12: ◆PH6ED8xEJw 2013/09/30(月) 21:45:07.38 ID:S1Nu5QKN0
ーーロンドン時計台

ケイネス「ウェイバー・ベルベット君」

ケイネス「そのような妄想を抱く前に」

ケイネス「まずは言葉を覚えたほうがいいんじゃないかな」

ーー廊下

ウェイバー「バカにしやがって バカにしやがって バカにしやがって!」

 ウェイバーは憤慨する

 ケイネスは自分の論文の正当性を論破できなかった

 だからこそあのような暴挙に出たのだと

 そう信じて疑わなかった

配達夫「おっと ごめんよ」

配達夫「君は降霊科の学生かい?」

ウェイバー「えぇ・・・」

配達夫「ちょうどよかった これをアーチボルト先生に・・・」

 ウェイバーはついていないと思った

 なぜこのタイミングでケイネスへの小間使いにならなければならないのかと

 しかし ウェイバーは噂を思い出した

 ケイネスが極東で行われるという聖杯戦争に参加するという事を

 それに参加するために英雄ゆかりの聖遺物を捜索させていたという事を

ウェイバー「これは・・・」

 送り元はニッポン

 中身は焦げ茶色の布の切れ端

 その日 ウェイバー・ベルベットはロンドンを離れ

 極東の島国へ飛び立った

ーーーーーー
ーーー


引用元: それいけ!ウェイバー・ベルベット 


 

13: ◆PH6ED8xEJw 2013/09/30(月) 21:47:14.91 ID:S1Nu5QKN0
ーー冬木市 マッケンジー宅

ウェイバー「やったぞ 僕にも令呪が宿った!」

 ウェイバーはニヤニヤしながら自分の手を眺める

グレン「おはよう ウェイバー」

マーサ「おはよう ウェイバーちゃん」

ウェイバー「おはよう おじいさん おばあさん」

 もちろん彼らは本当の祖父母ではない

 暗示をかけ 本当の孫だと思い込ませているだけである

 滞在拠点の確保もできたことで ウェイバーは自身の手際の良さにほれぼれとしていた

 そして今夜にも3羽の鶏を生贄にして英霊召喚の儀式を執り行う手はずになっていた

グレン「それにしてもマーサ 昨夜は鶏の鳴き声がうるさかくてかなわんかった」

マーサ「えぇ うちの庭に鶏が3羽いたんですよ」

マーサ「一体どこから紛れ込んだんでしょうか」

ウェイバー「・・・?」

 ウェイバーは老婆の発言に引っかかった

 今の会話でおかしな箇所は・・・

マーサ「ですから」

マーサ「3羽ともありがたく〆ておいたんですよ」

グレン「おぉ マーサの鳥料理は天下一品だからな」

ウェイバー「ぶふぉ!」

 すすっていたお汁粉を見事なまでに吹き出してしまう

 あれだけ苦労して捕まえた鶏を

 すべて〆ただと?

グレン「大丈夫か?ウェイバー」

マーサ「あらあら 新しいお汁粉を注いできますからね」

グレン「マーサは日本の料理も上手だからな」

マーサ「恥ずかしいですよ おじいさん」

グレン「・・・ただ」

グレン「量は日本サイズではないかな」

 そう言いつつ

 寸胴に向かうマーサを眺めた

ウェイバー「一体どうすればいいんだ」

 途方に暮れつつ

 軒にぶら下がった 元・生きた鶏を眺めていた

ーーーーーー
ーーー

14: ◆PH6ED8xEJw 2013/09/30(月) 21:50:07.59 ID:S1Nu5QKN0
ーー森 その日の夜

ウェイバー「告げるーー」

 情熱ーー

 目標へ突き進む不断の意思ーー

 これらの素養でいえば

 ウェイバー・ベルベットは十二分に優秀な魔術師であった

ウェイバー「汝の身は我が下にーー」

 魔方陣を描く素材についても

 素早く思考を張り巡らせた

 ニッポンが誇る英雄ーー

 生贄を使って召喚できる性質だろうか?



 答えは『否』



 それ以上に彼にふさわしいものがあるのではないだろうか?

 

15: ◆PH6ED8xEJw 2013/09/30(月) 21:50:41.63 ID:S1Nu5QKN0
そう思考を張り巡らせたウェイバーは

 老婆が作ったーー
 
 老婆が作りすぎた『Sweet Red-Bean Soup』を使い魔方陣を組み上げた

 すなわちーー



 『お汁粉』である



ウェイバー「ーー抑止の輪より来たれ」

 空が輝き

ウェイバー「天秤の守り手よーー」

 言い切るか否か

 魔方陣に流星群が降り注いだ

ウェイバー「うわっ!」

 あまりの光量と衝撃に倒れこんでしまう

ウェイバー「まさか・・・失敗したのか?」

 そんなはずはないと思いつつ魔法陣の方向を睨む

 土埃が晴れるとそこにはーー



 「パトロールから戻りました」

 

 ーーどうやら



 「あれ?ここはどこですか?」



 ーーおかしな事になったらしい



ーーーーーー
ーーー

16: ◆PH6ED8xEJw 2013/09/30(月) 21:53:29.32 ID:S1Nu5QKN0
ーー公園

ウェイバー「どうしてこうなった?」

 寒空の下 ぽつんとひとりでベンチに座っていた

 召喚はどうやら成功したらしい

 それと共に英霊のクラスがライダーであるという事がウェイバーの意識に流れ込んできた

 しかしーー

 ステータスはまるでわからず・・・

 さらに 守護霊にも関わらず霊体化ができない

 その上

~~~~~~
ライダー「困っている人がいるみたいだ」
ライダー「僕 パトロールに行ってきます」
~~~~~~

 マスターを置き去りにして闇夜に消え去ってしまった

ウェイバー「(あの英霊は一体何を考えているんだ?)」

 この瞬間にも他のマスターがここにやってくるかもしれない

 そんな最悪の状況を想像してしまった

ウェイバー「(死?まさかこんなところで?)」

 恐怖が精神を蝕んでいく

17: ◆PH6ED8xEJw 2013/09/30(月) 21:54:29.62 ID:S1Nu5QKN0

 命を賭けた闘いを望んだはずだった

 しかしーー

 召喚が成功した時から・・・

 夢物語ではない事を理解した瞬間から・・・

 恐怖が胸に住み着いた

ウェイバー「ううぅうぅ」

 その恐怖が頂点に達した瞬間ーー

ウェイバー「ラァイダァーー!」

ライダー「ただいま戻りました」

ウェイバー「!?」

 マスターとサーバントは魔翌力のパスで繋がっている

 そのため大雑把ではあるが互いがどこに居るのかは把握できる

 ライダーの名を叫んだ瞬間

 彼は確実に半径『10km』以内にはいなかった

ウェイバー「そろそろ帰るぞ」

 先ほどまでの恐怖はもう霧散している

 単純な移動速度だけでも想像をはるかに上回る能力

 やはり自分は優秀な魔術師なんだ

 そう自分自身に酔いしれたウェイバーが

 ニヤケ顔でライダーの方に振り返ると

ウェイバー「」

 首なしライダーが立っていた

ーーーーーー
ーーー

18: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/01(火) 21:24:22.96 ID:Bwn7jHcR0
ウェイバー「・・・」

 かろうじて気を失わずに済んだ

 この英霊は一体何者なのか?

 いや

 一体何なのか?

 問を発する前に

「アタラシイカオヨ」

 何もない空間から謎の音と共に

 頭が

 ライダーの胴体に向かって飛んできた

 それがぴったりと合わさると

ライダー「ウェイバーくん 何か困ったことがあったの?」

 事もなげに会話を始めだした

19: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/01(火) 21:25:21.10 ID:Bwn7jHcR0
 未だ放心中のウェイバーの回答を待たずに

ライダー「そう言えばウェイバーくんは聖杯戦争に参加するんだよね」

ライダー「いったい何を望むの?」

 そう問を投げかける

ウェイバー「僕の望みはなぁ・・・」

 自身の論文を投げ捨てた講師

 それに習うかのように嘲笑した学生達

 それらを思い出しながら

ウェイバー「・・・正当な評価だけだ」

 ぽつりと問いに答える

ライダー「そうなんだ」

ウェイバー「僕の事を馬鹿にするのか」

ライダー「まさか」

ライダー「今夜のパトロールで」

ライダー「空腹で街をさまようおじさん達に顔を分けてあげられたし」

ライダー「誰もいない家に閉じ込められていた子供達を交番に連れていってあげられた」

ライダー「ウェイバーくんが僕を呼んでくれたおかげで皆笑顔になったんだよ」

ライダー「ウェイバーくんはすごいね」

 僕は何もしていない

 そう言い放ったが

 ライダーの本心からの言葉がウェイバーに届いた



 なんだか胸が暖かい



ライダー「もうひとつ聞いていいかな?」



 何が君の幸せ?
 
 何をして喜ぶ?

 僕の生きがいは困っている人を助けることなんだ

 

 ウェイバーはライダーの問について考えたことがなかった

 そして

 分からないまま終わるのは嫌だな

 そんな風に思った

ーーーーーー
ーーー

20: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/02(水) 21:32:41.45 ID:IDiH7gzG0
ライダー「さぁ日が登る前に帰ろうよ」

ライダー「日が登ったらまたパトロールにいかなくちゃ」

ウェイバー「まてよライダー」

ウェイバー「お前何しに来たかわかってるのか?」

ウェイバー「聖杯戦争だぞ?聖杯戦争!」

ウェイバー「他のマスターとサーヴァントと戦わないといけないんだよ!」



ライダー「僕は戦いたくない」



ウィエバー「何だって!?」

 この英霊にも願い事があるのではないのか?

 それにも関わらず戦いたくないだと?

ウェイバー「(こうなったら・・・)」

ウェイバー「(令呪に告げる・・・)」

 ウェイバーの令呪がぼんやりと輝きを放つ

ウェイバー「(・・・ダメだ)」

 ただの3度限りの絶対の命令

 ライダーは別に命令に背いたわけではない

ウェイバー「じゃあ僕が襲われたら[ピーーー]っていうのかよ」

ライダー「そんなことはない」

ライダー「その時は僕が全力で君を守るよ」

 小豆のような双眸には怯えも奢りも浮かんでいなかった

ウェイバー「やけに余裕綽々じゃないか」

ウェイバー「何か勝算があるのか?」

ライダー「僕の力を知りたいの?」

ウェイバー「当然だろ?オマエを信用していいのか証明してもらわないと!」

ライダー「う~ん 困ったな」

ライダー「そうだ!」

ウェイバー「どうした?」

ライダー「僕は空を飛べるよ!」

 このマントが僕の宝具なんだ

 そう言い放つライダー
 
 確かにとてつもない移動速度を保持している事はわかった

 しかし それだけで戦えるのだろうか?

 訝しんでいるウェイバーに向かってライダーはさらに言葉を放つ

21: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/02(水) 21:33:54.03 ID:IDiH7gzG0
>>20 差し替え

ライダー「さぁ日が登る前に帰ろうよ」

ライダー「日が登ったらまたパトロールにいかなくちゃ」

ウェイバー「まてよライダー」

ウェイバー「お前何しに来たかわかってるのか?」

ウェイバー「聖杯戦争だぞ?聖杯戦争!」

ウェイバー「他のマスターとサーヴァントと戦わないといけないんだよ!」



ライダー「僕は戦いたくない」



ウィエバー「何だって!?」

 この英霊にも願い事があるのではないのか?

 それにも関わらず戦いたくないだと?

ウェイバー「(こうなったら・・・)」

ウェイバー「(令呪に告げる・・・)」

 ウェイバーの令呪がぼんやりと輝きを放つ

ウェイバー「(・・・ダメだ)」

 ただの3度限りの絶対の命令

 ライダーは別に命令に背いたわけではない

ウェイバー「じゃあ僕が襲われたら死ねっていうのかよ」

ライダー「そんなことはない」

ライダー「その時は僕が全力で君を守るよ」

 小豆のような双眸には怯えも奢りも浮かんでいなかった

ウェイバー「やけに余裕綽々じゃないか」

ウェイバー「何か勝算があるのか?」

ライダー「僕の力を知りたいの?」

ウェイバー「当然だろ?オマエを信用していいのか証明してもらわないと!」

ライダー「う~ん 困ったな」

ライダー「そうだ!」

ウェイバー「どうした?」

ライダー「僕は空を飛べるよ!」

 このマントが僕の宝具なんだ

 そう言い放つライダー
 
 確かにとてつもない移動速度を保持している事はわかった

 しかし それだけで戦えるのだろうか?

 訝しんでいるウェイバーに向かってライダーはさらに言葉を放つ

22: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/02(水) 21:34:49.71 ID:IDiH7gzG0
イダー「ここに呼ばれた時にこの世界の知識が手に入ったから」

ライダー「僕の強さを何かと比較してみるよ」

 難しい顔になってしばらく考えるライダー

 数分考えた結果ーー

ライダー「うん!」

ライダー「月のお姫様と」

ライダー「ワンちゃんとクモさん相手なら」

ライダー「同時にやってきても君を守れるよ!」

ウェイバー「バァカァアーー!」

 あれだけ考えた結果がこれだとは

 プリンセス・カグヤ?犬と蜘蛛?

 一体こいつは何と比較しているのだろうか?

ウェイバー「聖杯さえ手に入れられたら文句はない・・・」



 とはいえ ライダーからは謎の安心感が発せられている

 魔術師であるウェイバーだからこそ

 この英霊のオドが限りなくマナに近いことを感じ取ることができた

 守護霊よりも精霊に近いのではないだろうか?

 謎は募るばかりである

 

ウェイバー「もっとオマエが何なのかを聞かせろよ」

ライダー「もちろん」

ライダー「明日パトロールをしながらお話をしよう」

ーーーーーー
ーーー


23: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/05(土) 20:49:41.03 ID:ePPUPJXs0
ーー数日後 上空

ウェイバー「アサシンがやられた?」

 御三家が一つ

 遠坂邸

 そこに放っていた使い魔の視覚を通して一部始終を見届けた

ウェイバー「おいライダー進展だぞ!一人脱落した」

ライダー「そうなんだ」

ライダー「友達になりたかったのにな」

ウェイバー「あのなぁライダー!もう聖杯戦争は始まっているんだよ」

 召喚した次の日からライダーのパトロールに付き合わされている
 
 ライダーは他のサーバントやマスターと友達になりたいと言っていた

 戦わなければいけないと伝えても戦いたくないという返事しかない

 ウェイバーは戦略は自分で考えるしかなかった

 その中で まっさきに脱落したのが対マスター最大の脅威

 アサシンであった事が一つの行幸だった

 正面からの戦闘はライダーに任すとして

 何をされるかわからない相手こそ当面の脅威である

 すなわち残りの脅威は
 
 キャスターである


24: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/05(土) 20:51:23.55 ID:ePPUPJXs0
ライダー「ねぇウェイバーくん」

ライダー「アサシンさんはどうしてやられたの?」

ウェイバー「え?」

ライダー「監視していたんでしょ?アサシンさんはどうやってやられたの?」

ウェイバー「多分・・・トオサカのサーバントにやられた」

ウェイバー「やらた金ピカで派手な奴だった」

ウェイバー「なんだよ急に」

ウェイバー「ようやく戦う気になったのか?」

ライダー「僕は戦いたくない」

ウェイバー「ならどうして」

ライダー「ウェイバーくんを危険から守るためだよ」

ウェイバー「・・・」

 こいつはこのままでいいのではないか?

 放っておいても敵マスターは必ずこちらへやって来るのだから

 ウェイバーは生き残るため

 できる限りの状況を思い出してライダーへ伝える

ウェイバー「複数の剣や槍を降り注がせていた」

ウェイバー「けど一人のサーバントがそんなにもたくさんの宝具を持っているものなのか?」

ライダー「う~ん僕にはよくわからないけど」

ライダー「僕もマントの他にも持っているから」

ライダー「同じようなものなのかもしれないね」

ウェイバー「・・・」

ライダー「けどそんなことは会った時に考えればいいね」

ウェイバー「そんなんでいいのかよ」

ライダー「大丈夫だよ」

ライダー「さぁパトロールの続きをしよう」

 今夜もまたライダーのパトロールに同伴する
 
 日中に空を飛ぶのは目立ちすぎるからやめるよう命じた

 思いの外 素直に聞いてくれたが

 代わりに夜を通してのパトロールが行われている

 生身での暗夜飛行はただただ恐ろしいものだった

ライダー「今夜も閉じ込められている子供達が多いよ」

ウェイバー「なんでフユキの親たちは子供を閉じ込めるんだよ・・・」

 暗夜飛行とフユキの親に恐怖を感じているウェイバーだった

ーーーーーー
ーーー


25: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/06(日) 21:31:13.01 ID:MN4Vuvj30
ーー夜 冬木大橋のアーチ上

ウェイバー「ラァイダァー・・・早くここから降りようーー」

 寒さと高さから逃げたくて一刻も早く地面に戻りたかった

 いや
 
 高さに関しては連夜のパトロールのほうがよっぽど恐ろしかった

 生身のまま闇夜を飛び回った人類はそう多くはないだろう

 ただ寒さは身にしみる

 川の上で吹きさらしの空間だ

 ウェイバーでなくともそう感じたであろう

ライダー「パトロールに疲れたんだね」

 そう言いながら顔に手を持って行き

 ミシリ

 一部分をちぎった

ライダー「これを食べると元気が出るよ」

ウェイバー「前から思っていたんだけど」

ウェイバー「オマエの顔はどうなってるんだ?」

ライダー「お腹を空かせた人たちに食べてもらえるように」

ライダー「アンパンでできてるんだよ」

ウェイバー「・・・嘘だろ?」

 腑に落ちないがウェイバーは目の前の事実を優先させた

 間違いなくライダーの顔はアンパンでできている

 しかしそんな英雄がニッポンには居たのだろうか?

 いやそれ以上に

 そんな英雄が居たのだろうか?

 
 
 これに関してもウェイバーは現実を優先させた

 パトロール中に救出したフユキの子供は

 皆がライダーの『真名』を知っていた

 親が子に語り聞かせるほどの英雄譚が

 おそらくライダーにはあるのだろう



ウェイバー「ライダーそろそろ帰らないか?」

ウェイバー「もう疲れたよ」

ライダー「う~ん帰りたいんだけど」

ライダー「今夜はどうしても戦いが起きてしまうから」

ウェイバー「なんだって?」

ライダー「サーヴァントの一人が喧嘩相手を探して移動しているんだ」

ライダー「喧嘩はよくないから始まったら止めないと」

 パトロールをしながらもきっちりと聖杯戦争に参加している

 むしろなぜそうまでしてパトロールを続けているのだろうか?

26: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/06(日) 21:31:52.50 ID:MN4Vuvj30

ウェイバー「なぁライダー」

ライダー「あぁ!喧嘩が始まってる」

ライダー「ウェイバーくん 港に向かうよ」

 ウェイバーは自分が参戦するということに恐怖と高揚を覚えた
 
ライダー「大丈夫だよ」

ライダー「僕が必ず君を守るから」

 ウェイバーの心中を察するライダー

 本当に

 こんなにも優しい奴が戦えるのだろうか?

ーーーーーー
ーーー


ーー港

ランサー「覚悟しろセイバー 次こそは獲る」

セイバー「それは私に取られなかった時の話だぞ ランサー」

 必殺を見計らい

 互いに間合いを詰めていく

 一触即発の宝剣と魔槍

 冷たい空気をーー

ライダー「待てー!!」

 ーー空気を引き裂いて

 ーー空気を全く読まずに

ライダー「喧嘩はよくないよ」

 唖然と目の前の飛来者を眺めるセイバーとランサー

ライダー「喧嘩をやめて」

ライダー「僕と友達になろう」

ウェイバー「なぁに馬鹿なことを言ってるんだ!」

 ウェイバーは敵サーバントを目の前にした恐怖を覚える前に
 
 ライダーに掴みかかった

セイバー「そのような戯言を述べ立てるために」

セイバー「私とランサーとの勝負を邪魔立てしたのか?」

 憤慨するセイバーとランサー

27: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/06(日) 21:32:44.52 ID:MN4Vuvj30
ライダー「ウェイバーくん」

ライダー「僕は2人を怒らせちゃったのかな」

ウェイバー「見たらわかるだろう!」

 背中からライダーをぽかぽか叩く

 その時



「そうかよりによって貴様か」



 ウェイバーはこの声を知っている



「まさか 君自らが聖杯戦争に参加する腹だったとはね」


 
 ウェイバーはこの声の主から触媒を奪い取った



ケイネス「ウェイバー・ベルベット君」

 怨嗟にまみれたような声ーー



ケイネス「君には私自らが課外授業を受け持ってやろうではないか」

 言葉だけで心臓を鷲掴みにできるようなーー



ケイネス「魔術師同士が殺しあうという本当の意味」

 その敵意は完全にウェイバーに向けられているーー



ケイネス「その恐怖と苦痛を余すところなく教えてあげるよ」

 ここで死ぬここで死ぬここで死ぬーー



ケイネス「光栄に思いたまえ」
 
 コワイ コワイ コワイーー


28: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/06(日) 21:33:29.09 ID:MN4Vuvj30

 その状況を打破するかのように

 ウェイバーの肩に柔らかで温かい手が乗せられる

ライダー「こらー!!」

ライダー「君はウェイバーくんの先生なんだろう!」

ライダー「隠れてない出ておいでよ」

ライダー「僕と一緒にパトロールをしているウェイバーくんを見習うといいよ」

 怒っているようで未だ姿を見せないランサーのマスターを窘めている

 まるで聞き分けのない子供に言い聞かせるように扱われたケイネスから

 怒りの空気が発せられた

ライダー「そうだウェイバーくん」

ウェイバー「なんだよ」

 ケイネスの重圧から守られた

 ウェイバーはそれまでより少しだけライダーに敬意を持つようになった

ライダー「他のサーヴァントなら友達になってくれるかな」

ウェイバー「はぁ!?」
 
 前言撤回 こいつはやっぱり馬鹿だ
 
ライダー「おーい 誰かサーヴァントはいませんか!」

 問に答えるように空から黄金色のサーヴァントが現れた

ーーーーーー
ーーー

31: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/08(火) 22:17:13.88 ID:G+w7SWWg0
アーチャー「我を差し置いて王を名乗る不埒者が涌くとはな」

 眩いばかりの金色の甲冑を纏った英霊がそこに現れた

ウェイバー「あいつは・・・」

 遠坂邸で目撃した

 圧倒的な存在

 誰もが口を閉ざす中ーー

ライダー「初めまして王様ーー」



ライダー「僕 『アンパンマン』です」



ウェイバー「何をーー考えてやがりますかこのバカァーー!」

 まさかこんな所で真名を展開することになるなんて

 ウェイバーが背中からポカポカと拳を打つ

ライダー「ウェイバーくんも挨拶をしないと」

ウェイバー「何でだよ!敵サーヴァントだぞ!」

ライダー「ウェイバーくん!!」
 
 ウェイバーは体を強張らせた

 今までも叱りつけられることはあったが
 
 これほどの強さで言われたことはなかった

ライダー「あの気品 あの風格」

ライダー「どう考えても君たちのーー」

ライダー「この世界の王様だよ?」

ライダー「ちゃんと挨拶をしないといけないよ」
 
ウェイバー「もうっ!」

ウェイバー「ハジメマシテ ワタクシ ウェイバー・ベルベットトモウシマス」

 渋々挨拶をする

ライダー「王様」

ライダー「僕と友達になろうよ」

 こんどこそ場に居た全員が絶句した

 このサーヴァントの考えていることが全く理解できないと

アーチャー「王に対してその言葉 焚刑にも値するーー」

 空気が一気に凍りつく


32: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/08(火) 22:18:20.10 ID:G+w7SWWg0
 しかし

アーチャー「ーーが 先の態度と我の存在を人の子へ教え聞かす様・・・」

アーチャー「それなりに弁えているようだな」

アーチャー「今回のみ不問とする」

 なかなかに愉快であると笑いを堪えきれない様子だった

アーチャー「まぁ」

アーチャー「そこな不埒者は払っておくかーー」

 言い終わるや否や

 夜空を切り裂かんとする眩い光

 それは輝く宝具の群れだった

ウェイバー「あれは・・・」

 間違いない

 アサシンが抹殺された時の状況を思い出す

 あれの前では戦いは発生せず一方的な殺戮にしかならない

 

 そこに予想外の状況が発生する

 夜よりも闇よりも暗い人影が

 魔力の奔流と共に現れた



バーサーカー「■■■■■■・・・」

 

ランサー「なぁライダー」

ランサー「彼奴には誘いをかけないのか?」

 漆黒の騎士を見据えつつも

 軽飄とライダーに話しかける

ライダー「もちろんだよ ちょっと行ってくるね」

 あの騎士からは掛け値なしの殺気のみが放たれている

 それに臆する事無く

 さも当然だと返事をするライダー



雁夜「殺せーー殺すんだバーサーカー!」



 どこか遠い場所から命令が飛ぶ

 時同じくしてバーサーカーはアーチャーを睨みつける

アーチャー「誰の許しを得て我を見ておる?雑種めがーー」

アーチャー「せめて散り様で我を興じさせよ 雑種」

 中に浮かぶ宝具の群れがバーサーカに降り注ぐ

 それはまさに流星群の煌きあった

ーーーーーー
ーーー

35: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/09(水) 23:21:39.80 ID:EHpgxkub0
ウェイバー「そんな馬鹿な・・・」

 アサシンの再現・・・

 とはならなかった

ランサー「奴め本当にバーサーカーか?」

 宝具の絨毯爆撃

 地面はことごとく抉られたが

 バーサーカーは何事もなかったかのように立っている

 いや

 先ほどまで持っていなかった剣を携えていた

アーチャー「その汚らわしい手で 我が宝物に触れるとはーー」

 底なしの憤怒

 同時に更に16挺の宝具が展開される

 どれ一つとして同一のものはない

ウェイバー「何でバーサーカーは立っていられるんだよ!」

ライダー「1本目の剣を取ってその後の武器を払ったからだよ」

ウェイバー「・・・やけに冷静だな」

ライダー「君への危険が遠ざかったからね」

ライダー「バーサーカーさんが王様への挨拶を終えたら」

ライダー「バーサーカーさんに挨拶をして帰ろう」

ウェイバー「オマエなぁ」

ライダー「あっ 王様の宝具が増えたよ」

 もはや昼と変わらない光に包まれている

ライダー「ウェイバーくんもご覧よ」

ライダー「綺麗だね」

ウェイバー「・・・確かに」

 呑気というか豪胆というか

ライダー「あれ?王様が帰るみたいだよ」

 黄金の残滓のみを残しアーチャーが姿を消す

ライダー「バーサーカーさんに挨拶をして帰ろうか」

 闇に溶け込みそうな騎士はまっすぐにセイバーを見据える

バーサーカー「Ar・・・er--」

 バーサーカーが肉声を出すと同時に足元の鉄柱を掴み

 セイバーに迫る

セイバー「なっ!」

 ありえないことだった

 ただの鉄の塊がセイバーの宝剣と互角に渡り合っている

ライダー「忙しそうだからもう帰ろうか」

ウェイバー「あのなぁ」

36: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/09(水) 23:24:29.24 ID:EHpgxkub0

ライダー「喧嘩はよくないけど」

ライダー「2人きりだったら決闘なんでしょ?」

ウェイバー「そう言ったけど」

ライダー「3人とも騎士っていう人たちなんでしょ?」

ライダー「正々堂々と決闘するよね」

ライダー「さぁ おじいさんとおばあさんが待って・・・

ケイネス「ランサー バーサーカーを援護してセイバーを殺せーー」

ケイネス「ーー令呪を持って命ずる」
 
 サーヴァントに対する絶対の命令

ランサー「すまん セイバー」

 怒りに身震いさせたランサーがセイバーと対峙する

 しかしそれ以上に怒りをあらわにしたのは・・・

ライダー「ケイネスくんの卑怯者!!」

 二人掛かりは卑怯だ

 叫ぶと同時にーー

 ウェイバーが吹き飛んだ

 続いてアインツベルンのホムンクルスが

 そしてーー



ライダー「アァンパァンチッ!!」



 叫びと轟音と衝撃波が届いた時には

 バーサーカーが

 文字通り彼方まで吹き飛ばされていた

ライダー「ケイネスくん!!」

ライダー「これ以上ウェイバーくんの先生らしからぬ卑怯な真似をしたら」

ライダー「僕がランサーさんをやっつける」

 しばしの沈黙

37: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/09(水) 23:25:58.47 ID:EHpgxkub0
ケイネス「撤退しろランサー」

ケイネス「今宵はここまでだ」

ランサー「・・・御意」

 ランサーは憤った

 この顔が丸い英雄は『騎士道』の価値を理解せず

 あまつさえ己の主を卑怯者と蔑んだ

 しかし

 ランサーは羨んだ

 この空を翔ける英雄は確固たる『信念』

 自身の主人に対する『忠実』と『誠実』の心を持ち

 そして主人から『信頼』を得ている事

 オレがなりたかった騎士の姿そのものではないか?
 
 そんなことを考えながらランサーは姿を消した



セイバー「・・・」

 セイバーは何も言えなかった

 ライダーのあの拳はただの体術だった

 しかし あれほどの力を持ちながら

 その姿勢はあくまでも護り手である

 それに比べて私はどうだ?

 国を護る 民草を護る アイリスフィールを護る

 何一つできなかったではないか

ライダー「それじゃあセイバーさん さようなら」

ライダー「ほらウェイバーくんも」

ウェイバー「ーーー」

ライダー「疲れちゃったんだね」

 ウェイバーを背中に乗せてこの場を飛び去る

アイリスフィール「セイバー 左手は大丈夫?」

セイバー「アイリスフィール 手痛い失態でしたーーー」

 ひとしきり生き延びることができた事を感謝する2人

セイバー「ただ」

セイバー「ライダーに取って私達は敵ですらないのかもしれません」

 苦々しい顔をしたままそう零した

ーーーーーー
ーーー

39: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:40:01.00 ID:Uu8tVFIy0
ーー朝 冬木教会

ウェイバー「ウェイバー・ベルベットです」

ウェイバー「この度はライダーのマスターとして聖杯戦争に参加しました」

璃正「礼にかなった挨拶 痛み入ります」

 神父は驚きを隠せなかった

 魔術師という輩はことごとく身を隠すものだが

 この若者は自らとそのサーヴァントを隠す事もせずに

 堂々と教会の招集に馳せ参じた

璃正「では用件に入らせて頂きます」

 聖杯戦争の現状とキャスター討伐に対する報奨の説明を行った

 璃正はいつもの説法の習慣として信徒席の様子を伺った

 そこには

 真摯な表情で聞き入っている青年と英霊が居た

 神父の言葉に熱が入る

 主が使徒達に語りかけた時はこのような気持ちを抱いたのだろうか
 
 この年になって主の御心に近付けたと 璃正は本心から感謝の念を抱いた


40: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:40:39.05 ID:Uu8tVFIy0
璃正「さて 話はここまでです」

璃正「何が質問はございますか」

使い魔がすべて散開した後

ライダー「神父さん」

璃正「なんでしょうか?」

 神父はこの英霊に向き合いその眼を覗いた

ライダー「アサシンさんも来てくれますか?」

ウェイバー「何言ってるんだよ ライダー」

ライダー「昨日クレーンの上から僕達を見ていたからね」

ライダー「僕は皆とお友達になりたいんです」

 ウェイバーはアサシンは脱落したんだよ

 それはオマエの気のせいだ と説明した

 2人が神父に挨拶をして教会を去ろうとした時

璃正「待ちなさい」

 振り返る2人

璃正「貴殿達の人生に幸多からんことを」

璃正「Amen」

 2人は礼をして去る

璃正「・・・」

璃正「神を試してはならん・・・か」

 あの英霊とそれに選ばれた若者ーー

 璃正は次に会える時は嘘偽りのない心で

 一人の信徒として向き合いたい

 ーーそう願った

ーーーーーー
ーーー

41: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:42:27.08 ID:Uu8tVFIy0
ーー帰路

ウェイバー「ほら見ろ 他に誰も来ていなかったじゃないか」

ウェイバー「僕だけ!マヌケにも姿を晒しちゃったじゃないか!!」

ライダー「逆だよ ウェイバーくん」

ライダー「君だけが勇気と礼節を持っているんだよ」

ライダー「そんな君と友達になれて僕は嬉しいよ」

ウェイバー「・・・マスターとサーヴァントだ」

 ライダーはにこにこしている

ウェイバー「ライダー 途中で川に寄るぞ」

ライダー「何かあるの?」

ウェイバー「魔術師を探そうっていうんだ」

ウェイバー「街のど真ん中に流水がある土地なんだから」

ウェイバー「そこから調べるのが当然だろ?」

 ライダーは一層にこにこして

 やっぱりウェイバーくんはすごいね

 そう言いながら川に方向を変えた

ーーーーーー
ーーー

42: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:43:53.51 ID:Uu8tVFIy0
ーー夕方 マッケンジー宅

ライダー「ただいま戻りました」

マーサ「あらあら おかえりなさい」

グレン「おぉ アンパンマンさんとウェイバー」

ウェイバー「・・・ただいま」

 初日からおかしいと思っていたが

 この街の連中はなぜかこいつに違和感を覚えない

ライダー「マーサさん 夕食の準備を手伝います」

マーサ「お客さんにそんなことはーー」

 お手伝いできることが嬉しいんです
 
 マーサも嬉しそうに料理を教える

グレン「いやぁ あなたが本当にいらっしゃるとは思ってもみませんでした」

マーサ「てっきり絵本の中の人かと思ってましたよ」

 ウェイバーくんに呼ばれてやってきたんですよ

 おぉ冗談もご上手だ

 はっははは

ウェイバー「(なんで会話が成立してるんだよ)」

43: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:45:14.14 ID:Uu8tVFIy0

ウェイバー「おじいさん 荷物を置いてくるよ」

マーサ「料理ができたら呼びますからね」

ウェイバー「ありがとう おばあさん」

グレン「ウェイバーの奴 今日は何をやっていたんですかな」

ライダー「研究の調査ですよ」

ライダー「ウェイバーくんは民俗学の研究をしているんですが」

ライダー「冬木の龍神伝説を科学的な側面からも調べているんです」

ライダー「今日は未遠川の水を採取しに行ってーー」

 いつも革命的な発想で周囲を驚かせてます

 もうすでに教育に関する論文も書き終えてましてーー

 そうですか!奴は自慢の孫なんですよーー

ウェイバー「・・・一度しか話して無いのに何で覚えているんだよ」

 最もその論文の評価は・・・

ウェイバー「あの老人も何であんなに嬉しそうに・・・」

ウェイバー「・・・赤の他人の事を自慢しているんだよ」

 暗示一つとっても規格外の効果を与えているんだ

 僕は優秀な魔術師なんだ



 無理矢理そう言い聞かせた
 


マーサ「ウェイバーちゃん ご飯ができましたよ」

ウェイバー「今いくよ」

ーーーーーー
ーーー

44: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:46:55.57 ID:Uu8tVFIy0
ーーウェイバーの部屋

ライダー「そうやって使うんだ」

 ウェイバーが手際よく試験官に試薬を入れていく

 河口に近い水からどんどん色が濃くなっていく

ウェイバー「なんなんだこれ!?」

 魔術の行使を隠匿もせずに垂れ流しにしなければこれほどの状況にはならない

ライダー「あっ 透明なままだね」

ウェイバー「この2点の間に拠点になりそうなところは・・・」

ウェイバー「排水口だな」

 見つけはしたが何という地味な作業だ

 自身の思い描く理想の魔術師の戦いではなかった・・・

ウェイバー「どうしたんだよ ライダー」

ライダー「こんなにも早い段階で」

ライダー「こんなにも手際よく目的に達するなんて」

ウェイバー「オマエ馬鹿に・・・」

 馬鹿にしているのかと訝ったが

 このアンパンは驚いた顔でウェイバーを見ている

 このサーヴァントは馬鹿正直なやつだ

 口に出した事はそのまま本心なんだろう

ウェイバー「・・・作戦を立てよう」

 陣地防衛で優位に立っているキャスターが相手だ

 慎重になりすぎることはないだろう

ライダー「今から行こう」

45: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:48:14.16 ID:Uu8tVFIy0
ウェイバー「なんでやる気になってるんだよ」

ライダー「あの近くで助け声が聞こえていたんだ」

ウェイバー「前のパトロールか?」

ウェイバー「オマエが見付けて助け出したじゃないか」

ライダー「その声の他にも聞こえていたんだ」

ライダー「まさか地面の下に居るなんて想像がつかなかった」

ウェイバー「・・・」

 これは聖杯戦争で魔術師同士の戦いだ

 他人が死んでしまおうとも戦わなければいけない

 そんなことはわかっている

 そんなことはわかっている

 けれどーー

ウェイバー「・・・行こう」

 あのバカの影響だ

 優秀な僕がなんて様だ

ーーーーーー
ーーー

46: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:49:18.96 ID:Uu8tVFIy0
ーー未遠川の排水口

ライダー「アンパンチ!」

 ただの一撃で排水口の道を切り開いた

 怪魔でほぼ完全に閉塞していたのだが

 今では下半分が怪魔の残骸で上半分が奥へ通じる空間となった

ライダー「・・・」

 ライダーの背中に乗りながら奥へ進む

 こいつはここに来てから殆ど口を聞かない

 よくないことが起きている
 
 そう推測するには十分すぎる状況だった

ウェイバー「ここか」

 足元は汚水でねばつき

 空気はーー

ライダー「ウェイバーくんは見ないほうがいい」

 いつもと異なる様相だった

ウェイバー「何を言ってるんだよ」

 試薬と触媒を混ぜあわせ光を浮かべる

ウェイバー「キャスターの手ががりを探さなきゃいけないだろ」

 ぼんやりと見えたのはーー



 ーー地獄だった



47: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:50:44.74 ID:Uu8tVFIy0
ウェイバー「っうぅえぇげぇあ」

 胃袋の中身をすべて吐き出すだけでは足りなかった

 空っぽになった後は胃液を

 痛めた喉から血を吐き出した

ウェイバー「畜生ーーバカにしやがってーー畜生ッ!」

 涙と鼻水にまみれたまま叫んだ

ウェイバー「なんとか言えよライダー!!」

ライダー「・・・」

 クソっ

 こいつが何も感じないわけなかった

 なんでそんな顔をするんだよ

 クソっ

 僕が思考停止させるわけにはいかない

ウェイバー「らいだぁ まじゅ生存者をざがぜ」

 はっきりとした命令を出したつもりだった

 ありったけの勇気を出したつもりだった

 痩せ我慢もろくに出来なかった

ライダー「マスター」

ライダー「生存者はありません」

 押し殺した声だった

 こんなタイミングでこいつは

 初めて僕をマスターと呼びやがった

ライダー「キャスターとは友達にはなれない」

 いつもの温和な言葉すら出ていない

ライダー「そしてアサシンともーー」

48: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:55:47.09 ID:Uu8tVFIy0
ウェイバー「!?」

 アサシンだと?

 体を強張らす間もなく

 ライダーの姿が消え

 『ガギン』

 金属を弾く音と共に眼の前に現れた

 あれは・・・短刀か?

ライダー「アンパンチ!!」

 黒い何かに向かって拳をふるい

 叫び声が排水口の出口に向かって遠ざかった

ライダー「アンパンチ!!」

ライダー「アンパンチ!!」

ライダー「アンパンチ!!」

 あまりの状況に気が狂ったのだろうか

 何もない空間に向かって3度拳をふるっていた

ウェイバー「アサシン!?そんなアサシンはトオサカのサーヴァントにーー」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ライダー「昨日クレーンの上から僕達を見ていたからね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 なんてことだ

 ライダーは気がついていたじゃないか

ライダー「ウェイバーくんに挨拶に来たのかと思って放っておいたら」

ライダー「あの4人はなんて事をしようとしたんだ」

 4人?

 黒い影は1つしか見えなかった・・・

 まさか 霊体化状態のアサシンを見つけたのか?

 ワケガワカラナイ

 なぜアサシンは複数居るんだ?

 なぜこいつはそれすら看破するんだ?


49: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/12(土) 22:57:11.43 ID:Uu8tVFIy0

ライダー「ウェイバーくん」

ライダー「キャスターは悪い事をしすぎた」

ライダー「ここを完全に壊そうと思うけどいいかな?」

ウェイバー「あぁ・・・徹底的に」

 はっきりと命じた

 それにあわせてライダーの体が光りだした

 それはーー

 救いの光に見えた



 アンパンチ


 
 目に映るものは全て瓦礫と化した

 ライダーと共にこの場を去る時に

 

 アリガトウ



 悲しげな音が聞こえた

ーーーーーー
ーーー

53: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/15(火) 21:55:32.89 ID:qphDwWbY0
ーー朝 マッケンジー宅

マーサ「おはようウェイバーちゃん」

ライダー「おはようウェイバーくん」

ウェイバー「おはようおばあさん」

ウェイバー「ライダー 朝早くから何やってるんだよ」

マーサ「アンパンマンさんとパンを作っているのよ」

ライダー「お昼ごろには焼けると思うから楽しみにしていてね」

 楽しそうな雰囲気の中2人はパン生地をこねていた

ウェイバー「それをどうするんだよ」

マーサ「あら?お友達の所に持っていくのでしょう?」

ウェイバー「おいライダー」

ウェイバー「それってもしかして・・・」

ーーーーーー
ーーー

54: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/15(火) 21:56:36.91 ID:qphDwWbY0
ーー夜 アインツベルンの城

アイリ「これは一体!?」

セイバー「アイリスフィールどうかされましたか?」

アイリ「正面突破というわけね・・・」

 森の結界が力任せに破られた

セイバー「迎え撃ちます アイリスフィールは私の傍へ」

 間もなくここは戦場になる

 たとえ最前線で会ってもこの騎士の近くが最も安全なのである

ーーーーーー
ーーー

55: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/15(火) 21:58:07.85 ID:qphDwWbY0
ーー少し前 アインツベルン森上空

ウェイバー「ライダー 森全体に結界が張ってある」

ライダー「え?何も見えないけれど」

ウェイバー「魔術による防護壁なんだ」

ウェイバー「入るためにはかなり手間取りそうだけど・・・」

 パキャン

 術式が破壊された時の甲高い音が

 ウェイバーの耳にだけ届いた

ライダー「じゃあ結界のところまで着いたらウェイバーくんにお願いするね」

ウェイバー「・・・大丈夫だ」

ウェイバー「今 結界は破壊された」

ライダー「本当に?こんなに早く対処できるなんてーー」

 本当にすごいと その顔は誇らしげだった

ウェイバー「・・・」

ライダー「お城に行けばいいのかな」

ーーーーーー
ーーー

56: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/15(火) 22:00:10.35 ID:qphDwWbY0
ーー城 入口

ライダー「こんばんは セイバーさんはいますか?」

セイバー「ライダー 貴様何をしに来た?」

ライダー「お友達になるために食事をしようと思って」

ライダー「パンを作って来ました」

 アイリスフィールがライダーのマスターを睨みつける

 しかしウェイバーは落ち着いた様子だった

アイリ「セイバー これは何かの罠かしら?」

セイバー「それはありません」

セイバー「悔しいことに彼からは敵意すら感じられません」

アイリ「本当にセイバーと友達になりたいだけなのね・・・」

 もしもーーセイバーに彼のような友がいたなら

 理想の王ではなく

 アルトリアとしての人生が待っていたのではないかーー

 ーーせめて

アイリ「席を設けさせていただきます」

アイリ「城内は少し荒れていますので野外でもよろしいですか?」

ウェイバー「・・・感謝します」

 意外なことにライダーのマスターが返答した

 ほんの数日会わないだけで

 纏う空気がこれほど変わるとは

アイリ「やっぱりニンゲンは素敵ね」

 小さく呟いた

ーーーーーー
ーーー

57: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/15(火) 22:03:55.60 ID:qphDwWbY0
ーー庭園

ライダー「ありがとうアイリスフィールさん」

 ホムンクルスの侍女達による迅速な設営が終わった

セイバー「食事を始めないのか?」

ライダー「もう少しで全員集まると思うからちょっと待ってね」

 すぅと現れる黄金色

アーチャー「謁見の願いを聞いてやれば」

アーチャー「なんだこの鬱陶しい場所は」

セイバー「アーチャー 何故ここに?」

ライダー「僕がお願いしたんだよ」

ライダー「王様にもパンを食べてもらいたかったんだ」

ライダー「さぁ一生懸命作ったから食べてね」

 何の変哲もないパンが振舞われる

セイバー「これはっ!?」

 驚くセイバー

アーチャー「たかがパンかと思いきや美味ではないか!」

 アーチャーからは掛け値のない賞賛があった

ライダー「ジャムおじさんに教えてもらったんだ」

 後はマーサさんも手伝ってくれたよ

 付け加えるライダー

アーチャー「・・・ジャムか」

 嬉々としてそう漏らすアーチャー

アーチャー「褒美だ」

 アーチャーの傍の虚空が歪む

 あの歪みからはーー

 セイバーとアイリスフィールが身構える

 対照的にーー

 ライダーとウェイバーは落ち着いている

アーチャー「受け取るが良い」

 そこにあるのは宝石で彩られた美しい酒器と黄金の瓶に揺られる液体だった

 受け取ったライダーは盃2つに酒を注ぐ


58: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/15(火) 22:05:04.59 ID:qphDwWbY0
セイバー「どうしたライダー」

セイバー「なぜ自分の分を用意しない?」

ライダー「僕はお酒が飲めないんだ」

 お酒だけでなく食事そのものをしないと訂正した

セイバー「お前が開いた宴だろう」

セイバー「何という無粋だ」

 セイバーは責める

 ライダーは謝りながらもニコニコしている

アーチャー「よい」

アーチャー「これは我が与えた褒美だ」

アーチャー「呑めずとも香に浸るが良い」

 手ずからライダーの盃を満たすアーチャー

ライダー「ありがとう王様」

ライダー「わぁ 素敵な香りだね」

ライダー「まさに王様にふさわしいお酒だ」

アーチャー「そうであろう」

 ライダーが惜しみない賛辞を送り

 アーチャーは満足気に応える

アーチャー「剣も酒も至高の財しかありえない」

アーチャー「我は唯一の王だからな」

ライダー「本当にそうだね」

 2人が笑う

ライダー「ところで2人はなんで聖杯が欲しいの?」

 唐突に話が変わる

59: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/15(火) 22:06:10.46 ID:qphDwWbY0

セイバー「何を突然」

アーチャー「ふむ」

アーチャー「勘違いしているようだなライダー」

アーチャー「あれはもともと我のものなのだ」

セイバー「貴様何を言っている!」

 憤慨するセイバー

ライダー「そうなんだ」

 あっさりと納得するライダー

セイバー「世迷言を錯乱したサーヴァントはキャスターだけではなかったようだな」

 侮蔑を吐くセイバー

 ニコニコしていたライダーだが『キャスター』という言葉にわずかに反応した

ライダー「セイバーさんはなんで聖杯が欲しいの?」

 話をセイバーに向けるライダー

セイバー「私は故国の救済を願う」

セイバー「万能の願望機をもってしてブリテンの滅びの運命を変える」

 この願いは誰にも渡せない

 これを叶えるために英霊の座に居るのだから

ライダー「?」

 反応が鈍いライダー

 そして失笑するアーチャー

60: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/15(火) 22:07:45.32 ID:qphDwWbY0
セイバー「なぜ訝る?なぜ笑う?王として身命を捧げた故国が滅んだのだ」

セイバー「それを痛むのがどうして可笑しい?」

アーチャー「おいおい聞いたかライダー」

アーチャー「この騎士王を名乗る小娘はーーー故国に身命を捧げたのだとさ」

 とうとう哄笑し始める

 それでもなお反応が鈍いライダー

 セイバーは王の在り方を語る

 笑い続けるアーチャーに不快感を示しながら

 その間も反応が鈍いライダー

 そしてとうとうセイバーに言葉を投げる

ライダー「セイバーさん」

セイバー「なんだライダー」

ライダー「王様はアーチャーさんだよ?」

 癇癪を起こした子に言い聞かせるような優しい口調

 更にセイバーの怒りが高まる

ライダー「ねぇセイバーさん」

ライダー「君は何を背負っているの?」

セイバー「私はブリテンを背負う王だ」

 怒りながらもはっきりと応える

ライダー「ねぇ王様」

ライダー「君は何を背負っているの?」

アーチャー「無論」

アーチャー「この世の全てだ」

 笑っているアーチャーは笑ったまま応える
 
 圧倒的な度量

ライダー「ね?王様はアーチャーさんでしょ?」

アーチャー「セイバーよ 臣下の末席に加えてやる」

アーチャー「さすれば ブリテンくらいくれてやろう」

 とうとう腹を抱えて笑い出すアーチャー

 それがセイバーの怒りを頂点に導いた

セイバー「貴様ーー」

 空気が変わる

 しかし原因はセイバーだけではなかった

 白髑髏の面をつけた黒装束の集団が

 次々と庭園に現れた
 

65: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/16(水) 20:20:14.85 ID:CzO8I+na0
ーーーー

アイリ「そんな・・・アサシンだけが何故こんなにも?」

セイバー「ーーッ!」

 戦力では彼ら全てを圧倒的に上回るが

 彼らの狙いはマスターだ

 ただの1体でも討ち漏らせば

 アイリスフィールの命はーー

ライダー「王様が呼んでくれたの?」
 
アーチャー「トキオミめ ゲスな真似を」

 宴自体はライダーが開いたものだが

 誰が酒を供していると思っているのだ



 自身のマスターに心底うんざりしている様子だった



ライダー「この前の事を反省しているのならこれを取って」

ライダー「僕と友達になろう」

 パンを差し出す

 そこに短剣が投げつけられ

 パンを撃ち落とーー

 ーーせずにパンに刺さっただけだった

 その瞬間にアサシンたちは恐怖をあらわにした

66: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/16(水) 20:21:42.21 ID:CzO8I+na0

ライダー「千切って食べるのかな?」

ライダー「まだたくさんあるから遠慮しないでね」

 追加のパンを籠からとり出そうとする

 パシュ

 その籠を撃ち落とす別の短剣

 投げつけたアサシンは恐怖で顔がひきつっているように見えた



ウェイバー「ライダー」

ウェイバー「アイツらは令呪で動かされている」



 もうダメなんだよ

 お前が真摯に接しても



 敵サーヴァントに囲まれている状況のため声は上ずっているが

 はっきりと伝えた

67: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/16(水) 20:24:52.73 ID:CzO8I+na0

ウェイバー「アサシンたちをやっつけてくれ」

ウェイバー「僕も令呪を使わないといけないか?」

ライダー「大丈夫だよウェイバーくん」

 悲しそうな顔をして応える

ライダー「アサシンさん」

ライダー「何が君の幸せ?」

ライダー「何をして喜ぶ?」

 最後通牒

 アサシンが何を望んでいるのかを尋ねた

アサシン「・・・この分裂した人格の統合だ」

 一度だけーー

 令呪の縛りのもとにも関わらず会話ができた

 ただの一言だったが

 真摯に述べたこの言葉は

 誰よりも優しい英雄に届いた

ライダー「だったらーー」

 にっこりと微笑む

 しかしアサシンたちはいっせいにウェイバーに襲いかかろうとした

ライダー「やめるんだ!!」

 叫ぶと共にその体から強烈な閃光が発せられたーー

ーーーーーー
ーーー

68: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/16(水) 20:27:39.61 ID:CzO8I+na0
ーー??????????

ウェイバー「途方もないな お前はーー」

 驚きを通りすぎて呆れ返った

アイリ「これは固有結界!?」

 魔術を知る者としてこの事象を感じ取った

 魔法一歩手前の大魔術

 精霊ーーまたは悪魔の所業

アイリ「・・・いえ これは」

アイリ「固有異界!?」
 
アイリ「ありえない!!」

アイリ「聖杯は一体何を呼び出したっていうの!!」



 サンサンサン 太陽がサンサン



 穏やかな空気が風に運ばれてくる

 それは焼いたパンの匂いを乗せていた



ウェイバー「ライダー ここは一体?」



ライダー「僕が生まれた」

ライダー「僕の友達が居る」

ライダー「僕にとってとても大切な」



ライダー「『アンパンマンワールド』」



ライダー「だよ?」



みみ先生「みなさ~ん ダンスの時間ですよ~」

「「は~い」」



どこからか元気な声が聞こえてくる



69: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/16(水) 20:31:32.86 ID:CzO8I+na0
カバオ「あっ!アンパンマンだ」

 子供達がライダーを取り囲む

ウサこ「その人たちはだぁれ?」

 向こうで出会った僕の友達だよ

ピョンきち「ザイードせんせいに似てるね」

 この人達は兄妹なんだよ

アサシン「ザイードだと?」

 遠坂邸で犠牲になった自分だった

 欠けた自分に再び会えた喜びはあったが

 それ以上に怒りを覚えた

アサシン「子供相手に何をしている」

ザイード「舞踏を教えている」

アサシン「山の翁の誇りまで失ったか!」

 長い髪を振り乱すアサシンの女性個体

カバオ「ザイードせんせい~続きを教えてよ」

 今そちらへ往く

 しかし動いたのは女アサシンだった

 最弱のサーヴァントと呼ばれるアサシン

 更に分割しているため個体能力は下の下だろう

 それでも

 人間如きでは敵うはずはない

 ましてや何も知らない仔河馬ごときーー

 短剣を突き立てる

カバオ「ご ごめんなさい」

カバオ「ザイード先生のお友達の物を壊しちゃった・・・」

 絶望的だった

 全力で突き立てた刃が

 地面に転がっている

ザイード「お前こそ山の翁の誇りを失ったか?」

 怒りに任せた殺害など我々にあってはならない

ザイード「大丈夫だ カバオ」

ザイード「後で向かう 先に皆の元へ」

 はーいと元気に駆けていく

ザイード「もう少し待て」

ザイード「彼がやってくる」

アサシン「彼だと?」

ザイード「あぁ」

ザイード「それで我らの願いが成就する」

70: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/16(水) 20:33:15.36 ID:CzO8I+na0



 そこにライダーの顔に似た乗り物がやってくる



 そして中からライダーが出てくる

 いや

 ライダーに似ているが

 より暖かな眼差しをしていた

ジャム「ジャムです」

ジャム「話はザイードさんから聞いています」

ジャム「どうぞこちらへ」

 乗り物からおかしな装置がでている

ジャム「人格統合装置です」

 アサシン達に動揺が走る

 これで本当にーー

 願いが成就するのか?

ザイード「恐れることはない」

 もともと命を賭してでも叶えたかった望みだ

 その一言に全員が同意した

ザイード「ジャム殿よろしくお願いします」

ジャム「バタコ チーズ 準備はいいかい?」

バタコ「はい!」

チーズ「あんあん!」

ジャム「人格統合装置出力全開」

バタコ「出力全開!」

 装置の前で手を繋ぐアサシン達

ジャム「スイッチオン!」

チーズ「あんあん!!」

 力が渦巻き光が装置から発せられる

 そしてーー

ハサン「これがーー」

 とうとう手に入った

 本当の自分

ハサン「感謝いたしますジャム殿バタコ殿チーズ殿」

 仮面を外した本当の笑顔を向ける

 それに笑顔で応える3人

71: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/16(水) 20:34:46.92 ID:CzO8I+na0
ハサン「彼らにも感謝せねば」

 ウェイバーの元へ向かう

ハサン「許しは請わぬ」

ハサン「ただ感謝させてくれ」

ハサン「ライダーのマスター」

ハサン「あなたの差配によって私たちは救われた」

ウェイバー「礼ならライダーに言えよ」

 僕は何もしていない

ハサン「もちろん彼にも」

 この少年は自身の大きさに気がついていないのか

 無理もない

 従えているサーヴァントがあまりにもーー

ハサン「アンパンマン殿」

ハサン「私たちを救ってくれてありがとう」

ライダー「よかったね」

ライダー「アサシンさん 僕と友達になろう」

 手を差し出すライダー

ハサン「喜んで」

 サーヴァントがあまりにもーー
 
 ーー大きすぎるのだから



ライダー「ウェイバーくん 僕達は戻ろうか」

ウェイバー「あぁ」

 ライダーが全力でこの世界を閉じる

ーーーーーー
ーーー


74: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:21:57.83 ID:P+2OOD0x0
ーーアインツベルン城 庭園

ライダー「アサシンさん 願いが叶ったみたいだね」

ライダー「それに友達になれたよ」

 満足気な顔

 庭園には草木が生い茂っていた

 まるでアンパンマンワールドのように

アーチャー「ライダーよ」

アーチャー「良き景観であった」

ライダー「よろこんでもらえて嬉しいよ」

 2人は笑う

 そこに割って入るはーー

セイバー「待てライダー」

セイバー「話は終わっていないぞ」

 愚弄されたままでは終われない

ライダー「けどパンはなくなっちゃったから解散しようか」

 ウェイバーの顔を見る

 ウェイバーは頷きながらゴクリと飲み込む

アイリ「(無理もないわ)」

アイリ「(自分のサーヴァントの力を魅せつけられてしまったのだから)」

 傍目からはーー

 ライダーのマスターが唖然としているように感じられた

アーチャー「(ほぉ・・・なかなかどうして)」

 英雄王はライダーではなくそのマスターに感心を寄せた

 ほのかに漂うは鉄の匂い

セイバー「ライダー 私はまだーー」

75: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:23:29.02 ID:P+2OOD0x0

ライダー「セイバーさん」

ライダー「セイバーさんには僕以外の友達はいないの?」

セイバー「貴様は友などではない」

セイバー「それに私は王だ」

セイバー「王は孤高でなければならないーー」

 はっきりと言い切るセイバー

ライダー「セイバーさんを信じて一緒に戦っていた人も」

ライダー「セイバーさんに守られたと感謝している人も」

ライダー「赤の他人なの?」

ライダー「一人しかいない国の王様なんだね」

 それだけ言い アイリスフィールにお礼を言った後に

 ウェイバーを連れて飛びさってしまった

セイバー「わ 私は・・・」

アーチャー「耳を貸すでないぞ セイバー」

アーチャー「お前は宴に何も供せず 呑み 喰らうだけの女だが」

 痛いところを突かれた

 セイバー以上にアイリスフィールが憤る

アーチャー「それでもお前は美しい」

76: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:24:30.59 ID:P+2OOD0x0

アーチャー「あぁそういえば」

アーチャー「この宴だが」



アーチャー「我が葡萄酒を」



アーチャー「やつがパンを供じた」



アーチャー「ともに極上の品だったと我が保障しよう」

 淫靡な表情に変わる

アーチャー「お前は何も持ち合わせていないようだがーーそうだな」

アーチャー「お前自身が供物となるが良い」

 極上の母体となれるのではないか?

セイバー「貴様ァ!!」

 有無を言わさず剣を抜くセイバー

アーチャー「せいぜい励めよ騎士王とやら」

 黄金の残滓のみを残し虚空に消える

アーチャー「ことによるとお前は さらなる我が寵愛に値するかもな」

 高らかな笑い声だけが後に残った

ーーーーーー
ーーー

77: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:26:19.18 ID:P+2OOD0x0
ーー後日 新都

ライダー「どうしたのウェイバーくん?」

ウェイバー「別に お前の事がつまんないなって思っただけだ」

ライダー「パトロールに飽きちゃった?」

ウェイバー「そうじゃないんだよ!」

 聖杯戦争に勝ち抜きたかったが

 あくまで自分の力を認めさせたかったからだ

 今のままじゃお前の力だけで僕はただひっついているだけじゃないか

 ウェイバーは胸のうちを吐露する

ライダー「そんなことを気にしていたの?」

ウェイバー「そうだよ!」

ライダー「戦いなんかより皆が笑顔になれる方が大事なんだよ?」

ライダー「ウェイバーくんはマーサさんを笑顔にしたでしょ?」

 留学から帰ってきてくれて嬉しいと言っていたよ

ライダー「ウェイバーくんはグレンさんを笑顔にしたでしょ?」

 ウェイバーが来てからマーサさんがよく笑うようになって嬉しいと言っていたよ

ライダー「そして何より」

ライダー「ウェイバーくんは僕を笑顔にしてくれている」

 一緒にパトロールをしてくれて

 一緒に皆を笑顔にしてくれて

 一緒に戦ってくれる



 戦いたくはないけどね

 そう付け加えるライダー

ライダー「僕はウェイバーくんをあまり笑顔に出来ていないから」

ライダー「やっぱりウェイバーくんはすごいんだよ」

 あんなにも苛立っていたウェイバーだが

 なんとなく言いくるめられてしまう

 こいつはボクが一緒に戦っていると断言している

 こんなにも弱いボクなのにーー

ウェイバー「あのなぁライダー・・・」

 話を始める前に魔術回路がずくずくと疼いた

ライダー「河だね」

 未だ聖杯戦争は継続中だったーー

ーーーーーー
ーーー

78: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:27:21.75 ID:P+2OOD0x0
ーー未遠川

 セイバーとアイリスフィールが到着した時には

 すでにライダーが戦っていた

アイリ「なんてこと」

アイリ「キャスターが呼び寄せたのは真性の『魔』そのもの」

アイリ「制御する気なんてさらさらないわ」

 この街すべてを贄にするつもりだ

セイバー「・・・」

 歯ぎしりをする

 これは誉れある戦場ではない
 
 そんな場においてもライダーは

 ただの一人で勇敢に戦っている



 ここには彼の世界の民は一人もいないというのに



ウェイバー「ボクを殺しに来たのか?」



 岸辺にはライダーのマスターが独りで立っていた



79: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:29:11.73 ID:P+2OOD0x0
ウェイバー「こんな事態だから休戦を願いたいんだが」

セイバー「違う 私たちもキャスターを討ちに来た」

ウェイバー「なら何でライダーに加勢してくれないんだ?」



 アイリスフィールは自分の判断を呪った

 この少年はーー

 自らの身の危険をわかった上でライダーを送り出している

 一刻も早くあの脅威を取り除くためだ

 そんな状況にも関わらず

 セイバーに戦いを願うのではなく

 セイバーと共にこの単身の魔術師に対峙してしまった



アイリ「アインツベルンは休戦と共闘を申し出ます」

アイリ「よろしいでしょうか ライダーのマスター?」

 コクリと頷くウェイバー

 噛み締めた口からは血が垂れていた

 己の無力を嘆いているのだろう

ウェイバー「アンタたちになにか策は?」

 ランサーから聞き及んでいる

 彼らはキャスターと対峙したことがある と

ランサー「引きずりだす それしかあるまい」

 ジワリと双槍を携えた英霊が現れた

 ランサーならばキャスターの魔力の元を断てるらしい

ランサー「物さえ見えてしまえば造作もない」

 あとはどうやってキャスターを引きずりだすかだーー

ーーーーーー
ーーー

80: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:30:15.11 ID:P+2OOD0x0

ライダー「アンキーック!!」

 海魔が召喚されたすぐから戦い続けている

 無尽に再生を繰り返す海魔だがーー



 ーー相手が悪かった



 再生を上回る速度で削られ続けている

 すでに大きさは召喚時の6割程度となっている



ウェイバー「・・・」

 遠くから

 それでも始めから

 いっときも眼を離さずに

 ただ『待つ』という戦いに身を置く

ウェイバー「(このままなら・・・後はランサーの槍が)」

 拳を強く握るウェイバー

 しかし事態は思わぬ方向へ進む

ーーーーーー
ーーー


81: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:31:45.43 ID:P+2OOD0x0
ーー未遠川上空

仰木「・・・なんだ?あれはーー」

 仰木一等空尉は眼を疑った

 未遠川にいるのは間違いなく怪獣だ

 いやーー

 間違いで有って欲しい

小林「・・・怪獣との交戦許可って降りるんですかね?」

 小林三尉は捨鉢に交信を寄越した

 どうやら幻覚ではなさそうだ

小林「もう少し高度を下げて確認してみます」

仰木「待て!小林!!」

仰木「戻って来い!ディアボロⅡ」

 河口から

 爆発をしたかのように触手が伸びてきた

 既存の兵器とは射程距離がーー
 
 速度がまるで違う

82: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/20(日) 22:34:01.82 ID:P+2OOD0x0

小林「ぁあーーっ!」

 触手に絡め取られた偵察機

 肉の壁にぶつかるーー

 

 違う



 喰われる!!



 ーー小林三尉は走馬灯を見た

 幼少期 正義の味方に憧れた

 勇敢に戦うその姿に憧れた

 進路も迷うことはなかった

 空を飛んで皆を守れる

 この使命に誇りを持っていた

 

 最期の瞬間ーー

 肉に押しつぶされるその瞬間ーー



小林「助けて・・・アンパンマン」

 ーー憧れていた英雄の名を呼んだ



ライダー「アァンパァンチ!!」



 分厚い肉を突き抜け

 押し潰される瞬間の機体を砕いて

 助けにやってきた



ライダー「もう大丈夫だよ」



 憧れた英雄はーー

 今でも自分の英雄だった

 小林は涙を流しながら気を失った

ーーーーーー
ーーー
ー 

85: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/23(水) 21:48:58.38 ID:AG/jdRoH0
ーー未遠川岸辺

セイバー「!?」

 バチュン!!

 眼の前の怪物が大きく弾け飛んだ

セイバー「やったか!?」

 魔力で眼を強化していたウェイバーは不安になった

 ライダーは海魔を削るように砕いてた筈だ

 何故突然ど真ん中をぶち抜いたのか?

 戦闘機が捉えられた途端ーー

ウェイバー「あいつまさか!」

 喰われた戦闘機の乗組員を助けに行ったのか!?

 この場に及んで何をやっているんだ!?



 バキンッ



 空には赤黒く摩滅する戦闘機なようなものが浮かんでいた

 そしてその上には 



 バーサーカー

 
  
 そして


 
ウェイバー「何やってんだよ!」

 ライダーが人を背負いながらコックピットをもぎ取っていた

 そして戦闘機の中の人間を抱き上げていた

ライダー「ーーーー」

バーサーカー「■■■■■■」

 聴覚を強化していなかったため聞こえはしなかったが

 何やらバーサーカーに話しかけているようだった

ランサー「底が見えん奴だな・・・」

 術式を一撃で破壊する槍を構えたまま

 賞賛を漏らしていた

ウェイバー「あいつどうしたんだよ?」

 連日連夜ライダーと共に行動しているウェイバーだけが気がついた

 いつもと様子が違う と

 ライダーがふらりと離れた岸へ飛んでいき

 ウェイバーはそこへ向かって駆け出した

ーーーーーー
ーーー



86: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/23(水) 21:49:44.02 ID:AG/jdRoH0
ーーーー

ウェイバー「はぁ・・・はぁっ」

 全力で走ったため息が切れていた

 少し離れた所に気絶した男を背負った男がいた

 ニッポンの軍人だろうか?

 この場から離れていくようだ

ウェイバー「ライダー どうしーー」

 ライダーの体を中心に

 草花が繁茂していた

 それはまるで

 『アンパンマンワールド』

 のようだった


87: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/23(水) 21:50:39.19 ID:AG/jdRoH0
ウェイバー「なんでそんなものを発動させているんだよ!」

 それになんで倒れているんだよ

ライダー「顔が汚れて・・・力がでない」

ウェイバー「!?」

 ウェイバーは知らなかった

 ライダーの弱点をーー

 今まで海魔を外側から削っていたのは

 海魔の臓腑で顔を汚さないためだったのか




 しかしそれ以上に知らなかったのはーー

ウェイバー「お前・・・今まで固有異界を発動『しない』ようにしていたのかよ・・・」

 神秘はより上位の神秘の前に敗れる

 だからこそ世界は異物に対して圧倒的な力で修正をかける

 ーーこいつの場合は?

 こいつが世界を修正しかけている

ウェイバー「今までどれだけの力を使ってそれを止めていたんだよ」

ライダー「殆ど全部の力だよ・・・」

 弱々しい声だった

 力がでない状態で無理矢理に発動を制止させているからか


88: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/23(水) 21:51:39.42 ID:AG/jdRoH0
ウェイバー「何でそんなことしてたんだよ」

ライダー「ここは王様の世界だからね」

ライダー「それに」

ライダー「ウェイバーくんが生まれ育った世界だから」

 そんなに大切なものを壊すわけにはいかないよ

ウェイバー「お前がそんなになってどうするんだよ・・・」

 こいつはこの世界の英雄ではなかった

 それにも関わらず

 こいつはこの世界にこんなにも優しい

ライダー「あの蛸が迫ってくるよ・・・」

ライダー「ウェイバーくん逃げて」

 海魔はライダーの攻撃によって大きく損傷していた

 しかし核となるキャスターは仕留められていなかったのだろう
 
 再生を重ね 徐々にもとの姿を取り戻している

 その触手は自身の身を削った外敵を探しているようだった

 そしてあれを削り続けたライダーはここに居る

ライダー「ウェイバーくん早く」

ウェイバー「逃げるかよ」

 震え声がでた


89: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/23(水) 21:52:39.19 ID:AG/jdRoH0
ウェイバー「お前を呼び出したマスターだぞ?」

ウェイバー「最強に決まっているだろう!?」

 染み出した『アンパンマンワールド』に踏み入る

 途端にとてつもない圧力がかかる

ライダー「ウェイバーくん・・・」

ウェイバー「ボクは優秀な魔術師だからな」

 地面に魔方陣を描く

 世界を示す大きな円

 その中に三位を示す小さな円を3つ

 円を繋げて生命を表す螺旋

 螺旋は2つの無限を重ねる

 左には自ら光る星と太陽を

 右にはそれを受けて輝く三日月を

ウェイバー「(そういば)」

ウェイバー「(ケイネスの奴 一度だけ褒めてくれたな)」

 魔方陣を描きながら思い出す

 『世界をよく捉えている』と

 たったの一度だけだったが褒めてくれた

ウェイバー「・・・できた」

 同時に

 触手がこちらへ向かってくる

ライダー「逃げて・・・」

ウェイバー「逃げない!」

 口の中は血の味が広がっていた

 生身の人間ではこの異界には耐えられないらしい

ウェイバー「来たれ!」

 自分のサーヴァントの手を握り

 降霊術を行使する

 これが失敗すれば・・・



 魔方陣が輝き

 そこにはーー


 
 小さな黴の怪異が現れた



「かび~」




90: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/23(水) 21:53:45.24 ID:AG/jdRoH0
ウェイバー「ごめんライダー」

ウェイバー「ボクは何も出来なかった・・・」

 迫り来る触手

 ウェイバーは眼を瞑りライダーの手を強く握る

「かび~~!!」

 轟音と共に

 触手が吹き飛んだ

ウェイバー「一体何が!?」

 襲ってくるはずの触手がやってこない

ライダー「ウェイバーくんは本当にすごいね・・・」

 この怪異がやったのか?

ライダー「もう1人呼んでくれるかな?」

ウェイバー「誰を呼ぶんだよ!」

ライダー「一番強い人だよ・・」

ウェイバー「誰だよそれ」

ライダー「ボクといつも戦っている人だよ・・・」

ウェイバー「敵じゃないか!」

ライダー「敵じゃないよ・・・」

ライダー「・・・友達だ」

ウェイバー「!」

 時間がない

 ライダーの手を握り

ライダー「かびるんるんも」

かびるんるん「かび~♪」

 カビルンルンの手を握り

 ライダーに匹敵する強さを想像しながらーー

ウェイバー「来たれ!」

 魔方陣がありえない程の輝きを見せた

 

 やがて現れたのはーー



「ハ~ヒフ~ヘホ~!」



ーーーーーー
ーーー



92: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/25(金) 21:38:53.62 ID:sJsEykFm0
ウェイバー「(何なんだこいつは?)」

 召喚された異形の人物は物凄い力を携えている

 だがーー 

ばいきんまん「こんな所に居たかお邪魔虫!」

ばいきんまん「今日こそお前をやっつけてやる!」

ばいきんまん「手始めにこの街をぶっ壊してやるー」

ウェイバー「(こいつこそ敵じゃないか)」

 彼は間違いなくライダーの敵だった

 ウェイバーが知りえない情報として

 戦いの歴史は彼らが生まれた時から続いている

 敵同士ではあるがその関係はーー

ばいきんまん「どうしちゃったの?いつまでも寝っ転がっちゃって?」

 先程までの楽しげな雰囲気が消え去る

 彼の表情は怒りの色に変わっていく

 ライダーの顔と海魔を見比べて何かを悟ったらしい

ばいきんまん「俺様の生き甲斐を汚したな?」

 海魔を見据える

ウェイバー「まさかあれを破壊しようとしているのか?」

ライダー「ばいきんまん・・・」

ライダー「・・・助けて」

ばいきんまん「やなこった!」

ばいきんまん「俺様の生き甲斐はお前をやっつけることだ」

 現実は非情だった
 
 ライダー自身いつも戦っている相手と言っていたではないか

かびるんるん「かびかび~」

 黴の怪異の話に耳を傾けているようだ

ばいきんまん「そこのお前」

ウェイバー「!」

ばいきんまん「どうして俺様を呼んだんだ?」

 ライダーが怒っているとき並の圧力を感じた

ウェイバー「お前を呼んだわけじゃない」

 ライダーの言葉を思い出した

 ライダーに匹敵するという事は

ウェイバー「一番強いやつを呼んだらお前が来ただけだ」

93: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/25(金) 21:40:01.95 ID:sJsEykFm0

ばいきんまん「まぁ!なんてお利口な子なんでしょ」



ばいきんまん「ご褒美に何か一つ願いを聞いてあげましょう」

 今の願いはひとつーー

ウェイバー「あの海魔をやっつけてくれ」

 そうすればライダーが戦ったことは無駄にはならないはずだ

ばいきんまん「そいつは無理ー!」

 騙された 悪魔め!

ウェイバー「お前!」

ばいきんまん「ただヤッツケルだけならそこに転がっているアンパンでもできる」

ウェイバー「あ」

ばいきんまん「あいつにはそうしたくない理由があったんだろ?」

 高い洞察力

 そして僕以上にライダーの事を理解している

ばいきんまん「川の真ん中まで追いやってやる」

ばいきんまん「その後はお前らで何とかするんだなー」



 全く間を置かずに

 全く魔を使わずに



ばいきんまん「黴の軍勢」

ばいきんまん「行け!かびるんるん!!」



 かびるんるんはウェイバーが召喚した黴の怪異ーー

 その強さは単体で海魔の触手を払う

 しかしウェイバーの全力では1人召喚することがやっとだった

 それも『アンパンマンワールド』の中で召喚したから成功しただけだろう



 ライダーの友達は



 幾千幾万のかびるんるんを召喚した




94: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/25(金) 21:40:33.26 ID:sJsEykFm0
かびるんるん達「「かび~かび~」」

 完全な一方通行

 海魔に迫るそれらは色鮮やかな地獄に見えた

 歩行能力を持たない海魔は

 その身を破壊されながら再生を続け

 なすすべなく川の中心に戻された

 その後しばらく全方位からの破壊が続きーー

キャスター「これは一体?」

 ついに術者が表に引き摺り出され

 その瞬間を見逃さずランサーが槍を投擲した

ーーーーーー
ーーー

95: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/25(金) 21:41:04.09 ID:sJsEykFm0
ばいきんまん「ここまでだな」

ライダー「ありがとう・・・ばいきんまん」

ばいきんまん「ふん!礼を言われたくてやったわけじゃないやい」

ばいきんまん「次会ったときにはこてんぱんにやっつけてやるからな」



ばいきんまん「バイバイキ~ン!」



ーーーーーー
ーーー

102: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/28(月) 21:38:52.86 ID:lM2NDzE90
ーーーー

ウェイバー「よかった・・・本当によかった」

 海魔の消滅と共にライダーの顔の汚れが消え去る

 それとともに『アンパンマンワールド』が消え去った

ライダー「ありがとうウェイバーくん」

ウェイバー「もう動けるのか?」

ライダー「ごめんね」

ライダー「顔が濡れて力が出ないんだ」

 それでも固有異界の展開を制止させられたのなら御の字だ

ウェイバー「ほら」

 ライダーを背負う

ウェイバー「帰るぞ」

 身長差の問題は解決できず足を引きずる形である

 体力もないためその足取りはおぼつかない

ライダー「・・・」

 疲労困憊はライダーの方だろう

 けれどもその顔は笑顔だった

ーーーーーー
ーーー

103: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/28(月) 21:42:07.91 ID:lM2NDzE90
ーー言峰教会

璃正「お待たせして申し訳ない 今夜は些か立て込んでおりまして」

 魔術の痕跡を隠蔽するために

 魔術協会と聖堂教会が奔走しているのだ

ケイネス「致し方ありますまい」

ケイネス「ことが事ですからな」

 その佇まいは悠然としており

 神童ロード・エルメロイにふさわしい立ち姿だった

ケイネス「さて?どのような理由で呼ばれたのですかな」

璃正「キャスター討伐の報償の令呪についてです」

璃正「監視係の報告によるとランサーの投擲により魔導書およびキャスターを破壊したとのことでしたが」

 不思議に思う

 間違いなくランサーの手柄にもかかわらず

 なぜ申告に参じなかったのか?

 なぜ以前の招集では使い魔を寄越したにも関わらず

 今回は本人が参じたのか?

ケイネス「あぁ そのことでしたか」

 忘れていたとあっさりした態度だった

 璃正は訝る

ケイネス「私は聖杯戦争を辞退しようと思い馳せ参じたのです」

 驚きを隠せない神父

ケイネス「大きな発見があったので研究に戻りたいのですよ」

ケイネス「神父殿」

ケイネス「あなたはライダーをご覧になりましたかな?」

 忘れもしない

 あの神々しきサーヴァントの事は

ケイネス「神に使える貴方の眼には」

ケイネス「どう映りましたかな?」

ケイネス「魔導の道を歩む私の眼には」

ケイネス「透明な力の渦に見えました」

ケイネス「それが我々と意思疎通しているのです」

 私なんぞ真っ直ぐに叱られてしまいました

 気恥ずかしそうな顔を見せる

 ロード・エルメロイと呼ばれる彼が見せる表情とは思えなかった

ケイネス「色々と思うこと想い出すこともありまして」

ケイネス「研究に戻りたいと思ったわけです」

ケイネス「それで」

ケイネス「退場手続きはありますかな?」

ーーーーーー
ーーー

105: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/30(水) 22:25:41.91 ID:WYiS0wC80
ーー森

ライダー「ここは確か」

ウェイバー「お前を呼んだ場所だよ」

ウェイバー「さすがに魔方陣は消えているけどな」

 お汁粉で描いたものだから仕方がない

ウェイバー「昨日の戦いで確信したけど」

ウェイバー「お前ボクの魔力を全然使っていないだろ?」

 端的に告げる

ウェイバー「おかしいと思ったんだよ」

ウェイバー「どのサーヴァントよりも過剰な動きをしているお前を従えているのに」

ウェイバー「ボクの負担が全くないんだからな」

ウェイバー「しかもお前は食事も取らないから」

ウェイバー「どこから力を補充しているのかわからなかった」

ウェイバー「けど昨日ようやく気がついた」

ウェイバー「お前は顔から力を補充しているな?」

 例外中の例外だろう

 他のサーヴァントは

 たとえキャスターやアサシンのような異形なものでさえ

 元は『ニンゲン』だ

ライダー「そうだよウェイバーくん」

ライダー「ジャムおじさんが作ってくれるんだよ」

ウェイバー「召喚した夜の事はよく覚えている」

 用意した水筒から紅茶を注ぎながら話を続ける

ウェイバー「顔が全部なくなった状態から突然顔が現れた事」

ウェイバー「自動供給という破格の能力まで持っていると思っていたけど」

ウェイバー「実際はその顔を食べて減らさなきゃ替えられないんだろ?」

ライダー「そうだよ」

ライダー「アンパンが減るとチーズがそれに気がついて バタコさんに知らせてくれるんだよ」

 時間が経ったら定期的にバタコさんが投げてくれるけど

ライダー「けど汚れたり濡れたりしただけでは無理だよ」

ウェイバー「だから」

ウェイバー「その顔をよこせよ」

 ボクが食べるから

ーーーーーー
ーーー
ー 

106: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/30(水) 22:26:37.65 ID:WYiS0wC80
ーーーー

ライダー「美味しい?ウェイバーくん」

ウェイバー「いいや不味い お前の顔も底が知れるな」

 泥水が被ったアンパンを紅茶で流し込む

 噛むと細かい砂が不愉快だ

ウェイバー「次のパトロールでこんなパンを食べさすわけにはいかないからな」

 そんなことをしたらお前は間違いなく不審者の仲間入りだ

 当然ボクにも被害が及ぶ

ウェイバー「ほら とっととよこせよ」

 食が細いウェイバーには苦痛を伴うな量を口に運んでいた

ウェイバー「いつ顔が飛んでくるんだよ」

 4杯目の紅茶を入れる

ウェイバー「そろそろ入らないんだけど」

ライダー「これだけ減ったら」
 
 半分の顔で返事をする
 
ライダー「多分今日中には」

 げぇっぷ 血糖値が急上昇

ウェイバー「もう限界だ・・・」

ウェイバー「顔が来たら起こせよな」

 気絶するように眠りにつくウェイバー

ウェイバー「(ーー胸焼けがする)」

 実際はーー

 自分の力で助けられたことが

 胸を熱くしていた



 ーーウェイバーは気が付かなかったが

ーーーーーー
ーーー

107: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/30(水) 22:27:31.49 ID:WYiS0wC80
ーー夜

ライダー「ウェイバーくん起きて」

ウェイバー「ーーー朝か」

ライダー「夜だよ」

ウェイバー「顔が戻ってるみたいだな」

ウェイバー「力は戻っているのか?」

ライダー「お陰様で」

ウェイバー「パトロールに行くか?」

ライダー「う~ん ウェイバーくんを守る方が先決かな?」

ウェイバー「はぁっ?」

 音もなくなめらかな足取りでやってくる

ランサー「昨日の今日で申し訳ないが」

ランサー「ライダー 貴殿との一騎打ちを申し込みたい」

 それはキャスター討伐の立役者だった

ライダー「ボクは戦いたくない」

 きっぱりと言い切る

ウェイバー「よくこの場所がわかったな」

 いつも空を駆けているため追跡は困難な筈だ

108: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/30(水) 22:28:26.64 ID:WYiS0wC80

ケイネス「馬鹿者」

ケイネス「普通に歩いてこんな場所まで来おって」

ケイネス「魔力の痕跡を追うどころではなかったぞ?」

 ただランサーが見つけて普通に報告してきたのだ

ウェイバー「ケイネス・・・」

ケイネス「馬鹿者が」

ケイネス「自分の師に向かってその言葉遣いとは」

ケイネス「やはり貴様には特別講習が必要なようだ」

 何故だろう?前回とは異なり殺意がまるで感じられない

 代わりにーー

 海や大気のような魔力の流れを感じさせる

 落ち着いていてーー

 ーーとても大きい



109: ◆PH6ED8xEJw 2013/10/30(水) 22:29:49.92 ID:WYiS0wC80


ケイネス「アーチボルト家9代目頭首 ケイネス・エルメロイがここに推参仕る」

ケイネス「ウェイバー・ベルベットよ!」

ケイネス「求める願いに命と誇りを掛けてーーいざ尋常に立ち会うがいい!」



 ウェイバーは自分の頬を伝うものに気が付かなかった

 認められたーー

 認めてくれた!



ライダー「ウェイバーくん」

 にこやかなサーヴァントがこちらを向いている

 肩に乘せられた手は暖かかった

 そして

 目を擦り

 偉大な魔術師に向き直る



ウェイバー「ベルベット家3代目頭首 ウェイバー・ベルベット」

ウェイバー「我が師 アーチボルトに誓い!」

ウェイバー「命と誇りを持って決闘に挑む!!」



ランサー「我が主よ 後は私にお任せを」

ケイネス「うむ 後は任せた」

 後ろに下がり女性の傍へ行く

 肩までの赤毛が美しい凛とした人だった

ソラウ「ディルムッド」

ソラウ「私『達』に勝利を」

ランサー「御意!」

 気合と共に発した澄んだ声は

 闇夜を切り裂くようだった

ランサー「フィオナ騎士団が一番槍 ディルムッド・オディナーー推して参る!」



ウェイバー「ライダー 頼むぞ」

ライダー「うん わかった」

ライダー「パン工場から来ました アンパンマンです!」



 戦いの火蓋は切って落とされた

ーーーーーー
ーーー

112: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/02(土) 09:16:26.97 ID:G2/e4DVp0
ーーーー

 ランサーは歓喜をもって舞っているようだった

 双槍はそれぞれが別の生き物のようにうねりライダーに迫る

ランサー「はっ」

ランサー「はぁ!」

 一突き

 二突き!

 三突き!!

 そのどれにも虚を交えてはいない

ライダー「えい え~い」

 アンパンの英霊がその拳を持って防いでいる

ランサー「(彼我の差がこれ程とは)」

 決闘が始まってから1分も経過していない

 それでもランサーの息は乱れていた

 されど闘志は衰えず

ランサー「なぁ ライダーよ」

ランサー「お前が聖杯に掛ける願いは何だ?」

ライダー「ウェイバーくんが聖杯を欲しがっているんだ」

 ボク自身は特にないよ

ランサー「ーーー」

 オレもそうなんだ

 ただ忠義をもって主に仕えたいだけなんだ

 

113: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/02(土) 09:17:22.84 ID:G2/e4DVp0
 すでに声は出せない それ程の消耗

 ただランサーは喜んでいた

 この英雄は打算などではなく

 ただオレの願いを受けて戦いに応じている



 『戦いたくない』


 
 その信条を曲げてまでオレの願いを叶えてくれている
 


ソラウ「」

 魔力が底をつき気を失う

 魔力の供給が途絶えたーー

 ーーランサーの最期は近い



ケイネス「ディルムッド・オディナよ」

ケイネス「令呪を持って命ずる」

ケイネス「全身全霊を持ってライダーに挑め」

 全く意味のない命令

 すでにそれは実行している

ケイネス「重ねて令呪を持って命ずる」

ケイネス「栄えある戦いだ 全力でライダーに挑め」

 これもまた意味のない命令

ケイネス「さらに重ねて令呪で命ずる」

 キャスター討伐時の報償令呪か

 しかしこれでは主の令呪がなくなるではないかーー



ケイネス「お前の誇りを私達に魅せよ」



114: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/02(土) 09:18:26.43 ID:G2/e4DVp0
 ランサーは爆ぜた

 まるで爆発したかに見える程の踏み込み

 同時にーー

 『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』をライダー目掛けて投擲

 海魔戦での速度どころではなかった

ライダー「えいっ!」

 ランサーの疾さが突然向上したが

 アンパンの英雄は両の手をもってその槍を掴みとる



 ぐらり

 

 ライダーは槍の威力を殺しきれずにわずかにのけぞる

 令呪三画分の補強はそのまま威力に上乗せされていた



 ほぼ同時にーー

 2本目の槍が投擲されていた

 『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』

 魔力を断つこの槍ならばーー

 騎兵のサーヴァントに必ずや届く!

 体勢は崩れ 両の手は塞がっている



ライダー「やっ!」



 崩れた体勢を立て直せなかったライダーは

 大きく体を仰け反らすことで2本目の槍を回避した

 槍兵のサーヴァントはこれで宝具を失っーー



ライダー「!?」

 

 ランサーは神剣を構えていた

 『大いなる激情(モラルタ)』

 海神由来の神造兵器

 一太刀で全てを薙ぎ倒すと言われている

 英雄ディルムッド・オディナが所有していた宝剣だが

 騎兵クラスの制限により現界させられていなかった

 しかしーー

 令呪による能力上昇は本来の枠を超えさせた



115: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/02(土) 09:18:56.73 ID:G2/e4DVp0
ランサー「はぁああぁっ!!」



 上段一閃

 仰け反ったライダーには回避はできない!



ライダー「とうっ!」



 百戦錬磨の英雄は回避しなかった

 崩れた体勢をさらに大きく崩すことで

 大地を掴み

 その反動で両脚を跳ね上げ



 バキィン



 神剣が最高速度に達する前にそれを蹴り上げた

 ランサーにはもう宝具も魔力も残っていない

ーーーーーー
ーーー

116: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/02(土) 09:20:18.16 ID:G2/e4DVp0
ーーーー

ランサー「・・・申し訳在りません 主よ」

 現界を保つのは限界だった

 すでにその体は足元から消え始めている

 主の許嫁の魔力と令呪全ての力を使いきったが

 アンパンの英雄に敵うことはなかった

ケイネス「馬鹿者めが」

ケイネス「全身全霊を持って戦った事を謝罪するなど」

ケイネス「私の『家臣』を侮辱するつもりか」

 その言葉はーー
 
 その言葉はーー!

ケイネス「誉れも高きディルムッド・オディナの戦い 存分に魅せてもらった」

ケイネス「主として誇りに思う」

 ランサーは滂沱の涙で首まで濡らした

 そしてライダーに振り返る

ランサー「どうだライダー 力も技もお前には敵わなかったが」

ランサー「オレには最高の主がいるのだ!」

ライダー「よかったねランサーさん」

ライダー「ケイネスくんはウェイバーくんの先生だからね」

 にこにこしているライダーは手を差し出す

ライダー「ランサーさん」

ライダー「ボクと友達になろう」

 好敵手と手を取り合えるとは

ランサー「喜んで」

ランサー「あぁこの世界は美しいなーー」

 体の大部分が消えている

ランサー「世界は光に満ちているーー」

 満ち足りたのはオレの方だった

ランサー「全ての物に幸あれーー」

 幸せだったのはオレの方だった 

ランサー「我が主に栄光あれーー」

 栄光ある戦いに望めたのは主のお陰だった

ランサー「ありがとう アンパンマン」

ーーーーーー
ーーー


119: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:23:19.08 ID:5mFT6SIm0
ーー明方 マッケンジー宅

 ケイネスとソラウを送り届け帰宅する

 背中の上でケイネスとライダーが話をしていたが

 ウェイバーは殆ど聞いていなかった

ウェイバー「(あれが・・・魔術師同士の戦いなのか)」

 両陣営の総合力で言えばウェイバー陣営に軍配が上がるだろう

 ただし

 サーヴァントとマスターのあり方を考えるとどうか

 ケイネスはあの目まぐるしい戦いの中で状況を把握し
 
 的確なタイミングで切札を出した

 ウェイバーは・・・

ウェイバー「(本当に何もできなかった・・・)」

 状況を把握することすらできなかった

 爆発のように始まり

 気がつくとライダーとランサーが握手をしていた

ウェイバー「(ボクは・・・)」

グレン「お~い ウェイバーこっちだこっち」

 悶々とした思考を遮ったのはこの家の家主だった

ウェイバー「おじいさん何やってんだよ」

グレン「いいからいいから ちょっと話をしよう」

ウェイバー「(何で屋根の上で)」

ウェイバー「おじいさん また今度にしない?」

グレン「そういうな」

 手招きをしている

ウェイバー「(ライダーは・・・いない)」

ウェイバー「(あぁパトロールに行くと言っていたか)」

 老人に応じて屋根に登る 

グレン「ほれコーヒーを用意してある」

ウェイバー「いつからここにいるのさ」

グレン「朝方に目が覚めたらお前がいなかったもんでな」

グレン「ひさびさに孫の朝帰りを待ちながら星を眺めておったんだ」

グレン「お前が小さい頃はこうして何度も星を眺めたな」

グレン「覚えておるか?」

ウェイバー「ウン まあね・・・」

 適当に相打ちをして

 しばらく老人の思い出話を聞いてやる

グレン「ーーこうして孫と星を眺めるのが夢じゃった」

グレン「まさか叶うとはおもわんかった」

ウェイバー「え?」

120: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:24:00.38 ID:5mFT6SIm0

グレン「ウェイバー お前さんわしらの孫ではないね?」

グレン「お前さんわしらの孫にしては日頃から優しすぎたわな」

ウェイバー「怒ってないんですか?」

グレン「怒って当然かもしれんが お前さんが来てからマーサが本当に愉しそうによく笑うようになってな」

グレン「どうだろう?もう少し続けてくれんだろうか?」

 ウェイバーは認めざるをえなかった

 ボクは平凡以下の魔術師だった

 優秀でも何でもなかった

 催眠暗示すらーーこの調子だ

 ーーけれど

 ボクはライダーのマスターだ

 あいつならきっと自分を頼ってくるニンゲンに対して真摯に接するだろう

ウェイバー「申し訳ないけど 約束することはできません 無事ここに帰ってこられる保証がないので」

グレン「そうする命掛けなのかね?お前さん方」

ウェイバー「はい」

グレン「それがお前さんにとってどれだけ大切な事柄なのかはわからんが」

グレン「長生きした所で振り返ってみればな 命と秤にかけられる程の事柄なんて」

グレン「結局のところ一つもありはせんものじゃよ」

 ーーきっとあいつも同じ事を言うだろうな

 皆で仲良く生きていく

 魔術師の本懐ではないけれど

 きっと一つの真理なんだろう

ーーーーーー
ーーー


121: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:24:48.26 ID:5mFT6SIm0

ーー夜

 目覚めるウェイバー

ウェイバー「帰っていたのか」

ライダー「ただいまウェイバーくん」

ライダー「今日は困っている人が少なかったよ」

ウェイバー「お前はいつもそんな感じだな」

あまりにいつも通りなので思わず笑ってしまう

ライダー「あっ 笑ってくれたね」

 そう言えば聖杯戦争が始まってこの方

 殆ど笑っていなかった

ライダー「ようやくウェイバーくんを笑顔にできたよ」

 嬉しそうな顔

 今まで守ってくれていた彼に
 
 ボクの意思を伝えなければ

ウェイバー「ライダー」

ライダー「どうしたの?」

ウェイバー「ボクは・・・」

 聖杯戦争を辞退する事を伝えなければーー



 しかし遠くに金色の力を感じた



ウェイバー「これって・・・」
 
ライダー「王様だね」

ライダー「そうだ ウェイバーくん」

ライダー「王様の所に挨拶に行こうよ」

ライダー「ウェイバーくんもケイネスくんと仲直りできたから」

ライダー「ボクもそろそろ帰らないと」

 気づかれたのか?

 こんな時にまでこいつは優しい

 ならせめて最後まで

ウェイバー「あぁ一緒に行こう」ニカッ

 ーー笑ってやる

ーーーーーー
ーーー


122: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:25:52.84 ID:5mFT6SIm0
ーー決戦

 ライダーの背中に乗りアーチャーの気配がする場所へ行く

ウェイバー「様子がおかしくないか?」

 アーチャーは何かと戦っているようだ



アーチャー「神如きが!この我に!!」



ライダー「王様~こんばんはー」

 いつもの調子で近寄る

 アーチャーはそれに気がつき 声をかける

 しかしその相手はライダーではなくーー



アーチャー「人の子よ」

アーチャー「ここから離れるがいい」

 

 言い終わらない内に表情が消える

 そして虚空から宝具を取り出し 振り抜く



ウェイバー「なっ!!」



 あたり一体を飲み込む大洪水

 こんなことをすれば海魔程度の被害ではおさまらない

 人類を粛清つもりなのか?



ライダー「うぁあぁああ!!」

ライダー「『アンパンマンワールド』!!」

 突然の事態にも関わらず完全に対応する

 しかし

 洪水に負けないくらいの涙を流していた

ーーーーーー
ーーー


123: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:30:16.96 ID:5mFT6SIm0
ーーアンパンマンワールド ヤーダ国付近

 ヤーダ国の近くの砂漠が海のようになってしまった

 しかしニンゲンを全て流し去るような洪水がフユキへ被害を出すことは防げただろう

ウェイバー「ライダー アーチャーの奴どうなってるんだよ!」

ライダー「ボクのせいだ・・・」

ウェイバー「なんでお前のーー」

 途中で気がつく

 令呪により 能力の底上げが行われたランサーを圧倒し

 狂化されたバーサーカーと意思疎通し
 
 制御不可である真性の魔を力でねじ伏せ

 気配遮断時のアサシンを捉える



 そして何よりーー

 人類最古の英雄王が認めた

 『ボク達の世界とは違う世界』の英雄


 
 抑止力の排斥対象になってしまったのか



ウェイバー「ふざけるなよ!」

ウェイバー「何でライダーが世界を滅ぼすんだよ」

ウェイバー「そんなことあるわけ無いだろ!!」

 自分の身を削ってまで皆を助けるような奴なんだよ

ライダー「・・・皆を守らないと」

 アーチャーに向かって飛んでいく

 彼はこの異界の英雄だ アーチャーという脅威を取り除かなければならない

ウェイバー「何であいつばっか辛い目に合うんだよ・・・」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ライダー「僕は戦いたくない」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 初めからそう言っていた

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ライダー「僕は皆とお友達になりたいんです」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 あいつの願いはそれだけだった

 何度か戦ってくれたが

 それは皆を守るときだけだった

ウェイバー「(この戦いは・・・)」

 アーチャーは世界を守るために戦っている

 ライダーは世界を守るために戦っている

 双方がそれぞれの世界を愛しているだけにも関わらず

 戦いが起きてしまっている

124: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:33:08.35 ID:5mFT6SIm0
ウェイバー「ライダー・・・」

 遠くに行ってしまった英雄達を見据える



 ガイアとアラヤのバックアップを受けた英雄王

 大地を揺るがし 雷鳴を轟かせ

 時空を歪めながら戦っている



 自身の能力の制限を取り払ったアンパンの英雄

 真っ白な輝きを放ちながら

 英雄王の攻撃を力でねじ伏せている


 
 今はなんとか拮抗しているが 徐々に差が出てくるだろう

 『アンパンマンワールド』の発動で英雄王は世界から切り離されてしまっている

 対して アンパンの英雄は自身の能力を無制限に使える環境である


 
 しかも



カバオ「あぁ!アンパンマンが戦っている!」

ピョンきち「皆で応援しよう!」

 どこからともなく集まった この世界の住人が応援を始める

 「「そうだおそれないで皆のために」」

 「「愛と勇気だけがともだちさ」」

 無情にも

 数多の応援によりライダーの力が高まる

ウェイバー「やめてくれ ライダーは戦いたくないんだ」

 今戦っている相手と友達になりたいだけなんだよ

ウェイバー「お前ら ライダーの顔を見ろよ!」

ウェイバー「あんなにも辛そうにしている奴に何を押し付けているんだよ!」

 しかし 異界の圧迫による負担から大きな声が出ない

ウェイバー「(そもそも何でアーチャーは戦っているんだ?)」

ウェイバー「(ライダーを世界から排斥した時点で目的は達成しているんじゃないか?)」

 あくまでも世界を守るためだから

 『世界』?

 この異界でアーチャーの世界の物は

ウェイバー「ボクじゃないか・・・」

 なんてことだボクのせいで2人が戦っているなんて

 けれど この戦いはボクの命を差し出した所でもう止まらない

ウェイバー「たのむよ・・・」

ウェイバー「誰かあいつらを助けてくれよ」

125: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:34:17.57 ID:5mFT6SIm0

 住人の中から1人飛び出し

 ライダーに飛びかかる

カバオ「ひどいや!」

ウサコ「エルキドゥせんせい!何てことをするの!」

 質素な服に身を包んだ 美しいヒトガタが参戦する

エルキドゥ「■■■■■■!」

 しかも全く躊躇せずに狂化する

 彼の事は全くわからないが

 ウェイバーの願いを受けているようでもっと異なる理由が有りそうだ

エルキドゥ「■■■■■■!」

 その身を武器に変えアーチャーと同時にライダーに迫る

 またもや戦況は拮抗し始めた

 しかし

 ライダーの表情は少し晴れていた

ーーーーーー
ーーー

126: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:37:38.05 ID:5mFT6SIm0
ーーーー

ウェイバー「よかった 本当によかった・・・」



 うつぶせに倒れるライダー



 宝具を出し尽くし 立ったまま気を失っているアーチャー



ジャム「あなたがウェイバーさんですか?」

ウェイバー「ライダー?」

 よく似ているけれど違う

ジャム「ジャムです アンパンマンがお世話になりました」

ウェイバー「ライダーは?」

ジャム「大丈夫です お~いバタコや」

バタコ「はい ジャムおじさん」

バタコ「アンパンマン!」

バタコ「新しい顔よ」

 ライダーの顔を投擲していた

 あの時の声はこのヒトのものだったのか

ライダー「ありがとうございます バタコさん」

 つやつやした顔で礼を述べるライダー

 同時にアーチャーが意識を取り戻す

アーチャー「ふむ 不愉快なことが起きたようだな」

 宝具の樹林となった砂漠を見渡す

 おおよその状況を把握したようだ

ライダー「王様」

ライダー「ボクと友達になろう」

ライダー「ボクは王様の重荷を分かち合いたいよ」

 アーチャーが背負う重みはーー

 ーー『世界』の重みだ


127: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:39:16.63 ID:5mFT6SIm0

アーチャー「痴れ者がッ!!」

アーチャー「王に対してのその言葉 刎頚にも値する!!」

 ウェイバーを一瞥し

アーチャー「こやつらの生命も歓喜も!」

アーチャー「悲哀も死も!!」

アーチャー「一片残さず我のものだ!!欠片足りともくれてはやらん!!」

ライダー「ウェイバーくん 君達の王様はやっぱりすごいね」

 自分のマスターに話しかける 

ライダー「けどせっかくここに来てもらったんだから」

ライダー「皆に会ってあげてよ」

アーチャー「許す こやつらに拝謁を栄を与えてやろう」

ライダー「ありがとう王様 ボクはジャムおじさんの所に行ってくるね」

 ウェイバーを連れていく

アーチャー「我は少しこの世界を周ってやろう」

 独りで歩き出すアーチャー

 そこに体がぼろぼろになったヒトガタが付きそう

アーチャー「何故貴様はここにいる?」

エルキドゥ「動物達と相性が良かったんじゃないかな?」

 彼らはかつての冒険を思い出しながら話を続ける

エルキドゥ「ねぇギルガメッシュ」

エルキドゥ「アンパンマンとなら友達になれたんじゃないのかな」

アーチャー「ふん下らん妄言だ」

アーチャー「後にも先にもお前以外の朋友があるものか」

エルキドゥ「君はたしかに孤高の王だ」

エルキドゥ「彼はそれを理解した上で 本当の意味で君と重荷を分かち合いたいと言っていた」

アーチャー「・・・」

エルキドゥ「まったく稀有な存在だよ」

エルキドゥ「あの時 言葉を取り消していいかな?」

アーチャー「・・・」

エルキドゥ「ボク以外にも君を理解できるヒトがいたんだね」

エルキドゥ「それに泥をこねて作られたボクと」

エルキドゥ「小麦粉をこねて作られた彼は」

エルキドゥ「よく似ているだろう?」

 自慢げに冗談を言う朋友

アーチャー「ふんっ」

 つっけどんな態度だが

 口元は笑っている

ーーーーーー
ーーー

128: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:43:28.88 ID:5mFT6SIm0
ーーーー

ウェイバー「なぁライダー」

ライダー「どうしたのウェイバーくん?」

ウェイバー「初めて会った夜にお前が聞いてきたこと」

ウェイバー「やっと答えられそうだよ」

 ライダーが微笑む

ライダー「何が君の幸せ? 何をして喜ぶ?」

ウェイバー「ボクはなぁ」

ウェイバー「ーーーーーー」

ライダー「ウェイバーくんならきっとできるよ」

 本当に嬉しそうな顔をする

 最初から最後まで

 こいつはボクの事を認めてくれていた

ウェイバー「お別れだライダー」

ウェイバー「令呪を持って命ずる」

ウェイバー「愛を教えてくれたことを感謝する 受取拒否は許さない」

ウェイバー「重ねて令呪を持って命ずる」

ウェイバー「勇気をくれてことを感謝する 受取拒否は許さない」

ウェイバー「さらに令呪で命ずる」

ウェイバー「ボクを認めてくれたを感謝する 受取拒否は絶対に許さない」

ウェイバー「これでボクはお前のマスターじゃなくなった」

 本当に寂しいが それでも前に進むためには必要なことだった 

ライダー「ならボク達は」

ライダー「『友達』だね!」

ウェイバー「ライダー」

ウェイバー「ボクを友達と呼んでくれてありがとう・・・」ポロポロ

 とうとう涙をこらえることができなくなった

 そして意識が遠のく

 やっぱり『アンパンマンワールド』の空気には耐え切れなかったか

ライダー「ウェイバーくん元気でね あんまり王様にばかり頼っちゃダメだよ?」

 わかってるよ ボクもお前みたいに頑張るから

 安心してくれ

ーーーーーー
ーーー


129: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:44:12.34 ID:5mFT6SIm0
ーーーー

ライダー「王様 お願いがあります」

アーチャー「よかろう 人の子は我が連れて行ってやろう」

ライダー「ありがとう」

ライダー「多分君じゃないとここから帰れない」

 アーチャーはウェイバーを摘み上げライダーに背を向ける

 そして彼の宝具

 『天地乖離す開闢の星』

 を取り出す

ライダー「さようなら 王様」

ライダー「君と友達になりたかったよ」

 残念そうな表情を浮かべる



アーチャー「ギルガメッシュだ」



アーチャー「お前は朋友(とも)を見送るのだ」

アーチャー「ならば高らかに我の名を謳うが良い」

 ライダーは満面の笑みを浮かべる

アンパンマン「バイバイ ギルガメッシュ!」

ギルガメッシュ「さらばだ アンパンマン!」

 天地を切りわけた概念を振り降ろす

ギルガメッシュ「エヌマ・エリシュ!!」

ーーーーーー
ーーー

130: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:45:54.55 ID:5mFT6SIm0
ーー冬木

ウェイバー「・・・ここは?」

アーチャー「気がついたか人の子よ」

アーチャー「お前は我の朋友のマスターではあるが」

アーチャー「これは聖杯戦争だ」

アーチャー「どうする?」

 ボクの命はここまでか

 それでもライダーがこいつと友達になれたことがわかったから満足だ

 せめてライダーが悲しまないように誠実に答えよう

ウェイバー「ボクは貴方に挑まない」

ウェイバー「貴方に挑めばボクは必ず死ぬ」

アーチャー「当然だな」

131: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:47:18.75 ID:5mFT6SIm0

ウェイバー「ボクはライダーの友達です」

アーチャー「ふむ?」

 改めて見直すと確かに令呪の気配はない

ウェイバー「あのヒトは友達が死ぬ事も」

ウェイバー「友達が殺す事もどちらも悲しみます」

アーチャー「・・・」

ウェイバー「あのヒトは王様に頼ってばかリではいけないと言いました」

ウェイバー「王よ」

ウェイバー「ボクは『第六法』に挑む」

ウェイバー「ボクは皆を笑顔にしたいんだ」

ウェイバー「それまでこの命を預かって欲しい」

ウェイバー「何のために生まれて 何をして生きるのか」

ウェイバー「その答えが出たんです」

 ライダーに出会えたからだ

 たとえ今この瞬間に命が尽きようとも

 この思いは絶対に手放さない

アーチャー「・・・」

 踵を返す

アーチャー「ウェイバー・ベルベット」

アーチャー「仁道大儀である 努その在り方を損なうな」

 黄金の英雄はその姿を消した

 その心の内はわからないが ボクは生かされた

ウェイバー「うっ・・・うぅ・・・」

 最後の最後で

 自分の命を掛けて 自分の力だけで戦いに生き残ることができた

 そして世界で最も強くて優しい2人の英雄に認められた

 たとえ魂がすり切れることになっても

 この十日あまりの出来事は決して忘れることはないだろう

ーーーーーー
ーーー

132: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:50:13.57 ID:5mFT6SIm0
ーーマッケンジー宅

マーサ「アンパンマンさん どこに行ったのかしらね」

 突然 食卓から1人欠けてしまったのだ 彼女は心の底から心配している

ウェイバー「絵本の中に帰ったよ 全くあいつは一体なんなんだよ」

 限りなく真実を語る

グレン「ほぉ ウェイバーそんな冗談も言えるようになったのか」

マーサ「その冗談はアンパンマンさんも言っていたわね」

 2人は笑顔になる

ウェイバー「ねぇ お爺さんお婆さん 相談があるんだけど」

グレン「どうした改まって」

ウェイバー「旅をしようと思うんだ 世界には困っているヒトが沢山いるからね」

ウェイバー「そんなヒト達を笑顔にしたいんだよ」

マーサ「聞きましたかグレン」

マーサ「ウェイバーちゃんったら急に まるでアンパンマンさんみたいな事を言い出したわ」

ウェイバー「先立つものも必要だからアルバイトをしようと思うんだーー」

ウェイバー「ここからが本題なんだけど」

ウェイバー「もし構わないようなら・・・目処がつくまでこの家で厄介になってもいいかな?」

マーサ「もちろんですとも!」

マーサ「今日はお祝いをしなくちゃ」

マーサ「鶏が熟成したから鳥料理がいいかしら?」

 心底喜んでくれていることが伝わってきた

 グレンはウェイバーに向けて小さく目礼を

 ウェイバーも照れながらそれに返事をした

 これがライダーの生きがいだったのか

 なんだか胸が温かくなった

ーーーーーー
ーーー

133: ◆PH6ED8xEJw 2013/11/10(日) 00:53:17.98 ID:5mFT6SIm0
ーーウェイバーの部屋

ウェイバー「あいつはなんにも残していかなかったな」

 ここには彼が居た痕跡は何も残っていない

 この世界を侵さないように細心の注意を払っていたからだ

 窮屈な思いもしていただろう

ウェイバー「ボクがもっと強ければ あいつの力を抑えつけられたのかな」

 自分の心にしか彼がいた証が残っていない事を少し寂しく思っている

 寂しさを紛らわすために降霊のための魔方陣を紙に描いた



 世界を示す大きな円

 その中に三位を示す小さな円を3つ

 円を繋げて生命を表す螺旋

 螺旋は2つの無限を重ねる

 左には自ら光る星と太陽を

 右にはそれを受けて輝く三日月を
 


 ふとこの魔方陣を右側から見てみた



ウェイバー「なんだよ」

ウェイバー「ずっと前から一緒にいてくれたのかよ」 

 笑いながらも思わず涙をこぼす

 右側から見た魔方陣は


 
 ライダーの笑顔だった



 今後の人生には幾多の試練が待っている

 それでも彼は立ち止まらない

 誰よりも強くて優しい英雄達と約束をしたからだ



 それいけ!ウェイバー・ベルベット

 皆を笑顔を守るために!



 おしまい