―　教室　―

のび太「おはようございます、ティーチャー」

先生「野比、また遅刻か！」



キャーキャー！　キャーキャー！



女子A「のび太さんったら、また遅刻よ！」

女子B「これで十日連続だわ！　のび太君の辞書には学習や反省の文字がないのよ！」

女子C「ステキ～！」

先生「どうして……遅刻したんだね？」

のび太「簡潔に述べさせて頂きますと、寝坊……ですかね」ｸｲｯ



キャーッ！　



先生「なぜ寝坊するんだ！？」

のび太「僭越ながら、説明させて頂きます」

のび太「温かい布団でぐっすり寝る……こんな楽しいことが他にありますか？」ｸｲｯ





キャァァァァァッ！！！

先生「廊下に立っとれ！」

のび太「やれやれ……僕の指定席へ移動するとしますか」ｽﾀｽﾀ



キャーキャー！　キャーキャー！



しずか「のび太さんって放っておけないのよねえ。つい結婚したくなっちゃうわ」

出木杉「きっと野比君独特のフェロモンが、女性の持つ母性本能を刺激するんだろうね」



スネ夫「のび太の奴、相変わらずキャーキャーいわれやがって！」

ジャイアン「のび太のくせに生意気だ！」

先生「えー、この間のテストを返す」

先生「出木杉、また１００点だ」

出木杉「ありがとうございます」



キャー！　キャー！



先生「野比、また０点だ！」

のび太「やれやれ、またですか……。額縁に入れて飾らねばなりませんね」



キャーキャー！　キャーキャー！

先生「どうして君は０点ばかり取るんだ」

のび太「先生がくれるから……でしょうね」ｸｲｯ



キャーキャー！　キャーキャー！



女子A「０点なんて狙って取れるもんじゃないわよね！」

女子B「のび太君の頭の中ってどうなってるのかしら？」

女子C「きっとからっぽで、夢いっぱい詰め込めるのよ！」

―　校庭　―

のび太「一生懸命のんびりしましょう」ﾀｯﾀｯﾀ…



ジャイアン「おせーぞ、のび太！」

スネ夫「たかがグラウンド一周になんでこんなにかかるんだよ！　のろま！」

のび太「競走していましたから……」

ジャイアン「競走！？　誰とだよ！」

のび太「カタツムリさんと」

ジャイアン「ぐぐぐ……！」



ワーワー！　ワーワー！



男子A「すげえ、あのジャイアンがなにも言い返せねえ！」

男子B「さすがだよな～！　あの運動神経の悪さ！」

男子C「なにしろ野球やらせても打率一分だもんな！」

―　教室　―

女子A「ねえのび太さん、あやとりの技を見せて！」

のび太「構いませんよ」ｼｭﾊﾞﾊﾞﾊﾞｯ



　秘技　踊るチョウ（ダンシング・バタフライ）！！！



キャーキャー！　キャーキャー！



しずか「ステキ……」ﾎﾟｯ…

出木杉「もしあやとりがプロスポーツ競技なら、野比君は間違いなく世界チャンプだろうね」

スネ夫「こないだの連休、四丈半島の別荘に行ってきたんだ」

スネ夫「今の時期の海を眺めるってのも、なかなかいいもんだったよ」

男子A「いいなぁ～」

男子B「うちの親はどこも連れてってくれなかったよ」

のび太「やれやれ、その程度ですか？」ｸｲｯ

スネ夫「なんだと！？」

のび太「僕はあの連休で……ヨーロッパの別荘に遊びに行きました」

スネ夫「ウソつけ！」

のび太「人が一生懸命ついた嘘を……どうしてみんな見破るんですか？」

スネ夫「くっ……！」



キャーキャー！　キャーキャー！



女子A「のび太さんって、ホントウソが下手よねぇ～！」

女子B「エイプリルフールでも、いっつも彼だけ騙されてるものね！」

のび太「さて、嘘をついた罰として……ピーナッツを噛むとしますか」

のび太「目でね」





キャァァァァァッ！！！

給食――

のび太「今日の給食はスパゲティですか……」

のび太「鼻で食べるスパゲティの味は……また格別ですね」ｽﾞﾙｽﾞﾙ…



キャーキャー！　キャーキャー！



しずか「出木杉さん、あれできる？」

出木杉「勿論できないよ。彼こそ、“できすぎ”の名に相応しい人物といえるだろう」

昼休み――

のび太「しずちゃん、二人で一緒に作りませんか？」

しずか「なにを？」

のび太「赤ちゃん」

しずか「ぜひ作りましょ！」

のび太「やはり、やめておきましょう。ノビスケが産まれるには時代が早すぎますから」



キャーキャー！　キャーキャー！



ジャイアン「のび太の奴……いつもいつも人気を集めやがって……許せねえ！」

スネ夫「やっちゃってよ、ジャイアン！」

ジャイアン「おう！」

ジャイアン「おい、のび太」

のび太「なんですか？」

ジャイアン「お前、生意気なんだよ！　今日という今日はぶん殴ってやる！」

のび太「構いませんよ……喧嘩ならドラえもん抜きでやりましょう」

ジャイアン「いい度胸じゃねえか！」ﾌﾞﾝｯ



ボカボカボカッ！



のび太「やれやれ……このままでは僕が絶滅してしまいますね……」ﾎﾞﾛｯ…



男子A「さすがのび太！　三発しか殴られてないのにアザが六つもできてる！」

男子B「自分で勝手にこけて、勝手にアザを増やしてるんだ！」



キャーキャー！　キャーキャー！

のび太「勝負はこれからです……」ｶﾞｼｯ

ジャイアン「なんだと！？」

のび太「僕だけの力で君に勝たないと……ドラえもんが安心して……」

のび太「帰れないのです！」



　秘技　さようならドラえもん（グッバイ・ブルーラクーンドッグ）！！！



ジャイアン「！」ｷｭﾝｯ

スネ夫「！」ｷｭﾝｯ

ジャイアン「悪かった……俺の負けだ……許せ……」ｶﾞｸｯ

スネ夫「ぼくたちがのび太に勝てるわけがなかったんだ……」ｶﾞｸｯ



のび太「戦争とは……金ばかりかかって、空しいものなのですよ」





キャァァァァァッ！！！

―　通学路　―

のび太「家に帰って、昼寝を嗜むとしましょうか」ｽﾀｽﾀ

のび太「……おや？」

野良犬「ガルルルル……」

のび太「こんにちは、ドッグさん。僕ですよ」

野良犬「ワンッ！」ｶﾞﾌﾞｯ

のび太「やれやれ、ドッグさんはよほど僕の足がお好きなようですね」

―　のび太の家　―

ドラえもん「お帰り、学校はどうだった？」

のび太「いつもの通りですよ」ｸｲｯ

のび太「遅刻をして廊下に立たされ、テストは０点、かけっこはダントツビリ、あやとりで遊び、
　　　　スネ夫の自慢話を羨ましがり、ピーナッツを目で噛み、スパゲティを鼻から食べ、
　　　　ジャイアンに殴られ、おまけに野良犬に噛まれました」

ドラえもん「きみはじつにばかだな」





おわり