1: ◆2DegdJBwqI 2013/09/30(月) 19:09:35.52 ID:sIx92S9Ho
~☆

ー優木邸ー

沙々 「要件は、なんですか?お父さん」


優木父「……」

優木父「ようやくお前の行く先が決まった。見滝原だ」


沙々「……見滝原、ですか」


優木父「ああ、見滝原だ。それもあそこらでは一番のお嬢様学校に」

優木父「沙々、今の内に一つだけお前に言っておきたい事がある」


沙々「は、はい」


優木父「よく心がけなさい、もう二度と、あのような不名誉な事件は起こしてはならない」


沙々「……で、ですがあれは!周りの者達の言い掛かりだと話は付いたはずで――」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1380535775

引用元: 沙々「わたし、マミさんの弟子になりたいんです!」 




 

 
2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 19:10:57.83 ID:sIx92S9Ho


優木父「そんな些細な事は問題ではない」

優木父「私が今しているのは、お前に罪があるかどうか?という種類の話ではない」

優木父「我々の家そのものに泥を塗るような不祥事は、どんな形であれもう二度と許されないと言う事だ」

優木父「わかったな?」


沙々「……はい、承知いたしました」


優木父「よし、わかったならすぐに手荷物等の準備を整えろ」


沙々「それでは、失礼します」


ガチャ バタン








沙々「――――」ギリッ

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 19:12:31.23 ID:sIx92S9Ho
~☆

ービル 屋上ー


ピョン!


沙々「こんばんは、キュゥべえ。今日も相変わらず元気そうで何よりです」


QB「やあ、沙々。キミは元気で変わりなくやれてるかい?」


沙々「くふふ、とりあえずは現状、こうして五体満足でいられてますねぇ」


QB「そうか、それはよかった。喜ばしい返事が聞けてボクも嬉しいよ」


沙々(よく言いますよ、このお調子者が)

沙々(こっちの体調に関心なんて、本当はこれっぽちもない癖に)


沙々「……」キョロキョロ

沙々「それにしても見滝原、暮らすには一見して本当によさげな町並みです」

沙々「しかもこの街ってー、エモノが良く出るって評判ですよ?」

沙々「いいですねー、羨ましいですねー」


QB「けれどキミには、キミ自身の縄張りが既にあるじゃないか」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 19:14:32.85 ID:sIx92S9Ho


沙々「……ところがどっこい、ちょっと色々あってそうも言ってられなくなっちゃいました」

沙々「ここの縄張りって、巴マミとかいう魔法少女一人の物なんですよね?」


QB「うん、間違いないよ」


沙々「えっとですね、強い者がより多くの物を得ると言うのは、いわゆる自明の理ですよね?」

沙々「つまりその子よりもわたしが強いという事を証明したなら、ここ見滝原はわたしの縄張りになる」

沙々「何か問題はありますか、キュゥべえ?」


QB「いいや、ボクとしては特に問題はないよ」

QB「もちろんきちんと魔女を狩ってくれてさえいれば、だけどね」


沙々「ああ、よかったよかった!」


沙々(仲良しこよし、手を取り合ってなんて、まっぴら御免ですし)

沙々(こいつに表だって邪魔さえされなければ問題はない)


沙々「そういう事ならここ見滝原は、この優木沙々がぜひとも貰っちゃいますよっ!」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 19:15:44.15 ID:sIx92S9Ho
~☆

ー路地裏ー

沙々(さて、とはいえどうやって巴マミを倒したものか)テクテク


沙々「!」


沙々「……って、早速孵化しかけのグリーフシードじゃないですかぁ!」キラキラ


沙々(巴マミに洗脳魔法をかけるならば、魔力は当然必要になってきます)

沙々(けれど近頃はあまり魔女狩りが出来てなかったから、『種』のストックが少ないです)

沙々(この魔女は『種』として残すか、それとも普通のグリーフシードとして持つか)


沙々(いや、そもそも今はそっと影に身を潜めるべき。何事も極限まで慎重を期すべきでは?)

沙々(ここはかなり端の方だとはいえ、歴とした巴マミという魔法少女の縄張りなのだから)



沙々「……」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 19:17:12.62 ID:sIx92S9Ho
ー結界内ー

使い魔 沙々「……」テクテク


沙々(結局入っちゃいました)

沙々(まあ、結界が開いてすぐに入ったから、普通に巴マミが来るまで結構な猶予があるでしょうし)

沙々(のんびりとはいかなくても気楽にいきましょうか)

沙々(私はこうして使い魔に魔女の元まで案内させてるから楽勝ですし)


沙々「ほらっ!キビキビ歩くんですよ!」ゲシツ



沙々(……おや、前を使い魔の群れが塞いでますね)

沙々(あの量の使い魔を手懐けるのは手間ですし、何か策を考えた方が――)



ダァン! ダァン! ダァン!



沙々「ふぇ?」クルリ

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 19:18:39.97 ID:sIx92S9Ho


??「ねえ、そこのあなた、ここが私の縄張りだって事わかってるかしら?」


沙々「え゛っ」

沙々(わ、私の縄張りって事はつまり……、つまりこいつは……)


沙々「あのーもしかしてぇ、巴マミ、さんですか?」


マミ「あら?知ってたのね。ええ、確かに私は巴マミよ」


沙々「…………」ダラダラ


沙々(……う、うわぁああああああああああああああ!)

沙々(そんなのおかしいでしょぉおおおおおおおおお!)

沙々(来るのが速すぎますよぉおおおおおおおおおお!)

沙々(この状況はマジでやばいってぇええええええええ!)

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 19:21:11.38 ID:sIx92S9Ho


沙々「あの……」

沙々「わたし、優木沙々って言いますっ!」ニコォ!

沙々「ちょっと事情があって、最近見滝原にある中学校に転校する事になったんです!」ニコニコォ!


マミ「あらっ!私、見滝原中学の生徒なのよ」

マミ「ここで会ったのも何かの縁なのかもしれないわね」


マミ 沙々「…………」


沙々(うわあああああ!めっちゃ警戒されてるよぉおおおおお!)

沙々(洗脳魔法かけようにもこれじゃ無理だよぉおおおおおお!)

沙々(魔法少女姿を見られずに先手をとって、洗脳するわたしの必勝パターンがぁああああ!)


沙々「私が転入するのはあくまで見滝原にある中学校ってだけで、見滝原中学に転入する訳じゃないですけどね」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/09/30(月) 19:22:01.91 ID:sIx92S9Ho


マミ「ふーん、そうなの」チャキッ







沙々(えっ?)

沙々(いつ、銃なんて手に握ったんですか……?)

沙々(あっ、これやっぱりダメだ、絶対まともにやったら瞬殺され――)





              ダァン!

13: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 10:30:22.64 ID:bPtvzBM5o


使い魔「」ベシャッ


沙々「!」

沙々(い、いつの間にこんな接近して……)


マミ「相手が使い魔だからといって、そんな無防備な姿を曝すのは頂けないわ」


沙々「あ、ありがとうございます、助かりました」

沙々(澄ました顔に善人オーラ漂う態度、ますます気に入りませんねぇ……)


マミ「……ところであなたの隣にじっとしてる使い魔は、いったいどうしちゃったのかしら?」


沙々「え」


使い魔「…………」チョコン


沙々(ヤ、ヤバいこれの事すっかり忘れてた)

沙々(巴マミに警戒されたりする前に手を打たなくちゃ)

14: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 10:33:29.19 ID:bPtvzBM5o


沙々「さぁー?なんでかわからないですけど、さっきからずっとこんな調子ですよ、この子」

沙々「この子について行ったら、魔女の所にいけるんじゃないかなーって、わたしは――」


沙々(『おいお前っ!いますぐにわたしを襲えっ!』)


使い魔「キュ――」バッ


沙々「あっ――」ビクッ


              ダァン!


使い魔「」ベシャッ


沙々(うーん、反応速度、射撃の精密さ、共に完璧ですね)

沙々「あわわわわわわわ」ペタン


マミ「…………ふぅ」

マミ「どんなに無害に見えても使い魔は使い魔、そういう油断が命取りになるから気をつけなさい」

15: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 10:37:44.54 ID:bPtvzBM5o


マミ(もし優木さんの色々な態度が偽りでないのだとしたら、ルーキーである事に間違いはなさそう)

マミ(魔力も一般的な魔法少女と比べればちょっと低めみたいだし)


沙々(うへぇ、超露骨に品定めされてますよー)


マミ「えっと、見滝原の中学に転校するって事は、優木さんは日常ここで魔女を倒していくつもりよね?」


沙々「は、はい」

沙々「魔法少女の縄張りについて深く考えもせずに、こんな軽率な行動をとってしまった事は心から謝罪します」ペコリ

沙々「でも、わたし契約したてほやほやで、そういう細かいルールが身についてなかったんです」オドオド

沙々「だから一度限りで構わないのでどうか不問に――」オドオド


マミ「そんな縮こまらなくても大丈夫よ」

マミ「魔女による人々への被害を極力減らす事が、何よりも優先して魔法少女の使命であるべきですもの」 

マミ「魔法少女同士の縄張りに関した諍いなんて、本来あるべきではないんだわ」

16: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 10:48:55.57 ID:bPtvzBM5o


沙々(……なるほど)

沙々(こいつはおそらく今時珍しい、正義を気取ってる魔法少女って奴ですね)

沙々(きっと使い魔も倒すべきだとか言い始めるに違いありません)

沙々(見返りを求めぬ偽善者タイプの、わたしよりも圧倒的に強い魔法少女)


沙々(――実に洗脳しがいがありそうです)


マミ「それにそういった理想を抜きにしても私があなたを酷く責める理由はない」

マミ「だって優木さんは、近い内に自分の縄張りとなるだろう場所で魔女を倒しただけ」

マミ「もちろん私の縄張りでもあるけれど」

マミ「なるべく仲良くしていきましょう?優木さんもそう思ってくれてるわよね?」


沙々「…………」

17: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 10:50:52.40 ID:bPtvzBM5o


沙々「よ、よかったぁ、マミさんと争ったりする事にならずに済んで」

沙々(マミさん呼びは、流石になれなれし過ぎますかぁ・……?)


マミ(マミ……、さん……)


マミ「そうね、私も嬉しいわ」

マミ「あのね、私が優木さんと話し合いたいのは、これからの縄張り云々についての事なんだけど――」


マミ「…………」


マミ「それよりもまず先に、魔女を片づけちゃいましょうか」ニコッ


沙々「は、はい!」

18: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 10:54:35.74 ID:bPtvzBM5o
~☆

ー結界 最深部ー


魔女「グジュルルルルルル」


マミ「さて、ぶっつけ本番で二人組んで戦うのは、もしかしたらちょっと危険かもね」

マミ「ねえ優木さん、試しに今から一緒に戦ってみる?」


沙々「あっ、いえ、その、出来ればまず先輩のお手本が見てみたいなぁ……、なんて」


沙々(そうすれば、どういう魔法を使うのかとかじっくり見定められるし)

沙々(何よりもこっちの魔法をいきなり巴マミに知られなくて済みます)

沙々(今の内に洗脳魔法について誤魔化すそれっぽいネタを考えておかないと……)


マミ「そう?まあいいわ。じゃあ、ちゃちゃっと終わらせてお話の続きをしましょう」

マミ「念のためだけど、リボンで結界を張っておくわね」


沙々「はい、わかりました」


マミ「それじゃあ、……行ってきます」

19: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 10:56:42.24 ID:bPtvzBM5o


シュルルルルルル


ビシィ!


沙々(リボンを出したり銃を出したり、色々と器用な魔法少女っぽい印象ですね)


ダァン! ドゴォン! ダァン!ダァン!ダァン! シュルルルル


魔女「グジャアアアアアア!」ビュオッ


マミ「はぁっ!」ダァン!


沙々「…………」


沙々(見れば見るだけまともに巴マミと戦う気が失せますね)

沙々(遠距離攻撃型の巴マミ相手だと、魔女を盾にしてもその隙間から攻撃を撃ち込まれやすいでしょうし)


沙々(厄介なのはあのリボン)

沙々(魔法少女一人だけで見た地力が底辺なわたしでは、あれに素早く対処する手段が全くない)

沙々(……やっぱり最初から薄々感じてたけど、相性最悪じゃないですか)

20: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 10:58:26.45 ID:bPtvzBM5o


             マミ「ティロ・フィナーレ!」バォオオオン!




             沙々「………………」





沙々「きゃぁー!マミさん凄いカッコいいですぅー!」


沙々(ティロ・フィナーレ?)

沙々(いきなり何言ってるんですか、あの人)

沙々(マジで正義の魔法少女気取っちゃってますか?)


マミ「よいしょっと」スタッ

マミ「それじゃあ、私の家にちょっと寄って貰っても、構わないかしら?」


沙々「もちろん構いませんよ!むしろこちらからお願いして伺いたいくらいです!」

21: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 11:01:31.23 ID:bPtvzBM5o


沙々(戦い方も魅せる事、観客を意識したような戦い方で)

沙々(すっごいうざかったですけど、最後のってホントなんなんですか)

沙々(強ければそういう遊びを入れる余裕が出てくるって訳ですか?)

沙々(ものすごぉーく、気に食わないです)


沙々「……あのぅ、最後のって、なんだったんですか?」


マミ「最後の?」


沙々「マミさん高らかにティロ・フィナーレって……」


マミ「あ、ああ、あれのことね。ちゃんと理由はあるのよ」

マミ「TVとかの魔法少女って希望に溢れてる事、多いじゃない?」

マミ「もちろん現実の魔法少女がそんな物じゃない事はわかってるわ」


マミ「だけどそれを真似る事で、少しでも彼女達に近づけるように」

マミ「皆に、そして自分に希望を与えるような存在になれるように」

マミ「魔女との過酷な戦いで心挫けぬよう奮い立つため、私は必殺技を叫ぶようにしてるの」

22: ◆2DegdJBwqI 2013/10/02(水) 11:04:21.37 ID:bPtvzBM5o


沙々「へぇー、そうなんですかぁっ!」

沙々「わたしそこまで魔法少女について深く考えた事ありませんでしたっ!」

沙々「やっぱりマミさんはどこをとっても、完璧な魔法少女なんですね!」

沙々「強くてカッコよくて、わたし、憧れちゃいますぅ!」


マミ「…………」


マミ「そんな価値、私にはないわよ」

マミ「私はただ、自分の出来る事を精一杯やり遂げようと、努力してるだけ」


沙々「?」


沙々(少しだけ、目が濁った?)

沙々(でも、それでも、依然変わらずに、自分が正しい事をしてる、そう確信した奴特有の目をしてる)

沙々(…………あ ゛ぁ゛ー、ムシャクシャしますよー)




沙々(いつか巴マミに、地べたの埃を、直に舐めさせてやりたいですねぇ)

25: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:22:14.80 ID:ZGqTKpGyo
~☆

ーマミホームー


マミ「さあ、どうぞ」


沙々「おじゃましま-す!」

沙々(へぇ、いい家に住んでるじゃないですか)


マミ「そこのテーブルに座っててくれるかしら」

マミ「お茶とお菓子を用意してくるから」


沙々(自分のテリトリーに入って、無意識に少しだけ警戒を解いてますね)

沙々(これなら目を直に見れば、警戒を緩めるチャームくらいはかけれそうです)

沙々「ご両親とかはいつ頃お帰りになるんですか?」


マミ「…………もう、どっちも死んでしまったわ」

マミ「だから私は親戚の世話で、この家に一人暮らしさせて貰ってるってわけ」


沙々「あ、あうぅ……」

沙々「し、知らなかったとはいえ、無遠慮にデリケートな事を聞いてしまって、あの、本当に申し訳ないです」


マミ「いいえ、大丈夫、気にしないで」


沙々(ああ……、せっかくくつろいでた心がまた強張っていく……)

26: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:27:57.51 ID:ZGqTKpGyo
~☆


沙々(ピーチパイも紅茶も結構おいしかったですね)


マミ「さあ、一息ついた所で、今後についてのお話をしましょうか」


沙々「は、はい」

沙々「わたしって魔力、元からそんな多くないですし」

沙々「ここの狩り場のある程度小さな所さえ分けて貰えばどうにか……」

沙々(とても不本意ですけど、このままでは勝てないのが明らかですから仕方ないですね)


マミ「ねえ、優木さん」


沙々「なんですか?」


マミ「あなたは、自分の将来的なグリーフシードの取り分を少なくしてでも、使い魔を倒すべきだと思う?」

マミ「たとえ全員を救えないとわかっていても、見知らぬ誰かのために使い魔を倒すべきだと思う?」

マミ「……いえ、もう少し訊き方を単純にするわ」


マミ「あなたは、いついかなる場合でも、努めて使い魔を倒すべきだと思う?」

27: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:33:18.63 ID:ZGqTKpGyo


沙々「…………」

沙々(これは、どういう答えを期待しているんでしょう)

沙々(彼女が基本的には、使い魔を倒すべきだと考えている事はもはや疑いようがない)

沙々(問題はいついかなる場合でも、という仮定です)


沙々(印象としては、自分を犠牲にしてでも使い魔を倒して人々を助けるべき、とか言いそうですが)

沙々(綺麗事だけでは生きていけない。皆を助けるためには自分だけは生き残っていなければならない)

沙々(だから人々の多少の犠牲は必要といったスタンスの魔法少女の可能性も一応あります)

沙々(……どちらにせよ、倒さないべきというよりは倒すべきと言った方が、後々相手の主張に合わせやすいか)


沙々「倒すべきだと、私は思います」


マミ「どうして?」


沙々「だって、悲しいじゃないですか」

沙々「私の知らない所で、私の倒さなかった使い魔が誰かを苦しめるなんて未来は」

沙々「誰よりも何よりも、自分自身のために、私はどんな時も使い魔を倒すべきだと思います」


マミ「…………」

28: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:44:20.61 ID:ZGqTKpGyo


沙々(いや、この言葉の選び方はちょっとまずかったかもしれません)

沙々(使い魔を倒すべきと考えている魔法少女は元々少ない)

沙々(ご機嫌取りをしているのだと、目ざとく見破られる可能性がある)


沙々(……まあ実際、見知らぬどこぞの誰かさんの事なんか気にしてたら)

沙々(魔法少女としてグリーフシード不足でろくに生きていられませんけどね)

沙々(それとも魔女が次々と湧き出るここ見滝原とかでならば、あるいは実現可能ですか?)


沙々(そんな途方もない理想を追求しようと思うなら)

沙々(まずは前提として、人に手を差し伸べられるくらいの豊かさを、自分が備えていなくては)

沙々(せっかくの能力をそんな事に使うなんて、私からすればとんだ間抜け、無駄遣いですけど)


マミ「……優木さん」


沙々「はい?」


マミ「これから私と、魔法少女のコンビを組んでみない?」


沙々(あっ、問題無かった)

沙々「魔法少女のコンビ、ですか……」

29: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:47:49.96 ID:ZGqTKpGyo


マミ「私は見滝原にいきなり私にとっての不可侵の場を新しく設けるよりは」

マミ「あなたと二人で試しにやってみたい」

マミ「二人で協力すれば戦いにおける危険は確実に減らせるわ」

マミ「それにあなたには色々教えてあげられる事が私、あると思うの」


マミ「二人で組んだ時の一番大きくてわかりやすい問題は、グリーフシードの問題だけど」

マミ「ここは魔女が多いし、二人分なら余裕で賄えると思う」

マミ「どう?私と仲良くしてみる気はない?」


沙々「…………」


沙々(さて、どうしようか……)

沙々(馴れ合いはあまりしたくないですけど、現実問題まともにこいつに勝てる気しませんし)


沙々(グリーフシードは手に入る、強力な魔法少女の庇護下に加われる)

沙々(ここに入り浸れば、あの押し込められた感じのするさながら巣箱)

沙々(狭く居心地の悪い借家に帰らずに済みます)


沙々(もうちょっと娘のためにマシな家を借りろよクソ親父)

30: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:53:28.13 ID:ZGqTKpGyo


沙々(……巴マミとこれから親密になっていけば、いずれ色々と彼女を洗脳する機会もあるでしょう)

沙々(洗脳する前から友好関係を築けているというのは、私にとっても好都合か)

沙々(今現在私の実力では、認識を明らかに変える程に絶えず洗脳し続けるのは、魔力をバカに食います)

沙々(ちょっとした刺激で制御下から外れてしまうみたいですし)


沙々(いっそ長期的に腰を据えて、深層心理に食い込むような洗脳魔法を構築してみるのも、ありかも知れませんね)

沙々(このいけすかない魔法少女には、控えめに見てもそれくらいの価値はあります)


マミ「お答えは、今ここで聞かせて貰えるのかしら?」


沙々「…………」

沙々「わたしはマミさんとコンビには、なりません」


マミ「……つまり、あくまで縄張りの一部割譲を要求するわけ?」

31: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:55:14.03 ID:ZGqTKpGyo


沙々(こ、こわぁっ……!)

沙々「いいえ、そういう訳じゃなくて、わたしとしてはもう少し別の関係になりたいんです」


マミ「別の、関係?」


沙々「ええ」




沙々「わたし、マミさんの弟子になりたいんです!」

32: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:57:04.76 ID:ZGqTKpGyo
~☆


沙々(で、なんで師弟関係が決まった途端にお泊りなんですか)

沙々(まあ、いいですけど)


沙々「………………」


沙々(どうにも寝付けませんねぇ)

沙々(……この来客用の布団、今まで一度も使われてなさそうな気配がひしひしと――)


マミ「佐倉さんっ!」


沙々「はふぇっ?」ビクッ


マミ「…………」クー クー


沙々(お、お驚かせんじゃねーですよ、こんにゃろう)ドキドキ

沙々(今何時だと思ってるんですか。声の大きさ考えてくださいよ、まあ無理でしょうけど)


沙々(……佐倉さん、一応記憶しておきましょうか。何かに使えるかもしれませんし)


沙々(おおっと、よく見れば巴マミの心の警戒が相当に緩んでますね)

沙々(流石に歴戦の魔法少女でも、夢の中では無防備なようで)

沙々(それじゃあちょっと、本格的な洗脳に向けた下拵えでも――)ワキワキ

33: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 11:59:07.02 ID:ZGqTKpGyo


マミ「う……あ……う……」グスッ

マミ「お父さん……、お母さん……」ポロポロ


沙々(ええっ……!)

沙々(なんで急に泣き始めてるんですか……!)

沙々(まだ私、何もしてないですよ……!)オロオロ


マミ「…………置いて行かないで」


マミ「皆、私を置いて行かないでよぉ!」パチッ



沙々(あっ、起きた)


マミ 沙々「………………」

マミ 沙々(うわぁ、なんか凄く気まずい……)

34: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 12:01:58.49 ID:ZGqTKpGyo


マミ「あの、優木さん、夜もだいぶ遅いけどどうかしたの……?」


沙々「どうかしたのって、それはマミさんの方ですよ」


マミ「えっ……?」


沙々「だって、マミさん」

沙々「泣いてるじゃないですか、今」


マミ「……あっ、ホントだ」クスッ


沙々(ホントだって……、あなたねぇ……)

沙々(とりあえず目を見て、警戒を緩めるチャームをかけておきましょうか)


沙々「寝言で佐倉さんって人の名前を呼んでましたけど、誰ですか?その人」


マミ「えっ、あらやだ、私、寝言なんて言ってたの?」


沙々「はい、間違いなく言ってました」

沙々「そのせいで目が覚めちゃいましたよー」

沙々(嘘ですけど)

35: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 12:22:38.48 ID:ZGqTKpGyo


マミ「そ、そうだったの、ごめんなさい!」


沙々「いえいえそんな、気にしないでくださいマミさん」ニコニコ

沙々(くふふ、私を驚かせたのに見合うくらいの罪悪感は、せめて感じて欲しい物です)


沙々「で、話を戻しますけど、佐倉さんっていったいどちら様です?」




マミ「…………」

36: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 12:26:02.74 ID:ZGqTKpGyo


マミ「佐倉さんはね、あなたとこうして知り合う前に魔法少女のコンビを組んでた子なの」

マミ「ごく最近までそうだったんだけどね」

マミ「両親を交通事故で亡くしてから、唯一私の事を理解してくれた子だった」

マミ「魔法少女として見つけた使い魔は全て倒すべき」

マミ「そんな私の考えに完全に同意してくれる子は、それまで一人もいなかったから」


沙々(それは当然、そうでしょうね)

沙々(見返りもなく、自分にとってむしろ不利益にしかならない事をやりたがる子は少ないでしょう)


マミ「だから私も頑張ったのよ。どうにか彼女に気に入られようって」

マミ「でも、ダメだった。全部台無しになっちゃった」

マミ「一人ぼっちは嫌だわ。苦しくても辛くても一人でそれを抱えるのは、私には重荷過ぎる」


マミ「誰か本当の意味で、私の味方になって欲しかった。私の傍にずっといて欲しかった」

マミ「それがあの子だったら、どんなに良かった事か……」

37: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 12:29:21.91 ID:ZGqTKpGyo


沙々(なんだ、想定していたよりずっと脆くて弱そうな子じゃないですか)

沙々(しかし逆説的に言えば、このメンタルでこれ程自分を追い込む立場に自分をおけるというのは)

沙々(あるいは心が強いのかもしれません)

沙々(……なーんか嫌な感じで、胸の奥がもやもやっとしますねぇ)


マミ「優木さん」

マミ「誰にも理解されない、自分が誰にとっても必要ないって感じる気持ち……、あなたにはわかる?」


沙々「…………まあ、私個人としては、そういうのわかってるつもりではありますよ」


沙々(正直私からすれば、そこまで色々なモノを持っていて、そんな悩みを抱えてるあなたは贅沢ですけどね)

沙々(誰からも必要とされない人間というのは、もっと本当によわっちい物ですよ)


沙々「…………」


沙々(――もしかして私は、巴マミの境遇に、自分を重ねて同情している……?)

38: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 12:34:44.58 ID:ZGqTKpGyo


マミ「ふふふ、不思議ね」

マミ「逢ったばかりだというのに、あなたと一緒にいると心が安らぐわ」

マミ「まさかこんな話を、いきなりあなたに打ち明けちゃうなんて、さっきまで思ってもみなかった」


マミ「佐倉さんの事もあったし、いつもの私なら、もっとあなたの事を警戒しちゃうはずなんだけど」

マミ「もしかして私達って、何か特別な縁みたいなものがあるのかもね」


沙々「は、ははは、不思議ですねー」


沙々(それはそうですよ。だってそういうチャームを、この家に入ってから事あるごとにかけてるんですし)

沙々(……はたしてグリーフシード、このままで足りるんでしょうか)


沙々「まぁなんにせよ、心や体が疲れた時にはぐっすり眠ったほうがいいですよ」

沙々「ほら、ちゃっちゃと布団の中で目を瞑った、瞑った」


マミ「……それはちょっと、難しそうかな」


沙々「えっ、どうしてです?」

39: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 12:38:40.46 ID:ZGqTKpGyo


マミ「こういう時って寝直すと、いつもさっきみたいな嫌な夢をまた見ちゃうのよ、私」

マミ「だから、どうしても眠らないとってなるまで起きてから……」


沙々「…………」

沙々「仕方ないですねぇ、じゃあ特別に、私の魔法を少しお披露目しますよ」


マミ「あっ、優木さんの固有魔法が何なのか、そういえばまだ聞いてなかったわね」

マミ「いったいどんな――」


沙々「はいはい、それは、魔法を実際に受けてみてからのお楽しみですよ」

沙々「……マミさん。しっかり私の目の奥を無心で見つめてください」

沙々「抵抗しようとしないでくださいね、かからなくなっちゃうんで」


マミ「?」


沙々「……」スッ


マミ「ひぅっ!」ビクッ

マミ「な、何!?」


沙々「肩に触られるくらい我慢して下さいよ……」

沙々「さあ、力を抜いて……。力を抜いて……。力を抜いて……」ユサユサ

40: ◆2DegdJBwqI 2013/10/06(日) 12:40:30.81 ID:ZGqTKpGyo


マミ(い、いきなりそんな事を言われても……)


沙々「…………」ユサユサ

沙々(そろそろ、ですかね)


沙々『心安らかに、朝まで深く眠りなさい』


マミ「!」


マミ「…………」コテン

マミ「…………」クー クー


沙々(……これで、巴マミとの『繋がり』が出来た訳です)

沙々(目的に向けて、着実に前進してるのは確か)

沙々(そう、素直に捉えるべきでしょう)



沙々「――でも、柄にもなく何をやってるんでしょうね、わたし」ハァ

46: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:24:45.49 ID:wJUl/Ryko
~☆

ー約一年後 マミホームー


沙々「ちょっとマミさん!」

沙々「いつまでも寝転がってテレビ見てないで、家事の手伝いしてくださいよ!」


マミ「えー、少し待ってー。今凄い良い所なのよー」


沙々(これでもかと堕落しきってますねぇ……)

沙々「私との同居が決まった時は、もっとシャキッとしてたじゃないですか!」


マミ「同居、というかあなたが半ば無理やり私の家に転がり込んできたんじゃない」

マミ「嬉しくなかった、とはもちろん言うつもりないけど」


マミ「……って、あら大変!うっかり紅茶こぼしちゃった!」

マミ「優木さーん、とりあえずティッシュとって―!」


沙々「ああ、もう……、まったくもう……」

47: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:27:54.46 ID:wJUl/Ryko


沙々(やれやれ、共同生活を始めてからの巴マミの変貌ぶりときたら……)

沙々(とはいえ、あの借家に一人でいるよりは今の状況の方が余程心地良い)

沙々(何もかもが息苦しかった実家にいる時と比べるならば、もはや天国にいるみたいなものです)


沙々(それでもやっぱり、こいつが出会った時の初心を思い出してくれたら……)

沙々(と、思ってしまうのはいささか贅沢過ぎる望みなんですかねぇ)


沙々「皆の憧れな先輩っぽい、そういう最初の優雅な雰囲気はどこ行ったんですかぁ、巴先輩?」ニコォ


マミ「ふん、いっつも猫被ってる子に偉そうな事言われたくないわ」

マミ「一緒に暮らし始めてから、色々家事とか教えてあげたじゃないの―」ゴロゴロ

マミ「魔女の倒し方だってー、勉強だって―、他にはー」ゴロゴロ


沙々「あー、うるさいうるさい!」

沙々「わたしがやればいいんですよね、わかりました、わかりましたから」

48: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:30:29.55 ID:wJUl/Ryko


沙々(ふんだんに時間をかけて、巴マミに可能な限りの洗脳を施してきた)

沙々(その中で当然、彼女の精神の奥深くにも色々な形で手を触れてきた)

沙々(まさかそれがこんな弊害を生んでしまうとは……。頭痛いです)


沙々(完全にわたし、甘える形で依存されちゃってますね、これ)



沙々(……わたしが魔法少女個人として、彼女がいないととてもやってけない位に弱いっていうのも)

沙々(巴マミが弱い自分を曝け出す、良い後押しになったのかも)

沙々(でもそれにしたって、いくらなんでもこの堕落っぷリはひどすぎるでしょう)


マミ「よーし、番組も終わったし、そろそろ私も働いちゃおうかなー」


沙々「もう、やるべき家事は一通り全部終わっちゃいましたよ……」


マミ「えっ」

49: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:35:07.75 ID:wJUl/Ryko
~☆

ー夜 街中ー


スタスタ スタスタ


マミ「…………」


沙々(こうやって出歩いてる時の頼もしさを、家でも常時発揮してくれてれば)

沙々(文句なしに優秀な手駒なんですけどねぇ……)


マミ「優木さん」


沙々「なんですか?マミさん」


マミ「止まって。あちらの方が何かを言いたそうにしてるから」


沙々「……!」


沙々(うわぁ、普通に気付かなかった)

沙々(長い黒髪の少女) 

沙々(この時間に外をうろついてる事)


沙々(そして何より漂う魔力の気配からして、ほぼ間違いなく同業者ですね)

50: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:40:05.97 ID:wJUl/Ryko


マミ「どういった、ご用件かしら?まずはお名前からお聞かせ願いたいのだけど」


ほむら「……」


沙々(うへぇ……)

沙々(こっち、それもわたし一人を明らか睨んでますよー)

沙々(どう見てもわたしよりは強そうな雰囲気です)


沙々(……?)


沙々(にしても魔力が、よくわからない随分珍しい波長をしてますね)


ほむら「私の名は暁美ほむら。この度、見滝原中学に転入が決まった魔法少女よ」


沙々(えぇー、私も引っ越してきた口ですけどまた増えるんですかー)

沙々(いくら見滝原の魔女の質が良くて豊富だといっても、三人だと流石に旨味が少ない)


マミ「そう、暁美さんね。私は――」

ほむら「あなたの事はもう知っているわ。巴マミ、見滝原中学三年のベテラン魔法少女」


沙々(……ふーん。巴マミってここに来る前の私が既に知ってただけあって、やっぱり有名人なんですか)

51: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:41:39.41 ID:wJUl/Ryko


ほむら「それで、そちらの魔法少女は、どちら様?」


沙々「あっ。わたしですか!優木沙々って言います、はじめまして暁美さん!」ペコリ

沙々「今後仲良くしていきましょう!」ニコォ


ほむら「…………」


沙々(……って、返事はなしかよ!)


マミ「ここは私の縄張りよ」

ほむら「ええ、知ってるわ」


マミ「だからここでは、私のルールに従って貰いたい」

ほむら「当然ね」


マミ「具体的には見つけた使い魔は全て駆除して貰いたいの」

ほむら「わかった」


沙々(おや、物分かりがやけに良いですね)

52: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:52:08.12 ID:wJUl/Ryko


マミ「そう、それは良かった」

マミ「それで次に提案なんだけど、私達とチームを――」


ほむら「残念だけどその提案に関しては保留させて貰うわ」


沙々(物分かりが良い、わけでもなかった)


ほむら「はっきり言って、そちらの魔法少女の得体が知れないし」

ほむら「何よりあなたに、背中を普段預けて戦う気に今はなれない」


沙々(失礼な。こっちからしたら得体のしれないのはまさにそっちだっつうの)

沙々(まあわたしって洗脳系魔法少女ですし、判断そのものは事実正解ですけど)


沙々(というか巴マミにすら背中を預ける気にならないとか、超贅沢ですね)

沙々(まあ戦力の問題じゃなくて、人として信用出来ないって事なんでしょうが)

沙々(実際これも魔法少女としては正しい判断です)


マミ「……そう、それがあなたの答えね」


ほむら「ええ」

53: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:54:15.07 ID:wJUl/Ryko


マミ「それなら魔女狩りの時間であろう放課後、互いに見滝原に不可侵の縄張りを設けましょう」


ほむら「いいえ、街中を自由に歩かせて貰えないと困るわ」


ほむら マミ「…………」


沙々(どうも空気が怪しくなってきました)

沙々(戦いが始まったら巻き込まれないように、ひとまず離れましょう)


沙々(隙あらば背後から魔法弾で攻撃か)

沙々(巴マミに奴の注意が完全に向いた瞬間、ちょっと魔法を使って手元を狂わせるか)


マミ「あなた、私達と敵対するつもりはないのよね」


ほむら「もちろん」


マミ「じゃあ何?グリーフシードが余程たくさん欲しいの?」


ほむら「あるに越した事はない」


ほむら「けれど使い魔をわざわざ捜索して排除したりしなければ」

ほむら「節約するのもそれほど難しくはない」

ほむら「あなた達が無駄に消費さえしなければ」

54: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 10:56:21.66 ID:wJUl/Ryko


マミ「する訳ないでしょ」


沙々(ごめんなさい、わたし、巴マミで色々余計な洗脳の実験とかしちゃってます☆)


マミ「グリーフシードが目的ではない」

マミ「しかし放課後、歩き回らなくてはいけない」

マミ「という事は他に何か特別な目的があるのね?」


ほむら「それをあなたに教える義理はない」


マミ ほむら「…………」


沙々(……これはきっと、どっちかの血が今ここで流れますね)

沙々(固有魔法が何かすらてんでわからないのと、巴マミを出来れば戦わせたくないのですが)

沙々(いざとなったらマミの精神を操作して、この場から無理にでも引かせましょうか)


マミ「……これ以上の話し合いは無意味ね」

マミ「なるべくでいいから、これから私達と顔を合わせずに済むようにしてくれるかしら?」


ほむら「ええ、そうね」

ほむら「なるべく努力するわ」

55: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 11:00:22.98 ID:wJUl/Ryko


マミ「手を取り合う事が出来なくて本当に残念。さようなら、暁美さん」


ほむら「――たとえ嫌でも共闘関係を結ばなければならない、あるいはそんな時が近い内に訪れるかもしれない」


マミ「……?」


ほむら「いえ、その言い方は正しくなかった。訂正するわ」

ほむら「そういう日に願わくばあなたが辿り着けますように」


ほむら「さようなら、巴マミ。それと優木沙々。また会いましょう」


スタスタ


沙々(ふー、何もせずに両者が戦闘回避してくれて本当に良かったです)


沙々「暁美さんって人、凄く変な子でしたね?」

沙々「何考えてるのかよくわからないし、相手を突き放す調子があるって言いますか、なんていうか」


マミ「ええ、そうね」


マミ「…………ふぅ」

マミ「ちょっとだけ、疲れちゃったわ」フフッ


沙々「お疲れ様です、マミさん」

沙々(これは後で少し弄って、ぐっすり眠れるようにしてあげた方が良さそうです)

56: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 11:02:33.84 ID:wJUl/Ryko

~☆

ー数日後 結界ー


ジャキン ジャキン ジャキン


さやか「嘘だよね、これって……」


まどか「ほむらちゃんっ……!」


ほむら「二人とも、私から離れないで」

ほむら(進路を変えたのに、ちょっと目を離した隙に二人が使い魔の結界に引っかかるなんて)

ほむら(まさかの大失敗ね、取り返しがつくと良いけど)


ほむら「……」ヘンシン


まどか さやか「!?」


ほむら「二人とも、この円状の線内部にいたら安全だから」ギュルッ

ほむら「もっとも出ようと思っても出れないでしょうけど」




さやか「……ほむら、あんたって何者なのさ?」

57: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 11:04:11.34 ID:wJUl/Ryko


ほむら「何者――ね」

ほむら「それよりまずはこの場を無事に切り抜ける事が重要だわ、違う?」


さやか「そ、そうだけど――」

ほむら「分かってくれてよかった」


ほむら「行ってくるわ」


ほむら(時間停止はこんな雑魚相手にわざわざ使いたくない)

ほむら(しかし、巴マミ、それと優木沙々とここで鉢合わせるのは避けたい)

ほむら(やはり出し惜しみなどせず――)


ダァン!


ほむら「!」

まどか さやか「!?」

58: ◆2DegdJBwqI 2013/10/09(水) 11:06:32.08 ID:wJUl/Ryko


マミ「助太刀するわ」


沙々「右に同じくです」

沙々(とはいえ私がやるべき事なんてほとんど何もないんですけど)


ほむら(ああ、間に合わなかったか……)


沙々「使い魔達!」

沙々「slow!」

沙々(『動きを緩めろ!』)


使い魔「」ビクッ

使い魔「ジャキン… ジャキン…」ノロノロ


沙々「さあっ!マミさん、やっちゃってください!」


マミ「暁美さんも、手伝ってくれるかしら?」


ほむら「……」

ほむら(まあ、こうなってしまえば仕方ないわね)


スチャ

ズガガガガガガガガ 

ダァン!ダァン!ダァン!

65: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 11:25:39.27 ID:il5gvdx8o
~☆


マミ「よろしくね、鹿目さん、美樹さん」


まどか「よ、よろしくお願いします」


さやか「よろしく、マミさん」


沙々「…………」

沙々(こうまじまじと見るとヤバいですね)

沙々(このまどか、とか言う奴の規格外の素質)

沙々(さっさとこいつら放置して帰りたいですよ、マジで)


さやか「それで、お二人――いや、ほむらを含めて三人は何者なんですか?」


マミ「……何者、と言われるとこう答えるしかないわね」

マミ「魔法少女、よ」


さやか「魔法……、少女……?」


マミ「そう、私達はキュゥ――」


ほむら「待って!」

66: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 11:26:54.77 ID:il5gvdx8o


マミ さやか「!」ビクッ


まどか「ほ、ほむらちゃん?」


ほむら「二人に、その情報を教える必要はない」


マミ「……と、いうと?」


ほむら「彼女達は幸せに、今この時を生きている」

ほむら「あなたのしようとしている事は、他人をただ不必要な苦難に引き込むだけ」


ほむら マミ「…………」


沙々(うわぁ、共闘してせっかく穏やかな雰囲気だったのに、また険悪ですよー)

沙々(でも流石にこの二人の前で表だって戦いはしないでしょうし、まだ慌てる必要はなさそうですね)


マミ「暁美さん、そうも言っていられないわ」

マミ「彼女達にその素質があるのは一目瞭然でしょ、特に鹿目さん」


ほむら「ええ、そうね」

67: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 11:28:29.22 ID:il5gvdx8o


マミ「彼女達はこうして日常とは違う世界をその目で見て知ってしまった」

マミ「遅かれ早かれ、キュゥべえが彼女達の前に姿を見せるはずよ」


まどか さやか(きゅぅ、べえ……?)


沙々(マミ、あなたまさかこの二人に、自分の思ってる魔法少女の姿をバカ正直に見せるつもりですか?)

沙々(あなたはこの二人が魔法少女になった場合)

沙々(決して避けられない面倒について理解してないんですか?)


沙々(……いえ、気づいてはいるけど、無理に目をそらしていると捉えるべきか)


マミ「そうなって万が一、まだ何も考えない内に闇雲に契約してしまうよりは」

マミ「今ここで、経験者の立場から先に色々教えてあげるべきだと私は思う」


ほむら「私が、キュゥべえを彼女達に近づけさせないわ」


マミ「四六時中?そんなの不可能よ」


ほむら「私が二十四時間ずっと張り込めば問題はない」


マミ「二人共の家に、絶えず張り込むの?どちらにせよ現実的ではないわね」


ほむら「…………くっ」

68: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 11:33:16.52 ID:il5gvdx8o


ほむら(こうやって、私と巴マミがまどか達の前で、一応敵対せずに対峙するのは珍しいパターン)

ほむら(キュゥべえに関した後ろめたさと巴マミへの恐怖心もあって)

ほむら(ついつい誤魔化そうとするせいで後手に回っちゃうわね)


ほむら(しかし、巴マミの生き様、あるいは死に様)

ほむら(そのどちらもがまどか達の契約を強く誘発するファクターになる)

ほむら(出来れば接触を抑えたい所なのだけれど……)


さやか「ねえ、ほむら」


ほむら「何?」


さやか「私、マミさんの話聞いてみたい」


まどか「わ、私も!」


マミ「……暁美さん、彼女らには知る権利がある。もちろん選択する権利もね」


沙々(あーらら。これ、家にこいつらがやってくるコースまっしぐらじゃないですか)

69: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 15:03:52.66 ID:il5gvdx8o


ほむら「間違った選択を誰かがしようとしているなら、その前にそれを止めてあげる事も必要だわ」


マミ「間違っている、それを決めるのは私達他人の役目じゃない。彼女ら自身の意思であるべきよ」


沙々(まあ、話を聞かせるくらいなら、いいでしょう)

沙々(無知な状態から下手に首を突っ込まれるよりはましです)


ほむら「…………」

ほむら「わかったわ。今日はこちらが引かせて貰う」


マミ「できれば暁美さんも――」


ほむら「いいえ、私からは魔法少女について彼女達に教えたい事は何もない」

ほむら「まどか、そしてさやか」


さやか「な、何さ……」


ほむら「絶対に、魔法少女なんかにはならないで。それはあなた達を不幸にする選択だから」


スタスタ スタスタ


さやか「……ほむらの奴、感じ悪いなぁ」


まどか「ほ、ほむらちゃんはきっと――」


沙々「感じ悪くは、ないと思いますよ?」

70: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 15:06:51.21 ID:il5gvdx8o


さやか「えっ?」


沙々「だって、魔法少女って現実、厳しい世界ですし」

沙々「あれだけ人を寄せ付けない、興味なさそうな人間がわざわざ語気を強めて忠告してくれる」

沙々「それはあなた達の事を、彼女が多少なりとも大事に思ってるからこそじゃないでしょうか」


さやか「そ、そうかなぁ」


沙々(何か他の意図がある可能性ももちろんある)

沙々(けれどこの二人の契約を阻止する要因は、一つでも多く確保しておいた方が良いですからね)

沙々(今、仲違いをされるとこっちが困るんですよ)


マミ「…………」





ほむら(やはり、一人新しく魔法少女が加わっただけあって、この時間軸は特殊ね)

ほむら(私一人で動くには、するべき事、わからない事が時間の少なさに比べて多過ぎる)


ほむら(二人の魔法少女、私にとっては相性最悪な拘束系と、もう片方の魔法はまだ分からない)

ほむら(いくら時間停止が強力とはいえ、そういう意味でも一人で事に臨むのは得策ではない、か)

ほむら(仕方がない)




ほむら(佐倉杏子に協力を頼めるか、これから風見野に行ってみましょう)

71: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 15:14:16.19 ID:il5gvdx8o
~☆

ーマミホームー


さやか「このケーキ、凄くおいしいです、マミさん!」

さやか「だよね、まどか?」


まどか「わ、私も凄い美味しいなって思いました」


マミ「ふふ、ありがとう」


沙々(二人は今、私に対してほとんど何も警戒していない)

沙々(それはマミの人徳のおかげか)

沙々(この家のアットホームな雰囲気のおかげか)


沙々(とにかく、二人の心的表層が明瞭かつ容易に覗けるのは幸いです)


沙々(まずは美樹さやかから)

沙々(明るく活発で、潔癖な面のある恋する年頃の少女)

沙々(こういう浮かれた輩は、ついぶちのめしたくなっちゃいますね)

沙々(掌握は一見簡単そうですが、私にとって優れたと思う所が少ないので洗脳はきつそうです)

72: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 15:18:20.21 ID:il5gvdx8o


沙々(次に鹿目まどか)

沙々(得意な物はこれといってなし。自分の無力さへのコンプレックスあり)

沙々(周囲の皆と仲良く幸せに毎日を過ごしていた事以外は、心理的に契約前の私と良く似ています)


沙々(ただし何故か魔法少女の素質がどう見ても一個人のそれじゃない)

沙々(これだけで妬み、洗脳の材料としてはもう十分)

沙々(問題は得意な物のない人間を操って、いったい何に生かせるのか)


沙々(……うーん、手駒候補としては文句なしの役立たず共です)


マミ「優木さんは、他に何かつけたしたい事あるかしら?」


沙々「えっ、特にないですよ」


マミ「そう、それじゃあ今日はこれで解散して、明日から正式に魔法少女体験ツアー開始よ」


まどか「な、何だか緊張しちゃうなぁ」


さやか「大丈夫、まどかは私が守るから」


まどか「えーと、それだともっと不安かなって」


さやか「ちょっと、それどういう意味よ」

73: ◆2DegdJBwqI 2013/10/13(日) 15:25:16.18 ID:il5gvdx8o


沙々「マミさん」


マミ「何?優木さん」


沙々「二人を家まで送ってきます。もう辺りも暗くなり始めてますから」


さやか「うわっ!ホントだ!」

まどか「連絡もなしにこんな時間に帰ったら、ママ怒るかもなぁ……」


さやか「もう手遅れかもしれないけど、今の内に家に連絡しといたら?」

さやか「少しは怒られる度合いがましになるかもよ」


マミ「それじゃあ私も――」


沙々「後で合流しますからマミさんは先にパトロールをしててください」

沙々「誰かを一人でも多く助けるためには、この時間からパトロールしとかないと」

沙々「いくら私でも、魔法少女の端くれですから、二人を送り届けるくらい一人でも大丈夫です」


マミ「……そう、ね」

マミ「優木さん、二人の事をお願い」


沙々「ええ、ドンと任せてください!」エッヘン


沙々(さて、どうやってこの二人の契約を思い留まらせるべきか)

沙々(まずは素直に、こっちの心中の吐露から始めるのが効果的ですかねぇ)

80: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 12:57:49.42 ID:0FjLTLnbo
~☆

ー外ー


沙々「お二人は、魔法少女についてどう思ってますか?」

沙々「このまま願い事を叶えてみるつもり、あります?」


まどか「……うーん、まだちょっと、どうしたいか決まってない、かな?」


さやか「私もそんな感じ」

さやか「何でも一つ叶うけど、代わりに対価を支払わなくちゃならないってのは悩むよね」

さやか「それに値する願いが本当に自分にあるのかどうか……」


沙々「……ふむ、そうですか」

沙々「それじゃあわたし個人の、勝手な事情をあえてここで述べさせて貰うとですね」

沙々「あなた達にキュゥべえと契約されると、途轍もなく迷惑です」


さやか「なっ……!?」


まどか「優木さん……?」

81: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:00:56.67 ID:0FjLTLnbo


沙々「ああ、もちろん勘違いしないで欲しいんですが」

沙々「魔法少女としてあなた達に何か必要な物が欠けてるって事では全くないです」

沙々「ただ、純粋に魔法少女にこれ以上増えられると邪魔なんですよ」


沙々「これを見てください」スッ


さやか「……これは?」


沙々「グリーフシード、魔女の卵です」


まどか「魔女の、卵……」


沙々「どういう事か、一から説明しますね」

沙々「わたし達魔法少女が魔力を使うと、それに応じてソウルジェムが濁ります」

沙々「まあ、普通に生活していても実際は少しずつ濁っちゃうんですけど」


沙々「もちろんソウルジェムが何かついては、ちゃんと理解してますよね?」


さやか「あったりまえだよ。さっきマミさんが教えてくれたばかりだし」

さやか「魔法少女の必須アイテム、でしょ?」

82: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:03:13.95 ID:0FjLTLnbo


沙々「……まあそんな感じです。じゃあ話を続けますよ」


沙々「これを近づける事によって、ソウルジェムの濁りは取り除けます」

沙々「これは魔女を倒した時に、絶対ではありませんが落とす代物です」

沙々「経験上、人をしっかり喰った魔女なら十中八九落とすといって良いでしょう」


まどか「人をしっかり喰った……」ゴクリ


沙々「つまり普段魔法を自由に使うためには、あるいは蔓延る魔女を倒すためには」

沙々「これをどれくらい保有していられるかが重要な訳です」


まどか さやか「……」


さやか「だから、私達が邪魔者ってわけ?」


沙々「その通り」コクリ


沙々「この街には今現在既に三人の魔法少女がいます」

沙々「ここに四人の魔法少女は多すぎます。五人なんて正気の沙汰ではありません」

沙々「本来この街の治安を維持するには二人だけでもう十分なんです」

沙々「三人でも個人的には、それぞれの取り分が減ってしまってちょっと困るくらい」

83: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:06:55.40 ID:0FjLTLnbo


沙々「だからもし、どちらかが魔法少女になりたいと思ったら」

沙々「まずは暁美ほむらさんを、魔法少女の座から引きずりおろしてからにしてください」


さやか「……それって具体的には何をすればいいのさ」


沙々「さあ?魔法少女の活動が出来ないように、殺しちゃうのが一番なんじゃないですか?」


さやか「あんた……!」


沙々「覚悟もない、その時の気まぐれでなろうとするのはやめて下さいって事です」

沙々「さもないと、弱い奴から『間引く』必要が出てきちゃいますから」


まどか さやか「……!」


沙々「…………」

沙々(やれやれ、あんな願いで契約したわたしがこれを言ってるんですからね。お笑い草です)


さやか「マミさんはそんな事、一言も言ってなかったけど?」


沙々「マミさんは甘いですからね」

沙々「自分の利益なんか二の次にする人間だから、それはある意味当然です」

84: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:12:38.90 ID:0FjLTLnbo


沙々「ただわたしがあなた達に決して忘れないで貰いたいのは」

沙々「あなた達の力は今この街を守るのに、これっぽっちも必要ないって事」

沙々「もちろん私とマミさんが死ねば、その席は空く事になりますけど」


さやか「……仮にもしも、どうしても私達に願い事が必要な事情ができたら、どうしたらいいのよ?」


沙々(けっ、あなた達の事情なんて知った事ですか、勝手に野晒しでくたばってしまえ)

沙々(わたしの、グリーフシードが枯渇するかもしれない。それ以外に興味なんてあるものですか)


沙々「そうですね、それは難しい問題です」

沙々「ではそうならないように、今から一つ人生相談でもやってみませんか?」


まどか さやか「「人生相談?」」


沙々「ええ、魔法少女であるわたしの方が、おそらくお二人よりは何かしら問題を解決しやすいでしょう?」


さやか「そんな、私は別に何も……」


沙々「何もない、そう思ってる時も意外と人間、心の底で悩んだりしちゃってる物です」

沙々「そういった小さな悩みは、膨れ上がって顕在化してしまう前に処理した方が良い」

沙々「ちゃちゃっと、魔法で引き出しちゃいますから、何も言わなくても大丈夫ですよ」

85: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:14:04.37 ID:0FjLTLnbo


沙々「さあ、まずは鹿目さん。力を抜いて、そしてこちらの目をじっと見てください」ガシッ


まどか「ええ……、なんか怖いよ優木さん……」


沙々「大丈夫、痛くも痒くもないですよ。魔法ですからまさに安全そのものですし」


沙々(美樹さやかからは表層的な情報以外中々引き出せそうにない)

沙々(となると鹿目まどかから美樹さやかの分も含め、色々の情報を引き出すのが得策)


沙々「…………」ジー


まどか「…………」アセアセ




沙々(『さあ、わたしに心の中を見せてください』)

86: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:15:16.67 ID:0FjLTLnbo
~☆


キュゥべえ『――――――』


沙々(……これは、夢?)

沙々(巨大な逆さの魔女、さながら噂に聞いたワルプルギスの夜)


沙々(……あそこに見えるのは、暁美ほむら?)


キュゥべえ『――――――』


まどか『――――――』


沙々(駄目ですね、非常に興味深い夢ではありますけど)

沙々(ぼんやりとしていてこれ以上掴みどころがない)


沙々(次の情報を見ましょう)

87: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:18:22.42 ID:0FjLTLnbo
~☆


ほむら『ねえ、まどか』


まどか『なあに?ほむらちゃん』


ほむら『あなたにとって、家族や友達、自分の人生って大切なものよね?』


まどか『うん、いきなりどうしたの?』


ほむら『転校してきたばかりでさっき友達になった子にこんな事を言われても、良くわからないでしょうけど』

ほむら『たとえ何が起きたとしても、絶対にそのままのあなたでいて。変わろうだなんて思わないで』

ほむら『さもないと貴女は、全てを失う事になるわ』


まどか『ほむ――』


さやか『おーい!二人とも速く来なよー!私と仁美が待ちくたびれちゃうぞー!』


ほむら『ええ、今行くわ』

ほむら『さあ、行きましょう?まどか』


まどか『う、うん……』


沙々(なるほど、暁美ほむらは本気で鹿目まどかに契約をさせない気でいるようですね)

沙々(もしかしたらある程度、協力関係を結べるかもしれません)


沙々(もう少し、いろいろ見て回っておきましょうか)

88: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:21:06.12 ID:0FjLTLnbo
~☆ 


沙々「…………」


まどか「あの、まだですか……?」ソワソワ


沙々「はい、大丈夫です。ちゃんと診断結果は出ました」


さやか「えー、ホント―?。なーんか、うさんくさいんだよねー」


沙々「……じゃあ、わたしが心を覗いていなければ今知り得ないような情報でも言いましょうか?」


さやか「例えば?」


沙々「家族構成はお父さん鹿目知久、お母さん鹿目詢子。弟に鹿目タツヤ君のいる四人家族、合ってますよね?」


さやか「おぉー!やっぱり魔法だぁー!」


まどか「み、見られた実感がないせいで、胸の奥に不安なもやもやが……」 


沙々「大丈夫ですよ、恥ずかしい秘密とかはちゃんと黙っておきますから」


まどか「えぇっ!?」


さやか「おっ?何かあったの?」


沙々「くふふふ。さー?どうでしょうねぇー?秘密ですー」

沙々(まあそんな役に立たなそうな情報引き出してないですが)


まどか「そ、そんなぁ……」

89: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:23:02.54 ID:0FjLTLnbo


沙々「で、人生相談についてですけどこの際はっきり言っちゃいますね」

沙々「自分に自信がないからって、魔法少女になろうとするのは絶対にやめてください」


さやか まどか「!」


沙々「さっきも言いましたけど、今この街に魔法少女はこれ以上必要ありません」

沙々「そんな状況で考えなしに魔法少女になってもあなたが後悔するだけです」

沙々「私がいなくても、何も変わらなかったんじゃないか……?例えばそんな感じで」


まどか「そんな……」


さやか「ちょっと、その言い方は酷いんじゃないの!?」


沙々「契約しなくても他にも人を助ける方法はあるでしょう?」

沙々「例えばマミさんを支えてあげたりとか」


まどか「マミさん、を……?」

90: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:25:11.01 ID:0FjLTLnbo


沙々「ええ、彼女ああ見えて寂しがりで、友達を欲しがってますからね」 

沙々「魔法少女の事情を知ってる仲間、友達として接してあげるとか」 

沙々「友達なのに接してあげるって表現はちょっとおかしいですけど」


まどか「……でも、私はもっとこう、決定的な――」


沙々「それは色々試してあなたがこれから見つける事です」

沙々「ただしそれは魔法少女になるという道には、少なくとも今の所ないです」


まどか「…………」ズーン


沙々「それじゃあ次は美樹さんの番」


さやか「え゛っ」

さやか「わ、私は遠慮しておこうかなぁー……、なんて……、はは」

さやか(あんなメンタル抉るやり取り見せられてから、ハイそうですかとやる気なんて起きるかって)


沙々「実は情報集めは既に済んじゃってるんですけどね」


さやか「いつの間に!?」


沙々(どうせ覗こうとした所でほとんど覗けないでしょうし)

沙々(表層まで出てきていたという事は、恋は彼女の大きな悩みなはずです)

91: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:26:58.39 ID:0FjLTLnbo


沙々「美樹さんには、好きな男の子がいますね?」


さやか「!」ビクッ


沙々(よし、ビンゴ)

沙々(後は鹿目まどかから収集した情報から推察すればおそらくは……)

沙々「その男の子の名前は……。か」


さやか「……」ゴクリ


沙々(やはりこれもビンゴ、みたいですね)


沙々「上条恭介。天才ヴァイオリン少年の、あなたにとって幼馴染にあたる人」

沙々「現在は交通事故で入院してリハビリ中」

沙々「魔法ですから、どう言い逃れした所で無駄ですよ」



さやか「……ははは、どうしてわかっちゃったのかなー」

さやか「まどかみたいな事はされてないはずなのに、おかしいなー」


さやか「それで私には、どんなきつい言葉が待ってるわけ?」

92: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:28:56.69 ID:0FjLTLnbo


沙々「そうですね。まどろっこしいのは嫌いなので今度も直球で言わせて貰います」

沙々「彼の腕を治そうとなんかするよりも先に、あなたにはするべき事があるんじゃないですか?」


さやか「…………何よ、それ」ギリッ






沙々「決まってるじゃないですか、告白ですよ、告白」





さやか「ふぇっ!?」

さやか「い、いきなり何言って――」



沙々「あなたは長い事彼に片思いし続けてきた。違いますか?」


沙々(恋をしているという情報が、私が読み取れるほどに表層に出てきている)

沙々(つまり彼の負傷がその悩みを増幅しているにしても、恋の方が悩みの程度としては深刻)


さやか「そ、それはそうだけど……」

93: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:31:26.59 ID:0FjLTLnbo


沙々「彼が事故に遭う前、あなたは一度だって告白に踏み切れましたか?」

沙々「これからだってそう、彼の怪我が治ったらあなたは告白に踏み切れますか?」

沙々「ヴァイオリンに没頭してる彼の邪魔をしたくないって、また逃げ出してしまうんじゃないですか?」


沙々「今この時が!あなたが想いをぶつけられる!次あるかわからないチャンスなんですよ!」

沙々「自分の想いに嘘をつき続けるのは、もう終わりにしませんか!」


沙々(というか鹿目まどか、美樹さやかの事情に精通し過ぎでしょう……)

沙々(いくらでも判断材料がおおまかな記憶の中に転がってますよ)

沙々(昔から恋愛相談でもしてたんでしょうか?便利だから助かりますけど)


さやか「でも、恭介は今、自分と闘ってる訳だし、私に告白なんかされたら迷惑――」


沙々「そこをどうにかするのが、わたしの、魔法少女としての役目です!」ガシッ


さやか「!」ビクッ

94: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:34:03.21 ID:0FjLTLnbo


沙々「告白もせずにずっとくよくよ悩み続けて、それでも彼に何かをしてあげたい!」

沙々「そんなのは都合のいいまやかしです!」


沙々「いいですか?わたしが絶対にあなたが告白できる状況を作り出します!」

沙々「他人の腕をどうするよりも先に、まずは自分の問題を片付けなさい!」


沙々「わかりましたか!?」


さやか「は、はいっ!」


まどか(優木さん、カッコいい……!)


沙々(これは間違いなく、帰ったら布団の中で悶絶するパターンの奴ですね)

沙々「とりあえず数日かけて、手筈が整ったら教えますから待っててください」


さやか「は、はい」

95: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:35:17.83 ID:0FjLTLnbo


沙々(上条恭介をどうにかする必要があります)


沙々(美樹さやかを彼と恋仲であるという状況に持ち込む)

沙々(彼女にとって最も深刻な悩みが解決された)

沙々(それによって彼の腕が治ってないという根本的な問題から目を無理やり背けさせる)


沙々(もし仮に彼女の告白が失敗した、あるいは腕を治すために契約を決意した)



沙々(その場合にはマミ達との間で、あまり危ない橋は渡りたくないんですが)




沙々(仕方ないのでこっそり美樹さやかを闇討ちして、魔女に喰わせちゃいましょう)

96: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:38:01.72 ID:0FjLTLnbo
~☆


スッ…


まどか さやか 沙々「!」


キュゥべえ「やあはじめまして、美樹さやか、それに鹿目まどか」

キュゥべえ「沙々も元気そうだね」


さやか「うわっ、何こいつ!ぬいぐるみが動いてる!」


まどか「……もしかして、あなたがキュゥべえ?」


キュゥべえ「そうだよ、ボクの名前はキュゥべえ」

キュゥべえ「キミ達二人にお願いがあって来たんだ」


キュゥべえ「ボクと契約して――」


沙々「やあ、丁度いい所で姿を見せましたね、キュゥべえ」

沙々「ちょっと聞きたい事があるんでこれから付き合って貰ってもいいですか?」


キュゥべえ「それならボクの言いたい事が済んでから――」


沙々「二人とも、今日はここで別れましょう。もう家は近いんですよね?」


まどか「えっ、あっ、うん」


さやか「……まあ、いいや。そいつの事もまた聞かせてね。気になるし」

97: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:39:07.94 ID:0FjLTLnbo


沙々「こいつについて話す事なんてほとんどありませんよ」

沙々「さしずめ営業マンみたいなものです、これは」

沙々「さあ、行きますよ、キュゥべえ」ヒョイッ


キュゥべえ「やれやれ、チャンスだと思ったんだけど」

キュゥべえ「まあいいや、二人とも、また会おうね」


まどか「う、うん」


沙々「さようならお二人さん」


まどか「バイバイ優木さん」

さやか「じゃあね」


テクテク テクテク


沙々「…………」






ほむら「…………」

98: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:45:56.60 ID:0FjLTLnbo


ほむら(あの状況で撃つ訳にもいかなかったし、助かったわ)

ほむら(彼女ら二人に警戒されるような行動はなるべく避けたい)

ほむら(もっとも今接触を阻止した所で、もはや効果はあまり見込めないけど)


??「あれがアンタの言ってた、見滝原の新しい魔法少女って奴か」


ほむら「ええ、そうよ」

ほむら「でもこれで彼女には一つちょっとした貸しができた」

ほむら「今日の所は見逃してあげて欲しい」


??「ふんっ」

??「アンタがそう言うなら、今日の所は見逃しておいてやるよ」

99: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:48:21.85 ID:0FjLTLnbo
~☆


沙々「キュゥべえ、私の邪魔をしないで貰えます?」


キュゥべえ「キミだってさっきボクの邪魔をしたばかりじゃないか」


沙々「だってあの二人に契約されたら困っちゃいますし」


沙々「それより、あなたに聞きたい事があります」

沙々「暁美ほむら、という魔法少女はずばり何者ですか?」

沙々「変な魔力の波長をしてたり謎が多いですけど」


沙々(それと鹿目まどかのあの夢……)


キュゥべえ「さあ、わからないよ」


沙々「わからない?仮にもあなたが契約した相手でしょう?」


キュゥべえ「契約したとも言えるし、そうでないとも言える」


沙々「どういう事です?」


キュゥべえ「彼女は極めつけのイレギュラーというわけさ」

100: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:51:35.99 ID:0FjLTLnbo


キュゥべえ「もっとも他に何か知っていたとして」

キュゥべえ「ボクからキミに提供する情報には限りがあるだろうけどね」

キュゥべえ「ボクの立場はキミ達のどちらにも属さない中立であるべきだ」


沙々「なるほど、そうですか……」


沙々(キュゥべえすら、実態を把握していない魔法少女)

沙々(うーん、胡散臭いです)


キュゥべえ「ただしそんな未知数の彼女に、何が起きても対抗できる画期的な方法がある」


沙々「なんです?それ」


キュゥべえ「鹿目まどかさ」

キュゥべえ「彼女が『正しい』願いで魔法少女になれば」

キュゥべえ「間違いなくどんな魔法少女にも負けないだろう」


キュゥべえ「なんならキミが操ってしまえば良い」

キュゥべえ「キミにとっても、悪い話じゃないだろう?」

101: ◆2DegdJBwqI 2013/10/16(水) 13:54:06.57 ID:0FjLTLnbo


沙々「バカ言ってんじゃねーですよ」

沙々「わたしには丁度巴マミくらいがお似合いなんです」

沙々「いくら、私の能力が優れた者の洗脳だからといって」

沙々「この世の何もかもを無制限に使役できるわけではなありません」


沙々「身の程を弁えて行動するべきです。蛮勇は身を滅ぼします」

沙々「あんな化け物じみた素質の魔法少女を操ろうとして、失敗したら取り返しがつきませんよ」


キュゥべえ「まあ、キミがそう言うならボクには他に言う事はない」


沙々「…………ねえ、キュゥべえ」




沙々「――素質の高い魔法少女と契約すると、あなたにどんなメリットがあるんですか?」


キュゥべえ「魔女がよりスムーズに処理されるようになる。違うかい?」


沙々 QB「…………」


沙々(本当に、いけすかない、ペテン師野郎ですねこいつは……)

沙々(お前らの心の中にそんな事への関心がない事はこっちは百も承知なんですよ)


沙々(そのキュゥべえが見てわかるくらい鹿目まどかに執着している)

沙々(いったいそこに何が……)

107: ◆2DegdJBwqI 2013/10/19(土) 16:37:55.35 ID:MQWeh3jjo
~☆

ーマミホーム 寝室ー


マミ「今日は色々あって疲れたわね」

マミ「おやすみなさい、優木さん」


沙々「…………」


沙々「あのですね、マミさん」


マミ「なあに?」


沙々「後輩二人、まどかやさやかについて、どう思ってますか?」


マミ「どう思うって?」


沙々「あなた個人の意見として、彼女らが魔法少女になるべきではない、とは思いませんか?」


マミ「随分といきなりの質問ね」

マミ「もちろん、私個人としては、そう思ってるわよ」


沙々「じゃあなんで、魔法少女体験ツアーなんてやるんです?」

108: ◆2DegdJBwqI 2013/10/19(土) 16:51:52.67 ID:MQWeh3jjo


マミ「だって、わけもわからないまま誰かに何かを強制されたら、あなただって嫌でしょう?」

マミ「暁美さんにも言ったけど、あの子達にだって話を聞く権利、それに選ぶ権利はあるわ」


マミ「こちらの都合や意見がどうあれ、押さえつけるようにしてはダメよ」

マミ「ちゃんと自分で色々考えて、自分でどうするかを判断させてあげなきゃ」


沙々「でもそれだけじゃ、契約をやめようだなんて考えるはず――」


マミ「そういうのは、あなたがやってくれるでしょ?」


沙々「え?」


マミ「私達両方が意思を無理やり押さえつけるような事をしたら」

マミ「あの子達も意地を張ってしまうかもしれない」


マミ「片方がなるべく優しく受け止める。片方が現実を厳しく告げて歯止めになる」

マミ「そんなやり方のほうが、ずっと効果的だと思わない?」


マミ「だとしたら契約をやめるよう諭すのは、優木さんが適任だと思う」

マミ「プライドや人の顔色を窺うような意識ばかり高くて、物を人に強く言えない」

マミ「私にはそういった性格上の欠点があるもの」


マミ「実際優木さん個人としては、彼女達の契約を直接止める気満々でしょ?」

109: ◆2DegdJBwqI 2013/10/19(土) 16:55:22.92 ID:MQWeh3jjo


沙々「……まあ、確かに魔法少女にはならない方が良いって」

沙々「先ほど既に、彼女らを家に送る途中伝えてきましたよ」


マミ「ほら、現状私の予想通り役割分担が上手くいってるじゃない」


沙々「……つまりマミさんは最初から、私が自ら貧乏くじを引くよう動いてたって事ですか?」


マミ「そんな、それは心外だわ優木さん」

マミ「私はただあなたがきっとこういう風に動くだろうなって考えて」

マミ「その上であなたの事を信頼しただけなのに」


沙々「…………ちぇっ、もういいですよ。寝ますから、わたし」


マミ「そう、それじゃ改めてお休みなさい優木さん」


沙々「おやすみなさい」



マミ 沙々「……」

110: ◆2DegdJBwqI 2013/10/19(土) 17:00:18.65 ID:MQWeh3jjo


沙々「…………」


沙々「…………っ、」


沙々「――――っ!」モゾモゾ

沙々(んあああああああ!ムカツキますうううう!)


沙々「――――っ!!」ジタバタ


沙々(自分が良いように人を使うのは大好きですけど)

沙々(誰かに手玉に取られるのは本当に我慢ならない!)


沙々「――――!!!」ジタバタ


沙々(うあああああああああああ!悔しいいいいいい!)



マミ「zzzzzzzzz」クー クー

111: ◆2DegdJBwqI 2013/10/19(土) 17:02:21.40 ID:MQWeh3jjo
~☆

ーマミホーム 朝ー


ガチャ

マミ「優木さん、いつも通り途中まで一緒に行きましょうか」


沙々「…………」


マミ「学校行く、わよね?」


沙々「……えーっとですね、まあ、それはそうなんですけど」

沙々「その前に一つ、今の内に言っておきたい事があります」


マミ「あら、何かしら?」


沙々「今日の魔法少女体験ツアー、わたしは参加できません」

沙々「ちょっと野暮用があるので」


マミ「どうして?」


沙々「どうしてって、ちょっと野暮用があるからですよ」


マミ 沙々「…………」

112: ◆2DegdJBwqI 2013/10/19(土) 17:03:58.84 ID:MQWeh3jjo


沙々「それであの、ちょっと頭触ってもいいですか?」


マミ「えっ?」


マミ「まあ、別に構わないけど」


沙々「ありがとうございます」

沙々「じゃあ、失礼して」ヨシヨシ




沙々『――っ!』グワングワン




沙々「…………ふぅ」ホッ


マミ「事情はよくわからないけど、終わった?」


沙々「ええ、どうにか」

113: ◆2DegdJBwqI 2013/10/19(土) 17:09:27.90 ID:MQWeh3jjo


沙々(あ゛ぁ゛ー、頭がクラクラしますよぉ……)

沙々(巴マミの視界をこっそり盗み見る)


沙々(午後、美樹さやかの動きを把握したり、とにかく今は何かと情報が必要です)

沙々(でも、二つの視界を同時に処理するのは、何度やっても慣れませんねぇ)

沙々(ううっ……、気持ち悪っ……)


沙々(できれば会話の盗聴もしたいんですけど)

沙々(これ以上感覚を下手に共有するとよくない)

沙々(今度はこっちの行動そのものに支障が出ちゃいますからね)


沙々(やっぱりやめておきましょう)


沙々「よし、じゃあ行きましょうか」


マミ「ええ」

マミ「晩御飯は要るわよね?」


沙々「ああ、それはもちろん。多分遅くなっちゃうとは思いますけど絶対です」

117: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 11:45:37.49 ID:o7KYiHWro
~☆

ー病室前ー


恭介「……どちら様ですか?」


沙々「優木沙々って言います。はじめまして上条さん」


恭介「えっと、どういったご用件ですか?」

恭介「親しい人達の面会以外は今の所全部お断りしてるはずなんだけど」


沙々「美樹さやかって子の事、もちろん知ってますよね?」


恭介「うん。家族ぐるみの付き合いがある僕の幼馴染だよ」


沙々「その子にあなたの事を聞いて、力になれるんじゃないかって思いまして」


恭介「…………」


恭介「ははは、じゃあ君は医術の心得があると言うのかい?」

恭介「でもそれは無駄だと思うよ」

恭介「何しろここの医療技術は――」

118: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 11:48:12.32 ID:o7KYiHWro


沙々「まあ、ある意味では医術と言えるのかもしれませんね」

沙々「ただしわたしはあなたの怪我を治しに来たわけではありません」

沙々「わたしが得意なのは催眠術の類ですし」


恭介「催眠術……?」


沙々「ええ」


沙々(天才ヴァイオリニスト少年上条恭介)

沙々(ちょっとここに来るまでの間に経歴を調べたりもしましたが)

沙々(それがもはや過去の栄光だったとしても、わたしが嫉妬するには十分です)

沙々(加えて爽やかイケメンなのも癪に障りますね)


沙々「こうして病室に籠っているとイライラしたり」

沙々「どうしようもない嫌な気分になったりする事もあると思います」

沙々「だけどそういう気持ちをそのままにしておくといつか爆発してしまいかねない」


沙々「そういう悪い気持ちとなるべく早い段階で向き合えるようにするのが」

沙々「本来の催眠術の役目だと思うんです」

119: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 11:55:12.84 ID:o7KYiHWro


沙々(本音は美樹さやかをどう思ってるかチェックしたいだけですけど)


恭介「いや、せっかくの所悪いんだけど、そういうのは素人がやらない方が……」

恭介「君の催眠術が役に立たないだろうって言ってるわけじゃないよ」

恭介「ただ……」


沙々(……あー、愚痴愚痴まどろっこしくて面倒な人ですねー)


沙々「じゃあ右手を、動かしてみてくれます?」


恭介「?」


沙々「いいから、ほら、はやく。怪我してる方の腕じゃないから大丈夫でしょう?」


恭介「まあ、いいけど。…………あれっ?」


沙々「動かないでしょう?」

沙々「わたしがあなたの気付かない内に、催眠術をかけたからですよ」


恭介「うぐぐぐぐぐぐ……」グググ

恭介「ダメだ、全く動かないや」


沙々「これで少しはわたしの実力、信用してもらえました?」


恭介「へぇ……。面白いんだね、催眠術って」

120: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 11:57:15.28 ID:o7KYiHWro


恭介「どうして……、あー、えーと」


沙々「優木沙々です」


恭介「そう、優木さんは僕の力になろうって思ってくれたの?」

恭介「さやかに僕の事を聞いたってのはさっき言ってたけど」


沙々「そんなの決まってるじゃないですか」

沙々「彼女があなたの事を気にして、落ち込んだりしてたからですよ」


恭介「さやかが……?」


沙々「ええ、彼女にとってあなたはとても大切な人なんでしょうね」

沙々「わたしは最近彼女と知り合ったばかりですが」

沙々「それでも彼女はわたしの大切な友達の一人です」


沙々「そんな友達の悩みのタネを、少しでも解消してあげようとする」

沙々「別に不思議な事じゃないでしょう?」


恭介「そっか。優木さんって、凄く良い人なんだね」


沙々「くふふ、よく言われますよ」

沙々「さて、そろそろ始めましょうか」

121: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:01:07.75 ID:o7KYiHWro
~☆


沙々(外見は至極穏やかでしたが、心の内はこんなにも荒れ狂ってたんですねぇ)

沙々(こんな心理状態じゃとても恋愛感情なんて意識できない)

沙々(不本意ですけど真面目に治療しますか)


沙々(…………はぁ)


沙々(それで美樹さやかに対する好感度はというと……?)

沙々(大事な幼馴染。お見舞いにしげく通ってくれる優しい奴)

沙々(でも、その優しさが今の自分の境遇をはっきりさせるからかえって辛い)


沙々(……あっ、全く異性として意識されてませんね、これ)


沙々(今の所、恋愛感情を抱いてる相手が美樹さやかを含め誰もいない)

沙々(けれど年相応と言えるかはわからないけれど、恋愛に対する興味はある)

沙々(状況は絶望的、という程ではどうやらなさそうですね)






沙々(じゃあさっそく、美樹さやかの  い夢でも見せて、嫌でも意識させてみますか)

122: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:03:00.49 ID:o7KYiHWro
~☆

ー病室ー


沙々『はい、それじゃあ目を覚ましてください』


恭介「う、うぅん……」

恭介「ふぁあー……」ゴシゴシ


沙々「体調はどうですか」


恭介「……うん、ばっちりだよ」

恭介「事故に遭ってから感じた覚えのない清々しさだ」

恭介「まさか僕も、自分がこんなに色々抱え込んでいたなんて気付かなかった」


恭介「もっとも、何が解消されたのかいまいち良くわからないのが、唯一もやもやするけど」


沙々(それはまあ、無意識の領域でのことですからね)


沙々(ていうか今、美樹さやかのムフフなイメージで頭が一杯なはずなのに)

沙々(よくもそんな涼やかな顔ができますね)

沙々(もうちょっとどぎついのを見せておくべきだったか)


沙々(今後の課題です)

123: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:06:28.51 ID:o7KYiHWro


恭介「この清々しい気分はいつまで続くのかな?」

恭介「きっといつまでも続くと言う物では、ないんだよね?」


沙々「そうですね、定期的に治療は続けた方が良いと思います」

沙々「ですがわたしとしては、あなたに一々会いに来たりするのが正直面倒です」


沙々「結局はこれって、美樹さんのためにやった慈善的行為ですし」

沙々「あなた本人には特別興味ないので」


恭介「はは……、結構きついこと言うんだね」


沙々(何よりも美樹さやかとここで鉢合わせたくない)

沙々(わたしが何かをしたというのを必要以上に意識させるのは好ましくない、面倒臭い)

沙々(あまつさえ、わたしが上条恭介を狙っていると勘違いされる最悪のパターンすらありうる)


沙々(幸い今日は、巴マミの視界に彼女が収まっている間に面会を終わらせる事ができた)

沙々(でもそもそも、体験ツアーを終えてからこんな遅くに面会に来る事は普通ないでしょう)


沙々(……もしかして盗み見る必要は特になかった?)


沙々(いや、魔法少女体験ツアーの雰囲気を遠くからある程度把握できたし、念には念を入れて、ですね)

124: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:09:41.84 ID:o7KYiHWro


恭介「だったらどうすればいいんだろう?」

恭介「僕としては普段もこういう精神状態でなるべくありたいんだけど」

恭介「不快感を心に秘めたままじっとしているのは、やはり気持ちの良い物ではないからね」


恭介「誰かにも不快な思いをさせてしまう事が、もしかしたらあるかもしれないし」


沙々「ですからこれを渡しておきます」スッ


恭介「……これは?」


沙々「俗に言うタリスマン、ですね」

沙々「これを絶えず身につけてさえいれば、ある程度心の安定を保っている事ができるはずです」


沙々(元々は巴マミを離れた場所から操る媒介を用途として作った物)

沙々(今となっては魔力のパイプを確立したので、巴マミ相手にはもはや必要ない)

沙々(しかしこれを男に、しかもタダでプレゼントするのは嫌ですねぇ……。作るのも非常に手間ですし)


沙々「これはレンタルですからね」

沙々「必要なくなっただろうと判断したら、返して貰いに来ますから」

沙々「わかりましたか?」


恭介「わ、わかったよ」

125: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:30:59.99 ID:o7KYiHWro


恭介(こ、こんな見るからに怪しげな物、本当に効果があるんだろうか?)

恭介(いや、でも彼女の催眠術は信じられないくらい効いた)

恭介(一度騙されたと思って、しばらく付けてみようか)


沙々(こんな感じで彼の心を覗きながら)

沙々(リラックスを与え続けタリスマンを手放なさないようにして)

沙々(眠った時に美樹さやかと夢の中で性的に絡ませる)


沙々(  い事と恋愛感情は切っても切れない関係にある)

沙々(恋愛感情のような物を次第に彼も感じ始める事でしょう)

沙々(そして頃合いを見て美樹さやかに告白させる)


沙々(うーん、時間も浪費しない実にパーフェクトな計画です)


沙々「もうこんな時間ですし、いい加減お暇させていただきましょうかね」


恭介「あっ、うん、本当にありがとう、優木さん。さようなら」

126: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:32:51.80 ID:o7KYiHWro
~☆

ー外ー


沙々(さて、ツアーも終わっちゃったみたいですけど、巴マミと合流でもしますか)

沙々(……おや、あれは?)


仁美「…………」テクテク


沙々(鹿目まどかの記憶を覗いた時に見ました。たしか志筑仁美、でしたか)

沙々(わたしの通う学校にぴったりの、非のつけ所が無いお嬢様ですね)

沙々(いや、むしろわたしの学校の中ですら浮くくらいの純粋のお嬢様って風格です)


沙々(多分今はお稽古帰りなんでしょう)

沙々(疲れていても、それは顔を出さずに優雅に歩みを進める)


沙々(あ゛ー惚れ惚れするくらいの強者の佇まい。腸煮えくりかえりますよー)


沙々(どうせ情報はあればあるだけ良いんです。ちょっとちょっかいかけてみますか)


沙々「あのぅ、すいません、志筑仁美さんですよね?」


仁美「はい?」


沙々「わたし、鹿目さんと美樹さんの新しい友達なんですけどね――」

127: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:34:35.80 ID:o7KYiHWro
~☆


沙々「…………」


沙々(いやー、まさかあの女も上条恭介に想いを寄せているとは)

沙々(普通に戦ったらポテンシャルからして、美樹さやかに勝ち目ないじゃないですか)

沙々(ここは幼馴染のアドバンテージを生かしてどうにか……)







??「おい、そこのアンタ」


沙々「はい?」クルリ


杏子「アタシは佐倉杏子。よろしく」

杏子「こっちとはもう知りあってんだろ?」


ほむら「…………」


沙々「は、はい。こんばんは」

128: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:39:59.50 ID:o7KYiHWro


沙々(うわぁ……)

沙々(どう見ても同業者、それも格上じゃないですか)


沙々(能力はというと……)

沙々(わたしとは少し違う魔力の波長だけど、おそらく精神系)

沙々(これじゃ普通の手段じゃ大なり小なり洗脳は通らない)

沙々(わ、わたしにとって最悪の相手です)


沙々(暁美ほむら、厄介なのを連れてきやがって……)

沙々(あれ?)

沙々(――佐倉?)

沙々(その名前、どこかで聞き覚えがあるような……?)


沙々「あ、あの、それで一体、何の御用ですか」


杏子「あのさ、ちょっとアンタと話したい事があるんだよ」

杏子「ついてきな。ここだと万が一の場合、人目につく可能性がある」

杏子「嫌だとは、言わせないよ?」ニヤリ

129: ◆2DegdJBwqI 2013/10/20(日) 12:41:09.12 ID:o7KYiHWro


沙々「…………」


沙々(あちゃー、もっと警戒して夜道は歩いとくんでした)

沙々(美樹さやかなんかの心配してる場合じゃなかったみたいですね)


沙々「どこまでですか」


杏子「……」ガシッ


沙々(いたっ!)


杏子「……」テクテク

ほむら「……」テクテク

沙々「……」テクテク




沙々(わたし、五体満足で家に帰して貰えるんでしょうか……?)

139: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 17:50:48.48 ID:QR7lmwlqo
~☆


杏子「よし、ここらで良いだろ」ヘンシン


沙々 ほむら「……」ヘンシン


ほむら「……」スチャッ


沙々「!」ビクッ


沙々(日本の街中で、本物らしき拳銃を向けられる日が来るとは)

沙々(しかもここ、この街で一番人が寄りつかない場所じゃないですか)

沙々(残念ながら、何の気兼ねもなくお話、できちゃいそうです)


沙々(……うん?おかしいですね)


沙々(引っ越してきたばかりの暁美ほむらが、こんな場所を知っているものでしょうか?)

沙々(それに佐倉杏子の街の歩きぶり、どうもここら近辺に慣れ親しんだ感が……)


杏子「それじゃまず、最初の質問だ。質問には全部正直に答えろよ」

杏子「巴マミと組んでから、どれくらいになる?」


沙々「組んでからですか……、大体一年くらいだと思います」

140: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 17:53:28.22 ID:QR7lmwlqo


杏子「ふーん……」

杏子「次に、巴マミの使い魔も駆除するやり方については、どう思ってる?」


沙々「どう思ってるって……、今までは特に気にしてませんでしたね」

沙々「ここの魔女は質が良いし量も豊富です」

沙々「使い魔を駆除していても、グリーフシード不足の危険はこれまでありませんでした」


沙々「あなたがここを、これから新しく狩り場にする。という事なら変わってくるでしょうが」


杏子「……あいつのやり方に、完璧に賛同してる訳じゃないのか」


沙々「賛同とかそういう基準でその問題を捉えてはいませんね」

沙々「使い魔を放っておく事で失われる人命の数々」


沙々「正直どうでもいいって考えてます。でもマミさんがここの主ですからね」

沙々「その方針に従っているまでです」


杏子「なんだ、意外と話がわかりそうな奴じゃん」

141: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 17:56:44.73 ID:QR7lmwlqo


沙々「……では逆に、こちらからいくつか質問してみても構いませんか?」


杏子「何?言ってみなよ」


沙々「あなたは、この街に何をしに来たんですか?」

沙々「縄張りを奪うのが、目的ですか?」


杏子「……そうだね」

杏子「ほむらにある目的のために雇われて来たっていうのが、アタシがここにいる理由かな」


沙々「雇われた?」


杏子「ああ」


ほむら「…………」


沙々(暁美ほむらは一応自由に、この街を歩き回って良いと言う事になっている)

沙々(あのまま生活していても特に支障はないはずです)

沙々(ほむらの目的はグリーフシードの独占?それとも何か別の目的が?)

142: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:00:54.42 ID:QR7lmwlqo


沙々「……つまりそれを受けると、あなたにとって何かしらの利益があると」


杏子「当然だね」


沙々「元々は自分の縄張りも持ってるんですか?」


杏子「隣町の風見野を縄張りにしてる」

杏子「それじゃあそろそろ今度はこっち――」


沙々「待ってください」


杏子「何?そろそろこっちに質問の主導権を渡してよ」


沙々「いえ、もう一つだけ伺いたい事があります」

沙々「暁美さんとわたし、あなたが与する側を選ぶ理由はなんですか?」


杏子「理由?」


沙々「だってあなたにとっては、わたしも暁美さんも、両方得体が知れないはずでしょう?」


杏子「そりゃ依頼を受けたのがほむらだったからさ」


沙々「そう、でしょうか……?」


杏子「そうなんだよ。変な所を疑われても困るんだけど」

杏子「じゃあ、今度こそこっちの――」

143: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:08:54.75 ID:QR7lmwlqo


沙々(うーん、何かがもやっとしてますねー)

沙々(そもそもなんで、こんな形でわたしと接触するんでしょう?)

沙々(銃は向けられていますが、形ばかりで襲おうとする気配が感じられない)


沙々(巴マミとわたしがセットでは、話せない話がある?)

沙々(巴マミとわたしの意見の一致具合を気にしているようでした)

沙々(わたしを仲間に引き入れて、縄張りの乗っ取りをより簡単に行う?)


沙々(いや、何か違う所が頭に引っかかります)

沙々(佐倉、巴マミ、この二つが妙に引っかかるのはどうして……?)


マミ『佐倉さんはね、あなたとこうして知り合う前に魔法少女のコンビを組んでた子なの』


沙々(あっ……!)


杏子「――おい、こっちの話聞いてんのか。黙ってないで質問に早く答えてくれよ」


沙々「……大事な情報をたった今、思い出しました」


杏子「大事な情報?」

144: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:14:07.97 ID:QR7lmwlqo


沙々「佐倉杏子さん」

沙々「あなた、マミさんと一年くらい前まで、コンビ組んでた事ありますよね?」


ほむら 杏子「!」


沙々「あなたの表向きの目的、きっとそれは色々あるんでしょうけど」


沙々「もしかしたら本心は、マミさんが目的なんじゃないですか?」

沙々「それも自分から見滝原に顔を見せるって事は、できるなら仲直りがしたい」


杏子「なっ……!?」


沙々「だっておかしいじゃないですか」

沙々「既に自分の縄張りがあるのに、今更一年経ってマミさんと争いに来るなんて」


沙々「わたしとこうして話したのは、仲直りの間を取り持ってもらううため?」

沙々「いや、それともマミさんと今組んでるのがどんな魔法少女かを、見たかったんですか?」


杏子「ぐっ……」

146: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:18:43.97 ID:QR7lmwlqo


沙々(反応見た所、幸い図星のようです)

沙々(うーん、この喉の小骨が取れたような感じ、気持ちいいですねー)

沙々(こうして自分より強い相手の弱い所を、ネチネチ責めるのも楽しいです)


杏子「はぁ?何言ってんの?そんな訳ないじゃん」

杏子「あっちの魔女、グリーフシードの量に満足できなくなったんだよ」


沙々 杏子「…………」


杏子「……クソっ、あー、イライラする!」

杏子「こういう大人しいやり方はやっぱり性に合わないわ」

ヒュッ

杏子「やっぱり、魔法少女なら魔法少女らしく、試してやるよ」ブンッ


杏子「ほら、得物を構えな。特別に、優しく遊んでやるから」ニヤリ


沙々「え゛っ」

沙々「はは、あの……、その……」


沙々(あっ、これ完全に藪蛇ですね。調子にのり過ぎました)

147: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:20:35.32 ID:QR7lmwlqo


ほむら「…………やれやれ」


沙々(そうそう、あなたが彼女を止めてくれればこのまま丸く――)


ほむら「あまり怪我はさせないようにね」


杏子「ああ、わかってるよ」


沙々(止めてくださいよ!そこは止めてくださいよ!)

沙々(ていうかせめてその銃は下ろしてくださいよ!)


杏子「…………」

杏子「武器無しって事で、良いんだな?」





沙々「……あー、ハイハイわかりましたよ、武器だしますよ!」

沙々「どうかお手柔らかに!」




沙々(こうなりゃヤケです)

沙々(適当に戦いの中で隙を見つけて逃げましょう)

沙々(再度捕まってしまった時の事は考えない、考えない……)

153: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:38:32.51 ID:QR7lmwlqo
 

~☆


ブンッ

ガキィン

沙々(無理無理無理無理無理無理)


ダッダッダッ


沙々(逃げる隙なんて、全くないじゃないですか……!)


ブンッ

ガキィン


沙々「ぜえ……、ぜえ……」


杏子「おいおい、こんなワンパターンな槍の突きの対応で息切れかよ」

杏子「いくらなんでも弱過ぎだろ」


杏子「これでいつも巴マミとのコンビが務まってるの?」

杏子「はは、無理無理」

杏子「足を引っ張りまくってんだろうな、どうせその弱さじゃ」


148: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:28:43.15 ID:QR7lmwlqo


沙々「――――」ギリッ


沙々(自分がどん底レベルに弱いって嫌というほど理解しているだけに)

沙々(強い奴に見下されると、我慢できないくらい腹が立ちますね……)


杏子「何さ、少しはやる気になった?」


沙々「わたしが、マミさんの足を引っ張ってるって、どういう意味ですか?」


杏子「どういう意味?言ったまんまの意味だよ」

杏子「あいつの隣にお前みたいな弱い奴の居場所はないって事さ」


沙々「くふふ、まるでマミさんが、完全無欠の超人みたいな言い方ですね」


杏子「……実際そうだろ」

杏子「アイツ以外に、正義の味方をやるのにふさわしい奴なんて、アタシは見た事ない」

沙々(暁美ほむらが佐倉杏子と二人で組んでいるからか、いつもよりも警戒を解いている)

沙々(今だったら――)

沙々「あなた、マミさんの上辺しか見た事がないんですか、空しいですねぇ」

沙々「道理で今更になっておめおめと見滝原に顔を出せる訳ですよ」

149: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:29:55.10 ID:QR7lmwlqo


杏子「…………なんだと?」


沙々「居場所、なんてちっぽけな概念、私とマミさんの間には必要ありません」

沙々「だってわたしにとってのマミさんは家族」

沙々「言うなれば、お姉ちゃんみたいに思ってますから」


沙々「マミさんとわたしはずっと一緒です」

沙々「彼女を置いて行った、負け犬とは違いますよ」


杏子「…………」ピタッ


沙々(動きが、止まった……?)


杏子「――――」ボソッ


沙々「……?」




杏子「負け犬だと……?」ギリッ


杏子「ふざけんなよてめぇっ!」ダッ!

150: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:31:37.18 ID:QR7lmwlqo


沙々(ちょ、思ってた以上に挑発効き過ぎ――)


ダァン!


ほむら「!?」


杏子「がっ……!」

杏子「いってぇ……」グラッ


沙々(よし、脇腹に、当たった!)

沙々(ま、間に合ってよかった……)ドキドキ

ダッダッダッダッ


杏子「あっ!待ちやがれ!」ズキッ

杏子「……つぅー」


ほむら「きょ、杏子、大丈夫?」

151: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:33:16.85 ID:QR7lmwlqo


杏子「おい、一体何のつもりだ!お前が狙うのは優木沙々だろうが!」

杏子「ていうか何で撃った!念のため銃を向けとくだけって話だっただろ!」


ほむら「わ、私じゃないわ」アセアセ

ほむら「う、腕が勝手にあなたの方を向いて、そのまま引き金を指が……」アセアセ


杏子「何をバカな事を言って……」


杏子「!」


ほむら「本当よ、嘘じゃ――」アセアセ



杏子「いいや、前言撤回。ほむらの言う事、信じるよ」



ほむら「えっ……」


杏子「アンタの中から優木沙々の魔力の残滓を感じる」

杏子「どうやらアイツ、アタシとはタイプが違うけど、心に干渉するタイプの魔法少女らしい」

152: ◆2DegdJBwqI 2013/10/21(月) 18:35:03.25 ID:QR7lmwlqo


杏子「だからアンタが操られてやったんだってのは、見たらわかるよ」


ほむら「心に干渉……」

ほむら「彼女とこの一年、一緒にいた巴マミは無事なのかしら?」


杏子「さあね、実物を見ない限りどうとも言えない」


ほむら 杏子「…………」


ほむら「……どう?走って沙々を追いかけられそう?」


杏子「ああ、問題ないよ。かすり傷だ」





杏子「――優木沙々」

杏子「あの弱さで、アタシに一矢報いた事だけは認めてやる」



158: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:15:09.02 ID:K7bkgFJYo
~☆


沙々「ぜぇ……、ぜぇ……、ぜぇ……」ダッダッダッ


沙々(巴マミの視界に接続しておいたのは僥倖でした)

沙々(それを頼りにして、合流さえすればまだ……)

沙々(あと、もう少し――)


ガッ! ガッ! ガッ! ガッ!


沙々「つぁっ!」ビクッ


沙々(く、鎖による結界……!)

沙々(前を塞いでる鎖の赤色と状況からして、結界を張ったのは……)クルリ


杏子「そんな急ぐなよ。もう少し、付き合いな」


ほむら「…………」


沙々(うへぇ……、追いつくの早過ぎますよぉ)

沙々「は、話し合いましょう。そんな頭に血が上ってたら――」


杏子「おらぁ!」ブン

159: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:17:54.05 ID:K7bkgFJYo


シュルルルルルル

ビシィ!


杏子 ほむら 沙々「!」


沙々(リ、リボンの結界という事は……!)


杏子「ちっ」バッ


マミ「私の後輩に、手を出すのは許さないわよ佐倉さん」

マミ「ここでは人目に付きかねない」

マミ「速やかに優木さんからもっと距離をとって、槍を引いて頂戴」


マミ「そして、優木さんと私の間を隔ててる、この邪魔な結界をどけて」



杏子「………………」




杏子「……おい、優木沙々」ワナワナ


沙々「は、はい?」






杏子「てめぇ!マミさんに何しやがったぁ!」



ダンッ!

160: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:20:55.98 ID:K7bkgFJYo


マミ 沙々「!」


沙々(尋常じゃない踏み込み、そして殺気)

沙々(これが、佐倉杏子の全力)


沙々(……あっ、これは死にましたね)

沙々(ほぼ間違いなく、巴マミの結界を突き破ってくるでしょう)


マミ「ティロ・――」


カチッ


ほむら「杏子!」ガシッ


沙々 マミ「!?」


沙々(えっ……?)

沙々(今、いったい何が?)


沙々(こちらに猛スピードで接近していた佐倉杏子が)

沙々(踏み込んだ地点よりも更に遠くで、暁美ほむらに羽交い絞めにされている)


沙々(二人の移動は一瞬の出来事でした)

沙々(となるとほむらは、テレポート系の魔法少女……?)

161: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:22:54.04 ID:K7bkgFJYo


杏子「なっ!?離せ!離せよ暁美ほむら!」


ほむら「いいえ、それはできない相談ね」

ほむら「このまま続けたら間違いなく殺し合いになる」


ほむら「目的は優木沙々との対話、だったはず」

ほむら「彼女の力量試しでは本来ないし、ましてや殺し合いでもない」


ほむら「あなたにとって不利な条件でここに来て貰ったのは私」

ほむら「だから優木沙々への対応は、極力あなたの希望に任せた」

ほむら「しかしあなた一人に任せられる限度を、状況はもはや超えてしまった」


杏子「だけど、マミさんが……」


ほむら「今は、下がりなさい!」

ほむら「さむなくば全て、手遅れになるわよ」

ほむら「今あなたのしたい事、すべきことは何かしら?佐倉杏子」

162: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:26:53.66 ID:K7bkgFJYo


杏子「…………」ギリッ


杏子「優木沙々」


沙々「なん、ですか……?」


杏子「ちょっと頭に血が上ってやり過ぎた……。悪かったよ」


沙々「い、いえ」


沙々(いやー、死ぬかと思いました)

沙々(というか暁美ほむらが止めてくれなかったら、本当に死んでましたね)

沙々(さっきまでは思っていた以上に、遊ばれてたわけですか)


杏子「…………」クルッ

スタスタ スタスタ





ほむら「…………ふぅ」


マミ「佐倉さんをすぐに追わなくて良いの?暁美さん」


ほむら「構わない。それ程親密な共闘関係を結んでいる訳じゃない」

163: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:34:17.12 ID:K7bkgFJYo


ほむら マミ「…………」


マミ「今回のあなた達の行為、私達への敵対行為と解釈するべきかしら?」


ほむら「私は、あなたと敵対したいとは考えていない。おそらく杏子も」


マミ「あなた、と?」


ほむら「今日の事に関する非は全てこちらにある。ごめんなさい」

ほむら「それでもあえて一つ忠告させて貰う」


ほむら「巴マミ。優木沙々を信頼し過ぎると、きっと足をすくわれるわよ」


マミ「二度とその口から、優木さんを侮辱するような事を私に聞かせないで」


ほむら「…………」


マミ「私達の前から、今すぐ消えなさい……!」



スタスタ スタスタ


マミ 沙々「…………」



マミ「…………」



マミ「行った、みたいね」

164: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:36:27.47 ID:K7bkgFJYo


沙々「すっごい、怖かったですぅー!」ビクビク

沙々「どうしてこんなぎりぎりの、ベストタイミングで来れたんですかぁ?」


マミ「そうね……、第六感、かしら?」

マミ「妙な胸騒ぎがして、こっちに何かある気がしたからこっちに来たの」

マミ「そしたら丁度佐倉さんが優木さんに襲い掛かっていて……」


マミ「あっ!佐倉さんっていうのはね――」


沙々「大丈夫です。前にちょっとだけ話を聞きましたから」


マミ「あれ?そうだったっけ?」


沙々「ええ」




マミ「…………ねえ、優木さん」


沙々「なんですか?」

165: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:38:07.80 ID:K7bkgFJYo



マミ「優木さん、私に何か――」



マミ「ごめん、やっぱりなんでもないわ」


沙々「……そうですか」

沙々「今日は疲れました。私達の家に、はやく帰りましょう、マミさん」


マミ「……!」


マミ「ええ、そうしましょう」ニコリ


沙々(巴マミが、わたしに対してどの程度かはわからないが不信感を抱いている)

沙々(今更そんな事でわたしと彼女の間の魔力のパイプは揺るぎはしない)

沙々(しかし、だからといって、あまりいい兆候とは言えません)




沙々(――さっきの事、巴マミの記憶からいっそ消してしまいましょうか……?)

166: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:44:37.35 ID:K7bkgFJYo
~☆


杏子「…………」スタスタ


ほむら「杏子」


杏子「…………」スタスタ


ほむら「佐倉杏子!」


杏子「……なんだよ」


ほむら「苛立つのはわかるけど、それを私にぶつけるのはやめて」

ほむら「もっと冷静になりなさい」


杏子「冷静になんて、なれるかよ……!」

杏子「お前はわからないからそんな事を言えるんだ」

杏子「優木沙々は人格改竄が可能なレベルにまで巴マミの精神を掌握してる」


杏子「この違和感、この気持ち悪さは、アタシにしかわからない……!」


ほむら(見ず知らずの他人の精神が掌握されたとして)

ほむら(彼女がこんな興奮した反応を示すはずはない)

ほむら(しかし杏子はそれを、私の前で誤魔化そうともしない)

167: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:46:54.19 ID:K7bkgFJYo


ほむら(……どうやら興奮し過ぎて)

ほむら(過去を知らないはずの私と喋ってる事を意識してないみたいね)

ほむら(優木沙々、余程彼女の事が気に入らないのか)


ほむら「事態が逼迫しているからこそ、無理にでも冷静になる必要がある」

ほむら「私もあなたを撃つよう彼女に操作された。あなたの言う事が正しいだろうとは思う」

ほむら「でも今この状況で、巴マミに対してそれを証明するのは不可能でしょう?」


ほむら「それともあなたは巴マミを、優木沙々の手から無理やり解き放てるというの?」


杏子「……いいや。もっと早い段階ならアタシにも可能だろうけど、あれは無理だ」

杏子「あそこまで深くに食い込んだのは、かけた本人以外が触るには危険過ぎる」


ほむら「何か、彼女の支配を弱める方法はないの?」


杏子「多分、両者の間に距離をとればとるだけ、影響は小さくなるはず」

杏子「どれくらいの効果が期待できるかはわからないけど」

杏子「ああ、後は本人の抵抗する意思も必要かな」

168: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:51:11.92 ID:K7bkgFJYo


ほむら「それならすべき事は巴マミの保護ね」

ほむら「でも本人の抵抗する意思も必要なら」

ほむら「やっぱり彼女自身を理詰めで納得させなければならない」

ほむら「そのためには、優木沙々がそういう魔法少女である証拠が必要だわ」


杏子「証拠……」


ほむら「ねえ、杏子」

ほむら「優木沙々を殺せば、その問題は全て丸く解決したりしないの?」


杏子「無理、だろうな」

杏子「何が起きるかについて、正直これだとはっきり言いきる事はできない」

杏子「ただ、あいつの魔力の支配が断たれると、そこには隙間が空くと思う」


ほむら「隙間?」


杏子「他に言い方はわからない」

杏子「隙間が空くと、少なくとも心は不安定になるだろうね」


杏子「優木沙々が死んだらこうするって、魔法が掛けられてる可能性もなくはないし」

杏子「その方法はあまりお勧めできない。最後の手段だろうな」

169: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:57:37.91 ID:K7bkgFJYo


ほむら「…………そう」


ほむら(ワルプルギスの夜に、精神に干渉するような魔法が通用するとは思えない)

ほむら(杏子との立ち合いを見た限り、はっきり言って足手まとい)

ほむら(殺して済むなら、それでも良かったのだけれど)


ほむら「まあ、いいわ」

ほむら「彼女がここに引っ越してくるまでいた所に、ちょっと行ってみましょう」


杏子「やっぱり引っ越して来たのか。場所は知ってんのかよ?」


ほむら「それくらいの事は既に調べてある」

ほむら(できれば仲間に引き込もうと思ったけれど、それはもう無理ね)


ほむら「杏子もどうせ暇でしょう?」

ほむら「あなたの雇い主は現在私なのだから、ついてきて」


杏子「……ハイハイ、わかったよ」


スタスタ





杏子(……優木沙々)

170: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 10:59:44.82 ID:K7bkgFJYo


杏子(悪い奴で良かったと、正直ホッとしてる自分がいる)

杏子(そもそも最初は話し合いしかするつもりはなかったんだ)

杏子(だけど、巴マミの事について色々言われたらカッとなって……)


――わたしとこうして話したのは、仲直りの間を取り持ってもらううため?

――いや、それともマミさんと今組んでるのがどんな魔法少女かを、見たかったんですか?


杏子(アタシは何をしに来たんだろう)

杏子(ワルプルギスの夜を倒すため、その後去るほむらの後釜に座るため)

杏子(放っておいたら風見野まで危ないとか、色々理由は思いつく)

杏子(でも、アタシが一番したい事ってなんだろう……)

171: ◆2DegdJBwqI 2013/10/23(水) 11:00:44.08 ID:K7bkgFJYo


――くふふ、まるでマミさんが、完全無欠の超人みたいな言い方ですね

――あなた、マミさんの上辺しか見た事がないんですか、空しいですねぇ

――道理で今更になっておめおめと見滝原に顔を出せる訳ですよ


杏子(マミさんはマミさんだ)

杏子(だけど、誰よりも今、彼女の近くにいる奴にそれを否定されると)

杏子(こっちはそれに言い返す事が出来ない)

杏子(それが無性に腹立たしい)


――だってわたしにとってのマミさんは家族

――彼女を置いて行った、負け犬とは違いますよ



杏子(したり顔で知った風な、こっちの神経逆なでする事ばっか言いやがって……)

杏子(自分にもわけわかんない感情ばかりでイライラする)

杏子(だけど一つだけはっきりしてる事は)

杏子(今のマミを置いて、おめおめと逃げ帰れはしないって事だ)

177: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:00:03.83 ID:ErOboHRno
~☆

ーまどかホームー


まどか(そろそろ、寝ようかな)

まどか(……あっ、いつの間にかメール来てた)


まどか(送ってきたのは……、ほむらちゃん!?)

まどか(な、なんだろう?中身を見るにもちょっと緊張しちゃうな)


ほむら【こんな夜分遅くにメールなんかしてごめんなさい】

ほむら【でも、起きてたら一つだけ聞かせて欲しい】

ほむら【まどかは、魔法少女についてどう思ってる?】


まどか(ど、どう思ってるって……うーん)ポチポチ


まどか【こんばんは。ほむらちゃん】

まどか【魔法少女については、まだ今の所よくわからないから】

まどか【もっとちゃんと考えてみようと思ってます】

まどか【ほむらちゃんもそうだけど、優木さんからも】

まどか【魔法少女にはならない方が良いって言われちゃったし】

178: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:01:57.62 ID:ErOboHRno


まどか(よし、送信っと)

ピロピロピロ

まどか(返信はやっ!)


ほむら【優木沙々が言った事は正しいわ】

ほむら【魔法少女になんか絶対なるべきではない】

ほむら【まあそれはそれとして、まどかに一つお願いしたい事があるの】

ほむら【私はこんな感じで、なるべく毎日まどかと連絡を取りたいと思ってる】

ほむら【ただ、手段はメールでいいと考えてたけど、これって意外と不便】

ほむら【だから明日から――】

179: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:05:23.10 ID:ErOboHRno
~☆

ー翌日 下校中ー


沙々「おーい、お二人さん。こんにちはー」テクテク


さやか「ゆ、優木さん……!」


まどか「こんにちは、優木さん」ペコリ


さやか「集合場所、ここじゃないですよ」


沙々「そんな事はもちろん知ってますよ」

沙々「あなた達に早く会いに来ただけですし」


さやか「あっ……」

さやか「えっと、その、あの、恭介についての話なんですけど」

さやか「申し訳ないけどあれ、やっぱりなかった事に――」


スタスタ


沙々「……はい?なんですって?」ムギュー


まどか さやか「!?」

180: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:07:51.77 ID:ErOboHRno


さやか「い、いきなり何で抱きつくの!?」アワアワ


沙々「だって必要な事ですから」


沙々(上条恭介に美樹さやかの  い夢を見せるにあたって)

沙々(生の感覚というのは重要ですからね)

沙々(ここまできてやめるだなんてとんでもない)

沙々(わたしの努力が全部無駄になっちゃうじゃないですか)


沙々「…………」サワサワ


さやか「ちょ、ちょっと、タンマ……!くすぐったいから……!」


沙々( 、大きい方ですし、色仕掛けの際の結構な武器になるでしょうね)

沙々「…………」モ モ


さやか「ひゃっ!」


沙々(うーん、前からだとやり辛いです)

沙々(背後をとりましょう)


サッ

ガシッ

181: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:09:41.84 ID:ErOboHRno


さやか(魔法少女の腕力どうなってんのよ……!)

さやか(これじゃ逃げられない……!)


沙々「…………」スッ


さやか「ぎゃー!ど、どこ触ってんのよ!」ゾクッ


沙々「そんな……」

沙々「い、言わせないでくださいよ……、は、恥ずかしい」


さやか「言ったら恥ずかしい所なんかに触るなー!」


まどか(さ、さやかちゃんいつも私にじゃれついてくるけど)

まどか(それの比じゃないくらい、いやしい触り方……)ゴクリ


さやか「離せー!離せ―!」ジタバタ


沙々「ハイハイ落ち着いて、落ち着いて。必要だって言ってるでしょ」


さやか「信用できるかぁー!」ウガー!




沙々(…………)

沙々(何が楽しくて、同い年の女の子にこんな事してるんでしょう、わたし)

沙々(ホント世知辛い人生ですねぇ)

182: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:15:08.24 ID:ErOboHRno
~☆

ー魔女結界ー


沙々「fast!」


マミ「はぁああああ!」ダンッ!


ヒュン ダァン! グギァアアアァ


さやか「凄い!マミさんの動きが速くなった!」


沙々「くふふ、どうですか!これがわたしの魔法です」エッヘン

沙々(まあ、巴マミの無意識的なリミッターを外してるだけですけど)


沙々「使い魔を倒す時にはslowで動きを鈍らせて、マミが楽々倒す」

沙々「魔女を倒す時にはslowが奴らには効かないので」

沙々「マミにfastをかけてマミが倒す」


沙々「どうです、この完璧な役割分担は」


まどか「えっと、優木さんは、戦わないんですか……?」


沙々「戦わないんじゃなくて、弱過ぎて戦えないんです」

沙々「この役割分担でわたしが随分と得をしてる事は否定しませんけど」

183: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:18:20.75 ID:ErOboHRno


さやか「優木さんって、マミさんと最初から組んでたの?」


沙々「いいえ。一人で戦ってた時期もありましたよ」


さやか「じゃあその間はどうやって……」


沙々「色々、ですよ」


さやか「色々、ですか」


沙々「ええ、もう本当に色々……、くふふふふふ」ズーン


まどか さやか(魔法少女って、大変なんだなぁ)


マミ「ティロ・フィナーレ!」


ドォォォォン!


沙々「あっ、終わったみたいですね」

沙々「次行きましょうか、次」

184: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:22:13.48 ID:ErOboHRno
~☆

ー魔法少女体験ツアー終了後 外ー


さやか「それじゃまたねー、優木さん、まどか」


まどか「またねー、さやかちゃん」


沙々「さよなら、美樹さん」


テクテク テクテク


まどか「……ねえ、優木さん」


沙々「なんです?」


まどか「魔女っていったい、なんなのかな?」


沙々「と、言いますと?」


まどか「魔女が次々に生まれる原因って、きっと何かあるはずでしょ?」

まどか「魔女の影響を受けて、苦しんだり死んだりしてしまう人達がいる」


まどか「マミさんや優木さんが魔女をいくら倒しても」

まどか「魔女が出続ける限りそれはずっと続いちゃう」


まどか「じゃあ魔女を全部無くしちゃう事って、できないのかな?」

まどか「人を襲うのを止めて貰う、でもいいけれど」


まどか「魔女っていったい、なんなのかな?」

185: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:27:41.62 ID:ErOboHRno


沙々(魔女がいないと、魔力の回復源がなくて、わたしは困る)

沙々(魔女を全部なくす、魔女を無害な存在にする)

沙々(もし仮にそんな願いで契約でもされたら非常に面倒です)

沙々(今の内に、なんとか思い留まらせましょう)


沙々「わたしにはよくわかりませんね。魔女がいったい何かなんて」

沙々「ただし魔女について、わたしにもわかる事がほんの一部ならあります」

沙々「奴らの頭の中は、基本的に負の感情ばかりだって事です」


まどか「負の、感情……」


沙々「ええ、もちろん個体差はありますけどね」

沙々「何かしら歪んだ一つの想いを抱き続けてる、それは間違いないです」

沙々「例えば周りの全てを、あるいは何かを一心に憎み続ける」

沙々「他の感情や、対象なんて目に入らないくらいに強烈な感情の迸り」

186: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:31:22.99 ID:ErOboHRno


沙々「少なくとも話が通じるような連中ではないですよ」

沙々「魔女の思考に論理性なんて物はありません」

沙々「あるのは普通、恨み、恐怖、怨恨、悔恨……」


沙々「魔女は魔女なりの形で生きている、というのは間違いないでしょうけど」


まどか「そう……、なんだ……」


沙々(人間と違って、一つの感情が全てを支配しているせいで)

沙々(魔女って操るのが難しいし面倒なんですよねぇ)


沙々(正直、流石にあそこまでの強烈な憎悪とかの感情って)

沙々(共有していて気分のいい物ではないですし)


沙々「…………」


沙々「魔女を根絶は確かにできないかもしれませんが」

沙々「それは、この世界から決して不幸がなくならないのと、同じ事じゃないでしょうか?」


沙々「不幸を減らそうとする事、魔女を減らそうとする事」

沙々「それはただそれだけでもって価値を持つ。そうは思いませんか?」

187: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:34:58.29 ID:ErOboHRno


まどか「…………うん」

まどか「でも、そうじゃないの」

まどか「私はそれに対して何もできないから……、だから私は……」


沙々「そう難しく思い悩むのはよくないですよ、鹿目さん」ニコォ

沙々「自分ができる事から、地道にやっていけばいいんです」


沙々「何よりもまず、自分を大事にする。話はそれからです」

沙々「あなたは毎日幸せでしょう?それを投げ出したりしては、絶対にダメです」


まどか 沙々「…………」


沙々「…………」


沙々(本気で信じてもいない事をペラペラペラペラ……)

沙々(正義や奉仕なんて物に本気でのめり込めないのは、自分が一番よくわかってます)

沙々(だけど突き詰めて、誰かや何かを本気で憎んだり否定する事もできない)

188: ◆2DegdJBwqI 2013/10/26(土) 20:36:45.35 ID:ErOboHRno


沙々(……結局わたしはどん底までに弱いから)

沙々(わたしの何もかも、全て中途半端になってしまうんでしょうね)


沙々「…………」



沙々「う゛がぁ゛ー!」



まどか「!?」ビクッ



沙々「な、なんでもないです、はい」


沙々(いけない、いけない)


沙々(つい、無力な鹿目まどかに感情移入して、余計な事を考えてしまいました)

沙々(そんなつまらないバカな事を考えてないで、しっかりしなくてはなりません)

沙々(今現在、わたしがしなくてはいけない事は、うんざりする程あるんですから)

193: ◆2DegdJBwqI 2013/10/28(月) 16:53:17.19 ID:DKuVAMWno
ー優木沙々の強さについての長々とした考察ー ※読まなくても問題ないです


優木沙々という魔法少女は別編においての活躍をざっと見る限り、
新人のキリカに接近戦ではボロクソにされ、
大量の魔女を使役したのに織莉子に全て殲滅された

三流以下の実力しかない超雑魚魔法少女にしか見えない

しかし、私は本当にそう言いきるためには
色々と考慮すべき事があるとここで述べたい

そして願わくば、自分のソウルジェムを握りつぶすなんて
情けない死に方をした彼女の名誉を少しでも挽回したいと考えている

194: ◆2DegdJBwqI 2013/10/28(月) 16:58:22.27 ID:DKuVAMWno
1 キリカについて

「優木沙々一人なら大したことはない、私一人で捻れる」
そんな風に、新人のキリカは沙々を評価していた

しかし、そもそもキリカはベテラン手練の魔法少女巴マミを
撃破とはいかなくともあと一歩の所まで苦しめている

映画(叛逆)での巴マミの立ち回りを見る限り、彼女に攻撃の一手を全く許さないのは
おそらく相当の実力(というよりは遅延の魔法が強力?)が必要だろう 
つまりキリカが例外的に強過ぎるのである

優木沙々は一般的な魔法少女に比べ接近戦がそこまで劣っていない可能性がある
しかもキリカを魔女軍団はボコボコな状態にまで持って行った
並の魔法少女なら優木沙々が魔女を使えば瞬殺なのかもしれない



巴マミの時間軸ごとの強さが一定ではない可能性、
(あるいはその時の調子、精神状態もあるかもしれない)


別編ではキリカが魔法少女狩りで得た経験は多分リセットされている
(魔女より魔法少女を倒す方が苦労するとして)

自分を変えたい、そう願った彼女はきっと超早熟型なのではないだろうか(成長限界もはやい)
魔法少女狩りがキリカをメキメキと成長させた
だからあちらでは巴マミにあそこまで互角以上に立ちまわれたのではないか


ここらを考慮すると、むしろ予想以上に優木沙々が弱い可能性がある事も
もちろん忘れてはならない

195: ◆2DegdJBwqI 2013/10/28(月) 17:02:21.28 ID:DKuVAMWno
2 織莉子について

こちらの方が正直問題である 
何故なら純粋に織莉子が強過ぎる

予知ができる 相手が遅くなるetc で、四人がかりでも中々倒せない
わからなくはない気がする

しかし、アニメやTDSを見る限り、一人で複数、どころか大量の魔女を一度に倒す
流石にこれは不可能ではないか?

単純な解釈として、優木沙々の視界内にいない魔女は動きが鈍る
でも、これはキリカ「お前もう許されないよ」からの一連の流れで微妙
というかそれ以前になんでほむら達を倒せなかったのかが謎

おそらくは本編?の織莉子と別編の織莉子は別編の方が強いのだろう
本編はまどかを倒さなくてはという目的があったからある意味精神は安定していたようだし
別編のあんなに魔法を思いっきり使える機会は普通に暮らしていたらないはず
(なおかつ普段目立たないようにしていた訳だし)

思いきり魔法を使うのが織莉子真の覚醒には必要?

高火力全力が許されるなら巴マミでもごり押しは可能……かも、しれない


そしてこっちが重要だが、優木沙々は多分弱い魔女しか使役出来ない

何の条件もなしに使役出来るなら
そこらをうろついてる魔女を操作して、グリーフシードに困らないと思われる
それで何か条件があるなら、操れる魔女に限界があってもおかしくない
というか限界がないとバランス(ry

つまり、織莉子に負けたのは彼女が高火力かつ強過ぎたからで、
あるいは沙々の使役する魔女が弱かったからで、

決して単純に優木沙々が弱いわけではない、はず

196: ◆2DegdJBwqI 2013/10/28(月) 17:03:49.11 ID:DKuVAMWno
3 沙々さんの魔法設定(コレの中)について

――魔女使役
強過ぎる魔女は元から操れない 鍛錬で精度は上達(でも基本雑魚)
倒した魔女がグリーフシードになってから魔法をかける 
モンス○ーボールにできるかどうかはやらなくても見ればわかる

グリーフシードから孵化させた魔女を使役、一回使ったら一般人を一定量食べさせてあげる
一般人を食べれば食べるだけ強くなるよ!
沙々は織莉子やキリカと戦った頃、つい最近にその方法を構築して大量育成中でした

穢れを限界までためこませて、特別の魔法掛けないとかないと使えないので、普通の穢れ除去には使えない
一般人食わせた後は戻ってきて、自分でグリーフシードになるよう予め放流前に指示しておく

しとくのをうっかり忘れると、逃亡してまた会った時に
最初倒した時よりこいつ強ええ……!って苦戦する羽目になる

でもこのお話の中の沙々さんはこっちの技能弱体化してるので、
よわっちい雑魚の中の雑魚しか操れない。

一度に多くの部隊に言う事聞かせられないし、一回使用したらどんどん弱体化していく
一般人食わせよう作戦実施まではまだしばらく先
方法は考えてたけど魔法の熟練度が足らないので、
やったら事故りそうだったから地道に魔女の使役を練習してた

今は手駒に優秀なマミさんがいるのでやってない

――人間について

従来沙々さんよりも格段に進化
自分より優れているかどうかを一目見ただけで人格、素質、魔法少女としての力量の判断
マミさんを思う存分いじりまくった修業の成果 マミさんに対してならやろうと思えば本当に大抵の事は出来る

でも下手して壊しちゃうと嫌なので大事に扱う
一度強い魔法少女を自由に操れる楽しみを知ってしまうとやみつき
魔女と違ってこっちは理性があるので、より深く操れて凄く楽しい 困った時にはマミさん任せで生きてる  



更新できそうにないからこっちを投下
予想以上に長い

198: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 10:58:43.41 ID:kQBf2wXso
~☆

ー数日後 放課後ー


テクテク テクテク


マミ「今日は、暁美さん学校に来た?」


まどか「はい、来ましたよ」

まどか「昨日一昨日、来なかったのが嘘みたいに堂々と」


マミ「大丈夫?何か酷いことされたりしなかった?」


まどか「そ、そんな……、酷いことなんて全くされてないです」

まどか「ほむらちゃんは、悪い子じゃないですもん」


マミ「……そう、かもね」


マミ「だけどごめんなさい。今の私に、あの子を信じることはできないわ」

マミ「だって、何をするか、それに何の目的があるのか、本当に読めないんですもの」

マミ「しかもあなた達の安全を思うとなおさら、ね」


まどか「…………」

199: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:02:11.06 ID:kQBf2wXso


沙々(あの夜の、私に対する襲撃が完全に尾を引いてますねぇ……)

沙々(警戒すること自体は別に構いませんが)

沙々(こちらの雰囲気までもがぎくしゃくし始めると、ちょっと困ります)


沙々(……やはり、記憶を消しておくべきだったか?)

沙々(けれど記憶を完全に改竄するリスク、マミへの負担を考えれば――)


マミ まどか「…………」


マミ「いやね、この空気」

マミ「……何か話題を変えましょうか」

マミ「といっても、私に何か話題があるわけじゃないんだけど」


さやか「あっ!私、話題ありますよ!」

さやか「ここ数日のことなんだけどね」

さやか「どうも、恭介の私を見る目が前と違うっていうか」


まどか「……どういうこと?」

200: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:04:19.86 ID:kQBf2wXso

さやか「いやー、私の自意識過剰かもしれないけど」

さやか「異性として、意識されてる気がするんだ……」


さやか「前まではちょっと身体が触れたり」

さやか「あるいはお互いの距離が近かったりすることなんて」

さやか「正直全然気にされてなかったんだけど」


さやか「何故か近頃顔を赤らめたり、過剰に反応するっつうか……」


まどか「そうなんだ!良かったね、さやかちゃん!」


マミ「おめでとう、美樹さん」


さやか「ちょっ、何よ、二人ともその反応はっ!」


まどか「えー……、じゃあどういう反応を期待してたの?」


マミ「今更隠そうとしたってどうしようもないわよ、美樹さん」


さやか「ぐぬぬ……」

201: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:06:16.18 ID:kQBf2wXso


沙々「……」


沙々(ようやく、上条恭介に望んだ効果が表れてきましたか)

沙々(さっさと仕上げに行ってしまいましょう)


沙々(ぶっちゃけ予想以上に毎日辛かったし、助かりますね)

沙々(上条恭介が寝てる時間、夢に干渉するためにはこっちは極力起きてないといけない)

沙々(……あ゛ー、眠いし体調悪いですよー)


沙々「美樹さん」


さやか「ん?なあに?」


沙々「ついに明日、……作戦を決行しましょう」


さやか まどか「!」


マミ「何?どうしたの?」


まどか「えっと、さやかちゃん、優木さんに手伝って貰ってるんです」


マミ「ふーん、何を?」


まどか「恋について」

マミ「……ええー。うそぉー」

202: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:08:59.89 ID:kQBf2wXso


沙々「なんです?その顔。何か文句でもありますか?」


マミ「文句ってわけじゃないけど……、でも、ねぇ」


沙々「マミさんがどう思ってるかは知りませんが」

沙々「こういう心の問題の対処に、わたし以上に最適な人間、世の中にそうはいませんよ?」


マミ「うーん……」

マミ「だけど優木さんと恋愛のイメージが、私の中で全然しっくりこないのよねぇ……」


沙々(うるせえ、余計なお世話です)


さやか「いや、でも、待ってよ。ほら、色々と心の準備が……」


沙々(そしてこっちも、ごちゃごちゃごちゃごちゃ……)


沙々「心の準備に使う時間なら数日あったじゃないですか」

沙々「それでもなお足りないなら、それはあなたが無能ってことです」

沙々「甘えてんじゃねーぞ、コラ」


沙々「あなたの思いは、上条恭介に伝えるのを恥じるような紛い物なんですか?」

203: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:10:20.69 ID:kQBf2wXso


さやか「はぁ!?何よその言い方はっ!?」


沙々「違うなら、ぜひそれを示してみせてくださいよ」

沙々「普通なら、そうやってうじうじしてるのも人生経験、とやらになるんでしょうね」


沙々「だけどあなたは今、非日常的な魔法少女の世界に片足を突っ込んでるんです」

沙々「そんな他愛ない逡巡が許される程、魔法少女にかかわることは甘くない」


さやか「…………」


マミ「優木さん」


沙々「なんです?」


マミ「そうやって、無理やり何かをやらせようとするのは……」


沙々(ああっ、もうほんっとうに色々と面倒臭いですねー)


沙々「現実問題、そんな呑気なこと言っていられる状況じゃないでしょうが」

沙々「暁美ほむらの意図の読めない行動、それに――」

204: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:14:54.35 ID:kQBf2wXso
~☆

ー翌日 放課後 さやか宅ー


沙々「はい、それでは制服から、わたしの持参したこれに着替えてください」


さやか「私が着るにはちょっと、これ可愛らしすぎない?」

さやか「というかさ、病院行くときにおめかしってどうなの」


沙々「うるさいですねぇ、ほら、早く着替えて」

沙々(わざわざ上条恭介の一番好みな感じのを用意したんですから)


さやか「うー、き、緊張するなぁ」ソワソワ


沙々「……ああ、一つ大事なことを忘れてました」

沙々「あなたが全力を尽くせるよう、今ここでお呪いをかけておきましょう」


さやか「お呪い?」


沙々「ええ、マミさんにかけるような感じのをちょっと」


さやか「……それって、大丈夫なの?」


沙々「感じ、ですから大丈夫ですよ」スッ

205: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:17:20.81 ID:kQBf2wXso


沙々「さあ、こちらの目を、全身の力を抜きながらじっと見てください」


さやか「あのさ、優木さん。……いや、沙々さん」


沙々「なんですか?」


さやか「その、ありがとね。後押ししてくれて」

さやか「無理やりにでもやらされなかったら」

さやか「きっと自分でやろうだなんて、いつまでも思わなかっただろうし」


沙々「……ふん、そういうのは告白が成功してから、言ってくださいよ」


沙々(さて、あまり洗脳が効果的に作用するのは期待できないんですけど)

沙々(見るからに青春してる彼女をイメージして、それを嫉妬にどうにか変えて)

沙々(後は足りないところに魔力を注いで、できるだけどうにかしてみましょう)

206: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:24:09.03 ID:kQBf2wXso
~☆

ー病室ー


恭介(な、なんか今日は、さやかの服がいつもと違う気がする)

恭介(僕の好みに丁度ドンピシャな感じというか)ゴクリ


さやか「えっと、その、恭介……。どう?」チラッ

さやか(なんか……、頭がぼうっとしてるな……)


恭介「ど、どうって?」


さやか「今日の、私の服……」


恭介「あっ、うん。す、すごく可愛いよ」


さやか 恭介「…………」









沙々(うーん、覗いてるこっちが恥ずかしくなってきますねぇ)コソコソ


沙々(病室のドアを少しだけ開けて中を覗いてるわたしも)

沙々(方向性こそ違いますが傍から見たら相当異質でしょうけど)

207: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:28:26.84 ID:kQBf2wXso


さやか「今日はね、恭介に一つ、本気で伝えたいことがあるの」

恭介「伝えたいこと?」




さやか「…………」




さやか「私、恭介のことがずっと好きでした。ううん、今も大好きです」

さやか「幼馴染とかそういうのじゃなくて、一人の男の子、異性として」

さやか「だから…………、私と、付き合ってください!」ペコリ






恭介「………………」







恭介「――ごめん」


さやか「…………っ!」

208: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:30:08.72 ID:kQBf2wXso


恭介「今の僕には、君が好きになれるような魅力なんて一つもない」

恭介「君はすごく魅力的だ。妙なことだけど、最近僕はそれに気づいた」


恭介「……でも、ダメだ」



恭介「…………」



恭介「……きっと君は、今の僕に同情、してるだけなんだよ」


さやか「そんなことないっ!」




恭介「…………」



恭介「もう演奏は諦めろって、先生から直々に言われたんだ……」

恭介「奇跡でも起こらない限り、ありえないんだってさ……!」


恭介「ヴァイオリンを弾けない、こんな人生に、いったい何の意味がある」

恭介「ヴァイオリンに全てを捧げてきた!」


恭介「ヴァイオリンを弾けない僕に、いったい何の価値があるっ!」

恭介「こんな僕を誰かが好きになるだなんて、そんなふざけた話があるものか!」


恭介「僕は……!僕はっ……!」

209: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:34:38.14 ID:kQBf2wXso


恭介(落ち着け……、落ち着くんだ……)

恭介(このタリスマンのおかげで、アレを宣告されてからも、平静をなるべく保ってこれたじゃないか)


恭介(いくら告白に驚いたからって、全く関係のないイライラが噴出してどうする)

恭介(さやかに八つ当たりするのは、どう考えてもお門違いだ……!)


さやか「…………」


さやか(ああ、ダメだよ……。こんなの……)

さやか(こんな時に何もできないだなんて……)

さやか(どうして神様は、こんな恭介に酷いことをするの……?)


さやか(だったら私は……、それなら私が……)



恭介「あの、さやか、いきなりごめ――」      さやか「恭介、奇跡なら――」







沙々(『上条恭介が反応できないくらい素早く、そして長めのキスをしてください』)


チュッ


さやか 恭介「!?」

210: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:36:51.50 ID:kQBf2wXso


さやか 恭介「…………」


恭介「な、何するんだよ急に!」


さやか「ち、違っ……!身体が、勝手に……」


恭介「はぁっ!?ふざけてるのか!?」


さやか「ふざけてなんかないわよ!」


恭介「ファーストキスだったんだぞっ!」


さやか「こっちだってそうよっ!」


さやか 恭介「…………」


さやか 恭介(どうしよう、恥ずかしくて、まともに顔を見れない……)


さやか「……私の気持ちが、同情ってさっき言ってたよね、恭介は」


恭介「えっ、あっ、うん」


さやか「同情なんかじゃ、絶対ないよ」

さやか「だって私、ファーストキス、しちゃったこと後悔してないもん」

さやか「わざとやったことじゃないけど、それでも恭介なら、いい」


さやか「ほかの誰でもない、恭介だから」

211: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:39:06.51 ID:kQBf2wXso


さやか「ヴァイオリンを弾いてた時の恭介は確かに輝いてた」

さやか「でも、私にとっての恭介はそれだけなんかじゃない」

さやか「本当に好きだから、だから……、だから……」ウルウル


恭介「あ、あの、その。ごめん。ごめんよさやか」


恭介「………………」


恭介「……本当に、さやかは僕のことが、好きなんだね?」


さやか「うん……、私、恭介のためだったら、命だって惜しくない……」ゴシゴシ


さやか「だから――」

さやか(私が魔法少女になれば、恭介の腕はまた……)


恭介「わかった、信じるよ」

恭介「さやか、顔を上げて、こっちを見てくれるな?」


さやか「?」


グイッ

チュッ


さやか「!?」

212: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:40:36.46 ID:kQBf2wXso


さやか「ばっ……」


恭介「さやかは僕なんかのことを、本当に好きだって言ってくれた」

恭介「それに君は大事な幼馴染だから、いい加減なことを言いたくない」

恭介「えっとさ、単刀直入に言うと、正直僕の今の気持ちが恋なのかどうかはわからない」


恭介「だけど、僕なりの本心を言わせてもらえば、さやかのことが、最近凄く気になってる、女の子として」


恭介「それになにより、恥ずかしい話ではあるけど」

恭介「今僕は君ともっとキスしたくてたまらない」


恭介「それこそヴァイオリンのことを一時的にでも忘れられるくらい激しく」

恭介「何度も、何度でも」


さやか「ちょ、ちょっっと、待っ――」







テクテク テクテク


沙々(アホくさっ……)

213: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:44:17.93 ID:kQBf2wXso


沙々(後はもう、放っておいて帰りましょう)

沙々(通りかかった看護師にでも見られちまえばいいんですよ)


沙々(……しかし、ひやひやしました)

沙々(ここまでやって、失敗とか空しすぎますからね)


沙々(やっぱり、決定的だったのはわたしのナイスアシストによるキス)


沙々(あの瞬間無意識的に、さやかがマミやわたしに心の中で助けを求めてくれたおかげで)

沙々(上条恭介のタリスマンを仲介にして、彼女を一瞬だけ、操作することができた)


沙々(ここに来るまでは、美樹さやかの精神を高ぶらせるチャーム)

沙々(それくらいがせいぜい限度かなって思ってましたが、案外やってみるものですね)





沙々(…………)







沙々(美樹さやかが、上条恭介にとっての、ヴァイオリンに取って代わることはできない)

214: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:48:28.03 ID:kQBf2wXso

沙々(ああいう夢は、ほかの何物をもってしても、代用品になりはしない)

沙々(しかしとはいえ人間は、夢によってのみ生きているわけではない)

沙々(もっと別の場所を埋める何かになら、あるいはなれるかも)


沙々(上条恭介がヴァイオリンを失っているこの状態以外に、おそらくチャンスはないでしょう)

沙々(元々、彼ってのめり込むタイプみたいですからね)

沙々(彼をとことん夢中にさせて、彼にとってかけがえのない何かになることができたなら)

沙々(きっと、美樹さやかにとっての一番の幸せは、そこに見つかるんでしょうね)

沙々(まぁ、そこまで上条恭介のことを彼女が好きなのかまでは知りませんが)

沙々(さすがにわたしには関係のないことです)











さやか「じゃあ、今日はもう帰るね」


恭介「明日も来てくれるよね?」


さやか「ちょっと、いきなりがっつき過ぎ」

さやか「多分、来れたら来るよ。あんま期待しないで」


さやか「……で、それはそうと、ずっと気になってたんだけどさ、それって、なに?」

215: ◆2DegdJBwqI 2013/10/30(水) 11:50:39.11 ID:kQBf2wXso


恭介「これ?これはタリスマンって言うらしいよ」


さやか「タリスマン?何それ?」


恭介「あれ?知らないのかい?君の友達から貸してもらってるんだけど」


さやか「?」

さやか「恭介って、そういうの持つ趣味特にないと思うけど」

さやか「何か効果あるの?それって」


恭介「うん、これを持ってると、イライラした時とか信じられないくらい心が落ち着くんだ」


さやか「んー、ホントー?なんか、うさんくさいなー」


さやか「で?誰なの?その私の友達って」



恭介「ええっと……、優木沙々さん。わかるだろう?」






さやか「………………うん、わかるよ」








さやか「へー、そうなんだ」..

220: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 10:51:37.63 ID:yfm3Bk+Fo
~☆

ー翌日 放課後ー


沙々「それじゃあ告白に成功したってことですね。おめでとう、美樹さん」

沙々「美樹さんの告白が無事に成功するかどうか」

沙々「わたし昨日一日中、不安で不安で仕方なかったですよー」


沙々(実際は、こっそり一部始終しっかりと見てましたけどね)


さやか「沙々さん、本当にありがとね……!」ウルウル

さやか「沙々さんの手助けがなかったら、絶対こんな幸せ掴めなかったと思う……!」ウルウル


マミ「あらあら、おめでとう美樹さん」

マミ「よかったわね、友人として純粋に私も嬉しいわ」


まどか「さやかちゃん、上条君への想いを、もう有耶無耶に隠そうとしたりはしないんだね」


さやか「へっへっへ、当ったり前ですよっ!」ゴシゴシ

さやか「何しろ私は、もう恭介と付き合ってる、相思相愛の間柄なんですから!」エッヘン

221: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 10:55:53.29 ID:yfm3Bk+Fo


沙々「いつも以上にテンション高いですね……」

沙々「結局、魔法少女についてはどうするつもりなんですか?」


マミ「ちょっと優木さん、それを今言うのは流石にデリカシーって物に欠けるんじゃ……」


沙々「何を言ってるんですか。凄く重要なことでしょうに」

沙々「マミさんもわかってるでしょう?」


マミ「それはまあ、そうだけど、……ね」


沙々「それで?どうなんです?」


さやか「えっと、…………なりたいな、って思ってる」


沙々「つまり、上条君の腕を治したい、ってことですか?」


さやか「うん」


沙々「へー、そうですか」


沙々「…………」イライラ


沙々(こんの、すっとこどっこいがぁ……!)

沙々(私がなんで苦労して御膳立てしてやったのか、理解しろよ……!)

222: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:00:39.07 ID:yfm3Bk+Fo


マミ「あのね、美樹さん」

マミ「こういうめでたい時にこんなこと言うのは嫌だけど」

マミ「魔法少女の責務は、恋愛と両立できる程甘いものだと考えるべきじゃないわよ」


さやか「……はい、わかってます」


沙々(よし、いいぞマミぃー!もっと言ってやれぇー!)

沙々「まあまあ、マミさん。美樹さんもそんなことは重々承知してるでしょうし」チラッ


さやか「もちろん今すぐになる気はないよ」

さやか「だけど、恭介を私の力で少しでも笑顔にしてあげたいんだ」


マミ「……酷い言い方で申し訳ないと思うけど、あなたに一つだけ聞きたいことがあるわ」

マミ「誰かの望みを叶える、そんなあなた自身の望みは何?」

マミ「彼に夢を叶えて貰いたいの?それとも彼の夢を叶えた恩人にあなたはなりたいの?」


さやか「…………」


マミ「同じようでも全然違うことよ。これ」


沙々(くー!やっぱりマミは切れ味が違いますねぇー!)

223: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:03:30.08 ID:yfm3Bk+Fo


さやか「……どうなんでしょう、ね」

さやか「告白する前なら、私は純粋に彼に夢を叶えて欲しいんだって、言えたかもしれない」


さやか「だけど、今は戦うことが凄く怖い」

さやか「手に入れたものを失うことがひたすら怖い」

さやか「だってこんなに、怖いくらい幸せなんだもん」


さやか「……でも、でも私は、もう一度聞いてみたいんです」

さやか「恭介がその手で奏でる、あの美しい旋律を」


マミ「そう、わかったわ」

マミ「……その怖いって気持ちを大事にして、しっかり考えることね」


さやか「はい、自分ができる限りを尽くして考えたいと思ってます」

224: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:05:18.40 ID:yfm3Bk+Fo

まどか「だ、だけどさやかちゃん」

まどか「この街には既に優木さん、マミさん、それにほむらちゃんがいるんだよ?」


沙々(おっ、鹿目まどか。中々鋭い切り口のツッコミをするじゃないですか)


沙々「加えてさらに佐倉杏子も加わる可能性がありますね」

沙々「一つの町に五人の魔法少女は、いくらなんでも承服しかねます」


さやか「わかってる。そんなことはもうわかってるよ」

さやか「だから今すぐには、なるつもりはない」

さやか「とはいえ心が決まって、かつ私にも、歴としたチャンスが巡ってきたなら」


さやか「私は恭介のために契約をして、魔法少女になるよ」


マミ「契約に頼らないで済むような解決策も、ちゃんと模索するのよ?」


さやか「はい、もちろんです」



まどか 沙々「…………」

225: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:21:32.43 ID:yfm3Bk+Fo


沙々「…………」



沙々(……言葉にしていることだけが、彼女にとっての真実ではない)

沙々(機会がないだけで、契約の意志そのものはどうやら固いようですね)

沙々(どうもわたしは、美樹さやかについて大きく読み違えていらしい)


沙々(彼女の契約の意志は最初から変わらず、ずっと固かったわけです)

沙々(ただそれが本当にそうなのかと吟味する時間、後は覚悟が必要だっただけで)


沙々(それは恋とは全く別次元の問題であって)

沙々(恋が成就したからといって、どうこう変わるものではない)


沙々(今はまだ、自分の想いがはたして真実かどうか等で揺れているようですが)

沙々(必ずいつか、私の前に障害となって立ち塞がることでしょう)




沙々(――早いこと、事故に見せかけて魔女に喰わせる)

226: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:24:56.99 ID:yfm3Bk+Fo


沙々(それがわたしにとっての理想的な選択)

沙々(しかし、それはあくまでも理想。現実との折り合いをつけなくてはならない)


沙々(問題は大きく見て二つ)


沙々(まずは佐倉杏子、暁美ほむら。彼女達の存在)

沙々(今このタイミングでさやかを排除しても、巴マミの目は誤魔化せるでしょう)

沙々(けれどその誤魔化しが、あの二人に通用する可能性は低い)


沙々(その行為が決定的な引き金となって、抗争が勃発する危険性がある)


沙々(……ただし見方を変えれば、どういう選択を選んだとして)

沙々(遅かれ早かれ彼女らとの抗争は多分避けられない)

沙々(そういう風にも考えることはできる)

227: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:30:27.63 ID:yfm3Bk+Fo


沙々(もう一つは鹿目まどかの契約を誘発しかねないという問題)

沙々(彼女の心の中には親友である美樹さやかがかなりの面を占めています)


沙々(彼女が契約をそれほど考えないのは、それに見合った願い、目的がまだないから)

沙々(そして魔法少女がこの街には多すぎるから)


沙々(ちょっとでもタイミングや選択を間違えると例えば)

沙々(暁美ほむらと佐倉杏子が見滝原から撤退)

沙々(そして美樹さやかを生き返らせるために鹿目まどかが契約)

沙々(なんてことになりかねない)


沙々(あれほどの素質です。きっと願いは過不足なく行われるでしょう)

沙々(そして万が一、美樹さやかの記憶から、誰が自分を死に追いやったかが表に出れば……)


沙々(やれやれ、よほど上手くやらないといけませんね)




沙々(はたして今、美樹さやかを抹殺するのがわたしにとって最善?それとも――)

228: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:47:19.11 ID:yfm3Bk+Fo
~☆

ー数日後 ○○市ー


杏子「おい、ほむら……。これでもまだ足りないのかよ」

杏子「アイツが契約してからの悪行三昧の数々の証拠、もう充分だろ」


杏子「近隣のベテランから得た、優木沙々が魔女を操っていたという証言」

杏子「隠ぺいされ闇へと葬られた洗脳の被害者の声」

杏子「彼女の学友その他共が起こした様々な奇行の客観的な一覧」


杏子「そして不自然な事態の収束と、アイツの転校]

杏子「それ以来ここらでは類似の奇行等は一切起きていない」


杏子「……他にもまだあるけど、これ以上ここを更に探ったとして」

杏子「何か情報は出てくるのか?」


ほむら「これでもまだ足りない、わね」

ほむら「魔女を操っていたというのは予想外だったけど、得られた情報は概ね想定済み」

ほむら「当然これらの情報は私達にとってとても役に立つ」

ほむら「しかしこれだけでは、巴マミの説得には不安定要素がまだ残るわ」


杏子「例えばさ、どんな不安が残るって言うのよ?」

229: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:49:37.90 ID:yfm3Bk+Fo


ほむら「一番顕著なのは、優木沙々が改心したと突っぱねる可能性」

ほむら「ここでいくらあくどい事をしていたからといって」

ほむら「見滝原に移ってからそれを続けていたとは言い切れない」


ほむら「あなたの口から巴マミにそれを証拠なしで告げてみる?」

ほむら「巴マミを間違いなく、納得させられるならそれでもいいけど」


杏子「…………」


ほむら「……まあ、証拠がどうしても揃わない場合は、残念ながらそうするしかないわね」


ほむら「とはいえここでこれ以上何かを調べても、もう何も出てこないでしょう」


杏子「じゃあどうするつもりなんだ?」


ほむら「場所と、対象を移すわ」

ほむら「これから話を訊くのは――」

230: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:53:25.55 ID:yfm3Bk+Fo
~☆

ー病院 帰り道ー


さやか(はぁ……、今日も魔法少女体験ツアーに顔出せなかったなぁ……)


さやか(この時間から顔を出そうとしても)

さやか(合流とか色々で無駄に手間取らせちゃうだろうし)


さやか(いや、一応私には、行きたいって意思はあるんだよ?)

さやか(ただ恭介が、私を求めて中々離してくれないっていうか……)


さやか(ふへへへへへへ)ニヤニヤ


??「おい、そこのアンタ」

さやか「は、はいっ!?な、なんでしょうかっ!?」ビクッ


??「な、なんだよその反応。び、びっくりさせんなよ……」ビクッ


さやか「あっ、すいません」

さやか「話しかけられると思ってなかったから驚いちゃって」


さやか「……あのー、どちら様、ですか?」

393: ◆2DegdJBwqI 2013/11/27(水) 21:24:31.06 ID:12IgSYr3o
杏子「んーとね、隣の風見野で魔法少女をやってる佐倉杏子だ」

杏子「よろしく」スッ


さやか「これは?」


杏子「お近づきの印。お菓子は嫌いか?」


さやか「いや、全然そんなことないけど」

さやか「えー、何が目的なの?佐倉さんは」


杏子「佐倉さん、じゃなくて杏子でいいよ」

杏子「アタシもさやかって呼ぶから。構わないだろ?」


さやか(あれ?なんで私の名前知ってんだ?)

さやか(……魔法少女ってことなら、あの三人の誰かから聞いたのかな?)


さやか「うん、オッケー」


杏子「まどろっこしいのはアタシも嫌いだ。それじゃあ手短に言おう」

杏子「一つさやかに、お願いがあるんだ」




杏子「――巴マミを、優木沙々の魔の手から救うため、アタシとほむらに協力してくれ」

232: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 11:59:13.39 ID:yfm3Bk+Fo
~☆


杏子「そのまま動くなよー……」


スッ

クイッ

プツン


さやか「!」


杏子「さやかに結び付けられてた優木沙々の魔力の『糸』を切った」

杏子「何か沙々に通じる変なものが自分から取れたって、感じただろ?」


さやか「う、うん……」

さやか「でもさ、それは杏子が私にそういう錯覚を起こさせる魔法をかけたから」

さやか「そんな可能性もあるわけじゃん?」


杏子「まぁアンタからすれば、そうだろうね」



杏子 さやか「…………」

233: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 12:09:48.68 ID:yfm3Bk+Fo


杏子「今現在、さやかがアタシの話をどう考えてるか、聞かせてよ」


さやか「……私としては、杏子のことを最初は信用ならないって思った」


さやか「でも、色々見せてくれた証拠全部を」

さやか「何もかも嘘だと頭ごなしに決めてかかるのは私にはできない」

さやか「似たような沙々さんの魔法を目の前で見たり、かけてもらったりしたし」


さやか「それに何より、薄々感じてたんだ」

さやか「マミさんと沙々さん、どっちもいい人なはずなのに、何かがおかしいなって」

さやか「時々ね、沙々さん凄くぞっとするような目をすることがあるの」


さやか「いい人だとは思う。思いたいんだけど……」


さやか「何か、掌の上で踊らされてるって感じるからなのかな?よくわからない」


さやか「…………」



さやか「――もしかしたら、杏子が欲しがってる確実な証拠、私、知ってるかもしれない」

234: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 12:13:43.60 ID:yfm3Bk+Fo
~☆

ー夜 まどか宅ー


ほむら「ふーん、大変だったのね」


まどか「うん。……早乙女先生可愛いのにちょっと不思議」


ほむら「理想が高すぎるのよ、きっと」

ほむら「どうせ私にはほとんど関係のない話だけど」


まどか「……ほむらちゃん、学校にもっと来ないとだめだよ」

まどか「私、ほむらちゃんとたくさん、学校とかでもお喋りしてみたいな」


ほむら「…………なるべく努力するわ」


まどか ほむら「…………」


まどか「ねえ、ほむらちゃん」


ほむら「なあに?まどか」


まどか「ほむらちゃんはどうして、私をこんなに気にかけてくれるの?」

まどか「学校を休んでまでやらなくちゃいけない用事があるんだよね?」

まどか「なのに夜の時間をほとんど毎日割いて、私とお話しするなんて……」

235: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 12:16:04.55 ID:yfm3Bk+Fo


ほむら「……本当はこうやって、あなたと顔を合わせて色々」

ほむら「魔法少女や日常のことについて話すなんて、すべきではないと思う」


ほむら「もしかしたらそれが、あなたの契約を後押ししてしまうかもしれないから」

ほむら「でも一方的に根掘り葉掘り、私に一日のことを細かく探られるのは、まどかも嫌でしょう?」


ほむら「だから――」


まどか「違うよ、ほむらちゃん」

まどか「私が言ってるのは、どうしてほむらちゃんが私だけをこんなに気にかけてくれるのか」

まどか「ほむらちゃんがなんで私をわざわざ訪ねてくれるのかに限った質問じゃないよ」


ほむら「…………」


ほむら「――とても大切な友達だから、ではダメかしら?」


まどか「…………」

236: ◆2DegdJBwqI 2013/11/01(金) 12:18:52.70 ID:yfm3Bk+Fo


ほむら「ただあえてそこに付け加えるならば」

ほむら「私にとって全く予想外のイレギュラーが発生しているから」

ほむら「そう言えるわね」


まどか「イレギュラー?」


ほむら「ええ。詳しく話すつもりはないけれど」

ほむら「そういった刺激の中で、あなたがどういう反応を示すのかというサンプル収集」

ほむら「それは、今後の対応の正確さを少しでも増すため避けて通るわけにはいかない」

ほむら「もちろんこれで終わりにできれば、それに越したことはないのは確か」


まどか「……?」


ほむら「……そんな考え方は結局のところただの臆病な保険」

ほむら「私はもしかしたらいつも、心のどこかで諦めてしまっているのかもしれない」

ほむら「いつもと違うことは、無視できない危険を孕んだ排除すべきエラー」


ほむら「しかし、この違いにこそ、あるいは私の――」

239: ◆2DegdJBwqI 2013/11/02(土) 16:13:06.11 ID:BM9C0kDqo
~☆

ー翌日 魔法少女体験ツアー終了後ー


テクテク テクテク


沙々「それで用事ってなんですか?」


さやか「…………ほむら、連れてきたよ」

スッ

沙々「!」

沙々(背後を取られた……!?)


ほむら「動かないで。動く素振りを見せたら撃つ」スチャッ

ほむら「変身もまた、動いたのと同等の行為とみなす」


バターン!


沙々「がっ……!」


ほむら「念のため、手足は拘束して、ソウルジェムは――」


さやか「ほむらっ!」


240: ◆2DegdJBwqI 2013/11/02(土) 16:14:43.87 ID:BM9C0kDqo


ほむら「…………何?」


さやか「やめて」

さやか「まだ、沙々さんが悪い奴だって、決まったわけじゃないでしょ?」


ほむら「……あなたが異議を申し立てた所で、この状況で何ができるというの?」


さやか「私は杏子に、マミさんを救うため、協力してくれって言われたんだけど」

さやか「だから自分の意見くらい、当然言うわよ」

さやか「誰が、ここに沙々さんを連れてきてあげたのか、ちゃんと考えてよね」


ほむら「…………」


ほむら「優木沙々、余計な素振りをしたら」

ほむら「すぐにその場から動けなくしてあげるから」

ほむら「私が十分にあなたから離れたら、こちらへ向き直りなさい」


スッ

241: ◆2DegdJBwqI 2013/11/02(土) 16:17:22.97 ID:BM9C0kDqo


沙々「…………ふぅ」


沙々(あ゛ー、地面に打ち付けられた所がいってぇー)

沙々(……巴マミを救うため、ってさやかは言ってました)

沙々(つまりいくらかは、わたしの『種』がばれちゃってるんでしょうね)


沙々「えっと、これはいったいどういうことですかぁ?」

沙々「わたしとマミさん、暁美ほむらの間には険悪な空気が流れてるって」

沙々「美樹さんも、もちろんわかってますよねぇ?」


さやか「それは……」


ほむら「優木沙々。質問に答えるべき立場なのはあなたの方よ」

ほむら「色々と、あなたについて調べさせてもらったわ」


ほむら「あなたはここへ引っ越すまで、沢山の人間を洗脳し、自分の思う儘に操った」

ほむら「しかもその対象は人間に限ったことではなく、魔女も含めて」

ほむら「そしてあなたは色々とやり過ぎて、あそこにいられなくなった」


ほむら「何か、私が今述べたことの中に間違いはある?」

ほむら「正直な、返答を期待しているわ」

242: ◆2DegdJBwqI 2013/11/02(土) 16:22:53.97 ID:BM9C0kDqo


沙々「…………」


沙々(ふむ、確かに色々調べたようですが)

沙々(はたしてどこまでが憶測ではなく、きちんと証拠づけられているのでしょう?)


沙々(……いや、問題はどの程度客観的な証拠を暁美ほむらが揃えているか、じゃない)

沙々(今、こちらの生殺与奪が彼女に握られていて)

沙々(かつ、握った情報がわたしを尋問するに足ると、彼女が確信できるレベルものであること)


沙々(そして、おそらく殺すという行為を彼女が躊躇ってはくれないこと)

沙々(完全に否認してしまうのは、後々自分の首を絞めることになりかねませんね)


沙々「……確かに、契約してからそういう酷いことをしていた時期はありましたよ」

沙々「なんていうか、調子に乗っちゃってたんですよね」

沙々「周囲の環境はわたしが生きるには過酷すぎて、嫉みばかりが募っていく」

沙々「そんな全てを、引っくり返せる。魔法を簡単に手に入れてしまった」


沙々「わたしのことを止められる人間は、その時周りに誰もいなかった」

沙々「過去の過ち、だったのは確かです。覆しようのないわたしの過去です」


沙々「けれどたった一度の過ちで、未来の全ては閉ざされてしまうのでしょうか?」


沙々「やり直す機会というのは、二度と与えられるべきでないのでしょうか?」

243: ◆2DegdJBwqI 2013/11/02(土) 16:24:58.47 ID:BM9C0kDqo


ほむら「…………魔女の使役については、どう考えているの?」


沙々「魔女について、ですか」


沙々「わたしがやったのは、生きていくのに魔女を利用した。たったそれだけのこと」

沙々「精神操作と魔法弾、これだけでどうやって」

沙々「魔女と戦って生きていけばよかったんですか?」


沙々「生きるためには、利用できるものは全て利用しなくてはいけなかった」

沙々「ただ、それだけのことです」

沙々「使い魔を殺さずにグリーフシードを増やそうとする、有象無象の魔法少女と一緒です」


沙々「正しいことではありませんが、非難される筋合いもそこには感じません」

沙々「特定の誰かを襲わせた、とかそういうのがあればまた別でしょうけど」


ほむら「…………」


さやか「あのさ、沙々さん」


さやか「沙々さんは、恭介を洗脳したの……?」

さやか「だから私は、恭介と付き合えたのかな……?」

244: ◆2DegdJBwqI 2013/11/02(土) 16:33:23.66 ID:BM9C0kDqo


沙々「洗脳した、という言葉にはいささか語弊がありますね」

沙々「わたしはただ、短期間で効率的に」

沙々「上条君があなたを意識するのを手助けしただけです」


沙々「裸のあなたが出てくるような夢を見せたりしてね」


さやか「なっ……!」


沙々「それに何を感じるかは、あくまで彼の感性の問題」

沙々「なるほど、そういう結果に至るよう意図して、彼にいくらか干渉したのは事実ですが」

沙々「わたしがしたことなんて、彼にあなたが一人の女の子なんだって意識させたくらいですよ」


沙々「あなた一人でも、女の子アピールさえちゃんとすれば、同じ結果になってた」

沙々「もっともあなたが一人で、そんな積極的なアピールができたとは到底思えませんけど」


さやか「…………」


沙々(よし、形勢は少し私の側へと傾きつつ――?)


ほむら「――それなら巴マミについては、どうなのかしら?」

245: ◆2DegdJBwqI 2013/11/02(土) 16:35:58.37 ID:BM9C0kDqo


沙々「へっ?」


ほむら「あなたは巴マミに、人格改竄が可能なレベルの精神干渉を行っている」

ほむら「これは冷静に見て、巴マミという人格の権利、尊厳を著しく傷つけているのでは?」

ほむら「はっきり言って、この事実だけであなたは、私にとって排除に値する対象だわ」


沙々(やっぱりこいつ、何か核心的な証拠を握ってるのか……?)


沙々「証拠は?」

沙々「まさか証拠もなしに、そんなことを主張してるわけじゃないでしょう?」


ほむら「杏子の証言と私の体験だけで、私が確信するには既に十分なのだけれど」

ほむら「……あなたが上条恭介に渡したタリスマン、とやら」


沙々「っ!」


ほむら「あれをさやかに回収してもらった」

ほむら「用事があって行けないから、お見舞いに行くついでに返して貰って下さい」

ほむら「そんなことを沙々さんに言われた、なんて言ってもらってね」


ほむら「今、同時に別の場所で、杏子がタリスマンを持って巴マミに真実を告げているところ」


次回 沙々「わたし、マミさんの弟子になりたいんです!」 後編