2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/25(月) 19:06:15.22 ID:QCpTg9meO
車庫の片隅のベンチに、三人で腰かけながら。
ミッコは目をつむって、うたた寝半分。

ミカ「アキ。君はよく夢を見るかい?」

アキ「え……? そうだね、たくさん見る方かな」

ミカ「最近はどんな夢を見たのかな?」

アキ「そうだねぇ……大学にいっても、社会人になっても、みんなで一緒に戦車道できたらな~って」

ミッコ(……ん? ミカが聞いてるのはそーいう意味の『夢』とは違くない?)

ミカ「……」

(ぽろろろ~ん♪)

ミカ「ふふ、アキと私はどうやら同じ夢をみているようだね」

アキ「……えへへ、ミカにもちゃんと夢があるんだ」

ミカ「夢のない人生なんて空しいだけさ」

アキ「そうだね……えへへ」

ミッコ(……ほんと仲いいなこいつら)

引用元: 真・ミッコ「こいつら本当に仲いいな……」 


 

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/25(月) 19:08:30.00 ID:QCpTg9meO
アキ「『夢』と言えばさぁ」

ミカ「なんだい?」

アキ「眠てる時にみる『夢』って、あるじゃない?」

ミカ「うん」

ミッコ(って言うか、ミカはじめからそっちの『夢』の話だったろ)

アキ「ミカもそういう夢、見る?」

ミカ「ふふ、もちろんさ」

アキ「最近はどんな夢をみたの? ……って、あ!」

ミカ「?」

アキ「やだ……もしかしてさっきミカが私に聞いたのって……こっちの意味の『夢』?」

ミカ「……」

ミカ(ぽろろろーん♪)

ミカ「『夢』についてミカと一緒に話せた。私にとってはそれで十分」

アキ「や、やだもー、言ってよ、恥ずかしいじゃない!」バシバシバシ!

ミカ「ふふ、痛いよ」

ミッコ(……ほんと仲いいなこいつら)

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/25(月) 19:09:59.93 ID:QCpTg9meO
アキ「ところで『夢』ってさ」

ミカ「うん」

アキ「その人のしんそー心理が現れるんだってね」

ミカ「そうらしいね」

アキ「じゃあさ、ミカって、どんな夢みるのっ?」

ミカ「私の夢に、そんなに興味があるのかい?」

アキ「そりゃあるよー。だって、ミカって変わってるもの」

ミカ「在るがままに、在るだけさ」

アキ「そういうミカのしんそー心理、気になるなぁ」

ミッコ(私も気になる)

ミカ「単純化されたパターンに当てはめて、それで他者を理解したつもりになる……」

ミカ「もちろん、二人はそんな愚かじゃない」

アキ「あたりまえじゃん。それで? どんな夢?」

ミカ「聞いてもらう価値はあるかもね。実は近頃、何度か同じ夢をみるのだけれど……」

ミカ「……」

(ぽろろろ~ん♪)

ミカ「……なんだかちょっぴり、やっぱり恥ずかしくなってきたかもね?」

アキ「もぉ! はやくおしえてよ~」

ミカ「フンフーン♪」

ミッコ(はやくおしえろよー)

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/26(火) 21:58:42.18 ID:C/Z9MJYlO
ミカ「私の見た夢はね、戦車に乗って、どこかの学校と試合をしている夢なんだ」

アキ「うん」

ミカ「ふと気が付くと、アキがどこにもいない」

アキ「そうなんだ」

ミカ「それで私はすごく困ってしまう」

アキ「私がどこへいったのかは、分からないの?」

ミカ「うん。私は全体の指揮を行いながら、装填砲撃もしなくちゃいけなくなった」

アキ「無理だよぉ」

ミカ「しかもね……しばらくすると今度はミッコまでいなくなってしまうんだ」

ミッコ(お手上げじゃん)

アキ「それでミカどうしたの?」

ミカ「困った私は、このカンテレに操縦席を頼むのさ」

アキ「どういう事?」

ミカ「とっさにこう、操縦席にカンテレをおいて」

アキ「えー」

ミカ「車内はすごく揺れるだろう?」

アキ「まぁ、当然」

ミカ「だからこう、落ちないようにしっかりと」

アキ「意味あるのかな……まあいいや、それで?」

ミカ「するとね……とても操縦がうまいんだ」

アキ「えー……」

ミカ「これならいけると思って、もう一個のカンテレには砲手を任せるんだ」

アキ「カンテレ、二個あったんだね」

ミカ「なぜか、そうみたいだね」

アキ「いかにも夢っって感じだねー。で、もちろんカンテレは砲撃も……?」

ミカ「すごくうまかったよ」

ミッコ「ぶふっ!」

アキ「!?」

ミッコ(あ……やべ。笑っちゃった)

アキ「……」

ミカ「……」

アキ「ミッコ、起きてたね」

ミカ「ミッコはタヌキさんだね」

アキ「タヌキ……どっちかっていうとはレッサーパンダっぽいかも」

ミカ「赤毛の感じ?」

アキ「うん」

ミッコ(ハムスターさんがいいなぁ)

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/26(火) 21:59:59.67 ID:C/Z9MJYlO
アキ「あ、寝たふり続けるんだ……まぁいっか。ミカ、夢の続きは?」

ミカ「うん。何とかカンテレ達が踏ん張ってはくれるのだけれど」

アキ「すごいねーカンテレ」

ミカ「だけど今度は、おトイレに行きたくなって」

アキ「あー……じっさい、けっこう困っちゃうよね」

ミカ「しかもそういう時に限って試合が佳境にはいる」

アキ「あるねー……」

ミカ「それで、私はずっとこらえ続けて」

アキ「うんうん」

ミカ「こらえてこらえて」

アキ「それで……?」

ミカ「もう無理かもしれない、と追いつめられたところで……ハッと夢から目が覚めた」

アキ「あ、それってもしかして」

ミカ「その通り。起き上がって、すぐにトイレへいったよ」

アキ「あれって、ちょっぴり不思議だよね」

ミカ「夢の世界に現実の感覚が入り込んでくる」

アキ「私一度、夢の中で、我慢できずにおしっこしちゃった事があるんだけど……」

ミカ「……乙女の尊厳は、守れたかい?」

アキ「うん、なんとか。ちょっとドキドキしたけどね、えへへ」

ミカ「確認するまで、怖いものね」

アキ「そうそう……」

ミッコ(……アキ、人前で「おしっこ」って言えちゃう娘だったんだ……)

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/26(火) 22:00:57.77 ID:C/Z9MJYlO
アキ「それで、ミカは、今みたいな夢を、何度もみてるの?」

ミカ「時々、ね。戦車の中で一人ぼっちになってしまって、少し困る」

アキ「ふぅーん……。なんでそんな夢を見るのかな?」

ミカ「……アキは、今の夢をどう思う? 分析を聞かせてほしい」

アキ「んー……」

ミカ「……(ぽろろろーん♪)」

アキ「……頼りになる、カンテレだよね」

ミッコ(そこを分析するのか……)

ミカ「ふふ、そうだね」

アキ「私とミッコがいなくなっても、カンテレだけは残ってる。しかも二つ?」

ミカ「うん」

アキ「ミカ、肌身離さず、いつも大切にしてるもんね、カンテレ」

ミカ「この子は無上の喜びを与えてくれる。音楽という喜びをね」

(ぽろろろーん♪)

アキ「ふーん。……あのさぁ」

ミカ「ん?」

アキ「触ってみていい? カンテレ」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/26(火) 22:04:11.90 ID:C/Z9MJYlO
アキ「触ってみていい? カンテレ」

ミカ「かまわないよ。膝にのせてごらん」

アキ「うん。あ、けっこう軽い」

ミカ「普段、持ち歩いているくらいだからね」

アキ「そっか。えっと……こうかな」

(ろーん♪)

アキ「……えへー、音、きれいだよね」

ミカ「大切にちゃんと手入れしているからね」

アキ「ど・れ・み・ふぁ・そ~♪ って、あはは、ぜんぜん違った」

ミカ「指だけじゃなく、手首も使うといいよ。このあたりに力を……。あ……」

アキ「……? ミカ?」

ミカ「手荒れ、少し酷くなった?」

アキ「あーまぁね……しかたないよ。私は弾ゴメしなきゃだし、手袋をしてても、やっぱりね」

ミカ「クリーム、塗ってる?」

アキ「うん。だけど、なかなかね」

ミカ「アキの指、すらっとしていて、少し長めで……楽器に似合う指なのにね」

アキ「ね、ねぇミカ? そんなにジッとみないでよ……なんだか恥ずかいよ……」

ミカ「……。これ、アキにあげる。まだ少ししか、使っていない」

アキ「……ハンドクリーム? わ、なんだか高そう」

ミカ「グロリアーナのお嬢様からね。よう効くそうだよ。紅茶の代わにくれた」

アキ「紅茶の代わり?」

ミカ「彼女は贈り物をせずにはいられないのさ」

アキ「良く分からないけど……いいの? ミカがもらったのに」

ミカ「いいのさ。私一人ではもらえなかったと思うよ」

アキ「??」

ミッコ(私もそれほしいなー)

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 13:02:18.37 ID:TU4wVrC7O
アキ「えへへ、ありがとうミカ」

ミカ「アキの「手」にはお世話になっているからね」

アキ「えー「手」だけぇ?」

ミカ「……♪」(ぽろろろーん♪)

アキ「もー」

ミッコ(……ミカが誰かをからかうのって、ほんと、アキに対してぐらいだなぁー……)

アキ「ねぇミカ? 自分では、その夢をどう解釈してるの?」

ミカ「そうだね……夢は、大切なことを教えてくれた」

ミッコ(……『仲間がどうこう』とかいうのかね)

アキ「へぇ、なあに?」

ミカ「もしも本当に、アキやミッコがいなくなってしまったら……」

アキ「うんうん」

ミッコ(なんか恥ずいなぁ……ほんとに寝ちゃえ)

ミカ「そんな時にどうすべきか、私は考えておかなきゃいけないってことさ」

アキ「……うん?」

ミッコ(……うん?)

ミカ「だって、ありえる状況だろう? 試合の前日に、何らかの理由で、二人がいなくなってしまう」

アキ「『なんらか』って、なによ」

ミカ「理由は重要じゃない。実際にそういう状況になったっていう仮定、それが重要なんだよ」

アキ「……ふうん」

ミッコ(あ、……これアキがおもしろくない時の声だ)

ミカ「そういう局面を隊長としてどう判断するか、考えておかなきゃ」

アキ「ふーん、大変だね、隊長サマは」

ミカ「『想定外』は言い訳にならないからね」

アキ「あっそ」

ミカ「つまりは夢は、私にそういう事を改め教えてくれたのさ」

アキ「……ふーん」

ミッコ(ミカ、絶対わかっててやってるだろ……)

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 13:03:31.66 ID:TU4wVrC7O
アキ「ちぇ……おもしろくないなぁ」

ミカ「何がだい?」

アキ「今のはミカの、ココの声でしょー?」

ミカ「アキ、頭をつつかないでほしいな」

アキ「私が聞きたいのはぁー……ミカのここの声ー」

ミカ「っぅひぁ!?」

ミッコ(なに今の!? シャックリみたいなの、ミカの声!?)

ミカ「……アキ、女性の胸を指でつくのは、どうかと思うよ」

アキ「いいでしょ、ミカのはおっきんだから」

ミカ「アキの言う事はメチャクチャ」

アキ「ふんだ。じゃあ今度はまともな事を言ってあげる」

ミカ「うん?」

アキ「ミカは私とミッコがいなくなっちゃう夢を見る。……何度も何度も!」

ミカ「そうだね」

アキ「夢はその人のしんそー心理を表します」

ミカ「うん」

アキ「その人が日ごろ考えている事が夢にもあらわれるそーです」

ミカ「うん」

アキ「つまりミカはー……ミッコと私がいなくなってしまったらどうしよう!って心の底では不安なわけだよ!」

ミカ「……」

ミカ(ぽろろろーん♪)

ミカ「あくまでアキの想像ではあるけれど、一定の説得力はあったかもね。面白かったよ」

アキ「……もー! ミカの捻くれ者っ。たまにはここでしゃべりなよー、ほらほらほらっ」

ミカ「っ! ……やぁっ……私の想像だと、アキの深層心理には、私の胸に対する妬みが見受けられる」

アキ「なっ、ひっどーい!」

ミッコ(……ほんと、仲いいなぁ……だけどうるさい……)

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 13:04:26.12 ID:TU4wVrC7O
ミッコ「……あのさぁミカ」

ミカ「やぁ、おはようミッコ」

アキ「ミッコ、きいてたでしょ!? ミカが胸のことをバカにするんだよっ」

ミッコ「どっちもどっちじゃん……ねぇミカ、今の夢、おとついの朝にも見たんでしょ」

ミカ「……さぁ? どうだったろうね」

アキ「ミッコ、どういう事?」

ミッコ「おとついさ、朝っぱらにミカからLINEしてきたじゃん。3人のグループラインで」

アキ「そうだっけ?」

ミッコ「一言『おはよう』って、6時前にミカからきてたよ。アキの既読は、なぜかずっとつかなかったけどね」

アキ「おとつい……あー、その日は私、寝坊して……あんまり携帯みてられなかった」

ミッコ「だからか」

アキ「あ、だけど、そういえば……」

ミッコ「?」

アキ「あの日、私がぎりぎりの時間に教室に飛び込んだら……」

ミッコ「どうしたの?」

アキ「なぜかミカが私の教室にいて、しかも私の席に座ってた」

ミッコ「ほほう」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/27(水) 13:05:01.71 ID:TU4wVrC7O
アキ「で、私の顔を見たら、『おはよう』って言って、さっさと自分の教室にいっちゃたけど」

ミッコ「……あからさまだなぁ」

アキ「何だったのかなぁーって思ってたけど……」

ミッコ「……まぁ、つまりだから、そういうことでしょ」

アキ「そういうことって……」

ミカ「……」

アキ「……」

ミカ「……」

アキ「……ふぅ~ん?」

ミカ「……アキ、なんだい?」

アキ「べつに?」

ミカ「……」

アキ「……」

アキ「……あ~あ、今日は天気がいいなぁ」

ミカ「……秋晴れだね」

(ぽろろろーん♪)

ミッコ「……。」

ミッコ(……さ、寝よ)



END