カランコロンカラン
マスター「いらっしゃいませ」
P「ども」
瞳子「Pさん……ここって」
P「ああ、俺と瞳子が初めて会ったバーだよ」
マスター「ああ、どなたかと思えば瞳子さんにPさんじゃないですか。お久しぶりですね」
P「ええ、お久しぶりです。とりあえず、瞳子が良く飲んでたの二つ下さい」
マスター「かしこまりました」
P「ほら、瞳子隣座れよ」
瞳子「え、ええ……」
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引用元: ・服部瞳子「彼に連れられたバーで過ごす十月十一日」
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(5) (電撃コミックスEX)
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2: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 00:54:55.95 ID:8eFJHDuL0
P「瞳子」
瞳子「何かしら?」
P「誕生日、おめでとう」
瞳子「えっ……」
P「悪いな。ロマンチックとかそういうの、苦手でさ。いいシチュエーションとか作れなかった」
瞳子「……気にしないで。祝ってくれるだけで嬉しいから」
P「そうか。……もう一つ、謝る事がある」
瞳子「もう一つ……?」
P「ああ。…………悪い。あの時の約束、まだ果たせなくて」
瞳子「…………」
瞳子「何かしら?」
P「誕生日、おめでとう」
瞳子「えっ……」
P「悪いな。ロマンチックとかそういうの、苦手でさ。いいシチュエーションとか作れなかった」
瞳子「……気にしないで。祝ってくれるだけで嬉しいから」
P「そうか。……もう一つ、謝る事がある」
瞳子「もう一つ……?」
P「ああ。…………悪い。あの時の約束、まだ果たせなくて」
瞳子「…………」
3: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 00:55:42.41 ID:8eFJHDuL0
――――
P『こんばんはー』
マスター『おや、Pさんいらっしゃいませ。何にしましょう』
P『あはは、懐寒いんで一番安いヤツで』
マスター『ふふ、かしこまりました』
P『…………お』
瞳子『…………』
P『……あの人、いつも来てるな』
マスター『……惚れましたかな?』
P『間違っちゃいないかな。ちょっと声かけてみます』
マスター『ご武運を』
P『こんばんはー』
マスター『おや、Pさんいらっしゃいませ。何にしましょう』
P『あはは、懐寒いんで一番安いヤツで』
マスター『ふふ、かしこまりました』
P『…………お』
瞳子『…………』
P『……あの人、いつも来てるな』
マスター『……惚れましたかな?』
P『間違っちゃいないかな。ちょっと声かけてみます』
マスター『ご武運を』
4: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 00:56:36.62 ID:8eFJHDuL0
P『隣、いいかな』
瞳子『……どうぞ』
P『……名前、聞いても?』
瞳子『……服部瞳子よ』
P『瞳子、か。どこかで聞いたような……まあいいか。俺、こういう者なんだけど』
瞳子『……CGプロダクション……?』
P『あんたさえ良かったら……ウチでアイドル目指してみないか?』
瞳子『……名前を聞いておきながら、私をアイドルに誘うなんて、何かの皮肉?』
P『へ……?』
瞳子『いえ、ごめんなさい。少し自意識過剰だったみたい。知らなくても当然よね』
瞳子『……どうぞ』
P『……名前、聞いても?』
瞳子『……服部瞳子よ』
P『瞳子、か。どこかで聞いたような……まあいいか。俺、こういう者なんだけど』
瞳子『……CGプロダクション……?』
P『あんたさえ良かったら……ウチでアイドル目指してみないか?』
瞳子『……名前を聞いておきながら、私をアイドルに誘うなんて、何かの皮肉?』
P『へ……?』
瞳子『いえ、ごめんなさい。少し自意識過剰だったみたい。知らなくても当然よね』
5: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 00:57:37.52 ID:8eFJHDuL0
P『……服部、瞳子…………そうだ、思い出した。七、八年前だったか、そんな名前のアイドルが……』
瞳子『ええ、それが私よ。結局、夢を掴むことなく、リタイアしてしまったけどね』
P『…………』
瞳子『悪いけど、私はもうあの舞台に立つことは出来ないわ』
P『…………何があったかは、聞かない。多分、言いたくないだろうしな』
瞳子『そうしてもらえると、嬉しいわ』
P『でもな、そのカバンの中……』ガサガサッ
瞳子『あ、ちょっと……』
P『アイドル雑誌だ。最近の号なのに、何度も何度も読み返したようにボロボロ……』
瞳子『…………』
瞳子『ええ、それが私よ。結局、夢を掴むことなく、リタイアしてしまったけどね』
P『…………』
瞳子『悪いけど、私はもうあの舞台に立つことは出来ないわ』
P『…………何があったかは、聞かない。多分、言いたくないだろうしな』
瞳子『そうしてもらえると、嬉しいわ』
P『でもな、そのカバンの中……』ガサガサッ
瞳子『あ、ちょっと……』
P『アイドル雑誌だ。最近の号なのに、何度も何度も読み返したようにボロボロ……』
瞳子『…………』
6: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 00:58:30.88 ID:8eFJHDuL0
P『まだ、未練があるんじゃないのか?』
瞳子『……全く無い、といえば嘘になるわ』
P『なら……』
瞳子『でもね、一歩踏み出せないのよ。あの時の事を思い出すと』
P『…………』
瞳子『思い出す度に、肩も脚も震えだして……結局こうしてお酒に逃げる。もう何度もね』
P『…………』
瞳子『もう私は、あのスポットライトを浴びられないのよ。分かるでしょ?』
P『…………いや、そうは思わないな』
瞳子『え……?』
瞳子『……全く無い、といえば嘘になるわ』
P『なら……』
瞳子『でもね、一歩踏み出せないのよ。あの時の事を思い出すと』
P『…………』
瞳子『思い出す度に、肩も脚も震えだして……結局こうしてお酒に逃げる。もう何度もね』
P『…………』
瞳子『もう私は、あのスポットライトを浴びられないのよ。分かるでしょ?』
P『…………いや、そうは思わないな』
瞳子『え……?』
7: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 00:59:31.12 ID:8eFJHDuL0
P『本当にその気が無いなら、名刺を見た時点でさっさと帰ったっておかしくない』
瞳子『…………』
P『もう舞台には立てない、もうスポットライトは浴びられない。でも……』
瞳子『…………』
P『まだ《立ちたい》んじゃないか? まだ《浴びたい》んじゃないか?』
瞳子『! ……』
P『瞳子にその気があるのなら、俺にサポートさせてくれ。必ずお前を、大きなステージに上がらせてやる』
瞳子『…………いいの? トラウマを抱えた女って、面倒よ?』
P『面倒なら、とっくに何人も抱えてるよ。今更一人増えたってどうってことないさ』
瞳子『……ふふっ、面白い人ね……』
瞳子『…………』
P『もう舞台には立てない、もうスポットライトは浴びられない。でも……』
瞳子『…………』
P『まだ《立ちたい》んじゃないか? まだ《浴びたい》んじゃないか?』
瞳子『! ……』
P『瞳子にその気があるのなら、俺にサポートさせてくれ。必ずお前を、大きなステージに上がらせてやる』
瞳子『…………いいの? トラウマを抱えた女って、面倒よ?』
P『面倒なら、とっくに何人も抱えてるよ。今更一人増えたってどうってことないさ』
瞳子『……ふふっ、面白い人ね……』
8: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 01:01:23.40 ID:8eFJHDuL0
マスター『またお越し下さい』
P『明日、空いてるか?』
瞳子『ええ』
P『そうか、なら十時にプロに顔出してほしい。形式的にオーディションを受けてもらう』
瞳子『分かったわ。……ねえ、Pさん』
P『どうした?』
瞳子『私を大きなステージに、って……約束よ?』
P『……ああ、もちろん。お前を不死鳥みたいに舞い戻らせてやる』
瞳子『ふふ、頼もしいわね。じゃあ、また明日』
P『ああ、またな』
P『明日、空いてるか?』
瞳子『ええ』
P『そうか、なら十時にプロに顔出してほしい。形式的にオーディションを受けてもらう』
瞳子『分かったわ。……ねえ、Pさん』
P『どうした?』
瞳子『私を大きなステージに、って……約束よ?』
P『……ああ、もちろん。お前を不死鳥みたいに舞い戻らせてやる』
瞳子『ふふ、頼もしいわね。じゃあ、また明日』
P『ああ、またな』
9: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 01:02:17.28 ID:8eFJHDuL0
――――
P「まだ、お前に大きな仕事を回してやれてない。……約束は、まだ果たせてない」
瞳子「そんな…………」
P「俺の腕が悪いからだな。瞳子、本当にすまん」
瞳子「……気にしないで、Pさん。だって……」
P「だって……?」
瞳子「私はPさんのお陰で、またアイドルをやろう、って思えたんだから。それだけでも充分よ」
P「瞳子……」
瞳子「それに、期限は決まってないわ。まだまだチャンスはあるってことよ」
P「……ありがとな」
瞳子「ええ」
P「まだ、お前に大きな仕事を回してやれてない。……約束は、まだ果たせてない」
瞳子「そんな…………」
P「俺の腕が悪いからだな。瞳子、本当にすまん」
瞳子「……気にしないで、Pさん。だって……」
P「だって……?」
瞳子「私はPさんのお陰で、またアイドルをやろう、って思えたんだから。それだけでも充分よ」
P「瞳子……」
瞳子「それに、期限は決まってないわ。まだまだチャンスはあるってことよ」
P「……ありがとな」
瞳子「ええ」
10: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 01:02:58.19 ID:8eFJHDuL0
P「まさか、瞳子から励まされるとはな」
瞳子「あら、それはどういう意味かしら?」
P「ああ、悪い悪い。……っと、そうだ。プレゼントがあるんだ」
瞳子「私に? 何かしら……」
P「ほら、これ」
瞳子「……イヤリング……?」
P「オパールだよ、十月の誕生石。石言葉は真実・友情、あと……」
瞳子「……希望、ね」
P「何だ、知ってたのか」
瞳子「……ふふ、ありがとうPさん。最高の誕生日プレゼントよ」
瞳子「あら、それはどういう意味かしら?」
P「ああ、悪い悪い。……っと、そうだ。プレゼントがあるんだ」
瞳子「私に? 何かしら……」
P「ほら、これ」
瞳子「……イヤリング……?」
P「オパールだよ、十月の誕生石。石言葉は真実・友情、あと……」
瞳子「……希望、ね」
P「何だ、知ってたのか」
瞳子「……ふふ、ありがとうPさん。最高の誕生日プレゼントよ」
11: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 01:03:43.24 ID:8eFJHDuL0
マスター「…………」スッ
P「ん?」
瞳子「あら……このお酒、頼んでいないけど?」
マスター「お気になさらず。私からのバースデープレゼントです」
瞳子「そういうことなら、ありがたくいただくわ」
P「こういう所に連れて来ておいてなんだけど、あんまり飲みすぎるなよ?」
瞳子「大丈夫よ、こう見えて心がけてるから」
P「……まあ、いいか。マスター、俺ももう一杯お願いします」
マスター「はい、Pさんの分はしっかり料金いただきますがね」
P「……手厳しいことで」
P「ん?」
瞳子「あら……このお酒、頼んでいないけど?」
マスター「お気になさらず。私からのバースデープレゼントです」
瞳子「そういうことなら、ありがたくいただくわ」
P「こういう所に連れて来ておいてなんだけど、あんまり飲みすぎるなよ?」
瞳子「大丈夫よ、こう見えて心がけてるから」
P「……まあ、いいか。マスター、俺ももう一杯お願いします」
マスター「はい、Pさんの分はしっかり料金いただきますがね」
P「……手厳しいことで」
12: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 01:04:45.94 ID:8eFJHDuL0
マスター「またお越し下さい」
P「……うっぷ」
瞳子「人に飲みすぎるなと言っておいて、それじゃあ格好つかないわね」
P「面目ない……」
瞳子「それで明日大丈夫なの?」
P「あ、ああ……俺明日オフだから……」
瞳子「ああ、そうだったわね。……じゃあ明日みんなにこのイヤリング自慢してまわろうかしら」
P「ぶっ!? そ、それだけはやめてくれ……留美さんに吊るし上げを食らう……」
瞳子「ふふ、冗談よ」
P「冗談に聞こえなかったぞ……」
P「……うっぷ」
瞳子「人に飲みすぎるなと言っておいて、それじゃあ格好つかないわね」
P「面目ない……」
瞳子「それで明日大丈夫なの?」
P「あ、ああ……俺明日オフだから……」
瞳子「ああ、そうだったわね。……じゃあ明日みんなにこのイヤリング自慢してまわろうかしら」
P「ぶっ!? そ、それだけはやめてくれ……留美さんに吊るし上げを食らう……」
瞳子「ふふ、冗談よ」
P「冗談に聞こえなかったぞ……」
13: ◆JZ7iYv4mkA 2013/10/11(金) 01:05:20.16 ID:8eFJHDuL0
瞳子「……ねえ、Pさん」
P「ん?」
瞳子「正直に言うと私、あなたにスカウトされてからもまだ迷ってた」
P「…………」
瞳子「またダメなんじゃないか、なんて、最初のころはずっと考えてた」
P「…………」
瞳子「でも、今は…………」
瞳子「…………お仕事、とても楽しいわ」
おわり
P「ん?」
瞳子「正直に言うと私、あなたにスカウトされてからもまだ迷ってた」
P「…………」
瞳子「またダメなんじゃないか、なんて、最初のころはずっと考えてた」
P「…………」
瞳子「でも、今は…………」
瞳子「…………お仕事、とても楽しいわ」
おわり
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