1: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 22:58:44.28 ID:WdOmlogO0
※ダンガンロンパV3ネタバレ有り、未プレイ者はブラウザバック推奨です。







「…………………………」

「………………しかし………………まだ……」

「……駄目………………それに……」

「………………そうだ………………強行…………」

「……でも…………しか…………」

「……………………」

「……入れ替………………大丈…………」

「……………………」

「……………ね……」

「…………い…………」

「……さあ…………始…………」



「次………………周………………」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491659924

引用元: 夢野「強くてニューゲーム……ってウチなのか?」『ダンガンロンパV3』 


 

2: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:00:57.05 ID:WdOmlogO0


プ ロ ロ ー グ


ニ ュ ー ダ ン ガ ン ロ ン パ V4


み ん な の コ ロ シ ア イ 新 学 期



3: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:02:13.24 ID:WdOmlogO0
夢野(おかしい)

夢野(うちらは才囚学園を卒業して、最原とハルマキの三人で外の世界に出たはずじゃ)

夢野(なのに……)


<地下道>

王馬「正論だから何も言えないんだよ!」

赤松「でも、私はみんなでここから出て友達になるために……!」



夢野(どうして……才囚学園に戻ってきておるのか?)



夢野(それにコロシアイで減っていったはずの生徒が、ウチを含めて16人揃っておる)

夢野(どうして……生き返ったのか?)



夢野(それに目の前で繰り広げられている騒動にも覚えがある)

夢野(コロシアイ学園生活のルールが発表されて、その後地下道に挑戦し続けた後の一悶着じゃ)

夢野(どうして……また同じことをしておるのか?)



夢野「…………」

夢野(これは……総合して考えると……有り得ないことじゃが……)



夢野「コロシアイ学園生活の……最初に戻ったということじゃな……」

4: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:03:42.56 ID:WdOmlogO0
夢野「ついにウチにも時間遡行魔法が……!」

夢野「……いや、ないのう」

夢野(時間遡行魔法を使うにはウチのレベルじゃMPが足りないし、禁呪のそれを扱える者がおるはずない)

夢野「…………」

夢野(それに……時が戻ったというだけではないはずじゃ)

夢野(こうしてコロシアイ学園生活の最初に戻ってきたのに、ウチにはコロシアイ学園生活を生き残った記憶がある)



夢野(天海が殺されたことも、赤松がおしおきされたことも)

夢野(星が殺されたことも、東条がおしおきされたことも)

夢野(アンジーと転子が殺されたことも、真宮寺がおしおきされたことも)

夢野(入間が殺されたことも、ゴン太がおしおきされたことも)

夢野(王馬が殺されたことも、百田がおしおき最中に死んだことも)

夢野(白銀がこのコロシアイの首謀者で、キーボが命を賭けて外の世界への道を開いたことも)

夢野「全部、覚えておる」

5: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:05:02.16 ID:WdOmlogO0
夢野(だったらこの世界は何なんじゃ……?)

夢野(死人が生き返ることは有り得ん)

夢野(だったら全部……嘘じゃったのか?)

夢野(白銀の言っておった設定。死んだのは茶番で、本当は生きていたということに…………)



最原『この胸の痛みは……本物だ!』

最原『仲間を失った悲しみは本物なんだ!』



夢野「……それは無いのう」

夢野(ウチらが生きていたことを否定してしまう)

夢野(じゃが……だとするとこの状況は本当に説明が付かんぞ……?)





茶柱「ほら、夢野さん!」

6: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:06:40.19 ID:WdOmlogO0
夢野「……転子?」

夢野(悩んでおると、気づけば転子が近くまで寄って来ておった)



真宮寺「もう夜も遅いからネ」

東条「宿舎で休むことにしましょう」

星「そうだな……」



夢野(いつの間にか言い争いも終わっておる。記憶の中でもこの後は宿舎に戻っていたし、それは今も同じということじゃな)

転子「どどどどうしたんですか!?」

夢野「……?」

転子「ゆ、夢野さんが転子のことを名前で呼ぶだなんて……あっ、もちろんウェルカムですよ!!」

夢野「…………そうじゃな」

夢野(時間が戻ったのじゃ……関係性も戻るに決まっておる)

夢野(そして……死も巻き戻った)

7: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:07:38.66 ID:WdOmlogO0
夢野「………………うっ……」

転子「夢野さん?」

夢野(転子が……生きておる……)

夢野(どういう理屈なのかは分からない……)

夢野(じゃが今はこの奇跡を…………)



夢野「ううっ…………ひぐっ、うわぁぁぁん……転子……えぐっ、転子ぉ……!!」 ブワッ!!

夢野(気づくと涙が溢れていた)

転子「ど、どうしましたか夢野さん!?」

夢野「転子……転子ぉ……! 生きておって良かったぞ……!!」 ダキッ

夢野(心配してくれた転子に抱きつく)

転子「生きていて……? よく分かりませんが…………泣きたいときは思いっきり泣いてスッキリした方がいいですよ」 ナデナデ

夢野(転子は突然の状況に戸惑いながらもウチの頭を引き寄せて撫でる)

夢野(うすうす勘づいておった……前周回通りの動きをするみんなの様子に)

夢野(……どうやらみんなには、転子には前のコロシアイ学園生活の記憶が無い)

夢野(となればウチは突然泣き出したおかしい人となる……でも……それでも……!)

夢野「うわぁぁぁぁん……ひぐっ、転子……転子ぉ……!」



夢野(今はこの涙が止まりそうには無かった)

8: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:08:44.22 ID:WdOmlogO0
<翌朝・食堂>

夢野(突然泣き出したことを心配されながらも、昨夜は自室に戻って寝た)

夢野(溜め込んでいた感情を吐き出してスッキリしたわい)

夢野(さて、次はこれからどう動くか考えるべきじゃが……)

夢野「………………」

夢野(コロシアイ学園生活の最初に戻った今の状況を再確認すると、すぐに成し遂げたいことが一つ思い浮かぶ)

夢野(じゃがそれは困難なことで……)

夢野「うーむ……どうすればいいんじゃ?」

夢野「考えるのは苦手じゃな。もっと頭の回る人間が……」






最原「夢野さん、少しいいかな?」

9: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:10:34.61 ID:WdOmlogO0
夢野「最原、どうしたか?」

夢野(超高校級の探偵、最原終一)

夢野(一周目の裁判をいつもリードして、最後の裁判では希望も絶望も選ばない道を示した)

夢野(そしてウチとハルマキの三人で外の世界に向かって……その後の記憶は無い)

夢野(コロシアイ学園生活の最初ということで、まだ帽子を被っておる最原じゃが……しかし何の用じゃろうか……?)





最原「あー……えっと夢野さんは『ダンガンロンパ』って知ってる?」 ボソッ





夢野「……っ!?」

夢野(最原が耳打ちした言葉。それは……前周回の中で判明した…………まさか……!?)

最原「……うん、良かった」

夢野(最原はウチの反応から察したようにうなずく)



最原「ちょっと付いてきてもらえる?」

最原「ここじゃ話しづらいから」

夢野(人目を気にしておる最原。食堂には生徒が集まっておる、出来れば他の人に聞かれたくない話というころじゃろう)

夢野「……分かった」

最原「うん、じゃあこっちに」

10: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:13:40.02 ID:WdOmlogO0
<図書室>

夢野「そういえば最原、帽子は取らんのか?」

最原「しばらくは付けておくよ、急に変わってもおかしいからね」

夢野(話しながらやってきたのは図書室。生徒が中々近寄らないため、内緒話にはちょうどいい)

夢野(といっても、先客が一人おったが……それは予想通りじゃな)



春川「遅かったね」

最原「ごめんごめん」

夢野「やっぱりハルマキもおったか」

春川「その呼び方は……まあいいか、証明にもなったし」

夢野(随分と丸い印象のハルマキ……やはりじゃな)

夢野「早速じゃが……」

最原「あ、ごめん。ちょっと待って」

11: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:15:47.73 ID:WdOmlogO0
夢野(最原は制止をかけると、何やら機械を取り出してスイッチを付けた)

最原「エレクトフィールド、機動っと。これで良し」

夢野「……? 何じゃ、その機械は」

最原「エレクトボムの装置版だよ。電子機器無効化のフィールドを周囲に形成する」

最原「入間さんに作ってもらったんだ。モノチッチによる監視を無効にするためにね」

春川「監視できなくて怪しまれるかもしれないけど、記憶を持っているって気づかれるよりはマシなはずだよ」

最原「ボムと違って範囲は狭くなってるけど、その分充電すれば何回でも使えるってさ」

最原「作ってもらう前は出来るわけ無えだろって、突っ返されたけど……今朝起きてみたら使い方と一緒に部屋の前に置かれていたんだ」

最原「今朝お礼を言ったら『はあ? 何の話だよ』って、照れたのか知らない振りをされたし」

夢野「……つくづくすごい才能じゃな、入間は」

夢野(そしてスラスラと最原から出てきた既知の単語は……つまり)



最原「状況はおそらく夢野さんも分かってると思うけど、一応確認ね」

12: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:17:36.14 ID:WdOmlogO0




最原「夢野さんには一度コロシアイ学園生活を生き残った記憶があるんだよね?」

夢野「そうじゃな」



最原「そう……それはどういうわけか僕にもあるし」

春川「私にもあるよ」




13: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:19:46.69 ID:WdOmlogO0
三人「「「………………」」」

夢野(しばし三人で顔を付き合わせて無言になる)

夢野(最初に口を開いたのはウチじゃった)

夢野「最原、これがどういう状況なのか説明せい。コロシアイは終わったはずじゃなかったのか?」

最原「い、いや流石に分からないよ……。想像したことも無い事態だし……ああでも」

夢野「何じゃ?」

最原「僕たち三人の共通項からしてあの外の世界に出たことが原因ってことじゃないかな? みんなもそこまでしか記憶がないでしょ?」

春川「……だね」

夢野「じゃな」

夢野(外の世界に出ようとして、閃光に包まれた後、気が付いたらあの地下道におったからな)

14: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:22:22.67 ID:WdOmlogO0
夢野「にしても最原とハルマキもとはな……心強いぞ」

最原「……まあ実を言うと、僕も最初は一人でこの異常事態を切り抜けないといけないのか、って途方に暮れていたけどね」

最原「一度コロシアイ学園生活を生き残った記憶があるってことをみんなに訴えても、信じられるはずがないし」

最原「だから前と同じように行動して、目立たないようにしていたけど……」

最原「でも、そんなときに夢野さんがみんなの前で泣いた……一周目と違う行動を取ったんだ」

夢野「ウチが……」

春川「それで同じように記憶を持った人がいるんじゃないかって思って、手当たり次第に声をかけたんだっけ?」

夢野「そうなのか?」

最原「うん。春川さんには夢野さんと同じで、前回の生き残りしか知らない情報……『ダンガンロンパ』の一言を言ってね」

最原「反応があれば覚えていることになるし、無ければ……まあ僕がちょっとおかしなことを言い出した人になるだけだよ」

春川「それで反応した私が打ち明けて、共有したってこと」

最原「他の人にもそれぞれにあった前周回でしか知れない情報をほのめかしてみたけど……誰も反応はなかった」

最原「おそらく前回のコロシアイを覚えているのは僕たち三人だけで確定だよ」

春川「まあ殺された記憶を引き継ぐってのも怖いし」

夢野「じゃな」

16: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:24:30.61 ID:WdOmlogO0
春川「それで……これからどうするの?」

春川「理由は分からないけどコロシアイ学園生活の最初に戻った私たち……何をするべきだと思う?」

最原「一応目標はあるけど……」

夢野「奇遇じゃな……ウチにもある」

春川「私にも」

最原「……じゃあ同時に発表しようか。せーの!」


最原「コロシアイを……何をしてでも阻止する!」
夢野「コロシアイを阻止するんじゃ!」
春川「コロシアイを阻止しないと」


最原「今度こそみんなを死なせない……! みんなで脱出して……そして友達になるんだ!」

夢野「そうじゃ。みんなは死なせん!」

春川「……みんなを守るよ」

今度こそ仲間を失わせない。

三人の目標が一つになる。

夢野秘密子は心強い仲間と共に、再びコロシアイ学園生活を送ることとなった。

17: ◆YySYGxxFkU 2017/04/08(土) 23:25:36.64 ID:WdOmlogO0


プ ロ ロ ー グ


ニ ュ ー ダ ン ガ ン ロ ン パ V4


み ん な の コ ロ シ ア イ 新 学 期


E   N   D



31: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:33:02.95 ID:KRY1i4YX0


C H A P T E R 1


Who is R――――――?


(非) 日 常 編



32: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:34:22.66 ID:KRY1i4YX0
夢野(舞台は引き続き図書室。監視防止のエレクトフィールドを発動させたまま話は進む)



最原「良かったみんな同じ思いで……じゃあ、早速だけど現状を把握しておこうか」

最原「僕たちは一度コロシアイ学園生活を生き残った記憶を持って、またこのコロシアイ学園生活の最初に戻った」

最原「その記憶の中のコロシアイ学園生活を一周目、今巻き込まれている方を二周目って呼ぶことにするね」

春川「分かった」

最原「記憶を持っているのは僕たち三人だけ。他の13人は持っていない」

最原「その持っていない人たちは、僕たちが関わらない限りは一周目と同じ行動をするみたいだ」

夢野「ウチらが関わらない限り?」

最原「うん。地下道の騒動みたいに一周目と同じ行動をしていたけど、夢野さんが泣き出したときに茶柱さんはそれに対応した」

最原「完全に一周目と同じ行動だとしたら、夢野さんを無視しないとおかしいでしょ?」

33: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:35:22.72 ID:KRY1i4YX0
春川「つまりみんなは同じように行動するけど、記憶を持つ私たちが干渉することで違う結果を出すことが出来るってこと?」

最原「そうだね。だから……僕たちが行動することで、一周目と違ってコロシアイが発生しない未来を掴むことは出来るはずなんだ」

夢野「それは……希望のある話じゃな」

夢野(どうあがいてもコロシアイは避けられないという絶望的な未来じゃなくて良かったわい)



最原「だからコロシアイ学園生活阻止のために行動するとき以外は、僕たちも一周目と違う行動はあまりしない方がいいと思う」

最原「何が原因でこの二周目の世界が変わるか分からないからね」

最原「ルートを外れると、僕たちが持っている記憶のアドバンテージが無くなっていくわけだし」

34: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:36:41.23 ID:KRY1i4YX0
最原「と、基本的なことはこれくらいかな」

最原「次はコロシアイを止めるための具体的方法を考えていきたいんだけど……」

春川「あ、それなら一つ提案があるんだけど」

夢野「何じゃ?」

春川「今すぐに隠し通路を暴くっていうのは駄目なの?」

夢野「隠し通路って……そこの首謀者の部屋のか?」

夢野(ウチは奥の本棚を指さす。あそこの裏に隠し扉があるはず)

春川「そう。こっち側の扉はカードキーが無いと入れないけど、女子トイレの方からならカードキーが無くても入れるでしょ?」

春川「それで隠し部屋までみんなで行けば首謀者がいることが分かって、みんなで一致団結出来ると思うんだけど」

最原「……うーん、正直それは博打だと思うな」

35: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:38:24.87 ID:KRY1i4YX0
最原「部屋だけ見ても、そういう部屋があるんだなって思われるだけだし」

最原「マザーモノクマから情報を引き出せたのも、あれがコロシアイ学園生活が終わりそうだったからだと思うんだ」

最原「たぶんまだ始まったばかりの状態じゃ協力してくれないよ」



春川「だったらもっと決定的な場面をみんなに見せたら? 例えば白銀が隠し部屋にいるところを目撃するとか」



最原「確かにそれなら、首謀者が誰か分かってコロシアイも終わらせることが出来るかもしれないけど」

最原「隠し部屋にいる白銀さんはマザーモノクマを通じてモノチッチで学校中の動向を把握できるからね」

最原「意図を察知された時点で速やかに隠し部屋を出ると思うよ」

最原「そうして失敗したら、どうして僕たちが隠し部屋を知っていたのか、モノクマと白銀さんに警戒されることになる」

最原「そうなると動きにくくなると思うんだ」

最原「決定的な場面じゃなければモノクマがどうにでも言い訳出来るだろうし……やっぱり難しいと思うよ」

最原「それと同じで思い出しライトを作る教室にも手は出さない方がいいかな」



夢野「なるほどじゃな」

春川「そこまで考えてたんだ。……思いつきで提案してごめん」

最原「そ、そんな謝らないでよ。色んな意見を出し合った方がいいって。僕だって気づいていないことは当然あるだろうし」

36: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:39:50.29 ID:KRY1i4YX0
夢野(その後もコロシアイを止めるために、色々と話しあうウチら)

夢野(話題も少なくなってきて、そろそろ話し合いも終わりにしようかと思ったそのとき)



赤松「あ、最原君! ここにいたんだ!」



夢野(図書室の扉が開いて、赤松が入ってきた)

最原「あ、赤松さん……!? どうしたの!?」

赤松「私の研究教室が解放されたみたいだから、呼びに来たんだよ!」

最原「そ、そうだったんだ……」



春川「……あれ? 前周回だとまだじゃなかった?」

夢野「確かに解放されるのはもっと後じゃったはず……」

夢野(何かあったのか……)

37: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:40:50.16 ID:KRY1i4YX0
赤松「それにしても最原君、教室をさっさと解放しろってモノクマーズに詰め寄ってたけど……そのおかげで急ピッチで作業を進めたみたいだから感謝しないとね!」

春川「……そんなことしてたの?」

最原「い、いや、それは……その……」

夢野「何じゃ、早く解放されたのはそれが理由か」

春川「『コロシアイ学園生活阻止のために行動するとき以外は、僕たちも一周目と違う行動はあまりしない方がいいと思う』……じゃなかったっけ?」

最原「は、はい……耳に痛い言葉です……」

38: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:41:49.29 ID:KRY1i4YX0
赤松「それじゃ行こう! ピアノが私を待っている……って、あれ今、取り込み中だった?」

夢野(そのときになってようやく赤松はウチらの存在に気づいたようだ)

春川「…………それなら大丈夫、もう終わったから」

最原「え、いや、でも話をまとめて……」

夢野「そんなの後回しじゃ! 今はウチらのことは気にせず行ってこい!」

春川「それだけ赤松のピアノが聞きたかったってことでしょ?」

最原「うっ…………じゃ、じゃあごめんね」

夢野(バツが悪そうに最原は謝ると赤松の方へ向かう)



赤松「それじゃ行こっか!」

最原「……うん。そうだね!」

夢野(じゃが、二人が並んで歩き出したときには、最原はもうすっかり笑顔になっておってた)

39: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:43:01.62 ID:KRY1i4YX0
春川「……まあ、それだけ会いたかったってことだね。こんな奇跡みたいな事態が起こらない限り、無理だったはずだし」

春川「研究教室が早く解放されたくらいじゃ展開が変わるとも思えないしいいか」

夢野「……なんて、冷静に言ってるハルマキの方はどうなんじゃ?」

春川「私?」

夢野「百田が生きてて嬉しいんじゃろ? あれだけの告白もしたしな」

春川「っ……!? そ、それは…………こ、殺されたいの!?」

夢野「かかっ、そんな上擦った声で言われても怖くないのう」

夢野(顔を真っ赤にしているハルマキ)

春川「そ、そりゃ嬉しいけど……あっちは記憶が無くなっているわけだし、どういう風に接していいのか…………って、言ってる夢野の方こそどうなのよ!」

夢野「ウチか?」

春川「昨日あれだけ転子、転子言って泣いたくせに!」

夢野「ウチは…………そうじゃな嬉しいぞ。もう一度転子に会うことが出来たんじゃからな」

春川「…………」

40: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:44:47.50 ID:KRY1i4YX0
夢野「意地を張るのはいいんじゃが……後悔だけはせんようにな」

夢野「またこんな奇跡が起きるとは限らんしな」

春川「…………分かってる。じゃあ私も行くから」

夢野(ハルマキは踵を返して、図書室を後にしようとする。その背中に声をかけた)

夢野「どこに行くつもりじゃ? 百田のところか?」

春川「……そ、そうよ! も、百田のところよ!! 悪いっ!?」

夢野「そうか……ふむふむ、そうか」 ニヤニヤ

春川「……な、何よ。そのにやけ顔……何か言いたいの!?」

夢野「…………別に何でも無いぞ~」 ニヤニヤ

春川「だ、だったら何よその微妙な含み!! ……ああもう、殺す! 絶対殺すからね!!」

夢野(春川らしい捨てセリフと共に図書室の扉をバタンと大きな音を立てて閉める)

夢野「ハルマキも最初の頃とは比べものにならないほどに、感情豊かになったな」

夢野「………………」

夢野「さて……ウチも転子のところに行こうかの」

41: ◆YySYGxxFkU 2017/04/09(日) 20:46:01.09 ID:KRY1i4YX0
<数日後・朝>

夢野(三人ともに生き返った大事な人と過ごす日々が続いた)

夢野(それはそれは夢のような時間じゃったが)

夢野(……そろそろ、現実と向かい合う時間のようじゃな)



モノクマ「それじゃ動機の発表行くよ!」

モノクマ「なんと初回特典として、最初のクロは裁判無しで卒業できます!!」


夢野(その後、エグイサルによるモノクマの誤爆があって)


<翌日の朝>


モノクマ「タイムリミットを設けます!」

モノクマ「二日後の夜時間までにコロシアイが発生しなければ、コロシアイに参加させられた生徒は全員死亡!」

モノクマ「噂のモノクマ発生装置から、大量のモノクマを出動させるよ!」



夢野(モノクマ復活から、動機が完全に発表される)

夢野(一回目の事件……)

夢野(タイムリミット以内にコロシアイが発生しなければ全滅の……全員生還のための一番の難所が始まる)

49: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:35:39.36 ID:8stCR/ZO0
<図書室>

夢野(動機が完全に発表された後、ウチらは図書室に集まっていた)

夢野(最原が監視防止のため、エレクトフィールドのスイッチを入れてから口を開く)



最原「動機も発表されたし一回目の事件を防ぐための話し合いを開始するよ」

春川「赤松が天海を殺してしまった……と見せかけて、本当は首謀者の白銀が殺した事件」

夢野「……そもそも事件を防ぐだけなら簡単じゃな」

夢野(天海を引き留める、赤松の仕掛けを妨害する。色んな方法が思いつく)



最原「まあ、そもそも同じ事件が起きることは無いけどね」

夢野「そうなのか?」

最原「だって今周回は赤松さんに首謀者のことも、図書室の隠し扉のことも教えていないんだ」

最原「首謀者の正体も分かっているわけだし、探りを入れる必要も無いでしょ?」

最原「一応確認のためカードリーダーにホコリはセットしてたけど、やっぱり落ちているね」

夢野「なるほど……」

50: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:38:58.74 ID:8stCR/ZO0
春川「まあそんな言い訳して、結局は赤松を巻き込みたくないだけって話なんだろうけど……」

最原「そ、そんなことないって!」

春川「本当に?」

最原「だ、だから……そ、その…………ああもうその通りだよ!」

夢野「何じゃ、そうなのか」

最原「自分で偉そうに一周目と違う行動はしない方がいいと思うって言っておいて……ごめん」

夢野(最原が謝る。それほど赤松を大事に思っているということじゃろう)

51: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:40:30.95 ID:8stCR/ZO0
春川「……まあ、いいよ。今回の事件では赤松も天海もどうでもいいし」

春川「最大の障害は別なんだから」

夢野「首謀者の白銀……じゃな」

夢野(超高校級のコスプレイヤーは仮の姿)

夢野(このコロシアイの仕掛け人、チームダンガンロンパの社員こそが真の肩書き)

最原「本当のクロが白銀さんだってこともあるけど、それ以上に重要なのがカウントダウンの方だね」

春川「時間までに殺さなければコロシアイに参加させられた生徒は全員死亡……」

最原「だからどうにかして、カウントダウンを撤回してもらわないといけない」

夢野「これをどうにかせん限り、全員で生還するのは無理じゃからな」

夢野(そのためにカウントダウンが発表されたこのタイミングで動き出すことは、前の話し合いで決めていた)

52: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:41:47.53 ID:8stCR/ZO0
夢野「撤回……って簡単に言うけど、何かアテはあるのか?」

最原「正直厳しいけど……とりあえずモノクマ相手に交渉してみるよ。白銀さんが首謀者だって、今の時点で僕が分かっているのもおかしいし」

最原「あんまり大勢で行くわけにもいかないから、僕に任せて」



春川「そういうのは最原が得意だろうから任せる。…………でも、正直言ってそれより良い方法があると思うけど」

最原「…………それは駄目だよ、春川さん」

夢野「?」

夢野(何の方法じゃ……? 最原は察しているようじゃが)



春川「……そう。じゃあとりあえずは最原を信じて任せるけど」

春川「駄目だったらそういう選択肢があるってことは忘れないでね」

53: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:43:06.54 ID:8stCR/ZO0
夢野(そのまま話し合いは解散となった)

夢野(最原は白銀を探しに、春川もすることがあるのか図書室を出ていく)

夢野「うーむ…………」

夢野(うちはこれから何を……最原に任せっぱなしなのも悪いが、人数が多ければいいという話でもない……)

夢野(下手に動いて一周目と違うルートに入っても困る)



夢野(一人で悩んでおると、図書室の扉が開いて天海が入ってきた)

天海「おや、こんなところでどうかしたんすか、夢野さん?」

夢野「天海か」

54: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:48:59.12 ID:8stCR/ZO0
夢野「ちょっとな……天海の方こそ何の用で」

天海「そりゃ図書室っすよ? 本を取りに来たに決まってるっす」

夢野「まあ、そうじゃが…………」

夢野(それにしては何か落ち着きが無いような……)





天海「……そういえばちょっと夢野さんに質問してもいいっすか?」

夢野「ん、何じゃ?」

天海「赤松さんのここからみんなで出て、友達になるって目標……どう思ったっすか?」

55: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:50:32.14 ID:8stCR/ZO0
夢野「……叶えたいと思っておるぞ」

夢野「というより否定する人はおらんじゃろ」

天海「そうっすね……俺もそう思ったっす」

天海「でも、現実にはモノクマにも動機なんて出されて……それは危うい状況っす」

天海「このゲームを終わらせるためには……どうしたらいいんすかね?」

夢野「それは……」

天海「……ああ、いやこんなこと聞かれても困るっすよね。独り言だと思って聞き流してください」



夢野(それだけ言うと、天海は図書室の物色を始めた)

夢野(会話は打ち切りということじゃろう)

夢野(邪魔できる様子じゃないので図書室を出る……その直前)



夢野「……ん?」

夢野(何か今の天海との会話に違和感を覚えた)

56: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:51:38.11 ID:8stCR/ZO0
<校舎二階>

夢野(図書室を出て、特に当てもなく校舎をさまよう)

夢野「二階には普通の教室が二つと赤松の教室があったはずじゃな」

夢野(そういえば早めに解放されたという話じゃったが……今はどうなっておるのかのう?)

夢野(ウチは階段に向かうと)

~~♪ ~~♪

夢野「この音は……」

夢野(ピアノの音色が聞こえてくる)

夢野(もちろん弾いておるのは赤松だと思うが……)

夢野(階段を登り、研究教室の前まで来て、扉を開くと)

赤松「……」 タタタラタララ

夢野(赤松が一心不乱にピアノに向かい合っていた)

57: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:53:15.80 ID:8stCR/ZO0
夢野「赤松、何を……」

赤松「……」タラララララッ

夢野「聞こえておらんか……そもそも扉が開いたことに気づいているかも怪しいのう……」

夢野(それだけピアノに集中しておるということか)



夢野(演奏終わりを待つこと数分)

赤松「………………ん、っと!」

パチパチパチ!

赤松「え、拍手……って、夢野さん!?」

夢野「やっぱり気づいておらんかったか」

赤松「あれ……もしかして結構前からいた?」

夢野「数分前じゃな」

赤松「ご、ごめん……私ピアノを演奏していると他のことに気が回らないから」

夢野「いや、別によい。こんなに特等席で超高校級のピアニストの演奏を聞けたんじゃ」

夢野「文句を言ったら罰が当たる」

58: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:54:57.83 ID:8stCR/ZO0
赤松「そういってもらえると嬉しいけど……あ、何か私に用があるの?」

夢野「いや、別に用がある訳ではない。たまたま通りがかっただけじゃ」

赤松「そう……」

赤松「………………」

夢野(赤松がうつむいて黙っている)

夢野(人前で弱った姿を見せるのは珍しいの……)

夢野(何か……悩んでいる様子じゃが……)



赤松「駄目……だね」

夢野「……?」

赤松「じっとしていると……どうしようもなく不安が沸き上がってくるよ……」

夢野「え?」

夢野(赤松がポツりと言葉をこぼす)

赤松「カウントダウン……二日後の夜時間……全員死亡…………」

赤松「だったら………みんなを守るためには…………いっそのこと…………」

夢野「あ、赤松! それは……!」

59: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:57:41.69 ID:8stCR/ZO0
赤松「……っ!」

夢野(そのときになってようやく赤松はウチが目の前にいることを思い出したようだ)

赤松「……ごめん、夢野さん。ちょっと一人にさせてくれる?」

夢野「いいぞ。……じゃがあまり思い詰めんようにな」

赤松「ごめんね……」



夢野(ウチは何も言えずに教室を後にする)

夢野(扉を閉める直前、流れてきたピアノの音色)

夢野(振り返ると何かを忘れるように一心不乱にピアノに向かい合う赤松の姿があった)

60: ◆YySYGxxFkU 2017/04/10(月) 14:59:50.06 ID:8stCR/ZO0
<夜>

夢野(その後もふらふらと校舎を探索して、一日が終わった)

夢野(夜時間を迎えて、タイムリミットは残り丸二日となる)

夢野(焦ってもしょうがない……最原が上手く行っていることを願うだけじゃ)

夢野(ウチとして気になるのは……)

夢野「天海と赤松……じゃな」



夢野(一周目では被害者とクロの関係だったが、実は二人とも似ておる)

夢野(どちらもコロシアイを否定しているということ)

夢野(だから一周目で天海は首謀者を捕まえるために図書室に行ったし、赤松は首謀者を殺してコロシアイを終わらせようとした)

夢野(その思いがこの二周目ではどのように作用するのか……)

夢野「……明日最原たちにも相談するかのぅ」

72: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 11:50:04.79 ID:5vCmzdRj0
<翌日・朝>

<図書室>

夢野(最原がエレクトフィールドのスイッチを入れて話し合いが始まる)



最原「え、えっと…………まずは昨日の報告からするべき……だよね」

夢野(最原のカウントダウン撤回交渉)

夢野(気にはなるが……結果は最原の沈んだ様子から予想が付いた)

最原「モノクマとの交渉は駄目だったよ。どうにかタイムリミットを撤回してもらえないか迫ったけど……取り付く島もなかった」

夢野「そうか……」

夢野(悪い知らせではあるが、まだ一日半ある。挽回のしようはある、と思っていたのじゃが……)

夢野(最原の報告には続きがあった)





最原「それでどうしようも無くなった僕は……つい首謀者に、白銀さんに詰め寄ってしまったんだ」

夢野「……っ!? それは……」

74: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 11:53:17.34 ID:5vCmzdRj0
春川「……こっちが何で首謀者だと知っているかバレると面倒だから、白銀とは交渉しないって話だったよね?」

最原「うん、それは分かってたんだけど……モノクマから何も成果が得られなくて……焦っていて」

夢野「最原……」

春川「……まあ最原一人に任せた私たちも悪かったしね。それで白銀はなんて?」

最原「何にも。そもそも首謀者であることも否定して、話し合いにすらならなかった」

夢野「首謀者だって認めたら面倒なことになるからな。認めるとは思えん」

春川「だね、それにこれで白銀に警戒されるようになった……」

75: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 11:54:21.21 ID:5vCmzdRj0
三人「「「………………」」」



夢野(暗雲が立ちこめている気配がした)

夢野(このままではタイムリミットで全滅してしまう)

夢野(全員でこの学園から脱出する夢が断たれてしまう)

夢野(そんな不安を……吹き飛ばすように)



春川「だったらあの方法を取るしかないじゃん」

夢野「……? 他に方法があるのか?」

最原「そ、それは……!」

春川「最原の言いたいことは分かるけど……私は一番この方法が合理的だと思う」

夢野「何の方法じゃ、ハルマキ?」

春川「簡単な話だよ。第一の事件を乗り越えるために――――」

76: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 11:55:32.45 ID:5vCmzdRj0










春川「首謀者の白銀を殺せばいい」


夢野「……んあっ!?」











77: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 11:58:27.40 ID:5vCmzdRj0
春川「そもそもみんなでこの学園を脱出ってずっと言ってるけど……そのみんなに白銀は入っているの?」

春川「コロシアイを仕掛けた側、言うならば敵だし」

春川「私にとって白銀は助けるべき味方、仲間では無い」

春川「だからここで殺す」

春川「そうすればコロシアイを起こせっていうタイムリミットの条件を満たすし、首謀者がいなくなってこのコロシアイも終わる」



夢野「……話の腰を折って悪いが、首謀者が死んだらこのコロシアイは終わるのか?」

最原「それは……分からないよ。一周目の様子を見てれば分かるけど、首謀者とモノクマは独立して行動している」

最原「首謀者が死んだことでコロシアイが終わるかもしれないし、ゲームマスターのモノクマさえいれば続行可能ってことでコロシアイを続けるかもしれない」

最原「一周目で見た天海君の生存者特典にも、コロシアイを終わらせるヒントとして首謀者を見つける方法が書かれていたけど……どうすればコロシアイが終わるかまでは言及していなかった」

最原「まあでもおそらく殺したところで続くと思うけどな……首謀者がいなくて困るのは、新たにモノクマが生み出せなくなることぐらいだし」

最原「首謀者が死んだとしても、モノクマがいる限りコロシアイは続くと僕は思うよ」

78: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 11:59:39.43 ID:5vCmzdRj0
春川「だとしても、一回目の事件は裁判無しで卒業できるから、白銀を殺した結果おしおきされるってこともないはず」

夢野「なるほど……」

夢野(最初は驚いたが……ハルマキの提案……)

夢野(タイムリミットの条件を満たし、可能性は低くともコロシアイを終わらせられるかもしれないし、もしゲームが続いてもおしおきされることはない)

夢野(聞けば聞くほど良い方法だと思われる)

夢野(じゃがそのために……白銀を殺すのか……?)

夢野(首謀者のあいつは仲間じゃないというのも分かるが……)

夢野「ウチは……どちらとも言えん。すまん」

79: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:00:58.36 ID:5vCmzdRj0
最原「僕は白銀さんを殺すのには反対だよ」

春川「……どうして? 赤松が言うみんなに白銀も入っているから?」

最原「そ、それは……」

春川「確かに赤松はみんなでこの学園を出て友達になろうって言っている」

春川「でも、一周目を思い出して。赤松は首謀者を殺そうとしていた」

春川「つまり首謀者はそのみんなに入っていない」

最原「でも……っ!」

春川「……あ、そうか。この二周目ではあんたは赤松に首謀者がいるってことを教えてないんだったね」

春川「だからまだ16人で脱出することを考えている赤松を尊重している」

春川「でも、首謀者の白銀をどうするつもり?」

春川「コロシアイゲーム主催者、チームダンガンロンパの社員、そんな白銀がみんなで脱出することを許すはずがない」

春川「そもそもみんなで脱出するっていう目標は、白銀が生きている限り無理だって」

80: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:02:19.82 ID:5vCmzdRj0
最原「…………」

夢野(最原は何も言い返せない。おそらくハルマキの言い分は分かっておったのじゃろう)

春川「……熱くなりすぎた、ごめん」

春川「でも、私はこの方法が一番だと思っている」

春川「だからもしこのままタイムリミットを撤廃できないなら、明日の夜時間になる前に私が白銀を殺す」

春川「こういうことは暗殺者の私が適任だろうし」

最原「………………」



春川「タイムリミットを撤回するようにモノクマを説得するなら任せる。昨日失敗があったとはいえ、適任はあんただって思いは変わらないし」

春川「でも、まだどうするべきか迷っているなら……とりあえず先に赤松に会っておいたら?」

最原「え…………? 赤松さんに?」

春川「うん。だってあいつかなり思い詰めているし」

夢野「ウチも昨日見たが、そうじゃったな」

81: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:04:14.30 ID:5vCmzdRj0
最原「思い詰めているって……ど、どうして?」

夢野(どうやら昨日は赤松に会って無いようじゃな……モノクマや白銀と交渉して忙しかったからじゃろうか?)



春川「たぶんだけど、この二周目では首謀者の存在を赤松は知らないんでしょ?」

春川「だから首謀者を殺せばコロシアイが止まるかもしれないって希望がない」

春川「でもコロシアイをどうにかしないといけないって思いは変わらない」

春川「感情があるのに、手段がない」

最原「そ、そうだよ! 手段がないから赤松さんには何も出来ない――」



春川「はずがないって」

春川「あんたは赤松を事件に巻き込みたくないから、一周目と違う流れになる危険を冒してでも首謀者のことを教えなかったんでしょ?」

春川「でも赤松はみんなを守るためなら、首謀者を殺すことすらためらわなかった」

春川「手段が無いくらいじゃ止まらない――このままだと赤松は絶対に暴走する」

夢野「ウチらに対してか、モノクマに対してか、どちらに働きかけるかは分からんがの」

夢野(もしそうなれば一周目の記憶が通じない赤松の行動は、ウチらにとって厄介なものとなるだろう)

82: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:05:32.57 ID:5vCmzdRj0
春川「そのカウンセリングというか、ケアはしておいて」

春川「赤松にはたぶんあんたの言うことが一番効くから」

夢野「そういえば赤松だけじゃなくて、天海もちょっと様子がおかしかったの」

春川「天海が? ……天海は昨日は朝食の時しか会ってないから知らないけど」

春川「あいつも図書室で首謀者を追いつめる算段を付けているころだもんね……」

夢野(うーん……あのとき覚えた違和感は果たしてそういうことなのじゃろうか……?)



最原「……そうか、うん。分かったよ」

最原「とりあえず、赤松さんに会ってくるよ。天海君の様子も見ておこうかな」

最原「その後はモノクマと交渉しないと……」

夢野(最原はフラフラした足取りで図書室を出ていった)

83: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:06:50.20 ID:5vCmzdRj0
夢野(残されたウチとハルマキ)

夢野「どうなるんじゃろうな……?」

春川「私にも分からないって」

春川「最原がタイムリミットの撤回交渉を成功させるかもしれない」

春川「私が白銀を殺すことになるかもしれない」

春川「暴走した赤松や様子のおかしい天海が何かするかもしれない」

春川「他の生徒が思いも寄らない行動に出るかもしれない」

春川「分かっていることは一つだけ」



春川「全部、後一日半で決着が付くってこと」



夢野「そのときに……笑ってられるといいんじゃが」

春川「……そうだね」

84: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:08:17.76 ID:5vCmzdRj0
夢野(結局今日も仕事を全部最原に任せた形……)

夢野(ウチに出来ることは無いか、考えるが何も思いつかない)

夢野(余計なことをして一周目と違う展開になっても困るわけで……)




夢野(時間はいたずらに過ぎ――翌日の朝)




夢野(三人での話し合いより、朝食会の方が先じゃ)

夢野(だから先に食堂に向かったところで、集まっている生徒たちがざわついていることに気づいた)

85: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:09:16.86 ID:5vCmzdRj0
<食堂>

赤松「誰がこんなことをしたんだろう?」

入間「ふん、すかした名前してるがお手柄じゃねーか!」

ゴン太「うん、ゴン太もすごいと思うよ」

茶柱「きっと女子に決まっています!」

星「……だが、これを信じるのか?」

真宮寺「正直怪しいと思うヨ」

白銀「真宮寺くんの服装ほどじゃないと思うけど……」

キーボ「それは今言うことですか?」

百田「俺は信じるぜ!」

アンジー「うーん……神は朝寝坊してるみたいで分からないね~」

天海「……」



王馬「え、なになに? 何があったの? ねぇーってばー!」

86: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:10:05.80 ID:5vCmzdRj0
夢野「何の騒ぎじゃ、これは……」

夢野(食堂には全員集合しているが……こんなざわつきは一周目では無かったはずじゃぞ)

最原「あ、夢野さん」

春川「おはよう、遅かったね」

夢野「二人ともおはようじゃな。……それでこの騒ぎは何なんじゃ?」




東条「それなら私が説明するわ」

87: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:11:26.63 ID:5vCmzdRj0
夢野「んじゃ頼むぞ」

王馬「あ、俺にも教えてよ」

東条「いいわ。事の次第は今朝のことだったの」

東条「みんなの朝食を用意するために朝早くから食堂に来た私は、テーブルの上に手紙を見つけたわ」

東条「その内容が……これは直接見てもらった方がいいわね」



王馬「うーん、どれどれ~?」

夢野「あ、先にウチが頼んだんじゃぞ!」

夢野(東条が差し出した手紙を、ウチと王馬は覗きこむ)

夢野(そこには衝撃的なことが書かれておった)

88: ◆YySYGxxFkU 2017/04/11(火) 12:12:58.35 ID:5vCmzdRj0


―――――――――――――――――――――



今夜のタイムリミットはモノクマの嘘だ。



夜時間になっても誰も殺されることはない。



我々はコロシアイから解放される。



                 R

―――――――――――――――――――――




夢野「……何じゃ、この手紙は」

夢野(もちろん一周目では見た覚えのない手紙)

夢野(謎の差出人R……)

夢野「………………」

夢野(コロシアイ学園生活二周目は、未知の領域に突入するということじゃな……)

102: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:10:52.68 ID:VU5IgDUh0
夢野(東条が早朝に見つけたという手紙をもう一度見る)



―――――――――――――――――――――



今夜のタイムリミットはモノクマの嘘だ。



夜時間になっても誰も殺されることはない。



我々はコロシアイから解放される。



                 R

―――――――――――――――――――――



夢野(タイムリミットが嘘、夜時間になっても殺されない、そして差出人のRという名前)

夢野(これが本当なら全員生還のための障害が一つ無くなるんじゃが……)



王馬「え、何この嘘くさい手紙?」



夢野「まあそういう反応じゃな……」

103: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:11:56.38 ID:VU5IgDUh0
夢野(ウチらにとって都合の良すぎる内容の手紙)

夢野(もしこれが生徒の仕業なら、直接言えばいいだけのはず)

夢野(つまり――モノクマの仕業)



王馬「おーい、モノクマー! この手紙について説明しろよー!」

シーン……。

王馬「あれ、出てこない」



夢野(同じことを思った王馬が呼びかけるが反応はない)



真宮寺「王馬君、駄目みたいだヨ」

星「ああ、俺たちもさっき呼びかけたが返事がねえ」

東条「あのモノクマーズたちすら出て来ないわね」

王馬「ちぇっ、だんまりか」

104: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:12:43.72 ID:VU5IgDUh0
赤松「ねえ、最原くんはこの手紙どう思う?」

百田「そうだ、探偵の意見を聞かせてくれよ!」

最原「うーん……そうだね」



最原「僕はこの手紙は僕たちの誰かの仕業だと思うよ」



夢野「え……そうなのか?」

最原「だってモノクマの仕業だったらこんな手紙じゃなくて、みんなを集めて発表でもすればいいでしょ?」

春川「確かに体育館辺りに集めそうだね」

最原「Rなんて名前も書かないはずだし……それにこの封筒と便箋も倉庫にあったはずだよ。見た覚えがあるし」

夢野「あの倉庫は本当に何でもあるんじゃな……」

105: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:16:50.50 ID:VU5IgDUh0
赤松「手紙の内容はどう?」

最原「内容か……」

入間「嘘じゃねえのか?」

真宮寺「そうだネ、タイムリミットが嘘だなんて僕たちに都合が良すぎないかい?」



最原「そう、都合が良すぎる。だから逆に考えるんだ」

星「逆に……か?」

最原「うん、僕たちに都合が良いことはモノクマにとって都合が悪いってこと」

最原「何か都合が悪いから、モノクマたちは今出て来れないんじゃないかな?」

東条「……確かに出てこないのは不自然ね。ゲームマスターの放棄とも言えるわ」

最原「そう、だから僕はこの手紙に書かれていることは本当だと判断するよ」



王馬「まあ最原ちゃんの言う通りかもね」

王馬「モノクマはゲームマスターで嘘を付けないから、この手紙を書いておいて、結局皆殺しってことは出来ないはずだし」

王馬「生徒たちからすれば、この手紙のせいでコロシアイが起きなければ皆殺し。だから嘘を付くメリットが無い」

王馬「つまり、この手紙は本当ってことだよ」

106: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:17:43.21 ID:VU5IgDUh0
夢野(最原と王馬が認めたことにより、みんなもそれに追従するムードが出来る)

赤松「ていうことは……じゃあもうコロシアイをしないでいいってこと!?」

入間「おし、お手柄じゃねえか!! Rってやつはオレ様のナイスボディで抜くことを許可するぜっ!!」

白銀「その人が女だったらどうするの?」

茶柱「そうです、Rは女子に決まっています! 男死なんかにこんなこと出来るとは思えません!」

白銀「あ、いや、そういうつもりで言ったんじゃないんだけど……でもRってだけ書かれるといつも『やな感じ~』で飛ばされる人たちを思い出すよね」



夢野(一気に沸くみんなじゃが……ウチは言いようの知れない不安に襲われていた)

夢野(最原の言う通りこの手紙が本物だとして……)

夢野(誰がこの手紙を出したんじゃ?)

夢野(そもそも一周目にはこんな事態は無かった)

夢野(ということは出すことが出来るのは……記憶を持っているウチらか、ウチらの行動に影響を受けた者だけとなるはずじゃが…………)

107: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:19:06.47 ID:VU5IgDUh0
ゴン太「それでRって、誰なの? ゴン太分からないよ」

アンジー「イニシャルだと竜馬と蘭太郎が当てはまるよね~?」

星「ふん……俺じゃねえよ」

天海「俺でもないっすね」

王馬「ロボットのRじゃないの?」

キーボ「違います! ボクじゃありません」

白銀「R……といえばやな感じな集団……ロケット……宇宙……はっ!」

百田「何か勘づいた感出しているけど、俺じゃねえぞ!」





東条「ところで最原君は差出人についてどう思っているのかしら?」

最原「あ、えっと…………………………」

最原「さ、さすがにこの情報だけじゃ分からないかな」

最原「筆跡を見破られないようにか、文字は定規を使って書かれているみたいだし」

百田「おおっ、そういうことか。何かカクカクしてると思ったぜ」

108: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:20:02.44 ID:VU5IgDUh0
王馬「ふーん…………」

最原「どうしたの王馬君? 何か言いたいの?」

王馬「……いや、今はいっか」

最原「…………」



王馬「よーし誰だか知らないけど、このRってやつには感謝だね!」

王馬「今日の夜時間になっても皆殺しにならないってことだし、コロシアイから解放されるってまで書いてるんだ!」

王馬「これで殺人に怯えて部屋の隅でガタガタ震える生活とはおさらばだね!」

王馬「歯車で動いているキー坊みたいにガタガタして疲れたよ!」

キーボ「ボクは歯車なんかで動いてません!!」

白銀「ていうか王馬君は部屋の隅でガタガタ震える人には見えないんだけど……」



夢野「………………」

夢野(不安を覚えるウチとは裏腹に、その後の朝食会は終始明るい雰囲気で進んでいった)

109: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:21:08.29 ID:VU5IgDUh0
<図書室>

夢野(そして朝食を食べた後は、話し合いの時間)

夢野(最原がエレクトフィールドを付けるや否や、ハルマキが口を開いた)



春川「それで今朝の事態ってどういうことなの?」

夢野「そうじゃ説明せいっ! Rとは誰なんじゃっ!!」

夢野(様子が怪しい。最原は何か知っておる。ウチとハルマキは確信していた)

最原「ちょ、ちょっと待って! ちゃんと説明するからさ!」

110: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:21:52.86 ID:VU5IgDUh0
夢野(最原は少し息を整えてから話し始めた)

最原「えっと、順を追っていくけど……」

最原「そもそも一周目と違う行動が出来る人間は限られているって話は前にしたよね」

夢野「そうじゃな」

春川「一周目の記憶を持っている私たちと、その行動に影響を受けた人だけって話だったよね」

最原「うん。今で言えば、僕たち三人と……一周目と違って首謀者のことを知らされていない赤松さんが主にそうだと思っていたけど……」

夢野「……っ! そうか、赤松じゃ!」

春川「Rが赤松で、コロシアイを防ぐためにあの手紙を出したってこと……?」

夢野(暴走した結果がこれということに……)



最原「ちょ、ちょっと人の話は最後まで聞いてよ!」

111: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:23:01.64 ID:VU5IgDUh0
夢野「何じゃ、違うのか?」

最原「いや、一応赤松さんも候補だけど……それよりも怪しい人がいるんだ」

春川「怪しい人……?」

夢野「うーむ……誰じゃ?」

夢野(ウチらが頭を捻っていると、最原が質問する)



最原「ちょっと話は逸れるけど、二人ともこの二周目の記憶ってどこからあるの?」

春川「二周目の……?」

最原「うん。一周目で外の世界に出ようとして、光に飲み込まれて、次に来る記憶は何?」

夢野「……ウチはみんなが地下道で言い争っているところじゃな」

春川「私もそこだね」

最原「やっぱり……僕もそうなんだ」

最原「なんであのタイミングだったのか、どうして三人同じようなタイミングだったのかは分からないけど」

最原「それが重要だったんだ」

112: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:24:00.15 ID:VU5IgDUh0
夢野「タイミングが……?」

最原「地下道の騒動は自己紹介もコロシアイ学園生活の説明も過ぎた後のことだ」



最原「つまり……僕たちは二周目の自己紹介のシーンを見逃しているってことになる」



春川「……でも、そんなの一周目と同じでしょ? 見る必要ないじゃん」

夢野「そうじゃが……最原が言うってことは」

最原「うん、二周目の自己紹介は……一人だけ一周目と異なっていたんだ」

最原「そのことは今まで僕たち三人以外にとっては周知の事実だった」

最原「それだけに再度言及することが無くて……僕も昨日天海君と会話したときに話題が及んで初めて知ったんだ」



春川「……どういうこと?」

夢野「な、何が……」

夢野(予想外の展開におののくウチらに最原は告げる)

113: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:24:53.43 ID:VU5IgDUh0










最原「この二周目。天海君の才能は――――超高校級の冒険家なんだよ」











114: ◆YySYGxxFkU 2017/04/12(水) 00:25:45.74 ID:VU5IgDUh0
夢野・春川「「………………え?」」

夢野(超高校級の???であるはずの天海。後に生存者であることを知るのじゃが……)

夢野(そのどちらでも無くて……超高校級の冒険家……じゃと?)





最原「才能が変われば、行動も変わる」

最原「彼は最初から僕たちの記憶にない行動を取る可能性があったんだ」

131: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:31:01.39 ID:oGRYNxB9O
夢野(最原によって明かされた衝撃の事実)

夢野(それは天海の才能が超高校級の冒険家ということ)



春川「それってどういうことなの?」

最原「想像するとしたら……それが天海君の本来の才能だってことじゃないかな?」

夢野「本来の才能というのは……天海がコロシアイを生き残ったときの才能ってことかの?」

最原「そうだね、一周目のさらに前のコロシアイのときの才能だと思うよ」

最原「それがどうしてこの二周目では冒険家に戻っているのかは分からないけど……」

132: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:32:32.80 ID:oGRYNxB9O
夢野(確かに理由は分からない……)

夢野(じゃがウチには一つ得心が行くことがあった)

夢野「天海の才能が超高校級の冒険家になったってことは、今の赤松と同じように一周目と違って首謀者のことを知らないってことになるんじゃよな?」

春川「……そうか。天海は生存者特典によって首謀者の存在と図書室の奥の隠し部屋について知ったから」

最原「冒険家の今は知らない可能性の方が高いね」

夢野「だからなのか……」



夢野(昨日の天海の会話を思い出す)


天海『このゲームを終わらせるためには……どうしたらいいんすかね?』


夢野(違和感の正体はこのセリフじゃな)

夢野(一周目と同じなら天海は、首謀者を抑えるというこのコロシアイを終わらせる方法を知っていないとおかしい)

133: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:34:06.48 ID:oGRYNxB9O
春川「だから天海が手紙の差出人Rじゃないかってこと?」

夢野「……そういえば元々はそういう話じゃったな。でも天海がRなのか?」

最原「首謀者のことを知らない天海君が、このコロシアイを止めるために独自に動いた結果がこれ、ってことじゃないかな?」

最原「差出人がRなのは蘭太郎から取ってのことかな……ちょっと安直な推測だけど」



春川「あの手紙の内容が真実ならコロシアイも止まるんだろうけど……本当にタイムリミットって嘘なの?」

夢野「最原はみんなの前であれが正しいって言っておったが……何か根拠はあるのか?」

最原「根拠か……そうだね、みんなの前で言ったモノクマにとって都合の悪い何かが起きたって話もそうだけど……」

最原「それとは別に一周目の記憶から推測できることもあるんだ」

134: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:35:12.43 ID:oGRYNxB9O
最原「そもそも今夜のタイムリミットの正式な条件って覚えてる?」

夢野「夜時間を迎えてもコロシアイが起きなかったら皆殺しってことじゃなかったか?」

春川「いや、正確には皆殺しじゃなくて『コロシアイに参加させられた生徒は全員死亡』のはず」

春川「それで首謀者だけは難を逃れるって話でしょ」

夢野「あ、そうじゃったな」

最原「そう、条件はコロシアイに参加させられた生徒は全員死亡」

最原「でも二人とも一周目を生き残って、僕たちがコロシアイに参加した経緯は知っているはずだよね?」

夢野「経緯……って」

春川「まさか……!」

最原「僕も手紙を見てから気づいたんだけどさ――」

135: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:36:22.68 ID:oGRYNxB9O



最原「僕たちは記憶にないだけでオーディションによってコロシアイの参加を希望したんだよ」



最原「だからコロシアイに参加させられた生徒は一人もいない」



最原「つまり、今夜のタイムリミットは……最初から意味のないものだったんだよ」



136: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:37:22.50 ID:oGRYNxB9O

夢野「なん……じゃとっ!?」

夢野(最原の言葉に唖然とする)

夢野「それなら最初からタイムリミット撤回の交渉なんて必要なかったのか……!?」



春川「ちょっと待って!」

春川「嘘なら、どうしてモノクマはタイムリミットなんて設定したの!?」

最原「その理由は明白だよ」

最原「僕たちを精神的に追い詰めてコロシアイをさせるためだ」

春川「だったらオーディションの真偽は!? あのオーディションは嘘の可能性が高いって最原自身が言ったじゃん!」

最原「モノクマにとっては嘘でも本当でもいいんだよ。僕たちが納得さえすれば」

春川「……じゃあ一周目の出来事は? タイムリミットが嘘なら、白銀が天海を殺したのも説明が付かない」

春川「あれって誰もコロシアイをしないから、仕方なく白銀が殺したんじゃなかったの?」

最原「タイムリミットが嘘だってするのは簡単だけど、理由はあったとしても動機を後から撤回する形になる。するとモノクマの言葉も軽くなってしまう」

最原「コロシアイが起きた方が首謀者にとって都合がいいんだ。だから赤松さんの計画に乗ったんだよ」

137: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:38:17.79 ID:oGRYNxB9O
最原「まとめると白銀さんがタイムリミットを設定した狙いとしては」

最原「僕たちを追い詰めてコロシアイを起こさせるため。起きるならそれがベスト」

最原「だけどもしタイムリミットを回ってもコロシアイが起きなかったら、オーディションのことを持ち出して、誰も殺さないよで学園生活を続けさせる」

最原「でも、それは最後の手段だ。モノクマの動機が今後信じられなくなる可能性があるからね」

最原「だからコロシアイを計画する生徒がいたら、それに全力で荷担する……こういうことじゃないかな?」



夢野「だからあの手紙は正しいと」

春川「…………ちょっと腑に落ちないけど……最原の言い分は分かる」

春川「でも、だとしたらR……天海はどうやってその情報を知ったの?」

最原「……それは分からないよ。超高校級の冒険家の才能のおかげか、偶然だったのか、それとも別の要因なのか……」

138: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:39:19.59 ID:oGRYNxB9O
夢野「……なら直接聞くのが一番じゃな」

春川「だね。今から天海のところに行こう。どうやって知ったかで情報の信憑性も変わるし」

最原「あ、ごめん。僕はちょっと赤松さんの様子を見てきたいから……二人で行ってもらってもいい?」

最原「Rからの手紙で安心してるみたいだけど、もしかしたら何か考えているかもしれないし。……それに赤松さんがRの可能性だってまだ残っているしね」

夢野「そうじゃな……」

夢野(首謀者のことを教えられていない赤松は一周目と違う行動を取る可能性がある)

春川「なら、エレクトフィールドの装置を借りてもいい? 天海からの話次第じゃモノクマにバレない方がいいかもしれないし」

最原「あ、そうだね。スイッチを入れれば起動するよ。天海君に警戒されないようにポケットに入れたまま起動した方がいいかもね。もし赤松さんがRかもしれなかったら、また借りに行くから」

夢野(春川が最原から装置を受け取る)





最原「じゃあ、情報期待してるよ」

春川「そっちも頑張って」

夢野「結果はまた明日報告じゃな」

最原「うん、また明日」

夢野(そうしてウチらと最原は別れて図書室を出た)

139: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:40:12.27 ID:oGRYNxB9O
<一階廊下>

春川「また明日……か」

夢野「ウチの言葉じゃな? どうしたのか?」

春川「いや、今日で全部決着が付くと思っていたから……まだ色々謎は残っているけど、明日が来るのはいいなって思って」

夢野「……本当にそうじゃな」

夢野(タイムリミットが無くなって、気分が少し楽になった気もする)

春川「後は天海からどうやって情報を得たのか、聞くだけだね」

夢野「じゃな」





夢野(そうやって楽観していたウチらは――すぐにそれが間違いだったことに気づかされた)

140: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:41:18.85 ID:oGRYNxB9O
<倉庫>





天海「俺はRじゃないっす」





夢野(倉庫で見つけた天海。監視防止にエレクトフィールドのスイッチを入れてから質問して、返ってきたのがこれである)

春川「だったら他に誰がいるっていうの?」

夢野「そうじゃ蘭太郎だからRじゃないのか?」

天海「……それなら星くんだって当てはまるっすよね? 竜馬っすから」

天海「お二人がどうして俺をRなのだと判断したのかは分からないっすけど……とにかく違うっす」

天海「力になれなくてすいません」

春川「……」



夢野「話は変わるが、そういえばお主の才能は超高校級の冒険家なのか?」

天海「……またその話っすか? 昨日最原君にも驚かれたっすけど」

天海「その通り、俺の超高校級の才能は冒険家っす」

天海「何なら一つ冒険譚でも聞きますか?」

春川「……いや、いい。ごめんね時間を取らせた」

141: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:42:31.87 ID:oGRYNxB9O
<倉庫の外>

春川「才能の話は最原の言う通りだったね」

夢野「でも天海はRではなかった……Rは一周目と違う行動を起こしておる。そんなこと出来るのは一番天海が可能性が高いはずじゃろ?」

春川「もしかして……私たちの行動の違いが影響したとか?」

春川「私たちだって完全に一周目と同じ行動をしているわけじゃない。そのささいな違いがこんな結果を引き出したとすれば……可能性は全員に広がる」

夢野「といっても大筋はそんなに変わってないはずじゃぞ」

春川「だとしてもこうなったら、しらみ潰しに探すしかないって」



夢野(それからウチらはエレクトフィールドを付けながら聞いてまわった)

夢野(しかし、返ってくるのは――)



ゴン太「ゴン太じゃないよ!」

真宮寺「残念だけど、僕じゃないネ」

東条「確かに手紙を見つけた私が怪しいのは分かるけれど、昨日の夜時間前なら誰でも置けたんじゃないかしら? 私が夜時間一時間前に掃除を終えて出て行くときは誰もいなかったわ」

星「イニシャルがRだし、まあ怪しむのも分かるが……俺じゃあねえな」

百田「オレじゃねえっての!」

茶柱「あの手紙は転子の仕業ではありません!」

入間「オレ様が手紙なんてメンドくせーことするわけねーだろ! ……よし、飛んだ! あともう少しいじればドモーンの完成だな!」

王馬「オレはRじゃないよー」

キーボ「違いますって、ボクじゃありません」

アンジー「アンジーじゃないよー。うーん、誰なんだろーなー。神様も分からないって言ってるよー」



夢野「否定ばかりじゃな……」

142: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:43:41.25 ID:oGRYNxB9O
夢野「あとは白銀じゃが……どうする?」

春川「首謀者があんな手紙を書くはずないし、違うでしょ」

夢野「なら可能性はあと最原が聞きに行った赤松だけじゃが……」

春川「赤松がRだったらエレクトフィールドを取りに来るって言ってたけど……最原と別れてからかなり時間も経って、それなのに顔を見せないってことは違うってことじゃない?」

夢野「そうじゃな……」

夢野(だったらRは一体……)



春川「そもそもだけど、手紙を使ったってことは、Rは自分の正体を明かしたくないってことだったね」

春川「普通に聞いてもRだってことを私たちに打ち明けるはずが無い……ってことか」

夢野「……ということは誰かが自分はRじゃないって嘘を付いたということじゃな?」

春川「最原の話だと生徒の中にいるはずだしそれしかないでしょ。でも誰が嘘を付いているのか……」

春川「どうしてRは自分の正体を隠したいんだろう……?」




夢野(その内に夜を迎えた。後は明日にしようということでハルマキとも別れる)

夢野「……はぁ」

夢野(ウチは自分の部屋に戻って落ち着く)

夢野(そうじゃ。今日分からなくてもいい。タイムリミットは無効なのだ)

夢野(時間はまだまだある)

143: ◆YySYGxxFkU 2017/04/13(木) 22:45:19.72 ID:oGRYNxB9O
夢野(じゃが――――)



<21:00>



モニターから大音量で音楽が流れ始める。

人を不快にさせるその旋律。

そして映し出されるメッセージは。



『皆殺しまであと……一時間。皆殺しまで……あと一時間。皆殺しまで……あと一時間』



夢野「……今周回も流れたのか」

夢野「じゃが……大丈夫な…………はず」

夢野(一周目と同じで流れ始めたコロシアイ促進BGM)

夢野(不安を煽ることでウチらにどうにかコロシアイをさせようとするモノクマの策略)

夢野(でも、今回はその煽る不安が虚構だと分かっておる。タイムリミットは嘘なのじゃ)

夢野(このまま一時間経っても……皆殺しにされることはない)

夢野(されることは……)



夢野「…………」

夢野「…………っ!」

夢野(いてもたってもいられず、自分の部屋を飛び出す)

夢野(BGMに煽られたからなのかは分からない)

夢野(じゃが……嫌な予感が確かに胸の内にあった)

150: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:34:34.46 ID:/8ibLjr30
<食堂>

夢野(やってきたのは食堂。ここならみんなが集まっていると思ったからじゃな)

夢野(予想通りに何人かの生徒は食堂に集まっている)



東条「みんなのために、軽食を用意したわ」

百田「サンドイッチか、うまそうじゃねーか!」

ゴン太「ゴン太ももらうね!」

入間「よし、こっちをこの部品に繋げて……っと」

アンジー「でもでもー、タイムリミットが無くなったはずなのにあのモニターは何なんだろうねー?」

真宮寺「モノクマが意味がないのに煽るためにやっているのか、それとも……ククク」

151: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:35:27.87 ID:/8ibLjr30
夢野(BGMが大音量で流れているため、みんな大声で会話しておる)

春川「結構集まってるね」

夢野「ハルマキも来たか」



春川「まあね……正直今周回もこのBGMが鳴るとは思ってなかったし。ちょっと心配になって」

夢野「ウチも同じじゃな」

夢野(BGMで音がかき消されるため、みんなの近くでも一周目の話が出来る)

春川「タイムリミットは嘘って話だったよね。だからこのBGMも嘘…………なんだよね?」

夢野「そのはず…………じゃよな?」

夢野(ウチもハルマキも断定の言葉を口から出せなかった。ウチもじゃが、ハルマキもやはり不安に思っておるのじゃろう)

152: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:36:31.41 ID:/8ibLjr30
春川「………………」

夢野「………………」

春川「一応現状を確認しておこうか」

夢野「いいぞ」

春川「この場にいないのは……最原、赤松、キーボ、王馬、星、白銀、天海、茶柱だね」

春川「食堂には一周目のモノクマに対抗しようとした集まりと元々食堂にいたのが大体集まっている感じか」

夢野「少し違うところもあるがおおむねそうじゃな」

夢野「……にしてもそういえば、今周回はモノクマに対抗するための集まりは無くなったのか?」

夢野(百田の発案で戦えそうな人たちが集まったはず)

春川「Rのせいだって。あれはタイムリミットになったらモノクマに対抗しようって話だったから」

夢野「タイムリミットが嘘ということになって、今回は無くなったと。それと同じでみんな行動が違っておるんじゃな……」

春川「もう全員に対して一周目の記憶が通じないってことだね。気を引き締めないと」

夢野(何が起こるのか……ウチらにとっても未知ということじゃな)



春川「にしても……最原はどうしたんだろう?」

春川「あいつもこの事態に食堂に来てると思ったんだけど」

夢野「そういえば来ておらんのう? どこにおるんじゃ?」

153: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:37:47.92 ID:/8ibLjr30
二人が食堂を見回す――その時だった。



<スピーカー>

~~~♪ ~~~♪ ~~……プツン!



<モニター>

『皆殺しまであと……一時間。皆殺しまで……あと一時間。皆殺しまで……あと一時間。皆…………』

プツン!




コロシアイ促進BGMとモニターの表示が消えたのは。

154: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:39:58.06 ID:/8ibLjr30
食堂にいた全員の視線がモニターに集まる。

ゴン太「モ、モニターが切れたけど……?」

百田「おい、これ大丈夫なのか!?」

東条「大丈夫よ。まだBGMが鳴り出してから、三十分しか経ってないはずだから」

入間「なんだ、やっとうるせーのが鳴り止んだな」

アンジー「じゃあ何でBGMが消えたのー? モノクマが諦めたのかなー。だったらラッキーだねー」

真宮寺「だったら良いけどサ……他にも可能性があるよネ」

春川「それって……例えばコロシアイを促進する意味が無くなった……とか?」



夢野「…………」

夢野(一周目でBGMが鳴り止んだのは……天海が殺されたタイミングじゃった)

夢野(つまり……今も……)

155: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:40:59.46 ID:/8ibLjr30
夢野「みんなを探しに行かんと……!」

夢野(慌てて食堂を飛び出す)

春川「私も行く!」

真宮寺「そうだネ、ボクも行こうかナ」

東条「お供するわ」

ゴン太「よ、よく分からないけど……付いていった方が良さそうだね」

百田「だな」

アンジー「待ってー! アンジーも行くよー!」

入間「え、何の話……? ま、待ってよぉ、オレだけ置いていくなよぅ……」

夢野(食堂にいたものが全員付いてきた)

夢野「まずはどこから…………ん?」

夢野(一階の廊下に出て、体育館方面か玄関方面どちらに行くか迷っていると、そこで人影を見つける)

156: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:41:45.93 ID:/8ibLjr30
茶柱「この音は…………?」



夢野(転子は二階に続く階段の前で立ち止まっている。何か心ここにあらずじゃが……)

春川「あれは……茶柱?」

真宮寺「あんなところで何をしてるんだろうネ」

夢野「転子ー! どうしたんじゃー!」

茶柱「あ、夢野さん! それに皆さんも」

東条「どうしたの、そんなところで立ち止まって?」

茶柱「あ、それがですね。ちょうど食堂に向かっている最中にあの変なBGMが消えたと思ったら、上から音が聞こえてきて……」

夢野「音が……?」

夢野(その言葉にみんなで耳をすませる。すると……)


~~~♪ ~~~♪


夢野(ピアノの音が聞こえてきた)

157: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:42:37.00 ID:/8ibLjr30
ゴン太「これは二階からかな?」

百田「ピアノの音か。二階には赤松の教室があったはずだし、それじゃねーのか?」

入間「だったら赤松はあのクソうるさい中でもピアノを弾いてたってことか?」

春川「……とりあえず確かめてみるべきかな」

夢野「じゃな」

夢野(ウチらは二階に上がる)


<校舎二階>


東条「二階に来て近づいたことではっきり音源が分かったわね」

真宮寺「だネ、やっぱり赤松さんの教室からみたいだヨ」

アンジー「きれいな曲だねー」

夢野「……この中か」

夢野(ウチらは超高校級のピアニストの教室の前までたどり着く)

158: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:43:20.58 ID:/8ibLjr30
夢野(先頭のウチはドアノブに手をかける………………が)

茶柱「どうしましたか、夢野さん? 中を確認するんじゃなかったんですか?」

真宮寺「まあ、そう急かさないで。もしかしたら……もしかするかもしれないからネ」



夢野「………………」

夢野(真宮寺の言うとおりじゃった)

夢野(すでにコロシアイ促進BGMは消えておる)

夢野(消えた理由はハッキリしていないが……)

夢野(一番可能性が高いのは……誰かが殺されたから)

夢野(そこに不自然なピアノの音じゃ)

夢野(この中には……もしかしたら……)



春川「夢野…………私が開けようか?」

夢野「いや……ウチが開ける」

夢野(立ち止まっても何も進まない)



夢野(ウチは覚悟を決めて……扉を開いた)

159: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:44:26.30 ID:/8ibLjr30
夢野「………………なっ?」








夢野(ウチは目を奪われる。教室中央のピアノに目を奪われる)








夢野(未だ鳴り止まぬピアノの音)








夢野(その音の中心で――超高校級のピアニスト赤松楓は)














赤松「…………ふん、ふ、ふーん、っと♪」 タララララッ














夢野「………………」

夢野(普通にピアノを弾いておった)

160: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:45:12.34 ID:/8ibLjr30
春川「……何してるの、赤松は?」

夢野(同じ光景を見た春川の感想)

東条「すごい集中力ね……私たちが入ってきたことにも気づいてないんじゃないかしら?」

真宮寺「この非常事態に呑気にピアノの演奏とはネ……でもああ、美しイ……! これは止め難いヨ!」

夢野「じゃが、場合が場合じゃ! 赤松!」

夢野(ウチはピアノに近づいて、赤松の腕を握る)



赤松「……っ! な、何が………………って、あれ? みんなそろってどうしたの?」

夢野「こんな事態に何をしておるんじゃ!」

赤松「こんな事態って……え? 今日のカウントダウンは無くなったはずじゃないの?」

夢野(赤松はウチらがどうして緊迫しているのか分からないようじゃが……あのBGMを聞いていれば少しくらい分かるじゃろうに)

春川「……無事なら良かった。赤松、変わったことは無かった?」

赤松「変わったこと? ずっとピアノを弾いてたから、特に無いけど……」

161: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:45:56.47 ID:/8ibLjr30
東条「とりあえずここには何もなかったということみたいね」

真宮寺「良かったヨ。赤松さんが死んだんじゃなくて」

百田「死ぬって……おい、どういうことだよ!?」

真宮寺「……あァ、まだ分かってなかったんだネ。コロシアイ促進BGMが鳴り止んだのは、促進する意味が無くなったから」

真宮寺「つまりもうコロシアイが始まっているかもしれないってことだヨ」



百田「……はぁっ!? マジかよそれ!」

ゴン太「誰かが殺されたかもしれないってこと!?」

茶柱「そ、そんな事態だったんですか!?」

アンジー「なるほどー。それで秘密子や斬美は焦ってたんだねー」

入間「やべえじゃねえか!」

春川「というか分からないのに、ここまで付いてきてたのあんたたちは……」

162: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:46:49.92 ID:/8ibLjr30
百田「こうしちゃいられねえ! 急いでみんなを探さねえと!」

夢野「待つんじゃ百田!」

夢野(ピアニストの教室を出ていった百田をウチは追いかけながら考える)

夢野(にしてもどうしてBGMは消えたのか)

夢野(案外……誰も死んでいないのにモノクマがわざと切ったという可能性もあるかもしれん)

夢野(とにかく早まった真似だけはしないようにせんとな)



百田「片っ端から探すとしてまずはここだっ!」

夢野「全く、単独行動はよさんか!」

夢野(二階の教室の扉を開けて中に入った百田を追う)

163: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:47:45.51 ID:/8ibLjr30










「「………………え?」」

そこで――百田と夢野の二人は見た。












164: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:48:29.61 ID:/8ibLjr30
教室の中央付近にある人影は――――




















帽子を被ったまま、床に倒れている超高校級の探偵、最原終一。



165: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:49:10.55 ID:/8ibLjr30









と。










166: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:49:52.30 ID:/8ibLjr30











胸元から血を流し、息絶えている超高校級のコスプレイヤー――白銀つむぎのものだった。











167: ◆YySYGxxFkU 2017/04/14(金) 15:50:39.98 ID:/8ibLjr30


C H A P T E R 1


Who is R――――――?


非 日 常 編



178: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:15:18.33 ID:6xZhAZ960
百田「さ、最原と……それに白銀は………………」

百田「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

夢野「最原……! 白銀っ!!?」

状況を認識した二人が叫び声を上げる。



茶柱「どうしたんですか、夢野さん………………」

茶柱「って、うきゃぁぁぁぁぁっ!!!!?」



『死体が発見されました。オマエラ死体発見現場の校舎二階教室まで集まってください!』

179: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:19:13.68 ID:6xZhAZ960
アナウンスによって生徒たちが全員集まる。



春川「白銀が殺されて…………でも最原はどうしてここに……?」

王馬「へぇ……こうなっちゃったか」

入間「すげえ顔で死んでんな!」

真宮寺「死の恐怖に彩られているヨ」

星「死体に対して、あんまりそういうことは言うもんじゃないぜ」

東条「とりあえず白銀さんの体は伏せておくわね、見ていられないもの」

ゴン太「白銀さんが……それに最原君も!?」

天海「いや、最原君は呼吸があるみたいっすけど……」



モノクマ「みんな集まったみたいだね」

夢野(モノクマが現れる)

夢野(死体発見アナウンスが流れたことから分かっておったが……やはり首謀者が死んでもコロシアイは続くようじゃな)

夢野(そしてアナウンスは一回だけ。一目見て白銀は死んでおるし、天海の言う通り最原は生きておるようじゃ)

夢野(一瞬死んだのだと思って叫んでしまったわい)

夢野(じゃが……どうして死体のある部屋で倒れているのかは分からん)



王馬「あーモノクマ、やっと現れたな!」

星「今日の朝はどうして姿を見せなかったんだ?」

モノクマ「もう、そんなのどうだっていいでしょ! 目の前に死体があるんだよ!」

180: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:20:09.14 ID:6xZhAZ960
モノタロウ「そうだよ、無視されるなんて死体がかわいそうだよ!」

モノキッド「まあ、モノダムは無視してもいいけどな!」

モノダム「………………」

モノスケ「そんなのより、今から学級裁判や! クロを当てないと生き残れないで!」

モノファニー「ううっ、生き残るために頑張ってね!」

モノダム「ソレハ……違ウヨ……」

モノスケ「……? 何や、何が言いたいんや!」

モノダム「ダッテ今回ノ事件ハ……初回特典ガアッタデショ」

モノタロウ「初回特典……ってなんだっけ? オイラ忘れたよ」

モノクマ「いやぁ、聡明な我が子を持ってボクは幸せだなぁ」



モノクマ「その通り、今回は初回特典でクロは裁判無しで卒業できるからね。ほら、クロは出てきてよ」

181: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:20:52.61 ID:6xZhAZ960
夢野「そうじゃったな……」

夢野(タイムリミットばかりを気にしていて、その動機を忘れていた)

夢野(初回特典、一回目の事件においてクロは裁判無しで卒業できる)

夢野(一周目では赤松が首謀者を裁判で追い込むために使わなかったが……首謀者が死んだ今回は使うじゃろう)

夢野(クロにとって有利なルールじゃが、シロにとってもありがたい。捜査して裁判でクロを指摘しないと全滅という危険が無いからな)





安堵する夢野だが――しかし。





シーン………………。



夢野「……?」

182: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:21:36.75 ID:6xZhAZ960
モノクマ「ほら、どうしたの? クロは早く出てきてよ!」

春川「……どういうことなの?」

星「クロは何を考えてるんだ?」

真宮寺「解せないネ……」

夢野「まさか……」

夢野(周囲がざわつく、ウチも一周目の再来になるのかと身構えた――そのとき)





王馬「簡単な話でしょ?」

夢野「……え?」

王馬「これだけ待っても出ないってことは、そこで倒れている最原ちゃんがクロってことだよ」

183: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:22:28.71 ID:6xZhAZ960
夢野「最原が……?」

王馬「だって、そうでしょ? 死体と一緒の部屋にいたなんて怪しすぎるし」

天海「……クロかはともかく、最原君に起きてもらって話を聞きたいっすね」

東条「なら私が起こすわ」

夢野(東条が最原の体を揺すりながら呼びかけ、少し経つと)

最原「…………う、うーん……」

東条「調子は大丈夫?」

最原「あ、東条さん…………みんなも…………」

夢野(最原は体を起こして、周囲をキョロキョロ見回して)

最原「……あれ? どうしてみんな集まっているの?」

184: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:23:22.99 ID:6xZhAZ960

王馬「うわぁ、嘘くさい反応だね最原ちゃん!」

最原「嘘くさいってどういうこと?」

王馬「だから最原ちゃんがクロなんじゃないかって話。ほら、モノクマが初回特典で裁判無しで卒業できるって言ってるんだから、さっさと名乗り出たら?」

夢野「そうじゃぞ最原」

夢野(おそらく真相はこうじゃな)

夢野(タイムリミットが嘘って話じゃったが、コロシアイ促進BGMが鳴り始めて焦った最原が、首謀者の白銀を殺すことで全滅を免れた)

夢野(最原は白銀を殺すことに反対しておったが……まあやむを得ぬってことじゃろう)

夢野(まあ最原も裁判無しで卒業出来るわけだし、死なずに済んで良かっ――――)





最原「ク、クロってどういうこと!? もしかして……誰かが死んだってこと!?」





夢野「……んあっ!?」

185: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:24:12.21 ID:6xZhAZ960
赤松「あ、そっか。私たちが最原くんを囲んでいるからそこからじゃ見えないんだね」

春川「……白銀が死んだんだよ」

最原「白銀さんが!? どうして……」

王馬「だからそういう演技はいいんだって。最原ちゃんが殺したんでしょ?」

最原「……どうして僕が疑われているのかは分からないけど、これだけは断言する――」





最原「僕はクロじゃない!!!」





夢野「…………」

真宮寺「最原君がクロじゃない……?」

百田「おまえがクロじゃないことは信じてたぞ!」

赤松「そうだよ! 最原君が人を殺すとは思えないし!」

アンジー「でもでもー。誰も名乗りでないねー。こういうときはどうなるのー?」

186: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:25:08.58 ID:6xZhAZ960

モノクマ「うーん、そうだね。じゃあまず、ここにいない人は手を挙げてくださーい」

モノスケ「いなかったら手を挙げられへんやろ!?」

モノクマ「手を挙げている人はいない……良かった、良かった。全員いるね」

モノクマ「そしてもう一回だけ聞くけど、白銀さんを殺したクロは出てきてくださーい!」



シーン………………。



モノクマ「出てこない……うぷぷっ、そういうことか」

モノクマ「今回のクロは学級裁判をしたいってことだね」

夢野「……え」

モノクマ「なら、分かったよ。お望み通り学級裁判を開こうじゃないか!」

187: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:26:30.91 ID:6xZhAZ960
夢野「…………」

夢野(被害者も殺害場所も一周目と全く違う流れになって、どうしてそこだけは一緒に……)

夢野(クロは何を狙っておるんじゃ……?)

夢野(さっきも考えたとおり、今回は首謀者が死んでおる。首謀者を追い詰めるためという一周目の裁判が開かれた理由は成り立たない)

夢野(だったら……他に裁判を開かないといけない理由が……もしくは開きたい理由があった……?)

夢野(それは一体何なんじゃ……?)





春川「……気になるけど、後回しにして」

春川「クロを見つけないと私たちも死ぬんだから」

夢野「……そうじゃな」

夢野(ハルマキの言う通りじゃ)

夢野(今は生き残るために……白銀を殺したクロを見つける……!)

188: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:27:41.26 ID:6xZhAZ960
<捜査開始>

最原「じゃあまず捜査開始前にだけど――」

王馬「何かな? 容疑者最有力候補の最原ちゃん?」

王馬「自分に都合良く進ませるために誘導でもするの?」

最原「そ、そうじゃないって!」

真宮寺「まあでも、客観的に見ても最原君が一番怪しいと思うヨ」

星「そうだな」

夢野(最原への当たりがキツい。死体のある部屋にいたから分かるところじゃが……)

189: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:28:33.11 ID:6xZhAZ960
春川「最原のことはともかく、捜査中はなるべく二人以上で行動をした方がいいね」

春川「クロが証拠を消そうとするのを防ぐためにも」

夢野「そうじゃな」

百田「おう! ハルマキの言う通りだぜ!」

春川「…………」

夢野(ハルマキ呼ばわりされても怒らないんじゃな……なるほどなるほど)

夢野(……っと、そうじゃなかった)

夢野(ハルマキは逆風が強い最原に変わって、捜査を進めようとしているということか)

190: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:29:15.18 ID:6xZhAZ960
春川「後はこの部屋に見張りも置いておきたいけど……」

王馬「だったら一番怪しい最原ちゃんが適任だね!」

王馬「好き勝手動かれるのも困るし、見張りのついでに監視しておくべきだよ!」

赤松「その言い方はあんまりだよ!」

夢野「王馬……お主」

最原「い、いいんだよ赤松さん、夢野さん」

最原「自分が怪しいのは分かっているし……見張りを引き受けるよ」

入間「んじゃオレ様も見張りをするぜ! 足を使って証拠を探すなんて似合わねーしな!」

ゴン太「ゴン太も見張りをするね!」

王馬「三人か……最原ちゃんの他に二人いるし、まあこれくらいいればいいかな」

192: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:30:06.01 ID:6xZhAZ960
モノクマ「話はまとまった?」

アンジー「まだいたんだー?」

モノクマ「もう酷いなあ……って、そんなことより忘れるところだったよ」

モノクマ「じゃじゃーん! モノクマファイル~!」

星「何だこれは?」

モノクマ「オマエラじゃ検死とか出来ないでしょ? だからボクが死体から分かる情報をまとめておいたよ」

モノクマ「記述に嘘はないよ。あ、でもクロに直接つながる情報は載ってないからね」

モノクマ「それじゃあボクはこのへんで……」

真宮寺「あ、最後に一つだけ良いかい? 君は手紙の差出人、Rじゃないんだよネ?」

モノクマ「……R? 何それ? ボクじゃないよ」

モノタロウ「おいらでもないよ」

モノスケ「ワイでもないな」

モノキッド「ミーでもないぜ!!」

モノダム「違ウ……」

モノファニー「あたいでもないわー」

そう言って、その場から姿を消すモノクマとモノクマーズ。

193: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:31:29.93 ID:6xZhAZ960
真宮寺「今の言葉を信じるなら、やっぱりRは僕たち生徒の中にいるみたいだネ」

百田「それより今はクロを見つけないといけないだろ!」

王馬「……いや、案外Rも今回の事件に関わっているかもしれないよ」

夢野(王馬の言葉は……おそらく正しいじゃろう)

夢野(この一周目と大きく違う事態の始まりはRの手紙からじゃ)



東条「このファイルも一応目を通しておいた方がいいかしら?」

星「まあ参考にするくらいならいいんじゃないか」

夢野「じゃな」

夢野(一周目でもモノクマファイルに嘘は無かった。これは目を通しておくべきじゃろう)

194: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:32:23.93 ID:6xZhAZ960
『モノクマファイル1』

『被害者は超高校級のコスプレイヤー、白銀つむぎ』

『死亡時刻は21:30』

『死体発見場所は校舎二階の教室。二つある内の奥の方』

『死因は心臓へのナイフの一突き。即死だった模様』

『争った形跡はない』



春川「モノクマファイルに書いていることは間違ってないみたいだね」

夢野「ハルマキ、どうしたんじゃ?」

春川「最原が動けないからね。二人で組まないといけないし、捜査に協力してもらえる?」

夢野「ウチからも頼もうと思っていたところじゃ! よろしく頼むぞ!」

195: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:33:22.20 ID:6xZhAZ960
夢野「それで間違いが無いとは……死体を見てきたのか?」

春川「うん、早速一通りね。遺体を確認した後はまたちゃんと顔は伏せておいた」

春川「白銀はナイフが心臓に刺さって即死」

春川「服も乱れてないし、争ってないってのも本当だね。たぶん不意を突かれて殺されたんじゃないかな?」

春川「凶器のナイフはたぶん倉庫にあったものだから、これから犯人を絞ることは出来ない」

夢野「なるほど……モノクマファイルの通りじゃな」

春川「あとファイルには書いてないけど、床に広がる血の量からして殺した後に死体を移動したってことも無さそうだね」




コトダマ『モノクマファイル1』ゲット!!

196: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:34:57.05 ID:6xZhAZ960
春川「そういえば死体から気になるものを発見したけど……」

夢野「気になるもの? 何じゃ、それは……?」

春川「このメモがポケットに入っていて……」

夢野(春川が差し出したメモをウチは覗き見る)



『今夜21:30に二階奥の教室に一人で来い  他言無用、破った場合は災いが起きる R』



夢野「R……じゃと!?」

夢野(今朝食堂で手紙を見つけてから、ウチらが追っている正体不明の人物)

夢野(そのRの名前が……どうしてこんなところに?)

197: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:35:54.99 ID:6xZhAZ960
春川「他言無用……災いが起きる。だから白銀は誰にも相談できずにこの教室に来たってことか」

夢野「この災いとは何じゃ?」

春川「ただの脅しでしょ。こうでも書かないとこんな不気味なメモ通りに行動なんてしないって」

夢野「なるほど」

春川「それと二階奥の教室ってのは死体発見場所のここだね」

春川「白銀はここに誘き出されて殺された……ってことじゃないかな?」

夢野「つまり……Rがクロってことなのか?」

春川「その可能性は考えられるけど……」

春川「でも……Rは一体誰なんだろう? このメモも定規で書かれていて筆跡が分からなくなっているし……」

夢野「コロシアイが無くなると書いた裏では、こうやって白銀を誘き出したり……」

夢野「一体Rは何が狙いなんじゃ……?」



コトダマ『白銀が持っていたメモ』ゲット!

198: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:37:02.45 ID:6xZhAZ960
春川「死体付近から分かることはこれくらいかな」

春川「後はこの現場となった教室全体について調べたいけど……」

夢野「その前に最原の話を聞いておかんか?」

春川「……そうだね。何か知っているだろうし」



夢野(ウチらは最原のところまで移動すると、先に最原の方から声をかけてきた)

最原「あ、二人とも捜査頑張ってるみたいだね」

最原「僕はこの通り見張られている上に、証拠隠滅されたら厄介だからって、死体に近づけさせてももらえなくて……」

ゴン太「ごめんね、でも王馬君がちゃんと見張っておけって」

夢野(ゴン太が最原の一挙手一投足を見ている)

最原「あ、うん。ゴン太くんのせいじゃないよ」

最原「まあそういうことだから……捜査は頼んだよ」

春川「分かった」

夢野「ウチに任せておけ」



コトダマ『捜査時間の最原』ゲット!!

199: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:38:01.07 ID:6xZhAZ960
春川「それより最原からも話を聞いていい?」

最原「……ああ、そうだったね。どう考えても不自然な状況だもんね」

夢野「一体どうして、死体のある部屋で倒れていたんじゃ?」

最原「正直僕も分かっていることが少なくて……とりあえずこれを見てもらえるかな?」

夢野(最原はポケットから紙切れを取り出す)



『今夜21:20に二階奥の教室に一人で来い  他言無用、破った場合は災いが起きる R』



夢野「……Rじゃと!?」

春川「どうしてここにも……!」

200: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:38:51.44 ID:6xZhAZ960
最原「確かに食堂の手紙を書いたRがどうしてとは思ったけど……」

春川「それだけじゃない。白銀もRに呼び出されていた」

最原「白銀さんも!?」

夢野「同じ文面のメモが死体から発見されてな」

春川「……いや、二つのメモは微妙に違うって」

夢野「んあっ? そうだったか?」

春川「うん。白銀のメモは21:30に、最原のメモは21:20に呼び出されている。ちょっとだけ最原の方が早いから」

春川「それ以外は定規を使って筆跡が分からなくなっていることも、呼び出した場所も一緒だけど」

夢野「なるほど……でもどうして時間をずらしたんじゃ?」

最原「……おそらくRには何か狙いがあったんじゃないかな?」

春川「狙いって?」

最原「いや、そこまでは分からないけど……」

夢野(R……ますます何をしたいのか分からなくなったぞ)



コトダマ『最原の持っていたメモ』ゲット!

201: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:39:59.28 ID:6xZhAZ960
春川「それで最原はこのメモ通りに行動したってわけ?」

最原「あ、うん。そうだね」

最原「他言無用だし、破ったら災いが起きるって……まあこれは嘘の脅しかもしれないけど本当だったら困るし」

最原「それで一人でここに来るしか無かったんだ」

夢野「この教室に来て……どうなったんじゃ?」

最原「それが……分からないんだ」

最原「この教室に入った途端に背後から……たぶん何かで頭を殴られたのかな、衝撃を感じた後は意識を失って」

最原「東条さんに起こされて、みんな集まっていることに気づいて、白銀さんが殺されたことを教えてもらったってところだよ」

春川「Rの仕業……なのかな?」

夢野「ところでいつ、このメモは見つけたんじゃ?」

最原「今日の昼だね。一度自分の部屋に戻ったときに、扉に挟まっているのを見つけたんだ」



コトダマ『最原への襲撃』ゲット!!

202: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:41:24.55 ID:6xZhAZ960
夢野(最原からの話は聞けた。ウチらは教室の探索を続ける)

夢野「ん? 部屋の隅に何か……箱?」

夢野(ウチと同じものに春川も気づく)

春川「工具箱だね。ハンマー、ペンチ、鋸、鋼線カッター……色々入ってるね」

春川「まあどうせ倉庫にあったものじゃないの?」

夢野「ならこれからクロは断定出来んか……」

春川「でも、どうしてこんなところにあるんだろう……」



コトダマ『工具箱』ゲット!!

204: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:42:19.71 ID:6xZhAZ960

春川「あれ……これ」

夢野(ハルマキが窓を見て、何かに気づいたようじゃが)

夢野「どうしたのか?」

春川「この学校に来て、窓は封鎖されているものだと思っていて気づくのが遅れたんだけど」

春川「一部分だけ、有棘鉄線が切られているね。……工具箱はこれに使われたのかな? 鋼線用のカッターも入ってたし」

夢野「……そうじゃな」

夢野(見てみると有棘鉄線が切られて封鎖にスペースが出来ている)

春川「窓が開けられるようになってるし……この大きさなら人も通れたと思う」

夢野「じゃがここは二階じゃぞ?」

春川「装備さえあれば降りるのは簡単だよ。私でも降りようと思えば降りれるし」

春川「最悪何も無しで飛び降りても死ぬ高さではないよ」

夢野「わざわざこの窓から降りる必要があるのか? 窓の先はただの校舎の外じゃろう」

夢野「階段を使って降りて、玄関を通って外に出た方が面倒が無いぞ」

春川「それはそうだけど窓の鍵もここだけ開いたままみたいだし……何より犯行現場にある不自然なところだから……」

春川「犯人は階段を使わずに外に出る方法があったってことは覚えておいた方がいいかもね」



コトダマ『有棘鉄線の切られた窓』ゲット!!

205: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:43:30.21 ID:6xZhAZ960
春川「教室で変わったところはこれくらいかな」

夢野「なら他の場所も探しに行くのか?」

春川「そうだね。それと一緒にアリバイを確認しておいた方がいいかも」

夢野「アリバイ……か」

夢野(犯行時刻は21:30じゃったな。その時間はというと……)

春川「ちょうどコロシアイ促進BGMが鳴り止んだときだね」

夢野「あのときの……やはり、BGMは殺人が起きると鳴り止むってことでいいのか?」

モノクマ「うん、その通りだよ!」

夢野「んあっ!?」

206: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:44:55.89 ID:6xZhAZ960
春川「……いきなり出てきて何?」

モノクマ「え、駄目だった?」

夢野「全く心臓が止まると思ったわい! ウチは繊細なんじゃぞ!」

モノクマ「ごめんごめん」

春川「ところでその通りってことは、あのBGMは殺人が発生したら消えるってことでいいんだね?」

モノクマ「そうだね。正確には人が死んだ瞬間に鳴り止めたよ」

夢野(ならやはりあの瞬間に白銀が死んだということじゃな)



コトダマ『コロシアイ促進BGM』ゲット!

207: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:46:19.62 ID:6xZhAZ960

春川「となるとBGMが消えたとき食堂にいた人にはアリバイがあるってことだね」

夢野「ウチら二人と、ゴン太、百田、入間、東条、真宮寺、アンジーじゃな」



コトダマ『21:30のアリバイ』ゲット!



春川「逆に食堂にいなかったのは最原、赤松、キーボ、王馬、星、白銀、天海、茶柱だね」

春川「白銀は被害者だし、最原はその時間気絶中だったって話だから、残りの人からアリバイを聞こうか」

夢野(ウチらは話を聞くため移動する)



星「犯行時刻にはどこに居たかって?」

春川「全員にアリバイを聞いてまわってるんだけど、教えてもらえる?」

星「そうだな、宿舎の部屋に一人でいた。あのBGMも気にしてなかったしな」

夢野「つまりアリバイは無いんじゃな」

星「……まあそういうことになるな」

208: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:47:07.43 ID:6xZhAZ960
天海「俺も宿舎の部屋に一人でいたっすね」

春川「アリバイを示せそうなことはある?」

天海「……んー、無いっすね」

星「だが、死体発見アナウンスを聞いてから部屋を出たところでちょうど天海と会ったな」

天海「そうっすね、それで二人で現場まで向かったんすよ」



夢野「まずこの二人はアリバイがないようじゃな」

春川「自分の部屋にいたんじゃ仕方ないね」

コトダマ『21:30のアリバイ』アップグレード!

209: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:47:42.76 ID:6xZhAZ960
<超高校級のピアニストの研究教室>

夢野(ウチらはまだアリバイを聞いていない生徒を求めて移動した)



赤松「21:30のアリバイ?」

春川「そう。その時間何してたの?」

赤松「えっと、ピアノをずっと弾いていたよ」

夢野「それを見ていた人はおるのか?」

赤松「いないね」

春川「つまり赤松もアリバイが無いってことか」



コトダマ『21:30のアリバイ』アップグレード!

210: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:48:27.22 ID:6xZhAZ960
夢野「ところでよくあのBGMの中ピアノを弾いてられたな?」

春川「そうだね、あんなうるさい中じゃ気が散ると思うけど」

赤松「……ごめん、さっきも気になったんだけどBGMって何?」

夢野「……? 何を言っておるんじゃ。21:00からずっと流れておったじゃろ?」

春川「あの不快な音楽に、後一時間で皆殺しのモニター表示に……まさか気づいてなかったっていうの?」

赤松「あーえっと……その通りでございます」

赤松「私さ、ピアノに夢中になると周りのことが全く気にならなくなって」

赤松「朝の手紙で、コロシアイのタイムリミットが無くなったって聞いてすごい開放感で、今日は空き時間があったらずっとピアノを弾いてたんだ」

赤松「夜は……夕食を食べてからだから……20:00から、21:30過ぎに夢野さんに止められるまでずっと弾いていたかな?」

211: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:49:18.95 ID:6xZhAZ960
夢野「……じゃから21:00から始まったBGMにも気づかなかったと?」

赤松「そういうことみたい……」

春川「犯行現場のかなり近くにいたから、何か知っているかもって思ったのに」

赤松「あはは……ごめんね」

夢野(殺害現場の教室とこの音楽室は廊下挟んで向かいなんじゃな……)



コトダマ『赤松の証言』ゲット!

212: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:50:55.36 ID:6xZhAZ960
春川「ところでこの音楽室ってたくさんCDがあるんだね……」

赤松「そうだね、モノクマが集めたのかな?」

夢野「この教室で聞くことは出来るのか?」

赤松「あー、それは今は無理みたい」

春川「今は?」

赤松「うん。二人は知っていると思うけど、この教室を使うためにモノクマーズが急ピッチで作業を進めたって言ったでしょ?」

赤松「そのときにスピーカーを落として壊しちゃったみたいで。放送用のスピーカーはあるけど、あれってモノクマたちしか使えないでしょ?」

春川「……確かに壊れてるね。これじゃ音が出ない」

夢野「つまり生徒が使えるオーディオ機器がこの音楽室には無いってことじゃな」

赤松「だね。まあ私にはピアノさえあればいいけどね!」



コトダマ『音楽室のオーディオ機器』ゲット!!

213: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:52:06.87 ID:6xZhAZ960
夢野(研究教室を出たところで百田が近づいて来た)

百田「ハルマキ、ちょっといいか?」

春川「何?」

百田「いやそういえばなんだが、BGMが鳴り止んだ後、俺たちはピアノの音に誘われるまま赤松の研究教室に入っていっただろ?」

夢野「そうじゃな」

百田「そのときだが、俺は後ろの方だったから、赤松の教室には入りきれず廊下にいたんだ」

夢野(そういえば赤松が普通にピアノを弾いていたことに呆然として、入り口付近で立ち止まったからのう)

百田「その廊下にいる間だが、俺たち以外に誰も廊下を通らなかったことと、俺たちの中でも犯行現場の教室に近づく者がいなかったことは俺が保証するぜ!」

春川「なるほど……で、どうしてそれをわざわざ私に伝えに来たの?」

百田「俺の勘なんだが、推理とかハルマキは得意そうだからな! だから話しておいた方がいいと思ったんだ」

百田「頼りにしているからな!」

春川「……わ、分かった」

夢野(少し照れているハルマキ)

夢野(……それはともかく、今の証言も何かに関わってくるんじゃろうか?)



コトダマ『百田の証言』ゲット!

214: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:52:55.83 ID:6xZhAZ960
<一階階段前>

夢野「……んあ、転子ここにおったのか?」

茶柱「あ、夢野さん!!」

春川「ちょうど良かった。茶柱、あんたのアリバイを聞いてもいい?」

茶柱「早速ですね……いいですけど、いつのアリバイですか?」

春川「モノクマファイルに書いてあった犯行時刻の21:30……ちょうどBGMが鳴り止んだ時だから分かりやすいと思うけど」

茶柱「あのときは21:00から始まったコロシアイ促進BGMを、最初は大丈夫だと思って聞き流していたんですが……時間が経つにつれて不安になってきて……」

茶柱「一人じゃ心細くなり、食堂なら誰かがいるだろう向かっている最中に、急にBGMが消えて……というところですね」

夢野「つまりそのときは廊下に一人じゃったと」

春川「アリバイは無いってことか」

茶柱「そうなりますね」



コトダマ『21:30のアリバイ』アップデート!

215: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:53:40.79 ID:6xZhAZ960
夢野「そういえばウチらが食堂を飛び出したときに、転子はこの一階階段前におったな。あれは何だったんじゃ?」

茶柱「あれでしたら、ちょうどこの場所に来たときに、BGMが鳴り止んだんですよ」

茶柱「大音量のBGMが鳴り止んで、音の空白が出来た空間にピアノの音色が流れてきたんです」

茶柱「それに聞き入って立ち止まってしまって……」

春川「ピアノの?」

夢野「赤松の演奏じゃな。ウチが止めるまでずっと演奏していたはずじゃ」

春川「………………」

春川「二つ聞いてもいい?」

茶柱「何でもいいですよ!」

春川「BGMが鳴り止んだ瞬間にピアノの音が聞こえてきたって話だったけど、そこにタイムラグは無かったんだよね?」

茶柱「無かったですね。BGMが消えると同時にピアノの音が聞こえてきました。おそらくBGMの大音量でピアノの音がかき消されていたんでしょう」

夢野「それが無くなってピアノの音が聞こえ始めたんじゃな」

216: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:55:01.63 ID:6xZhAZ960
春川「じゃあもう一つ」

春川「この階段前で立ち止まっていた間、階段を誰かが通ったりした?」

茶柱「階段を? いえ、誰も見ませんでしたね」

茶柱「夢野さんたちと合流して、一緒に階段を上るまで誰も通らなかったと断言します!」

春川「そう……」

夢野「……? 今のはどういう話じゃ?」

春川「今の話が本当なら……かなり重要な証言になるはずだよ」

夢野(と言って春川は説明せんまま、その場を離れた)

夢野「うーん……どういうことじゃ?」



コトダマ『茶柱の証言』ゲット!

218: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:55:56.99 ID:6xZhAZ960
<校舎外>

夢野「こんなところにおったんじゃな」

夢野(残りのアリバイを確認しに来たところで、何やら言い争いが発生しているようだ)



キーボ「言っておきますけど、ボクはまだ許してないんですからね!」

王馬「あ、夢野ちゃんに春川ちゃんどうしたの?」

キーボ「話聞いてるんですか!?」

王馬「ごめんごめん、聞いてなかった」

キーボ「失礼な人ですね!」



春川「……何これ?」

219: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:57:01.48 ID:6xZhAZ960
夢野(どうにかキーボに落ち着いてもらって、話を聞くことになった)

王馬「21:30のアリバイ?」

王馬「ああ、そのときならキー坊と一緒にいたよ」

王馬「…………あれ、そういえばロボットと居てもアリバイって成り立つんだっけ?」

キーボ「また失礼なことを!」

春川「って、言ってるけど、キーボは王馬と一緒にいたの?」

キーボ「全く……ああえっと、BGMが鳴り止んだ時ですよね。確かに王馬君と一緒にいました」



王馬「今日はアリバイを作っておかないと面倒になると思ったからねー」

春川「何それ? どういうこと?」

王馬「あ、何でもないから気にしないでいいよ」

春川「………………」





夢野「なるほど……二人にはアリバイがあるんじゃな」

春川「これで全員分のアリバイが分かったね」

夢野「アリバイが無いのは最原、星、天海、赤松、転子の五人じゃな」



コトダマ『21:30のアリバイ』アップグレード!

221: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:57:56.17 ID:6xZhAZ960
夢野「ところで二人はさっきから言い争っておるがどうしたんじゃ?」

キーボ「それが聞いてくださいよ。王馬君ったら夕食が終わってからずっとロボット差別の発言ばかりで……それで怒ったボクが追い回して」

王馬「ロボットなのに人間を捕まえられないって本当情けないよね」

キーボ「ボクの運動能力はそこまで高いわけじゃありません!」

春川「で、追いかけ回している内に21:30を迎えたってこと?」

キーボ「いえ、その少し前には捕まえましたね。それがちょうどこの場所です」

キーボ「その後は反省してもらうように言っている内に、BGMが鳴り止んで、死体発見アナウンスが流れて、そこでボクらも犯行現場に向かったというわけです」



夢野「この場所って……」

夢野(校舎の外の特に何もない場所じゃが……)

春川「いや、有棘鉄線が切られていた犯行現場の教室の窓がここのちょうど真上にあるみたい」

夢野「んあっ? そうなのか?」

222: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 22:58:52.00 ID:6xZhAZ960
春川「二人に聞きたいんだけど、BGMが鳴り止んだ時周辺であの窓から降りてきた人っていない?」

王馬「窓から? あれって有棘鉄線があって開けることが出来ないんじゃないの?」

夢野「それが切られていたんじゃ」

キーボ「そうだったんですか……でも、誰も降りたような人はいなかったはずですよ」

王馬「だね。キー坊のお小言を話半分で聞いて、周りのことに注意を向けていたから間違いないよ」

キーボ「真面目に聞いてなかったんですか!?」

夢野(また争っておるが……)

夢野(とにかくあの窓から降りてきた人はいなかった……ということみたいじゃな)



コトダマ『王馬とキーボの証言』ゲット!

223: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:00:04.92 ID:6xZhAZ960
春川「…………」

夢野(ハルマキが難しい顔をして考え込んでおる)

夢野「どうしたんじゃ?」

春川「いや、今までのみんなの証言を元に推理を組み立てていたんだけどさ……」

春川「どうにもクロの想像が付かなくて」

夢野「まだ証拠が足りないのか?」

春川「いや、関係してそうなところは回ったはずだし……大丈夫なはずなんだけど……」

春川「………………」

夢野(春川が悩んでおる。この事件はそれほど難しいのか?)



王馬「そんなの簡単な話だよ」

224: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:01:04.30 ID:6xZhAZ960
夢野「ん、聞いておったのか王馬」

王馬「まあね」

春川「……で、今の言葉ってどういう意味?」



王馬「分かり切っているでしょ、誰かが嘘を付いているってことだよ」



夢野「嘘を……?」

王馬「だってクロは捕まりたくないんだよ、当然嘘の証言をするに決まってるじゃん」

王馬「逆にシロはよほどのことがない限り本当のことを言う。議論にノイズが混じって、クロが見つけられず全員おしおきなんて事態は避けたいからね」

王馬「まあ要するに、ちゃんと証明出来ない発言は信じないことだね」



春川「……あんたは誰が嘘を付いているのか分かっているの?」

王馬「さあね、さっぱり分からないよ」

春川「その言葉が嘘である可能性は?」

王馬「……にししっ、それこそ分からないよ」

夢野(それだけ言うと、王馬は離れていく)

夢野「クロによる嘘の証言が混ざっておる……証明できない発言は信用するな……か」



コトダマ『王馬の助言』ゲット!

225: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:01:52.92 ID:6xZhAZ960
キーンコーンカーンコーン

『うぷぷっ、それじゃ捜査時間はそろそろいいかな?』

『オマエラ全員、裁きの祠まで集まってくださーい!』



春川「……捜査も終わりか」

夢野「最後の最後で気になる発言じゃったが……」

春川「後は全部学級裁判で明らかにするだけだよ」

春川「それに裁判には最原だっているし」

夢野「そうじゃな……」

夢野(一周目を毎回シロの勝利に導いた超高校級の探偵、最原がウチらにはおるんじゃ)

226: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:02:49.81 ID:6xZhAZ960
<裁きの祠>

夢野(裁きの祠には生徒が全員集合していた)

赤松「やるしかないんだよね……」

真宮寺「クロを指摘できなければ全員おしおきだからネ」

アンジー「おー、頑張るぞー」

天海「そうっすね、絶対にクロを見つけて生き残ってみせるっす」

夢野(みんなが決意を新たにしたところで、モノクマ像が沈みエレベーターが現れる)

夢野(ウチらはそれに乗り込んだ)

227: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:03:42.22 ID:6xZhAZ960
夢野(エレベーターは沈む、沈む、沈む)

夢野(まるでどこまでも落ちていくかのよう)

夢野(もう6回は体験しておるのに、これだけは慣れんのう)

夢野「………………」

夢野(もしこの裁判で、クロを指摘できなければ……ウチらは全滅)

夢野(わざわざコロシアイ学園生活の最初に戻って……それで死ぬなんて結末はあんまりじゃ)

夢野(絶対にクロを……見つける!)



最原「気力は十分みたいだね」

229: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:05:12.99 ID:6xZhAZ960
夢野(最原が周りに聞こえないように小声で話しかけてくる)

夢野「最原……裁判では頼りにしておるぞ」

最原「いや、ごめん。たぶんそれは無理だよ」

夢野「……っ!? どうしてじゃ!?」

最原「今回はろくに捜査が出来なかったからね……情報が無ければ推理も出来ない。僕が裁判を導くのは難しいと思っている」

夢野(っ……最原に頼れんとなるとこれは……)

最原「それでも頑張るつもりだけど……」

最原「やっぱり頼りになるのは裁判経験の多い夢野さんと春川さんだと思うんだ」

夢野「ウチとハルマキ……なのか?」



最原「うん。だから頼んだよ」

最原「白銀さんは……首謀者で僕らにコロシアイ強制した人物だ」

最原「今だって許せない思いはあるけど……」

最原「それでも……あんな凄惨な表情で死んでいい人だったとは思えない」

最原「だから春川さんと協力してクロを見つけて……白銀さんの無念を払ってくれ」

夢野(最原から託された思い。ウチは……)

夢野「分かったぞ。確かに受け取った」

最原「……ありがとう」

230: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:05:53.97 ID:6xZhAZ960
夢野(次第にエレベーターの加速が緩む)

夢野(扉が開いてそこは、ウチにとってはもう慣れた裁判場)

夢野(そして――この周回では初めての裁判場)


<裁判場>


赤松「な、何この場所?」

王馬「うわーすごいねー!」

モノクマ「それじゃ自分の席についてください!」

夢野「ここじゃな」

夢野(初めての裁判場に戸惑う生徒たちの中、ウチはいつもの自分の席についた)

231: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:06:48.84 ID:6xZhAZ960
夢野(信じたくはないが)

最原「……」

夢野(この中にいるんじゃな)

赤松「……」

夢野(白銀を殺したクロが)

王馬「……」

夢野(謎はたくさん残っておる)

入間「……」

夢野(クロは誰なのか?)

百田「……」

夢野(どうして白銀を殺したのか?)

星「……」

夢野(何故クロは卒業しなかったのか?)

真宮寺「……」

夢野(Rとは誰なのか?)

茶柱「……」

夢野(Rは何の目的で動いていたのか?)

天海「……」

夢野(Rとクロは同一人物なのか?)

アンジー「……」

夢野(クロがついた嘘の証言とは何なのか?)

ゴン太「……」

夢野(全部……解き明かしてみせる)

キーボ「……」

夢野(こんなところで死んでおられん)

東条「……」

夢野(そうじゃ……ウチは生き残ってみせる!)

春川「……」





夢野(この――嘘と真実が交錯する学級裁判を……!!)






233: ◆YySYGxxFkU 2017/04/15(土) 23:15:49.48 ID:6xZhAZ960
『モノクマファイル1』
被害者は白銀つむぎ。死亡時刻は21:30。犯行現場は二階教室。死因は胸にナイフの一突き。即死だった模様。争った形跡はない。死体に移動された様子は無いとのこと。

『白銀が持っていたメモ』
白銀の遺体のポケットから見つかった。内容は『今夜21:30に二階奥の教室に一人で来い  他言無用、破った場合は災いが起きる R』

『捜査時間の最原』
ゴン太に見張られて、捜査をすることが出来なかった。

『最原の持っていたメモ』
最原が持っていたメモ。内容は『今夜21:20に二階奥の教室に一人で来い  他言無用、破った場合は災いが起きる R』

『最原への襲撃』
メモで呼び出された教室に入った途端、後ろから殴られて気絶した。次に気が付いたのは死体発見アナウンスが鳴って、みんなが集まり起こされたとき。

『工具箱』
死体発見現場の教室の隅に置かれていた。

『有棘鉄線の切られた窓』
犯行現場の窓の一つの封鎖が解かれていた。人が通れるくらいの大きさがあり、鍵も開いていたため出入りすることは可能。

『コロシアイ促進BGM』
21:00から流れ出した大音量のBGM。人が死んだ瞬間に鳴り止む。

『21:30のアリバイ』
最原は気絶中。赤松は研究教室でピアノを演奏中。星と天海は自室で一人。茶柱は一階階段前。王馬とキーボは犯行現場教室真下の校舎外に二人。他は全員食堂にいた。

『赤松の証言』
20:00から21:30過ぎに夢野に止められるまでずっとピアノを弾いていた。夢中になっていたため、その間の周りの状況を把握していない。

『音楽室のオーディオ機器』
音楽再生装置が故障中で、使うことが出来なかった。

『百田の証言』
赤松の教室を訪れたときに、誰も廊下を通らなかったことと、誰も犯行現場の教室に近づかなかったことを見ている。

『茶柱の証言』
犯行時刻の21:30は校舎一階階段の前にいた。BGMが鳴り止むのと同時にピアノの音が聞こえ始めた。また夢野たちと合流するまで誰も階段を通らなかった。

『王馬とキーボの証言』
犯行現場の教室真下の校舎外にいたが、BGMが鳴ってから死体発見アナウンスが鳴るまで誰も窓から降りてきた者はいない。

『王馬の助言』
クロは自分を指摘されないために、嘘を付いているはずだということ。

263: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:46:03.39 ID:zJDAbFyF0
モノクマ「まずは学級裁判のルールを説明するよ」

モノクマ「オマエラの中には殺人を犯したクロがいます。今から話し合いでそれが誰なのかを決めてもらいます」

モノクマ「最後に投票をして、その結果正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき」

モノクマ「指摘できなければクロ以外がおしおき。そしてクロは卒業できます」

モノクマ「というわけでよろしく!」



王馬「ほら、さっさとゲロっちゃいなよ、最原ちゃん!」

入間「そうだ、オマエがクロに決まってるだろ!」

最原「違う、僕はクロじゃない!」

赤松「最原くんがクロだとは思えないよ!」

百田「そうだぞ!」



アンジー「うーん……もう夜も遅いから神様も寝てしまったのだー」

ゴン太「え、そうなの!?」

真宮寺「……君の神は面白いんだネ。今度話を聞かせてもらえないかナ?」



キーボ「ですが、死体発見現場にいたことはどう説明するんですか?」

星「まあ、死体のある部屋にいたってのは怪しいが……」

東条「どちらかと言えば怪しいけれど、まだクロと決めつけるのは早急だと思うわ」

天海「そうっすよ。折角だからもっと話し合うべきっす」

転子「いえ、殺人なんて野蛮なことをするのは男死に決まっています!」

264: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:47:02.28 ID:zJDAbFyF0
春川「ちょっと待って。せっかく学級裁判なんて場があるんだから、ちゃんと話し合うべきだよ」

夢野「そうじゃぞ! クロを決めるのは話し合ってからでも遅くは無い!」

天海「そうっすね。とりあえず事件で気になるところを上げていくとかどうっすか?」



星「気になるか……そうだな、どうして最原が死体発見現場で倒れていたのかは気になるな」

入間「はあ? そんなの一つに決まってんだろ!」

茶柱「一つ……ですか?」

夢野(最原が気絶していた理由……それを話し合うべきじゃな)

265: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:47:35.98 ID:zJDAbFyF0
『ノンストップ議論、開始!!』

真宮寺「最原君は死体のある教室で気絶をしていた……それは間違いない事実だヨ」

百田「問題はそれがどうして気絶していたのかってことだろ?」



ゴン太「分かった! 『バナナの皮で滑って』、頭を打ったんだよ!」

キーボ「現場にはバナナの皮はありませんでしたよ?」



入間「全く、ゴン太は分かってねえな!」

入間「オレ様の灰色の脳細胞にかかればこんな問題楽勝だぜ!」

王馬「へえ……ちなみに聞くけど何なの?」

入間「へっ、そんなの簡単だ。白銀を殺したはいいものの最原は『返り討ち』にあったんだよ!」

入間「だから気絶してたんだ! オレ様つえーっ!」





『モノクマファイル1』 → 『返り討ち』



夢野「それは違うぞ!」 パリーンッ!!

266: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:49:01.71 ID:zJDAbFyF0
夢野「最原は返り討ちにあったわけではないぞ」

入間「はあ? どうしてそんなの分かるんだよ?」

夢野「モノクマファイルじゃ」

夢野「これによると、白銀に争った跡は無いと書かれておる」

夢野「つまり白銀の反撃で最原が気絶したというのはありえんのじゃ!」

入間「で、でもそのモノクマファイルが間違いの可能性だってあるだろ!」

春川「それは無いよ。だって死体を見た感じ、記述通り争った跡は無かったからね」

春川「おそらく白銀は不意を突かれて、抵抗する間も無く殺されたんだと思う」



百田「へえ、よく分かったな。ハルマキ」

赤松「よく死体からそんなこと分かったね」

王馬「ふーん…………」

夢野(そういえばまだハルマキは超高校級の保育士なのか。自己紹介は二周目に突入したときには終わっていたし仕方ないが)

267: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:49:30.52 ID:zJDAbFyF0
入間「じゃあ……オレ様の推理は間違っていたのか……?」

王馬「まあ存在自体が間違いだらけだしね」

入間「ひぐっ!」


アンジー「ならどうして終一は気絶したのー?」

赤松「そうだね……何かあったのかな?」

ゴン太「バナナの皮が無いなら……段差でつまづいたとか?」

キーボ「どうしても最原君を転ばせたいんですね?」





夢野(最原が気絶した理由……それは)

『証拠を提示せよ!!』


『最原への襲撃』


夢野「これじゃ!!」

268: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:50:33.88 ID:zJDAbFyF0
夢野「最原が気絶していたのは何者かに襲撃されたからじゃ!!」

百田「何者かって……誰だ?」

最原「えっとそれは見てないんだけど……」

最原「僕はあの教室に入った途端に、背後から襲撃されたんだ」

最原「頭を思いっきり殴られてね。それで意識を失ったんだ」



ゴン太「何だ、転んだんじゃなかったんだね」

茶柱「ですが、最原さんはどうして二階の教室に行ったんですか?」

星「そうだな……クロじゃなとい言うならそこが気になるぞ……」

天海「何か理由があるんすかね?」

夢野(最原が犯行現場にいた理由……それは)



『証拠を提示せよ!!』

『最原の持っていたメモ』

夢野「これじゃ!!」

269: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:51:05.68 ID:zJDAbFyF0
夢野「最原が犯行現場にいたのは、Rに呼び出されたからじゃ」

キーボ「R……って、朝の食堂に置いてあった手紙の差出人のことですか?」

夢野「そうじゃ。そのRが最原をメモで呼び出していたんじゃ」

最原「そのメモがこれだよ」

夢野(最原が呼び出しメモを見せる)

真宮寺「なるほどクロじゃないと言うなら、どうしてあの場所にいたのかと思ったけど、呼び出されていたからなんだネ」

東条「呼び出し時間は21:20……犯行時刻の少し前ね」

キーボ「Rがこの事件にも関わってくるんですね……」

270: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:51:40.49 ID:zJDAbFyF0
王馬「でもこんな怪しいメモによく従ったよねー?」

春川「来ないと災いが起きるって脅されているんだし、しょうがないでしょ」

王馬「えーこんなあからさまに嘘な記述を信じたってわけ?」

百田「しかたねえだろ。もし本当で災いってのが起きても困るしな」



星「しかしRってのはどうして最原を二階教室に呼び出したんだ?」

茶柱「……ふふふっ」

夢野「どうしたんじゃ、転子?」

茶柱「夢野さん……転子分かりました! Rの正体と最原さんを呼び出した目的が!!」

夢野「何じゃとっ!?」

271: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:52:14.35 ID:zJDAbFyF0
『ノンストップ議論、開始!』

赤松「Rの正体が分かったってどういうこと!?」

茶柱「簡単ですよ。現場を見れば分かることです」

茶柱「呼び出した二階教室にいた人間は他に誰がいましたか?」

ゴン太「えっと……白銀さんだね」

茶柱「そうです、Rは白銀さんだったんです!」

茶柱「白銀さんは最原さんを呼び出して殺そうとしたところを、逆に不意を突かれ殺されたんです!」

茶柱「でないと白銀さんが『二階教室にいる理由が説明できません』!」





『白銀の持っていたメモ』 → 『二階教室にいる理由が説明できません』



夢野「それは違うぞ!」 パリーン!!

272: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:52:44.53 ID:zJDAbFyF0
夢野「転子、Rは白銀じゃないぞ」

転子「え、どうして分かったんですか!? ……まさか夢野さんの魔法ですか!!」

夢野「魔法じゃないわい。その証拠があるんじゃ」

夢野(白銀の持っていたメモを見せる)

夢野「これによると白銀もまたRによって犯行現場の教室に呼び出されているんじゃ」

アンジー「Rに呼び出されたってことはRじゃないってことだねー」

春川「そういうこと。白銀はRじゃないんだよ」

転子「そう、でしたか……。転子が間違ってました!」

273: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:53:26.51 ID:zJDAbFyF0
赤松「でもRは白銀さんと最原君を呼び出してどうするつもりだったんだろう?」

百田「呼び出し時間が違うのも少し気になるぞ」

キーボ「二人とも殺すつもりだったとかですかね? それで最原君の殺しには失敗したと」

真宮寺「二人殺しても、証拠が増えるだけで得は無いヨ。卒業のためなら一人殺せばいいんだからネ」

夢野・春川・最原「「「………………」」」

夢野(色々ツッコみたかったが、二周目に言っても仕方ないことじゃな)



夢野(……っと、そんな場合ではなかった)

夢野(Rが二人を呼びだした理由……それは)



『Rが二人を呼び出した理由は何?』

1 二人を殺すため
2 二人のどちらかにクロの汚名を被せるため
3 二人に告白するため




『2 二人のどちらかにクロの汚名を被せるため』

夢野「これじゃ!!」

274: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:54:02.77 ID:zJDAbFyF0
夢野「Rが白銀と最原の二人を呼びだした理由……それはどちらかにクロの汚名を被せるためじゃ!!」

ゴン太「クロの汚名?」

夢野「そうじゃ。一人を殺してその近くに気絶させてもう一人を放り出せば、その人に疑いの目は向く」

夢野「それがRの狙いだったんじゃ!」

最原「やっぱり僕を襲ったのもRなんだろうね」

天海「呼び出し時間が違うのも、きっとそのためっす」

天海「最原君を先に呼び出して気絶させる。それで後から来た白銀さんが倒れている最原君に驚いている隙を突いて、殺したのかもしれないっすね」

東条「だとすると……最原君を怪しんでいた私たちはRの手の平の上だったってわけ?」

王馬「くそっ、Rなんてよく分からないやつに出し抜かれるなんて! 覚えてろよっ!」

春川「そんなに悔しがるところ?」

275: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:54:45.05 ID:zJDAbFyF0
赤松「それじゃやっぱり最原君はクロじゃなかったってことだね!」

百田「俺は信じてたぜ!」

最原「疑いが晴れたのは嬉しいけど……でもこれで議論は振り出しに戻っちゃったね」

キーボ「ですが、分かったこともあります。状況からしてRがクロだということです」

真宮寺「Rが呼び出した場所でこれだけ動かれているからネ。偶然この場所を知った第三者の犯行とは考えにくいネ」

百田「だけどそのRてのが誰なのかが分からねえんだよな」

夢野(クロ=Rの図式は固まった。正体不明のRとクロの二人を別々に探す必要が無くなったのはありがたいが……次への手がかりが……)



東条「なら次は私から話題を提供してもいいかしら?」

夢野「……何じゃ、東条?」



東条「気になっていたことがあるの。Rは犯行後にどうやって現場から逃げたのかしら?」



夢野「逃げた方法……?」

276: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:55:11.23 ID:zJDAbFyF0
『ノンストップ議論、開始!』

赤松「逃げ方……それがそんなに重要なの?」

アンジー「うん、神様もそう言ってるねー」

ゴン太「あ、神様起きたんだ」

入間「そんなの決まってるだろ! 犯行現場は二階の教室なんだから『階段から降りた』んだよ!!」

王馬「はいはい、その臭い口はチャックしましょうね」

入間「ひぐっ!」



『茶柱の証言』 → 『階段から降りた』



夢野「それは違うぞ!」 パリーン!!

277: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:55:47.25 ID:zJDAbFyF0
夢野「クロは階段を使って逃げられなかったはずじゃ!!」

入間「ど、どうしてそう言えるんだよぅ……?」

春川「茶柱が見ていたからね」

茶柱「……あ、そういうことですか!」

茶柱「転子は犯行時刻からずっと階段の前に立っていたんです! その間誰も階段を通らなかったということは、クロは階段を使わなかったということです!」



星「……犯行時刻からって、正確になのか? その前に急いで降りてきたのを見逃しているかもしれないぞ」

王馬「そうだよ、廊下には時計はないし、ロボットと違って時計を見ないと時間が分からないはずだよ」

キーボ「……悲しくないですよ……むしろボクは人間の非合理さに同情します」

夢野(いや、時計を見なくてもいつ犯行が行われたのかはあれから明白なはずじゃ)



『証拠を示せ!』

『コロシアイ促進BGM』

夢野「これじゃ!!」

278: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:56:50.02 ID:zJDAbFyF0
夢野「確か転子が階段の前で立ち止まったのは、ちょうどコロシアイ促進BGMが鳴り終えたときじゃったよな?」

転子「はい、そうですね!」

百田「それがどうしたんだ?」

夢野「あのコロシアイ促進BGMは誰かが死んだ瞬間に鳴り止むようになっているんじゃ」

王馬「そうなの、モノクマ?」

モノクマ「はいはい、夢野さんの言う通りですよ」

春川「つまり茶柱は犯行時刻からずっと階段の前にいたってことだよ」

星「なるほどな……」

夢野「よってクロは階段を降りることが出来かったと――――」

279: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:57:17.52 ID:zJDAbFyF0
 反


真宮寺「その推理は虚構だヨ!!」


     論!!



夢野「んあっ!?」

真宮寺「クロは階段を降りることが出来なかった?」

真宮寺「そう決めつけるのは早計じゃないかナ?」

夢野「じゃが、転子が階段の前を見張っておったんじゃぞ!!」

真宮寺「それは知っているけど……わずかな隙があったんだヨ!」

280: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:57:47.71 ID:zJDAbFyF0
『反論ショーダウン・真打 開幕』

真宮寺「階段前を見張っていた茶柱さん」

真宮寺「その後僕たちが合流して二階に上がったんだよネ」

真宮寺「その間誰もすれ違って降りてきたものはいない。つまり、クロが一階に降りることは出来なかったように見えるけど」

真宮寺「その後に隙が出来たんだヨ」



発展!!

夢野「隙とはなんじゃ! クロはどうやって階段を使ったんじゃ!!」



真宮寺「簡単な話サ」

真宮寺「僕たちは二階に登った後、すぐに犯行現場を見つけた訳じゃなイ」

真宮寺「まずピアノの音に釣られて、赤松さんの研究教室に向かったんだヨ」

真宮寺「その瞬間サ、注意が研究教室に向いている隙を狙って、教室に潜んでいたクロが階段を使って降りたんだ」

真宮寺「みんな研究教室に入って『廊下は誰も見ていなかった』し、逃げることは可能なはずだヨ!!」



『百田の証言』 → 『廊下は誰も見ていなかった』


夢野「その言葉、ウチの魔法で一刀両断じゃ!!」 バサッ!!

281: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:59:00.83 ID:zJDAbFyF0
夢野「いや、その間も廊下を見ていた者がおる!」

夢野「百田、そうじゃよな!」

百田「オ、オレっ!? ……あ、そうか」

真宮寺「……どういうこと?」

百田「あのときオレは後ろの方にいたからな。研究教室の入り口近くで立ち止まられたせいで、教室の中に入れなかった」

百田「それで仕方なく廊下を見ていたんだが、その間誰も通らなかったぜ!」

真宮寺「なるほど……そういうことか」

真宮寺「なら、確かにクロは階段を使えなさそうだネ」



アンジー「だったらクロはどこから逃げたのー?」

ゴン太「そうだよ、クロが消えたことになっちゃうよ」

春川「いや、後一つだけ方法があるんだよ」

夢野(春川の言う方法……それは……)



『証拠を提示せよ!』


『有棘鉄線の切られた窓』


夢野「これじゃ!!」

282: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 22:59:43.23 ID:zJDAbFyF0
夢野「ハルマキ、それって窓から脱出する方法じゃよな?」

春川「そうだよ」

百田「窓からってどういうことだよ? 封鎖されてたはずだろ?」

春川「それが犯行現場の教室だけは違ったんだよ。一部有棘鉄線が切られて、人が通れるくらいの穴が出来ていて、そして鍵も外れていた」

キーボ「有棘鉄線を切ったんですか? あれって切れるものなんですか?」



夢野(現場にあったあれを使えば切れたはずじゃな)



『発掘イマジネーション開始』


工具箱


夢野「これじゃ!」

283: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 23:00:41.77 ID:zJDAbFyF0
夢野「現場にあった工具箱。これの鋼線カッターを使えば有棘鉄線も切れたはずじゃ!」

キーボ「あ、そんなものがあったんですか……にしてもそれをどうして現場に置いてたんでしょうか……?」



東条「つまり、クロは窓から出ることが出来たってことね?」

茶柱「でしたら階段を使わずとも、逃げられたということですか!?」

アンジー「それなら、校舎の外にいた人が怪しいねー」



王馬「校舎の外っていうと……キー坊と星ちゃんと天海ちゃんかー」

キーボ「何しれっと自分を省いているんですか!!」

王馬「あ、バレた? でも残念、俺はクロじゃないんだよねー!」

キーボ「それを言うなら、ボクもですよ!」

星「俺もクロじゃねえな」

天海「右に同じっす」



「「「「俺(ボク)はクロじゃないよ(ですよ)(ねえな)(っす)」」」」



夢野(っ……この中にクロはおるのか……?)

284: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 23:01:19.14 ID:zJDAbFyF0
<パニック議論、開始!>

王馬「俺が二階から飛び降りたら死んじゃうよ」

王馬「あ、でもロボットなら大丈夫だよね?」

キーボ「失礼な、下手すると壊れますよ!」

赤松「結構脆いんだね……」

星「ていうか二階から落ちたくらいじゃ死なないだろ?」

茶柱「冒険家ならそれくらい楽にこなせるんじゃないんですか?」

百田「確かにロープ一本でもあれば降りれそうだな」

天海「それは否定しないっすけど」

天海「……というかそもそも誰かが窓から降りたって推理は正しいんすか?」

東条「その疑問は分かるけど、可能性としては十分にあり得るはずよ」

ゴン太「否定する証拠があればいいんだけど……」

王馬「そんな都合良く『見ていた人なんていない』って!」



『王馬とキーボの証言』 → 『見ていた人なんていない』



夢野「それは違うぞ!!」 パリーン!!

285: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 23:02:07.99 ID:zJDAbFyF0
王馬「……お、今のはどういうことかな?」

夢野「とぼけおって……! 大体お主が窓から降りた人がいないって証言したんじゃろうが!!」

王馬「にししー、やっぱり覚えていたか」

百田「どういうことだ?」

王馬「今日は夕御飯食べてからずっとキーボと追いかけっこしてたんだけど」



赤松「追いかけっこ? 二人って仲良いんだね」

キーボ「違います!!」



王馬「ちょうど犯行時刻の前くらいかな、捕まっちゃって説教されてたんだ」

王馬「その場所がちょうど犯行現場の二階教室の窓の真下だったんだよ」

真宮寺「そのときから死体発見アナウンスが鳴るまで、誰か窓から降りてきた人を見たかイ?」

王馬「いや、いなかったよ。キー坊も見てたから間違いないよ」

キーボ「そうですね」

東条「だとしたら……これはちょっとおかしいわね」

286: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 23:02:42.84 ID:zJDAbFyF0
夢野「何がおかしいんじゃ?」

天海「東条さんはこう言いたいんすよね?」



天海「犯行現場の教室がある校舎二階は、事件発生当時、密室状態であったのだと」



夢野「密室……!?」

春川「……っていうにはかなり広いし、ひらけているけど?」

天海「それでも階段と封鎖を解除された窓、二階部分に繋がるどちらからも出入りが確認されなかったということはある意味密室っす」

百田「言われてみればそうだな……」

287: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 23:03:13.62 ID:zJDAbFyF0
王馬「ということはクロはもう分かったようなものだよね」

夢野「んあっ!? そうなのか!?」

王馬「最原ちゃんを気絶させて、白銀ちゃんを殺したクロ」

王馬「クロは二階に密室部分が出来てしまったため、逃げることが出来なかった」

王馬「そう……だったら逃げなければ良いんだよ」

夢野「逃げずに……?」

王馬「分かるでしょ? 密室部分にいたのは三人」

王馬「白銀ちゃんと最原ちゃんと後は――――」



『怪しい人物を指名しろ!』

288: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 23:03:47.26 ID:zJDAbFyF0







夢野「赤松……もしかしてお主なのか?」







289: ◆YySYGxxFkU 2017/04/17(月) 23:04:23.31 ID:zJDAbFyF0
夢野(校舎二階の研究教室にいた赤松。密室部分の内側にいた残りは彼女だけ……)



赤松「わ、私!?」



夢野(突然のことに驚く赤松)

夢野(それは果たして素の反応なのか……はたまた演技なのか……?)




――――――――。




<裁判中断!!>

316: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:39:47.37 ID:hZG2D0/K0
ゴン太「赤松さんがクロ?」

百田「そ、そんなはずねえだろ!?」

真宮寺「でも死体発見現場の近くにいたんだよネ?」



夢野(赤松がクロ……)

夢野(今回コロシアイをかき回しているRは一周目に存在しなかった)

夢野(一周目と違う行動を取る存在……首謀者の存在を知らされなかった赤松ならそれに当てはまる)



王馬「みんなで脱出して友達になろうって言いつつ」

王馬「自分は人を殺して卒業しようとしていたんだ!」

王馬「しかもわざわざ裁判を開いて、俺たちを皆殺しにしようとしている!」

王馬「いやぁ、とんだ嘘つきだね!」



夢野(本当に赤松がクロなのか……話合わないとな)

317: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:40:16.95 ID:hZG2D0/K0
<ノンストップ議論、開始!>

王馬「超高校級のピアニスト、赤松ちゃんが今回の事件のクロだったんだよ!!」

最原「違う! 赤松さんはそんなことをする人じゃない!」

星「だが、だったら赤松は自分の研究教室で何をしていたんだ?」

入間「ナニをしていた?」

真宮寺「君はちょっと黙っててネ」

天海「超高校級の研究教室ってことは(ピアノを引いてた)んじゃないっすか?」




『赤松の証言』 → (ピアノを引いてた)

夢野「それに賛成じゃ!!」 同意!

318: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:40:46.48 ID:hZG2D0/K0
夢野「天海の言う通りじゃ、赤松はピアノを弾いておったんじゃ」

天海「やっぱりっすか」

キーボ「けど、あのBGMの大音量の中をですか?」

赤松「あはは……私ピアノを引き出すと夢中になって周りのことが気にならなくなるからさ……」

星「没入していればそういうこともあるな」

アンジー「でもでもーそれって誰かと一緒にいたわけじゃないよねー?」

東条「アリバイにはならないわ」

最原「せめて誰かピアノを聞いてた人がいたら良かったんだけど……」



夢野(赤松のピアノを聞いておった人……それなら心当たりがおる)


『証拠を提示せよ!』


『茶柱の証言』


夢野「これじゃ!」

319: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:41:14.65 ID:hZG2D0/K0
夢野「転子……お主、赤松のピアノを聞いておったよな?」

茶柱「そうですね、先ほどした階段の前で立ち止まったときの話ですが」

茶柱「BGMが鳴り止むのと同時にピアノの音が聞こえてきたんです!」



春川「あのBGMは人が死ぬのと同時に鳴り止む」

春川「つまり白銀が死んだ瞬間、赤松はピアノを弾いてたことになる」

春川「そして白銀が死んでた教室と赤松の研究教室は近いとはいえ距離はある」

春川「死体を移動した様子もなかったし、殺した瞬間にピアノを弾き始めるのは不可能だよ」

キーボ「そもそも人を殺した直後にピアノを弾き出したら狂気ですけどね」

最原「ということはやっぱり赤松さんはクロじゃなかったんだ!」

夢野「そういうことに――――」

320: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:41:43.44 ID:hZG2D0/K0
 反


東条「滅私奉公よ!」


     論!!



夢野「んあっ!?」

東条「ごめんなさいね」

東条「私も赤松さんを疑いたいわけじゃないんだけど」

東条「みんなの命がかかっているもの」

東条「今の推理の綻びを指摘しないわけには行かないわ!」

321: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:42:18.29 ID:hZG2D0/K0
<反論ショーダウン真打 開幕!>

東条「BGMが鳴り止んだ瞬間にピアノの音が聞こえてきた」

東条「だから赤松さんが白銀さんを殺すことは出来なかった」

東条「着眼点はいいと思うけど」

東条「それに一つ抜け道があることを忘れているわ」



発展!!

夢野「抜け道とはなんじゃ! 白銀が死んだ瞬間に、ピアノが弾かれていたことは事実じゃろ!」



東条「そう、その死んだ瞬間ってところよ」

東条「赤松さんは白銀さんにナイフを刺した」

東条「『でもその瞬間は死んでいなかったのよ』」

東条「苦しむ白銀さんを後に、教室を出た赤松さんはピアノを弾き始める」

東条「そうすれば白銀さんがやがて死に、その瞬間にピアノを弾いているという状況が完成するわ」



『モノクマファイル1』 → 『でもその瞬間は死んでいなかったのよ』

夢野「その言葉、ウチの魔法で一刀両断じゃ!!」 バサッ!!

322: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:42:44.27 ID:hZG2D0/K0
夢野「それはないぞ!」

東条「どうしてかしら? 教えてもらえる?」

夢野「モノクマファイルの記述じゃ」

夢野「これには白銀が即死だったと書いてある」

夢野「つまりナイフを刺して、時間差で白銀が死んだということはあり得んのじゃ!!」

東条「……そうだったわね」

東条「どうやら私の方が甘かったみたい。ごめんなさい、夢野さん」

夢野「いいんじゃ」

323: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:43:11.28 ID:hZG2D0/K0
ゴン太「ていうことは赤松さんは犯行が出来なかったってことだよね」

最原「良かったけど……これでまた手がかりが……」

キーボ「そもそも二階が密室で誰も出られなかったから赤松さんがクロっていう話でしたよね?」

キーボ「その赤松さんがクロでないなら……一体誰に犯行が可能だったんですか?」

星「他に校舎二階に出入りするルートは無いのか?」

天海「無いっすね」

百田「おいおい……だったらどうしようもねえじゃねえか!?」



夢野(校舎二階に出現した密室)

夢野(誰も出入りが出来ず、中にいた者には犯行不可能)

夢野「これでは……もうクロが分からんではないか……」

324: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:43:38.53 ID:hZG2D0/K0
 反


王馬「そこで俺の出番ってわけ!」


      論!



夢野「んあっ!?」

王馬「全くだらしがないなぁ、夢野ちゃんは」

夢野「な、何じゃと! ……だったら、王馬! お主にはここからクロを見つけることが出来るのか!」

王馬「当たり前じゃん」

王馬「ていうかそもそもさっきからの議論でちょっと疑問に思ってたんだけど」



王馬「なんでみんなは誰も嘘を付いていないって前提で話し合っているの?」

325: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:44:13.31 ID:hZG2D0/K0
ゴン太「嘘?」

百田「はぁ? この命がかかった学級裁判で誰が嘘をつくってんだよ!」

東条「……いえ、言われてみれば一人いたわね」

東条「嘘を付くことが己の利になる者が」

最原「それってクロのことだよね?」

王馬「最原ちゃんの言う通りー!」

王馬「クロってのは自分の正体がバレたくないんだからね。みんなに気付かれない範囲なら嘘を付くに決まってるよ」



春川「そういうことか」

百田「何か気付いたのか?」

春川「うん。今問題になっている二階に作られた密室ってのは、物理的な密室じゃない」

春川「あくまで出入りするものがいなかったという数々の発言により成り立っている密室なんだよ」

夢野「じゃから……その一つにでも嘘があれば密室は破れるのか!?」

アンジー「なるほどー」

326: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:44:56.77 ID:hZG2D0/K0
真宮寺「なら一つずつ検証していくべきだネ」

入間「だったらまずはそこの罵倒馬とキーボの発言からだな!」

王馬「……………………」

入間「って、おい聞いてるのか!?」

王馬「……え、俺? あ、そうか罵倒と王馬を併せて罵倒馬なんだね。へえ、センス無いじゃん」

入間「ひぐっ……!」



王馬「まあいいや。それで俺と小豆洗いロボットの発言についてだけど」

キーボ「………………」

王馬「って……あれ、電池切れ?」

キーボ「電池切れじゃありません!! そしてボクじゃなくて王馬くんと小豆洗いロボットの発言でしょう? ボクは関係ありません!」

夢野「何を言っておるんじゃ、小豆洗いかは知らんがロボットと言ったらお主じゃろう?」

王馬「そうだぞ、何知らない振りしてんだ!」

キーボ「酷いですね! 然るべき機関に訴えますよ!!」

327: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:45:29.16 ID:hZG2D0/K0
星「話が逸れてるぞ」

真宮寺「代わりにこっちでまとめておくヨ。二人の発言だけど……そもそも二人が揃って発言してる時点で、この証言の信憑性が高いってことが分かるネ」

赤松「え、どういうこと?」

真宮寺「どちらかがクロだとしたら、もう一人はその嘘に合わせていることになる」

真宮寺「一つの事件で二人がクロになることは出来なイ。そういう認識だけど、間違ってないかナ?」

モノクマ「その通りだよ」

真宮寺「つまり、二人の内どちらかのシロがクロの偽装に協力してるってことになるんだヨ」

真宮寺「でもそのことには何もメリットがない、いやどころかデメリットしかなイ」

真宮寺「そのままクロがバレずに終わったら、シロはおしおきされるからネ」

真宮寺「つまりシロがクロに協力するなら、命がけってことになるんだけど……」



王馬「訴えてそれでどうなるの? 俺は悪の総統なんだよ? その程度で怯むと思ってる?」

キーボ「……もう怒りました。容赦しませんからね!」



真宮寺「あの二人がそんな協力関係に見えるかイ?」

赤松「見えないね……」

春川「もし共犯があるとしたら……命がけってことだね。そんなのよほどの状況じゃないと無いと思うよ」

夢野(前周回の王馬と百田みたいなのは特別ということじゃな)

328: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:46:14.74 ID:hZG2D0/K0
夢野「なら、クロは窓から出入りしたわけではないということじゃな」

東条「同じように百田君の証言も信憑性が高いわね」

最原「百田君の発言って……赤松さんの研究教室にいたときに誰も廊下を通らなかったって話?」

東条「ええ。だって百田君には犯行当時に食堂にいたアリバイがあるもの。つまりシロってこと」

東条「シロがクロに協力することはないって話だったでしょう?」

夢野「そうじゃな」



アンジー「じゃあアリバイがない人の発言が怪しいんだねー?」

百田「そういうことになるな」

星「アリバイが無くて、密室を形成している発言をした者……か」

春川「それって一人しかいないよね?」



夢野(それは……)

『怪しい人物を指名しろ!』

329: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:46:41.70 ID:hZG2D0/K0







夢野「転子……お主、なのか?」



茶柱「……え、私ですか!?」








330: あ、ミス。上の転子の一人称は転子でした。すいません ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:47:46.84 ID:hZG2D0/K0
東条「茶柱さんが……」

入間「つまり階段の前に立ってたのは嘘で、本当は白銀を殺してから階段の前まで大急ぎで戻ってきたってことだな!!」

王馬「へえ、入間ちゃんにしては真面目な発言じゃん」

真宮寺「階段方面の目撃情報は彼女の証言だけで成り立っている。……なるほど、その彼女がクロなら階段は使えたってことだネ」

春川「それで何か反論はある?」

茶柱「そ、そう言われましても……」

茶柱「転子は本当に階段の前にずっといたんです!」

茶柱「信じてください!」

星「って言われてもな……」

東条「具体的に反論してもらわないと困るわね」

キーボ「そうです、論理的な発言を求めます」

331: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:50:01.28 ID:hZG2D0/K0
茶柱「論理的に……と言われましても、どうすればいいんですか!?」

王馬「嘘を付いてないことの証明ってのは難しいからねー」

天海「悪魔の証明っすね……」

東条「茶柱さんが嘘をついていたとしたら、全てに説明が付くのよ。正直可能性は高いんじゃないかしら?」

茶柱「転子は嘘をついていないんです! ゆ、夢野さんは信じてますよね!?」

夢野「転子……」

夢野(確かに転子がクロだとは思いたくない……)

夢野(思いたくない……じゃが転子が嘘を付いていないと証明する方法……?)

夢野(そんなのどうすればいいんじゃ)

332: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:50:27.04 ID:hZG2D0/K0









最原「死体発見アナウンスだよ」










333: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:50:58.34 ID:hZG2D0/K0
夢野「…………な?」

最原「今回の死体発見アナウンスはどういう状況で鳴ったのか……」

最原「ね、夢野さん。思い出してみて?」

夢野「死体発見アナウンス……?」

夢野(えっとそれは…………)





百田『さ、最原と……それに白銀は………………』

百田『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?』

夢野『最原……! 白銀っ!!?』

状況を認識した二人が叫び声を上げる。



茶柱『どうしたんですか、夢野さん………………』

茶柱『って、うきゃぁぁぁぁぁっ!!!!?』



『死体が発見されました。オマエラ死体発見現場の校舎二階教室まで集まってください!』





夢野「もしかして……」

夢野(最原のヒント……これは……)

夢野(もう少しで繋がりそうじゃ……この線を考えてみるぞ!)

334: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:51:25.10 ID:hZG2D0/K0
『ブレインドライブ開始!』

1死体発見アナウンスはどんな状況で鳴る?

A.クロ以外の三人が死体を発見した場合。





2今回の事件で死体発見アナウンスが鳴ったタイミングは?

A.茶柱が死体を見つけたとき。





3アナウンスが鳴ったときに死体を見つけた生徒はどういう扱い?

A.確定でシロ





夢野「繋がった……!!」

335: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:52:11.62 ID:hZG2D0/K0
夢野「転子は嘘を付いていない! 転子は絶対にシロじゃ!!」

ゴン太「どうしてそう言えるの?」

夢野「死体発見アナウンスじゃ! 今回の死体発見アナウンスが鳴った経緯を考えれば分かるぞ!」

百田「死体発見アナウンス? えっと……確か俺と夢野が死体を見つけた後に、茶柱が駆けつけてきて、そこで鳴ったんだよな?」

星「……なるほどな」

赤松「え、どういうことなの!?」

星「死体発見アナウンスはクロ以外の三人が死体を見つけた場合に鳴る。それは間違ってねえよな、モノクマ」

モノクマ「そうだよ」

星「なら茶柱はシロだ。クロが死体を見つけた瞬間にアナウンスが鳴るはずないからな」

アンジー「あ、そういうことかー」



夢野(一応今の流れも記録しておこうかの)



コトダマ『死体発見アナウンス』ゲット!!
夢野と百田が死体を発見した後、駆けつけた茶柱が死体を見た瞬間にアナウンスが鳴った。

336: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:52:44.04 ID:hZG2D0/K0
夢野「そしてクロではないということは嘘を付くメリットもない。茶柱は本当のことを言ってることになる!」

茶柱「夢野さん……転子は信じてましたよ!!」

真宮寺「茶柱さんが……クロじゃない……か」

アンジー「なら密室の問題は継続だねー。クロはどうやって二階から抜け出したのー?」

春川「……また振り出しだね」

百田「またなのか!?」

キーボ「結局密室を作っている誰もが嘘を付いていないってことになりましたからね」

入間「ていうか今のはそもそも罵倒馬が、思わせぶりに誰かが嘘を付いているって言ってたから話し合ったんだろ! でも嘘をついてるやつはいねーじゃねえか!」

王馬「あははっ、これは手厳しいね!」



王馬「……でもさ」

王馬「俺は密室を作っている人間が嘘を付いたなんて言ってないよ?」



キーボ「何を言ってるんですか! ボクの録音にしっかり残って――――」

キーボ「……いるのは春川さんが言い出したことでしたね」

春川「確かに私が言い出したことだけど……」

春川「何? だったら密室を作った人間以外が嘘を付いているっていうの?」

ゴン太「もう誰が嘘を付いているのか……ゴン太には分からないよ」



夢野(誰が嘘を付いているのか……そこをハッキリせんとな)

337: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:53:16.67 ID:hZG2D0/K0
『ノンストップ議論、開始』

アンジー「だったら誰が嘘を付いてるっていうのー?」

王馬「そんなの簡単だって。密室が万全に機能しているのは分かったでしょ?」

王馬「だったら論理的に考えて、クロは密室の中にいたままだったってことだよ」

入間「……! つまり赤松か!!」

赤松「わ、私!?」

入間「本当は赤松はピアノを弾いてなかったんだ!」

茶柱「赤松さんのアリバイはピアノの音で成り立っていました」

茶柱「ならその音に細工をすればいいんです」

ゴン太「つまり『ピアノの演奏が入ったCDを流せばいい』んだね!」

真宮寺「それなら白銀さんを殺した瞬間もピアノの音が鳴り続けるネ」





『研究教室のオーディオ機器』 → 『ピアノの演奏が入ったCDを流せばいい』



夢野「それは違うぞ!!」 パリーン!!

338: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:53:44.50 ID:hZG2D0/K0
夢野「いや、転子が聞いたのは赤松が弾いておったピアノしかあり得ないじゃろう」

ゴン太「え、どうしてなの?」

夢野「音楽室のオーディオ機器は壊れておったからな。ピアノの音を出そうと思えば、ピアノを弾くしかない」

春川「私も確認したよ。モノクマーズが落としたせいだって聞いたけど……」



モノクマ「ん、何? オマエラ、学園の備品を壊したの?」

モノタロウ「ち、ちちち違うよっ!!」

モノキッド「そ、そそそそうだぜぇっ!!」

モノスケ「ワ、ワワワイは知らんで!!」

モノファニー「ア、アアアタイでもないわ!!」

モノダム「オラガ壊シタンダヨ」

モノタロウ「え、モノダム……?」

モノダム「オラガ一人デ壊シタンダヨ。ゴメン」

339: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:54:12.11 ID:hZG2D0/K0
モノクマ「ん、いいよ。別にまた直せばいいだけだしね。それより正直に申告する我が子にボクは感動したよ!!」

モノクマ「まあ、でもそうだよね! 我が子に嘘を付くような悪い子はいないもんね!!」

モノタロウ「ぎくっ……!」

モノキッド「ぎくぎくっ……!!」

モノスケ「ぎくぎくぎくっ……!!!」

モノファニー「ぎくぎくぎくぎくっ……!!!!」

モノクマ「ん、何その反応? まさか……」

モノダム「何でもないよ、父ちゃん」

モノクマ「あ、そうなんだ。我が子が嘘を突くはずがないしね。安心したよ」





王馬「まあ小芝居はさておき、モノクマーズが壊したってことで確定みたいだね」

夢野「となればさっき話し合った通り、即死した白銀とその途端に鳴り止むBGMと転子が聞いたピアノの音で赤松がクロでないことは確定じゃ」

ゴン太「あ、そういうことなんだね」

340: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:54:42.06 ID:hZG2D0/K0
百田「やっぱり赤松は嘘をついてねーじゃねえか!」

入間「おい、密室にいたやつが嘘を付いてたんじゃないか!? 何か言うことはねえのかよ!」

王馬「……もう言うことはないよ。全部話したからね」

ゴン太「全部話した……?」





星「ちょっと待て。もしかして俺たちは騙されていたのかもしれないぞ」

春川「騙す?」

星「ああ。そもそも嘘を付いている人間がいるってのは王馬の発言だ。なら――その嘘を付いている人間がいるって発言自体が嘘だった、ってことはないのか?」

341: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:55:16.91 ID:hZG2D0/K0
アンジー「そうやって議論を攪乱することが目的だったってことー?」

星「ああ……それで王馬の考えに基づくと、嘘を付いていた王馬自身がクロってことになる」

キーボ「いえ、それは無いですよ。犯行時間にボクは王馬君と一緒にいましたから」

赤松「そんなのロボだから、こう頭を色々弄くったとか無いの?」

キーボ「酷い話ですね!?」

入間「改造なんてオレ様レベルの腕がねえと出来ねえぞ!」

ゴン太「なら、入間さんがいれば出来たってこと?」

入間「ええっ!? ……な、何だよぅ……オレ様を疑ってるのか……?」

春川「王馬……あんた何か知ってるんでしょ? さっさと吐いたらどう?」

王馬「だからもう俺から話すことは無いんだってば。さっきの発言で終わりだよ」

百田「話すことは無いって、それじゃ議論にならないだろ!?」

東条「待って……この可能性なら、現場が密室でも犯行は可能かもしれないわ」

茶柱「何の可能性ですか?」

東条「白銀さんの自殺だった……という可能性よ」

真宮寺「なるほど……Rに呼び出されたというのが彼女の嘘。裁判が開かれたのも、クロが死んでいるからってことなんだネ」

最原「本当は白銀さんがRだったっていうこと?」

東条「生きている人間がクロでないとしたら、その可能性についてももっと話し合うべきだと思うわ」

342: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:56:24.22 ID:hZG2D0/K0
夢野(議論が方々に飛んでおる……)

夢野(それもこれもクロと思わしき人物が見つからないからじゃ)

夢野(実際ウチにも想像が付かん)

夢野(食堂の謎の手紙、白銀の殺害、最原への襲撃)

夢野(これらをやったRが、クロがウチらの中にいるはずなのに……)

夢野(未だに正体すら掴めない)

夢野「………………」

夢野(本当にウチはクロを見つけられるのか?)

夢野(最悪……このまま全滅という結末も――――)

344: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:56:54.11 ID:hZG2D0/K0










天海「なるほど、そういうことっすか」











345: ◆YySYGxxFkU 2017/04/18(火) 22:57:23.67 ID:hZG2D0/K0
夢野「……え?」

赤松「何か分かったの、天海君?」

天海「分かったというか気付いたというべきか……」

百田「どういうことだ!?」

天海「そうっすね……すいません、ちょっと協力して欲しいっす」




天海「もう一度、白銀さんの死体について話し合ってもらってもいいっすか?」





360: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:31:43.57 ID:stmYyu6V0
春川「白銀の死体? 何か分からないことでもあったっけ?」

星「モノクマファイルにも詳しく書いてあったぞ。今さら話し合うことか?」

入間「いや、あの記述について疑ってんだな!」

王馬「モノクマが嘘を付いているってこと?」

モノクマ「失礼な! ボクは嘘を付いていないよ!」

キーボ「結局どういうことなんですか、天海君?」

天海「まあ色々気になってるみたいっすけど……それを確かめるためにも話し合ってみようってお願いっす」





夢野(ハルマキが見た以上、見落としもないはず。特に新しい情報がでるとは思えんが……天海は何を考えておるんじゃ?)

361: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:32:31.83 ID:stmYyu6V0
『ノンストップ議論、開始!』

キーボ「白銀さんの死体が発見されたのは『校舎二階の教室』でしたね」

赤松「『ナイフの一突き』で死亡だったよ」

ゴン太「もしかしてその『ナイフ』からクロが分かるんじゃないの!?」

星「いや、ナイフは『倉庫』にあったはずだから誰でも持ち出せたはずだぞ」

真宮寺「『指紋』でも鑑定できれば一発なんだけどネ」

東条「他に『気になるところ』があったかしら?」

アンジー「『即死だったところ』とかー?」

百田「『死体を移動した様子が無いところ』か?」

転子「『争った様子がないところ』とかどうですか!?」

入間「『白銀が死んだときの表情』とかはどうだ! あいつはすげえ顔で死んでたぞ!」

最原「あれは『凄惨な表情』だったね……」

王馬「…………」

春川「特に『気になるところはない』じゃん、何がしたかったの?」

天海「……やっぱりっすか」

















『捜査時間の最原』 → 『凄惨な表情』



夢野「それは違うぞ!!」 パリーン!!

362: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:33:18.97 ID:stmYyu6V0
最原「……え?」

春川「どうしたの、夢野?」

最原「えっと……何か僕がおかしな発言でもしたかな?」

赤松「おかしくないよ、白銀さんの表情は怖かったし……」

夢野「………………そうじゃな」

夢野「確かに…………おかしくは、ない」

最原「でしょ? もう急に何を言い出すのかと、僕もビビって――」







夢野「それを……最原以外が言ったならの話じゃがな」

363: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:34:10.46 ID:stmYyu6V0
夢野「白銀の死体は発見された後、見ていられないということで顔を伏せられた」





入間『すげえ顔で死んでんな!』

真宮寺『死の恐怖に彩られているヨ』

星『死体に対して、あんまりそういうことは言うもんじゃないぜ』

東条『とりあえず白銀さんの体は伏せておくわね、見ていられないもの』





夢野「最原、お主は死体の正体すら伝聞で知ったはずじゃ」





最原『ク、クロってどういうこと!? もしかして……誰かが死んだってこと!?』

赤松『あ、そっか。私たちが最原くんを囲んでいるからそこからじゃ見えないんだね』

春川『……白銀が死んだんだよ』

最原『白銀さんが!? どうして……』




夢野「捜査時間中も白銀の死体に近づけさせてもらえなかった」





最原『僕はこの通り見張られている上に、証拠隠滅されたら厄介だからって、死体に近づけさせてももらえなくて……』

ゴン太『ごめんね、でも王馬君がちゃんと見張っておけって』

夢野(ゴン太が最原の一挙手一投足を見ている)





夢野「そして今さら気付いたのじゃが裁判前のエレベーターのときも……今さっきも」





最原『うん。だから頼んだよ』

最原『白銀さんは……首謀者で僕らにコロシアイ強制した人物だ』

最原『今だって許せない思いはあるけど……』

最原『それでも……あんな『凄惨な表情』で死んでいい人だったとは思えない』





夢野「お主はどうして白銀の死体の表情を見てきたかのような発言をしておるんじゃ?」

364: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:34:52.77 ID:stmYyu6V0








『怪しい人物を指名しろ!!』








365: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:35:32.01 ID:stmYyu6V0









夢野「それは……最原。お主がクロだから……なんじゃな」





最原「………………」










366: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:36:27.98 ID:stmYyu6V0
赤松「最原君が……クロ!?」

春川「な、何を言ってるの、夢野!?」

百田「そ、そんなはずねえだろ!!」

星「だが夢野の言い分ももっともだ。最原が死体の表情を見れたのはおかしいぞ」

東条「……獄原君は捜査中の最原君を監視していたはずよね? 誰かが白銀さんの表情について、最原君に教えたことがあった?」

ゴン太「な、無かったけど……でも……」

キーボ「つまり最原君がクロということですね!」

茶柱「いいえ! 最原さんは男死ですが、クロだとは思えません!」

アンジー「そうだねー。本当に終一がつむぎを殺したの?」

入間「そこの童貞に殺せるとは思えねえぞ!!」

真宮寺「どうなのかナ、最原君」

最原「そ、そう言われても……」





王馬「なるほどね、最原ちゃんから失言を引き出すためにあんな議題を上げたんだ。やるじゃん、天海ちゃん」

天海「……ところで王馬君はどうして、最原君がクロだって分かったんですか?」

王馬「え、俺? 天海ちゃんが推理で導いたんじゃないの?」

天海「王馬君のヒントのおかげっすよ。どうなんすか?」

王馬「そんなことより今は裁判に集中しないと!!」

天海「………………」

王馬「うわー、見事に意見が真っ二つに割れたね!!」

367: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:37:16.11 ID:stmYyu6V0
モノクマ「ちょっと待ったーーーーっ!!」



モノクマ「真っ二つ……今、真っ二つと言いましたな?」

モノクマ「つまりこの才囚学園裁判場が誇る変形裁判場の出番ということだよね!?」

王馬「変形!? すごいね、この裁判場は変形するんだって! ねえ、キー坊!」

キーボ「……何故そこでボクの名前を読んだんですか?」



夢野(最原がクロか、クロで無いかで生徒たちが分かれておる)

夢野(ウチだって……最原がクロだとは思いたくない)

夢野(じゃが……生き残るためにも、ウチは真実から目を背けるわけには行かんのじゃ!!)

368: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:38:18.60 ID:stmYyu6V0



 意見対立!




『最原終一は犯人か?』




犯人だ! VS 犯人じゃない!

夢野     最原
王馬     赤松
キーボ    春川
天海     百田
星      ゴン太   
真宮寺    アンジー
東条     入間
       茶柱






『議論スクラム、開始!!』

369: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:40:20.57 ID:stmYyu6V0
百田「最原がクロじゃないってのは裁判の最初で分かったことだろ!!」

夢野「キーボ!!」

キーボ「裁判の最初からまた状況が変わったんです。最原君がまたクロの候補に上がってもおかしくありません!!」



アンジー「終一がクロだって理由は何なのー?」

夢野「天海!!」

天海「死体の表情を見ていたってことっす。夢野さんが言ったように、最原君が嘘を付いていないなら見る暇は無かったはずっす」



入間「でも、現場は密室だっただろ!」

夢野「星!!」

星「最原は密室の内部にいたんだ。それは関係ねえな」



ゴン太「最原君は犯行時刻には気絶していたよ。それってアリバイがあるってことじゃないの?」

夢野「真宮寺!!」

真宮寺「誰かと一緒にいたわけじゃないし、それはアリバイと呼べないヨ」



茶柱「最原さんは死体を発見したときも気絶していました! それでもクロだというんですか!?」

夢野「東条!!」

東条「あれは本当に気絶だったのかしら? 死体に気を取られていて失念していたけれど、本当に気絶していたとしたらあれほどすぐに起きれたのは不自然よ」



春川「最原はRに呼び出されて襲撃されたと証言している。クロだとは思えないって!」

夢野「王馬!!」

王馬「Rに呼び出されて襲撃されたってのが最原ちゃんの嘘だったんだって。自分には犯行が出来なかったってみんなに思わせるためのね」



赤松「最原君がクロだとは思えないよ!」

夢野「ウチが!」

夢野「ウチだって最原がクロだとは思いたくない。でも……状況が最原がクロだと示してるんじゃ!!」

370: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:40:59.42 ID:stmYyu6V0
C R O U C H B I N D

S E T !




夢野「これがウチらの答えじゃ!!」 全論破!!




B R E A K !!

371: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:41:47.79 ID:stmYyu6V0
王馬「一応まとめておくけど、最原ちゃんが付いた嘘はこういうことだね」



『最原の持っていたメモ』
最原が持っていたメモ。内容は『今夜21:20に二階奥の教室に一人で来い  他言無用、破った場合は災いが起きる R』

偽証!!

『最原の持っていたメモ』
最原が自分で用意したメモ。内容は『今夜21:20に二階奥の教室に一人で来い  他言無用、破った場合は災いが起きる R』





『最原への襲撃』
メモで呼び出された教室に入った途端、後ろから殴られて気絶した。次に気が付いたのは死体発見アナウンスが鳴って、みんなが集まり起こされたとき。

偽証!!

『最原への襲撃』
全て最原の嘘だった。



星「あんたは最初から分かってたのか?」

王馬「言ったでしょ、校舎二階の密室内部にいる人が嘘をついているって。それが最原ちゃんだったんだよ」

入間「そうか、嘘を付いてたのはイカ松じゃなくてダサイ原だったのか!!」

王馬「そういうこと。Rに呼び出されたことも、Rに襲撃されたことも……全部嘘だった」

王馬「だって……最原ちゃんがRだったんだからね」

372: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:42:28.59 ID:stmYyu6V0
アンジー「ていうことは……結局どういう事件だったのー? アンジーよく分からないよー」

真宮寺「天海君は分かっている風だったネ? ちょっと教えてもらえるかナ?」

天海「……僭越ながら、ちょっと事件をまとめてみるっすね」





天海「真相はおそらくこうっす」

天海「最原君は白銀さんを二階教室に呼び出して殺した」

天海「そしてそのままその場を逃げるつもりだったはずっす」

天海「単純かつ簡単で……それ故に誰もが行えた事件」

天海「クロを誰かに絞らせずに、裁判を生き残る。そんな狙いだったはずっす」

天海「でもそこで誤算が起きる。赤松さんのピアノっす」

赤松「私の?」

天海「BGMの大音量でかき消されていたせいで、犯行前には気づけなかった」

天海「殺した後に焦ったはずっす。どう考えてもこの音に引き寄せられて生徒たちが集まる。そうなったら逃げることが出来ない。逃げる姿を見られただけでアウトっすから」

373: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:43:16.78 ID:stmYyu6V0
天海「だから最原君は嘘を付くことにした」

天海「工具箱から取り出した鋼線カッターで窓の有棘鉄線を切る」

天海「これは外部犯の可能性を増やすためっすね。王馬君とキーボ君がちょうど窓の外にいたせいで不発だったっすけど、それが無かったらクロ探しは難航したはずっすね」

天海「どうして工具箱を教室に持ち込んでいたのかは分からないっすが……凶器をそれに入れて持ち歩いていたとかですかね?」

天海「工具箱が犯行現場の教室に残っていたのもそれが原因っす。証拠にもなりうるそれを現場に残すのは抵抗があるはずっす。でも、最原君にはそれを持って逃げる時間が無かった」

天海「それと他にRに呼び出されたメモの用意は……その場じゃ難しいっすから、最初から用意していたんすかね?」

天海「もしかして……案外最原君はこの事態を一つの可能性として想定していたのかもしれないっすね」



天海「全部の準備が終わった後は、気絶したフリをして教室の床に寝る」

天海「死体が発見されて生徒が集まった後は、一世一代の演技っす」

天海「自分は何も知らない被害者だ、真犯人は他にいる。それを声高に訴えることで、自分から矛先を逸らそうとした」

天海「……いや、それすらも最原君の計算の内だったかもしれないっすね」

天海「推理小説じゃ良くあるパターンっすから。一番に怪しまれる人間は犯人じゃない」

天海「そのパターンに乗っ取ることで自分がシロだと思われるようにした」





天海「そんなコロシアイを引っかき回したRは、この事件のクロは……最原君、キミっすね」

374: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:44:00.45 ID:stmYyu6V0

夢野「やはり……」

夢野(天海の説明でウチも納得がいった)

夢野(じゃが分かったのは事件の中だけ)

夢野(事件の外で取ったR、最原の行動は……食堂の手紙といい、裁判をわざわざ開いたことといい謎だらけじゃ)



夢野「最原、お主は一体――」

375: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:44:54.94 ID:stmYyu6V0
 反


最原「それは違うよ!!」


     論!



夢野「んあっ!?」

最原「僕が嘘を付いてた? 本当はRで……クロだって?」

最原「そんなことあるはずないよ!」



夢野「……じゃ、じゃが最原」

最原「ほら、夢野さん。呆けてる場合じゃないよ」

最原「君の手で白銀さんを殺した本当のクロを見つけて……そして」



最原「罪を認めさせないと」



夢野「………………分かった」

夢野(最原……お主は一体どういうつもりなんじゃ?)

376: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:45:42.19 ID:stmYyu6V0

『反論ショーダウン、開幕!』

最原「僕が嘘を付いていて、Rでクロだって?」

最原「そんなのあり得ないよ!」

最原「……確かにちょっと嘘は付いてたけどね」

最原「白銀さんの死体の表情を見ていた。それは謝るよ」

最原「でも、それだけで疑われるなんて心外だよ!!」



発展!!

夢野「なら最原……お主はいつ白銀の死体の表情を見たんじゃ!?」



最原「そうだね……みんなが集まった後は見るタイミングが無かったよ。監視されていたしね」

最原「でも、気絶している最中ならどうかな?」

最原「『夢野さんや百田君が死体を発見する前』の気絶して混濁した意識の中」

最原「ふと、意識が浮かび上がって白銀さんの表情を見たんだよ」

最原「変に疑われたらどうしようかって黙ってたんだ。ごめんね」






『死体発見アナウンス』 → 『夢野さんや百田君が死体を発見する前』


夢野「その言葉、ウチの魔法で一刀両断じゃ!!」 バサッ!!

377: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:46:26.46 ID:stmYyu6V0
夢野「それは……ありえんじゃろう」

最原「どうして?」

夢野「お主が言ったんじゃぞ、死体発見アナウンスのことを」

夢野(茶柱が追いつめられたときにされたアドバイス)

夢野(そもそもこれも最原が本当に気絶していたなら気付けるはずが無かったこと)

夢野(どうして最原は自分の弱点にも成りかねないことを教えたんじゃ……?)



最原「死体発見アナウンス? 何のこと?」

夢野「最原、お主がもしシロで気絶中に白銀の死体を見ていたなら」

夢野「死体発見アナウンスは、ウチと百田が死体を発見したときに鳴っていないとおかしい」

夢野「クロ以外の三人が死体を発見した場合に鳴るはずじゃからな」

夢野「しかし、実際はそうならずに転子が見つけた時にアナウンスは鳴っておる」

夢野「それは……最原、お主がクロだから」

夢野「クロだから死体発見アナウンスが鳴るための人数にカウントされなかったんじゃ!!」

378: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:47:06.09 ID:stmYyu6V0
赤松「……もしかして本当に最原君がクロなの……?」

百田「マ、マジかよ……」

アンジー「あれま。予想外だよー」

春川「最原……どうして……?」

春川「その役目は私が…………」

夢野「最原。そろそろ認めい」

夢野「そしてどうして事件を起こしたのか……」



最原「……嫌だ」

夢野「え?」

379: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/19(水) 14:48:08.10 ID:stmYyu6V0
最原「僕はクロじゃない!!」

最原「どうして信じてくれないんだ!」

最原「死体発見アナウンスが証拠? そんなモノクマが気分で鳴らしたからじゃないの!?」

王馬「……モノクマはルールだけは破らないと思うけどね、そしたらこのコロシアイ学園生活も成り立たなくなるし」

最原「そんなの知らないよ!!」

最原「とにかく僕はクロじゃない!」

最原「クロじゃない、クロじゃない、クロじゃない、クロじゃない、クロじゃない………………!!!!!」



夢野(どうして……まだ認めないんじゃ?)

夢野(ここで抗うことに何の意味があるんじゃ……?)

夢野(………………)

夢野(理由は分からんが……)

夢野(白銀を殺したクロはウチの手で認めさせる……それが最原とした約束じゃ!!!)

380: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:48:54.34 ID:stmYyu6V0
『理論武装、開始!!』



「僕はクロじゃない!」

「みんな騙されているんだ!!」

「どうして疑われないといけないの?」

「コロシアイだ、コロシアイが悪いんだ!!」

「言うなればモノクマが殺したようなものだよ!!」

「悪いのは全部モノクマなんだよ!」




『僕が嘘を付いている? それなら直接的な証拠を示してよ!!』


       帽
       △


  子□       ○下


       ×
       の

381: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:49:35.32 ID:stmYyu6V0



『帽子の下』



夢野「これで終わりじゃ!!」



COMPLETE!!


382: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:50:24.34 ID:stmYyu6V0
夢野「だったら最原……その帽子の下を見せてもらえるか?」

最原「帽子を……?」

夢野「お主のRに襲撃されたときの言い分はこうじゃったよな?」

夢野「後ろから頭に衝撃を感じて、気絶した……と」

夢野「ならその帽子の下には、襲われたときに付いた傷が残っているはずじゃ」

東条「そうね、気絶するほどの衝撃となれば何らかの傷は残っているはずよ」

夢野「ほれ、お主が嘘を付いていないというなら、帽子を取るんじゃ!!」





最原「…………」

最原「そうか……そうきたか」

最原「考えてみればそうだね……自分で転んででも傷を付けておくべきだったか」

夢野(最原は自嘲するようにつぶやくと、帽子を取る)




夢野(そこには……傷が一つも無かった)




383: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:51:12.22 ID:stmYyu6V0



最原「……参ったよ、夢野さん」



最原「君の言う通りだ」



最原「僕がRで――そして白銀さんを殺したクロだ」




384: ◆YySYGxxFkU 2017/04/19(水) 14:52:21.54 ID:stmYyu6V0
モノクマ「うぷぷっ、議論も終わったみたいだね!」

モノクマ「それじゃ行きましょう、投票ターイム!!」

モノクマ「みなさんお手元のパネルから、クロと思われる人物に投票してください!!」

………………。

モノクマ「おっと投票も終わったみたいだね。では選ばれた人物はクロなのか、シロなのか……」

モノクマ「ワックワク、ドッキドキの結果発表ーっ!!」









ルーレットが回り始める。

みんなが息を呑んで見守る中。

それは次第にスピードを落として……。



全員が選んだ、最原のところで止まったのだった。

397: ◆YySYGxxFkU 2017/04/20(木) 20:18:17.63 ID:XJjOAFOsO
モノクマ「大・正・解ーーーー!!」

モノクマ「超高校級のコスプレイヤー、白銀つむぎさんを殺したクロは」

モノクマ「何と、超高校級の探偵、最原終一クンでしたーー!!」





赤松「どうして……」

赤松「どうして最原君は白銀さんを殺したの!!?」

赤松「私の夢を……みんなで一緒にこの学園を出て友達になろうって夢に賛同してくれたじゃん!!!」

夢野「赤松……」

夢野(結局白銀が首謀者であるということは、裁判でも語られることが無かった)

夢野(赤松にとって白銀は純粋な仲間。それが失われたと思われておるんじゃな……)

398: ◆YySYGxxFkU 2017/04/20(木) 20:19:07.13 ID:XJjOAFOsO
星「どういう経緯で事件を起こしたのかは気になるぞ……」

真宮寺「もう裁判も終わったんだ、教えてくれないかイ?」

ゴン太「ゴン太も納得できないよ!!」

夢野(みんなも最原に説明を求める……じゃが)



最原「………………」



春川「何か言うことはないの?」

最原「………………」

夢野「最原」

最原「………………」

夢野(だんまりじゃな……一周目の記憶を持つウチらですら、最原が事件を起こした経緯がよく掴めない)

399: ◆YySYGxxFkU 2017/04/20(木) 20:19:46.53 ID:XJjOAFOsO
天海「なら、先にちょっといいっすか?」

夢野「……そういえば天海、お主はどうして最原がクロだと分かったんじゃ?」

夢野(白銀の死体の話をさせて、最原にボロを出させたのは天海じゃ)

夢野(その後の事件概要といい……どうやって推理したのか?)

天海「それは……こっちが聞きたいっす」

夢野「……?」

天海「王馬君……君はいつから最原君をクロだと疑っていたんすか?」

夢野「王馬が?」

天海「そうっす。俺が最原君をクロだと疑ったのも、王馬君の『嘘を付いているのは密室の内側にいる人間』って発言っすから」

400: ◆YySYGxxFkU 2017/04/20(木) 20:20:45.63 ID:XJjOAFOsO
王馬「オレが最原ちゃんを疑ったタイミングねえ……」

王馬「それなら最初からだよ」

夢野「最初から……じゃと?」

天海「それっていつのことっすか?」

王馬「最原ちゃんがRとして初めて動きを見せた……食堂の手紙の時点でだよ」

夢野「……っ!? それは事件が起きる前のことじゃろ!?」

天海「その時点で何が分かるんすか?」



王馬「タイムリミットは嘘、コロシアイから解放されるって書いてたあの手紙」

王馬「あのとき最原ちゃんは手紙を生徒の仕業で、書かれているのは本当のことだって断じたでしょ?」

夢野「……それの何がおかしいんじゃ」

王馬「まあその言い分自体は分からないでもないけど……他にもあの手紙の狙いってのは考えられるのに、最原ちゃんは意図的にその説明を省いた」

天海「他にっすか?」



王馬「うん、あれは殺人を企んでいる生徒が、他の生徒たちを油断させるために送ったもの……という可能性だよ」

401: ◆YySYGxxFkU 2017/04/20(木) 20:21:43.28 ID:XJjOAFOsO
王馬「考えてもみてよ、タイムリミットなんてものが設けられて、コロシアイが起きるんじゃないかってみんな警戒していたでしょ?」

王馬「そんな状態じゃ殺人を企んでいても一苦労だよ」

王馬「だからタイムリミットは嘘だ、コロシアイから解放されたって書いて……場の雰囲気を弛緩させたんだよ」

天海「その可能性を最原君が言い出さなかったのは……そもそも最原君が殺人を狙っているからだと。そう読んだんすね?」

王馬「そういうこと。最原ちゃんが気づいてないとは思えなかったしね」

王馬「まあでも何を企んでいるのか見たかったから、とりあえずあの場では最原ちゃんの言葉を肯定しておいたんだよ」



夢野「ならどうして手紙に対して、モノクマたちは出てこなかったんじゃ?」

夢野「そのせいで不都合なことが起きた、それはこちらに都合がいいからだ、という最原の言葉を信じたわけじゃが……」

王馬「それは最原ちゃんが取り引きでもしたんじゃないの?」

王馬「ねえ、モノクマ。今なら教えてもいいでしょ」



モノクマ「うぷぷっ……そうだね」

モノクマ「ボクたちが今日の日中出てこなかったのは、最原君が交渉してきたからだよ」

モノクマ「代わりに面白いものを見せるって言ってきたからノったけど……うぷぷっ、確かに面白かったよ」

402: ◆YySYGxxFkU 2017/04/20(木) 20:22:27.73 ID:XJjOAFOsO
王馬「そういうこと」

王馬「だからオレは今日の夜辺りに事件が起きると読んで、アリバイを作っておいたんだ」

春川「……そういえばそんなこと言ってたね」

王馬「本当は心にも思っていないロボットに対する悪口を言って、キー坊を怒らせてずっと一緒にいることにしたんだ」

王馬「ううっ……そのためとはいえ、キー坊を傷つけて……くっ、このっ、オレは……!!」

ゴン太「そうだったんだ……」

アンジー「なるほどー……」



キーボ「いや、嘘ですよね!? 絶対傷つけたことを後悔してないですよね!!?」

王馬「まあね♪」

キーボ「やっぱりですかっ!!」

403: ◆YySYGxxFkU 2017/04/20(木) 20:23:25.73 ID:XJjOAFOsO
王馬「まあそんなオレでも最原ちゃんがどういうことを思って今回の事件を企んだのかは分からないんだけど……」

最原「………………」

王馬「うーん……話すつもりが無いみたいだね」



夢野(最原……どうしてお主は……)

夢野(裁判の時も思ったように、事件の内は分かった。じゃが事件の外がよく分からん)

夢野(どうしてRとして食堂にあんな手紙を残した? 王馬の言った、殺人を上手く行かせるためだけとは思えん)

夢野(どうして白銀を殺すのを反対しておったのに、殺すに至った?)

夢野(どうして初回特典を使用し卒業しなかった?)

夢野(謎だらけじゃ……もう時間も残り少ないというのに)



夢野「………………」

夢野(そうじゃ最原がクロで、裁判でそれを指摘されたということは……)

夢野(後に待つのはおしおきじゃ)

夢野(ウチは……あと少しで、一周目の世界から一緒に戦ってきた仲間を失うことになる……)

404: ◆YySYGxxFkU 2017/04/20(木) 20:24:34.44 ID:XJjOAFOsO









<最原サイド>

最原(ごめんね、赤松さん)

最原(約束が守れなくて)

最原(ごめんね、夢野さん、春川さん……)

最原(何も言えずに去ることを……でも今この場で、モノクマの前で言うわけにはいかないんだ)

最原(そして……ごめんね、みんな)

最原(結局コロシアイを始める羽目になって)



最原(でも――――――全部コロシアイを終わらせるためには必要なことだったんだ)





最原(僕がこの計画を実行するに至ったきっかけは……昨日の昼、話し合いの後に赤松さんと天海君に会いに行ったときまで遡る)

408: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:02:59.33 ID:D5HJ5YuMO
<昨日の昼>

最原(僕は夢野さん、春川さんとの話し合いの後、思い詰めているという赤松さんのところに向かっていた)



最原「赤松さん、調子はどう?」

赤松「あ、最原君!」

最原(彼女は、僕の姿を見つけると顔を綻ばせる)

最原(その様子はとても嬉しかったが……しかし、その顔はすぐに曇った)

赤松「はぁ……」

最原「ど、どうしたの赤松さん?」

最原(いつも元気な彼女らしくない)

409: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:03:36.44 ID:D5HJ5YuMO
赤松「あ、ごめん……その最近ずっと悩んでいてね」

赤松「…………」

赤松「ねえ最原君。明日の夜時間までのタイムリミットってどうすればいいんだろう?」

赤松「コロシアイが起きなければ全員死亡。そんなの嫌だけどさ」

赤松「もちろんコロシアイが起きたとしたら、全員でこの学校から出るのは無理になっちゃうわけだし」

最原「そ、それは……」

最原「……な、何とかするよ! 僕が何とかするからさ!!」

最原(そうだ、そのために僕は頑張っているのだから)



赤松「頼もしいね、最原君は」

赤松「でも、それって……具体的にはどうやってするの?」

410: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:04:19.61 ID:D5HJ5YuMO
最原「え、えっとモノクマにタイムリミットの撤回を求めて交渉を……」

赤松「どんな感じだった?」

最原「そ、それは……難航してるけど……」

赤松「……そっか」



最原(落ち込んでいる赤松さん)

最原(でも、ここで首謀者のことを話すわけにはいかない)

最原(言えば最後、赤松さんは絶対に首謀者殺害のために動き出す)

最原(どんな説得も彼女が聞くとは思えない)



最原(……あのとき掴めなかった手)

最原(もう二度とあんな思いをするのは真っ平だ)



最原(なのに――)



赤松「……ごめんね、イジワルなこと言って」

最原「そんなことないよ」

赤松「でも……うん。そうだね」

最原「……?」

411: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:04:59.27 ID:D5HJ5YuMO





赤松「きっと大丈夫だよ! みんなで絶対にこの学園を出ていこうね!!」



最原「…………っ!?」





412: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:05:33.43 ID:D5HJ5YuMO
赤松「じゃあね、最原君! 私はちょっとピアノを弾いてくる!」

最原「…………」

最原(僕は去っていく赤松さんに声をかけることも、手を振り返すことも出来なかった)

最原(一度目は見逃してしまった)

最原(二度目の今回は見逃さない)

最原(今、赤松さんは決心してしまった)

最原(何をしてでも、このコロシアイを止めることを)

最原(いや、元からそのつもりだったんだろう……それを僕との会話で覚悟を決めただけだ)



最原(首謀者のことを知らない彼女が何を企むのかは想像が付かない)

最原(だが……コロシアイを止めるためなら誰かの命を奪うことも)

最原(そして――必要でさえあれば、自分の命を使うことさえ躊躇うことは無いだろう)

413: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:06:26.30 ID:D5HJ5YuMO
最原「これじゃ一周目と同じじゃないか……」

最原(首謀者のことを教えず、事件に関わらせないようにして……なのにどうして)

最原(……いや、それこそ春川さんの言う通りなのか)

最原(彼女の思いを……僕は見誤っていた)

最原「………………」

最原(どうすればいい……昨日の感触からして、モノクマとの交渉も絶望的)

最原(二周目に来てからずっと空回りしてるな……僕は)



悩みながらも、何をするかを最原の足は覚えていたようだ。

気付けば、天海の元を訪れて――超高校級の冒険家の才能について聞いていた。

414: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:07:04.89 ID:D5HJ5YuMO
最原「えっ、じゃあ天海君は超高校級の冒険家なの!?」

天海「……いや、何を驚いているんすか?」

天海「自己紹介の時もそう言ったすよね」

最原「自己紹介……」



最原(それから少し話をして天海君と離れる)

最原(そうかこの二周目の自己紹介は聞いていなかった)

最原(案外、知らずにここまで生活出来るものなのか)

最原(きっと夢野さんが違和感を持ったのもこれが原因かもしれない)

最原(でも……どうしてこの二周目では天海君の才能は超高校級の冒険家なんだ?)

最原(理由は分からないけど……これを話したらあの二人も天海君をおかしく思うかもしれない……)



最原「………………あ」

415: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:08:10.49 ID:D5HJ5YuMO
最原(頭の中でバラバラに散らばっていたピース)

最原(それが今の気づきをきっかけに急速に組み上がっていく)



最原(現在抱えている問題を全て解決する計画が)



最原(そう、全てだ)

最原(赤松さんの暴走を防ぎ、タイムリミットも解決する)

最原(第一の事件を乗り越えられる)

最原(いや、それどころか――これならコロシアイを終わらせることも出来るだろう)



最原「…………」

最原(と、いっても全部が全部都合がいいわけではない)

最原(この計画の核……コロシアイを終わらせる方法については前から思い付いていた)

最原(なのに春川さんと夢野さんには話していない)

最原(というのもこの計画には致命的な欠陥が存在するのだ)



最原(実行者の死は避けられないという欠陥が)

416: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:08:46.93 ID:D5HJ5YuMO
最原(だから二人には反対されると思い、話すことが出来なかった)

最原「………………」

最原(でも……この二周目、ここまで追いつめられているのは僕の失敗のせいだ)

最原(どんどん悪い方向に向かっている。このままではタイムリミットで全滅すら有り得る)

最原(それを避けるためなら……今までの失敗を挽回するチャンスとなれば――)



最原「賭けてみる価値はあるかな?」



最原(このまま赤松さんを失うのをまた見届けるなんて耐えられない)

最原(そうだ僕の命を使って……このコロシアイを終わらせるんだ!!)

417: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:09:17.70 ID:D5HJ5YuMO
最原(最初の仕込みはその後、すぐに行った)

最原(モノクマを呼び出しての交渉)

最原(しかし……今から求めるのはタイムリミットの撤回ではない)



モノクマ「どうしたの、最原クン? また呼び出しちゃって」

モノクマ「言っとくけど、何と言われてもボクはタイムリミットを撤回しないからね」

モノクマ「学園長の威厳に関わる問題だからさ」

最原「……それは分かってるよ」

最原「だから今日は別の交渉だ」

最原「明日の日中、僕たち生徒の前に姿を表さないでくれないかな?」

最原「あ、モノクマーズたちも含めてね」

モノクマ「……ふーん、それはまた今までと違った交渉だけど、それでボクは何を得するんだい?」

最原「協力してくれれば……面白いものを見せてあげるよ」

モノクマ「面白い……って、どんなもの?」

最原「それを先に行ったら興冷めでしょ?」

モノクマ「……それもそっか」

418: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:09:53.52 ID:D5HJ5YuMO
最原「で、どうかな受けてくれる?」

モノクマ「うーん……ボクのプリチーなフェイスをみんなが見られないことで不安に思うかもしれないしなぁ……」

モノクマ「でも……面白いことか……」

モノクマ「…………」

最原「…………」

モノクマ「うん、いいよ! 受けようじゃないか!!」

最原「……ありがとう」



最原(受けるとは思った)

最原(一周目でも王馬君の提案、思い出しライトをゲーム世界に隠すことも受けたモノクマだ)

最原(コロシアイに積極的な生徒の企みには、協力的なところをみせる)

419: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:10:33.28 ID:D5HJ5YuMO
最原(次の仕込みはRとしての手紙だ)

最原(これはその日の夜時間前、東条さんが出て行って無人になった食堂に置きに行った)



最原(この手紙の狙いは王馬君が言ってた通り、みんなの雰囲気を弛緩させるためだ)

最原(でも、その目的は殺人を成功させやすくするため……ではない)

最原(赤松さんが企んでいる計画を諦めさせるためだった)

最原(赤松さんはタイムリミットが撤回されないから、どんな手段を取ってでもどうにかしようとしている)

最原(だから嘘でもいいから、タイムリミットが撤回されたことにして、赤松さんを安心させた)

最原(実際今日はずっとピアノを弾いていたみたいだし、それは成功したと見ていいだろう)



最原(Rを名乗ったのも、モノクマに日中出てこないように言ったのも、その嘘を信じさせるため)

最原(謎の人物Rがやったことにして、僕が本物だと判断する)

最原(モノクマが出て来ないことも合わせてそれはみんなに受け入れられた)



最原(王馬君と、春川さん、夢野さんの三人を除いて)

420: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:11:13.44 ID:D5HJ5YuMO
最原(まず一人目、王馬君)

最原(彼は嘘を見抜くのが異様に上手い)

最原(正直彼の目を誤魔化すのは不可能だと最初から分かっていた)

最原(実際手紙の時点で、僕が今回の事件のクロだろうとバレていたみたいだし)

最原(でも……王馬君の性格からして、みんなには言わないだろうと予想した)

最原(それはどうやら読み通りだったようだ)

421: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:12:00.26 ID:D5HJ5YuMO
最原(残りは二人。春川さんと夢野さん)

最原(彼女たちは一周目の記憶から手紙を怪しく思うだろう)

最原(放置すれば、手紙の差出人は記憶を持って一周目と違う行動が出来る僕である……という結論に至るかもしれなかった)

最原(だから、そこで天海君の出番だった)

最原(彼が超高校級の冒険家であることを明かし、彼なら一周目と違う行動が出来るかもしれないと疑いの矛先を向けさせる)

最原(Rを名乗ったのも、同じイニシャルという安直なつながりを意識させるためでしかない)



最原(僕はその際もう一つ嘘を付いている)

最原(タイムリミットが嘘なのは、僕たちがオーディションで参加を希望したからだ、という話だ)

最原(嘘……そうだ、嘘だ。本当はタイムリミットがどうだったのかなんて、僕に分かりっこないのだから)

最原(この嘘は二人に信じられないだろうとは思っていた)

最原(他でもない、オーディションが嘘だという説を唱えたのは僕なのだから)

最原(それでもとにかく屁理屈を並べることで一応は納得させ、それで天海君を調べにいくように仕向けることが出来た)



最原(何故これらのことをしたのか。その目的は二人に計画の邪魔をさせないため)

最原(タイムリミットが無くなり余裕が出来た二人は、目下の謎、R探しに注意が向く)

最原(今日一日、二人が他のことに気が回らないように出来さえすればいい)

最原(明日になって冷静になられたら、嘘がバレて僕が疑われることがあったかもしれないが……その明日が訪れないことを僕は知っていた)

422: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:12:51.60 ID:D5HJ5YuMO
最原(後はもう事件の実行だ)

最原(白銀さんを二階教室に呼び出す)

最原(何故、白銀さんを狙ったのか。それは彼女が首謀者だからだ)

最原(僕らをあんなに苦しめた首謀者だからという恨みがないといえば嘘になるが……)

最原(計画の実行のために、コロシアイを終わらせるためには彼女に死んでもらわないといけなかった)



白銀「あれ、最原君? こんなところでどうしたの?」



最原(一昨日には首謀者だって詰め寄ったのも気にしていないかのように、のうてんきな彼女)

最原(かなりの精神力を必要とした)

最原(でも、ここで殺さなければ……タイムリミットで全員が死ぬ。僕のついた嘘のせいで、今夜殺人を企んでいるのは僕だけだろうから)

最原(その使命感を糧にどうにか体を動かした)



グサッ!!

手元に伝わる肉を貫く感触。

白銀「…………え? ナイフ……? どう、して最原くん?」

最原「………………」

白銀「熱い……痛い痛い痛い……あれ? 血、が…………あっ、駄目……駄目、もう…………」

遅れて状況を理解して、死の恐怖にゆがむ白銀の顔。その顔のまま、彼女は死んだ。



最原「………………」

最原(コロシアイ学園生活を一周して、人の死に慣れた僕でも辛かった)

最原(だって僕は殺しには慣れていないのだから)

最原(相手が首謀者というのも、僕の罪悪感を薄める何の助けにもならなかった)

423: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:13:30.40 ID:D5HJ5YuMO
鳴り止むBGMと聞こえ始めるピアノの音。

しばし放心していた最原はその音で、やるべきことを思い出す。

最原「……今さら、退けないんだ」

最原(賽は投げられた)

最原(もうやりきるしかない)



外から聞こえてきたピアノの音がマズいことを最原はすぐに理解した。

この音に誘われて、この二階教室の近くまで生徒が来るのは想像に難くない。

それでも別にいいのではないか? 一回目の事件は初回特典で裁判無しで卒業できるのだから。

普通に考えればそうだ。

しかし、最原の計画では駄目だった。

424: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:14:18.31 ID:D5HJ5YuMO
最原「自明なクロは避けないといけない……裁判を開かせるためにも」

最原(一応この事態も想定の範囲内だ。そのためにポケットにはRからの呼び出しの手紙を用意している)

最原(後は外部犯の可能性を広げるために……)

最原は急いで鋼線カッターで有棘鉄線を切る。

最原「あとは……気絶したフリで誤魔化すか」

最原(少々雑な謎になるけど……それでいい)

最原(裁判を開かせる必要はあるけど――僕は卒業するつもりは無い)

最原(その結果のシロの全滅など望んでいないのだから)



少々矛盾している最原の行動理念。

しかし、これはきちんと計画に沿ったもの。



最原(初回特典を捨てて、自分がクロでないことを主張してまで裁判を開かせて、なのに卒業を狙わない)


最原(その行動の理由は――――――)











425: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:14:58.85 ID:D5HJ5YuMO
<夢野サイド>

モノクマ「あーあ、最原君もしゃべらないし……じゃあもうおしおきタイムに移っちゃおうか!」

夢野(モノクマによって、クロに待つおしおきが告げられる)

百田「おしおきって……処刑か!?」

モノクマ「そうだよ、最原君は人を殺したんだよ。これくらいの報いは当然だよ」



茶柱「そんなことさせません!!」

夢野「転子……」

茶柱「最原さんは男死ですけど……仲間が殺されるのを見過ごすわけには行きません!!」

茶柱「白銀さんを殺したのには……何か理由があるんです!!」

百田「そうだぞ、最原は……いや、終一は殺させねえっ!!」

ゴン太「ゴン太も守るよ!!」

キーボ「ボクも微力ながら、助太刀します!!」

夢野「みんな……」

夢野(最原がどういう思いで事件を起こしたのか分かっていないのに……)

夢野(それでも最原を信じて仲間たちが庇う)

夢野(……そうじゃ、何を呆け取るんじゃ、ウチも……!!)

426: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:15:39.30 ID:D5HJ5YuMO
夢野「最原は殺させん!!」

春川「最原には触れさせないよ」

赤松「私も……最原君を守るよ!!」

夢野(春川も赤松も立ち上がる)

夢野(じゃがそんなウチらを嘲笑うように――)



モノスケ「無駄な抵抗やな、ワイらに何があるのか忘れたんか?」

モノキッド「そうだぜぇっ!!」

モノファニー「ううっ……残酷だけど、呼ぶしかないみたいね」

モノダム「ソウダネ……」

モノタロウ「よしっ、呼ぶよー。エグイサ――――」

427: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:16:26.87 ID:D5HJ5YuMO






最原「みんな……もう止めてよっ!!」






428: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:17:06.84 ID:D5HJ5YuMO
夢野「最原……っ!?」

夢野(裁判が終わってからずっと黙っておった最原が、ようやく口を開いた)



最原「駄目……だよ」

最原「エグイサルを呼ばれちゃ駄目だよ」

最原「僕なんかのために……みんなが死ぬなんて、それこそ耐えられない」

星「……だが、本当にいいのか?」

最原「いいんだ……僕が白銀さんを殺したのは事実だからね」

星「そうか……なら、俺から言うことはねえな」

天海「俺も何も言えないっす」

真宮寺「僕も君の覚悟を尊重するヨ」



最原「……ごめんね」

最原「それと勝手なお願いだけどさ……」

最原「僕はもう死ぬけど……みんなはこの学園の外に出たら、みんなで友達になって欲しいんだ」

最原「もしそうなったら……僕が命を使った意味もあるからさ」

429: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:17:43.12 ID:D5HJ5YuMO
茶柱「……分かりました!」

東条「その言葉、依頼として受け取るわ」

ゴン太「うん……ゴン太、分かったよ!」

百田「ああ、男と男の約束だ!!」

アンジー「にゃははー、分かったよー!」

入間「……しょうがねえな」

キーボ「ボクはロボですけど……最原君の意志を受け取りました」

夢野(みんながうなずく中)



王馬「何だかなぁ……」

最原「王馬君はありがとね、手紙の意図に気づきながら黙っててくれたこと感謝するよ」

王馬「まあ、それくらいはね。何を企んでいるのか見てみたかったし」

王馬「でも結局何をしたかったのかよく分からないし……ただの自己犠牲?」

王馬「正直ちょっと詰まらないよ?」

最原「そうか…………ふふっ」

王馬「?」

最原「なら、良かったよ」

430: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:18:31.20 ID:D5HJ5YuMO
最原「夢野さん、春川さん」

夢野「何じゃ……全く勝手なことばっかりしおって」

春川「本当だって……それは私の役目だったはずなのに」



夢野(この一回目の事件は最原に振り回されっぱなしじゃった)

夢野(全部は……赤松への思い故のはず)

夢野(赤松に首謀者のことを教えなかったのも、白銀を殺すことに反対しておったことも……そして、おそらくこの事件を起こしたのも赤松の為じゃろう)



最原「あはは、手厳しいな……」

最原「本当勝手だけど……後のことは頼んだよ」

夢野「……分かった」

春川「任せて」

431: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:19:21.19 ID:D5HJ5YuMO
最原「後は……」

夢野(最原が最後に向いたのは……)



赤松「嘘つき」

最原「……赤松さん」

赤松「私が言うみんなには、最原君だって入ってたんだよ」

赤松「なのに……どうして?」

最原「仕方なかったんだ……僕にはこれしか方法が思いつかなかったからね」



赤松「嫌だよ……どうして最原君が死なないといけないの!?」

赤松「私の家に来て欲しかったのに!」

赤松「まだまだピアノを聞いて欲しいのに!!」

赤松「二人で連弾を上手くなりたかったのに!!」

赤松「どうしてなのっ!!?」

432: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:20:17.60 ID:D5HJ5YuMO
最原「……本当どうしてなんだろうね」

最原「せっかくまた会えたのに……それを捨てるようなことをしてるんだろうね?」

赤松「……ううっ…………ぐすっ……」

最原「でも、これで何となく気持ちが分かったかな」

最原「きっと赤松さんも……こんな気持ちだったのかな……?」

赤松「えぐっ、ぐすっ……何のこと……?」

最原「ごめん、こっちの話」



モノクマ「うぷぷっ、そろそろいいかな?」

433: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:23:39.44 ID:D5HJ5YuMO
春川「モノクマ……っ!」

モノクマ「そんな睨んでも現実は変わらないよ」

夢野「くっ……」

夢野(モノクマの言う通り……ウチらにここから出来ることは何もない)

夢野(おしおきを悲壮な表情で見守る生徒たち)



モノクマ「さて、それでは超高校級の探偵、最原終一クンのためにスペシャルなおしおきを用意しました!!」

モノタロウ「おお、やっとだね!」

モノスケ「楽しみやで!!」

モノキッド「ようやく来たぜぇっ!!」

モノファニー「ううっ……想像しただけで……」

モノダム「大丈夫……?」

夢野(歓喜の瞬間を待ち望んで見守るモノクマたち)



赤松「私……最原君がいないと駄目だよ!! このコロシアイ学園生活を生きていくなんて無理だよ!!」

最原「……赤松さん。君は、君が思っているより強いよ」

最原「僕は信じているから……赤松さんも自分を信じてね」

赤松「ううっ……ぐすっ…………で、でも……」

最原「それに大丈夫だから、赤松さん」

赤松「な、何が……?」

夢野(思いを伝えあう二人)




夢野(誰も、何も出来ないままその瞬間を見守る)

夢野(いや、見守るしかできない)





モノクマ「それでは行きましょう、おしおきターイム!!!」

434: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:25:00.19 ID:D5HJ5YuMO

































だが、その瞬間をずっとずっと前から――それこそ裁判が始まる前から待っていた者がいて。



彼はその瞬間に動き出した。
























435: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:25:50.66 ID:D5HJ5YuMO
<最原サイド>



最原(初回特典を捨てて、自分がクロでないことを主張してまで裁判を開かせて、なのに卒業を狙わない)





最原(その行動の理由は――――――全てこのときのため)





最原(大丈夫だよ、赤松さん。だって――コロシアイはここで終わるから)





最原「さあ一緒に来てもらうよ――モノクマ!!」





モノクマ「……!? あれっ!? 引っ張られるっ!!」






436: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:26:37.33 ID:D5HJ5YuMO





最原終一クンがクロに決まりました。おしおきを始めます。





437: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:27:33.12 ID:D5HJ5YuMO
夢野「……な、何が起きてるんじゃ?」

春川「……え?」



<おしおき装置への通路>

最原(もう裁判場も見えなくなったけど、おそらくおしおきを見慣れた二人も呆気に取られているだろう)

最原(それもそのはずだ)

最原(だって今回のおしおきはあべこべ……)

最原(モノクマが生徒をおしおき装置に引っ張っていくところを)

最原(逆に生徒が隙を突いて、モノクマをおしおき装置に引っ張っていくのだから)



モノクマ「どういうつもり、最原クン!?」

最原(おしおき装置への道中、引っ張られているモノクマが文句を言う)

最原「どういうつもりも……分かんないかな?」





最原「君を破壊するんだよ」

438: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:28:28.29 ID:D5HJ5YuMO
最原(ずっとコロシアイの終わらせ方を考えていた)

最原(首謀者を殺しただけじゃ、モノクマ一人だけでコロシアイを続けると思っていた)

最原(実際白銀さんを殺したのに、コロシアイが続いているということはそういうことなのだろう)

最原(やっぱりコロシアイを運営するために必要な役割はモノクマの比重が重いのだ)

最原(でも首謀者が死んだことによって出来なくなった重要なことがある)



最原(それは……マザーモノクマから、新たなモノクマを生み出すこと)



最原(つまり首謀者が死んだ今、モノクマを壊せば、新しいモノクマは現れず、コロシアイ学園生活は……終わりを迎える)

最原(モノクマーズは残っているけど……彼らはマスコット。コロシアイを運営する力は無いはずだ)

439: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:29:08.75 ID:D5HJ5YuMO
最原(問題はそのモノクマを壊す方法だった)

最原(キーボ君の改造ユニットはまだ無い)

最原(エグイサル格納庫も開放されてない今じゃ入間さんのリモコンを使っても奪えない)

最原(エグイサルによる誤爆も狙って起こせるものじゃない)

最原(モノクマを壊すだけの火力が一回目の裁判前の状態では生徒側に無いのだ)

最原(だったら――モノクマに用意してもらえばいい)



最原「卒業せずに、裁判を開かせたのは全部このときのためだよ」

最原「おしおき装置によって……君を破壊する!!」



モノクマ「っ……そんなこと!」

最原「出来ないとは言わせないよ」

最原(そうだ、僕は見てきているのだから)

最原(一周目の世界でおしおきに巻き込まれて、壊されるモノクマーズの姿を)

440: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:30:09.48 ID:D5HJ5YuMO
最原「そう、全てはおしおきをされるためだった」

最原「初回特典を捨てたのも」

最原「クロでないことを主張して、裁判を開かせたのも」

最原「卒業によるシロ全滅を狙ったんじゃなくて――クロとして指摘されておしおきされることが狙いだったんだ」

最原「夢野さんにはその役割を全うしてもらって、助かったな」



モノクマ「……うぷぷっ、なるほどね!」

モノクマ「我が子たちにエグイサルを呼び出させなかったのも、この咄嗟の事態に対応させないためかな?」

最原「よく分かってるね」

最原「その通りだよ、今頃テンパってるんじゃない?」



モノキッド「おいおい、助けねえと!!」

モノファニー「その通りよー、お父ちゃんを助けないと!!」

モノダム「デモ……エ、エット……?」

モノタロウ「は、早く呼ばないと……き、来て! エグザイル!!」

モノスケ「アホか!! それは違うやろ!!」

441: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:30:50.43 ID:D5HJ5YuMO
モノクマ「なるほど……でも、残念だったね最原クン」

モノクマ「君の考えていることは不可能だよ?」

最原「……何がかい?」

モノクマ「このおしおき装置には対象を感知するセンサーが付いているんだよ」

最原「センサー……?」





モノクマ「そう。おしおき対象の生き死に、その他諸々を感知するセンサーがね!」

モノクマ「それによっておしおき装置は対象が存在しないと作動しないセーフティが設定されているんだよ!」

モノクマ「つまりおしおきの対象でないボクを、装置にかけるのは不可能ってこと」

モノクマ「『君にボクだけを壊すことは不可能』なんだよ!!」

442: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:31:24.47 ID:D5HJ5YuMO
最原「それは――――」




『命を使う』





最原「――――違うよ!!」

443: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:32:05.48 ID:D5HJ5YuMO
最原「僕がいつ、君だけを壊すって言ったかい?」

モノクマ「……っ、まさか!?」



最原(おしおき装置のセンサー……それは想定済みだ)

最原(百田君のおしおきの途中で、彼が死んだことを感知していたから)

最原(だから――)

最原「もちろん僕もおしおきをされるよ――そして、その執行に君を巻き込む」

最原「対象のおしおきに、巻き込まれる物があることは問題ない……そのはずだよね?」

最原(そうだ、一周目のモノクマーズはおしおきに巻き込まれて壊されている)

最原(それと同じことをすればいいだけ)



モノクマ「……っ!」

最原「……さあ、ようやくおしおき装置だ。後少し付き合ってもらうよ!!」

モノクマ「……い、嫌だっ!!!」

最原(今さら、暴れ出すモノクマ。だが……全てはもう遅い)

444: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:32:51.75 ID:D5HJ5YuMO
<超高校級の探偵のおしおき>

前方に見えてきたのは○と×のパネル。

往年のクイズ番組を思わせる装置だが――そのどちらかの先に、奈落の穴、底には針の山が待ちかまえていることを知ればそんな呑気なことは言えないだろう。

最原「なるほど……二択の内、どちらかを推理する……」

最原「探偵らしいおしおきだね」

問題がパネルの上にかかれているのだが、最原はそれを読むことなくモノクマを抱えたまま○へ飛び込んだ。

最原「……外れか」

最原は普通のマットに着地する。

最原「じゃあ次だね」

延々と続く○と×のパネル。

どんどん飛び込んでいく最原だが、その全てを外し、生きてしまっていた。

445: ◆YySYGxxFkU 2017/04/21(金) 00:33:44.41 ID:D5HJ5YuMO
最原「これが……最後」

そしてたどり着く最後の○×パネル。

最原「おしおきの趣向からして、最後はどちらも当たりだと思うけど、どうかな?」

モノクマ「っ……それは!」

最原の言うとおり、最後のパネルには○と×、どちらの先にも奈落の穴が広がっている。

最原「そっか……ようやく君を壊せるよ」



最後まで走るスピードを落とさずに、モノクマを抱えたまま○のパネルに飛び込む。

最原の予想通りそこは奈落の穴。

その永遠にも思える落下の最中。



最原「………………」

最原(後悔が無いとすれば嘘になる)

最原(もっとみんなと……赤松さんと生きたかった)

最原(でも……今は達成感すら感じているんだ)

最原(この二周目のコロシアイを最小の犠牲者数で終わらせることが出来るのだから)


最原(思いはもうみんなに託した)

最原(最後に一つだけ、願うとしたら)




最原「みんなに――希望ある未来がありますように」






















グサッ!

529: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:10:56.65 ID:xxfp5K5z0
夢野(最原がモノクマを抱えたまま、穴を落ちていく)

夢野(ウチは結局何も出来ないまま、最原とモノクマの最期を見届けた)



モノタロウ「お、お父ちゃんが死んじゃったっ!?」

モノファニー「ど、どうすればいいのっ!?」

モノダム「ミ、ミンナ、落チ着イテ……」

モノスケ「落ち着けるわけないやろ!! こんなの、今後どうすればいいんや!?」

モノキッド「こ、こういうときは慌てず騒がず……とりあえず撤退だぜ!!」

モノクマーズはその姿を消す。

530: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:11:56.48 ID:xxfp5K5z0
動揺を隠せないのは生徒たちも一緒だった。

ゴン太「最原君がモノクマを抱えて落ちていって……」

星「どうしてあんなことをしたんだ?」

百田「分からんな……モノクマを壊したかったってことか?」


裁判場にいた生徒たちにはモノクマと最原のやりとりは聞こえていない。


茶柱「で、ですが、また前みたいにモノクマは復活するんじゃないですか!?」

キーボ「モノクマ発生装置なるものがある限りは意味ないですよね?」

真宮寺「そうだネ。なのにどうしてモノクマと心中することを選んだのか分からないヨ」

531: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:12:24.86 ID:xxfp5K5z0
夢野(いや、意味はある。首謀者の白銀が死んだ今、モノクマを破壊するという行為は大きな意味を持つ)

夢野(最原は……最初からこれを狙っておったのか?)

夢野「………………」

夢野(しかしウチがそれに気づけるのも、一周目の記憶を持つからこそじゃ)

夢野(そもそもこの二周目のみんなは首謀者の存在すら知らん)

夢野(それでも……明日になっても、明後日になっても……この先ずっとモノクマが復活しないことを見ればみんなも気付くじゃろう)

夢野(コロシアイが終わったことに)

夢野(説明は……そのときでもいいか)





夜も遅いということで、その後すぐ裁判場を出て宿舎に戻る生徒たち。

夢野も疲労が大きかったのか、ベッドに入ってすぐに寝息が聞こえ始めた。

532: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:12:51.11 ID:xxfp5K5z0
<翌朝・図書室>

夢野(いつもと変わりない朝食会を……)

夢野(いや、いなくなった者を考えないように努めて変わりがないように振る舞いながらの朝食会を終わらせて)

夢野(ウチはいつもの場所に向かった)



夢野「おう、ハルマキ。おはようじゃな」

春川「おはよう」

夢野「………………」

春川「………………」

夢野(二周目に来てからの習慣。朝食会後の話し合い)

夢野(それも二人に減ってしまった)

夢野(必然と思い出されるのは……一周目を共に戦った残りの一人)

533: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:13:31.24 ID:xxfp5K5z0
春川「絶対にあいつの願いを叶えないとね」

夢野「じゃな」

夢野(残された者に出来るのは、その思いを引き継ぐことだけじゃ)



春川「最原のおかげで……コロシアイが終わった」

夢野「……じゃな」

春川「でも、これからどうすればいいのか……コロシアイは終わったけど、学園の脱出方法とか分からないし……」

春川「またキーボに武装してもらって破壊してもらえばいいのかな?」

夢野「じゃが、そもそも学園を出たらまたループするんじゃないのか?」

夢野(ループしたタイミングからして考えられる可能性。そうだとしたら、ウチらはこの学園から絶対に出られないということに……)

春川「どうなんだろう? まずその仕組みというか、最初に戻された原因も分からないし」

春川「それに白銀が言ってたことからすると、私たちが外の世界でも生きていけるか分からないし……」

夢野「うーむ……」

夢野(コロシアイを防ぐことだけを考えて、ここまで突っ走ってきたが……こうやってコロシアイが終わってみるとどうすればいいのか分からなくなるな)

534: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:13:59.62 ID:xxfp5K5z0
入間「お、どうしたんだこんなところで?」

夢野(そのとき、入間が図書室に入ってきた)

春川「あ、入間」

夢野「そっちこそどうしたんじゃ?」

入間「ちょっとパーツカタログを見たくてな……図書室にあったはずっと」

夢野(言いながら、本を探す入間)

入間「お、これだ。じゃあな」

春川「……ちょっと待って」

夢野(目的の物を見つけたのか去ろうとする入間に、ハルマキが声をかけた)

535: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:14:32.12 ID:xxfp5K5z0
入間「……ん、どうしたんだ?」

春川「いや……これのお礼を言っておこうと思って」

春川「この装置のおかげで助かったからさ」

夢野(春川は最原から預かったままだったエレクトフィールドを入間に見せる)

夢野「そうじゃな、助かったぞ」

夢野(実際この装置は役に立った)

夢野(モノクマにこちらが二周目であることを悟られなかったからこそ最原の作戦は上手く行ったのだから)

夢野(知られていれば警戒されていたかもしれん)

夢野(だから礼を言ったのじゃが……それに対して入間は――)

536: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:14:59.06 ID:xxfp5K5z0





入間「……何だそれ?」





夢野「え?」






537: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:15:27.93 ID:xxfp5K5z0
春川「何って……入間が作ったんじゃないの?」

入間「オレ様はそんなの作ってねえって。ていうか何だそれ?」

夢野「エレクトフィールドじゃ! スイッチを入れるだけで、周囲の電子機器を無効化するフィールドを形成するんじゃろ!?」

入間「……ああ、そういや最原がそんなのを作ってくれって言ってたな」

春川「そうだよ、それを最原から譲り受けんだよ!」

入間「……? いや、それはおかしいぞ」

夢野「な、何がじゃ……?」



入間「だから言っただろ? オレ様はそんなの作ってねえって」

538: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:16:10.14 ID:xxfp5K5z0
入間「大体、電子機器を無効にする電子機器ってのがおかしいじゃねえか」

入間「そのフィールドに機械自体が干渉して無効化されるだろ?」

入間「最原に熱心に頼まれたけど、無理な物は無理って突っ返したぞ」

入間「やるとしたならチャフをばらまくボム型か……そうだな、叩けば電子機器を止めるハンマーとかなら出来るか?」

入間「でもそう数は作れねえし利便性は落ちるだろうな」

夢野・春川「「………………」」

入間「話は終わったか、オレ様は帰るからな」

夢野(入間が図書室を出ていく。その間ウチらは何も出来ずに見送るしかなかった)

539: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:16:48.87 ID:xxfp5K5z0
夢野「………………」

夢野(エレクトフィールドを……作っていない?)

夢野(だったらこの機械は……何なんじゃ?)



春川「まさか…………いや、そんなこと…………」

夢野(春川が愕然としておる)

夢野「何か気づいたのか? 教えてくれんか?」

春川「………………うん」

春川「ちょっと私も整理したいし…………そうだよ、まだ勘違いの可能性が………………」

夢野(顔面が蒼白じゃな、何に気づいたのか)

540: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:17:31.61 ID:xxfp5K5z0
春川「まずはそのエレクトフィールドだけど……最原はそれが部屋の前に置かれていたって言ってたでしょ?」

春川「入間に感謝を伝えても、知らないフリをされたって」

夢野「そういえばそんなことを言ってたな……」





最原『作ってもらう前は出来るわけ無えだろって、突っ返されたけど……今朝起きてみたら使い方と一緒に部屋の前に置かれていたんだ』

最原『今朝お礼を言ったら『はあ? 何の話だよ』って、照れたのか知らないフリをされたし』





春川「最原は入間から直接手渡されたわけではない。だから……違う人がエレクトフィールドを置いたのだとしても気づけない」

夢野「つまり……入間はフリではなく、本当に知らなかったということか?」

春川「あの反応はそういうことでしょ」

夢野「じゃが……誰がそんなことを……?」

春川「………………」

夢野(春川は何に気づいたんじゃ……?)

541: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:18:50.60 ID:xxfp5K5z0
春川「そして今の入間の話の通りエレクトフィールドが作れない物なんだとしたら……その効果は嘘なんだと思う」

夢野「嘘とは……電子機器を無効にすることは出来ないということか?」

春川「うん。今さら気づいたんだけど、Rが誰かを探るために、エレクトフィールドを付けてみんなに聞き回っていたときのことで――」




入間『オレ様が手紙なんてメンドくせーことするわけねーだろ! ……よし、飛んだ! あともう少しいじればドモーンの完成だな!』




春川「入間はどうして近くにエレクトフィールドを付けている私たちがいたのに、ラジコンを飛ばすことが出来たの?」

夢野「……言われてみれば、その通りじゃな」

542: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:20:41.33 ID:xxfp5K5z0
夢野「それでこれは結局どういう事態なんじゃ?」

夢野「誰が何を目的にそのような嘘を付いて……?」




春川「……そんなの決まっている、モノクマだよ」





夢野「え?」

春川「エレクトフィールドが嘘だったってことは、モノチッチの無効化に失敗してたってこと」

春川「モノクマは……私たちの話し合いを全部聞いてたんだよ」

夢野「ウチらの……!?」

夢野(つまりウチらが二周目であることがバレて………………いや)

夢野「それはおかしいぞ! ならどうしてモノクマはウチらに対して何もしてこなかったんじゃ!?」

夢野「二周目の記憶を持っているウチらをどうして排除してこなかったんじゃ!?」

夢野(そうじゃコロシアイを運営するに当たって、記憶持ちのウチらは厄介な存在じゃ。先読みして対処されるのを恐れていないというのか……?)





春川「そう、それなのに私たちに干渉してこなかったのが、この事態がモノクマの仕業って裏付けになっている」

夢野「それは………………」










春川「つまり私たちが二周目であることを、モノクマは最初から承知済みだったんだ」

543: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:21:08.13 ID:xxfp5K5z0











モノクマ「うぷぷっ、その通りだよ!!」










544: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:22:02.84 ID:xxfp5K5z0
二人の前に現れるモノクマ。



夢野「……っ、モノクマどういうことじゃ……!?」

夢野はタイミング良く現れたモノクマに詰め寄ろうとして、さらに重大なことに気づいた。

夢野「待て……どうしてお主が生きておる!?」

夢野「首謀者の白銀が死んで…………最原と心中した結果、もうお主が現れることは無いはずじゃろう!!?」

モノクマ「そんな分かり切ったことを聞いてどうするの?」

夢野「な……」

モノクマ「ほら、春川さんは気づいているんじゃない?」



春川「そう……だね」

春川「本当に………………今さらだったよ」

春川「あいつが……天海が生存者じゃない時点で気づくんだった」

545: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:22:56.86 ID:xxfp5K5z0
夢野「どういうことじゃ……天海に何の関わりがあるんじゃ!?」

春川「天海が生存者じゃないってことは、記憶を持った私たちが関わっていないのに、一周目と明確に異なっている点でしょ」

春川「R騒動のせいで考えが回ってなかったけど……その時点でこの二周目がただ時を巻き戻したんじゃないってことに気づくべきだった」

夢野「時を巻き戻した……訳じゃない?」

夢野「どういうことじゃ……こうやってコロシアイ生活の最初に戻っておるのは、時を遡った以外にありえんはずじゃ!?」

夢野(それでもおかしな事態じゃが……まさかそれ以上だというのか!?)



モノクマ「うぷぷ、この世界が何なのかは自分で探ってね。校則に記しているように、この才囚学園を調べることに制限はかけてないからさ」

546: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:23:23.39 ID:xxfp5K5z0
夢野「……じゃが、それとこれとは話が別じゃ!? 首謀者の白銀が死んだのに、モノクマがまた復活している理由にはならん!!」

春川「だから……それが間違っているんだって」

夢野「間違い……?」

モノクマ「何が間違いか……春川さんには分かるかな?」





春川「分かるよ。つまりこの二周目は――――白銀が首謀者じゃないってことなんでしょ?」





夢野「……なっ!?」

547: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:23:50.55 ID:xxfp5K5z0
春川「天海が生存者から冒険家に変えられているように」

春川「白銀もこの二周目では、首謀者からただの生徒に変えられた」

モノクマ「その通りだよ。いやぁもうちょっと早く気づくべきだったね」

夢野「何を言っておる……白銀はチームダンガンロンパの社員で」

夢野「命をかけてコロシアイを作っている『人間』で……」

春川「それが嘘だったってこと」

夢野「それは……つまり……」



夢野「一周目の白銀もまた首謀者という『キャラクター』を押しつけられたに過ぎんということか!?」



春川「…………考えたくもないけどね」

548: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:24:41.48 ID:xxfp5K5z0
夢野(コロシアイの最初に戻って、みんなが記憶の通りに行動して)

夢野(それなら何もかも一緒だと……首謀者だって同じじゃと)

夢野(信じて疑わなかった……いや、疑うという思考すら浮かばなかったのに)

夢野(今、その全てがひっくり返される)






春川「白銀が思い出しライトで記憶を植え付けられた即席首謀者であるなら」

春川「この二周目では、そのライトを違う誰かに浴びせるだけで首謀者を変更できる」

春川「その新しい首謀者が、昨日の裁判の後、そこの隠し部屋に入って、新しいモノクマを産ませた」

夢野「つまり……最原の覚悟は……最原の死は……」





モノクマ「ぜーーんぶ、無駄だったってこと!」

モノクマ「ぶひゃっひゃっ、これ以上絶望的なことはないよね?」

モノクマ「最原君には本当面白い物を見せてもらったなあ!」

549: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:25:28.41 ID:xxfp5K5z0
春川「それで……何?」

春川「あんたはそれを言うためだけに出てきたの?」

春川「なら、早く消えて……あんたもこんなところでコロシアイのメンバーが減るのは望んでないでしょ」

夢野(春川の殺気がモノクマに向けられておる。メンバーが減るとは……モノクマに暴力禁止の校則違反を犯しそうということか)

夢野(冷静に見えて……春川も激昂しておるのか)



モノクマ「やだなあ、ボクもそんな暇じゃないんだよ」

モノクマ「今回来たのは別の件で……ほら、受け取って」



夢野(モノクマが差し出した物を受け取るウチと春川)

夢野(それは電子生徒手帳用のタブレット端末で…………)

夢野「………………?」

夢野「これならもう貰っとるぞ?」

春川「……どういうこと?」

モノクマ「あ、生徒手帳とは別だよ。起動してみれば分かるからさ」

夢野「どういうことじゃ……?」

夢野(ウチらは疑問に思いながらも、その端末を起動した)

550: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:25:55.74 ID:xxfp5K5z0










そして表示されたのは――――『生存者特典』の文字。










551: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:26:30.74 ID:xxfp5K5z0
夢野「……な!?」

春川「…………え?」

夢野(隣で同じ物を見た春川も驚きの声を上げる)



モノクマ「ちょっと渡すのが遅れてごめんね」

モノクマ「まあそういうことだから頑張ってよ」

モノクマ「一度コロシアイを生き残った……生存者の三人には期待しているからさ」

モノクマ「って、あ、もう一人減っちゃってたね。ごめんごめん」



夢野「ウチらが……生存者?」

夢野(その事実に驚くウチとは違って、春川は違う点に気づいていた)

春川「……これを渡すのが遅れた?」

春川「嘘だよね、それ。わざと遅らせたんだ」

552: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:27:06.71 ID:xxfp5K5z0
夢野「ど、どういうことじゃ……?」」

春川「監視の目が気になる最原に嘘のエレクトフィールドを渡したのもそう」

春川「この生存者特典だって最初に渡せば良かったのに……そうすれば私たちだってモノクマに二周目であることを気づかれていることに気づけたのに」

春川「私たちを泳がせて……行動するのを待っていたんだ」



モノクマ「で、その目論見通りに最原君が動いてくれたってわけ。いやぁ助かったなぁ」



夢野「全部モノクマの手のひらの上だった……ということか……!?」

553: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:27:36.89 ID:xxfp5K5z0
モノクマ「そういうこと」

モノクマ「あ、そういえば、最原君はやたらと記憶を持っていることがバレると警戒されるって言ってたけどさ……」

モノクマ「別にそんなことしないって」

モノクマ「だってほら、現に記憶を持っていたのにコロシアイを止めることが出来なかったでしょ?」



モノクマ「だから今後、二人も自由に動いていいよ」

モノクマ「ボクは別に止めたり、邪魔をしたりはしないって」

モノクマ「むしろそうやって大きな希望を抱けば抱くほど――後に待つ絶望ってのも大きくなるからさ!」

554: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:28:12.50 ID:xxfp5K5z0
モノクマ「ぶひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」

夢野「…………っ」

春川「くっ……」


モノクマ「どう? あ、もう絶望しちゃったかな?」

モノクマ「それじゃ楽しくないんだけど……でもその通りかもね」

モノクマ「コロシアイは絶対に終わらないんだからさ!」



夢野「………………」

夢野(無力感に苛まれそうになる)

夢野(モノクマの言う通り、ウチらはコロシアイを止めることが出来なかった)

夢野(今後もそうなるのだとしたら……)

夢野(もう何もする意味はないのではないか)

夢野(そうじゃ……頑張っても、どうせコロシアイは続く)

夢野(なら、もうウチは何もしたくない……)

夢野(全部……面倒くさい……)

555: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:28:42.23 ID:xxfp5K5z0







夢野(――と、ここで諦めるわけにもいかんのじゃ……!)



夢野「モノクマ! ウチは絶対にこのコロシアイを止めてみせるからな!」



夢野(そうじゃ。それが……後を託した最原に報いる唯一の方法なのだから)








556: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:29:22.71 ID:xxfp5K5z0
春川「そう……だね」

春川「ここで諦めたら……最原に申し訳ない」

春川「あいつは命を使ってまで、希望を叶えようとしていたんだから……!」



モノクマ「うぷぷっ、いいねえ……いいよっ!」

モノクマ「その大きな希望が、絶望に変わるところが今から楽しみで仕方ないよ!!」

モノクマ「あーはっはっはっはっ!」



夢野(モノクマは高笑いをしたままその場から消えた)

557: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:31:03.40 ID:xxfp5K5z0
夢野「ハルマキ」

春川「……何?」

夢野「…………宣言したはいいものの、これからどうすればいいんじゃ?」

春川「考え無しに発言したのあんたは……」

夢野(ハルマキに呆れられる)



春川「まあそのおかげで私も見失わないで済んだし……」 ボソッ

夢野「……ん、何じゃ? 何か言ったか?」

春川「何でもない」





春川「それでこれからだけど、基本は同じだよ」

春川「一周目の記憶を持ってコロシアイを止める」

夢野「なるほど……」

春川「でも、それは対処療法でしかない。もっと大元を止めるにはモノクマに迫る必要がある」

春川「そのためにも、まずはこの二周目で新たに首謀者となった生徒を突き止めるべきだね」



夢野「……やはり首謀者を突き止めることは大事なのか?」

春川「うん。最原と同じ方法は取れないだろうけど」

春川「やっぱりコロシアイを止めるためには首謀者が誰かを把握することは必要だと思う」

夢野「了解じゃ」









最原の意志を胸に二人は挑む。

開幕してしまった、新たなコロシアイ生活を。

その先に希望が待つか、絶望が待つか……今はまだ誰も知らない。

558: ◆YySYGxxFkU 2017/04/22(土) 20:31:42.59 ID:xxfp5K5z0




C H A P T E R 1


Who is Ringleader?

(誰が首謀者なのか?)


E N D








生存者残り14名







To Be Continued