1 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:07:27 ID:7RpbUvBw

847年・訓練所宿舎

ミカサ「ごめんなさい。はさみ、ないだろうか」

「はさみ?」

ミカサ「ええ…」

「えーっと…ごめんなさい、わからないや」

ミカサ「そう、ありがとう」

「そうだ、あなたも後で来てねっ」 


 

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2 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:08:07 ID:7RpbUvBw

ミカサ「どこへ?」

「ここから右手にある空き部屋!そこで、皆で自己紹介をするの」

ミカサ「そう…」

「じゃあ、また後でね!」

ミカサ「…また」

ミカサ「……」

ミカサ「…はさみ、どこだろう」 


3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:08:38 ID:7RpbUvBw

ミカサ「あの…」

「…なに」

ミカサ「はさみ、持ってたら貸していただきたいのだけれども」

「…なんで」

ミカサ「髪、切りたくて」

「髪?」

ミカサ「ええ。立体機動訓練の、邪魔になると思うので」 

4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:09:13 ID:7RpbUvBw

「…そこの、棚。引き出しに入ってたと思う」

ミカサ「ありがとう。借りても良いのかしら」

「備品だからいいんじゃないか。でもあんた、今から切るのかい」

ミカサ「明日、適正検査があるので」

「もう夜だし、暗いけど」

ミカサ「……」 

5 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:09:46 ID:7RpbUvBw

「明日は纏めればいいんじゃない」

ミカサ「…いえ、今後のことを考えたら、切っておきたい。髪、纏めたこともないので」

「慣れないことは出来ない、か」

ミカサ「ええ…」 

6 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:10:17 ID:7RpbUvBw

「…切ってやろうか」

ミカサ「え?」

「髪。明かりはあんたが持っていればいい」

ミカサ「良いの?」

「就寝時間まで暇だからね」 

7 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:10:47 ID:7RpbUvBw

ミカサ「あなたは、集まりに行かないの?」

「人と馴れ合う為にここに来たんじゃない」

ミカサ「そう。でも、私の髪を切ろうとしてくれている」

「……」

ミカサ「ありがとう。あなたはきっと、優しい人だ」

「…とっとと終わらせるよ。そこ、座りな」 

8 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:11:24 ID:7RpbUvBw

ミカサ「…あの」

「なんだい」

ミカサ「名前、聞くのを忘れていた」

「……」

ミカサ「ミカサ・アッカーマン」

アニ「アニ・レオンハート」

ミカサ「アニ、ありがとう」 


9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:11:54 ID:7RpbUvBw

アニ「あんたは、自己紹介とやらをしに行かなくていいのかい」

ミカサ「今は、髪を切る方が、大事」

アニ「…変わってるね」

ミカサ「あなたは、何をしていたの」

アニ「何も。部屋を物色してたくらいかな」

ミカサ「物色?」

アニ「どこに何があるか頭に入れておきたくて」

ミカサ「なるほど」 

10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:12:30 ID:7RpbUvBw

アニ「しかし本当に切るのかい」

ミカサ「? どうして?」

アニ「綺麗な黒髪じゃないか。勿体無い」

ミカサ「邪魔になるので」

アニ「…そう。どこまで切る?」

ミカサ「肩、くらいまで」

アニ「わかった。じっとしてて」 

11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:13:00 ID:7RpbUvBw

ミカサ「……」

アニ「……」

ミカサ「慣れてる」

アニ「…まぁ、切るのは初めてではないね」

ミカサ「誰かのを?」

アニ「…お父さん、とか」

ミカサ「お父さん…」 

12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:13:32 ID:7RpbUvBw

アニ「もういないけど」

ミカサ「え…」

アニ「マリアの南東出身なんでね」

ミカサ「そう…」

アニ「あんたは?」

ミカサ「シガンシナ区」 

13 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:14:38 ID:7RpbUvBw

アニ「……」

ミカサ「気にしなくていい。両親は、元からいない」

アニ「……」

ミカサ「代わりに、家族がいる」

アニ「は?」

ミカサ「両親が死んで、家族になってくれた人達がいた」

アニ「…そう。良かったね」

ミカサ「うん…」 

14 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:15:17 ID:7RpbUvBw

アニ「その…家族、は」

ミカサ「おじさんは行方不明、おばさんは…巨人に」

アニ「……」

ミカサ「今はエレンと2人」

アニ「エレン? あぁ、食堂で話してた」

ミカサ「そう。私の、家族」 

15 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:15:51 ID:7RpbUvBw

アニ「前髪は?」

ミカサ「このままでいい」

アニ「じゃぁ仕上げ」

ミカサ「…ナイフ?」

アニ「髪を梳く。このままじゃおかしいだろ」

ミカサ「ありがとう」

アニ「……」 

16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:16:23 ID:7RpbUvBw

ミカサ「良い感じ」

アニ「結構切ったね」

ミカサ「床、掃除しなければ」

アニ「掃除道具は、そこ。流石に手伝わないよ」

ミカサ「わかった。ありがとう」

アニ「じゃ。少し外に出るから」

ミカサ「? どこへ」

アニ「ただの散歩」

ミカサ「暗いから、気をつけて」 

17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:16:55 ID:7RpbUvBw

アニ「……」

アニ「…エレン、だったね」 

18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:17:26 ID:7RpbUvBw

850年・某所地下

ミカサ「…アニ、覚えてる?」

ミカサ「あなたと初めて話した時のこと」

ミカサ「髪を、切ってもらった」

ミカサ「優しい人、だと思った」

ミカサ「初めて出来た、同性の友達、だと思った」

ミカサ「……」

ミカサ「ねぇ、アニ」

ミカサ「あなたは、何故」

ミカサ「何故、泣いているの」 


19 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/12/24(火) 02:18:06 ID:7RpbUvBw
オワリ。ねよ…