン!

犬娘「きゃんっ!?」ビクウ!

狸侍女「あ、主?」

鬼女「ま、全く気配がしなかった・・・!」

大狸「ワッハッハ! 修行が足りんの! それよりじゃ!」

狐娘「は、はい」

狸娘「何ですのお祖父様? いきなり」

大狸「お主らつまらんのうーー!」

犬娘「へ?」

大狸「何じゃさっきから聞いていれば消極的なことばかりグダグダと抜かしおって!」

狐娘「で、でも・・・」

大狸「よいか!? 本気で好きなら、無理矢理にでも引き留めるくらい言わんかい!/////」ダンッ!

狸娘「ひい!」

狸侍女「主・・・。酔っ払っていらっしゃいますね?」

大狸「いいから話を聞かんかい・・・!/////」ジロリ

狸侍女「! は、はい・・・」

狸娘「狸侍女が負けた!?」

鬼女「な、なんて威圧だ・・・」

大狸「まったく。よいか!? お主ら、男のことがすきなんじゃろう!? だったら、引き留めようとか、いっそ人間界についていこうとか、それくらい言ってみんかい!/////」グビグビ

423: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/08(火) 16:03:01.96 ID:jAECHNWO0
狐娘「で、でも大狸様? 人間の世界の物価はここの約十倍。とてもじゃありませんけど、生活なんて出来ないです」

鬼女「そ、それに、男を引き留めるにしても、男が帰りたがっていたなら、酷ではありませんか?」

大狸「やかぁしい! 金なら出してやるわい! それに、どうせ男の嫁になるんじゃ! 向こうに帰りたいと男が言うのなら、向こうで養ってもらえばよかろう!/////」ヒック!

424: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/08(火) 16:20:24.40 ID:jAECHNWO0
犬娘「お、男さんのお嫁さんになって・・・」

狐娘「養ってもらう、ってことは・・・」

狸娘「専業主婦、ですわね・・・」

鬼女「わ、悪くはないな・・・」

狸侍女「・・・」

ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー

男『ただいまー』

狸侍女『お帰りなさいませ、男様』スタスタ ペコリ

男『こら、俺の呼び方。違うだろう?』ピシッ

狸侍女『あう。も、申し訳御座いません』

男『俺のことは何て呼ぶんだっけ?』

狸侍女『は、はい。あ、あ、あな・・・///』

男『ほら、恥ずかしがるなよ・・・』スッ

狸侍女『ーーーーっ! あ、あな、た・・・!///』カアァー///

男『はは。良く出来ました』チュッ

狸侍女『ふむっ! ・・・ん、ちゅ、んふ・・・っ///』

男『ん!? ・・・ぷはっ! おいおい、今日は一段と激しいな? 危うく窒息するところだったぞ』

狸侍女『! も、申し訳御座いません。その、つい嬉しくなって・・・///』

男『全く。本当に可愛いな、狸侍女は・・・』ナデナデ

狸侍女『///』

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

大狸「狸侍女! 話聞いとんのか!?」

狸侍女「・・・はっ!? は、はい。続けてください」

大狸「本当に大丈夫か? お主・・・」

425: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/08(火) 16:42:25.53 ID:jAECHNWO0
大狸「ともかく、じゃ。男がどんな選択をしても、食らいつくくらいの意地は見せるのじゃぞ! その方が面白いからのう! なに、どうせ男も何かしら考えているじゃろうて!」ドスドス



鬼女「嵐のようだったな・・・」

犬娘「面白いから、とかすごいこと言っていきましたしね・・・」

狸娘「なんか、申し訳ないですわ・・・」

狐娘「でも、私はおかげで吹っ切れたわ」

狸侍女「そうですね。わたくしもです」

鬼女「ふふ。確かにな」

犬娘「明日の、男さんの決断がどんなものでも・・・」

狸娘「食らいついてみせますわ!」グッ!

犬母「あらあら。いい感じに話がまとまったみたいねー」

犬娘「お母さん!」

犬母「うふふ。話は聞いたけど、皆覚悟は出来てるみたいね」

狐娘「はい」

狸娘「大丈夫ですわ」

犬母「そう。頑張るのよ? ああいう鈍い男の子には、攻め込むしかないんだからね」スタスタ

鬼女「・・・よし。あとは、明日を待つの身か」

狸侍女「そうですね。今夜は、そろそろ寝ましょうか」

犬娘「そうですね」

ー数分後ー

狐娘「それじゃあ皆、お休みなさい」

犬娘「おやすm・・・」Zzz

狸娘「お休みなさい・・・」Zzz

鬼女「うむ。また、明日・・・ ウトウト

狸侍女「お休みなさいませ」

426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/08(火) 21:30:02.85 ID:jAECHNWO0
ー紫苑祭最終日 秋之村・診療所ー
犬医者「いや大したもんじゃのう。まさか一晩でここまで回復するとは思わなんだ」

男「先生の治療のおかげですよ。どうもありがとうございました」

犬医者「ほっほ。なに、ワシは当たり前のことをしたまでじゃよ」

犬父「やあ男君、おはよう。体調は良さそうだね」

男「あ、犬父さん。おはようございます。ええ、まだ全快とはいきませんけど、それなりには」

犬父「それは良かった。・・・それで、どうするかは決めたかい?」

男「・・・はい。決めました」

犬父「そうか。では・・・?」

男「俺は?・・・・・・」



ー診療所内・廊下ー
犬娘「(お、男さん・・・)」

狐娘「(まさか、迎えに来たらすぐに結論を聞くことになるなんて・・・)」

狸娘「(あ、あの、今から中に入れば、まだ聞かなくて済むのでは?)」

狸侍女「(しかし、どの道分かることですから、機会を延ばしても、あまり意味はないかと。それに・・・)」

鬼女「(何か、この空気は入りづらいことこの上ない・・・!)」

狸娘「(そ、それはそうですけど。心の準備が・・・!)」

犬娘「(あ、男さんが何か言いますよ!)」

女衆『(・・・!)』

430: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/10(木) 21:59:17.53 ID:pE1pkfMV0
男「俺、ここに残りたいです」

女衆『・・・!!』

犬父「・・・うん」

男「俺、ここが大好きです。皆優しくて、賑やかで、見るもの全てが新鮮で。この五日間、とても楽しかったんです」

犬娘『男さん・・・』

狐娘『そんな風に思っていてくれたのね・・・』

狸娘『嬉しいですわ・・・!』

狸侍女『しかし・・・』

鬼女『うむ。人間の世界でのことはどうするのだろうか?』

犬父「でも、男君。君は、人間の世界での生活はどうするんだい? 今まで決して短くはない時間を過ごしてきたんだ。いきなり君がいなくなっては、向こうで大変な騒ぎが起きるんじゃないのかな?」

男「かもしれません。でも、俺はもう決めたんです。ここで暮らして、いつかきっと、ここと人間の世界を自由に行き来することが出来るようにしてみせます」

犬父「はは。そうか」

男「はい。それに、だ、大事な妖(ひと)達がいますから・・・」ポリポリ

女衆『!!』

犬父「ほう? まさか、本当に全員を嫁にするのかい?」ニヤニヤ

男「ええ!? い、いや、そんなことは・・・///」

431: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 23:04:57.39 ID:hTqUFqnk0
犬父「では、1人に心を決めていると?」

女衆『!!?』

男「え!? い、いや、それはそのう・・・」ゴニョゴニョ




女衆『・・・・・・っ!』ゴクリ

犬娘『そ、そうなんでしょか?』

狸娘『あの様子からじゃ分かりませんわ』

狐娘『でも、多分1人、なんじゃないかしら?』

鬼女『い、いったい誰が!?』

狸侍女『どうでょうか・・・』




男「・・・正直なところ、よく分からないです。誰かに告白されるなんて初めてで・・・」

犬父「でも、だからといってそれをそのまま伝えて『答えを待って欲しい』なんて言ったら駄目だからね?」

432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 23:06:11.23 ID:hTqUFqnk0
男「や、やっぱりそうですよね・・・」

犬父「うん。男なら、ちゃんと決めておかないと」



犬娘『お父さんありがとう!』

狐娘『男さん、返事を延ばす気だったのね・・・』

狸娘『男様らしいですし、しっかり考えてく他猿のは嬉しいですけど・・・』

狸侍女『ええ。やはりちゃんと答えて頂きたいものです』

鬼女『さて、男はどうするのか・・・』



男「俺は・・・。俺が好きなのは・・・!」

犬父「うんうん」



女衆『・・・・・・!』



男「ほ、本人に直接伝えますよ! 犬父さんにはその後でまた!」

犬父「ええ? いいじゃないか。聞かせてくれよ」

男「いえ。やっぱり、最初は、本人に聞いて貰いたいから」



女衆『(本人!? ということはやっぱり、この中の誰か1人!?)』



犬父「そうか。そうだね、それがいいだろう」

男「はい!」

犬父「さて、じゃあ家で朝ご飯を食べよう。皆ももう起きているはずだよ」

男「あ、じゃあ、お言葉に甘えて」



女衆『・・・!』

鬼女『て、撤退!』

コソコソ コソコソ

ガラガラ

犬父「さ、行こうか」

男「はい」

スタスタ

437: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/12(土) 11:02:25.61 ID:8buGrmTr0
ー秋之村・犬娘の屋敷ー
犬父「ただいまー」

男「お邪魔します」

犬母「あら、お帰りなさいあなた。男君も。その様子だと、答えは出たのかしら?」

男「え、ええ。まあ・・・」

犬母「うふふ。あの娘達も気になっているでしょうし、早く伝えてあげなさいね」

男「は、はい・・・」

犬父「さ、それじゃあ朝食にしようか」

犬母「もう皆もいるわよ」

438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/12(土) 13:56:20.36 ID:8buGrmTr0
ー犬娘の屋敷・客間ー
男「あ、皆。おはよう」

犬娘「! お、おはようございます、男さん」

狐娘「か、体はもう平気なの?」

男「うん。何とかね」

狸娘「よ、良かったですわね」

狸侍女「え、ええ。大事なくて何よりです」

鬼女「う、うむ。良かったな!」

男「?? ありがとうございます」

犬父「(母さん、もしかして?)」

犬母「(ええ。この娘達ったら、あなたと男君の話、聞いていたみたいよ?)」クスクス

犬父「(それはそれは・・・)」

犬母「(うふふ。面白いわ、本当に)」

女衆『あ、あはははは』

男「???」

439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/12(土) 17:44:36.93 ID:8buGrmTr0
犬母「さて、それじゃあ朝ご飯にしましょうか」

犬父「そうだね。皆、座ってくれ」

犬娘「はーい」

狸娘「今日は朝早かったので、お腹が空きましたわ」

男「あれ? 今日は早起きしたの?」

狸娘「え!? あ、いや、その・・・!」ワタワタ

狸侍女「わたくしが早く目が覚めてしまったので、お嬢様と朝の散歩をしていたのです」

男「あ、そうなんですか。それじゃあお腹空くよね」

狸娘「え、ええ、そうですわ・・・」

犬母「男くーん。ちょっと手伝ってくれるかしらー?」

男「あ、はーい」スタスタ

鬼女「危なかったな、狸娘」

狸娘「そうですわね。ありがとう、狸侍女」

狸侍女「いえ。お気になさらず」



ー犬娘の屋敷・台所ー
犬母「あ、ごめんなさいね、男君。そこの棚の上から、大皿を取ってもらえるかしら?」

男「あ、はい。これですか?」ガタガタ スッ

犬母「ええ、ありがとう。・・・それで、男君。一体誰と結婚するのかしら?」

男「ぅえ!? け、結婚ですか・・・?」

犬母「ええ。もう、決めているんでしょう? これから先、誰と生きていくか」

男「・・・ええ、まあ///」

犬母「うふふ。真っ赤になっちゃって。それで? 誰なのかしら? もちろん、うちの娘だと一番嬉しいのだけれど」

男「・・・犬父さんにも言ったんですけど、やっぱり、最初は本人に伝えたいんです。犬母さんには、その後で」

犬母「あら。随分と可愛いことを言うわね。そんなことを言ってもらえる娘が羨ましいわー」

男「あ、あはは・・・。あ、じゃあ先に置いてある料理、持って行っちゃいますね」

犬母「ええ、お願い。うふふ、しっかりね?」

男「は、はい///」



男「(そうだ。決めたんだ。俺は、やっぱりあの妖(ひと)が・・・)」 

464: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/13(日) 08:36:51.10 ID:ajusIifF0
Last Chapter ーRoot Harlemー
男「・・・って、駄目だ。犬父さんや犬母さんにはもう決めたって言ったけど、やっぱり誰かなんて選べない・・・」

男「そもそも、俺なんかと結婚するより、こっちの世界の誰かと結婚した方がいいんじゃないのか?」

男「・・・よし、そう伝えよう。皆に、俺なんかより、ずっといい妖(ひと)がいるはずだから、って」スタスタ



ー犬娘の屋敷・客間ー
男「はい、皆お待たせ。朝ご飯だよ」

犬娘「あ、ありがとうございます、男さん」

狸侍女「申し訳御座いません。わたくしが運ぶべきでした」

男「ああ、いいんですよこのくらい。たまには狸侍女さんもゆっくりしていてください」ニコ

狸侍女「あ、有り難う御座います・・・///」

犬母「さ、これでお料理も全部揃ったし。頂きましょうか」

狸娘「はい。ありがとうございますわ」

鬼女「うむ、頂きます!」

狐娘「犬母さんのお料理、久しぶりです」

犬母「うふふ。沢山食べてね」

男「じゃあ、俺も。頂きます」

犬父「頂きます」

犬母「私も食べましょうかね。頂きます」

カチャカチャ モグモグ

465: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/13(日) 14:31:01.73 ID:ajusIifF0
ー数十分後ー
全員『御馳走様でした!』

犬母「うふふ。お粗末様でした」

狸侍女「犬母様、片付けはわたくしが・・・」

犬母「あらあら。いいわよ、やっておくから」

狸侍女「しかし・・・」

犬母「それより、今日でお祭りは最後よ?男君達と、お祭りに行ってらっしゃいな」

犬父「そうだね、それがいいよ。男君、皆と一緒にお祭りに行ってくるといい」

男「そうですね。それじゃあ、犬母さん、すいませんけど・・・」

犬母「ええ、行ってらっしゃいな」

犬娘「よーし! それじゃあ、お財布とか準備してこなくちゃ」

狐娘「そうね。行きましょうか」

狸娘「あ、私も!」

鬼女「では、私は着替えてくるとしよう」

狸侍女「? 既に着替えているのでは?」

鬼女「い、いや。折角だから、最終日は浴衣にしようかと思ってな・・・。一応持ってきてはいるのだ」

狐娘「成る程」

犬娘「でも、浴衣って、少し動きづらいですよね」

狸娘「そうですわね。あまり、普段と変わりませんし」

犬母「あら、そんなことないわよ。ねえ、男君?」

男「え? ああ、そうですね。いつもとちょっと違って、新鮮だと思うし。少し見てみたいです、鬼女さんの浴衣姿」

女衆『!!』

鬼女「! そ、そうか。なら、着てくるとしよう///」イソイソ

犬娘「お、お母さん! 私の浴衣どこ!?」
狐娘「あ、犬娘!」

狸娘「あなた、さっきは動きづらいとか言っていたのに!」

犬娘「で、でも、折角だから私も着ようかなー、なんて・・・」

狸娘「むむむ・・・!」

狐娘「ず、ずるいわよ犬娘・・・!」

466: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/13(日) 14:31:59.15 ID:ajusIifF0
犬母「ふふ、大丈夫よ。こんなこともあろうかと、一応人数分の浴衣を用意してあるわ」
狐娘「本当ですか!?」

狸娘「か、貸して頂けるのですか!?」

狸侍女「有り難いです」

犬母「勿論、男君の分も用意してあるわ」

男「え、本当ですか? ありがとうございます」

犬母「ふふ、後で着付けしてあげるわね、男君」

男「え!? い、いや、大丈夫ですよ! 1人で出来ます!」

犬母「あらあら。照れなくてもいいのに」クスクス

男「いや、照れとかじゃなくて・・・」

鬼女「な、なら男の着付けは私がしよう! な、慣れているからな! 犬母殿に着付けて頂くのが恥ずかしいなら、私に任せるといい///」

男「はい!?」

犬娘「わ、私がやりますよ! 男さん!」

犬母「あなたは自分でも満足に着れないでしょうに」

犬母「お、お母さん!」

狐娘「し、仕方がないわね。私が着付けてあげてもいいわよ、男さん」

狸娘「う、うぅ・・・。私も、自分で着られませんわ」

狸侍女「お嬢様の着付けは、いつもわたくしがしていましたからね。ですから、男様。わたくしも着付けはして差し上げられますよ?」

男「い、いや、だから自分で着られますって! 何で着られない事が前提なんですか!」

467: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/13(日) 17:01:34.73 ID:ajusIifF0
犬母「うふふ。冗談よ、冗談。さ、女の子達は皆こっちにいらっしゃいな。男君は、少し待っていてね?」

男「あ、はい」

犬父「いやあ、モテているねえ、男君」

男「やめてくださいよ、犬父さん・・・」

犬父「あはは。いいじゃないか。あれだけの女の子を物にするなんて、男君は人間の世界でも女誑しだったのかな?」

男「いやいや。向こうじゃ、恋人すらいたことはないですよ」

犬父「おや、それは意外だ」

男「まあ、恋人なんか作っている余裕もありませんでしたしね」

犬父「そうか・・・」

男「あ、そういえば。犬父さん、俺、ここで暮らしていく上で、当然働きたいんですけど、どこかいい職場知りませんかね? それから、安く借りられる家か何かも」

犬父「ふむ。まあ、職ならば、いくつか当てはある。今夜にでもまとめて紹介しよう」

男「ありがとうございます!」

犬父「いや、構わないよ。それから、家は少し難しいからね、暫くはここで暮らすといい」

男「ええ!? いやそんな! 悪いですよ・・・」

犬父「あはは。気にしなくていいとも。勿論、君の住む家が見つかるまでの間だし、家事もある程度は手伝って貰うけれどね」

男「犬父さん・・・。本当にありがとうございます・・・!」

犬父「うんうん。さて、それじゃあ僕は仕事に行くよ。君の来た『穴』の資料を、少しでも多く取っておかないとね」

男「あ。そ、それなら俺も・・・」

犬父「いやいや。さっきも言っただろう? 今日は紫苑祭の最終日だ。彼女達と存分に楽しんで来るといい。それに、答えを伝えなくちゃいけないだろう?」

男「・・・! ・・・はい。ありがとうございます」

犬父「さっきからお礼ばかりだね。気にしなくていいよ。それじゃあ、行ってくる」スタスタ

男「あ、行ってらっしゃい!」

男「・・・」

男「・・・参ったなあ。御世話になりっぱなしだ。ちゃんとこの恩は返さないと」

468: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/15(火) 20:18:02.94 ID:jHaV6snm0
犬娘「男さーん! お待たせしましたー!」パタパタ

狐娘「あ、こら! 走らないの!」

狸侍女「犬娘様、もし着崩れたりしたら、また着付けをする羽目になってしまいますよ?」

男「あ、皆着替え終わったんだ。おぉ・・・!」

狸娘「ど、どうでしょうか・・・///」

鬼女「に、似合っているか?」

男「ええ。皆似合っていますよ。とても可愛いです」

狐娘「そ、そう。良かった・・・///」

犬娘「えへへ///」

鬼女「う、うむ! そうだろう! 自慢の浴衣を持って来たのだからな!」

狸娘「そうして褒めて貰えると、嬉しいですわ///」

狸侍女「浴衣を着るのなど、何年振りでしょうか・・・」

犬母「うふふ、大丈夫よ。狸侍女ちゃんもとても可愛いわ」

男「ええ、似合っていますよ」

狸侍女「そ、そうですか。有り難う御座います///」

469: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/16(水) 08:03:49.93 ID:cV2RwHZC0
犬母「さて。それじゃあ後は男君ね。はい、これ」スッ

男「あ、どうもありがとうございます」

犬母「いいのよ。それより、本当に着られるのかしら?」

男「ええ、大丈夫ですよ」

犬母「そ。なら、着替えていらっしゃいな」

男「あ、はい。それじゃあ皆、少し待っててね」スタスタ

犬娘「はーい」

狐娘「男さんの浴衣姿かあ・・・」

狸娘「楽しみですわね」

犬母「うふふ、そうね」

鬼女「そういえば犬母殿、何故こんなに浴衣を持っていたのだ?」

狸侍女「服飾関係のお仕事でもされているのですか?」

犬母「ええ、まあね。お手伝い程度だけれど、工房で着物を織っているわ。そのお礼として、何着か頂くのよ」

犬娘「お母さん、針仕事が上手なんですよ」

犬母「娘のあなたには、その才能が受け継がれなくてねえ・・・」ハァ…

狸娘「あら、そうなんですの?」

犬娘「えと、ち、ちょっとだけ苦手なだけで・・・」

狐娘「そういえば、昔私の着物のほつれた部分を直そうとして、真っ二つに裂いたことがあったわね」

犬娘「そ、それは!」

鬼女「・・・それはもう、針仕事とは言わないのでは?」

狸侍女「まるで質の悪い追い剥ぎですね」

犬娘「うぅ・・・」

470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/20(日) 08:59:11.18 ID:EWpLGEW+0
男「皆、お待たせー。ってあれ? どうしたの? 犬娘」

犬娘「い、いえ、何でも。男さん、早かったですね。・・・わあ」

男「ああ、うん。男物だからかな。結構簡単に着られたよ。・・・って、わあって何? 俺、どこかおかしいかな?」キョロキョロ

犬娘「い、いえ、そんなことは全く!」ブンブン

狐娘「男さん、とてもよく似合ってるわ」

狸娘「はい、よくお似合いですわ」

男「本当に? 良かった」ホッ

鬼女「うん、か、格好良いぞ!」

狸侍女「はい、本当に」

男「ありがとうございます。何か、照れ臭いですね///」

犬母「うふふ。本当に可愛いわね男君は。さ、そろそろ行ってきなさいな。今日が終われば、次の祭りはまた来年。沢山楽しんでいらっしゃい」ヒラヒラ

全員『行ってきます!』

475: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/23(水) 14:16:47.56 ID:WTYHUljh0
ー秋之村・中央広場ー
男「さて、それじゃあ、色々回ろうか」

犬娘「はい!」

狐娘「そうね。今日は思い切り遊ぶわよ!

狸娘「いいですわね」

鬼女「うむ。祭りの最後の花火大会もあるし、楽しみだ」

狸侍女「ええ、毎年行われる花火大会は、祭りの締めとして欠かせないものです」

男「へえ、花火もあるんだ」

狐娘「ええ、そして・・・」

犬娘「(秋之村の花火と言えば!)」

狸娘「(共に見た男女は結ばれるとの噂も!)」

鬼女「(よ、よし・・・)お、男!」

男「はい、何ですか?」

鬼女「よ、良かったら、その・・・。わ、私と花火を・・・!///」

狸侍女「男様、花火がよく見える場所を知っております。花火の際は、皆でそちらへ」

男「そうなんですか?助かります。・・・あ、すいません鬼女さん。何でしたっけ?」

鬼女「い、いや、何でもない・・・」

477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/23(水) 19:45:02.24 ID:WTYHUljh0
鬼女「(狸侍女、よくも・・・!)」ボソボソ

狸侍女「(流石に、目の前での堂々とした抜け駆けは見過ごせませんよ)」ヒソヒソ

男「? どうしたんですか? 二人とも」

狸侍女「いえ、何でもありません」

鬼女「う、うむ。さあ、行こう!」

男「あ、はい。犬娘、狐娘、狸娘、行こうか」

犬娘「はーい」

狐娘「私、金魚すくいがしたいわ」

狸娘「あ、私も!」

男「あはは。じゃあ、金魚すくいの屋台から回っていこうか」

478: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/23(水) 20:24:20.63 ID:WTYHUljh0
ー金魚すくい屋ー
男「よっ、と!」パシャッ 

犬娘「わあ! 男さん上手ですね!」

鬼女「ひい、ふう、みい・・・。もう五匹目か」

狐娘「男さん、器用なのね」

男「いやあ、それほどでも」アハハ

河童「兄ちゃん、やるもんだなあ!」

男「いえいえ、まだまだ」

狸娘「私は全然すくえませんわ・・・」

狸侍女「・・・わたくしもです」

鬼女「なんと。狸娘はともかく、狸侍女がとれないとは意外だな」

狸娘「意外性が無くて悪かったですわね!」

狐娘「まあまあ、落ち着いて」ポンポン

犬娘「でも、本当に意外ですね。狸侍女さんなら、今頃はこの水槽の中の金魚をとり尽くしている頃だと思っていたのに」

狸侍女「いえ、金魚すくいに限らず、こういった場での遊戯は、どれも苦手なのです」

男「そうなんですか?」

狸侍女「ええ、こういった遊戯は、侍女としての仕事には関わりのないことでしたので・・・」

狐娘「成る程・・・」

男「じゃあ、丁度いい切っ掛けかもしれませんね!」

狸侍女「え?」

男「この機会に、色々遊びましょうよ。狸侍女さんなら、きっと上手に出来ますよ!」

鬼女「うむ、そうだな。こういった遊びは、中々に楽しいものだぞ」

犬娘「はい! お祭り独特の楽しさがありますね」

狐娘「ええ、他にも沢山あるし、楽しみましょう?」

狸娘「あなたは、今まで私たちのためによく働いてくれましたし、そのくらいは当然ですわね」

男「さ、行きましょう! 他にもまだ、沢山出店はありますよ!」

狸侍女「・・・はい!」

479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/24(木) 09:39:03.16 ID:/2oYrbaU0
ー数時間後ー
狐娘「なるほど、農業区のこの丘が・・・」

犬娘「花火がよく観える場所ですか!」

狸侍女「ええ、ここは花火会場から少し離れていますので、他の皆様は余り訪れない穴場となっております」

鬼女「成る程な」 

狸娘「でも、よく知っていましたわね、狸侍女」

狸侍女「はい。昨夜、犬母様に教えて頂きました」

犬娘「ここなら、ゆっくり花火を観られますね!」

狐娘「そうね、楽しみだわ」

男「・・・」

鬼女「男? どうかしたのか?」

男「あ、いえ、何でもないですよ。それより、本当に良いところですね。静かだし、落ち着いて観られます」

狸娘「もうそろそろ始まりますわね」

狸侍女「出店で買っておいた食べ物もあります。皆でゆっくり待ちましょう」

犬娘「焼きそばを食べたいです!」

狐娘「あ、私も!」

狸侍女「ちゃんと人数分ありますので、慌てずとも大丈夫ですよ」

男「うん、美味しそうだ。頂きます」

犬娘「いただきまーす!」

狸娘「頂きます」

鬼女「うん、美味しいな」

ズルズル モグモグ

480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/24(木) 09:48:43.78 ID:/2oYrbaU0
ヒュルルーー……ドパァ…ン!

犬娘「あ! 始まりました!」

狐娘「今年も綺麗ね」

狸娘「わ、大きいのも!」

狸侍女「風流ですね」

鬼女「たーまやー!」

男「うわ、連発!」

ドン! ドドンドン! ドドドンドォン!

男「凄いなあ・・・。とても綺麗だ・・・」

犬娘「(花火に照らされた男さんが・・・)」

狐娘「(普段よりも更に格好良く見える・・・///)」

狸娘「(そういえば、今日中に男様は答えを聞かせてくださるみたいですけど・・・)」

狸侍女「(・・・誰を、選んでくださるのでしょうか)」

鬼女「(・・・)」

ドドォ……ン! ドォ…ン!

481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/26(土) 07:32:47.20 ID:RpQuL+r50
男「・・・・・・」

ドォ…ン! ドドォ……ン!

男「・・・皆、聞いて欲しいことがある」

女衆『!!』

男「あの、俺、皆から『好きだ』って言って貰えて、本当に嬉しかった。ありがとう」

女衆『・・・』

男「俺、この祭りの期間中に一人を選ぶって約束していたよね。・・・今、答えを言おうと思う」

犬娘「男さん・・・」

狐娘「・・・はい」

狸娘「・・・」スゥー…ハァーー

狸侍女「宜しく御願いいたします」

鬼女「む、むう・・・///」

男「俺、一生懸命考えたんだ。・・・俺は・・・、」

女衆『・・・!』

483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/26(土) 20:44:59.62 ID:RpQuL+r50
男「ごめん! 俺は、誰とも一緒になることは出来ない!」ガバッ!

女衆『・・・え?』

男「ごめん。皆が好きって言ってくれて、俺に考える時間もくれたのに、こんな答えしか出せなくて」

犬娘「男・・・さん・・・」

狐娘「・・・私達では、男さんの隣にいるには相応しくないからかしら・・・?」

狸娘「私達が、人ではないから・・・?」

男「ち、違う! 違うよ、そんな事はない!」

狸侍女「ならば、単純にわたくし達は男様の好みではなかったと?」

鬼女「そ、そうなのか!?

男「そういう訳でも無いです。この答えは、俺自身が問題なんです」

犬娘「え?」

484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/26(土) 21:23:49.39 ID:RpQuL+r50
男「俺、ただの人間です。人間の世界でも、何の取り柄もなく、ただ毎日を平凡に過ごしていただけの人間です」

狐娘「そ、それなら、私達だって・・・」ヒュルルーー…ドォ…ン!

男「そうじゃないんだよ」

狸娘「え?」

男「俺、この世界で暮らしていくことに決めたよ。だけど、何の元手もないから、これからの生活は苦労していくことになる。それに誰かを巻き込むなんて、したくないんだ」ヒュウゥー……ドパァ…ン!

狸侍女「・・・」

男「俺は、本当に嬉しかった。ここまで誰かに好意を持って貰ったのなんて、初めてだったから」

鬼女「男・・・」

男「でも、だからこそ、誰も選べない。俺は人間だから、俺と一緒になることで、おかしな噂をされたり、有ること無いこと言われるかも知れない。もし、俺のせいでそんなことになったら、申し訳ないから」

女衆『・・・』ヒュルルーー……ドンッ ドドォ…ン!

男「俺、皆が同じくらい大好きです。だからこそ、俺なんかが選んじゃいけないとも思うから。それに、皆にはきっと、これからもっといい出会いがあると思うから、その妖(ひと)と・・・」

狸侍女「・・・男様」スタスタ

男「はい、何です」バチン!

男「っ!?」

狸侍女「・・・失礼いたしました。どうも寝ぼけていらっしゃるようでしたので、目を覚まさせて頂きました」

男「・・・へ?」

犬娘「・・・私たちは、『男さん』がいいんです」

狐娘「人間とか、そうじゃないとか、そんな事はどうでもいいの」

狸娘「誰に何と言われても、全く気にしませんわ」

鬼女「それに、もっといい妖(ひと)と出会えると言われても、私にはお前より良い男など想像すら出来んぞ」

狸侍女「わたくし達は皆、今ここにいる貴方をこそお慕いしているのです。誰かを選んだが故に選ばれなかったのならばともかく、苦難に巻き込まれるからというだけでは、この想い、揺るぎはしません」

男「皆・・・」

犬娘「男さんは優しいから、誰かを選ぶなんて難しかったですよね・・・。ごめんなさい」

男「そんなこと無いよ。ちゃんと決められなかった俺が悪いんだ・・・」

狐娘「私達は皆、あなたと一緒に生きていく覚悟があるわ。それくらい、男さんのことを好きになったんですもの」

男「・・・うん」

狸娘「ですから、苦難に巻き込まれることや、誰かに後ろ指を指されるかも、なんて事は、気にしなくていいのですわ」

男「・・・うん」

狸侍女「今一度お考えください。その上で、誰とも一緒にはなれないと言うのならば、その時は、わたくし達も一度退きます」

男「あ、一度退くだけなんですね・・・」

鬼女「当然だろう。さっきも言ったはずだ。お前より良い男など想像すら出来んぞ、とな」

男「・・・ありがとうございます」

犬娘「男さん」

狐娘「男さん・・・」

狸娘「男様っ」

狸侍女「・・・男様」

鬼女「男・・・」





男「・・・」

男「・・・これから、沢山苦労も掛けるし、迷惑も沢山掛けると思う。資金だって無いから、当分は辛い生活になる。それでも、俺と一緒になってくれるって言うのなら、俺は・・・」

486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/26(土) 21:41:59.73 ID:RpQuL+r50
男「皆、皆だ。全員に俺に付いてきて欲しい!」ヒュルルーー…!! ドドォン! ドンッ ドドォ…ン!

犬娘「つ、つまり・・・///」

狐娘「私達全員を・・・?」

狸娘「だ、大胆ですわ///」

狸侍女「・・・ふふ、男様らしいです」

鬼女「ああ・・・! ある意味、最高の選択だな!」

スタスタ

男「・・・犬娘。これからも、俺の隣で、明るく笑っていてくれ」

犬娘「えへへ・・・。はいっ」

男「狐娘。俺は弱いから、ずっと俺を支えていてくれるか?」

狐娘「ええ、必ず・・・」

男「狸娘、暫くは貧乏暮らしだ。それでも、俺を信じて一緒になってくれるか?」

狸娘「はい・・・!」

男「狸侍女さん。あなたには、今まで以上に助けて貰うことになると思います。それでも、いいですか?」

狸侍女「わたくしはただ、貴方様に付いて行くのみに御座います・・・」

男「鬼女さん。俺が迷ったり、ふらついた時は、俺を叱ってくれますか?」

鬼女「うむ、任せておけ!」



男「・・・皆、ありがとう。俺は、まだまだ半人前だけど、必ず皆を幸せにしてみせる。だから・・・」










男「全員俺と、一緒になってくれ!」

女衆『はいっ!』



              
              ーfinー

501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/27(日) 20:03:04.75 ID:AbqbfId00
ーAnother Chapterー


ー秋之村・とある屋敷ー
子犬娘「おかーさーん! ただいまー!」パタパタ

犬女「あ、お帰り。もうすぐお昼ご飯だからねー」

子犬娘「やったあ! 今日は何ー?」パタパタ

犬女「こら、その前に手を洗っていらっしゃい」

子犬娘「ぶー。分かってるよー」パタパタ

犬女「全くもう・・・」クスッ

ガラガラ

子狐少年『こんにちはー!』

子狸娘『ちはー!』

狸少年『お、お邪魔、します・・・』

鬼少女『お邪魔しまーす!』

犬女「あ、来たね。上がっていいよー!」

子供達『お邪魔しまーす!!』バタバタ

子狐少年「犬女さん、お久しぶりー!」

子狸娘「ぶりー!」

狸少年「あの、その、お久しぶり、です・・・」

鬼少女「うん、お久し振りだー!」

犬女「はい、皆、久し振りだね。元気だった?」

子供達『元気ー!』

犬女「そっかそっか。お母さん達は?」

狸少年「あ、お母さん、は、お土産を買ってくるって・・・」

犬女「あ、そうなんだ。気にしなくてもいいのに」

子狐少年「犬女さん! 子犬娘ちゃんは?」

子狸娘「どこー?」

犬女「ああ、あの子なら・・・」

子犬娘「あー! 皆いらっしゃーい!」パタパタ

鬼少女「おー! 久し振りだー!」ワシワシ

子犬娘「わふっ! やめてようー」アウアウ

子狐少年「子犬娘! 久し振りー!」ダキッ!

子狸娘「ぶりー!」ダキッ!

子犬娘「きゃっ! もうー! ・・・あはは!」

キャッキャッ ワーワー!

犬女「ほらほら、皆、まずは手を洗ってきなさい! そしたら、お昼ご飯だよ!」パンパン!

子供達『はーい!』パタパタ

犬女「ふう。・・・皆、大きくなったなあ・・・」

503: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/27(日) 20:06:11.39 ID:AbqbfId00
ガラガラ

鬼女『お邪魔するぞ、犬女ー!』

狐女『こんにちはー!』

狸女『お邪魔しますわ』

狸侍女『お邪魔いたします』

犬女「あ。いらっしゃーい! いいよー!」

ゾロゾロ

狐女「犬女! 久し振りね!」ギュッ!

犬女「わっ! うん、久し振りー」ギュッ

狸侍女「お久し振りです、犬女さん。これ、お土産です」

犬女「わ、有り難う御座います」

狸女「子供達は?」

犬女「うん、さっき着いたよ。もうすぐ戻って来ると思う」

鬼女「そうか、またどこかで道草を食っているんじゃないかと思っていたが、ちゃんと着いたか」

犬女「あはは。でも、もうその位の分別はつくでしょう?」

鬼女「いや、分からんぞ。この前だって・・・」

狐女「まあまあ。愚痴もいいけど、先に居間に行きましょう。一度座りましょうよ」

犬女「あ、そうだね。さ、こっちこっち」

鬼女「む、そうか?」

狸侍女「また後で聞きますよ」

狸女「毎回似たような愚痴ばかりですけどね」

鬼女「そ、そうか?」

504: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/27(日) 20:09:19.04 ID:AbqbfId00
キャッキャッ ワイワイ

犬女「ほら来た」

鬼少女「あ、母さん!」ダダッ! ピョン!

鬼女「おお、っと! よしよし、今日は道草を食わずに来れたな?」ポンポン

鬼少女「おう! アタシ、やれば出来る子!」

鬼女「毎日そうだと、有り難いんだがなあ」ポンポン

子狐少年「あ、母上! 母上、僕の分のお土産はありますか
!?」

狐女「ある訳ないでしょう? 全くもう」クスッ

子狐少年「!?」ガーン!

子狸娘「おかーさん、わたし、お腹空いたー!」

狸女「はいはい、もうすぐご飯ですわ。席について待っていなさい」

子狸娘「うんー!」

狸少年「お母さん。僕も、お腹空いちゃった・・・。ご飯、食べよ・・・?」

狸侍女「そうですね。行きましょうか」ナデナデ

狸少年「えへへ・・・。うん・・・!」

子犬娘「じゃあ皆! こっちだよー!」

ワー! タタタタ!

犬女「あはは。皆元気だねー」

狐女「ふふっ、そうね。うるさいくらいだわ」

狸女「まあ、久し振りに会ったんですもの。こうなっても仕方がありませんわ」

狸侍女「はい。こうしてたまに集まるならともかく、全員で住むには狭いからと、普段は皆離れてくらしていますから」

鬼女「まあ、それももうすぐ終わるのだろう?」

犬女「そうですね。この前、あの人が新しいお家の下見もしてきましたし」

狐女「ええ、楽しみね」

子供達『おかーさーん! ごはんー!』

狸女「あの子達は・・・、全くもう・・・」フウ

狸侍女「ふふ。では、ご飯にしましょうか。犬女さん、手伝います」

鬼女「あ、私も手伝おう」

犬女「有り難う御座います。それじゃあ、こっちに・・・」

狐女「それじゃあ、私達は子供達を大人しくさせておくわね」

狸女「ええ、料理を零すのも嫌ですし」

犬女「あ、うん、お願い」

狐女「さ、行きましょう」

狸女「そうですわね」

鬼女「犬女、これは先に運んでもいいのか?」

狸侍女「わたくしは、食器を出しておきますね」

犬女「あ、はい。お願いしまーす」

505: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/27(日) 20:40:18.76 ID:AbqbfId00
ー数分後・居間ー
犬女「さて、後は・・・」

狐娘「男さんが帰ってくるのを待つだけね」

子狐少年「! 母上! 父上が来るの!?」

子狸娘「のー!?」

狸女「こら、ちゃんと喋りなさいな!」

狸少年「ほ、本当に・・・?」

鬼女「父さんが来るのかー!?」

狸侍女「ええ、本当ですよ。あの人は、こういう約束は絶対に破らないでしょう?」

子供達『やったー!』

鬼女「すごい喜びようだな」

狸女「まだ幼いんですもの。あまり会えない父に会えるとなれば、喜ぶのも当然ですわ」

狐女「父の多忙を理解はしていても、心は別だものね」

犬女「かく言う私達も、この三ヶ月間は寂しかったですしね」

狸侍女「人間の世界とこちらの世界を繋げる事業。男様は、その中心的存在となっている人です。仕方が無いとはいえ、確かに、寂しいですね」

狸女「人間の世界の町で行われる会議。予定では今日の午前中には終わるはずですが・・・」

ガラガラ

男『ただいまー!』

子供達『!! お帰りなさーーい!』ワアア!

狐女「きゃっ! ・・・もう、あの子達ったら」

鬼女「凄い勢いで行ったな」

子供達『おとーさん!』

男『うおっ!? あはは、皆、ただいま! いい子にしてたか?』

子供達『うんー!』

男『そうかそうか。さ、お父さんを中に入れてくれ』

子供達『こっちー!』

ゾロゾロ

犬女「お帰りなさい、男さん」

狐女「お帰りなさい。お疲れ様でした」

狸女「お帰りなさいませ」

狸侍女「お帰りなさいませ、貴方様・・・」

鬼女「さ、こちらへ来い。疲れただろう、ゆっくり休め」

男「うん。有り難う、皆」

キャッキャッ ワイワイ

犬女「ほら、皆も座って! まずはご飯を食べてからだよ!」パンパン!

子供達『はーい!』

男「ふう・・・。うん、美味しそうだ。それじゃあ皆で・・・」

全員『頂きます!』

506: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/27(日) 22:08:35.29 ID:AbqbfId00
ワイワイ カチャカチャ パクパク モグモグ

犬女「そういえば、男さん。お仕事はどうでしたか?」

男「ん? ああ、上手くいっているよ。思いの外、人間界の妖族の受け入れが順調に進んでいてね。このままなら、あと半年もすれば向こうの世界の二都市とこちらを行き来出来るようになりそうだ」

狐女「本当? 凄いじゃない」

狸女「今まで、簡単な貿易くらいでしたけど、実際に人間と妖族が行き来するようになれば、経済効果も、国交の活発化も計れますわね」

子供達『?』キョトン

狸侍女「お父さんの仕事がとても順調だということですよ」

子犬娘「本当?」

子狐少年「よかったね、父上!」

子狸娘「ねー!」

狸少年「うれしい、ね、お父さん・・・」

鬼少女「父さんすごいー!」

男「あはは、有り難う。もっと頑張るからね」

子供達『頑張れー!』

鬼女「うん、本当に良かった。だが・・・」

男「うん。まだ、中には快く思っていない人や、妖族を信用出来ない、って言う人達もいるし、逆に、人間を敵視する妖(ひと)達もいるから、もう少し調整は必要だけどね」

犬女「まあ、いきなり違う種族の人達が手を取り合うのは難しいですよね」

狐女「そうね・・・」

男「そこで、だ。今日の会議で、一つの案が出た」

狸女「それは?」

男「うん。人間と妖族との交流を広めるために、試験的に人間の世界に妖族を住まわせてはどうか、という案が出たんだ」

狸侍女「それは・・・」

鬼女「もしや・・・」

男「うん。俺達が、選ばれた」

犬女「! と、いうことは遂に・・・」

狐女「私達が、男さんの故郷、人間の世界へ?」

507: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/27(日) 22:11:27.84 ID:AbqbfId00
男「うん。もちろん、基本的な資金は向こうで出して貰えるし、家の用意もある。今度は、全員が住める広さだよ。少し、大きすぎて向こうの人達には申し訳ないけどね」

狸女「それでは、犬女さんが言っていた下見って・・・」

男「うん、その家だよ」

狸侍女「・・・凄い、ですね・・・」

鬼女「我々全員が暮らせる広さの家を用意して貰っただけでも凄いのに、さらに基本的な資金は出して貰える、だと? 男、お前は一体どんな交渉を・・・」

男「い、いやいや! 悪いことは何もしてないよ! 純粋に、先方の御厚意だよ」

狸女「もう厚意という枠を越えているような・・・」

犬女「そ、それで、その引っ越しはいつ・・・?」

男「あー、うん・・・。一週間後」

狐女「一週間!?」

鬼女「き、急すぎないか?」

子供達『??』ポカン

男「ああ、皆には後で説明するから、まずはご飯を食べちゃいな?」

子供達『はーい!』ムシャムシャ パクパク

狸侍女「しかし、一週間とは・・・」

男「あー、まあ、今後の事も考えて、出来る限り早くしよう、っていう事になったんだ」

狐女「それで、一週間・・・」

男「まあ、確かに急な話だけど、その間は俺も休暇を貰ったからさ。準備とか出来るから。安心してくれ」

狸女「では、今日から暫くは?」

男「うん、ここにいるよ。暫く皆とも会えなかったから、少しでも時間を作りたくてね。大狸さんと犬父さんに無理を言って、休みを貰ってきたよ」

鬼女「そうか! それは良かった!」

508: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/27(日) 22:13:45.93 ID:AbqbfId00
子供達『???』ポカーン

狸侍女「お父さんが、沢山遊んでくれるそうですよ」

子供達『ほんとー!?』

男「ああ。お引っ越しの準備もあるけど、時間が空いているときは、一緒に遊べるぞ?」

子供達『やったーー!』ワー!

犬女「あはは。良かったねー、皆」

子供達『うんー!』

カチャカチャ パクパク

犬女「・・・そっかあ。ついに、人間の世界に・・・」

狐女「この数年間、長いようで、短いようで・・・」

狸女「あまり、実感が湧きませんわね」

狸侍女「でも、本当なのですね」

鬼女「ああ。やっと、私達の夢が、動き出したな」

男「うん。人間と妖族が、共に生きてゆける世界へ。この子達の世代では、きっとそうなるように、頑張るよ」

犬女「勿論私達も一緒ですよ?」

狐女「そうね。ずっと一緒だわ」

狸女「ええ。あの日、誓いましたものね」

狸侍女「あなたに、ずっと付いて行くと」

鬼女「ああ。決して離れはしないさ」

男「うん。皆のおかげで、今の俺があるんだ。この子達が、きっと人間と共に暮らせていける世界にしてみせる。・・・だから、皆。これからも、俺に付いてきてくれ!」

女衆『はい・・・!』








この時から更に数年後。男、犬父、大狸等による二世界間を繋ぐ『穴』の仕組みの解明により、両世界間の行き来は簡易となり、貿易や留学から始まった交流は、ついに正式な条約を持って締結された。

テストケースとして、人間界で暮らすことになった男達一家の協力が、国交樹立の大きな手助けとなったのだ。

そして、互いの文化の交流により、両世界はこれまで以上の繁栄を見せた。

二つの世界が、手を取り合い、助け合う世界。

人と妖族とが、手を取り合い、生きていく世界。


その新しい世界を作り上げていった男と、彼を愛し、理想を共にした女達。

彼等が作り上げた、新しい世界。

そこに生きる、彼等の子供達の毎日。

次なる世代を生きる者達の日々。

         
 







         
          それはまた、別のお話し