1: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:43:15.55 ID:JSrmaLguo
※モバマスSSです

注意
 セリフの表現では、特定の人物を以下のように略しています

・トレーナー → トレ
・マスタートレーナー → マス

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376156595

引用元: トレーナー「スイミングレッスン」 


 

2: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:44:40.38 ID:JSrmaLguo
――――――――――――トレーナー室

P「……それで、次回のフェスについてなんですが」

マス「ふむぅ……」

トレ「あっ、もうこんな時間……姉さん、わたしはそろそろ例のところに……」

マス「おお、気をつけていくんだぞ?」

トレ「はい。それではお先に失礼します」

P「ん? トレさん、もうお帰りですか? 珍しいですね」

トレ「ちょっと、用がありまして……申し訳ありません」

P「いえ、いいんですよ。いつも、遅くまで残って頂いてるのでたまにはゆっくりされてください」

トレ「すいません。それでは……」


ばたん

3: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:45:29.15 ID:JSrmaLguo
P「トレさんが早上がりなんて珍しいですね」

マス「気になるかね?」

P「んー、気にならないと言ったら嘘になりますが」

マス「たまには男たちと会う時間くらい作ってやっても良かろう」

P「えええっ!! 男『たち』!?」

マス「なぜP殿が驚くのかね?」

P「い、いえ……それはその……」

マス「心配するな。ただプールに出かけただけだ」

P「プール??」

4: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:46:44.79 ID:JSrmaLguo
――――――――――――プール

トレ「はーい、みんな! 準備体操しますよー!」 


子供たち「はーい!」

トレ「じゃあ、先生のあとについて体操してくださいねー」

子供たち「はーい!!」

トレ「いっちにい、さんしー」

子供たち「ごーろく、しちはーち」

トレ「ゆっくりでいいですからねー。さぼっちゃだめですよー」

男の子A「せんせー、早くおよぎたいよー」

トレ「だめだめ。ちゃーんと、体操しないと泳がせてあげませんよー」

男の子A「ちぇー」

5: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:47:57.33 ID:JSrmaLguo
トレ「はーい、それじゃあシャワー浴びてくださいね」

子供たち「はーい」

男の子A「つめてー!」

男の子B「ほらー、くらえっ!!」

男の子A「あっ! やりやがったなー!」

トレ「こらっ! 暴れちゃだめですよっ!!」

男の子A「せんせーもくらえっ!」

トレ「きゃああっ! つめたっ!!」

男の子B「あはははは」

トレ「もうっ! 先生が怒らないと思ってるでしょ!? 暴れる子は入れてあげないんですから!」

男の子A「うそうそ!! せんせー、ごめんなさーい」

男の子B「ごめんなさーい」

トレ「わかればいいんですよ。今度したら、めーですからね」

6: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:49:38.87 ID:JSrmaLguo
――――――――――――トレーナー室

P「小学生のスイミングスクール……ですか?」

マス「ああ。知人のジムのオーナーがな、夏休み期間中だけやってくれるように頼んできた」

P「へえ」

マス「我々もそのスポーツジムには世話になっているし、それくらいはと思ってな」

P「なるほど。トレさんには向いてそうですよね」

マス「姉妹でインストラクター資格を持っているのは私とトレだけだからな」

P「すごいな。何でもできるんですね?」

マス「私が出向いてもいいのだが、如何せんやることが多くてな」

P「マスさんが先生だと、子供たちはトラウマになりそうですね。あはははは」

マス「……P殿、スペシャルドリンク入りのプールに入ってみたいかね?」

P「うそですごめんなさいもういいません」

7: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:50:53.28 ID:JSrmaLguo
――――――――――――プール

トレ「はーい、それじゃあゆっくり入ってくださーい」

男の子A「ひょー! きもちいいー」

トレ「先生が合図したらゆっくり顔つけてくださーい……いきますよー」ピッ

男の子A「ぶくぶくぶくぶく……」

トレ「はい! 顔上げて!」

男の子A「ぷはーっ」

トレ(皆、だいぶ水に慣れてきたみたいね…………あら?)


女の子「…………」

8: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:51:47.04 ID:JSrmaLguo
トレ「どうしたの? 一緒に入りましょう?」

女の子「……いい……見てる」

トレ「先生が一緒だから大丈夫よ? ねっ?」

女の子「……いやだもん……むこうでみてる」

男の子A「せんせー、そいつ、水にはいれないんだぜー」

男の子B「なにしにきたんだよー?」


女の子「………………グスッ」タタタタタ


トレ「あっ! 待って!……もうっ! そんなこと言っちゃダメですよっ!」

男の子A「ほんとだもんなー?」

男の子B「いっつもけんがくしてるんだよー」

トレ「……」

9: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:53:48.16 ID:JSrmaLguo
――――――――――――トレーナー室

P「しかし、トレさんなんでも出来るんですね? うらやましいな」

マス「……あいつが最初からなんでも出来たと思うかね?」

P「えっ? 違うんですか?」

マス「違うな。ことさら、水泳に関してはな……」

P「???」

マス「あいつには、それなりの苦悩があったということだ」

10: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:54:46.24 ID:JSrmaLguo
――――――――――――プールサイド

女の子「……グスッ」

トレ「大丈夫かな?」

女の子「せんせい……」

トレ「隣、座ってもいい?」

女の子「うん……」

トレ「泳ぐの……きらい?」

女の子「わかんない……およげないから」

トレ「そっかあ。泳げるようになりたい?」

女の子「うん……」

トレ「じゃあ、先生と頑張ってみない?」

女の子「むりだよ! 水こわいもん」

トレ「大丈夫。少しづつでいいから」

女の子「せんせー、すごく泳げるからそんなこと言えるんだもん。わたしのきもちわかんないのに」

トレ「……わかるよ」

女の子「えっ?」

トレ「先生もね……小学生の頃、泳げなかったの」

11: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:56:02.77 ID:JSrmaLguo
女の子「ほんと?」

トレ「本当よ。私のお姉ちゃん達はねすごく泳ぎが上手かったの」

トレ「だけど、私もあなたと同じで水が怖くてね……」

トレ「海やプールに連れて行ってくれたけど、いつも遠くから見てるだけ……」

トレ「本当はお姉ちゃんみたいに泳ぎたいのに、意地張って……」

女の子「……」

12: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 02:59:19.15 ID:JSrmaLguo
トレ「泳げなくてもいいや!って思ったこともあったけど……」

トレ「やっぱり泳ぎたい気持ちのほうが大きいから、何もしないで終わるのは嫌だった」

トレ「だから、こっそりお風呂場で洗面器に顔つけたりして、少しづつ慣らしていったの」

トレ「そうしたら、だんだんお風呂もプールも変わんないなーって」

トレ「そのうちに、プールに入れるようになって、バタ足やクロールもできるようになったのよ」

女の子「……そうなんだ」

トレ「初めからなんでも出来る人なんていないの。 だから私も気持ちはよくわかるよ」

女の子「……」

トレ「今すぐたくさん泳げなくてもいいの。少しづつ、自分に合わせていけばきっと泳げるようになるわ」

女の子「……ほんとに?」

トレ「本当よ。泳いでみたいんだよね?」

女の子「うん」

トレ「じゃあ、大丈夫。だから、その気持ちは忘れちゃだめだよ?」

女の子「わかった……」

13: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:00:03.91 ID:JSrmaLguo
――――――――――――トレーナー室

P「なるほど……トレさんにそんなことが……」

マス「もちろん、それは水泳に限ったことではない。ダンスや歌、様々な部分であいつは努力を怠らなかった」

マス「素質の部分で言えば、私や他の姉妹の方が上だったかもしれない」

マス「だが、あいつは地道な訓練のお陰で、今では私ですら舌を巻くほどの動きを見せる」

P「全ては努力のなせる業ということか……トレさんらしいな」

マス「無論、それだけではない」

P「えっ?」

14: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:02:11.35 ID:JSrmaLguo
――――――――――――プール

トレ「いいかな? まずは、水に入らなくていいから、水を手ですくって……」

女の子「こう……?」

トレ「そう……それを少し顔にかけてくださーい」

女の子「……あぅぅ、つめたい」

トレ「目は閉じててもいいから、軽く閉じて。ぎゅーってつぶると余計に怖いですよー」

女の子「うん……」

トレ「じゃあ、お水かけますよー……ほら」

女の子「ひゃああ……」

トレ「どう?」

女の子「へいきそう……すこしはこわくないかも」

トレ「ふふふ、よかった」

15: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:02:56.98 ID:JSrmaLguo
女の子「ねえ……せんせー」

トレ「なあに?」

女の子「そこ……深くない?」

トレ「平気よ。多分、腰の上くらいかな?」

女の子「……」


ざぶん


トレ「えっ?!」

16: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:04:05.92 ID:JSrmaLguo
女の子「つ、つめたい……」

トレ「無理しなくていいんですよ?」

女の子「だいじょうぶ」

トレ「でも、すごいじゃない! やっとプールに入れたね?」

女の子「うん。せんせいみたいになりたいから」

トレ「私?」

女の子「前にせんせーがおよいでるのみて、すごくきれいだったし」

女の子「それみて、わたしもああいうふうになりたいなって」

トレ「そうなの……」

17: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:05:51.36 ID:JSrmaLguo
男の子A「おっ! すげー! プールに入れるようになったのか?」

女の子「えっ?……う、うん……」

男の子B「じゃあさ、いっしょにならおーぜ」

女の子「……いいの?」

男の子A「あたりまえじゃん! みんなで泳げるようになろーな」

女の子「うんっ!」


トレ(ふふふ、すごいなあ……子供は)

18: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:07:23.10 ID:JSrmaLguo
――――――――――――トレーナー室

P「なるほど……身近に明確な目標があるということが大事なんですね」

マス「トレは本当は好奇心旺盛な娘だ。ほんの少しだけ興味を持たせてやればなんでも出来る」

P「つまり、マスさんがトレさんの努力の源になってるわけだ」

マス「私はそれを意識したことはなかったがな。お陰でいつあいつが追いついてくるかヒヤヒヤだよ」

P「トレさんはやっぱすごいな。今度はアイドルのお手本になってもらう番ですよ」

マス「もちろん、目標は泳ぎやレッスンに限ったことではない」

P「と、言いますと?」

マス「例えば……恋もそうだな」

P「えっ? 恋の目標?」

マス「P殿は知らなくてもよろしい」

P「???」

19: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:08:33.02 ID:JSrmaLguo
――――――――――――後日、トレーナー室

マス「ふむ……」

P「マスさん、どうしたんですか?」

マス「例のスイミングスクールから連絡があってな、もう少しトレをインストラクターで借りたいと言ってきた」

トレ「えっ?!」

マス「どうだ? もう少しやってみるか?」

トレ「えっと……姉さんやPさんが許していただけるなら、やってみたいですが」

P「僕は構いませんよ。いつも迷惑をかけてますんで、トレさんがやりたいのであれば反対はしません」

マス「私も構わん。お前のことだ……それで普段のレッスンを疎かにはしないだろうしな」

20: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:09:53.68 ID:JSrmaLguo
トレ「ありがとうございます……でも、どうして急に?」

マス「オーナー曰く、お前の指導が高評価でな。入会希望が例年の倍に増えたそうだ」

トレ「そんな……私なんて……」

マス「しかも、入会者の大半は子供の父親自ら申し込んでくるらしい」

トレ「そういえば、お父さんたちの送り迎えが増えましたね……不思議です」



P(水着のトレさんなら、子供をダシにしても見たいだろうな……うらやましい)

21: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:11:22.52 ID:JSrmaLguo
マス「もちろん、受けるのは構わんがオーナーには条件を出した」

P「条件?」

マス「一日だけプールを我々のために開放してくれと頼んである」

P「それまた、どうしてですか?」

マス「水泳は有酸素運動としてはもっとも効果的な訓練だ。アイドルたちの基礎体力を付けるにはもってこいである」

P「それはつまり……」

マス「後日、プールでのレッスンを行う。P殿、君も参加したまえ」

P「僕もですか!?」

マス「嫌かね?」


P(待てよ……それって、トレさんから教えてもらえるのか?)


P「そうですね……僕も運動不足ですし、トレさんの指導があれば」

トレ「や、やだ!……Pさんたら……」


P(うほほーい! 天国じゃないかっ!)

22: ◆yfWmR9mD4k 2013/08/11(日) 03:12:23.98 ID:JSrmaLguo
マス「心配するなP殿。君は私が直々に訓練してやろう」

P「えっ」

マス「案ずるな。8時間もスペシャルレッスンをすればドーバー海峡ですら泳げるぞ」

P「え、えと……そこまでは……」

マス「水着の我らを間近に見ながら、水泳の特訓とは君も幸せものだな」


P(地獄しか見えない……)



おわり