37 :白の使い魔(仮):2007/06/14(木) 01:58:33 ID:???
 
―眼を開いた時、彼の眼に飛び込んできたものは満天の青空だった。 

 青空・・・? 
 バカな・・・オレはさっき死んだハズだ 
 延髄を「ブッ刺されて」よォォ・・・! 
 そうだ、覚えている・・・奴らの『覚悟』に負けたことを 

「―何だァ~?・・・っつーことはよォォ・・・ ここは天国・・・いや 地獄ってわけかァ?」 


爆風の中から現れた男はよく解らないことを呟いている。それを認識したルイズは、しかしその 
認識を疑わざるを得なかった。 



爆風の、中から、現れた、男? 

男・・・つまり人間。人間・・・つまり? 

現れた男は・・・どうみても貴族には見えなかった。つまり。 

平民。平民を召喚してしまった。 



40 :白の使い魔(仮):2007/06/14(木) 02:01:10 ID:???
「冗談でしょ・・・?」愕然として呟くルイズに、周囲から更に追い討ちがかかる。 
「あいつ、平民を召喚しやがった!」 
「サモンサーヴァントで平民を召喚するなんて聞いたことないぜ!」 
「流石はゼロのルイズ!俺たちに出来ないことを平気でやってのけるッ!」 
「そこにシビレないし憧れもしない」 
しかしルイズはそれに怒るどころではなかった。強くて美しい使い魔を召喚すれば、散々自分を 
バカにしてきた奴らを見返すことが出来る。家族に胸を張って会うことが出来る。彼女はそれを 
期待していたし、自分ならきっと召喚出来るという根拠の無い自信もあった。それが、こんなヘンな 
髪型の平民を召喚してしまうなんて! 



―とりあえず、彼は状況を把握することにした。 
「城・・・いや砦か?よくわからねーが・・・ここはその中庭って所か? いよいよ天国じみてるじゃあ 
ねーか!ええおい?」 
そこまで考えて彼は前方を見る。ド派手な髪の少女がそこに立っていた。 
「・・・天使にゃあ見えねーな」 
そして彼はふと思いつく。もしかしてこれはスタンド攻撃ではないか?既に死に体だったはずの自分を 
わざわざ攻撃してくる理由など無いとは思ったが、警戒するに越したことはないと彼は判断した。 


42 :白の使い魔(仮):2007/06/14(木) 02:02:43 ID:???
ルイズは覚悟を決めて―というよりは全てを諦めて―男に話しかけた。 
「・・・あんた、誰?」 

ドグシャアア!! 

言い終わる間もなくルイズは首根っこをつかまれ、そのまま地面に叩きつけられた。 
「いっ・・・!!な・・・何をするのよ!貴族にこんなことをしてただで済むと・・・ 痛ッ!?」 
叩きつけられたものではない―焼け付くような擦り切れるような名状しがたい痛みを感じて、 
ルイズは首をつかんでいる手を見る。 
「何よこれ・・・ まさか・・・魔法・・・!?」 
男の手を中心に、ルイズの体は首から胸にかけて完全に凍っていた。 
「ここはどこだ?てめーはオレに何をした?3秒で答えな・・・首をブチ割られたくないならよォォ」 
ルイズは一瞬で理解した。冗談で言っているんじゃあない、こいつの眼にはやると言ったらやる 
スゴ味がある! 
「こっ、ここはトリステイン魔法学院で!あんたは私が召喚したのよ!!」 

・・・ 

数瞬の沈黙が流れ。 

「魔法だと?てめー・・・イカレてるのか?それともバカにしてんのかァァ~?」 
「う、嘘じゃないわ!ここはトリステイン王国のトリステイン魔法学院であなたは私が 
サモンサーヴァントで召喚した使い魔なの!!」 
「・・・つまり ここは魔法の学校で てめーはオレを魔法で呼び出したってワケか?ガキ」 
「そっ、そうよ!解ったのなら早く手を―」 

「・・・ブチ・・・割れな・・・」 

「なッ!?」 


43 :白の使い魔(仮):2007/06/14(木) 02:03:48 ID:???
尋問は失敗、このガキは死んでもオレに何かを喋る気はねーらしい。男はそう判断したようだった。 
しかし首に力を入れようとしたその時、男の鼻先をかすめてサッカーボール大の火球が地面に激突した! 
「何だァァ~?スタンド攻撃かッ」 
男が火球の射出地点とおぼしき場所に眼を向けると・・・そこには燃えるような長髪の少女がいた。 
「何だかよく分からないけど・・・あなた、その子から手を放しなさい!さもないと容赦しないわよ!」 
「キュ・・・キュルケ・・・」 

バッ! 

「容赦しねェだとォォ~~?なめてんのかァーーッこのオレをッ!!」 
男がルイズを投げ捨てて立ち上がると、その体からは壮絶な冷気が噴き出しはじめた。 

「いいだろう てめーら全員氷づけにしてからゆっくり尋問するのも悪かねーッ」 

そして男は自らの力を―スタンドを、発現させる。 

「ホワイト・アルバムッ!!!」 

249 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/14(木) 16:32:26 ID:???
「このギアッチョによォォ~ 容赦しねェだと?ええ?おい やってみろクソガキがッ!!」 

とは言え、男―ギアッチョには最初からフルパワーで行く気はなかった。よってたかってピンク頭に 
野次を投げかけていたガキ共は、ギアッチョの凍てつかんばかりの殺気に恐れをなして蜘蛛の子を 
散らすように我先に逃げ出していたし、年齢から考えて教師であると思われるハゲ野郎は仲間を 
呼びに行ったのかもうこの場にいない。ちなみに当のピンク頭は彼の下で腰を抜かしている。 
―そのオレに恐れることなく立ち向かってくるガキ・・・どうやらこいつが筆頭格の強さを持っていると 
理解していいようだ―ギアッチョはそう考えた。こいつをブッ倒し、奴らの戦意を喪失させてから 
ここを出る。なかなかいい作戦じゃあねえかおい。 

「今ここでオレのジェントリー・ウィープスを全開にすればこの中庭を丸ごと凍らせるのはたやすい 
・・・しかし逃げ出したガキ共にそいつを見られると面倒なことになりそうだからなァァ~~」 
「何をぶつぶつ言ってるのよ!くらいなさいッ!」 
キュルケが言い放ちざま大型の火弾を打ち出すが、ギアッチョはそれを意にも解さずキュルケに 
向かって歩き出す―氷でシールドを作ることもせずに。その余裕ぶりにキュルケはカチンときたが、 
「いいわ、ナメているのならそのまま燃え尽きればいい」と思いなおした。2・・・1・・・着弾ッ!! 

バシュウゥウゥウッ!! 

「なッ・・・!!」 
しかし火弾はギアッチョに当たる寸前、大量の水をブッかけられたかのような音を立てて「消え去った」!! 
「そんな 嘘でしょ・・・!?」 
眼前の出来事を信じられないキュルケは2発、3発と火弾を放つ。しかしまぐれであれという彼女の 
願いも虚しく、彼に撃ち出された火弾はその全てが直撃寸前に消滅するッ! 
ギアッチョは歩き続ける。氷のように冷たい眼でキュルケを見据えて。 

251 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/14(木) 16:34:32 ID:???
「炎ってよォォ~~・・・」 

ザッ・・・ザッ・・・ 

「一般的には火が激しくなったものを言うんだが・・・」 

ザッ・・・ザッ・・・ 

「実際に火が激しいはずの単語には炎じゃなくて火が使われることが多い」 

ザッ・・・ザッ・・・ 

「噴火だとか火柱だとかよォー・・・ 」 

ザッ・・・ザッ・・・ 

「なんで噴炎って言わねぇーんだよォォオオォオーーーッ それって納得いくかァ~~おい?」 

ザッ・・・!ザッ・・・! 

「オレはぜーんぜん納得いかねえ・・・」 

ザッ・・・!! 

252 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/14(木) 16:36:15 ID:???
「な・・・何なの・・・こいつ・・・」 
キュルケはもはや完全に敵に呑まれていた。ギアッチョがついに目の前までやってきたと 
いうのに―構えることすら出来なかった。そして。 

バキャァアアッ!! 

「なめてんのかァーーーーッこのオレをッ!!炎を使え炎を!チクショオーーームカつくんだよ! 
コケにしやがって!ボケがッ!!」 
キュルケは宙を舞った。 
「うぐっ・・・い・・・痛ッ・・・ フフ・・・だけどおかげで眼が覚めたわ 今よフレイムッ!!」 
「ムッ!?」 
どこからか現れた化け物が―実際にはギアッチョの眼に入っていなかっただけだが―彼に 
向かって火炎を吐き出す!しかしそれも彼に当たる直前にことごとく消え去ってゆく。 
「・・・まだ理解しねーのか?え?おい 隙を突こうが無駄なんだよッ ・・・・・・」 
そこまで言ったところでギアッチョは気付いた。今火を噴いた化け物の存在に。 
「・・・なんだァ~?こいつがてめーのスタンドってわけか・・・?」 
とは言ってみたが・・・どう見てもこれは「ビジョン」ではない。実体である。 
―いや・・・そういうスタンドがあってもおかしかねー・・・世の中にゃ無生物に命を与える 
スタンドもいるくれーだからな・・・―ギアッチョはそう思いなおすとキュルケに眼を戻し、 
「こいつでブチ割れなッ!!」 
直触りを発動しようとしたその時。 


255 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/14(木) 16:38:02 ID:???

ドゴォッ!! 

「うぐぉおぉッ!?」 
上空からギアッチョに空気の塊のようなものが撃ちつけられた! 
「タバサ!」 
キュルケが日の落ちかけた空に向かって叫んでいる。 
「ナメやがって・・・上かァーーッ!?」 
ギアッチョが見上げた空には。 

バサッ 

これまたどう見ても実体の― 
「ドラゴン・・・?」 
―それに乗ってこっちを見下ろしている少女。そして何より彼女の後ろに二つの月が 
「・・・なんだ・・・ありゃ・・・」 

二つの、月が。 

―ここはトリステイン王国の― 

「マジで・・・別世界だってェのか?」 
流石のギアッチョも呆然とせざるを得なかった。

260 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/14(木) 16:40:09 ID:???
ルイズはじりじりとギアッチョに近づいていた。正直自分が何かの役に立つとは思えなかったが、 
因縁の相手のはずの自分を体を張って助けてくれたキュルケを見殺しになど出来なかったのだ。 
キュルケは「とっとと逃げなさいよゼロ!」と必死に眼で語っているが、そこは妙な意地を 
張らせたらトリステイン一のルイズである。聞き入れるわけがなかった。 
一方ギアッチョは―静かに沸騰していた。 


ここが花京院もビックリのファンタジー世界だとほとんど確定してしまった以上、とりあえずは 
武器を収めて情報の収集にかかるのが最善手だろう。しかしギアッチョに売られた喧嘩を 
見過ごす選択などあるはずがない。 
「後のことは・・・てめーらをブッ倒してから考えるッ!!そっちが空中にいるってんならよォォ~~ 
ちょっとだけ本気をださせてもらうぜェェェー!!」 


ギアッチョの足元が凄まじい速度で凍っていく。それはギアッチョの靴を覆い足首を覆い・・・ 
ルイズは眼を疑ったが、どうやら氷のスーツを形成しようとしているらしい。 
―マズいッ!! 
少女は遅まきながら確信した。何だかよく分からないがこいつの魔法はヤバい!この氷の発生速度、 
スーツを形成する精密さ、何よりそれが無詠唱で行われているということ!更にこの殺人をも 
厭わない覚悟!どこまで暴れるつもりか知らないが・・・死人は出る!絶対にッ!そしてそれを 
阻止するチャンスは今ッ、このスーツが完全に形成されるまでの間しかないことを! 
ルイズは反射的に動いていた。反射的に―だが決死の覚悟で、ギアッチョに飛び掛ったッ! 
完全にタバサに気を取られていたギアッチョは一瞬反応が遅れ、そして―ルイズの殆ど頭突きの 
ようなキスをまともに「食らい」、頭からブッ倒れた! 

263 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/14(木) 16:42:03 ID:???
「ガフッ!!てめー何をしやがったァァ~~!?毒か!?スタンド・・・いや魔法かッ!?」 
ギアッチョとは逆方向にブッ倒れたルイズは、よろよろと立ち上がりながら告げた。 
「・・・契約よ・・・!」 
「・・・ああ?どういう事だッ!ナメやがって クソッ!・・・・・・ぐッ!!?」 
ギアッチョの左手が光り始め、 
「っづぁああぁああぁあああああッ!!!」 
その甲にルーンが浮かび上がったッ! 
こいつを説得するなら今しかない!ルイズはギアッチョの前に仁王立ちになる。 
「聞きなさい!あなたがどれだけ強いか知らないけどここには300のドラゴンを一人で倒した 
偉大な学院長や太陽拳を使える先生がいるのよ!これ以上騒ぎを起こせば先生方は 
黙ってないわ!万一囲いを破って逃げ出せたとしてもあなたみたいな危険人物は四六時中 
追っ手に追われ続けるわよ!悪魔の軍団を一人で倒せるような追っ手達にね!」 
半分以上は今適当にでっちあげた話だったが、 
「・・・」 
ギアッチョには思いのほか効果があったようだった。ルイズは疑われる前に話を進める 
ことにする。 
「ま、貴族を3人も殺そうとしたんだから今のままでもまず終身刑は免れないわね ちなみに 
あなたが入るのは水族館と呼ばれる脱獄不能の監獄よ!」 
これもデタラメである。 
「・・・で、てめーはオレにそれを聞かせてどうしようってんだ?え?おい」 
食いついたっ!ルイズは心中でガッツポーズをした。 
「話は最後まで聞きなさいよ あなたが罪を問われない方法が一つだけあるわ・・・ 
私の使い魔になることよ!」 
「・・・・・・一応聞いとくが・・・そのツカイマってのは何なんだ」 
「主の剣となり盾となるものよ」 

266 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/14(木) 16:43:37 ID:???
「・・・・・・」 
一瞬の逡巡の後、ギアッチョは舌打ちをしながらもルイズに答えた。 
「まぁいいだろう・・・この世界のことがわかるまではここにいるのも悪い選択じゃあねぇ」 
実際は一度使い魔になってしまえば死ぬまで契約は執行されるのだが―今それを 
言うとこいつはまたブチ切れるだろうと思ったのでルイズはとりあえず黙っておくことにした。 


←To Be Continued・・・ 

767 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/15(金) 01:10:35 ID:???
「・・・それで、あなたは情報を奪おうとして・・・逆に殺されたのね」 
自分が殺されたシーンをわざわざ反芻されるのは勿論気分のいいものではなかったが、 
自分への戒めだと思い文句を言うのはやめた。それにいろんなことに意識が行っていて 
気付かなかったが、よく考えればこいつは自分の命の恩人なのだ。少しぐらい不快に 
なったからといってすぐにキレるのは礼節に欠ける行為だとギアッチョは思った。無論 
我慢の限界が来れば1・2発ブン殴るのに躊躇はないが。 

「はぁ・・・まさか別の世界から・・・しかも殺し屋を召喚しちゃうなんてね・・・」 
最初は別の世界の存在を疑っていたルイズだが、話を聞き終わる頃にはもう 
すっかり信じていた。何故って自動車だとかDISCだとか常人の頭で創作出来る話じゃ 
ないと思ったからだ。実際原理を聞いた今でもさっぱり理解が出来ない。 
「気に食わない奴がいりゃあいつでも暗殺してやるぜ。「依頼」とあらばな・・・」 
と、そこでハッとルイズは気付いた。 
「ちょ、ちょっと待ちなさい いくら使い魔だからって人を殺せば罰されるのよ!」 
「問題ねーだろォ~?この世界のことは全然しらねーが、例えば・・・『決闘』なんかで 
死ぬならよォォ」 
何故だか一瞬キザったらしいクラスメイトの顔が浮かんだが、ルイズはブンブンと 
顔を振ってそれを打ち消した


771 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/15(金) 01:13:02 ID:???
「なっ、何よ」 
もはや話しかけられただけで怯えるルイズである。 
「肝心なことを訊くのを忘れてたぜ」 
ギアッチョはそこで一呼吸置いてから、最後の質問をした。 
「オレの世界によォォ・・・戻れる方法は―あるのか?」 
暗がりでギアッチョの顔は分からなかったが、今までとはうってかわって沈んだ声 
だったので―ルイズは事実を伝えるのをためらった。考えてみれば、人を殺すなどと 
いう己の人生が賭かった仕事をバカみたいに安い報酬でやらされていたのだ。 
殺人などしたくなかった者も中にはいただろう―果たしてギアッチョがどうだったのか 
・・・それは分からなかったが―なのに反逆という命がけの訴えに対してボスから 
もたらされたものは「死」だった。仲間が次々と死んでゆき、ギアッチョまで死んで 
しまった今、生き残っているのはリーダーのみ・・・或いは彼ももう死んでいるかも 
知れない。ギアッチョからすれば自分が死んでしまったからといって諦めのつく 
事であるはずがないだろう。今すぐにでもリーダーの元へ駆けつけたいはずだ。 
「・・・・・・私は知らないわ だけどこの学院の図書室なら使い魔を送り返す方法が 
あるかも ・・・今度探してみるわ」 
「・・・・・・そうか よろしく頼むぜ」 
勘違いのようなものだとは言え自分を殺そうとした男だというのに、その言葉に 
ルイズの胸は奇妙に締め付けられた。 
「・・・あなたのリーダー ボスを倒せてるといいわね・・・」 
「・・・ああ」 
そう呟くと、ルイズは罪悪感を振り払うかのように眼を閉じた


次回 サブ・ゼロの使い魔 (ジョジョ×ゼロ使) 第一章 その2