1: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:07:28.20 ID:CXjDskCzo
引用元: ・【モバマスSS】「靴擦れ」
アイドルマスターシンデレラガールズ コンプリート アニメファンブック [DVD]
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2: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:08:14.68 ID:CXjDskCzo
・アイドルマスターシンデレラガールズ 渋谷凛のSS
・バッドエンド:ルートB
3: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:08:42.33 ID:CXjDskCzo
ーーー
彼が灰になった日の夜。
大事にしまっておいた2つの箱を引っ張り出してきて、1人きりの練習室でそれを開けた。
4: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:09:12.83 ID:CXjDskCzo
右の靴は、彼と一緒に手に入れたいつかの栄光。
左の靴は、あの日彼が私にくれたプレゼント。
世界にたった1組だけの靴。
5: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:09:39.49 ID:CXjDskCzo
ガラスの靴って言っても、ポリカーボネートだかなんだかでできているらしくて。
だから、こうやって歩けてしまう。踊れてしまう。
体重がかかるたび、少しずつ罅がいっているようにも感じるけれど。
6: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:10:16.76 ID:CXjDskCzo
ううん、”踊れる”っていうのは本当はごまかしで。
もがく、というか、のたうち回るかのような惨めなダンス。
靴底が滑りやすくて何度もこける。足の可動域が絞られて、ターンが足りずに詰まる。
片翼がもがれた鳥のような、不完全な羽ばたき。
7: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:10:45.43 ID:CXjDskCzo
……どれくらいもがいただろう。
大きくターンを決めた瞬間、右足のヒールがパキリ、と嫌な音をたてて折れた。
重心を崩して大きくぐらついて、……そのまま、床に倒れ伏す。疲れのままに。
なにをやっているんだろう、私。
8: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:11:12.28 ID:CXjDskCzo
横たわっているうちに身体は冷めて。
気付かなかった鈍い痛みが戻ってくる。
酷使した足首は靴の硬さに耐えきれなくて、べろんと皮が剥けて、透明な靴は赤黒く染まっていた。
9: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:11:39.00 ID:CXjDskCzo
苦労して靴を脱ぐ。
ぬるりと血の感触がして、私はまだ生きている、と思う。
彼はもういないけど。
まだ、そっちには行けない。
10: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:12:07.58 ID:CXjDskCzo
裸足のまま、もう一度踊る。
二度三度と、踊り続ける。
どうして、
私は足を止められないのだろう。
11: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:12:35.10 ID:CXjDskCzo
解けない魔法は無いはずなのに。
……だから、これはきっと、呪いなんだ。
12: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:13:07.77 ID:CXjDskCzo
ーーー
目が覚めても世界はそこにあって。
午後からのダンスレッスン。
明日のTV出演。来月末に迫ったコンサートツアー。
13: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:13:34.60 ID:CXjDskCzo
ベッドから降りて、目元を拭って。
最初の一歩を踏み出す。
左足の踵に、赤い痕をのこしたまま。
14: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:14:05.22 ID:CXjDskCzo
彼がいなくなって、それでも世界は回っていて、
私もただ、ここに残っている。
彼のいない世界でも、私はアイドルを続けている。
道を示す指先は途切れたのに、私の足はまだ、前を向いて、ずっと、前に向かって。
15: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:14:32.76 ID:CXjDskCzo
今日も私は踊る、歌う。
痛みの残る足を引きずりながら。
彼の残してくれた呪いを、感じながら。
〈fin〉
16: ◆pdkDwyOMVs 2016/05/25(水) 02:16:25.51 ID:CXjDskCzo
バッドエンドルートB、達成条件:
・the 3rd Anniversary 終了後、渋谷凛に《ガラスの靴(左足)》を渡すことで、ガラスの靴が左右揃う
・スタドリ、エナドリの服用量が規定値を超えている状態で、警告を無視して何度も残業フェイズに入る
・「たまにはゆっくりしたらどう?」等の〈心配〉に対して肯定的な答えを一度も選ばない
・以上を満たした上で、疲労度が100に達した状態で営業フェイズに入る
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