【 陽炎 】
『 金魚を何年育てても、錦鯉にはならない 』
せっせと餌をやる雪風に、真実を告げられないままでいる。
『 ザリガニを何年育てても、伊勢エビにはならない 』
甲斐甲斐しく世話をする時津風に、未だ言えないままでいる。
駄目なお姉ちゃんを、許してほしい。
陽炎はまだまだ未熟です。
黒潮「陽炎」
不知火「陽炎」
陽炎「絶対無理!そもそも誰よ、こんな大嘘教えたのは!」
黒潮「だって言わんと」
不知火「恥をかくのは雪風達です」
陽炎「だから無理って!インコの時だって、大変な騒ぎになったじゃない!」
黒潮「あー…」トオイメ
不知火「あー…」トオイメ
陽炎「もうちょっと大きくなったら、絶対言うから!ね!ね!」
特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!7<艦隊これくしょん -艦これ-> (ファミ通文庫)
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3: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:47:14.17 ID:adbe+RHno
【 不知火 】
プリキュアへの道は、長く険しい。
追いかけても追いかけても届かない。
臥薪嘗胆。夢を諦めるなんてありえない。
◇◇◇
漣、そして春雨と共闘する事になった。
反則戦力を有する強大勢力への対抗措置。
春雨「三人がかりだなんて、ズルくないかな」
漣「戦いは数だよ、春雨ちゃ~ん」チッチッチ
不知火「大人数で交戦するのは、むしろプリキュアの正攻法です」キリッ
漣「ちょうどお昼ごはんを食べて寛いでいる頃だよ」ゲッゲッゲ
不知火「三方向から一気呵成に攻め込みましょう」
春雨「正義って何だろう……」
不知火「春雨はアレを見ていないから、そんな呑気な事が言えるのです」
春雨「明石さんって、そんなに凄いの」
漣「規格外戦力を全力投入した挙句、躊躇なく引き金を引ける程度には」
不知火「興奮状態の川内さんの群れと、夜戦で出くわしたイ級の気持ちが分かりました」
春雨「明石さんって……」
不知火「あと、あのデスメロン。魔改造鬼改修炸裂で、まさかの8スロ上等です」
漣「激昂状態の龍田さんの群れに、背後から強襲されたロ級になった気分だったよ」
春雨「夕張さんまで……」
ドキドキ!プリキュア♪ ラブラブ!プリキュア♪
不知火「楽しげな歌が聞こえます」
春雨「明石さん達の声だね」
漣「浮かれてるね。完全に油断してるよ」
不知火「背後から行きましょう。タイガー・タイガー・タイガーです」
4: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:48:07.12 ID:adbe+RHno
◇
明石「キュアピンクでーす!」キラキラー!
夕張「キュアメロンでーす!」ピカピカー!
大淀「キュアストラテジストが戦列に加わりました!」キュアキュアー!
漣「」
春雨「」
不知火「」
明石「大淀、長ーい!」
大淀「そ、そうでしょうか?」
夕張「キュアブラックでいいんじゃない?」
大淀「ブラックはちょっと……悪役みたいで」
夕張「でも初代とかそうだよ」
大淀「出来れば、その…もうちょっと可愛い方が」
明石「じゃあピンクでいいじゃない!キュアピンク!」
大淀「え、でもピンクは明石が……」
明石「全然いいよ!大淀にだったら譲ってあげる」
大淀「あの、でも私、黒髪だし……」
明石「そんなの関係ないよ!」ビシイッ!
大淀「明石……」
明石「キュアピンクになりたい気持ちがあれば、誰だってなれるよ!」
夕張「大丈夫だよ。大淀なら、きっと大丈夫」
明石「大淀なら出来るよ、自信を持って!」
大淀「二人とも……」ポロッ
明石「ほらほら、元気出して、フレッシュプリキュア! 」
夕張「泣いてちゃ駄目だよ、スマイルプリキュア! 」
大淀「うん…うん。わだじ、やるね!」グスッ
明石「よーし、それじゃあもう一回いくよー!」
夕張「みーんーなーでー♪」ハイ
大淀「プーリーキューアー♪」ターッチ
明夕大「イエイ!イエイ!イエーイ♪」パン!パン!パーンッ!
漣「」
春雨「」
不知火「」
5: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:49:11.11 ID:adbe+RHno
【 黒潮 】
黒潮「出来たでー」
雪風「わーい、たこ焼きー」
時津風「何だか甘い匂いがするよ?」
黒潮「んっふっふー、今日のは特別やでー」
雪風「特別ー?」
黒潮「名付けて、チョコたこ焼きやー!」
時津風「チョコたこ焼きー?」
雪風「すごい、すごーい!」
黒潮「ホットケーキ生地を丸く焼いてな、溶かしたチョコをかけたんや」
時津風「甘ーい、おいしーい!」
雪風「すごーい、甘ーい!」
黒潮「ようさんあるからな、じゃんじゃん食べような」ニコー
時津風「はーい」ニコー
雪風「わーい」ニコー
陽炎「黒潮」
不知火「黒潮」
黒潮「ちゃうねん」
6: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:49:46.45 ID:adbe+RHno
陽炎「もう甘いものは食べないって言ったじゃない!」
黒潮「ちゃうねん、これは別腹や」
陽炎「アンタいいかげんにしなさいよ!太ももとかパンパンじゃない」
黒潮「ちゃう!そんな事ない」
陽炎「スパッツもパッツンパッツンよ!」
不知火「パッツンパッツンです」
陽炎「パッツン パッツン スパッツンよ!」
黒潮「ちゃう!これは洗濯して縮んだんや、太ったんやない」
陽炎「お腹だってポンポンじゃない!」
不知火「ポンポンです」
陽炎「ポンポコ ポンポン たぬきさんよ!」
黒潮「たぬきとかちゃう!お腹も全然出てないから!」
陽炎「とにかく、もう甘いものは禁止!絶対駄目!」
黒潮「そんなん横暴や、何でそんな事言うん」
陽炎「不知火!」つ メジャー
不知火「はっ!」つ 体重計
黒潮「うわああーーん!陽炎のアホー!」ダダダーッ!
7: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:51:03.02 ID:adbe+RHno
【 初風 】
みんなで暮らす鎮守府は、海辺の小さな田舎町。
珍しいものは何にも無いが、長閑で平和な良い所。
雪風「初風、初風、見てください!ちょうちょ捕ってきました!」
初風「あら、モンシロチョウかしら、それともアゲハ?」
雪風「いっぱいあります」ニコー
≪≪ 蛾蛾蛾芋虫蛾蛾蛾蛾飛蝗蛾蛾蛾 ≫≫ ウジャウジャ
初風「」
◇
黒潮「雪風どないしたん?メッチャ泣いとるやん」
不知火「初風が雪風の虫かごを、海に投げ捨てたらしいです」
黒潮「はあ?何でそんな事を」
不知火「さあ」
陽炎「初風、ちょっと!何で雪風泣かすのよ」
初風「私、悪くないから!絶対謝らないから!」
8: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:51:52.64 ID:adbe+RHno
◇◇◇
酒保(売店)
明石「虫かごですかー」
初風「やっぱり無いわよね」
明石「すみません、流石にちょっと……」
初風「いえ、無茶言ってごめんなさい」
雪風「……」ショボーン
初風「……悪かったわよ。ごめんなさい」
初風「新しいの買ってあげるから、明日街まで付き合いなさい」
初風「あと、お詫びに何か欲しいものも買ってあげる」
雪風「……ホント?」
初風「あんまり高いのは駄目よ」
雪風「うんっ!」ニコーッ
時津風「おでかけなの?時津風も行く!」タタターッ
初風「アンタは駄目」
時津風「ヤダヤダ!時津風も一緒に行く!おでかけする!」キャンキャン
初風「アンタは関係ないでしょ」
時津風「ヤダヤダ!やーだー!時津風も!時津風も!」ジタバタ
初風「ああもう、うっさい!」バシーッ!
時津風「うわーん!初風がぶったー!」ビエーッ
陽炎「初風!時津風泣かせないの!」
初風「私、悪くないから!」
9: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:52:19.02 ID:adbe+RHno
◇◇◇
翌日。
初風「……結局ついて来てるし」
時津風「おっでかけ!おっでかけ!」キャッキャ
雪風「初風、早く!早くー!」キャッキャ
初風「いい?言う事を聞かなかったら、すぐ帰るからね」
時津風「はーい」ニコー
雪風「はーい」ニコー
陽炎「これ、雪風と時津風の分。昼食代と交通費」
陽炎「あと、おやつに何か買ってあげて」
初風「え?いいわよ、そんなの」
陽炎「いいから」
時津風「初風ー、まーだー?」
初風「はいはい」
陽炎「二人とも車に気を付けるのよ」
雪風「はーい」
時津風「はーい」
陽炎「それじゃ、いってらっしゃい」ニコ
10: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:53:25.58 ID:adbe+RHno
【 雪風 】
電車に揺られて街まで進む。
店も人も華やかで、綺麗とお洒落が目白押し。
横文字の並ぶ店先も、そこはかとなく良い感じ。
初風「いい匂いね」
雪風「パン屋さんだよ、パン屋さん!」
時津風「パン食べたーい」
初風「そうね、お昼はパンにしましょうか」
初風「天気もいいし、公園で食べましょう」
雪風「わーい」
◇
時津風「すごーい!たくさんあるよ」
初風「焼きたてなのね、ちょうど良かった」
雪風「見て見て!アンパンマンだよ!アンパンマンのパンがあるよ!」
初風「はいはい」
初風「手で触っちゃ駄目よ、トングを使ってね」
時津風「トング?長門さん?」
初風「それはコング」
時津風「コングかー」テヘペロ
雪風「トングって何ですか」
初風「トングっていうのは、コレ。この挟むやつ」カチカチ
時津風「おー」カチカチ
初風「一緒に会計するから、好きなの一つ選びなさい」
雪風「はーい」カチカチ
時津風「はーい」カチカチ
11: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:54:16.66 ID:adbe+RHno
雪風「どれにしようかなー」ウキウキ
時津風「あれもいいな、これもいいな」ワクワク
初風「さて、私は……あ、ベーグルがある。これにしよっと」
初風「……ん?フォカッチャまであるじゃない」
初風「さすが街のパン屋さんね、種類が豊富だわ」
初風「うーん、これは悩むわね……」チラ
雪風「メロンパンナちゃんあるよ!メロンパンナちゃん!」キャッキャ
時津風「夕張パンナちゃん!夕張パンナちゃん!」ピョンピョン
初風「……」ソーッ
雪風「あー!?初風二つ買ってるー!」
時津風「ずるい、ずるい!一つだけって言ったのにー!」キャンキャン
雪風「雪風も二つ買うー!」
初風「ああもう!分かったわよ。一人二個ずつね、みんな一緒!」
時津風「やったー」
◇
雪風「雪風はメロンパンナちゃんと、クリームパン」
時津風「時津風は、あんドーナツとチョココロネ」
初風「甘いのばっかりじゃない」ハア
雪風「初風はー?」
初風「これよ」つ ベグフォカ
雪風「……」フーッ
時津風「……」ヤレヤレ
初風「ちょっと待ちなさい。何よその『分かってないなー』的な反応は」
雪風「べっつにー」
時津風「何でもないよー」
初風「ぐぬぬ」
12: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:55:09.91 ID:adbe+RHno
初風「あと飲み物は、私はカフェオレで……アンタ達は水でいいわね」
雪風「何でっ!?」
時津風「やーだー!」
◇
雪風「雪風はカルピス」
時津風「時津風はメロンソーダ」
初風「アンタ達、蟻なの?」
雪風「お昼からメロンなんて贅沢だね」メロンパン パクパク
時津風「お金持ちだね、ぶるじょあだね」メロンソーダ ゴクゴク
初風「私に感謝しなさい」
雪風「初風ありがとー」
時津風「初風優しいー」
13: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:56:28.06 ID:adbe+RHno
【 天津風 】
野分「長門さんの好きな物……ですか?」
初風「いや、知らないけど……やっぱり、甘いものじゃないの?」
谷風「何、何?急にどうしたのー」
陽炎「いつも雪風や時津風が入り浸って、迷惑を掛けてるでしょう?」
陽炎「毎日おやつも貰ってるみたいだし」
陽炎「お返しというか、何かお礼をしようと思って」
黒潮「なるほどー、舞風も皆勤賞やしなー」
不知火「無難に菓子折りなどがいいんじゃないでしょうか」
陽炎「甘いものは自分で買ってるみたいだから、どうせなら別の物をと思ってね」
嵐「別の物かー、うーん」
萩風「甘いもの以外で長門さんが喜びそうなのと言えば……」
浜風「えっと……バナナとか?」
浦風「骨付き肉なんか好きそうじゃ」
磯風「鉄アレイとかいいんじゃないか?」
陽炎「アンタ達、長門さんの事 嫌いなの?」
14: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:57:20.69 ID:adbe+RHno
天津風「アクセサリーとかは?ピアスとか」
浦風「そういうキャラじゃなかろーて」
磯風「うむ。貰っても、すぐ失くしそうだ」
初風「じゃあ指輪なんてどう?ピンキーなの」
浦風「想像つかんな」
磯風「ああ、指輪よりメリケンサックのイメージだ」
浜風「それじゃあ、実用的な物の方がいいんですかね」
陽炎「ふーむ、意外と悩むわね。どうしよっか」
雪風「ゆ、雪風が、宝物のどんぐりをあげますっ!」
時津風「わたしも松ぼっくり出すよっ!すごく大きいんだよ!」
谷風「よっしゃー、それならこの谷風さんがスーパーボールを出すぜ!」
谷風「長門になら、とっておきの金ラメとクリスタルをあげてもいいぜ!」
初風「あー、うん、はいはい」
天津風「あなた達は何も心配しなくていいからね」
15: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:57:56.20 ID:adbe+RHno
磯風「ふむ。ならば物ではなく、手料理などはどうだろうか」
浦風「磯風」
浜風「磯風」
磯風「ウチに招待して、沢山の御馳走でもてなすんだ」
嵐「磯風」
萩風「磯風」
磯風「いわゆるホームパーティーという奴だ」
初風「磯風」
天津風「磯風」
野分「ま、まあ時間はたくさんありますし、ゆっくり考えて決めましょう」
陽炎「ところで秋雲は?」
舞風「お部屋で原稿描いてるよー、締切なんだって」
不知火「こないだからずっとですね」
黒潮「冬も春も大変やなー」
16: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:58:57.70 ID:adbe+RHno
◇◇◇
後日。
陸奥「あら、それどうしたの」
長門「う、うむ。陽炎型の子達からな」
陸奥「へー、いいじゃない。でも、つげ櫛なんてよく知ってたわね、あの子達」
長門「ああ、妙高達に聞いたらしい」
陸奥「あー、なるほど。ね、ね、座ってみて?梳いてあげるわ」
長門「いや、こういうのは私にはちょっとな…」
陸奥「何言ってるのよ、綺麗な髪なんだからピッタリよ」
長門「あー、いや、うん」
陸奥「いいわねコレ。ますます綺麗になっちゃうわよ?」
長門「なっ、ば、からかうんじゃない ///」
陸奥「あら?姉さんは素敵よ、本当に。私の自慢なんだから」ウフフ
長門「何を馬鹿な事を…まったく… ///」
17: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 11:59:46.71 ID:adbe+RHno
◇◇◇
足柄「どうだった?」
天津風「うん、喜んでくれたわ。大分 照れてたけどね」
足柄「そっかー、ちょっと地味かとも思ったんだけどね」
天津風「うん、ちゃんと使ってくれるみたいだし、良かったわ」
足柄「まあ、実際あれは本当にいいものだからね」
天津風「そうなの?あんまりよく知らないんだけど」
足柄「髪がね、ツヤツヤになるの。丈夫だし、使う度に風合いも出てくるわ」
天津風「いいなー、あたしも買っちゃおうかなー」
足柄「いやー、でも自分で買うものじゃないでしょ」
天津風「姉さんがプレゼントしてくれてもいいのよ」ニコ
足柄「あら、あたしでいいの~?」
天津風「ん、何で?いいわよ全然」ウェルカム!
足柄「他に贈ってほしい人がいるんじゃないの~」ニヤニヤ
天津風「」
足柄「ザッハトルテの君とか~」ニヨニヨ
天津風「な、ななななっ ///」
足柄「ホワイトデー楽しみね~」クスクス
天津風「違うから!全然そんなのじゃないから!ホントだから! ///」
18: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:00:53.28 ID:adbe+RHno
【 時津風 】
おもちゃ屋、ペット屋、洋菓子店。
田舎暮らしの子供には、都会の色は眩しくて。
二歩三歩と進む度、好奇の的がそこかしこ。
弾ける姉に振り回されて、引率初風過労気味。
それでも未だ道半ば。大きな仕事が残ってる。
初風「ちょっと買い物してくるから、アンタ達はここで待ってなさい」
雪風「えー、やだー」ブーブー
時津風「時津風も一緒に行くー」キャンキャン
初風「アイス買ってあげるから」
雪風「いってらっしゃい」
時津風「早く帰ってきてね」
19: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:01:30.98 ID:adbe+RHno
◇
雪風「雪風はクッキークリーム」
時津風「駄目だよ、クッキーは時津風のだからねっ!」
雪風「雪風はお姉ちゃんなのです!」キシャーッ!
時津風「雪風にはクリーミーミントあげる」
雪風「これはスースーするから駄目です!」
時津風「じゃあラムレーズン」
雪風「眠くなるから駄目」
時津風「なら抹茶トリュフ」
雪風「寝れなくなるから駄目」
時津風「全部駄目じゃん!」
雪風「クッキークリームは大丈夫です!」フシャー!
時津風「クッキーは!時津風の!」キャンキャン
20: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:02:26.54 ID:adbe+RHno
雪風「時津風はチョコブラウニー食べてればいいです」
時津風「チョコはお昼に食べたから嫌!」
雪風「じゃあベイリーズ」
時津風「眠くなるから嫌」
雪風「ならカフェモカ」
時津風「寝れなくなるから嫌」
雪風「全部駄目じゃないですか!」フカーッ!
時津風「だーかーらー、時津風がクッキークリーム!」ガルルー!
雪風「雪風がクッキーです!」キシャシャーッ!
初風「喧嘩するなら帰るわよ」
雪風「時津風がクッキーでいいよ」
時津風「ううん、雪風がクッキー食べなよ」
雪風「半分こ しようね」ニコ
時津風「仲良しだもんね」ニコ
21: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:04:32.08 ID:adbe+RHno
◇◇◇
ギフト売り場の装飾小物。
百を超える柄の中から、たった一つを選び出す。
透き通る水色の染布に、鮮やかな黄色のワンポイント。
それは、初風色のハンカチーフ。
大きめの紳士用。一回り小さな婦人用。
サイズの違う揃いの柄を、丁寧に抱えレジへと向かう。
店員「いらっしゃいませ」
初風「これください」
店員「ありがとうございます。包装はいかが致しましょう」
初風「一つは自分用なので、この大きい方だけラッピングしてください」
店員「畏まりました。もし宜しければメッセージカードもお付け出来ますが」
初風「え?」
店員「サービスです。いかがですか」
初風「えっと……じゃあ、お願いします」
店員「はい。それでは絵柄をお選び下さい」
初風「あ、沢山あるのね」
店員「恋人へのプレゼントでしたら、こちらなどいかがでしょう?」
初風「こ、恋っ……!?」
店員「このハート柄などお勧めです」
初風「はっ、ハートっ!?」
店員「はい、当店の一番人気でございます」
初風「え、えっと、その……」
店員「大変ご好評を頂いております」ニコ
初風「そ、そうなの?それじゃ、あの、これで…… ///」
店員「はい、畏まりました」
初風「は、はうー…… ///」
店員「メッセージはいかが致しましょう?定型文で宜しければ、印刷したものがございますが」
初風「え、あの、自分で」
店員「それでは、空白のものをご用意致しますね」
初風「あ、ハイ。それでお願いします」
手渡されたカードには、表も裏にも隙間なく、強烈なハートマークが乱舞する。
『 好き好き大好き、愛してるっ! 』以外の文面など、受け付けないラブ度の高さ。
初風はまた、赤い顔で石になる。
22: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:05:28.54 ID:adbe+RHno
◇◇◇
田舎へ向かう帰りの電車は空いていて。
眠りこける姉達の隣で、初風は窓から外を見る。
カードには何て書こう。どんな顔をして渡そう。
受け取ってくれるだろうか。喜んでくれるだろうか。何と言ってくれるだろう。
紙袋は膝の上。夢見心地でうわの空。
流れゆく夕暮れの景色を、いつまでも眺めていた。
23: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:06:52.66 ID:adbe+RHno
【 浦風 】
菱餅、白酒、ひなあられ。
お内裏様に、お雛様。五人囃子に、三人官女。
桃の節句の晴れの日は、みんなが嬉しい雛祭り。
浦風「何しよるん」
雪風「おりがみです」
時津風「おひなさまだよー」
浦風「あー、雛人形か」
浜風「鳳翔さんに教えて貰ったんですが、中々難しくて……」
浦風「どれ、貸してみ?」スッスッ
浦風「ほら」キャピーン!
雪風「すごーい!」
時津風「きれー!」
浜風「すごいじゃないですか」
浦風「昔、よーやったけぇのぉ」
浦風「色々出来るで」スッスッ
浦風「風船」シャッ
浦風「手裏剣」シャッ
浦風「やっこさん」シャッ
雪風「すごい、すごーい!」
浦風「まあ、元々手先は器用じゃけーのぉ。手順覚えれば簡単じゃ」
24: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:07:53.61 ID:adbe+RHno
浦風「そうじゃ、新聞紙あるか?」
時津風「うん、これでいい?」バサッ
浦風「これをこうやって……」バッサバッサ
浦風「いくで」バアンッ!
雪風「わー!」
時津風「すごーい!何これー!」
浦風「紙鉄砲じゃ」
浦風「ヤクザの事務所の前でな、思いっきり鳴らすんじゃ。度胸試しじゃ」
浦風「出入りと勘違いした若い衆がな、もの凄い勢いで飛んで来るで」
浦風「逃げ遅れて捕まったあの子は、今頃どうしよんかのー…」トオイメ
浜風「浦風…あなた、どんな子供時代を……」
浦風「みんな悪ガキじゃったけーの」
雪風「すごーい!」バンッ!
時津風「格好いい!」バアンッ!
雪風「ダブルガントレットだよっ!」ババンッ!バンッ!
時津風「こっちはショットガンだよっ!」ババババンッ!
陽炎「没収」
雪風「あーん」
時津風「陽炎の馬鹿ー」
不知火「近所迷惑です」
陽炎「浦風も変な事 教えないの」
浦風「あいさー」
25: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:09:08.77 ID:adbe+RHno
◇
陽炎「……」ウズウズ
陽炎「……」ソー
陽炎「えいっ!」バアンッ!
陽炎「わー…!」
初風「うっさいのよ!何やってんのよ!」ムキーッ!
陽炎「いやー、ちょっと好奇心で」タハハ
不知火「……」二丁拳銃の構え
初風「不知火」
不知火「はい」
初風「……駄目だからね」
不知火「……はい」ショボーン
26: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:10:13.62 ID:adbe+RHno
【 磯風 】
磯風「何だ?やけに騒がしいな」
浜風「雪風が虫を捕ってきたみたいです」
磯風「ああ、そういえば新しい虫かごを持っていたな」
浜風「初風に買ってもらったようです」
磯風「ふむ」
浜風「たくさん捕って見せびらかしているのですが、みんな虫は苦手で……」
磯風「だらしないな、虫ごときで。よし、私に任せるがいい」
浜風「大丈夫ですか?」
磯風「たかが虫だ。汚れたら洗えばいい、それだけの事さ」
磯風「どれ、雪風。たくさん捕れたらしいじゃないか」ニコ
雪風「磯風!はい、見てください!いっぱいあります!」ニコー
≪≪ 蜘蛛蜘蛛脚高蜘蛛蜘蛛蜘蛛脚高蜘蛛 ≫≫ ウジャウジャ
磯風「」
◇
黒潮「雪風どないしたん?メッチャ泣いとるやん」
不知火「磯風が雪風の虫かごを、海に投げ捨てたらしいです」
黒潮「はあ?何でそんな事を」
不知火「さあ」
陽炎「磯風、ちょっと!何で雪風泣かすのよ」
磯風「私は悪くない!悪くないんだ!」
27: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:11:37.32 ID:adbe+RHno
【 浜風 】
雪風「カルピスですー」
時津風「わーい、やったー」
雪風「幸運の女神のキスを感じちゃいます!」ゴクゴク
時津風「うんうん、いいかもね、いいかも!」ゴクゴク
雪風「」バタン
時津風「」バタン
◇
大井「北上さん、甘酒ですよ!甘酒!」
北上「おー、いいねえ」
大井「じゃんじゃんいきましょう!じゃんじゃん!」
北上「大井っちも飲みなよー」ゴクゴク
大井「はいっ!頂きます!」ゴクゴク
北上「」バタン
大井「」バタン
◇
隼鷹「那っちゃん那っちゃん、にごり酒だよ」
那智「誰だ、那っちゃんて」
隼鷹「さ、さ、駆け付け一杯ぐいっとね!」
那智「ふむ、にごり酒とは珍しいな」
隼鷹「パーッといこうぜ~、パーッとな!」ゴクゴク
那智「まあ、私も嫌いな方ではないしな」ゴクゴク
隼鷹「」バタン
那智「」バタン
◇◇◇
浜風「鳳翔さん、この白いのは何ですか?」
鳳翔「はい、それはお米のとぎ汁です」
浜風「ああ、筍を茹でるんですね」
鳳翔「ええ、アク抜き用です」
浜風「筍ですか、春ですね」ニコ
鳳翔「うふふ、風物詩ですね」ニコ
28: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:13:04.91 ID:adbe+RHno
【 谷風 】
出掛ける支度をしていると、めざとく谷風がやって来た。
清霜から話を聞き付けて、慌ててここに来たようだ
谷風「天ぷら屋に行くんだって?谷風も連れてっておくれよぅ」
生粋の江戸っ子である谷風にとって、天ぷらは欠かせぬソウルフードなのだと言う。
那智(お前のソウルフードは、天ぷらではなくてお菓子だろう)
那智は心の中でそう思ったが、口に出すのは止めておいた。
那智「別に構わんが、退屈だぞ」
谷風「がってんだー!」パアアァ!
”生粋の江戸っ子”という言葉の意味を、那智は百回くらい教えたが。
大阪生まれ広島育ちの谷風は、大きく「うん!」と答えるだけで、最後まで理解を示さなかった。
武蔵「フッ、随分待たせたようだな」
果たして約束の時間になると、のそり、と武蔵がやって来た。
足元にはいつものように、清霜が纏わりついて離れない。
那智「いや、時間通りだ」
清霜「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
29: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:14:22.02 ID:adbe+RHno
◇
那智「季節のものを適当に。あとビールを瓶で、グラスは二つ」
武蔵「こいつらには芋とカボチャを頼む」
谷風「てやんでい、べらんめえ」
谷風「谷風さんも那智と同じのを食べるぜ!」
谷風「芋やカボチャの天ぷらなんて、女子供の食うものさぁ」
清霜「む、むむー」
那智(いや、お前は思いっきり女で子供だろう)
武蔵「それでは、こいつにも同じものを」
店主「あいよ」
30: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:15:35.70 ID:adbe+RHno
◇
店主「それじゃ、春野菜ね」
店主「まずは、タラの芽、こごみ、ぜんまい」スッ
那智「美味い、美味い」サクサク
谷風(草じゃん……)
店主「お次は、せり、菜の花、ふきのとう」スッ
武蔵「酒の肴に最高だな」ハフハフ
谷風(葉っぱじゃん……)
谷風「……」パク
谷風「──ッ!?」ビキィィーーンッ!
谷風(に、苦あああぁぁーーいッ!)
谷風(毒じゃん!いじめじゃん!罰ゲームじゃん!)チラッ
清霜「お芋おいしーい!甘ーい!」ニコー
谷風(ぐぬぬ……)
武蔵「やはり天ぷらは最高だな」
那智「普段はカツばかりだからな」
武蔵「足柄か」
那智「あいつは親の仇のように作るからな。カツはもう当分いい」
谷風(カツ食いてぇー!)ワオーン
那智「どうだ谷風、美味いだろう」
谷風「お…おうともよ」
那智「そうだろう、そうだろう。流石は谷風だな、旬の味わいを分かっている」
武蔵「ほう、この滋味が分かるとは。若いのに通だなぁ」
谷風「あ、あたぼうよ!こちとら江戸っ子でい!」
清霜「む、むむむー、何だよー!」
武蔵「はっはっは」
31: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:16:34.38 ID:adbe+RHno
◇
清霜「武蔵さん、他にも何か頼んでいい?」
武蔵「好きにしろ」
清霜「やったー!じゃあ清霜はねぇ、イカの大葉巻き!」
谷風「ばっか、おめえそういう時は、シソ巻きって言うんだよ」
清霜「何だよー、大葉じゃんかー」
谷風「かあーっ!清霜は物を知らねぇな。谷風さんは花巻な!花巻エビ!」
那智「才巻だな」
武蔵「うむ、才巻だ」
店主「あいよ、才巻ね!」
谷風「お、おぅ… ///」
清霜「才巻じゃんかよー!」
谷風「ば、ばっか、おめえ!江戸じゃあ、花巻って言うんだよ!」
清霜「花巻なんて、江戸じゃなくて岩手だよー!」
谷風「う、うっせーやい ///」
32: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:17:35.01 ID:adbe+RHno
◇
那智「寝たか」
武蔵「ああ」
那智「あっ、という間だな」
武蔵「職人芸だな。少々揺すっても全然起きん」
那智「しかし知らない場所で、何でこんなに熟睡出来るんだろうな」
武蔵「肝が太いんだろう。こう見えて、やはり二人とも並じゃない」
那智「大口を開けて……全く、ひどい寝顔だぞ」ヤレヤレ
武蔵「安心しきってるな」フフッ
那智「静かになったし、もう少し飲もうか」
武蔵「私はそろそろ焼酎にするかな」
33: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:18:55.95 ID:adbe+RHno
◇
那智「さて、最後はエビ天を入れて蕎麦にしよう」
武蔵「私はかきあげを入れてもらおう」
那智「ふむ、それでは〆に蕎麦を頼む。エビとかきあげを入れてくれ」
店主「あいよ」
◇
那智「美味い、美味い。やはり蕎麦にはエビ天だな」
那智「ウチでは蕎麦にもうどんにも、カツが入るからな」
武蔵「お前の妹は筋金入りだな」
那智「それで一度、殴り合いの大喧嘩になった事がある」
武蔵「何やってんだ、お前ら」
那智「私も腕っぷしには自信があるが、足柄も相当な負けず嫌いでな」
那智「お互い顔の形が変わるくらい派手にやらかしたんだが」
那智「その後、妙高姉さんに死ぬ程怒られてな……」
武蔵「子供か」
那智「この説教がまた、デタラメに長いんだ」
武蔵「妙高らしいな」クックッ
那智「足がもう痺れに痺れて、終わってもしばらく動けなかったぞ」
武蔵「はっはっは」
那智「笑い事ではない。二人してボコボコの顔で倒れて、動けずにいるんだぞ?」
那智「そこにちょうど帰宅した羽黒が、これまた盛大に勘違いしてな」
那智「悲鳴を上げるは、泣いて騒ぐわで大騒動だ」
武蔵「わっはっは」ケラケラ
那智「もうお願いだから安静にさせてくれよと、頼むよと」ヤレヤレ
武蔵「いい姉妹じゃないか」クスクス
34: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:20:32.36 ID:adbe+RHno
【 野分 】
野分「一発芸?」
龍驤「そうや、花見の余興や。せっかくみんな集まるし、楽しい方がええやん」
野分「でも、そんな芸なんて……」
龍驤「あー、そない大仰に考えんでええよ。みんな身内やし」
龍驤「出来る事でええから、歌でも踊りでも何でもな」
龍驤「もし難しかったら、無理せんでええ」
龍驤「どうせ放っておいても、那珂がオンステージやりだすしな」
舞風「それじゃあ舞風はダンスを踊るよ!野分と一緒に!」
野分「え、野分もですか」
舞風「もちろんだよー!」
野分「いや、恥ずかしいですよ」
舞風「大丈夫だよー」
野分「龍驤さんは何かやるんですか?」
龍驤「ん、ウチか?そやなー、漫才と漫談どっちがええ?」
舞風「おー」
野分「余裕ですね」
龍驤「そら空母連中で、しょっちゅう飲み会してるからなー」
35: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:21:46.59 ID:adbe+RHno
龍驤「みんな芸達者やでー」
野分「そうなんですか」
龍驤「赤城は手品で、加賀は歌やな」
舞風「赤城さんが手品?」
野分「加賀さんが歌?」
龍驤「何や?意外か」
舞風「意外どころか……」
野分「想像もつきません」
龍驤「加賀はああ見えて、歌上手いんやで」
龍驤「赤城のはまあ、ネタというかお約束なんやけどな」
舞風「?」
龍驤「皿の料理を一瞬で消しますー…って、まあ、見たら分かる」
野分「へえー、楽しみですね」
龍驤「あと隼鷹は脱ぐな」
野分「ぬっ……!? ///」
舞風「それって芸ですか」
龍驤「いや、あいつ凄いんや、めっちゃ●●いで」
野分「そ、そんなの聞いてません ///」
龍驤「脱ぐし脱がすしで大騒ぎや。雲龍と絡んだ時なんか、もう!マジでヤバかったわ」
舞風「ふ、ふーん ///」
野分「舞風、駄目です!興味を持ってはいけません! ///」
36: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:23:43.22 ID:adbe+RHno
【 嵐 】
鎮守府恒例、春のお花見。今年の催しは二部構成。
昼の部は、弁当と和菓子のお食事会。
夜の部は、お酒とオードブルの大宴会。
どちらかに参加せよ、との事。
黒潮「嵐はどっちがええ?」
嵐「そりゃ昼だろ。酒なんか別にいらないし」
萩風「私も和菓子の方が嬉しいかも」
黒潮「そんじゃ、嵐に萩風もお昼……と、舞風は?」
舞風「えっと、よ、夜の方で! ///」
黒潮「え?」
舞風「ま、舞風は夜桜の部でお願いするよ!いいよねっ、野分 ///」
野分「あ、はい、野分も夜で」
黒潮「あら、意外。ホンマにええの?お菓子とかあんまりないで」
舞風「構いません!」ビシッ!
黒潮「えらい気合い入っとんなー」
黒潮「浦風はどないする?」
浦風「ウチ、金剛姉さんと一緒がええ」
黒潮「金剛さんは……えーと、金剛型の人らは、みんな昼の部みたいやね」
浦風「ほんじゃウチもお昼で」
磯風「ふむ、なら私も昼にしよう」
浜風「あ、それでは私も浦風と一緒で」
黒潮「はいはい、ほな三人は昼なー」
37: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:25:06.21 ID:adbe+RHno
嵐「黒潮はどうすんの?」
黒潮「ウチは夜やな。龍驤さんと漫才するんや」
萩風「余興やるんだ」
黒潮「せやでー、どっかんどっかん笑かすからなー、期待しときやー」
舞風「余興…… ///」
黒潮「何や舞風、顔赤いで?風邪か」
舞風「う、ううん、何でもない、何でもないよ!ね、野分 ///」
野分「え、あ、はい。何でもありません。何でも ///」
浦風「初風とかは?」
黒潮「初風と天津風は夜やったな。あと谷風もか」
黒潮「妙高さん達が夜やったから、それに合わしたんやろな」
磯風「あ、それじゃあ不知火は……」
黒潮「不知火も夜や。初風と天津風に首根っこ掴まれてたわ」
黒潮「あと、抜け駆け禁止の紳士協定結ばされてたな」
浜風「熾烈な戦いが続いてますね」
嵐「今んとこ誰がリードしてんの?」
黒潮「三人とも まだ横一線ちゃうかな、よう知らんけど」
舞風「雪風と時津風は昼だよね?」
黒潮「そやな。一応陽炎が聞きに行ってるけど、まあ流石にあの二人は昼やろなー」
黒潮「後は秋雲がどうか分からんな。あの子はつかみどころが無いからなー」
38: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:26:36.83 ID:adbe+RHno
野分「意外と夜桜組が多いですね」
嵐「おいおい、美味しい和菓子頂いちゃうよ?桜餅に三色団子~♪」
黒潮「うーん、それは困るなー」アハハ
萩風「間宮さんの和菓子は絶品ですからね」
磯風「ん、何だ?そんなに和菓子が好きなのか」
嵐「いや、そりゃ好きだろ。こう見えても女子だし」
萩風「嫌いな理由がありません」
嵐「自分で作れたらいいんだけどなー」
萩風「お菓子は難しいですよ、和菓子なんて尚更」
磯風「ふむ」
浦風(あっ……)
浜風(あっ……)
磯風「よし、ならば私が一肌脱ごうじゃないか」
嵐「え?」
萩風「え?」
磯風「可愛い妹達の願いは叶えてやらんとな」
嵐「え?」
萩風「え?」
磯風「あっ、いかんいかん。今 言ってしまうと、サプライズにならないな」
嵐「い、磯風?」
萩風「あの、ちょっと磯風さん?」
磯風「ん、何かな?私は何も知らないぞ~」ピューピュー
39: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:27:33.67 ID:adbe+RHno
磯風「おっと、こうしてはいられない。そうと決まれば早速材料の調達に……」
嵐「ちょっと待ってみようか磯風」
萩風「うん、少し落ち着いた方がいいかな、いいかな」
磯風「うむ、それでは私は急用が出来たから、先に帰らせてもらう」
磯風「嵐」
磯風「萩風」
磯風「楽しみにしておくといいぞ」ニッコリ
嵐「」
萩風「」
浦風「さて、どっちに参加するかじゃったの、えーと、それじゃウチは夜の方にしようかの」
黒潮「受付は締め切ったで」
浦風「いやいや、黒潮」
黒潮「磯風止めれるの、アンタしかおらんやん」
浦風「いやいや、黒潮」
嵐「浦風助けて」
萩風「お願いします浦風」
黒潮「頼んだで、浦風」
浦風「」
40: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:28:32.76 ID:adbe+RHno
【 萩風 】
鎮守府の裏手。高台にある公園に、大きな桜が咲いている。
澄み渡る空に暖かな日差し、穏やかな風。
普段の行いが良いのだろう。絶好のお花見日和となった。
嵐「ばっちり快晴!天気予報大当たり!」
萩風「桜も綺麗だし言う事ないね」
嵐「やっぱ昼で正解だな、桜がこんなに咲いてるよ」
萩風「来てよかったねー」
41: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:30:00.97 ID:adbe+RHno
萩風「見て見て、祥鳳さんと神通さんが野点をしてるよ」
嵐「あの二人って何でも出来るよな」
萩風「こっちでは金剛さんが紅茶を淹れてるね」
嵐「浦風憧れの人か、確かに綺麗だわ」
萩風「後でご馳走してもらおうよ、とっても美味しいんだって」
嵐「そうだな、楽しみだな」
萩風「長門さんはオレンジジュース飲んでるね。お酒じゃなくていいのかな」
嵐「現場の最高責任者だからな、酔っ払う訳にはいかないんだろう」
萩風「そっかー、偉い人は大変だー」
嵐「あ、赤城さんと加賀さんだ」
萩風「黙々と食べてるね、桜なんて一秒も見てないよ」
嵐「あの二人は夜の部じゃなかったっけ」
萩風「そう聞いたけど……変更したのかな」
嵐「もしかして両方出るつもりなんじゃ」
萩風「えー?まさかそんな無茶は……」
嵐「やりかねないな」
萩風「やりかねないね」
42: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:31:11.23 ID:adbe+RHno
嵐「リットリオさんだ、リベもいる」
萩風「桜なんて珍しいでしょうね」
嵐「イタリアにも桜ってあるのかな」
萩風「うーん、どうだろ」
嵐「アメリカにはあるよな。桜の木を切って謝る話あるし」
萩風「あー、誰だっけ。オバマさん?」
嵐「オバマは違うだろ」
萩風「えーっと、じゃあクリントン」
嵐「あ、何かそれっぽい!冴えてるな はぎぃ」
萩風「いやいや、それ程でも。えへへー」
43: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:32:22.24 ID:adbe+RHno
嵐「あ、磯風だ」
萩風「思いっきり手を振ってるね、すごい笑顔」
嵐「大きな荷物持ってるな」
萩風「すごいね。あれ全部、アレなのかな」
嵐「アレなんだろうね」
萩風「そっかー、アレかー…」
嵐「……」
萩風「……」
嵐「あんなに作るの大変だったろうな」
萩風「昨日から寝ずに頑張ったんだろうね」
嵐「……」
萩風「……」
嵐「呼んでるね」
萩風「うん、呼んでるね」
嵐「……」
萩風「……」
嵐「行こうか」
萩風「うん、行こう」
花は桜木、人は武士。
春の香満ちる光の中を、二人並んで歩いてく。
繋いだその手は離さずに、大切な人と共にゆく。
嵐「あーあ、全く困った姉貴だなー」
萩風「ホントに。困った姉さんだね」
嵐「あはは」
萩風「うふふ」
今日という日が心地よかった。
44: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:33:28.64 ID:adbe+RHno
【 舞風 】
花見提灯に照らされて、桜も昼とは違う顔。
酒樽、ビア樽、ワイン樽。重箱、折箱、玉手箱。
飲兵衛と大飯喰らいが意気揚々。諸手を挙げて集いゆく。
ドンチャン、ドンチャン、ドンチャカチャン。
騒ぎ立てるが宴の作法。飲めや歌えやと さんざめく。
初風「どう……かしら?」
妙高「どれどれ…うん、美味しい。とてもいい出来よ」
初風「そ、そう!」
妙高「これならきっと提督にも喜んで頂けます」
初風「は、はあっ?ち、違うし!別にあいつの為に作ったんじゃないし!」
初風「偶然作り過ぎただけなんだから。本当よ、本当に違うんだからね」
妙高「はいはい」ニコニコ
妙高「さ、それじゃあ渡してらっしゃい」
初風「う、うん。ついでにね!そう、たまたま ついでに渡してくるわ」
45: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:34:27.57 ID:adbe+RHno
◇
足柄「天津風。ほら、カツよ」
天津風「いらないわよ」
足柄「ビールのつまみに最高よ」
天津風「お酒なんて飲まないもん」
足柄「あなたじゃないわよ、提督よ」
天津風「む」
足柄「喜ぶわよ。渡してらっしゃい」
天津風「いらない」
足柄「何でよ」
天津風「……自分のがあるから」
足柄「あら、いつの間に!やるじゃない」ヒョイ パク
天津風「あっ、コラ!ちょっと」
足柄「わ、美味しい。私より上手かも」
天津風「え?そ、そう」
足柄「これなら大丈夫よ。ほら、早く渡してらっしゃい」
天津風「う、うん。行ってくる」
足柄「渡す時、ちゃんと大好きって言うのよ」
天津風「いっ、言わないわよっ! ///」
46: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:35:42.57 ID:adbe+RHno
◇
陽炎「何なのよ、この量は」
黒潮「なんぼなんでも作り過ぎや」
不知火「だって…司令が好物だって……」
陽炎「限度があるでしょ」
黒潮「ホンマ司令の事になると見境のうなるな」
不知火「……」ショボーン
陽炎「だいたい何よ、このタッパーに新聞紙。主婦じゃないんだから」
黒潮「味付けは……うん、味は大丈夫やな。上々や」
陽炎「ほら、この可愛い重箱に詰め直して」テキパキ
黒潮「風呂敷もこの花柄のにしようなー」テキパキ
陽炎「はい、完成!」
黒潮「ほな、行っといで~」
不知火「あ、あの……」
陽炎「モジモジしない!」
黒潮「早よせんと、先越されるで」
不知火「──!行ってきます」
不知火「陽炎、黒潮、ありがとう」タタタッ
47: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:37:59.81 ID:adbe+RHno
◇
谷風「なあ那智、お稲荷さんもう一個食べていいか」
那智「いくらでも食べろ」
谷風「やったー!」
那智「お前は色気より食い気だな」
谷風「ん?何だよそれ」
那智「何でもない。ほら、太巻きもあるぞ」
谷風「こいつは景気いいな!」
足柄「あら、谷風じゃない。カツ食べる?」
谷風「食べるっ!うひょー、うめーっ」
羽黒「谷風ちゃん、桜餅もあるよ」
谷風「んはー!来て良かったー」
妙高「あらあら、賑やかね」
足柄「あ、妙高姉さん」
妙高「乾杯しましょ。谷風もどうぞ」
那智「お、おい、酒は……」
妙高「今日ぐらい良いでしょ、でも少しだけね」トクトク
谷風「おっとっとー」
妙高「それじゃあ、乾杯ー」
◇
足柄「いやー早かったわね。瞬殺よ、瞬殺」
那智「だから言ったのに」
妙高「よく寝てますね。何か羽織るものは……と」
足柄「羽黒の膝で寝られるなんて、世の男からしたらプレミアものよ」
羽黒「も、もう、姉さんったら」
陽炎「すみませーん、ウチの子 引き取りに来ましたー」
足柄「あら、陽炎」
陽炎「あ、やっぱり寝てる」
羽黒「もうぐっすり眠ってるから、焦らなくても大丈夫だよ」
那智「ああ、こうなったら揺すっても当分起きん」
足柄「陽炎もちょっと飲んでけば?カツあるわよ、カツ」
陽炎「あ、ハイ。えーっと……」
足柄「遠慮しなさんな、ほら」
陽炎「それじゃあ少しだけ」
妙高「では、もう一度乾杯しましょうか」
48: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:39:06.41 ID:adbe+RHno
◇◇◇
野分「舞風、助六を貰ってきました」
舞風「わあ、ありがとう。嬉しい」
野分「隼鷹さんの様子はどうですか」
舞風「まだいつも通りだよ」
野分「うーん、結構飲んでいる筈なんですが」
舞風「やっぱり相当お酒強いよね」
舞風「あ、でもさっき千歳さんが来てたから、多分勢い付くよ」
野分「そうですか。それではもうしばらく待ちましょう」
舞風「うん。楽しみだね ///」
野分「もう、舞風ったら ///」
アラエッサッサー
隼鷹「あーもう、あたしゃ脱いじゃうよ!」スポーン!
隼鷹「隼鷹さんは脱いでも凄いんだからねー!」
イイゾ ヤレヤレー マッテマシター
飛鷹「ちょっと隼鷹、やめなさいって」
隼鷹「ほらほら飛鷹も脱ぎなよーっ」
飛鷹「ちょっ、やめ、隼鷹!キャーッ!」
舞風「始まったよ、野分、ほら!」
野分「い、いきなり凄いですね ///」
舞風「もっと近くに行こうよ」
野分「あ、待って下さい舞風、引っ張らないで」
隼鷹「今日はもう止まんないよあたしはー」
野分「///」ドキドキ
隼鷹「ん?おいおい何だい、この可愛い子ちゃんは」
野分「ふおっ?」
隼鷹「いいのかい、こんな所にノコノコ来ちゃってさぁ」
野分「え、あの、はい?」
隼鷹「アタシは駆逐艦でも構わず剥いちゃうんだぜー」ワキワキ
野分「ちょっ、あの、舞かz」
隼鷹「ウラーッ!」ガバッ!
野分「ふおおおー!?」
舞風「ああっ、野分ー!野分ー!」
野分「ちょっ、あっ駄目、そこは、違っ?あッアーッ ///」ンアー
舞風「の、野分ー /// 野分ー ///」
49: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:41:03.20 ID:adbe+RHno
◇◇◇
巻雲「秋雲ちゃんは!ウチの子れすっ!」
巻雲「絶対どこにも行かせしぇません!」
巻雲「秋雲アイラービュー」
秋雲「あははー…参ったねー…」
風雲「相当酔ってるわね」
長波「誰だよ、お酒持ち込んだの」
巻雲「聞いているのれすか、長波!」
長波「へいへい、秋雲だねー」
巻雲「秋雲ちゃんはっ!可愛いのれすっ!」
長波「お前の方が可愛いよ」
風雲「ベロンベロンじゃない。どんだけ飲んだのよ」
高波「飲んだっていうか、舐めただけ…かも」
長波「そもそも、何で巻雲が夜に居るんだよ」
沖波「保護者として一緒に行くって聞かなくて……」
風雲「絵に描いたようなミイラ取りだね」
巻雲「お義父さん!秋雲さんを私に下しゃいっ!」
巻雲「駄目れすっ!秋雲ちゃんはウチの箱入りれすっ」
巻雲「そこを何とか!愛しているのれす!」
巻雲「ええい、帰りなさい!秋雲ちゃんは渡しましぇんっ!」
長波「一人芝居始まったぞ」
風雲「無駄に迫真の演技ね」
沖波「えっと、こんなに酒癖悪かったかな?」
高波「お酒飲むとこなんて見た事ないかも…です」
巻雲「秋雲~秋雲~」
秋雲「はいはい、秋雲はそばにいるよ。ずっと一緒だよ」ナデナデ
巻雲「えへへー」ニヘラ
50: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:43:24.45 ID:adbe+RHno
【 秋雲 】
春の好日。柔らかな光に包まれて、姉達が寝息を立てていた。
『 春眠暁を覚えず 』とは言うけれど。朝のみならず、昼も夜も皆よく眠る。
寝る子は育つはずなのに、育ってない子も稀にいる。育たぬ部分も稀にある。
お土産の袋をガサガサ鳴らし、焼きたての香りを泳がせたら動き出した。
芋を持ったまま山で迷い、烈火の勢いで猿に襲われた谷風の気持ちを、少しだけ理解する。
オイテケー オイテケー スコーンオイテケー
オイテケー ワタシベーグルー ズルイワタシモー
こんな状況でも、小倉デニッシュは人気がない。
51: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:45:05.14 ID:adbe+RHno
◇◇◇
陽炎「ロシアパン?何それ」 サンドイッチ
不知火「ピロシキとかでしょうか」 チーズ蒸しパン
黒潮「ちゃうちゃう。ロシアパンやのうて、ロシアンパンや」 焼きそばパン
初風「あー、ロシアンルーレットね」 ベーグル
雪風「ロシアンルーレットって何ですか?」 メロンパン
天津風「たくさんの中に、一つだけ当たりがあるの」 クロワッサン
時津風「当たり?何が入ってるの」 チョココロネ
浦風「ハバネロらしいで。鬼盛りで」 スコーン
磯風「それは……当たりなのか?」 ガレット
浜風「そんなに辛いのはちょっと……」 クリームパン
谷風「いいじゃん、いいじゃん!面白そう」 コロッケパン
野分「秋雲もどれが当たりかは知らないんですよね?」 ライ麦パン
嵐「よっしゃ、それなら公平だな」 カレーパン
萩風「見た目じゃ全然分からないね」 クイニーアマン
舞風「うわ~、何だかドキドキするよ」 フルーツサンド
秋雲「それじゃあみんな、せーのでいくよ!」 小倉デニッシュ
全員「いっせーの!!」 パクッ! パクッ! パクパクッ!
嵐「…………おいおい、マジかぁ~~!!」(涙目)
52: ◆36RVFTz/1g 2016/04/18(月) 12:45:39.77 ID:adbe+RHno
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