1 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:03:32 ID:8oWg21Is
山道を歩く二人組。

オーク「いやぁ~、ヒマだな。いつまで続くんだよ、この道は」

女騎士「まったくだな」

オーク「ジャンケンでもするか?」

女騎士「よかろう」

オーク「ジャーンケーン」

女騎士「ぽんっ!」 




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2 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:05:45 ID:8oWg21Is
オーク「オレの勝ちだな!」

女騎士「くっ……!」

オーク「……」

女騎士「……」

オーク「やっぱり、ただジャンケンするだけじゃつまんねーな」

女騎士「ああ、早くどこか町なり村にたどり着きたいものだ」 


3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:07:14 ID:8oWg21Is
20分後──

オーク「お、あんなところに屋台があるじゃねえか」

オーク「えぇ~と……クレープ屋みてえだな」

女騎士「ちょうどいい、寄っていこうではないか」

オーク「そうすっか!」 

4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:09:27 ID:8oWg21Is
クレープの屋台に入る二人。

コソ泥「へい、らっしゃ──」

コソ泥(ゲ!?)

コソ泥「へ、へへへ……。ようこそいらっしゃいました、オークさん、女騎士さん」

オーク「お、コソ泥じゃねえか。たしか、昔どこかで会ったよな」

女騎士「今、一瞬イヤな顔をしなかったか?」

コソ泥「イヤだなぁ、そんなことありゃしませんよ。へへへ……」 

5 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:12:10 ID:8oWg21Is
クレープをほおばる二人。

女騎士「ふむ、なかなかの味だ」モグモグ…

オーク「やるじゃねえか」ガツガツ…

コソ泥「へ、へへへ……どうも……」

女騎士「味はよいが、キサマのような小物のことだ」

女騎士「どうせこの屋台も、まともな手段で始めたわけではないんだろう?」

コソ泥「ま、まったくその通りでさぁ……さすが女騎士さんは鋭いですねぇ!」

女騎士「相変わらずだな、まったく」 

6 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:15:15 ID:8oWg21Is
クレープをたらふく平らげた二人。

オーク「あ~、食った食った」

オーク「お代は? いくら払やいいんだ?」

コソ泥「なにをおっしゃる! お二人から代金を取るなんてしませんよ!」

コソ泥「魔物兵団で最強を誇っていたオークさんと」

コソ泥「騎士団のエースだった女騎士さんがフリーになってコンビを組んだってのは」

コソ泥「兵士や賞金稼ぎはもちろん、あっしらの世界でも有名ですからねぇ~」

女騎士「フリーになったといっても、正式に騎士の位を返上したわけではないから」

女騎士「今でも私は騎士で、オークも兵団の一員なのだがな」

コソ泥「こ、こいつぁとんだ失礼を!」ペシッ 

7 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:17:10 ID:8oWg21Is
オーク「じゃあ、またな」

女騎士「達者でな」

コソ泥「へへへ、毎度~!」

コソ泥「……」

コソ泥(ふぅ~、助かったぁ……) 

8 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:20:59 ID:8oWg21Is
女騎士「すっかり腹がふくれたな」

オーク「おう、満腹だ」ポンポン

女騎士「おかげで体力も回復したし、どこか村があればよいのだが……」

オーク「そうだな……久々に楽しみたいしな」

オーク「──と、ウワサをすりゃあ、あそこに小さな村があるぜ!」

オーク「あれなら、あと30分も歩けば着きそうだ!」

女騎士「よし……あそこに向かおう」 

9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:24:16 ID:8oWg21Is
女騎士たちが向かおうとしている村では、事件が起こっていた。

強盗A「ボス、村人どもは全員ロープで縛り終わりました!」

ボス「よぉ~し、じゃあ金目のもんを根こそぎ奪うぞ!」

強盗A「へいっ!」

強盗B「ヒャッホー!」



村長「おのれ……強盗団め!」

村人「ちくしょう……! これじゃ手も足も出ない!」

少年「うぇぇ~ん!」

村娘「なんて人たちなの……!」

老婆「神よ……あやつらに天罰を……」 

10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:27:26 ID:8oWg21Is
ボス「ま、そう睨むなって」

ボス「運がよけりゃあ、誰かが通りがかって、てめぇらを解放してくれんだろ」

ボス「もっとも、その頃にゃ俺たちはどこか遠くに行ってるだろうがな!」

強盗A「ギャハハハハハ!」

強盗B「ヒャハハハハハ!」



村長「くそう、なんということじゃ……!」

村長(こんな辺境を通りがかる兵士などおるわけないし……)

村長(もはや絶望的じゃ……! 全部奪われてしまう……!) 


11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:30:01 ID:8oWg21Is
しばらくして、女騎士とオークが村にたどり着いた。

女騎士「なんだ……誰もいないのか?」

オーク「いや、そうでもないようだぜ」

オーク「向こうから、わずかに声が聞こえる」

女騎士「なにかあったのかもしれんな……行ってみるか」 

12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:32:55 ID:8oWg21Is
村の隅っこに、縛られた村人たちと戦利品を品定めする強盗団の姿があった。

強盗A「こりゃ、なかなかいい宝石ですぜ! 売れば10万Gにはなる!」

強盗B「こっちもだ!」

強盗C「ド田舎の奴らは案外掘り出し物を持ってるって読みは、大当たりでしたね!」

ボス「おうよ!」



女騎士「……」

女騎士「どうやら、村人は全員強盗によって、ロープで縛られているようだ」

オーク「よ~し、ならオレたちでジャマな強盗を片付けちまうか!」

女騎士「ああ!」 

13 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:35:03 ID:8oWg21Is
ボス「よし、金目のものは全部積んだか?」

強盗A「へいっ!」

強盗B「バッチリです!」

村長「ううう……おのれ!」

ボス「水と食料だけは置いてってやるよ。へっへっへ、感謝するんだな」

ボス「よし、とっととずらかるぞ!」



オーク「おっと待ちな」ザッ…

女騎士「逃がすわけにはいかんな」ザッ… 

14 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:37:25 ID:8oWg21Is
強盗A「なんだァ!?」

強盗B「何者だ!?」

村長「おお……きゅ、救世主じゃ!」

村人「た、助けてくれえっ! こいつらを……やっつけてくれ!」

ボス「……なんだお前らは?」



オーク「こいつら、どうやらオレたちのことを何も知らないようだぜ」

女騎士「フッ、好都合ではないか」 

15 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:40:16 ID:8oWg21Is
ボス「かっこつけやがって……お前らなんか知るか! こいつらぶっ殺せぇっ!」

強盗A「へいっ!」

強盗B「こんな時に村に来るなんて、運が悪かったな!」

ウオォォォ……!



女騎士「さてと……やるか」チャキッ

オーク「おうよ!」ズウンッ

剣を構える女騎士、斧を構えるオーク。 

16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:43:13 ID:8oWg21Is
女騎士「愚か者どもめ……我が剣を受けよ!」

シュパァッ! スパァッ! シュバッ!

「ぐわっ!」 「ひいっ!」 「ぎゃあっ!」

女騎士の剣で強盗が次々に斬り倒される。



オーク「さぁて、大暴れしてやるぜぇ!」

ズガァッ! ドゴォッ! バゴォッ!

「ぎゃっ!?」 「ぐはっ!」 「ぐげっ!」

オークの斧で強盗が次々になぎ倒される。



強盗団はあっという間にボス一人となった。 

17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:45:52 ID:8oWg21Is
ボス「バッ、バカな……なんて強さだ!」

ボス「!」ハッ

ボス「まさかお前ら……。女騎士とオーク……!?」

女騎士「今頃気づいても遅い」ダッ

オーク「終わりだぜっ!」ダッ

ザンッ! ズガァンッ!

女騎士がボスの首をはね、オークが残る胴体を砕く。



あざやかな完全勝利であった。 

18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:48:37 ID:8oWg21Is
村人「やったぁ!」

少年「女の騎士さん、オークさん、ありがとう!」

村娘「強盗団をみんな倒してくれるなんて……!」

老婆「おお、天罰が下されたのじゃ……!」



村長「お二人とも……本当にありがとうございました!」

村長「おかげで村は何も奪われずに済みました……!」

オーク「ん、なんだこいつら? 妙なこといいやがるな」

女騎士「おいおい、自分でいっていただろうが。彼らは我々のことを知らん、と」

オーク「おお、そういやそうだったな! こりゃラッキーだ!」

村長「ところで……ロープをほどいてくれるとありがたいのですが」 

19 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:51:05 ID:8oWg21Is
オーク「ロープをほどくだとォ?」

オーク「ガハハハッ、なんでそんなことしなきゃならねぇんだよ! なぁ?」

女騎士「ああ、動けないのならちょうどいい」

女騎士「最近は、近づくだけで逃げられることが多くなっていたからな」

村長「へ……?」

オーク「んじゃ、ジャンケンするか!」

女騎士「よかろう」

オーク「ジャーンケーン」

女騎士「ぽんっ!」 

20 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:53:50 ID:8oWg21Is
オーク「オレの勝ちだな!」

女騎士「くっ、殺せ!」

オーク「へっへっへ、ど、い、つ、に、し、よ、う、か、な」

オーク「決めた! よぉ~し、一匹目は素手でやるか!」

村長「え」

グシャンッ!

オークの拳が村長の頭を頭蓋骨ごと砕いた。

オーク「うひょ~! やっぱジジイのドタマはやわらかくていいぜェ!」グチャッ…

女騎士「くっ……私もあの老人を狙っていたのに! 先に取られたか!」 

21 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:56:34 ID:8oWg21Is
オーク「ジャーンケーン」

女騎士「ぽんっ!」

女騎士「フッ……今度は私の勝ちだな」

オーク「ちくしょう……! さぁ、好きな奴を斬れよ!」

女騎士「では私は……キサマだ!」

村人「あ、あの」

シュパァッ! ゴロン……

女騎士の一閃で、村人の生首がごろりと転がった。

女騎士「やはりたまらんな……頚骨を切断するこの感触!」

オーク「ちいっ、なかなかよさそうな奴を選びやがって!」 

22 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/02(木) 20:59:02 ID:8oWg21Is
オーク「だけど、次は負けねえぞぉ!」

女騎士「ロープで縛られているから、逃げられる心配もなくじっくりと楽しめるな」



村娘「あ、あ、あ……」ガタガタ…

村娘「いやっ、いやぁぁぁっ! だれか助けてぇっ! だれかぁぁぁっ!」

少年「うえぇぇ~~~~~ん!」

老婆「お助けを……! どうかお慈悲を……!」

ようやく事態の異常さに気づいた村民が泣き叫ぶが、

二人のジャンケンを止める効果はなかった。



オーク「ジャーンケーン」

女騎士「ぽんっ!」 

23 : ◆ClpChkO0kU:2014/10/02(木) 21:03:13 ID:8oWg21Is
──
────

────────

どこかの田舎町の酒場で、コソ泥が新聞を眺めていた。

コソ泥「……」バサッ…

コソ泥「最悪の殺人鬼コンビ、強盗団と村人30人余りを全員殺害、か……」

コソ泥(ま、奴らが起こした事件にしちゃ、まだ犠牲者が少ない方だわな)

コソ泥(なにせ、殺戮の魅力にとりつかれて、騎士団と魔物兵団を抜けたような奴らだ)

コソ泥(抜ける時もかなりの数を殺したって聞いてるし……)

コソ泥(とはいえこれでまた、奴らにかかった賞金額が上がることになるんだろう)

コソ泥(もっとも、あいつらを狩れる奴なんざいやしねえんだがよ)

コソ泥(どんな兵士や賞金稼ぎも、あの二人にとっちゃオモチャに過ぎないんだからな)

コソ泥「あん時、あっしだって殺されておかしくなかった……ついてたぜ」バサッ…





おわり