1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 15:20:47.03 ID:UGp8n4/n0
――大洗女子学園戦車倉庫

沙織「はぁ~今日の練習すっごい体力使ったかも~」

麻子「通信手なんだからほとんど動いてないだろ」

みほ「通信連絡の機会が多いと疲れるものだから」

優花里「なんだかすごくお腹が空きましたねぇ。時間も時間ですし、よければみんなでご飯食べに行きませんか?」

麻子「ケーキ」

沙織「それ晩御飯じゃないでしょ」

華「……」コソコソ

みほ「華さん?」

華「は、はい? なんでしょう?」ビクッ


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引用元: 西住みほ「マシマシ作戦です!」 


 

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 15:47:28.64 ID:UGp8n4/n0
沙織「華は何食べたい? なんなら家でご飯作ろっか?」

華「いえ……その、今日は私はご遠慮させていただきます」

優花里「ええ!? 五十鈴殿、体調でも悪いんですか!?」

華「そういうわけではないのですけど……」

麻子「五十鈴さんが食事を断るとは……私が早起きするくらい有りえないことだ」

みほ「何か大切な用事があるとか?」

華「ええまぁ……そこまで重要というわけでもない私用なのですが。今日はちょっと食べに行きたいものがありまして」

沙織「なんだそんなこと? ならみんなで一緒に行けばいいじゃん!」

華「いえ、ちょっとそのお店がつまり……少々特殊なところなので」

優花里「なにか変わった食材を扱ってるお店なんですかね?」

みほ「私は別にそれでもいいけど……」

沙織「じゃあそこに行こう! 華が行きたがるくらいなら美味しいところだろうし」

華「美味しいのは美味しいのですけど……」

麻子「なんでもいいから早く行こう。お腹空いた」グゥ~



――学園艦のとある一角

ワイワイ ガヤガヤ

《ラーメン 三郎》

みほ「ラーメン屋さん?」

沙織「なんだ、見た感じ普通のお店じゃん」

優花里「でも、夕方にしては既にすごい行列ができてますね」

麻子「というか、よく見たらまだお店は開いてないんじゃないのか?」

華「最近になって学園艦にオープンした、人気店の系列なんです……あの、本当にみなさんも来るんですね?」

沙織「うん。たまにはラーメンも食べたいし」

麻子「……しかし何か含みのある言い方だな。何か変なラーメンでも出されるのか?」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 16:12:34.05 ID:UGp8n4/n0
華「……詳しくは後ほど説明します。ただみなさん、私の言うことをよく聞いて注文してください。それだけはお忘れなく」

みほ「ふぇ? わ、わかりました」

優花里「五十鈴殿……まるで砲撃前のような張り詰めた表情ですね」

沙織「ただのラーメン屋さんで一体なにが始まるっていうのよ~……」


ガラッ


店主「はい、お待たせしました。どうぞいらっしゃいませ~」

優花里「お、開店したみたいですよ!」

みほ「よくみたら並んでる人、体の大きな男の人ばっかりだね……ラーメン屋さんだからそういうものかもしれないけど」

麻子「……この行列、しばらくは捌けそうにないな。順番が来たら起こしてくれ……」zzZ

沙織「立ったままでよく寝られるね麻子……」



~四十分後~

店主「――ありがとうございました~。お次は何名様?」

華「5名です」

店主「2,3人で分かれてしまうかもしれないけど、大丈夫?」

華「ええ、構いません」

優花里「席はカウンターだけなんですねぇ」

沙織「っていうかお店の中めちゃくちゃ狭くない?」

華「基本的にカウンター席だけのお店ですから……食べ終わったらすぐに次の人に席を譲るのがマナーです」

みほ「あんまりゆっくりしてられなさそうだね。みんなすごい勢いで食べてるし……」

優花里「な、なんだか私、緊張してきてしまいました……」

華「大丈夫。注文の仕方さえ間違えなければ普通に美味しく食べられますから」

麻子「zzZ……」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 16:35:01.62 ID:UGp8n4/n0
沙織「なんかすんごいニンニクと脂の匂いがする……」クンクン

華「……」ジュルリ

優花里「五十鈴殿、涎が」

華「はっ! いけませんわ……こほん、それではみなさん。まずはこの券売機で食券を購入してください」チャリーン

みほ「いろいろ種類があるね。じゃあ普通のラーメンで――」

華「待ってみほさん!!」

みほ「は、はい!?」ビクッ

華「ここのラーメンは、普通のサイズで他のお店の『大盛り』に匹敵する量が入っています。食べ切る自信がありますか?」

みほ「ぁう……ちょ、ちょっと自信ないかも」

華「でしたら、こちらの『小ラーメン』を買ってください。これなら普通の量でいただけますから」

みほ「う、うん。わかりました」ガコン

沙織「華の好きなお店っていうからなんとなく予想はしてたけど……普通の量からしてすごいんだね、ここ。私も『小ラーメン』にしよう!」ガコン

優花里「私は……ちょっとお腹が空いてるので、普通のサイズでいってみます!」ガコン

沙織「麻子~? あんたはどうするの?」

麻子「ん~……? 普通のでいい……」ムニャムニャ

沙織「結構多いみたいだよ? 食べられるんだね?」

麻子「食べる食べる……」ガコン

みほ「私と沙織さんは黄色のプラスチック券、優花里さんと麻子さんは青い券が出てきたね。この券の色でサイズがわかるんだ」

華「その通りです。私は……万が一のこともありますし、今日は少なめにしておきましょうか」ガコン

優花里「これはどれくらいの分量なんですか?」

華「『大ラーメン豚ダブル』ですね。普段は特大にするんですけど、もしみなさんが食べきれないときは私が助太刀しますので」

沙織「……下手なツッコミは野暮だよね」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 16:52:58.37 ID:UGp8n4/n0
店主「五名様、すみませんが2、3人の席で分かれてお願いします」

みほ「どう分かれよっか」

沙織「私は麻子の面倒みなきゃいけないから。ほら麻子起きて! 二人で行くよ」

麻子「んお……おっけー」

華「ではみほさんと優花里さんは私と一緒に」

優花里「なんだか妙に五十鈴殿が頼もしく思えてきました……」

華「――その前に、最後のアドバイスです」

み沙優「「「!!」」」

華「『ヤサイアブラスクナメ』」

麻子「?」

華「店主さんに何か聞かれたら、必ずそう答えてください。初心者が美味しく食べるためのコツです」

沙織「初心者……?」

優花里「よ、よくわかりませんが了解してであります! ヤサイアブラスクナメ、ヤサイアブラスクナメ……」

みほ「なんの呪文だろう」

麻子「zzZ……」

沙織「麻ー子! いい加減起きなって!」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 17:12:51.38 ID:UGp8n4/n0
華「……♪」

優花里「……今更なのですが、普通のラーメン屋さんとは雰囲気がまるで違いますね」

みほ「うん……みんな一言も話さずに食べることにだけ集中してる。やっぱり早く食べないといけないのかな」

華「ここの店主さんは寛容な方ですから、そんなに堅苦しく考えることはありませんよ。次のお客さんに席を回すのも大切ですが、ゆっくり味わって食べるのは食事の立派な趣です」

優花里「そ、そうですよねぇ!」

華「ただ……素早く食べるのは、出来立てのラーメンを美味しく食べ切るための秘訣でもあります」

みほ「どういうこと?」

華「ふふ……食べ始めたらきっとわかりますよ」

チャッチャッ

店主「――はい、ではそちらの方から。『ニンニク入れますか』?」

優花里「え、あ、私でありますか!」アセアセ

華「優花里さん、落ち着いて?」

優花里「あ、そうでありました……では、ヤサイアブラスクナメ、でお願いします!」

店主「はいよ。次はそちらの方、『ニンニク入れますか』?」

みほ「えっと、ヤサイアブラスクナメで」

店主「はいよ。次の方は?」

華「ニンニクヤサイアブラマシマシカラメで」

み優「「!!?」」

店主「はいよ。次の方――」

みほ「は、華さん今のは……何?」

華「ここでは野菜やニンニクの量を増やしてもらえるんです。それを伝えるための『コール』ですね。そんなに格式ばったものではありませんけど」

優花里「なるほど……だから我々初心者は野菜や脂を少なめにした方が良い、ということだったんですね」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 17:23:58.42 ID:UGp8n4/n0
店主「次の方、『ニンニク入れますか』?」

男性「ニンニクヌキヤサイマシマシカラメダブル」

店主「はいよ。次のお嬢さん、『ニンニク入れますか』?」

麻子「んー……? ニンニク?」

沙織「ほら麻子! さっき言われたとおりに答えて!」

麻子「……なんだっけ? まぁいい、前の人のと同じので」

沙織「!!」

店主「はいよ。次の方、『ニンニク入れますか』?」

沙織「あ、えっと、ヤサイアブラスクナメ……あ、あとニンニクは抜きで!」

店主「はいよ!」

沙織「もー……どうなっても知らないからね」

麻子「ただのラーメンだろ……問題ない」



オマチドウサマ!

ドォーン!!



華「あぁ……いい匂いですわ……♪」

みほ「……に、匂いっていうか……」

優花里「我々のはともかく、五十鈴殿のこれは果たして、ラーメンなのでしょうか……間違いなく超弩級の何かですよぉ……!」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 17:29:29.32 ID:UGp8n4/n0
華盛り 参考

no title

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 17:38:49.60 ID:UGp8n4/n0
店主「お待ちどうさま」ドン

麻子「……………………」

沙織「……麻子、私手伝えないからね」

麻子「なんだこれは……ラーメンを頼んだのに野菜の山が出てきたぞ……!」

沙織「華の言うことちゃんと聞いてないから~……あ、でも味は美味しい!」

麻子「……」モギュモギュ シャクシャク



みほ「確かに、これは小サイズと思えないボリュームだね」

優花里「西住殿の前でご飯を残すわけにはいきません……いざ!」ズルズル

華「」モグムシャバキガツバクバリ

みほ「(普段ラーメンを食べてる時には聞かない音がする……)」

優花里「もぐもぐ……なんといいますか、妙に食べてしまう味でありますね、これは……!」ズルズル

みほ「麺も太いのに柔らかくて美味しいね。ちょっと味付けが濃いけど……野菜と一緒に食べてるとちょうどいいかな」モグモグ

華「」バリジャクジョリムグモゴ

優花里「あ、あれだけあった五十鈴殿の野菜がもうなくなってます……私も負けてられません!」

みほ「あんまり無理しないでね優花里さん……?」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 17:51:14.96 ID:UGp8n4/n0
沙織「ふぁ~、私小さいサイズだったのにもうお腹いっぱいだよ~。麻子、どう?」

麻子「…………麺が、見えないんだが」パリパリ

沙織「……」


ゴチソウサマ

アリガトウゴザイマシタ~


みほ「う~ん、流石にスープは全部飲めそうにないなぁ」

華「無理して飲まなくても大丈夫ですよ。自分が満足できるだけの量を食べる。それが一番大切ですから」

優花里「あの……五十鈴殿はもう麺まで食べ切ったのでありますか……?」

華「はい。あとはゆっくりと柔らかな豚肉をいただこうと……」

優花里「さ、流石です……私も野菜は全部食べたのですが、後半にきてなんだか急に麺が重たくなってきて」

華「ふふふ、やっぱりそうなってしまいましたか。ゆっくり食べているとどうしても麺がスープを吸ってしまいますから。野菜を素早く食べ切る自信がないときは、初めに麺と野菜の位置を入れ替えると食べやすいんですよ」

みほ「そんな技があったんだ……」

優花里「うぅ~、これは確かに特殊であります……ラーメンを食べるときにそこまで気を使ったことなんてありませんよぉ」モグモグ

みほ「だろうね……沙織さんたちは大丈夫かな?」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 18:06:09.20 ID:UGp8n4/n0
麻子「ぐ……や、やっと麺が見えた……」

沙織「で、でもそれ……スープ吸ってものすごいことになってるよ?」

麻子「むぐ…………お、重い……」ズルズル

男性「ごちそうさま」ゴトン

店主「ありがとうございました~」

沙織「私もう食べ終わっちゃったから、先行くよ? 大丈夫?」

麻子「……大丈夫……じゃない……」

沙織「ちょっと待ってて……ごちそうさまでした」ゴトン

店主「はい、ありがとうございました」



優花里「こ、これが最後の一口であります……!」ゼェゼェ

みほ「が、頑張って優花里さん! 私ももう食べ終わるから!」

優花里「西住殿の応援! 西住殿の応援!」ズルズル

華「お二人は大丈夫そうですね。では私は一足お先に……」ゴトン

沙織「……華、ちょっといい?」コッソリ

華「……麻子さんですね?」

沙織「ごめん、寝ぼけてとんでもない注文しちゃったみたいで……」

華「わかりました。すみませんご主人さま。私の友人がそこにいるのですけれど、お手伝いしても構いませんか?」

店主「あぁ、構いませんよ。いつも食べに来てくれてありがとう」

華「こちらこそ美味しいご飯を食べさせていただいて……」

優花里「……五十鈴殿はすごいでありますね」ゲプ

みほ「まぁ、こういう時の信頼感は特にものすごいよね……」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 18:27:09.36 ID:UGp8n4/n0
――ラーメン三郎 大洗女子学園艦店前

ガラッ

アリガトウゴザイマシタ~

優花里「んほぉぉぉ~……も、もうレーション一つ食べられませぇん……」

みほ「普通のラーメンでもすごい分量だったねぇ」

沙織「なんか別の国の文化に触れたみたいな感じだよ……っていうか麻子、大丈夫?」

麻子「し……しばらく何も食べたくない……」ウップ

華「すみません、やっぱり私一人で来るべきだったかも……」

みほ「確かに誰でも気軽に誘って行けそうなお店じゃなかったね」アハハ…

沙織「でも味は嫌いじゃなったよ? ニンニクはニオイ的にきつかったけど」

優花里「ハッ! もしや今の私、すごくニンニク臭いのでは……!?」クンクン

華「リンゴ、召し上がられます? ニンニクを食べたすぐ後にリンゴを食べると匂いが消えるんです」ヒョイ

沙織「わざわざリンゴ持ってきてたの!?」

華「流石にニンニクの匂いを持ったまま歩き回るわけにもいきませんし……かといってニンニクが入ってないとやっぱり物足りないですから」

優花里「ぜひいただきます!」シャリシャリ

みほ「私もちょっともらおうかな」

華「リンゴの他には牛乳、黒ウーロン茶なども効果があるらしいです。食べたすぐ後じゃないとダメみたいですけど」

麻子「……どのみち私はもう懲り懲りだ。少なめにしていたところで、あれは全てにおいて強烈すぎる……」

華「麻子さんのお口には合わなかったかもしれないですね……ここのラーメンは好みが真っ二つに分かれる味ですから」

みほ「私も個人的には少し苦手だったかなぁ……美味しいんだけど、ちょっと塩辛いと思っちゃって」

華「ふふ、今度はやっぱり普通のお店に行きましょうか。私は三日に一度はここに食べに来ますし」

沙織「流石にそのペースで行けるのは華だけだと思うよ……」

アハハハ…



優花里「………」

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 18:34:57.73 ID:UGp8n4/n0
~数日後~

――大洗女子学園戦車倉庫

沙織「んーっ、お疲れ~。今日はどうする?」

麻子「ケーキ食べたい」

みほ「麻子さん毎日それだね……」

華「すみません、今日は私……」

沙織「あ、華はあそこに行く日なんだ」

麻子「すまんが同行できん」

華「いえいえ。私のことはお気になさらず」

優花里「あ、あの、実は私もちょっと……」

みほ「優花里さんも?」

沙織「まぁそういう日もあるよね。じゃーみぽりんと麻子はウチに来る?」

麻子「ケーキ作ってくれるなら行こう」

沙織「ゲンキンな子なんだからー……んじゃ、ゆかりんと華はまた明日ね!」

優花里「は、はい! 失礼します!」

華「それでは」

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/05(火) 18:46:54.23 ID:UGp8n4/n0
………

華「……」テクテク

優花里「……」テクテク

華「……あのー、優花里さん?」

優花里「は、はい!」

華「こちらに行くと優香里さんのお宅とは逆方向だと思うのですが……」

優花里「い、いやーその……じ、実は私……なんだか無性にもう一度あのラーメンが食べたくなりまして」

華「まぁ……そうなんですか?」

優花里「食べたすぐ後はもう絶対に食べられないと思ってたんですけど……日が経つにつれて、あの脂っこさとニンニクの味が頭から離れない状態になってしまい……!」

華「……ふふ、優花里さんもこちらの住人になられてしまったのですね」

優花里「あ、あの! ご迷惑でなければ、もう一度一緒に連れて行っていただけませんか! 今度は少し野菜を多めにしたものにチャレンジしてみたくて……!」

華「もちろん、喜んでご一緒いたしますよ。ただ、無理はしないように。あくまで美味しくラーメンを食べるという目的を忘れてはいけませんよ?」

優花里「はい! 不肖、秋山優花里この身いっぱいでラーメン三郎を楽しむつもりであります!」

華「それではいきましょう優花里さん。三郎・フォー!」

優花里「三郎・フォー!」





※食事はあくまで楽しむものです。無理をせず意地を張らず、自分の胃袋と相談しながら美味しい三郎道を楽しみましょう。



おしり