2: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:32:32.68 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――朝、松永涼の部屋


ぴぴぴぴ ぴぴぴぴ


涼「うーん……ふわぁ」

涼「……ねみぃ」

涼「今日は朝から拓海、夏樹とレッスンだったな……」

涼「拓海のやつ、起きてっかな? 遅刻するとヤバいから起こしてやるか」


ぷるるるるる ぷるるるるる


拓海『おう……涼か……なんだよ?』

涼「お? 起きてた?」

拓海『たりめーだろ? んで、何の用だ?』

涼「今日レッスンの日だろ? 起こしてやろうと思ってさ」

拓海『起きてるから心配すんな』

涼「じゃさ、一緒に行こうよ。ついでにアタシをバイクに乗せてって」

拓海『はぁ? んなもん一人で行け!』

涼「ケチ」

拓海『じゃあな、切るぞ』


つーつー


涼「んだよ……そんなに怒んなくてもいいじゃん」

引用元: 松永涼「ありがとう」 


 

 
3: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:33:33.65 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――事務所


ガチャ


涼「おはよーっす」

ちひろ「あら、涼ちゃん? おはよう」

涼「おはよっす……今日はなんか人少ないね」

ちひろ「そう? 普段通りだと思うけど?」

涼「気のせいかな……」

ちひろ「あっ、そうだ。涼ちゃん」

涼「ん? なに?」

ちひろ「奥の会議室は、大事なお客様が来るから立入禁止よ」

涼「わかったよ……お客様って?」

ちひろ「さあ?……とにかくお願いね」

涼「りょーかい……Pさんは?」

ちひろ「今日は朝から打ち合わせでテレビ局巡りね」

涼「そっか……」

ちひろ「今日は事務所帰れないかも……」

涼「大変だな」

ちひろ「何か用事? 伝言なら伝えとくけど」

涼「いや、いいよ。あんがと」



涼(Pがいないから静かに感じるのかな?……まさかね)

4: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:34:20.82 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――更衣室


ガチャ

涼「あれ?」

夏樹「よぉ、涼」

涼「夏樹、いたの?」

夏樹「そりゃ、いるだろ。いちゃ、マズいのか?」

涼「そんなことねーけどさ……なんか今日事務所静かじゃね?」

夏樹「別に? 普段と変わらねえよ」

涼「やっぱ、気のせいかなぁ……」

夏樹「変なやつ」

涼「あれ? そういや拓海は?」

夏樹「拓海……ああ、また寝坊じゃないか?」

涼「アタシ、今日電話で起こしたぞ?」

夏樹「マジかよ?」

涼「何やってんだよ、あいつ。カミナリ落ちてもしらねーからな」

夏樹「まあ、それもいつものことさ」

涼「ったく……」

5: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:35:25.33 ID:cEQOtEEPo


ふにゅん


涼「ひゃあああああああっ!!!」

礼子「おはよう、涼ちゃん。相変わらず育ってるわね」

涼「い、い、いきなり背後から胸揉むなよ!! びっくりしたじゃん!!」

礼子「あら? 女同士だから気にしなくてもいいじゃない? 減るもんじゃないし」

涼「気にするよっ!!」

礼子「お姉さんがバストアップのマッサージしてあげましょうか?」

涼「い、いらないって!!」


さわわっ


涼「ぎゃあああああああっ!!」

志乃「これまた素敵なヒップ。果実みたいだわ」

涼「志乃さんまで、何してんですかっ!!」

礼子「若いって素晴らしいわね」

志乃「礼子はもう手に入らないものよ」

礼子「……言ってくれるわね、同い年」

志乃「肌のハリはまだ私のほうが上よ」

6: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:36:21.74 ID:cEQOtEEPo
夏樹「おーい、涼。そろそろ行くぞー」

涼「ほ、ほらっ! な、夏樹が呼んでるから……失礼しますっ!」

礼子「あら、残念」

志乃「またゆっくりと話しましょう。ワインでも飲みながら」

涼「アタシ未成年だから!」





涼「なんなんだよ、いったい」

7: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:37:07.84 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――ダンスルーム


マスタートレーナー(以下、マス)「よし、揃ったな。それじゃあ、レッスンを行う」

涼「あっ、マスさん」

マス「なんだ? 松永」

涼「拓海がいないんすけど?」

マス「向井は今しがた連絡があった。体調不良で今日は休むそうだ」

涼「体調不良?」

マス「どうした?」

涼「い、いえ……」



涼(あのヤロー、サボりやがったな……)

8: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:37:53.31 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――昼、事務所

涼「や、やっと……終わった……」

夏樹「今日はハードだったな」

涼「ちっくしょー、拓海のやつ……いいタイミングでサボりやがって」

夏樹「まあ、そう言うな……メシでも行くか」

涼「そうだな……どこにする?」

夏樹「実はさ、前にPさんからファミレスの食事券もらってたんだ」

涼「ファミレスかぁ、いいね」

夏樹「んじゃ、いこうぜ」


がちゃ


仁奈「おはよーごぜーます」


小梅「お、おはよう……ございます」


涼「よう、揃っておでましか」

9: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:39:03.33 ID:cEQOtEEPo
仁奈「涼おねーさま、おはよーでごぜーます」

涼「おはようニナ。相変わらずウサミミ帽子か」

仁奈「ウサギの気持ちになるですよ」

涼「もうそろそろなれたんじゃないか?」

仁奈「まだまだ道はとおいでやがりますよ」

涼「奥が深いんだな」

仁奈「涼おねーさまもウサギになりてーですか?」

涼「アタシは……あの一件がトラウマだからなぁ……」

仁奈「そうでごぜーますか……」

涼「そんな顔すんなよ。いつかはウサギになれるようすっからさ」

仁奈「ほんとーでごぜーますか?」

涼「ホントさ。その時はニナ先生に教えてもらうよ」

仁奈「まかせてくれやがれです」

10: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:39:36.16 ID:cEQOtEEPo
小梅「りょ、涼さん……お、おはよう……」

涼「よっ、小梅。なんだか眠そうだな?」

小梅「だ、だいじょうぶ……」

涼「新しい映画でも見てたのか?」

小梅「う、う、うん……」

涼「んじゃ、今度見せてくれよ。アタシのオススメも持って行くからさ」

小梅「み、みたい……い、一緒に……涼さんと」

涼「あったりまえじゃん。小梅と見たほうが楽しいからさ」

小梅「えへへ……」

11: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:40:22.08 ID:cEQOtEEPo
涼「そうだ……ニナも小梅もメシ食った?」

小梅「ご、ごはん……まだ……」

仁奈「まだでごぜーます」

涼「じゃあ、一緒にファミレス行こうぜ」

小梅「で、でも……」

涼「心配しなくても奢ってやるからさ。いいよな、夏樹?」

夏樹「まあ、いいけど」


ルーキートレーナー(以下、ルキ)「あっ! ニナちゃんたちみっけ!」

涼「ん? ルキさん? 悪いけどルキさんの分は奢らないよ? 働いてるんだし」

ルキ「けちーっ……って、ちがうちがう。小梅ちゃんと仁奈ちゃんに用があるの」

小梅「??」

ルキ「次の仕事の打ち合わせ。前に言ってたじゃない?」

小梅「あっ……」

仁奈「あっ!……仁奈もわすれてやがりましたよ」

ルキ「しょうがないなー。ご飯は後でもいい?」

小梅「は、はい……」

仁奈「かしこまりましたです」

涼「んー、仕方ねえか」

夏樹「涼、そろそろ行かないと昼休みなくなるぞ?」

小梅「りょ、涼さん……ご、ごめん」

仁奈「もうしわけねーですよ」

涼「気にすんなって。また今度行こうな」

12: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:41:13.05 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――数時間後、ボイストレーニングルーム


トレーナー(以下、トレ)「はい! これで今日のレッスンは終わりです。お疲れ様でした!」

涼「おつかれさまでしたー」

夏樹「おつかれしたー」

涼「うーん! 終わった終わった! 夏樹、帰りにタワレコ寄って行こうぜ」

夏樹「え? あ、うん……」

涼「なんだよ? ノリ悪いな……なんか用事あんの?」

夏樹「そうじゃねえけど……ちょっとな」

涼「ふーん……じゃ、いいや。一人で行ってくる」

夏樹「あ! ちょっと涼……」

13: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:41:56.02 ID:cEQOtEEPo


がらっ


ベテラントレーナー(以下、ベテ)「松永! 松永はいるか?」 

涼「ここにいるよー。どしたの? ベテさん」

ベテ「お前はこの後補習だ」

涼「えええっ! そんなの聞いてないよ!!」

ベテ「今、言った。お前、ウオーキングやポージング苦手だろ?」

涼「まあ、得意じゃないけどさ……」

ベテ「私は偶然にも時間が空いている。今のうちに特訓しておけば後々役にたつ」

涼「そうだけどさ……こんな突然に……」

ベテ「四の五の言わずにやるぞ」

涼「げえーっ」


トレ「それじゃあ、姉さん。後はお願いします」

ベテ「うむ。そっちも頼んだぞ」

夏樹「へへへ、悪いな涼。ご愁傷さま」



涼「なんてこった……」

14: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:42:46.45 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――一時間後、トレーニングルーム


涼「はあ……はあ……しんどい……」

ベテ「よし、今回はこれぐらいにしといてやろう」

涼「ベテさん、鬼すぎるよ……ずっと缶詰でトレーニングなんて」

ベテ「その分、集中してやれただろ?」

涼「まあ、そうだけどさ……」

ベテ「なんだ? まだ足りないのか?」

涼「ちがうちがう! も、もういいよ!!」

ベテ「そうか。じゃあ、松永。私の後について来い」

涼「まだ、なにかあるの?」

ベテ「まあな、行くぞ」


涼「???」

15: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:43:32.91 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――会議室前


涼「ここ?」

ベテ「そうだ、扉を開けてみろ」

涼「だって、ちひろさんが立入禁止って……」

ベテ「いいから、開けてみろ。私が許可する」

涼「???」



がちゃ



ぱーんっ! ぱーんっ! ぱーんっ!



涼「うわっ! なんだなんだ?!」


小梅「せ、せーの……」



『涼ちゃん、お誕生日おめでとうーっ!!』

16: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:47:35.11 ID:cEQOtEEPo
涼「へ? へ? なになに? 誕生日?」

夏樹「待たせたな、涼。こっち入ってこいよ」

涼「え?」

夏樹「何、呆けてんだ? 今日はお前の誕生日だろ?」

涼「あっ……やべえ……素で忘れてた……」

夏樹「マジかよ」

ちひろ「はーい、おまたせー。ケーキですよー」

涼「ちひろさん、これって? 会議室は……だって」

ちひろ「ごめんね、涼ちゃん。ここは準備してたから近寄ってほしくなかったの」

涼「それでか……夏樹も知ってたの?」

夏樹「まあな。準備が意外にに手間取っててな。お前が帰りそうになった時はびっくりしたよ」

涼「あっ! じゃあ、さっきの補習は?」

ベテ「お前を帰らせないための時間稼ぎだ」

トレ「おかげで間に合いました」

ルキ「ニナちゃんも小梅ちゃんも準備忘れてたでしょ?」

小梅「ご、ごめんなさい……」

仁奈「すまねーです」

ルキ「大丈夫だよー。おかげでこんなに立派にできたんだから」

涼「トレさんたちも知ってたのか……」

17: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:48:27.35 ID:cEQOtEEPo
夏樹「よし、じゃあ……ロウソクに火をつけるからな」



『はっぴばーすでー とぅーゆー♪』

ふーっ

ぱちぱちぱちぱち



涼「あ、ありがとね……みんな。なんか……突然でちょっと戸惑ってるよ」

ちひろ「じゃあ、プレゼントタイムにいきましょうか」

18: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:49:29.75 ID:cEQOtEEPo
マス「では、我々からいこうか。トレ、例のものを」

トレ「はい。おめでとう、涼ちゃん」

涼「あ、ありがとうございます。開けてもいいかな?」

マス「うむ」


がさがさ


涼「これ……トレーニングウエアと、シューズ?」

ルキ「新製品なんだよー」

涼「こんな高級なの……なんか、勿体無くて着れないなぁ」

ベテ「何言ってる? 明日から早速使うんだ」

涼「へ?」

マス「一年間、みっちり使い込んで靴も履きつぶすんだ。また来年には新しいのをやろう」

涼「ひいぃ……手加減してくださいよ……」

トレ「ふふふっ」

19: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:50:10.29 ID:cEQOtEEPo
礼子「これは私達からよ」

志乃「開けてみて」

涼「ありがとう、礼子さん、志乃さん」


がさがさ


涼「こ、こ、これは……」

礼子「イタリア高級ブランドの最新下着よ」

涼「ちょ、ちょっと……真っ黒だし、スケスケじゃん!」

志乃「官能的だわ」

涼「あ、アタシには……ちょっと……」

礼子「大丈夫、サイズもきちんと合わせてあるわ」

涼「あっ! それって朝の更衣室で……」

礼子「ランジェリーコーディネーターとでも呼んで頂戴」

志乃「これで、大人の仲間入りね」

涼「ま、まだ子供でもいいかな?……でも、ありがとう」

20: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:52:26.95 ID:cEQOtEEPo
仁奈「仁奈はこれでごぜーます」

涼「ニナもくれるのか。うれしいな……どれどれ?」


がさがさ


涼「……ウサミミ?」

仁奈「涼おねーさま用のウサミミですよ。仁奈とおそろいでごぜーます」

涼「はははっ、こりゃいいや。ありがとな」

仁奈「今、つけてほしーですよ」

涼「へ? い、今?」

仁奈「一緒にウサギになるですよ」

涼「う、うん……こ、これで……いい?」

仁奈「おにあいでごぜーます。うさちゃんっ!!」

涼「……ぴ、ぴーす」


ぱしゃ


涼「夏樹! 写真撮るんじゃねーよ!」

21: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:53:26.83 ID:cEQOtEEPo
小梅「りょ、涼さん……こ、これ……プレゼント」

涼「悪いな、小梅……いいか? 開けても?」

小梅「……うん……気に入ってくれる……かな?」


がさがさ


涼「映画のポスターと……パンフレット?」

小梅「ど、どうかな……?」

涼「嬉しいよ、すごく! たしか……小梅が事務所に来た時、一緒に見たやつだよな?」

小梅「!……お、覚えてくれてたの?」

涼「もちろんさ。でも、これもらっていいのか? 貴重なやつだろ?」

小梅「わ、私の……宝物だったけど……涼さんにあげる」

涼「でも……」

小梅「い、いい……好きな人にもらってくれたら……その子も喜ぶ……それに」

涼「それに?」

小梅「い、い……今の宝物……涼さんだから……」

涼「こ……小梅っ!! お前ってやつは!!」

小梅「りょ、涼さん……く、くるしい……」

22: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:54:17.62 ID:cEQOtEEPo
涼「みんな……本当にありがと……アタシ……」

夏樹「あー……ちょっと待て、涼」

涼「ん? どした?」

夏樹「そろそろだから」

涼「そろそろ?」

24: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:56:34.93 ID:cEQOtEEPo


ばあんっ!!


拓海「はあっ! はあっ!……ま、間に合った……か?」 

夏樹「ギリだったな」

涼「拓海! アンタ、体調不良で……」

夏樹「まあまあ。拓海、お前の番だぞ」

拓海「お、おう……ほらっ」

涼「へ? アンタもプレゼント?」

拓海「い、いいから開けろ!」


がさがさ


涼「これ……絶版になったインディーズのCDじゃん! もう無くなったと思ってたのに……どーしたのさ?」

拓海「べ、別に……」

夏樹「こいつさ、涼が欲しそうなCDアタシに聞いたんだけどさ、どこにもなくてオークションでたまたま出品してたのを落札したんだよ」

涼「そっか……」

夏樹「でもさ、おっかしーのが、持ってる人新潟にいるんだよ」

涼「新潟?!」

夏樹「郵送だと今日間に合わないからって、こいつ高速飛ばして取りに行ったんだよな?」

拓海「夏樹っ! てめえ、バラしてんじゃねーよ!!」

夏樹「はははっ、わりーわりー」

涼「それで……アンタ……今日……」

拓海「ち、ち、ち、ちげーから! たまたま……その、そう! ツーリングのついでだ! ついで!」

涼「サンキュー、拓海。本当に嬉しいよ……ありがと」

拓海「ば、ば、ばーかっ! かしこまってんじゃねーっつうの」


夏樹「素直じゃないねえ」

25: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:58:02.62 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――数時間後


夏樹「さてと……そろそろか?」

涼「そろそろ?」

夏樹「そんじゃ、行こうか? お姫様」

涼「お姫様?……何言って……」

夏樹「まあまあ、いいからこれ被れよ」

涼「メット? これからどこか行くのか?」

夏樹「魔法は12時には解けちまうからな」

涼「???」

夏樹「そんじゃ、みんな! あとよろしくな!」



マス「頼んだぞ、木村」

小梅「い、いってらっしゃい……」

仁奈「いってらっしゃいですよ」

礼子「大人になってくるのよ」

トレ「れ、礼子さんっ!!」

志乃「若いっていいわね。大人はもう少し飲みましょうか?」

ベテ「ひ、柊……も、もう……無理……うっぷ」

ルキ「ねーねー? ケーキ残りもらっていい?」

ちひろ「まだ、食べるの?」



拓海「……ぐーっ……ぐーっ……」

夏樹「あいつは疲れてんだろうな。そっとしておくか」

26: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 21:59:19.60 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――交差点、信号待ち


涼「なあ……夏樹」

夏樹「なんだよ」

涼「みんな、なんでアタシのためにこんなに祝ってくれんだ?」

夏樹「なんでって……」

涼「だって、まだ、アタシ、みんなほど役に立ってないよ。ニナも小梅も大きい仕事持ってるのに……」

夏樹「お前、家族の誕生日祝うのに理由がいるのか?」

涼「家族……?」

夏樹「生まれた場所も年齢も違う奴らだけどさ、こうして同じ場所で同じ時間をずっと過ごしてんだ。家族みたいなもんだろ?」

涼「……」

夏樹「別にアタシらはお前から見返りがほしいワケじゃない。ニナや小梅も拓海も、お前が喜んでる顔が見たい……ただそんだけさ」

夏樹「今回も誰が言い出した訳じゃない。みんな、自分から集まってきたんだ」

涼「……夏樹……アタシ……」

夏樹「ほら、もう行くぞ。舌噛むから黙ってろ」

27: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 22:00:08.70 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――ライブハウス前


夏樹「ついたぞ」

涼「……ここって……」

夏樹「じゃあ、中に入るか」

涼「でも、電気消えてるぞ? 営業してないんじゃないか?」

夏樹「まあまあ、いいから。入った入った」

28: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 22:00:46.31 ID:cEQOtEEPo
――――――――――――ライブハウス内


夏樹「ただいま到着しましたー」

涼「えっ……」

P「悪いな、夏樹。わざわざ」

涼「Pさん……?」

夏樹「そんじゃ、カボチャの馬車は帰りまーす。ちなみに貸し切りなんで。後はごゆっくり~」

涼「ちょ、ちょ! 夏樹!」

P「涼」

涼「な、なに?」

P「すこし、座ろうか……」

涼「う、うん……」

29: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 22:01:36.64 ID:cEQOtEEPo
P「ここ、覚えてるか?」

涼「ああ……アタシが二年前までバンドで世話になったライブハウスだ……変わんないな」

P「そうだ。そして……俺がお前に初めて会った場所」

涼「……」

P「あれから、もう二年だな……早いな」

涼「なあ、Pさん」

P「ん?」

涼「アタシら、正直、第一印象悪かったよな?」

P「そうだな」

涼「びっくりしたよ……だって、バンドのボーカルをアイドルにしたいなんてさ」

P「普通はそうだよな」

涼「でも、今は感謝してる。あの事務所に行って本当に良かった」

P「そうか」

30: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 22:03:02.17 ID:cEQOtEEPo
涼「音楽しか信じるものがないアタシに、あいつら家族だって言ってくれたんだ」

P「……」

涼「ちひろさんにトレさんたち、アイドルの皆……拓海や夏樹に出会わせてくれて感謝してる」

P「そう言ってもらえると嬉しいよ」

涼「こんないい気持ちになる誕生日は初めてだ」

P「……涼」

涼「なに?」

P「俺はお前に謝らなきゃいけないことがある」

涼「……なんだよ、急に?」

31: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 22:04:19.74 ID:cEQOtEEPo
P「お前をスカウトした時、俺が言ったこと覚えてるか?」

涼「……うん」

P「俺はお前に『必ずデビューさせる』と言った」

涼「……」

P「だけど、それは今も達成できていない」

涼「Pさん……」

P「今日までにデビューを決めようといろいろ回ったんだが……ダメだった」

涼「……」

P「プレゼント、間に合わなかった……本当にすまない」

涼「……ふふっ、しょうがねーなー。ったく」

P「……」

涼「別にいいよ。デビューはアタシ自身の力でもぎ取ってみせるからさ」

P「……涼」

32: ◆yfWmR9mD4k 2013/10/01(火) 22:05:19.48 ID:cEQOtEEPo
涼「だからさ……」


とん



P「えっ」

涼「ちょっとだけ……今だけ……肩を貸してくれ」

P「……ああ」

涼「0時まであと10分……この時間をプレゼントにしてくれよ」

P「……わかった」

涼「…………Pさん」

P「ん?」




涼「ありがとう」




おわり