1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 15:58:00.70 ID:ZfTMKOeyo
 《永遠に終わりがないかもしれない大宇宙でさえ、
  終わりのない喜びや悲しみは存在しない。
  永遠の命を得たとしても、やはりそれは同じなのだ。
  しかし、それをわかっていても、永遠の、無限の喜びを、
  人々に与えようとする人がいる。
  その人の胸の内にも、永遠に続く喜びなど存在しない……》

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1482044280

引用元: 停車駅『ウサミン星』 


 

 
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 15:59:23.56 ID:ZfTMKOeyo
銀河鉄道999とモバマスのクロスです。
どうぞ、よろしくお願いします。

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 15:59:57.74 ID:ZfTMKOeyo

 ――銀河鉄道999車内

P「…………」

鉄郎「すや~」

P「そー」

P「もし……もし……」

鉄郎「? ? ?」

P「あ、すみません。あなたではなく、そちらの綺麗な人……」

鉄郎「メーテルのこと?」

メーテル「なにか……?」

P「はあ、どうもすみません。そちらの方を起こすつもりはなかったのですが」

メーテル「…………」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:01:02.37 ID:ZfTMKOeyo
P「ワタクシ、こういうものです」

メーテル「アイドルプロデューサー……」

P「はい、はい、見ての通りアイドルのプロデューサーです」

鉄郎「アイドルプロデューサーってなにをする仕事?」

P「そりゃもう、アイドルをプロデュースする仕事です」

鉄郎「? ? ?」

P「アイドルというのはですね、人の憧れなのですよ」

鉄郎「ますますわからん」

P「具体的にはステージで踊ったり、歌ったり、写真に撮られたり、
  ときにはステージを降りてファンと触れ合ったり……」

メーテル「だけど、アイドルが流行していたのは、ずっと前の話……」

P「……でもまた蘇ります! あなたが! いるのだから!」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:02:07.37 ID:ZfTMKOeyo
メーテル「ごめんなさい。私は旅の途中なの」

P「いえ、スケジュールのことはもう、言わんでください。
  僕がばっちり調整してみせますから」

メーテル「あなたにはすでにプロデュースするアイドルがいるんじゃなくて?」

P「! い、いえ……あいつは……」

車掌「えー、次の停車駅は……『ウサミン星』。
   停車時間は77時間7分7秒、この星の一日にあたります」

P「あ……着きましたか。行かないと」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:04:53.18 ID:ZfTMKOeyo
メーテル「行きましょう、鉄郎」

P「気が変わったら、いつでも連絡くださいねー!」

鉄郎「……なんだか強引な人だったなぁ」

メーテル「悪い人じゃないの……ただ、みんなを楽しませたい、それだけで頭がいっぱいなのよ」

鉄郎「いろんな人がいるんだね」

メーテル「鉄郎はああいう人は嫌い?」

鉄郎「ううん! アイドルのことを話しているときのあの人の目は
   すごくキラキラしていて、あったかい人だと思ったよ」

メーテル「そうね。だけど、そう、可哀想な人……」

鉄郎「…………?」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:06:18.22 ID:ZfTMKOeyo

   ガタン


鉄郎「? ? ? メーテル、この駅真っ暗だよ!」

メーテル「おかしいわね、電灯もなにもついてないなんて……」

  ゴゴゴゴゴゴ……

鉄郎「! メーテル、地震だ!」

メーテル「落ち着いて鉄郎、地震じゃないわ……」


  パッ!


鉄郎「わ! なんだ!?」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:07:23.24 ID:ZfTMKOeyo

???「そのとき空から、不思議な光が降りてきたのです……」


鉄郎「? ? ?」

P「あ、あれは誰だー! 誰だー! 誰なんだー!」

鉄郎「あの人はさっきの!」

???「それは……」


ゴゴゴゴゴ


菜々「ナッナでーす!!」ピカーッ

鉄郎「? ? ?」

菜々「ああーっ、ちょっと引かないでください!
   ウサミンパワーでメルヘンチェーンジ☆
   夢と希望を両耳にひっさげ、ナナ、がんばっちゃいまーす☆」


P「ミンミンミン! ミンミンミン! ウーサミーン!」

菜々「ミンミンミン! ミンミンミン! ウーサミーン!」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:09:18.64 ID:ZfTMKOeyo







菜々「はあっ、はあっ、みなさんありがとーっ! 次のステージは一時間後でーすっ!」

鉄郎「…………」ぽかー

メーテル「鉄郎、大丈夫?」

鉄郎「はっ……」

P「いやー、今日も冴えてましたね! いかがでしたか!」

鉄郎「あの人は……?」

P「我がプロダクションが誇る人気ナンバーワンアイドル、安部菜々です!」

メーテル「それにしては、お客さんが少なかったわ」

P「なーに、彼女には関係ないのです。
  一人でもお客さんがいれば、最高のパフォーマンスを見せてくれます!」

メーテル「鉄郎、行きましょう」

P「次の出番は一時間後です! 一時間後ですよー! 是非ご覧になってくださいねー!」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:10:15.38 ID:ZfTMKOeyo
 ――銀河鉄道指定のホテル


ウサちゃんロボ「イラッシャイマセ! オキャクサマノ、オヘヤハ、コチラデス!」

メーテル「どうもありがとう、あとは大丈夫よ」

ウサちゃんロボ「ゴユックリ、オスゴシクダサイ!」

鉄郎「……うへー、ものスゴイ部屋だなぁ」

メーテル「そうね、部屋全部がグッズで埋まってる」

鉄郎「17歳の新人・安部菜々デビュー、ファーストシングル『メルヘンデビュー』発売、
   壁いっぱいのポスターに……ティッシュ、メモ帳、ランプシェード、シーツまで!」

メーテル「見た目はすごいけれど、どれも一流の品質よ。どこも便利で、素晴らしい機械が揃ってる……」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:10:51.98 ID:ZfTMKOeyo
鉄郎「……ねえ、メーテル。この星には誰も住んでいないの?」

メーテル「今はね」

鉄郎「この安部菜々っていう人と、プロデューサー以外に誰もいなかったね」

メーテル「昔は、たくさんの人が住んでいたわ。だけど、今ほど便利じゃなくって、
     もっともっと貧乏でみすぼらしい星だった……」

鉄郎「どうして今みたいになったの?」

メーテル「全ては、このアイドルのため……」

鉄郎「…………」

メーテル「私は先にお風呂をいただくわ。鉄郎もあとで入りなさい」

鉄郎「うへぇー」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:12:42.90 ID:ZfTMKOeyo

  ザァァーー……


鉄郎「くそう。どうして人は風呂に入らにゃならんのだ」

鉄郎「…………」チラッ

鉄郎「……一時間だったか」


メーテル「ふぅ、いいお湯だった……」

メーテル「……あら」


『安部菜々のステージの続きを見てきます。
 夜までには戻ります。
                     鉄郎』


メーテル「……鉄郎のおフロ嫌い、なんとかならないものかしら」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:13:12.56 ID:ZfTMKOeyo

 ――駅前のステージ


鉄郎「確かここでやっていたっけ」


P「この星に――! ずっと――!」

菜々「だから……! それは……!」


鉄郎「あの二人だ! なにやら喧嘩しているぞ」

鉄郎「あのう……」


P「あ! 君は……」

菜々「さっきのお客さんですか? 嬉しい! 来てくれたんですね!
   すぐにステージはじめますから!」ダダダッ

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:13:58.78 ID:ZfTMKOeyo
P「うっ、嬉しいなぁ……さっきのステージを観てファンになったんだね?」グスグス

鉄郎「いえその……」

 ゴゴゴゴゴ…………

菜々「みなさんっ! お待たせいたしました!
   ただいまより安部菜々、もといウサミンの第二ステージをはじめますよ~!
   準備はいいですかー!」

鉄郎「…………」ぽかー

P「いいぞいいぞー!」フリフリ

鉄郎「その光る棒は?」

P「ムッ、君、サイリウムを持ってきてないのかね。
  そこの売店でも売っているというのに」

鉄郎「はあ……」

P「しかし、初めてのライブにはよくあることだ。ひとまずは僕のサイリウムを使いなさい」

鉄郎「…………」ぽかー

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:14:24.80 ID:ZfTMKOeyo








菜々「みんなありがとー! さあ、続いて行きますよー!」

P「わはは! どうだい! あれが我がプロダクション誇る新人アイドル!
  安部菜々だ! おっと、サイリウムの替えがいるかね!」フリフリ

鉄郎「…………」ぽかー

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:14:55.20 ID:ZfTMKOeyo








菜々「ありがとー! みんなありがとー! 次のステージでお会いしましょう~!」

P「いやー、最高だったね。さあ、水分補給をしよう」

鉄郎「……あの、プロデューサーさん」

P「うん? なんだね」

鉄郎「あなたはあの人をプロデュース? しているんでしょう?」

P「……そうだ。いや、そうだった」

鉄郎「ファンというのは、プロデューサーと違うの?」

P「う、むむ……違う。違うが、似たものだ」

鉄郎「似たもの?」

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:15:29.24 ID:ZfTMKOeyo
P「プロデューサーというのはね、そのアイドルの最初のファンなんだ」

鉄郎「…………」

P「そして、今は最後のファンになってしまったな。
  ところで君、名前を聞いていなかったね。なんて言うんだい?」

鉄郎「ぼくは鉄郎。星野鉄郎」

P「鉄郎くんか。ナナにも伝えてやらなきゃな。
  ふふ、彼女に名前を覚えてもらうなんて、滅多なことじゃないんだぜ」

鉄郎「今は他にファンの人はいないの?」

P「ときどき、鉄郎くんのような旅人がこの星に立ち寄ることもあるがね……。
  いつの間にか、ナナの名前も知らない人ばかりになってしまった」

鉄郎「有名な人だったんだ」

P「この星はたくさんの人が住んでいたし、ナナは今以上に輝いていた……」

鉄郎「…………」

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:16:30.61 ID:ZfTMKOeyo
P「そうだ、昔の写真や映像に興味はないかい?
  別の大きなホールでライブをしたときのが残っているんだが……」

鉄郎「えっ。いい、いい、いいよ」

P「そうか……」ションボリ

鉄郎「それに、今の菜々さんだって、すっごくキラキラしてるよ」

P「そう見えるかい?」

鉄郎「うん! プロデューサーさんも、あの人のことを話しているとき、すっごく楽しそうだ!」

P「……ありがとう鉄郎くん。本当にファンになってくれたんだね」

鉄郎「へへ……」


  ヴウォウ!

鉄郎「!?」

P「ぐっ!」バタリ

鉄郎「プロデューサーさん!」

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:17:14.97 ID:ZfTMKOeyo
P「て、鉄郎くん……逃げろ……」

鉄郎「……くそっ! 誰だ! 誰が撃ったんだ!」ジャキ


  バスッ!


鉄郎「うぐ……!」ヨロヨロ

鉄郎「…………」バタリ

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:17:41.11 ID:ZfTMKOeyo








鉄郎「う、う……」

???「目が覚めましたか?」

鉄郎「き、君は……!?」

菜々「手荒なことをしてすみません……でも、出力は下げてありましたから」

鉄郎「君が撃ったのか!? プロデューサーさんはどうした?」

菜々「あの人も大丈夫。ただ気絶させただけ。
   ステージのそばで倒れてるけど、じきに目を覚ましますから……」

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:18:12.97 ID:ZfTMKOeyo
鉄郎「ぼくをどうする気だ!?」

菜々「あっ、いえ! どうするワケでもないんです! ただ……」

鉄郎「ただ……?」

菜々「……ステージの続きをお見せします!」

鉄郎「? ? ?
   ステージならさっきのところで……」

菜々「ここは地下に作られたちっぽけなステージ。
   アイドルのナナが生まれた場所。しっかり見ててくださいね!」

鉄郎「…………」

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:18:57.72 ID:ZfTMKOeyo








P「う、う、う……」

メーテル「大丈夫ですか?」

P「! あなたは……」

メーテル「いったい誰がこんなことを?」

P「も、申し訳ありません! 鉄郎くんが……!」バッ

メーテル「プロデューサーさん、顔を上げて……鉄郎はどこへ?」

P「鉄郎くんは、おそらく……ナナに」

メーテル「!」

P「い、いえ……ナナのことですから、危害を加えるようなことは……ないと思いますが」

メーテル「二人がどこにいるかわかりますか?」

P「……おそらくは」

メーテル「案内してください」

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:19:23.10 ID:ZfTMKOeyo








菜々「さあさあ! まだまだステージは続きますよぉ!
   次の曲はみなさんおなじみ、あの曲でーすっ!」

鉄郎「…………」くたー

菜々「……と、思いましたけど、ちょっと休憩にしましょうか。
   お茶でも淹れましょう」コポコポ

鉄郎「君はいつからアイドルになったの?」

菜々「そうですねぇ、ずっと昔ですよ。この星がまだ貧乏だった頃から……」

鉄郎「…………」ズズー

菜々「もともと、この星は流刑星だったそうです。
   それが独自に発展して、今みたいになったのは、そう、あの人が来てから……」

鉄郎「あの人? プロデューサーさんのことかい?」

菜々「ええ、彼、腕のいい機械技師だったんです。
   みすぼらしかったこの星を、もっと素晴らしい星にしたいって」

鉄郎「…………」

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:19:49.20 ID:ZfTMKOeyo
菜々「でも、みんな最初は誰も耳を貸さなくって……。
   日々の労働で精一杯だったんです」

鉄郎「それで君は……」

菜々「そう! 人に希望を与える、アイドルになったんです!
   二人でこの星を素晴らしい星にしよう、って!」

菜々「彼の開発した機械で暮らしを豊かにして、観光に堪える街並みを作ったり、
   そして、そのことがどんなに素晴らしいか私が身をもってアピールしたんです!」
鉄郎「最初はびっくりしたけれど、確かに、この星はいいところだね」

菜々「本当ですか!? そうですよね!」

鉄郎「でも、どうして君とプロデューサーさんの他には誰もいないの?」

菜々「それは……」

鉄郎「……?」

27: >>26細かいようですが、改行忘れ修正 2016/12/18(日) 16:20:32.68 ID:ZfTMKOeyo
菜々「でも、みんな最初は誰も耳を貸さなくって……。
   日々の労働で精一杯だったんです」

鉄郎「それで君は……」

菜々「そう! 人に希望を与える、アイドルになったんです!
   二人でこの星を素晴らしい星にしよう、って!」

菜々「彼の開発した機械で暮らしを豊かにして、観光に堪える街並みを作ったり、
   そして、そのことがどんなに素晴らしいか私が身をもってアピールしたんです!」

鉄郎「最初はびっくりしたけれど、確かに、この星はいいところだね」

菜々「本当ですか!? そうですよね!」

鉄郎「でも、どうして君とプロデューサーさんの他には誰もいないの?」

菜々「それは……」

鉄郎「……?」

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:21:18.34 ID:ZfTMKOeyo
菜々「…………それよりも! ステージの続きです!」

鉄郎「あ……えっと、菜々さん」

菜々「はい! なんでしょう!」

鉄郎「そろそろホテルに戻らないと……スリーナインの発車の時間もあるし」

菜々「いえ……いけません。ダメです、ずっとここにいてください」

鉄郎「えっ! どういうことだよ!」

菜々「あなたは! ずっとここで、ナナのステージを見続けるんです!」

鉄郎「…………! なんだって!?」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:21:57.16 ID:ZfTMKOeyo
菜々「騙すつもりはなかったんですけど……でも……」

鉄郎「ぼくは無理にでも出て行くぞ! ……あっ!」

菜々「ごめんなさい、銃は隠しました」

鉄郎「ぼくをここから出せ!」

菜々「どうしてですか! この星はこんなに素晴らしくて、ずっとずっと、楽しい時間を過ごせるのに!」

鉄郎「ぼくは機械の体をもらいに、アンドロメダまで行かなきゃいけないんだ!」

菜々「機械の体!? そんなもの……そんなものー!」


  バウッ!


菜々「!?」

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:22:23.72 ID:ZfTMKOeyo
メーテル「鉄郎!」

鉄郎「メーテル! それにプロデューサーさんも」

P「ナナ! もうやめるんだ!」

菜々「ぷ、プロデューサー、どうしてここが……!」

P「だって、ここは、僕らの思い出の場所だもの」

菜々「…………!」

P「さあ、鉄郎くんの銃を返してやるんだ。
  無理にファンを閉じ込めるのは、アイドルのすることじゃないぞ」

菜々「で、でも……そしたらナナは……」

P「鉄郎くん、君の銃だ。ウチのナナが……どうも申し訳なかった」

鉄郎「…………」

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:22:54.25 ID:ZfTMKOeyo
菜々「うっ、うっ、うっ……」

P「ナナ、もっと歌を歌いたくはないのかい?
  君の歌を聞きたい人はここだけじゃなく、他の星にもいるんじゃないか?」

菜々「そうしたら、この星はどうなってしまうんですか……!」

P「なにもこの星を見捨てるワケじゃないさ」

菜々「ううっ、うっ、うー……」

メーテル「行きましょう、鉄郎」

鉄郎「……待って、メーテル」

メーテル「…………」

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:23:45.49 ID:ZfTMKOeyo
鉄郎「ねえ、菜々さん」

菜々「……うっ、うっ、ずびばぜんでした、鉄郎さん……」

鉄郎「……!」

P「本当に申し訳なかった、鉄郎くん」

鉄郎「……そりゃ、ここにずっといるのはかなわないと思ったけど、
   だけど、ぼくは菜々さんの歌が好きだって、本当にそう思ったよ」

菜々「……ほっ、本当ですかぁ?」

鉄郎「うん! この星から別の星へ行っても、きっと聞きたいと思う」

P「鉄郎くん……」

33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:24:49.31 ID:ZfTMKOeyo
菜々「うっ、うっ……本当にごめんなさい……そして、ありがとうございます!
   ナナ、この星以外のたくさんの人にも、たくさん歌を届けますからー!」

鉄郎「今はもう行かなきゃならないけど、また菜々さんの歌が聞きたいな」

菜々「それまで、待っててくれますか……?」

鉄郎「もちろん!」

P「……鉄郎くん! これは、心ばかりのお礼だ、受け取ってほしい」

鉄郎「これは?」

P「ナナのデビュー曲だ、宇宙で予習していてくれ」

鉄郎「……うん、わかったよ!」クスッ

P「よし、ナナ! 早速レッスンをはじめるぞ!」

菜々「合点承知の助です! いきますよー!」

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:25:15.82 ID:ZfTMKOeyo


  ミンミンミン! ミンミンミン! ウーサミーン!

  ミンミンミン! ミンミンミン! ウーサミーン!

  ミンミンミン! ミンミンミン! ウーサミーン…………

35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:25:45.07 ID:ZfTMKOeyo

 ――銀河鉄道999車内


鉄郎「ねえ、メーテル。あんなに素敵な星なのに、どうして誰もいなくなっちゃったのかなあ?」

メーテル「知りたい?」

鉄郎「……うん」

メーテル「あの、ナナという女の子は機械化人なの」

鉄郎「! そうだったんだ」

メーテル「彼女がアイドルとして活躍していたのは何年も何年も前のこと……。
     星も発展して、本当に、永遠に楽しい時間が続くはずだった」

鉄郎「…………」

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:26:22.08 ID:ZfTMKOeyo
メーテル「だけど、あの星の多くの人は、機械化を望まなかった。
     誰もが満足して死んでいって、永遠の命は必要じゃなかったのね」

鉄郎「それって、幸せなことだよね?」

メーテル「さあ、どうかしらね。鉄郎はどう思う?」

鉄郎「ぼくは……わからない。だけど、菜々さんやプロデューサーさんと一緒にいた時間は、
   とっても楽しかったと思う」

メーテル「それでいいのよ。それが、彼女たちの最も望んでいたことでもある……」

37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:27:26.15 ID:ZfTMKOeyo
 《永遠の少女、安部菜々のことを考えるたび、
  彼女の歌を聴くたび、鉄郎は胸の血が燃えるのを感じた。
  終わりのない喜びや悲しみは存在しないけれど、
  人生の膨大な時間、あるいは短い時間のうちに、
  キラキラと輝く思い出を残してくれた彼女たちのことを、
  鉄郎は永遠に忘れないだろう……》

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/18(日) 16:27:53.13 ID:ZfTMKOeyo
以上です。
読んでいただき、どうもありがとうございました。