前回 藤原肇「彼と事務所で過ごす夜」

2: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:49:12.96 ID:uuk/cZSQ0

P「……なあ、あい」

東郷あい「どうした、P君」

P「今何月何日だっけ」

あい「九月の五日だね」

P「そうか。……肇がちひろさんと泊り込みの仕事に出てから何日経ったっけ」

あい「かれこれ三日目だね」

P「そうか。…………ふうう」

あい「……禁断症状かい?」

引用元: 東郷あい「彼女のいない事務所で過ごす彼」 

 

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3: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:50:23.91 ID:uuk/cZSQ0
P「まあ、間違っちゃいないかも……」

あい「おや、ほんの冗談のつもりだったんだがね」

P「もう三日声を聞けてないと思うとな……」

あい「電話は繋がらないのかい?」

P「電話した時に仕事中かも知れないし寝てるかも知れないし、迷惑かけるかも知れないだろ?」

あい「うだうだしてるなりに考えてるんだね」

P「これでもプロデューサーだからな」

あい「ふふ、そうだね」

4: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:51:18.72 ID:uuk/cZSQ0
P「一応メールでは会話してるがな。ほれ」

あい「どれどれ『これから夜景をバックに写真撮影のお仕事です。』……写真も添付されているね」

P「ああ、ちひろさんとツーショット及び渾身の照れ顔シングル横ピースか」

あい「凄い破壊力だね、これは……」

P「正直開いた瞬間逝きかけた」

あい「まあ、確かにこれはなかなか……私が男だったら落ちていたかもな」

P「だろ? 写真眺めてたら返信するの遅くなってさ。南条、その変身じゃない。PaPの所行ってなさい」

南条光「はーい」

5: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:52:02.52 ID:uuk/cZSQ0
あい「しかし、メールが出来るのなら、メールで聞けば良かったんじゃないかい?」

P「何を?」

あい「本文に『今電話しても大丈夫か?』とでも書いてさ」

P「……その発想は無かった。ちょっと今送ってみる」

あい「…………おや、返信早いね」

P「……『ごめんなさい、今はちょっと出来ません』……」

あい「ああ……タイミングが悪かったね」

P「…………おう……」

6: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:52:54.87 ID:uuk/cZSQ0
あい「しかし、君と肇君は本当にお似合いだね」

P「そ、そうか? 俺なんかが肇と釣り合って……」

あい「そうだよ。どうやら君は自分を過小評価する傾向があるようだ」

P「と言われてもな……昔からそうなんだよ」

あい「やれやれ……そんなんじゃあ彼女に相応しい男にはなれないよ」

P「……ずいぶん俺に世話焼いてくれるんだな、あい」

あい「そりゃあ、私もP君の事が好きだったからね」

P「そうか。…………えっ?」

7: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:53:40.50 ID:uuk/cZSQ0
あい「聞き取れなかったかな? 私もP君の事が好きだった、と言ったんだよ」

P「ああ、いや、聞き取れなかったわけじゃなくてな……それ、マジの話?」

あい「ああ、マジの話だよ」

P「……いつから?」

あい「いつから……か。分からないね。惚れた腫れただのは、気付いたらそうなっているものだからね」

P「ああ、まあそうか…………なんというか、申し訳ないな。せっかく寄せてくれた好意を」

あい「気にしないでいいよ。肇君の背中を押したのは、他ならぬ私だからね」

P「…………マジに?」

8: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:55:50.51 ID:uuk/cZSQ0
あい「ああ。以前肇君が何か悩んでいたようなので、話を聞いてみたのさ」

あい『肇君、何か悩んでいるなら話してみてはくれないかな?』

藤原肇『あいさん。やっぱり……アイドルがプロデューサーを好きになるなんて、おかしいですよね……?』

P「あいつがそんな事を……」

あい「恐らくは、断られる事が怖かったのかもね。それで、自分を無理矢理納得させようとしたんだ」

あい「『アイドルがプロデューサーを好きになるなんておかしい』『だから告白しても断られるのが当然』」

あい「『だったらこの異常な感情は自分の内にだけしまっておこう』……とね」

P「…………」

9: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:56:43.93 ID:uuk/cZSQ0
あい「そして、第三者から『おかしい』と言ってもらう事で、自分の中でそれを確立させようとした」

P「肇が……そんなに悩んでたなんて……」

あい「彼女はどちらかといえば溜め込むタイプだ。気付かなくてもまあ無理は無いさ」

P「……で、あいは何て答えたんだ?」

あい「まず、一つ問うたよ。『肇君自身はどうしたいのか。君の本音を聞きたい』、とね」

あい「そうしたら、俯きながらも答えてくれたよ」

肇『出来るなら……Pさんと、お付き合いをしたいです。でも……』

あい「まあ、なかなか煮え切らない様子だったがね」

10: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:57:51.80 ID:uuk/cZSQ0
あい「だから、ね。少しだけ背中を押してあげたのさ」

あい『肇君、自分に正直に生きる事も大事だよ』

肇『自分に、正直に……』

あい『それから、もう一つ。アイドルがプロデューサーを好きになるのは、私はおかしいとは思わないよ』

肇『えっ……』

あい『立場の違いこそあれど、男と女だ。そういう感情が生まれるのはむしろ自然だよ』

肇『…………ありがとうございます、あいさん。ちょっと、Pさんの所に行ってきます』

あい『ふふ、もしフラれたら言いたまえ。君の代わりに彼をぶん殴ってやろう』

11: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:58:37.01 ID:uuk/cZSQ0
あい「後は君もご存知の通りさ」

P「……なんというか、ありがとうな、あい」

あい「なあに。君には私よりも肇君がお似合いだと、勝手に判断したまでだよ」

P「それでも、礼がしたいからさ、今度飯でもおごらせてくれよ」

あい「構わないけれど、私は意外と食べるから気をつけたほうがいいよ?」

P「覚悟の上だよ、こういう職業上な」

あい「ふふ、楽しみにしておくよ。……おや、携帯が鳴っているよ」

P「ん、メールだな。どれどれ……」

12: ◆JZ7iYv4mkA 2013/09/05(木) 12:59:25.85 ID:uuk/cZSQ0
P「肇からだ。『あと一時間程で事務所に着きます』ってよ」

あい「そうか、なら肇君とちひろさんが帰ってきたら四人で食事にでも行こうか」

P「お、いいな。まあ二人が何も食べてなきゃの話だが」

あい「決まりだね。せっかくだからP君におごって貰おう。『あのお礼』で、ね」

P「おい、それ今使うのかよ?」

あい「使うタイミングを指定されていなかったからね」

P「チクショウ。……あの二人が何か食べてきてますように。お願いします神様仏様鷹富士様……」

あい(ふう、ここ一番で格好がつかないねえ彼は。まあ、そこがいいのかもしれないね……)

おわり