2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:26:45 ID:O8msAd/.

総統「大将……いよいよ我が帝国も」

総統「大小マゼランを統一し、新たな銀河へと進出した」

大将「はっ」

総統「しかし……退屈だ」

総統「たまには強敵に出会いたいものだね……」

大将「総統」

大将「恐れながら……これもまた、ひとつの理(ことわり)かと」

総統「ふふ……我が帝国が強すぎるだけ、という事かね?」

大将「はっ」

総統「ハッハッハッ」

総統「それじゃあ……そろそろ私は休ませてもらうよ」

大将「はっ! 総統万歳!」

引用元: 総統「我が帝国は、無敵すぎて退屈だ……」 


 

無敵の人(1) (週刊少年マガジンコミックス)
講談社 (2016-03-17)
売り上げランキング: 57,695
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:27:21 ID:O8msAd/.


―――――――――――


大将「総統」

大将「おはようございます」

総統「うむ、大将」

総統「何か変わった出来事は起きたかね?」

大将「我が帝国軍は快進撃を続け」

大将「本日もその領土を広げております」

総統「そうか」

大将「そして新たな銀河に進出した部隊が」

大将「植民に有望そうな惑星を発見。 現在、その惑星の知的生命体と」

大将「交渉に入った、との事です」

総統「ふむ……早くも足がかりとなる惑星を発見したか……」

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:27:52 ID:O8msAd/.

総統「さて……我が帝国の新たな二等臣民となるか」

総統「それとも戦う事を選ぶか」

大将「総統」

大将「我が帝国が欲するものは、あくまで領土です」

大将「我々より劣る者達を同化するのは……」

総統「大将」

大将「はっ」

総統「君は私に意見するのかね?」

大将「い、いえ、決してその様な……」

総統「…………」

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:28:26 ID:O8msAd/.

総統「大将」

大将「はっ」

総統「私はね……無理強いは好きではないのだよ」

総統「それに劣っている種族だからこそ」

総統「選択をさせているのだ」

総統「生か、死か、好きな方を『選べ』とね……」

大将「はっ……出過ぎた事を申しました」

総統「なに……気にする事ではない」

総統「これからも疑問に思うのなら、どんどん訪ねたまえ」

大将「はっ」

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:29:04 ID:O8msAd/.


―――――――――――


大将「総統」

総統「どうかしたかね? 大将」

大将「はっ……それが」

大将「先日申し上げた、新たな銀河の植民候補惑星なのですが……」

大将「交渉が決裂しました」

総統「ほう……」

大将「これにより我が帝国軍が」

大将「この植民候補惑星に進撃する許可を頂きたく……」

総統「うむ。 良くわかった、大将」

総統「さっそく進撃の許可を与えよう」

大将「はっ! 総統万歳!」

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:29:41 ID:O8msAd/.

総統「ところで……敵の戦力は どの程度なのかね?」

大将「はっ。 今現在、我が帝国が入手した情報ですと」

大将「その惑星を有する星系内でしか活動をしていない模様です」

総統「ほう」

総統「その程度の科学技術で我が帝国に楯突こうというのか……」

大将「はっ。 まったくもって度し難い愚か者です」

総統「甘く見るのは禁物だが……」

総統「正直、君の意見に賛成だ」

大将「はっ」

総統「もって数日、というところだろうが……続報を待つとしよう」

大将「どうぞ、吉報をお待ちください」

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:30:23 ID:O8msAd/.


―――――――――――


大将「総統……」

総統「何かね? 大将」

大将「…………」

大将「本日は、非常に残念な報告をしなければなりません」

総統「残念、とは?」

大将「はっ……先日、ご許可を頂いた」

大将「新しい銀河の植民候補惑星なのですが……」

総統「それがどうかしたのかね?」

大将「現地指揮官率いる部隊が、壊滅的被害を被(こうむ)りました」

総統「ほう……」

総統「詳しく聞かせてくれたまえ」

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:31:28 ID:O8msAd/.

大将「はっ」

大将「まず……この星系は Mクラスの恒星とそれの周りを囲む」

大将「8つの惑星で構成されております」

総統「…………」

大将「そして」

大将「この第三惑星が敵性知的生命体の母星です」

総統「うむ」

大将「我が帝国軍は、この星系・最外縁部を公転する惑星に 前線基地を築き」

大将「第5惑星付近で艦隊戦を展開、そして――」

総統「かなりの被害を被(こうむ)った、と……」

大将「その通りでございます」

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:32:20 ID:O8msAd/.

総統「具体的な被害数は分かっているのかね?」

大将「はっ……」

大将「艦隊旗艦を含む大型戦艦8、空母6、巡洋艦22、軽巡34……」

大将「駆逐艦は100隻を超えます」

総統「ほう……」

総統「派遣した部隊の実に半数だね」

大将「はっ……」

大将「恐れ多くも総統からお預かりした大切な艦船を」

大将「帝国二等臣民どもが、いたずらに損耗させてしまいました」

総統「大将」

大将「はっ」

総統「そんな風に卑下するものではない」

総統「彼らは我が帝国に忠誠を誓い、立派に戦ったのだ」

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:33:05 ID:O8msAd/.

大将「はっ……」

総統「今回の戦死者の家族にお悔やみと」

総統「帝国一等臣民の権利を与えたまえ」

大将「はっ! 寛大なご処置に彼らも さらなる忠誠を誓うでしょう!」

総統「為政者として当然の事だよ……大将」

大将「総統万歳!」

総統「……それで?」

総統「我が帝国軍が敗走する事になった原因は、何なのかね?」

総統「正直、内惑星開発程度の技術力で ここまでの被害は想定外だ」

大将「大雑把に申し上げますと……」

大将「艦載機の戦力を見誤っておりました、というところでしょうか」

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:33:54 ID:O8msAd/.

総統「艦載機、か……」

総統「派遣した部隊は航空母艦が少なかったという事なのだね?」

大将「新たに就任させた現地指揮官に」

大将「敵・艦載機群に注意するよう伝えております」

大将「また、増援部隊に多数の航空母艦及び、艦載機を派遣するよう」

大将「手配をしております」

大将「後は総統のご許可を賜(たまわ)りたく……」

総統「大将」

大将「はっ」

総統「私は仕事の出来る人間は好きだよ」

大将「はっ! 光栄であります!」

13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:35:31 ID:O8msAd/.

大将「さらに万全を期して」

大将「最前線基地で、隕石爆弾使用の準備を検討しております」

総統「ふむ……徹底しているね」

総統「残念だが」

総統「彼らの健闘もここまでか」

大将「その通りでございます」

総統「では、隕石爆弾使用も許可しよう」

大将「はっ! ありがとうございます!」

大将「吉報をお待ちください!」

総統「うむ」

大将「総統万歳!」

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:36:11 ID:O8msAd/.


―――――――――――


大将「総統閣下……」

総統「どうかしたのかね? 大将」

大将「申し訳ございません」

大将「例の植民候補惑星の事でございます……」

総統「…………」

総統「どうやら、良くない報告のようだね」

大将「はっ……」

総統「話したまえ」

大将「……我が帝国軍は、先にお話した残存の艦艇と」

大将「増援の部隊とを合わせ」

大将「総数、約500隻規模の艦隊を組み、進撃を開始いたしました」

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:36:57 ID:O8msAd/.

総統「いち恒星系を制圧するには、十分すぎる数だが……」

大将「わたくしめも そう思っておりました」

大将「大まかですが戦力差はおよそ20対1」

大将「必ず勝てると……いえ、負ける要素がないと判断していました」

総統「どうして覆されたのかね?」

大将「先日お話した、敵・艦載機」

大将「我が軍の技術顧問の見解は過小評価だった模様です」

総統「ほう……?」

大将「もちろん侮ったわけではありません」

大将「我が帝国軍とは、かなりかけ離れた設計思想だった為です」

総統「どの様な物か見てみたいものだな」

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:37:49 ID:O8msAd/.

大将「それでは、この映像をご覧下さい」

     ブウゥゥゥン…

総統「!?」

大将「驚かれるのも無理はありません」

総統「これは……人の形をしているな」

大将「その通りです」

総統「…………」

総統「なんという加速性……運動性……」

総統「我が帝国軍の艦載機のものとは比較にならんのではないか?」

大将「おっしゃる通りでございます」

大将「しかも……技術顧問が言うには」

大将「これだけの運動性を『人形の兵器』で実現させている事が」

大将「信じられない、と、言っておりました……」

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:38:35 ID:O8msAd/.

総統「…………」

総統「この兵器の名は、何と言うのかね?」

大将「はっ……恐れながら」

大将「連中は、MS(モビ○スーツ)と呼んでおります……が」

総統「? どうした? 歯切れが悪いようだが?」

大将「どうも、不明な点が多く……」

大将「他にもバル○リーとか、MA(メタ○アーマー)とか、呼称されている物もあって」

大将「統一感がございません……」

総統「…………」

大将「それからもう一つ」

大将「規格外の大きさ、動きをする物もいまして……」

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:39:16 ID:O8msAd/.

総統「それらは、MSとは呼ばれていないのかね?」

大将「左様でございます」

総統「規格外……と言っていたが」

総統「大きさ以外では どんな様子だ?」

大将「はっ……」

大将「いずれも前回の戦闘で見かけず、今回から参加した様なのですが」

大将「どうも、民間の研究機関に所属している模様です」

総統「待ちたまえ、大将」

総統「今……『民間』と言ったのかね?」

大将「はっ……そうでございます」

総統「軍に所属してない民間が、軍隊に匹敵する戦力を保持していると?」

大将「はっ……」

総統「…………」

19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:40:23 ID:O8msAd/.

大将「しかも、驚くべき事に」

大将「我が帝国でも見た事のない未知の動力源を使用し」

大将「しかもそれは一つや二つではないのです」

総統「」

大将「たとえば……連中はマジ○ガーZと呼ぶこの機体」

大将「『光○力エネルギー』というものを使用しております」

大将「こちらは『ゲッ○ー線』、こちらは『ビ○ラー』……といった具合に」

総統「…………」

大将「今ご説明いたした動力源は、いずれも名前しか分かっておらず」

大将「それすら不明な機体も数多く存在します」

総統「…………」

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:41:00 ID:O8msAd/.

総統「我が帝国軍の損害は?」

大将「……約500隻の艦艇の内」

大将「半数は沈められ……残った方も」

大将「航行に支障をきたす程の損傷を被(こうむ)っております」

大将「特に酷いのが空母群で……」

大将「生き残った艦は数隻、という有様です」

総統「……ふむ」

総統「どうやら、私自身も敵を侮っていた様だな」

総統「その植民候補惑星にも」

総統「なかなか切れ者が居るらしい」

総統「…………」

21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:41:47 ID:O8msAd/.

総統「大将」

大将「はっ……」

総統「その……植民候補の惑星」

総統「彼らは、何と呼んでいるのかね?」

大将「はっ。 彼らは自分達の母星を『地球』と呼んでおります」

総統「……地球か」

総統「覚えておこう」

大将「…………」

大将「総統」

総統「何かね?」

22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:42:27 ID:O8msAd/.

大将「私は……大きな失策を」

総統「大将」

大将「は、はっ!」

総統「これからの対策はあるのかね?」

大将「!」

大将「……準備させておきました、隕石兵器」

大将「あれならば、あるいは……」

総統「そうか……」

総統「ならば、さっそく使いたまえ」

総統「私は汚名返上の機会を奪ったりはしないよ」

大将「そ、総統……」

総統「ただし……あと二回失敗したら死刑だ」

大将「! こ、心得ております!」

大将「総統万歳!」

23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:43:15 ID:O8msAd/.


―――――――――――


中将「おはようございます、総統」

総統「うむ、おは……ん?」

総統「大将はどうしたのかね?」

中将「はっ。陣頭指揮を取るとおっしゃりまして……」

中将「大将自ら御出陣なさいました」

総統「ほう……」

総統「前線へ赴いたのか。ずいぶんと気合を入れている様だ」

総統「今回は良い報告を聞けそうだな」

中将「はっ。私もそう思います」

総統「では、私も私の仕事をしなくてはな」

24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:44:09 ID:O8msAd/.


―――――――――――


中将「総統……」

総統「ん? どうしたのかね、中将」

中将「非常に残念な報告をせねばなりません」

総統「……ほう」

総統「大将の事かね」

中将「はっ……」

総統「続けたまえ」

中将「分かりました」

中将「今回、大将は隕石兵器を駆使して地球艦隊を攻撃しましたが」

中将「配備していた基地ごと壊滅いたしました」

25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:45:12 ID:O8msAd/.

総統「……大将はどうなったのかね?」

中将「その戦いの後、残存艦艇をまとめ」

中将「新たな遠征艦隊を加え、艦隊戦を挑みました」

中将「その数、およそ2800隻」

総統「我が帝国軍全艦艇の一割に匹敵する艦艇数ではないか」

総統「それで……結果は?」

中将「三度にわたる激戦の末、大将は旗艦もろとも戦死……」

中将「艦隊は……全滅した、との事です」

総統「」

総統「一隻残らずか!?」

中将「足の速い駆逐艦数隻が、かろうじて離脱する事に成功し」

中将「今回の報告をする事になりました」

26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:45:59 ID:O8msAd/.

総統「何という事だ……」

中将「総統」

中将「これはもはや、我が帝国の危機にあたると思われます」

中将「恐れながら……我が帝国の総力を上げて、地球艦隊を迎え撃つべきかと……」

総統「うむ」

総統「これより我が帝国は、総力を結集し」

総統「地球艦隊を迎撃する!」

中将「はっ!」

総統「各星系に散らばる艦艇を必要最小限残し、我が帝国本星に終結」

総統「これを持って、地球艦隊を撃滅せよ!」

中将「総統万歳!」

27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:46:31 ID:O8msAd/.


―――――――――――


中将「…………」

総統「…………」

中将「総統……心中お察しします」

中将「しかし、何とか離脱は成功しました」

中将「どこかの植民惑星で再起を図りましょう」

総統「…………」

総統「……私はうぬぼれていたのだろうか」

中将「まさか。御立派な戦いぶりでございました」

中将「ただ、敵が……敵のテクノロジーが上回っていただけで」

中将「あえて言うのならば、運が無かったのでございます」

総統「…………」

28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/02/25(土) 01:47:22 ID:O8msAd/.

総統「戦艦を蹴り一発で吹き飛ばしたり……」

総統「ブラックホールを小型ミサイルで打ち出したり……」

総統「惑星を真っ二つにぶった切ったりするテクノロジーなんて……」

総統「存在するのだな……」





おわり