【 陽炎 】
『 そのハンバーグには、刻んだピーマンが入ってる 』
笑顔でおかわりをする雪風に、真実を告げるつもりはない。
『 そのカレーには、すりおろしたセロリが入ってる 』
上機嫌で大盛りをねだる時津風に、これからも言うつもりはない。
素敵なお姉ちゃんを、褒めてほしい。
陽炎はとうとうやりました。
黒潮「陽炎」
不知火「陽炎」
陽炎「やったわ!二人とも全然気付いてない」
黒潮「見事やで」
不知火「流石は陽炎です」
陽炎「自信が付いたわ!ナスでもゴーヤでも何でも来い、よ!」
黒潮「おー」パチパチ
不知火「おー」パチパチ
陽炎「今度は谷風と舞風に挑戦よ!絶対好き嫌いを無くすんだからね!」
3: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:24:12.13 ID:UVSS/yFno
【 不知火 】
うさぴょん うさぴょん なに見て跳ねる
十五夜 お月さま 見てうさぴょん
陽炎「今夜は十五夜ね」
不知火「お月見の準備が出来ました」
黒潮「風流やなー」
金剛「HEY!お邪魔しマース」バーン!
陽炎「あ、金剛さん」
金剛「アイオワを連れて来まシター!」
アイオワ「よろしくハロー」
黒潮「は、はろー」
金剛「日本の秋を教えてマース」
アイオワ「金剛ティーチャーね」
不知火「日本の秋、ですか」
4: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:25:12.92 ID:UVSS/yFno
◇
金剛「コレが花見デース!」
アイオワ「Oh!ハナミ!」
陽炎「月見です」
金剛「コレが餅デース!」
アイオワ「Oh!モチ!」
不知火「団子です」
金剛「コレがスズキデース!」
アイオワ「Oh!ワゴンR!」
黒潮「ススキやでー」
陽炎「全力で大嘘を教えてるわね」
不知火「あいかわらず絶好調です」
金剛「そして、マリファナ、デース!!」
アイオワ「Oh!マリファナ!知ってマース!!」
黒潮「紅葉やでー」
6: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:26:16.11 ID:UVSS/yFno
【 黒潮 】
黒潮「お灸?何それ、どないしたん」
陽炎「試供品で貰ってきたの」
黒潮「へー、お灸なんか初めて見るわ」
陽炎「ほら、横になって」
黒潮「はあ?ウチがやんの」
陽炎「当たり前じゃない、アンタ以外に誰がやんのよ」
黒潮「いや、ウチいらんて。お灸とかおばあちゃんやん」
陽炎「これ、効能。よく読んで」
黒潮「えー、血行促進、リラックス効果、冷え性予防……」
陽炎「もっと下」
黒潮「何々……デトックス作用にダイエットにも有効?」
黒潮「いやいや嘘やん、そんなん聞いた事ないわ」
7: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:27:31.34 ID:UVSS/yFno
陽炎「温熱効果で身体のツボを刺激するんだから、理に適ってるでしょ」
黒潮「いや、そもそもウチ太ってないし」
陽炎「アンタ体重計持ってくるわよ」
黒潮「う」
陽炎「いいから、さっさと服脱いで」
黒潮「え、何なん?ホンマにやるん。ウチ熱いのとかイヤや」
陽炎「馬鹿ね、最近のはちゃんとしてるわよ」
黒潮「えー」
陽炎「煙が出ないのとかハーブとか、色々あるんだから」
陽炎「寝てるだけで痩せて健康になれるんだから、結構な話じゃない」
黒潮「なら陽炎がやればええやん」
陽炎「私、太ってないブヒ」
黒潮「よっしゃ陽炎、ちょっと表出よか」
陽炎「アンタが痩せないからでしょ」
陽炎「ほらほら、さっさとしなさい」
黒潮「何やもう、強引やなー」
8: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:28:27.96 ID:UVSS/yFno
◇
黒潮「脱いだでー」
陽炎「スカートもよ」
黒潮「えっ?下はええよ」
陽炎「どうせなら全部やった方がいいでしょ」
黒潮「でも恥ずかしいやん」
陽炎「誰もいないのに何言ってんのよ」
黒潮「いやー、でもなー」
陽炎「むくみとかも取れるのよ。冷え性も治るし」
陽炎「それに万が一、服が焦げたらどうするの」
陽炎「ほら、さっさと脱ぎなさい」
黒潮「ホンマ強引やなー」
9: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:29:29.42 ID:UVSS/yFno
◇
黒潮「脱いだでー」
陽炎「それじゃあ もぐさ を置いていくわよ」
黒潮「何かくすぐったいわ」
黒潮「火傷とかせんやろか、痕とか残ったらイヤやわー」
陽炎「台座もあるし、そんなに高熱にならないから大丈夫よ」
陽炎「あ、ちょっと ずらすわね」ペロン
黒潮「ほわっ!?」
黒潮「なっ、何すんの? 丸見えやん!」
陽炎「ここにヒップアップのツボがあるのよ」
黒潮「アカン、アカン、お尻はアカンて」
陽炎「アンタお尻大きすぎなのよ。ちょっと引き締めなきゃ駄目」ペシペシ
黒潮「ちょっと!お尻叩かんといて!」
陽炎「あとは太ももとふくらはぎね」
黒潮「ちょっと陽炎?話 聞いてる」
陽炎「ハイハイ」
陽炎「それにしても……」
黒潮「太ってない、太ってない。違うで」
陽炎「お尻だけじゃなくて、太ももまでムチムチじゃない」
黒潮「ムチムチちゃうわ!」
陽炎「アンタこれ以上太ったら出荷するわよ」
黒潮「出荷って……何なんウチ」
10: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:30:11.87 ID:UVSS/yFno
司令「あー、ちょっといいかな?」ドアガチャバタン!
司令「新しい部屋割りについてなんだけど……」スタスタ
陽炎「あ」
司令「あ」
黒潮「えっ?」
11: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:30:48.90 ID:UVSS/yFno
◇◇◇
甘味処 間宮
司令「えーっと……餡蜜とアイス最中に、わらび餅でお願いします」
間宮「あらあら、すごいですね」
黒潮「全部大盛で!」
司令「大盛でお願いします。あと、俺にコーヒーを」
間宮「あらあら」クスクス
◇
黒潮「こんなんじゃ絶対ごまかされへんから」パクパクモグモグ
司令「何でも注文していいよ」
黒潮「あーあ、ウチ汚されてもうた。花びら散りまくりやわ」
司令「おかわりもいいよ」
黒潮「辱めやわ、くっ殺やわ、涙止まらへんわ」
司令「パフェも美味しそうだよ」
黒潮「ウチもうお嫁いかれへん」
黒潮「絶対司令はんに責任とってもらうから」
司令「モンブランフェアだって。頼んでみようか」
12: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:31:32.39 ID:UVSS/yFno
◇
黒潮「それで……えっと…」モジモジ
黒潮「ホンマのとこ……どこまで見たん」チラ
黒潮「ウチの裸」
司令「え、いや……えーっと」
黒潮「ホンマのこと言うて、ホンマのこと言うて」
司令「あー…その、全部……かな ///」(小声)
黒潮「~~~~ッ!! ///」バンバンバン!
司令「間宮さん、カステラとバナナパフェ追加で」
黒潮「大盛で!両方大盛で!あと栗ぜんざいも!」
黒潮「くううぅぅ~~~ ///」ゴロゴローッ!
黒潮「司令はんのアホ、アホ!●●●!」
司令「あー、いや、本当にスマン」
黒潮「絶対内緒やから!他の娘とか絶対やで!」
13: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:32:27.99 ID:UVSS/yFno
◇
黒潮「それで……その、どうやった?」
司令「どう、とは?」
黒潮「だからその……ウチの身体見て、どう思ったかって事やん」
司令「……いや、それは何と言うか本当にすまない」
黒潮「そうやのうて!」バンッ!
司令「?」
黒潮「へっ、変やなかった?その、何か太っ…太ってるなーとか」
司令「いや、全然。綺麗だったよ」
黒潮「~~~~ッ!!? ///」ボンッ!
黒潮「しっ、司令はんのアホ!アホアホアホーッ! ///」バシバシバシ!
雷「な、何て会話してんのよあの二人は…… ///」
電「は、はわ…はわ、はわわ…… ///」
暁「く、黒潮がレディに…レディに…… ///」
響「やれやれ、司令官も隅に置けないね ///」
14: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:34:38.31 ID:UVSS/yFno
【 親潮 】
親潮「ようやく着任出来ました」
親潮「みんな元気でしょうか。早く黒潮さんに会いたいです」
黒潮「親潮ー!」ダダダーッ
親潮「!」
黒潮「おかえりー!会いたかったでー」ダキーッ
親潮「黒潮さん!あたしも!あたしも会いたかったです」
黒潮「うんうん、また一緒やなー」
15: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:35:22.48 ID:UVSS/yFno
黒潮「あんな親潮、聞いて聞いて」
黒潮「陽炎がな、ウチの事いじめんねん」
親潮「ッッ!?」
黒潮「毎日顔を合わす度にな、ひどい事ばっかり言うんや」
親潮「そ、そんなまさか」
黒潮「ホンマやん。こないだもお灸据えたる!言うてな、嫌がるウチに熱いのをな」
親潮「し、信じられません……」
黒潮「不知火も一緒になってウチを追いかけ回すんや」
黒潮「ウチもう、泣いて泣いて」
親潮「いじめなど言語道断です!」
親潮「どんな理由があるにせよ、決して許されるものではありません」
親潮「分かりました。この親潮から厳しく言わせてもらいます」
黒潮「さすが親潮や、親潮だけがウチの味方や」ホロリ
親潮「お任せ下さい。ビシッと言ってやります!」
黒潮「うんうん、言ったって言ったって、ビシッと言ったって」
16: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:36:05.68 ID:UVSS/yFno
親潮「ところで黒潮さんは、いつ式を挙げられたのですか」
黒潮「えっ?」
親潮「綺麗だったでしょうね、ウエディングドレス。親潮も見たかったです」
黒潮「ウチ、ドレスなんか着てないで」
親潮「え?白無垢だったのですか」
黒潮「いや、そうやのうて」
親潮「和装もいいですよね……着任が遅れたのが本当に悔やまれます」
黒潮「そもそも式を挙げてないんやって」
親潮「何と!そうなのですか」
黒潮「そらそうやで」
親潮「えっと、それは敵の殲滅を果たしてから改めて……という事ですか」
黒潮「敵?殲滅?」
親潮「ふむ、まあ比較的平穏と言えど一応は戦時下ですしね」
親潮「全て終わってからの方が、順序としては正しいのかもしれません」
黒潮「いや、だからケッコン自体してないんやて」
親潮「は?」
黒潮「式も挙げてないし、指輪も貰てない」
親潮「それはつまり……事実婚、という事ですか」
黒潮「は?」
親潮「確かに深い絆と信頼があれば、形式に拘る必要はありませんが……」
親潮「婚前交渉というのは、あまり感心出来ませんね」
黒潮「婚前交渉て」
17: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:36:54.83 ID:UVSS/yFno
親潮「それで、今は何カ月なんですか」
黒潮「」
黒潮「何カ月って……何の事やろ」
親潮「何を呑気な。お身体は大丈夫なのですか」
黒潮「全然平気やで」
親潮「なるほど、もう安定期なのですね」
黒潮「黒潮って安定感あるなー(物理)とはよく言われるけど」
親潮「名前はもう決められましたか」
黒潮「名前って言われてもな」
親潮「男なら勇ましく、黒剛、黒龍、黒鷹……」
親潮「女なら慎ましく、黒鶴、黒鳳、黒驤……」
黒潮「いやいや、何も決めてないって」
親潮「まあ、顔を見てからの方がいいですかね」
18: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:37:25.24 ID:UVSS/yFno
黒潮「よし親潮、少し落ち着こうな」
親潮「ああっ、あたしとした事が気が付きませんで」
親潮「立ちっぱなしは身体に障りますよね。どこかゆっくり座れる場所へ」
黒潮「そんなん全然平気やで。昨日だって出撃してきたし」
親潮「なっ、なんて事を!」
親潮「お腹の子に何かあったらどうするのですか!」
黒潮「」
親潮「責任感の強い方ですから、無理をするのは分かります」
親潮「しかし、もう貴方ひとりの身体ではないのですよ」
黒潮「いや、そら体重は二人分やけど……」
親潮「そうですよね、二人分ですものね。お腹空きますよね」
黒潮「いや別に。さっきたこ焼き食べたし」
親潮「もっと栄養のあるものを食べないと」
親潮「鯉こくなんていいと聞きますね、浦風に頼んでおきましょう」
黒潮「鯉こくって何やろ」
19: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:38:10.96 ID:UVSS/yFno
親潮「どうしました難しい顔をして、何か不安でも」
黒潮「そら不安にもなるわ」
親潮「安心して下さい。このお尻なら大丈夫です」ペシペシ
黒潮「ちょっ!?親潮? ///」
親潮「陽炎型で一番の安産型ですから。浜風にだって負けてません」
黒潮「いや、ウチお尻全然大きくないし、違うし」
親潮「何を言っているのですか、これだけ立派なら全然大丈夫ですよ」パシパシ
親潮「元気な子がバンバン産めます。何の心配もいりません」
黒潮「ウチはアンタが心配やわ」
親潮「腰もお腹も張りがあって、順調そうですね」サスサス
黒潮「メッチャ優しくお腹撫でられてる」
親潮「うふふ、親潮叔母さんでちゅよ~。早く会いたいでちゅね~」
黒潮「その聖母みたいな顔やめて」
親潮「新しい生命の鼓動、小さな息吹を感じます」ナデナデ
黒潮「幻聴やで」
親潮「あ、動いた」
黒潮「」
20: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:39:30.21 ID:UVSS/yFno
【 初風 】
妙高「おはようございます」
提督「ああ、おはよう妙高……ん?」
提督「おや、今日は髪型が違うんだね」
妙高「はい、気分転換に」
提督「髪を下しているのは初めて見たよ」
妙高「あら、そうでしたか?うふふ」
提督「うん、とてもよく似合っているよ」
妙高「ありがとうございます」
21: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:40:17.30 ID:UVSS/yFno
提督「しかし随分と印象が変わるもんだね」
妙高「提督はどちらの髪型がお好きですか」
提督「うーん、難しい質問だね」
妙高「どっちでもいいは駄目ですよ」クスクス
提督「あはは、参ったね……でも、本当にどちらも同じくらい素敵だよ」
提督「やっぱり元がいいからかな」
妙高「あら、お上手ですね」
提督「いやー、ははは」
初風「……」ムー
22: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:41:14.79 ID:UVSS/yFno
提督「こうして見ると、意外に髪が長いんだね」
妙高「結んでいると分かりませんよね」
提督「うん、さらりと伸びてとても綺麗だ」
妙高「うふふ、触ってみます?」
提督「いや、それは…… ///」
妙高「遠慮なさらず、さあどうぞ ///」
初風「……」ピキピキ
初風「デレデレしてんじゃないわよっ!」ガスッ!
提督「ぐはあッ!?」
初風「もう執務中なんだからね!ほら、早く書類を片付けるわよ!」
妙高「あらあら」
23: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:41:49.58 ID:UVSS/yFno
◇◇◇
提督『違う髪型も新鮮だね、よく似合っているよ』
提督『元がいいからかな、どちらも素敵だよ』
提督『綺麗な髪だね、ああ、触ってみたいなぁ』
初風「……」
初風「……」ゴソゴソ
初風「……」キュッキュッ
初風「……」
初風「……駄目だ」
初風「普段やらないから上手く結えない」シュン
24: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:42:35.11 ID:UVSS/yFno
陽炎「あら初風、何してんの」
初風「あ、陽炎」
陽炎「リボン?結んであげよっか」
初風「え、あの」
陽炎「ほらほら、そこ座って」
初風「う、うん……」
陽炎「アンタがリボンなんて珍しいわね」
25: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:43:54.95 ID:UVSS/yFno
陽炎「それじゃ最初に少し梳くわね」スッスッ
陽炎「しっかしアンタ、本当に綺麗な髪ね」
初風「そんな事ないわよ、普通よ」
陽炎「いやいや、毛先までサラッサラじゃない」
陽炎「このままシャンプーのCMとか出れる勢いよ」
初風「何よそれ」クス
陽炎「それで、えーっと、どんな風に結ぶ?」
初風「どんな風って……」
陽炎「ポニテ、ツイン、サイド、何でも出来るわよ」
初風「あ、えーっと……どうしよう」
陽炎「何よ、決めてないの」
陽炎「とりあえず色々やってみる?」
初風「う、うん」
26: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:44:37.79 ID:UVSS/yFno
陽炎「瑞鳳さん」ズイ
陽炎「瑞鶴さん」ズイ
陽炎「加賀さん」デデン!
陽炎「アンタ何でも似合うわね」
初風「そ、そう?」
陽炎「変わった所で浦風とか」ウラー
初風「フレンチウルーラーね」ウララー
陽炎「お、これも意外と」
初風「あの子よくこんな面倒くさい髪型にしてるわね」
陽炎「仕方ないわねー、浦風は金剛さん愛しちゃってるから」
初風「まあ、分かるけど」
27: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:45:34.13 ID:UVSS/yFno
陽炎「アンタは?妙高さんの真似しないの」
初風「私は……無理よ」
陽炎「無理って」
初風「妙高姉さんみたいにはなれない。あんなに大人っぽくなれない」
陽炎「あー、まあ妙高さんは特別ね」
初風「ちょっと目標として遠すぎるわ」
陽炎「身近にいるじゃない」
初風「えっ」
陽炎「目標になりそうな、素敵なお姉さん」ニコニコ
初風「……見当たらないわね」キョロキョロ
陽炎「んー?」
初風「愉快なのはいるけど」
陽炎「アンタ角刈りにするわよ?」グリグリグリ
初風「ちょっ、いたっ、痛いって、止めなさいよ!」ギャース!
陽炎「お姉ちゃん大好きって言いなさい」グリグリー
初風「誰が言うか……って、本当に痛いっての!こら!」フシャー!
29: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:47:39.64 ID:UVSS/yFno
【 雪風 】
鎮守府の、近場の山も秋模様。
赤に黄色に鮮やか燃えて、深まる季節を映し出す。
されど雪風、紅葉狩りには興味なし。
歓喜の歌を奏でつつ、どんぐり拾いに精を出す。
雪風「どんぐりころころ♪」
時津風「どんぐりこー♪」
黒潮「どんぐりこ、ちゃう。どんぶりこ、や」
雪風「はわ」
時津風「どんぶりこー?」
黒潮「せや、どんぶりこ」
雪風「どんぐりなのに?」
黒潮「どんぐりなのに」
時津風「どんぶりこー♪」
雪風「どんぶらこー♪」
黒潮「どんぶらこは桃や」
時津風「ふえ」
雪風「桃なのに?」
黒潮「桃なのに」
リットリオ「日本語難し過ぎでしょ」
ローマ「子供向けの歌でこのレベルよ……」
リベッチオ「どんぶりこー♪」
30: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:50:44.84 ID:UVSS/yFno
【 天津風 】
那智「ハロウィンとは何だ」
足柄「はあっ?嘘でしょ、知らないの」
那智「いや、何となくは分かるんだが」
足柄「お化けの恰好をして家を回るの」
足柄「トリック・オア・トリート……お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、ってね」
足柄「まあ、私も詳しい事は知らないんだけどね」
那智「ああ、うん。そうだよな」
那智「子供が仮装して、大人がお菓子をあげるんだよな」
足柄「まあ、簡単に言うとそうね」
31: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:51:28.25 ID:UVSS/yFno
那智「で、何で私達が変装しているんだ?」
足柄「変装じゃないわよ、コスプレよ」
那智「うむ、話が通じてないな」
足柄「姉さんはドラキュラとフランケンどっちがいい?」
那智「変装するのはお菓子を貰う方だろう」
足柄「そうよ?当たり前じゃない」
那智「いや、待て、不思議そうな顔をするな。不思議なのはお前の頭だから」
足柄「は?姉さん、あんまり分からない事ばかり言ってると怒るわよ」
那智「いや、だから分からないのはお前だろう」
足柄「もうっ、しっかりしてよね」
32: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:52:08.75 ID:UVSS/yFno
◇◇◇
足柄「ハッピーハロウィーン♪」ガルーン!
天津風「何よその恰好」
足柄「狼男。あ、女だから狼女ね」
天津風「何のつもり?」
足柄「だってハロウィンだし」
天津風「ハロウィン明日だけど」
足柄「えっ」
天津風「明日」
足柄「……」
天津風「……」
足柄「ハロウィン・イブ?」
天津風「ないわよ、そんなの」
足柄「……」
天津風「……」
足柄「トリック・オア・トリート」
天津風「話を聞きなさいよ」
33: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:52:55.52 ID:UVSS/yFno
足柄「お菓子」
天津風「だからないわよ」
足柄「……カツ?」
天津風「もっとないわよ」
足柄「何でないのよ!ハロウィン・イブよ!」
天津風「知らないわよ」
足柄「せっかく張り切って来たのに」
天津風「そもそも違うから、逆だから。私が貰う方だから」
足柄「お菓子がないなら悪戯になるわよ」
天津風「本当に話を聞かないわね」
足柄「今なら いのと愉快なの、二つから選べます」
天津風「最低の選択肢ね」
足柄「どっちにする?」
天津風「どっちも嫌よ」
足柄「ワガママ言わないで」
天津風「ワガママじゃないから、違うから」
34: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:53:49.31 ID:UVSS/yFno
◇
谷風「あっ、那智じゃん?どうしたの」
那智「む、谷風か」
谷風「那智も きなこ棒食べる?」
那智「いらん」
那智(コイツはいつも何か食べているな)
谷風「それで、何なのその恰好」
那智「む、これはドラキュラだ」
谷風「はあ?何それ」
那智「ハロウィンだからな」
谷風「ハロウィン明日だよ」
那智「明日はお前達が主役だろう。私達はお菓子を渡す係だ」
谷風「え、それで代わりに今日コスプレしてんの」
那智「足柄が強引にな」
谷風「そんなにお祭りが楽しみだなんて、那智って意外と可愛いね」
那智「足柄が、強引に、な!」
谷風「あ、ちょっと待ってて。それじゃあ、お菓子をあげるよ」
那智「いや、だから菓子はいらんと」
谷風「駄目だよハロウィンなんだから。お菓子かイタズラを選ぶんだよ」
那智「む、それは……」
谷風「大丈夫だって、谷風さんのとっておきだからさー」
35: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:54:53.40 ID:UVSS/yFno
◇
足柄「お待たせー」
那智「どうだった」
足柄「ええ、軽く失神させてきたわ」
那智「何やってんだお前」
足柄「明日仕返しされちゃうかもね~」ワクワク
那智「何でちょっと嬉しそうなんだ」
足柄「いいのよ。これであの子も少しはやる気になるでしょ」
足柄「放っておくと、すぐ一歩引いて傍観しちゃうんだから」
那智「まあ……確かに天津風には、どこか冷めている部分があるにはあるな」
足柄「見てるだけじゃ駄目なの。自分も輪に入って楽しまなきゃ、思い出なんて増えないわ」
那智「ふむ」
36: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:55:53.06 ID:UVSS/yFno
足柄「そっちは?谷風の所に行ったんでしょ」
那智「ああ、それなんだが、菓子を貰った」
足柄「はあ?姉さん何、駆逐艦からお菓子巻き上げてんのよ」
那智「まっ、巻き上げてなどいない!押し付けられたんだ」
足柄「お菓子って、コレ?たくさんあるわね」ポテフ
那智「ああ、めちゃウマらしい」ヨッチャンイカ
足柄「へー……あ、ホントだ。美味しい」ポリポリ
那智「ビールが欲しくなるな」モキュモキュ
足柄「どっかで買って帰る?」
那智「浮かれ過ぎだろう」
足柄「いいじゃない、お祭りだし」
那智「ハロウィンは明日だぞ」
足柄「ハロウィン・イブよ」
那智「なんだそれは」クス
足柄「あ、こっちもイケるわね」ポリポリ
37: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:57:07.49 ID:UVSS/yFno
【 時津風 】
鳳翔「また、お祭があるみたいですね」
時津風「そうだよ!みんなウキウキだよ!」
鳳翔「えーっと、パンプキンでしたっけ?」
時津風「ハロウィンだよっ!惜しいけど全然違うよ」
鳳翔「あらあら」ウフフ
時津風「お化けがたくさん来るんだよー」
鳳翔「あら、それは大変ですね」
時津風「そうだよー、イタズラとかいっぱいするよー」
鳳翔「えっと、退治すればいいのかしら?」弓矢ジャキィン!
時津風「うあうあー、そんなの駄目だよ!お化けがかわいそうだよー!」
鳳翔「あらあら」
38: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 02:57:51.25 ID:UVSS/yFno
時津風「イタズラしないように、お菓子をあげるんだよ」
鳳翔「お菓子ですか」
時津風「そうだよー、たくさんあげた方が喜ぶよ」
鳳翔「それではお菓子を用意しておかないといけませんね」
時津風「うんうん!チョコなんていいみたいだよ」
鳳翔「そうなんですか。それではチョコレートをたくさん買っておきましょう」
時津風「うんうん!いいかもね、いいかも!」ニコーッ
鳳翔「楽しみですね、パンプキン」
時津風「ハロウィンだよー」
39: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:01:05.81 ID:UVSS/yFno
【 浦風 】
鎮守府の中庭。その一角に香る異国の風。
石の花壇にレンガの畳。
木製のベンチとブリキの雑貨。
オーナメントは好みに合わせ、古くても趣味のいいものを。
バラにベコニア、ビオラやアイビー。
咲く花は季節と共に顔を変え、されど変わらず庭を潤す。
イングリッシュガーデン。
柔らかな情調に満たされて、ここでは少しだけゆっくりと風が吹く。
40: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:02:05.90 ID:UVSS/yFno
◇◇◇
浦風「今日は姉を連れてきたんよ」
雪風「こんにちは、雪風です」
時津風「時津風だよっ!よろしくね」
金剛「ようこそWelcomeデース」
榛名「とっても可愛らしいですね」
霧島「それでは、どうぞこちらに」
比叡「楽しんでいってくださいね!」
41: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:03:19.10 ID:UVSS/yFno
金剛「今日のおやつはberry pieデース」
雪風「榛名さんが作ったの!?すごーい!きれー!」
時津風「すごーい!お店みたいだよ!」
比叡「榛名は金剛型の名パティシエですから!」
榛名「いえ、そんな」テレテレ
霧島「紅茶もありますよ。ダージリンにアッサム、ウバなんかも」
金剛「hmm……フーム……」チラ
雪風「おやつ、おやつ♪」キャッキャッ
時津風「うれしい、うれしい♪」キャンキャン
金剛「二人にはこれデース!」
金剛「ブリティッシュロイヤルミルクティー!」
金剛「英国王室御用達のスペシャルメニューネー!」
42: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:04:08.39 ID:UVSS/yFno
金剛「クイーンやプリンセスもお気に入りデース!」
雪風「すごーい!!」
時津風「お姫様なの!?」
金剛「今日は二人の為に、特別に用意しまシタ」ニコ
雪風「ふ、ふわわ~」
時津風「すごいよ、すごいよ」
比叡「はいどうぞ、お姫様」
雪風「よ、よきにはからうです」
時津風「か、かたじけないでござる」
霧島「二人ともそれじゃあサムライよ」
榛名「普通で大丈夫ですよ」クス
43: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:05:00.44 ID:UVSS/yFno
時津風「おいしーい!甘ーい!」
雪風「すっごく、すっごく、おいしいです!」
霧島「浦風もどうぞ。こっちは砂糖控えめですよ、お姫様」
浦風「あ、ありがとう、ですのよ?」
霧島「プッ、何よそれ。何で疑問形なのよ」
浦風「む、難しいのぉー」タハハ
比叡「熊野さんとか上手そうですよね」
浦風「あれは本物のお嬢様じゃけー」
霧島「お嬢様といえば、こないだ最上型の皆さんとお茶しましたよ」
霧島「皆さん紅茶にも、とても詳しくて」
霧島「香りだけで銘柄を言い当てたのには驚きました」
浦風「ほー、たいしたもんじゃねぇ」
榛名「普段からよく飲まれているみたいです」
榛名「コーヒーよりも紅茶派との事でした」
浦風「ウチも紅茶派」
雪風「雪風はカルピス派です」キリッ
時津風「時津風はねぇ、メロンソーダ派だよ」
榛名「それはまた、随分強烈な派閥ですね」クスクス
44: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:05:56.24 ID:UVSS/yFno
霧島「銘柄だけでなく淹れ方や歴史など、皆さん博識でした」
霧島「やはり好きな分野には、自然と詳しくなるのかもしれませんね」
雪風「ゆ、雪風も紅茶の事、知ってます!」
時津風「時津風だって詳しいよ!」
榛名「あら、そうなのですか」
雪風「えっと、えっと……りぷとんです!」
時津風「あとね、午後の紅茶ってのもあるんだよ」
金剛「Oh!ユッキーは物知りですネー」
霧島「時津風もよく知っていましたね」
比叡「二人ともすごいです!」
榛名「榛名、感心しちゃいました」
時津風「えへへ~ ///」ニコニコー
雪風「雪風はお姉ちゃんですから! ///」フンス フンス!
美しい景色と穏やかな風。
美味しい紅茶に、楽しいおしゃべり。
姉妹がいて、友達がいて。今日があり、明日がある。
欲しいものはすべてここに。
大切なものはすべてここに。
今日という日が心地よかった。
45: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:08:19.29 ID:UVSS/yFno
【 磯風 】
赤や黄色も鮮やかに、山も可憐に衣替え。
敷き詰められた秋の中、恵みを求めてやれ進む。
今日は楽しい栗拾い。夜の予定は栗ご飯。
磯風「見てくれ、大漁だ」
浦風「どう思う」ヒソヒソ
浜風「絶対、毒です」ボソボソ
大きな籠に山盛りのキノコを抱え、颯爽と磯風が現れた。
46: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:09:09.21 ID:UVSS/yFno
磯風「キノコの事はよく分からんが、多分松茸だと思う」
浦風「そんなカラフルな松茸があるか」
浜風「アレです、よく魔女とかが持ってるやつです」
浦風「栗拾ってこい言うたのに、何でキノコ採ってくるんじゃ」
磯風「栗なんかいらないだろ。甘いし」
浜風「甘いからいいんじゃないですか」
磯風「いらんいらん。余計なバルジが付いてしまう」
浦風「くっ、スレンダーめ……」
47: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:09:51.09 ID:UVSS/yFno
磯風「キノコの方がいいだろう。炊き込みご飯にホイル焼き、何でも出来るぞ」
浦風「毒じゃなかったらな」
浜風「待って下さい。鳳翔さんならもしかして、毒キノコかどうか分かるかもしれません」
浦風「浜風」
浜風「はい」
浦風「磯風を甘く見るな」
浜風「……ッ!」
浦風「磯風の持ってきたキノコだぞ?」
浦風「そんなもん毒キノコか、これから毒になるキノコかのどっちかじゃ」
浜風「逃げ道は無いんですか」
浦風「こんなモン持ち帰ったら、ウチらだけじゃなくみんなに迷惑が掛かる」
浦風「絶対にここで食い止めるで」
浜風「は、はい」
48: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:10:29.54 ID:UVSS/yFno
浦風「い、磯風。どうじゃろうか、キノコはここに置いて帰っては」
磯風「何を言っているんだ、せっかく採ってきたのに」
浜風「それは、その……熊、そう!熊さんのご飯です」
磯風「む?」
浜風「そんなに持ち帰ったら、山の熊さんや鹿さん達が困ります」
浦風「そうじゃそうじゃ、食べ物が無いと熊が山から降りてくるで」
浜風「町のみんなにも迷惑が掛かってしまいますよ」
磯風「う、うむ……それは困るな」
浜風「持ち帰るのは思い出だけにしましょう」
浦風「はい!今、浜風いいこと言うた!」
磯風「な、なら野草はどうだろうか」
浜風「野草?」
磯風「秋の七草だ。キノコのついでに摘んできた」
浦風「野草なら……まあ」
浜風「キノコじゃなければ何でもいいです」
磯風「そうか!よし、それじゃあキノコは置いて帰ろう」
浦風「それで、野草ってのは何じゃ」
浜風「トリカブトとかじゃないでしょうね」
磯風「うむ、野草の事はよく分からんが、多分山菜だと思う」
浜風「山菜ですか、どれどれ……」
49: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:11:37.14 ID:UVSS/yFno
マンドラゴラ(Mandra(゚Д゚)ゴルァ!!)
魔界に咲く毒草。
根は人の形をしており、引き抜くと悲鳴を上げる。
その声を聞いた者は死ぬ。
ちなみに根も葉も花も全てが毒で、食べた者はもれなく死ぬ。
浦風「」
浜風「」
50: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:12:37.28 ID:UVSS/yFno
浦風「お前……どしたんやコレ」
磯風「崖にたくさん生えてたから、根こそぎ抜いてきた」
浜風「えっと……叫び声とか聞こえませんでしたか」
磯風「キャンキャンうるさいから、思いっきり地面に叩きつけたら静かになったぞ」
浜風「それって死んだんじゃ……」
浦風「何この悪魔」
浜風「磯風、身体は大丈夫ですか?」
磯風「身体?全然平気だぞ。鍛えているからな」
浦風「コイツ本当に凄いな」
浜風「長門さんみたいですね」
磯風「よし、今晩はごちそうだな。腕が鳴るぞ」
浦風「食べれるんか、コレ」
浜風「絶対、毒です」トオイメ
浦風「逃げ道は無いんか……」トオイメ
51: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:13:48.14 ID:UVSS/yFno
【 浜風 】
浜風「提督、上着の裾がほつれています」
提督「あっ、本当だ。どこかで引っ掛けたかな」
浜風「これくらいならすぐに直せます。脱いでもらえますか」
提督「え?ここで」
浜風「すぐですから」
提督「あ、ああ」
52: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:14:28.64 ID:UVSS/yFno
~ 数分後 ~
浜風「はい、終わりました」
提督「おお、ありがとう。もう終わったんだ」
浜風「少し綻んでいただけですから。これくらいなら簡単です」
提督「料理だけでなく裁縫まで出来るなんて、浜風はすごいなぁ」
浜風「ありがとうございます」
提督「うんうん、将来いいお嫁さんになるよ」
浜風「いえ、そんな ///」
提督「でも、よく裁縫セットなんて持っていたね」
浜風「普段から持ち歩いているので」
提督「えっと……あんまり詳しくないんだけど、女子ってみんなそうなのかな」
浜風「いえ、私だけだと思います」
提督「だよねぇ。ちょっと珍しいよね」
浜風「必要に迫られまして」
提督「そうなの?」
浜風「ボタンをよく失うので。あとはシャツが破れたりとかも」
提督「ええー…それは意外だね」
浜風「恥ずかしながら」
提督(そんなにヤンチャそうには見えないけどなぁ)
53: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:15:29.48 ID:UVSS/yFno
浜風「さて、執務に戻りましょう」
提督「うん、そうだね。それじゃあ、棚の資料を取ってくれるかな」
浜風「上の棚ですね」
提督「ああ、届くかな。椅子を出そうか」
浜風「大丈夫です。手を伸ばせば何とか……」グググ
ブチッ ブチッ バイーンッッ!
提督「あっ」
浜風「キャーッ!?」
提督(胸のボタンが弾け飛んだ)
浜風「あ、あっちを向いて下さいっ」
提督「あ、ああ、すまない」
浜風「あっ、あの、ちょっと縫いますから、その」
提督「わ、わかった。向こうを向いてるから」
浜風「……」
提督「……」
浜風「み、見ましたか?」
提督「い、いや全然!何も見えなかったよ、うん」
浜風「…… ///」
提督「…… ///」
浜風「つまり、その……こういう事です」
提督「ああ、うん、理解したよ。制服はもうワンサイズ上を発注しよう」
浜風「すみません…… ///」
54: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:17:34.12 ID:UVSS/yFno
【 谷風 】
出掛ける支度をしていると、めざとく谷風がやって来た。
清霜から話を聞き付けて、慌ててここに来たようだ
谷風「寿司屋に行くんだって?谷風も連れてっておくれよぅ」
生粋の江戸っ子である谷風にとって、寿司は欠かせぬソウルフードなのだと言う。
那智(お前のソウルフードは、寿司ではなくてお菓子だろう)
那智は心の中でそう思ったが、口に出すのは止めておいた。
那智「別に構わんが、退屈だぞ」
谷風「がってんだー!」パアアァ!
”生粋の江戸っ子”という言葉の意味を、那智は百回くらい教えたが。
大阪生まれ広島育ちの谷風は、大きく「うん!」と答えるだけで、最後まで理解を示さなかった。
武蔵「フッ、随分待たせたようだな」
果たして約束の時間になると、のそり、と武蔵がやって来た。
足元にはいつものように、清霜が纏わりついて離れない。
那智「いや、時間通りだ」
清霜「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
55: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:18:42.35 ID:UVSS/yFno
◇
那智「冷酒を二合と、先ずは刺身を引いてくれ」
武蔵「こいつらには茶碗蒸しを頼む」
那智「お前達はちらし寿司でも食うか?」
谷風「てやんでい、べらんめい!江戸っ子は握りって決まってらぁ!」
那智「ほう」
谷風「旬のネタを好きにつまむのが粋ってもんでい!」
武蔵「ふむ」
谷風「ちらし寿司なんて女子供の食うもんさぁ!」
那智(いや、だからお前は思いっきり女で子供だろう)
清霜「わたしも好きなの選びたいです」
武蔵「よし、なら食べたいものを注文しろ」
清霜「やったー!わたし玉子ー!」
谷風「よっしゃー!谷風さんも玉子ー!」
那智(旬だなぁ……)
武蔵(粋だなぁ……)
56: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:19:32.05 ID:UVSS/yFno
◇
谷風「玉子うめーっ!」
清霜「茶碗蒸し美味しい!」
那智「刺身にはやはり日本酒だな」
武蔵「ああ、酒が進むな」
清霜「武蔵さん、他にも何か頼んでいい?」
武蔵「好きにしろ」
清霜「やったー!じゃあ清霜はねぇ、きゅうり巻きー!」
谷風「ばっか、おめえそういう時は、カッパ巻きって言うんだよ」
清霜「何だよー、きゅうりじゃんかー」
谷風「かあーっ!清霜は物を知らねぇな。谷風さんはマグロ巻きな!赤いやつ!」
那智「鉄火巻きだな」
武蔵「うむ、鉄火巻だ」
店主「あいよ、鉄火巻ね!」
谷風「お、おぅ… ///」
清霜「鉄火巻じゃんかよー!」
谷風「う、うっせーやい ///」
57: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:20:11.31 ID:UVSS/yFno
清霜「でも、どうして鉄火巻きって言うの?」
武蔵「諸説あるんだが……」
那智「有名なのは、鉄火場の巻き寿司で、鉄火巻きだ」
清霜「鉄カバって何?」
谷風「そりゃおめえ、鉄のカバだよ」
清霜「カバが鉄なの!?強そうだね」
谷風「メッチャ強いよ」
清霜「ビームとか出る?」
谷風「そりゃロボだからな」
清霜「すごーい!強ーい!」
谷風「これでムーミン谷も安泰だぜ」
那智「安泰だな」
武蔵「ああ、安泰だ」
58: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:20:50.80 ID:UVSS/yFno
◇
武蔵「寝たか」
那智「ああ」
武蔵「好きなものを食べて満足して寝る。結構な事だ」
那智「しかし安上がりだな。玉子と細巻きくらいしか食べてない」
武蔵「ふむ」
那智「ウニでもイクラでも、何でも食べていいんだが」
武蔵「別に遠慮した訳でもあるまい」
那智「まあ、好きなのを食べるのが一番か」
59: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:22:51.85 ID:UVSS/yFno
◇
那智「さて、そろそろ握ってもらおうか」
武蔵「うむ、赤だしも欲しいな」
那智「それでは握りをお任せで。酒はもういいから赤だしを頼む」
店主「あいよ」
武蔵「あ、あと玉子を追加で」
那智「玉子?」
武蔵「いや、何となくな」
那智「まあ、目の前であんなに旨そうに食べられてはな」クック
武蔵「そういう事だ」フッ
那智「じゃあ、私にも追加してくれ。玉子」
店主「あいよ」
武蔵「何だ、お前もか」
那智「何となく、さ」フフッ
61: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:27:59.69 ID:UVSS/yFno
【 野分 】
年頃の娘のお腹を守る、あったか柔らか毛糸のパンツ。
一枚一枚心を込めて、鳳翔さんの手編みです。
萩風「朝夕めっきり冷えてきたね」
嵐「すぐ冬になるよ。寒いのヤダな」
舞風「ん?野分、何コレ」
野分「毛糸のパンツです。人数分あります」
嵐「はあ?毛糸のパンツ」
野分「鳳翔さんから頂きました。手編みとの事です」
舞風「えー…?」
62: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:28:51.46 ID:UVSS/yFno
那珂「こんなの那珂ちゃん穿けないよ!アイドルだもん!」
萩風「私もちょっと恥ずかしいかも」
野分「しかしせっかく編んでくれたのに、一度も穿かないというのは」
嵐「う……」
萩風「でも、ねぇ…」
野分「暖かそうですよ」
舞風「それは分かるけどさぁ」
野分「まあせっかくですし、ちょっとだけ穿いてみては」
野分「誰かに見られる訳でもありませんし」
嵐「まあな、鳳翔さんにも悪いもんな」
野分「それでは穿いてみましょう」
嵐「毛糸のパンツなんて初めてだな」
野分「……」ゴソゴソ
嵐「……」モゾモゾ
63: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:29:36.88 ID:UVSS/yFno
野分「ふおおおおおおーーっ!?」
嵐「うああああああーーっ!?」
那珂「!?」ビクッ!
萩風「なっ、何?」
舞風「野分どうしたの?」
嵐「すげーよ!何だコレ!何だコレ?」
嵐「メチャクチャあったかい!何なんだよこれは?」
野分「ふ、フィット感が凄いです、凄すぎます」
嵐「萩風穿いてみ、穿いてみ?これホント凄いから」
萩風「そ、そうなの」
野分「舞風も是非、これは尋常ではありません」
舞風「う、うん」
萩風「……」イソイソ
舞風「……」ハキハキ
64: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:30:32.45 ID:UVSS/yFno
萩風「はあああああぁぁんん!?」
舞風「ふわああああああーー!?」
那珂「ッ!?」ビクビクッ!
萩風「吸い付くような……包み込むような……」
萩風「だ、ダメっ、声が出ちゃう……!」ガクガク
舞風「熱い……お腹が熱いよぉ……」
舞風「立ってられないよぉ……」ブルブル
那珂「えっ?え?」
野分「毛糸なのにシルキィ、パンツなのにギルティ」
那珂「のわっち、頭大丈夫?」
嵐「身体を守るような……心を攻められるようなこの感覚」
那珂「何言ってんのか全然分かんないよ」
65: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:31:33.46 ID:UVSS/yFno
野分「那珂ちゃん、これ凄いです」ズイ
嵐「那珂ちゃんもほら、早く」ズズイッ
那珂「だ、駄目だよ……那珂ちゃんは、那珂ちゃんは」
萩風「はあああぁぁあんっ!」
萩風「だ、ダメ……身体がっ、疼いて」
萩風「この火照りを、誰か止めて……!」ハアハア
舞風「あちゅい……お股があちゅいよぉ……」フラフラ
那珂「み、みんな!しっかりして」
嵐「那珂ちゃん!早く!那珂ちゃん!」
那珂「駄目だってば、那珂ちゃんアイドルなんだから……」
野分「那珂ちゃん!穿いて!那珂ちゃん!」
那珂「あ、あう……那珂ちゃん…アイドル……」
萩風「那珂ちゃん!ほらほら!那珂ちゃん!」
那珂「毛糸のパンツなんて……そんなの、そんなの……」
舞風「那珂ちゃん!今だよ!那珂ちゃん!」
那珂「え、ええーーいっ!!」パーンツ!
那珂「…………」
66: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:32:34.50 ID:UVSS/yFno
那珂「んっああああああぁぁーーっ!!」ナッカチャーン!
那珂「来たよ!凄いよ!情熱パッションだよ!」
嵐「那珂☆chan!那珂☆chan!」
那珂「新世代の愛犬と薔薇城の天使はね!」
野分「那珂☆chan!那珂☆chan!」
那珂「砂糖菓子の島で小さな星を飾るんだよ!」
萩風「那珂☆chan!那珂☆chan!」
那珂「那珂ちゃん歌うよ!みんないくよ!」
舞風「那珂☆chan!那珂☆chan!」
那珂「暁の水平線に!勝利のシンデレラだよっ!!」
嵐「恋の!」アラッ!
野分「ツー!」ノワッ!
萩風「フォー!」ハギッ!
舞風「イレブン!」マイッ!
那珂「シンデレラ!!」ナッカチャーンッ!!
キャーッ キャーッ ナッカチャーンッ!! ナッカチャーンッ!!
ミンナアリガトー! ナカチャンダヨー! ダイスキダヨー!
神通「ちょっと、ふざけ過ぎじゃないでしょうか」
川内「慕ってくれてるみたいだしさ、いいんじゃないかな」
67: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:33:29.17 ID:UVSS/yFno
【 嵐 】
嵐「ただいまー」
萩風「おかえりー、お菓子あるよ」
嵐「お菓子?食べる食べるー」
萩風「今日はすごいよー」ジャーン!
嵐「わー、ゴーフルじゃん!どうしたの」
萩風「熊野さんから貰ったの」
嵐「熊野さんって、あの重巡の」
萩風「演習で一緒になってね、お茶会に招待してくれたんだ」
嵐「へー、いいなぁ」
68: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:34:24.31 ID:UVSS/yFno
萩風「最上型の人、みんないたよ」
嵐「まだ最上さん達と話した事ないんだけど、どうだった」
萩風「みんないい人ばかりだったよ」
嵐「怖くない?」
萩風「ぜーんぜん!最上さんは気さくだし、鈴谷さんは面白いし」
嵐「三隈さんは?」
萩風「三隈さんは……うん、不思議だった」
嵐「不思議なの」
萩風「くまりんこって言ってた」
嵐「くまりんこなの」
萩風「ウチには中々いないタイプだよね」
嵐「他所にも中々いないタイプだと思うよ」
69: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:35:09.33 ID:UVSS/yFno
萩風「そういえば球磨さんもクマクマ言うよね」
嵐「クマクマ言うね」
萩風「筑摩さんは言わないね」
嵐「筑摩さん言わないね」
萩風「でも、代わりに利根さんが のじゃのじゃ言うよ」
嵐「バランスかー」
萩風「バランスだねー」
70: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:35:49.95 ID:UVSS/yFno
萩風「紅茶の茶葉も分けてもらったから、淹れてみるね」
嵐「紅茶にゴーフルって、何だか上品だね」
萩風「お嬢様みたいだねー」
嵐「あ、でもティーポットとかないよ」
萩風「うーん、急須でいいんじゃないかな」
嵐「急須かー、急に庶民的になったね」
萩風「普段はティーパックだもんね」
71: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:36:31.28 ID:UVSS/yFno
嵐「ゴーフルおいしいね」
萩風「おいしいね」
嵐「紅茶もおいしい」
萩風「おいしいね」
嵐「お嬢様っぽいよね」
萩風「ぽいぽい」
嵐「今ならお嬢様ライセンスとか貰えそう」
萩風「貰えるかな」
嵐「紅茶だよ?ゴーフルだよ?いける予感だよ」
萩風「でも急須だよ」
嵐「あー、急須かー」
萩風「急須じゃ駄目ですか」
嵐「惜しかったねー」
萩風「お嬢様への道は険しいねぇ」
72: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:37:10.42 ID:UVSS/yFno
【 萩風 】
リベッチオ「これ、何?」
萩風「お箸だよ」
リベッチオ「オハシ?」
萩風「日本ではこれを使うんだよ」
リベッチオ「ふーん」
萩風「便利だよ。切ったり挟んだり、何でも出来るんだよ」
リベッチオ「すごーい」
萩風「やってみる?」
リベッチオ「うん!」
73: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:37:51.06 ID:UVSS/yFno
◇
リベッチオ「うーん……ツルツル滑って難しいよ」
萩風「最初はそうかもね。でも、すぐに使えるようになるよ」
リベッチオ「そうかなー」
萩風「リベなら出来るよ!」
リベッチオ「うん!練習するね!」
~ 一週間後 ~
リベッチオ「じゃじゃーん!」パシパシパシ!
萩風「わあ、すごーい!上手になったねー」
リベッチオ「えへへー、これでバッチリだよ~」
萩風「すごいすごい、みんな驚くよ」
リベッチオ「えへへ、そうかな~」
萩風「きっとたくさん褒めてくれるよー」
リベッチオ「それじゃあ、みんなに見せてくるねー」ウキウキ
74: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:38:32.85 ID:UVSS/yFno
◇
リベッチオ「なに食べてるの~」
黒潮「んー?たこ焼きやでー」
リベッチオ「リベに任せてー!」スチャッ!
黒潮「アカンで。これはな、爪楊枝で食べるんや」
リベッチオ「そうなの?」
黒潮「たこ焼きを箸で食べるとか、アホの子やでー」
リベッチオ「そうなんだー」
◇
リベッチオ「なに食べてるの~」
浦風「お好み焼きじゃ」
リベッチオ「リベに任せてー!」スチャッ!
浦風「そりゃいけんのぉ。お好みはヘラで食べるもんで」
リベッチオ「そうなの?」
浦風「箸とか素人のする事じゃ。通は鉄板でヘラじゃけぇ」
リベッチオ「そうなんだー」
◇
リベッチオ「なに食べてるの~」
谷風「もんじゃもんじゃー」
リベッチオ「リベに任せてー!」スチャッ!
谷風「てやんでい、べらんめえ!」
谷風「コテを使わねえとは、どういう了見でい」
リベッチオ「箸じゃ駄目なの?」
谷風「かあーっ、話になんねぇ。どこのおのぼりさんだよ」
リベッチオ「そ、そうなんだー」
75: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:39:38.66 ID:UVSS/yFno
◇
野分「雑炊にはレンゲですよ」
◇
雪風「オムライスはスプーンで食べます!」
◇
不知火「おにぎりに箸を使うのはおかしいですね」
◇
リベッチオ「うわああーーん!練習したのにいいーー!!」ダダダーッ!
萩風「あらあら」
76: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:42:23.37 ID:UVSS/yFno
【 舞風 】
舞風「野分、はい、あーん」
野分「ま、舞風、恥ずかしいですよ」
舞風「いいからいいから。ほら、あーん」
野分「う、うう……あ、あーん」パク
舞風「えへへー」
野分「もう、舞風ったら」
大和「仲がいいですね」
野分「や、大和さん!」
舞風「大和さん、こんにちは」
野分「すみません、お見苦しい所を ///」
大和「いえいえ、とても微笑ましいですよ。羨ましいくらいです」
舞風「えへへ、舞風と野分はね、とーっても仲良しなんだよ」
大和「うふふ、まるで恋人同士みたいですね」
野分「し、姉妹ですから ///」
77: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:42:59.45 ID:UVSS/yFno
舞風「大和さんも武蔵さんと仲良しだよねー」
大和「え?え、ええ……そうですね」
野分「大和さん?」
舞風「喧嘩でもしたの」
大和「いえ、そういう訳では」
大和「仲が悪い訳ではないのですが、お二人のようには……なかなか」
舞風「あー、武蔵さんちょっと怖いもんね」
野分「こら!舞風!!」
大和「いえ、いいんです。言いたい事 分かります。悪気がないのもね」
舞風「あ、あの、大和さんごめんなさい」
大和「いいんですよ。確かに武蔵には、少し近寄りがたい雰囲気があります」
大和「無口で無愛想ですし……正直、何を考えているのか分からない所もあって……」
野分「大和さん……」
大和「でも、昔は違ったんです」
大和「素直で優しくて……幼い頃の武蔵は、本当に可愛い いい子でした」
78: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:44:04.49 ID:UVSS/yFno
~回想~
むさし『おねえちゃあーん』タタター
大和『はい?』クルッ
むさし『おねえちゃん、だいしゅき!』ダキッ
大和『あらあら』
むさし『むしゃしはね、大きくなったら、およめさんになるの!』
大和『あら、おませさんね。誰か好きな人がいるの?』
むさし『やまとおねえちゃん!』
大和『まあ、武蔵ったら』
むさし『おねえちゃんは?むしゃしの事、しゅきー?』
大和『ええ、とっても。大好きですよ』ニッコリ
むさし『やったー!』
79: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:45:39.07 ID:UVSS/yFno
武蔵「大和おおおおおおーーッ!! ///」
大和「!?」ビクッ!
武蔵「何を訳の分からない事を言っているんだお前はあああーーッ!!」
大和「え、でも、全部本当の事ですし……」
武蔵「ええい!黙れ黙れ黙れーーッ! ///」
金剛「Hey!ムシャシー!懐かしい話をしていますネー」
武蔵「どこから来た金剛!お前は帰れ!」
霧島「む?金剛お姉さまに何ですかその態度は、ムシャシ!」
武蔵「よし!霧島!お前も帰れ!」
日向「騒がしいな、少し静かにしてくれないかムシャシ」
武蔵「よし、分かった!お前ら全員黙らせてやる!」ジャキインッ!
大和「止めて下さいムシャシ!いい子だから」
武蔵「よし!分かった!全員敵だな!よし!」
ドカーン! ドゴーン! ドカーン!!
キャーッ! ムシャシー! ムシャシーッ! キャーッ!!
野分「……仲いいですね、大和さん達」
舞風「だから心配しなくて大丈夫だってー」
80: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:46:21.11 ID:UVSS/yFno
【 秋雲 】
お菓子を抱え部屋に戻ると、姉達が血まみれで死んでいた。
衣服もズタズタに引き裂かれ、身動きどころか呻き声すら聞こえない。
ハロウィンパレードの本番を控え、ゾンビコスは万全の仕上がりのようだ。
大音響でスリラーを流すと軽快に踊り出した。ゾンビのくせに全員やたらと動きがいい。
食材の調達に向かった洞窟で、荒れ狂う蝙蝠の群れに襲われた磯風の気持ちを、少しだけ理解する。
オイテケー オイテケー ガルボオイテケー
オイテケー ワタシフランー ズルイワタシモー
こんな状況でも、しるこサンドは人気がない。
81: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:47:16.78 ID:UVSS/yFno
陽炎「スナック菓子もたまにはいいわね」 プリッツ
不知火「種類も随分と豊富です」 チップスター
黒潮「こんなにあると迷ってまうな~」 じゃがりこ
親潮「今日はどこに行ってもお菓子が貰えますね」 ムーンライト
初風「いたずらする暇がないわね」 ルマンド
雪風「お菓子もっと食べたいです」 ハッピーターン
天津風「まだ足りないの?」 フラン
時津風「こんなんじゃ全然だよー」 どうぶつビスケット
浦風「お菓子なら提督さんの所にたくさんあったで」 とんがりコーン
磯風「うむ、大きなダンボールが置いてあったな」 ガルボ
浜風「あんまり欲張ると迷惑なんじゃ……」 カントリーマアム
谷風「提督はそんなケチくさい男じゃねえって」 キャベツ太郎
野分「それでは決を採りましょう」 アルフォート
嵐「ルールはいつも通りでいいんだよな?」 キットカット
萩風「うん。全会一致でのみ、議決だよ」 ポッキー
舞風「それじゃあ、賛成の人は手を挙げてー」 クリームコロン
秋雲「提督の所にお菓子を貰いに行きたい人ー!」 しるこサンド
全員「はーい♪」
陽炎「決まりね。陽炎型駆逐艦隊、全艦!抜錨よ!!」(颯爽)
82: ◆36RVFTz/1g 2016/10/17(月) 03:48:02.58 ID:UVSS/yFno
以上です。
読んでくれた人ありがとう。
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