前回 【ミリマス】765学園物語HED √LR 前編

366: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/17(土) 23:56:26.80 ID:ElLnqnJNO
P「全員揃ったみたいだし、行こうか」

俺達はいつもの場所へ歩き出す

少し歩いた場所にあるそこは静かで涼しく、花火を見るのに最高の場所だ

屋台の食べ物を食べながら雑談していると、一発目の花火が上がった

俺達は会話をやめ、花火に魅入る

P「綺麗なもんだ」

毎年見ているが、やはり花火は良い物だ

志保「兄さん」

隣に立っていた志保が口を開く

志保「花火、綺麗ですね」

『はなびきれいだね!』

P「っ…?」

志保「兄さん?」

P「ん、ああ、綺麗だな」

今のは…

引用元: 【ミリマス】765学園物語HED √LR 


 

 
367: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/18(日) 00:01:08.89 ID:cnzZuayCO
志保「兄さん」

P「ん」

志保「兄さんがゴールデンウィークで言ってくれたこと、憶えていますか?」

P「んー…」

志保「もう、兄さんは忘れっぽいですね」

志保「過去のことじゃなく、今の、これからの私を見ていきたいって言ってくれました」

志保「私も…少しだけ、前に進むことにします」

P「…そっか」

志保「だから、背中を押してくれますか?」

P「もちろんだ」

志保「ありがとうございます、兄さん」

そういうと志保は微笑む

その笑顔はどこかで見たことがある気がして

頭の芯が痛んだ

372: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/18(日) 23:45:50.94 ID:tbajUCCdO
奇妙な感覚があった

映像を見せられているような…自分が一切その中に干渉出来ない、それがわかる

映されている映像は全ての風景が白黒で、かなりの部分が割れていて正直9割方見えない

だけど…

P「なんだ…これ」

僅かに見える景色には黒猫の頭のような何かと、泣きじゃくる女の子が見える

しかしそれも次第にノイズが掛かり、見えなくなった時

俺は頭痛で目を覚ました

373: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/18(日) 23:50:59.35 ID:tbajUCCdO
体を起こす

P「頭痛ぇ…」

頭ががんがんする

しかし熱っぽさなどはなく、ただ単に寝過ぎたか寝不足だろうと判断した

P「新学期早々休むわけにはいかないしな」

夏休みは昨日で終わった

今日からまた学園が始まるんだ

374: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/18(日) 23:55:14.09 ID:tbajUCCdO
P「おはよ」

階段を降りると志保が朝食の準備をしていた

志保「おはようございます、兄さん」

P「おはよう志保、このみ姉さんと桃子は?」

志保「このみさんは朝一番で会議があるそうです、桃子は私が降りてきた時には行く準備を終わらせてすぐに行ってしまったのでわかりません」

P「そっか」

二人とも今日は早いな

志保「…?兄さん、少し顔色が悪くないですか?」

P「え?そうか?」

375: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/18(日) 23:58:36.30 ID:tbajUCCdO
志保「少しかがんでください」

P「ん」

志保の手が俺の額に添えられる

冷たくて気持ちが良い

志保「熱は…ないですね、体調は?」

P「ん、頭がちょっと痛むくらいかな、体調は大丈夫だ」

志保「頭…?本当に大丈夫ですか?吐き気は?」

P「ないない、多分寝不足か何かだよ」

志保「…」

それでも志保は心配そうにしている

376: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/19(月) 00:15:26.13 ID:b80DziFCO
P「大丈夫だって、調子悪くなったら風花先生にセクハラしに行くからさ」

志保「セクハラはどうかと思いますが…それなら」

志保は納得してくれたようだ

P「じゃあ朝飯を食べよう、腹が減って仕方ない」

志保「ではよそいますから座って待っててください」

P「ああ、楽しみだ」

志保と朝食を摂り、学園に向かった

383: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/19(月) 21:14:30.21 ID:lwW/HlRpO
放課後、冬馬達と遊んでいい汗をかいた

帰宅した俺は汗を流すためにシャワーを浴びることにした

脱衣所の扉を開けると

志保「…え?」

P「えっ」

 着に手をかけている志保がいた

志保「…」

P「…」

お互いに見つめ合う

まるで時間が止まったような、そんな錯覚をする

384: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/19(月) 21:16:42.05 ID:lwW/HlRpO
そんな中、先に動いたのは志保だった

志保「い…」

P「い?」

志保「いつまで見てるんですか!」

P「うおっ!」

志保に大声を出され思わずビクッとする

志保「は、早く出て行ってください!」

P「す、すまん!」

俺は脱衣所の扉を閉めると部屋に向かって逃げ出したのだった

385: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/19(月) 21:55:51.48 ID:lwW/HlRpO
自室のベッドに座っていると扉がノックされる

志保「兄さん、入りますよ」

P「あ、ああ…」

志保が部屋に入ってくる

顔は赤く、目は逸らされている

P「さっきは悪かった」

志保「本当に、反省してください」

P「はい」

386: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/19(月) 22:11:37.46 ID:lwW/HlRpO
志保「いくら家族しかいないとしても、ちゃんと確認はするべきです」

志保「たまたま兄さんが覗いたのが私だったからこれで済んでいますがこれがもし私ではなく遊びに来ている海美さんや恵美さん、このみさんの友人だったりしたら大変な事になってますよ」

P「あー、うん」

志保「とにかく、気を付けて下さい」

P「わかった」

志保「…それで」

P「ん?」

志保「兄さん、頭痛の方はどうですか?」

P「頭痛なら昼を過ぎる前には収まったよ」

志保「そうですか、それなら良かったです」

志保「…もし、頭が痛くなったら気を付けてくださいね?頭は、その…危険ですから」

P「ああ」

387: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/19(月) 22:32:16.64 ID:lwW/HlRpO
志保が部屋から去った後、俺は深いため息をついた

P「…」

志保の 着姿を見たとき、正直ドキドキした

本来なら家族に抱いてはいけない気持ちだ

しかし頭でわかってはいても簡単に収まるものではなかった

P「落ち着け…」

しかし思考とは裏腹にどうしても志保を意識してしまう

結局この日から俺は、志保を女の子として意識してしまうようになったのだった

392: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/20(火) 00:15:07.50 ID:qvJP9oMjo
特別編【着替えを覗かれた場合】

・海美の場合
海美「あれ?Pも一緒にお風呂入る?やった!ほらほら遠慮しない!小さい頃は一緒に入ってたし流しっこしよ!」

・恵美の場合
恵美「…え?あ、あははーなんかごめんね?アタシの着替えなんかより他の子の着替えを覗いたほうが嬉しいよね…」

・莉緒の場合
莉緒「あら?うふふ、どうPくん?私のこの身体!セクシーでしょう?通販で買った新しい化粧品を塗ってあるのよ?興奮するかしら?…あら?Pくん?何でそんな哀しい人を見る目をしてるの?」

397: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/20(火) 00:39:48.38 ID:qvJP9oMjo
特別編2

・翼の場合
翼「きゃっ!…P先輩?もう、いきなり入ってくるからびっくりしちゃった。あ、この 着どうですか?未来や静香ちゃんと一緒に買いに行ったんですよ~!もっと見たい?今日の夜いっぱい見せてあげますから今はだめぇ♪」

・琴葉の場合
琴葉「Pくん!?そ、その、ごめんなさい、こっちこそ鍵をかけてなかったから…え?お詫びに1つだけ言うことを聞く?えっと、それなら…Pくんも 着になってくれたら…お相子、かな?」

・ジュリアの場合
ジュリア「!?こ、この変 !」(マッハパンチ)

・未来の場合
未来「ほえ?…………………きゅ~」(気絶)

399: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/20(火) 00:51:49.94 ID:qvJP9oMjo
特別編3

・静香の場合
静香「P先輩!?なんで…鍵が開いてた?そ、それは確かに私の落ち度ですが…と、とにかく見ないで早く出て行ってください!…綺麗?も、もう!そんなことじゃ誤魔化されませんから!」

・エレナの場合
エレナ「あ、あー見られちゃったネ。…ワタシの家では最初に裸を見せた相手とケッコンしなさいって言われてるかラ…責任、取ってネ?」

・桃子の場合
桃子「変 」

415: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/20(火) 22:50:43.31 ID:4qrm9c2YO
幕間 保健室の場合

「ふう…今日も一日平和だったな~」

保健室で伸びをする女性

その仕草で二つの特大フルーツが揺れる

彼女は豊川風花、765学園で保険医をやっている

彼女の特徴はむっちりとした身体と凶悪なまでの山脈で、高等部の某生徒と某生徒から果てしない敵意を向けられていることを彼女は知らない

P「こんにちは」

風花「あら、Pくんどうしたの?」

保健室に一人の男子生徒が入ってきた

P「ちょっと引っ掛けまして」

そういって手の甲を見せる

確かにそこには何かに引っかかれたように赤い線が引かれていて、血が流れていた

風花「消毒は?」

P「まだです」

風花「それじゃあちょっと待っててね」

416: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/20(火) 22:56:02.44 ID:4qrm9c2YO
薬棚に手を伸ばす風花

しかし

風花「あ、そうだった…」

消毒液が切れていた

風花「ふっ…ん~!」

背伸びをして棚の上にある消毒液の予備を取ろうとする風花

しかしなかなか手が届かず、何度も背伸びを繰り返す

その度に山は揺れた

P「ほう」

カシャリ

揺れる度にシャッターを切る男子生徒

風花「な、何を撮ってるの?」

P「あ、お気になさらず~」

風花「そ、そんなこと言われても」

明らかにカメラを向けられて緊張してしまう

417: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/20(火) 23:17:44.14 ID:hfy9/SpqO
ようやく箱に手が届くが、箱と一緒に色々落ちてきてしまい風花は尻もちをついた

風花「いたたっ…」

売った部分を擦る風花

P「風花先生大丈夫ですか!?痣になっていたら大変だから俺が擦りながら確認してあげますよ!」

風花「もう!何言ってるの!」

風花は赤面しながら立ち上がる

P「ちっ」

風花「今舌打ちしなかった?」

P「気のせいですよ気のせい」

風花「それよりも、手を出して」

手慣れた感じで治療をしていく風花

男子生徒の目線は自分の手…ではなく風花の  を見ていた

418: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/20(火) 23:24:35.42 ID:hfy9/SpqO
簡単にテーピングをして治療が終わった

風花「はい、気を付けてね」

P「ありがとうございます、風花先生」

セクハラさえしなければ良い子なんだけどなぁと風花がぼんやり考えていると

P「あ、そうだ、実は風花先生にプレゼントがあるんです」

風花「え?」

P「何時もお世話になってるお礼にってみんなで考えたんです、受け取ってくれますか?」

風花「Pくん…」

風花は感動していた

やっぱりこの子は良い子だ、セクハラさえしなければ

そして男子生徒が取り出したのは…

P「皆のお礼の気持ち、ちょっと面積の小さいビキニです!」

風花「もう!ちょっと期待したのに!」

やっぱりこの子は駄目な子だ

風花はそう思った

結局せっかくもらったし捨てるのも失礼な気がして、海水浴に着ていくことになるのだがそれは別のお話

426: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/21(水) 23:43:24.43 ID:AM63v60rO
俺は白黒の、割れた世界に立っていた

…またか

視界が9割塞がれ、音すらもほとんど聞こえない壊れた世界

夏休みが明けてから何度もこの夢を見ている

P「今日は何だ…?」

割れた世界から覗く映像を見る

…また、女の子が泣いている夢だった

泣きじゃくる女の子を前に、俺は何も出来ずに立ち尽くす

このままノイズが走ってフェードアウトするのがいつものパターンだが…

今日は少し違った

427: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/21(水) 23:59:19.84 ID:AM63v60rO
泣いている女の子の側に誰かが立った

女の子は顔を上げてその誰かを見る

初めて女の子の顔が見えた

…志保?

もしこの泣いている女の子が志保ならば、これは俺の記憶なのか?

ならばこれは俺のなくした記憶の断片なのだろうか?

それなら世界が割れていることも納得できる

この世界から何か手がかりが掴めるかも知れない

痛み始めた頭を意識しないようにしながら、俺は記憶に向けて歩き出す

しかし一歩進める毎に頭痛は激しさを増し、とうとうノイズが走り始めた

意識が途切れる直前に見えたのは

胴体と首が離れた猫のキーホルダーだった

428: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/22(木) 00:05:45.09 ID:QKwUn4YhO
P「…っあ」

激しい頭痛に目を覚ます

思い出せないモノを無理矢理思い出そうとして脳に負担をかけすぎたからだろうか

P「…っ」

頭を押さえ、情報を整理する

あれは志保との記憶

ということはあの時泣いていた志保の隣に立っていたのは俺だろう

何らかの理由があって、志保が泣いてしまった

しかしそれだけでは何があったのかはわからない

P「…もう少し頑張るしかないか」

痛む頭を振って、俺はまたあの夢を見たときにやるべきことを考えるのだった

429: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/22(木) 00:12:06.54 ID:QKwUn4YhO
ある日の放課後

下駄箱に到着すると志保が下駄箱の前で立ち竦んでいた

P「志保、どうしたんだ?」

後ろから声をかけられ、志保の肩が跳ねる

志保「に、兄さん…」

P「ん?」

志保の靴箱を覗く

しかし、志保が上履きを履いているにも関わらず、そこには何も入っていなかった

P「志保、靴は…」

志保「…」

433: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/22(木) 23:18:37.41 ID:JDL4hWKQo
志保「靴は…その…」

志保が言いにくそうに口篭もる

志保の言葉を待っていると可奈ちゃんが駆け込んできた

可奈「志保ちゃん!靴あったよ!」

志保「可奈…」

可奈ちゃんは志保の靴を手にしていた

P「外に靴が?」

志保「…」

可奈「あ、先輩」

P「可奈ちゃん、その靴はどこにあったんだ?」

可奈「え?それは…」

志保「可奈!駄目!」

434: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/22(木) 23:21:35.39 ID:JDL4hWKQo
志保が止めようとするが可奈ちゃんはすでに口を開いていた

可奈「校舎裏の、焼却炉の中に…」

志保「ああ…」

志保の靴が、焼却炉の中に?

P「…志保」

志保「…はい」

P「誰にやられた」

志保「それは…わかりません」

P「思い出してくれ、殺しに行く」

志保「に、兄さん、落ち着いて下さい」

P「落ち着いてるさ、だから思い出してくれ」

435: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/22(木) 23:28:53.81 ID:JDL4hWKQo
P「人の大事な家族に手を出されたんだ、きっちり報復させてもらう」

志保「私は、気にしてませんから」

P「…」

志保「私は自分の事よりも、兄さんが誰かを傷付ける方が嫌です」

P「けど」

志保「兄さん、本当に、大丈夫ですから…」

志保に頼まれ、俺は一旦矛を収める

P「…わかった、志保がそう言うなら」

P「けどもし同じ事があれば言うんだぞ、すぐに駆け付けるから」

志保「はい」

P「帰ろう、志保…可奈ちゃん、靴を見つけてくれてありがとうな」

可奈「私も、志保ちゃんにお世話になってますからこのくらいは!」

志保「ありがとう、可奈」

可奈ちゃんと別れた後、俺達は帰路についた

436: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/22(木) 23:33:19.19 ID:JDL4hWKQo
翌日

P「静香、少し良いか?」

静香「P先輩、どうしました?」

P「志保の周りで志保の靴を隠すような屑はいるか?」

静香「…何かあったんですね」

P「ああ、昨日の放課後に…」

俺は静香に昨日の出来事を伝えた

静香「なるほど…」

P「心当たりは?」

静香「無いわけでは無いですが…証拠がなくて」

P「そうか…」

静香「私の方でも注意しておきます」

P「助かる、ありがとう静香」

438: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/22(木) 23:38:12.41 ID:JDL4hWKQo
志保が靴を捨てられてから数日後の休みの日

志保が部屋に訪ねてきた

志保「兄さん、明日は空いていますか?」

P「明日?明日は暇だけど、どうした?」

志保「少し、ピクニックに出掛けませんか?」

P「構わないよ」

志保「ありがとうございます、では明日、朝から行きましょう」

P「楽しみにしてるぞ」

志保「はい、私もです」

志保の方から遊びに誘ってくれるとは

少し嬉しくなった

439: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/22(木) 23:44:57.83 ID:JDL4hWKQo
翌日、用意が終わった俺は玄関で志保を待っていた

志保「お待たせしました」

P「その服…」

志保「はい、夏休みに…兄さんが買ってくれた服です」

志保は純白ワンピースに麦藁帽だった

P「…うん、やっぱりよく似合ってるよ」

志保「ありがとうございます、兄さん」

P「それじゃあ行こうか」

志保「はい」

二人で家を出る

少し歩くと

志保「兄さん、その…手を繋いでも良いですか?」

と志保が聞く

P「ああ、もちろん」

俺は志保の手を優しく握ると、志保は握り返してきた

443: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:11:24.34 ID:XGqYOAc1o
少し歩き、町外れにある丘にやって来る

志保「良い天気ですね、兄さん」

P「ああ」

志保の言ったとおりとても良く晴れ渡っており、雲一つ無い

志保「気温も過ごしやすいですし、今日にして良かったです」

P「ああ、風も気持ち良いしな」

心地良い風も吹いており、まさにピクニック日和と呼ぶのに相応しい日だ

志保「兄さん、少し登ってみませんか?」

P「良いぞ」

手を繋いだまま丘を登る

志保は俺の前に立ち、手を引いていた

444: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:14:42.57 ID:XGqYOAc1o
丘の頂上に立ち、町を見下ろす

志保「…良い景色ですね」

志保が髪を押さえながら口にする

P「ここからの景色は変わらないな」

昔と何一つ変わらない

志保「…」

P「そういえば志保」

志保「はい」

P「なんで今日は俺を誘ってくれたんだ?」

志保「それは…」

445: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:17:07.09 ID:XGqYOAc1o
志保「…私がお世話になり始めてから…その…兄さんと二人だけで出掛けることって一度もなかったので」

志保「…少し、独り占めしたくなりました」

P「…そっか」

可愛いことを言ってくれる

麦藁帽の上から頭をぽんぽんしてやる

志保「…もう、前が見えないじゃないですか」

志保は少し顔を赤くしながらそう言った

446: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:26:36.32 ID:XGqYOAc1o
ブルーシートを敷いて、昼食をとる

志保「この量、兄さんなら食べきれますよね?」

志保は三段重ねのお重を取り出した

…妙に荷物が大きいと思ったらそういうことか

P「このくらいなら余裕だな」

最近量が目に見えて増えた学食に比べれば余裕だ

P「いただきます」

俺は玉子焼きに箸を伸ばし、そのまま口に入れる

P「お、うまい」

志保「兄さん、口に入れながら喋るとお行儀が悪いですよ」

447: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:31:42.72 ID:XGqYOAc1o
P「ん」

玉子焼きを飲み込み、口を開く

P「いや、本当に志保の料理は美味いなぁ…ずっと作って欲しいくらいだ」

志保「そ、それは…まだ、早いんじゃないかと」

P「早い?」

志保「な、何でもありません!」

P「お、このきんぴらも中々…」

志保と話しながら昼食を楽しんだ

P「ああ、美味かった、ごちそうさま」

志保「お粗末さまです」

P「ありがとうな、志保」

志保「いえ…あ、兄さん、少しジッとしていて下さい」

P「?」

448: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:39:38.50 ID:XGqYOAc1o
志保が俺の口元に手を伸ばす

志保「…はい、とれました」

どうやら米粒がついていたようだ

P「ありがとう」

志保「いえ」

志保はとった米粒をジッと見つめた後

志保「…ん」

それを食べた

P「し、志保!?」

何故食べた!?

449: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:45:32.56 ID:XGqYOAc1o
志保「そ、その、ここで捨てるのもアレですしハンカチで包んだら引っ付いて厄介になりますしこうするのが一番良いというかその」

志保「と、とにかく!今の行動が最善なんです!」

P「お、おう…」

ティッシュは?と思ったが口にしないことにした

志保「~!」

突然、志保は真っ赤になりながら俺の太ももに頭を降ろした

P「ど、どうしたんだ今日は」

志保「きょ、今日は兄さんを独り占めするって決めてるので、私のやりたいようにやります」

P「それで膝枕か…」

普通逆じゃね?と思ったが志保の頭をゆっくり撫でてやる

450: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:48:38.11 ID:XGqYOAc1o
P「言い触り心地だ」

志保「毎日手入れしてますから」

P「なるほど」

さらさらとした手触りに思わず夢中になる

…良い匂いもしてくるし

P「うっ」

何故だか匂いに反応してしまう

落ち着け俺、志保を膝に乗せている状態で何を反応しているんだ

志保「…!」

P「ど、どうした?」

志保「い、いえ…」

一瞬気付かれたかと思ったが気のせいみたいだ

451: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/23(金) 23:57:39.53 ID:XGqYOAc1o
深呼吸をして精神を落ち着かせる

ようやく収まったか

安心して志保の頭を撫でていると、寝息が聞こえてきた

どうやら志保が眠ったようだ

P「…」

志保の頭を撫でながら先日あったことを思い出す

志保の靴が焼却炉に捨てられていた

誰かに嫌がらせを受けているのは静香の反応からして間違いなさそうだ

何故志保がそんな嫌がらせを受けなくてはならないのか

この子は心優しい、とても良い子なのに

志保を守るために何が出来るのか、考えなくてはならない

志保の頭を撫でながら、俺は頭を悩ませるのだった

452: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 00:02:18.11 ID:+Qv34JBfo
週が明け、再び学園が始まる

兄さんとピクニックに行ったおかげで気が楽になった

やっぱり兄さんの隣にいると落ち着ける

…予想外のこともあったけど

…あれは兄さんが私のことをそういう対象として見てくれているって事だろうか

恥ずかしいと同時に、嬉しくも思う

志保「…」

猫のキーホルダーを取り出し、眺める

兄さんとの思い出の品

いつか気持ちを伝えられるかな

キーホルダーを見ながらそう思った

…私はこの時、私を見ている悪意ある視線に気付けなかった

453: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 00:06:47.89 ID:+Qv34JBfo
体育の授業が終わり、教室に戻ってくる

手早く着替えを済ませ、昼休み後の移動教室の準備をしているとあることに気付いた

…猫のキーホルダーがない…!?

志保「っ!」

急いでポケットや鞄を探るが見当たらない

志保「…なんで…!」

無くすはずがない

静香「志保、どうしたの」

私の異変に気付いたのか静香が声をかけてくる

しかし今の私に静香に構う余裕はない

志保「後にして」

私は静香を突っぱねてもう一度鞄の中を捜す

手伝ってもらうという選択肢は思いつきもしなかった

454: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 00:10:09.45 ID:+Qv34JBfo
志保「どうして…!どうして…!」

あれは大切なモノなのに

あれが無いと、私は…!

静香「志保、落ち着いて、一体何があったの!?」

志保「黙ってて!」

私は大切なモノが見付からない焦りと苛立ちをつい静香にぶつけてしまう

静香は何も悪くないのに

静香「…そう」

静香は一言だけ呟くとどこかへ言ってしまった

結局キーホルダーは見付からなかった

455: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 00:18:33.79 ID:+Qv34JBfo
P「志保の様子がおかしい?」

静香「はい」

昼休み、教室に来た静香からそんなことを言われる

静香「何か焦っているような…とにかく何かあったのは間違いです」

P「それはいつから?」

静香「体育が終わってすぐです」

P「ついさっきか…一体何があったんだ」

静香「わかりません…」

P「わかった、こっちでも聞いてみるよ、教えてくれてありがとう静香」

静香「いえ…」

P「志保…」

何があったんだ…?

456: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 00:24:17.87 ID:+Qv34JBfo
放課後、私は落とし物置き場にキーホルダーが届いていないかを確認しに行った

しかし落とし物置き場にもキーホルダーはなく、私は失意のままに教室に戻った

教室に入ると、二人の女子生徒がにやにやしながらこちらを見ている

その視線に苛立ちを感じながらも私は無視して帰ろうとする

すると二人から呼び止められた

志保「何?」

普段ならともかく苛立っている今、普通に対応しようとしてもどうしても棘が出てしまう

一人が口を開く

その内容は私が生意気だの人の彼氏に手を出しただの、そのくせ自分は上級生に色目を使ってむかつくといったくだらないものだった

…そうか、こいつらが

457: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 00:27:18.31 ID:+Qv34JBfo
以前可奈と二人でいるときに男子生徒に絡まれたことがある

可奈が突き飛ばされたので落ちていた竹刀で追い払ったことがあった

…その日からあの噂が流れ始めた

あの男子生徒が目の前の女の彼氏かなにかだったのだろう

志保「それで、私にどうしろと?」

この手の輩は関わらないに限る

さっさと済ませてキーホルダーを探さないと

そう思っていた

目の前の女が懐から私のキーホルダーを取り出すまでは

464: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 20:45:58.73 ID:ySWOJWZcO
志保「!」

目の前の女は私のキーホルダーのチェーンに指を通し、振り回す

そしてあろう事か、こんな汚いキーホルダーなどと侮辱する

志保「返しなさい!」

私は女に駆け寄るが女はキーホルダーをもう一人に投げる

私が方向転換し、もう一人に向かうとそいつもまた、女に投げた

こうして何度かキーホルダーを投げられた後、主犯の女がキーホルダーを突き出してきた

そんなに返して欲しいなら返してあげる

主犯の女はそういって猫の頭に親指を当て、力を込める

志保「!やめ…!」

465: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 20:48:57.46 ID:ySWOJWZcO
パキッと音がして

猫の頭が

呆気なく

地面に落ちた

主犯の女は大笑いしながら頭の無くなったキーホルダーを私の前に投げた

共犯の女も笑いながらそれを見ていた

落ちた猫の頭を主犯の女が踏みつけたとき

私の中で何かが切れた

466: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 20:52:27.75 ID:ySWOJWZcO
静香「P先輩!」

放課後、静香が教室に駆け込んできた

かなり焦っている

P「静香、どうしたんだ!?」

静香「志保が、志保が大変なんです!」

P「志保が…!?」

静香「と、とにかく教室に来て下さい!」

P「わかった!」

静香の後を追い志保の教室へ向かう

一体何が…

467: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 21:02:52.63 ID:cM1XGZ+lO
教室に辿り着き、扉を開ける

そこで見たものは

蹲って泣きながら何かを呟く女子生徒と

髪を引っ張りながらただただ無表情に女子生徒の顔を殴り続ける志保の姿だった

殴られている女子生徒は頭を庇っているが、その抵抗は弱々しかった

P「志保!」

呼び掛けてみるが反応はない

このままでは殺してしまうかも知れない

P「志保!やり過ぎだ!このままだと殺しかねない!」

志保を後ろから抱きしめて宥めるが抵抗される

しかし志保の力では俺の力には対抗しきれず、徐々に抵抗が弱くなっていった

468: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 21:09:22.77 ID:cM1XGZ+lO
P「大丈夫だ志保、俺が側にいるから」

志保を強く抱きしめると志保の体から力が抜けた

そして

志保「兄…さん…?」

今初めて俺に気付いたかのようにこちらを振り向く

P「志保…正気に戻ったか」

志保「あ…ああ…」

しかし志保は何かに怯えるような声を上げると

志保「~~~!」

声にならない叫びを上げた後、俺の腕をすり抜けて走り出してしまった

P「志保!」

静香「P先輩!志保を!」

P「わかってる!」

469: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 21:17:05.07 ID:cM1XGZ+lO
教室から出ようとして、一旦立ち止まり殴られていた二人を見る

俺の視線を受け、怯えて後退った

…恐らくこの二人がいじめの主犯なのだろう

出なければ志保がここまでするはずがない

P「…志保がここまでやったから俺からは何もしないが」

P「次に手を出したら今度は俺がお前達を殺しに来るからな、覚えておけ」

二人は再び泣き出すが、俺にとってはどうでも良い

それだけのことをこいつらはやったのだから

俺は踵を返すと、志保を探して走りだした

470: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 21:23:58.29 ID:cM1XGZ+lO
志保の靴箱を確認する

上履きが入っており、志保が既に学園から出たことを現していた

P「志保…!」

通学路を全力で走る

しばらく走ると少し先に志保の背中が見えた

P「志保!」

声をかけるが聞こえていないのか、速度は落ちない

P「くっ!」

速度を上げるが志保は先に家に入ってしまった

471: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 21:27:25.43 ID:cM1XGZ+lO
少し遅れて家に駆け込む

乱雑に靴を脱ぎ、階段を駆け上る

階段を登り切ったところで、ようやく志保の腕を掴んだ

俺は息を整え、ようやく捕まえた志保を見据える

P「志保…」

志保「兄…さん」

志保は今にも泣き出しそうな顔をしていた

472: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 21:31:44.23 ID:cM1XGZ+lO
P「志保、一体何があったんだ?」

志保「それは…」

P「志保があんなに怒るなんて普通じゃない」

志保「普通じゃ…ない」

P「話してくれないか、何があったのかを」

志保「でき…ません」

P「どうして」

志保「…兄さんには…関係ありませんから…」

P「そんなことはない!志保だって家族なんだ、だから」

志保「もうやめて!」

志保が俺の腕を振り払った

473: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 21:36:42.05 ID:cM1XGZ+lO
志保「兄さんが優しくするから!私は兄さんに甘えてしまう!」

志保「本当は私は兄さんに優しくして貰う資格なんてないのに!」

志保「思い出せないことを良いことに自分を誤魔化して…!」

志保「それなのに今また兄さんに庇って貰いたいと思ってしまう私がいて…!」

志保が蹲って泣き出してしまう

この光景を、俺は知っている

だから俺は志保に手を伸ばし…

志保「!」

志保が手を振るって俺の手を弾いた

そして俺は

階段から足を踏み外した

476: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 23:06:58.71 ID:cM1XGZ+lO
夢を見ていた

いつもの志保が泣いている夢

しかし今回はいつもと違い世界は割れておらず、色のついた鮮明なものだった

幼い頃の志保は、よく俺達の家に遊びに来ていた

そんなある日のこと

家の中で遊んでいた志保

その手には父親がくれた猫のキーホルダーがあった

忙しくてあまり会えない父親からのプレゼント、志保はそのキーホルダーが大好きだった

しかしある日、志保は家の中で転んでしまう

その時、持っていたキーホルダーは不運にも手を離れ、地面に落ちてしまいその衝撃で首が折れてしまった

志保はすぐに首を引っ付けようとするが、折れた首が繋がることはなかった

477: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 23:16:28.31 ID:cM1XGZ+lO
自分が転んでしまったから父から貰った大切なキーホルダーが壊れてしまった

その事に志保は涙を滲ませ、泣き出してしまう

もう首は繋がらない

その事が堪らなく悲しかった

泣き声を聞いて、幼い頃の俺は志保に近付く

P『志保ちゃん、なんで泣いてるの?』

志保『お兄ちゃん…』

志保は泣きながら俺を見上げる

志保『お父さんから貰ったキーホルダー…しほが壊しちゃった…』

そういってしゃくり上げる志保

その手の上にはキーホルダーがあった

478: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 23:36:31.74 ID:cM1XGZ+lO
首ちょんぱ状態のキーホルダーを見た俺は、あることを思いついた

P『志保ちゃん、ちょっと待ってて』

俺は義父の部屋に行き、あるものを借りる

P『お待たせ、志保ちゃん』

P『これ、少し貸してくれる?』

俺は志保からキーホルダーを受け取ると、義父から借りたプラスチック用瞬間接着剤を折れた部分に塗る

そして首を胴体と合わせ、しばらくそのままにすると…

P『はい、志保ちゃん、治ったよ』

志保『わあ…!』

塗りすぎた為か、接着剤がはみ出しており前よりは不細工になってしまったのだが志保は目を輝かせて泣き止んだ

志保『ありがとうお兄ちゃん!』

P『気にしないで!』

479: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 23:44:04.84 ID:cM1XGZ+lO
この一件で俺に懐いた志保は、よく俺の後ろに着いてくるようになった

もっとも、人見知りするタイプなのか俺が他の子と遊んでいると背中に隠れていたが

そんなある日

志保『お兄ちゃん!』

P『どうしたの?』

志保『しほね、お兄ちゃんのお嫁さんになる!』

P『え?』

志保『お母さんがね、お兄ちゃんはいとこだからけっこん出来るって言ってたの!』

P『うーん、僕はまだ結婚とかは…』

志保『だめ…?』

P『あ、じゃあね、志保ちゃん』

P『志保ちゃんがもし結婚出来るようになって、その時にまだそのキーホルダーと気持ちを持ってたら結婚しようよ!』

志保『ほんと!?じゃあしほ、頑張るから約束だよ!』

P『うん!約束!』

志保『忘れないでね、お兄ちゃん!』

480: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 23:49:17.13 ID:cM1XGZ+lO
場面が変わった

志保が階段に座り込んで泣いている

夏休みが終わる直前で、志保は家に帰らなくてはならないのだが…

志保『いや!しほはもっとお兄ちゃんと一緒にいたい!』

志保が駄々をこねてしまった

母親は無理矢理連れて帰ることも出来たのだが、志保を傷付けてしまいそうで手を拱いていた

そこで俺が志保を説得するために駆り出された

P『志保ちゃん、わがまま言っちゃ駄目だよ?』

志保『でも…しほはお兄ちゃんと一緒にいたい』

P『またいつでも会えるよ!ほら、お母さんがまってるから』

志保『やだぁ!』

志保が手を振り回し俺の差し出した手を弾いた

それが押し出すような形で弾かれたため、俺は階段を踏み外した

481: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 23:52:32.95 ID:cM1XGZ+lO
P「…」

階段から落ちたところで、俺は目を覚ます

見知らぬ天井と、見知った顔があった

このみ「目覚めの気分はどう?」

P「なんだろうな、頭の中がクリアというか…もやが晴れた気がする」

このみ「そう」

P「…階段から転げ落ちたんだな、俺」

このみ「昔と同じシチュエーションで転げ落ちるなんて、器用な真似するわね~」

P「好きで転げ落ちたわけじゃないけどな」

482: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/24(土) 23:54:46.07 ID:cM1XGZ+lO
このみ「記憶はあるみたいね」

P「ついでに、昔のことも思い出したよ」

このみ「あら、頭を打って戻ったのかしら…もっと早くにやれば良かったわね」

P「やめてくれよ…」

このみ「で、あんたはどうするの?」

P「どう、とは」

このみ「志保ちゃんに弾かれて頭を打つのは二回目だけど」

P「違うぞこのみ姉さん」

483: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 00:03:19.98 ID:3HkYFiWJO
P「ある馬鹿が勝手に足を踏み外した、その時たまたま志保が近くにいて手が当たっただけだ」

P「だから悪いのは足を踏み外した馬鹿であって志保は何も悪くない、違う?」

このみ「そうね、馬鹿、正直臭いわよ」

P「ひでぇな…志保は?」

このみ「正直かなり動揺してるわよ、一時はまた私が殺したってうわごとのように繰り返してたけど…今は部屋に閉じ籠もって出て来ないみたい」

P「そっか」

ならば俺のやるべきことは一つだ

起き上がった時に見つけた猫のキーホルダー…

これが鍵になる

492: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:04:03.80 ID:AYusT43TO
首の折れたキーホルダーを手に取る

このみ「それ、静香ちゃんが持ってきてくれたのよ」

P「静香が?」

このみ「教室に落ちてたんですって」

P「…なるほど」

志保があんな行動に出た理由がわかった

P「目が覚めたから退院していいかな?」

このみ「検査が終わってからね」

その後検査をし、異常なしと診断されたため俺は退院した

493: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:08:26.96 ID:AYusT43TO
家に帰ると桃子が出迎えてくれた

桃子「お帰り、お兄ちゃん」

P「ただいま、志保は?」

桃子「閉じ籠もって出て来ないよ」

P「そうか…」

桃子「早く引っ張り出してよね」

P「おう、任せとけ」

俺は部屋に戻ると、プラスチック用瞬間接着剤を取り出してキーホルダーの補修を始めた

494: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:16:49.58 ID:AYusT43TO
電気の消えた部屋で私は、膝を抱えて座っていた

2度も兄さんを突き落としてしまった

2回とも、私の我が儘が原因だ

やっぱり私に兄さんの側にいる資格はなかったのだ

それどころか私が生きていたら兄さんを死なせてしまう

だったら私は、ここから離れるか、死ぬしかない

志保「兄さん…」

幼い頃の兄さんと、再会してからの兄さんとの思い出が浮かんでは消える

海美さんに言われたように、これは大切な思い出だ

けれど今はその思い出が、私を責め立てる

消えて無くなりたい、そう思った時、扉がノックされた

495: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:21:08.32 ID:AYusT43TO
P「…」

扉をノックしても反応はない

P「志保、入るぞ」

一応声をかけて、俺は扉を開けた

部屋の中は真っ暗で、更に志保は膝に頭を埋めていたので一瞬どこにいるか判らなかったが志保の側で膝をついた

P「志保」

志保「…」

声をかけても反応がない

寝ているのだろうか

仕方なく立ち上がり電気をつける

明かりに照らされた志保は髪がボサボサだった

髪の手入れをしている余裕もなかったのだろう

496: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:24:46.49 ID:AYusT43TO
しかし俺には関係ない

ボサボサ頭を優しく撫でる

P「志保、顔を上げてくれ」

志保「…兄さん」

未だ顔は上げてくれないが、ようやく反応があった

P「ただいま、志保」

志保「兄…さん」

P「髪がボサボサじゃないか、ちゃんと手入れしないと」

志保「私…は…」

P「心配かけたな」

志保「違うんです…私が…私のせいで…!」

ようやく顔をあげる志保、目には隈がありかなりの疲れを感じさせる顔だった

497: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:28:40.17 ID:AYusT43TO
P「大したことじゃない」

志保「どうして…私を嫌ってくれないんですか…」

志保が呟く

志保「あんなことをされて、どうしてまだ私に優しくするんですか…」

志保「それならいっそ、激しく罵倒された方が…私は…」

P「なんで俺が志保を嫌わなくちゃいけないんだ?」

志保「…本気で言ってるんですか」

P「もちろん」

志保「…!」

498: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:37:25.69 ID:AYusT43TO
P「俺は志保に何もされてない」

P「勝手に足を踏み外して記憶を無くして、勝手に足を踏み外して記憶を取り戻しただけだ」

P「志保を嫌う理由なんかどこにもない」

志保「…なんで庇うんですか!」

志保「私が!手を振るって!それが兄さんが足を踏み外した原因なのに!」

志保「それで2年分の記憶も失って、その分の兄さんは死んだも同然なのに…!」

志保「私は…!」

P「全く、志保は我が儘だな」

志保を正面から抱きしめる

志保「にいさ」

P「俺は今こうやって何事もなく生きてるし、落ちたから記憶も取り戻してる」

P「それだけじゃ不満なのか?」

499: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:43:27.55 ID:AYusT43TO
志保「でも…私は何も償えてない…!」

志保「兄さんで大切な時間を奪って、迷惑をかけたのに」

P「あのな、志保」

P「俺は償って欲しいとか、そういう感情は一切無いんだよ」

P「むしろそれは志保の自己満足でしか無いだろ?それは迷惑なんだ」

志保「でも…」

P「俺はこうやって、志保と一緒にいられるだけで十分だよ」

P「だから償いなんか必要ない、俺の側にいてくれ」

志保「兄さん…!」

志保が抱きしめ返してくる

志保「ごめんなさい…!ごめんなさい…!」

志保は子供のように泣きながら俺に謝る

500: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:49:40.24 ID:AYusT43TO
P「志保、辛かったな、もう大丈夫だ」

記憶のない俺に対してとてつもない罪悪感を抱いていたのだろう

俺が記憶を無くしてから、ずっと謝りたかったのかも知れない

泣き続ける志保の背中を優しく叩いてやる

志保が泣き止んだのはそれから30分後だった



志保「…だらしないところを見せてしまいました」

落ち着いたのか、話し始める

P「俺はもっと甘えて欲しいけど」

志保「駄目です、私を甘やかすときっと碌な事になりませんから」

501: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 18:55:26.30 ID:AYusT43TO
志保「兄さん、記憶が戻ったと言っていましたが…どのくらい戻りましたか?」

P「多分全部だ」

志保「全部…」

P「だから志保、これを受け取ってくれ」

俺は約束のキーホルダーを志保に渡す

志保「…これ!」

P「あの約束の為に。今までずっと大事に持っててくれたんだな…」

志保「…はい」

P「ありがとう志保、嬉しいよ」

志保「…あの時と一緒で…兄さんが治してくれたんですね」

志保が大切そうにキーホルダーを手で包む

P「…あのさ、志保」

志保「はい」

502: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/25(日) 19:01:51.68 ID:AYusT43TO
P「志保は1月が誕生日だよな?」

志保「…はい、昔兄さんにプレゼントも貰ったことがあります」

記憶が戻って、胸に飛来した気持ちがある

P「それで、そのだな」

志保「はい」

P「…少し早いけど、約束を果たすよ」

志保「それって…」

P「志保」

志保「はい」

志保を正眼に捉える

ただただ一途に俺を想い続けてくれた志保のために

P「お前が好きだ、ずっと俺の側にいてほしい」

俺は気持ちを伝える

514: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 01:03:17.44 ID:9lswXCrnO
志保「兄…さん…兄さん!」

志保が飛び付いてくる

志保「嬉しいです…でも…」

志保が胸に顔を埋めたまま呟く

志保「本当に、私で良いんですか?」

P「志保が良いんだ」

志保「兄さん…」

少し強く志保を抱き締める

志保「ん」

P「ごめん、苦しかったか?」

志保「大丈夫です、それよりも…」

志保「もっと強く抱きしめて欲しいです、私が壊れるくらいに」

515: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 01:11:48.75 ID:9lswXCrnO
要望通りさらに強く抱き締める

すると志保のほうも、俺を強く抱き締めてきた

志保「今が、私の人生で最も幸せな瞬間です」

P「違うぞ志保」

P「これが俺達の人生の始まりなんだ」

P「俺達はまだスタートラインに立っただけだ」

P「だから歩いて行こう、ゴールまで」

P「例えどっちかが転んでも、二人で手を繋いで歩いて行けば乗り越えられる」

P「俺はそう信じている」

志保「兄さん…」

516: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 01:15:49.24 ID:9lswXCrnO
志保「私の手は、兄さんに触れるためにあります」

志保「私の耳は、兄さんの音を聞くためにあります」

志保「私の目は、兄さんを見るためにあります」

志保「そして私の心と魂は、兄さんに寄り添うためにあります」

志保「私の全てを、兄さんに捧げます」

P「俺は志保の全てを受け止めるよ」

志保「ありがとう、兄さん…」

518: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 01:41:08.57 ID:9lswXCrnO
志保「兄さん…一つ、我が儘を言っても良いですか?」

P「ああ」

志保が身体を離す

志保「私を後ろから抱きしめて欲しいです」

志保「肩から腕を回すようにして欲しいです」

P「わかった」

俺は志保を後ろから抱きしめ、胸の前で腕を交差させる

すると志保は俺の腕に手を添えた

志保「兄さんの腕に抱かれるの、私は好きです」

志保「私は兄さんのものだって、はっきりとわかるから」

志保「兄さん、この手で、私を守ってくれますか?」

P「もちろんだ」

志保「ありがとう、兄さん」

志保は目を閉じ、俺に身体を預けるようにもたれ掛かる

520: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 01:55:13.90 ID:9lswXCrnO
その後しばらく志保を抱きしめていたが、志保が身支度を整えたいと言い、一旦解散となった

部屋に戻ろうとすると、桃子が近づいて来た

桃子「解決した?」

P「おかげさまで」

桃子「ふーん」

桃子は興味なさげに返事をして通り過ぎた

そして

桃子「あ、そうそう」

P「ん?」

桃子「いちゃつくのは止めないけど、場所は弁えてよね」

P「ああ、気を付けるよ」

桃子「それだけ」

そう言うと桃子は出掛けていった

521: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 02:21:49.55 ID:9lswXCrnO
部屋に戻りベッドに寝転がっていると、志保が部屋に入ってきた

風呂上がりなのか、髪がしっとりしている

志保はまっすぐにこちらに向かい、俺に抱き付く

そして深呼吸をした

志保「兄さんの匂い、好きです」

P「そっか」

少し湿った髪を撫でる

志保の髪は手触りが良く、いつまでも触っていたくなる

志保は髪を撫でられながら俺の腹部に頭を擦り付けてくる

まるで自分の匂いをつけているみたいだ

522: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 02:31:27.08 ID:9lswXCrnO
志保「兄さん…ふふ、兄さん」

志保「ずっとこうしたかった、兄さんの側にいたかった」

志保「私は、幸せです」

P「俺も、志保が側にいてくれて嬉しいよ」

今の志保は膝の上で眠る猫のようだ

…色々と大きいけど

志保「兄さんの…匂い…」

志保がわざとなのか無自覚なのか、身体を押し付けてくるので中々に辛い

身体の柔らかさや志保の匂いなど様々な誘惑が俺を惑わせる

523: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 02:36:59.96 ID:9lswXCrnO
志保「兄さん…」

志保が顔を上げる

頬は上気しており、唇は湿りを帯びていて柔らかそうだ

P「…」

思わず唾を飲む

志保が全身で俺を誘おうとしているように見える

そろそろ理性がヤバいかも知れない

そして俺の理性は呆気なく吹き飛ばされることになる

志保「ん…」

志保が首に手を回し、キスをする

524: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 02:51:12.64 ID:9lswXCrnO
そのままこちらに体重をかけ、二人でベッドに倒れこむ

志保が俺の胸に頭を預けて目を閉じる

俺は志保を抱き締めた

志保は薄く目を開け、微笑んだ

すると今度は頭だけではなく、全身を使って俺にマーキングをしてくる

身体のあちこちを触られ、俺の我慢は限界に達した

志保にキスをする

志保はお返しとばかりに舌をねじ込んでくる

そして

志保「兄さんと…一つになりたいです」

その言葉を受け、俺は…


俺と志保でオーバーレイした

533: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 22:23:38.05 ID:LeVraSa2O
布団に包まりながら志保を膝の上に乗せる

志保は俺に身体を預け、脱力していた

志保「兄さん…」

志保が蕩けたような声を出す

P「よしよし」

頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める

志保「私は、きっと今世界で一番幸せです」

P「俺も、志保といられて幸せだよ」

志保「兄さん、もっとぎゅっとしてください」

P「ああ」

あすなろ抱きをすると、志保が俺の腕に手を添えてくる

534: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 22:31:13.72 ID:LeVraSa2O
P「志保は甘えんぼうだな」

志保「昔からそうですよ」

P「家に来た時はそうでもなかったじゃないか」

志保「あれは兄さんを傷付けたくなかったからです」

志保「だから兄さんを傷付ける心配が無くなった今は、今まで甘えられなかった分も含めてたくさん甘えますから」

P「はは…お手柔らかにな」

志保「兄さん、キスがしたいです」

P「はいはい」

志保の肩越しにキスをする

志保「ん…」

P「その体勢、苦しくないか?」

志保「はい、むしろ兄さんの胸板が私に当たって心地良いです」

535: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 22:39:32.26 ID:LeVraSa2O
P「…」

俺の胸板か…そういえば志保の は柔らかかったな…

そんなことを考えたせいか、再びスタンドする

志保「…兄さん、まだ体力はありますか?」

P「ま、まあ一応は」

志保「それなら今日は、ずっと繋がっていたいです」

志保「兄さんのこと、私にもっともっと教えてください」


志保を食べちゃうにゃんした

536: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 22:51:13.64 ID:LeVraSa2O
二人でぐったりしながら手を繋ぐ

起き上がるのも億劫だが手から伝わる温もりのおかげで体力が回復していくような気がする

志保「そういえば、兄さん」

P「ん?」

志保「私のキーホルダー、どうやって見つけたんですか?」

P「ああ、このみ姉さんに聞いたんだが静香が持ってきてくれたそうだ」

志保「うどんが…」

P「だから今度お礼をしようと思ってる」

志保「…そうですね、私も…」

P「手作りのうどんでもあげようかな」

志保「あ、それはやめた方が良いです、うどんはうどんに対しては妥協を許しませんから」

志保「うどんと仲の良い星梨花にも厳しくして泣かせたくらいですし」

P「うわぁ…」

537: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 22:57:22.37 ID:LeVraSa2O
P「まあそれなら別のお礼を考えるか」

志保「賢明かと…それよりも兄さん」

P「ん?」

志保「もっとぎゅっとしてください」

P「まだ足りないのか?」

志保「私は兄さんに抱いて貰うのが好きです、もし叶うのであれば一生そうしていたいくらい」

志保「でも現実にはそんなことは不可能なのでせめて一緒にいるときは抱きしめて欲しいです」

P「仕方ないなぁ」

志保を抱き締めると志保が胸に顔を埋めて息を吐く

志保「兄さんの心臓の音が聞こえます」

P「こっちは志保の心臓の音が伝わってくるよ」

538: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/27(火) 22:59:21.56 ID:LeVraSa2O
志保「落ち着く…」

志保が顔を埋めたまま目を閉じる

少しすると寝息が聞こえてきた

P「…おやすみ、志保」

眠る志保の額にキスをすると、俺も目を閉じて睡魔に身を委ねた

546: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/28(水) 23:46:28.76 ID:n5CbIP7Ho
翌日、学園に向かう

通学路では志保がせがむので手を繋ぎながら歩いていく

視線が集中するが、何故か以前とは違い嫌な視線は混じっていない

やがて校門が見えてきた

P「志保、そろそろ…」

手を放そうとするが…

志保「もう少しだけ…駄目ですか?」

寂しそうに俺を見上げてくる

心なしか、手を握る力も少し強くなった気がする

P「…仕方ないな、下駄箱までだぞ?」

志保「…!ありがとうございます、兄さん」

結局手を繋ぎながら下駄箱へ向かった

547: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/28(水) 23:54:51.53 ID:n5CbIP7Ho
下駄箱に着くと静香がこちらに歩いてきた

静香「P先輩、志保」

P「静香」

志保「うどん…」

静香「いい加減張り倒すわよ」

静香「P先輩、具合はどうですか?」

P「見ての通り、ぴんぴんしてるよ」

静香「それなら良かったです、志保も吹っ切れたみたいね」

志保「おかげさまで」

志保「…静香、その…ありがとう、色々と」

静香は驚いたような顔をした後

静香「どういたしまして」

嬉しそうに微笑んだ

548: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/29(木) 00:00:30.65 ID:zoZwcsfdo
静香「さあ志保、遅刻する前に教室に行くわよ」

静香が志保の手を引っ張る

志保「ちょ、静香私は兄さんと一緒に…!放して!放せうどん!」

志保は静香に連行されていった

P「うんうん、静香は良い子だな」

俺も教室に行こう

586: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 22:50:48.70 ID:VgcU0Ezro
昼休み、何時もの面子に会いに行く

P「よっす」

冬馬「よう」

翔太「あ、もう大丈夫なの?」

P「ああ、ぴんぴんしてる」

翔太「そっか」

恵美「あれ?P来てるじゃん」

P「おう」

エレナ「早く食べようヨ~」

恵美「そだね、机くっつけちゃお」

587: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 22:56:19.44 ID:VgcU0Ezro
恵美「そういや知ってる?」

食べ始めるとすぐに恵美が話し掛けてきた

P「何が?」

恵美「中等部で退学処分の生徒が出たんだって」

冬馬「退学処分?」

翔太「珍しいね、退学処分なんて」

P「…」

退学処分?しかも中等部で?…思い当たる件は一つしかない

まさか退学になったのは…

588: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 23:00:14.67 ID:VgcU0Ezro
琴葉「私の方にも情報が来てたわ」

恵美「流石琴葉」

琴葉「今回の件は余罪が多すぎてびっくりしたもの」

P「余罪?」

琴葉「うん、万引きに痴漢冤罪、名誉毀損に器物破損その他諸々」

冬馬「えぐいな」

琴葉「でも決め手になったのは同じクラスの生徒を根も葉もない噂を流して虐めたことみたい、亜利沙ちゃんが全部調べてくれたの」

翔太「それって…」

…あの二人か

589: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 23:04:13.07 ID:VgcU0Ezro
退学処分になったのが志保じゃないならどうでも良い

俺は話への興味を失い、弁当に集中することにした

エレナ「P、あれあれ」

しかしエレナが俺の肩を叩く

P「どうしたんだ?」

エレナ「扉扉」

P「ん?」

エレナが指差した方を見る

すると

志保「…」

志保が教室の扉から顔を覗かせていた

590: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 23:08:34.67 ID:VgcU0Ezro
P「どうしたんだろ、ちょっと呼んでみるか…志保ー」

キョロキョロしている志保に声をかけるとほっとしたような顔になる

手招きすると胸に弁当の入った袋を持っていることに気付いた

志保「兄さん」

P「どうしたんだ、志保?」

志保「その…兄さんと一緒にお弁当をと思いまして」

P「なるほど、じゃあ場所を作るからちょっと待っててくれ、俺の隣で良いか?」

志保「はい、むしろ隣が良いです」

俺は机をもう一つくっつけ、志保の座るスペースを作った

591: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 23:12:13.43 ID:VgcU0Ezro
志保が席について弁当を取り出す

すると

志保「あっ」

志保が小さく声を上げた

P「どうした?」

志保「いえ…どうやら箸を忘れたみたいです」

P「あー、どうするかな」

冬馬「いや、今箸箱が」

志保「…」

冬馬「」

志保が冬馬の方を見ると何故か冬馬が口を噤んだ

592: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 23:15:17.99 ID:VgcU0Ezro
志保「兄さん、せっかくなので食べさせてくれませんか?」

P「ん、良いぞ」

志保「ありがとうございます」

P「ほら」

志保「あーん…美味しいです」

P「そっか」

志保「あーん」

翔太「…志保ちゃんってあんなに甘えん坊だったっけ?」

冬馬「知らねえ…」

エレナ「仲良いネ-」

恵美「…」

593: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 23:26:21.49 ID:VgcU0Ezro
昼食を食べ終わると、志保を中等部の校舎まで送って行くことにした

志保「兄さん、食べさせてくれてありがとうございました」

P「箸を忘れたんだから仕方ないよ」

志保「それでも、です」

少し歩いていると人気の無い渡り廊下に来ていた

志保「…」

志保は辺りを素早く確認したあと

志保「兄さん、キスしましょう」

などとおっしゃった

P「ここ、学園だぞ?」

志保「周りに人はいませんから、大丈夫です」

自信満々な志保が可愛らしかったので、志保を抱き締める

594: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/09/30(金) 23:29:53.62 ID:VgcU0Ezro
志保「兄さん…」

P「志保」

志保「ん…」

唇が触れるだけの簡単なキス

志保「…兄さん、もっと…してください」

しかし志保は満足出来ないようで、再びおねだりをしてくる

正直何度でもしてあげたいが…

P「帰ってからな」

もうあまり昼休みの時間もないので、頭を撫でて諭す

志保「…」

志保は少し不満そうだったが

志保「…わかりました、それなら帰ってから、いっぱい愛してくださいね?」

そういうと不意打ち気味にもう一度キスをすると中等部に帰って行った

604: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 03:29:16.88 ID:m5mGxtd/o
放課後、校門で待っていた志保を拾って帰路につく

当然のように手は繋いでおり、志保は嬉しそうにしている

時期的に少し寒くなってきているので、手に感じる温かさは中々に心地良い

志保「兄さんの手は温かくて、安心出来ます」

両手で包み込むように俺の手を握る志保

可愛い奴だ

P「そう言えば」

俺は唐突に話を振る

P「志保のクラスは文化祭で何をやるんだ?」

ちなみに俺達のクラスはほとんどの生徒が有志出展で手が離せないため、休憩所として使用される予定だ

クラス出展の話を振ったとき、一瞬志保の動きが止まった気がした

605: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 03:32:13.14 ID:m5mGxtd/o
志保「き、喫茶店です」

P「喫茶店か…もし時間があれば立ち寄ってみようかな」

志保「え!?…そ、その、大したものは出せないので、兄さんをがっかりさせるだけかと」

P「良いよ、俺は気にしないから」

志保「う…」

志保が何やら悩んでいるが、俺は志保の喫茶店に行くのを楽しみにしていた

606: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 03:38:30.67 ID:m5mGxtd/o
まずい、非常にまずい

このままでは兄さんが私のクラスに来てしまう

さっきは咄嗟に喫茶店などと言ってしまったけど、本当はコスプレカフェだなんて言えるわけがない

…未来が余計なことを言わなければ…!

男子を味方に引き入れた未来のせいで普通のカフェがコスプレカフェに…

腹が立つので明日未来のレモンティーを青汁に入れ替えてやろう

私はそんなことを考える

志保「…」

…温かい兄さんの手を握っているとなんだかどうでも良くなってくる

結局、私は文化祭当日まで兄さんをクラスから遠ざける方法を思いつけなかった

607: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 03:59:14.44 ID:m5mGxtd/o
そしていよいよ文化祭当日になった

気のせいか今年は去年以上に活気付いている気がする

プロデューサーが伊織になってやり方が琴葉と違うからそう思うだけかも知れないが

とりあえず色々と見て回ろう









ある程度散策し、そろそろ昼時と言ったところか

せっかくなので昼は志保のクラスにしよう、そう思った俺は志保のクラスへと足を運ぶ

そこで俺は凄い物を見た

608: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 04:11:37.91 ID:m5mGxtd/o
志保のクラスには列が出来ていた

P「結構人気なんだな」

列に並ぶこと約30分、教室に入った俺は言葉を失った

メイド、ナース、猫耳、バニーetc…

生徒がコスプレをしていたのだ

P「…コスプレ喫茶?」

呆気にとられていると

「いらっしゃ…ぴ、P先輩!?」

店員に声をかけられる

その店員を見ると、ノースリーブの改造ナース服を着た静香だった

P「静香…」

609: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 04:19:02.02 ID:m5mGxtd/o
静香「な、何でここに…」

P「い、いや、昼時だし志保がクラス出展は喫茶だって言うから…」

静香「そ、そうなんですね…」

知り合いに見られたのが恥ずかしいのか、顔を赤くする静香

静香「あー、その、席にご案内します」

席に着くと、静香が脇に抱えていたメニューを広げようとする

…静香の生腋…

そんなことを考えていた時だった

誰かが早足で席に向かって歩いてくると

静香からメニューを奪った

610: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 04:48:26.66 ID:m5mGxtd/o
静香「ちょ」

メニューを奪ったのは改造メイド服を着た志保だった

…何故かランドセルを背負っている

志保は少し目を閉じ、深呼吸をすると

志保「お帰りなさいませ~ご主P様!」

と半ばやけくそ気味に言った

P「」

口を開けて硬直していると

志保「ご主P様は~志保が~お世話するね☆…静香、他の接客」

静香「ちょっと志保!私が案内したのに!」

志保「兄さんは私がお世話するの、これは誰にも譲れないし譲らない」

静香「私も先輩にはお世話になったからその分の恩返しをするチャンスなのよ!志保はいつでも出来るでしょ!」

志保「出来る出来ないの問題じゃない、私がさせない」

何故か喧嘩が始まった

611: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 05:00:40.96 ID:m5mGxtd/o
静香「志保にそんな権利無いでしょ!?」

志保「あるわ、私は兄さんのもの、つまり私は兄さんのお世話をする義務がある」

静香「意味わからないんだけど…」

志保「わからなくて良いわ」

静香「じゃあ私は私のやりたいようにさせて貰うわ」

志保「は?なんでそうなるのよ」

静香「志保の言うことが意味不明だから、それに志保、貴女たった今わからなくて良いって言ったわよね?」

静香「つまり志保の戯れ言を聞く必要が無いって事になるわ」

志保「ならないから」

静香「なる」

志保「ならない!」

静香「なる!」

志保「ぐぬぬ…!」

静香「ぐぬぬ…!」

612: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 05:04:56.32 ID:m5mGxtd/o
静香「…このまま話していても埒があかないわ」

志保「私は最初から兄さんのお世話をするって言ってるんだけど」

静香「私は恩知らずになりたくないの、だからP先輩に決めて貰いましょう」

志保「何を」

静香「私と志保、どっちに接客してほしいか…よ」

志保「私は接客じゃなくて」

静香「そういうの良いから」

志保「…兄さんの決定なら私も従わざるを得ないわ」

静香「それじゃあ決めて貰いましょう」

志保「兄さん!」

静香「P先輩!」

志保「私と」

静香「私!」

「どっちが良いですか!?」

613: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 05:17:38.50 ID:m5mGxtd/o
私と静香が兄さんに判断を仰ぐために兄さんを見ると

翼「P先輩、あーんして?」

P「いや、普通に食べられるよ」

翼「じゃあじゃあ、わたしにあーんして欲しいなぁ…だめぇ?」

P「うーん…」

翼に兄さんを盗られていた

志保「……………」

静香「……………」

P「あ、二人とも終わったのか」

兄さんがパスタをフォークで巻きながら言う

それを見て私はなんだか脱力してしまった

625: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:05:20.32 ID:TBFztFogO
志保「はあ…ご主P様~何か飲みますか~?しほのオススメは~…ミルクティーだよ☆」

P「そのキャラ続けるのか…それじゃあミルクティーで」

志保「は~い☆…静香」

静香「はいはい」

静香が奥に引っ込む

翼「ねえねえP先輩、わたしのコスプレどうですか?可愛い?」

翼が衣装を見せるように色々とポーズをとる

P「ああ、可愛いよ」

翼「やったぁ!」

素直に褒めると翼がぴょんぴょん跳ねて喜ぶ

それにより年の割にかなり大きい が揺れて…

志保「…」

P「はっ!」

志保からの突き刺さるような視線を感じ、俺は目を逸らした

626: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:09:57.76 ID:m5mGxtd/o
静香「P先輩、お待たせしました」

翼から視線を逸らした直後、静香が戻ってきた

静香「ミルクティーです」

P「…ん?」

ミルクティーと言う割にはシュガースティックしかついていない

P「静香、ミルクは…」

顔を上げると静香が手に注射器を持っていた

中は白い液体で満たされており、おそらくこれがミルクなのだろう

P「なるほど」

俺はシュガースティックを折り、中身を入れた後スプーンでかき混ぜる

かき混ぜ終えた俺は静香の行動を待つが…

何故か注射器を見つめたままぷるぷると震えていた

627: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:14:17.13 ID:m5mGxtd/o
静香「…」

志保「静香、私が変わってあげても良いけど?むしろ変わって」

静香「結構よ、ちゃんと自分でやるわ」

静香は深呼吸すると、妙に据わった目で

静香「それではお客様、行きますよ~!」

静香「愛情、注、入!」

顔を真っ赤にしながら紅茶の中にミルクを入れた

注射器の中からミルクがなくなると、静香は無言でかき混ぜ、俺の前に差し出した

静香「ど、どうぞ…」

P「あ、ああ…」

何故だか居たたまれなくなり、静香をまっすぐ見れなかった

629: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:21:23.00 ID:m5mGxtd/o
志保「だから私に任せておけば良かったのに」

静香「良いのよ…これで…」

P「うん、美味い」

項垂れる静香の肩に志保が手を置く

その口角は上がっていて、何かを堪えているような感じだった





P「さて、そろそろ行くか」

ミルクティーのついでに出て来たクッキーを食べ終え、席を立つ

あんまり長居しても邪魔になるだけだろう

志保「兄さ…ご主P様、もう帰っちゃうの?」

P「ああ、まだ並んでる人もいるし回転率あげないとな」

志保「しほはご主P様にずっとついてるから心配しなくていいよ?」

P「他に行きたいところもあるんだ、また後でな」

志保の頭を撫でてやる

630: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:25:28.94 ID:m5mGxtd/o
志保「えへへ~」

志保が嬉しそうにはにかむ

P「もし休憩がとれるなら一緒に見て回ろうな」

志保「!はい、兄さん!」

P「それじゃあ頑張るんだぞ、志保」

志保「兄さんに応援して貰えたなら100万人力です」

志保がガッツポーズをする

P「それじゃあご馳走様」

俺はレジで支払いをすると、教室を後にする

翼「Pせんぱ~い!明日も来るならもっともーっとサービスしますねー!」

静香「ありがとうございました」

二人に見送られ、俺は他の出展を見に行った

631: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:35:21.36 ID:m5mGxtd/o
コスプレカフェを出た後、風花先生が手と歯を使わずにチョコバナナを食べる風花チャレンジ(企画者:亜美真美、間島)を堪能した俺は、しばらく色々な出展を見て回った

途中で警察を見たが、噂によると小鳥さんとちひろ先輩の屋台が危険物を取り扱っていて、検挙されたそうだ

律子先輩の射的をやっていると、携帯が震え出す

確認すると、志保からの電話だった

633: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:40:47.19 ID:m5mGxtd/o
P「もしもし?」

志保『兄さん、今どこにいますか?』

P「大学部の方の校庭だ」

志保『わかりました、今休憩に入ったのでどこかで駆け落ちしませんか?』

P「そうだな、それなら高等部の食堂で合流しようか?」

P「中等部と大学部の間にあるから丁度良いと思うし」

志保『わかりました、では食堂で待ってます』

P「俺も、すぐに行くよ」

通話を切り、俺は高等部の食堂へ足を向けた

636: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:46:16.19 ID:m5mGxtd/o
食堂に到着すると、志保は既に待っていた

P「待たせたか?」

志保「いえ、今到着したところです」

志保はそう言うと俺の右腕に腕を絡め、肩に頭を預けた

志保「やっぱりこれが1番落ち着く…」

P「甘えん坊だな」

志保「はい」

P「それじゃあ行こうか」

志保「はい」

志保を腕にぶら下げ、俺達は歩き出した

637: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:49:38.38 ID:m5mGxtd/o
P「志保、昼は?」

志保「まだです」

P「それなら何か屋台でも行くか」

志保「はい」

少し見渡すと、ラーメンの屋台が目に入った

P「志保、ラーメンは?」

志保「良いですね」

P「それじゃあ決まりだな」

俺達はラーメンの屋台に向けて歩き出した

638: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:54:10.95 ID:m5mGxtd/o
屋台にいたのは…

P「貴音」

貴音「お久しぶりですね、あなた様」

貴音だった

志保「…綺麗な人ですね」

貴音「貴女は、北沢志保ですね」

P「知ってたのか?俺志保がいるときに貴音とあってなかった気がするんだが」

貴音「ふふ…とっぷしーくれっとですよ、あなた様」

P「相変わらず謎が多いな」

639: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/02(日) 23:59:50.82 ID:m5mGxtd/o
P「っと、それよりも醤油二つ」

貴音「畏まりました」

貴音が麺を鍋に入れ、茹でる

その間に貴音はタレとスープを用意し、いつでも麺をいれられるようにする

…中々に手際が良い

そして麺が茹で上がったのか、湯切りを持ち上げると

貴音「はっ!」

美しい動作で湯を切った

そして麺を入れ、少しほぐした後トッピングを乗せて…

貴音「…じゅるり」

そのまま食べ始めた

651: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/03(月) 23:16:42.05 ID:9L+laHMdo
P「…」

志保「…」

俺達は、貴音がラーメンを啜る姿を黙ってみていた

2杯のラーメンを食べ終えた貴音は

貴音「真、美味でした」

そう言うと

貴音「…1400円になります、あなた様」

などと宣った

P「貴音、貴音、ちょっと目を瞑ってこっちに来てくれないか」

貴音「はて…?」

貴音が言われたとおりに目を瞑り、こっちに来ると…

P「ふん!」

思いっきりでこぴんをした

652: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/03(月) 23:24:35.41 ID:9L+laHMdo
貴音「あうっ!」

貴音が額を押さえてぷるぷる震える

貴音「あ、あなた様はいけずです…!」

P「いけずです…!じゃないよ!俺達のラーメンを食べてお金を要求するとかあり得ないだろ!?」

貴音「…ふ、やはりあなた様は雨傘頓馬の友人ですね、あの者も全く同じ事を言っていました」

P「お前…まさか来る客全員にやってるんじゃないだろうな…」

貴音「はて…確かに言われてみれば皆怒って帰って行ったような…」

P「…はあ」

お預けを食らった俺達はさらに腹を減らすハメになった

653: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/03(月) 23:37:51.90 ID:9L+laHMdo
結局佐竹飯店文化祭出張店で昼を食べることになった

志保は猫舌なのか、俺にスープを冷まして貰ってから飲んでいた

志保「美味しかったです、兄さん」

P「ああ、美味かったな」

流石は佐竹さんと言ったところか

店を出ると日が傾き始めていた

志保「…兄さん、私そろそろ戻ります」

P「送っていくよ」

志保「ありがとうございます」

志保を教室まで送る

そして別れる瞬間

志保「兄さん、今日は期待していてくださいね」

と言った

654: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/03(月) 23:43:04.03 ID:9L+laHMdo
その日の夜

シャワーを浴びた俺は志保の頼み通り、部屋にいた

しばらく待っていると志保が部屋にやって来た

…小学生メイドの格好で

P「志保、それ」

志保「…兄さん、今日翼の胸を見てました」

P「いやぁ…あれは」

志保「兄さんも男の人ですから、仕方ないとは思います」

志保「でもやっぱり良い気はしないので…」

志保を俺の足の間に屈み込むと

志保「しほが~ご主P様にたーっぷり御奉仕して、上書きしちゃうね♪」

そう言うと俺の注射器を取り出した

659: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/04(火) 23:38:37.33 ID:NxIp5ht9o
翌日、俺と志保は屋上にいた

コスチュームをチアガールや体操着に変更したコスプレカフェは大盛況、昨日よりも人が多く、疲れた志保が静かでゆっくりできる場所を所望したため屋上に来たのだ

校庭では後夜祭のイグニッションダンスが行われており、もう間もなく文化祭が終わろうとしている

志保は俺に身体を預けると深く息を吐いた

P「お疲れさま、志保」

志保「ありがとうございます、兄さん」

頑張った志保の頭を撫でてやる

志保「確かに疲れましたけど…楽しかったです」

P「…そっか」

あの一件以来志保はクラスに馴染み始めたみたいだ

660: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/04(火) 23:48:04.84 ID:NxIp5ht9o
校庭からは賑やかな声が僅かに聞こえてくる

いつものように志保に腕を回すと、今回は腕に手を添えるのではなく、握ってきた

P「どうしたんだ?」

志保「…私は、あと一年早く生まれたかった」

志保「兄さんと同じ校舎で勉強して、同じ食堂で食事をして…」

志保「でも、私が兄さんと同じ校舎に行く頃には、そこは兄さんがいた校舎にしかならないんです」

志保「もっと兄さんと一緒にいたい…!」

俺が高等部でいられるのはあと僅かだ

大学部に行くと校舎が離れてしまう

大学部の生徒は高等部以下の校舎に立ち入ることは禁止されている、逆もまた然りだ

つまり俺と志保は学内ではほとんど会えなくなってしまうのだ

P「…志保」

661: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/04(火) 23:58:16.19 ID:NxIp5ht9o
志保のわがままは出来るだけ聞いてやりたい、しかしこればかりはどうしようもなかった

P「志保、こればかりはどうしようもないんだ」

志保「わかってます、わかってるんです、でも、願わずにはいられないんです…」

P「でもな、志保」

P「俺達はもう離れ離れじゃない、家に帰ればいつだって会える」

P「だからさ、そんなに悲しむんじゃない」

P「俺は志保が笑ってくれている方が嬉しいんだ」

志保「兄さん…」

662: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 00:12:37.86 ID:juM2tiQio
志保「…そうですね、帰ったらいつでも兄さんに会える…」

P「俺は志保と一緒にいる時間が好きだよ」

P「確かに一緒にいられる時間は短くなるかも知れない、だったらその分一緒にいる密度を濃くすれば良いんだ」

P「だから志保、笑ってくれ、俺のために、笑ってほしい」

志保「兄さん…」

志保「私はかつて自己嫌悪と罪悪感で笑うことをやめました」

志保「でも兄さんのおかげで、笑うことを思い出せた…」

志保「私も、笑ってくれる兄さんが好きです、だから、兄さんの為にも…」

そういって志保は笑顔を見せる

663: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 00:16:53.83 ID:juM2tiQio
ああ…やっぱり俺は志保の笑顔が、志保が好きなんだと改めて思う

それと同時に、俺はこの笑顔を守っていきたい、そう誓う

だから

P「志保」

志保「はい」

P「志保の笑顔も、この先の未来も、必ず俺が守るよ」

P「だからこれからも俺の隣に、いてくれるか」

志保に問い掛ける

それに対し志保は…

志保「…ん」

キスで答えた

664: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 00:20:41.54 ID:juM2tiQio
志保「私は、兄さんのいない世界なんて考えられません」

志保「だから、私はいつだって兄さんの側にいます」

志保「私は、兄さんを愛していますから」

そういって俺に抱き付く

俺も、志保を抱き返した

志保「兄さんと一緒なら、どんな状況でも幸せなんです」

志保「だから、私をずっと幸せでいさせてくださいね?」

志保の言葉を聞いて

俺達は、再び、キスをした

666: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 00:23:11.32 ID:juM2tiQio
本編はこれにて終了
おまけはまた明日にでも

673: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 22:29:16.85 ID:juM2tiQio
おまけ

674: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 22:37:50.74 ID:juM2tiQio
例年より少し寒いクリスマス

雪が降り、世間一般にはホワイトクリスマスと呼ばれる状況なのだが、家に引き籠もっている俺達には関係のないことだった

P「志保、あーん」

志保「あーん」

炬燵に入りながら志保に餌付けをする

今家には俺と志保の二人だけだった

このみ姉さんは

このみ「独り身がクリスマスでバカップルの気に当てられたら狂いそうだから逃げるわ」

と言って莉緒さんと飲みに行った

桃子は

桃子「桃子、馬に蹴られたくないから」

と言って育ちゃんの家に行った

恐らく気を利かせてくれたのだろう

676: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 22:43:13.54 ID:juM2tiQio
チキンを食べた志保は、天板に頭を乗せて脱力

俺は俺で手を広げて寝転がり、だらけている

とてもクリスマスとは思えない光景だった

志保「炬燵…最高ですね」

P「ああ…」

炬燵は恐ろしい…

志保「…」

志保が立ち上がる

すると俺の隣に潜り込んできた

志保「…やっぱり炬燵は最高ですね」

そういって俺の腕を抱いて目を瞑る志保

P「ああ…最高だな…」

炬燵とはまた違う温かさを腕に感じながら、俺は目を閉じた

677: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 22:46:35.46 ID:juM2tiQio
P「ん…」

どうやら電気をつけたまま眠ってしまったようだ

それに炬燵も点けっぱなしだったので汗をかいていた

隣に目をやると志保が眠っていた

俺と同じように額に汗をかいている

…このままだと風邪を引きそうだな

そう考えた俺は汗を流すことにした

678: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/05(水) 22:50:15.38 ID:juM2tiQio
P「…志保」

志保を揺する

志保「ん…」

しかし志保は俺の腕を強く抱き寄せて抵抗する

P「志保」

さらに強く揺すると志保が薄く目を開けた

志保「…?」

P「炬燵で寝ちまったから汗かいてる、シャワーを浴びるから腕を放してくれ」

志保「…」

しかし志保の反応がない

P「志保?」

志保「…シャワー…」

P「ん?」

志保「私も…一緒にお風呂入る…」

P「えっ」

679: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/06(木) 00:16:53.25 ID:Y8W5xiQ2o
結局志保と同じ湯船に浸かっていた

P「ふう…」

志保「小さい頃は、一緒にお風呂に入りましたよね」

P「そうだな…また一緒に入るとは思わなかったけど」

そういって天井を見上げる

志保は毛先を指でくるくると弄っていた

志保「…そろそろ身体を洗いましょう」

P「ああ」

680: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/06(木) 00:24:47.65 ID:Y8W5xiQ2o
志保の要望で髪を洗ってやることになった

P「痒いところとか、痛いところはないか?」

志保「大丈夫です」

P「そっか」

志保の髪に指を通す

小さい頃もこうやって洗ってあげたっけな

志保も憶えているんだろう、だから髪を洗って欲しいと言い出したのかな

P「流すぞ」

志保「はい」

志保の頭にお湯をかける

お湯が流れ、濡れた髪は志保の背中や腰に張り付き…

P「…」

  が見えているのも含めてとても 靡であった

681: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/06(木) 00:30:16.29 ID:Y8W5xiQ2o
そして今、志保が俺の背中を擦っている

志保「やっぱり私と違って大きいですね」

P「そりゃあな」

志保の手の感触を背中に受けながら俺は瞑想する

…こうかが ないようだ…

志保「では、背中を流します」

P「ああ」

背中にお湯を浴び、泡が流されていくのを感じる

P「ありがとう志保、後は…」

自分で、そう口にしかけた時、志保が背中に抱き付いてきた

P「し、志保?」

682: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/06(木) 00:33:57.78 ID:Y8W5xiQ2o
志保「…もう我慢できません」

P「何が」

志保「背中とはいえ兄さんの裸を見続けて、なにもしないなんてあり得ないです」

志保「だから兄さんの身体は、私が全部洗います」

そういって俺の胸とツリーに手を伸ばす志保

P「ちょっ」

志保「代わりに私も、兄さんの手で全身を洗って欲しいです」

P「志保…」

泡の雪が降る中でクリスマスツリーを保護してホワイトクリスマスした

690: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/06(木) 23:03:29.25 ID:rCpg3lvmo
年が明けた

家族でおせちやそばを食べ、寒いし暗いので明日にしようということになり…

俺と志保は日が昇ってから近くの神社に初詣に来ていた

志保「凄い人混みですね」

俺の手を握りながら志保が言う

P「そうだな…志保、はぐれないようにちゃんと俺の手を握ってるんだぞ?」

志保「…大丈夫です、私はもうこの手を…兄さんと離れないって誓いましたから」

そういって手に力を込める志保

俺はそんな志保を抱き寄せた

志保「あっ」

P「手を繋ぐだけじゃ分断されてしまうかもしれない、だからこうやって固まっておこう」

志保「…はい、兄さん」

691: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/06(木) 23:17:41.66 ID:rCpg3lvmo
しばらく人波に揉まれる

一人だったなら不愉快な人波も、志保と一緒ならまったく気にならなかった

そしてようやく賽銭箱の前に到着した

賽銭箱に5円玉を9枚まとめたものを投げ込み、手を合わせる

…志保といつまでも一緒にいられますように

神様を信じていないわけじゃ無い

でも神頼みではなく、これは一種の誓いなんだ

この厳かな場だから出来る誓い…

祈りが済み、ちらりと志保を見ると

志保「…宝…願……子…祈…」

目を閉じて何かを呟きながら真剣に祈っていた

692: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/06(木) 23:54:27.31 ID:rCpg3lvmo
賽銭箱から離れた俺達は、人混みを避けて帰路につく

志保「今年は、どんな年になるんでしょうね」

P「さあな…ただ一つわかってることはある」

志保「それは?」

P「志保と一緒なら、どんな年になっても楽しいってことかな」

志保「ふふ、私もそう思います」

P「帰ろうか」

志保「はい、帰ってゆっくりしましょう」

P「今年も…これからもよろしくな、志保」

志保「はい、P兄さん」

693: BBP ◆SFvhMvS7IY 2016/10/06(木) 23:55:04.64 ID:rCpg3lvmo
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