狩人「目指すは伝説級ハンター!」 前編

469 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:01:54 ID:SchlHai2


―――――――――――


数日後の午前中

ふもと村 集会所


狩人「え? 受け取っていない報酬?」

受付嬢「はい」

受付嬢「狩人様と少女様が共同で捕獲した、G級ティガレックスの報酬です」

狩人「」

少女「」

     ザワッ……!

狩人「ちょ、ちょっと待ってください!」

受付嬢「はい?」 



 

 
470 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:02:26 ID:SchlHai2

狩人「あれは俺たち、ほとんど何もしていなんですよ!?」

狩人「偶然襲われたから最後に罠張って、捕獲しただけで……」

狩人「報酬を受け取るべきなのは、数時間かけてダメージを与えた」

狩人「草原ハンターさんですよ!」

少女「それにG級!?」

少女「あのティガって、G級だったんですか!?」

受付嬢「落ち着いてください、順を追って説明しますので」

狩人「…………」

少女「…………」

受付嬢「まず、ギルドの仕組みとして」 


471 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:03:01 ID:SchlHai2

受付嬢「今回のティガレックスは、ギルド観測所により正式にG級と認定されました」

受付嬢「また、今回の捕獲は『緊急クエスト』と同義として扱われます」

狩人「…………」

少女「…………」

受付嬢「次に報酬ですが」

受付嬢「先ほどあなた方が言っていた通り」

受付嬢「草原ハンターさんが主にダメージを与えていたとしても」

受付嬢「捕獲したのはお二人の手柄であり、お二人が居なければ」

受付嬢「G級ティガによる被害は拡大の恐れがありました」

狩人「…………」

少女「…………」 

472 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:04:10 ID:SchlHai2

受付嬢「ですので、ギルド規定による『緊急クエスト』報酬は」

受付嬢「草原ハンター、狩人、少女の3名による共同捕獲と判断し」

受付嬢「報酬のお金・モンスター素材、それぞれを」

受付嬢「三等分で支払うのが妥当、と判断しています」

狩人「そ……そうなんですか」

少女「……いまいち釈然としませんが」

受付嬢「もっと胸を張ってください」

受付嬢「何度も言いますが、今回の討伐はお二人が居なければ」

受付嬢「早期解決しなかったんです」

受付嬢「あなた方に救われた人は、お二人の想像以上に多いと思ってください」

狩人「……はあ」

少女「…………」

     ……パチ パチパチパチ 

473 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:04:43 ID:SchlHai2

狩人「え?」

少女「!」

     ソウダゼ、ヨクヤッタンダ! ムネヲハレ!

     ウマイコト、ヤリヤガッテ! ワー! ワー!

狩人「は、ははは……」///

少女「~~~っ」///

受付嬢「ふふふ」

受付嬢「それでは報酬です。 どうぞ受け取ってください」

     ドサドサッ!

受付嬢「134000z(ゼニー)とG級ティガレックスの素材になります」

狩人「じゅうさんまっ……!?」

少女「G級ティガの素材……」 ゴクリ… 

474 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:05:45 ID:SchlHai2

ロートル「おー……それが報酬か」

ロートル「G級素材……羨ましいな」

狩人「ロートルさん」

少女「私たち下位なのに……いいんでしょうか?」

ロートル「ああ、受付嬢さんの言う通り、どこに断る必要もない正当な報酬だ」

ロートル「もらっておけ」

ロートル「草原ハンターの奴も今頃もらって、驚いている事だろう」

狩人「こ、こんな大金……初めて受け取ります」 ガクブル

少女「……狩人、言っておくけど」

少女「たぶん素材を全部売ったら、それの4~5倍の金額になると思うわ」

狩人「」

ロートル「まあG級素材を売る奴なんて、滅多にいないけどな」 

475 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:06:20 ID:SchlHai2

狩人「……何て言うか」

狩人「G級って、本当にすごいんだなって、改めて思いました……」

少女「同じく……」

ロートル「そうか」 クスッ

ロートル「で、だ。 話を変えるが……二人に頼みたい事がある」

狩人「はい? 何ですか?」

ロートル「俺とソロは、しばらくふもと村を離れたいと思うんだ」

狩人「しばらく……というと?」

ロートル「期間はわからん」

ロートル「ある『目的』を達成するまで帰らないつもりだ」

ロートル「それまで、ふもと村の事をお前たちに任せたい」 

476 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:06:55 ID:SchlHai2

少女「!」

狩人「ある目的?」

ロートル「今回はもしかしたら、早く済むかもしれんが……」

ロートル「まあ、何かあったら手紙をくれ。 砂漠村を拠点にするから」

狩人「はあ……」

少女「…………」

ロートル「じゃあな、狩人、少女」

ロートル「無理せず、強くなれよ」

     スタ スタ スタ…

狩人「……?」

少女「…………」

少女「ねえ、狩人」

狩人「ん?」 

477 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:07:31 ID:SchlHai2

少女「今日は休みにしない?」

狩人「はあ?」

少女「たまにはいいでしょ?」

少女「とにかく決まり」

狩人「は?」

少女「……ちょっと話したいことがあるの」

少女「もらった報酬を家に置いたら、私の家に来て」

少女「じゃ……」

狩人「あ……」

狩人「…………」

狩人(何なんだ?) 

478 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:08:16 ID:SchlHai2


―――――――――――


少女の家


コックアイルー「いらっしゃいませだニャ!」

狩人「あ、ああ……」

コックアイルー「どうぞ、お入りください」

コックアイルー「ご主人様がお待ちですニャ」

狩人「お邪魔します」

―――――――――――

狩人「……キッチンアイルー雇ってたのか」

少女「ええ。 報酬が安定して来た時に、ね」

少女「狩人も大金が手に入ったんだし、一人くらい雇ってみたらいいわ」

少女「本当に助かるから」 

479 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:08:52 ID:SchlHai2

狩人「さっそく村長さんに聞いてみるよ」

少女「うん」

狩人「それで……話って?」

少女「…………」

少女「……さっきのロートルさんの話」

少女「どう思った?」

狩人「どうって言われても……何か突然だな、としか」

少女「そうね」

狩人「何が言いたいんだ?」

少女「…………」

少女「狩人、そろそろランクアップのクエ、受注できるんじゃない?」 

480 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:09:52 ID:SchlHai2

狩人「え? ……ああ、その通りだけど」

狩人「対象となるモンスターが出現するまで待ってくれって言われてる」

少女「うん。 私もそうだった」

狩人「で? それがどうかしたのか?」

少女「…………」

少女「……ロートルさんと、ソロさんってさ」

少女「HR6だよね」

狩人「ああ」

少女「その上を目指す、としたら何になる?」

狩人「そりゃあG級しかないじゃ……」

狩人「……ん?」

少女「…………」

狩人「そういやG級に上がるのって……どんなモンスターを狩るんだろう」 

481 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:10:33 ID:SchlHai2

少女「さあ……それは私にも分からないけど」

少女「G級モンスターって、たまにしか出現しないよね」

狩人「……あんなのがポコポコ出たら困る」

少女「確かに」 クスッ

少女「でも……それってさ」

少女「G級に上がる為の対象モンスターにも言えないかしら?」

狩人「…………」

狩人「……あ」

少女「そうなると当然、そのモンスターを目当てにした者同士の奪い合いになる」

少女「報酬や素材目当てのハンターも多いけど」

少女「G級猟区に存在する鉱石目当てでG級ハンターになりたいハンターも多いわ」

少女「高値で取引されているから」 

482 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:11:15 ID:SchlHai2

狩人「……ロートルさん達が後者だとは思いたくないが」

狩人「G級ハンターになるのが予想以上に大変そうなのはわかった」

少女「うん」

狩人「それで、今回のロートルさんの行動とどう繋がるんだ?」

少女「…………」

少女「……たぶん、だけど」

少女「もしかしたら、ロートルさん達……」

少女「G級に上がるための対象モンスターの情報を掴んだのかもしれない」

狩人「!」

少女「その辺りの詳しい事は分からないけど」

少女「いずれにしても命懸けである事は間違いないわ」

狩人「…………」 

483 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:11:54 ID:SchlHai2

狩人「……この村を任せるって」

少女「……うん」

少女「そういう意味だと思う」

狩人「…………」

狩人「だ、大丈夫さ」

狩人「必ずまた会おうって言ってたし」

少女「そうね」

少女「でも……ある程度は覚悟しておいた方がいいと思うわ」

狩人「…………」

狩人「……そう……か」 

484 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:12:30 ID:SchlHai2

狩人(…………)

狩人(……G級、か)

狩人(…………)

狩人(いや、ロートルさん達の心配なんて)

狩人(下位の俺がしてもしょうがない)

狩人(俺は、俺の出来る事をして)

狩人(少しでも彼に近づける様、努力するべきだ)

狩人(……そうとも)

狩人(まずは自分の心配をしないとな……)

狩人(…………) 

485 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:58:36 ID:SchlHai2


―――――――――――


村長宅前


狩人「村長さん」

村長「お? 狩人か」

村長「聞いたよ、莫大な報酬をもらったんだってな」

狩人「はは……なんか申し訳ない気もしましたけど」

村長「ははは。 で、何か用かい?」

村長「まさか採取クエの受注じゃないよね?」

狩人「ええ」

狩人「実は、アイルーを雇いたいと思いまして」

村長「あっ……! すまん狩人、そういえばその事を言ってなかったね」

狩人「いえ……」 

486 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 19:59:09 ID:SchlHai2

村長「では、アイルーの仲介をしてくれる、通称ネコ婆さんという人を紹介するよ」

村長「こっちに来てくれ」

狩人「はい」

―――――――――――

村長「この人だよ」

ネコ婆さん?「初めまして、狩人さん」

狩人「」

村長「どうかしたのかい?」 ニヤニヤ

狩人「……その」

狩人「もっと、お年を取った人を想像していたので……」

村長「だよねぇ」 ニヤニヤ 

487 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:00:00 ID:SchlHai2

村長「少し前まで、本当にお婆さんな人がやってたんだけど」

村長「この前、お孫さんが代替りしてね」

村長「ネーコ、という名前なんだ」

ネーコ「改めて。 通称ネコ婆さんをやっている、ネーコです」 ニコッ

狩人「ど、どうも……」///

狩人(何て言うか、ものすごく可愛い女の子だ……)///

狩人(女や少女も十分可愛いし、綺麗だけど……この娘は格別だなぁ)///

村長「じゃ、後は彼女にいろいろ聞くといい」

村長「ネーコちゃん、お願いするね?」

ネーコ「はい、村長さん」

村長「じゃ……」

     スタ スタ スタ… 

488 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:00:33 ID:SchlHai2

ネーコ「それでは、狩人さん」

ネーコ「仲介をする前に、簡単な説明をしますね?」

狩人「あ、はい。 ネーコさん」

ネーコ「ネーコでいいですよ」 クスッ

狩人「そ、そうですか……」///

狩人「それなら俺も狩人、でいいよ」///

ネーコ「いえいえ、お客様には節度を持って対応しないといけないので」

狩人「そ、そうか……」///

ネーコ「で、説明ですが」

ネーコ「まず仲介するにあたり、仲介料が発生します」

ネーコ「これはアイルーの報酬とは別にいりますのでご了承ください」

狩人「はい」 

489 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:01:10 ID:SchlHai2

ネーコ「次に」

ネーコ「アイルーを雇う際に保証金を預からせていただきます」

狩人「保証金?」

ネーコ「はい」

ネーコ「これは無責任なハンター様の雇用と解雇を防ぐ目的があり」

ネーコ「また、ハンター様の引退や死亡に際し、雇用したアイルーに対する手当てとして」

ネーコ「私が責任を持って預からせていただきます」

狩人「……ハンターの引退や死亡」

ネーコ「そうです」

ネーコ「雇用主であるハンター様は、突然いなくなる可能性があり」

ネーコ「失業したアイルーが路頭に迷わないよう必要な処置として」

ネーコ「ご了承ください」 

490 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:01:56 ID:SchlHai2

狩人「…………」

ネーコ「……厳しい事を言うようですが」

ネーコ「彼らは次の仕事を待つ期間や、故郷に帰る為の資金がどうしても必要になります」

ネーコ「それらをハンターに望むのは間違っているのでしょうか?」

狩人「……そ、それは」

狩人「俺にはわからないよ……けど」

狩人「幾らになるのか分からないが、高くつくな……と思ってしまって」

ネーコ「それは否定しませんが……」

ネーコ「しかし、この制度ができるまで」

ネーコ「大勢のアイルーたちが泣き寝入りをしていたのも事実なんです」

ネーコ「ハンターの気まぐれや、ささいな間違いで突然不当解雇されて……」

ネーコ「中には名前が気に入らないとか、寝相が気持ち悪いとか」

ネーコ「そんな理由だってまかり通っていたんです」

狩人「…………」 

491 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:02:49 ID:SchlHai2

狩人「……わかったよ」

ネーコ「ありがとうございます」

狩人「で、いくらくらいになるのかな?」

ネーコ「それでは料金のご説明をさせていただきます」

狩人「…………」

ネーコ「まず、キッチンアイルー、オトモアイルー共に」

ネーコ「ランク分けされています」

ネーコ「当然ですが、上に行けば行くほど、料金も高くなります」

狩人「……ですよね」

狩人「おすすめは、やっぱり高い方なんですか?」

ネーコ「即戦力が欲しいのなら、そうですね」 

492 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:03:34 ID:SchlHai2

狩人「料金が安い方を選ぶハンターも居るんですか?」

ネーコ「そこはハンター様の事情も絡みますので、十人十色です」

狩人「う~ん……」

狩人「ちょっと疑問なんですけど」

ネーコ「はい」

狩人「安い方は、ずっと安いままなんですか?」

ネーコ「基本的にはそうですけど……アイルーが給金に不満を持った場合」

ネーコ「私が仲介して交渉する事もあります」

ネーコ「それでハンター様との合意が得られない場合は」

ネーコ「辞める事もあるとお考え下さい」

狩人「そうですか」 

493 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:04:13 ID:SchlHai2

ネーコ「では、詳しい料金ですが」

ネーコ「ランクは大まかに3段階あり」

ネーコ「C、B、Aの順に料金も高くなります」

狩人「はい」

ネーコ「Cランクは仲介料200z(ゼニー)と保証金が1500z(ゼニー)」

ネーコ「月々の給金は500z(ゼニー)です」

狩人「…………」

ネーコ「Bランクは仲介料500z(ゼニー)と保証金3500z(ゼニー)」

ネーコ「月々の給金は1000z(ゼニー)です」

狩人「…………」

ネーコ「Aランクは仲介料1000z(ゼニー)と保証金7700z(ゼニー)」

ネーコ「月々の給金は2100z(ゼニー)となります」

狩人(高ぇ……) 

494 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:04:57 ID:SchlHai2

ネーコ「いかがなさいますか?」

狩人「…………」

狩人「……ちょっと待ってくださいね」

ネーコ「はい」

狩人(最後のAランクって、普通のクエ2回分くらいが毎月かかるのか……)

狩人(しかも仲介料や保証金とか、すごい値段)

狩人(……今なら払えるけど、ちょっと躊躇するな)

狩人(…………)

狩人(安い方はどうなんだろ?)

狩人(下手な掃除や不味いメシ作られたりするのかな……)

狩人(う~ん……) 

495 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:05:28 ID:SchlHai2

ネーコ「…………」

狩人「…………」

狩人「じゃあ……Bランクのアイルーを見せてもらえますか?」

ネーコ「はい。 こちらになります」つ(一覧表)

狩人「どれどれ……」

狩人「…………」

狩人「……あの」

ネーコ「はい、何でしょう?」

狩人「こんな事を聞くのはおかしいかもしれないけど」

狩人「選ぶ時の基準とかあります?」

ネーコ「……それはハンター様のお心しだいです」 

958 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 22:37:58 ID:edtHvh.A

ネーコ「キッチンアイルーならば、好物の料理が得意なアイルーを選んだり」

ネーコ「オトモアイルーなら、自分の戦闘スタイルと相性のいい」

ネーコ「アイルーを選択すればいいと思います」

狩人「なるほど」

狩人(……って言われてもなぁ)

狩人「う~ん……」

ネーコ「…………」

狩人「……じゃあ」

ネーコ「はい」

狩人「このアイルーをお願いします」つ(指差し)

ネーコ「ありがとうございます」 

497 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:06:56 ID:SchlHai2

ネーコ「オトモアイルーはいかがですか?」

狩人「それはまた今度でいいです」

ネーコ「わかりました」

ネーコ「では、仲介料と保証金あわせて4000z(ゼニー)いただきます」

狩人「はい」

―――――――――――

ネーコ「……はい、確かにいただきました」

ネーコ「それでは……板前アイルーさーん」

板前アイルー「ニャ!」

ネーコ「たった今、こちらのハンター様が あなたと雇用契約を結びました」 

498 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:07:45 ID:SchlHai2

板前アイルー「ニャ! 旦那、あっしは板前アイルーって名のケチな野郎ニャ!」

板前アイルー「遠慮なくこき使ってくれニャ!」

狩人「お、おう。 よろしくな」

板前アイルー「頑張るニャ!」

ネーコ「それでは狩人さん、板前アイルーさん」

ネーコ「仲良く頑張ってくださいね」

―――――――――――

板前アイルー「ニャ! ここが旦那の住処かニャ?」

狩人「ああ、そうだよ」

板前アイルー「やりがいのありそうな職場だニャ!」

板前アイルー「炊事・洗濯・掃除、全部お任せニャ!」

狩人(……ちょっと暑苦しい奴だな)

狩人「おっと、掃除についてなんだけどな」

板前アイルー「ニャ?」 

499 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:08:21 ID:SchlHai2

狩人「俺の部屋は、このままの状態で掃除してくれ」

板前アイルー「このままでかニャ?」

狩人「乱雑に思えるだろうけど、これで俺は使いやすいんでな」

板前アイルー「わかったニャ!」

狩人「それじゃ、仕事にかかってくれ」

板前アイルー「ニャ!」

―――――――――――

板前アイルー「旦那!」

狩人「ん? なんだ?」

板前アイルー「夕食は何にするニャ?」

狩人「もうそんな時間か……そうだな」

狩人「やっぱり肉料理だな」 

500 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:09:10 ID:SchlHai2

板前アイルー「注文、ガッテン承知だニャ!」

板前アイルー「では、食材を買ってくるので、20z(ゼニー)欲しいニャ」

狩人「え……あ、そうか」

狩人「そりゃ食材が無いと作れないな……ちょっと待っててくれ」

     ゴソゴソ…

狩人「はい、20z(ゼニー)」

板前アイルー「はい! 確かにいただきましたニャ!」

板前アイルー「では! 行ってきますニャ!」

狩人「おー」

―――――――――――

板前アイルー「お待たせしましたニャ!」

狩人「…………」 

501 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:09:50 ID:SchlHai2

     プ~ン…

狩人「…………」

狩人「……何か嗅いだ事のないニオイだな」

板前アイルー「あっしの特製肉料理だニャ!」

板前アイルー「ささっ! 冷めない内にガッツリ行くニャ!」

狩人(……何か嫌な予感がするが)

狩人「じゃあ……いただきます」

     モグッ…

狩人(お? 意外と味は悪くないな)

     ムシャムシャ…

狩人(まあそこそこって感じだけど……)

―――――――――――

狩人「ごちそうさま」 

502 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:10:43 ID:SchlHai2

板前アイルー「どうでしたかニャ?」

狩人「ああ、何か不思議な……」

     ゴロ…

狩人「……ん?」

     ゴロゴロゴロ……

狩人「ヴッ!?」

     ピーゴロゴロゴロ……

狩人「bhszこhさrlんgy!?」

     ダダダダダダッ!! バタンッ!

板前アイルー「ニャ?」 

503 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:11:47 ID:SchlHai2



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     お見苦しい描写の為、割愛します。

     しばらくお待ちください。



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504 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:12:30 ID:SchlHai2



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     お見苦しい描写の為、割愛します。

     しばらくお待ちください。



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505 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:13:07 ID:SchlHai2



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     お見苦しい描写の為、割愛します。

     しばらくお待ちください。



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506 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:14:02 ID:SchlHai2

狩人「……お前……毒でも……入れたのか?」

板前アイルー「すまねぇ旦那……ちょいと冒険しすぎたみてぇだニャ」

狩人「冒険……って……うっ……」

板前アイルー「ま! たまにはこんな事もあるニャ!」

板前アイルー「笑って許して欲しいニャ! 旦那!」

     ニャハハハハハハ!

狩人「…………」

狩人(……これ)

狩人(解雇しても十分いい理由だよな……?)

狩人(…………)

狩人(……でも4000z(ゼニー)も払ってるしなぁ)

狩人(納得いかねぇ……) 

507 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:14:35 ID:SchlHai2


―――――――――――


翌日の朝

狩人の家前


狩人「――というわけで」

狩人「俺は今日、休む……」

少女「……それは災難だったわね」

少女「まあ仕方ない、か……」

狩人「おう……すまんな」

少女「ううん。 クエから帰ったら、お腹に優しいもの持ってくるわ」

少女「じゃ!」 

508 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:15:43 ID:SchlHai2


―――――――――――


昼頃


狩人「ふう……どうにか落ち着いてきた」

狩人「…………」

狩人(とりあえず、ネーコに文句の一つも言わないと気が収まらん)

狩人(……我ながら人間ちっちゃい気もするが)

狩人(酷い目に合わされたんだし)

狩人(アイルーの入れ替えくらいには応じてくれるかもしれん)

狩人(ダメもとで文句くらい言ってもいいだう)

狩人「……出かけるかな」 

509 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:16:26 ID:SchlHai2


―――――――――――


ネーコの家付近


狩人「……ん?」

狩人「…………」

狩人(どうやら出かけるみたいだな)

狩人(…………)

狩人(どうする? また今度にするか?)

狩人(…………) 

510 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:17:05 ID:SchlHai2


―――――――――――


ふもと村 墓地


狩人「…………」

狩人(……何で墓地に?)

狩人(しかもこんな昼間から……)

     ザッ… ザッ…

狩人(!?)

狩人(墓を掘り始めた!?)

狩人(白昼堂々と墓荒らしか!?)

狩人(…………)

狩人(ともかく、止めないと!)

     ダッ!

狩人「お、おい! ネーコ!」 

511 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:17:47 ID:SchlHai2

ネーコ「え?」

ネーコ「ああ、狩人さん」

ネーコ「どうかなさいましたか?」

狩人「それはこっちのセリフだ」

狩人「真昼間から墓荒らしなんて……何をしているんだ?」

ネーコ「墓荒らし? ……ああ」

ネーコ「これは墓荒らしではありませんよ」

狩人「はあ? どう見ても……」

ネーコ「……これを見てください」つ(つつみ)

狩人「は? ……何ですか、これ?」

ネーコ「あるアイルーの尻尾です」

狩人「!?」 

512 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:20:19 ID:SchlHai2

ネーコ「時々あるんです」

ネーコ「雇っていただいた ハンター様の事が忘れられなくて」

ネーコ「遺言に亡くなったハンター様のお墓に埋めて欲しい、というアイルーが……」

狩人「…………」

     ザッ… ザッ…

ネーコ「ふう……故郷が遠くて、体の一部分でもいいから、と」

ネーコ「このアイルーは、言い残して亡くなったんだそうです」

狩人「…………」

ネーコ「狩人さん、周りのお墓……見てみてください」

ネーコ「ところどころ、お墓の脇に小さなお墓があるでしょう?」

狩人「……ありますね」

狩人「あそこなんて、3つもある」 

513 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:21:22 ID:SchlHai2

     ザッ… ザッ…

ネーコ「……これでよし。 あとは……」

     (小さな墓標)トン…

ネーコ「これで……あっちでも一緒です」

ネーコ「きっと……」

狩人「…………」

狩人「……あれ?」

ネーコ「どうしました?」

狩人「名前が……墓標に名前が無いけど?」

ネーコ「ああ、それは……故事にならって、そうしているんです」

狩人「故事?」

ネーコ「ポッケ村に伝わる……ある歴戦ハンター様の晩年のお話です」 

514 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:22:20 ID:SchlHai2

ネーコ「……という事で」

ネーコ「それ以降、ハンター様のお墓に寄り添うアイルーのお墓に」

ネーコ「名前を刻まない事が、ポピュラーになったんです」

ネーコ「最近は名前を刻む事も多いんですけどね」 クスッ

ネーコ「今でもそのハンター様のお墓と、アイルーのお墓はポッケ村に残っていて」

ネーコ「事情を知っている人は、そっと花を手向(たむ)けるそうです」

狩人「……そうですか」

ネーコ「それで……狩人様は、私に何かご用だったのですか?」

狩人「!」

狩人「あー……その……何でもないです」

狩人「たまたまネーコを見かけたんで……」

ネーコ「そうですか」 

515 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:23:13 ID:SchlHai2

ネーコ「それでは、私はこれで」

狩人「あ、ああ……」

     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人(……何か気が削がれてしまったな)

狩人(…………)

狩人「はあ……」

狩人「…………」

狩人「まあ、悪気があったわけじゃないだろうし」

狩人「板前アイルーにもう冒険はするなって、言えばいいか……」

狩人「はあ……」 

516 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:23:44 ID:SchlHai2


―――――――――――


数日後の朝

ふもと村 集会所


狩人「ガノトトスが出現した!?」

受付嬢「はい。 ようやく出現しました」

狩人「やっと出たかぁ……長かった」

少女「狩人?」

狩人「あ、少女!」

狩人「聞いてくれ! ガノトトスがやっと出たんだ!」

少女「そう。 ランクアップ対象モンスターが出たのね」

少女「けど……」

狩人「ん?」 

517 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:24:34 ID:SchlHai2

少女「密林だと一週間かかるから」

少女「私たち二人一緒に出かけるのは、まずいわね……」

狩人「あー……」

狩人「い、いや、まあ……そりゃ心配かもしれないだろうけど」

狩人「俺もそれなりに腕を上げたんだし……ひとりでも何とかなるさ」

少女「そう……」

少女「じゃ、せめてガノトトスの弱点を教え……」

ハンター(女)「あら、ガノトトス狩りに行くの?」

ハンター(女)「あたしで良かったら手伝おうか?」

狩人「え」

少女「え」 

518 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:25:18 ID:SchlHai2

娘ハンター「あ、あの!」

娘ハンター「よ、良かったら私も……」///

狩人「」

少女「」

露出女「ちょいと待ちな」

露出女「そんな小娘とじゃなく、あたいとどうだい?」

露出女「いい仕事して見せるぜぇ~?」

狩人(何て格好を!?)///

少女(ボーン装備……あれで戦う女の子が居るなんて)

少女(って! 問題はそこじゃない!)

少女(どうして女の子ハンターばっかり寄ってくるの!?)

狩人「え、ええと、俺、3乙ばっかしているんですけど……」 

519 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:30:00 ID:SchlHai2

ハンター(女)「でも一皮むけたんだよね」

ハンター(女)「何しろG級ティガをやっつけたんでしょ?」

娘ハンター「私、いろいろ教わりたくて……」///

娘ハンター「あ、後でG級ティガのお話も聞かせてくださいね?」///

露出女「一人のメスとしちゃあ、実力もだが……」

露出女「運のいいヤローにツバつけときたいんだよ♪」

狩人「」

少女「」

     ワー ワー ギャー ギャー

狩人「……どうすりゃいいの?」

少女「知らないっ!」

少女「その人達と一緒に行けば!?」 フンッ!

狩人「…………」 

520 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:30:54 ID:SchlHai2





     弱点の事、まだ聞いてないんですけど……

     と、言いたかったが

     雰囲気がそれを許してくれなかった……







521 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:31:36 ID:SchlHai2


―――――――――――


砂漠村 集会所


ロートル「…………」

ソロ「ロートル」

ロートル「ソロ。 そっちはどうだ?」

ソロ「噂話程度だが……焼け焦げたアプケロスをよく見かけるようになっている」

ソロ「ハンターやメラルー・アイルーの仕業にされているみたいだ」

ロートル「こっちも同じだ」

ロートル「目撃した場所は?」

ソロ「砂漠のあるエリアに集中している」 

522 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:33:43 ID:SchlHai2

ロートル「よし、これも同じ」

ロートル「砂漠地帯で決まりだな……」

ソロ「ああ」

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ソロ「古龍殺し(エルダーキラー)は無条件でG級ハンターに……」

ロートル「前回はアカムトルムを探して半年粘ったがダメだった」

ロートル「今回はモノにしたいな……」

ソロ「そうだな……」

ロートル「…………」

ロートル(今度こそ……今度こそは)

ロートル(G級に……!) 

523 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/05/30(土) 20:34:31 ID:SchlHai2







     ロートルの目は、一瞬あやしく輝き

     そして、グラスの酒を一気に飲み干した……











531 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:02:39 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


数日後の昼頃

密林


露出女「そっちに行ったよ! 狩人!」

狩人「ああ!」

狩人「でやああああっ!」

     ブウンッ!(亜空間タックル)

     バゴォッ!

狩人「ヘベッ!?」

娘ハンター「だ、大丈夫ですか!?」 

532 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:03:23 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「はっ!?」

救助アイルー「気がついたかニャ?」

狩人「…………」

狩人「……また1乙したのか」

救助アイルー「そろそろガノトトス、狩猟される頃だと思うニャ」

救助アイルー「早く行かないと、剥ぎ取り損ねるニャ」

狩人「そ、そうか……早く行かないと!」

救助アイルー「頑張ってくれニャ」 

533 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:04:13 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


露出女「おー、帰ってきたか」

娘ハンター「あ、大丈夫ですか?」

ハンター(女)「早く剥ぎ取りしなよ?」

狩人(……本当に終わってるし)

狩人「お、おう……」

―――――――――――

狩人「はあ……間に合った」

狩人「でも、なんかほとんど任せてごめん……」

露出女「お疲れ!」

娘ハンター「調子の悪い時もありますよ」 クスッ

ハンター(女)「そうそう」 

534 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:05:40 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 集会所


狩人「あの、どうもありがとうございました」

露出女「いやいや。 礼を言われるほどの事じゃねーよ」

娘ハンター「これでHR3ですね。 おめでとうございます」

露出女「けどまあ……どうしてもってんなら」

露出女「ひとつだけ頼みを聞いてくれねーか?」

狩人「え? ああ、俺に出来る事なら」

ハンター(女)「んふふ、やっぱそれ狙いか」

狩人「……?」

露出女「あんたの髪の毛を一本くれないか?」 

535 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:06:47 ID:Y9Zogchs

狩人「髪の毛……ですか?」

ハンター(女)「そう! ぜひちょうだい♪」

娘ハンター「お、お願いします……」///

狩人「は、はあ……」

     ピッピッピッ…

狩人「これでいいんですか?」

露出女「そう! これでいいの♪ あんがとねー♪」

ハンター(女)「じゃ! またねー!」

娘ハンター「私、しばらく、ふもと村に居ますから、また誘ってください」

娘ハンター「それじゃ」 

536 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:07:48 ID:Y9Zogchs

狩人「あ、ああ……また」

狩人「…………」

狩人(……何なんだ、この展開)

狩人(みんな(特に女性ハンター)手のひらを返した様に接してくる)

狩人(どうやら俺の髪の毛が目当てだったみたいだが……)

狩人(しかも全員上位ハンターだよな?)

狩人(……わからん)

????「……ただのゲン担ぎだ」

狩人「え?」

狩人「!」

狩人「あ、あんたは!? イケメン!!」 

537 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:09:01 ID:Y9Zogchs

イケメン「……いかにも俺はイケメンだが」

イケメン「どこかで会っていたか?」

狩人「白々しい! 何も知らない俺を騙して、クエストの報酬だまし取っただろ!」

イケメン「! ……そういう事か」 ハア…

狩人「あの時の金、返せ!」

イケメン「いいから落ち着け」

イケメン「お前の言う『イケメン』の顔には、頬に傷跡が無かったか?」

狩人「何が傷跡だ! そんな事でもう騙され……え?」

イケメン「ここだ。 この部分に傷跡が無かったか?」

     イケメンは、自分の頬にトントンと指で指し示す。

     もちろん傷跡など無い。

狩人「……確かに」

イケメン「まったく……」 

538 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:10:14 ID:Y9Zogchs

イケメン「君に迷惑をかけたのは、俺の双子の兄の方だ」

イケメン「名前もベテラン、という名前でな」

狩人「はあ!?……偽名まで使っていたなんて」

狩人「ギルドにバレたらタダじゃ済まないのに……」

イケメン「俺も迷惑している」

イケメン「おそらく、クエの受注は君にさせたのだろう?」

イケメン「ギルドは受注者以外の素性は余り確かめない」

イケメン「そこを上手く突いているんだよ」

狩人「……ギルドは黙認しているんですか?」

イケメン「ある意味な」 

539 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:11:50 ID:Y9Zogchs

イケメン「もっとも被害者が初心者ばかりで、極端に訴える者がいない」

イケメン「内容も少し気をつければ住む事だし、被害金額も少なく」

イケメン「告発自体を恥ずかしいと考えて、泣き寝入りする者がほとんどだ」

イケメン「君もその口か?」

狩人「…………」

イケメン「……やれやれだな」

狩人「よ、余計なお世話だ!」///

狩人「あんたも身内なら、もっと注意してやれよ!」

イケメン「兄は俺の言う事なんて聞きゃしないよ」

イケメン「まったく……兄のしでかした事で何度、嫌な目に合わされた事か……」

イケメン「……というか、なぜ、兄の話になったんだ?」

狩人「あんたが俺に声をかけてきたんじゃないか」

狩人「なんか、ゲン担ぎがどうとか……」

イケメン「あー……そうだったな」 

540 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:14:35 ID:Y9Zogchs

イケメン「さっきの……お前の髪の毛を欲しがったのは」

イケメン「下位ハンターがG級モンスターを打ち破ったと聞いて」

イケメン「それにあやかりたいんだよ」

狩人「……なるほど」

イケメン「G級に上がるには努力はもちろんだが……」

イケメン「運の要素も強い」

イケメン「幸運を手にした者の一部は、効果がありそうだからな」

狩人(聞いていると切なくなる話だ……)

イケメン「まあその分、クエを手伝ってもらえたんだ」

イケメン「よしとしておくんだな……じゃ」

狩人「…………」 

541 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:15:45 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


狩人の家


狩人「……ただいま」

板前アイルー「おう! けえってきたかニャ、旦那!」

板前アイルー「お疲れ様だニャ!」

狩人「おう……」

板前アイルー「……なんか元気ねぇけど、どうかしたかニャ?」

狩人「いや、何でもない」

狩人「今日はさっぱりしたもの……刺身とかいいかな」

板前アイルー「ガッテンだニャ!」

狩人「金はまだあるか?」

板前アイルー「問題ないニャ!」 

542 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:16:56 ID:Y9Zogchs

     ドサッ…

狩人「ふう……」

狩人(…………)

狩人(……待てよ?)

狩人(俺でこれなら……少女の奴はもっとすごいんだろうな)

狩人(何もなくたって、彼女の髪の毛ならお守りになりそうだし)

狩人(欲しがる男は多そうだなぁ……)

狩人(…………)

狩人(俺ももらおうかな)

狩人(……まてまて、何かそれはダメすぎな気がする) 

543 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:18:24 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

少女「おはよう、狩人」

狩人「ああ、おはよう少女」

少女「見事にガノトトス倒したんだってね」

少女「おめでとう」

狩人「……倒したっていうか」

狩人「むしろ倒してもらったって言う方が正しいと思う」

少女「……たくさんの女の子に囲まれて良かったわね」 フンッ

狩人「俺の髪の毛目当てだったんだよ」

少女「髪の毛?」 

544 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:19:22 ID:Y9Zogchs

少女「なるほど……ゲン担ぎね」

狩人「少女も野郎ハンターからクレクレ言われているんじゃないのか?」

少女「全くないけど……」

狩人「え? そうなの?」

少女「うん」

狩人「へー……ちょっと意外だな」

狩人「俺なんかより、よっぽど御利益ありそうなのに」

少女「…………」

少女「……欲しい?」

狩人「ん?」

少女「私の髪の毛」 

545 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:20:12 ID:Y9Zogchs

狩人「……考えはしたけど」

狩人「なんか、いろいろダメな気がするから……」

少女「……そう」

狩人「それよりHRも同じになったし」

狩人「何か狩りに行かないか?」

少女「それもそうね」

少女「じゃあ……レイアはどう?」

狩人「ああ、ちょうどいいかも」

狩人「話には聞いていたし、ランクが上がったらやってみたかったんだ」

少女「なら問題ないわね」

少女「火炎攻撃は離れてても飛んできて厄介だから、よく見て覚えて」

狩人「わかった」 

546 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:21:08 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


砂漠のとあるエリア


ロートル「はあ!」

     ズバズバズバッ!

ロートル「ふう……ドスゲネポスを狩るのも飽きてきたな」

ソロ「そう言うな、ロートル」

ソロ「これも目的のためだ」

ロートル「……わかっているさ」

ロートル「…………」 

547 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:22:27 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


砂漠村 集会所


ロートル「ふう……」

????「よう。 クエは順調か?」

ソロ「む……?」

????「おっと、こいつは失礼」

????「俺はイ……ベテラン、という名前のハンターだ」

ベテラン「よろしく」

ロートル「よろしく。 ロートルだ」

ソロ「よろしく。 ソロだ」

ベテラン「少し話をしたいんだが、構わないか?」

ベテラン「挨拶がわりに一杯おごろう」 

548 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:23:26 ID:Y9Zogchs

     コト…

ロートル「……で? 話とは?」

ベテラン「まあまあ。 その前に少し聞きたいんだが」

ベテラン「おたくら、何を狩りに来たんだ?」

ベテラン「今の時期、砂漠なら上位クラスのガノトトスってトコなのに」

ベテラン「ここ数日ドスゲネポスしか狩っていないな?」

ロートル「……片手剣の素材を集めているだけだ」

ソロ「ついでにダイミョウザザミも狩っている」

ベテラン「なるほど。 もっともらしい理由だ」

ベテラン「だが……」

ベテラン「俺はふと、ある事に気がついた」 

549 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:25:29 ID:Y9Zogchs

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「最初の疑問は武器と防具の属性だ」

ベテラン「ドスゲネポスを狩るのに水属性で火炎耐性の防具」

ベテラン「おまけにかなりの鎧玉をつぎ込んだ重装備……」

ベテラン「どう考えてもドスゲネポス相手とは思えねぇ」

ロートル「……他に防具を持っていないだけだ」

ロートル「どんなモンスター相手でもこれを使っている」

ロートル「武器は使い慣れているから、としか言い様がないな」

ベテラン「……ま、そういう言い訳は、ごもっともだな」

ベテラン「が、ここからは俺の推測だ」

ベテラン「おたくらはドスゲネポスを目的にしているんじゃないと仮定した場合」

ベテラン「ひとつだけ思いつく共通点が見えてきた」 

550 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:26:25 ID:Y9Zogchs

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「おたくらはドスゲネポス……いや、クエのモンスターが目的なんじゃない」

ベテラン「砂漠の『あるエリア』のクエを受注しまくっているんだ」

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「水属性で火炎耐性の防具……」

ベテラン「まるで火山のモンスターを狩りに行く装備だ」

ベテラン「何が目的なんだ?」

ベテラン「今の時期の砂漠には似つかわしくないぜ?」

ロートル「……そう言われてもな」 

551 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:27:01 ID:Y9Zogchs

ロートル「ベテラン……とか言ったな」

ロートル「君の言う通り、怪しく見えても」

ロートル「俺たちはドスゲネポスを狩りに来ただけ……それだけだ」

ベテラン「…………」

ベテラン「やれやれ……どうやら警戒されているみたいだな」

ベテラン「じゃ、今日はここまでにしておく」

     ガタタ…

ベテラン「機会があったら、俺も『ドスゲネポス狩り』に参加させてくれ」

ベテラン「ぜひな」

ロートル「まあ考えておくさ」

ベテラン「期待してるぜ……ふふふ」

     スタ スタ スタ…

ロートル「…………」 

552 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:28:31 ID:Y9Zogchs

ソロ「……ガブラス野郎め」

ロートル「油断も隙もないな……」

ロートル「だが……確かに人数は欲しいところだ」

ソロ「気持ちは分かる」

ソロ「しかし、俺たちは何度も裏切られてきたからな」

ロートル「ああ……」

ロートル「何度もな……」

ソロ「…………」

ロートル(古龍殺し(エルダーキラー)を狙っている事を感づかれてはダメだ)

ロートル(G級を目指すハンターならば、この情報は喉から手が出るほど欲しいモノ……)

ロートル(絶対に他のハンターに気取られてはいけない)

ロートル(信頼して出し抜かれた事は一度や二度では無いからな) 

553 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:34:12 ID:Y9Zogchs

ロートル(だが……時間が経てば経つほど)

ロートル(あのベテランとかいうハンターの様にカンのいい奴が出てくる)

ロートル(早く出現しろ……テオ・テスカトル)

ロートル(…………)

ロートル(狩人達が同じ上位ハンターならな……)

ロートル(信頼もできるし、修行という名目もできて怪しまれずに済むのに)

ロートル(…………)

ロートル(ふ……いかんな)

ロートル(まだまだヒヨっ子のあいつらを頼ろうとするなんて)

ロートル(ましてやロクな装備もなしで古龍殺し(エルダーキラー)に付き合わせるとか)

ロートル(何を考えているんだ……俺は) 

554 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:35:16 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


森丘




     ギャオオオオオオオオッ!!



狩人「くっ……!」

狩人(こんな所まで咆哮の影響が来るのかよ!)

     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「怒ったわ!」

少女「ここからが正念場よ!」

狩人「わかった!」 

555 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:35:50 ID:Y9Zogchs

狩人(これがリオレイア……!)

狩人(火炎攻撃は厄介だし、目が退化しているフルフルと違って)

狩人(狙いもバッチリで隙が少ない!)

狩人(だが……!)

     ブウウンッ!

狩人(テールアタック!) 回避!

狩人「でやあああああああっ!」

     ドガァッ!!

     ギャオオオオオ……

狩人(基本的な動きや動作はフルフルとほぼ同じだ!)

狩人(懐に入ってしまえば……) 

556 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:36:26 ID:Y9Zogchs


     ザクッ!!


狩人(こっちのモノだ!)

狩人「はあああああああああっ!」


     グルルル……(後ずさり)


少女「!」

少女「ダメ! 狩人! 下がって!」

狩人「へ?」


     ギャアアッ!(サ○ーソルト)


狩人「あべばっ!?」 

557 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:37:39 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「はっ!?」

救助アイルー「気がついたかニャ?」

狩人「…………」

狩人「……また1乙か」 ハア…

救助アイルー「毎回思うけど」

救助アイルー「あんたは本当に頑丈だニャ」

狩人「……ヤられてたら意味がないよ」 

558 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:38:40 ID:Y9Zogchs

救助アイルー「何言ってるニャ」

救助アイルー「レイアの宙返りテールアタックをまともに食らって」

救助アイルー「その程度で済んでるなんて、フツーありえないニャ」

狩人「……褒めても何も出ないぞ?」

救助アイルー「下位のレイアとはいえ」

救助アイルー「あいつの最大最強の攻撃方法だニャ」

救助アイルー「フツーの下位ハンターなら良くて一日中気絶」

救助アイルー「悪ければ体中の骨が砕けて再起不能ニャ」

狩人「……ウソだよな?」

救助アイルー「大真面目な話だニャ」 

559 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:39:59 ID:Y9Zogchs

     タッ タッ タッ

少女「狩人!」

狩人「え? 少女?」

少女「だ、大丈夫!?」

少女「私が分かる!?」

狩人「も、もちろん分かるし、大丈夫だよ」

少女「…………」

少女「は――っ……」 ヘナヘナヘナ…

救助アイルー「……とまあ」

救助アイルー「このくらいの心配される攻撃力なのは間違いないニャ」

狩人「…………」

少女「で? 狩人は大丈夫なの?」

救助アイルー「助けたこっちが驚いてるくらい元気だニャ」 


560 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:41:13 ID:Y9Zogchs

少女「そう……良かった」

救助アイルー「じゃ、俺はもう行くニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……なんか、ごめん」

少女「ううん、狩人が無事なら……」

少女「…………」

狩人「少女?」

少女「ねえ、狩人」

少女「あなた……モンスターの書物、読んでいないの?」 

561 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:42:05 ID:Y9Zogchs

狩人「!!」

狩人「あ……あ~……その……」

少女「…………」

狩人「……すまん」

少女「……私に謝る事じゃないわ」

少女「ねえ、狩人」

少女「モンスターの書物は、判明している事柄すべてを載せている」

少女「貴重な情報源よ」

少女「弱点部位、弱点属性、罠の効きやすさ、行動や習性、食性すらも書いてある」

少女「初めてのモンスターに挑むのなら、最低限、読んでおかないといけないものなのよ」

少女「ハンターとして」

狩人「…………」 

562 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:43:07 ID:Y9Zogchs

少女「今日はこの程度で済んだけど」

少女「明日は分からない」

少女「あなた自身の身の安全の為に、一度は目を通しておいて?」

少女「せめて、今日狩るモンスターの部分だけでもいいから」

狩人「そ、そうだな……うん」

狩人「分かったよ……」

少女「……本当に?」

少女「本当に分かってるの?」

狩人「分かってるよ」

狩人「ちゃんと読むよ……モンスターの書物」

少女「…………」 

563 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:44:02 ID:Y9Zogchs

少女「なら、いいわ」

少女「とりあえず今回は、私が一通り教えるから」

狩人「ああ、頼む」

少女「そうね……まず攻撃方法だけど」

少女「狩人が受けた宙返りテールアタックと、もう一つ要注意な攻撃があるわ」

狩人「うん」

少女「これは通常の火炎攻撃と動作がほぼ同じだから見分けがつきにくいけど」

少女「怒った時にやると思えばいいと思う」

少女「普通は単発だけど、三連続で、しかも左右に角度をつけて撃ってくるわ」

狩人「三連続か……角度ってどれくらいだ?」

少女「それほどないと思うけど、一度見れば分かると思うわ」

狩人「ふむふむ」

少女「それから……」 

564 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:44:57 ID:Y9Zogchs



     少女の説明は分かりやすく、的確で

     その後のレイアの狩りは問題無く終了した。



     …………

     だけど……

     このままでいい事はない。

     いい加減に言っておかなければ……





565 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:45:49 ID:Y9Zogchs



     下手をすれば、彼女にも迷惑をかけてしまう。

     いや……少女だけじゃない。きっと他のハンターにだって……





     …………





     もしかしたら彼女に……俺は軽蔑されるかもしれない。





566 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:47:18 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


少女「報酬は受け取った?」

狩人「ああ」

少女「そう」

狩人「……俺の1乙で少なくなってしまったな。 ごめん」

少女「いいよ、このくらいで謝らなくても……」

少女「それよりもモンスターの書物、ちゃんと読むのよ?」

狩人「……あ、ああ」

少女「それじゃ、また明日」

狩人「…………」 

567 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:48:05 ID:Y9Zogchs

広場


     タッ タッ タッ

狩人「少女!」

少女「え? 狩人?」

少女「どうしたの?」

狩人「…………」

狩人「……実は」

狩人「話したい事があるんだ」

少女「え? ……うん、何?」 

568 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:48:43 ID:Y9Zogchs

狩人「ここじゃちょっと……」

狩人「そうだな……少女の家に行ってもいいか?」

少女「……いいけど」

少女「いったい何のはn」

少女「!」

少女(……も)

少女(もしかして……もしかしたら)///

少女(もしかする……かも!?)///

少女「…………」///

少女「……大事な話……なの?」///

狩人「ああ……俺にとっても少女にとっても」

少女(わ、私にとっても!?)/// 

569 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:49:33 ID:Y9Zogchs

狩人「とにかく、二人だけで話がしたいんだ」

狩人「頼む、少女」

少女「う、うん……分かった」///

少女「で、でも! ちょっと時間をちょうだい」///

狩人「え? 時間?」

少女「家……少し散らかってるから、片付けたいのよ」///

狩人「い、いや、俺は気にしな」

少女「私が気にするの!」///

少女「とにかく……そうね」

少女「一時間くらいしたら来て」

狩人「……分かった」 

570 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:50:11 ID:Y9Zogchs

少女(…………)

少女(大事な話……)

少女(狩人と私にとって……)

少女(おまけに二人きりでって……)

少女(…………)

少女(……こ、これは)///

少女(間違いない……よね?)///

少女(そんなに経験ないけど……)

少女(両思いになれる……のよね?)///

少女(~~~~~っ!!)/// 

571 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:50:57 ID:Y9Zogchs


―――――――――――


一時間後

少女の家


     コン コン

狩人「少女、俺だ。 狩人だ」

     キィ…

少女「い、いらっしゃい……」///

狩人「…………」

狩人(……着替えたかったのは分かるけど)

狩人(この前並に気合の入った格好だな……)

狩人「……何か、気を使わせたみたいだな」

少女「う、ううん、そんな事ないよ!?」///

少女「そ、そういう気分ってだけだからっ」/// 

572 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:52:29 ID:Y9Zogchs

狩人「えと……入っていいか?」

少女「!」

少女「あ、う、うん。 どうぞ、入って」

狩人「お邪魔します」

     パタン

―――――――――――

少女「…………」///

狩人「…………」

少女「……え、えと……お茶でも出すね」///

狩人「あ、いや……そんなに気を使わないでくれ」

狩人「これから話す事は、そんなにいい話じゃないし……」 

573 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:53:06 ID:Y9Zogchs

少女「……え?」

狩人「…………」

狩人「……実はな、少女」

少女「う、うん」///

狩人「俺……前からずっと言わなきゃ、って思ってた事がある」

少女「そ、そう……」///

狩人「出だしで躓(つまず)いて、集会所に出入りしにくくなったから」

狩人「必要ない様に感じていたけど……」

狩人「今日みたいな事が起きて、やっぱり言わないといけないって痛感した」

少女(……ん?)

狩人「今まで黙っていてごめん、少女」

狩人「実は……俺……」

少女「…………」 

574 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/07(日) 12:54:06 ID:Y9Zogchs









狩人「字が……読めないんだ」











579 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:22:26 ID:pS/m6xf6

少女「…………」

少女「……え?」

少女「字が……読めない?」

狩人「……ああ」

少女「……ちょっと待って」

少女「そんな訳ないでしょう?」

少女「だったらハンター試験はどうなるの?」

少女「筆記試験もあったじゃない」

狩人「あれは答えが選択式の試験だし……」

狩人「他のハンター受験者の話を聞いて一番右を選んで書いておけば」

狩人「とりあえず合格点には届くって知ってたから」

少女「……名前はどうしたの?」

狩人「孤児院に居た時、それだけは教えてもらって書ける様になったんだ」 

580 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:23:09 ID:pS/m6xf6

少女「…………」

少女「……そうだったの」


少女(そうだ……狩人は……)

少女(孤児院出身者だった)

少女(一応学校はあるけど……辺境、それも特に猟区に近い村なんかは)

少女(そういった施設が無い事が多いって聞く)

少女(さらに国や地域で修学制度も違うし、彼のようなハンターが居てもおかしくない)

少女(…………)

少女(これは……ハンターの需要と供給のバランスで)

少女(ある程度、黙認されている事なのかも知れない)

少女(私だって……ハンター試験の問題をお金で解決した)

少女(…………) 

581 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:24:06 ID:pS/m6xf6

狩人「…………」

狩人「この前の……G級ティガ襲来で」

狩人「少女にメモを渡された時、焦ったよ」

少女「!」

狩人「ティガがどんなものか、だいたい知っているって程度だったし」

狩人「とにかく、あの時はティガというモンスターに対して備えるって事しか」

狩人「俺には出来なかった」

少女「…………」

少女「……結果的には、それで助かった側面もあるわね」

少女「私のメモ、持っていけたら罠を……としか書いてなかった」 

582 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:25:13 ID:pS/m6xf6

狩人「そうだったのか」

狩人「ロートルさんの言う通り、本当にツイてたんだな……俺たち」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「……あ」

狩人「ん?」

少女(字が読めない……という事は)

少女(調合書も読めない、という事)

少女「……まさか」

少女「狩人、もしかして今まで……」

少女「秘薬とか強走薬とか……飲んでない……の?」 

583 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:26:37 ID:pS/m6xf6

狩人「……それがどういう飲み物なのかも知らないよ」

少女「」

狩人「…………」

少女「…………」

少女「……狩人がどうしてよく3乙するのか」

少女「今、やっと分かったわ」

狩人「…………」

少女「クエの受注はどうしてたの?」

狩人「受注書類には場所と仕事内容(狩猟や捕獲が色分けされている)」

狩人「それに討伐モンスターの絵が書いてある。 あれで判別していたんだ」

狩人「それに受付嬢さんに『ガノトトスのクエある?』とか聞けば出してくれるし」

少女「……なるほど。 確かにあったわね」

少女(やっぱりギルドは……ある程度の黙認をしているんだわ) 

584 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:27:20 ID:pS/m6xf6

少女「……ともかく」

少女「読み書きができないっていうのは結構な問題ね」

狩人「…………」

少女「事情はわかった」

少女「狩人、早めに打ち明けてくれてよかったわ」

狩人「……え?」

狩人「怒らないのか?」

少女「どうして私が怒らないといけないのよ?」

狩人「いろいろ迷惑かけたし……」

少女「…………」

少女「……そうね」

少女「でも、気に病む必要はないと思う」 

585 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:28:26 ID:pS/m6xf6

狩人「……そうか?」

少女「ギリギリだったけど、まだ取り返しがつく段階だし」

少女「反省が出来るのなら、これから何とかすればいいのよ」

狩人「少女……」

少女「でも」

少女「これは……そうねぇ」

少女「女さんに相談してみるべきだと思う」

狩人「女に?」

少女「狩人、確か……数字は分かってたわよね?」

狩人「ああ、足し算と引き算はできるし、数字や単位はある程度分かる」

狩人「孤児院で数字がわからないと、大変だからな」

少女「何が大変なの?」 

586 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:29:21 ID:pS/m6xf6

狩人「主に買い物で必要だった」

狩人「買い出しで金額とか間違えたら、ものすごく怒られたし……」

少女(子供を働かせる孤児院だったのかしら……)

少女「……なるほど」

少女「となると……」

少女「やっぱり彼女にお願いするのが一番だと思う」

少女「読み書きはすぐに出来るものじゃないし、私はハンターとしての仕事もある」

少女「その点、女さんなら仕入れはあるけど割と村に居るし」

少女「識字に関する資料を集められる情報も持っていると思うわ」

狩人「……よくわからないけど」

狩人「女が適任、って言いたいんだな?」

少女「ええ」 

587 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:30:38 ID:pS/m6xf6

少女「もちろん私も手伝うわ」

少女「でも、しばらく狩人は、狩りを休む必要があると思う」

狩人「……そっか」

狩人「せっかくランク上がったばかりなのにな」

少女「毎日休む必要はないわよ」

少女「例えば3日勉強して1日狩りをして1日休む」

少女「こんな風にすればいいのよ」

狩人「なるほど。 少女は頭がいいな」

少女「この程度……ううん、とにかく今はG級ティガの報酬で余裕もあるし」

少女「いい機会だと思ってやればいいと思う」

狩人「そう……か。 そうだな」

狩人「じゃ、明日さっそく女に相談してみるよ」 

588 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:31:33 ID:pS/m6xf6

少女「うん、それがいいと思うわ」

狩人「ありがとう、少女」

狩人「俺、少女に打ち明けて良かった」

少女「ふふ、どういたしまして」

狩人「それじゃ、帰るよ」

少女「ええ、またね、狩人」

     パタン…

少女「…………」

少女「……字が読めない、か」 

589 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:32:16 ID:pS/m6xf6

少女(…………)

少女(でもそれは、多少時間がかかっても何とかできる事柄)

少女(だけど……秘薬もなしで今まで戦ってこれたなんて)

少女(とてつもない身体能力……)

少女(…………)

少女(……いくら努力したって、私は絶対に得る事ができない才能だわ)

少女(…………)

少女(羨ましい……) 

590 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:33:23 ID:pS/m6xf6


―――――――――――


翌日の朝

ストア裏 女の家


女「」

女「字が読めない!?」

狩人「ええ……」

女「あきれた……でも結構難しい言葉を知ってるのに」

女「!」

女「ちょっと待って……字が読めないって事は」

女「秘薬とか鬼人薬とか作れないだろうから、飲んだ事が無いって事!?」 

591 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:34:34 ID:pS/m6xf6

狩人「そうです」

女「」

狩人「少女にも同じように驚かれた」

女「……狩人がよく3乙する理由が分かった」

狩人「それも少女に言われたよ」

女「…………」

女「あんたって……ううん、何でもない」

狩人「?」

女(秘薬なしで、今まで3乙しながらも狩りを続けてこれたって事は)

女(もしかしたら狩人は……とんでもない才能を持っているのかも……)

女「とにかく、要件はわかったわ」

女「私もお店があるから毎日は無理だけど……協力するわ」 

592 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:35:13 ID:pS/m6xf6

狩人「ありがとう、女」

女「となると……教材がいるわね」

女「まあ、何とかなるか」

女「とりあえず今夜、狩人の家に行くわ」

狩人「ああ、分かった」

狩人「しばらくは雪山での採取クエをやる事にする」

女「そうね。 それがいいと思う」

女「それじゃ、今夜」

狩人「ああ」

女「…………」

女(……う~ん) 

593 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:36:13 ID:pS/m6xf6


―――――――――――


その日の夜

狩人の家


女「とりあえず目標を決めてかかるわ」

狩人「目標?」

女「そう、目標!」

狩人「具体的には?」

女「まずはこの本を読める様になろう」つ(絵本)

狩人「わかった」

狩人「……けど、なんか子供っぽい表紙の本だな」

女「でも、読めないんでしょ?」

狩人「……はい」 

594 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:37:38 ID:pS/m6xf6

女「それじゃ最初に基本的な事から始めないとね」

女「読み書きって、文字通り『読んで』『書かない』と覚えられないのよ」

狩人「はい」

女「そこでまずは……『こんにちは』とか『さようなら』とか」

女「そういうのを何度も書いて覚えてね」

狩人「何度も、か……」

女「うんうん、気が滅入るよね」

女「でも私たちは、そういう教育を受けて、字が読めるし書ける様になったのよ」

狩人「教育……」

女「そうよ」

女「さ、英雄への道も一歩から」

女「書いて書いて、書きまくって覚えるの!」

狩人「は~い……」 ←若干涙目 

595 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:38:41 ID:pS/m6xf6



     こうして、文字を読める様になる勉強が始まった。

     お手本を見て、お盆位の大きさの黒板に

     チョークで繰り返し、繰り返し

     『こんにちは』を書いていった……



     正直面倒くさいことこの上ないが

     文字が読めれば、最初のホットドリンクだって

     どういう効果なのかラベルを読んで理解できたんだ。





596 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:39:38 ID:pS/m6xf6







     そう思いつつも……

     やっぱり面倒くさかった。 ううっ……









597 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:40:25 ID:pS/m6xf6


―――――――――――


数日後の午前中

砂漠村 集会所


ベテラン「よお、お二人さん」

ソロ「…………」

ロートル「……またあんたか」

ベテラン「まあまあ。 そう言わずに俺も参加させてくれ」

ベテラン「ドスゲネポス狩りに」

ロートル「…………」

ロートル「わかった」

ソロ「……おい、ロートル」

ロートル「いいんだ、ソロ」

ベテラン「へへっ、ありがとうよ」 

598 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:40:59 ID:pS/m6xf6

ソロ(……本当にいいのか、ロートル)

ロートル(どこまで気がついているのか知らんが)

ロートル(装備は俺たちの属性をしっかりと真似してきている)

ロートル(HRも6だ)

ロートル(足でまといにはならんだろう)

ソロ(…………)

ロートル(それにここで断ったら返って怪しまれる)

ロートル(一度つき合わせて、ドスゲネポス狙いだと思わせておけばいい)

ソロ(…………) 

599 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:41:54 ID:pS/m6xf6

ロートル(古龍が出たら出たで構わないだろう)

ロートル(運がよければ、みんな揃ってG級になれる)

ロートル(古龍殺し(エルダーキラー)は、人手があればありがたいからな)

ソロ(…………)

ソロ(背に腹は代えられない、か……)

ソロ(分かった、ロートル)

ロートル(よし)


ロートル「よろしくな、ベテラン」

ソロ「よろしく」

ベテラン「ああ、よろしく!」 

600 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:42:29 ID:pS/m6xf6

※注 それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣(ギルドナイトセーバー)
防具:レウスS装備一式


ソロ(HR 6)

武器:大剣(蒼刃剣ガノトトス)
防具:レイアS装備一式


ベテラン(HR 6)

武器:ランス(アクアンスピア)
防具:クック(亜種)U装備一式 

601 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:43:21 ID:pS/m6xf6


―――――――――――


砂漠のとあるエリア


     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……まあ信用されてないのは分かるが」

ベテラン「もう少し口数があってもいいんじゃないのか?」

ロートル「……そんなんじゃない」

ロートル「ソロ……気づいているか?」

ソロ「ああ。 様子がいつもと違うな」

ベテラン「様子?」 

602 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:44:23 ID:pS/m6xf6

ロートル「いつもならゲネポスの群れがここに居るんだが……」

ロートル「見当たらないな」

ベテラン「へえ?」

ベテラン「だが、ツガイだったら群れのない時もあるぜ?」

ソロ「……確かにな」

ベテラン「ここんとこ、おたくらがドスゲネポス狩りまくったせいで」

ベテラン「単純に居なくなったんじゃねーの?」

ロートル「かもしれん」

ベテラン「へっ……」

ベテラン「にしちゃあ……嬉しそうだな、あんたら」

ベテラン「いよいよお目当てのモンスターが……ってとこか」 

603 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:45:06 ID:pS/m6xf6

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「……そろそろ何を相手にするのか」

ベテラン「教えてくれないか?」

ロートル「見ればわかるさ」

ロートル「嫌でもな」

ベテラン「ふん……」

ベテラン(どうやら、ただならぬ相手みたいだな)

ベテラン(火炎耐性の防具に水属性の武器……)

ベテラン(普通ならグラビモス、ってところだが)

ベテラン(砂漠にグラビモスが出たなんて聞いたこともねぇ)

ベテラン(いったい何を狙ってんだ……?) 

604 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:45:54 ID:pS/m6xf6



     ゴガアアアアアアア……



ロートル「!」

ソロ「!」

ベテラン「……!?」

ロートル(ついに……)

ロートル(ついに来たか!)

ロートル「クーラードリンクを飲み直せ!」

ロートル「ベテラン、これから長丁場になる。 覚悟しておけ」

ベテラン「あ、ああ……」 

605 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:47:24 ID:pS/m6xf6

ベテラン(何だ……? 今の鳴き声)

ベテラン(正直、聞いた事もない鳴き声だったぞ)

ベテラン(…………)

ベテラン(火炎耐性……水属性の武器……)

ベテラン(知らない鳴き声……)

ベテラン(そして……こいつらの秘密めいた行動……)

ベテラン(…………)

ベテラン(っ!!)

ベテラン「ま……まさか!?」

ロートル「気がついたか? ベテラン」

ベテラン「……正気か、お前ら。 俺がいなかったら二人で……」

ベテラン「いやそれよりも、どうやって古龍の情報を……」

ロートル「そんな話は、終わってからいくらでも話してやるさ」 クスッ 

606 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:48:22 ID:pS/m6xf6



     鳴き声の主は

     この目の前の砂丘を越えれば見えるだろう。



     G級ティガをも圧倒する古龍……

     それを上位装備で倒そうというのだから、並大抵の実力では

     敵う事なく終わることも珍しくない。



     だが――

     それでも、自身がG級ハンターになる為にはやるしかないのだ。

     衰えが見え始めた自分が手に出来るチャンスは……もう少ないのだから。





607 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:49:13 ID:pS/m6xf6



     これで死んだら

     狩人や少女はどう思うだろうか……

     先輩らしい事を多少した程度だし

     それほど悲しみはしないだろうな。



     そんな事を少し考え、ロートルは迷いを払うかの様に首を振る。

     そして、おもむろに背中に携えた愛用の双剣を引き抜き、構えると

     気合と抑揚を込めて、口を開く。





608 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/13(土) 10:50:48 ID:pS/m6xf6









ロートル「さあ、狩りの時間だ!!」













622 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:02:19 ID:/QOfnGOA


―――――――――――


狩人の家


狩人「こうして おひめさまは」

狩人「わるいりゅうを たおして かえってきた はんたーと」

狩人「すえながく く……ろ? くろしまし……」

女「く『ら』しました」

狩人「……くらしましたとさ」

狩人「めでたし めでたし」

狩人「ふう……」 

623 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:03:17 ID:/QOfnGOA

女「うん。 こんなに短い間に随分読めるようになったわね?」

狩人「ははは……」

狩人「いや、字って分かる様になったら結構おもしろくてさ」

狩人「今まで単なる……うーんと……記号?みたいに思ってたモノが」

狩人「ああ、そういう意味か、って分かって……何て言うか」

狩人「そう! 世界が違って見える感じなんだ」

女「ふふ、そっか」

狩人「…………」

女「狩人?」

狩人「ん? あ、いや。 ちょっと気になった事があって」

女「何が気になったの?」 

624 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:04:08 ID:/QOfnGOA

狩人「この絵本ではさ」

狩人「主人公のハンターは、一人で討伐に行ってるけど……」

狩人「俺たち現実のハンターだって最大4人までしか参加できない」

狩人「もっと大勢でやれば、楽にモンスターを狩れるのにな……と思って」

女「ああ、そういう事」

狩人「何か知ってるのか?」

女「少しヤな話もあるんだけど……表向きはね」

女「救助するネコタクアイルーの確保が厳しいってのがあるわ」

女「例えばハンターひとりにだいたい3~4人のアイルーが付くけど」

女「10人のハンターでそれをやると、凄い人数のアイルーが必要になる」

狩人「ハンターひとりひとりに付けていたのか……」

狩人「あれって一つのクエに3~4人だと思ってた」 

625 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:04:53 ID:/QOfnGOA

女「最初はそうだったのかもね」 クスッ

女「でもそれだとハンターが複数で一人が乙した場合」

女「残されたハンターの安全が確保しにくくなるわ」

狩人「なるほど……確かに」

女「もう一つは同士打ちを防ぐ、という目的があるわ」

女「ラオシャンロンみたいな巨大モンスターならともかく」

女「ドスギアノス程度で10人一斉に斬りかかったらどうなると思う?」

狩人「うわぁ……想像したくない」

女「ふふ、そうよね」

女「とまあ、ここまでが表向きの理由」

狩人「裏の理由があるのか」 

626 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:05:42 ID:/QOfnGOA

女「もちろん」

女「ある意味、至極真っ当で、情けない理由……」

狩人「?」

女「分配される報酬が少なくなるからよ」

狩人「……あ~」

狩人「でも、一番納得もできる理由だなぁ……」

女「ホントね」 クスッ…

狩人「それじゃ、話を戻すけど」

狩人「次はどうしたらいい?」

女「そうねぇ……基本的には同じなんだけど」

女「絵本をこれだけ読めるのなら、もう少し難しいの行ってもいいかもしれないわね」

狩人「調合書とかは まだ無理か?」

女「う~ん……じゃあ一度、1ページだけ試してみましょうか?」

狩人「調合書、持ってくるよ」 

627 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:06:44 ID:/QOfnGOA

女「そういえば、狩人は回復薬を調合できたっけ」

女「どうやって覚えたの?」

狩人「ハンター講義の時、これだけは最低限覚えておけって」

狩人「目の前で実演してくれたから覚えたんだ」

女「なるほど」

女(……見たり聞いたりした事なら出来るんだ)

女(それにしても今まで回復薬のみで戦って来たなんて)

女(よく生き残れたものね……)

女「それじゃ1ページだけ、読めないところや単語を指差してくれる?」

女「私が読むから」

狩人「ああ、頼むよ」 

628 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:07:26 ID:/QOfnGOA


―――――――――――


女「……って読むのよ」

狩人「ふむふむ……」

女「意味は分かる?」

狩人「ああ、大丈夫だ」

女「うんうん」

女「狩人って、頭良いね」

狩人「え? そ、そうかな……」

女「今までは知らなかったってだけだから」 クスッ

女「物覚えは早いし、言葉の意味はしっかり把握してる」

女「頭良い証拠よ」

狩人「ははは……何か照れるな」/// 

629 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:08:01 ID:/QOfnGOA

女「じゃあ、今日はここまでにしとくね」

女「私、これから仕入れに行かないといけないから2~3日はお休みよ」

狩人「そうか……いつも悪いな」

狩人「そうだ、昼飯くらいは奢らせてくれ」

女「んーそうね。 ご馳走になろうかな♪」

狩人「よし。 おーい、板前アイルー」

女「あら? キッチンアイルー雇ったんだ? いつの間に?」

狩人「うん。 ついこの前」

     タッ タッ タッ

板前アイルー「あいよー! 旦那、お呼びかニャ?」

狩人「昼飯、俺と女の分、作ってくれないか?」

狩人「おっと……くれぐれも冒険はするなよ?」 

630 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:08:44 ID:/QOfnGOA

板前アイルー「ニャハハ……旦那、わかってるニャ!」

板前アイルー「メニューは何にするニャ?」

狩人「俺は肉料理」

狩人「女は何がいい?」

女「うーん……そうねぇ」

女「焼き魚定食……みたいなのできる?」

板前アイルー「お任せあれニャ!」

狩人「じゃ、これ材料費……100z(ゼニー)くらいで足りるか?」

板前アイルー「お釣りがくるニャ!」

板前アイルー「んじゃ、少々お待ちくださいニャ!」

     タッ タッ タッ

女「……ちょっと元気すぎるアイルーね」 

631 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:09:16 ID:/QOfnGOA

狩人「ははは……まあな」

狩人「でも仕事はきっちりしてくれるし、本当に助かってる」

狩人「一度雇うと、手放せなくなるかも」

女「あーそれ。 ハンターの人からよく聞くわ」

女「給金が高いから一般の人は縁遠いんだけどね」

狩人「毎月1000z(ゼニー)もいるからな……」

女「わっ! そんなにするんだ」

女「私の月給の6分の1くらいだよ、それ」 

632 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:09:59 ID:/QOfnGOA

狩人「へえ……女って結構いい稼ぎなんだな」

女「えー? そうでもないと思うけど?」

女「部屋の借り賃とか、その他もろもろ引くと、手元に残るのはほんの僅か……しくしく」

狩人「俺がハンターやり始めた頃は、間違いなくそれより低かったよ」

狩人「部屋代は要らないから助かってたけど……」

狩人「そうじゃなかったら、とっくにこの村を追い出されてると思う」

女「3乙ばっかりしてたもんね」 クスッ

狩人「……ヤなこと思い出さないでくれ」 ハア…

     アハハ… 

633 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:15:36 ID:/QOfnGOA


―――――――――――


砂漠のとあるエリア


ロートル「うおおおおおおおおっ!!」


     ズバッズバッズバッ!


ロートル「ソロ!」

ソロ「おうさ!」


     ブウンッ!  ドガァッ!!

     ギュアアアア……


ベテラン「ヒュー! やるねぇ……」 

634 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:16:32 ID:/QOfnGOA

ベテラン(さすがにテオ・テスカトルを見た時は、腰が抜けそうになったが)

ベテラン(あの二人の動き……おそらく何回かやり合った事があるみたいだな)

ベテラン(初見なら しばらく見とけと言われて、ここから観戦させてもらっているが)

ベテラン(前足の攻撃範囲は広いみたいだし、大きな隙は火を吹いた時くらいか)

ベテラン(それにしてもあの二人、それ以外の少ない隙を突いて……いや)

ベテラン(ロートルが主に隙を作り出して、ソロが強力な一撃を与えている)

ベテラン(……見事な連携だ)

ベテラン(…………)

ベテラン(だが……)


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ベテラン(怒ったみたいだな。 問題はここからだ) 

635 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:17:27 ID:/QOfnGOA



     ズガッ! ドガッ!



ソロ「ぐっ……!」(防御姿勢) ビリビリビリッ…!

ソロ(ただの前足攻撃なのに、何度受け止めてもキツいなッ……!)

ソロ「ロートル!」

ロートル「おおっ!」


     ズバッズバッズバッ!


ベテラン(うへぇ……今度は役割を変えたのか?)

ベテラン(双剣の乱舞技はスイッチが入っちまったら、止められねぇってのに……) 

636 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:18:12 ID:/QOfnGOA


     ギュアアアア……


ベテラン(!!)

ベテラン(いいタイミングで怯んだな……運のいいことで)


     ブワワワ…… チリチリチリッ


ベテラン(!? なんだあれ? 何か粉みたいなを撒き散らしている……?)

ソロ「赤! 近距離!」

ロートル「おうっ!」 回避!


     ガチンッ!  ボボボボボボボンッ!!


ベテラン「」

ベテラン「んなっ!? 爆発した!?」 

637 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:19:22 ID:/QOfnGOA

ロートル「はあっはあっはあっ……」

ソロ「ふー……ふー……ふー……」


     グルルル……


ベテラン(こいつはおったまげたぜ……どういう理屈で爆発したのか分からねーが)

ベテラン(粉振りまいたと思ったら爆発した。 知っていないと確実にやられていたな)

ベテラン(しかも近距離って言っていた。 という事は……遠距離もあるって事か?)


ロートル「はあああああああっ!」


     ズバッズバッズバッ!


ロートル(くっ……切れ味が!)

ロートル(もうこんなに刃こぼれしているのか……!) 

638 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:20:12 ID:/QOfnGOA

ロートル「ソロ! 時間だ!」

ソロ「! 分かった!」

ベテラン(時間?)

ソロ「…………」つ(閃光玉)


     ブンッ…   カッ!!

     ギュアアアア……


ロートル「よし! 一度下がるぞ!」

ソロ「ベテラン! そこの洞窟へ入れ!」

ベテラン「ああ、分かったぜ!」 

639 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:21:21 ID:/QOfnGOA


―――――――――――


砂漠の洞窟


ロートル「はあっはあっ……ふー……」

ソロ「ふう……」

ベテラン「…………」

ベテラン「それにしても見事なもんだな、お二人さん」

ベテラン「聞くまでもないが、テオとやり合った事があるのか?」

ロートル「……ああ。 5年くらい前にな」つ(砥石)

ソロ「…………」つ(砥石)

     シャッ… シャッ…(砥石使用中)

ベテラン「5年も前かよ……」 

640 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:22:35 ID:/QOfnGOA

ベテラン「にしちゃ、かなり息の合った連携だ」

ベテラン「まるで毎日テオ相手に練習していたかの様だったぞ」

ロートル「……悔しい思いをしたからな」

ロートル「俺もソロも……」

ソロ「…………」

ベテラン「……まあ、その辺りは聞かないでおいておく」

ロートル「どうだ、ベテラン」

ロートル「やれそうか?」

ベテラン「へっ……正直、最初はブルっちまったが」

ベテラン「今はやる気満々だぜ」

ロートル「そうか」 

641 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:23:56 ID:/QOfnGOA

ベテラン「おっと、再戦の前に一つ聞いておきたい事がある」

ロートル「なんだ?」

ベテラン「お言葉に甘えて、テオの攻撃方法をじっくり見させてもらったが」

ベテラン「あの爆発。 あれはどういう理屈なんだ?」

ベテラン「いや、それはどうでもいいな……」

ベテラン「近距離とか言っていたが、見分け方を教えてくれ」

ロートル「ほう。 よく見ているな」

ロートル「俺も理屈は知らん。 が、赤い粉だと奴の近距離で爆発して」

ロートル「黄色い粉だと遠距離で爆発するんだ」

ベテラン「なるほど……赤で近距離、黄色で遠距離ね」

ベテラン「覚えたぜ」 

642 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:24:29 ID:/QOfnGOA

ベテラン「んじゃ、行きますか」

ベテラン「俺は二人の邪魔にならないよう、援護に徹するぜ」

ベテラン「もちろんヤバそうなら間に割って入る」

ベテラン「それでいいか?」

ロートル「ああ。 それでいい」

ソロ「…………」

ベテラン「ソロのあんちゃんもそれでいいかい?」

ソロ「……ああ」

ベテラン「へへっ……ま、信用できねーのは分かるが」

ベテラン「もうちょっと愛想よくできないのかねぇ」

ソロ「……この顔は生まれつきなんでな」

ソロ「無駄口はそのくらいでいいだろう」

ソロ「行くぞ」 

643 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:25:25 ID:/QOfnGOA



     古龍テオ・テスカトル

     外見は赤い表皮に覆われ、龍の羽こそあるが

     肉食獣に近い見た目で鳴き声もそれに準じている。



     大きな特徴として、その頭に冠の様な角があり

     また、近づくだけで衣服に火が付く様な高温の体温であるため

     別名『炎王龍』との異名を取る。



     性格は凶暴で縄張り意識が強く

     火山や砂漠など、暑い地域に生息している。





644 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:26:54 ID:/QOfnGOA



     もちろん下位ハンターが手を出していい相手ではない。

     上位でもトップクラスの実力者や

     G級ハンターでないと、生き残る事すら難しい相手なのである。



     もし、テオ・テスカトルを見かけた時

     その実力に達していないと思うのなら

     自分の存在を気づかれる前に逃げる事をお勧めする。

     それは恥ではない。

     テオに限らず古龍相手ならば、生存をかけた逃走であるのだから。





645 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:27:31 ID:/QOfnGOA

ロートル「はあっ!」

     ズバッズバッズバッ!!

ロートル(……そろそろか?)


     ゴアアアアアアアッ!!


ロートル「……やっぱり鳴いてきたか」

ロートル「はあっ!」

ベテラン「どぉうりゃあああああっ!!」つ(ランス)

     ザクッ! ザクッ! ザクッ!

ベテラン「よっと」(防御姿勢)

     ドゴォッ!!

ベテラン「ぐっ……くっ!!」 ビリビリビリビリッ! 

646 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:28:39 ID:/QOfnGOA

ベテラン(ただの前足攻撃なのに、なんてクソ重い一撃だ……!)

ベテラン(まともに食らったら、ヤバイなんてもんじゃねぇぜ!)


ソロ「はあああああああああっ!!」(タメ3)


     ドガァッ!!

     ギュアアアアアアッ……


ロートル「! すっ転んだ!」

ロートル「叩き込め!」

ベテラン「言われなくてもぉぉっ!」(突進)

ソロ「おおおおっ……!」(タメ3)

     ドガガガガガガガッ!! 

647 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:29:23 ID:/QOfnGOA


―――――――――――







     数時間後











648 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:30:48 ID:/QOfnGOA

砂漠の洞窟


ロートル「はあっはあっはあっ……!」

ソロ「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

ベテラン「はあっはあっはあっ……くそっ」

ベテラン「どんだけ……はあっはあっ……タフなんだよ……ひー、ひー……」

ロートル「くっ……覚悟は……していたが……はあっはあっ……」つ(砥石)

ソロ「ぜぇ……ぜぇ……」

ソロ「ちょっと……言っておきたいんだが……ぜぇ」つ(砥石)

ベテラン「なんだ……? 足を引きずっているの……はあっはあっ……」

ベテラン「見かけたとかか……?」つ(砥石)

     シャッ… シャッ…(砥石使用中)

ソロ「生命の粉塵(同じエリアの味方ダメージを回復するアイテム)の残りが後ひとつだけだ……」

ベテラン「ちっ……悪い知らせかよ……」 

649 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:31:54 ID:/QOfnGOA

ベテラン「俺はあと……二つだな」

ロートル「俺は使い切った……それと、もっと悪い知らせがある」

ベテラン「聞きたくねーなぁ……」

ソロ「……何だ?」

ロートル「グレートはおろか、強走薬も使い切ってしまった」

ベテラン「……くそっ」

ロートル「…………」

ロートル「これからは作戦を変えるぞ」

ベテラン「どうすんだ?」

ロートル「シンプルに自分の事は、自分で何とかする」

ソロ「……仕方ないな」 


651 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:32:47 ID:/QOfnGOA

ロートル「幸い、ここまで俺たちは1乙もしていない」

ロートル「奇跡はきっと起こせるさ」

ベテラン「……へっ」

ベテラン「そういうの、嫌いじゃねーぜ」 ニヤッ

ロートル「ただし、大きなダメージを負ったら、この洞窟に逃げ込んで回復するんだ」

ロートル「もう閃光玉も効果が薄くなっている」

ロートル「各自の判断で撤退して体制を整えるんだ」

ソロ「……そうだな」

ソロ「それしかないだろう」

ベテラン「ああ、俺もそれでいいと思う」

ロートル「よし」

ロートル「……行くぞ!」 

652 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:33:50 ID:/QOfnGOA


―――――――――――


夕方

砂漠のとあるエリア


ロートル「でやああっ!!」


     ズバッ! ズバッ!


ベテラン「このっこのっ!!」

ベテラン「いい加減、くたばりやがれ!!」


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ソロ「ぐっ……しまった!」 

653 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:34:47 ID:/QOfnGOA


     ドゴオッ!!(突進攻撃)


ソロ「ぐあああああああああっ!!」

ロートル「ソロッ!」

ロートル「くそおおおおおおおおっ!!」


     ズバッズバッズバッ!!


ベテラン「! やけになるな! その間合いで乱舞技は……!」


     ズガァッ!!


ロートル「ぐぎゃああああっ!!」

ベテラン「言わんこっちゃねぇ!!」 

654 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:35:51 ID:/QOfnGOA

ベテラン「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」つ(ランス)


      ドドドドドドドドドドドドッ!(突進攻撃)

      ズガガガガガッ!!


ベテラン「今のうちだ! 下がれ!」

ロートル「……すまんっ」


     ギュアアアアアッ!!

     ドガァッ!! ゴギャッ!!


ベテラン「ぐっ……くっ……!!」(防御姿勢)

ベテラン(くそったれっ……!) 

655 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:37:32 ID:/QOfnGOA

砂漠の洞窟


ロートル「はあっ……はあっ……」

ソロ「ぜえっぜえっぜえっ……」

ロートル「ソロ……大丈夫か……?」

ソロ「……心じゃ……ぜえっ……やる気は、あるんだがな……」

ソロ「くそっ……もう回復薬すら使い切ってしまった……」

ロートル「……そうか。 あとは任せて休んでおけ」

ロートル「俺とベテランで何とかする……はあっはあっ……グビッ」つ(回復薬)

ソロ「……お前も……それ最後じゃないのか……?」

ロートル「……実を言うと……クーラードリンクも使い切っている」

ソロ「はっ……それは一大事だな……」

ロートル「なに……なんて事ないさ……ふふ」

ソロ「ふふふ……」 

656 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:38:32 ID:/QOfnGOA

ベテラン「うおおおおおおおおおおっ!?」


     ガチンッ! ボボボボボボボボンッ!!


ベテラン「ひー! あ、あぶねえ!」


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ベテラン「くっそお……! 怒りすぎだろーが!!」

ベテラン「このおっ!!」


     ザクッ! ザクッ! ザクッ!




657 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:39:18 ID:/QOfnGOA


     ギュアアアアアッ!!

     ドガァッ!! ゴギャッ!!


ベテラン「ひえええええっ!!」 バックステップ回避!

ベテラン「はっ!? し、しまった! 壁際に追い詰められ……」


     グワアッ!!


ベテラン「わわっ!? ちょ、タンマ!!」


     ズバッ!!

     ギュアアアアア……


ベテラン「…………」

ベテラン「……へ? 生きてる?」 

658 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:40:39 ID:/QOfnGOA

ロートル「大丈夫か!?」

ベテラン「ロートル!」

ベテラン「すまねぇ……助かったぜ」

ロートル「いい。 これで貸し借りなしだ」

ベテラン「ああ、そうだな!」

ベテラン「うおおおおおおおおおおっ!!」つ(ランス)

ロートル「でやあああああああああっ!!」


     ドガガガガガガガガッ!!

     ギュアアアアアッ……


ベテラン「はあっ……はあっ……」

ロートル「はあっ……はあっ……」 

659 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:41:56 ID:/QOfnGOA


     ズルルッ… ズルルッ…


ベテラン「!」

ロートル「!」

ベテラン「あの野郎、足を引きずってやがるぜ!」

ロートル「ああ! もう一息だ!」

ロートル「もう一息で……」


     バサッ…


ベテラン「あ……」

ロートル「な……!?」 

660 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:42:55 ID:/QOfnGOA


     バサッ バサッ バサッ…


ベテラン「…………」

ロートル「…………」

ベテラン「あの高さ……」

ベテラン「……エリチェン……じゃねーな」

ロートル「…………」

ロートル「……そ……だ」

ロートル「……うそだ……うそだ……」



ロートル「うそだあああああああああああああああっ!!」



ベテラン「…………」 

661 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:43:40 ID:/QOfnGOA



     砂漠の地平線に夕日が沈んでゆく。

     そして砂の大地に、あらん限りの絶叫が響いた。



     傷つき、足を引きずりだした古龍テオ・テスカトルは

     その翼をはためかせ、沈みゆく太陽に向かって羽ばたいていく。



     ……それはまるで





662 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/20(土) 07:44:42 ID:/QOfnGOA








     ロートルを、ハンター達を

     あざ笑うかの様だった……











671 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:11:44 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――








     半月後












672 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:12:32 ID:HE6GVzOQ

午前中

狩人の家


狩人「……っと」

狩人「これが秘薬か」

少女「うん。 そう」

狩人「回復薬にもグレートとかあるし……」

狩人「調合って奥が深いな」

少女「奥が深いとは思わないけど……」

少女「すごいハンターを見た事があるわ」

狩人「すごいハンター?」

少女「すごい、と言うか、器用、と言うか……」 

673 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:13:21 ID:HE6GVzOQ

少女「ババコンガに追いかけられながら調合していたのよ」

狩人「ぶっ!?」

狩人「嘘だろ!?」

少女「エリチェンしてからやればいいのに……と思ったけど」

少女「調合し終わったら、また戦っていたわ」

狩人「……すごいんだか、無駄な才能というか」

狩人「判断が難しいな」

少女「まあ出来るにこした事はないとは思うけど」

少女「調合書開きながらやってるのにも驚いたわ」

狩人「……もうそれ曲芸でお金取れるレベルだな」

少女「それにしても字、大分読める様になったんだね」 

674 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:14:33 ID:HE6GVzOQ

狩人「にひひ、まあな」

狩人「女が辞書っての持ってきてくれて」

狩人「知らない単語が出てきたら、これを調べて読んでるよ」

少女「そこまで出来るようになったんだ……」

少女「狩人って頭いいね」

狩人「女にも言われたけど、そうなのかな?」

少女「だって普通は、子供の頃から何年もかけて覚えていく事なのよ?」

少女「狩人は覚え始めて一ヶ月、経ってないし」

狩人「ふうん……」

狩人「まあ何て言うか、こう……出来なかった事が出来る様になっていってるという」

狩人「実感がすごくあってさ」

狩人「それが楽しいし、世界が違って見える気がするんだよ」

少女「そうなんだ」 

675 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:15:25 ID:HE6GVzOQ

狩人「まあ、まだ調合書1巻目の半分くらいしか読めてないけど」

少女「うふふ」

     トコ トコ トコ…

板前アイルー「旦那、もうそろそろ昼だニャ」

板前アイルー「どうするニャ?」

狩人「もうそんな時間か」

狩人「少女、どうする? 一緒に食うか? もちろん奢るぜ?」

少女「そうね。 じゃ、お願いするわ」

狩人「んじゃ、俺はいつもの肉料理」

狩人「少女は?」

少女「んー。 魚の煮付け……みたいなのできる?」

板前アイルー「できますニャ! まどもわぜる」 

676 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:16:39 ID:HE6GVzOQ

狩人「何だよ、まどもわぜるって……」

板前アイルー「何か、れでーに対しての親愛の言葉って聞いたもんで……」

狩人「相変わらず覚えた事、すぐ使いたがるな……」

狩人「おっと、くれぐれも冒険はするなよ?」

板前アイルー「……ニャハハ、分かってますって旦那!」

狩人(やる気だったな、こいつ……)

狩人「ほい、100z(ゼニー)」

板前アイルー「ガッテン承知だニャ!」

板前アイルー「少々お待ちくださいニャ!」

     タッ タッ タッ

少女「元気なキッチンアイルーね」

狩人「それはいいんだけど、時々俺で新メニューの実験しようとするんだよ……」 

677 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:17:30 ID:HE6GVzOQ

少女「そういえば、いつだったか……」

少女「猫飯でお腹壊したって言ってたっけ」

狩人「黙ってやるな、とは言っておいたんだが」

狩人「この前、調味料間違えたとかって 言い訳してきたし」

狩人「何でこっそりやろうとしたがるのか……」 ハアッ…

少女「解雇すれば?」

狩人「それも考えたんだけど……そこ以外は真面目に完璧なんでな」

狩人「まあ、あいつの個性だと思って、そのままにしてる」

少女「個性……か」

少女「そういう意味じゃ、私のコックアイルーはどれも無難な感じね」

少女「時々、材料を焦がしたりしてダメにしちゃったり」

少女「食器を割ったりしてごめんなさいって言ってくるわ」 

678 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:18:29 ID:HE6GVzOQ

狩人「そうなのか」

狩人「板前アイルーはそういうの無いよ」

少女「ちょっと羨ましいかも」 クスッ

狩人「でも時々雇い主で実験します」

少女「やっぱり羨ましくないわ」

狩人「ははは……」

少女「ふふふっ」

狩人「…………」

狩人「そういやさ」

少女「ん?」

狩人「昨日、集会所に行って少し気になったんだけど」

狩人「なんか、ハンターの数が少ないな?」 

679 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:19:35 ID:HE6GVzOQ

少女「あ、それ私も気になってるのよ」

少女「どういう訳か、上位の……それも」

少女「HR6のハンターばかり、急に姿が見えなくなってるの」

狩人「へぇ……」

狩人「どうしてなのかな?」

少女「さあ……でもHR6のハンターに限って、というのが」

少女「何か関係しているのかもね」

狩人「HR6か……」

狩人「…………」

狩人「ロートルさん達は、どうしてるのかな」

少女「そうね……あれっきり何の連絡もないから」

少女「さっぱり分からないわ」

狩人「…………」 

680 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:20:47 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


砂漠村 集会所


     ワイ ワイ ガヤ ガヤ

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……あれから、あの場所のクエを受注しにくくなったな」

ロートル「……そうだな」

ソロ「……ギルド観測所・所員の報告を聞いてたのが居たんだろう」

ソロ「ネコタクアイルーから、という事もあるかもしれん」 

681 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:21:46 ID:HE6GVzOQ

ロートル「結局……こうなったか」

ベテラン「正式な古龍討伐依頼はG級扱いだし」

ベテラン「俺たち上位ハンターは『偶然遭遇』しないと、ありつけないからな」

ソロ「……古龍は、現れた場所にまた舞い戻ってくる」

ソロ「それは周知の事実……」

ロートル「…………」

ロートル「くそっ……」

ベテラン「…………」

ソロ「…………」 

682 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:22:18 ID:HE6GVzOQ

ロートル(……またか?)

ロートル(また、なのか……?)

ロートル(…………)

ロートル(5年前も……この前の半年間も)

ロートル(最終的には別のハンター達が仕留める結果に……)

ロートル(…………)

ロートル(ここからは、あの場所のクエの奪い合いになる)

ロートル(時間が経てば経つほど、受注が難しくなっていく……)

ロートル(…………)

ロートル(……いや、諦めるな)

ロートル(まだ……チャンスはある)

ロートル(きっと……) 

683 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:23:48 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


さらに数日後の朝

ふもと村 集会所


狩人「…………」

狩人「あ」

狩人「ババコンガの依頼がある」

少女「おはよう、狩人」

狩人「少女。 おはよう」

少女「どうしたの?」

狩人「ああ、ババコンガの依頼があってな」 

684 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:25:00 ID:HE6GVzOQ

少女「ババコンガかぁ……という事は密林ね」

狩人「そう」

狩人「俺たち下位ハンターは、ここでしかババコンガを狩れないからな」

狩人「上位の沼地って猟区が、よく出るんだっけ?」

少女「正解。 でもランクアップ対象モンスターだから」

少女「必ず狩らないといけないし……面倒なモンスターよね」

狩人「ははは……モンスター書物を読んだけど」

狩人「○○○ぶつけてくるんだってな……喰らいたくねぇ」

少女「私は出来れば、もう二度と狩りたくないわ……」

狩人「ははは……」

狩人「それじゃ、ちょっと行ってきていいか?」 

685 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:25:30 ID:HE6GVzOQ

少女「うん。 これを狩猟できたら、狩人も上位ランクアップクエを」

少女「受注できるようになるね」

狩人「そうだな」

少女「帰ってきたら、一緒に上位ランクアップクエに挑戦かも?」

狩人「そうそう上手く行くかな……」

狩人「ドドブランゴだっけ?」

狩人「今、待っている状態なんだよな?」

少女「うん」

少女「ドドブランゴはシーズンがある訳じゃないから」

少女「基本待つ事になるのよねぇ……」

狩人「こっちの都合に合わせて出てくれたらいいのにな」

少女「ふふっ、ホントだね!」

     ハハハ… 

686 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:26:41 ID:HE6GVzOQ

狩人「じゃ、持っていくもの準備し直して行ってくる」

少女「うん」

少女「頑張ってね」

狩人「ああ」

狩人「……それにしても」

狩人「さらにハンターが居なくなってるな……?」

少女「うん……原因は何なのかしら?」

狩人「帰ってくる頃には、分かっているといいんだが」

狩人「ともかく、行ってくるよ」

少女「ええ」 

687 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:27:35 ID:HE6GVzOQ



※狩人の装備


武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式





688 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:29:11 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


密林

BC(ベースキャンプ)


狩人「ふう……やっと着いた」

狩人(いつも思うけど、どうしてここだけこんなに遠いのかなぁ)

狩人(さて、愚痴っててもしょうがない)

狩人(初見な上にまた一人……まあ今回はハンターが少なかったからだけど)

狩人(難易度高くなるのは事実だからな)

狩人(消臭玉に閃光玉と罠……)

狩人(思いつく限りの準備はしてきたつもりだ)

狩人(そして……)

     ゴソゴソ…

狩人「秘薬!」つ(秘薬) 


689 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:30:14 ID:HE6GVzOQ

狩人(飲んだハンターの耐久力を引き上げる効果がある)

狩人(これも最初から知っておけば……)

狩人(って、それは言いっこなしだな)

     ゴクゴク… シュオオオッ!!

狩人「おおっ!?」

狩人「なんか……うまく言えないが」

狩人「ちょっと強くなった気がするな!」

狩人「よし、回復薬グレートに、その予備として調合分も持ってきている」

狩人(……ハチミツなんて使い道を知らなかった時は売っぱらってたからなぁ)

狩人(今からすると、何てもったいない事をしてたのかって思うぜぇ……) トホホ…

狩人(よし、準備万端)

狩人(待ってろよ、ババコンガ!) 

690 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:31:12 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


     フゴッ フゴッ

狩人(居たいた……全身ピンクの体毛の牙獣種)

狩人(普通のコンガと見分ける一番の特徴は、頭にある黄色いトサカみたいな毛)

狩人(まあ大きさで だいたい分かる気もする……)

狩人(いずれにしても、間違いなくコンガの親分格、ババコンガだな)

狩人(…………) ゴソゴソ…

狩人(…………)つ(ペイントボール)

狩人(よっ……と) ブンッ!

     ヒュ―――…… ベチャ!

狩人「……でやあああああっ!!」 

691 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:31:50 ID:HE6GVzOQ


     ドガアッ!!

     アオオオォッ……


狩人「先制攻撃成功!」

狩人「ここで……タメ3!」


     バキッ!


狩人「ぶげっ!?」

狩人(い、意外と素早い!?)

狩人「くっ……」 

692 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:32:38 ID:HE6GVzOQ


     ブロロオオオオオオオオオンッ!!


狩人(怒ったか……まあ当然だな)


     フゴッ! フゴッ! フゴッ!

     ドドドドドドドドドッ!!


狩人「うおっ!」(防御姿勢) ガシッ!

狩人(あの時のティガに比べたら大した事はないけど)

狩人(この突進は要注意だな……)

狩人「おりゃあああっ!!」


     ドガァッ!!




693 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:34:06 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


狩人「…………」

狩人「ふう……」

狩人「とりあえず倒せたけど……」

狩人「臭ぇ……」

狩人「剥ぎ取りもあんまりしたくないなぁ……」

狩人「…………」

狩人「消臭玉使えば、多少はましかな?」

     ザシュ… ベリリ…

狩人「…………」

狩人「……おえっ」 

694 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:35:37 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


数日後の午前中

ふもと村 集会所


狩人「あ~……やっと帰ってきた」

狩人「一応、体も装備も洗ったけど」

狩人「まだ臭う気がするなぁ……」

     ソ、ソンナ! デスガ…

狩人「……ん?」

狩人(ハンターが……ひとりも居ないな?)

狩人(それにあれは、村長さんに女……受付嬢さんと何の話をしているんだろう)

狩人(やけに深刻そうだけど……) 

695 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:36:40 ID:HE6GVzOQ

狩人「あのー……」

女「!」

村長「か、狩人!」

女「良かった……帰って来たんだね!」

狩人「ど、どうかしたんですか?」

狩人「ハンターが一人も居ませんけど……」

女「…………」

女「狩人、最初から話すわね」

狩人「あ、ああ……」

女「まずね……3~4日くらい前に」

女「ドドブランゴが現れたの」

狩人「はい」 

696 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:38:19 ID:HE6GVzOQ

女「それ自体は普通のこと」

女「特に気にするべき事案じゃない……でも」

女「次の日、さらにドドブランゴがもう一頭現れた」

狩人「…………」

女「それだって珍しいけど、まあ無かった事じゃないわ」

女「だけど……」

女「昨日になって、全部で4~5頭ものドドブランゴに増えていたの!」

狩人「!?」

女「こんな事は、さすがに初めてよ……」

女「ブランゴじゃなく、ドドブランゴが群れになって現れるなんて……!」

女「最新のギルド観測所の話だと、今は、もう2~3頭増えているかもしれないって」

狩人「い、一体どうして!?」 

697 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:39:38 ID:HE6GVzOQ

女「…………」

女「狩人、もうそれは問題じゃないわ」

狩人「え……?」

女「今、受付嬢さんから、ギルドからの避難勧告が伝えられたの」

狩人「!?」

女「今朝、参加できるハンター総出で討伐隊が結成され、出発したけど」

女「全部で8人しかいない」

狩人「なっ……!?」

狩人「それで避難って……」

狩人「! そ、そうだ、少女は!?」

女「……もちろん討伐隊に参加してる」

狩人「」 

698 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:40:50 ID:HE6GVzOQ

女「受付嬢さんの話では……」

女「雪山周辺の集落全部に避難勧告が出ているそうよ」

女「理由はわからないけど……」

女「どこの村も強いハンターが遠征しているそうで」

女「こんな状態で、この数のドドブランゴ相手では……難しいと判断したみたい」

狩人「難しいって……!」

狩人「じゃあ討伐に行ったハンターは、どうなるんですか!?」

女「………っ」

村長「狩人……」

村長「どう言い繕っても結果は同じ事だから、私がはっきり言うよ」

狩人「…………」 

699 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:41:53 ID:HE6GVzOQ










村長「ただの……時間稼ぎにしかならない、という事だ……」












700 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:42:48 ID:HE6GVzOQ

狩人「」

狩人「そ……そんな!!」

狩人「じゃ、じゃあ……少女や、他のハンターを」

狩人「見捨てるって言うんですか!?」

女「…………」

村長「…………」

受付嬢「…………」

狩人「……っ!」

     ダッ!!

女「!!」

女「狩人! 待って!!」

     ギュッ!

狩人「止めるな! 女!」 

701 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:43:38 ID:HE6GVzOQ

女「あなた一人が行って、どうにかなるの!?」

狩人「っ!!」

狩人「…………」

女「狩人……落ち着いて聞いて」

女「今、ギルドが総出で近隣の村や街に、この異常事態を知らせに回ってる」

女「だけど、どうやっても上位ハンターがここに来るまで」

女「3日以上はかかってしまうのよ……!」

狩人「…………」

女「私だって……こんなのは嫌よ……!」

女「でも、他にどうすればいいの?」

女「少女ちゃん達が居てくれたからこそ、逃げる時間ができた」

女「今は……早く避難しないと、雪山を降りてきたドドブランゴに対抗する手段が」

女「私たちには全くないのよ!!」 

702 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:44:39 ID:HE6GVzOQ

狩人「……っ」 ギリッ…

狩人「…………」

狩人「……く」

狩人「くっ……そおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

村長「…………」

村長「……皆に知らせてくる」

村長「もう時間が無いからね……」

     スタ スタ スタ…

狩人「ぐっ……くっ……くそっ……くそぉっ……うぐっ……」

女「ごめん……狩人……ごめ、ん……」

女「ごめんなさい……少女ちゃん……ひっく……」 

703 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:45:35 ID:HE6GVzOQ



     ……この世の中は、本当に理不尽だ。

     こういう事態が起きた時

     自然の営みとか、神様って奴の気まぐれとか

     何かしらそう理屈づけて語る奴が多い。

     でも……どんな奴でも必ず最後にこう付け加えるんだ。



     『仕方ない』



     ああ、そうさ。 その通りだ。

     『仕方ない』んだよって……納得するしか無いんだよな。

     弱いから……





704 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:46:26 ID:HE6GVzOQ



     …………



     だけど……俺はハンターだ。

     弱くても……ハンターなんだ。

     モンスターを狩る、ハンターなんだ!



     俺は……俺は……





705 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/21(日) 07:47:13 ID:HE6GVzOQ









     俺は、ハンターだ!






   






716 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:44:04 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「くっ……!」

モブハンター1「くそっ! こっちにも一頭いるぞ!」

ロン毛ハンター「いったい何匹いるんだ!?」


     ドバァッ!!


モブハンター2「うわあああああっ!!」

モブハンター2「」 ドサッ…

モブハンター3「くっそおおおおおおおっ!!」 

717 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:45:00 ID:N5KSyVGo

少女「だめ! やけにならないで!」

少女「!」

少女「あっちのドドブランゴ、雪塊を投げてくるわ!」

ロン毛ハンター「固まるな!」

ロン毛ハンター「巻き添えを食うぞ!」


     ドド―――――ンッ!!


少女「きゃあっ!」

ロン毛ハンター「くっそおおおおおっ!!」 

718 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:45:57 ID:N5KSyVGo

モブハンター1「」 ドサッ…

モブハンター3「」 ドサッ…

少女「ああ……」

ロン毛ハンター「畜生!」

ロン毛ハンター「もうだめだ! 一時撤退しよう!」

少女「分かったわ!」つ(閃光玉)


     ブンッ!  カッ!

     オオ――――ン……


少女「洞窟に向かいましょう!」

ロン毛ハンター「賛成だ!」

モブハンター4「はあっ……はあっ……」

     タッ タッ タッ… 

719 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:46:50 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「はあっはあっはあっ……」

少女「くっ……みんな、怪我はない?」

ロン毛ハンター「ああ、なんとかな。 俺は擦り傷程度だ……」

モブハンター4「こっちも一応大丈夫だ……」

少女「そう……とりあえず朗報ね」

ロン毛ハンター「くそっ……それにしても数が多すぎる」

ロン毛ハンター「昨日言ってた4~5頭より絶対多く居るぞ……」 

720 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:47:47 ID:N5KSyVGo

少女「ええ……そうね」

少女「それにドドブランゴ達で連携しているようにも思える」

少女「一匹だけでも厄介なのに……」

ロン毛ハンター「それのせいで一匹に集中砲火を浴びせられないしな……」

ロン毛ハンター「くそっ……」

モブハンター4「どうする?」

モブハンター4「正直、お手上げだ……」

モブハンター4「少なくとも もう数の上で敵いっこないぞ」

少女「…………」

少女(冷静に考えなくても撤退しかない)

少女(でも……それじゃあドドブランゴ達が雪山を降りてきてしまう) 

721 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:48:57 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「ニャ! ここに逃げ込んでいたのかニャ!」

少女「!」

少女「救助アイルー!」

ロン毛ハンター「おお、ネコタクのアイルーか!」

ロン毛ハンター「ちょうどいいところに……ん?」


モブハンター1「」

モブハンター3「」


救助アイルー「…………」

モブハンター4「……おい、なんで乙ったハンターを」

モブハンター4「BC(ベースキャンプ)に連れて行かないんだ?」

モブハンター4「それに……どうして二人だけなんだ?」 

722 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:50:16 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「…………」

救助アイルー「BC(ベースキャンプ)には、もう戻れないニャ」

救助アイルー「すぐ手前のエリアに2頭のドドブランゴが陣取ってて……」

救助アイルー「乙ハンターを抱えながら通るのは……無理だと判断したニャ」


一同「!?」


救助アイルー「乙ハンターが二人なのは……これが精一杯だったからニャ」

救助アイルー「今の俺たちの人数と技量の限界というだけニャ……すまないニャ」


一同「…………」


ロン毛ハンター「なんてこった……」

ロン毛ハンター「下山する事も出来ないなんて……」 

723 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:51:11 ID:N5KSyVGo

モブハンター4「……とりあえず」

モブハンター4「ここで救助を待つしかないんじゃか?」

モブハンター4「俺たちのみじゃ、どうしようもない」

ロン毛ハンター「確に……と言いたいが」

ロン毛ハンター「BC(ベースキャンプ)の手前まで降りてきているのなら」

ロン毛ハンター「奴ら、いつ猟区外へ行ってもおかしくないぞ」

ロン毛ハンター「今は、上位ハンターが極端に不足している異常状態……」

ロン毛ハンター「俺たちの救助は、いつになるのか……」

モブハンター4「なら、その手前のドドブランゴ達だけを倒せばいんじゃないのか?」

モブハンター4「2頭だけなら俺たちだけでも何とか……」 

724 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:52:16 ID:N5KSyVGo

ロン毛ハンター「仲間を呼ばれたらどうする?」

ロン毛ハンター「下手に戦えば、返ってBC(ベースキャンプ)に戻れなくなるぞ」

モブハンター4「じゃあどうしろって言うんだ!?」

モブハンター4「ここにいる乙ハンターだって、早く何とかしないと死んじまうぞ!?」

ロン毛ハンター「俺にだってわからねーよ!」

ロン毛ハンター「くそっ……どうしてこんな事に……」

少女「…………」

少女「……ひとつだけ、私に提案がある」


一同「!」


ロン毛ハンター「提案?」

モブハンター4「聞かせてくれ」

少女「その前にまず……救助アイルー」

少女「あなただけなら、BC(ベースキャンプ)に戻れる?」 

725 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:53:20 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「それなら問題なくできるニャ」

少女「そう……」

少女「ここからは推測も入っちゃうけど」

少女「今日、ふもと村に帰ってくる予定のハンターが一人いるわ」


一同「…………」


ロン毛ハンター「上位か?」

少女「残念ながら下位よ」

少女「でも、ドドブランゴと戦う条件を満たして帰ってくる」

モブハンター4「あんたと同じ、ランクアップ直前ハンターか」

モブハンター4「で?」 

726 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:54:07 ID:N5KSyVGo

少女「救助アイルーにふもと村まで行ってもらって」

少女「彼に助力を仰ぐわ」

少女「まず、BC(ベースキャンプ)手前のドドブランゴの相手をしてもらって」

少女「その隙に乙ハンター二人をネコタクアイルー達で」

少女「BC(ベースキャンプ)に連れて行ってもらう」

ロン毛ハンター「ちょっと待ってくれ」

ロン毛ハンター「さっきも言ったが、仲間を呼ばれたらどうするんだ?」

少女「…………」

少女「私達が雪山に打って出て囮になれば」

少女「数の多い、こちらに気を取られるはずよ」

ロン毛ハンター「」

モブハンター4「」 

727 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:58:49 ID:N5KSyVGo

ロン毛ハンター「しょ、正気か? あんた……」

ロン毛ハンター「またあれだけのドドブランゴとやり合おうってのか!?」

少女「やり合う必要はないわ」

少女「あくまで囮……引きつけておくだけ」

少女「少し戦う素振りを見せて、引く」

少女「それを繰り返せばいい」

モブハンター4「し、しかし!」

少女「上手く行けば、乙ハンター達も狩りに復帰できて」

少女「私たちの下山も可能になるかもしれない」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」 

728 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 07:59:55 ID:N5KSyVGo

少女「どの道、賭けになる」

少女「ここで救助を待つのが私たちにとっては一番安全だけど」

少女「この乙ハンター二人は治療できないから助からない」

少女「かと言って、私たちだけで打って出ても結果は目に見えている」

少女「また、ふもと村に狩人……さっき私の言ったハンターが」

少女「都合よく帰っているかどうかも分からない」


一同「…………」


少女「救助アイルーをふもと村に向かわせるのは」

少女「状況を把握したい、というのもある」

少女「最悪……私たちを見捨てて避難しているかもしれないわ」

ロン毛ハンター「っ!!」

モブハンター4「!!」 

729 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:00:53 ID:N5KSyVGo


一同「…………」


ロン毛ハンター「……確に上位ハンターが極端に居ない上に」

ロン毛ハンター「俺たちがボロ負けしたのは、ギルド観測所が把握しているだろうしな」

モブハンター4「ふもと村含め、周辺の村とかも同じ状況だったし」

モブハンター4「住民の安全を考えたら、やりかねないな……」

少女「…………」

ロン毛ハンター「いいだろう」

ロン毛ハンター「あんたの策、乗ってやる」

少女「!」

モブハンター4「……やるしかなさそうだな」

モブハンター4「幸い、回復薬のたぐいはタップリ残っている」

モブハンター4「使う暇が無かったからな……」 

730 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:01:54 ID:N5KSyVGo

少女「……ありがとう」

ロン毛ハンター「礼は及ばんさ」

ロン毛ハンター「自分の命の為でもある」

ロン毛ハンター「それにこの二人をただ見捨てるのも寝覚めが悪いしな」

モブハンター4「まあどの道、あんたの言うハンターが居なかったら」

モブハンター4「そこで終わりだけど……」

少女「…………」


少女(……本当は居ない方がいい)

少女(狩人は……こんな無茶な作戦で命を散らしていいハンターじゃない)

少女(きっと、とんでもなく強くなれる才能を秘めている)

少女(私なんて遠く及ばないような……) 

731 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:02:58 ID:N5KSyVGo

少女(…………)

少女(でも……私……)

少女(まだ死にたくないよ……!)

少女(あなたにもう会えなくなるのも……嫌……)

少女(…………)

少女(……私は……わがままね……)

少女(…………)

少女(ごめんなさい……狩人)


少女「……それじゃ救助アイルー」

少女「往復でどれくらいの時間がかかるかしら?」

救助アイルー「ふもと村なら……だいたい2時間ってとこニャ」 

732 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:04:10 ID:N5KSyVGo

少女「2時間……乙ハンター達は、それまで持ちそう?」

救助アイルー「ひどい外傷は見当たらないし、脈もしっかりしているニャ」

救助アイルー「凍えさせなければ、たぶん大丈夫ニャ」

少女「分かった。 凍えさせないようにできるだけ気を配るわ」

救助アイルー「それは部下たちに任せてあるニャ」

救助アイルー「ホットドリンクもあるから問題ないニャ」

少女「そう。 じゃ……お願いね」

少女「あなたが帰って来なかったら……私たちはここで救助を待つ」

救助アイルー「……わかったニャ」

救助アイルー「じゃ、行ってくるニャ!」

     タッ タッ タッ… 

733 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:05:04 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


ふもと村 狩人の家


狩人「…………」

狩人「…………」

板前アイルー「旦那」

狩人「……ん?」

板前アイルー「どうするんだニャ?」

板前アイルー「本なんて読んでる時じゃねぇと思うニャ」

狩人「…………」

狩人「少女達を助けに行くつもりだ」

板前アイルー「……左様ですかニャ」 

734 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:05:58 ID:N5KSyVGo

狩人「……短い間だったけど」

狩人「ありがとうな」

狩人「本当に助かったよ」

板前アイルー「…………」

板前アイルー「なあ、旦那」

狩人「ん?」

板前アイルー「せめて、あっしの飯を食ってから行きやせんかニャ?」

狩人「……冒険は無しだぞ」

板前アイルー「もちろんニャ」

板前アイルー「今のあっしにできる、最高の猫飯を食って行ってくだせぇニャ」 

735 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:06:55 ID:N5KSyVGo

板前アイルー「どうぞだニャ」

狩人「いただきます」

     ムシャムシャ モグモグモグ…

―――――――――――

狩人「ありがとう、板前アイルー」

狩人「とても旨かっ……」

狩人「……!?」

     シュインッ!!

狩人「こ、これは……!?」

板前アイルー「いかがですかニャ?」

狩人「なんか……秘薬を飲んだ後みたいだ」

板前アイルー「たぶん、その通りだニャ」

狩人「どういう事だ?」 

736 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:07:50 ID:N5KSyVGo

板前アイルー「これはあっしの故郷に伝わる秘伝の猫飯でして」

板前アイルー「旦那のお役に立てれば、と思って作りましたニャ」

狩人「……なんで今頃」

板前アイルー「実は人によっては、拒絶反応でお腹を壊したりする食材が含まれてまして」

狩人「おい!?」

板前アイルー「悪いと思いましたけど」

板前アイルー「普段の食事にその食材を少しずつ混ぜて」

板前アイルー「旦那の体を慣れさせてましたニャ……」

狩人「それなら最初から言ってくれよ……」

板前アイルー「これまで雇ってもらえた旦那には、全て断られてきましたんで……」

板前アイルー「旦那も強くなれるかもしれないけど、お腹を壊すモノを」

板前アイルー「体を慣らしてまで食べたいとは思わねぇでしょ?」

狩人「まあ……そうだな」 

737 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:08:36 ID:N5KSyVGo

板前アイルー「実は、本当はこれでも完璧じゃねぇですニャ」

板前アイルー「もっとすごい効果のある猫飯なんですが」

板前アイルー「今のあっしの腕前では、これが限界……」

板前アイルー「許してくだせぇ……旦那」

狩人「…………」

狩人「……今の飯、本当に旨かった」

狩人「また食いたい」

板前アイルー「旦那……!」

狩人「じゃ……行ってくる」

板前アイルー「へい! 必ず……必ず! 戻ってきてくだせぇニャ!」

狩人「ああ……」 

738 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:09:21 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


ふもと村 集会所


受付嬢「いいえ、ダメです」

受付嬢「許可できません」

狩人「なら……勝手に行かせてもらうだけだ」

受付嬢「ですが!」

女「狩人!」

女「バカ! もうダメなのよ!」

女「あなた一人行ったって、何も変えられないのよ!!」

女「無駄に死にに行くのと同じなんだから!!」 

739 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:10:12 ID:N5KSyVGo

狩人「…………」

狩人「……でも」

女「え……?」

狩人「俺はハンターだ」

狩人「このまま逃げ出して、少女達を見捨てたら……」

狩人「きっと後悔すると思う」

女「なに、かっこいいこと言った!みたいな顔してるの!?」

女「ふざけないで!!」

女「命がかかってるのよ!?」

女「少女ちゃんを助けに行って、あなたが死んだら、何にもならないじゃない!」

狩人「女、分かってくれ……」

女「分からないわよ!!」 

740 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:11:07 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「……取り込んでる所、ごめんだニャ」


一同「!?」


狩人「お前は……救助アイルー! 無事だったか!」

救助アイルー「そっちも元気そうで何よりニャ」

狩人「それで!? 少女達は無事なのか!?」

救助アイルー「今話すニャ」

―――――――――――

救助アイルー「……という状況ニャ」

女「…………」

狩人「そうか、分かった」 

741 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:12:10 ID:N5KSyVGo

狩人「受付嬢さん、女」

狩人「俺、行ってくるよ」

狩人「もう討伐じゃない。 少女達の下山を助けてくる」

狩人「それなら、みんな揃っての避難だ」

女「…………」

女「……分かったわ」

女「でも……相当に危ない道よ?」

女「全員が生きて帰ってくる事は……難しいと思う」

女「その事は忘れないで」

狩人「ああ。 肝に銘じておく」

狩人「女も他の人たちと一緒に逃げてくれ」

狩人「草原村で落ち合おう」

女「……うん」 

742 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:13:00 ID:N5KSyVGo

※ それぞれの装備と状況


行方不明

モブハンター2(HR 4)

武器:片手剣
防具:ハンターS装備一式


死亡

モブハンター5(HR 3)

武器:太刀
防具:フルフル装備一式


モブハンター6(HR 4)

武器:ハンマー
防具:ハイメタS装備一式 

743 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:13:51 ID:N5KSyVGo

乙中

モブハンター1(HR 4)

武器:太刀
防具:ギアノスS装備一式


モブハンター3(HR 5)

武器:弓
防具:ガンナー用ギザミS装備一式 

960 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 22:42:02 ID:edtHvh.A

健在

モブハンター4(HR 4)

武器:ハンマー
防具:ゲネポスS装備一式


ロン毛ハンター(HR 5)

武器:双剣
防具:フルフルS装備一式


少女(HR 3)

武器:ライトボウガン
防具:ガンナー用ザザミ装備一式


狩人(HR 3)

武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式 


745 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:17:37 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


狩人「…………」

救助アイルー「じゃ、手はず通り、合図が来たら頼むニャ」

狩人「わかってる」

狩人「……少女によろしく言っといてくれ」

狩人「必ず生き残ろう、と」

救助アイルー「分かったニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」 

746 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:19:03 ID:N5KSyVGo

狩人(ドドブランゴ……別名『雪獅子』の異名を取る全身真っ白の牙獣種)

狩人(ブランゴを束ねるリーダーであり、大きな特徴として)

狩人(鋭く、大きな牙を持つ)

狩人(ドスギアノスの様に群れを従え、統率の取れた動きで)

狩人(ハンターに襲いかかってくる、厄介なモンスター)

狩人(…………)

狩人(動きが俊敏で、慣れるまでは攻撃を当てるのにも苦労する)

狩人(ドドブランゴの攻撃方法は幾通りか有り)

狩人(突進攻撃や大きなモーションの後に行う 飛びかかり攻撃は)

狩人(よく見ていれば、避ける事はそれほど難しくない)

狩人(が、地中移動して地面の下から襲いかかる『地中急襲』は)

狩人(相当に悪辣な攻撃だ) 

747 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:19:55 ID:N5KSyVGo

狩人(さらに巨大な雪の塊を投げてきたり、ブレスを吐いて)

狩人(ハンターの動きを大きく制限する『雪ダルマ』状態にする事も)

狩人(…………)

狩人(……それが、最低でも2頭同時……か)

狩人(…………)

狩人(いや、困難なクエなのは最初から分かっていた)

狩人(一応対抗手段は用意してある)

狩人(消散剤は持ってきた。 走り回るだろうから強走薬も作れるだけ作ってきた)

狩人(…………)

狩人(少女……) 

748 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:20:59 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山の洞窟


     タッ タッ タッ

救助アイルー「お待たせニャ!」

少女「救助アイルー!」

少女「待ってたわ……」

モブハンター4「それで? 状況はどうなっている」

―――――――――――

救助アイルー「という事で、BC(ベースキャンプ)で待機してるニャ」

少女(狩人……!)

ロン毛ハンター「よし、何とか首の皮一枚つながったな」

少女「ええ……でも、ここからが正念場よ」

ロン毛ハンター「わかっているさ」 

749 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:22:00 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「それじゃ、俺は乙ハンターのところに行くニャ」

救助アイルー「ああ、それから狩人は必ず生き残ろうって……囮役、頑張ってくれニャ」

少女「うん……ありがとう、頑張るわ」

     タッ タッ タッ…

少女「…………」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

モブハンター4「さて、行きますか」

ロン毛ハンター「雪山の地形は大丈夫か?」

少女「問題ないわ」

少女「ドドブランゴに分断されないよう気をつけましょう」 

750 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:24:14 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 山頂手前付近


ロン毛ハンター(ひょー……居るいる)

ロン毛ハンター(今のところ3匹か……)

少女(まず、私がペイント弾でマーキングしていくわ)

少女(その後、少し戦って山頂方向へ向かい、脇道にそれて洞窟へ入る)

少女(こんな感じでどうかしら?)

モブハンター4(先がどうなってるのか、分からないから不安だ……)

モブハンター4(だが、雪山にいるドドブランゴを引き付けないと意味がないからな)

モブハンター4(OK。 それで行こう)

ロン毛ハンター(よし。 合図の爆弾も用意できてる。 いつでもいいぞ)

少女(……分かった。 始めるわ) 

751 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:25:28 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


狩人(…………)

狩人(…………)


     ……ドドーン


狩人「!!」

狩人「よし、始まったな」つ(強走薬) グビッ

     シュイン!

狩人「少女……頑張ってくれ」

狩人「行くぞ!」 

752 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:26:19 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)近くの洞窟出口付近


救助アイルー(始まったかニャ……)

救助アイルー(…………)

救助アイルー(正直、あいつじゃドドブランゴ2頭同時なんて)

救助アイルー(もって5分……というところだニャ)

救助アイルー(何としてもこの二人を早く気づかせて、戦列に復帰させないと)

救助アイルー(いくらあいつでも死んでしまうニャ……)

救助アイルー(…………)

救助アイルー(雪山の方も……どこまで持つのか……)

救助アイルー(…………) 

753 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:27:13 ID:N5KSyVGo


     ザッ ザッ ザッ…


狩人「…………」


     グルルル……?


狩人「……さて、どうなるかな」つ(ペイントボール)


     ヒュッ ヒュッ… ――――ンッ ベチャ! ベチャ!


狩人(まずは……様子を見るだけでいい)

狩人(救助アイルー達に注意が向かない様にしないと……!) 

754 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:28:15 ID:N5KSyVGo


     ゴアアアアアアアッ!!


狩人「まずは威嚇か……!」


     ググッ……バッ!


狩人「……!」 回避!

狩人(なるほど……あれが大きな動作からの跳びかかり攻撃か!)


     バキッ!


狩人「ぐっ!」

狩人(別の一頭からの攻撃……!)

狩人(これは……相当に厄介だ!)

狩人「このおっ!」 

755 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:29:21 ID:N5KSyVGo


     ブウウンッ! ドガッ!

     グアアッ!


狩人「うしっ!」

狩人(だけど大剣の溜め攻撃は、しない方がいいな)

狩人(今は倒す事より、あいつらの注意を引き、動きを見る)

狩人(これに徹するんだ!)


救助アイルー「…………」

救助アイルー(おいおい……何があったのか知らないけど)

救助アイルー(俺はあいつを過小評価してたみたいだニャ)

救助アイルー(いつの間にあんなに冷静な行動を取れるように……)

救助アイルー(いや、それどころじゃないニャ) 

756 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:30:18 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「いいか、野郎ども」

救助アイルー「もうすぐドドブランゴ達が怒るニャ」

救助アイルー「俺たちはそれを確認した後、全速力でBC(ベースキャンプ)に戻るニャ」

     ニャー!!

救助アイルー「BC(ベースキャンプ)に戻った後」

救助アイルー「医療班を除いた1班2班は、雪山のハンターの援護に向かってくれニャ」

救助アイルー「残りは、俺と共にここのハンター達を援護するニャ」

     ニャー!!

救助アイルー「よし」

救助アイルー「…………」

救助アイルー「…………」 

757 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:31:14 ID:N5KSyVGo



     ゴガアアアアアアアアアアアッ!!



救助アイルー「ミッションスタート!!」


―――――――――――


狩人「……!」

狩人(よし、いいタイミングだ! 救助アイルー!)

狩人「うおおっ!!」


     ザシュッ!!

     グガアアッ!!




758 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:32:04 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 山頂付近


     ゴガアアアアアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「ちっ、この程度で怒ってんじゃねーよ!」

     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

少女「ペイントは済んだわ! そこの脇道に行くわよ!」

モブハンター4「わかった!」

モブハンター4「オラァッ! そこをどきやがれ!!」つ(ハンマー)


     ドゴオッ!!


少女「上手い! スタンを取った!」 

759 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:32:51 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 中腹付近の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「はあっはあっはあっ……」

少女「確認できるペイントの煙は……全部で……はあっはあっ……8頭かしら」

ロン毛ハンター「通りで……ふうっふうっ……敵わないわけだな」つ(回復薬G)グビッ

モブハンター4「くそっ……はあっはあっ……何でこんな数のドドブランゴが……!」

少女「残念だけど、これで全部かどうかは分からない」

少女「それに……」 

760 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:33:36 ID:N5KSyVGo

ロン毛ハンター「ああ、分かってる。 みなまで言うな」

ロン毛ハンター「俺たちの仕事はこれで終わりじゃない」

モブハンター4「最後まで持つかなぁ……」

ロン毛ハンター「今から泣きごと言ってどうする」

ロン毛ハンター「閃光玉の残りとか、確認しとけ」

モブハンター4「わかってるよ……」

モブハンター4「あと2発だ」

ロン毛ハンター「俺は5発丸々残ってるぞ」

少女「私は3発と調合で10個作れるわ」

ロン毛ハンター「そいつは頼もしいな」

モブハンター4「唯一とも言えるいいニュースだぜ」

少女「急いで山頂手前付近の出口に向かわないと……さ、行くわよ」 

761 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:34:17 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


救助アイルー「よし!」

救助アイルー「医療アイルー以外の1班2班は予定通り雪山のハンター援護へ!」

救助アイルー「それ以外は、俺について来いニャ!」

     ニャー!

救助アイルー「今回は異常事態ニャ!」

救助アイルー「普段は禁じられている出過ぎたサポートも俺の責任で許可するニャ!」

救助アイルー「ハンターの命を守る事に全力を尽くすんだニャ!!」

     ニャー!! 

762 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:36:14 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)近くのエリア


狩人「ぐあああああああああっ!!」


     グルルル…


狩人「く、くそっ!」


     バキッ!


狩人「ぐはっ!?」

狩人(くそったれ……! もう1頭の死角からの攻撃がキツいっ!)

狩人(……いや、やけになるな)

狩人(冷静になれ! もっと集中するんだ!)つ(回復薬G) グビッ 

763 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:38:32 ID:N5KSyVGo



     狩人は確かに成長していた。

     事前にモンスターの情報を知り

     調合の知識や薬効を理解し

     状況を見、頭で考え、冷静に行動していた。

     それは目を見張るほど素晴らしい成長ぶりである。





764 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:39:41 ID:N5KSyVGo



     だが……



     決定的に足りないものがひとつだけあった。

     才能がどれだけあろうとも

     それは……時間をかけなければ得る事ができないのである。





765 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:40:26 ID:N5KSyVGo


     ゴアアアアアアアッ!


狩人(雪塊攻撃!)

狩人(何度も見たぜ!) 回避!


     グルルル…


狩人「!?」

狩人(もう一匹が……居ない!?)

     地中移動して地面の下から襲いかかる『地中急襲』は

     相当に悪辣な攻撃だ

狩人「!!」 

766 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:41:07 ID:N5KSyVGo

狩人(しまっ―――)



     ド  ガ  ア  ア  ッ !!



狩人「がっ……」



     ゴ  キ  ン  ッ !!



狩人「」 

767 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:41:52 ID:N5KSyVGo










狩人「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」












768 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/06/28(日) 08:42:42 ID:N5KSyVGo



     狩人の右腕から鈍い音と同時に

     強烈な痛みが彼に襲いかかる。




     そう……

     狩人は、複数同時の討伐モンスターを相手に戦った『経験』が

     圧倒的に足りていなかった。







777 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:20:12 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 山頂手前付近



     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


少女(くっ……! ペイントの効果を消してるのが、もう何頭か居る!)

少女(…………) チラッ…

少女(山頂に2頭……ここに3頭、脇道付近に1頭……)

少女(そして、BC(ベースキャンプ)近くに2頭)


     ゴアアアアアアアッ!


ロン毛ハンター「ちっ、また怒りやがったか!」

モブハンター4「そろそろ移動じゃないか!?」 

778 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:20:52 ID:Dd/kherE

少女「ええ!」つ(閃光玉)

     ブンッ… カッ!

     グアアアア……

少女「今のうちよ!」

ロン毛ハンター「ヒュー……いつもながら3頭同時に見事なもんだ」

モブハンター4「これが終わったらギルカ交換してくれ」

少女「無駄口叩かない!」

少女「あなた達、私よりHR上なんでしょ!?」 ←HR 3

ロン毛ハンター「……そうですね」 ←HR 5

モブハンター4「……すみません」 ←HR 4

少女「さ、早く行くわよ」

     タッ タッ タッ… 

779 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:21:37 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前エリア



 痛い     痛い  痛い         痛い
              俺……どうしたんだ……?

   あれ? 何を…           痛い
痛い     ヤバイ…               痛い        痛い
                   ああ……
         痛い     痛い          痛い

    ドドブランゴから逃げないと……
                        苦しい……
   ここは……?         何が……?     少女……
 痛い      痛い      痛い      痛い
      ドドブランゴ……?
                       くそっ……
        痛い 

780 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:22:50 ID:Dd/kherE



     ドサッ!!



狩人「がふっ!!」

狩人「……ぐ……くっ……はっ……」


     ドドブランゴの「地中急襲」の直撃を寸前で避けた狩人だったが

     代わりに右腕が犠牲になった上に、結局数メートル上空に突き上げられ

     地面に叩きつけられる結果となった。

     その落下の衝撃で意識が飛びそうになるが

     何とか持ちこたえるものの……朦朧(もうろう)とするのはさすがに抑えられなかった。


狩人「はっ……はっ……」 

781 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:23:22 ID:Dd/kherE



     ゴアアアアアアアッ!



狩人「!」


     まるで勝ち誇ったかのような

     ドドブランゴ達の雄叫びでようやく意識がはっきりする。

     ヨロヨロと立ち上がり、首を軽く振ると

     狩人は自分の右腕を見る。


狩人(……くっ)

狩人(痛みの場所から そうだと思ったが……折れてるな……これ)

狩人(おまけに……武器まで失った……くそっ……!) 

782 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:24:15 ID:Dd/kherE

狩人(だけど……)

狩人(最後まで諦めるものかっ!)


     狩人は、剥ぎ取り用の小さなナイフを左手に構える。

     だがこれは、剥ぎ取るために作られたものなので

     討伐用の武器とは比べ物にならないほど貧弱で脆い代物だった。


狩人(……これがダメになったら、噛み付いてでも戦ってやる)

狩人(さあ……かかってこい、ドドブランゴ!)


     威勢のいい事を考えているが

     どう見ても悪あがきでしかない……


狩人「はあっ……はあっ……」 

783 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:25:20 ID:Dd/kherE



     だが、そんな狩人を見て

     ドドブランゴ達は少々戸惑っていた。

     これだけ圧倒的に不利な状況で大ダメージを受け

     ましてやあの奇妙な道具(武器)も失い

     自分たちに抗う術(すべ)などないハズ……


     だが、いま目の前に居るこの小さいのは

     それでも立ち上がり、何かを取り出して

     圧倒的に有利である自分たちを睨みつけ、戦う姿勢を崩さないでいる。

     何かあるのか……?


     ドドブランゴ達は、本能的に狩人を警戒してしまったのだった。




784 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:26:10 ID:Dd/kherE


     グルルル…


狩人「はあっ……はあっ……」


     一方、狩人の方に余裕など少しもない。

     正直、立っているだけでも辛い、という状況だった。


狩人(……何とか……武器を……!)

狩人(ドドブランゴの後ろにある大剣を拾わないと……!)


     狩人は もう冷静ではなかった。

     痛みで気を失いかけながら考えた事は、ただ”勝つ事”のみ。

     根拠など何もなく、自分の武器さえ取り戻せば何とかなる、と

     思い込んでいるにすぎない……


狩人「はあっ……はあっ……」 

785 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:27:16 ID:Dd/kherE



     ゴガアアアアアアアッ!



狩人「!」

狩人「く……うおっ」 回避!

狩人「ぎ……ああああっ!」


     しびれを切らしたドドブランゴの突進に思わず避けたが

     その動きだけで激痛が狩人の体を駆け抜ける……!


狩人「はあっはあっはあっ……」 

786 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:28:16 ID:Dd/kherE

狩人(痛ぇ……たった……これだけの動作で……)

狩人(どうすればいい……)

狩人(どう……すれば……)


     あまりの痛みに気が遠くなる狩人。

     ついには、剥ぎ取りナイフすらも落としてしまった……


狩人「はあっ……はあっ……」

狩人(もう……ダメ……かな……)

狩人(…………)

狩人(……女……君の言う通りになってしまったよ……)

狩人(俺一人じゃ……何も変えられなかった……)

狩人(…………) 

787 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:29:05 ID:Dd/kherE


     ドドブランゴの一頭が、飛びかかりの前動作を始めるのが見えた。

     狙いはもちろん狩人だ。


狩人(…………)

狩人(畜生……)



     カッ!!


     ゴアアアアアアアッ!?



狩人(!?)

狩人(閃光……玉!?) 

788 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:29:44 ID:Dd/kherE

救助アイルー「3班は右のを!」

救助アイルー「4班は左の注意を引くんだニャ!」

救助アイルー「乙ハンターは居ないから、いつもより軽い仕事だニャ!」

     ニャー!!

救助アイルー「大丈夫かニャ!?」

狩人「救助……アイルー……うっ」

救助アイルー「……折れているニャ」

救助アイルー「…………」

救助アイルー「状況が変わったニャ!」

救助アイルー「3班! このハンターをBC(ベースキャンプ)へ!」

救助アイルー「3班のドドブランゴは、俺が何とかするニャ!」

     ニャ!? 

789 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:30:34 ID:Dd/kherE

救助アイルー「時間がもったいないニャ!」

救助アイルー「早くしろニャ!」

     ニャ……ニャー!!


―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


     ガラガラガラ…

3班アイルー「状況! 右、前腕部骨折!」

医療アイルー「了解!」

3班アイルー「俺たちは戻るニャ!」

医療アイルー「こっちも済んだらすぐ行くニャ!」 

790 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:31:24 ID:Dd/kherE

医療アイルー「さ、この布を噛むニャ!」

狩人「……え? ぐもっ」

医療アイルー「他の連中は、患者を抑えるニャ!」

     ニャー!

医療アイルー「時間が惜しいから荒療治ニャ!」


     コキッ パキョ…

     グギギギギギギギギギギギギギ……コキンッ✩


狩人「―――――――――――ッ!!!!?」

医療アイルー「添え木……固定完了!」

医療アイルー「回復薬や秘薬は持っているかニャ?」

狩人「」 

791 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:32:11 ID:Dd/kherE

医療アイルー「ほれ、起きるニャ」 ペチペチ

狩人「……う、う~ん……」

医療アイルー「回復薬や秘薬は持っているかニャ?」

狩人「え……?」

狩人「あ、ああ……持ってるけど」

医療アイルー「じゃあ回復薬……できればグレートと秘薬を飲んで休んでいるニャ」

医療アイルー「安静にして一日一回は回復薬Gと秘薬を飲んでいれば」

医療アイルー「3日後くらいに治っているニャ」

狩人「そうなのか……わかっ」

狩人「って! 休んでなんていられないんだよ!」

医療アイルー「お前は意識こそ失わなかったけど」

医療アイルー「武器を手放した段階で乙扱いになるニャ」 

792 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:33:01 ID:Dd/kherE

狩人「し、しかし!」

医療アイルー「……その腕じゃ、どの道足でまといニャ」

狩人「……っ」

医療アイルー「けど、お前はよくやってくれたニャ」

医療アイルー「おかげで二人のハンターを治療できたニャ」

狩人「!」

医療アイルー「だから、休んでいてくれニャ」

医療アイルー「乙から復帰したハンターが、きっと何とかしてくれるニャ!」

医療アイルー「じゃ……」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」 

793 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:33:57 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 山頂付近


モブハンター4「くそっ!」

ロン毛ハンター「雪塊、来るぞ!」


     ドガァァァァンッ!!


少女「はあっはあっ……そろそろ潮時」


     ガウウウウッ!!


少女「きゃあっ!!」

ロン毛ハンター「野郎!!」

モブハンター4「大丈夫か!?」 

794 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:34:34 ID:Dd/kherE

少女「っ……な、何とか……」

ロン毛ハンター「脇道に入るぞ!」


     グルルル…


少女「!」

ロン毛ハンター「なっ!?」

モブハンター4「ま、待ち伏せ……だと!?」


     ガアアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「くそっ! だめだ、散れっ!」 

795 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:35:17 ID:Dd/kherE

モブハンター4「畜生!」

     バババッ!

少女(いけない……このままじゃ分断される!)


     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


少女「はあっはあっはあっ……!」

少女(今、このエリアには4頭……)

少女(確認した最大の頭数から単純計算でBC(ベースキャンプ)近くのを除けば)

少女(残りは2頭ということ)

少女(なら……!)

少女「このまま、それぞれでエリアチェンジしよう!」

ロン毛ハンター「!」

モブハンター4「!」 

796 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:36:00 ID:Dd/kherE

ロン毛ハンター「ちっ……!」

モブハンター4(それしかないか……!)

ロン毛ハンター「わかった!」

モブハンター4「洞窟で落ち合おう!」

少女「ええ!」つ(閃光玉)

     ブンッ!  カッ!

     グアアアア…

―――――――――――


雪山 山頂手前付近


ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」 

797 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:36:55 ID:Dd/kherE


     ゴアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「くっ!?」

ロン毛ハンター(どうやら……貧乏くじは俺が引いたみたいだな……)

ロン毛ハンター(くそったれ!)

ロン毛ハンター「だが、何としてもそこを通してもらうぜ!」

ロン毛ハンター「うおおおおおおおおおおおっ!!」

―――――――――――


雪山の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「! 良かった……あんたは無事だったか」

少女「ええ……はあっはあっ……なんとか、ね……」 

798 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:37:31 ID:Dd/kherE

モブハンター4「……という事は」

少女「…………」

少女「助けに行きましょう」

少女「彼が行ったルートは、たぶん、山頂の手前に出る場所」

少女「すぐに行かないと命に関わ……」


ロン毛ハンター「……大丈夫だ」


少女「!」

モブハンター4「!」

モブハンター4「無事だったか!」

ロン毛ハンター「…………」 

799 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:38:08 ID:Dd/kherE

モブハンター4「……?」

モブハンター4「どうした?」

少女「どこか、怪我でも?」

ロン毛ハンター「…………」

ロン毛ハンター「……ネコタクアイルーが一人死んだ」

ロン毛ハンター「俺を庇って……」

少女「!」

モブハンター4「!」

モブハンター4「……そうか」

ロン毛ハンター「…………」

ロン毛ハンター「閃光玉の残りは、後どれくらいある?」 

800 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:38:58 ID:Dd/kherE

モブハンター4「……俺は使い切った」

少女「私は……あと2発」

ロン毛ハンター「……俺も使い切ってる」

ロン毛ハンター「正直、これはヤバイ状況だ」

ロン毛ハンター「俺たちの行動は、だいぶ奴らに読まれている上に」

ロン毛ハンター「頼みの閃光玉も無くなりかけている」

少女「…………」

モブハンター4「……囮のアタックもあと一回できるかどうか」

モブハンター4「BC(ベースキャンプ)手前の2頭は、どうなったんだ?」

モブハンター4「こっちはそろそろ限界だぞ……」

少女「…………」 

801 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:39:43 ID:Dd/kherE

少女「でも、信じて合図を待つしかないわ」

少女「ネコタクアイルーも加わってくれるのなら、多少私たちの負担も減る」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

ロン毛ハンター「……しょうがない、か」

モブハンター4「よし、思い切って今度は逆ルートで行ってみないか?」

モブハンター4「単純だが、少しは時間稼ぎになると思うが?」

少女「そうね……試してみる価値はあると思う」

少女「じゃ、今度は中腹あたりの出口から山頂を目指して」

少女「山頂手前の洞窟を目指しましょう」

ロン毛ハンター「ああ、わかった」

モブハンター4「早いとこ合図来てくれよぉ……」 

802 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:40:55 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前付近



     ゴアアアアアアアッ!!


救助アイルー「ギニャアアアアアッ!!」

3班アイルー「隊長! もう下がるニャ!」

3班アイルー「乙ハンターも復帰して今戦ってくれているニャ!」

救助アイルー「かはっ……」 ビチャ…

3班アイルー「医療アイルー!」

3班アイルー「来てくれニャ!」

救助アイルー「はあ……はあ……」 

962 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 22:44:27 ID:edtHvh.A

救助アイルー「誰か……ハンターに……」

救助アイルー「合図の仕方を……教えるニャ……」

3班アイルー「分かってるニャ! だからもう休むニャ!」

医療アイルー「……!!」

救助アイルー「はあ……はあ……」

医療アイルー「……ここは僕に任せるニャ」

医療アイルー「BC(ベースキャンプ)に連れて行くから……」

3班アイルー「任せたニャ!」

     タッ タッ タッ…

救助アイルー「はあ……はあ……」

医療アイルー「…………」 

804 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:42:30 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


     タッ タッ タッ…

狩人「!」

医療アイルー「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

狩人「救助アイルー!?」

狩人「だ、大丈夫か!?」

医療アイルー「…………」

医療アイルー「……静かに見てやって欲しいニャ」

狩人「え? で、でも俺……」 

805 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:43:14 ID:Dd/kherE

医療アイルー「……っ」

医療アイルー「内蔵をしこたまやられてて……手の施しようがないニャ……!」

狩人「っ!!」

医療アイルー「だから……看取ってやってくれニャ」

狩人「だ……だから……って」

医療アイルー「僕は……まだ仕事が残ってるニャ!」

医療アイルー「ここで放り出したら、隊長は僕を怒るニャ!」 グスッ…

狩人「!」

医療アイルー「……頼んだニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」 

806 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:44:20 ID:Dd/kherE

救助アイルー「はあ……はあ……」

狩人「…………」

救助アイルー「……ふふふ……そんな顔するな……」

救助アイルー「俺が……自分の判断で……やった事ニャ……」

狩人「……けど」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「やっぱり……アイルーじゃ……」

救助アイルー「どうやっても……討伐モンスターには……勝てないみたいだニャ……」

狩人「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「昔は……オトモアイルーとして……」

救助アイルー「旦那さんと……フィールドを……駆け回ってたニャ……」

狩人「…………」 

807 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:45:00 ID:Dd/kherE

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「でも……旦那さん……守れなかったニャ……」

救助アイルー「目の前で……グラビモスの……ブレスで……」

救助アイルー「……俺は……悔しかった……ニャ」

狩人「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「何度も……何度も……自分がハンターだったらって……」

救助アイルー「そうしたら……仇(かたき)を討って……やれるのにって……」

救助アイルー「考えたニャ……」

狩人「…………」 

808 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:45:52 ID:Dd/kherE

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「でも……こうやって……ハンターを救っていけば……」

救助アイルー「いつか……俺の旦那さんの無念を……晴らしてくれるって……」

救助アイルー「そう考えるように……して……この仕事……始めたニャ……」

狩人「……そうだったのか」

救助アイルー「はあ………はあ………」

救助アイルー「なあ……新人ハンターさん……」

狩人「……なんだ?」

救助アイルー「俺は……頑張れたかニャ……?」

救助アイルー「旦那さんは……喜んで……くれるかニャ?……」

狩人「当たり前だ」

狩人「きっと……笑顔でお前を迎えてくれるさ」 

809 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:46:56 ID:Dd/kherE

救助アイルー「ふふふ……そうか………」

狩人「…………」

救助アイルー「あんたみたいな……ハンターを……最後に……救えて……」

救助アイルー「本当に……良かった……ニャ……」

狩人「ああ……俺も感謝してる」

狩人「そしていつか、お前の主より強くなって」

狩人「グラビモスだって、ラオシャンロンだって」

狩人「一人ででも倒せるくらいになってみせるさ……!」

救助アイルー「ふふふ………はあ………はあ………」

救助アイルー「……期待…………してるニャ」

狩人「絶対に裏切らないよ」

救助アイルー「ふふふ…………」 

810 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:47:35 ID:Dd/kherE

救助アイルー「…………」

救助アイルー「あんたが……そういう…………ハンターになった……」

救助アイルー「武勇伝を……」

狩人「…………」

救助アイルー「……あっちで……」

救助アイルー「旦那さんと…………聞け……るの…………」

救助アイルー「……楽…………し……み………………に…………」

救助アイルー「」

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「救助……アイルー……」

救助アイルー「」 

811 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:48:17 ID:Dd/kherE

狩人「…………」

狩人「……っ」

狩人「……ぐっ……うくっ…………ぐっ…………」

狩人「……うあ……ああああっ……ぐっ……くっ……」

狩人「バカ……野郎っ……ひぎっ…………ぐっ……くっ……」

狩人「何で……ぐくっ……何で、だよっ……うあっ………はっ…」

狩人「ひぎっ……うっ、うっ……ぐっ……うあっ……はっ……」

狩人「あああっ……ぐっ……ひぎっ……くっ……うっ……ああっ……」

狩人「……ひうっ……ぐっ……くっ……ぎっ……くあっ……」 

812 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:48:53 ID:Dd/kherE



     ……俺が、救助アイルーを看取って

     泣いていると……



     ドドブランゴを倒した、という合図である

     大タル爆弾の炸裂音が響いてきた。



     ……これで、やれる事は一応全部済んだ。

     けど……





813 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:50:15 ID:Dd/kherE








     下山してきた少女達も含め

     喜んでいる者は、誰ひとりとしていなかった……










814 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:50:59 ID:Dd/kherE


―――――――――――


翌日の昼

草原村 仮設テント


女「狩人!」

女「それに……少女ちゃん」

狩人「……やあ、女」

狩人「怪我したけど何とか帰ってきたよ……」

少女「すみません……討伐できなくて」

女「ううん……謝る必要はない」

女「むしろ、私たちの方こそ許しを請う立場よ……」

女「何しろ我が身可愛さに少女ちゃん達を見捨てて逃げたんだから」

少女「…………」

狩人「…………」 

815 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:51:39 ID:Dd/kherE

女「……でも」

女「ここへ生きて帰ってきてくれて」

女「本当に良かったわ……」

少女「…………」

狩人「…………」

女「ここには駆け足で来てくれたHR6のハンターが、ついさっき何人か着いたの」

女「明日にはもっと来る予定よ」

女「今は……体を休める事に専念して」

少女「ええ」

狩人「そうさせてもらうよ……」 

816 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:52:26 ID:Dd/kherE


―――――――――――


砂漠村 集会所


ギルド連絡員「急報!」

ギルド連絡員「現在、雪山猟区にて、ドドブランゴが大挙して襲来!」

     ザワッ……!

ギルド連絡員「手の空いているハンターは救援に向かわれたし!」

ギルド連絡員「繰り返す!」

ギルド連絡員「手の空いているハンターは救援に向かわれたし!」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」 

817 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:53:05 ID:Dd/kherE

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ソロ「……?」

ロートル「…………」

ソロ「……ロートル?」

ロートル「! ……なんだ?」

ソロ「なんだ?は、無いだろう?」

ソロ「ふもと村に戻る準備をしないと」

ロートル「…………」

ソロ「……おい、ロートル」 

818 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:53:51 ID:Dd/kherE

ロートル「……大丈夫だろう」

ロートル「俺やお前がいなくたって……」

ロートル「何とかなるさ」

ソロ「…………」

     バキッ!

ロートル「ぐっ……!」 ドサッ…

ベテラン「…………」

ソロ「……今のは聞かなかった事にしてやる」

ソロ「さあ、ふもと村に帰る準備をするんだ」

ソロ「俺たちは、ふもと村の村付きハンターなんだぞ」

ロートル「…………」

ロートル「…………」

ロートル「……わかった」

ベテラン「…………」 

819 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:54:43 ID:Dd/kherE


―――――――――――


翌日の昼

草原村 墓地


ネーコ「……そうですか」

ネーコ「救助アイルーさん、そんな事を……」


ネコタクアイルー一同「…………」


狩人「…………」

狩人「なあ、ネーコ」

ネーコ「はい?」 

820 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:55:28 ID:Dd/kherE

狩人「もしかしたら……ネコタクアイルーって」

狩人「救助アイルーみたいな 元オトモアイルーなのか?」

ネーコ「…………」

ネーコ「半分くらいは……その通りです」

ネーコ「もう半分はご主人様と生き別れ、とういうわけでなく」

ネーコ「ただ給金がいいから、という理由できている元オトモアイルーです」

ネーコ「人間とあまり変わりませんよ」 クスッ…

狩人「そうか……」

狩人「でも、みんな元オトモアイルーなのか」

ネーコ「ええ」

ネーコ「ネコタクアイルーの条件にありますので……」 

821 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:56:45 ID:Dd/kherE

狩人「…………」

狩人(救助アイルー……)

狩人(俺……必ずあの約束を守るよ)

狩人(…………)

狩人(でももし守れなかったら……)

狩人(その時は遠慮なく、俺を蹴っ飛ばしてくれ)

狩人(…………)

狩人(だから……)

狩人(あっちでもまた会おうな……)

狩人(救助アイルー) 

822 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 19:58:52 ID:Dd/kherE




     今回のドドブランゴ襲来で犠牲になったのは

     ハンターが3人 ネコタクアイルーのアイルーが2人……



     覚悟こそそれなりにしていたが

     俺にとって、最も辛く、苦い経験となった……






823 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 20:00:16 ID:Dd/kherE


―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオオ……













824 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 20:01:06 ID:Dd/kherE



     ここは雪山の遥か北に位置する場所。

     見渡す限り……白く凍てつく氷の大地。

     一見すると息づくものはなく

     常に吹雪が渦巻いていた。





     が……








825 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 20:02:01 ID:Dd/kherE

雪山深奥



     ズシン… ズシン… ズシン…



     



     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!











826 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/04(土) 20:03:19 ID:Dd/kherE






     付近の山と見間違うほど巨大で大きい何かが突然吠えた。

     生き物、というのには躊躇(ちゅうちょ)するそれは

     何かに導かれるように南に向かって進み始めた……









839 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:42:26 ID:edtHvh.A


―――――――――――








     約一週間後












840 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:43:12 ID:edtHvh.A

午後

雪山 山頂付近


狩人「くらえ、ドドブランゴッ!!」


     ドガアッ!!

     グアアアアッ…


狩人「よしっ」


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

     アオオオッ……!


少女「狩人! 今よ!」

狩人「はああああっ!!」(タメ3)


     ドガアッ!!



841 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:44:18 ID:edtHvh.A



     あれから一週間が過ぎた。



     あの時の俺たちの頑張りが功を奏したのか

     結局、雪山を降りてきたドドブランゴは一匹もおらず

     ふもと村を含め、雪山周辺の村々にも被害は全く出ずに済んだ。



     そしてロートルさん達を含め

     駆けつけてきたHR6のハンター総数は60人を超え

     雪山に来たドドブランゴ達は一掃された。





842 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:45:04 ID:edtHvh.A



     だけど、それからも1~2日に一頭くらいの頻度で

     ドドブランゴは現れ続け

     ギルド含め、雪山周辺住民にも動揺が広がっていた。



     何かの前触れではないかと……



     無論、ギルド側も事態を重く見て

     調査隊を派遣する事を決めた。

     のだが……





843 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:45:42 ID:edtHvh.A


―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


狩人「ふう……」

少女「狩人、もう腕は問題ないみたいね」

狩人「ああ」

狩人「けど骨が折れるのって、もの凄い激痛なんだぜ……」

狩人「あの痛みは もう味わいたくないよ」

少女「それは……ごめんなさい、狩人」

狩人「ん?」

狩人「何で謝るんだ?」 

844 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:46:43 ID:edtHvh.A

少女「だって……」

少女「私が助けを求めて、複数のドドブランゴを相手にさせたから……」

狩人「……いや、気にしなくていいんだよ」

狩人「俺も少女の事、助けたかったし……」///

少女「!」 ドキッ

少女「そ、そう……」///

受付嬢「お待たせしました」

受付嬢「こちらが今回のドドブランゴ討伐の報酬です」

     ドサッ

受付嬢「そして、これがHR4のギルドカードになります」

受付嬢「これでお二人共、正式に上位ハンターですね」 

845 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:47:45 ID:edtHvh.A

狩人「ありがとう、受付嬢さん」

狩人「これで上位の猟区に行けるんだな……」

受付嬢「はい」

受付嬢「ただし、塔はHR5から」

受付嬢「樹海猟区はHR6からになります」

狩人「そうですか……まだまだ先は長そうですね」

受付嬢「ええ。 それでは、上位に上がった際の注意点を説明いたします」

狩人「注意点?」

受付嬢「まず……これまでの猟区より危険なモンスターが出没するため」

受付嬢「支給品の配送が遅れる事が多々あります」

受付嬢「ぶっちゃけると、ほぼ毎回、猟区到着時には『無いもの』と思ってください」 

846 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:48:53 ID:edtHvh.A

狩人「そうなんですか……」

受付嬢「上位猟区配送員の人員確保は難しくなっておりますので……すみません」

狩人「わかりました」

少女(これは……今まで以上に準備を心がけないと)

少女(猟区に着いて『クーラードリンク忘れた!』なんて)

少女(シャレにならなくなるわ……)

少女(…………)

少女(……たぶん、狩人は事の重大さに気が付いてない気がする)

狩人「他には何かありますか?」

受付嬢「猟区の砂漠なのですが」

受付嬢「上位から”夜の砂漠”に行くクエが登場します」

狩人「はい」 

847 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:49:45 ID:edtHvh.A

受付嬢「これまで下位クエでは昼間ばかりだったので知らないでしょうが」

受付嬢「砂漠は夜になるとホットドリンクが必要になるくらい冷え込むんです」

狩人「……冗談ですよね?」

受付嬢「信じられませんか……」

受付嬢「理屈はまだ分かっていないのですが、本当に『そうなる』ので」

受付嬢「これからの砂漠クエ受注の際、時間帯をよく見て、注意してください」

狩人「はあ……」

狩人(あんなに暑い砂漠なのに……本当かなぁ?)

受付嬢「以上が上位に上がった際の注意点です」

受付嬢「これまで以上にできるだけ無理せず、少しずつ強くなってください」

狩人「はい」

少女「わかりました」 

848 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:50:22 ID:edtHvh.A


―――――――――――


ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ

狩人「あ……あの荷車」

狩人「まだ調査隊、出発していないのか」

少女「ギルド側は調査隊の護衛にG級ハンターを付けたいみたいなんだけど」

少女「なかなか応じてくれるG級ハンターが居ないみたい……」

狩人「HR6のハンターなら、たくさん居るのに……」

少女「未知の……ううん、モンスターのテリトリーに入っていくのだから」

少女「どんな不測の事態になるのか、分からない」

少女「それに備えてG級ハンターの護衛を付けたいのよ」 

849 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:51:16 ID:edtHvh.A

狩人「それは分かるんだけどな……」

少女「特に今回は山あいで天候が安定しない地域だから」

少女「気球観測ができないし……」

狩人「…………」

     スタ スタ スタ…

ロートル「……お」

狩人「あ……」

少女「ロートルさん」

ロートル「…………」

ロートル「……その様子だと」

ロートル「ドドブランゴ討伐、成功したみたいだな」 

850 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:51:55 ID:edtHvh.A

狩人「はい」

少女「上位ハンターになれました」

ロートル「そうか……おめでとう」

狩人「ありがとうございます」

ロートル「じゃ……」

     スタ スタ スタ…

狩人「あ……」

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……ロートルさん」

狩人「帰ってきてから様子がおかしいな……」

少女「うん……」 

851 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:53:12 ID:edtHvh.A


―――――――――――


ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

ロートル「タンジアビールにモス煮込みを頼む」

     アイヨー

ロートル「ふう……」

ベテラン「……よお」

ロートル「!?」

ロートル「ベテラン……なぜここに居る?」

ベテラン「ま……気まぐれってやつさ」 

852 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:54:01 ID:edtHvh.A

ベテラン「ねーちゃん、俺は黄金芋酒に刺身盛り合わせな」

     ハーイ

ベテラン「ふう……」

ロートル「…………」

ベテラン「……もう知ってるかも しれねーが」

ベテラン「砂漠のテオ……討伐されちまったよ」

ロートル「…………」

ロートル「……そうか」

ベテラン「お前さんがふもと村に向かって、2日後の事だった……」

ロートル「…………」

ロートル「で? それをわざわざ伝えに、こんな所まで来たのか?」

ベテラン「…………」 

853 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:55:50 ID:edtHvh.A

     オマチー ソッチノオキャクサンモー

ロートル「おう」

ベテラン「ありがとよ」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「なかなか旨いな」

ロートル「ここは刺身より煮物の方が旨いぞ」

ベテラン「そうか……今度試してみる」

ロートル「……で? 何でここへ?」

ベテラン「……深い意味はねーよ」

ベテラン「ただ……」

ロートル「ただ?」 

854 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:56:48 ID:edtHvh.A

ベテラン「ソロの兄ちゃんがお前を殴った時」

ベテラン「俺も殴られた気がした」

ロートル「…………」

ベテラン「結局……俺は残って、古龍殺し(エルダーキラー)のおこぼれに預かろうとしたが」

ベテラン「おたくら同様、怪しまれて相手にされなかったよ……」

ロートル「…………」

ベテラン「何でかね……」

ベテラン「ソロの兄ちゃんの方が正しいのは分かってるんだが」

ベテラン「お前の事を応援したかった」

ロートル「…………」 

855 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:57:33 ID:edtHvh.A

ベテラン「けど……俺はそうしなかった」

ベテラン「目の前にある、細い一本のチャンスって名前の紐を掴みたかったし」

ベテラン「面倒事に巻き込まれるのも、お前さん達の関係を悪くするのも避けたかった」

ロートル「…………」

ロートル「……そんなに気にする事じゃないだろう?」

ロートル「流れのハンターなら、当たり前の事じゃないのか?」

ベテラン「まあな……」

ベテラン「だが、テオ討伐の報を聞いて……ものすごく後味が悪くなった」

ロートル「…………」

ベテラン「こんな事……何度もあった、経験したハズなのに」

ベテラン「逃げるテオを見た後のお前の絶叫を どうしても思い出しちまう」

ロートル「!」 

856 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:58:09 ID:edtHvh.A

ベテラン「…………」

ベテラン「ねーちゃん、黄金芋酒、おかわり」

     ハーイ

ロートル「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「すまなかった、ロートル」

ロートル「…………」

ロートル「……いいさ」

ロートル「もう……」

     ガヤ ガヤ… 

857 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:59:01 ID:edtHvh.A


―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 集会所


狩人「さて……新しい猟区、さっそく行ってみるかな」

狩人「……ん?」

狩人「!!」

     ツカ ツカ ツカ!

狩人「おい! あんた!」

ベテラン「あん?」

狩人「その頬の傷……間違いない!」 

858 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 19:59:53 ID:edtHvh.A

狩人「イケメンの兄貴だな!」

ベテラン「っ!」

狩人「あの時はよくも騙してくれたな!」

狩人「騙し取った金、返せ!」

ベテラン「な、何の事だぁ~??」

ベテラン「何か証拠でもあんのか?」

狩人「まだしらばっくれる気か!?」

     ザワ… ザワ… ナンダ? ケンカカ?

ベテラン「い、いいから落ち着けって」

狩人「落ち着いてられるか! だいたいあんたが……」

ロートル「どうした? 狩人?」

狩人「ロートルさん! 聞いてください!」 

859 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:00:42 ID:edtHvh.A

狩人「――という訳で」

狩人「このハンターから、お金を騙し取られたんですよ!」

ロートル「……なるほど」

ロートル「ベテラン、何か反論は?」

ベテラン「反論も何も……俺はこんな奴しらねぇし」

ベテラン「言いがかりは よしてもらいたいってだけだが?」

狩人「この……!」

ロートル「落ち着け、狩人」

狩人「でも、ロートルさん!」

ロートル「いくらやられたんだ?」

狩人「は? ……750z(ゼニー)ですけど」 

860 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:01:26 ID:edtHvh.A

     ゴソ ゴソ…

ロートル「ほら、この財布をやる」

ロートル「中に1000z(ゼニー)くらいは入っているから」

ベテラン「!?」

狩人「はあ!?」

ロートル「金さえ戻れば文句は無いのだろう?」

狩人「え? い、いや、それは……」

ロートル「いいから。 それで抑えておけ」

狩人「…………」

ベテラン「…………」

狩人「……わかりました。 けど」

狩人「そんなハンター、庇っても何もならないと思いますけどね」

狩人「じゃ……」 

861 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:02:37 ID:edtHvh.A

ロートル「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……何してくれてんだよ」

ベテラン「礼なんて言わねぇからな?」

ロートル「ああ。 そんなもの気にしていないさ」

ロートル「狩人の奴は、人を信じすぎるきらいがあるから」

ロートル「お前や俺みたいに、ロクでもない人間が居る事を知らないといけない」

ベテラン「…………」

ベテラン「けっ……だからって、お前にまで不信を抱かせるこたぁねーだろ」

ロートル「そうとも」

ロートル「お前が一番いやがるだろうから、ああしたんだ」 

862 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:03:25 ID:edtHvh.A

ベテラン「…………」

ロートル「…………」

ベテラン「……ロートル」

ロートル「なんだ?」

ベテラン「お前って……いい性格してるな」

ロートル「おいおい。 今頃気がついたのか?」

     ハハハ…

―――――――――――


沼地 BC(ベースキャンプ)


狩人「全く……」

少女「何を怒ってるの? 狩人?」

狩人「ロートルさんの事なんだが……」 

863 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:03:56 ID:edtHvh.A

狩人「――って事があったんだよ」

少女「ふうん……」

狩人「何だってロートルさんは、あんな奴を庇ったんだか……」

少女「それは私にも分からない……けど」

狩人「けど?」

少女「ロートルさんが何の考えもなしに そんな事はしないと思う」

狩人「…………」

少女「きっと、深い何かがあるんだよ」

狩人「……そうかな?」

少女「うん」 

864 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:04:52 ID:edtHvh.A

少女「……世の中ってさ」

少女「何もかもが、こう……善と悪、みたいに分かりやすいモノじゃないし」

少女「そういう風に決めつけて見ちゃうと……世間って、小さく見えて……」

少女「!」

狩人「……?」

狩人「少女?」

少女「……何でもない」

狩人「??」

少女「とにかく」

少女「私たちは目の前の採取クエに集中しないと」

少女「ね?」

狩人「あ、ああ……」

少女「…………」 

865 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:05:27 ID:edtHvh.A

少女「…………」


少女(昔……)

少女(私を引き取ってくれた、おばさんに)

少女(同じ事を言われた……)

少女(…………)

少女(……私は)

少女(悪い奴を悪いと言って何が悪いの!……って)

少女(言い返したっけ……)

少女(…………)

少女(皮肉なものね……) クスッ… 

866 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:06:15 ID:edtHvh.A


―――――――――――



ふもと村 集会所


狩人「あー……戻ってこれた……」

少女「日帰り、行けるかと思ったけど……」

少女「ぬかるみに足を取られて、想像以上に疲れる上に時間も掛かるわね」

狩人「ああ……今度は沼地猟区近くの村に泊まって帰ろう」

少女「マップで見ると森丘猟区より近くなのに……」

少女「……ん?」 

867 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:07:14 ID:edtHvh.A



     ✩急募✩

     調査隊ビバーク品輸送員、護衛のハンターを

     募集しています。

     条件はHR6以上でG級モンスター及び

     古龍との遭遇・戦闘経験のあるハンターです。

     報酬などはギルド員と直接交渉で……





868 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:08:10 ID:edtHvh.A

狩人「調査隊……ビバーク品?」

少女「簡単に言うと食料や体を温める暖房用の燃料の事よ」

狩人「何でそんな物がいるんだ?」

少女「たぶんだけど……」

少女「雪山のかなり奥地まで調べるつもりなんだと思う」

少女「この前も言ったけど、天候の関係で気球観測は出来ないし」

少女「そうなると、食料やその他備品は歩いて持っていくしかない」

狩人「ふむふむ」

少女「でも、一人で運んでいける荷物の量は限界があるし」

少女「それでは限られた距離しか奥に行けないわ」

狩人「うん」

少女「だから中継地点を設けて、そこに食料品や燃料を備蓄しておけば」

少女「より遠くへ行く事ができる様になる」

狩人「なるほど!」 

869 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:08:58 ID:edtHvh.A

狩人「この募集の紙は、それを運ぶ人達の護衛ハンターを求めているのか」

少女「そういう事ね」

狩人「…………」

狩人「……という事は」

狩人「本命の調査隊護衛のG級ハンターも見つかった……という事か?」

少女「うん。 少なくともその目処が立ったのだと思う」

狩人「いよいよ動き出すのか……」

     テク テク テク…

ロートル「狩人」

狩人「あ……ロートルさん」

ロートル「…………」

ロートル「俺とソロとベテランは明日の朝、ビバーク品輸送部隊の護衛で出発する」 

870 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:09:38 ID:edtHvh.A

狩人「!」

少女「!」

狩人「……そうですか」

狩人「ソロさんはともかく、ベテランって、あのハンターですか?」

ロートル「ああ」

ロートル「狩人がどう思っていようが、腕は立つからな」

狩人「…………」

少女「どのくらいで帰ってきます?」

ロートル「一応、往復で約一週間から10日……と言われている」

少女「わかりました」

少女「ふもと村の事は、私たちに任せてください」

ロートル「頼む」 

871 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:10:11 ID:edtHvh.A

     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人「大丈夫かな……」

少女「そういえば……ロートルさん」

少女「この前の遠征について、何も言ってくれないね」

狩人「ああ……」

狩人「あのベテランとかいうハンターに騙されてないといいんだが」

少女「さすがにそれは大丈夫だと思うけど……」

少女「でも今回の急な話。 随分あっさり行くのを決めた気がする」

狩人「いけないのか?」

少女「報酬の部分が曖昧なのが気になるの」 

872 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:10:58 ID:edtHvh.A

狩人「ギルドと交渉……って書いてあるな」

少女「うん」

少女「破格のお金や素材じゃないのが、どうもね……」

狩人「そういうのを求められる、って事じゃないのか?」

少女「確かにそれは考えられる話だけど……」

少女「ごめん、うまく言えない」

狩人「そうか……」

狩人「じゃ、そろそろ俺たちも休むか」

少女「そうね」

少女「お疲れ様、狩人」

狩人「ああ、お疲れ様」 

873 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:53:30 ID:edtHvh.A


※それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣(ゲキリュウノツガイ 火属性)
防具:ガノスU装備一式


ソロ(HR 6)

武器:大剣(ブルーウィング 火属性)
防具:ザザミU装備一式


ベテラン(HR 6)

武器:ランス(シェルクロウランス)
防具:フルフルS装備一式 

874 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:54:35 ID:edtHvh.A


―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ…

ベテラン「よお」

ロートル「おはよう」

ソロ「……おはよう」

ソロ「ベテラン、その武器……火属性じゃないな?」

ベテラン「ああ。 火属性、あるにはあるんだが……まだちょいと力不足なんでな」

ベテラン「迷ったんだが、こっちにした」

ソロ「そうか」

ベテラン「寒い地域のモンスターは、どうも苦手だ……」 

875 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:55:24 ID:edtHvh.A

ロートル「……ハンターの集まりが悪いな」

ロートル「昨日聞いていた通りなら、8人の予定だったと思うが……」

ベテラン「寝坊して遅れてるんじゃねーの?」

ロートル「だったらいいんだが……」

     タッ タッ タッ

観測所員「すみませーん」

観測所員「護衛のハンターさん、何人か風邪を引いてしまって参加できないそうです」

     ザワッ…!

ベテラン「おいおい……大丈夫なのか?」

観測所員「と、私に言われましても……」

観測所員「ですが、全部で5人もいらっしゃいますし」

観測所員「もう予定は変えられないので、このまま出発します」 

876 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:56:40 ID:edtHvh.A

ロートル「……やれやれだな」

ソロ「5……か」

ソロ「何事もなければいいが」

ベテラン「おや? ソロの兄ちゃん、迷信を信じる口か?」

ソロ「多少はな」

ベテラン「へっ……5だろうが、9だろうが、数字は数字」

ベテラン「いちいち気にしてたら、その若さで涼しげなヘアースタイルになるぜ?」

ソロ「……その軽口を叩く癖。 直した方がいいと思うぞ」

ロートル「まあまあ。 その辺りにしておけ」

ロートル「それよりも古龍の情報を優先して貰える、という報酬は魅力だ」

ロートル「参加できなかったハンターは無念だと思っているだろう」 

877 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:57:25 ID:edtHvh.A

ベテラン「おおともよ」

ソロ「……確かにそれは言えるな」

ロートル「昨日話した通り」

ロートル「観測所は今回の騒動の原因、古龍クシャルダオラと見ている」

ロートル「閃光玉は多めに持ってきたか?」

ベテラン「モチのロンだぜ」

ソロ「俺も調合分を含めて持ってきている」

ロートル「よし」

ロートル「もうひとつの候補はラージャンらしいがな……」

ベテラン「そうだったら、おたくら死ぬな」

ロートル「他に鍛えている防具がない……その時は尻尾巻いて逃げるさ」

ソロ「クシャルダオラ前提で考えたからな……」 

878 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:58:17 ID:edtHvh.A


―――――――――――








     3日後の夜











879 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 20:59:10 ID:edtHvh.A





     ビュオオオオオオオオ……





雪山奥地 調査隊中継地点 ビバーク予定地 洞窟テント内


ベテラン「う~さむさむさむ……」

ロートル「見張り、ご苦労さん」

ロートル「あまり旨くないが、モス煮込みだ。 温まるぞ」

ベテラン「ほっ、ありがてぇ……」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「熱っ……はふはふ……ふう……あったまるぜ」 

880 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:00:23 ID:edtHvh.A

ロートル「結局、クシャルダオラは襲来せず……か」

ベテラン「ここらでもドドブランゴのみだったな」

ベテラン「しかも並の奴ばかり……原因の『何か』は、もっと奥地みてーだぜ」

ロートル「…………」

ロートル「……それはしょうがない」

ロートル「モンスターが俺たちの都合を考えてくれる訳はないからな」

ベテラン「ちげーねぇ」

     ハハハ…

ベテラン「……明日はいよいよ帰還、か」

ロートル「何事もなく済めば、それでいいさ」

ロートル「命あっての物種だ」 

881 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:01:02 ID:edtHvh.A

ベテラン「ほお? ずいぶんあっさりしてるな」

ロートル「今回のドドブランゴ襲来で命を落としたハンターは3人も居る」

ロートル「ネコタクアイルーにも犠牲が出た」

ベテラン「…………」

ロートル「俺たちハンター全員が『そうである』必要はないし、強制もできん」

ロートル「が……自分より若いハンターが命を散らさずに済むよう務めるのは」

ロートル「俺たちにとって、最低限の役割なんじゃないだろうか……」

ベテラン「…………」

ベテラン「……かも知んねぇな」

ベテラン「ハンターやってりゃ、誰だってG級目指したいの同じだが」

ベテラン「さすがに今回は、醜態さらしちまった気がする」

ロートル「……そうだな」 

882 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:01:43 ID:edtHvh.A

ロートル「さあ、休んでくれ」

ロートル「時間になったら起こす」

ベテラン「ああ。 休ませてもらうぜ」


―――――――――――


??「……ラン……ベテラン」

??「起きてくれ」

ベテラン「……ん」

ベテラン「…………」

ベテラン「……ソロの兄ちゃん」

ベテラン「……もう……交代の時間か……ふあああっ」

ソロ「違う」 

883 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:02:30 ID:edtHvh.A

ベテラン「はあ?」

ソロ「ともかく、起きて外に出てくれ」

ソロ「帰り道が無くなった」

ベテラン「……何言ってるんだ?」

ソロ「いいから早く」

ベテラン「??」

―――――――――――

     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「起きたか、ベテラン」

ベテラン「……どうした、ロートル?」 

884 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:03:34 ID:edtHvh.A

ロートル「しっ……声を絞れ、ベテラン」

ベテラン「はあ?」

ロートル「百聞は一見にしかず……とりあえず、声を上げないように」

ロートル「あの巨大モンスターを見てくれ」

ベテラン「……!?」

ベテラン(巨大モンスター!?)

ソロ「…………」

     スッ…

ベテラン「」

ベテラン「なっ……何だ、ありゃ……!?」

ベテラン「あんなの知らねぇぞ……!?」 

885 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:04:16 ID:edtHvh.A



     ベテランが驚くのも無理は無かった。

     いつの間にか吹雪は止み、視界が開けていたのだが

     ロートルに促(うなが)され、岩の影からこっそりと覗いたら

     昨日、自分たちが来た道を塞ぐように

     巨大な『何か』が横たわっていたのだ。



     ……いや、もっと正確に言うと

     寝息を立て、寝ていたのだ。





886 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:05:21 ID:edtHvh.A



     大きさは縦に約10~15m。

     丸まっているので全長は推定だが、尻尾を含めると

     軽く50mは超える、と、言ったところか……



     そいつは全身を真っ白なウロコ状の甲殻に包まれ

     全体的に流線型の体型をしている。

     特徴的なのは顔面の顎。

     スコップ状の形で、そのまま地面を掘れそうな感じだった。





887 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:06:11 ID:edtHvh.A

ロートル「俺も見た事がない」

ロートル「吹雪が止んだので、帰り道の確認をしに来たら」

ロートル「『あれ』が居たんだ」

ベテラン「…………」

ベテラン「……今回のドドブランゴ騒動は」

ソロ「ああ……たぶん『あいつ』のせいだろう」

ベテラン「…………」

ベテラン「しかしでかいな……ラオシャンロンくらいは ありそうだ」

ロートル「……ともかく、これはまずい事になった」

ロートル「ラオシャンロンは国の軍隊の協力や準備してた防衛設備」

ロートル「そしてHR関係なく、ハンター総出で事に当たって何とかしているのに」

ロートル「あんな奴、たった5人のハンターで相手にできるモンスターじゃない」 

888 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:07:12 ID:edtHvh.A

ソロ「ましてや、どんな攻撃をするかもわからん」

ソロ「しかも……」

ベテラン「くそったれ……帰り道を塞がれたら、逃げる事もできねーじゃねーか」

ロートル「その通りだ」

ロートル「ともかく今は、奴がどう動くか見極めてからでないと行動できん」

     スタ スタ スタ…

観測所員「何事ですか? こんな朝早く……」

ロートル「しっ……静かに」

ロートル「見た事もない巨大モンスターが寝ている」

観測所員「!!」

ロートル「ゆっくりと……息を殺して『何』なのか、見極めてくれ」

観測所員「……わかりました」 

889 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:07:57 ID:edtHvh.A


     スッ…


観測所員「……!!」

ロートル「……どうだ? 何か分かるか?」

観測所員「…………」

観測所員「……わ……私の記憶が正しければ」

観測所員「あれは……おそらく……」



観測所員「崩竜……ウカムルバス……!」



一同「…………」

ロートル「崩竜ウカムルバス……詳しい情報はあるか?」 

890 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:08:47 ID:edtHvh.A

観測所員「残念ながらありません」

観測所員「ウカムルバスが最後に確認されたのは……確か50年くらい前で」

観測所員「当時の雪山周辺は、まだ未開の土地……」

観測所員「ラオシャンロン同様、何年かに一度の割合で回遊しているのではないか?」

観測所員「と、推測されただけです」


一同「…………」


ロートル「ほぼ、情報はなし、か……」

ソロ「ラオシャンロンと同じように回遊する、と推測した根拠はあるのか?」

観測所員「……大きさから、そう推測されたと記憶してます」

ベテラン「こいつはキツいねぇ……」 

891 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:09:55 ID:edtHvh.A

ベテラン「こっちは戦える奴は5人。 非戦闘員は多数」

ベテラン「おまけによく知らねぇ デカブツ相手で、逃げ道が塞がれちまったときた」


一同「…………」


ロートル「ともかく、確かめたい事もある」

ロートル「一度ビバーク地点まで下がるぞ」

―――――――――――

     ザワ ザワ… ドウスンダヨ…

ロートル「みんな、落ち着いてくれ」

ロートル「ここは洞窟で、とりあえず奴には見つからない」

     …………

ロートル「よし」 

892 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:10:47 ID:edtHvh.A

ソロ「ロートル」

ロートル「戻ったかソロ」

ロートル「どうだった?」

ソロ「残念だが……お前の懸念が当たっていた」

ソロ「観測所員の話だと、計画されていたルートは」

ソロ「8年前の雪山奥地探索ルートを元に作られているが」

ソロ「ざっと調べた限り、奴の通った跡は見事にそのルートに沿っていた」

ロートル「……そうか」

ベテラン「俺たちは、やっこさんの通った獣道を探索ルートに選んでいたって事か……」

ロートル「回遊する、という言葉を聞いて、ふと、な……」

観測所員「……通りで通りやすいわけですね」

ロートル「…………」 

893 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:11:20 ID:edtHvh.A

ロートル「俺の考えとしては、3つある」

ソロ「……聞こう」

ロートル「一つ目は、迂回ルートを選択して一刻も早く帰還する、だ」

ロートル「だが、これは予定されていないルートを通る事になる為」

ロートル「遭難の危険性があるし、たぶん時間もかかる」

ロートル「そうなったら手持ちの食料や燃料が、どこまで持つか不安になる」


一同「…………」


ロートル「二つ目は、ここで救助を待つ事」

ロートル「ウカムルバスの目的は何なのか分かっていないので」

ロートル「ふもと村の方向へ向かっている、とも言い切れない」

ロートル「ここには調査隊本隊の食料や備品もあるので」

ロートル「原状、我々が一番安全な方法とも言える」 

894 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:12:08 ID:edtHvh.A

ロートル「しかし……奴がふもと村の方角へ向かっていった場合」

ロートル「俺たちの救助は遅れに遅れる事が予測される」


一同「…………」


ロートル「最後の選択肢だが……」

ロートル「俺たちハンターが奴の囮となり、非戦闘員たちだけで帰還してもらう事」


一同「!!」


ロートル「……正直、一番危険な策だと思う」 

895 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:12:54 ID:edtHvh.A

ロートル「囮になるハンターはもちろん、逃げる非戦闘員も」

ロートル「ギアノスやブランゴ等のモンスターの脅威にさらされる」


一同「…………」


ロートル「だが同時に最も早く、迫ってくるウカムルバスの危険や」

ロートル「救助の求めを伝えられる可能性が高い」

ロートル「同じルートを進んでくる後発隊に接触できるしな」


一同「…………」


ロートル「他に何か、いい考えはあるだろうか?」

観測所員「……ひとつ聞きたいんですが」

ロートル「何だ?」 

896 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:14:50 ID:edtHvh.A

観測所員「囮になったハンターは……どうなるんですか?」

ロートル「もちろんあいつを適当にあしらったら……」

ロートル「ここで救助を待つさ」

ロートル「死ぬつもりなんて、これっぽっちもない」

観測所員「…………」

観測所員「私は……3つ目の選択肢を選びます」

     ザワ…!

ベテラン「……こいつは意外だったな」

ベテラン「一番反対すると思ってたぜ」

観測所員「私だって安全に行きたいですよ」

観測所員「でも……ふもと村含め、この脅威を雪山周辺の皆さんは知りません」

観測所員「リスクを冒してでも、伝えなければならない事だと思います」 

897 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:15:29 ID:edtHvh.A


一同「…………」


ロートル「ハンター含め、みんなもよく考えてくれ」

ロートル「自分が『どうすべき』なのかを……」


一同「…………」


―――――――――――


約一時間後

ウカムルバス 就寝地点


     グルルル…zzz グルルル…zzz




898 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:16:27 ID:edtHvh.A

ベテラン「……まだ寝てやがるな」

ロートル「どの道、あいつが起きだしたら俺たちが通ってきたルートを進む」

ロートル「退路を絶たれてるのは変わらんさ」

ベテラン「へっ……違ぇねぇ」

ベテラン「なら、こっちの思惑通り動いてもらおうぜ」

ロートル「ああ。 手はずは?」

ソロ「できている」

ソロ「例の洞窟で非戦闘員は待機して、合図を待っているぞ」

ロートル「そうか……」

ベテラン「じゃ……最終確認と行くか」 

899 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:17:01 ID:edtHvh.A

ベテラン「俺たちハンターは、囮としてあのデカ物をこの先の開けた窪地へ誘導」

ベテラン「その隙に非戦闘員は元来た道を使って帰還」

ベテラン「大体はこうだな?」

ロートル「ああ」

ロートル「しばらく奴に付き合って、時間を稼ぐが」

ロートル「俺たち囮のハンターは、あの洞窟に立て籠って救助を待つ」

ベテラン「合図は大タル爆弾で……だったな?」

ロートル「雪崩が心配だが、他に手段がないからな……」

ベテラン「……よし」

ベテラン「そろそろ、おっぱじめるとするか」

ソロ「……いつでもいいぞ」

ロートル「わかった」つ(ペイントボール)

     ブンッ ……―――ンッ ベチャ! 

900 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:18:09 ID:edtHvh.A


     グルルル…


ベテラン「おーおー……あのでかい図体で、あんなのでも起きるんだな」

ロートル「先に行け」つ(強走薬グレート)

     グビッ …シュインッ!

ソロ「わかった。 気をつけろよ」

ベテラン「頼んだぜ!」

     タッ タッ タッ…

ロートル「……ああ」 

901 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:19:49 ID:edtHvh.A

※ここで ウカムルバス戦闘 のBGMを流すといいかもです。 

902 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:20:34 ID:edtHvh.A



     ゴアアアアアアアッ!!



ロートル(まずは威嚇……定番だな)


     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


ロートル「!?」

ロートル「くっ……!」 回避!

ロートル(思ったより素早い……あの図体で かなり動けるみたいだな)

ロートル「はあっ!」

     ズバッ! ズバッ! 

903 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:21:15 ID:edtHvh.A

ロートル「…………」

ロートル(こんな程度じゃ全然ダメージにならんな……)

ロートル(ラオシャンロンもハンターに切り刻まれながら)

ロートル(その歩みを止めないと聞く……)


     ガアアアアアアアアアアッ!!


ロートル「!!」

ロートル(どうやら、こいつは気が短いらしい)

ロートル「くっ!」

     ダダダダダダダダッ!

――――――――――― 

904 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:22:06 ID:edtHvh.A

ベテラン「おっ……もう来た」

ベテラン「どうやら頭に血が上りやすい質(たち)の様だな」

ソロ「かえって好都合だ」

ソロ「そっちの準備はいいか!?」


     他のハンター達(ガンナー)は手を挙げて

     OKのサインを送りかえす。


ソロ「よし……」

ソロ「…………」

ソロ「…………」

ソロ「…………」

ソロ「今だ!!」 

905 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:22:42 ID:edtHvh.A


     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

     ドオオオオオオオンッ!!


ベテラン「しゃ! いいタイミングだぜ!」

ソロ「これだけ引き離せば大丈夫だろう」

―――――――――――

ロートル「!」

ロートル(どうやら、作戦の第一段階は成功のよう……)

ロートル「……!?」 

906 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:23:35 ID:edtHvh.A



     不意に

     ウカムルバスは、ロートルから目を離す。

     何かに気がついた様に自分の後方へと目線を移すと

     その方向へ自分の体の向きを変えた。



ロートル「な……何だ?」

ロートル「…………」

ロートル「!!」 

907 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:24:33 ID:edtHvh.A



     その目線の先には――

     慌てて洞窟から逃げ出そうとする非戦闘員達の姿が見える。



     この距離で、俺というハンターを目の前にして

     なぜそっちへ……というロートルの疑問は

     次の瞬間、すぐに分かる事となった。





908 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:25:20 ID:edtHvh.A






     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!






ロートル「――っ!!」

ベテラン「」

ソロ「」 

909 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:26:26 ID:edtHvh.A



     たぶん水ブレス……

     ガノトトスが使う、貫通性の高い、直撃を食らうと

     下位の防具なんぞ簡単に穴を開けるヤバイやつ。

     アレだ。 それはすぐわかった。



     だが、破壊力が比較にならない!!



     ブレスを吐いた途端、地面の氷や大岩を巻き上げ

     大地ごと非戦闘員達の姿が……消えてしまった!!





910 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:27:18 ID:edtHvh.A

ベテラン「マ……マジかよ」

ソロ「…………」

ロートル「…………」


     モンスターの驚異的な力は

     ハンターであれば、誰でもある程度は分かっている。

     が……

     こいつ……ウカムルバスの この攻撃は

     想像をはるかに超えた破壊力だった。

     故に……ハンター達の動きが一瞬止まる――


ソロ「……!」

ソロ「ロートル! 止まるな!」

ロートル「っ!!」 

911 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:28:02 ID:edtHvh.A


     ブオッ!


ロートル「うおっ!」 回避!


     すんでのところでウカムルバスの前足攻撃を避けるロートル。


ロートル「はあっはあっはあっ……」

ロートル(くそっ!)

ロートル(非戦闘員の安否確認に行きたいが……おそらく全員……)

ロートル(…………)

ロートル(完全に俺の見積りが甘かった)

ロートル(どうする?)

ロートル(あの洞窟に逃げ込んでも あの攻撃をやられたらおしまいだ!) 

912 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:28:48 ID:edtHvh.A

ベテラン(これで本当の意味で逃げ場が無くなったな……)

ベテラン(もう囮なんて意味がねぇ)

ベテラン(できる選択肢は……)

ソロ(残った5人でそれぞれ逃げ散るか……)



     戦って勝つしかない!



ベテラン(……正直、あいつに手を出した瞬間、終わっていたのかもな)

ソロ(まさか……ラオシャンロン以上の化物が居るとは……)

ロートル(くそったれ……!) 

913 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:29:38 ID:edtHvh.A



     だが、ロートル達以外のハンターは

     『逃げる』という選択を選んだ。

     振り返り、ウカムルバスを確認しながら逃走するハンター達……



ベテラン「ちっ……あいつら!」


     そう舌打ちしつつ、ベテランも気持ちはよく分かっていた。

     が、すぐにその選択は正しくない事を悟る。




914 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:30:33 ID:edtHvh.A






     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!








915 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:31:26 ID:edtHvh.A



     逃げ出したハンター達は文字通り

     『消し飛んだ』……

     通常、モンスターに限らず

     獣という存在は、逃げるものほど追いかける性質がある。

     決して間違いではないが、今回の場合は

     『一斉に別方向へ』逃げないと意味がないのだ。





916 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:32:17 ID:edtHvh.A

ロートル「くそぉっ!!」

     ズバッズバッズバッ!!

ベテラン「ちくしょおおおおおおおおっ!!」つ(ランス)

     ドドドドドドドドドドッ!!(突進攻撃)

ソロ「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

     ドガアッ!!


     ガアアアアアアアアアアアッ!!


ベテラン「!?」

ロートル「!?」

ソロ「!?」 

917 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:33:07 ID:edtHvh.A


     ほとんどなし崩し的に……いや

     ヤケクソ気味に攻撃を仕掛けたロートル達。


     だが、ウカムルバスの行動に異変が見えたため

     若干引いて様子を見る。


     ズズウゥ……


ロートル(あの巨体で立ち上がるのか……!)

ベテラン(だが、そんなのはラオシャンロンだってやってるぜ!)

ソロ(ラオシャンロンなら……大きな隙になったはず!) 

918 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:33:42 ID:edtHvh.A



     ロートル達は、ラオシャンロンの例に当てはめ

     この後、咆哮を仕掛け 長い時間の隙があると予測した。

     確かにその予測は間違いでは無かった。





     ゴアアアアアアアッ!!




ロートル「ぐっ!?」

ベテラン「がっ!?」

ソロ「ごふっ!?」 

919 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:34:14 ID:edtHvh.A



     見えない壁に体を叩き付けられた様な衝撃……!

     これはティガレックス等に見られる

     強烈な咆哮による音波ダメージと原理は同じだ。

     しかし、これもティガとは比較にならないほど強力で範囲が広い!

     ロートル達は、完全に間合いを見誤り

     それぞれの後方へ吹き飛ばされる!



ベテラン「く……くそっ……たれ……!」

ベテラン「は、反則……だろ……こんなの……」つ(回復薬G) グビッ

ロートル「はあっ……はあっ……」つ(回復薬G) グビッ

ソロ「ぐっ……くっ……」つ(回復薬G) グビッ 

920 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:35:18 ID:edtHvh.A

ソロ「…………」

ソロ「…………」 ゴソゴソ…

ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「閃光玉……!」

ソロ「……効いてくれたか」

ロートル「これで、とりあえず一息つけるな……」

ソロ「ロートル。 このまま逃げてくれ」

ロートル「!?」

ベテラン「…………」 

921 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:35:52 ID:edtHvh.A

ロートル「何を言って……」

ソロ「俺たちの中……大剣、ランス、双剣で一番身軽なのはお前だ」

ロートル「……!」

ソロ「俺はありったけの閃光玉でお前を援護する」

ソロ「もう一度 強走薬を飲んで、この場から脱出しろ」

ロートル「し、しかし!」

ベテラン「そういう事なら、お任せするぜ。 ソロの兄ちゃん」

ソロ「…………」

ロートル「! ベテラン……お前!」

ベテラン「ほれ、やっこさん、もう治ったみたいだぜ?」 

922 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:36:37 ID:edtHvh.A


     グルルル…


ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「ロートル、ここで俺たちが全滅したら」

ソロ「誰がウカムルバスの驚異を伝えるんだ?」

ロートル「!!」

ベテラン「……そういうこった」

ベテラン「んじゃ、俺は行くぜ!」

     タッ タッ タッ…

ロートル「だ、だが! ソロ!」 

923 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:37:19 ID:edtHvh.A

ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「早くしろ」

ソロ「そう長くは持たない」

ロートル「……っ」

ロートル「…………」

ロートル「……生きろよ、ソロ」

ソロ「ああ。 頑張るさ」

     ダッ!! 

924 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:38:14 ID:edtHvh.A


     ガアアアアアアアアッ!


ソロ「例の水ブレスは、撃たさせんぞ!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…

―――――――――――

ソロ(これで……最後!)つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…



925 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:38:51 ID:edtHvh.A

ソロ「…………」

ソロ(ロートル……どのくらい逃げられただろうか)

ソロ(…………)

ソロ(あんたには振り回されてばかりだった気もするが)

ソロ(救われた事も多かった……)


     グルルル…


ソロ(…………)

ソロ(……そういや礼。 言ってなかったな……)

ソロ(あんたとの狩りは、いつだって)

ソロ(楽しかった) 

926 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:39:33 ID:edtHvh.A

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「!?」

ソロ「閃光玉!? いったい誰が……」

ベテラン「黄昏(たそがれ)てんじゃねーよ、ソロの兄ちゃん」

ソロ「ベテラン!?」

ベテラン「よっ……と!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…



927 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:40:36 ID:edtHvh.A

ベテラン「もう、ほとんど一瞬で回復してるな……」

ソロ「…………」

ソロ「なぜ……」

ベテラン「おりゃ」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「……何でだろうな」

ベテラン「けどよ」

ベテラン「俺だって……ハンターの端くれだ」

ソロ「…………」 

928 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:41:23 ID:edtHvh.A

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン(…………)

ベテラン(俺は……出来のいい弟にいつも比べられていた)

ベテラン(そいつは弟のせいじゃねぇ。 んなこたぁ分かってる)

ベテラン(けど……足掻けば足掻くほど、惨めな結果に終わっていった……)

ベテラン(……そしていつしか、それも恥とは思わなくなった)

ベテラン(…………)

ベテラン(最後くらい……カッコつけても)

ベテラン(いいだろーよ……) 

929 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:42:08 ID:edtHvh.A

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「これで手持ちが尽きた!」

ベテラン「調合するから、しばらく頼んだぜ!」

ソロ「分かった!」


     ガアアアアアアアア!


ソロ(立ち上がった! また咆哮か!) 

930 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:42:59 ID:edtHvh.A


     咆哮が来る。

     そう判断したソロは、大剣で防御姿勢を取る。

     が……大剣の防御姿勢は、目の前に大剣をかざす為

     一時的に視界を遮ってしまう、という些細な弱点があった。


ベテラン「!!」

ベテラン「違う! 咆哮じゃない!」

ベテラン「逃げ――」 

931 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:43:50 ID:edtHvh.A





     ド  ズ  ン  ッ !!





     立ち上がったウカムルバスは

     そのままソロに対し、ボディプレスを仕掛けてきた。

     ウカムルバスの重量は見た目の推測でも

     おそらく1000tは下らないだろう。

     防御なんて関係ない。

     ソロは……防御ごとウカムルバスに押しつぶされてしまった……





932 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:44:49 ID:edtHvh.A

ベテラン「くそったれ!!」



     目の前で起こった出来事を悲しんでいる暇すらない。

     早く調合を終えないと、次、ああなるのは自分だ!

     ベテランはそう思って調合を急いだのだが……


     そのせいで、ウカムルバスが尻尾を振り上げたのに

     気が付くのが遅れた。



ベテラン「っ!」

ベテラン「テールアタックか!?」

ベテラン(だが、さすがにこの距離なら――) 

933 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:45:37 ID:edtHvh.A



     ズ  ゴ  オ  ッ !!



ベテラン「がっ……!?」

ベテラン(うそ……だろ……)

ベテラン(………まさか…ここまで)

ベテラン(とどく……なんて……!)

     ドサッ!

ベテラン「がふっ!!」

ベテラン「…………」

ベテラン「ゲボォッ……」 ビチャビチャ… 

934 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:46:28 ID:edtHvh.A

ベテラン(…………)

ベテラン(あー……こりゃ……体中の骨……逝ったな……)

ベテラン(…………)

ベテラン(痛いんだか……だるいんだか……)

ベテラン(もう……わかんねぇ……な)


     ガアアアアアアアア!


ベテラン(…………)

ベテラン(…………)

ベテラン(へっ……ソロの……兄ちゃんよぉ……)

ベテラン(どうやら……5って……数字……)

ベテラン(迷信なんかじゃ……無かった……みた) 

935 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:47:20 ID:edtHvh.A






     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!








936 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:48:01 ID:edtHvh.A


―――――――――――


ロートル「はあっはあっはあっ……」

ロートル(強走薬が切れたか……)

ロートル(…………)つ(強走薬グレート) グビッ

     シュイン!

ロートル(…………)

ロートル(……くそ)

ロートル(休んでいられん)


     ビュオオオオオオオ……


ロートル(天気まで悪くなってきた……)

ロートル(…………)

     タッ タッ タッ… 

937 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:48:44 ID:edtHvh.A


―――――――――――







     数日後










938 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:49:24 ID:edtHvh.A

午前中

ふもと村 加工店


職人「どこかキツいところは無いか?」

狩人「ええ、大丈夫ですよ」

狩人「オウビートS装備、いい感じです」

職人「そうか」

職人「そっちはどうだい?」

少女「……大丈夫です」

少女「デザイン以外、問題ないですよ」

職人「はっはっはっ!」

少女「…………」

狩人「お、俺は可愛いと思うぞ、うん!」 

939 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:50:14 ID:edtHvh.A

少女「……どうしてパピメルS装備って」

少女「蝶蝶(ちょうちょ)の羽みたいなデザインになるんですか?」

職人「そりゃ女性用の防具だからだよ」

職人「オウビートに比べて、より軽量化したり」

職人「体型に合わせた結果、こうなるんだ」

狩人(……その理屈が全然わかりませんけどね)

少女(……同じ素材なのに、どう見ても別物なんですけど)

少女「ともかく、ありがとうございました」

少女「デザインは別にしても ようやく上位の防具ができたわね」

狩人「ああ。 ありがとう職人さん」

職人「どういたしまして」 

940 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:50:52 ID:edtHvh.A


―――――――――――


狩人「さて、これからどうする?」

狩人「俺はできたら、沼地のフルフルをやりたいんだが……」

少女「…………」

狩人「少女?」

少女「きょ、今日は……休まない?」

狩人「……まだ気にしてるのか」

狩人「あれは一応、誤解を解いたと思うが……」

少女「…………」/// 

941 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:51:33 ID:edtHvh.A

狩人(いつだったか……)

狩人(俺の髪の毛目当てで女の子ハンターが寄ってきた事があるが)

狩人(昨日、集会所で少女も欲しいと言ってきた)

狩人(……ここまでは問題なかったんだけど)

狩人(『代わりに私のも挙げるね』と言った事で、集会所が静まり返った)

狩人(俺と少女は訳が分からなかったけど……)

狩人(たまたまそこに居あわせた女が説明してくれた)

少女(……何で女の子が男にあげる場合は『下の毛』限定なのよ)///

少女(顔から火が出るほど恥ずかしかった……)///

狩人(……通りで少女にクレクレ言う男ハンターが居ない訳だ)

狩人(そんな奴、ただの変態でしかないからな……) 

942 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:52:05 ID:edtHvh.A

少女「……もう恥かきついでに」

少女「これ……あげるわ」つ(お守り)

狩人「え?」

少女「わ、私の髪の毛よっ」///

少女「言っとくけど、下品なモノは入れてないからね!?」///

狩人「! ……あ、ああ」///

狩人「ありがとう、少女。 嬉しいよ」///

少女「そ、そう……」///

少女「…………」///

少女(……ほ、本当は)///

少女(一本だけ……)/// 

943 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:52:52 ID:edtHvh.A

狩人「じゃあ……どうする?」

狩人「今日は休むか?」

少女「うん。 お願い」

狩人「わかった」 クスッ

少女「ふふっ」 ニコッ


     ガアアアアアアアア……


狩人「!?」

少女「!?」

     ザワッ…

狩人「今の……何だ!?」

少女「分からない。 分からないけど……」 

944 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:53:51 ID:edtHvh.A








     モンスターの叫び声なのは間違いない。










945 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:54:45 ID:edtHvh.A

狩人「いったいどこから……」 キョロキョロ…

少女「…………」





     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!






狩人「」

少女「」 

946 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:55:30 ID:edtHvh.A



     その日は、さ……

     天気も良くて、爽やかな風も吹いて

     本当にいい日になるなって、そんな気持ちにしかなれない

     穏やかな日だった。



     ……けど






947 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/13(月) 21:56:21 ID:edtHvh.A




     この一撃で……

     それは、ただの幻想だって……



     思い知らされる事になったんだ……





次回 狩人「目指すは伝説級ハンター!!」 後編