1 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 15:30:48 ID:bRDvzu7I

トントントントン

パラパラ

グツグツ

リコ「……うん、いい感じだ」

リコ「そろそろ帰ってくるかな?」

コンコン

リコ「おっ、丁度良いね」 


 

進撃の巨人(17) (講談社コミックス)
諫山 創
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3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 15:35:32 ID:kam1O/io

ガチャッ

イアン「ただいま、リコ」

リコ「お帰り。今日もお疲れさま」

イアン「ありがとう」

リコ「座って。今盛り付けるところだから」 


4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 15:38:59 ID:bE8WX5ec

カチャカチャ

リコ「今期の訓練兵の様子はどう?」

イアン「素質のあるやつが多くて感心するよ。まぁ、たいていは個性が強いんだがな」

リコ「へぇー、例えば?」

イアン「異常に食欲旺盛な奴とか、いつも無口なのに対人格闘の時間は饒舌な奴とか、頭悪いのに勘だけはいい奴とか」

リコ「楽しそうだね、イアン」

イアン「ん? 俺がか?」

リコ「うん。訓練兵の話し始めてから、ずっと顔が緩んでるよ」 


6 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 15:44:33 ID:L2UlZzyc

イアン「ははっ。でも実際楽しいからしょうがないな」

イアン「俺はもう戦地には立てない。だから代わりに、俺の意思を継いでくれる若い戦士たちを育てるのは、本当にやりがいのある仕事だよ」

リコ「……もう三年になるんだな」

イアン「あぁ」

リコ「肩の調子はどう?」

イアン「大分良い。ただ、やはりもうブレードを握る力は出ないな」 

7 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 15:48:39 ID:7f2lrgo.

リコ「そっか」

イアン「リコの方こそ、最近はどうだ?」

リコ「もう杖もサポーターも必要ないけど、まだ転びそうになることはたまにある」

イアン「おいおい、気をつけてくれよ」

リコ「わかってる。やっばり動かしにくいのは左足の方かな」 

11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 20:18:53 ID:M.zv6arA

イアン「あの奪還作戦からもう三年か……時間が経つのは早いな」

リコ「前線を退いてからしばらくは、お互い治療とリハビリで手一杯だったしね」

イアン「俺の職探しもな」

リコ「ピクシス司令に感謝しないとね」

イアン「お前の居る前で『リコの職場はお前の家でいいんじゃろ?』って言われたときは本当に焦ったが」

リコ「あわてふためくイアンを見るのは面白かったよ」 

12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 19:03:54 ID:vrx6h5JY

イアン「まぁそんな感じで、なんだかんだで結婚して」

リコ「しばらくはローゼの外の事情に疎かったよね」

イアン「まだ俺も仕事慣れてなくて、他の兵団の奴の話とか聞き出していられなかったからな」

リコ「たまに顔出してくるミタビからの情報が頼りだった」

イアン「あいつも出世したよな。あの若さでもう隊長とは」

リコ「働きが認められてよかったよ」 

13 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 19:08:24 ID:gH34bYJA

イアン「ミタビといえば、そろそろ来るころじゃないか?」

リコ「だろうね。丁度、私たちが夕食を食べ終える頃に――」

タッタッタッタッタッ

コンコンコン!

「お~い! イアン! リコ!」

イアン「来たな」

リコ「来たね」 

16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 19:38:56 ID:yTIsQlsU

ガチャッ

ミタビ「よぉ、元気そうだな」

リコ「おかげさまで」

イアン「久しぶりだな。ミタビ」

ミタビ「ん? おいイアン、お前ちょっと痩せたんじゃないか? ちゃんとリコの飯食ってるのか?」

イアン「当たり前だろ。多分筋力が戻ってきたんだ」 

17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 19:46:42 ID:gHGHf4KQ

リコ「夕飯どうせまだなんでしょ? 座って」

ミタビ「おっ、いいのか。悪いなぁ」

イアン「いつも食っていくくせに何言ってるんだ」

リコ「少し多めに作るのも、暖めなおすのにももう慣れたよ」

ミタビ「いいことじゃないか。なぁ?」

イアン「調子のいい奴だ」 

18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 19:54:35 ID:NcDptQAc

リコ「はい」コトッ

ミタビ「おおっ、うまそう」

イアン「うまそうじゃない。うまいんだ」

ミタビ「おーおー、ごちそうさま」

リコ「まだ食べてないでしょ」

ミタビ「いやー、もうなんかお腹いっぱいで」

リコ「なら片付けるよ」

ミタビ「いただきます」ガツガツ 


20 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:54:42 ID:sq1GTMiY

イアン「最近はどうだ? ミタビ」

ミタビ「ん? あぁ、ふぉえがは」

リコ「飲み込んでから話しなよ」

ミタビ「んぐ……それがな、やっとトロスト区の扉の補強作業がすべて完了したんだ」

イアン「おぉ、やっとか。おめでとう」

リコ「お疲れ様。いろいろ大変だったね」 

21 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:59:25 ID:sq1GTMiY

ミタビ「あぁ、全くだ。イェーガーは扉をふさいだはいいが、派手にやりすぎだ。ヒビだらけだったからな」

イアン「あのままの状態でまた百年単位でもつとは思えないな、確かに」

ミタビ「ヒビを埋めて、岩と穴の継ぎ目を丈夫にするのにも、あのデカさだからな。割ける人員にも限りがあるし」

リコ「それにしたって、壁教の連中が余計なこと言わなければ、もっと早く完了してただろうに……」ギリッ

イアン「リコ、イライラしない」

リコ「ごめん」 


23 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 19:08:48 ID:vt1kVMg6
イアン「エレンは今、どうしているんだろうな」

ミタビ「調査兵団か」

イアン「カラネス区からの遠回りってことは、今まで以上に大部隊の行路開拓には時間がかかるんだろう?」

ミタビ「おまけに妙な知性型巨人もいるらしいからな」

リコ「知性型巨人?」

ミタビ「あぁ。詳しいことは明かされていないが、未だ捕獲にまでは至っていないらしい」

ミタビ「調査兵団の精鋭班も、そいつとそいつが引き連れる巨人のせいで、被害を抑えるのに精一杯みたいでな。防戦一方だ」 

24 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 19:11:59 ID:vt1kVMg6

イアン「それでも、いずれは勝ってもらわねばならないな。我々人類のために」

リコ「もう私たちには、祈ることしか出来ないけどね」

ミタビ「人類勝利のために、か。こればっかりは流石に、俺にはどうしようもないな」

イアン「何言ってる。ミタビだって人類を勝利に導いているじゃないか」

ミタビ「トロスト区奪還作戦のことか?」

イアン「いや、それだけじゃないさ」 

25 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 19:27:05 ID:vt1kVMg6

イアン「俺はな、ミタビ。兵士だったころからずっと思っていたんだ」

イアン「調査兵団は壁外で巨人と戦う。勝てばそのまま人類の勝利に繋がる。それは言うなれば、目に見える形の勝利だ」

イアン「一方で駐屯兵団の職務は、他の兵団と比べたら決して派手さはない」

イアン「だが、『壁を守る』ということは、そのまま『人類を守る』ということだ。だとしたら駐屯兵団は、どこよりも人類の勝利に貢献しているはずだ」

イアン「人類が生き永らえることこそが、人類の勝利なのだからな」

イアン「駐屯兵団の働きは、目に見えない形の勝利に繋がっているんだ」 

26 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:23:17 ID:vt1kVMg6

リコ「そうだね。イアンの言う通りだ」

ミタビ「イアン……ありがとうな」

イアン「あぁ」

リコ「えっ、もうこんな時間なのか」

ミタビ「ん? おぉ、本当だ。俺はそろそろ戻るよ。明日も仕事だしな」

イアン「頑張れよ、ミタビ」

ミタビ「お前もな、イアン」 

27 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:25:58 ID:vt1kVMg6

ミタビ「今日はありがとうな。ご馳走さま、リコ」

リコ「お粗末さま。またおいでよ」

ミタビ「もちろんそのつもりだ。リコの飯はやっぱりうまいな。毎日食べられるイアンが羨ましいよ」

イアン「まぁな。リコには本当に感謝している」

リコ「いきなり二人がかりで褒めるのやめてくれないかな」

ミタビ「ははっ、悪かったな」 

28 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:30:09 ID:vt1kVMg6

ミタビ「じゃあな、イアン。元気でな」

イアン「またな、ミタビ」

ミタビ「リコ、体に気をつけろよ」

リコ「わかってる」

ミタビ「もうすぐだよな。連絡待ってるからな」

イアン「あぁ」

ガチャッ パタン… 

29 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:32:30 ID:vt1kVMg6

リコ「さて、食器片づけるか」カチャッ

リコ「っと」フラッ

イアン「リコ!」バッ!

リコ「ありがとう。大丈夫だよ」

イアン「あまり心配かけさせないでくれ。もうお前一人の体じゃないんだから」

リコ「わかってる」 

30 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:41:23 ID:vt1kVMg6

イアン「やっと家族が増えるんだな」

リコ「あぁ」

イアン「……」

リコ「楽しみで仕方ないって顔してるね」

イアン「当たり前だろ」

リコ「ふふっ」 

32 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:46:27 ID:vt1kVMg6

リコ「もうすぐイアンもお父さんか」

イアン「それを言うなら、リコだってお母さんだろ」

リコ「そうだね。早く会いたいな」

イアン「リコ」

リコ「何?」

イアン「本当にありがとう」 

33 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:53:56 ID:vt1kVMg6

リコ「私もうれしいよ。イアンの子どもが産めて」

リコ「男の子かな。女の子かな」

イアン「男の子だったら、兵士になるって言い出したら、鍛えてやろう」

リコ「女の子だったら、お嫁に行くなんて言い出したら、イアンどうする?」

イアン「……泣くだろうな」

リコ「きっとね」 


34 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/16(金) 20:58:50 ID:vt1kVMg6

イアン「なぁ、リコ」

リコ「うん?」

イアン「……」

ギュッ

イアン「愛してる」

リコ「私も」




終わり