「・・・ギ・・・ギアッチョ・・・?」
何がなんだか分からなかった。どうして?どうしてギアッチョが?私を
笑いに来たんじゃないの?それなら何故?私との違いを見せ付けるため?
それともただ暴れたいだけ・・・?
ルイズの頭には疑問符が次から次へと浮かんでいた。ギアッチョの真意が
分からない。それを確かめようと、ルイズは恐る恐るギアッチョの顔を
見上げようと――
グイッ!!
「!?」
ルイズが顔を上げようとした瞬間、ギアッチョの手によってルイズの頭は
下に押し戻された。
「・・・出たんだろ?ルイズ このガキとぶつかった時に・・・『鼻血』がよォォ
そんなみっともねーツラをこいつらに披露してやるこたぁねーぜ」
いつの間にか3人の周りには人だかりが出来ていた。そしてルイズは
ハッと思い出した。自分の顔が、涙でぐしゃぐしゃだったことを。
本気だ。ギアッチョは、本気で私の為に行動してくれている。
ルイズはようやく気付いた。
――ギアッチョは・・・私の味方なんだ・・・ こんなことになっても・・・
ギアッチョは味方でいてくれるんだ・・・!
我知らず起こる肩の震えを、ルイズは止めることが出来なかった。彼女の
彼女の宝石のような瞳から、今度こそ堰を切って溢れてきた涙と同様に
ゼロの使い魔 The Familiar of Zero Theme Song BEST
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49 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:13:04 ID:???
「それで?そこのゼロのルイズの代わりに、平民の使い魔が僕の相手を
務めるっていうのかい?」
ギーシュはニヤニヤと笑ってギアッチョを見ている。
「さっきハッキリそう言ったはずだが・・・聞えなかったってワケか?
え?マンモーニ ミミズを狩るのに獅子を使うのはちと贅沢だが・・・
今回だけの特別サービスってことにしてやるぜ」
最初はヘラヘラ笑いながら聞いていたギーシュだが、次第に自分が
完全に下にみられていることに気付くと烈火の如く怒りだした。
「だッ・・・!誰がママっ子だって!?平民の分際でッ!よくも貴族に
そんな口が利けたもんだね!!一つだけ言っておくが・・・決闘で
死んだとしてもそれは合法だ!!手加減してやるつもりだったが・・・
無事にゼロの元へ戻れると思わないことだねッ!!」
ギーシュは忘れていた。昨日、自分達を縮み上がらせた彼の殺気を。
そしてルイズの爆発を恐れて遠巻きにサモン・サーヴァントを見ていた
彼には、ギアッチョがルイズを殺しかけたあの場面はせいぜい
「混乱した平民がゼロのルイズを押し倒した」程度にしか見えなかった
のである。
51 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:14:02 ID:???
ギアッチョが色をなくしたままの眼でギーシュを睨む。
「ならこっちも一つ聞くがよォォ~~ てめー『覚悟』はしてるん
だろうなァ~~?オレを殺すつもりで来るってことはよォォ
逆に殺される『覚悟』は出来てるっつーワケだよなァァァ」
しかしギーシュは鼻で笑って答える。
「フン!覚悟だって?そんなものする必要はないね 何故なら
僕が負けるなんてことは万が一にも有り得ないからだ」
ギーシュの大見得にギャラリーがどっと笑う。
「そうだそうだ!」
「平民相手に遠慮するこたねーぞギーシュ!」
「身分の差ってものを教育してやれ!」
こいつらは――、とギアッチョは考えた。
――こいつらの殆どは・・・昨日のことなんか見てもねぇし
覚えてもいねぇようだなァ~~・・・
「ま、どっちだろーと関係ねーがな」
相手が化け物であろうと歩き始めたばかりの赤ん坊であろうと、
ギアッチョの「覚悟」に変わりはない。「覚悟」とは相手に合わせて
コロコロ変えるものではない!ギアッチョはそう理解していた。
「今から5分後・・・ヴェストリの広場で待っている 言うまでもない
事だが――君が逃げれば君もゼロのルイズ同様直ちにこの
学院から退去してもらうよ せいぜい震えながらやってくるんだね」
ギーシュはそう言い放つと、ニヤニヤ笑いのまま去っていった。
52 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:14:56 ID:???
ギーシュが去ると、3人を取り巻いていたギャラリーもギーシュと
一緒に広場へ向かっていった。
「ルイズ もういいぜ 頭を上げな」
ギアッチョが声をかけると、ルイズはごしごしと顔をこすって
立ち上がった。
「・・・ギアッチョ・・・」
ギアッチョは首をコキコキと鳴らしながら尋ねる。
「ルイズよォォ~ なんとかの広場ってのはどっちだ?」
「え・・・ あ、あっちよ ・・・あの、ギアッチョ・・・・・私」
ルイズが何か言おうとするが、
「話は後回しだ 5分後だからな・・・別にあいつをいくら待たせよーが
心は痛まねぇが 逃げたと思われるのも癪だからよォォ」
ギアッチョはそれを制して歩き出す。――逆の方向へと。
「・・・ギアッチョ?広場はあっち・・・」
「ルイズ おめーは先に行ってな オレはよォォ~ ちょっと
用事があるもんでな・・・ 待ってろ すぐにそっちに行く」
そうルイズに告げて、ギアッチョはどこかへ歩いていく。
「分かった ・・・待ってる」
もはやルイズは、万が一にもギアッチョの逃亡を疑わなかった。
私の為に戦ってくれるギアッチョの為に、自分に出来ることを
しよう。ルイズはそう決意した。ギアッチョが戻ってくるまで、
逃げず、怯えず、うろたえず、ヴェストリの広場で待っていよう。
ルイズはスッと顔を上げると、広場に向かって駆け出した。
51 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:14:02 ID:???
ギアッチョが色をなくしたままの眼でギーシュを睨む。
「ならこっちも一つ聞くがよォォ~~ てめー『覚悟』はしてるん
だろうなァ~~?オレを殺すつもりで来るってことはよォォ
逆に殺される『覚悟』は出来てるっつーワケだよなァァァ」
しかしギーシュは鼻で笑って答える。
「フン!覚悟だって?そんなものする必要はないね 何故なら
僕が負けるなんてことは万が一にも有り得ないからだ」
ギーシュの大見得にギャラリーがどっと笑う。
「そうだそうだ!」
「平民相手に遠慮するこたねーぞギーシュ!」
「身分の差ってものを教育してやれ!」
こいつらは――、とギアッチョは考えた。
――こいつらの殆どは・・・昨日のことなんか見てもねぇし
覚えてもいねぇようだなァ~~・・・
「ま、どっちだろーと関係ねーがな」
相手が化け物であろうと歩き始めたばかりの赤ん坊であろうと、
ギアッチョの「覚悟」に変わりはない。「覚悟」とは相手に合わせて
コロコロ変えるものではない!ギアッチョはそう理解していた。
「今から5分後・・・ヴェストリの広場で待っている 言うまでもない
事だが――君が逃げれば君もゼロのルイズ同様直ちにこの
学院から退去してもらうよ せいぜい震えながらやってくるんだね」
ギーシュはそう言い放つと、ニヤニヤ笑いのまま去っていった。
52 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:14:56 ID:???
ギーシュが去ると、3人を取り巻いていたギャラリーもギーシュと
一緒に広場へ向かっていった。
「ルイズ もういいぜ 頭を上げな」
ギアッチョが声をかけると、ルイズはごしごしと顔をこすって
立ち上がった。
「・・・ギアッチョ・・・」
ギアッチョは首をコキコキと鳴らしながら尋ねる。
「ルイズよォォ~ なんとかの広場ってのはどっちだ?」
「え・・・ あ、あっちよ ・・・あの、ギアッチョ・・・・・私」
ルイズが何か言おうとするが、
「話は後回しだ 5分後だからな・・・別にあいつをいくら待たせよーが
心は痛まねぇが 逃げたと思われるのも癪だからよォォ」
ギアッチョはそれを制して歩き出す。――逆の方向へと。
「・・・ギアッチョ?広場はあっち・・・」
「ルイズ おめーは先に行ってな オレはよォォ~ ちょっと
用事があるもんでな・・・ 待ってろ すぐにそっちに行く」
そうルイズに告げて、ギアッチョはどこかへ歩いていく。
「分かった ・・・待ってる」
もはやルイズは、万が一にもギアッチョの逃亡を疑わなかった。
私の為に戦ってくれるギアッチョの為に、自分に出来ることを
しよう。ルイズはそう決意した。ギアッチョが戻ってくるまで、
逃げず、怯えず、うろたえず、ヴェストリの広場で待っていよう。
ルイズはスッと顔を上げると、広場に向かって駆け出した。
51 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:14:02 ID:???
ギアッチョが色をなくしたままの眼でギーシュを睨む。
「ならこっちも一つ聞くがよォォ~~ てめー『覚悟』はしてるん
だろうなァ~~?オレを殺すつもりで来るってことはよォォ
逆に殺される『覚悟』は出来てるっつーワケだよなァァァ」
しかしギーシュは鼻で笑って答える。
「フン!覚悟だって?そんなものする必要はないね 何故なら
僕が負けるなんてことは万が一にも有り得ないからだ」
ギーシュの大見得にギャラリーがどっと笑う。
「そうだそうだ!」
「平民相手に遠慮するこたねーぞギーシュ!」
「身分の差ってものを教育してやれ!」
こいつらは――、とギアッチョは考えた。
――こいつらの殆どは・・・昨日のことなんか見てもねぇし
覚えてもいねぇようだなァ~~・・・
「ま、どっちだろーと関係ねーがな」
相手が化け物であろうと歩き始めたばかりの赤ん坊であろうと、
ギアッチョの「覚悟」に変わりはない。「覚悟」とは相手に合わせて
コロコロ変えるものではない!ギアッチョはそう理解していた。
「今から5分後・・・ヴェストリの広場で待っている 言うまでもない
事だが――君が逃げれば君もゼロのルイズ同様直ちにこの
学院から退去してもらうよ せいぜい震えながらやってくるんだね」
ギーシュはそう言い放つと、ニヤニヤ笑いのまま去っていった。
52 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:14:56 ID:???
ギーシュが去ると、3人を取り巻いていたギャラリーもギーシュと
一緒に広場へ向かっていった。
「ルイズ もういいぜ 頭を上げな」
ギアッチョが声をかけると、ルイズはごしごしと顔をこすって
立ち上がった。
「・・・ギアッチョ・・・」
ギアッチョは首をコキコキと鳴らしながら尋ねる。
「ルイズよォォ~ なんとかの広場ってのはどっちだ?」
「え・・・ あ、あっちよ ・・・あの、ギアッチョ・・・・・私」
ルイズが何か言おうとするが、
「話は後回しだ 5分後だからな・・・別にあいつをいくら待たせよーが
心は痛まねぇが 逃げたと思われるのも癪だからよォォ」
ギアッチョはそれを制して歩き出す。――逆の方向へと。
「・・・ギアッチョ?広場はあっち・・・」
「ルイズ おめーは先に行ってな オレはよォォ~ ちょっと
用事があるもんでな・・・ 待ってろ すぐにそっちに行く」
そうルイズに告げて、ギアッチョはどこかへ歩いていく。
「分かった ・・・待ってる」
もはやルイズは、万が一にもギアッチョの逃亡を疑わなかった。
私の為に戦ってくれるギアッチョの為に、自分に出来ることを
しよう。ルイズはそう決意した。ギアッチョが戻ってくるまで、
逃げず、怯えず、うろたえず、ヴェストリの広場で待っていよう。
ルイズはスッと顔を上げると、広場に向かって駆け出した。
62 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:18:09 ID:???
「あなたフザけてるの!?ギーシュはナメてかかって勝てる
相手じゃ・・・」
「『覚悟』はッ!!」
ギアッチョはいきなり声を張り上げる。その大声にキュルケは
思わず身構えた。
「・・・オレの『覚悟』は・・・相手を選んだりはしねえーーッ!
相手がドラゴンだろーがウジ虫だろーがよォォ~~ オレは同じ
『覚悟』を持って戦いに挑むッ!!」
それだけ言うと、ギアッチョは圧倒されているキュルケを置いて
歩いていった。
「なんなの・・・あいつ・・・ 『覚悟』・・・・・・?」
「大丈夫」
突然聞えた声にキュルケが隣を見ると、いつの間に来ていたのか
そこには透き通るような青い髪をした少女、タバサがいた。
「大丈夫・・・って?」
「昨日の戦闘」
タバサは短く言葉を繋ぐ。
「まだまだ力を隠してた」
「嘘でしょ・・・」
タバサの言葉は信頼出来る。キュルケは今更ながらギアッチョに
立ち向かった昨日の自分を思い出し、ゾクリと身震いした。
63 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:19:06 ID:???
当たりをつけて覗いてみた食堂で、ギアッチョは目当ての
人物――シエスタを発見した。
「・・・あ、ギアッチョさん!ミス・ヴァリエールはご無事でしたか?」
メイド服の少女は食器を片付けながらギアッチョに声をかける。
デザートの配膳中にギーシュと言い争うルイズを発見し、いち早く
ギアッチョに知らせたのはこのシエスタだった。
「ああ なーんにも問題はねえぜ」
「そうでしたか」
よかった、と答えて食器の片付けを続けるシエスタに、
「それはともかくよォォ~~ 一つ報告することがあってな」
ギアッチョは本題を切り出した。
「報告・・・ですか?」
「ああ まぁ大した話じゃないんだがよォォ~~~
決闘することになった」
「・・・決闘・・・?」
ギアッチョの言った決闘の意味を量り切れないらしく、シエスタは
オウム返しに同じ言葉を口にする。
「ええと・・・決闘って 誰と・・・誰がですか?」
「ああ? 誰ってオレに決まってるじゃあねーか 相手はルイズに
絡んでた・・・あー・・・そうだ、ギーシュとかいうマンモーニだ」
・・・・・・。
どこかで見たような一瞬の沈黙の後、
ガッシャアアアアアアン!!
シエスタの手から滑り落ちた3枚の皿が音を立てて砕けた。
67 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:20:01 ID:???
「な、ななな何をやってるんですかギアッチョさんッ!!
き、貴族と決闘だなんて 殺されてしまいます!!」
状況を理解した途端パニックに陥るシエスタをギアッチョは
片手で制して、
「落ち着けよシエスタよォォォ~~~ 死ぬのはギーシュの野郎
だぜ・・・それは決定してる オレが言いてーのはその話じゃあ
ねーんだ」
口では軽く言っているが・・・ギアッチョは決して決闘を甘く見て
いるわけではない。経過がどうなろうと、必ず「ギーシュを殺す」
という結果を出す。ギアッチョはそう「覚悟」しているのだ。
「シエスタ 今からよォーー 厨房の奴らを全員連れて・・・なんだ、
ヴ・・・ヴェ・・・ヴェラ・・・違うな、ヴォ・・・ヴァ・・・ヴァンダム・・・」
「・・・ヴェストリの・・・広場ですか・・・?」
「多分そいつだ そこまで来ちゃあくれねーか?咎められるよーなら
責任は全部オレが持つ」
シエスタはこの人なりの冗談なのだろうかと思った。しかしギアッチョの
眼は、悲しいほどに本気であった。
68 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:21:07 ID:???
「決闘にゃあオレが勝つ・・・そいつは間違いねーんだが 別の意味で
お前らを失望させちまうかも知れねえ・・・
しかしオレとお前らが同じ『平民』だと言うのならよォ・・・ こいつを
見せねーわけにゃあいかねーんだ」
さっきと同様、シエスタはギアッチョの言葉の意味を量りかねて
いるようだった。しかしギアッチョはそんなシエスタの心中を忖度せず、
「頼んだぜ」とだけ言って食堂を出て行く。シエスタは一瞬逡巡したが、
「ま、待ってください!!」
やはりここでギアッチョを見送るのは、自分が殺すも同然だと思った。
「今日はよく後ろから呼び止められる日だなァァ~~ え?おい
決闘するなってんなら聞かねぇぜ 何度も言うがよォォーー
オレの勝利、それだけは決定してるんだ」
「ギアッチョ・・・さん・・・」
そう言い放つギアッチョに妙なスゴ味を感じたシエスタは、それ以上
何も言うことが出来なくなった。
「おっと・・・もう決闘が始まる オレは先に行くぜ」
言うがはやいか、今にも泣き出しそうな顔のシエスタに目もくれず、
ギアッチョは食堂を飛び出して行ってしまった。
71 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:22:08 ID:???
ルイズはギーシュと対峙していた。
「フフフ・・・あと大体30秒だが・・・君の使い魔はどこにいるのかな?
ゼロのルイズ君」
ギーシュが心底哀れそうな声で――勿論演技だが――ルイズに語りかける。
「君の使い魔・・・随分とキレるのが早いようだが 逃げ足も速いようだねぇ
プッ・・・ハハハハハ」
ギーシュはニヤニヤと笑う。それを聞いたギャラリー達もドッと笑っている。
「ギアッチョは来るわ」
ルイズはギーシュの眼を睨んだまま、短くそれだけを返す。例えどれだけ
笑われようが、どれだけなじられようが――ギアッチョは自分に待っていろと
言ったのだ。ならば自分は彼を信じて待つだけだ。
――そうよ・・・、これが今の私があいつに返せる唯一の敬意 ならばどんな
侮辱だろうと罵倒だろうと・・・全て受け切ってみせるわッ!
ルイズは知らず知らずのうちに『覚悟』していた。ギアッチョが来るまで、何が
あろうと崩れないという『覚悟』を!
ギーシュはなおも続ける。
「1分経過だ!おいおいゼロのルイズ!!いつまで僕らを待たせるつもりだい?
僕らだって暇じゃあないんだ!ほらほら、怖がらないで杖を取ってかかってきなよ!
あの平民はもう森の中まで逃げてるかもなあ!ひょっとしたらもう森をうろつく
魔物に食われてしまっているかも!」
ギーシュの発言にギャラリーはまた爆笑する。キュルケは歯噛みしながらそれを
見ていたが、ルイズの眼に何の迷いも浮かんでいないのを知って飛び出したい
気持ちを抑えた。
――あれが、あの平民が言っていた『覚悟』というやつなの・・・?
キュルケのそんな疑問に答えるかのように、
「ギアッチョは・・・来るわ・・・!」
ルイズはただそれだけを繰り返した。そして・・・、
73 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:23:04 ID:???
「やれやれ・・・ちょっとしたロスがあってよォォ~~~ ちぃとばかし遅れちまった
みてーだなァァァ」
ざわつくギャラリーを掻き分けて、ギアッチョが姿を現した。
一秒たりともギーシュから眼をそむけなかったルイズは、そこでようやく全身の
力を抜いた。
「どーやら・・・頑張ってたみてーじゃあねーか え?ルイズ 後はオレに任せて
そこで見てな」
またも意外なギアッチョのねぎらいである。
「お、遅いわよバカッ!」
などと照れ隠しに文句を言いながら、ルイズは非常な達成感と安心感を感じていた。
するとそこへ、
「ミス・ヴァリエール!!」
シエスタを先頭にマルトー達厨房の料理人や給仕達が駆けつけてきた。
「えーと・・・あなたは確かシエスタ・・・ こんなに大勢引き連れてどうしてここに?」
「分かりません・・・さっきギアッチョさんが食堂にやってきて 決闘をするから
見に来て欲しいと・・・」
「そう・・・ ・・・まさかあいつ・・・」
ルイズは理解した。ギアッチョはシエスタやマルトー達と対等に向き合う為に、敢えて
スタンドを見せることを決意したのだ。メイジだと――貴族だと思われる危険を冒して。
今、ギアッチョはそれほどまでに仲間というものに惹かれていた。
75 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/19(火) 20:23:59 ID:???
「ようやく来たようだねぇ面白頭君 てっきりもうアルビオンあたりまで逃げ出してる
んじゃあないかと思っていたよ」
ギーシュは心底愉快そうに言った。アルビオンとやらがどこにあるかは勿論知らな
かったが、その挑発のあまりの陳腐さにギアッチョはキレる気にもならなかった。
「逃げる?今逃げるっつったかァ~てめー?こいつは傑作だな!ええ?おい!」
わざわざギーシュがルイズに使った言葉でギアッチョは罵倒を返す。
「このギアッチョがてめー如きに逃げる必要なんざ全宇宙を探したって見つかり
そうにねーもんだがよォォォーーー 見つかるのはせいぜいてめー相手の決闘を
『やめてやる』理由ぐれーだぜ ええ?オイッ!」
ギャラリーから失笑が漏れた。ギアッチョはそのまま続けてギーシュを挑発する。
「今ここでよォォ~~~ 土下座をしてルイズに謝ってから学院を出て行きな!
そうすりゃあ『命までは』とらないでおいてやるぜマンモーニ!!ええ!?
やってみろよおい!!ああ!?」
ギーシュがルイズに言ったことをちょっとグレードアップさせただけのその挑発に、
ギーシュの怒りはいともたやすく爆発してしまった。
「きき、貴様ぁああーーーーッ!!!もう命乞いをしたって許さないぞッ!!
今ッ!!決闘を開始するッ!!!泣いて詫びろ平民がァーーーーーッ!!!」
「ハッ!てめーが言ったことを言い返されただけで面白いよーにキレてくれる
じゃあねーかマンモーニッ!!少なくともてめーの薄っぺらくて小汚ェ精神
よりゃあよォォーー このルイズのほうがよっぽど上等な魂を持ってるぜッ!!」
ギーシュが懐から乱暴に造花の薔薇を取り出すと同時に、ギアッチョの双眸が
スッと色をなくし――2人の決闘が始まった。
19 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/20(水) 21:35:47 ID:???
ギーシュは薔薇の杖でギアッチョを指して言う。
「何も知らない平民のためにあらかじめ言っておいてやろう」
何が何でも言葉でイニシアチティブを取りたいようだ。聞かれてもいないのに
ギーシュはべらべらと自分の力を喋る。
「僕の二つ名は『青銅』 青銅のギーシュだ 従って――君の相手はこいつが
する・・・行けッワルキューレ!」
ギーシュが造花の薔薇を一振りするとその花弁が一枚宙を舞い、
ズォオォオッ!!
青銅の甲冑に姿を変じた。ギーシュはキザったらしい仕草で杖を下ろすと、
眼の前の平民がいかに驚くかを観賞しようとギアッチョを見るが、
「おもしれーもんだな」
と呟くギアッチョの表情には何の変化も起こらなかった。
「・・・ッ、平民が・・・!余裕ぶっていられるのも今のうちさ!ワルキューレッ!!」
自慢のワルキューレを前にして何ら取り乱さないギアッチョに、ギーシュは
もういいとばかりにワルキューレを襲い掛からせた。
猛然とこちらに向かってくるワルキューレを見据えて、しかしギアッチョは
眉一つ動かさない。
――ホワイト・アルバムを身に纏い、そのまま奴まで歩いていって直に発動
させる・・・オレがその気になりゃあ30秒もかからねーが、それじゃつまらねぇ
こいつは「恐怖」と「屈辱」を存分に与えた上で殺すッ!!
などとギーシュをいたぶる戦略を練っていると、
「ギ、ギアッチョさん!!逃げてくださいっ!!」
動かないギアッチョにシエスタが叫ぶ。しかし時既に遅し、ワルキューレはもう
ギアッチョの懐に潜り込んでいた。そしてその右手がギアッチョの腹に――
22 :マロン名無しさん:2007/06/20(水) 21:36:49 ID:???
スッ ドガシャアア!!
当たることはなかった。ギアッチョは引きつけたワルキューレから最小限の
動きで身をかわし、青銅の騎士はその勢いのまま地面に突っ込んだ!
「てめーの自慢の魔法はよォォーー この程度なのか?え?マンモーニ」
ギアッチョはギーシュに向き直ると、感情のないままの眼で彼を見る。
「一度攻撃を避けただけで何を得意になっているんだい?」
しかしギーシュもその程度で焦りはしない。自分のワルキューレはまだ何体も
いるのだ。ギーシュは薔薇を振って更に2体のワルキューレを呼び出した。
二体の騎士は土を蹴ってギアッチョに向かって突進し、そっちにギアッチョが
気を取られている隙に、さっき倒れた一匹目がギアッチョの足に飛び掛って
引きずり倒す!・・・はずだった。しかしワルキューレが彼の左足を捕らえる
瞬間その足はスッと持ち上げられ、一体目はまたも惨めに大地へ倒れた。
続く二体目の突進を一体目をまたぐステップでかわし、その後をついて
走ってきた三体目は折り重なって倒れる先の二体にぶつかって動きを止めた。
オォォォ、とギャラリーにどよめきが走る。
「どーやらよォォ~~~ もったいぶった外見してやがるが・・・単に遠隔操作
出来るだけのスットロいデク人形だったみてーだなぁあぁ メローネの
ベイビィ・フェイスの足元にもおよばねーぜ」
合間にギーシュを侮辱することも忘れない。とはいえ、普通の人間なら一体目の
一撃を腹に受けて一瞬でくたばっているはずだ。ギアッチョがそれを回避出来た
理由は、彼が幾百の修羅場を潜り抜けて来たからに他ならない。スタンドなど
なくても、ギアッチョにはワルキューレの一挙手一投足が予測出来ていたのである。
24 :マロン名無しさん:2007/06/20(水) 21:37:49 ID:???
ギーシュにはギアッチョが何を言っているのかよく分からなかったが、自慢の
騎士達をデク人形呼ばわりされたことだけは理解出来た。
「・・・少し素早いからと言って調子に乗らないでもらいたいね平民!!ここまで
頑張ったことは褒めてあげよう だがこれで終わりだッ!!」
いくら避けられるからといって魔法に平民が勝てる道理などないのだ。・・・と、
ギーシュはそう思っている。その自信から出た勝利宣言であった。
「漫画みてーな陳腐なセリフ吐いてる暇があんならよォォ~~・・・とっとと次の
手を披露してみろよ マンモーニよォォーー」
「まだ言うかッ!!行けッワルキューレ達!!」
ギーシュが造花の杖を、一回、二回、と振り下ろす。薔薇の花弁はそれに
合わせてひらひらと舞い落ち、彼の造花から全ての花弁がなくなると同時に、
更に四体のワルキューレが姿を現した。四体のワルキューレ達は主人を
守りつつギアッチョを囲い込むように布陣し、その間にいつのまにか
起き上がってきた最初の三体がギアッチョの後方を固めた。
「ああっ・・・囲まれた!!」
「ギアッチョぉ!!隙が空いてるうちに逃げ出せッ!!」
たまらず叫んだのはシエスタとマルトーである。しかしギアッチョは今度も動く
気配を見せず、代わりに首だけをひょいと彼女達に向けると、
「心配は無用だぜ それよりよォォーー ちゃんと見てろよマルトー! シエスタ!
おめーも眼をそむけんじゃあねーぜ」
と言い放った。ギーシュは「遺言なら今のうちに言っておくことだね」などと喚いて
いるが、全く意にも解さない。自分などここにいないかのように振舞うギアッチョに
ギーシュの怒りはとうとう頂点に達した。
「もうッ・・・もういいッ・・・!!貴族を侮蔑したことを悔やみ・・・絶望に身をよじり
ながら死んでいけッ!!!」
その言葉を合図に、全方位に布陣したワルキューレ達は一斉にギアッチョに
襲いかかり、シエスタ達の悲鳴をバックコーラスにその剣を振り下ろ――
25 :マロン名無しさん:2007/06/20(水) 21:38:40 ID:???
「ホワイト・アルバムッ!!」
ギアッチョがその名を叫んだ瞬間、全ては動きを止めた。ギャラリー達は――
ルイズやキュルケですら――目の前の異常な事態に声も出せなかった。
ギーシュは半ば状況を理解したのか、口をぱくぱくとさせているが――これも
また声になっていない。
ギアッチョを取り囲んでいたワルキューレ達は、ギアッチョが何かの名前を
呼んだ瞬間、青銅と氷の彫刻と化して動きを止めた。そして輪になった
オブジェ達の凍った頭部を、「何かに包まれた」ギアッチョの右腕が、一体、
また一体と粉砕してゆく。誰もが無言のままオブジェの破壊は続き、頭部を
失った哀れな人形達がまるで花を開くように外側に倒れていくのを破壊者は
色をなくした眼で見下ろし。ワルキューレだったものを踏み越えて、男が花の
外側へゆっくりと姿を現した時、
ギャラリーはパニックに陥った。
泣き叫ぶ者、もんどりうって逃げ出す者、呆然とその場に立ち尽くす者。彼らの
悲鳴と足音でヴェストリの広場は一瞬にして阿鼻叫喚の様相を呈した。無理も
ない、男がやってのけたのは一瞬にして八体もの物体の動きを完全に停止
させるほどの氷結である。おまけに停止させたのはただの物体ではない。
「青銅」のゴーレムが「殺す気で」剣を振り下ろしているのである。それを
一瞬で完全に停止させて男は平然とギーシュを睨んでいるのである。彼らが
恐慌に陥るのも無理からぬことであった。
「あの男が・・・これをやったっていうの・・・?」
愕然としてギアッチョを見るキュルケだが、ふとルイズに眼を向けると、
「あいつ・・・こんな物凄い力を持ってたの・・・!?」
彼女もまた衝撃を受けていた。今朝の部屋ごと冷却事件の時点で気付くべき
だったかもしれないが、とにかくルイズは今改めてとんでもない男を召喚して
しまったと思った。常に無表情なタバサもこれには驚きを隠し切れないらしく、
わずかに眼を見開いていた。
29 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/20(水) 21:39:34 ID:???
「バカな・・・・・・ただの平民のくせに・・・・・・そんな・・・嘘だ・・・・・・」
ギーシュはうわごとのように否定を繰り返している。そんなギーシュに今の
ギアッチョの関心は微塵も向いていなかった。
「青銅ってよォォ~~ 「青い」銅って書くんだが・・・実際の青銅は
大体緑色してんだよォォォーーーー なんで緑銅じゃあねーんだァァオイ!!
ナメやがってこの言葉ァ超イラつくぜェ~~!!クソッ!クソッ!コケに
してんのかッ!!ボケがッ!!」
またしてもよく分からないことを喚きながらワルキューレの残骸を踏み
つけている。ギーシュはそれを見ながらぶつぶつと何か呟き続けていたが、
次第に我を取り戻すと自分はまだ負けてはいないということに気付いた。
花弁の無くなった杖を構えると、ギアッチョを睨んで叫ぶ。
「いつまで遊んでいるんだ平民ッ!!勝負はまだ全然ついちゃあいない!!」
そうとも貴族が平民に負けるわけがない!長年の間に染み付いた選民意識は
そう簡単には変わらない。ギーシュはまだまだ勝てると思っていた。
「僕の魔法がワルキューレだけなんて思わないで欲しいね!!」
そう言い放つがいなやギーシュは呪文を唱え出した。
「くらえッ!石礫をーーッ!!」
言うがはやいか、ギーシュのかざした杖の先に出現した大量の石塊が
ギアッチョめがけて降り注いだ!
「チッ・・・!」
ギアッチョは走って身をかわそうとするが、広範囲に撃ち出された石の雨は
とても避けきれるものではない。石の一つがギアッチョの左足に直撃したッ!
「ぐッ!!」
石に片足をつぶされ、ギアッチョは思わず膝をついた。そんなギアッチョを
見下ろしてギーシュは今度こそ確信した。
31 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/20(水) 21:40:50 ID:???
「ハハハハハハハッ!どうだッ!!これが僕の力さ!!平民如きが偉そうに
してくれたが・・・今度は僕の番だッ!!体中を穴だらけにしてやr」
「あーあー ちょっといいかギーシュさんよ 靴の紐が解けちまったみてーで
よ・・・ 今から結ぶんで少々待っちゃあくんねーか」
もはや走ることも出来ないというのに、ギーシュの口上をさえぎってギアッチョは
のんきに靴をいじりだした。
「こッ・・・この男・・・!!あの世で詫びろ!!喰らえ石礫ーーーッ!!」
キレたギーシュは石礫を跪くギアッチョ目掛けて発射し、
「全くよォォ~~ バカとハサミは使いようってやつだよなァアァ」
その瞬間ギアッチョは薄く笑って後方に飛びのいた!
バガガガガッ!!
ギアッチョを狙っていた石礫はその全てが地面に命中し、その衝撃で辺りは
土煙に包まれる!
「何ィィィーーーーッ!?奴はこれを狙っていたっていうのか!?な、何も見え
ないッ!!」
土煙はギアッチョの姿を完全に覆い隠した。ギーシュはギアッチョのいた
場所から距離をとると、石礫をいつでも発射できるように呪文を唱えて杖を
構える。そして彼が呪文を唱え終る辺りで、
「さぁ姿を見せろ・・・お前は走れない、この一撃で終わりだ・・・ッ!!」
徐々に煙は薄れ・・・そして、ギアッチョが姿を現した!!
ギアッチョは先ほどまでと殆ど変わらない場所に立っている。
――何かをするつもりか・・・!?
とギーシュは考えたが、
「しかしこっちのほうが早いッ!!」
34 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/20(水) 21:41:45 ID:???
ギアッチョが動く前に速攻で石礫を撃ち出した!!石礫は目にも留まらぬ
速さでギアッチョに飛来し、そして命中――
ギュインッ!!
「・・・何の・・・音だぁぁ~~!?」
ギアッチョは変わらずそこに立っている。そして何かの音だけが不吉に響きだした!
ギアッチョはギーシュにだけ聞える声で答える。
「この煙がいい・・・おかげでギャラリーに姿を曝すことなく・・・一瞬だけ発動できた・・・」
バヂッ!!ギュイン ギュイン!!
「な・・・何の事だ・・・ッ!?」
ギュイン!!ギィンッ!!
「ジェントリー・ウィープスッ!スタンドパワーは使うがよォォ~~
いい感じに固定出来たぜ・・・」
ギィンッ!!ギュインッ!!
「だ・・・だから何の事なんだッ!!」
ギュイィンッ!!ギィィン!!
「眼をこらすんだな・・・てめーには見えないか?止まった空気が
見えないか!?よく見ろよッ!!」
バッギィィイーーーーーンッ!!!
39 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/20(水) 21:42:38 ID:???
「バッ・・・バカな・・・」
ドスドスドスドスドスドスドスッ!!!
「ガフッ!!」
飛来した無数の石の弾丸は、ギアッチョの周りに作られた凍った空気の壁に
遮られ、ギーシュ自身の元へと跳ね返ったッ!!
「反射魔法・・・!?ねぇルイズ!あいつ一体何者なのよッ!!」
キュルケはルイズに問い詰めるが、
「そんなこと私だって知りたいわよ!!」
ルイズにも答えることは出来なかった。ギアッチョいた世界やその境遇などは
一通り聞いたが、ギアッチョの使っている能力については、「スタンド」という
名前であるということしか教えられていなかった。ルイズにも彼の力の正体は
分からなかったのである。冷静に戦況を見ていたタバサでさえ、ギアッチョの
「反射魔法」の正体は分からなかったのである。
42 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/20(水) 21:43:35 ID:???
「どんな感じだァ?てめーの魔法でやられる気分ってのーはよォォ~~」
ギアッチョは無慈悲にギーシュを見下ろしていた。ギーシュの全身には
血まみれの穴が穿たれているが、彼はまだかろうじて意識を保っていた。
しかしギアッチョは容赦をしない。おもむろにギーシュの首をつかむと、
グイッ!と持ち上げた。
「オレはてめーに言ったよなァアァーー・・・ 殺される『覚悟』は出来てんのか
ってよォォォ え?どうなんだオイ 『覚悟』は出来てんだろーなァァア!!」
「・・・う・・・うう・・・ ぼ・・・僕が・・・悪かった・・・謝る・・・き・・・君にも・・・
ルイズ・・・にも・・・ だから・・・た・・・助けてくれないか・・・お願いだ・・・」
その言葉に、ギアッチョの眼に明確な殺意が宿る。
「人をよォォ・・・殺そうとしておきながら・・・ え? 何なんだそりゃあ?
まさかとは思うがよォォーーー 貴族だから殺されるはずがない・・・なんて
思ってたんじゃあねーだろーなぁあ」
ギーシュは朦朧とする意識の中で、必死に命乞いをする。
「・・・あ・・・ああ・・・思って・・・いた・・・ 僕が・・・悪かった・・・ だから
頼む・・・ お願いだ・・・死にたく・・・ないんだ・・・」
「人に道を作るのは『覚悟』だ・・・ てめーは負けて死ぬ『覚悟』がなかった
ばかりか・・・ルイズに対して責任を取る『覚悟』すらねぇ・・・ 『覚悟』がない
てめーはよォォーーー・・・! その命で責任を果たしてもらうぜェー!!」
ギアッチョはギーシュの首に力を込める!
「待って!やめてギアッチョッ!!」
46 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/20(水) 21:45:22 ID:???
声の主はルイズだった。ギアッチョはギーシュの首をつかんだままルイズを
見る。
「何故止める?こいつは『覚悟』もなくおめーの命を侮辱した・・・ 償いは
てめーの命でするべきだ」
「そうね・・・私は凄く悔しかったわ・・・だけどだからって殺すのは違うわ
ギアッチョ、ここはあなたのいた場所じゃない・・・日々『覚悟』を持って
生きてる貴族なんかどれほどもいやしないわ あなたが思っているより
ここはずっと甘くて怠惰な場所なの 常に『覚悟』と『責任』を果たさせようと
するあなたはここでは異質な存在なのよ ・・・異質な平民の噂が宮中に
届けば・・・決闘だろうがなんだろうが関係ない あなたが何かをしでかす
前に 貴族を殺した罪で処刑されてしまうわ」
ギアッチョは色のない瞳でルイズを見つめる。
「・・・それに 私はギーシュに侮辱を償ってもらいたいんじゃないわ
いつか魔法を使えるようになってこいつを見返してやりたいのよ」
それを聞いたギアッチョの双眸に、スッと色が戻る。そして、
ドサッ!
ギーシュを投げ捨ててギアッチョはルイズに向き直る。
「しょーがねぇなぁぁ お嬢様の頼みとあっちゃあ仕方ねー これで
勘弁してやるとするぜッ マンモーニ!!」
ギアッチョがそう宣言すると、ギャラリーからどっと安堵の息が漏れ、
そして彼らを掻き分けるようにして派手な金髪の少女がギーシュに駆け寄る。
モンモランシーだった。
778 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/21(木) 17:46:38 ID:???
ギーシュを介抱しているモンモランシー達を尻目に、ギアッチョはシエスタと
マルトー達の元へ向かっていた。
「・・・よぉ」
マルトーは何を言っていいのか分からないようだった。ギアッチョはメイジ
なのか?ならばギアッチョは貴族なのか?それならオレ達の敵なのか・・・?
無数の疑問が彼の頭の中を駆け回っていた。
「ギアッチョさん・・・ ・・・お疲れ様です」
同じく何を言えばいいか分からないらしいシエスタが、とりあえずねぎらいの
言葉をかける。
「・・・ああ 見せたかったのは今の・・・オレの力だ 詳しいことは今度――機会が
あれば説明するがよォォ~~・・・ オレはこの世界の人間じゃあねえ」
突然のギアッチョの告白に、マルトー達は眼を丸くする。
「この能力は魔法じゃあねえ 「スタンド」っつーオレの世界の力だ
黙っていたことは謝るぜ・・・だが オレをよォォーー 軽蔑する前に一つだけ
聞いてくれ オレは『平民』だ 世界が違ってもこれだけは変わらねぇ・・・
身分の話じゃあねー おめーらと同じ・・・『上』の圧政に立ち向かう人間なんだ」
少々混乱したようだが、シエスタとマルトーは黙って話を聞いていた。
「・・・言いたかったのはそれだけだ こんなことしなくても黙ってりゃあ
よかったのかもしんねーが・・・ 仲間だと思ってくれてる人間を騙し続ける
なんてことだきゃあしたくなかったんでよォォ~~」
そう言い終えると、ギアッチョは咳払いを一つして先を繋いだ。
「・・・ま そーいうわけだ オレを嫌うなら遠慮はいらねー 文句を言う
つもりも――」
「何言ってるんですかっ!!」
さえぎったのはシエスタだった。シエスタは一歩前に進み出ると、ギアッチョの
手を取って言う。
780 :サブ・ゼロの使い魔:2007/06/21(木) 17:47:40 ID:???
「ごめんなさい ギアッチョさんの力を見たとき、私も正直あなたを疑って
しまいました・・・でも今こうして話すと分かります 『仲間』を失うリスクを冒して
まで自分の力を見せたギアッチョさんの『覚悟』が」
シエスタはマルトーに顔を向ける。マルトーはがしがしと頭を掻くと、
「おおよ!男の『覚悟』に報いねぇのは男じゃねえ・・・そして平民じゃあねえ!
疑ってすまなかった あんたはまさに『我らの剣』だ!なぁ友よ!」
そう言ってばしばしとギアッチョの背中を叩いた。
その様子を、ルイズは遠くから眺めていた。その隣にはキュルケとタバサ。
「・・・なによあなた 何かうれしそうじゃない?」
キュルケがルイズの顔を覗き込む。ルイズは少し照れたようにキュルケを
睨みながら、
「当然でしょ 私にも『仲間』が出来たんだから!」
と言う。その綻んだ顔を複雑そうな眼で見ながら、キュルケは呟く。
「・・・あ、そ ・・・・・・まぁ今回は引き下がってあげるわ ギアッチョ」
何か言った?と言うルイズをキュルケは「うかれすぎて耳がおかしくなったんじゃあ
ないの?」とからかい、それにルイズが反論し――きゃいきゃいと騒ぐ二人を、
タバサはやれやれといった眼で見つめていた。
青銅のギーシュ―― 己の魔法で倒されるという最も屈辱的な方法で敗北。しかし
ケティに殴られたシーンを誰も見ていなかったので二股はバレなかった。そこの
ところはラッキーな奴。(再起不能?)
<==To Be Continued...
次回 サブ・ゼロの使い魔 (ジョジョ×ゼロ使) 第一章 その5
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