2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:34:26.91 ID:ZtZ9RHeg0
アンパンマン「なんだこれは……」

 町にパトロールに来ていたアンパンマン。
 そこに広がっていた光景は信じがたいものだった。
 ちびぞうの鼻は折れ曲がり、うさ子の自慢の耳はうさぎであるにもかかわらず犬のように縮こまっている。
 カバオの鼻の穴は顔面を覆いつくし、りんごぐらいなら軽く入りそうだ。
 そのほかにも、顔が赤く膨れ上がった仲間たち……。
 町の子供たちの多くが、奇形になっていた。

アンパン「ばいきんまん……流石にこれは許されないぞ!」

カバオ「あ、んばんまん……ぼぐ、ごんなんじゃ、鼻がらじか食べられないよぉ……」

アンパン「ぐ……これはジャム師匠に報告だ」ピュー

引用元: アンパンマン「正義ってなんなんだ……」 



 

 
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:35:08.90 ID:ZtZ9RHeg0
――パン工場――

ジャムおじさん「なんだって!?」

しょくぱんまん「きっとばいきんまんが町に病原菌を撒いたんでしょう」

バタコさん「それにしても今回は随分悪質ね……」

カレーパンマン「ハッハーーーーーーーーーー!!」

メロンパンナ「カレーパンマン、うるしゃぁい」

アンパン「バイキン城にみんなを治せる薬があるかもしれない……。みんな、行くぞ! 町の平和を守るため! 悪をこの手で打ち倒すため!!」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:35:43.28 ID:ZtZ9RHeg0
――バイキン城――

ドキンちゃん「なにこれ、まっずーーーーい!」ムシャムシャ

ばいきんまん「せっかく盗んできたのに……なんかしつこい味なのだ」

ホラーマン「ホラ~、食えたもんじゃないんデスねぇ」

ドキン「ばいきんまん、口直し盗ってきて!」

ばいきん「オレさま少し休みたいのだ……」

ドキン「アタシの言うことが聞けないっていうの!?」

ばいきん「わーわかったわかったって!」

ドキン「それじゃ、お願いね♪」

ばいきん「へいへい」ピュー

ホラー「ばいきんまん、忘れ物デスよ」サッ

 ホラーマンの投げた武器をばいきんまんは受け取る。

ばいきん「ありがとよ!」ピュー

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:36:27.12 ID:ZtZ9RHeg0
アンパン「ばいきんまん! 出てこい!」

ドキン「あら、今ちょうど出かけたわよ~」

アンパン「一足遅かったか!」

しょくぱん「やあ、どきんちゃん。君に会いに来たんだよ……」

しょくぱん「例え胸の傷が痛んでも!」

ドキン「しょくぱんまん様~!」

アンパン(それは僕のテーマソングだろうが……)

アンパン(てか、どこに胸の傷なんてあるんだ……)

ドキン「胸の傷……? 大丈夫なんですか!?」

しょくぱん「むむ、どうやらこの胸の痛み……今始まったようだ」

しょくぱん「君の瞳を見て、心臓が胸を打ちつけているのさ」キラッ

ドキン「しょくぱんまん様///」

アンパン「…………」

アンパン「ばいきんまんはいなかったんだ……帰るぞ!」

しょくぱん「もう離さない……」

ドキン「はい////」

アンパン「帰るぞ!」

ホラー「あなたたち、ばいきんまんを探してるんデスか?」

カレーパン「ホネwwホネwwコッウェーーーーイwwww」

アンパン「君は黙っていろ」

アンパン「ホラーマン、居場所を知っているのか?」

ホラー「ホラ~、ばいきんまんなら月に行ったデスねぇ」

アンパン「なんだと……恩に着るぞホラーマン!! 行くぞ二人とも! 悪には正義の鉄槌を!」

しょくぱん「ではドキンちゃん、また今宵、ベッドの上で」サッ

ドキン「はい///」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:37:03.11 ID:ZtZ9RHeg0
ホラー「さっきの話、本当なんデスか?」

ドキン「さっきの話って?」

ホラー「ホラ~、今夜ベッドでっていう……」

ドキン「うん。しょくぱんまん様はソフトなパンに見えて、実は夜はハードなの///」

ホラー「あのやさ男め……ただ遊ばれてるんデスよ」

ホラー「あなたのすぐそばに、もっと『骨のある男』がいることをお忘れなく」ボソッ

ドキン「……すぐそば? まさかばいきんまんのこと?w」

ホラー「そうじゃなくて……」

ドキン「あんな童貞に興味ないわw」

ホラー「ぐ…………」

ホラー「ホラ~、ばいきんまんのこと、気にいらないんデスか……?」

ドキン「都合のいい男ではあるけどね~」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:38:02.33 ID:ZtZ9RHeg0
――月――

しょくぱん「ここは月なのに、美しい花が咲くようですね……あ、これは失礼! 花ではなく、ムーン姫でしたか!」

ムーン姫「まあ、しょくぱんまんさんったら///」

アンパン「君はいつもそうやって誑かして……他の女の子に不誠実だとは思わないのか!」

しょくぱん「ふふ、すみません。あいつ少し固すぎでね……もっとソフトにいかなきゃダメですよね」

ムーン姫「はぁ……」

カレーパン「ココココ! ばいきん!? アン!?」ブワー

ムーン姫「キャッ、臭い! なんなんですの、この人は!?」

姫の家来「姫に何をするか! 捕えろ!!!」

しょくぱん「ままま待ってください! こいつはただ、ばいきんまんがここに来たか聞きたかっただけなんです!!」

ムーン姫「しょくぱんまんさんがそうおっしゃるなら……下がりなさい!」

姫の家来「ハハッ」

しょくぱん「なんでこいつ連れてきたんだ……話がややこしくなるだけだろ」コソッ

アンパン「仕方ないだろ……この前カレーパンマンをパン工場に残して出かけた時、ジャム師匠を困らせたそうなんだ……」コソッ

しょくぱん「だからってなぁ……」

ムーン姫「どうされましたの?」

しょくぱん「ああ、ばいきんまんはここに来なかったのかなって!」

ムーン姫「ええ……先ほど家来に調べさせたのですが、月にすら来てませんのよ」

しょくぱん「え!? そうですか……」

ムーン姫「そんなことどうでもいいんですの。しょくぱんまんさん……わたくし、一目見て決めましたわ」

しょくぱん「?」

ムーン姫「その……わたくしと……契りを交してくださいまし!」

姫の家来「!?」

しょくぱん「喜んで」

アンパン「おい待て」

しょくぱん「何だ君は! 誰も僕たちの運命を邪魔できないッ!」

ムーン姫「そうですわ!」

アンパン「よく考えろ。姫と結ばれるというのはどういうことだ? 君はこの国の王になるってことだぞ。君にそれほどの甲斐性があるのか?」

ムーン姫「そんなこと、しょくぱんまんさんは気にも留めませんわ!」

しょくぱん「あ、それは無理ですね」

ムーン姫「えーーーーーーーーーーーーーーーー」

しょくぱん「僕が王になることはできないんです(王なんかになったら他の女に手が出せんからな)」

ムーン姫「どうしてですの!?」

しょくぱん「すみません。僕は平和を守るため、決して身を固めることはできないのです」キリッ

ムーン姫「王になって平和を守ればいいんですわ!」

しょくぱん「僕は呼ばれればすぐにどこにでも駆けつけなくてはなりません。そんな不安定な身で、王は勤まらないのです」

ムーン姫「それならば、仕方のないことね……」

しょくぱん「それでも……愛しています(いや待てよ……王になったらそれはそれで側室がいるから……あ、いや、もう訂正できない空気だ)」

ムーン姫「わたくしもですわ……きっとまたどこかでお会いましょう」ウルウル

アンパン「しょくぱんまん……君にもそんなに平和を愛する心があったんだな……」ウルウル

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:38:39.36 ID:ZtZ9RHeg0
――町の学校――

 ばいきんまんは草陰から学校を見張っている。

ばいきん「給食が不味いことなんてありえないのだ! 盗めばドキンちゃんも絶対に喜んでくれるのだ!」

ばいきん「ヒヒヒ、オレさまって天才~ww」

ばいきん「お、あれはアンパンマン号!」

 ガラガラガラガラガラガラガラガラ……

ジャム「今日はしょくぱんまんの代わりに、私たちが届けに来たよ~」

バタコ「おいしいパンよ!」

みみ先生「………………」

子供たち「………………」

ジャム「お聞きしていた通りですね……」

 ばいきんまんの目に映ったのは、学校から出てきた歪な形をした子供たちの姿だった。

ばいきん「な、なんじゃありゃああああああああ!」

バタコ「そこに誰かいるの!?」

ばいきん「むぐ………………」

バタコ「気のせいかしら」

ばいきん(ひゅー、あぶねーあぶねー)

ばいきん(それにしても、なんだあいつらは……まるで顔面設計ミスなのだ)

ジャム「私の思いを込めてこねたパンです。少しでも笑顔が増えれば……」

みみ先生「…………」ウゥッ、ウッ、シクシク

バタコ「もしかして、口が……」

ジャム「喋れなくなってしまったんですか……」

バタコ「くそぅ……ばいきんまんめ!」

ばいきん(待て待て! オレさまは何もしてないのだ!)

みみ先生「…………」ウウッ

 給食を受け取らず、涙ながらに学校の中に去っていくみみ先生。

ジャム「…………」

ばいきん「学校が給食を貰わないなら、オレさまが貰ってやるぜええええ!!」バッ

バタコ「ばいきんまん!」

ばいきん「さあ、そのパンをよこせぃ!」

ジャム「ダメだ! これは学校のみんなに食べてもらうんだ!」

ばいきん「うるさいうるさいうるさ~い」バッ

ジャム「やめるんだ!」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:40:12.05 ID:ZtZ9RHeg0
――上空――

アンパン「ばいきんまん、月にはいなかったなあ」

しょくぱん「ホラーマンがホラ吹きだということを忘れてたよ」

カレーパン「ホラーマンだけにホラ吹きかwwww」ブワー

しょくぱん「うっ、臭っ」

アンパン「なあカレーパンマン、姫の前であんな態度取っちゃダメだろ」

カレーパン「そうか? 俺は楽しいぜwwww」

アンパン「ダメだ……会話にならん。最近どうしちまったんだ? おかしいぞ」

しょくぱん「まさか……」

アンパン「しょくぱんまん、多分僕も同じことを思っている。つまり――」

しょくぱん「ばいきんまんのウィルスが頭の中に」

アンパン「そういうことだ」

アンパン「……って、おい! あれを見ろ!」

しょくぱん「あれって……あ! ばいきんまんじゃないか!」

アンパン「しかも、小学校でまた悪さしているみたいだ。許すまじ!」

しょくぱん「行こう!」
 
 三人は急降下して、救出に向かう。

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:40:42.55 ID:ZtZ9RHeg0
――上空――

アンパン「ばいきんまん、月にはいなかったなあ」

しょくぱん「ホラーマンがホラ吹きだということを忘れてたよ」

カレーパン「ホラーマンだけにホラ吹きかwwww」ブワー

しょくぱん「うっ、臭っ」

アンパン「なあカレーパンマン、姫の前であんな態度取っちゃダメだろ」

カレーパン「そうか? 俺は楽しいぜwwww」

アンパン「ダメだ……会話にならん。最近どうしちまったんだ? おかしいぞ」

しょくぱん「まさか……」

アンパン「しょくぱんまん、多分僕も同じことを思っている。つまり――」

しょくぱん「ばいきんまんのウィルスが頭の中に」

アンパン「そういうことだ」

アンパン「……って、おい! あれを見ろ!」

しょくぱん「あれって……あ! ばいきんまんじゃないか!」

アンパン「しかも、小学校でまた悪さしているみたいだ。許すまじ!」

しょくぱん「行こう!」
 
 三人は急降下して、救出に向かう。

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:41:25.27 ID:ZtZ9RHeg0
アンパン「コラーーーーーばいきんまーーーーん」

ジャム「アンパンマン! それに、しょくぱんまんにカレーパンマン!」

しょくぱん「また悪さしてるのか!」

カレーパン「ヒョーーーーーーーーーーー」

ばいきん「出たなお邪魔虫!」

バタコ「あとはアンパンマンたちに任せて、私たちはアンパンマン号に戻りましょう!」

ジャム「うん、私たちは援護にまわるんだ!」

ばいきん「お前たちが来るのは分かってたのだ!」

ばいきん「だが、今日のオレさまは、いつものオレさまとは違うのだ……これを喰らえい!!」バキューン

しょくぱん「水鉄砲……!?」

アンパン「うわああああああああああああああ」

しょくぱん「アンパンマン!!」

ばいきん「わーいわーい当たった当たった~」

ばいきん「さてと、オレさまは……」ササッ

 ばいきんまんはそそくさと草陰に置いてあったバイキンUFOに乗り込む。

アンパン「顔がぬれて力が……出ない……」

アンパン「……ことはないぞ……?」


――アンパンマン号――

バタコ「これは……まだ顔を変えなくてもいいのかしら……?」

ジャム「……のようだね。とりあえず、私はアンパンマンの顔の予備をたくさん作っておくよ」

バタコ「私も手伝います!」

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:41:53.01 ID:ZtZ9RHeg0
――空――

アンパン「ばいきんまん! いったい何をしたんだ!」

ばいきん「すぐにわかるって~」

 バイキンUFOから二つのマジックアームを伸ばし来るバイキンマン。
 アンパンマンたちは空を飛び、応戦するが、アンパンマンは右、しょくぱんまんは左のマジックアームに捉えられる。

アンパン「くそっ、離せ!」ウーン

ばいきん「離せと言われて離すもんか~ってあれ?」

アンパン「あれ、普通に抜け出せだぞ?」パッ

ばいきん「ありゃ……?」

ばいきん「って、油断してる暇か? これでもくらえええい」ビシャー

アンパン「うわあああ! 顔がぬれて力が出ない……」


――アンパンマン号――

バタコ「私たちの出番みたいね!」

ジャム「ではこれを」サッ

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:42:23.21 ID:ZtZ9RHeg0
――空――

ばいきん「このまま握りつぶしてやるじぇーーーー」

カレーパン「オエーーーーーーー」ゲロゲロ

ばいきん「何だ!? カレーか!? わわわっ前が見えない前が見えないっ」

 バイキンUFOは慌てふためき、マジックアームがしょくぱんまんを離す。

しょくぱん「でかしたぞカレーパンマン!」

アンパン「ふにゃああぁぁぁぁ……」ヒュー

しょくぱん「大変だ!」

 落下していくアンパンマンを、しょくぱんまんが空中で抱き留める。

――アンパマンマン号――

バタコ「ホモォ……」ハァハァ

しょくぱん「バタコさん、新しい顔を!」

バタコ「ハッ! いけないいけない。アンパンマーーーン新しい顔よーーーー!」ウォーリャー

 高速スピンしながら飛んでいく顔。その軌道は蛇状にカーブを描き、巧みに障害物を避け、的確にアンパンマン本体へと向かう。投げられた顔に魂が籠っているかのように飛ぶさまは、まさに魔球。
 アンパンマン本体と、高速回転する顔が激突。
 だが、入れ替わるはずの顔は元の顔に弾かれ、虚空へと落下していく……。

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:43:21.59 ID:ZtZ9RHeg0
――空――

アンパン「イテッ……あれ、入れ替わらない!?」

しょくぱん「バタコさん、もう一回!!」


――アンパンマン号――

ジャム「顔はまだまだあるよ!」ハイ

バタコ「どういうこと……? もう一回! アンパンマーーーン新しい顔よーーーー!」ウォーリャー

 しかし、またもや顔は空しく弾かれる。

バタコ「まだまだあああ! アンパンマーーーン新しい顔よーーーー!」ウォーリャー

 また弾かれる。
 

――空――

ばいきん「ニッシシシシ……無駄無駄ァ!!」

 UFOに付着したカレーをふき取ったばいきんまんは高笑いする。

しょくぱん「あの武器は……水鉄砲なんかじゃなかった」

アンパン「なんだっていうんだ……」ヘナヘナ

しょくぱん「恐らく……接着剤のようなものだ! 顔と胴体が完全に接着している!」

ばいきん「当ったりいいいいいい! もう顔の交換はできないのだああ」

アンパン「このままじゃ何もならん……僕をアンパンマン号に戻してくれ」ヘナヘナ

しょくぱん「わかった!」

ばいきん「そうはさせないのだ!」

カレーパン「ソウハサセナイノダwww オエーーーーー」ゲロゲロ

ばいきん「二回も同じ手は喰らうか!」

しょくぱん「ありがとうカレーパンマン!」ヒュー

カレーパン「オエーーーーーー」ゲロゲロ

ばいきん「えーーーい、邪魔だ邪魔だ邪魔だーーーー」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:43:50.56 ID:ZtZ9RHeg0
――アンパンマン号――

バタコ「アンパンマン! 早くアンパンマン号の中に!」

しょくぱん「僕はまた空に行ってきます!」ピュー

バタコ「頑張って!」

ジャム「これはっ、なかなかっ、とれんぞ!」ウーンウーン

アンパン「顔がぬれたまま固まってる感じですううっ」ヘナヘナ

バタコ「これは……光線を使うしかないわね」

ジャム「……何!」

ジャム「光線だけはやめとくれぇ……」

ジャム「怖いんだ……」

バタコ「じゃあジャムおじさんは、目をつぶっていてください」

バタコ「アンパンマン。外に立っていてちょうだい」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:44:20.01 ID:ZtZ9RHeg0
――アンパンマン号――

ばいきん「邪魔だぁーーーーー」ドガッ

カレーパン「うげええええええええええ」

 持ちこたえていたカレーパンマンは、マジックアームを振り下ろされ急落下する。
 それを下から飛んできたしょくぱんまんが受け止める。
 カレーパンマンのマントは破れ、飛べそうにない。
 しょくぱんまんは彼を地上に送り返す。

しょくぱん「カレーパンマン、よく頑張ってくれた」

カレーパン「ウェ、ウェーーーイ……w」

しょくぱん「さあ、こんどは僕が相手だ!」ピュー

ばいきん「えええええい、どけどけどけーーーーーい」ブンブン

 その時、地上で轟音を立て巨大な光線が発射された。
 二人はそちらへ視線を移す。
 発射された元はアンパンマン号。その先には……ふやけたアンパンマンが立っていた。

ばいきん「何やってるんだアイツら!?」

 レーザーはアンパンマンの頭部に直撃し、顔を吹き飛ばす。
 すぐにアンパンマン号からバタコが出てきて、新しい顔を乗せた。
 アンパンマンを蛍光色の光が包む。
 
アンパンマン「元気百倍、アンパンマン!」


ばいきん「ままままずい!!」

しょくぱん「なるほど! 剥がれない顔を、光線でまるごと吹き飛ばしたのかw」

 アンパンマンが空に向かって飛ぶ。
 みるみるうちにアンパンマンの姿は大きくなり、遂にばいきんまんの目の前に。

アンパン「アーーンパーーーーーンチ!!」ボガッ

ばいきん「ばいばいきーーーん」ヒュー

しょくぱん「ふう……一件落着か」

しょくぱん「アンパンマン、強くなったな~。あのマジックアームからすぐに抜け出せたときは驚いたよ」

アンパン「僕も自分の力に呆気にとられていたら、モロに水を喰らってしまったよw」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:44:48.25 ID:ZtZ9RHeg0
ジャム「では、みなさんで召し上がってください」

カバオ「ぼぐば鼻の穴にながじごぶじがががが」

カレーパン「なんだこいつwwwww」ゲラゲラ

アンパン「やめろ、笑うな。不謹慎だろ」

アンパン「さ、パンを渡したら帰ろう。もうこんな光景、見ていられない……」サッ


しょくぱん「ミミ先生、あなたは見るたびに美しさを増している……」キラッ

アンパン「君はところ構わず口説こうとするな!!」

みみ先生「…………」

しょくぱん「僕に……保健体育の補講を実施してくださいませんか?」

みみ先生「…………」

アンパン「おい……」

しょくぱん(あれ……いつもはノってくれるのに……)

しょくぱん「無口なあなたもとてもチャーミングです。いつもの活発なあなたと無口なあなた。深い深いギャップの崖へと、僕は落ちてしまいそうだ」

みみ先生「…………」

しょくぱん「ふふ……さては、そうやって僕の気を引こうと言う寸法ですね。いやぁ、ならば大成功だ!! 僕はますますあなたに魅かれてしまった!」

みみ先生「…………」

ジャム「しょくぱんまん……彼女は、口がおかしくなって、本当に喋れなくなってしまったんだ……」

しょくぱん「そんな…………」

しょくぱん「くっ……! 戻ろう……」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:45:31.38 ID:ZtZ9RHeg0
――パン工場――

しょくぱん「ばいきんまん……許せない!」

しょくぱん「すぐにでもこの手で殴ってやりたい。空に飛ばすなんて生易しいことはしない。地面に叩きつけるッ!」

ジャム「しばらくそれはできそうにないよ」

しょくぱん「どうしてですか!?」

ジャム「バタコさんが肩を痛めてしまってねえ」

バタコ「ごめんなさいね……私の腕もなまったものだわ」

ジャム「顔の入れ替えができない時にわざわざバイキン城に行くのは危険すぎるよね」

アンパン「じゃあ誰が平和を守るっていうんですか!?」

ジャム「待って待って、何も戦うのがいけないというわけじゃないよ。自分からバイキン城に行くのは危険だということだよ。なるべく戦いは避けた方がいいよね」

しょくぱん「…………」

バタコ「けど、戦力の急落は否めないわね……」

ジャム「そこで、彼女に協力してもらうんだ! 入っておいで~」


ロールパンナ「よろしく……」スッ

ジャム「ロールパンナちゃんだ」

ジャム「ただ、知っての通り、彼女がばいきんまんと戦う時は注意しなくてはいけないよ」

アンパン「ブラックロールパンナになるからか……」

ジャム「そうなんだ……彼女にはバイキン草が練り込まれている……」

メロンパン「お姉ちゃん!!」ムギュー

しょくぱん「お、お前は…………」

ロールパン「…………」

しょくぱん「…………」

ロールパン「…………」

メロンパン「どうちたの~??」

バタコ「フフッ」

ジャム「まあまあ、二人とも。睨み合わずに。お互い手を取り合っていけば、みんなにこにこ笑顔になれるんじゃないかな?」

アンパン「ジャム師匠……! そうです。正義を愛する者なら、手を取りあえるはずですよね!」

ジャム「うんうん」

アンパン「これはジャム語録に早速メモだ」メモメモ

しょくぱん「……僕はこいつと手を取り合うのなんてごめんです! パトロールに行ってきますよ!」ピュー

ジャム「待つんだしょくぱんまん! ……行ってしまったか」

ロールパン「無理もない……」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:46:00.45 ID:ZtZ9RHeg0
――バイキン城――

ばいきん「ぶえっくしっ!」

ドキン「また負けたの~?」

ホラー「ホラ~、新武器は役に立たなかったデスか~?」

ばいきん「役に立ったけど……アンパンマンが強すぎだぁああい!」

ドキン「情けないわね~」

ばいきん「それより、町の小学校が変だったのだ!!」

ホラー「……といいますと?」

ばいきん「小学生たちの顔がぐちゃぐちゃだったのだ!」

ドキン「またアンタがやったんじゃなくて?」

ばいきん「違うのだ!!」

ホラー「ふむ……」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:46:27.22 ID:ZtZ9RHeg0
――上空――

 アンパンマンたちはしょくぱんまんとは別に、パトロールをしている。
 カレーパンマンはしょくぱんまんを探しに行かせた。

アンパン「なかなか珍しいメンバーだな」

ロールパン「ええ……」

メロンパン「♪」

アンパン「なあ……唐突かもしれないけどさ……なんで昔、しょくぱんまんをフったんだ? あんなにパン工場でイチャコラしてたじゃないか」

ロールパン「っ!」

アンパン「まあ、あんなすけこまし、いつ見限ってもおかしくないけどさ」

ロールパン「そんなのじゃない……」

アンパン「ん~、確かにあいつもあのころは今ほど遊び人ではなかったなぁ」

ロールパン「あの人は悪くない……」

ロールパン「ただ、私が私を知ってしまっただけ……」

ロールパン「裏も表も私じゃない……私であって私じゃない」

アンパン「……君の言うことは、いつもわけがわからない。でも、後になって重要だったと気づくんだ」

アンパン「だからさ、もっと具体的に教えてくれないか?」

ロールパン「言ってもどうしようもない。世界は理不尽」

アンパン「そんなにこの世界が気に入らないのか? 愛と勇気で世界は輝いて見えるぞ」

ロールパン「あなたのそういう御託は聞きたくない……」

メロンパン「メロンパンナも、生きることはすっごく楽しいと思うよ!!」

ロールパン「ずっとそんな風に無邪気でいられればいいわね」

 その時、はるか遠く山の方から、爆発音が鳴り響いた。

アンパン「なんだ!?」

メロンパン「いってみよ!」

ロールパン「…………」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:46:52.67 ID:ZtZ9RHeg0
 山の麓では、爆発音の発生源が鋼鉄の体躯を振り回していた。
 それは、ばいきんまんのメカなどとは比べ物にはならないほど巨大で凶悪なマシーンだった。
 その周りを蠅のように飛びまわるしょくぱんまんとカレーパンマン。
 マシーンの攻撃はしょくぱんまん集中している。カレーパンマンは、あまり相手にはされていないようだ。

しょくぱん「こいつ……強すぎるッ!」ゼェ……ゼェ……

アンパン「大丈夫か!」

しょくぱん「アンパンマン!!」

アンパン「なんだあの悍ましい機械は!」

しょくぱん「わからん……ただ、ここはいったん引いた方がいいということは確かだ」

アンパン「逃げはしないぞ」

しょくぱん「今は顔の交換ができないんだぞ!」

アンパン「正義の味方が悪に背を向けることなどできない!」

ロールパン「…………」サッ

 ロールパンナの伸ばしたリボンが巨大な機械に絡みつく。

しょくぱん「チッ、勝手なことしやがって……」

アンパン「近づいてもブラックロールパンナにならないってことは、中にいるのはばいきんまんではない……?」

 キュィーーーーーーーーーン…………

しょくぱん「まずい! 相手はエネルギーを溜めてビームを発射する気だ!」

アンパン「その前に、アァァァアアアンパァァァアアアアアンチ!」バキッ

 ピューーーーーーーーーー
 重量級の機械は、その重さが嘘であったかのように、軽々と空の彼方へ飛んでいった。

アンパン「え……? 強すぎる」

カレーパン「マジかよww」

しょくぱん「すごいなアンパンマン!! でも、飛ばしちゃったら中に誰がいたのかわからないじゃないか!」チラッ

 振り向いた視線の先には、たまたまロールパンナがいた。

しょくぱん「………………」

ロールパン「……帰りましょ」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:47:30.06 ID:ZtZ9RHeg0
――パン工場――

アンパン「……ということがありまして……」

ジャム「なんだって!? それはどこで!?」

アンパン「山の麓でした」

ジャム「山の麓……まさか……」

ジャム「それに、光線となると……」

ジャム「そいつを軽々倒せたと言うのかい?」

アンパン「はい」

ジャム「そうか……遂に……。少し私は出かけてくるよ」

アンパン「確かに、あんなものを放置しておくのも物騒ですもんね……。流石ジャム師匠! 平和を愛すればこその行動だ。いやはや、このまま工場でのんびりしていようとしていた自分が恥ずかしい……僕もパトロールがてら探してみます!」

バタコ「二人とも行ってらっしゃ~い」

チーズ「アンアン!」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:48:08.57 ID:ZtZ9RHeg0
――パン工場――

アンパン「ただいま」

バタコ「おかえりなさーい。その巨大な機械ってのは見つかったの?」

アンパン「いえ、それが見つからなくて……」

アンパン「ん……? ところで壁にかかってるあのマント、誰のなんですかね? 青色なんて見たことない」

バタコ「私は知らないわよ。ジャムおじさんが帰ったら聞いてみたら? まだ帰ってないの」

バタコ「また新しい仲間でもできるんじゃないかしら?」

アンパン「新しい仲間か……。メロンパンナちゃんやロールパンナちゃんが生まれた時のことを思い出しますね……」

バタコ「メロンパンナちゃんに練り込む愛の花の蜜を手に入れるのは、苦労したわよね~」

アンパン「苦労の甲斐あって、そっちは大成功だったんですが……」

バタコ「問題は、ロールパンナちゃんのバイキン草よね……」

アンパン「ええ。まごころ草だけをパン生地に練り込んで、ロールパンナちゃんを作ろうとしていたのに……ばいきんまんに、横からバイキン草も入れられてしまったんですよね……」

アンパン「そのせいでロールパンナちゃんはブラックロールパンナの顔を持つことに……」

アンパン「なんとか取り出す方法はないんでしょうか……?」

バタコ「ロールパンナちゃんと一緒に練り上げられたものを取り出すということは、彼女の存在を否定するのも同然よ」

バタコ「パン生地、まごころ草、バイキン草が合わさって、初めてロールパンナちゃんなのよ」

アンパン「そうですけど…………」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:48:44.69 ID:ZtZ9RHeg0
バタコ「はい、新しい顔よ!」シュッ

 バタコさんは痛んでいない左手でしょくぱんを投げる。
 フリスビーのように旋回した白いパンはなだらかなカーブを描き、しょくぱんまんの顔に命中して入れ替わる。
 次に投げたカレーパンマンの顔は、竈に当たり、机でバウンドして、壁で跳ね返り、カレーパンマン本体に当たり、器用に入れ替わる。
 見事に計算された完璧な軌道だった。

アンパン「いつも思うんですが、バタコさんの投球は達人級ですよね」

バタコ「そんなことないわ」

アンパン「そんなことあります! 何か秘密があるんでしょう……?」

バタコ「……つまらない昔話、聞いてくれるかしら」

アンパン「はい。是非とも」

バタコ「……まだ私がこの工場で働いてなかった時だわ……」

バタコ「私はプロのショットボーラーを目指していたの」

アンパン「遠くの動く的に、ボールをどれだけ当てられるか競うスポーツですか?」

バタコ「ええ、そうよ。女性の力だとプロは厳しかったわ。それでも必死にもがき続けたの。寝る間も惜しんで投げ続けたわ」

バタコ「でも、やっぱり現実はそう上手くはいかないわね。夢ばかり追っていたら、食い扶持がなくなってしまったわ」

バタコ「途方に暮れていた私を拾ってくれたのはジャムおじさんだった。『その腕……うちで活かさないか?』ってね」

アンパン「おお、ジャム師匠!」

アンパン「でも、プロショットボーラーの夢はもう……」

バタコ「ん~。まあ、最初はこんな仕事ありえないと思っていたわ。パンを投げる仕事ってなんなの(笑)って」

バタコ「でも今では食べていけてるだけ幸せだと思っているのよ」

バタコ「それに、おかげで工場のみんなやこの子とも出会えたしね!」

チーズ「アン!」

バタコ「よしよし」

アンパン「バタコさん……」

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:49:11.84 ID:ZtZ9RHeg0
――上空――

 アンパンマンとしょくぱんまんはパトロールをしている。

アンパン「バタコさんにあんな過去があったとはなぁ」

しょくぱん「ああ……」

アンパン「おい、あれ見ろ! 崖っぷちで男の子が飛び降りようとしている!」

しょくぱん「なんだと!」

アンパン「あ! 飛び降りた」

アンパン「急げ!!」ピュー

アンパン「うおおおおおおおおおおおおおお」

 空中でアンパンマンは少年をキャッチ。

アンパン「大丈夫か少年! なんてことするんだ……」

美少年「あれ……僕……あれ……?」

しょくぱん「ウホッ。かわいい顔してんじゃんか」

アンパン「とりあえず話は地上で聞こう……」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:49:40.81 ID:ZtZ9RHeg0
――地上――

アンパン「で、なんでこんなことをしたんだ?」

美少年「僕は……生きていても仕方ないんです」

アンパン「そんな人間は一人もいない!!」


美少年「……というより、生きていけないんです。明日食べていくための米一粒さえない……」ウルウル

アンパン「」フフッ

しょくぱん「」フフッ

アンパン「そのために僕たちがいるんだよ」

美少年「え……?」

アンパン「さあ、僕の顔をお食べ」ブチッ

美少年「これは……アンパン……? でも、今一切れのパンをもらったところでこれからの生活はできません」

しょくぱん「それなら町に来るといいですよ。町では僕たちが毎日パンを配給しているんです」

美少年「なんと……この世界にはそんな楽園みたいなところがあったのか!」

美少年「ではありがたくいただきます! ウッ……ウッ……」ムシャムシャ

アンパン「なんだ、泣いてるのか?」

美少年「はい……! こんなに幸せな味はもういつから食べていないのだろう! ウッ……ウッ……」ムシャムシャ

しょくぱん「その涙……僕が毎晩拭ってあげますよ」キラッ

美少年「え……///」

アンパン「おいおい、男だぞ、男!」

しょくぱん「愛の前には性別の壁なんて関係ないさ!」

アンパン「何言ってんだ! 帰るぞ!」ギュッ

しょくぱん「ぅわあ! また会いましょう! 約束ですよ~」

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:50:07.21 ID:ZtZ9RHeg0
――上空――

アンパン「全く……なんで君はそう誰でも落とそうとするんだ! ってか、バイだったのか!?」

しょくぱん「ああ。いつも戦っている時、お前の尻も狙ってるよ」フフ

アンパン「本気でやめてくれ……」ゾワ…

アンパン「冗談はさておき。今後ああいう不誠実なことはやめた方がいい」

アンパン「本当に、どうしてあんなことするんだ?」

しょくぱん「それは僕が、何枚カットでも二枚目だからだろうね」キラッ

アンパン「おふざけを聞きたいんじゃない。ロールパンナちゃんと付き合っていた頃はあんなにも一筋だったじゃないか」

しょくぱん「ああ……」

しょくぱん「寂しいの……かもな」

アンパン「そうだ。それが聞きたかった。だけどな、その慰みで使い捨てられた女(一部男)たちのことは考えたことあるのか?」

しょくぱん「それは……」

アンパン「彼女(一部彼)たちは一人一人本気で君のことを慕っている。遊ばれているなんて思うことなく」

しょくぱん「うるさい! お前に何がわかるってんだよ!」

しょくぱん「全身全霊でロールパンナに尽くした。何度も愛し合った。仕事をしている時も、戦っている時も、いつも頭の片隅には彼女のことが浮かんでいた。ああ、僕にはもうこの人しかいないんだって思っていた。一生大切にしていこうと誓った。そしてプロポーズしようとしたまさにその日に……突然何の理由もなく捨てられたんだ! どうせ新しい男ができたに違いない! しょくぱんをもらうだけもらっといて、都合が悪くなったらポイだ」

アンパン「だから、君もそれと同じことを他の人にするのか……?」

しょくぱん「チッ……」

しょくぱん「一生その偽善の中に浸ってな!!」ピュー

アンパン「…………」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:50:34.10 ID:ZtZ9RHeg0
――パン工場――

アンパン「…………」フン

しょくぱん「…………」フン

メロンパン「どうちたの? 二人とも~」

アンパン「…………」フン

しょくぱん「…………」フン

ジャム「う~む……正義を愛する者同士、ぎゅっと手を握り合えば心もぽっかぽかになるよ」

アンパン「ジャム師匠……誠実じゃない男についてどう思いますか?」

ジャム「あまり良いとは言えないね。しっかりと軸を持ってこそ、一人前と言えるんじゃないかな」

アンパン「いい言葉だ」ジーン

アンパン「ジャム語録にメモしておこう」メモメモ

しょくぱん「よくそんなきれいごとばかり言えますよ! うわべだけの言葉なんて何の解決にもなりません!」

アンパン「ジャム師匠になんてことを!!」

ジャム「いいんだいいんだ。長い人生、誰にでも心の迷いはあるものだよ」

アンパン「しかし……」

チーズ「アンアーーーーーーン!」

バタコ「どうしたのチーズ?」

バタコ「え!? ばいきんまんが町を襲っている!?」

アンパン「あいつまた懲りずに…………行くぞ!!」

しょくぱん「言われなくても行くわ!」

カレーパン「ウェーーーーーーーイwwww」

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:51:04.12 ID:ZtZ9RHeg0
――町の小学校――

アンパン「やめるんだ、ばいきんまん!」

ばいきん「やめろと言われてやめるわけないのだーwwww」

しょくぱん「あいつ……」

 前に比べてより一層異常な形になった小学校の人々が、ばいきんまんに食べ物を差し出そうとしていた。

アンパン「この子供たちを見て……何も思わないのか!」

ばいきん「オレさまには関係ないもんね~」

アンパン「嘘つけ! 君が菌か何かをばら撒いたんだろ!」

ばいきん「ほんとほんと! オレさまは何も知らないのだ! 食べ物さえ手に入ればそれでいいし……」

アンパン(確かに、ばいきんまんにとって子供たちを傷つけても何も意味がない。じゃあこれは……自然現象?)

しょくぱん「アンパンマン、ボケッとしてるな! UFOに乗っていない今がチャンスだ。ここは一気に突撃しよう」

アンパン「は!? そんなことしたらばいきんまんの近くにいる子供たちが危ないでしょ」

しょくぱん「そんな温いことばっかり言っているから女の一人もできないんだ! 刺激がないんだよお前は」

アンパン「寂しさを紛らわすために手当たり次第女を食う誰かさんよりはマシだね!」

しょくぱん「はっ! 頭にアンしか詰まってない奴のあっまあまな発想だな。あ~甘ったるすぎてゲロ吐きそう」

アンパン「君こそ、そのすっかすかの頭に少しは何か詰め込んだら?」

しょくぱん「なんだとおい!!」

ばいきん(なんだかわからんけど、今のうちにUFOに乗っちゃお~っと)

アンパン「あっ! ほら君が突っかかってるうちに、ばいきんまんがUFOに乗っちゃったじゃないか!」

しょくぱん「何を言っているんだ! 突っかかってきたのはそっちだろ!?」

アンパン「違うだろ! 元はと言うと、君が女の一人もどうとかって言い始めたのが原因で――」

しょくぱん「あ゛~もういい! 勝手にやらせてもらう」

アンパン「ああ、勝手にしろ!」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:52:36.23 ID:ZtZ9RHeg0
ばいきん「改良した新兵器をくらええええい」ウィーン

 バイキンUFOの下から大きな噴出孔を持つ銃が出てきた。

アンパン「あれは、前に僕の顔を固めた銃を大きくした版か!?」

しょくぱん「うおおおおおおおおおおおお」ビュー

アンパン「直撃してどうする!」

ばいきん「あれ? よける気なし……? まあいいや。ぽちっとな」

 バキューーーーーーン

しょくぱん「クッ」

アンパン「ほら言わんこっちゃない」

しょくぱん「こんな接着剤食らっても、顔を入れ替える必要がなけりゃ、問題ないよな」

ばいきん「!」

しょくぱん「このまま直進して、しょくぱんちで終わりだ! 見たかアンパンマン!!」

ばいきん「ああ、ついでに水も発射できるようにしておいたのだw ぽちっとな」


 ブシャアアアアアアアアアアアアアアア

しょくぱん「なんだと!? うおおおおおおおおおおおおおおおおお」

しょくぱん「顔がぬれて力が出ない……」

ばいきん「は~ひふ~へほ~~いwww」

アンパン「何やってるんだ……」

しょくぱん「うう……」

ドキン「しょくぱんまん様~~~~~~~」

 ドキンちゃんがUFOに乗ってやってくる。

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:53:08.74 ID:ZtZ9RHeg0
ドキン「あ! ばいきんまん、しょくぱんまん様になんてことを!」

ばいきん「ゲゲッ、どきんちゃん! これはその……仕方のないことで……」

しょくぱん(ドキンちゃんの前で情けない姿は見せられない!)「僕はまだ戦える!」

アンパン(今のうちに……)「アァァアアアアアンパァァァアアアアアアアンチ!」
しょくぱん「ショクパーーーーーンチ」ヘロヘロ

アンパン、しょくぱん「うわあああああああああああ」

アンパン「ぶつかってくるなよ!」

しょくぱん「ぶつかってきたのはそっちだろ!!」

ばいきん「アブネー」

ばいきん「とにかくどきんちゃん、今それどころじゃないから!」

ドキン「ダメよ! 倒すならアンパンマンにしなさい!」

ばいきん「わ、わかったのだ……」

ばいきん「あれ? アンパンマンは?」

アンパン「後ろだよ!」

ばいきん「ゲゲッ!」

アンパン「地面に叩き落としてやる! アァァアアアアンパァアアアアンチ!」

ばいきん「ぎょええええええええええええええええ」

 バイキンUFOはすさまじい勢いで地面に吸い寄せられていく。
 だが、その向かう先にいたのは……よろよろと飛ぶしょくぱんだった。

しょくぱん「!?」

ドキン「あぶなあああああああああああい!」

 ドキンちゃんのUFOが、落下するバイキンUFOに激突。
 バイキンUFOの軌道は曲がり、二つのUFOは双方向に散る。

ドキン「きゃああああああああああああああああ」

しょくぱん「ドキンちゃん!!」

しょくぱん(僕を守ろうとして……!)

 ドキンUFOは地面に打ち付けられ、中にいるドキンちゃんは意識を失った。
 アンパンマンとしょくぱんまんはそこに駆け寄る。後からばいきんまんも追いついてやってくる。

しょくぱん「ドキンちゃん! ドキンちゃん! しっかりしろ!」

アンパン「僕はただ……僕はただバイキンマンを落として町の異常のことを聞き出そうとしただけなのに……うわああああああああああああ」

しょくぱん「クッ……アンパンマン号でジャムおじさんに診てもらおう」

ばいきん「な、なんだと!」

しょくぱん「ドキンちゃんが助かるのが優先だろう!」

ばいきん「ぐぬぬ……仕方ない。その代わり、オレさまも連れてってくれ」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:53:34.92 ID:ZtZ9RHeg0
――アンパンマン号――

ばいきん「ど、どうだ……?」

ジャム「後頭部は打ってないみたいだし、少し休めば目を覚ますと思うよ」

しょくぱん「よかった……! よかった!」

アンパン「くそっ、くそっ、僕のせいで……」

ジャム「そう咎めることないよ。君は正義を守ろうとしただけなんだろ?」

アンパン「そうなんですが……」

アンパン「あ、そういえばばいきんまん! 町の異常は君と全く関係ないのか!?」

ばいきん「そうだって言ってるのだ!」

バタコ「そうなると、あれはただのはやり病なのかしら……?」

ばいきん「さあな!」

バタコ「あなたがいつも悪さばかりしてるから疑われるのよ!」

ドキン「ん、ん……ぅるさい……」

アンパン、しょくぱん、ばいきん「ドキンちゃん!」

しょくぱん「もう離さない」ダキッ

ドキン「しょ、しょくぱんまん様////」

ばいきん「コラーーー何してるのだーーー」

しょくぱん「目覚めてくれて、ありがとう」

しょくぱん「君が目覚めなくなってしまった時、僕はもう死んでしまおうかと思った」

しょくぱん「もう死のうとしていた僕を、君はまた守ってくれたんだね」

しょくぱん「それで、気づいたんだ……君のいない世界なんて意味がないんだって」ギュー

ドキン「しょくぱんまん様、痛いぃ……」

しょくぱん「決めたよ、ドキンちゃん」

ドキン「?」

しょくぱん「僕の命を二度も救ってくれた恩は、ちょっとやそっとじゃ返しきれないと思うんだ。だから、なんとか返させてくれないかい……?」

しょくぱん「一生、君の隣でね」キラッ

ドキン「////」

バタコ「なっ!」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:54:01.04 ID:ZtZ9RHeg0
しょくぱん「アンパンマン、悪かったよ。君は僕に気づかせてくれようとしたんだね、こんなに近くに運命の人がいたことを」

しょくぱん「これからは誠実に生きるよ。一生、彼女の隣でね」キラッ

アンパン「しょくぱんまん……」

しょくぱん「さっきまではすまなかった。僕はどうかしていたんだ……ずっと一緒にやってきた君と喧嘩するなんて……これからも共に戦おう!」

アンパン「ああ……、ああ!」

しょくぱん「さあ、ドキンちゃん。お返事を……」

ドキン「もちろn――」

バタコ「ちょっと待って! そんなのが許されるわけないでしょ!?」

しょくぱん「え……?」

バタコ「ドキンちゃんは敵なのよ! それと結婚って……ありえないでしょ!」

しょくぱん「愛の前にはそんなもの関係ない!」

バタコ「はい、治ったんだから帰りなさいよ! お大事に~」

バタコ「はいはい帰った帰った!」

 バタコはドキンちゃんとばいきんまんをアンパンマン号から追い出す。

しょくぱん「そんなにぞんざいに扱わなくても……」

アンパン「…………」

カレーパン「ファーーーーーーーwwwwww」

アンパン「だまれ」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:54:26.30 ID:ZtZ9RHeg0
――パン工場――

アンパン「そういえばこの前、壁に青いマントがかかっていたんですが、あれは誰のものなんですか、ジャム師匠」

ジャム「え? そんなものかかってたかい?」

アンパン「はい。丁度あそこの壁にかかってましたよ」

ジャム「あー、仕舞い忘れていたかな。あまり気にしないでくれ」

チーズ「アンアン!」

バタコ「あら、手紙をくわえてるわ。何かしら?」

アンパン「見せてください。ふむふむ……この前崖で助けた美少年からだ」

しょくぱん「なんだって!?」

アンパン「『この前はありがとうございました。言われた通り町に行こうと思ったんですが、いかんせん町までの道が分かりません。もしよろしければ、道案内に来ていただけませんか』だってさ」

しょくぱん「ああ、そういえば町までの道を伝えてなかったなw しまったしまった」

バタコ「道案内に来てほしいっていうのは単なる口実で、本当は二人に会いたいだけだったりして……そこから始まる禁断の愛……!」キャー

アンパン「何言ってるんだ」

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 15:54:54.24 ID:ZtZ9RHeg0
――上空――

しょくぱん「本当にバタコさんの言った通り、僕に会いたいだけだったりしてなw」

アンパン「何を馬鹿なことをw」

しょくぱん「でももし彼にコクられても、もちろん断るぜ」

アンパン「決まった相手がいるもんな」フフ

しょくぱん「ああ!」

しょくぱん「ん……? おい! あれを見ろ! またあいつ崖から飛び降りようとしているぞ!」

アンパン「は……? 本当だ! おい! やめろおおおおおおお」

 二人は崖から飛び降りようとする少年を押さえる。
 目の前に立っていたのは、歪な顔をした少年。かつての美少年の面影もない。

しょくぱん「な……! そんな……」

アンパン「これは……」

元美少年「ごめんなさいしょくぱんまんさん……僕、こんな顔になってしまって……もうお婿にいけないっ!」

アンパン「何故なんだ! 何故こんなひどい仕打ちが……ハッ!」

アンパン(町の人たちとこの少年……共通点がある……)

アンパン「しょくぱんまん! 町の小学校の配給リストに、アンパンは含まれてるか調べてくれ!」

しょくぱん「調べなくてもわかる。毎日入っている……」

アンパン「なんてことだ……」

しょくぱん「どうやら……原因はそれのようだな」

アンパン「……急いでジャム師匠に報告だ……僕は廃棄処分になるかもしれないが」

 呆気にとられて空を仰ぐと、アンパンマンの目に映ったのは。
 青いマントをはためかせて空を飛ぶジャムおじさんの姿だった。

しょくぱん「あれは……」

アンパン「いったい何がどうなっているんだ!!」

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 16:41:37.10 ID:v2JrEzDx0
しょくぱん「行ってみるぞ!」

アンパン「あ……ああ」

元美少年「僕は……僕は……」

しょくぱん「少年……」

アンパン「しょくぱんまんはここで少年についていてあげてくれ。僕がジャム師匠に会いに行く」

しょくぱん「わかった」


――上空――

アンパン「ジャム師匠!」

ジャム「おや? アンパンマンか」

アンパン「その青いマント、ジャム師匠のものだったんですか!?」

ジャム「そうだよ」

アンパン「どうして飛ぶんですか!? どこへ向かっているんですか!?」

ジャム「おやおや、質問攻めだねぇ。探してたものが見つかったからだよ。そしてそこへ向かっているんだ」

アンパン「それは何ですか!?」

ジャム「君には関係ないかな。ここからは私一人でやらないと意味ないんだ」

アンパン「何か一人で抱え込んでいるんですか……?」

アンパン「……僕にも手伝わせてください! ジャム師匠の痛みは僕の痛み。『どんな痛みも分けあっこすればかすり傷だよね』 ジャム語録268番の名言です!」

ジャム「ドンナイタミモワケアッコスレバカスリキズダヨネ」

アンパン「どうして……どうしてそんな風に棒読みするんですか…………?」

ジャム「はぁー……。君は用済み。いい実験材料だったよ」

ジャム「ジャムになっちゃいなさい」シュバッ

 ジャムおじさんが右手を振るうと、衝撃波が空気を駆ける。
 吹き飛ばされそうになったアンパンマンは、腕を交差することでかろうじて波動に抗った。

アンパン「うああああああああああ」

アンパン「何をするんですか!」

ジャム「へぇ、これでぐちゃぐちゃにならないとはねぇ。流石私が作っただけはあるよ」

アンパン「なぜジャム師匠にこんな力が……?」

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:43:36.26 ID:v2JrEzDx0
ジャム「相変わらず質問攻めだね。これはね、君のおかげだよ」

アンパン「??」

ジャム「この私の顔、誰かの顔に似てると思わない?」

アンパン「僕……ですか? それはジャム師匠が自分の姿に似せて僕を作ったからですよね。それを僕は誇りに――」

ジャム「実はね、逆なんだ。私を君の姿に似せて改造した」パカ

 ジャムおじさんは自分の頭を一度はずして見せる。

アンパン「なっ……!」

ジャム「ある日、天から二つの生命が降り立った。君とばいきんまん。ばいきんまんは島に。君はパン工場に」

ジャム「驚いたよ。その生き物は顔から下が本体で、顔からはエネルギーを供給する生物だったんだ。その顔に、ある薬品を練り込めば、どんどん強くなっていくんだ」

ジャム「私もこの力を手に入れたいと強く思ったよ。そして、身体改造に踏み切ったんだ。元々の私の顔にできるだけ似せてねぇ」

ジャム「でも、なかなか薬品の調合は難しくてねぇ……なんせ入れ過ぎてもパンの顔がうまく焼けなくなってしまうんだ。それを改善するべく、何度も君で実験を重ねたよ」

アンパン「実験なんてされた覚えはありませんが……まさか僕の記憶を操作して……!?」

ジャム「いやいや、そんなことはしていないよ。その様子だと気づいていなかったようだね。今までの君の人生は、全て私の実験だったんだよ」

ジャム「最近、自分がだんだん強くなっていると感じなかったかい?」

アンパン「どういうことですか」

ジャム「まだわからないのかい? 君はしょっちゅうばいきんまんと戦ってたじゃないか。あれは、私の作った薬品パンの成果を見るテストだったってことだよ」

アンパン「え……嘘ですよね……? あれは悪いやつに正義の鉄槌を――」

ジャム「正義正義言っておけば、君は私を疑おうともしない。それが仇になったね」

ジャム「ああ、記憶を消したと言えば、カレーパンマンねぇ。彼は私の秘密を盗み見しちゃってね。その部分の記憶を抜き取らせてもらったよ。その後遺症で、少し頭おかしくなっちゃったみたいだけれどもw」

ジャム「それにしても、彼らにも驚いたよ。君の後からパン工場にやってきたカレーパンマンやしょくぱんまん。君と同じように顔がエネルギータンクのような役割を果たしていたんだもの。類は友を呼ぶ、だね」

ジャム「この星にもあんな生き物たちがいたなんてね驚いた驚いた。なんなんだろうねぇ、この不思議世界は」

ジャム「さ、説明はこれで十分かな? 私はもう行ってもいいかな?」

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:44:08.99 ID:v2JrEzDx0
アンパン「………………」

ジャム「おやおや、さんざん質問しておいて、私の質問には答えてくれないのかい? じゃ、もう行くね」

アンパン「……待ってください」

アンパン「いえ、行かせません」

ジャム「そう言われても、行くんだけどね」

アンパン「あなたのせいで、町のみんなは……」

ジャム「私のせい? 私が何をしたっていうんだい?」

アンパン「奇形になった人びとはみんな、僕のアンパンを食べているんです……」

アンパン「原因は、あなたがパンに大量に練り込んだ薬品ですよ」

ジャム「あ、なるほど……考え付かなかったよ。それは町のみんなに申し訳ないことをした……」

ジャム「でも、あれをみんなに振りまいてたのは君ではないか。ある意味共犯者だよね」

アンパン「違います! あなたがパンに薬品を混入しなければこんなことには!」

ジャム「君がいなくてもこんなことにはならなかったね」

ジャム「共犯者」

アンパン「違う……違う……僕は……」

ジャム「あ、来た来た。では、私はそろそろ行かせてもらうね」ピュー

アンパン「ま、待て!」

メロンパン「ここからはメロンパンナたちが」

ロールパン「行かせない……」

アンパン「!?」

アンパン「なんで邪魔するんだ!」

メロンパン「ごめんなしゃい……体も口も勝手に動くの」

アンパン「そうか……二人は脳を含む胴体もジャムおじさんによってつくられた身だから、操られているんだ……」

ロールパン「あなた、私の言った意味、知りたがってたわよね……?」

アンパン「世界は理不尽……?」

ロールパン「こういうことよ」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:44:58.61 ID:v2JrEzDx0
ロールパン「裏も表も私でない。私であって私じゃない」

ロールパン「メロンパンナちゃんは気づいていなかったようだけど……私はブラックロールパンナになった時にわかるの。表の人格がジャムおじさんの支配下にあるということがね」

アンパン「そんな理由でしょくぱんまんをフったっていうのか……あいつなら、説明したらわかってくれたはず!」

ロールパン「説明なんてできるわけないじゃない!」

ロールパン「彼は優しすぎたの……私がこんなんだと知ったら、余計に大切にしてくれるような人だったの」

ロールパン「バッドエンドしか先のない恋なんて要らない……あのまま付き合い続けていたら、私はいつか彼を手にかけていたわ」

アンパン「なら何で、せめてジャム師匠のことだけでも僕に教えてくれなかったんだ!」

ロールパン「何故教える必要があるの?」

アンパン「教えてくれたなら……こんな悲劇は起こらなかったかもしれない」

ロールパン「私はこんな世界が大嫌いなの」

ロールパン「世界なんて壊れてしまえばいい……」シュルル…

 ロールパンナのリボンがアンパンマンに絡みつき、地面へと投げ飛ばす。

アンパン「うおおおおおおおおおおおおおお」

 ドーーーーーーーーーーーーーーーン!!

 アンパンマンはしょくぱんまんのいる崖に打ち付けられる。

しょくぱん「おい! どうしたアンパンマン!?」

元美少年「」ガクブル

しょくぱん「しっかりしろ!」

アンパン「ははは……僕はバカだよ……」

アンパン「僕はみんなに優しさを振りまいているつもりで、毒を振りまいていたんだ……」

アンパン「ごめんよ……ごめんよ少年……」

元美少年「……?」

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:45:31.30 ID:v2JrEzDx0
 ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ……

しょくぱん「ん? あれはアンパンマン号か?」

 ガチャ

バタコ「大変よ~みんな~!」

バタコ「ジャムおじさんがパン工場をめちゃくちゃにして、飛んで行ってしまったの!」

バタコ「もうパンは焼けないわ……」

アンパン「ジャム師匠は、世界を支配するつもりなのかもしれない……」

しょくぱん「なんだって!?」

アンパン「ジャム師匠の頭部は、僕と同じ、アンパンでできてる。その頭部から力を得るために、僕とばいきんまんを戦わせるという実験を繰り返していたんだ……そして、遂にジャム師匠は、最強の頭部を手に入れたんだ」

カレーパン「ひぃぃぃぃーーーーw」

アンパン「君も被害者だ……カレーパンマン。ジャム師匠の秘密を目撃してしまったばかりに、脳をいじられたんだ」

カレーパン「アン?」

しょくぱん「そういうことだったのか……」

バタコ「そんな……」

しょくぱん「ジャムおじさんはバイキン城の方に向かったよな!?」

アンパン「ああ、何かを見つけたからって言ってた」

しょくぱん「ドキンちゃんが危ない! 僕はバイキン城に先回りしてくる!」

アンパン「僕はジャム師匠を追うよ!」

カレーパン「じゃ俺も~~~~w」

バタコ「くれぐれも気を付けて。もうパンの替えはないのよ」

バタコ「しょくぱんまんはちょっと待ちなさい」

しょくぱん「?」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:45:59.97 ID:v2JrEzDx0
――上空――

アンパン「行かせてくれないようだね……」

メロンパン「ごめんなしゃい……」

ロールパン「私の意志であって、私の意志ではないけど」

カレーパン「キョキョキョキョキョwww」ブハー

メロンパン「カレーパンマン、うるしゃーい」

アンパン「ロールパンナちゃんのベルト……青ではなく、赤いハートが点灯してるな。正義を執行してることになってるんだろ? まるで僕のようだ……」

ロールパン「正義の反対はまた別の正義……」

アンパン「どいてもらうぞ!」シュッ

カレーパン「キョーーーーーーーーーーーーーーw」シュッ

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:47:10.85 ID:v2JrEzDx0
――崖――

バタコ「ドキンちゃんのところには、行かせないわ」

バタコ「どうせ告白の答えを聞くんでしょ!?」

バタコ「敵と結婚なんて許さない」

しょくぱん「今は敵味方言ってる場合じゃないでしょう!?」

しょくぱん「まさか……まだあのことを引きずってるんですか……?」

バタコ「引きずってるって何よ!! あんたが捨てたんじゃない!!」

バタコ「」ハッ!

しょくぱん「やっぱりそうなんですね」

バタコ「……まずその敬語、やめてちょうだい」

しょくぱん「もう終わった事じゃないか……バタコ」

バタコ「あなたはそれでいいでしょね……私は……遊ばれて捨てられた私はどうなるのよ……」

しょくぱん「…………」

バタコ「私がどうしてBL好きなのか知ってる……?」

バタコ「ノマカプが嫌いだからよ!!」

しょくぱん「……ノマカプ?」

バタコ「男と女のカップリングのこと。ああいうの見ると、なんかイライラするの」

バタコ「だから、あなたがドキンちゃんと引っ付くとか、許さない」

しょくぱん「…………」

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:47:36.42 ID:v2JrEzDx0
バタコ「食パンにはバターがないと始まらないって、歯を光らせて言ってくれたのはなんだったのよ……」

しょくぱん「あの時はすまなかった……。でも今はもう、ドキンちゃんのことしか考えられない」

バタコ「もうこれっぽちも私のこと好きじゃないの……?」

しょくぱん「気にならないわけじゃない」

バタコ「じゃあ……!」

しょくぱん「でももう僕にはドキンちゃんがいるんだ。他の子には手は出さないと誓った」

バタコ「……よかった。もしここでOKしたら行かせるわけにはいかなかったわ……」

バタコ「本気なのね。今度は」

バタコ「行きなさい」

しょくぱん「バタコ……」

バタコ「いいから行きなさい! 女に恥かかせるつもりなの!?」

しょくぱん「わかった……ありがとう」ピュー




バタコ「これでよかったのよ……」グスン

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:48:03.67 ID:v2JrEzDx0
――上空――

アンパン「アァアアアンパァアアアアアアアアンチ!」

メロンパン「メロメロパーンチ!」

アンパン「おっと危ない」シュッ

メロンパン「きをつけて! メロメロパンチにさわるだけでメロメロになっちゃうの!」

アンパン(くそう……攻撃が防御にならないのが恐ろしいよ)

ロールパンナ「ローリングハリケーン!」シュルシュル

 リボンの回転に合わせて竜巻が起こり、アンパンマンを巻き込む。

アンパン「うわあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ」

メロンパン「アンパンマン!」

カレーパン「ウィーーーーーーーw」ブハー

メロンパン「キャ!」

メロンパン「メロメロパーンチ!」

カレーパン「ウィ?」

メロンパン「え? 効かない!?」

カレーパン「オエーーーーーーーー」ゲロゲロ

メロンパン「キャアアアアアアアアアアアアアア」



アンパン(ああ……もうこの竜巻に巻き込まれたまま死んでしまおうか……)

アンパン(そもそも僕は何のために戦っているんだ……? 正義? 仲間を倒すことが?)

アンパン(また僕の独りよがりかもしれないんだ)


      『共犯者』


アンパン(違う…………のか? その通りじゃないか。僕は悪。正義とは対極にある者)

アンパン(そんなの、生きていない方がマシだ……)


ロールパン(出てくる気がないの……?)

ロールパン(これで終わりね……偶像が割れたヒーローさん)

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:48:29.70 ID:v2JrEzDx0
――バイキン城――

しょくぱん「ドキンちゃん!!!!」

ドキン「しょくぱんまん様!」

ばいきん「何勝手に入ってるのだ~!」

ドキン「告白の答えを聞きに来てくれたんですね! それなら――」

しょくぱん「ごめん! 今は逃げるのが先だ!」

ホラー「ホラ~、いったいどうしたんデスか?」

しょくぱん「ジャムおじさんが迫ってきている」

ホラー「?」

しょくぱん「説明は後だ! とにかく今は僕についてきて!」

ドキン「はい~♡」

ばいきん「やなこった~」

ドキン「来なさい!」

ばいきん「はい……」

ホラー「あの……私はどうすれば……?」

しょくぱん「ばいきんまん、予備のUFOとかないのか?」

ばいきん「はいはい、用意しますよぅ」

しょくぱん「まずアンパンマンのところまで行って避難だ!」

ドキン「もしかして……アタシはしょくぱんまん様と相乗り!?」キャー






ジャム「おや? 誰もいないみたいだね」

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:48:55.13 ID:v2JrEzDx0
――上空――

ドキン「しょくぱんまん様、体当たってる////」

しょくぱん「君が吸い寄せるのが悪いんじゃないか」

ドキン「もう////」

ばいきん「くぅ~あいつらUFOの中でイチャイチャしやがってぇえええ」

ばいきん「ん? なんじゃありゃあ!」

ホラー「どうしたんデス?」

ばいきん「メロンパンナちゃんとカレーパンマンが戦ってるんだ! それに、ロールパンナちゃんが竜巻を出してる……?」

ばいきん「お前たち、仲間同士じゃなかったっけ?」

しょくぱん「本当じゃないか!」

しょくぱん「喧嘩……ではなさそうだけどな……」

ばいきん「仲間割れか?」

ホラー「ホラ~、アンパンマンの姿が見当たりませんが?」

しょくぱん「ハッ! まさかあの竜巻の中に!」

しょくぱん「ここから僕は飛んでいく! ドキンちゃん、ありがとう!」

ばいきん(最初から飛んで行けよ……)

ドキン「気を付けてよね」

しょくぱん「ああ。みんなはこの近くの安全なところにいて!」ピュー

ドキン「うん」ピュー
ホラー「わかりました。地上にいます」ピュー

ばいきん(ニシシシシ……これはアンパンマンを倒すチャンス……?)

ばいきん「オレさまも戦うのだ~!」

しょくぱん「え!? じゃあ、ロールパンナちゃんを止めてくれ。ブラックロールパンナにすれば、ばいきんまんの言うことを聞くんだよな?」

ばいきん「あ、なるほど~……」

しょくぱん「じゃあ、頼む! 僕はアンパンマンの救出に!」ズボッ

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:49:21.82 ID:v2JrEzDx0
――竜巻の中――

アンパン(僕はなんのために戦ってるんだ……)

アンパン(このまま竜巻に身を委ねれば楽になれる……)

しょくぱん「アンパンマン!!」

アンパン(しょくぱんまん……?)

しょくぱん「さあ、僕の手につかまれ!」

アンパン「もういいんだ……」

しょくぱん「何を言ってるんだ!」

アンパン「正義正義言ってても意味がないんだ。君も僕を偽善者と呼んだよね。その意味が、ようやく分かったよ」

しょくぱん「どうしたんだよ……」

アンパン「何をしたらいいのか、わからない」

しょくぱん「…………僕は君の正義に救われたよ?」

しょくぱん「好きな人にきちんと向き合って、誠実になることができた」

しょくぱん「君も正義に誠実に向き合えばいいんじゃないか?」

アンパン「その『正義』が、何かわからないんだ」

しょくぱん「じゃあ、今まで君は何を正義だと思っていたんだ?」

アンパン「それはもちろん、正義を愛する者が正義で、その反対が悪で……」

アンパン「つまり、ジャム師匠を初めとする僕たちの仲間が正義で、反対のばいきんまんは悪で……」

しょくぱん「本当にそうだったか? 『ばいきんまんだから』懲らしめていたのか?」

アンパン「違う……僕たちはばいきんまんが悪さをする度に懲らしめていた。決して何もしないばいきんまんに危害は加えなかった!」

アンパン「そうか……! ジャム師匠だから正義とか、ばいきんまんだから悪とか……そんなのではなく……誰でも正義や悪になりうるんだ!」

アンパン「今のジャム師匠は……悪だ!」

しょくぱん「どうやら答えが出たみたいだな……では行くぞ! 悪を倒しに!」ズボッ

アンパン「ああ! 悪には正義の鉄槌を」ズボッ

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:49:56.79 ID:v2JrEzDx0
――竜巻の外――

しょくぱん「ブラックロールパンナになっている!」

アンパン「ベルトのシグナルは……青か」

ブラックロールパンナ「…………」シュルシュル

ばいきん「ロールパンナちゃん、もう竜巻は止めていいのだ」

ブラックロールパン「はい……」

しょくぱん「おい……今さらか。すぐに止めてくれる約束だったろ……?」

ばいきん「そんなことするわけないのだw オレさまが戦うって言ったのは、アンパンマンのことなのだ!」

ばいきん「さ、ロールパンナちゃん。アンパンマンをやっつけるのだーー!」

ブラックロールパン「はい……」

しょくぱん「くそっ、こんな時に……」


アンパン「おい! 見ろ! ジャム師匠だ!」

しょくぱん「何!? 地上のドキンちゃんが危ない!」ピュー

ばいきん「え……」

ばいきん「オレさまも助けに行くのだ!」ピュー

アンパン「僕も――」

 シュッ

ブラックロールパン「あなたの相手は私……」

アンパン「や……めろ……」グググ……

52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:50:56.19 ID:v2JrEzDx0
――地上――

ジャム「ん?」

しょくぱん「通しませんよ」

ばいきん「行かせないのだ!」

ジャム「どうしてこう邪魔ばかり……」

ジャム「まあいいよ。ジャムになっちゃいなさい」シュバッ

 ドーーーーーーーーーーーーン!

ばいきん「ううううおおおおおおおなんだこの力はっ!」

しょくぱん「防ぎ……切れないっ! うわああああああああああああ」


ジャム「…………」

ジャム「さて」

ばいきん「ま……待つのだ……」

ジャム「力のない者には、何もできないよ」

ばいきん「ローーーーーーーールパンナ!」

 シュッ

ブラックロールパン「はい……」

ジャム「おやおや」

 ピューーーーーーーー

アンパン「助かったよ、ばいきんまん」

ジャム「また君か」

ジャム「君と私では薬品の含有量が違いすぎるんだよ。論理的に、決して君は私に勝つことができない」

アンパン「だから一緒に戦う仲間がいるんだ!」

ジャム「……そうかい」

ジャム「じゃあみんなで仲良くジャムにっちゃいなさい」シュバッ

ブラックロールパン「ローリングハリケーン!」シュルシュル

ジャム「な……!」

アンパン「相殺した!?」

ジャム「くっ……寝返りおって……」

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:51:25.39 ID:v2JrEzDx0
 ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ……

アンパン「アンパンマン号だ! バタコさんか!?」

バタコ「援護に来たわよ!」ガラッ

バタコ「ジャムおじさんは何故か光線がすごく苦手なの! アンパンマン号から光線を発射するから、みんな下がってて!」

ジャム「そうはさせない!!」シュバッ

アンパン「バタコさん! 逃げて!」

 ドーーーーーーーーーーーーン!

バタコ「キャーーーーー」

アンパン「バタコさん!」

しょくぱん「何てことだ……あのアンパンマン号が木端微塵に……」

バタコ「何て力なの……」

チーズ「アウウゥゥゥ……」

バタコ「危なかったわね……」

ジャム「これで終わりじゃないよ!」シュバッ

 ドーーーーーーーーーーーーーン!

 吹き飛ばされる一同。

ジャム「ふむ」

ジャム「まだ立っていられるのは君だけだったか……」

ジャム「アンパンマン」

アンパン「」ゼェ……ゼェ……

ジャム「流石は私のコピーだね」

アンパン「何が目的なんですか……」

ジャム「それを言ったら通してくれるのかい?」


ばいきん「まだオレさまはいけるのだああああああああくらえええええええいマジックハ―――ンド!!」

ジャム「ん」シュバッ

 どーーーーーーーーーーーーーん!

アンパン「ばいきんまん!!」

ジャム「愚かだね」

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:51:51.92 ID:v2JrEzDx0
カレーパン「オエエエエエエエエエエエエエ」ゲロゲロ

ジャム「な! 上から!? 前が見えない!」

メロンパン「カレーパンマンにはメロメロパンチがきかなくて、まけちゃったよぅ……」ヘナヘナ

ジャム「……既に狂っている奴を、恋狂いさせるのも無理な話ってわけかい……」

メロンパン「もうだめぇ……」パタリ


アンパン「おい、ばいきんまん! しっかりしろ!」

ばいきん「あー、オレさま、ここで終わりかなぁ」

アンパン「まだあきらめるな! 欲しいものがたくさんあるだろう!?」

ばいきん「欲しいものか……『欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れろ』って教えの下でやってきたけど、結局、何も手に入れられなかったのだ……」

ばいきん「食べ物も……ドキンちゃんも……」

ばいきん「どうしていつも邪魔ばっかり入るのだ……?」

アンパン「その教えが間違っているからだ」

ばいきん「そんなことはないのだ……どんな手を使ってでも手に入れるのは、正しいことなのだ……」

アンパン「本気で言ってるのか……?」

ばいきん「ああ、ところでチーズは元気にやってたか……?」

ばいきん「お前は知らないかもしれないけど、チーズは元々オレさまの飼い犬だったのだ……それがバタコさんなんかになついて……」

チーズ「あうぅぅぅぅ……」

ばいきん「おお、よしよし。オレさまのこと、覚えてるか……?」

チーズ「アン」

ばいきん「こんなにぼろぼろになって……」



チーズ「」ハムッ

 ホラーマンの骨をくわえるチーズ。


チーズ「アンッ」ポト

ばいきん「骨……か……。うれしいのだ……ありがとう、チーズ」

アンパン「おい、こんなところで死ぬな! おい! ばいきんまん!」

ばいきん「………………」

アンパン「ああ……」

チーズ「ク~ン」ポト

ばいきん「…………」

アンパン「…………」

チーズ「アンッ」ポト

チーズ「アンッ」ポト

アンパン「もうやめるんだ……死んでる……」

チーズ「アンッ!」ポト

チーズ「ア……ン?」ポト



アンパン「ジャム!!!!!!」

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:52:20.29 ID:v2JrEzDx0
ジャム「呼んだかい? やっとそこのゲロ吐き男を始末できたよ……」

アンパン「許さない!!」

ジャム「…………で?」

アンパン「アァァァァアアアアンパァァァァアアアアアアンチ!!」

ジャム「」シュバッ

 ドーーーーーーーーーーーーン!

アンパン「うわああああああああああああ」

アンパン「まだまだあああああああああああああああああ」ハァ…ハァ…

アンパン「アァァァァアアアアンパァァァァアアアアアアンチ!!」

ジャム「」シュバッ

 ドーーーーーーーーーーーーン!

アンパン「うをおおおおおおおおおおおおおお」

ロールパン「…………」

アンパン「アァァァァアアアアンパァァァァアアアアアアンチ!!」

ジャム「」シュバッ

 ドーーーーーーーーーーーーン!

ロールパン(もうやめなさいよ……)

アンパン「アァァァアア……ン……パ」

ジャム「」シュバッ

 ドーーーーーーーーーーーーン!

ジャム「よくまだ立ってられるねえ」

アンパン「ア゛ア゛ァァんパン…………チ」ピタッ

ジャム「私に触れるのが限界かね」

アンパン「ァアアアン――」

ジャム「どうしてそんなに必死になるんだい?」


アンパン「僕が正義の味方だからだ!!!」


ジャム「…………」

ロールパン(あいつ……)

ジャム「白目剥いて、そんなこと言われてもね」

ジャム「それじゃ、さよなら」シュバッ

 ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

ジャム「さてと……」

アンパン「……ぉ…………」バタッ

アンパン(体が……動かない…………)

ジャム(まだ生きてはいるのか……なんて生命力だ)

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:52:49.63 ID:v2JrEzDx0
 ヒュン!

ジャム「おっと! なんだ? アンパンマン号の破片?」

バタコ「」ハァ…ハァ…

ジャム「君が投げたのか……何のつもりだい?」

バタコ「あなたの顔がアンパンマンと同じなら……私が交換してあげるまでよ!」ウォーリャー

ジャム「や、やめろ!」

バタコ「次よ」ウォーリャー

ジャム「よせ! うわっ」

バタコ「カーブよ!」ウォーリャー

バタコ「これは蛇行!」ウォーリャー

バタコ「消える魔球!」ウォーリャー

ジャム「後ろ!? 前!? どこだ!? うおおおおおっ!」

バタコ(この感覚……この感覚よ……!)

バタコ(動く的を、的確なコントロールで追い詰めていくッ!)

ジャム「!」

バタコ「当たった!!」

バタコ「パン投げこそ、最っっっっっっっっっ高の仕事だわ!!!」

57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 16:53:18.25 ID:v2JrEzDx0
ジャム「…………」

バタコ「喋れないのねw なんせ顔が、アンパンマン号の鼻の部分になってるんですものw」

バタコ「元気百分の一倍ねw」

ジャム「…………」

バタコ「尖った破片で顔書いてやったら、喋れるようになるのかしら……?」ガリガリ

ジャム「…………」

ジャム「まさか君にやられることになるとはね……」

バタコ「シャァベッタァァァァァァァ!!!」


ジャム「さあ。あなたのことだから、どうせずっと起きてたんだよね?」

ジャム「どうせ身体改造でもして、ちょっとやそっとでは死なない体になっているんだよね?」

ジャム「……ホラーマン」

ホラー「……ばれてましたか~」スクッ

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/06(水) 01:38:31.64 ID:IaRJj+Pv0
ホラー「ご無沙汰デスね~、じゃむおじさん」

ジャム「妻が殺されたあの日から、ずっと犯人を探していたんだよ……」

ジャム「まさか、それがあなただったとはねぇ」

ホラー「誤解デス! 私そんな覚えないデスねぇ」

ジャム「以前山の麓で、巨大なマシーンに乗ってしょくぱんまんを襲ったそうじゃないか」

ジャム「後で痕跡を調べさせてもらったよ」

ジャム「そこであなたのDNAが検出されたんだよ」

ホラー「ふむ……」

ホラー「あれは、山の麓でマシーンの調整中に偶然しょくぱんまんが通りかかったので、殺してしまおうとしていただけなんデスがね~」

ホラー「『欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れろ』というのが私のポリシーでしてね」

ホラー「ドキンちゃんと私の恋路を邪魔する者を殺そうとしただけでしたが……」

アンパン(それは……ばいきんまんの教え!)

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 01:39:22.93 ID:IaRJj+Pv0
ジャム「そんなことはどうでもいいんだよ」

ジャム「問題は、そのマシーンが妻を殺したものと同じだってことだよ!」

ジャム「今でも光線を見るだけで、あの日のことを思い出して吐いてしまうよ……」

ホラー「あの日……? 山の麓で……?」

ホラー「あーーーーーー! わかりました!」

ホラー「マシーンの初始動実験デスね! そうそう、誤作動を起こしちゃって、光線をまき散らしたんでしたねぇ。まさか巻き込まれた人がいたとは! お気の毒デスね」

ジャム「ふざけるなあああああああああ」バシッ

ホラー「痛くもかゆくもないデスねぇ」

ジャム「……顔が変わった今、私は何もすることができない……」

ジャム「だが覚えておきなさい! もう私は最強になる実験に成功しているんだ! 次に会う時に、ジャムにしてやる!」

ジャム「この研究も、この身体も、この人生も、全てあなたを殺すためにあるんだ!」

ジャム「一生怯えて生きていなさい!!!」

ホラー「それは怖いデスねぇ。なら早めに悪い芽は摘んでおきますか」

 グサッ

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 01:39:50.68 ID:IaRJj+Pv0
ジャム「ぁ…………?」

 バタッ

ホラー「骨に刺されるなんて、信じられないって顔してますねぇ。あなたが言ったんでしょう。私の体は改造してあるんデスねぇ」

ホラー「私の与えた体と技術を、そんな風に悪用されるとは思いませんでしたねぇ」

アンパン(!?)

ホラー「……おや?」

 その時、光に包まれたメロンパンナちゃんが倒れたジャムおじさんに近づき、手を握る。

メロンパン『あなたは、私のためによく頑張ってくれました』ピカァァァァァ

ホラー「なんデスか? これは」

メロンパン『ずっとこの子の中で見てきました……あなたの奮闘を。あなたの強さを。あなたの涙を』

ジャム「ようやく……会えたね……」

バタコ「そうか……メロンパンナちゃんに練り込まれた愛の花は、死者の埋められたところに咲くと言われている……」

バタコ「埋められていたのは、ジャムおじさんの妻だったのね……」

ジャム「ごめんよ……君の敵は打てそうにないよ……」

メロンパン『いいんです、そんなこと。ただ、私のことをずっと覚えていてくれただけで……』

メロンパン『さあ、一緒に眠りましょう』

メロンパン『これからはずっと一緒ですよ』

ジャム「ああ……そうだね……」

 ジャムおじさんは、静かに目を閉じた。

メロンパン「あれ……? 今メロンパンナ、なにちてた……? なんで泣いてるの?」グスン…



アンパン(そんな……ジャム師匠……)

アンパン(意識が遠のいていく…………)

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 01:40:45.87 ID:IaRJj+Pv0
――パン工場――

バタコ「あっ、目を開けたわ!」

しょくぱん「なんだと! お~いみんな~アンパンマンが起きたぞ~!」

メロンパン・ドキン「アンパンマン!」

カレーパン「ウィーーーー!」

チーズ「アンアン!」

ロールパン「…………」

アンパン「ううっ…………」

アンパン「ここは……?」

バタコ「パン工場よ! もう起きないかと思って心配したんだから!」

アンパン「僕は何日ぐらい……?」

しょくぱん「丸二日ぐらいは寝ていたわ」

アンパン「なんてことだ……」

ロールパン「まだ本当の災厄は終わっていない……」

アンパン「そうだ! 全て思い出したぞ! ホラーマンはどこだ!!」

バタコ「あの後、私たちを残して帰って行ったわ。きっとバイキン城に……」

アンパン「ばいきんまんは『欲しいものはどんなことをしてでも手に入れる教え』が正義だと信じて疑わなかった」

アンパン「あれはホラーマンの教えだったんだ……」

バタコ「きっと天から落ちてきたばいきんまんの卵を拾って、育て始めたのはホラーマンだったのね……」

バタコ「同じ天から降ってきた者同士でも、育て方次第でアンパンマンとこうも違ってくるとは……」

アンパン「僕も似たようなものですよ……」

バタコ「仕方ないことなのかしらね……」

ロールパン「……」

しょくぱん「今回ももちろん行くんだろ?」

アンパン「ああ。ホラーマンは悪いことをした。ジャム師匠を殺したんだ」

しょくぱん「『師匠』か……」

アンパン「あ……つい癖で付けてしまった」

アンパン「でも、ジャム師匠はずっと僕の師匠であり続けるだろう」

ロールパン「あなたは……それでもいいの?」

アンパン「?」

ロールパン「今まで信じていたものが全部嘘だったのよ」

アンパン「僕はずっとジャム師匠の上っ面の言葉だけで生きてきたんだ。今さら変えられるはずない」

アンパン「ジャム師匠がどんなつもりでイイコトを言っていたかは関係なく、言葉自体は本物だ」

ロールパン「…………!」

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 01:41:13.70 ID:IaRJj+Pv0
アンパン「嘘から出た真っていうかさ。それがきっと僕なのかもな」

ロールパン「…………」

アンパン「ばいきんまんもジャムおじさんもいない今、ロールパンナちゃんは晴れて自由の身なんだ」

アンパン「もう、世界に希望を持っていいんじゃないか?」

ロールパン「…………」

ロールパン「……私もついていくわ」

ドキン「アタシもついていく!」

しょくぱん「ダメだ! きっと危険な戦いになる」

ドキン「ううん……みんなのこと、ここに残って待ってる方が辛いもん」

ドキン「ホラーマン、多分アタシのことが好きなの……」

しょくぱん「そうなのか……?」

ドキン「ばいきんまんは、ホラーマンがアタシのために用意した便利道具みたいなものなの」

しょくぱん「どんなわがままでも聞いてくれるような都合のいい男か……酷い話だ」

ドキン「アタシが行けば、色仕掛けで役に立つかもしれないわ」

65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 01:41:46.91 ID:IaRJj+Pv0
――バイキン城――

ホラー「ホラ~ホラ~ホラ~♪」


アンパン「悪を懲らしめに来たぞ!」

しょくぱん「来たぞ!」

ドキン「来たわよ」

カレーパン「ウオオオオオオオオオ」

ロールパン「……」

ホラー「おやおや、ドキンちゃんまで」

ホラー「ところで……悪とは誰のことデスか?」

アンパン「ジャムおじさんを殺したヤツのことだ」

ホラー「ええええ! あれは正当防衛デスよ! あのまま放っておいたら、今私はここにいないでしょう」

アンパン「お前がジャム師匠を改造していなかったら今頃……」

ホラー「聞いていたんデスか……」

ホラー「あれは復讐に憑かれた彼自身が求めていたものなのデスよ」

ホラー「以前から彼からメカの発注を受けることがよくありましてねぇ」

アンパン「アンパンマン号はお前が作ったっていうのか!?」

ホラー「ええ、もちろん。まあ他にも色々と……」

ホラー「そのころから私は気づいていました。彼の眼の奥には、黒い炎が燃えていたのデス」

ホラー「メカを提供し続けていたある日デスねぇ……ちょうど実験台が欲しかった私は、一つ提案をしたんデスよ」

ホラー『アンパンマンのような力が欲しくないデスか?』

ホラー「彼は進んで改造を受けました。私の目に狂いはなかったのデス」

アンパン「そうやって……ばいきんまんも都合のいいように洗脳したんだろう!」

ホラー「洗脳だなんて……いやデスねぇ。教育デスよ、ばいきんまんが幸せに生きるための」

ホラー『欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れろ』

ホラー「幸せに生きるためには、ただそれだけでいいのに……。それができない輩が多すぎるんデスよ」

ホラー「この信念で幸せになれることは、私が身を持って証明しています!」

ホラー「ただ生きているだけではつまらないのデス。純粋な好奇心の探究! ああ……快楽に身が悶えます。これこそ我々が知性を持って生まれた意味だと言えるでしょう!」

ホラー「まだまだこの不思議世界で知るべきことはたくさん残っています」

ホラー「天から降ってきた二つの生命体のこと。あなたたちのような不思議生物のこと……私の探究心は尽きません!」

66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 01:42:24.16 ID:IaRJj+Pv0
アンパン「ああ……やっぱりお前は生粋の悪だ」

ホラー「悪って何デスかw ジャムおじさんに技術を教えたことデスか? ばいきんまんを教育したことデスか? つまり、悪を生み出したものは悪と言うことデスか?」

ホラー「その論理なら、私の親も悪。そのまた親も悪。みんな悪デスねぇ」



ホラー「そういう御託を並べて、私を死刑台に送る。そっちの方が、よっぽどホラーデスよ~」

アンパン「そうやって……自分がしたいことのために、他人を平気で踏み台に使うことが悪なんだよぉおおおおお」

アンパン「アァァァァアアアアンパアアァァァアァアアアンチ!!」ドガッ

ホラー「ホラ~~~~~~~~」

ホラー「ホラ~、強いですねぇ。流石は私の作った薬品が大量に練り込まれているだけはありますねぇ!」

ホラー「またしても私の実験は大成功だったのデス!」

アンパン「薬品もお前が作ったのか……」

アンパン「お前の本当に知るべきは……他人の気持ちだ!」

アンパン「アンパアァァァアァアアアンチ!!」ドガッ

ホラー「ホラ~~~~~~~~」

しょくぱん「しょくぱんち!」ドガッ

ホラー「ホラ~~~~~~~~」

カレーパン「オエエエエエエエエ」ゲロゲロ

ホラー「うわ……」

ロールパン「ローリングハリケーン!」シュルシュル

ホラー「ホラァアァアァアァアァアァアァア~~~~~」

ロールパン(手ごたえがない……?)

 ロールパンナちゃんは竜巻を止める。

ホラー「この竜巻、酔いそうになりますねぇ」

 ホラーマンの折れた骨や粉々になった骨は、徐々に再生していく。

アンパン「なんで全く効いてないんだ!?」

ドキン「あいつには、効かないのよ……」

ホラー「ええ、ドキンちゃんの言う通り! わたしは既にこの通り、もう死んでおりますので。死んでいる者を殺すことはできませんよ~」

アンパン「!?」

ホラー「永遠に研究できる体にしたんデスねぇ」

アンパン「……殺せないなら…………壊す!!」

アンパン「アアァァァァァァアアンパァァァアンチ!」ドガッ

ホラー「ホラ~~~~~~」

ホラー「少しだけ骨が折れてしまいましたかね~」ゴキ

ホラー「肩甲骨は砕けてますか」ゴキ

ホラー「ホラ~、このように例え私が壊れても、粉々になっても、元に戻ります」

ドキン「…………」

しょくぱん「無駄なのか……?」

アンパン「そんな……」

ホラー「では、次は私の番デスね」

アンパン「どうしようもないのか……?」

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/06(水) 23:44:01.87 ID:IaRJj+Pv0
ロールパン「待って」

アンパン「?」

ロールパン「どうして私たちを殺そうとするのかしら」

ホラー「それはこのまま放っておいたらいつかあなたたちは私を……」

ロールパン「どうせ死なないんでしょ?」

アンパン「そうじゃないか!」

ホラー「…………」

ロールパン「あなたの本体がどこかにあるのね」

ホラー「ホラ……」

アンパン「本体……だと?」

ロールパン「私たちを放置しておいたら、本体の場所をいつか突き止められるのが怖いのね?」

アンパン「……確かに、本当に研究の成果が知りたいなら、脳の部分はどこかで生きているはずだ」

ホラー「ホ……」

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 23:44:29.69 ID:IaRJj+Pv0
ホラー「ホラ~! 名推理デスねぇ!」

ホラー「デスが、それが分かったところで何ができるんデス!?」

ロールパン「探し回って、いつか突き止めてみせるわ」

ホラー「ホラ~! せいぜい一生かけて探し回ってください」

ドキン「待って」

ホラー「!!」

ドキン「しょくぱんまん様……私、言わなきゃいけないことがあるの……」

ホラー「やめなさい」

ドキン「ホラーマン、あなたは私にだけは何でも教えてくれたわよね……私はあなたのことなんてこれっぽっちも思ってなかったのに」

ドキン「ホラーマンの本体は……」

ホラー「やめなさい!」

ドキン「バイキン草なの!」

ホラー「ドキンちゃん!!!」

しょくぱん「……? バイキン草? ロールパンナちゃんに練り込まれているあのバイキン草……?」

ドキン「ホラーマンは自分をバイキン草に変えて、ばいきんまんに頼んでロールパンナちゃんの中に入れさせていたの……」

ドキン「こんなこと言ったら、優しいしょくぱんまん様はきっとロールパンナちゃんのところへ行ってしまうわ……」

ドキン「でも嘘をついたままの関係なんて、意味ないの……」

ドキン「わがままばっかり言っているアタシは、もう嫌なの……」

ロールパン「どきんちゃん……よく言ったわ」

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 23:45:13.99 ID:IaRJj+Pv0
しょくぱん「嘘……だろ……? じゃあ、ロールパンナちゃんが僕を振った理由っていうのは、自分の正体を知っていて……」

しょくぱん「僕を傷つけないように……?」

ロールパン「いえ……まさか私の中にホラーマンがいるなんて、思いもしなかったわ」

ロールパン「でも、少しそれとは違うけど、似たような理由よ」

しょくぱん「そうだったのか……」

しょくぱん「……でもごめん」

しょくぱん「僕はもう、ドキンちゃんを選んだんだ!」

ドキン「しょくぱんまん様……」

ロールパン「ふふ……あなたならそう答えてくれると思っていたわ」


ホラー「ま……まあ、私の本体の場所が分かったところで、意味がないんデスけどねぇ!!」

ホラー「ロールパンナちゃんを誰が殺せるというんデス!?」

ホラー「敵だろうと味方だろうと、二つの心を持つ彼女を殺せるはずない! だから私はバイキン草になって、ロールパンナちゃんの中にはいったんデスねぇ!」

ホラー「最初から私を殺すことなど不可能だったのデスねぇ!」

ホラー「最初から私は、無敵だったんデスねぇ!!」

アンパン「こ、こいつ……どこまで外道なんだ!!」

しょくぱん「ロールパンナちゃんを殺せるはずないじゃないか!!」

ロールパン「私を殺せる人が、一人だけいるわ……」

ホラー「ホラ?」

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 23:45:49.56 ID:IaRJj+Pv0
ロールパン「敵でも味方でもなく……善でも悪でもない……」

ロールパン「それは…………私」

一同「!!」

 ロールパンナちゃんは自らのリボンを、自分に向ける。

ロールパンナ「こんな理不尽な世界、壊れてしまえばいいと思っていた……。でもアンパンマン。あなたは、その理不尽に抗い続けた」

アンパン「ダメだ! 死んではいけない!」

ロールパン「あなたのひたむきな姿が、私を絶望から救ってくれたのよ」

ロールパン「ジャムおじさんががどんなつもりで上っ面の言葉を吐いていても、その言葉自体は本物だと言ってたじゃない?」

ロールパン「私も理不尽な世界で、嘘の自分でいなくちゃいけなかったけど……今まで生きて来た日々は、本物よね!」

ホラー「こうなったら、逃げ出すしかないデス!」

ホラー「新たな体を探しに!」

ホラー「出てこい! 私の本体!」

ブラックロールパン「うぅっ!」

アンパン「ロールパンナちゃん!」

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 23:46:15.77 ID:IaRJj+Pv0
ホラー「よく考えなさい。あなたはこのままではただの負け犬デスよ……?」

しょくぱん「ダメだ! そんなやつに負けるな!」

 ベルトのシグナルは青へ。

ブラックロールパン「負け犬……?」

ホラー「そうデス。理不尽な世界に翻弄され、ただ不幸になって終わる。欲しいものは奪われてしまうだけ……」

ホラー「どんな手段を使ってでも手に入れなさい!」

ブラックロールパン「しょくぱんまん……私の欲しかったもの……」

アンパン「違う!」

アンパン「人を不幸にしてまで手に入れたものに、意味なんかない!」

  ロールパンナちゃんのベルトのシグナルが、青と赤の間で揺れ動く。

ロールパン「そうよ……意味なんてない」

ホラー「何故ドキンちゃんはしょくぱんまんが手にはいったと思いますか!? 我がままだったからデス! あなたにはそれが足りなかった!」

 ベルトのシグナルは青へ。

ブラックロールパン「そうよ……私はずっと我慢してきた……。意味もなくっ!」

ホラー「ふふ……その通りです」

ブラックロールパン「ずっとずっと我慢してきた……我慢しながら、しょくぱんまんの顔をずっと横で見ていた……」

しょくぱん「…………」

ブラックロールパン「しょくぱんまんも我慢していたのに!」

ブラックロールパン「ずっとずっとしょくぱんまんの苦しそうな顔を見ているのが辛かった!」

 ロールパンナちゃんの頬に涙が伝う。

ブラックロールパン「今まで、苦しいぐらい好きでいてくれてありがとう」

ロールパン「ドキンちゃんを……幸せにしてあげてね!」

 鈍い音がロールパンナちゃんの腹部を貫く。
 ロールパンナちゃんは地面に伏した。
 その最後の顔は、とても安らかなものだった。

アンパン「ロールパンナちゃあああああああああああああん!!」

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/06(水) 23:47:09.20 ID:IaRJj+Pv0
――パン工場――

バタコ「みんなのお墓参り、行くわよ~」

カレー「ウェーーーーーーーーイww」

しょくぱん「そうだね」

ドキン「私も行くわ」

メロンパン「メロンパンナも~」

チーズ「アン……?」

バタコ「大丈夫大丈夫、ばいきんまんのお墓もちゃんとあるから」

アンパン「あ、僕は後から行きます。少し風に当たってきます」

バタコ「わかったわ。後からすぐ追いついてきてよね」

アンパン「はぁい」



 ヒュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーー

アンパン(ロールパンナちゃんが死んでもいつも通り世界は回る)

アンパン(町のみんなや少年、カレーパンマンは元には戻らない)

アンパン(僕は正義を貫き通したはずだ)

アンパン(なのに、どうしてこんなにも苦しいんだろう……)

アンパン(正義はこんなにも痛みを伴うものなのか?)

アンパンマン「正義ってなんなんだ……」

THE END