1 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:23:44 ID:7JqDFIXE
・・・貴志の部屋・・・
貴志「われを守りしもの、その名を……。ハアハア、今日はこれで終わりにしよう……」
ニャンコ先生「また勝手に名前を返しおって。友人帳がこんなに薄くなってしまったではないか」
貴志「体力が続かないな、これだけ連続だと」
ニャンコ先生「だから、名前を返すなんてつまらんことをせずに友人帳を渡せ」
2 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:24:35 ID:7JqDFIXE
・・・風呂場・・・
貴志「あれ、電気つけっぱなしだ。滋さん、消し忘れたのかな……」
ガラガラ
塔子「ん……?」
貴志「あれ……?と、塔子さん!!!」
塔子「キャー!」
貴志「す、すみません!」
3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:25:52 ID:7JqDFIXE
ドタバタドタバタ
滋「なにかあったのか!?」
貴志「塔子さんがお風呂に入っているのに気がつかずに、間違ってお風呂場をあけてしまったんです」
滋「なんだそんなことか」
貴志「本当にすみません。何てお詫びをしたら……」
塔子「そんな気にしなくていいわよ。減るもんじゃないんだから」
貴志「でも……」
4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:26:38 ID:7JqDFIXE
滋「どうせ覗くのなら、もっと若い娘の方がよかったかな」
塔子「滋さん!!」
滋「すまん、すまん。そうだ、貴志、たまには男同士一緒に風呂入らないか?」
貴志「あ、ハイ……」
塔子「じゃあ、私は先に休んでますね」
貴志「お休みなさい。どうもすみませんでした」
塔子「大丈夫よ」トコトコトコ
5 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:27:18 ID:7JqDFIXE
滋「貴志、背中を流してくれるかい?」
貴志「はい」コシコシ
滋「お父さんの背中を流したことは?」
貴志「あまり」
滋「悪いことを訊いたな……そうだ、いままで女の人の裸を見たことはあるかい?」
貴志「いいえ」
6 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:28:33 ID:7JqDFIXE
滋「それにしては落ち着いているな。まあ、いくら女の人でもおばさんの裸じゃあわてないか……」
貴志「そんなこと無いですよ。塔子さんまだ……っていうか、えーと美人じゃないですか。ただ、ビックリしすぎてしてどう反応していいかわからなくて」
滋「そうか。私がはじめて女の人の裸を見た時はそれはもうドキドキして」
貴志「それは塔子さん?」
滋「いや違う」
貴志「その頃の恋人さんですか?」
滋「恋人というわけじゃないが」
貴志「?」
7 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:29:14 ID:7JqDFIXE
滋「前に変わった女の人が近くに住んでいたって話をしたことがあっただろう」
貴志「!!」(まさかレイコさん!?)
滋「おや、どうしたんだ、そんな驚いた顔して……」
貴志「妖怪を……いや、家を少し壊したあとはあまり話すことはなかったって言っていたから」
滋「よく覚えていたね。確かに家に変な事が起こらなくなってから、ずっと相手にしてくれなかった」
貴志「……」
8 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:30:35 ID:7JqDFIXE
滋「それから数年が過ぎ、私は中学校に通うようになった。で、あの人に中学生になった私の姿を見てもらいたいと思ったんだ」
貴志「……」
滋「あの人がいつも独り言をいいながら歩いていた森の小道で待ち伏せした」
・・・数十年前・・・
滋「おい、待てっ」
レイコ「ん!!私のお気に入りの子に化けるなんて姑息な手を使うなっ!」
滋「化ける……?」
9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:31:54 ID:7JqDFIXE
レイコ「ん・・・ひょっとして本物?」
滋「おれの偽者なんかいるのか?」
レイコ「そういうわけじゃないけれど……どうしたの、こんな人気の無い森の中で」
滋「どうしたのって……」
レイコ「フフ、私に遊んで欲しかった?」
滋「そ、そうじゃない!ただ、そのう中学生になったって……」
レイコ「君はもう中学生になったんだ!制服格好良いわよ。人間の子ってすぐに大きくなるのね……」
10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:33:05 ID:7JqDFIXE
滋「子供じゃない!もう中学生だ!」
レイコ「ゴメンゴメン。そういうつもりじゃなかったのよ。ただ成長が速いってことに驚いただけで」
滋「なら、許してやる」
レイコ「本当に面白い子。で?」
滋「その……何でおれから逃げるんだ?」
レイコ「逃げてるわけじゃないわ……」
11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 21:33:52 ID:7JqDFIXE
滋「じゃあ、何で……」
レイコ「君に迷惑が…皆に仲間はずれにされるわよ、私と一緒にいると。私が皆に嫌われてるの知ってるでしょ?」
滋「友達多いからそんなことにはならないさ」
レイコ「中学生になっても無神経なのね、まあ良いわ」
12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/05(日) 22:43:53 ID:YGT2X3Jg
あれ、塔子さんの出番終わり?
13 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:07:54 ID:a4GRjztA
・・・現在のお風呂場・・・
滋「その日から、また少しは話をしてくれるようになったんだ」
貴志「レイ…いや、その人はその頃、何をしていたんですか?」
滋「高校は卒業していたようだが、私生活についてはなにも教えてくれなかった」
貴志「そうですか……」
滋「なにかどうしても言えない秘密があるようだった」
貴志「……」
滋「それからまたしばらく経った頃のこと……」
14 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:08:43 ID:a4GRjztA
・・・もう一度数十年前・・・
レイコ「また来たの?」
滋「うん」
レイコ「私と一緒にいたらろくなこと無いわよ」
滋「そんなことない!」
レイコ「しょうがない子ね」
滋「子供じゃない!」
15 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:10:00 ID:a4GRjztA
レイコ「ハイハイ、一人前のオトコなのね。立ち話もなんだから、そこの土手に座りましょうか……。そういえば、あれからお家に変な事起きてない?」
滋「何もおきてないよ。ただあの後、襖の交換とか障子の張替えとかすごい大変で……」
レイコ ジーッ
滋「おれの顔になにか付いてるか?そんなじっと見て」
レイコ「ううん。君の後ろに蚊が飛んでいたから」
滋「そうか。でさ、畳もね……」
レイコ「やめなさいっ!!」ガツン
16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:11:45 ID:a4GRjztA
滋「痛てて。なんだよ、いきなり体当たりして!」
レイコ「私と一緒にいると……じゃなくて、後から、えーと蜂が……」
滋「たかが蜂にオーバーだよ。で、蜂はどこ?」
レイコ「追い払ったわ。でも、また出るかもしれない、私、虫に狙われやすいのよ。今日は帰りましょうか」
滋「うん……だ、だけど結構重いんだね」
レイコ「ごめんなさい、上に乗っかっちゃって。でもね、重いのならそろそろ離してくれない、立てないでしょ?」
滋「……」ギュ
17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:12:58 ID:a4GRjztA
レイコ「うっ、ふざけるのやめなさい」
滋「……」
レイコ「こんなことしてたら家に帰れないじゃないの。夜になったらお化けが出るわよ」
滋「お化けなんかいるもんか」
レイコ「そうね……」
滋「もうちょっと一緒にいたいんだ」
18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:14:37 ID:a4GRjztA
レイコ「……」
滋「……」
レイコ チュ
滋「え?」
レイコ「私のファーストキスよ。もういいでしょ、これで我慢しなさい」
滋「ファースト……?」
レイコ「私が初めてキスした人は君ってことよ」
滋「初めて……でも……」
19 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:15:58 ID:a4GRjztA
レイコ「しつこい男の子はもてないわよ」
滋「だ、だけど名前もまだ教えてもらってない!」
レイコ「名前ねえ……名前を受け取るということはすべてを支配するって言うことよ。その覚悟ある?」
滋「すべてを…覚悟…」
レイコ「ね、無理でしょ。だから早く……」
滋「か、覚悟はある!」
レイコ「覚悟がある?何の覚悟があるの?」
20 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:17:30 ID:a4GRjztA
滋「今は無理だけど、将来必ずおれのお嫁さんになってもらう!」
レイコ「私が君のお嫁さん?ハハハ…」
滋「笑うな!」
レイコ「ゴメンゴメン。だけどね、友達になってくれるって言われたこともない嫌われ者の私をお嫁さんにしたいの?」
滋「だって優しいし……」
レイコ「私が優しい?アハハ、本当に君は人を見る目が無いのね」
滋「そんなことない!」
21 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:18:32 ID:a4GRjztA
レイコ「私の周りにはゴタゴタが多いの」
滋「おれがみんな解決してやらぁ」
レイコ「フフ、嬉しい事言ってくれるわね。でもね、お嫁さんにするなんて軽々しく言ってはいけないのよ。君がお嫁さんをもらう頃にはたぶん……」
滋「え?」
レイコ「なんでもない。ただね、あのあたたかい優しい家に災いが……」
滋「そんなこと起きるわけない!」
22 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:20:02 ID:a4GRjztA
レイコ「……。わかったわ、君は私のことを信用してくれたたった一人の人間だものね。私もあなたの覚悟を信じて私のすべてをあげる。だから離しなさい」
滋「全て……?」
レイコ「早く!」
滋「あ、はい」
レイコ「よいしょっと。私に経験があれば優しく教えてあげれるんだろうけどね……」シュルシュル
滋「な、なんで服脱いでるんだ」
レイコ「すべてあげるって言ったでしょ。君も早く脱ぎなさい」
23 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:21:27 ID:a4GRjztA
滋「だ、だけど……」
レイコ「なにおどおどしてるの?女の体見るの初めて?」
滋「あたりまえだろう!」
レイコ「そういえば、私も初めてね。あら中学生でもちゃんと……。ねえ、私キレイ?」
滋「う…ん」
レイコ「ありがとう。こっちへ来て。私も保健の授業で習っただけだから上手くいくかどうかわからないけど……」
24 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:22:34 ID:a4GRjztA
・・・またまた現在・・・
滋「はっと気がつくと、もうあの人はいなかった」
貴志「気がつくと?」
滋「まるで、眠らされたように意識が遠くなったんだ。興奮しすぎたのかもしれないね」
貴志「眠らされたように……」
滋「だからよくわからないんだ、どこまでが現実でどこからが幻なのか。ひょっとしたら全部夢だったのかもしれない……
ただ、”これでお別れ、二度と私のことなんか思い出しちゃダメよ。私の近くにいると君と君の家に災いが寄ってくるから”って夢うつつの中で聞いたような気がするんだ」
貴志「……」
25 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:24:21 ID:a4GRjztA
滋「そのあと、あの人に二度と会うことはなかった」
貴志「二度とですか?」
滋「ああ。この近くで姿を見た人もいない。片時も忘れたことは無かったが、まだ中学生の私には探しだすことが出来なかった」
貴志「そうですか」
滋「ただ初めて君の噂を聞いた日の晩、あの人が夢枕に立って言ったような気がするんだよ、君のことを助けてあげなさいって」
貴志「それで僕のことを?」
26 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:26:06 ID:a4GRjztA
滋「そういうわけじゃない。親戚に困っている子がいたら助けてあげたいだろう?」
貴志「ありがとうございます」
滋「いや、私も貴志が来てくれて本当に嬉しかったんだ。この古い家に、僕と塔子だけではさびしすぎるからね。それに最初から本当に血のつながった家族のような気がして……」
貴志「ここはとてもあたたかいお家です。きっとその人もこの家に住みたかったんだと思います」
滋「どうかな……そうだ、この話は塔子には内緒だよ」
貴志「はい、わかりました」
滋「さてそろそろ上がろうか」
27 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:27:43 ID:a4GRjztA
・・・貴志の部屋・・・
貴志「滋さんの経験が夢じゃなかったら……レイコさん、中学生の滋さんと……生物学的にはありえる話だ。年齢的につじつまが合わないでもない。
でも、いくらなんでも……。ひょっとしてレイコさん自分の子供をこの家に住まわせたくって……まさかそんなことが……ブツブツ」
ニャンコ先生「うるさいぞ夏目」
貴志「なあ、ニャンコ先生。僕のお祖父さんがどんな人だか本当に知らないのか?」
ニャンコ先生「知らん。レイコがこの家に来たことも知らなかったぐらいだからな。私はレイコの用心棒をしていたわけではない」
貴志「でも知り合いなんだから少しぐらいは…」
28 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:29:12 ID:a4GRjztA
ニャンコ先生「レイコが勝手に勝負を挑んできただけだ。レイコのプライベートなど訊いたこともない」
貴志「そうか……」
ニャンコ先生「……訊いたことはないが」
貴志「……」
ニャンコ先生「お前の母親は優しい人だったのだろう?あの乱暴もののレイコから優しい娘が生まれたということは、その父親はとても優しい人だったに違いなかろう」
貴志「そうだね。ありがとう、ニャンコ先生」
ニャンコ先生「礼なら七辻屋の饅頭で良いぞ」
29 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:30:41 ID:a4GRjztA
・・・翌日の夕方・・・
塔子「昨日は随分長いことお風呂に入ってたわね」
貴志「滋さんにいろいろお話をしてもらって」
塔子「そう…。ところで昨日私の裸見た?」
貴志「いえ、いきなりのことだったし湯気もあったのでよく見えませんでした」
塔子「そうなの、よかった。おばちゃんのたるんだ体見られたら恥ずかしいもの」
貴志「そんなことないですよ、とてもキレイで……あっ!」
30 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:32:06 ID:a4GRjztA
塔子「やっぱり見たんじゃない!!」キッ
貴志「す、すみませんっ」
塔子「ふふっ、なんて嘘よ。家族に裸見られるぐらいなんてこと無いでしょ?」
貴志「家族……」
塔子「そうよ。私も貴志君の裸見ちゃったからおあいこ。意外と男らしいのね、ちょっとドキッとしちゃった」
貴志「え!」
塔子「さあ、晩御飯にしましょう。今日はエビフライよ、ニャン吉君も呼んできて」
31 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/06(月) 20:35:26 ID:a4GRjztA
終わりです。
ちょっと短めに強引な話を書いてみました。藤原夫妻がどうしてあんなに優しいんだろうと気になって……
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