1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:01:25 ID:x6SncPAc

以前書いた初期SSのリメイクです。
P4とISのクロスオーバーになりますが
厳密にはP4風味のISSS、という感じです。

転校してくるのはゲームクリア時のハイスペック能力を持った
アニメ版番長、と思ってください。

注意事項

 1) P4に関しては、ネタバレが多少あります(PS2版)。
 2) >>1独自のIS戦術理論で展開しますが、ぐっとこらえて見てください。
 3) 番長の専用機の詳しいスペックは 後々語られます。
 4) P4を知らなくても読める……かと思いますが
    P4を知っていると更に楽しめるかと……
 5) >>1はISをアニメでしか知らない。
 6) 一期を見た後に書いたので、更識姉妹は登場しません。

以上です。 それでは始めます。
少し長いので休憩入れながら投下します。

引用元: 一夏「IS学園に第二の男性適正者が転校してきた!?」【改】 


 

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2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:02:40 ID:x6SncPAc

2組の教室


??「はじめまして」

??「鳴上 悠です」


モブ子「ふわぁ……ホントに男の子だぁ」

モブ美「これで1組の織斑君、『世界唯一の』って言うブランドは消えたのね」

モブ枝「それにしても背、高いね。 落ち着いた感じだし一年生に見えない」

鈴「………」


鈴(ふうん……確かにカッコいいけど、一夏の方がいいな、やっぱ)

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:03:19 ID:x6SncPAc

2組の先生「ええと、鳴上君」

2組の先生「何か一言ありますか?」

鳴上「…………」

鳴上「俺は落ち武者じゃありませんので」


     ズコ――――!!


鈴(……な、なんか変わった奴ね)

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:04:01 ID:x6SncPAc

昼休み

食堂


鈴「……って、感じの奴だった」

一夏「何かのギャグなのか? それ」

鈴「知らないわよ、そんな事」

鈴「どこかの都会出身って言ってたから、そこで流行ってたんじゃないの?」

一夏「まあとにかく、合同授業が楽しみだな」

一夏「早く手合わせをしてみたい」

一夏「正直、男にとって肩身が狭いからな……IS学園は」

鈴「聞き捨てならないわね……もっと幸せに思いなさいよ!」

一夏(……これだもんなあ)

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:04:44 ID:x6SncPAc

2組・IS実習授業


鈴「……へえ、あんたも専用機持ちなの」

鳴上「……?」

鈴「ああ、ごめん。 あたしの名前は凰 鈴音」

鈴「鈴、でいいわ」

鳴上「鳴上 悠だ」

鈴「悠って呼んでもいいかしら?」

鳴上「かまわない」

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:05:18 ID:x6SncPAc

鳴上「鈴も専用機持ちなのか?」

鈴「そうよ。 そして中国の代表候補生」

鳴上「すごいな」

鈴「まあね。 でさ、一つ手合わせしてみない?」

鳴上「俺はまだ乗り始めたばかりだが……」

鳴上「かまわないか?」

鈴「ふふん、ちゃんと手加減してあげる」

鳴上「助かる」

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:06:03 ID:x6SncPAc


※番長の専用機について


番長の専用機は、基本黒いカラーリングの外見で
黒い白式の様なものを想像してください。
P4を知っている人はペルソナ・イザナギをメカっぽくして
番長が『着ている』みたいな姿を想像して頂ければ良いかと。

武装はイザナギが持っている刀の様な武器と
両肩に浮いているアレからグレネードを射出します。
これはペルソナの魔法を何とか使えないか?と思って考案しました。
イザナギが使うにしてはおかしな属性のものもありますが
ひとつ大目に見てください。

残念ながらペルソナチェンジまで表現すると
番長あまりにもチートになるので、ISチェンジはありません。
あしからずです。



8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:07:17 ID:x6SncPAc

鈴「甲龍!」 スウウウウンッ!

鳴上「…………」 スチャ…(メガネ装備)

鳴上「イザナギ!」 スウウウウンッ!

鈴「……?」

鈴「なんでメガネをかけるの? 目が悪いの?」

鳴上「そうじゃないが……」

鈴「ないが?」

鳴上「ハイカラだろ?」

鈴(……いまいちキャラが掴めないわね)

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:07:52 ID:x6SncPAc

鈴「じゃあ、始めていいかしら?」

鳴上「かまわない」

鈴「行くわよ……はあああっ!」

     ガキン! ガァン!

鳴上「…………」

鈴「…………」

鈴(……何? こいつ?)

     ギギンッ! ゴアンッ!

鳴上「…………」

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:08:43 ID:x6SncPAc

鈴(武装は……白式の雪片二型に似た、近接武器のみかしら?)

鈴(それにしても……確かにISの扱いは拙いけど)

鈴(何なの? この落ち着き様は……?)

鳴上「…………」

     ガァンッ! ギガンッ!

鈴「悠!」

鳴上「?」

鈴「悪いけど、少し本気を出してもいいかな?」

鳴上「…………」

鳴上「わかった」

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:09:35 ID:x6SncPAc

鈴「……じゃあ、いくわよ! 龍砲!!」 ドオンッ!

鳴上「!?」

     ボゴンッ!!

鳴上「ぐあっ!」

鈴(まともに食らった!?)


鳴上「……くっ!」

鳴上「ペルソナ!!」 ポウ ポウ

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:10:24 ID:x6SncPAc

鈴「!? 爆弾!?」


     バリバリバリバリッ!!


鈴「ああああっ!! ス、スタン・グレネード!!」

鳴上「今だ!!」

鈴「くっ…!!」


     ガアアアアンッ!!



13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:10:57 ID:x6SncPAc


―――――――――――


鈴「……あんた、何者なの?」

鳴上「ただの高校生だが?」

鈴「う~ん……上手く言えないけど、悠の動きはとても素人とは思えない」

鈴「戦い慣れしてる? 感じだった……」

鳴上「でも結果は俺の負けだ」

鈴「……まあ、そうだけど」

鳴上「ありがとう。 得るものの大きい戦いだった……」

鈴「……どういたしまして」

鳴上「良かったら、また手合わせしてくれ」

鈴「ええ、いいわよ」

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:11:50 ID:x6SncPAc

放課後

談話室


セシリア「で、どうですの? 噂の転校生さんは?」

鈴「ん? まあ悪い奴じゃないと思うわ。 変わってる所はあるけど」

箒「変わってる? どんな風に?」

鈴「そうね……誰か『ペルソナ』って言葉知ってる?」

ラウラ「……知らないな」

シャル「確か……心理学用語じゃなかったかな?」

鈴「ふうん。 その心理学用語?の『ペルソナ』をやたらと使うのよ」

鈴「あたし達で言うなら、『えいっ!』とか『とうっ!』みたいにね」

箒「確かに変わってるな」

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:12:27 ID:x6SncPAc

ラウラ「強さはどうだ?」

鈴「ISの扱いは、まだまだって感じ。 でも……」

セシリア「でも?」

鈴「妙に落ち着き払っていて、ケンカ慣れしてる様な気がするの……」

シャル「へえ? チラッと見たけど、そんな風には見えなかったよ?」

鈴「そうなのよね……まあ見た目で判断しちゃいけないのかも」

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:13:07 ID:x6SncPAc



IS学園寮・一夏の部屋


鳴上「鳴上 悠です」 ペコリ

一夏「おう、同室の織斑 一夏……です」 ペコリ


一夏(……な、なんか大人びた同級生だな?)


一夏「まあ堅苦しい挨拶はこれぐらいにして、俺の事は一夏、と呼んでくれ」

鳴上「わかった、一夏。 俺の事も好きに呼んでくれて構わない」

一夏「そっか」

一夏「じゃあ……悠、と呼んでもいいか?」

鳴上「ああ」

一夏「悠は専用機持ちらしいけど……どういう経緯でIS学園に?」

鳴上「…………」

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:13:42 ID:x6SncPAc

一夏「……? 悠?」

鳴上「……多分、言っても信じてくれないと思うが」

一夏「お、おう」

鳴上「突然、空からニンジンの形の」

一夏「なるほど……よく分かった」

鳴上「……まだ導入部だぞ?」

一夏「……そのニンジンの形した輸送ポッドの中から」

一夏「ウサ耳をつけたメイド服の女性が出てきて」

一夏「『おおう! いっくんの他に男性のIS適正者発見! さ、一緒に来て~!』と言われ」

一夏「有無を言わさず専用のISを渡されたあげく」

一夏「いつの間にかIS学園の転入が決まっていた、と」

鳴上「…………」

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:14:27 ID:x6SncPAc

鳴上「……見てたのか?」

一夏「単なる推測だよ」

鳴上「台詞も一言一句、間違いなかったぞ?」

一夏「そりゃどうも……」

鳴上「……知り合いなのか?」

一夏「ああ、幼馴染のお姉さんなんだ」

鳴上「そうなのか」

一夏「……はあ」

鳴上「…………」

鳴上(そっとしておこう)

19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:15:10 ID:x6SncPAc


―――――――――――


翌日・昼休み

食堂



一夏「悠! ここで食わないか?」

鳴上「いいのか?」

シャル「どうぞ、歓迎するよ」 ニコ

シャル「あ、自己紹介がまだだったね?」

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:16:00 ID:x6SncPAc

シャル「ボクはシャルロット・デュノア。 フランスの代表候補生」

鳴上(……ボク?)


セシリア「わたくしはセシリア・オルコット。 イギリスの代表候補生ですわ」

鳴上(いかにも、な、お嬢様……)


ラウラ「私はラウラ・ボーデヴィッヒ。 ドイツ代表候補生だ」

鳴上(……眼帯)


箒「私は篠ノ之 箒。 代表候補生ではないが専用機持ちだ」

鳴上(この娘が篠ノ之博士の妹さん)

鳴上(一夏との幼馴染か……)


鈴「あたしは知ってるよね? 悠」 クス

鳴上「もちろん」 クス

21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:16:35 ID:x6SncPAc

鳴上「俺は鳴上 悠。 よろしく」

鳴上「それにしても、そうそうたるメンバーだ……」

一夏「ああ、多国籍IS専用機持ちばかりだ」

一夏「でもみんないい奴だぜ? 気兼ねしないでくれ」

鳴上「わかった」

セシリア「鈴さんから お聞きしましたけど、変わった掛け声をなさるとか……」

鈴「ちょっ、セシリア!」

セシリア「あ……ごめんなさい」

22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:17:28 ID:x6SncPAc

鳴上「いや、気にしないでくれ。 色々あって口癖になってしまったんだ」

ラウラ「心理学用語なのだろう?」

鳴上「響きがハイカラだろ?」

箒(ずいぶん古風な言い回しをするのだな……)

シャル「専用機の名前もかっこい……ハイカラだね」

箒「イザナギ、だったな」

箒「イザナギのミコト……日本の神の名前だ」

鳴上「ああ、自分でも気に入ってる」

鳴上「篠ノ之博士に名前を付けていいと言われ、命名した」

一夏「さ、みんな、質問はそれくらいにして飯にしようぜ!」

23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:18:32 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数日後

IS学園・第一アリーナ・1組2組合同実習


千冬「……転校生の鳴上 悠か」

鳴上「はい」

千冬「束に気に入られた様だが……大丈夫か?」

鳴上「?」

千冬「……まあいい」

千冬「よし、それでは……織斑。 鳴上と模擬戦をやれ」

一夏「おしっ! わかりました」

鳴上「よろしくな、一夏」

一夏「こっちこそな、悠」

24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:19:17 ID:x6SncPAc

鳴上「……」 スチャ…(メガネ装備)

鳴上「イザナギ!」 スウウウウンッ!

一夏「白式!」 スウウウウンッ!

鳴上「行くぞ。 一夏」

一夏「ああ……いつでもいいぞ」

鳴上「はあああああっ!!」

     ガキンッ!! ガアンッ!!

一夏「うおおおおおっ」

鳴上「くっ……!」

25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:19:49 ID:x6SncPAc

千冬(………)

箒(………)

セシリア(………)

シャル(………)

鈴(………)

ラウラ(………)

     キンッ!! ガァンッ!!

千冬「篠ノ之……どう見る?」

箒「…………」

箒「ISに乗っていなければ」

箒「一夏に……勝ち目はないでしょう」

セシ・ラウ・シャ・鈴「!?」

26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:21:11 ID:x6SncPAc

千冬「同感だな」

千冬「鳴上の動きは実戦をくぐり抜けてきた者の動きだ」

千冬「俗に人、一人を切れば初段の腕、と言うが」

千冬「鳴上の動きはまさにそれだ」

箒「型にはまらない我流の動きだが……」

箒「間合いの取り方が素人のそれではない」

セシ・ラウ・シャ・鈴「…………」


千冬(だが……気になるのは『何』と戦って来たのか? ということだ)

千冬(動きから まるで人ならざる者との戦いを想定している様に見える)

千冬(束め……どこからこんな逸材を)

27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:21:58 ID:x6SncPAc

鳴上「……ペルソナ!」 ポウ ポウ

一夏(来た! 鈴の言ってた、小型のスタン・グレネード!!)

一夏「その手は食わないぜ!」 回避行動


     カッ!!!


一夏「!? ま、眩し……!!」

鳴上「はあああああっ!!」

     バゴオオンッ!!

―――――――――――


28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:22:53 ID:x6SncPAc

授業終了後

男子更衣室


一夏「……負けたぜ」

鳴上「油断したな」

一夏「ちぇ……スタン・グレネードじゃなくて、フラッシュ・グレネードとはな……」

鳴上「だが一夏の零落白夜は凄い武器だ」

鳴上「俺の勝利は紙一重にすぎない」

一夏「ま……白式には、それしかないけどな」

鳴上「一夏はきっと強くなれる。 大丈夫だ」

一夏「ああ、これからさ」

一夏「……次は負けないぜ?」

鳴上「その意気だ」

     ハハハ…

一夏(うん、こういう会話……すげー久しぶり。 楽しいな)

29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:24:01 ID:x6SncPAc


―――――――――――


放課後

IS学園寮・ロビー付近


鈴「一夏! 今度の休み、空いてる?」

一夏「ん? ああ、空いてるが?」

鈴「そ! じゃあさ!」

鈴「一緒に映画を見ない? タダ券二枚あるの!」 ピラッ

一夏「へえ……おっ!」

一夏「『山本五十嵐』じゃないか! この前、封切りしたばかりの」

一夏「……って、これ硬派な戦争映画だぞ?」

鈴「あ、あたしは、一夏と見れれば文句はないわ!」///

30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:24:33 ID:x6SncPAc

一夏「う~ん……鈴には退屈だと思うけどなあ」

一夏「男じゃないとわからないぞ? こういうの」

鈴「……別に構わないって」

一夏「けどなあ……」

鈴「……もういい! だったら券はあげるから、悠とでも見に行けば!!」 フン!

一夏「!? お、おい、鈴!?」

一夏「……なんだよ、ったく」

31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:26:11 ID:x6SncPAc

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


一夏「……という事があってな」

鳴上「…………」

一夏「なんで鈴が怒ったのか、わからない」

鳴上(……本当にこんな奴が存在するんだな)

一夏「やっぱり謝るべきかな?」

鳴上「……止めておいた方がいいと思う」

鳴上「むしろ今回の事に礼を言った上で、別の休みに鈴好みの映画を見に行くか」

鳴上「もしくは……二人でどこかに出かける約束をしたらいいと思う」

一夏「そうなのか?」

鳴上「多分だが……きげんは治ると思う」

一夏「そうか! よし、明日にでも鈴に伝えよう!」

鳴上(その前に根本的な所がダメダメな気がする……)

32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:26:47 ID:x6SncPAc


―――――――――――


次の日

休み時間・廊下


一夏「鈴!」

鈴「……何よ」

一夏(うっ……露骨に怒っていらっしゃる)

一夏「き、昨日のタダ券、ありがとうな」

一夏「それで、そのお礼……と言っちゃなんだが、この次の次の休みに」

一夏「どこか出かけないか?」

鈴「……ふえっ!?」

33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:27:21 ID:x6SncPAc

鈴「…………」

鈴「……ホント?」

一夏「ああ、本当だとも!」

一夏「鈴が見たい映画があれば一緒に見に行くし」

一夏「ないなら、買い物でも遊園地でも付き合うぜ?」

鈴「ホ、ホントにホント!?」///

一夏「本当だって」

鈴「ふ、二人だけ、で!?」///

一夏「おう、もちろん!」

鈴(や、やたっ! い、一夏と デ、デートの約束!)///

鈴「しょ、しょうがないわね! 付き合ってあげるわ!」///

34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:28:18 ID:x6SncPAc

一夏(すげえ! 悠の言う通りにしたら、きげんがすんなり治った!)

一夏(休みは減ったけど……)

一夏(悠……頼りになるぜ!)


―――――――――――


授業中・2組教室


鈴(んふふ~、デート。 一夏とデート!) ニコ ニコ

モブ子(……なんか気持ち悪いわね、凰さん) ヒソヒソ

モブ美(休憩終わってからずっと、ああだもんね……) ヒソヒソ

モブ枝(何があったのかしら?) ヒソヒソ

鳴上(一夏……上手く行った様だな) ヤレヤレ…

35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:31:31 ID:x6SncPAc

昼休み

屋上


鳴上「ふう……」

シャル「あれ? 鳴上くん?」

鳴上「……? デュノア?」

シャル「どうしたの? お昼食べたら、急用とか言って」

シャル「すぐに食堂から出て行っちゃったと思ったら」

シャル「こんな所に居るなんて……」

鳴上「……なんとなく居心地が悪くて」

シャル「そっか……」

シャル「鈴……なんかテンション高かったし、そのせいかな?」

36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:32:08 ID:x6SncPAc

鳴上「……?」

シャル「ボクもちょっと居心地……悪くて、ね」

シャル「空気を吸いに」 テヘへ

鳴上(……まさか)

鳴上「デュノアは一夏の事が好きなのか?」

シャル「……うん、好き」

シャル「って、わかるよね? 普通……」

鳴上「恐ろしいまでの鈍感力だ……」

シャル「あそこまでいくと才能だよ……ホント」 フウ…

鳴上「気持ちは伝えたのか?」

シャル「……ううん」

鳴上「なぜ、伝えない?」

37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:32:41 ID:x6SncPAc

シャル「いろいろアピールしてダメだったし……」

シャル「ボクには家庭の事情もあって」

シャル「今の関係が壊れるのが……怖いの」

鳴上「…………」

鳴上「いいのか? それで?」

シャル「……わかってるよ、そんな事」

鳴上「…………」


鳴上(あまり口を出さない方が いいのだろうけど……)


鳴上「……少し、独り言を言っても構わないか?」

シャル「え?」

38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:37:15 ID:x6SncPAc

シャル「…………」

シャル「……どうぞ」

鳴上「……ある人物が、恋をしていた」

鳴上「寝ても覚めても……と、いう訳ではなく、その想いは ほのかなものだった」

鳴上「でも……突然その想い人は亡くなってしまう」

シャル「……!」

鳴上「もちろん、そいつは悲しんだ……それは事実だ。 だけど」

シャル「…………」

鳴上「ある時、気が付いてしまった」

鳴上「想い人が亡くなった事よりも」

鳴上「想い人が亡くなって、自分は、なんて可哀想なのだろうと酔っている自分に……」

シャル「…………」

39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:38:06 ID:x6SncPAc

シャル「……何が言いたいの?」

シャル「ボクが……自分を哀れんで喜んでいる、とでも言いたいの!?」

鳴上「…………」

鳴上「違うのか?」

シャル「!!」

     パァンッ!!

シャル「違う! ボクは……ボクは、そんなこと思っていない!!」 ダッ

     タッ タッ タッ…

鳴上(…………)

鳴上(……言い過ぎた、かな)

40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:39:32 ID:x6SncPAc

放課後

IS学園寮・談話室


セシリア「あら、鳴上さん。 ごきげんよう」

鳴上「……オルコット」

セシリア「? どうなさいましたの? その頬」

鳴上「そっとしておいてくれ……」

セシリア「はあ……」

セシリア「それにしても」

鳴上「?」

セシリア「鈴さん……気持ち悪いくらい上機嫌でしたけど」

セシリア「鳴上さん、何かご存知ありませんこと?」

鳴上「……いや」

セシリア「そうですの。 まあおそらく、一夏さんがらみでしょうけど……」 フウ…

41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:40:10 ID:x6SncPAc

鳴上(…………)

鳴上(……まさか)

鳴上「もしかして……オルコットも一夏が好きなのか?」

セシリア「!! ……えと…その。 はい」///

鳴上「……そうか」

セシリア「…………」

セシリア「鳴上さん。 『も』とおっしゃるという事は、どなたかに同じ質問を?」

鳴上「……デュノアに」

セシリア「ははあ……その頬はシャルロットさんが?」

鳴上「……少し、言い過ぎて」

42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:46:27 ID:x6SncPAc

鳴上(ひょっとして、一夏と親しそうにしている女子全員……?)

鳴上(……ありうるな)


鳴上「一夏は誰かと付き合っていたりするのか?」

セシリア「わたくしの知る限りでは、いないと思います」

鳴上「……それはそれで凄いな」

鳴上「オルコットは……」

セシリア「はい?」

鳴上「いや、なんでもない」

セシリア「……どうして告白しないのか? ですか?」

鳴上「…!」

43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:47:14 ID:x6SncPAc

セシリア「実を言うと……わたくしにもよく分からないのです」

セシリア「一夏さんをお慕いしているのは間違いありません」

セシリア「わたくしは精一杯淑女として、一夏さんに接していると自信もあります」

セシリア「ですが、何かが足りない様な気がして……」

鳴上「…………」

鳴上「知り合いの話をしてもいいか?」

セシリア「はい。 かまいませんわ」

鳴上「……そいつは普通だった」

鳴上「俺となんら変わらない健全な高校生」

鳴上「だがそいつは家名を継ぐ、という見えない鎖で繋がれていた」

セシリア「…………」

44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:47:49 ID:x6SncPAc

鳴上「しかし……」

鳴上「ある日、唐突にその鎖が外された」

セシリア「…………」

鳴上「俺は、そいつの継ぐべき家名を汚さない努力をそれなりに見てきた」

鳴上「見た目は平静を装っていたが……」

鳴上「落胆しているのは手に取るようにわかった」

セシリア「…………」

鳴上「オルコットも同じじゃないのか?」

セシリア「!?」

鳴上「自分のやってきた事を これまでを」

鳴上「一夏に否定されるかもしれない、と思っているんじゃないのか?」

セシリア「なっ……!」

45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:48:19 ID:x6SncPAc

セシリア「そんな事……そんな事、ありませんわ!!」

セシリア「あなたなどに わたくしの何がわかるとおっしゃるの!?」

鳴上「…………」

セシリア「…………」

セシリア「……不愉快ですわ」

セシリア「失礼します!」 タッ

     コッ コッ コッ…

鳴上「…………」

鳴上「……またやってしまった」

46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:49:03 ID:x6SncPAc

IS学園寮・ラウラとシャルの部屋


ラウラ「シャルロット」

ラウラ「そろそろ夕飯の時間だが、一緒に取らないか?」

シャル「…………」

ラウラ「……シャルロット?」

シャル「…………」

シャル「……ごめん、今日はいらない」

シャル「一人で行ってきて」

ラウラ「…………」

ラウラ(……何があったのだ?)

47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:49:44 ID:x6SncPAc


―――――――――――


翌日・昼休み

食堂


一夏「あれ? 今日、セシリアとシャルは?」

箒「セシリアは何か用事があると言っていた」

ラウラ「シャルロットは気分がすぐれないそうだ」

一夏「そうなのか?」

一夏「セシリアはともかく、シャルは元気そうだったのに」

鈴「ふうん」

鳴上「……………」

48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:50:21 ID:x6SncPAc

鳴上「……ごちそうさま」 ガタッ

一夏「? おい悠、まだいいじゃないか」

鳴上「すまない。 ISについて勉強したいんだ」

鳴上「何しろ いきなりの転校だったからな。 しばらく図書室にこもろうと思って」

一夏「……そういえば寮でも勉強していたっけ」

鳴上「できるだけ早く学科に追いつきたくてな」

一夏「わかった……じゃあな」

鳴上「ああ」


ラウラ「…………」

49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:51:00 ID:x6SncPAc

図書室


鳴上「…………」 カリカリ…

ラウラ「鳴上」

鳴上「?」

鳴上「……ボーデヴィッヒ」

ラウラ「少しいいか?」

鳴上「構わない」

ラウラ「昨日からシャルロットの様子がおかしい」

ラウラ「何か知らないか?」

鳴上「……多少は」

鳴上「俺にも責任がある……」

ラウラ「……詳しく話せ」

50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:51:45 ID:x6SncPAc


―――――――――――


鳴上「……という話をしたんだ」

ラウラ「それは……シャルロットを侮辱したのか?」

鳴上「その意図はない」

鳴上「……ただ、感じた事を言ったまでだ」

ラウラ「…………」

鳴上「…………」

ラウラ「…………」

ラウラ「シャルロットは……元気になるか?」

鳴上「乗り越えるべき壁を乗り越えた時に」

ラウラ「……シャルロットしだい、という事か」

51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:52:35 ID:x6SncPAc

ラウラ「ところで鳴上」

ラウラ「私は一夏を嫁にする、と本人に伝えているが」

ラウラ「これは告白になるか?」///

鳴上「……えっ?」

ラウラ「だから、一夏に公衆の面前で『嫁にする』と宣言しているのだが……」///

鳴上「…………」

鳴上「……いろいろツッコミたい事はあるが」

鳴上「おそらく一夏はそう思ってない」

ラウラ「!? そ、そんな!?」

52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:53:18 ID:x6SncPAc

ラウラ「ク、クラリッサが言うには、これで一夏の『はあと』をがっちり掴めると!」

鳴上「……誰?」

ラウラ「私の副官だ」

ラウラ「さらにその時、唇も奪っている!」

ラウラ「そして時折 裸で一夏のベッドにも潜り込んでいるぞ!」 ドヤッ!

鳴上「…………」

鳴上(……この学び舎は、無法地帯か? それとも俺がおかしいのか?)

ラウラ「なあ、鳴上……」

鳴上「落ち着け」

ラウラ「う? ……うむ」

53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:53:58 ID:x6SncPAc

鳴上「…………」

ラウラ「…………」

鳴上「……俺の意見を聞くか?」

ラウラ「す、少し怖いが……聞きたい」

鳴上「…………」

鳴上「はっきり言ってボーデヴィッヒは幼すぎる」

ラウラ「な!? そ、それは仕方ないだろう!?」

ラウラ「発育には個人差というものが……」

鳴上「内面の事を言っているんだ」

ラウラ「……!」

54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:54:51 ID:x6SncPAc

鳴上「俺には小学二年生の従兄弟がいるが」

鳴上「それよりも幼く感じる」

ラウラ「…………」

鳴上「事情があるのか?」

ラウラ「…………」

ラウラ「私は……試験管から生まれ、兵器として育てられた」

鳴上「!」

ラウラ「皆の様な教養など受けていない……」

ラウラ「だから人から聞き、教えられた事でしか自分の気持ちを表現できない」

ラウラ「私には、あれが精一杯なんだ……」

鳴上「…………」

55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:55:22 ID:x6SncPAc

鳴上「俺の知り合いに自分を探し続けた奴がいる」

ラウラ「…………」

鳴上「探して、探して、傷ついて。 それでも探し続けて……」

ラウラ「…………」

鳴上「ある日、俺の前から突然消えた」

ラウラ「死んだのか?」

鳴上「いや。 2~3日後にひょっこりと帰ってきた」

ラウラ「むう?」

鳴上「……でもな」

56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:56:03 ID:x6SncPAc

鳴上「一回り大きく成長していた」

鳴上「ああ、物理的にって意味じゃない」

鳴上「精神的に……こう、吹っ切れていた、という意味だ」

ラウラ「…………」

ラウラ「何があったのか知りたい」

鳴上「自分を見つけたんだ」

ラウラ「……私をバカにしているのか?」

鳴上「そんな意図はない。 俺が言いたいのは……」

ラウラ「…っ! もういいっ! 聞いた私が愚かだった!」 ダッ

     ツカ ツカ ツカ…

鳴上「…………」

鳴上(……またか) ハア…

57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:57:10 ID:x6SncPAc

放課後

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


一夏「明日は休みだし、鈴にもらったタダ券の映画を見に行くつもりだが……」

一夏「悠、一緒にどうだ?」

鳴上「すまない」

鳴上「今週と来週の休日、2組の先生に補習授業をお願いしているんだ」

一夏「……お前ってホント勉強好きだな」

鳴上「明日は雨だし、はかどると思う」

一夏「げっ、そうなのか!?」

鳴上「雨音を聞くと集中出来るんだぞ?」

一夏「いや、そうじゃなくて、明日雨なのかよ!って意味なんだけど……」

58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:57:41 ID:x6SncPAc


―――――――――――


翌日・休日の雨天・朝

2組教室


2組の先生「……という事です。 わかりましたか?」

鳴上「はい。 絶対防御……凄い技術ですね」

2組の先生「そうですね、ここ数年の技術的進歩は」

2組の先生「産業革命以来の歴史的発展、と言われていますから……」

鳴上(俺が今まで習ってきた、科学のレベルを完全に超えている)

2組の先生「それでは次に行きますね」

鳴上「はい」

59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:58:17 ID:x6SncPAc



食堂


鳴上「…………」 モグモグ…

箒「鳴上。 ここ、いいか?」

鳴上「! ……篠ノ之」

鳴上「どうぞ」

箒「鳴上は、部活動に興味あるか?」

鳴上「……? 勧誘か?」

箒「まあな」

箒「この前の一夏との模擬戦を見て、剣道部はどうかと思って」

鳴上「……考えておく」

箒「そうか。 ぜひ、前向きに検討してみてくれ」

60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:59:07 ID:x6SncPAc

鳴上「篠ノ之は今日、部活か」

箒「ああ、そうだ」

箒「鳴上は何をしている?」

鳴上「先生に頼んで補習授業をしてもらってる」

箒「ほう? 熱心だな。 一夏とは大違いだ」 クスッ

箒「一夏は最初、間違いとは言え 教本を捨ててしまってな」

箒「本当にどうしようもない奴で……」


鳴上(……この流れは)

鳴上(やばい……!)

鳴上(しかし……俺は食事を始めたばかり)

鳴上(おまけに時間もまだまだたっぷりある!)

鳴上(だがここは、勇気を振り絞って……!)

61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 14:59:37 ID:x6SncPAc

箒「そういえば、今日一夏は何をしているのだ?」

鳴上(くっ…! 先手を打たれた!)

鳴上「……映画を見に行く、と言っていた」

箒「な、なに!?」

箒「そんな話、初耳だぞ!? だ、誰と行くつもりか、聞いてないか!?」

鳴上「いや、誘われたんだが……俺は補習があるから断った」

鳴上「中学時代の友達……弾? とかいう奴を誘ったと……」

箒「そ、そうか……」


鳴上(……わかりやすすぎる)

鳴上(あきらめよう……) ハア…

62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:00:33 ID:x6SncPAc

鳴上「……篠ノ之は一夏の事が好きなんだな?」

箒「ななななななっ!? なな、なにを言って!?」///

鳴上「わざとやっているのか?」

箒「そ、そんなわけあるか! お前が変な事を言うからだ!」///

鳴上「落ち着け」

箒「ぐっ…む…」///

箒「…………」///

鳴上「…………」

箒「そ、そんなに」///

箒「バレバレか?」///

鳴上「……かなり」

箒「~~~~~っ!」///

鳴上「落ち着け」

63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:01:07 ID:x6SncPAc

鳴上「もう告白したらどうだ?」

箒「い、いまさら……できない」///

鳴上「なぜ?」

箒「……は、恥ずかしいからに決まっているだろう!?」

鳴上「…………」

鳴上「それでいいのか?」

箒「良いも悪いも……無い」

箒「……臆病なんだ、私は」

鳴上「…………」

64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:01:44 ID:x6SncPAc

鳴上(また……きげんを損ねるかな?)

鳴上(……まあいいか)


鳴上「俺の知り合いに音楽の好きな女の子がいるんだが……」

箒「……? なんだ? いきなり?」

鳴上「とりあえず聞いてくれ」

箒「……む」

鳴上「その娘は、音楽が人を幸せにすると一途に信じていて」

鳴上「吹奏楽部でトロンボーンを使っていた」

箒「…………」

65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:02:19 ID:x6SncPAc

鳴上「本当はフルートを吹きたかったそうだが……」

鳴上「経済的な理由で、元々家にあったトロンボーンを使うようになったそうだ」

箒「…………」

鳴上「小柄なその娘にトロンボーンは大きすぎて扱い辛そうだった」

鳴上「……でも、彼女は必死に練習した」

鳴上「失敗して笑われる事を恐れながらも……な」

箒「…………」

66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:03:13 ID:x6SncPAc

鳴上「篠ノ之は、一夏の事でどんな努力をした?」

箒「っ!!」

鳴上「一夏に想いを寄せながら……何をした?」

鳴上「ただ、振り向いてくれるのを待っている様だが」

鳴上「自分ではない誰かが一夏のそばにいないか、そればかり気にしている……」

鳴上「滑稽だ」

箒「黙れ!!」 ガタッ!

鳴上「…………」

箒「お前に……お前なんかに! 私の何がわかる!?」

鳴上「…………」

箒「……っ」

箒「くそっ!!」 タッ

     ツカ ツカ ツカ…

鳴上(やっぱり怒らせてしまった……) ハア…

67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:03:48 ID:x6SncPAc

夕方

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


鳴上「おかえり」

一夏「おう、ただいま! 悠!」

鳴上「……? なんだ、その荷物?」

一夏「これか? フッフッフッ……じゃーん!」 バッ!

鳴上「プラモデルか」

一夏「ああ! 映画に出てきた、戦闘機や戦艦だ!」 ニカッ

鳴上「……買いすぎじゃないか?」

一夏「ああ……勢いって怖いな……」 ズーン…

一夏「悠も作らないか? 金はいらないから」

鳴上「気が向いたらな」

68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:04:21 ID:x6SncPAc

一夏「おう、待ってるぜ!」

一夏「じゃあさっそく零戦、いってみるか!」 ガサゴソ…

鳴上「…………」

鳴上「……そういえば」

鳴上「明日は鈴と約束があるんじゃなかったか?」

一夏「ああ、そうだけど?」

鳴上「プラモなんて、いつでも作れる」

鳴上「今日は早めに寝た方がいいんじゃないのか?」

一夏「大丈夫だって」

一夏「多少遅くなっても明日くらい凌げるさ♪」

鳴上「…………」

69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:05:21 ID:x6SncPAc


―――――――――――


翌日の休日・朝

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


鳴上「……ふあ」

鳴上(……もう起きないと)

鳴上「そうだ、テレビ」 ピッ

     アナタノ、テレビニ、ジカネットタナカ~

     ミ、ン、ナ、ノ、ヨクノトモ!

鳴上(…………)

鳴上(今日、欲しいものは無かったな) ピッ

70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:06:25 ID:x6SncPAc

鳴上「おい、一夏」

一夏「…………ん」

鳴上「そろそろ起きないと、鈴との約束 間に合わなくなるぞ?」

一夏「……ん、ふあああっ……」

一夏「もう……そんな時間か……」

鳴上「……三機も作ったのか」

一夏「ん……ついついな」

一夏「零戦作ったら九九艦爆と、九七式艦攻も作って……」

一夏「真珠湾攻撃を再現したくてなあ……」 ボリボリ…

鳴上「一夏……シャワーぐらいは浴びて行けよ?」

一夏「ん~…わかってる」

一夏「目を覚ます為にも浴びるさ……」

鳴上「しっかりしろよ? ……じゃあな」

71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:07:11 ID:x6SncPAc


―――――――――――


昼過ぎ

IS学園・中庭付近のベンチ


鳴上(よし、ISの基本構造と概要はだいたい理解できた) セノビー…

鳴上(後は復習して、よりしっかり覚えよう……)

鳴上(…………)

鳴上(……ん?)

鳴上(あれは……鈴?)

鳴上(一夏はどうしたんだ? それに帰って来るには随分早い)

鳴上(…………)

72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:07:47 ID:x6SncPAc

鈴「あ……悠……」

鳴上「……やあ」

鈴「何してんの?」

鳴上「補習の後、昼を食べてくつろいでいる」

鈴「そっか……そういやお昼まだだっけ」

鳴上「…………」

鳴上「一夏は?」

鈴「!!」 ビクッ

鈴「……もう知らない! あんな奴!!」 ダッ

     タッ タッ タッ…

鳴上「…………」

鳴上(一夏、何かやらかしたな)

73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:08:31 ID:x6SncPAc

夕方

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


一夏「……ただいま」

鳴上「おかえり」

鳴上「鈴、先に帰ってきてた」

一夏「……知ってる」

鳴上「何があった?」

一夏「映画見てて……爆睡しちまった」

鳴上「…………」

鳴上「ひょっとして」

鳴上「今まで……か?」

一夏「返す言葉もありません……」

74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:09:17 ID:x6SncPAc

鳴上「今すぐ謝って来い」

一夏「帰ったその足で、真っ先に鈴の部屋に向かったよ」

一夏「……会ってもくれなかった」

鳴上「…………」

鳴上「一夏……」

一夏「ん?」

鳴上「今日の鈴を見て……何か感じた事はあるか?」

一夏「感じた事?」

一夏「そうだな……」

一夏「私服だったな。 そういえば、いつもより可愛かったような……」

一夏「後は……テンションが やたら高かったけ」

一夏「う~ん。 それぐらいかな」

75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:09:52 ID:x6SncPAc

鳴上「……そうか」

一夏「なんだよ、いったい?」

鳴上「俺が見た限りでは、かなり気合が入っていた」

一夏「気合?」

鳴上「まず……リボンが違っていた。 服に合うものを選んだのだろう」

鳴上「化粧も多少濃かったし……いつもはしていない口紅をしていた」

鳴上「きっと、今日という日を楽しみにしていたのだろう」

一夏「…………」

76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:10:50 ID:x6SncPAc

鳴上「一夏は、鈴に対して何か気を使ったか?」

一夏「…………いや」

鳴上「そうか……」

一夏「で、でも、鈴は友達で、幼馴染で……気の許せる相手で……」

鳴上「それに甘えた、と?」

一夏「!! そ、そんなつもりは!」

鳴上「…………」

一夏「…………」

一夏「……もう飯食って、寝る」

鳴上「おやすみ」

77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:11:42 ID:x6SncPAc


―――――――――――


 ――????――



     …………

     ……ん?



     ここは……?



シャル?「あ、やっと目が覚めた?」


     え?


シャル?「まだ寝ぼけてるのかな?」 クスクス

78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:12:14 ID:x6SncPAc


     キ、キミは……!?


シャル?「うふふ……はじめまして」

シャル?「ボクは君だよ」


     !?


シャル?「ボクは一夏の事が好き……」

シャル?「でも、ボクは妾の子……」

シャル?「そんなボクが一夏に告白なんて出来ない」

シャル?「出来るわけがない……」

79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:13:26 ID:x6SncPAc

シャル?「ああ……ボクって、なんて不幸なんだろう……」


     ……っ!!


シャル?「こんな不幸な星の元に生まれた僕を」

シャル?「きっと一夏は放っておかない……」


     …………


シャル?「うふふ……きっと一夏は、僕を選んでくれる」 アハハ…

シャル?「不幸なボクを望んでいる」

シャル?「そうに決まっている……」 アハハ…


     ……違う


シャル?「違う? なにが違うのかな?」

80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:14:14 ID:x6SncPAc

シャル?「一夏がボクに優しくしてくれるのは、ボクが不幸だからだよ?」

シャル?「ボクから不幸を取ったら……な~んにも無くなっちゃう!」 アハハ…


     違う!


シャル?「違わないよ。 だって……」

シャル?「君はボクで、ボクは君だもん」

シャル?「なんだって知ってるよ?」 アハハ…


     違う……違う……! 違う!!

     ボクはそんな事、思ってなんかいない!!


シャル?「あははっ」

81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:15:13 ID:x6SncPAc

シャル?「そんなこと言って……」

シャル?「誰よりも不幸のぬるま湯が好きなくせに」 クスクス…

シャル?「もっと自分に正直になりなよ!」 アハハ…


     ち、違う!! キミなんて……

     キミなんて! キミなんて!!

     ボクじゃないっ!!


シャル?「…………」

シャル?「ふ…うふふ……」

シャル?「あはははははははははははっ!!」

82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:16:05 ID:x6SncPAc


     !!?


シャル?「我は影………真なる我………」

シャル?「これからも……ボクは、汚れ続ける」


     や…いや…やめて!!


シャル?「不幸で在り続ける……」

シャル?「一夏をモノにする為に……」 アハハ…

シャル?「ISだって、ウソだって、体だって……」

シャル?「何だって使うんだから!!」 アハハ…!

83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:16:48 ID:x6SncPAc








     いやああああああああああああっ!!









84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:17:49 ID:x6SncPAc



IS学園寮・ラウラとシャルの部屋


ラウラ「シャルロット!」

シャル「…ううっ………くうっ」

ラウラ「シャルロット!!」

シャル「……はっ!」

ラウラ「大丈夫か? ずいぶん うなされていたぞ?」

シャル「夢……」

ラウラ「……シャルロット?」

シャル「あ、ごめん……ラウラ」

シャル「……酷い夢を……見ちゃって」 フウ…

ラウラ「そうか……」

85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:18:30 ID:x6SncPAc

授業中

1組


シャル(…………)

シャル(鳴上くんのせいだ)

シャル(鳴上くんが あんなこと言うから……)

シャル(…………)

シャル(ボクは……あんな事)

シャル(望んでなんか……)

シャル(…………)

86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:19:08 ID:x6SncPAc

昼休み

図書室


     テク テク テク…

シャル「…………」

シャル「鳴上くん」

鳴上「! ……デュノア」

シャル「一夏に聞いて……多分ここだろうって」

シャル「今、いいかな?」

鳴上「かまわない」

87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:19:52 ID:x6SncPAc

シャル「この前はごめん……ひっぱたいちゃって」

鳴上「俺も言いすぎた」

シャル「……うん」

シャル「…………」

シャル「それで、ね」

シャル「この前の……『ある人』の話の続きを ぜひ聞きたいんだ」

鳴上「…………」

鳴上「わかった」

鳴上「俺はどこまで話した?」

シャル「自分が可哀相だと、酔っている事に気づいたって……」

鳴上「…………」

88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:20:47 ID:x6SncPAc

鳴上「そこからそいつは、自分を見つめ直す事を始めた」

鳴上「これまで自分の意思で取り組んできた事も」

鳴上「実は、単なるごまかしでやってきた部分があった事に気が付いた」

シャル「…………」

鳴上「……俺は、そいつに言った」

鳴上「それがお前のすべてじゃない」

鳴上「それを含めたすべてが、お前だ、と」

シャル「……!」

鳴上「俺の言葉がきっかけになったかは分からないが……」

鳴上「そいつは少しずつ自分を理解して行くつもりだ、と言っていた」

シャル「……そう」

89: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:21:32 ID:x6SncPAc

シャル「今、その人はどうしてるの?」

鳴上「以前より明るくなって、毎日が楽しいと言ってる」 クスッ

シャル「……そっか」

シャル「ボクも……その人みたいになれるかな?」

鳴上「…………」

鳴上「デュノアが あいつみたいになることは無い」

鳴上「デュノアが デュノアのやり方で、デュノア自身と向き合えばいい」

シャル「ボクが……ボクのやり方で……」

90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:22:05 ID:x6SncPAc

鳴上「…………」

鳴上「……そいつが、ポツリとつぶやいた言葉がある」

鳴上「自分と向き合うって難しいな……と」

シャル「……!」

鳴上「デュノアだけじゃない」

鳴上「俺も、そいつも、一夏も……」

鳴上「この学園にいる一人一人も、みんな」

鳴上「自分と向き合うことは難しい事なんだと思う」

91: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:22:51 ID:x6SncPAc

シャル「…………」

シャル「…………」

シャル「…………」 ホロリ

シャル「……あれ?」

鳴上「…………」

シャル「どうして……ボク」

シャル「泣いてるの?」

シャル「ふふ……変なの」 クスッ

鳴上「そんな事はない」 ニコ

92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:23:26 ID:x6SncPAc

シャル「…………」

シャル「ありがとう、鳴上くん。 ボク……やってみるよ」

シャル「自分に向き合ってみる」

シャル「でも良かったら……また、お話 聞かせてくれるかな?」

鳴上「もちろん」

シャル「ふふっ」

シャル「じゃ……またね」


鳴上(デュノアの事が少し、わかった気がする……)

鳴上(デュノアの表情はどこか寂しげだが、目に輝きが灯った)

鳴上(どうやら、デュノアの力になれた様だ……)

93: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:24:04 ID:x6SncPAc


―――――――――――


放課後・屋上


鈴「…………」

鈴「…………はあ」


鳴上「……鈴?」


鈴「………?」

鈴「悠……」

94: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:24:57 ID:x6SncPAc

鳴上「一夏から、おおよその事は聞いた」

鳴上「とても反省している」

鈴「…………」

鳴上「会ってやったらどうだ?」

鈴「…………」

鳴上「一夏の事が好きなんだろう?」

鈴「!!」/// ドキッ

鈴「…………」

鈴「もう……分かんない」

鈴「あたしは…… 一夏の事、好き……だと思う」

鈴「でも…… 一夏は……」

鳴上「…………」

95: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:26:05 ID:x6SncPAc

鳴上「鈴は一夏に気持ちを伝えたのか?」

鈴「……ううん」

鳴上「一夏が告白するのを待っている?」

鈴「あの超絶 朴念仁が、するわけ無いじゃない!」

鳴上「俺もそう思う」 クスッ

鳴上「それだけ一夏の事を理解しているなら」

鳴上「後は、鈴しだいじゃないのか?」

鈴「…………」

鈴「あたしだって、そう思うわよ……」

鈴「昨日だって……そのつもりだった」

鳴上「…………」

96: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:26:36 ID:x6SncPAc

鈴「いい雰囲気になったら、自然な感じで……こ、告白しようって……」///

鳴上「…………」

鈴「……でも一夏は、いつも通りの一夏だった」

鈴「あたしなんか いろいろオシャレして、昨日をすごく楽しみにしてたのに」

鈴「一夏は、一夏のままで、あたしだけ舞い上がって……」

鈴「なんだかバカバカしく思えちゃって……」


鳴上(一夏に軽く殺意を覚えるな……)


鳴上「でも……伝えるべき事は伝えないと」

鈴「今は……いい」

鳴上「……そうか」

97: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:27:14 ID:x6SncPAc

鳴上「俺の親戚に……」

鈴「……?」

鳴上「いや、家族に」

鳴上「不器用な生き方をしていた人がいる」

鈴「うん……」

鳴上「その人には小学生の一人娘がいたけど……」

鳴上「奥さんを……少し前に無くしたばかりだった」

鈴「…………」

98: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:28:06 ID:x6SncPAc

鳴上「突然に家族を亡くしたその人は……」

鳴上「娘さんをないがしろにしてた訳じゃないけど」

鳴上「仕事の事もあって、どこか遠ざけていた」

鈴「…………」

鳴上「ある日。 俺は その女の子にたずねられた」

鳴上「『本当のお父さんって、何?』って……」

鈴「…………」

鳴上「俺は……とっさに答える事ができなかった」

鳴上「血が繋がってるって事だよ、と言うと」

鳴上「不思議そうな顔をされた」

鈴「…………」

99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:28:37 ID:x6SncPAc

鳴上「鈴も同じじゃないかな?」

鳴上「俺も驚いたけど、あの超絶 朴念仁に」

鳴上「一夏にわからせる為には、はっきり言う事が一番だと思う」

鈴「…………」

鈴「……簡単に言ってくれるわね」

鳴上「…………」

鈴「今さらって感じもあるし、一夏の幼馴染って『友達』あつかいだし……」

鳴上「…………」

100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:29:12 ID:x6SncPAc

鈴「……でも」

鈴「その通り……だね」 クスッ

鳴上「鈴のペースでやっていけばいい」

鳴上「あせる事は……」

鈴「それがあるの」

鈴「悠も見たでしょ? あのそうそうたるライバル達を」

鳴上「……確かに」

鈴「ふふ。 とりあえず、一夏に会ってくる」

鈴「まずはそれから、だよね」

鳴上「それがいい」

101: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:29:46 ID:x6SncPAc

鈴「……ところで、さっきの話に出てきた親子だけど」

鈴「その後……どうなったの?」

鳴上「いろいろあったけど……」

鳴上「俺もふくめて『家族』になれた」 ニコ

鈴「そっか……」

鈴「良かった」 ホッ…

鈴「じゃ、行って来るね!」 ニコ

鳴上「ああ……」


鳴上(鈴の声や表情は明るい)

鳴上(鈴の力になれた様だ)

102: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:31:12 ID:x6SncPAc


―――――――――――




IS学園寮・ラウラとシャルの部屋


ラウラ「シャルロット」

シャル「ん?」

ラウラ「ずいぶん機嫌が良い様だが、何かあったのか?」

シャル「う~ん……どうだろう? 良い事って言えるのかな……?」

ラウラ「?」

シャル「ボクは、嫌な自分がいる事に……」

シャル「ううん……そういう自分もボクだって、認めようって、思える様になったの」

ラウラ「……!!」

103: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:31:46 ID:x6SncPAc

ラウラ「それは……」

ラウラ「自分を見つけた、という事か?」

シャル「うん。 ある意味ではそうかも」

ラウラ「ど、どうやって見つけたのだ!?」

シャル「……ラウラ?」

ラウラ「あ……す、すまない」

シャル「…………」

シャル「ボクだけで見つけたわけじゃないよ……」

シャル「鳴上くんと話をして気づけたの」

ラウラ「鳴上に?」

シャル「うん」

104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:32:22 ID:x6SncPAc

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


一夏「……悠」

鳴上「ん?」

一夏「鈴の事、ありがとうな」

一夏「おかげで仲直り出来た」

鳴上「そうか。 良かった」

一夏「なんかお前って、ホント凄いな」

一夏「その落ち着き様は とても同級生とは思えないよ」

鳴上「……そうかな」

一夏「ああ、まるで……」

105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:32:55 ID:x6SncPAc

     コン コン

ラウラ「……鳴上、居るか?」

ラウラ「話がしたい」

一夏「ラウラ? どうしたんだ? もうすぐ消灯時間だぞ?」

鳴上「明日じゃダメなのか?」

ラウラ「そこをなんとか、頼む」

一夏「…………」

鳴上「…………」

106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:33:26 ID:x6SncPAc

どこかの個室


鳴上「それで、何の話を?」

ラウラ「うむ、その……」

ラウラ「シャルロットが自分を見つけた、と言っていて……」

ラウラ「それは……お前と話をしたからだと聞いた」

鳴上「…………」

ラウラ「……私は、ずっと気になっていた」

ラウラ「自分を探す?」

ラウラ「どういう意味だ?」

ラウラ「それじゃあ、今、ここに居る私は、何なんだ?」

鳴上「…………」

107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:34:10 ID:x6SncPAc

ラウラ「鳴上に言われてから……何がなんだか分からなくなって」

ラウラ「………分からなくて……怖くて……」

鳴上「…………」

鳴上「ボーデヴィッヒ」

ラウラ「! な、なんだ?」

鳴上「この前、俺はある人物が『自分』を見つけた、と言ったが……」

鳴上「あれは正確じゃない」

鳴上「正しくは……『自分の出生の秘密』を見つけた、だ」

ラウラ「……!」

鳴上「そいつの為に本当の事は話せないが……」

鳴上「そうだな……」

ラウラ「…………」

108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:34:57 ID:x6SncPAc

鳴上「ボーデヴィッヒは、日本の……いや」

鳴上「第二次世界大戦での日本の事を知っているか?」

ラウラ「……我がドイツ共々敗戦国だ」

鳴上「確かにそうだが、一つ違う事がある」

鳴上「原子爆弾を使用された」

ラウラ「…………」

鳴上「原爆はただの一発で軍人も民間人も、男も女も、大人も子供も」

鳴上「大勢殺した」

ラウラ「…………」

鳴上「もし……もし、だ」

109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:35:46 ID:x6SncPAc

鳴上「その原爆の発射スイッチを自分の親が押してたと仮定して」

鳴上「今、目の前で仲良く話している人物が、原爆で親を亡くしていたら」

鳴上「ボーデヴィッヒはどんな気持ちになる?」

ラウラ「……私に親はいない」

鳴上「……じゃあ尊敬できる人は?」

ラウラ「一人いる」

鳴上「その人がスイッチを押した、と仮定してみてくれ」


ラウラ(教官が……殺戮兵器のスイッチを……)

ラウラ(……そして、目の前の人の血縁者が、その犠牲者)

ラウラ(…………)

ラウラ(…………)

110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:36:23 ID:x6SncPAc

ラウラ「……複雑な気持ちになった」

鳴上「それだけ?」

ラウラ「だって……そうだろう?」

ラウラ「確かに忌むべき行為だが……自分の責任ではない」

鳴上「……相手は、そう思ってくれるだろうか?」

ラウラ「!!」

ラウラ「そ、それは……!」

ラウラ「…………」

111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:37:01 ID:x6SncPAc

鳴上「俺の話のそいつも、そういう悩みを抱え込んで」

鳴上「一時……姿を消したのだと思う」

ラウラ「…………」

鳴上「そいつが帰って来た時」

鳴上「自分の出生の秘密を明かしてくれた」

鳴上「その上で……こう聞いてきた」

ラウラ「…………」



鳴上「『みんなのそばに居てもいい?』って……」



ラウラ「…………」

鳴上「…………」

ラウラ「…………?」

112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:37:57 ID:x6SncPAc

鳴上「…………」

ラウラ「お、おい、鳴上! ど、どうして黙る!?」

ラウラ「……ま、まさか」

鳴上「俺も含めて、みんな『あたりまえだ!』って言った」 ニコ

ラウラ「!!」

ラウラ「そうか……良かった」 ホッ…

ラウラ「って鳴上! 不必要に間を空けるな!」 プンプン!

鳴上「ハハハ……」

113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:38:48 ID:x6SncPAc

ラウラ「そいつは今、どうしてる?」

鳴上「元気に働いて、お金を貯めていると言っていた」

鳴上「何に使うつもりか聞いてみたけど、話してくれなかったな」

ラウラ「そうか……いつか会ってみたいな」

鳴上「きっと喜ぶ。 ボーデヴィッヒみたいな可愛い女の子が」

鳴上「あいつは大好きだからな」 クスッ

ラウラ「か、可愛い!? 私が!?」///

鳴上「もちろん」

114: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:39:28 ID:x6SncPAc

ラウラ「結局……自分を探すにはどうしたらいい?」

鳴上「…………」

鳴上「その前に」

鳴上「ボーデヴィッヒは一夏の事をどんな風に『好き』なんだ?」

ラウラ「……え?」

鳴上「『好き』にもいろいろある」

鳴上「友達として『好き』、異性として『好き』、家族として『好き』……」

ラウラ「……そ、それは」

鳴上「答えなくていい。 考えてみるんだ」

115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:39:58 ID:x6SncPAc

鳴上「誰かに意見を聞くのもいいが、あくまで参考程度にしておけ」

鳴上「自分で考えて、考えて、考え抜いて、はじめて」

鳴上「自分に……いや」

鳴上「自分の一部に会えると……俺は思う」

ラウラ「…………」

鳴上「…………」

鳴上「……あまり足しにならないか?」

ラウラ「…………」

ラウラ「……いや」

ラウラ「そんな事はない」 ニコ

鳴上「そうか」 ニコ

116: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:40:33 ID:x6SncPAc

ラウラ「ありがとう、鳴上」

ラウラ「私は答えを出してみる」

ラウラ「手間をかけた……」

鳴上「またな」

ラウラ「ああ。 またな」 ニコ


鳴上(突然だったボーデヴィッヒの訪問……)

鳴上(思いがけず彼女を少し知る事ができた)

鳴上(どうやら、彼女の力になれた様だ……)

117: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:41:27 ID:x6SncPAc

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


一夏「……お帰り」

鳴上「……ただいま」

一夏「……何を話したんだ?」

鳴上「……悩みを相談された」

一夏「ど、どんな?」

鳴上「それは話せないが……俺なりのやり方を伝えた」

一夏「そうか……」

鳴上「そろそろ寝よう」

118: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:42:01 ID:x6SncPAc


―――――――――――


翌日の昼休み

食堂


箒「…………」

箒「………む」

箒(鳴上……) チッ…

箒(…………)

箒(仕方ない、また夕食に一夏を誘うとしよう……) ハア…

箒(……鳴上め) クルッ

119: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:42:32 ID:x6SncPAc

セシリア「…………」

セシリア「………あ」

セシリア(鳴上さん……)

セシリア(…………)

セシリア(あまり顔を合わせたくありませんわ……)

セシリア「………はあ」 クルッ

120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:43:03 ID:x6SncPAc

購買部


箒「おにぎり弁当をくれ」

セシリア「サンドイッチセットを……」



箒・セシ「!」



箒「セシリア?」

セシリア「箒さん?」

121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:43:47 ID:x6SncPAc

IS学園・中庭付近のベンチ


箒「…………」 モクモク…

セシリア「…………」 モクモク…

箒「…………」 モクモク…

セシリア「…………」 モクモク…

箒「……何かしゃべったらどうだ? セシリア」

セシリア「……箒さんこそ」

箒「いい天気、だな」

セシリア「そうですわね」

箒「…………」 モクモク…

セシリア「…………」 モクモク…


箒・セシ(か、会話が続かない…)

122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:44:25 ID:x6SncPAc

セシリア「はあ……」

セシリア「最近、一夏さんとお話しておりませんわ……」

箒「……! セシリアもか?」

セシリア「……!? 箒さんも?」

箒・セシ「…………」

箒「実は、鳴上と……その、顔を合わせたくなくて」

セシリア「……! ……わたくしもですわ」

箒「セシリアも? ……という事は」

箒「鳴上に何か言われたのか?」

セシリア「!!」

123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:45:11 ID:x6SncPAc

セシリア「そ、それは、その……」

セシリア「…………」

セシリア「……箒さんも?」

箒「……ぐっ!! ……その」

箒・セシ「…………」

箒「ここは……だな、」

箒「奴の事を知る上でも お互いが持っている情報を交換すべきではないだろうか?」

セシリア「そ、そうですわね」

箒「で、では、セシリアは、鳴上に何を言われたのだ?」

セシリア「なっ!? ず、ずるいですわ! 箒さん!」

箒「わ、私も必ず言う!」

セシリア「くっ……約束ですわよ……」

124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:45:51 ID:x6SncPAc


―――――――――――


箒「………………」

セシリア「………………」


箒(鳴上 悠……何者なんだ)

セシリア(どうして数日前に転校してきたばかりのお人が……)

箒(こうも的確に心を見透かせるのだ???)

セシリア(わけがわかりませんわ……)

125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:46:28 ID:x6SncPAc

箒「……セシリア」

セシリア「なんですの……?」

箒「お前の目から見て」

箒「鳴上の私の評価は正しいと思うか?」

セシリア「……同じ事を わたくしもお聞きしたいですわ」

箒「…………」

セシリア「…………」

126: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:47:09 ID:x6SncPAc

箒「……やっぱりいい」

セシリア「……わたくしも」

セシリア「…………」

セシリア「わたくし、放課後に鳴上さんと会ってきますわ」

箒「!」

箒「……そ、そうか」

箒「わ、私は……どうするかな」

箒「…………」

箒「良かったら……その、経緯を話してくれ」

セシリア「……はい」

127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:50:05 ID:x6SncPAc

放課後・屋上


鳴上「オルコット……」

セシリア「あ……鳴上さん」

鳴上「話って?」

セシリア「……えと」

セシリア「前に、談話室でお話しした『お知り合い』の方は」

セシリア「どうなったのか?と思いまして……」

鳴上「…………」

鳴上「俺はどこまで話した?」

セシリア「家名を継ぐ継がないで、ショックを受けていた、と……」

128: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:50:47 ID:x6SncPAc

鳴上「……あの後、あいつは」

鳴上「何もかもに やる気を無くした」

セシリア「…………」

鳴上「俺も、友達も」

鳴上「見ていて辛かったが……」

鳴上「見守る事しか出来ずにいた」

セシリア「…………」

鳴上「ある日、俺達は少し強引にバスケの試合に誘った」

鳴上「汗を流す内にあいつは段々、目に輝きを戻して行った……が」

セシリア「……そ、それで?」

鳴上「…………」

129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:51:26 ID:x6SncPAc

鳴上「あいつは……自分の価値を無くす恐怖感に抗えず」

鳴上「……力尽きた」

セシリア「そんな!」

鳴上「でも」

セシリア「!」

鳴上「ひとしきり泣いた後……」

鳴上「あいつは自分で立ち上がったよ」

鳴上「はにかみながら『お前達のおかげだ』と、言ってくれたがな」 クスッ

セシリア「………ホッ」

130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:52:03 ID:x6SncPAc

セシリア「その方は今、どうされていますか?」

鳴上「正式に家名を継ぐ事になった、と連絡があって」

鳴上「この前、十も年の離れた人と お見合いをさせられた、と嘆いていた」 クスッ

セシリア「まあ……」 クスッ

セシリア「…………」

セシリア「鳴上さん」

セシリア「わたくし、なんだか分かった気がします」

鳴上「…………」

セシリア「わたくしは…… 一夏さんを恐れてもいるのですね」

131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:52:46 ID:x6SncPAc

鳴上「…………」

セシリア「わたくしの『好き』は、単なる押し付けで…」

セシリア「それを一夏さんに拒絶されるかもしれないと」

セシリア「心のどこかで恐れている……と、鳴上さんは言いたかったのですね」

鳴上「…………」

鳴上「もう大丈夫だ」

セシリア「えっ?」

鳴上「それに気づけたのなら」

鳴上「オルコットは一夏に気持ちを告げられるだろう」 ニコ

セシリア「鳴上さん……」

132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:53:58 ID:x6SncPAc

セシリア「わたくし、頑張ってみますね」

セシリア「ライバルは多いですけど……負けませんわ!」 ニコ

鳴上「そうか……」

鳴上「実るといいな」 クスッ

セシリア「はい!」/// ニコ


鳴上(オルコットの表情は 実に晴れやかで曇りが無い)

鳴上(どうやら、オルコットの力になれた様だ……)

133: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:54:34 ID:x6SncPAc



IS学園寮・談話室


セシリア「あ、箒さん!」

箒「……? セシリア?」

箒(な、なんだ? 昼間とは、まるで別人だ……)

セシリア「お待ちしておりました」 ニコ

箒「…………」

―――――――――――

セシリア「……ですので、箒さんも鳴上さんに会うべきですわ」

箒「…………」

セシリア「……箒さん?」

箒「!? あ、いや……」

箒「……そうだな」

134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:55:05 ID:x6SncPAc

箒「なあ、セシリア」

セシリア「はい?」

箒「…………」

箒「い、いや、何でもない」

セシリア「変な箒さん」 クスッ


箒(……今のセシリア)

箒(女の私から見ても魅力的だ……)

箒(…………)

箒(鳴上の話を聞くだけで、こうも変われるものなのか?)

135: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:55:52 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数日後

1組2組合同実習


千冬「それでは、模擬戦を行ってもらう」

千冬「篠ノ之、鳴上、前に」

箒「! はい!」

鳴上「はい」


千冬(鳴上は、このところ格段に腕を上げた、と、2組の担任に聞いた)

千冬(どの程度か見てみよう)

136: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:56:38 ID:x6SncPAc

箒(……鳴上か)

箒(結局……あれから一夏とあまり話せていない)

鳴上「…………」 スチャ…(メガネ装備)

鳴上「イザナギッ!」 スウウウウウンッ!!

箒「紅椿!」 スウウウウンッ!!

箒(…………)

箒(……お前の)

箒(せいだ!!)


箒「……はああああああっ!!」 ゴウッ!!

鳴上「!?」

137: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:57:30 ID:x6SncPAc


     ドガアッ!!


千冬「!?」

一夏「おい、箒!?」

セシリア「何の前置きも無く、いきなり攻撃するなんて……!」

シャル「鳴上くん!!」

ラウラ「いや、大丈夫だ! あれを見ろ!」

鈴「すごい……! 箒の多角的な複数の攻撃を なんとか受けきった!!」


     ガギッ! グバッ! ガゴッ!


鳴上「くっ……! ペルソナッ!」 ポウ ポウ

138: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:58:19 ID:x6SncPAc

箒「あまいっ!」 ズバッ! ズバッ!

鳴上(!! 炸裂する前に すべて切り伏せられた!!)

箒「はああああああっ!!」

     ドガガガガガガッ!!

鳴上「ぐあああああっ!!」


箒(お前が……! お前なんて、居なければっ!)


箒「くらええええっ!!」

鳴上「ペルソナ!!」 ポポウッ!

箒「あまいと言っ」

     ブゥシュウウウウウ!!

箒「!?」

139: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:59:10 ID:x6SncPAc

鈴「上手い!」

鈴「あえて、ほぼ射出と同時に炸裂させた!」

セシリア「でも、あれは……スモーク・グレネード??」

シャル「……いや!」

ラウラ「箒の右腕が凍っている!?」

一夏「なんだ!? あの爆弾は!?」

千冬(圧縮した液体窒素爆弾……の様なものか?)

140: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 15:59:51 ID:x6SncPAc

箒「くっ……! こんなものでっ!」 バリンッ!

鳴上「ペルソナ!!」 ポウ ポウ

箒「!!」

     バリバリバリバリバリッ!!

箒「あああああああああっ!!」

鳴上「はあああああああっ!」

箒「……っ! 負けるかああああああああっ!!」

141: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:00:31 ID:x6SncPAc








     ドガアッ!!









142: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:01:13 ID:x6SncPAc


―――――――――――


昼休み

医療室


箒「…………」

箒「…………?」

箒「……ここは」

一夏「気が付いたか? 箒」

箒「!」

箒「一夏……?」

箒「…………」

箒「私は、負けたのか?」

143: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:01:47 ID:x6SncPAc

一夏「ああ……それもかなり一方的にな」

一夏「どうしたんだよ、箒? らしくないぜ?」

箒「…………」

一夏「千冬姉も怒ってた……と言うより、あきれてた」

一夏「それと……悠から伝言」

箒「?」

一夏「すまない……って」

箒「……そうか」

一夏「…………」

一夏「腹、減ってないか?」

箒「……いや」

144: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:02:18 ID:x6SncPAc

一夏「そうか……じゃ、腹減ったら一緒に食おうぜ」 ニコ

一夏「サンドイッチを買っておいたから」

箒「一夏?」

一夏「いいだろ? しばらく箒とロクに話してないし、さ」

箒「一夏……」

箒「…………」

箒「一夏、ありがとう」

箒「……でも」

箒「今は……ひとりになりたい」

一夏「…………」

一夏「……そうか」

145: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:02:55 ID:x6SncPAc

一夏「わかった、箒」

箒「……すまない、一夏」

一夏「いいさ……」 クスッ

一夏「昼、ちゃんと食えよ?」

箒「ああ……」

     ガラガラッ… ガラガラッ… パタン

箒「…………」

箒「……完全に」

箒「私の負け……だな」

箒「…………」

箒「……ふ……うぐ」 ポロッ

箒「………ううっ」 ポロ ポロ

箒「うっ…うっ…」 ポロ ポロ

146: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:03:39 ID:x6SncPAc


―――――――――――


放課後

図書室


鳴上「…………」 カリカリ…

鳴上「…………」 カリカリ…

鳴上「……ふう」

鳴上「あ……もうこんな時間か」

鳴上(……集中しすぎた)

147: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:04:51 ID:x6SncPAc

箒「……鳴上」

鳴上「! 篠ノ之……」

鳴上「体は大丈夫か?」

箒「問題ない」

鳴上「そうか……すまなかったな」

箒「いや、それは仕方ない」

箒「みんなの……千冬さんの静止すら振り切って」

箒「私は……気絶するまで、お前への攻撃を止めなかった」

箒「今、千冬さんにこってり絞られてきた所だ」 クスッ…

鳴上「…………」

148: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:06:07 ID:x6SncPAc

箒「よければ話がしたいのだが、いいか?」

鳴上「ああ」

箒「剣道部の……入部は考えてくれているだろうか?」

鳴上「……今はちょっと」

箒「そ、そうか……」

鳴上「…………」

箒「……そ、その、あの時の話で出てきた、女の子の話の続きを」

箒「聞きたいのだが……構わないか?」

鳴上「構わない」

149: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:06:56 ID:x6SncPAc

鳴上「……俺は、どこまで話しただろうか?」

箒「音楽が好きで、必死に稽古している、と……」

鳴上「……俺も彼女の練習に付き添いながら、部活動の日々を送っていた」

鳴上「そんな時」

鳴上「演奏会に向けて反復訓練をしていたさなか、彼女にチャンスが巡ってきた」

箒「…………」

鳴上「彼女と同じ、トロンボーン奏者が怪我をしたんだ」

箒「………!」

鳴上「そのお陰で……と言うと語弊があるが、抜擢された」

鳴上「でも……彼女は喜ぶよりも ちゃんと演奏できるかどうかの不安の方が」

鳴上「大きかった」

箒「…………」

150: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:08:30 ID:x6SncPAc

鳴上「以前にも増して、練習を繰り返す彼女……」

鳴上「……けど、正直、公平な目で見て、彼女の演奏は」

鳴上「まだまだつたなかった」

箒「…………」

鳴上「いよいよ演奏会が数日後に迫ったある日」

鳴上「先のくだりで脱落したトロンボーン奏者が、怪我を治して戻ってきた」

箒「!!」

151: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:09:12 ID:x6SncPAc

鳴上「……吹奏楽部の誰かが言った」

鳴上「彼女ではなく、そいつに戻そう、と」

箒「……なっ」

鳴上「俺は……彼女にやらせてやってくれ、と、皆に頼んだ」

箒「……!」

鳴上「…………」

鳴上「……しかし、元に戻した方がいい、と」

鳴上「他ならぬ彼女が言い出した」

箒「……えっ」

152: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:09:50 ID:x6SncPAc

鳴上「彼女は、俺の気持ちは嬉しいが自分の演奏力は良く分かっている」

鳴上「今の自分の演奏では、きっとみんなを幸せな気持ちに出来ない」

鳴上「だから、これでよかったのだと……」

箒「そ、そんな!」

鳴上「…………」

鳴上「でも、そう言ったあと泣き出した」

鳴上「泣きながら悔しい、悔しいと言う」

鳴上「才能の無さ、練習不足……とにかく自分の不甲斐なさが悔しい、と」

箒「…………」

鳴上「と、同時に」

鳴上「自分がどれだけ音楽が好きなのかも良く分かった、と言っていた」

箒「…………」

153: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:10:31 ID:x6SncPAc

箒「…………」

箒「……鳴上」

鳴上「……うん」

箒「経緯は違うが……今の私も彼女と同じ気持ちだ」

鳴上「…………」

箒「私は……お前の言う通り、ただ待ってただけだ」

箒「私が一夏の事を好きだから、一夏も私の事が好きだと」

箒「根拠なく……そう思っていた」

鳴上「…………」

154: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:11:02 ID:x6SncPAc


箒「だから、一夏の周りにたかるハエを払えばいい」

箒「そんな事を心のどこかで考えていた」

箒「……自意識過剰にも程がある」

鳴上「…………」

箒「ありがとう、鳴上」

箒「お前のおかげで、私は大事な事に気づけた……と思う」

箒「…………」

箒「もっと早く、お前と話をすれば良かった」

鳴上「そうか……」

155: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:11:43 ID:x6SncPAc

箒「……時に」

箒「今、その女の子は どうしているだろうか?」

鳴上「変わらずトロンボーン奏者として頑張ってる」

鳴上「今度の演奏会で、正式にメンバーとして加わっているそうだ」 ニコ

箒「そうか!」

箒「良かった……」 ホッ…

箒「私も負けてられないな」

鳴上「あまり力まない方が……」

箒「ふ……わかっている」 ニコ

156: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 16:12:54 ID:x6SncPAc

箒「そういえば、鳴上は どんな楽器を使っていたのだ?」

鳴上「トランペットを」

箒「ほう? いつか聞いてみたいな」

鳴上「そういえば……ここの所吹いていないな」


     ハハハ…


鳴上(篠ノ之の笑顔は、さわやかでまぶしい)

鳴上(どうやら篠ノ之の力になれた様だ……)

157: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:07:20 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数日後・昼休み

食堂


一夏「…………」

鈴「どうしたの? 一夏?」

一夏「いや、なんかさ、このメンバー全員集まるのって、久しぶりの様な気がして」

箒「私がしばらく居なかったからな……」

セシリア「まあ、いろいろありまして……ね? 鳴上さん」 ニコ

鳴上(どうしてそこで俺に振る……)

鳴上「そ、そうだな……」

158: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:08:04 ID:x6SncPAc

鳴上「そういえば、もうすぐタッグマッチ・トーナメントがあると聞いたが……」

鳴上「みんなはもう、組む相手を決めたのか?」

ラウラ「前回……私には苦い思い出だ」 シュン…

シャル「ああ……例のトーナメント戦ね。 ボクはまだだよ?」

一夏「そっか。 じゃあまた俺と組むか? シャル?」



シャル「……ううん、今回は遠慮しておくかな」



一夏「えっ?」

159: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:08:38 ID:x6SncPAc

箒「…………」

セシリア「…………」

鈴「…………」

ラウラ「…………」

鳴上「…………」

シャル「良かったら、ボクは鳴上くんと組みたいんだけど……どう?」

鳴上「えっ?」

一夏「…………」

鈴「ちょっと待って、私も悠と組みたいの」

一夏「……鈴!?」

箒「……そうか。 ではラウラ、どうだろう? 私とまた組まないか?」

160: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:09:18 ID:x6SncPAc

ラウラ「!?」

ラウラ「……いいのか?」

ラウラ「私は前回同様、自動抽選に任せようと思っていたのだが」

一夏(箒にラウラまで……)

セシリア「では、一夏さん。 わたくしと組んでいただけますか?」

一夏「!!」

一夏「セ、セシリア! おう! よろしくな!」 ウルウル…

シャル「鳴上くん、どうする?」

鈴「別に恨んだりしないから、好きに選んでいいわよ」

鳴上「…………」

161: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:09:49 ID:x6SncPAc

鳴上「……鈴、頼めるか?」

鈴「うん! よろしくね!」

シャル「あらら……振られちゃったか」

鳴上「……すまない」

シャル「いいよ。 鈴が言ってた通り 恨みっこなし、だから」 ニコ

シャル「戦い方は他にもあるよ」

一夏「…………」

162: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:10:25 ID:x6SncPAc

放課後

第三アリーナ


一夏「セシリア、まだトーナメントまで少しあるのに」

一夏「もう訓練、始めるのか?」

セシリア「…………」

一夏「セシリア?」

セシリア「一夏さん」

一夏「ん?」

セシリア「まさかと思いますが、どうして他の皆さんが自分と組まなかったか」

セシリア「お分かりになっていませんの?」

一夏「え?」

163: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:11:09 ID:x6SncPAc

セシリア「……そうですか」

セシリア「それでは、ご説明いたしましょう」

一夏「お、おう」

セシリア「まず、みなさん、自分のISとの相性を考えたのですわ」

セシリア「わたくしは、中、長距離型。 相性としては」

セシリア「中、近距離……もしくは近距離型が望ましいと言えます」

一夏「なるほど」

セシリア「ラウラさんは、ご本人もおっしゃっておられましたが、自動抽選でもいいと……」

セシリア「つまりこれは、どなたがパートナーになっても臨機応変に対処する、と言う事」

セシリア「シュバルツェア・レーゲンは長、中、近距離、どれにも対応可能な万能機」

セシリア「彼女お一人でも相当に厄介な相手ですわ」

一夏「むむ……確かに」

164: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:11:52 ID:x6SncPAc

セシリア「箒さんは、一夏さんとはタイプが違いますが、近距離型」

セシリア「わたくしかラウラさんが、もっとも良いパートナーと言えます」

一夏「フムフム」

セシリア「でも彼女はラウラさんを選んだ……なぜか?」

セシリア「推測ですが、箒さんは、ご自分が牽制とかく乱に回り」

セシリア「止めをラウラさんにやって頂こうと思っているのではないかと……」

一夏「う……やっかいなコンビかも」

セシリア「最後に、シャルロットさんと鈴さん、双方ともに 中、近距離型」

セシリア「相性としては、あまり相手を選びませんけど……」

165: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:12:27 ID:x6SncPAc

セシリア「組む相手として……より強い方を選んだのですわ」

一夏「なるほど……」

一夏「…………」

一夏「……えっ?」

一夏「ちょっと待てよ。 じゃあ何か?」

一夏「シャルも鈴も、俺より悠の方が強いから組みたがったって言うのか!?」

セシリア「……その通りです」

一夏「ぐっ…!」

セシリア「では お聞きしますが、この前の箒さんと鳴上さんとの模擬戦闘」

セシリア「一夏さんは、あの時の箒さんに勝てる自信がおありですか?」

一夏「っ!!」

166: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:13:36 ID:x6SncPAc

セシリア「もうお分かりですね? みんな本気で勝ちに来ているのですわ」

一夏「…………」

一夏「一つ、聞かせてくれ」

一夏「セシリアが俺を選んだのは、同情か?」

セシリア「まさか」 ニコ

セシリア「わたくしは中、長距離型ですけど……どちらかと言えば」

セシリア「ロングレンジに大きくウェイトしております」

セシリア「わたくしが牽制と援護に徹し、止めを近接型が刺す……」

セシリア「この戦法のベスト・パートナーは、一夏さんと判断いたしましたの」

167: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:14:09 ID:x6SncPAc

一夏「悠でもやれるんじゃないか?」

セシリア「確かにそうですが、『止め』を刺すのは零落白夜を持つ」

セシリア「一夏さんに分があります」

セシリア「平たく言えば、頼りにしている、という事ですわ」 ニコ

一夏「……そうか」

一夏「よく分かった、セシリア。 訓練を始めよう」

セシリア「はい、一夏さん」

168: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:15:15 ID:x6SncPAc


―――――――――――




IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


一夏「悠、話がある」

鳴上「なんだ?」

一夏「明日、放課後の第三アリーナに予約を入れておいた」

一夏「良かったら……俺と模擬戦をして欲しい」

一夏「頼めるか?」

鳴上「…………」

鳴上「わかった、受けて立とう」

一夏「よし、約束だぜ?」

鳴上「ああ」

169: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:16:05 ID:x6SncPAc

翌日の放課後

第三アリーナ


一夏「白式!!」 スウウウウウウンッ!!

鳴上「…………」 スチャ…(メガネ装備)

鳴上「イザナギ!」 スウウウウウウンッ!!

一夏「さて、始める前に話しておきたい事がある」

鳴上「……?」

一夏「正直に言う。 俺は、お前に嫉妬している……」

鳴上「…………」

170: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:16:44 ID:x6SncPAc

一夏「みっともないけど……悠が転校してきてからこっち」

一夏「前ほどチヤホヤされなくなった」

鳴上「…………」

一夏「そして……今回も以前の様に、みんなで俺を取り合うと思っていたら」

一夏「まさか幼馴染の箒や鈴にすら相手にされないなんて……」

一夏「本当にショックだった」

鳴上「…………」

一夏「……情け無いな、俺」

鳴上「そんな事は無い」

鳴上「そうやって自分の醜い部分をさらけ出せるのは」

鳴上「お前の『強さ』だ」

171: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:17:31 ID:x6SncPAc

一夏「……そうかな」

一夏「今、こうやって私闘を申し込んでる様な奴だぜ? 俺は」

鳴上「そしてそうやって、その『強さ』から目を背ける事が」

鳴上「お前の『弱さ』だ」

一夏「…………」

一夏「お前って、本当に凄い奴だよ……」

一夏「…………」 スッ…

鳴上「…………」 スッ…

鳴上「……来い、一夏!」

一夏「……ああ! 行くぜ! 悠!」


     ゴウッ!!



172: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:18:08 ID:x6SncPAc


―――――――――――


第三アリーナ男子更衣室前


セシリア「…………」

     ガチャ…

一夏「あ……セシリア」

セシリア「一夏さん……」

一夏「…………」

一夏「セシリアの言う通りだったよ……」

一夏「悠には……イグニッション・ブーストも零落白夜も」

一夏「俺の持てるすべてを出し尽くしても……」

一夏「勝てなかった」

セシリア「…………」

173: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:18:50 ID:x6SncPAc

一夏「……セシリア、俺」

一夏「悔しいよ……!」 ポロッ

一夏「こんなに負けて、悔しいと思ったのは……」 ポロポロッ

一夏「初めてだ……!」 ボロボロ…

一夏「うぐっ…ひぐっ…」 ボロボロ…

セシリア「…………」

―――――――――――

一夏「はあ……なんか情け無い所、見せちゃったな」///

セシリア「いえ……」

174: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:19:26 ID:x6SncPAc

一夏「でも……」

一夏「スッキリした」 クスッ

セシリア「…………」 クスッ

一夏「次は……必ず勝つ!」

セシリア「はい、その意気ですわ!」

一夏「そうと決まれば、特訓しないとな……」

一夏「セシリアとの連携に磨きをかけないと」

一夏「何でも言ってくれ! 俺は耐えてみせる!」 ガバッ!

セシリア「は、はい……あ、あの一夏さん、ち、近いですわ、お顔が……」///

一夏「と!? ……す、すまん」///

セシリア(も、もう……鈍感な所は相変わらずですわね)///

175: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:20:12 ID:x6SncPAc

第三アリーナ


鈴「……ずいぶん一方的な戦いだったわね」

鳴上「そう見えたか?」

鈴「違うの?」

鳴上「一夏は、イグニッション・ブーストと零落白夜の使い所を分かっていないだけだ」

鈴「…………」

鳴上「今度の戦いはタッグマッチ」

鳴上「もし」

鳴上「混戦のさなかに、死角を突いてブーストをかけた零落白夜が来たら……」

鳴上「どんなISもひとたまりも無い」

鈴「……!」

176: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:20:45 ID:x6SncPAc

鳴上「ましてやセシリアのブルーティアーズは」

鳴上「360度、どこからでも攻撃できる恐ろしい武器だ……」

鳴上「これ程、互いの長所を生かしたコンビは無いだろう」

鳴上「セシリアに戦いの主導権を握られたら……おしまいだ」

鈴「…………」 ゾクリ…

鈴「それにしても……あんたって、ホント冷静ね」

鳴上「……そうか?」

鈴「落ち着き払いすぎて同い年に見えない」

鳴上「よく言われる」

177: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:21:19 ID:x6SncPAc

鈴「まあいいわ」

鈴「一夏とセシリアコンビの対処法は、おいおい考えるとして……」

鈴「あたし達の基本戦術は、箒達とほぼ同じになるわね?」

鳴上「ああ。 俺が牽制とかく乱、鈴の龍砲で止め」

鳴上「これがベストだろう」

鈴「オッケー。 じゃ、まずその辺りから連携の訓練をしてみる?」

鳴上「ああ」

178: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:21:55 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数日後

放課後の第二アリーナ


ラウラ「今のはどうだ?」

箒「……悪くは無かったが」

箒「正確さに欠けるな」

ラウラ「ふむ……となるとBパターンが一番無難だな」

箒「そうだな……」

箒「少し、休憩しよう」

ラウラ「うむ、異論はない」

179: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:22:34 ID:x6SncPAc

箒「ラウラ、ドリンクを作ってきた。 飲むか?」

ラウラ「えっ? ……い、いただこう」

箒「口に合えばいいが」

ラウラ「……うん、美味い。 冷えたレモンティーだな」

箒「そうか。 良かった」

ラウラ「…………」

ラウラ「箒、一つ聞いてもいいだろうか?」

箒「ああ、いいぞ」

ラウラ「なぜ、私と組む気になったのだ?」

ラウラ「福音の時……お前のIS、紅椿は、一夏の白式と対になる存在とわかったはず」

ラウラ「だから一夏と組みたがると思っていた」

箒「…………」

180: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:23:20 ID:x6SncPAc

箒「……以前の私なら、そう願っただろう」

ラウラ「…………」

箒「でもそれは、『私の実力』で勝ち取ったモノではない」

箒「私の姉がそう作ったからだ」

ラウラ「……!」

箒「私は……私の力で、私の努力で、一夏と向き合いたい」

箒「だから…… 一夏と組むという選択肢は、まず捨てた」

箒「おかしいか? 私は?」

ラウラ「…………」

ラウラ「戦力判断としては、な」

ラウラ「しかし……気持ちは、わからなくも無い」 クスッ…

181: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:23:54 ID:x6SncPAc

箒「…………」

箒「意外、だな。 ラウラにそんな風に言ってもらえるなんて」

ラウラ「……私も、以前の私なら、一笑の元にふしただろうな」 クスッ…

ラウラ「自分の気持ちに向き合って、それを選んだのなら」

ラウラ「私が口を挟む事ではない」

ラウラ「それに……」

箒「それに?」

ラウラ「頼られる、というのも悪い気はしない」 クス

箒「ふふ……そうか」 クス

     アハハ…

箒「さて、そろそろ訓練に戻るか」

ラウラ「そうだな」

182: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:24:28 ID:x6SncPAc

第一アリーナ


モブ美「デュノアさん、こんな感じかな?」

シャル「うん、上出来だよ」

モブ美「……でも、どうせ専用機持ちの勝利は決まってるんじゃない?」

モブ美「いくら努力しても私の練習用ISじゃ……」

シャル「……かも、しれない」

シャル「けど」

シャル「何にもしないで、ただ負けを認めて……それでいいのかな?」

モブ美「…………」

183: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:25:19 ID:x6SncPAc

シャル「ボクは嫌だよ」

シャル「たとえ負ける公算が大きくても、ほんのわずかでも勝てる可能性があるのなら」

シャル「ボクは、その確率を上げる努力をおろそかにしたくない」

モブ美「…………」

シャル「ふふ……そんな顔しないで。 もっと気楽に行こう?」

シャル「別に負けてもいいんだよ。 ただ負けるのが嫌ってだけだから」

シャル「たくさん努力して、自分が納得して負けたなら、きっとそれは」

シャル「次につながる……と思うから」 クス

モブ美「…………」

184: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:25:52 ID:x6SncPAc

モブ美「……ごめん、デュノアさん」

シャル「うん、がんばろう、モブ美さん」

シャル「それにもっと自信を持ってもいいと思うよ?」

シャル「ボクは、キミが専用機を持たない一年生で」

シャル「一番機動力に優れているから パートナーをお願いしたんだよ?」

モブ美「エヘヘ……逃げ回るのが上手いってだけなんだけどね」

シャル「それは大きな『武器』になるって事を証明してあげるから」 クス

185: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:27:48 ID:x6SncPAc


―――――――――――


タッグマッチ・トーナメント・当日の朝


一夏「……いよいよか」

セシリア「やれる事は、すべてやりましたわ」

一夏「もちろん狙うのは、優勝の二文字だ……」

一夏「がんばろうな、セシリア!」

セシリア「はい、一夏さん!」

186: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:28:20 ID:x6SncPAc

鳴上「いよいよだな」

鈴「うん……」 キュッ…

鳴上「……? そのリボンは いつもと違うな」

鈴「ふふん、ハイカラでしょ?」

鳴上「よく似合ってる」 クスッ

鈴「ま……あんたのメガネと一緒で、あたしの気合を入れる為に、ね」

鳴上「そうか……お互いがんばろう」

鈴「うん!」

187: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:28:55 ID:x6SncPAc

ラウラ「……不思議な気持ちだ」

箒「何がだ?」

ラウラ「どう言えばいいか、わからない……」

ラウラ「緊張はしている」

ラウラ「でも……それがとても心地よい、とでも言うか……」

箒「ふふ……それは『自信に満ちている』という表現が適当だな」

ラウラ「なるほど……」

箒「だがそれは……『過信』に変わるかもしれない恐ろしい気持ちでもある」

箒「私は福音の時に……そのせいで一夏に大怪我をさせてしまった苦い経験がある」

ラウラ「! ……肝に銘じよう」

箒「さ……行くか」

ラウラ「ああ」

188: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:29:28 ID:x6SncPAc

モブ美「うう……き、緊張する」

シャル「大丈夫、気楽に行こう?」

モブ美「う、うん……」

モブ美「……でも、あんなに頑張ったんだもん」

モブ美「優勝……したい」

シャル「うん、ボクもだよ」

シャル「頼りにしてるからね? モブ美さん!」

モブ美「もちろん! がんばろっ! デュノアさん!」

189: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:30:17 ID:x6SncPAc


―――――――――――


全アリーナ管制室


山田「あ……織斑先生」

千冬「トーナメントの進行具合は?」

山田「はい、今の所タイムスケジュールに大きな支障はありません」

千冬「そうか」

山田「専用機持ちのみなさんは、順当に一回戦を勝ち上がりました」

千冬「まあ、そうだろうな」

190: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:31:56 ID:x6SncPAc

山田「特に篠ノ之、ボーデヴィッヒ組は、圧倒的な強さですね……」

山田「前回、ボーデヴィッヒさんは完全に独り相撲を取ってましたから」

山田「よりコンビネーションバトルの良さが目立ちます」

千冬「ふむ……他はどうだ?」

山田「織斑・オルコット組は セオリー通り、と言うか」

山田「オルコットさんが牽制と援護に回り、止めを織斑君が行っています」

千冬「互いの長所を生かしている様だな」

山田「その様です。 しかも織斑君は、まだブーストも零落白夜も未使用です」

千冬「ほう……腕を上げた、か」

191: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:33:06 ID:x6SncPAc

山田「鳴上・凰組は、戦法が篠ノ之・ボーデヴィッヒ組と同じですが」

山田「こちらは やや火力で劣っているように思えます」

千冬「ふむ……」

山田「デュノア・モブ本組は、デュノアさんの動きばかりが目立ちますね」

千冬「ほう?」

山田「モブ本さんは、デュノアさんの指示か……積極的に戦闘に参加しようとしません」


千冬(面白いな。 デュノアには秘策があると見える)

千冬(次は、いよいよ専用機とあたる……見ものだな)

192: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:33:47 ID:x6SncPAc


―――――――――――


第一アリーナ・観客席


一夏(注目の試合だな……)

セシリア(……残念ですけど、シャルロットさんのペアは圧倒的に不利)

鳴上(だが……デュノアには、何か隠し技がある)

鈴(見せてもらうわよ……シャルロット)

193: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:34:28 ID:x6SncPAc

第一アリーナ・グラウンド上


箒「……さて、こちらの有利は不動のものだが」

ラウラ「油断するな、箒」

ラウラ「勝利をあきらめている者は あんな顔をしない」

箒「同感だ」


モブ美「……ううっ、近くで見ると凄い迫力」

シャル「大丈夫、お互いベストを尽くそう!」

モブ美「う、うん! がんばる!」

シャル「その意気、その意気!」 ニコ

194: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:35:30 ID:x6SncPAc

千冬「それでは、二回戦第五試合……開始!!」



     バアアアアッ!!



一夏「!?」

セシリア「モブ美さんが……前に出た!?」

鈴「どういう事!?」

鳴上(……俺がデュノアの立場なら)

鳴上(…………)

鳴上(そうか……もしかしたら)

195: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:36:09 ID:x6SncPAc

箒(何のつもりか、わからないが……)

箒(打鉄(うちがね)で正面から紅椿を相手にするなど……血迷ったか、シャルロット!)

     ズアッ! ヒュバッ!!

モブ美「うひゃあっ!」 回避 回避!

箒「……はあっ!」

モブ美「ひいいいいっ!!」 回避 回避!

箒「くっ……ちょこまかと!!」

196: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:37:04 ID:x6SncPAc

 ――回想――


シャル「いい? モブ美さん、とにかく箒に攻撃を仕掛ける、と見せかけて」

シャル「回避に専念して欲しいんだ」

シャル「それも」

シャル「常に箒にラウラが隠れるように、ね」

シャル「そうすれば、ラウラからの砲撃は無くなる」

シャル「無茶なお願いだけど……きっとモブ美さんなら、できるよ」 ニコ


―――――――――――


モブ美(とは言うけど……言うほど楽じゃないよう!!)

モブ美(デュノアさん、早いトコ決めちゃって!!)

197: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:37:54 ID:x6SncPAc

ラウラ(……ち、これではキャノンで狙えん!)

ラウラ(ならば、先にシャルロットを……!?)

     タタタタタタタッ!!

箒「くっ!! シャルロットめ!」 キン! カン! カン!

箒(完全に出鼻をくじかれた……!)

モブ美「はああああああっ!」

箒「このおっ!」 ブンッ

モブ美「うひいっ!!」 回避!

198: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:38:51 ID:x6SncPAc

ラウラ「くっ! シャルロットの狙いは、箒か!?」

ラウラ「ならば……!!」 ズアアアッ!

箒「! 待て、ラウラ! うかつに近づくな! シャルロットの狙いは……!」

ラウラ「!?」



     ボウボウボウッ!!



一夏「何だ!? シャルの奴、地面に榴弾を打ったぞ!?」

セシリア(あれは煙幕代わり……おそらくAICの目標を隠すために!)

鳴上(となれば狙うのは)

鈴(ラウラの機体!!)

199: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:40:00 ID:x6SncPAc

ラウラ(くっ!! 停止結界は、対象物が見えないと効果が薄い!!)

     ダン! ダン! ダン!

ラウラ「ぐあっ!」

ラウラ(シャルロットのアサルトライフルか!!)

箒「ラウラ!」

箒(くっ! レーダーで確認できるが、なぜあの二人はこんなに動き回っている!?)

箒(かといって空に上がれば、シャルロットのライフルの餌食だ……)

箒「……!!」

箒「まさか!!」

200: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:40:47 ID:x6SncPAc

ラウラ「くっ! まだ砂煙が晴れない!」

???「………」  ダン! ダン! ダン!

ラウラ「シャルロットめ!」

???「……呼んだ?」

ラウラ「!?」



鳴上「あ……!?」

一夏「ライフルを撃っていたのは……」

セシリア「モブ美さんの方でしたのね!!」

鈴「前と同じようにシステムアンロックしてたのね……すっかり忘れてた」

201: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:41:39 ID:x6SncPAc

シャル(狙いは外さない!!)

シャル「シールド・ピアーズ!!」

ラウラ「うわあああっ!!」



     ドガアッ!! ドガアッ!!



箒「ラウラッ!!」

モブ美「たあああああああっ!!」

箒「……邪魔だあっ!」 ブンッ!! ブンッ!!

モブ美「ひゃあああああっ!!」 回避 回避!!

202: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:42:25 ID:x6SncPAc

シャル「もう一発!!」

     ドガアッ!! ドガアッ!!

ラウラ「くっ! くそっ!!」



箒「くっ!!」

モブ美「おりゃあああっ!!」

箒(……少々のダメージは覚悟だ!!)

箒「ラウラ! 今行く!!」

モブ美「うひゃあ……えっ?」 回h…

箒(むっ……!?)

203: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:43:07 ID:x6SncPAc

シャル「止めっ!!」

箒「させるかあ!!」

シャル「!? くっ!!」



     ヒュバッ!!



鳴上(……勝負あったな)

一夏(……惜しかったな、シャル)

セシリア(この劣勢の条件の戦いで……見事な作戦でした)

鈴(凄いよ……シャルロット)

204: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:43:52 ID:x6SncPAc

箒「大丈夫か? ラウラ?」

ラウラ「なんとか……な」

ラウラ「はっきり言って……シュバルツェア・レーゲンの性能に助けられた」

箒「……そうか」

箒「してやられた、な」

ラウラ「ああ……」


モブ美「…………」

モブ美「……どうしよう」


シャル(……正直、もうどうしようもない)

シャル(あれで決められなかったらお手上げだ……)

シャル(……鳴上くんなら、もっと箒を引き付けてくれたんだろうけど)

205: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:44:30 ID:x6SncPAc

シャル(……ううん、そんなこと思っちゃ駄目だね)

シャル(モブ美さんは良くやってくれた……本当に感謝しないと)

モブ美「ねえ! デュノアさん!」

シャル「……もう打つ手なし、だよ」

モブ美「!」

シャル「降参する?」

モブ美「…………」

モブ美「いや!」

206: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:45:31 ID:x6SncPAc

モブ美「絶対……あきらめない!」

シャル「うん、そう言ってくれると思ったよ」 ニコ

シャル「もうモブ美さんが回避しかしないのはバレてると思うから」

シャル「ボクに攻撃を集中すると思う」

シャル「モブ美さんは、その隙を突いて今度は本気で攻撃してみて?」

モブ美「わかった! やってみるよ!」

シャル「……さあ、来るよ!!」

207: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:46:15 ID:x6SncPAc


―――――――――――


第一アリーナ・女子更衣室


モブ美「うえっ……うえっ……ひっく……」

シャル「…………」

モブ美「悔しいっ……悔しいよっ……」

シャル「モブ美さん……ありがとう」

モブ美「……!?」

シャル「ここまで戦えたのは、モブ美さんのお陰だよ」

シャル「ボク達は、正々堂々死力を尽くして戦って負けた……」

シャル「もっと胸を張ろう?」 ホロリ

モブ美「…………」

モブ美「デュノア……さんっ!……うああああっ…………」 ボロボロッ…

208: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:47:07 ID:x6SncPAc

第一アリーナ控え室


箒「どうした? ラウラ?」

ラウラ「……単刀直入に言う。 停止結界が使えなくなった」

箒「なっ!?」

ラウラ「シャルロットの攻撃は、見事に頭部のシールドを狙っていた」

ラウラ「知っていた訳では無いだろうが……制御システムは大抵ここにあるからな」

ラウラ「その中のAICの制御システムが、ダメージを負った」

209: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:47:55 ID:x6SncPAc

箒「修理は?」

ラウラ「本国から部品を取り寄せないと不可能だ……」

箒「…………そうか」

箒「なに、心配するな、ラウラ」

箒「この事実は我々しか知らないのだ。 問題ない」

ラウラ「うむ。 だが心に留め置いてくれ」

箒「わかった」

210: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:48:45 ID:x6SncPAc

第三アリーナ・観客席


シャル「次はいよいよ鳴上くん達と一夏達の対戦」

シャル「注目の試合だね」

ラウラ「そうだな」

ラウラ「それにしてもシャルロット……さっきは見事な作戦だった」

シャル「ふふ、ありがと」

箒「決して油断していたわけではなかったのに……翻弄されてしまった」

シャル「ボクだけの力じゃないよ。 モブ美さんのおかげ。 ねー?」

モブ美「ねー!」///

211: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:49:59 ID:x6SncPAc

ラウラ(さて……私が見る限りでは一夏とセシリアが、やや有利だが)

ラウラ(しかし、鳴上の戦闘力は計り知れないものがある)

箒(鍵を握っているのは、やはり鳴上……)

箒(いずれにしても この試合の勝者が、私達の相手になるだろうな)

―――――――――――

第三アリーナ・グラウンド上


一夏「リターンマッチだな」

一夏「この前の借りは、きっちり返させてもらうぜ、悠」

セシリア「一夏さん、落ち着いて行きましょう」

一夏「わかってる……けど、次の試合の事は考えない」

一夏「ここですべてを出し切るつもりで行く!」

セシリア「……確かに力を温存して勝てる相手ではありませんわね」

セシリア「わかりましたわ!」

212: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:50:44 ID:x6SncPAc

鳴上「一夏……」

鈴「強敵ね……でも負けない!」


鳴上(この前と顔つきが違うな……いい顔をしている)

鳴上(何か策があるのか、それとも……?)


鈴「悠、狙いは一夏のまま?」

鳴上「ああ、それで行く……!」

213: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:52:21 ID:x6SncPAc

千冬「それでは三回戦、第二試合……開始!!」



     ゴウッ!!



一夏「はああああっ!!」

鳴上「でやあああっ!!」


     ガギイッ!!


シャル(二人とも開始の合図とともに……!)

ラウラ(真っ向勝負か!!)

箒(面白い!!)

214: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:53:11 ID:x6SncPAc

セシリア「ブルー・ティアーズ!!」 ヒュンヒュン!

鈴「させない! 龍砲!」 ドォン!

セシリア「くっ! 照準が……!!」


セシリア(鈴さんの空間圧砲は弾数に制限が無い上に連射も可能!)

セシリア(牽制としては、最高の武器ですわ!!)


鈴(悠の邪魔はさせないわ、セシリア)

鈴(あんたは当分あたしが相手よ!)

215: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:54:02 ID:x6SncPAc

一夏(さすがだぜ!! 悠!!)

一夏(俺も腕を上げたつもりだったが……強い!)


鳴上(やる……! この前の模擬戦とは比べ物にならないっ!)

鳴上(だが、俺も負けん!)



     ゲンッ! キンッ!! ガギンッ!!



一夏「だあああっ!!」

鳴上「おおおおおっ!!」

216: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:54:38 ID:x6SncPAc



     ゴガンッ!! ギィンッ!! ズガンッ!!



シャル(どっちも相手の出方を見ている……!?)

ラウラ(先に仕掛けるのは、どっちだ?)

箒(どちらもタイミングがすべてだ……!!)



鳴上(……そろそろ仕掛けてみるか!)

一夏(!? 来るか……!?)

217: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:55:16 ID:x6SncPAc

 ――回想――


一夏「戦術を読む?」

セシリア「はい」

セシリア「わたくしは鳴上さんのデータを集めて」

セシリア「彼のおおよその行動を予測してみました」

一夏「へえ……」

セシリア「まず、彼の爆弾ですが……」

セシリア「これまでの実習授業等で4種類確認されています」

セシリア「そして、一度使った爆弾は」

セシリア「同じ模擬戦で再使用した事が全くありません」

一夏「!!」

218: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:56:18 ID:x6SncPAc

セシリア「つまり、二発対で各種一発ずつしか装填出来ないのではないか?」

セシリア「と推測できます」

一夏「すげえ……! すげえ情報だ!」

セシリア「さらに、今回はタッグマッチです」

セシリア「わたくしが鳴上さんの立場なら……」

セシリア「一つだけ使いにくい爆弾があります」

セシリア「そして混戦時、パートナーに被害が及ばないように」

セシリア「一発目はこの爆弾にする、と示し合わせる可能性が高い」

セシリア「その爆弾は」

219: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:56:49 ID:x6SncPAc


―――――――――――


鳴上「……ペルソナ!!」 ポウ ポウ

一夏(来た!!)



     カッ!!



セシリア(やはり! フラッシュ・グレネード!!)

一夏「もらったあああああ!!」 ショート・ブースト!!

鳴上(!? 読まれた!?)

220: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:57:27 ID:x6SncPAc




     ズガアッ!!!




鳴上「がああああっ!!!」

鈴「悠っ!!」

鳴上「だ、大丈夫だ!! オルコットから目を離すな!!」


一夏(くそっ!! 浅い!! 横からのブーストだったのに!!)

一夏(これもセシリアの言う通りかよっ!!)

221: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:58:18 ID:x6SncPAc

 ――回想――


一夏「じゃあ、その虚を突いて攻撃すれば、倒せるな!」

セシリア「……残念ですが、難しいでしょう」

一夏「えっ?」

セシリア「彼ほどの達人ならば……むしろ目の届かない後ろやサイドは」

セシリア「もっとも警戒しているでしょうし……」

一夏「……確かに」

一夏「じゃあどうする……? って、俺が腕を上げるしかないか……」

セシリア「手は……ありますわ」

一夏「!!」

222: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:58:48 ID:x6SncPAc

セシリア「ただ……これは、一夏さんにとてつもないスペックを要求しますが……」

一夏「……言ってみてくれ」

セシリア「それは、イグニッション・ブースト」

セシリア「現段階で使えるだけでも凄い技ですが……」

セシリア「さらに、極短距離で使える様になって欲しいのです」

一夏「ごく……短距離?」

セシリア「数字で言うなら、4、5メートル前後……と言った所でしょうか?」

一夏「げっ!?」

223: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 17:59:23 ID:x6SncPAc

セシリア「それも……最低2連続で使える様に」

一夏「……体、持つかな」

セシリア「慣性制御があるとはいえ……急加速、急旋回を連発するのですから……」

セシリア「体にかかるGは、相当なものでしょうね……」

一夏「…………」

セシリア「しかし、大きなメリットもあります」

セシリア「従来のブーストより遥かに消費エネルギーが少ない」

セシリア「つまり、長期戦にとても有効、と言えますわ」

一夏「なるほど……」

224: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:00:16 ID:x6SncPAc

一夏「セシリア、俺もエネルギーつながりで思いついた技がある」

セシリア「はい?」

一夏「零落白夜を」

一夏「インパクトの瞬間だけに発動できないか? と考えている」

セシリア「!!」

一夏「理由はセシリアのブーストと同じ」

セシリア「で、でも可能なんですの?」

セシリア「あれは……確か、一夏さんの感情の高ぶりに呼応して発動するのでは?」

一夏「そうとう難しいと思う……」

一夏「でも」

一夏「かならずモノにしてみせる!」

セシリア「一夏さん……」

225: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:00:57 ID:x6SncPAc


―――――――――――


鳴上(……く、今のブースト、スピードはやや劣るものの)

鳴上(2連続で出してきた!)

鳴上(一夏……厄介な技を……!)

鳴上「……鈴!!」

鈴「!!」

鳴上「プラン『D』で行く!!」

鈴「わかったわ!!」

226: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:01:39 ID:x6SncPAc

鈴(プラン『D』……肉を切らせて骨を絶つ作戦)

鈴(あたしはセシリアを狙うと見せかけ)

鈴(悠が一夏に、わざと切られて油断した所へ、特大の龍砲を打ち込む!!)


鈴「龍砲、連射モード!!」



     ドドドドドドッ!!



セシリア「!? くっ……!!」

一夏「セシリア!!」

鳴上「はあああああっ!!」

一夏「うわあっ!!」

227: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:02:18 ID:x6SncPAc

箒「一夏……いつの間にあんな技を……」

シャル「驚愕するね……」

ラウラ「体にかかる負担は 相当なものだろうに……」

シャル「それにしても鈴、いきなりセシリアに攻撃をしだしたね?」

箒「目標をセシリアに変えた……か?」

ラウラ「裏がありそうだな」

228: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:03:04 ID:x6SncPAc

鳴上「はあああっ!!」



     ゴインッ! ガキィン!! ギィンッ!



一夏「おおおおおおっ!!」



     ゴガッ!! ギィン!! カンッ!



セシリア「やられてばかりでは、ありませんわよ!」

セシリア「ブルーティアーズ!!」 ヒュンヒュン!!

鈴「くっ!!」 回避!

鈴「龍砲!」 ドドドドドドッ!!

229: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:03:47 ID:x6SncPAc

鳴上(よし! 上手いぞ、鈴!)

鳴上(セシリアの気がそれた!!)


鳴上「ペルソナ!!」 ポウ ポウ



鈴(……!! 龍砲を一夏に!!)



一夏(……来た!! 2発目!!)

一夏(今度は逆サイドで……)

一夏「ショート・ブースト!!」 ギュン!

一夏(あれを決めるっ!!!)

230: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:04:38 ID:x6SncPAc

鳴上(今度は逆サイドか!!)

鳴上(……なっ!?)



     バリバリバリバリッ!!

     スパアンッ!!



鈴「!?」

鈴(ちょっと悠! 何で避けるのよ!?)

セシリア「ブルーティアーズ!!」 ヒュンヒュン!!

鈴「くっ……!!」

231: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:05:33 ID:x6SncPAc

一夏(くそっ!! 今度も浅いっ!!)

一夏(だが、セシリアの予測通り!!)


鳴上(い、今のは、零落白夜!?)

鳴上(ほんの……ほんの一瞬、発動させた、だと!?)

鳴上(なんて奴だ……! 一夏!!)

鳴上(これでは、プラン『C』の零落白夜を発動した後)

鳴上(エネルギー切れを待つ作戦は、意味を成さない……!!)


鳴上「鈴!! プラン『B』だ!!」

鈴「!!」

232: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:06:12 ID:x6SncPAc

鈴(どういう事!? プラン『B』は、『D』の前に戻るだけ……)

鈴(つまり、当初の作戦に戻るだけじゃない!)

鈴「……わかった!!」


ラウラ「……見たか? 今の」

シャル「えっ? 」

箒「何かが……キラッと光った様に見えたが?」

ラウラ「あれは……零落白夜だ」

シャ・箒「!?」

233: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:07:15 ID:x6SncPAc

ラウラ「おそらく……インパクトの瞬間だけ、発動させたに違いない」

シャル「出来るの!? そんな事!?」

箒「……零落白夜の発動条件は、感情の高ぶり」

箒「一夏は、どうにかして感情をコントロール出来る様にしたんだ……」

シャル「……凄い」

ラウラ「……これで鳴上と鈴は、さらに不利になった」

箒「ああ……最初に真っ向勝負をしたのもおそらく」

箒「一夏の感情を高ぶらせるため……」

シャル「白式のエネルギー切れは、絶対 狙っている策の一つのはず……」

シャル「これは……勝負あり、かも……」

234: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:07:56 ID:x6SncPAc

鳴上「くっ!!」

一夏「ショート・ブースト!」 ギュン!

     ギィン! ガインッ! ガァンッ!!

鳴上(このままじゃ、ジリ貧だ……!)

鳴上(どうする……? 残りの爆弾はコールドとノ-マル)

鳴上(だが、まともな方法では食らってくれないだろう……)

鳴上(目標をセシリアに……いや、一夏を倒さないままでは危険が大きすぎる!)


一夏「はああああっ!!」

鳴上「おおおおおっ!!」

     ゴキンッ! ガインッ! ダガンッ!


235: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:08:30 ID:x6SncPAc

鈴(悠、なんだか余裕がない……!?)

鈴(このまま、セシリアの牽制を続けてて、いいの!?)

鈴(…………)

鈴(……いいえ! あたしが……あたしが悠を……)

鈴(パートナーを信頼しなくてどうすんの!?)

鈴(きっと……きっと悠は、何とかしてくれる!)

鈴(あたしは、それを信じる!!)


鳴上(……よし! 一か八か!!) キッ!

一夏(……!! 来る!? 三発目!!)

236: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:09:07 ID:x6SncPAc

 ――回想――


一夏「それで? 仮にブーストが使える様になったとして……」

一夏「どんな策が?」

セシリア「鳴上さんの虚を突くためには、仕込みをする必要があります」

セシリア「勝負を仕掛けるのは」

セシリア「鳴上さんが三発目の爆弾を使った時」

一夏「三発目の?」

237: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:10:03 ID:x6SncPAc

セシリア「爆弾を使用した直後に『死角』から攻撃してくる」

セシリア「こう思わせておいて」

セシリア「真正面からブーストをかけて攻撃するのですわ」

一夏「!!」

一夏「……しかし、そう上手くいくだろうか?」

セシリア「残念ながら……『賭け』になるでしょう」

一夏「それに、なぜ『三発目』の時なんだ? 最後の一発の時でもいいんじゃないか?」

セシリア「ふふ……それは、一夏さんの体に負担が かかりすぎる前に勝負を決めたいのと」

セシリア「『まだ後一発ある』という余裕がある内に、虚を突いて混乱させたいから、ですわ」

一夏「なるほど」

238: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:10:57 ID:x6SncPAc


―――――――――――


鳴上「ペルソナ!!」 ポウ ポウ

一夏(来た!! だが、ここは!!)

一夏(急ブレーキ!!) キキィー!



     ブシュウウウウウッ!! ビキビキビキビキッ!!



一夏(やはり! 箒の時のように、射出と同時に炸裂させた!!)

鳴上(くっ……! また、読まれた!!)

鳴上(この後、どっちだ? 右か、左か……それとも後ろか!?)

一夏「はあああああっ!」 ショート・ブースト!!

鳴上「なっ!?………ペ、ペルソ…」

239: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:11:45 ID:x6SncPAc


     ズバアアアアッ!!


鳴上「ああああああああっ!!」 スウウウウンッ…(IS機能停止)

一夏「やったあああああっ!!」

     ボウンッ!!

一夏「ぐああああああああっ!?」

セシリア「一夏さん!!」

鈴「……ごめんね! 一夏!! 龍砲!!」

     ドグォオオオオオンッ!!

一夏「わあああああああっ!!」 スウウウウンッ…(IS機能停止)

240: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:12:52 ID:x6SncPAc

シャル「一夏……! 鳴上くん……!」

箒「一夏の奴……鳴上を切った事で油断したな」

ラウラ「鳴上にグレネードを仕込まれた事に気づかないとは……」

シャル「でも鳴上くん、あの一瞬でとっさにそんな事するなんて……」


一夏「……くっそお」

鳴上「一夏、立てるか?」

一夏「! ……悠」

鳴上「ここは危ない、退避しよう」

一夏「そうだな……」

241: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:13:25 ID:x6SncPAc

鳴上「……どう見る?」

一夏「ひいき目かもしれないが……セシリアが勝つかな」

鳴上「鈴には悪いが、俺もそう思う。 ……俺は、チームメイト失格だな」


シャル「ブルーティアーズの 四方八方からの攻撃をさけて近づくのは」

シャル「イグニッション・ブーストも使えない鈴にとって、至難の業……」

ラウラ「かと言って、ロングレンジで龍砲を動く目標に当てるのは難しい」

箒「パートナーを失っては……セシリアの精密射撃がものを言う……」

箒「勝負あったな」

242: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:14:13 ID:x6SncPAc

鳴上「一夏……今回は完全に俺の負けだ」

一夏「俺もそう思ったが……最後のグレネードに気が付かなかった」

一夏「完全には勝ってない……」

鳴上「あんなもの、ただの苦し紛れだ」

一夏「それに今回、お前の行動の予測をしたのは」

一夏「セシリアだしな」

鳴上「!」

鳴上「そうなのか?」

一夏「ああ……気持ち悪いくらいドンピシャだった」

鳴上(……もう敵に回したくないな)

243: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:15:09 ID:x6SncPAc

第三アリ-ナ・控え室


鳴上「……すまない、鈴」

鈴「悠……」

鈴「ううん、そんな事無い」

鈴「悠が頑張ってくれなきゃ、一夏も倒せなかった」

鳴上「鈴……」

鈴「それにしても、悠の話を聞いて驚いたわ」

鈴「ショート・ブーストに零落白夜の瞬間発動だなんて……」

鈴「一夏って、どんだけ規格外の急成長してんのよ……」 ハア…

鳴上「……まったくだ」


鈴(はあ……あたしは……)

鈴(まだまだ一夏の事を知らないのね……)

244: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:15:54 ID:x6SncPAc


―――――――――――


第一アリーナ・観客席


鳴上「決勝戦……か」

鈴「ここまで来たら優勝しなさいよ! 一夏!」

シャル「う~ん……でもどっちが勝つかな? 鳴上くん?」

鳴上「篠ノ之達だと思う」

鈴「……即答する? そういう事」

シャル「理由を聞いてもいい?」

鳴上「一夏達は、俺と鈴との戦いで手の内を明かしてしまった」

鳴上「そして……要の一夏が、もうフラフラだと思うからだ」

245: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:16:57 ID:x6SncPAc

鈴「!? どういう事?」

鳴上「見ていれば分かると思うが……ブーストの使いすぎで」

鳴上「体中が悲鳴を上げていると思う」

シャル「!?」

シャル「そ、そんな状態……なの?」

鳴上「少し計算してみた」

鳴上「イグニッション・ブーストは慣性制御された上で約2,8G……」

鳴上「一夏のショート・ブーストはイグニッションに比べると、やや劣るとはいえ」

鳴上「ブーストをかけた上、更に別方向からGが加わる」

鳴上「わかりやすく言えば……」

鳴上「急加速した車に横から同等の速度の車がぶつかる様なものだ」

246: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:17:49 ID:x6SncPAc

鈴「…………」

シャル「…………」

鳴上「単純には言えないが……」

鳴上「一夏の体にはブーストのたびに、7~8Gの衝撃が加わっていたんじゃないかな……」

鈴・シャ「!!」

鈴「……あ、あたし、止めてくる!」 ダッ

シャル「あ! ま、待ってよ! 鈴! ボクも行く!」 ダッ

     タッ タッ タッ…

鳴上「…………」

鳴上「俺も……止めたんだが、な」

鳴上「決勝戦に出ても おそらく試合にならない」

247: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:18:20 ID:x6SncPAc

第一アリーナ・控え室


セシリア「一夏さん!! どうして……どうして黙っていましたの!?」

一夏「い、いやぁ……」

セシリア「準決勝の時も動きがおかしいと思っていましたが……」

セシリア「まさか……痛み止めの薬を飲んでいたなんて!!」

一夏「…………」

一夏「でもセシリア、せっかく決勝戦まで来たんだし」

セシリア「だめです!! 今すぐ医療室へ行きましょう!!」

一夏「でも……!!」


     バァン!!


鈴「でももクソもないわよ! 一夏!!」

シャル「早く医療室に……」

セシリア「!! 鈴さん! シャルロットさん!」

248: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:19:43 ID:x6SncPAc

鈴「」

シャル「」

鈴「い、一夏!? ど、どうしたの、それ!?」

シャル「顔にまで……! 体中、アザだらけじゃない!!」

セシリア「……恐らく」

セシリア「ブーストによるGで……体中の毛細血管がダメージを……」

鈴・シャ「!!」

鈴「一夏……」

一夏「…………」

鈴「あんた、わかっているんでしょ?」

鈴「医療室に行ったら、ドクターストップが かかるって?」

一夏「…………」

249: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:20:20 ID:x6SncPAc

シャル「一夏……もしかして、ブーストの提案はセシリアが?」

一夏「……!」

シャル「セシリアに気を使って、なんでもないって」

シャル「フリをしてるんじゃないの?」

一夏「そ、そんな事は!」

セシリア「一夏さん……だとしたら逆です」

セシリア「わたくしは……悲しい」 ポロ…

セシリア「わたくし達は、タッグパートナーなのでしょう……?」 ポロポロ

セシリア「どうして……どうして黙っていたのですか……?」 ポロポロ…

セシリア「そんなの……わたくしに対する裏切りです……!!」 ポロポロ…

一夏「…!」

一夏「…………」

250: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:21:02 ID:x6SncPAc

一夏「……わかった」

一夏「行くよ、医療室に」

鈴「最初からそう言いなさいよね! まったく……」

シャル「セシリア……ボクから棄権する事を伝えようか?」

セシリア「…………」

セシリア「いえ、わたくしから伝えますわ」

セシリア「ありがとうございます、シャルロットさん……」

シャル「ううん……」

251: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:21:39 ID:x6SncPAc

第一アリーナ


箒「……? そろそろ時間だが」

ラウラ「一夏達が 来ないな?」


千冬「選手ならびに観戦者一同に連絡」

千冬「タッグマッチ・トーナメント決勝戦の時間だが」

千冬「織斑・オルコット ペアに重大な負傷が発生し、棄権する、との申し出があった」


箒「!?」

ラウラ「!?」

252: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:22:20 ID:x6SncPAc

千冬「よって」

千冬「織斑・オルコット ペアの不戦敗とし」

千冬「篠ノ之・ボーデヴィッヒ ペアの優勝とする!」


     ワアアアア……


鳴上「…………」

鳴上「一夏……お前は」

鳴上「幸せ者だ」 クスッ

253: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:27:34 ID:x6SncPAc


―――――――――――


二日後

医療室の個室


箒「本当に大丈夫なのか?」

一夏「ああ、ドクターにも驚かれた」

一夏「多分……福音の時みたいに、白式が治してくれたんだろう……」

箒「昨日のお前の姿は酷かったからな……」

箒「命に別状は無い、と聞いても……にわかには信じられなかった」

一夏「薬が切れたら、とんでもない痛みが襲ってきたけどな……」

箒「…………」

254: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:28:17 ID:x6SncPAc

箒「…………」///

箒「い、一夏……」///

一夏「ん?」

箒「その……言っておきたい事が、ある」///

箒「決して、ふざけている訳でも、冗談でもないから……な?」///

一夏「? ……ああ?」

箒「う、うむ……」

箒「一夏、私は、篠ノ之 箒は……」///

255: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:28:51 ID:x6SncPAc



箒「お、お前の事が……好きだ!」///



一夏「…………」

一夏「……うん?」

箒「ゆ、友人として、ではないぞ?」///

箒「一人の女として……異性の、一夏の事が、好きなんだ」///

一夏「え」

一夏「ええっ!?」///

箒「…………」///

256: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:29:28 ID:x6SncPAc

一夏「…………」///

一夏「…その」///

一夏「いつから?」///

箒「……小さい頃から、ずっと」///

一夏(マジっすか…)///

箒「…………」///

一夏(やべ……箒、すげえ可愛い……)///

257: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:30:05 ID:x6SncPAc

箒「……今まで、私はずっと素直になれなかった」

箒「幼い頃の私達のままで……これからもそうなんだと、根拠も無く思っていた」

箒「でも……」

箒「お前は、私以外の女達と戯れてばかりで……イライラして」

一夏「そ、そんなつもりは!」

箒「わかっている」

箒「これは私が、そう思っていただけなんだ……」

一夏「…………」

箒「でも、ずっと、ずっと、一夏を想っていて、き、気持ちが落ち着かなくて……」///

箒「ああ、もう……何を言っているんだ? 私は……」///

一夏「……箒」

258: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:30:59 ID:x6SncPAc

一夏「お、俺は、その……」///

箒「!」

箒「一夏、待ってくれ!」

一夏「え?」

箒「返事は……後でいい」

一夏「はい?」

箒「す、すぐに、どうしてか、分かる」///

259: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:31:45 ID:x6SncPAc

箒「さ……最後に、もう一度だけ、言う」///

箒「私は、一夏の事が……好きだ」///


―――――――――――


一夏(…………)

一夏(……びっくりした)

一夏(まさか)

一夏(箒が……俺の事を好きだったなんて)///

一夏(いつも問答無用で殴る蹴るされてたから)

一夏(そんな風に想われてた、なんて思いもしなかった……)

一夏(……それにしても返事は後でいいって)

一夏(すぐに分かるって……)

一夏(どういう事なんだ?)

260: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:32:17 ID:x6SncPAc


     コン コン  ガチャ…


ラウラ「一夏……体は大丈夫か?」

一夏「お、ラウラ」

一夏「ああ、大丈夫だ」 ニコ

ラウラ「そうか……良かった」

ラウラ「…………」

ラウラ「…………」///

261: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:32:53 ID:x6SncPAc

ラウラ「一夏……」///

一夏「……ん?」

ラウラ「つ、伝えたい事がある」///

一夏「お? ……おお」

一夏(え? これってまさか……?)

ラウラ「私は……鳴上にある事をたずねられた」

一夏「うん」


ラウラ「『お前は、どんな風に一夏の事が好きなんだ?』と……」///


一夏「なっ!?」///

ラウラ「……でも」

262: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:33:34 ID:x6SncPAc

ラウラ「言われて私は即答できなかった」

ラウラ「今まで私は、人から聞いた事そのままで表現していたからだ……」

一夏「…………」

ラウラ「鳴上は、そんな私に『考えろ』と言った」

ラウラ「……いろんな人に聞いてみた、いろんな本も読んでみた」

ラウラ「その結果……私なりに答えを出す事が出来た……」

一夏「うん……」

ラウラ「私は」

263: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:34:09 ID:x6SncPAc

ラウラ「男女の関係で、恋愛の対象という意味で……」///

ラウラ「一夏の事が好きだ」///


一夏「そ、そうか……」///

ラウラ「…………」///

ラウラ「つ、伝わった……だろうか?」///

一夏「お、おう、十分過ぎるほど!」///

ラウラ「そ、そうか! 良かった…」/// ニコッ

ラウラ「ありがとう一夏。 聞いてくれて……」///

ラウラ「私はお前に出会えて、本当に良かったと思う」///

ラウラ「それでは……また後で、な」///

264: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:34:44 ID:x6SncPAc

一夏「えっ!?」

一夏「ラウラ!?」

     ガチャ… キィ パタン

一夏「…………」

一夏(おいおい……)

一夏(まさかと思うけど)

一夏(こ、これって……?)

265: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:35:21 ID:x6SncPAc


     コン コン ガチャ


シャル「一夏、調子はどう?」

一夏「シャル……」

シャル「えっと……もう、分かっているかな? さすがに……」///

一夏「……う、その」

一夏「シャルも……なのか?」///

シャル「……うん!」/// ニコッ

シャル「でも……だからって『わかった』つもりにならないで?」

シャル「ボクは、ちゃんと一夏に向き合って」

シャル「気持ちを伝えたい」///

一夏「……そう、か」///

266: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:36:08 ID:x6SncPAc

シャル「一夏は……覚えてる?」

シャル「一緒にお風呂へ入った時の事……」///

一夏「……わ、忘れられる訳ないだろ」///

シャル「一夏のえっち」///

一夏「は、話を振ってきたの、そっちだろ!?」///

シャル「うふふ、ごめん」///

シャル「…………」

シャル「……あの時はね」

シャル「ボク、一夏へのお礼のつもりだった……」

一夏(……にしては、かなり過激だ)

267: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:36:57 ID:x6SncPAc

シャル「でも……」

シャル「ボクは、自分と向き合うようになってから」

シャル「あの時のボクの行動は……」

シャル「一夏と、既成事実を作りたかったんじゃなかったの? と思ってる……」

一夏「!?」

シャル「……幻滅した?」

一夏「!? い、いや、そんな事は!」

シャル「もしかしたら……今こうして話しているボクも」

シャル「何かの結果を求めて…あざとく行動しているのかも知れない……」

シャル「でも……そんなボクにも」

シャル「たった一つだけ……」

シャル「純粋に自信を持って言える事があるの」

一夏「…………」

268: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:37:30 ID:x6SncPAc


シャル「一夏の事が好き……」///


一夏「…………」///

シャル「……ふう」///

シャル「えへへ……やっと言えた」///

一夏「そ、そうか……」///

シャル「あ、言っとくけど、友達としてじゃないからね?」

一夏「わ、わかってるよ……!」

269: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:38:16 ID:x6SncPAc

シャル「良かった……ちゃんと伝える事ができて」

シャル「一夏、聞いてくれてありがとう」

シャル「……大好き」/// ニコッ


―――――――――――


一夏(シャル……)

一夏(…………)///

一夏(友達としてじゃない)///

一夏(か……)///

270: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:39:02 ID:x6SncPAc


     コン コン ガチャ


鈴「一夏~? 調子はどう?」

一夏「……鈴」

一夏「…………」///

鈴「……す、少し、休憩しない?」///

一夏「……休憩か」///

一夏「あ、ありがたい」///

鈴「えと……飲み物、持ってきたの。 飲む?」///

一夏「おう、も、もらおうかな……」///

271: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:39:52 ID:x6SncPAc


―――――――――――


一夏「……おかげで落ち着いた」

一夏「ありがとう、鈴」

鈴「どういたしまして!」 フフッ

鈴「…………」

鈴「一夏は……気づいてるかな?」

一夏「……ま、まあ、な」///

鈴「ううん……そっちじゃなくて」

鈴「あたしが言ってるのは順番の事」

一夏「?」

一夏「順番?」

一夏「最初が箒で、ラウラ、シャル、そして鈴、セシリア……」

272: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:40:46 ID:x6SncPAc

一夏「なにか法則性があるのか?」

鈴「事の発端は……箒の一言かな」

鈴「突然、『私は一夏に告白しようと思う』って言い出してね」

一夏「!」

鈴「ま、一夏の知らない所で、ひと悶着あって……」

鈴「今度のタッグマッチ・トーナメントの成績で」

鈴「告白の順番を決めよう、って事になったの」

一夏「……!?」

273: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:41:20 ID:x6SncPAc

一夏「…………」

一夏「……じゃあ」

一夏「みんなが勝ちにこだわっていたのは……」

一夏「俺のため、なのか?」

鈴「平たく言えばそう」

一夏「…………」

鈴「…………」

鈴「悠には……迷惑かけちゃったな」

鈴「あんたにも……セシリアにも……」

一夏「……?」

一夏「どういう意味だ?」

鈴「悠は、強敵だったでしょ?」

一夏「ああ……」

274: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:42:02 ID:x6SncPAc

鈴「セシリアは、その強敵に勝つために」

鈴「一夏に無理をさせ、医療室送りにした……」

一夏「!!」

一夏「それは違う! 俺だって悠に勝ちたかった!」

鈴「セシリア自身は責任を感じているわ……」

一夏「…………」

鈴「箒とラウラの後、『わたくしは、トリを狙っていたのですわ!』とか、ワザとらしく言って」

鈴「一番最後を選んだのが証拠………」

一夏「……っ!」

275: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:43:02 ID:x6SncPAc

一夏「…………」

一夏「…………鈴」

一夏「お前もそうなのか?」

鈴「…………」

一夏「……でなきゃ」

一夏「そんな話……しないよな」

鈴「…………」

276: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:43:38 ID:x6SncPAc

一夏「……聞かせてくれるか?」

一夏「鈴の気持ち……」

鈴「!!」

鈴「あ、あたしは……」

一夏「うん」

鈴「す、好き。 一夏の事……」///

一夏「子供のころから?」

鈴「!」///

鈴「そ、そうよ!」///

鈴「ずっと、ずっと……好き!」///

鈴「あたしは、一夏が」///

277: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:44:16 ID:x6SncPAc


鈴「一夏の事が……大好き」///


一夏「……ありがとう、鈴」

一夏「俺は……」

鈴「へ、返事は、後でいいから!」///

一夏「い、いや俺は……」

鈴「も、もう行くね!? あたし!」///

一夏「あっ! 鈴!」

     ガラッ… パタンッ…

一夏「…………」

278: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:45:04 ID:x6SncPAc

一夏(まったく鈴の奴)

一夏(昔からああだよな……) クスッ

一夏(いつも他の人の事を気遣って、自分の事を後回しにする)

一夏(でもな……)

一夏(凄くうれしいよ……鈴)


     …ドドドドドドドドドッ バァンッ!!


セシリア「い、一夏さん!!」 ハアッハアッ

一夏「うおっ!? なんだ!?」

セシリア「あ、あれ?」

一夏「よ、よお」

セシリア「…………」

一夏「どうしたんだ? いったい?」

279: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:45:34 ID:x6SncPAc

セシリア「い、いえ、その……な、鳴上さんが」

セシリア「一夏さんの容態が急変した、と……」

一夏「…………」

セシリア「…………」

セシリア「……もしかして」

セシリア「騙されましたの? わたくし……」

一夏「多分な」

セシリア「……はうううう」 ヘナ ヘナ ヘナ……

一夏「ははは……」

280: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:46:08 ID:x6SncPAc

一夏「セシリア……聞かせてくれるか?」

一夏「その、気持ちを……」///

セシリア「!!」

セシリア「わ、わたくしは、そのっ……」

一夏「……責任なんて感じなくていいから」

セシリア「!!」

セシリア「…………」

セシリア「……でも……わたくしは……」

セシリア「自分が許せません……!」

281: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:46:41 ID:x6SncPAc

一夏「……だったら俺も」

一夏「タッグパートナーとして、セシリアを裏切った自分が許せなくなる」

セシリア「!」

セシリア「一夏さん!?」

一夏「……お互い許さないか?」

一夏「自分を」 ニコ

セシリア「…………」

セシリア「一夏さん……」

セシリア「ずるいですわ」 ポロ

セシリア「ううっ……ひっく……」 ポロ ポロ

282: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:47:14 ID:x6SncPAc


―――――――――――


一夏「……落ち着いたか?」

セシリア「はい……」


一夏(……悠が、セシリアについたウソは)

一夏(鈴の話から推測すると、おそらく……)

一夏(セシリアが告白自体を止めると思ったんだろうな……)

一夏(タイミングもドンピシャで、相変わらず凄い奴だ)

283: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:47:49 ID:x6SncPAc

セシリア「えっと……その」///

セシリア「わ、わたくしは……」///

一夏「う、うん」///

セシリア「…………」

セシリア「……最初は……分かりませんでした」

一夏「分からない?」

セシリア「気が付いたら一夏さんの事ばかりを……考えているようになってて」

セシリア「いつの間にか、目であなたの事を追っていて」///

セシリア「ああ……これが、こ、恋なのだと…思いました……」///

一夏「……そ、そうだったのか」///

284: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:48:29 ID:x6SncPAc


セシリア「わたくしは一夏さんの事が……好きです」///


一夏「…………」///

セシリア「…………」///

一夏「ありがとう、セ、セシリア。 す、凄く、うれしいよ」///

セシリア「は、は、はい……!」///

セシリア「あ! で、でも!」

セシリア「友人として、では ありませんから!」///

一夏「わ、わかってるから!」///

一夏(な、なぜ、みんな念を押す!?)

285: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:49:05 ID:x6SncPAc

一夏「……その」///

一夏「返事は……やっぱり後でいいのか?」

セシリア「……はい」

セシリア「みなさんとの取り決めで特に期限は決めませんけど……」

一夏「…………」

セシリア「でも……お心が決まったら」

セシリア「全員を集めた上で……おっしゃってください」

一夏「……えっ?」

一夏「ええっ!?」

286: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:49:37 ID:x6SncPAc

一夏「ちょ、ちょっと待ってくれ…」///

一夏「みんなを集めてって……ええっ!?」///

セシリア「なにか問題が?」

一夏「!?」///

一夏「だ、だって……そのっ」///

セシリア「わたくし達は……皆」

セシリア「真剣に一夏さんへ向き合いました」

セシリア「その気持ちを偽ることなく話し合って……」

セシリア「この人達なら、一夏さんとお付き合いしても許そう、と……」

セシリア「皆で決めたのです」

一夏「…………」

287: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:50:20 ID:x6SncPAc

セシリア「……ですので」

セシリア「一夏さんも、わたくし達に向き合って」

セシリア「お答えください」

セシリア「全員を選ばない……という選択でもかまいません」

一夏「…………」

セシリア「もちろん……選ばれなかった人は」

セシリア「しばらく時間が必要になると思います……」

セシリア「でも」

セシリア「必ず選ばれた人を祝福できると、確信しておりますわ」 ニコ

一夏「…………」

288: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:50:52 ID:x6SncPAc


―――――――――――


一夏(…………)

一夏(…………)

一夏(………みんな)

一夏(凄いな……)

一夏(正直、俺が五人いればいいのにって思う)

一夏(俺も真剣に答えを見つけないと………)

289: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:51:31 ID:x6SncPAc

     コン コン

鳴上「一夏、今、いいか?」

一夏「……悠」

一夏「どうぞ、入ってくれ」

     …ガチャ

鳴上「調子はどうだ?」

一夏「体の方は大丈夫だ」

一夏「……精神的に少し疲れているけどな」

鳴上「そうか」 クスッ

一夏「で? ただの見舞いなのか?」

鳴上「実はな……俺」

一夏(え?)

鳴上「前から思っていたんだが……」

一夏(ちょ、ま、まさか!?)

290: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:52:05 ID:x6SncPAc

鳴上「どうして、素組するんだ?」

一夏「い、いや! 待ってくれ! お、俺にそっちの趣味は……!」

一夏「へ? 素組?」

鳴上「……プラモの話をしているんだが?」

一夏「…………」

鳴上「…………」

一夏「よ」

一夏「よかったぁ………」 ヘナヘナヘナ…

鳴上「?」

291: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:52:38 ID:x6SncPAc

鳴上「……で? 五人の多国籍美少女から、告白を受けた感想は?」

一夏「正直、滅茶苦茶つらい……」

鳴上「世界中の男に殴られるぞ?」

一夏「……でも本音だ」

一夏「誰かを選べば、他の四人が傷つく……」

一夏「俺は……誰も傷つけたくないのに」

鳴上「…………」

鳴上「残念だが……もう誰も傷つかない事はない」

一夏「…………」

鳴上「………でも」

鳴上「今なら『すり傷』程度ですむと思う」

292: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:53:33 ID:x6SncPAc

一夏「……!」

鳴上「誰も傷つかない……」

鳴上「確かに理想だ」

一夏「…………」

鳴上「なんだか放っておけない……守ってあげたい」

鳴上「支えてあげたい……望みを叶えてあげたい」

鳴上「そんな気持ちに すべて答えている内に」

鳴上「俺はいつの間にか……六股かけていた」

一夏「…………」

一夏「はあ!?」

鳴上「…………」

293: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:54:06 ID:x6SncPAc

一夏「……マジで?」

鳴上「マジで」

一夏「お前が……六股?」

鳴上「ああ……」

一夏「…………」

鳴上「…………」

一夏「……で」

一夏「どうなった?」

鳴上「阿鼻叫喚の渦……」

一夏「Oh……」

294: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:54:46 ID:x6SncPAc

鳴上「お前もそうなりたいか?」

一夏「全力でお断りします」

鳴上「それでいい」

鳴上「俺みたいに全身複雑骨折する事はない」

一夏(冗談に聞こえねえ……)

鳴上「難しく考えるな」

鳴上「ただ……自分に正直になればいい」

一夏「…………」

一夏「自分に」

一夏「正直に、か……」

一夏「…………」

295: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:55:41 ID:x6SncPAc


―――――――――――


半月後

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


鳴上「じゃ、俺は席を外す」

一夏「お、おう。 すまんな……」

     キィ… パタン…

箒「…………」

鈴「…………」

シャル「…………」

セシリア「…………」

ラウラ「…………」

296: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:56:23 ID:x6SncPAc

一夏「…………」

一夏「……えっと」

一夏「まず、みんなにお礼を言っておく」

一夏「俺を……好きだと言ってくれて、ありがとう」

一夏「本当にうれしかった」


ヒロインズ「…………」


一夏「悠に自分に正直になれ、と言われて」

一夏「いろんな事を考えて、自分と向き合って」

一夏「でも、なかなか答えが出せなくて……」


ヒロインズ「…………」

297: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:57:41 ID:x6SncPAc

一夏「これは お世辞でもなんでもなく、みんな魅力的で……」

一夏「この中の一人だけを選ぶなんて、とんでもない贅沢で、その……」

一夏「ああ、もう……何を言ってるんだ? 俺は……」///


ヒロインズ「…………」///


一夏「……だけど」

一夏「俺は答えを……出した」


ヒロインズ「!」

298: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 18:58:30 ID:x6SncPAc

一夏「スーハー、スーハー」

一夏「……ふう」

一夏「お、俺は、」

一夏「織斑 一夏は……」///


ヒロインズ「…………」 トクン トクン



299: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:13:21 ID:x6SncPAc






     ――シャルエンド――







300: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:13:54 ID:x6SncPAc



一夏「シャルが、一番好きだ!」///



シャル「っ!!」


鈴「……うっ」 ダッ

箒「……鈴!」

セシリア「……鈴さん」

ラウラ「…………」

ラウラ「行こう……みんな」

一夏(やっぱり……胸が痛むな)

シャル(……みんな)

301: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:14:29 ID:x6SncPAc

一夏「…………」

シャル「…………」

シャル「……えっと、一夏」

一夏「……うん」

シャル「ボクで……いいの?」

一夏「シャルでなきゃ、駄目なんだ」

一夏「……あの時、」

一夏「トーナメントで箒達と戦っていた時」

一夏「俺だったらこうするのに……俺だったら、もっとシャルの力になれるのにって」

一夏「歯がゆく思っていたんだ……」

302: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:15:02 ID:x6SncPAc

シャル「!!」///

シャル「…………」

シャル「……でも」

シャル「ボクは鳴上くんを……選ぼうとしたんだよ?」

シャル「勝つために一夏を……拒んだんだよ?」

一夏「ああ……凄いショックだった」

シャル「…………」

一夏「鈴や箒もそうだったけど……シャルに断られたのが一番こたえた」

一夏「どうして? なぜ?」

一夏「…………」

一夏「それは……きっと」

303: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:15:40 ID:x6SncPAc

一夏「シャルの事が一番好きだから」/// ニコッ

シャル「一夏……」///

一夏「…………」///

シャル「…………」///

一夏「…………」///

シャル「…………」///

一夏「……え、えと、その」///

シャル「……う、うん」///

一夏「お、俺と…付き合ってもらえますか?」///

シャル「こ、こちらこそ、よろしくお願いしますっ」///

304: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:16:17 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数週間後

IS学園・校門付近



??「おー……」

??「ここがIS学園ってやつか!」

??「いきなりのアポなし訪問だけど、楽しみだぜ!」

??「…………」

??「悠の奴……元気にしてっかな」

305: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:16:53 ID:x6SncPAc

シャル「…………」 テク テク

シャル「……?」 ピト

??「そこを何とか!! 守衛さん!!」

守衛「そう言われましても」

守衛「基本IS学園は関係者以外の立ち入りは……」

??「身分証明証も提示してますし……お願いします!!」

??「悠に……鳴上 悠に会ったら、すぐ帰りますから!!」

シャル「!」

シャル(鳴上くんの友達?)

306: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:17:30 ID:x6SncPAc

守衛「すみませんが……今は付き添いの人員が居ませんので」

??「そ、そこを何とか!!」

シャル「あの……」

??・守衛「?」

シャル「鳴上くんの友達……なんですか?」

??「…え?」

??「おお!? は、はい!」


??(な、なんだよ、この超絶金髪美少女は…!!)


シャル「守衛さん、良かったらボクが付き添いましょうか?」

守衛「しかし……」

シャル「ボクは専用機持ちです」

シャル「いざとなったら撃退できますし」

307: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:18:09 ID:x6SncPAc

守衛「!」

守衛「……名前と学年を言ってください」

シャル「シャルロット・デュノア。 一年生です」

守衛「…………」 ピピピ…

守衛「…確認」

守衛「わかりました、お任せしましょう」

??「!」

??「おっしゃ!!」

守衛「ただし、何か問題が発生した場合、あなたにも責任がおよびます」

守衛「かまいませんか?」

シャル「はい」

守衛「では君、この腕章を着けて。 くれぐれも軽率な行動を取らないように」

??「モチのロンです!!」

308: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:19:05 ID:x6SncPAc


―――――――――――


??「いや~助かったよ……って言葉、わかる?」

シャル「IS学園入学の必須なんです、日本語は」 ニコ

??(うはっ か、可愛えぇ……)///

??「っと! 自己紹介がまだだった!」

??「俺は、花村 陽介! よろしく!」

シャル「シャルロット・デュノアです。 よろしくね、花村くん」 ニコ

花村(くうっ…! 悠! 心底お前が、うらやましい!!) ウルウル…

シャル「?」 ニコ ニコ

309: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:19:38 ID:x6SncPAc

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


     コン コン

シャル「一夏~? 鳴上くん、居る~?」

一夏「ん~? シャルか? 悠もいるぞ」

     ガチャ

シャル「良かった。 鳴上くんに お客さんだよ?」

鳴上「?」

鳴上「俺に客?」

花村「悠!」

鳴上「陽介!?」

310: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:20:25 ID:x6SncPAc

花村「久しぶりだなあ、相棒!!」

鳴上「陽介、どうしたんだ? 突然?」

鳴上「連絡してくれたら迎えに行ったのに……」

花村「いやぁ……なに? こういうのって」

花村「サプライズさせた方がもりあがんじゃん?」 ニヤリ

鳴上「変わってないな、陽介」 クスッ

―――――――――――

鳴上「ジュネスの店長会議にくっついて来たのか」

花村「そ! 会場がこの近くなんで、親父に頼み込んでムリヤリ、な」

一夏「へえ……ジュネスって、あの全国展開してる大手の」

シャル「エブリデイ・ヤングライフ・ジュ ネ ス♪ ……だね?」

花村「くううう! ありがとう! お嬢さん!」

シャル「あはは……」

311: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:21:02 ID:x6SncPAc

花村「ところで悠」

花村「IS?ってやつ? 良かったら見せてくれるか?」

鳴上「ああ、かまわない」

花村「よっしゃ! 楽しみぃ~!」

一夏「お? それなら、俺と模擬戦形式で見せるってのはどうだ? 悠?」

鳴上「……面白いな」

花村「マジで!? すげえ!!」

花村「一夏……だっけ? サンキューな!」

花村「俺の事も陽介って呼んでくれ!」

一夏「ああ。 よろしく、陽介」

312: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:21:35 ID:x6SncPAc

花村「こう言っちゃ何だが」

花村「俺も悠とは殴りあった仲なんだ」

花村「だから、気兼ねしないでくれよ?」

一夏「へえ? いったい何が原因で?」

花村「ははは……そいつぁ、ちょっと」

花村「なあ、悠?」

鳴上「陽介から一方的に殴りかかられた……」 ハア…

花村「おまっ!? そういう事、言っちゃう!?」

     アハハハ…

313: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:22:25 ID:x6SncPAc

第三アリーナ


鳴上「…………」 スチャ(メガネ装備)

鳴上「イザナギ!」 スウウウウウンッ!

一夏「白式!」 スウウウウウンッ!


花村「おおっ! すげえぇぇぇ!」

花村「どっちもかっけぇぇぇ!」

シャル(この人、ホントに楽しそう…) クス

314: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:23:14 ID:x6SncPAc

一夏「対戦成績はタッグマッチを含めて、俺の三勝四敗……」

一夏「今日こそ、イーブンに持ち込む!」

鳴上「……そう上手くは行かないぞ?」

鳴上「陽介にいい所を見せたいしな」 クスッ


花村「くううう! がんばれ! 悠~!」

シャル「花村くん、楽しそうだね」 クスッ

花村「おおよ! 俺は、毎日楽しんで生きてるんだぜ?」

花村「どんな些細な事も、何でもない日常も!」

花村「俺にとっては、生きてる事そのものが楽しいんだ!」

シャル「…!!」

シャル(…………)

シャル(もしかしたら……?)

315: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:23:45 ID:x6SncPAc

シャル「花村くん」

花村「うん?」

シャル「自分と向き合うって……難しいね?」

花村「いっ!?」

シャル「うふふっ」 ニコッ

花村(ゆ、悠の奴……!)///

花村(でも……これってひっとしたら脈アリじゃね!?)///

シャル「一夏~! がんばって~!」

花村「…………」

花村「…っきしょおおおおお!!」

花村「悠ー!! 負けるなー!!」

316: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:24:18 ID:x6SncPAc


―――――――――――




屋上


シャル「花村くんて面白い人だったね」

一夏「ああ、いい友達になれそうだ」

一夏「……悠との勝負は、負けちまったけどな」

シャル「ふふ、気にしない気にしない」 ニコ

一夏「それにしても、悠にあんな友達が居たなんてな」

シャル「ホント、花村くん、楽しそうだった」

一夏「…………」

シャル「ちょっと話をしてみたんだけど……」

317: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:24:58 ID:x6SncPAc

シャル「どんな些細な事も、なんでもない日常も」

シャル「花村くんは生きている事、そのものが楽しいんだって言ってた」 ニコ

一夏「……すごいポジティブ思考だな」

シャル「ボクから見たら凄くうらやましく思えたけどね」 クスッ

一夏「…………」

一夏「……そ、それにしても」

シャル「?」

一夏「陽介の事……ずいぶん話すのな」

シャル「??」

一夏「…………」///

シャル「…………」

318: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:25:28 ID:x6SncPAc

シャル「……あ」

シャル「もしかして……焼いてる?」

一夏「ぐ……わ、悪いかよ」///

一夏「アリーナのスタンドで」

一夏「陽介とシャルが仲よさそうに話してるの見てたら」

一夏「落ち着かなくて……」///

シャル「!」

シャル「鳴上くんに負けたのって……まさか」

一夏「…………」///

シャル「ふふっ。 なんだか、うれしい」

シャル「一夏がボクにやきもちを焼いてくれるなんて」///

     ギュッ

319: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:26:14 ID:x6SncPAc

一夏「!」///

一夏「シャル……」///

シャル「こ、これで、安心してくれる?」///

一夏「お、おう……でも抱きしめられるとは思わなかった」///

シャル「よ、良かったら」///

シャル「一夏もボクを抱きしめてくれると嬉しいな」///

一夏「よ、よし…!」///

     ギュッ

シャル「んっ。 一夏、暖かい」///

320: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:26:48 ID:x6SncPAc

一夏「シャル……」///

シャル「一夏……」///



シャル「大好きっ」///



     おしまい

321: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:27:51 ID:x6SncPAc






     ――鈴エンド――







322: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:53:39 ID:x6SncPAc



一夏「鈴が、一番好きだ!」///



鈴「!!」



セシリア「…………」

箒「…………」

シャル「……っ」

ラウラ「……行こう、みんな」

323: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:54:15 ID:x6SncPAc

鈴(みんな……)

一夏(……やっぱり、胸が痛むな)


鈴「…………うっ」

鈴「ひぐっ……」 ポロポロ

一夏「!? …鈴?」

鈴「ごめ…ん、一夏」 ポロポロ

鈴「あ、あたし……多分だめ、だと思ってて」

鈴「なんか……わかんないけど……とまらない、…の」 ポロポロ

一夏「…そうか」

一夏「…………」

324: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:54:55 ID:x6SncPAc

一夏「俺……その、気づいてやれなくて、ごめん」

鈴「…………」

一夏「鈴は子供の頃から存在が近すぎて」

一夏「鈴も俺と同じように……友達として付き合っているって思ってた」

鈴「…………」

一夏「……でも」

一夏「悠に色々言われた事や……鈴の告白で」

一夏「ああ、そうかって、やっと分かった」

鈴「一夏……」

325: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:55:30 ID:x6SncPAc

一夏「俺は……鈴をちゃんと見てなかったんだ、って」

一夏「ごめんな、鈴」

鈴「ううん、もういい」///

一夏「…………」///

鈴「…………」///

一夏「……えっと」///

鈴「う、うん」///

一夏「その……」///

鈴「う、うん。 なに?」///

一夏「俺と……付き合ってもらえますか?」///

鈴「は、はい!」///

326: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:56:05 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数週間後

IS学園・校門付近


???「お父さん! 早く、早く!」

??「おおい、ちょっと待ってくれ…」

守衛「はい、確認取れました」

守衛「堂島さん、この腕章を必ず着けてくださいね」

堂島「わかりました」

堂島「おい、菜々子。 ほら……これを着けるんだ」

菜々子「は~い!」

327: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:56:41 ID:x6SncPAc


―――――――――――


鳴上「伯父さん!」

堂島「悠! 久しぶりだな!」

菜々子「お兄ちゃん!!」

鳴上「菜々子、久しぶり。 大きくなったな」

菜々子「うん! あのね、菜々子、3㎝も伸びたんだよ!」

鳴上「そうか。 よかったな」 ニコ

328: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:57:23 ID:x6SncPAc

堂島「ところで悠、学校はどうだ?」

鳴上「楽しいですよ」 ニコ

堂島「はは。 聞くまでも無かったな」

堂島「これだけ可愛い娘さん達に囲まれていたら……」

菜々子「……お父さん!!」 ペシペシ!

堂島「うおっ! い、痛い、菜々子!」

堂島「悪かった、お父さんが悪かった!」

鳴上「ハハハ…」

330: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:57:59 ID:x6SncPAc

第三アリーナ


一夏「甘いぜ! 鈴!」

鈴「…くっ!」

     ドンッ ドンッ ドンッ!!

一夏「はあっ」

     ヒュバッ!

鈴「…………」

鈴「…?」

一夏「……チェックメイト」

鈴「もう……また負けた」

331: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:58:43 ID:x6SncPAc

一夏「でも、イグニッション・ブーストも大分モノになって来たな」

鈴「う~ん……使い所が難しいわね。 エネルギーもけっこう食うし」

鈴「あたしには向いてないかも……」

一夏「ま、おぼえといて損は無いと思うぜ?」

鈴「まあね……」

鈴「……あれ?」

一夏「ん? どうした? 鈴?」

鈴「ほら、あそこ」

一夏「……お、悠。 と、誰だ? あの親子?」


鈴(親子……?)

鈴(あ! もしかして!)

332: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 19:59:30 ID:x6SncPAc

鈴「そういえばさ」

鈴「近く親戚が訪ねて来るって、言ってなかった?」

一夏「ああ! 言ってた言ってた!」

一夏「あれ、今日だったのか……」

鈴「ねえ、一夏」

鈴「休憩がてら、挨拶しておかない?」

一夏「お、いいな。 行ってみるか!」

333: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:00:05 ID:x6SncPAc

菜々子「うわあ……かっこいい!」

鈴「うふふ、ありがと!」

菜々子「そっちのお兄さんのも、真っ白でかっこいい!」

一夏「ハハ、ありがとう、菜々子ちゃん!」

菜々子「菜々子、お兄ちゃんのあいえすも見たい!」

鳴上「え?」

一夏「いいじゃないか、悠。 見せてやれよ」

鳴上「しかし……今は一夏達が」

鈴「ああ、それなら気にしないで。 あたし達はもういいから、ね?」

鳴上「そうか……じゃあ、お言葉に甘えるかな」 ニコ

334: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:00:50 ID:x6SncPAc


―――――――――――


鳴上「…………」 スチャ(メガネ装備)

鳴上「イザナギ!」 スウウウウウンッ!

菜々子「わああああっ! 見て見て! お父さん!」

菜々子「お兄ちゃんのあいえす、すっごくかっこいい!!」

堂島「ははは……良かったな、菜々子」


一夏「ようし、菜々子ちゃん、ちょっとお兄ちゃんと戦っていいかな?」

鳴上「お、おい!? 一夏……」

菜々子「えっ!? お兄ちゃんと!?」

鳴上「あまり刺激的な事は……」

一夏「わかってるよ。 せっかくなんだし……悠のいい所、見せてあげたいんだ」

鳴上「う、う~ん……」

335: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:01:24 ID:x6SncPAc

鈴「じゃ、あたし、観客席に行って解説する!」

鈴「菜々子ちゃん 可愛いし、近くで見たいし!」 ニコ

鳴上「……わかった」

鳴上「でも、激しいのは絶対無しだぞ?」

一夏「ああ、わかってるって!」

―――――――――――

菜々子「わあああっ! お兄ちゃん! がんばって!」

     コンッ! キンッ! カァンッ!

堂島「ほう……! これは凄いな」

鈴「ふふっ。 ま、本来の実力の1%も出していませんが……」

堂島「これが……1%にも満たない!?」

鈴「あの二人が本気を出したら、目で追うのも大変なんですよ?」

堂島「そ、そんなにか!? ……信じられん」

菜々子「いけー! お兄ちゃん!」

336: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:01:55 ID:x6SncPAc

鈴「あの……」

堂島「ん?」

鈴「悠に……少しだけ聞いたんです。 堂島さん一家の事」

堂島「! ……それは、妻の事も、か?」

鈴「はい……」

堂島「……参ったな」

鈴「あたし……少し悩んでいた時期があって、その時に聞きました」

鈴「想っているだけじゃ、伝わらないって」

堂島「!」

堂島「…………」

堂島「……そうか」

337: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:02:30 ID:x6SncPAc

堂島「その……あいつは、悠は、何か言ってたか?」

鈴「ええ」

鈴「自分を含めて」

鈴「『家族』になれた、って言ってました」 ニコ

堂島「…………」

堂島「ふふ、嬉しいものだな」 クスッ

鈴「………」 ニコ ニコ

338: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:03:05 ID:x6SncPAc

堂島「ところで……君は伝えたのかい? 想いを……」

鈴「……ええ」

鈴「…………」///

堂島「………?」

堂島「…………」

堂島(……ああ、あの男子生徒の事を)

堂島(年頃の娘さんだ……そういう意味だったか)

堂島「……青春、だな」 クスッ

339: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:03:40 ID:x6SncPAc


―――――――――――


IS学園・食堂


菜々子「すごかったね! お父さん!」

菜々子「お兄ちゃんがビューンって来て」

菜々子「一夏お兄さんの事、倒しちゃったんだよ!」 キラキラ

堂島「ああ、お父さんも見てたぞ。 凄いな、悠は」

菜々子「うん! お兄ちゃん、強いんだね!」 キラキラ

堂島「ははは」

340: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:04:17 ID:x6SncPAc

鳴上「おまたせ、菜々子」

菜々子「わあ! プリン! 菜々子、大好き!」

鳴上「ジュースもあるからな」

菜々子「うん!」

一夏「堂島さん、あんぱんと牛乳でしたっけ?」

堂島「お、すまないな一夏君」

一夏「悠はスパゲティか」

鳴上「ああ。 一夏はいつものラーメン、鈴はクレープか……めずらしいな」

鈴「ま、たまには、ね」

鈴「さ、食べましょ!」

341: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:04:51 ID:x6SncPAc

堂島「しかし、こんな時間に学食が開いてるんだな……」

一夏「IS学園は全寮制ですから」

一夏「夕方……つまり今くらいから、また開店するんですよ」

堂島「なるほど」

菜々子「おいしい!」

菜々子「ジュネスのプリンと同じくらい、おいしい!」

鳴上「よかったな、菜々子」

鈴「ふふ。 IS学園はスイーツメニューも充実してるからね」

342: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:05:40 ID:x6SncPAc

菜々子「……あのう、一夏お兄さん」

一夏「うん? なに?」

菜々子「お兄ちゃんに負けちゃって……痛い所とか、無い?」

一夏「はは、全然ないよ? ありがとう、心配してくれて」

鈴「ISはね、ケンカしても怪我しないように出来てるの」

鈴「だから大丈夫だよ?」 ニコ

菜々子「そうなんだ! よかった……」

一夏「それに菜々子ちゃんのお兄ちゃんは強いけど」

一夏「とっても優しいんだ。 だから怪我なんてしないよ」 ニコ

菜々子「うん! 菜々子も知ってるよ!」

菜々子「お兄ちゃん、とっても優しい!」

     ハハハ…

343: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:06:14 ID:x6SncPAc

菜々子「だから菜々子、お兄ちゃんと結婚するの!」///

一夏「お、よかったな、悠!」

鳴上「お、おう」

鈴「ふふ……悠、覚悟しときなさいよ?」

鈴「女の子の『一途』は、馬鹿にすると怖いんだからね!」 ニコ

一夏・鳴上(鈴が言うと、説得力あるなぁ……)

鈴「菜々子ちゃん」

鈴「お姉ちゃん、応援するから頑張ってね!」

菜々子「うん!」///

     ハハハ…

344: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:06:54 ID:x6SncPAc

堂島「……さて、菜々子」

堂島「そろそろ……帰らないといけない時間だ」

菜々子「!!」

菜々子「……うん」

堂島「また、来よう。 な?」

菜々子「……うん」

鈴「…………」

一夏「…………」

鳴上「…………」

345: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:07:36 ID:x6SncPAc


―――――――――――


IS学園・校門付近


堂島「すまないな、見送ってもらって…」

一夏「いえ」

鈴「あたし達も楽しかったです!」

鈴「菜々子ちゃん、また一緒にプリン食べようね?」

菜々子「うん!」

346: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:08:09 ID:x6SncPAc

鳴上「おじさん、実は……」

鳴上「今度の連休、八十稲羽に帰ろうかと思っているんです」

菜々子「!!」

菜々子「ホント!? お兄ちゃん!?」

堂島「おお、そうか! いつでも歓迎するぞ!」

堂島「よかったな、菜々子……」

菜々子「うん!!」

菜々子「お兄ちゃん、いっぱい、いっぱい! 遊ぼうね!」

鳴上「ああ、菜々子、いっぱい遊ぼうな」

347: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:08:53 ID:x6SncPAc

一夏「…………」

鈴「…………」

鈴「いい家族だね」 クスッ

一夏「……ああ」 クスッ

     ギュッ…

一夏(!)

一夏(鈴、手を握って……)///

鈴「ちょ、ちょっと……気が早いけど」///

鈴「あたし……」///

鈴「一夏と……あんな家族になれたらって、思う……」///

348: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:09:31 ID:x6SncPAc

一夏「……うん」///

一夏「俺も、そう思う」///

鈴「ふふ……ありがと、一夏」///



鈴「大好きっ」///



     おしまい

349: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:10:26 ID:x6SncPAc






     ――箒エンド――







350: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:11:25 ID:x6SncPAc



一夏「箒が、一番好きだ!」///



箒「!!」



鈴「………っ」 ダッ

セシリア「! …鈴さん」

シャル「…………」

ラウラ「……行こう、みんな」


一夏(……やっぱり、胸が痛むな)

箒(……みんな)

351: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:11:59 ID:x6SncPAc

箒「……どうしてだろう」

一夏「……うん?」

箒「こうなる事を望んでいたハズなのに」

箒「複雑な心境だ……」

一夏「箒……」

一夏「それは俺もだ」

箒「一夏……」

一夏「告白してくれた時まで……」

一夏「箒が、俺を想ってくれているなんて」

一夏「想像もしてなかった」

箒「…………」

352: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:12:57 ID:x6SncPAc

一夏「でも、ハッキリ言ってくれて俺は嬉しかった」

一夏「箒の本音を初めて聞けたって、思えた」

箒「う、うん」///

一夏「だから、言える」

一夏「福音の時みたいに、その場の雰囲気で流された、とかじゃなく」

一夏「俺も……箒の事が好きだ、って」///

箒「い、一夏……!」///

一夏「…………」///

箒「…………」///

一夏「箒……」///

一夏「俺と……付き合ってくれるか?」///

箒「ああ……もちろんだ、一夏」///

353: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:13:36 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数週間後

IS学園校門付近


??(…………)

??(…………)

??「あ! 鳴上……じゃなくて、悠先輩!」

鳴上「すまない、ちょっと遅れた……」

??「いえ。 私の方が突然 訪ねたんですから……」///

354: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:14:30 ID:x6SncPAc

鳴上「腕章は……着けているな」

鳴上「……ん?」

鳴上「どうして楽器を持ってきたんだ? 荷物になるだろうに」

??「あ……その」

??「三校交流合唱会の宿は、ここからちょっと遠かったので」

??「行きしなに寄ろうと思って」///

鳴上「そうか」

鳴上「じゃあ、それは俺が持とう、綾音」 ニコ

綾音「あ、すみません、悠先輩」

355: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:15:12 ID:x6SncPAc

     ザワ… ザワ…

箒(……?)

箒(なんだか……騒がしいな?)


モブ子「……見た?」

モブ美「見た見た! 鳴上くん、可愛い他校の彼女を連れてたの!」

モブ枝「や~ん! 鳴上くん、狙ってたのに~!」

箒(ほう?)

356: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:15:46 ID:x6SncPAc

モブ子「で、で!? 今どこに!?」

モブ美「さっき校舎の前にいたから、次はアリーナ辺りを見せるんじゃない?」

モブ枝「いいなあ……校内でデートかあ。 あこがれちゃう!」

     キャハハハ…


箒(…………)

箒(ちょっと、興味があるな) クスッ

箒(見に行ってみよう……)

357: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:16:28 ID:x6SncPAc

第二アリーナ・スタンド


綾音「す、凄いです! 八十神高校とは、比べ物に成りませんね」

鳴上「比べるものにもよる」 クスッ

鳴上「ここは近代的だけど、人工物ばかりで落ち着かない時もある」

鳴上「それに……」

綾音「それに?」

鳴上「綾音が居ない」 ニコ

綾音「!!」///

綾音「ゆ、悠先輩! も、もう……恥ずかしいです……!」///

鳴上「ははは……」


箒(…………)///

箒(ち、近寄りがたい、雰囲気だ)///

358: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:17:18 ID:x6SncPAc

一夏「あれー? 悠?」

鳴上「一夏」

一夏「何してるんだ? こんな所で?」


箒(…………)

箒(……さすが一夏だ) ハア…


一夏「お? そっちの女の子は?」

鳴上「俺の彼女」

一夏「はあ!?」

綾音「ゆ、悠先輩!」///


箒(……鳴上は鳴上で、規格外だな) 唖然…

359: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:17:57 ID:x6SncPAc

一夏「そ、そうなのか。 でも、悠」

鳴上「うん?」

一夏「お前……中学生の女の子を彼女にするなんて……」

一夏「いいのか?」

綾音「ちゅ、中学生じゃありません!」

綾音「そ、そりゃ、私、ちっちゃいですけど……」///

綾音「こう見えても、高校二年生です!!」

一夏「へ?」

一夏「だって、悠の事……先輩って?」

鳴上「…………」

鳴上「……あ」

360: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:18:42 ID:x6SncPAc

一夏・箒「本当は18!?」

一夏「って、箒!? いつの間に!?」

箒「こ、細かい事は置いておけ!」///

箒「それより……18って、どうして一年生に転入して来たんだ!?」

鳴上「一番の理由は、ISの基礎学力がまったく無かったからだ」

鳴上「そんな状態でいきなり三年生など出来ないだろ?」

箒「た、確かに……」

一夏「聞いてみれば、至極まともな理由だな……」

鳴上「それに……周りが女子だけ、というのもちょっと、な」

綾音「…………」

一夏(その気持ち、わかるぜ、悠!)

361: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:19:14 ID:x6SncPAc

一夏「通りで大人びている訳だ……」

箒「妙に落ち着き払っているのも、その為か……」

鳴上「篠ノ之博士に無理矢理 転入させられる事になったけど」

鳴上「俺にISを使える才能があるのなら」

鳴上「それを生かす方法を見つけたい」

鳴上「今は、そう思っている」

鳴上「多少……回り道になるけどな」 クスッ

一夏「…………」

箒(……立派だ)

綾音(さすがです、悠先輩)///

一夏(俺なんてされるがまま ここに来て、なんとなく通っているのに……)

362: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:20:05 ID:x6SncPAc

箒「?」

箒「鳴上、その荷物は?」

鳴上「ああ、これは……」

綾音「私の荷物です。 悠先輩が持ってくれるって言うので、甘えました」///

一夏「何かのケースだな」

綾音「楽器です。 トロンボーン奏者なんですよ、私」 テヘ

箒(…!)

一夏「へえ。 そりゃ聞いてみたいな」

箒「そうだな。 音楽室にトランペットもあるだろうし」

箒「聞かせてくれないか? 鳴上と二人で」 ニコ

綾音「ええっ!?」

鳴上「!?」

363: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:20:35 ID:x6SncPAc

IS学園・音楽室


綾音(悠先輩……私の事、話したんですか?) ヒソヒソ

鳴上(……色々あって) ヒソヒソ

綾音(も、もう……)/// ヒソヒソ

一夏「ほら、悠、トランペット」

一夏「それにしても……お前って多才だな」

鳴上「……はっきり言って、本当に久しぶりなんだ」

一夏「いいじゃないか。 聞かせてくれよ」 クスッ

綾音「えと……悠先輩、あの時の曲ならできますか?」

鳴上「ああ。 と言うか、多分それしか出来ない……」

綾音「ふふ、わかりました」 クスッ

364: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:21:10 ID:x6SncPAc



     ~♪ ~♪ ~♪

     ……その曲は、私の知らない曲だった。


     後で綾音に聞いたのだが

     とある学校での少年の物語の曲なのだそうだ。


     無慈悲な言葉の羅列や

     世間の常識、そして、目に翻弄され

     少年の日常は狂ってしまう……




365: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:21:44 ID:x6SncPAc



     それはまるで濃い霧の様に

     光を奪い、少年の心を荒廃させ

     人を、信じる事を、出来なくさせる


     でもある日。 悩み続けた彼に

     友人から手紙が届く

     少年はやっと気づく




366: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:22:23 ID:x6SncPAc



     『一人ではない』事に。



     みんなと過ごした日々

     幼い頃に交わした約束

     大切な言葉……




367: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:23:07 ID:x6SncPAc



     いつの間にか忘れていたけど

     それは心の奥に

     いつもあった事を思い出す


     目には見えないけど

     人同士のつながり

     『絆』を……

     ~♪ ~♪ ~♪




368: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:23:55 ID:x6SncPAc

一夏「…………」

箒「…………」

鳴上「…………」

綾音「……ど、どうでしたか?」

一夏「なんだよ……上手いじゃないか!」 パチパチパチ!

箒「ああ……とても」

箒「幸せな気持ちになれた」 ニコ

綾音「!!」

鳴上「よかったな、綾音」 ニコ

綾音「……も、もう、ずるいです、みなさん…」/// グスッ…

一夏(……あれ、なんで泣くの? あの娘?)

369: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:24:34 ID:x6SncPAc


―――――――――――




屋上


一夏「そうか……そんな理由があったのか」

箒「ああ」

箒「私が一夏に告白できたのも……彼女のおかげかもしれない」

一夏「違うよ」

箒「えっ?」

一夏「それは、きっかけに過ぎない」

一夏「あの告白は……箒の努力のたまものさ」

箒「一夏……」

370: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:25:06 ID:x6SncPAc

一夏「そうそう、俺も悠の秘密を話そうか?」

箒「? なんだ?」

一夏「実は……悠って、六股掛けてたんだって」

箒「……は?」

一夏「だから、悠は六股を…」

箒「バカも休み休み言え。 鳴上がそんな事をするはずが無い」

一夏「……俺もそう思った。 けどな」

一夏「なんだか放っておけない……守ってあげたい」

一夏「支えてあげたい……望みを叶えてあげたい」

一夏「……そんな気持ちに すべて答えている内に」

一夏「六股かけていたそうだ」

箒「!」

371: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:25:58 ID:x6SncPAc

箒「なるほど……」

箒「そういう事だったのか」

一夏「今のうちなら、みんな傷つくけど『すり傷』ですむ」

一夏「悠は、自分みたいに全身複雑骨折する事は無い、って」

一夏「俺の背中を押してくれた」

箒「……冗談に聞こえないな」

一夏「ああ。 俺も思った」

一夏「でも、だからこそ言えるんだろう」

箒「…………」

372: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:26:31 ID:x6SncPAc

箒「……あの娘」

箒「綾音は、不安だろうな」

一夏「…………」

箒「一夏以外は、みんな女という環境に自分の彼氏が居る」

箒「それなのに自分は、鳴上のそばに居られないのだから……」

一夏「箒……」

     ギュッ…

箒「!? い、一夏!?」///

一夏「い、嫌……だったか?」///

箒「い、いや、そ、そのっ……心の準備が」///

箒「いきなり後ろから抱きしめるなんて……」///

一夏「その……箒も不安なのかな?と思って……」///

箒「!」///

373: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:27:01 ID:x6SncPAc

箒「…………」///

箒「そ、その、一夏……嫌がってるわけじゃない」///

箒「……でも、放してくれないか?」///

一夏「お、おう」///

     スッ…

箒「…………」///

一夏「…………」///

374: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:27:36 ID:x6SncPAc

     ギュッ…

一夏「!」

一夏「ほ、箒……」///

箒「こ、こういう事は、向き合って行うものだろう?」///

一夏「箒……」///

一夏「そうだな」/// クスッ

     ギュッ…

箒「んっ……ありがとう、一夏」///



箒「私は幸せだ」///



     おしまい

375: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:28:40 ID:x6SncPAc





     ――ラウラエンド――






376: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:31:18 ID:x6SncPAc



一夏「ラウラが、一番好きだ」///



ラウラ「!!」


鈴「……っ」 ダッ

箒「! ……鈴」

セシリア「……鈴さん」

シャル「……行こう、みんな」


一夏(…やっぱり、胸が痛むな)

ラウラ(…………)

377: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:32:00 ID:x6SncPAc

ラウラ「いいのか? 一夏。 私なんかで……」

ラウラ「正直……私が選ばれるなど、無いと思ってた」

一夏「ラウラの告白が効いた」 クスッ

ラウラ「!?」///

一夏「そりゃ確かに、あんまり気の効いた台詞ってわけじゃ無かったけど……」

一夏「初めてラウラの姿が見えた気がした」

ラウラ「私の……姿?」

一夏「ラウラは、見た目以上に幼いんだなって……」

ラウラ「!」

378: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:32:32 ID:x6SncPAc

ラウラ「……それは、保護者的な目線だ」

ラウラ「私は……そんな風に見てもらいたくない!」

一夏「悪い。 言葉が足りなかったな」

ラウラ「?」

一夏「表現の仕方が幼かった、だ」

ラウラ「!」

一夏「ラウラは、育てられた環境が俺達とかなり違う」

一夏「そんな中で一生懸命考えてくれた あの言葉は」

一夏「本当に嬉しかった……」

ラウラ「一夏……」

379: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:33:12 ID:x6SncPAc

一夏「だから、俺もそれに答えたいと思う」

一夏「ラウラ……」

ラウラ「う、うむ……」///

一夏「俺と……」

一夏「男女の関係で、恋愛の対象として」

一夏「付き合ってくれるか?」 クスッ

ラウラ「!!」///

380: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:33:54 ID:x6SncPAc

ラウラ「…………」///

ラウラ「ずるいぞ、一夏」///

ラウラ「私の告白をまるまる盗用しているではないか……」///

一夏「すまん……返事は?」 ニコ

ラウラ「そんなもの、決まっている」 クスッ



ラウラ「異論は無い!」/// ニコッ




381: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:34:32 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数週間後

IS学園校門付近


??「オヨヨ~!」

??「これがセンセイの居る、IS学園クマね」

??「八十稲羽とは全然違うクマ」

??「…………」

??「ぬふふ……センセイ」

??「今行くクマ~!!」

382: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:35:12 ID:x6SncPAc

ラウラ「…………」 テク テク

ラウラ「……?」 ピト…


守衛「だーかーらー! 身分証の提示も無しで入れられないって!」

??「クマはクマクマ! それ以外の何者でもないクマ!」

守衛「わからん奴だな! 人を呼ぶぞ!」

クマ「クマは それでもかまわないクマよ?」

クマ「IS学園は、女の子いっぱいクマ! だから、ぜひそうして欲しいクマ!」

守衛(……話が噛み合わん)


ラウラ(なんだ? あの金髪の男は?)

383: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:35:55 ID:x6SncPAc

クマ「あ、そうそう! クマはセンセイの友達クマ!」

守衛「先生? 教師に知り合いが居るのか?」

クマ「センセイはセンセイ、クマ! 鳴上 悠って名前クマ!」


ラウラ(!?)


守衛「ふむ。 ま、そんなに言うなら ちょっと調べて……」

ラウラ「おい」

守衛・クマ「?」

ラウラ「お前……クマ、と言ったか?」

ラウラ「クマの言う鳴上とは、生徒の事ではないのか?」

クマ「おおう! ぷりち~が~る! そうクマ! ここの寮にいるクマ!」

守衛「…………」

384: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:36:38 ID:x6SncPAc

―――――――――――

鳴上「………クマ」

クマ「センセ~イ! 会いたかったクマ~!」

守衛「君の友人なのは、間違い無いと?」

鳴上「はい……」

守衛「……それでは、身分証の提示が無いので」

守衛「この……クマ?君の住所と名前を」

鳴上「はい」

鳴上(クマの住所は……陽介の所でいいか) カリカリ…

鳴上(!? ……クマの氏名って!?)

鳴上(…………)

鳴上(…………) カリカリ…

385: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:37:11 ID:x6SncPAc

鳴上「……どうぞ」

守衛「ふむ……八十稲羽市? ずいぶん遠くから来たもの……」

     氏名  熊田 熊男

守衛「………………………………」

鳴上「………………………………」

守衛「……君はふざけて」

鳴上「待ってください! 守衛さん!」

鳴上「これには……少し事情があるのです!」

鳴上「まず、クマの両親が別れた事が最初でした……」

386: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:38:02 ID:x6SncPAc

     20分後…

守衛「うう……そうだったのか」

守衛「再婚相手の苗字が熊田で……」 ボロボロ…

鳴上「そうです……彼は、何も悪くないのに」

鳴上「あんな氏名になってしまい」

鳴上「あの様な人格に……!」

守衛「わかった、わかったよ。 私だって突然そんな名前になったら」

守衛「やりきれない気持ちになる」

守衛「さあ、腕章だ。 いつまでもクマ君の友達でいてくれよ?」

鳴上「もちろんです」

鳴上(……よし、何とかごまかせた)

387: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:38:41 ID:x6SncPAc

鳴上「待たせたな、ク……」

鳴上「?」

ラウラ「…………」

鳴上「……ボーデヴィッヒ、クマは?」

ラウラ「トイレに行きたい、と言うので場所を教えた」

鳴上「どれくらい前だ?」

ラウラ「そろそろ10分になる」

鳴上「…………」

ラウラ(!!)

ラウラ(……初めて見た)

ラウラ(鳴上が頭を抱えている様を……!)

388: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:39:11 ID:x6SncPAc

食堂


クマ「ここは凄いクマ!」

クマ「右を向いても左を向いても女の子祭りクマ~♪」

クマ「クンクン……それにいい匂いクマ~」

     ザワ… ザワ…

モブ子「……誰? あの男子?」

モブ美「もしかして……第三の男性IS適正者、とか!?」

モブ枝「まさか……」

389: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:39:45 ID:x6SncPAc

クマ「ねえねえ、君たち♪」

モブ子「うえっ!?」

モブ美(話しかけて来た!?)

モブ枝「な、何かな?」

クマ「君たち、可愛いクマねぇ~」

モブ子「は、はあ……」

クマ「クマの逆ナン魂が、揺さぶられるクマ~」

モブ美(逆ナン?)

クマ「でもその前にどうやってご飯を注文するのか、教えて欲しいクマ!」

モブ枝「えっと……?」

390: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:40:33 ID:x6SncPAc

クマ「むっほー! おいしいクマ~!」 バクバクバク…

モブ子「ふわぁ……よく食べるわね」

モブ美「ま、見てて気持ちいいけど」

モブ枝「私は逆。 食欲なくすわ……」

モブ子「それで? クマくんは何しにIS学園に来たの?」

クマ「もっちろん、逆ナンクマ!」

モブ美(意味わかって言ってるのかな……)

クマ「あと、センセイに会いに来たクマ!」

モブ枝「へー。 先生って?」

クマ「センセイはセンセイクマ! 鳴上 悠って人クマ!」

モブ三人娘「!!」

391: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:41:09 ID:x6SncPAc

     ツカ ツカ ツカ ツカ

鳴上「…………クマ」

クマ「オヨヨ! センセイ!」

クマ「見て見て! クマの逆ナンの成果!」

モブ子「え!?」

モブ美「あたし達、逆ナンされてたの!?」

モブ枝「えっと……クマくん?」

ラウラ「…………」

鳴上「……とにかく、クマ、これを着けておけ」

モブ子「あ、外来の腕章」

モブ美「私、着けてあげよっか?」

クマ「オヨヨ~、モブ美さんは優しいクマ~」

392: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:41:50 ID:x6SncPAc

モブ美「じゃあね! クマくん!」

モブ美「逆ナン、楽しかったよ!」

モブ子「モブ美、心広すぎ~」

モブ美「いいじゃん! 悪い人じゃないと思うし」

モブ枝「いい意味でも悪い意味でも、欲望に正直なのね…たぶん…」

クマ「みんな、またね~クマ!」

鳴上「……………………」

ラウラ(……また頭を抱えた)

393: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:42:24 ID:x6SncPAc

鳴上「……クマ。 どうやってここまで来た?」

クマ「もちろん電車クマ! クマ、初めて新幹線に乗ったクマ!」

鳴上「まさか……お前がお金を貯めてたのって」

クマ「そうクマ! センセイの居るIS学園に来たかったからクマ!」

クマ「陽介にIS学園が女の子パラダイスって聞いて」

クマ「クマの逆ナン魂が、ビンビンにいきり立ったクマ!」

鳴上「…………」

鳴上「……あのな、クマ」

鳴上「気持ちは嬉しいんだが、俺にも都合と言うものがあって……」

クマ「それで、センセイのお部屋はどこクマ?」

鳴上「…………」

ラウラ(…………)

394: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:43:03 ID:x6SncPAc

IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


クマ「オヨヨー! ここがセンセイの部屋クマか~!」

ラウラ(一夏は留守のようだな……)

鳴上「クマ。 あまりはしゃぐな。 ここは俺だけの部屋じゃない」

鳴上「そっちは同室の男のベッドだ」

クマ「およ? そうクマか……ん?」 クンクン…

クマ「でも何故か、ラウッちのニオイがするクマ……?」

鳴上・ラウラ「そっとしておけ!!」///

395: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:43:39 ID:x6SncPAc

鳴上「とにかく、俺にも予定がある……」

鳴上「すまないが、今日はこれで帰ってくれ」

クマ「わかったクマ。 クマは、ここで大人しくしているクマ!」

鳴上「そうか、わかってく」

鳴上「……『ここで』?」

クマ「そうクマよ? しばらくここに住むクマ!」

鳴上「」

ラウラ「」

396: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:44:09 ID:x6SncPAc

鳴上「……!」 カチャ…(携帯オープン)

     新着メール 件数 11

     陽介

     陽介

     陽介

     …

鳴上「…………」

鳴上「クマ」

鳴上「お前……陽介に黙って来たのか?」

クマ「そうクマ!」

鳴上「…………はうっ」 クラッ…

ラウラ「な、鳴上!? し、しっかりしろ!」

397: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:52:21 ID:x6SncPAc


―――――――――――


鳴上「……すまない、ボ-デヴィッヒ」

鳴上「しばらくクマを見ていてくれ……」

鳴上「ここは携帯が通じにくい」

鳴上「ちょっと部屋からでる……」

ラウラ「わかった」

     パタン…

クマ「~♪~♪」

ラウラ「おい、クマ」

クマ「なにクマ?」

398: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:52:58 ID:x6SncPAc

ラウラ「お前は……自分を探していたのでは無いのか?」

クマ「え?」

クマ「何で知ってるクマ?」

ラウラ「やはりか」

クマ「センセイから聞いたクマか?」

ラウラ「お前の出生の秘密は、秘密のままだ」

ラウラ「だが……お前は、鳴上とその仲間に秘密を明かした上で」

ラウラ「そばにいてもいいか、尋ねたと聞いている」

クマ「みんな、いいって言ってくれたクマ!」 ニコ

399: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:53:34 ID:x6SncPAc

ラウラ「それも知っている」

ラウラ「ならばなぜ、鳴上を困らせる?」

クマ「えっ?」

ラウラ「見て分からなかったのか?」

クマ「そ、そんな事ないクマ!」

クマ「センセイは、喜んでくれているクマ!」

ラウラ「では聞くが……お前がここに来てから鳴上は、笑っていたか?」

クマ「…………」

クマ「……無いクマ」

400: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:54:09 ID:x6SncPAc

ラウラ「非常に厄介だが……人同士の付き合いには」

ラウラ「目に見えないルールが存在する」

クマ「…………」

ラウラ「お前は、まずそれを学ばなければならない」

ラウラ「そうしなければ……」

クマ「しなければ?」

ラウラ「おそらく、だれもお前を必要としなくなる」

クマ「オヨ、オヨヨー!?」

クマ「そ、そんなの嫌クマ~!!」

ラウラ「落ち着くんだ、クマ」

クマ「……クマ?」

401: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:54:54 ID:x6SncPAc

ラウラ「人はな、誰でも間違いをしてしまう」

ラウラ「だが……そこから目を背けては駄目だ」

ラウラ「間違いから自分を見つめなおし、学習する事が大切なんだと思う」

クマ「クマは……どうしたらいいクマ?」

ラウラ「考えるんだ」

ラウラ「自分の行動で、どうして鳴上は笑ってくれなかったのか?」

ラウラ「きっとお前は鳴上が喜んでくれると思っていたが……そうではなかった」

ラウラ「それは何故か?」

ラウラ「考えてみるんだ」

クマ「…………」

402: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:55:53 ID:x6SncPAc

     ガチャ

鳴上「ふう……」

ラウラ「鳴上」

鳴上「待たせた、ボーデヴィッヒ」

クマ「…………」

鳴上「?」

鳴上「クマ?」

クマ「……センセイ」

鳴上(何だか……いきなり大人しくなった?)

鳴上「どうした?」

クマ「クマは、クマは……センセイを困らせたクマ?」

鳴上「!?」

403: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:56:23 ID:x6SncPAc

ラウラ「…………」

クマ「ラウッちに言われて、クマ、考えてみたクマ」

クマ「でもクマは……頭悪いからよく分からなくて」

クマ「それでセンセイに聞いてみたクマ……」

鳴上「…………」

鳴上「……そうだな、確かに困った」

クマ「!!」

鳴上「いきなり連絡も無しに来た上に、学園内を勝手に歩き回ったあげく」

鳴上「唐突に、ここへ住みたいとまで言う……」

クマ「オヨ、オヨヨ……」

404: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:56:58 ID:x6SncPAc

鳴上「それに陽介もお前が突然いなくなって凄く心配している」

クマ「へ?」

鳴上「陽介だけじゃない」

鳴上「里中も天城も……菜々子だって心配している」

クマ「!!」

クマ「ナナちゃんが!?」

鳴上「そうだ」

クマ「そ、そんな……クマは、クマは、そんなつもりは無かったクマ!」

ラウラ「…………」

鳴上「…………」

405: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:57:48 ID:x6SncPAc

クマ「オ、オヨヨ~!!」

クマ「センセイ、ごめんなさいクマー!!」 ぶわわっ…

鳴上「…………」

鳴上「クマ……わかればいい」

クマ「え?」

鳴上「俺は、確かに困ったけど……」

鳴上「お前が会いに来てくれたのは嬉しく思ってる」 ニコ

クマ「!!」

クマ「セ、センセイ~!!」

406: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:58:19 ID:x6SncPAc

鳴上「でも、次からは」

鳴上「ちゃんと事前に連絡を入れる事」

鳴上「陽介に黙って出かけない事」

鳴上「これを守るんだ。 わかったな?」

クマ「わかったクマ!!」

ラウラ「…………」 クスッ

407: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:59:15 ID:x6SncPAc

IS学園校門付近


ラウラ「いいのか? 鳴上」

ラウラ「今日は実技試験があるのだろう?」

鳴上「かまわない」

鳴上「クマを一人で帰らせる方が心配だしな……」 クスッ

鳴上「あいつは大事な友達なんだ」

ラウラ「そうか」 クスッ

鳴上「それに事情を話したら」

鳴上「担任の先生が別の日に試験をしてくれると言ってくれたし」

ラウラ「なら、一安心だな」

鳴上「ああ」

408: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 20:59:55 ID:x6SncPAc

鳴上「迷惑かけた、ボーデヴィッヒ」

ラウラ「気にするな。 たいした事じゃない」 クスッ

鳴上「メールを入れておいたけど、一夏にもよろしく言っておいてくれ」

鳴上「明日の午前中には戻る」

ラウラ「わかった」

鳴上「じゃ……」

ラウラ「ああ……」

ラウラ「…………」


―――――――――――



409: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:00:36 ID:x6SncPAc



IS学園寮・一夏と鳴上の部屋


一夏「……そいつはまた、強烈なキャラだな」

ラウラ「しかも本人に悪意が無いだけに始末が悪い……」

一夏「ははは。 そりゃ確かに」

ラウラ「…………」

一夏「?」

一夏「どうした? ラウラ?」

ラウラ「いや、なんと言うか……身につまされた」

一夏「…………」

ラウラ「つい、クマに説教したが……私だって同じ様なものだった」

ラウラ「一夏を『嫁にする!』とか言ったりしてたし」///

ラウラ「人の事をとやかく言えない……」

410: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:01:07 ID:x6SncPAc

一夏「それは考えすぎだ」

ラウラ「そうだろうか……」

一夏「俺だって偉そうな事は言えないけど」

一夏「ラウラのした事は、間違っていないと思う」 クスッ

ラウラ「一夏……ありがとう」 ニコ

一夏「ふふ。 やっと笑ったな」

一夏「ところで……」

     ギュ…

ラウラ「い、一夏……!?」///

一夏「今日は、悠がいないけど……どうする?」

ラウラ「う、うむ、一緒に居たい……」///

411: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:01:44 ID:x6SncPAc

一夏「!」

一夏「そ、そうか」///

     ドサッ… ギシ ギシ

ラウラ「!」///

ラウラ「い、一夏っ」///

ラウラ「腹に硬くなったものを押し付けるなっ」///

一夏「ごめん、無理」///

ラウラ「ま、まだ、時間が早い! 落ち着け!」///

一夏「だめ」///

一夏「せっかく、悠が気を利かせてくれたしな」///

一夏「朝まで……ゆっくりと」///

412: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:02:35 ID:x6SncPAc

ラウラ「あ、朝まで!? む、無理っんぐっ!?」///

ラウラ「んんっ…! う…んっ! んんんっ…」///

ラウラ「…………ぷはっ…!」///

一夏「……まだ、嫌か?」///

ラウラ「…………」///

ラウラ「……私が壊れたら」///

ラウラ「お前のせいだからな……?」///

一夏「ふふ。 じゃあ、明かりを消すぞ?」///

ラウラ「……ああ」///

     フッ…



     おしまい

413: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:03:30 ID:x6SncPAc





     ――セシリアエンド――






414: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:04:11 ID:x6SncPAc



一夏「セシリアが、一番好きだ」///



セシリア「!!」


鈴「…………っ」 ダッ

箒「鈴………!」

シャル「……鈴」

ラウラ「行こう……みんな」


一夏(……やっぱり、胸が痛むな)

セシリア(……みなさん)

415: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:04:43 ID:x6SncPAc

セシリア「…………」

セシリア「あの、一夏さん」

一夏「ん?」

セシリア「わたくしは ここ最近……皆さんの中で」

セシリア「一番一夏さんと接してきた時間が長かったと思いますが……」

セシリア「それが影響しておりませんか?」

一夏「…………」

一夏「まったく無い、と言えば……嘘になる」

セシリア「…………」

416: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:05:16 ID:x6SncPAc

一夏「でも」

一夏「出来うる限り公平に考えて……俺は答えを出した」

一夏「セシリアがタッグマッチのパートナーとして、俺を選んでくれた様に」

セシリア「…………」

一夏「告白も、告白の時に悠に騙されて慌てて駆けつけてくれたのも」

一夏「トーナメントで泣いてくれたのも全部」

一夏「俺の為にしてくれた事だ」

セシリア「…………」

417: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:06:28 ID:x6SncPAc

一夏「もちろん、みんなもそうだったと思う」

一夏「だけど……上手く言えないけど」

一夏「セシリアが一番いいって思った……」///

セシリア「一夏さん……」///

一夏「…………」///

一夏「セシリア」///

セシリア「は、はいっ」///

一夏「俺と……付き合ってもらえますか?」///

セシリア「はい! 喜んで!」///

418: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:07:29 ID:x6SncPAc


―――――――――――


数週間後・夜

都心・高層ビル・パーティー会場


     ガヤ ガヤ…

一夏(うは、この場違い感……)

セシリア「一夏さん、そんなに強張らないでくださいな」 クスッ

一夏「と、言われても……緊張する」

セシリア「単なる立食パーティーと思えば よろしいのですわ」

一夏「お、おう」

一夏(ま……セシリアのドレス姿を拝めただけで満足かな)///

セシリア「? 一夏さん?」

一夏「はは。 なんでもない」///

419: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:08:03 ID:x6SncPAc

令嬢「あの……」

一夏「はい?」

令嬢「よろしければ……踊っていただけますか?」

一夏「!」

一夏(き、来た!)


 ――回想――


セシリア「いいですか? 一夏さん」

セシリア「基本的に社交場でダンスに誘われたら」

セシリア「お受けするのが礼儀です」

420: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:09:36 ID:x6SncPAc

セシリア「それも」

セシリア「女性側からの誘いを断るのは」

セシリア「紳士としてもっとも非礼とされています」

セシリア「お気を付けてくださいね?」

―――――――――――

一夏(セ、セシリア) チラ見

セシリア(一夏さん、礼儀ですわよ?) ニコ

一夏「…………」

一夏「よ、喜んで、お嬢さん」

令嬢「ふふっ、ありがとうございます」 ニコ

421: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:10:21 ID:x6SncPAc

セシリア「頑張ってくださいね、一夏さん」

セシリア「…………」

??「これは麗しい」

セシリア「はい?」

??「失礼」

??「よろしければ、私と踊っていただけますか?」

??「美しいご令嬢様」

セシリア「あら。 お上手ですわね」 ニコ

セシリア「謹んで お受けいたしますわ」

422: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:11:01 ID:x6SncPAc

     ~♪ ~♪ ~♪

??「…………」

セシリア「…………」

??「ぶしつけながら……」

セシリア「はい?」

??「オルコット家のご息女、と、お見受けしますが」

??「何でもIS学園にお通いとか?」

セシリア「あら……どこかでお会い いたしました?」

??「いえ、風の噂で知っている程度です」 クスッ

セシリア「ふふ、その通りですわ」

セシリア「お転婆で、がっかりなさったでしょう?」 クスッ

??「はは、まさか」 クスッ

423: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:11:45 ID:x6SncPAc

セシリア「お名前をうかがっても よろしいですか?」

??「一条。 一条 康、と申します」

セシリア(一条……?)

セシリア(確か……日本の企業グループ主賓者の姻戚に)

セシリア(その様な名前が ありましたわね)

一条「ふふ、すみません」

一条「今日の主賓に お情けで参加させていただいたのです」 クスッ

一条「がっかりなされたでしょう?」

セシリア「あら。 レディの心の内を見透かすのがお得意で?」

一条「いいえ。 先ほどのお返しです」 ニコ

424: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:12:51 ID:x6SncPAc

     ~♪ ~♪ ~♪

     キャ…! ス、スミマセンッ!

セシリア(一夏さんかしら……)

一条(鳴上かな……)

     ~♪ ~♪ ~♪…

一条「お飲み物でもいかがです?」

セシリア「ええ、いただきましょう」

     スタ スタ スタ…

鳴上「お、おい、一条、助けてくれっ」

一条「なんだ、だらしないぞ?」 クスッ

鳴上「ダンスの事は聞いてない」

鳴上「このままだと誰かの足を踏み折ってしまう……」

セシリア「!?」

425: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:13:24 ID:x6SncPAc

セシリア「鳴上さん!?」

鳴上「オルコット!?」

一条「ん? 二人は知り合いなのか?」

鳴上「あ、ああ。 実は……」

―――――――――――

一条「なるほど。 IS学園でか」

一条「噂に聞いてた第二の男性IS適正者が、お前だったとはな」 クスッ

鳴上「すまん……黙っているつもりじゃなかったんだが」

一条「いいって、いいって」 ニコ

令嬢2「あの……」

鳴上「!!」 ビクッ

426: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:14:13 ID:x6SncPAc

令嬢2「踊っていただけますか?」 ニコ

鳴上「い、一条……!」

一条「なにしてる?」

一条「レディのお誘いを断るのは最大の非礼だぞ?」 ニコ

鳴上「」

     ヨ、ヨロシク… ハイ…

     ~♪ ~♪ ~♪

セシリア「く……ふふふ」

一条「?」

一条「何か可笑しいですか?」

セシリア「すみません。 鳴上さんは学園でいつもすました表情でいて」

セシリア「あんなに狼狽したお顔は、初めて見ましたので……つい」

一条「ああ……わかります、それ」

     ハハハ…

427: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:14:58 ID:x6SncPAc

一条「……ところで、唐突な質問なのですが」

一条「誰かと お付き合いしておられますか?」

セシリア「ええ」

一条「ふふ、やはり」

セシリア「どうしてお分かりに?」

一条「雰囲気で……かな?」

セシリア「あら。 ではなぜ、ダンスに?」

一条「それはあなたと踊ってみたかったから……では、いけませんか?」

セシリア「できれば お聞きしたいですわ」

一条「そうですか……」

一条「では、場所を変えましょう」

428: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:15:33 ID:x6SncPAc

ラウンジ付近


一条「飾り気なく言うのならば……度胸試し、です」

セシリア「度胸試し?」

一条「ええ」

一条「実は……この前 お見合いをさせられましてね」

一条「もちろん相手の方に非は無いのですが……」

一条「家柄の都合だけで妻を決めてしまうのが納得いかなくて」

一条「そこで……こうやって自分と家族の得心のいく相手を探しているんです」

セシリア「…………」

429: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:17:25 ID:x6SncPAc

一条「もちろん、わがままかもしれません」

一条「でも……あなたを見て、こういう世界にも想う人と付き合える人がいる」

一条「俺にも もしかしたら、できるかもしれない」

一条「そんな気持ちを あなたに少し、ぶつけてみました」 クス

セシリア「…………」

セシリア「一条さん」

一条「はい?」

セシリア「それは……つまらないですわね」

一条「つまらない?」

430: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:18:21 ID:x6SncPAc

セシリア「あなたのお気持ちは分からなく無いですが……」

セシリア「少なくともわたくしは、周りの目を気にして相手を選んでおりません」

一条「…………」

セシリア「このお方だから……この人だから」

セシリア「わたくしは想いを告げたのです」

セシリア「たとえ実らなくとも、後悔したく無い……」

一条「…………」

セシリア「ふふ……もちろん成就したから」

セシリア「言える事なのかもしれませんが」

一条「…………」

一条「……いえ」

一条「そんな事はありません」 クスッ…

431: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:18:55 ID:x6SncPAc

一条「ありがとう、とても参考になりました」

一条「やはり……あなたは美しい」 ニコ

セシリア「どういたしまして」 ニコ

一条「あなたに会えて、お話できて良かった」

セシリア「わたくしも一条さんとお話できて、楽しかったですわ」

一条「ははは、身に余る光栄です」

一条「では、私はこれで……」

セシリア「はい」

432: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:19:34 ID:x6SncPAc

一夏「おーい、セシリ……」

     ドン…

一条「っと、失礼」

一夏「あっ、す、すみません」

一条「では……」

一夏「あ、はい」

一夏「ふー……」

433: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:20:16 ID:x6SncPAc

セシリア「あら、一夏さん」

一夏「こんな所にいたのか。 探したぞ」

セシリア「ふふっ」

セシリ「少々仮面の紳士と お話をしておりました」

一夏「仮面の紳士?」

セシリア「ええ」

セシリア「自分を覆い隠して、自分を偽っている方でした」

一夏「……?」

セシリア「少しだけ本音をさらしてくれましたけどね」 クスッ

一夏(……よく分からないな)

434: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:20:49 ID:x6SncPAc

パーティー会場前のベンチ


一条「鳴上」

鳴上「一条……」

一条「そろそろ帰るか?」

鳴上「ああ。 ぜひ、そうしたい」

一条「そっか」

一条「うんじゃ、帰るか!」 ニッ

鳴上「……?」

鳴上「一条、何かいい事でもあったか?」

435: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:21:38 ID:x6SncPAc

一条「おう!」

一条「すっげぇ美人に盛大に振られた!」 ハハッ!

鳴上「?」

鳴上「いい事……なのか?」

一条「ああ」

一条「俺はまだまだだって事が、よく分かったからな」

鳴上「…………」

一条「さ、帰りにラーメンでも食って帰ろうぜ!」

鳴上「乗った」 クスッ

436: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:22:15 ID:x6SncPAc

ラウンジ付近


一夏「ふう。 オレンジジュースが美味い」

一夏「それにしても疲れた~……」

セシリア「一夏さん。 今日は、お付き合いさせてすみません」

一夏「いや、楽しかったぜ?」

一夏「俺もこういう経験は なかなか出来ないしな」 ニコ

一夏「それにしても……ダンスを教えてもらって助かった」

一夏「誰だか知らないが、女の子の足、踏みまくっている奴がいてさ」

一夏「しょっちゅう『痛い!』とか、『キャア!』とか、聞こえてくるんだよ」

セシリア「まあ」 クスッ

セシリア「きっと……悪いお友達に誘われてここへ来られたのでしょう」 ニコ

一夏「……?」

437: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/04/23(土) 21:23:02 ID:x6SncPAc

一夏「まあいっか」

一夏「さて、セシリア」

セシリア「はい」

一夏「俺と……踊ってくれるかな?」

セシリア「ふふ。 ええ、よろしいですわよ?」



セシリア「大好きな、一夏さん」 ニコ




     おしまい