1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:36:51.01 ID:KjQkbm7AO


「村長、もう食べるものがないわ!」

「村長、水も無くなりそうだ……」

「村長」

「村長……」

「村長!」


「大丈夫。大丈夫よ。私が何とかするからね。……」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1493375811

引用元: 裕子・凛・早苗・美優・瑞樹「セイバーズ!」 


 

 
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:38:29.51 ID:KjQkbm7AO


 \サイキックはいらんかねー/



3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:39:00.74 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「さがしものー 屋根の修理ー 火起こしー

なんでもおまかせサイキックー」



 \いらんかねー/



4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:40:12.66 ID:KjQkbm7AO


ユッコ「はー。ひとけが無い谷だなあ。
もう3日も民家を見てない」


 \ぐううぅ~~/


ユッコ「だから3日間なにも食べてないよー!」


 \ぼかーん!/


ユッコ「あ、おなかが限界だなこれは」


 \どーん!/


ユッコ「あと5分くらいで倒れるとみた」


 \ずどーん!!/


ユッコ「よし、もうやめよう。地図を見ないで旅をするのはもうやめよう」


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:40:50.13 ID:KjQkbm7AO

ボヤ~ン


ユッコ「……はっ!?」


ユッコ「あんな所に村が!ご飯がっ!!

くっ……もう少しだけ持ってくれ、私のサイキック!」


ユッコ「うおおーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーダメだー」バターン




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:41:56.71 ID:KjQkbm7AO


村人サーニャ「村長!こっちこっち」


村長ミジュキ「サーニャ、女の子が迷いこんだの?」


サーニャ「そうなのよ」


村長「どうやって?」


サーニャ「それがよく分からないのよねえ……」


村長「普通の女の子が、結界で封じられたこの村に入れるはず無いのに……」


サーニャ「そうなのよね」


村長「もしかして、退魔士かしら……!?」


7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:42:42.91 ID:KjQkbm7AO

サーニャ「退魔士って、悪魔を払う退魔士?」


村長「都から来たなら、そうかも知れない……!」


サーニャ「とにかく行きましょう。いまミイユのところでご飯を食べてるわ」


村長「うちの村でお腹を空かすなんて、運の悪い子ねえ……」


8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:43:23.70 ID:KjQkbm7AO

コト

ユッコ「ほわあぁぁぁ……!」


村人ミイユ「あの、こんなものしかないけど……」


ユッコ「あなたのことは……
いっしょうわすれません……えいえんに」


ミイユ「い、いいえそんな……」


ユッコ「いただきまーす!!ぱくっ!!
まずーーーっ!!」


ミイユ「やっぱり……」


ユッコ「これ初めて見ます。なんて野菜ですか?」


ミイユ「雑草です」


ユッコ「雑草」


ミイユ「雑草です」


ユッコ「ごめんなさい。これ食べたらすぐ出て行きますね……」


ミイユ「ち、ちがうの。この村にはもう雑草くらいしか食べ物がなくて……」


ユッコ「はえー。みんな大食いの村なんだろうか」


ガチャ


村長「退魔士様!」

サーニャ「退魔士様!」


ユッコ「退魔士様?」


9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:44:20.95 ID:KjQkbm7AO

ミイユ「ユッコちゃん、このかたが村長です。
サーニャさんは、さっき会いましたね」


ユッコ「村長さん、いのちを助けていただきました!」


村長「いいのよ」


ユッコ「綺麗な人ばっかりだなあ……」


村長「ありがとう。ユッコちゃん?訊きたいことがあるのだけど」


ユッコ「なんでしょう?」


村長「あなた、どこから来たの?」


ユッコ「都からです!」


サーニャ「やっぱり!」


ユッコ「そ、そんなに垢抜けてますかねえ?」


村長「もうひとつ教えて。
村を囲む結界を、どうやって突破したの?」


10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:45:28.32 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「結界……?そんなのありましたっけ?」


村長「!!
あの結界を、意にも介さないなんて……」


サーニャ「村長、本物よ……!」


ユッコ「なんだなんだ??」


村長「ユッコちゃん。
あなたの力を見込んでお願いがあります」


ユッコ「お引き受けします!」


村長「うんちょっと待って、聞いて。
……この村を、お救いください」


ユッコ「わかりました!」


サーニャ「軽い」


村長「まずは、お話を聞いていただけますか?」


11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:46:03.36 ID:KjQkbm7AO

村長「この村は、雨神様の呪いを受けているんです」


ユッコ「飴神様……。飴の神様ですね?」


村長「そうです。雨神様は、雨をぜんぶ吸い込んでしまうんです」


ユッコ「飴を……」ポワンポワン


飴神様「あめくれーーっ!」ズオォ……



ユッコ「それは……不可解な神様ですね」



村長「そうです。雨がなければ、作物は育ちません」


ユッコ「やめさせる方法はないんですか?」


村長「あります。生け贄です」


ユッコ「えっ、生け贄!?」



12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:46:32.61 ID:KjQkbm7AO

村長「そう。年に1度、若い娘の肉体を捧げる。
これが雨神様を鎮める方法です」


ユッコ「飴のために生け贄を差し出すなんて!?」


村長「あなたの気持ちはわかります。
でもタダの人間である我々は、こうやって魔性の者と折り合うしかないのです……。

雨が無くなれば、村人全員が生きていけなくなります」


ユッコ「飴なんて無くても生きて行けますって!
どれだけ飴が好きなんですか!?もうみなさんが飴神ですよ!」


サーニャ「私たちが雨神、か……。
雨のために人を殺し、業を背負った私たちは雨神と同じ……

何も言い返せないわね」


ミイユ(なんだか話が噛み合ってないような……)



13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:47:19.11 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「生け贄を捧げたのに、どうしてこの村は渇れてしまったんですか?」


村長「それは……見ての通りの小さい村でしょう。
3年は耐えたんです。でも、若い娘はみんなもう……」


ユッコ「ぜ、全員!?」


村長「はい、全員……。去年はとうとう雨が一滴も降らず、食べ物が無くなりました」


ユッコ「あの、あまり飴にばかり頼ってはいけませんよ」


村長「もちろん色々試しました!井戸を掘ったり、川水を引いたり……
でもダメなんです。井戸も川もすぐに涸れてしまった」


ユッコ「飴に頼るのをやめて次は井戸を掘ったんですか……
もう発想においてけぼりですよ……」


ミイユ「あの。ユッコちゃんのイントネーションおかしくありませんか……?」


14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:48:29.37 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「なるほど、雨ですよね。分かります」まっか


村長「あなた、天然って言われません?」


ユッコ「超天然(スーパーナチュラル)って言われますね」


サーニャ「それで、どうなの退魔士様?」


村長「雨神様を、退治することはできますか……?」


ユッコ「もちろんです!」


村長「!!」


ユッコ「ご飯のお礼はさせてもらいます。
それに、困っている人を助けるのがサイキッカーのつとめ。
このユッコに任せてくださいっ!」


村長「ああ……!」


サーニャ「村長……!良かったわね……!」


15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:48:55.36 ID:KjQkbm7AO

ミイユ「あの、ところで、サイキッカー……?
というのは、何なのでしょう……?」


ユッコ「サイキッカーは、サイキックをする人ですね」


ミイユ「話が進まないですね……」


ユッコ「ふふふ。ではお見せしましょう。
あそこの花瓶を見ていてください」


ミイユ「えっ……割ったりしないでくださいね……?」


ユッコ「ムムムムーーン!」

ブワッ!


村長「!」

サーニャ「!」

ミイユ「!」


16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:49:33.57 ID:KjQkbm7AO

花瓶「……」


ユッコ「……」


村長「……」


サーニャ「……」


ミイユ「……」



ユッコ「こんな感じです」ジャーン


サーニャ「なんのヒントも出てないけど!?」



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:50:01.27 ID:KjQkbm7AO

村長「あの……退魔士様は、そのサイキックで退魔を?」


ユッコ「え?サイキックはサイキックですよ?」


村長「なにかしら。嫌な予感がしてきたわ」


サーニャ「えっと、ユッコちゃんは、退魔士、なのよね……?」


ユッコ「いえサイキッカーですね!」


サーニャ「ちょっと待って!退魔士ではないの?」


ユッコ「はい!」


サーニャ「ちょっ」


ミイユ「えっ……」


村長「……!」



18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:50:29.61 ID:KjQkbm7AO

ダン!

サーニャ「ふざけないでよ!」


ユッコ「わひゃ!?」


村長「サーニャ、やめて!」


サーニャ「あんたを怒鳴るのはお門違いかも知れないけど!
アタシたちは、アタシたちはね……!」


ユッコ「あ、あの」


サーニャ「ちょっと来て」グイ


ユッコ「あっとっとっ」


ギィ


サーニャ「見て」


19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:50:58.67 ID:KjQkbm7AO

ミイユ「サーニャさん、やめてください……!」


ユッコ「この人は……?」


サーニャ「ミイユちゃんのお父さんよ」


ミイユ「も、もう……」


サーニャ「病気なのよ。からだのあちこちから血が出て……
体力が落ちて立ち上がれないの。
何か食べられれば治るかも知れない。
でも食べ物なんてないし、水さえないの。
みんな、みんなこうなのよ」


ユッコ「あの、もしかして、さっき私が食べたのは……」


サーニャ「大事なお客さまへのおもてなしでしょ!」


ミイユ「ユッコちゃん、いいの、いいのよ、どうせお父さんはあれ、食べないんだから……」


サーニャ「ミイユちゃんは黙ってて!」


ミイユ「あぁ……はい……」



20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:51:54.21 ID:KjQkbm7AO

サーニャ「明日の朝がね、生け贄の儀式なのよ。
そこで何も出来ないと、また1年間雨が降らない。
するとどうなると思う?」


ユッコ「どうって」


サーニャ「全員死ぬのよ!」


ユッコ「死ぬ……」


サーニャ「やっと助けが来たと思ったら……これよ……!
あなたが悪いわけじゃないけど……ダメだわ、気持ちが治まんない!」


村長「サーニャ!サーニャ……もうやめて。お門違いよ」


サーニャ「……そうだけど」


村長「ユッコちゃん、せめて結界を開けることは出来ないかしら。
結界が開けば村を脱出できる。それだけでも助かるの」


21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:52:58.22 ID:KjQkbm7AO


ゴンッ!!



ユッコ「むぐぐ~~……!」


村長「思いっきりぶつかったわね……。
あなた、本当にどうやって入って来たの。
外からは、村の存在も認識出来ないはずなのよ?」


ユッコ「普通に歩いて通ったんですけどねえ……?」


村長「これじゃ、あなたも村から出られないわね。……」




村長「今日はもう遅いわ。私の家においで」



22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:53:42.12 ID:KjQkbm7AO

村長「どうぞ、お茶よ」


ユッコ「ありがとうございます」


村長「ごめんなさいね」


ユッコ「こちらこそ、期待外れですいません……。
でも、悪魔退治ならしたことがありますよ」


村長「そうなの?」


ユッコ「ニッタ?ニッター……何とかって言ったかな?
雨神様もきっと大丈夫です!」


村長「いいのよ。下手に挑んで雨神様の逆鱗に触れたら、村がどうなるかわからないし。
悪いけど、かえって迷惑よ」


ユッコ「そうですか……」



23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:55:33.53 ID:KjQkbm7AO

ビュウウウゥゥ……


村長「珍しい。風が出てきたわね」


村長「……」


村長「ねえユッコちゃん」


村長「はじめて生け贄を捧げたときね。
女の子の命を取るか、それとも村人みんなの命を取るか、
私は迷ったフリをしたわ」


ユッコ「フリですか?」


村長「答えは始めから決まっていたもの。
そのとき、私は個人的な感情を捨てたのよ。

村の一部として、村のためだけに生きることを誓ったの。
それが、あの子たちに対しての、贖罪よ」


ユッコ「しょく…ざい…」


村長「明日の夜明け前、雨神様が来る」


村長「この機会は絶対に逃さない」


ユッコ「んん……ぁ……」うつらうつら



24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:56:26.81 ID:KjQkbm7AO

村長「私はねユッコちゃん。
村のためなら何でもするわ」


ユッコ「村長、さん、あれ、わたし、ねむく」


村長「あなたは、本当に運が悪い」


村長「ここに迷い込んだこと。
入ってきたのに出られないこと。
そして」


村長「若い娘だったこと」


ユッコ「…………」とさっ


村長「本当に、ごめんなさい」


ビュウゥゥゥ……


25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:56:58.79 ID:KjQkbm7AO

村長「戻ったわよ」


サーニャ「村長、遅かったわね。結界は開いたの?」


村長「開いたわ」


サーニャ「うそ!?」


村長「でも、通れたのはユッコちゃんだけよ」


サーニャ「……!そう……」


ミイユ「ユッコちゃんは……?」




村長「帰ったわ」





26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:57:31.32 ID:KjQkbm7AO

ホー、ホー


ユッコ「……」


ユッコ「……ん、んー」


ユッコ「んっ!?」


ユッコ「もがもがが!?」


ユッコ(ありゃ、縛られてる)


ユッコ(ん……)


ユッコ(そうか。ミジュキさん、私を生け贄にするつもりなんだ)


27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:58:04.51 ID:KjQkbm7AO

ユッコ(……)


ユッコ(こんな村があるなんて、思いもしなかった)


ユッコ(私はよっぽど幸せに生きてたみたい。
周りの人たちは、みんな笑っていたもんね)


ユッコ(良い人たちだったな。優しくて、強くて)


ユッコ(……)



ユッコ(助けなきゃ)



28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 19:58:54.50 ID:KjQkbm7AO

ユッコ(うーんうーん)ギチギチ


ユッコ(ユッコ。サイキッカーの使命は困っている人を助ける事でしょう)


ユッコ(縛られていては、助ける事が出来ないでしょう)


ユッコ(縄よ)


ユッコ(縄よ、ほどけろ)



ユッコ(ムム)


ユッコ(ムムムム)


ユッコ(ムムムムーーン!!)






ズバッ!!



29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:01:14.27 ID:KjQkbm7AO


ユッコ「ひゃ!もがが!ぷはっ」


ユッコ「縄が……斬られた」


ユッコ「誰ですか!?」


しゃらん


???「そっちこそ誰?」


ユッコ「わ、女の子だ」


???「村に迷いこんだってのはアンタだね。
名前は?迷子さん」


ユッコ「いえー、名乗るほどでは……ユッコです!」


???「……」


ユッコ「あなたは?」


???「……リン」



30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:02:20.22 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「リンちゃん。
ほえー……私に負けず劣らずの美少女ですねー」


リン「……。アンタ、なに?どうやって結界の中に入って来たの?」


ユッコ「いやー普通に歩いて来たんですけど」


リン「は?まさか。私は解結法印をぜんぶ使ってやっと孔を開けたんだよ。
その孔だって、固定具ごとすぐに潰されてしまった」


ユッコ「かいけつ……こてい……?何です?」


リン「分かんないの?フッ、そうよね。退魔士でもない普通の子には──」


ユッコ「つまり、中に入ったは良いけど外に出られなくなっちゃったって事ですか?」


リン「……」


ユッコ「……」


リン「……」カァ


ユッコ「そうなんですね!あははー」


リン「そのアホみたいな顔……。
アンタさては悪魔ね。絶対そうだ」チャキ


ユッコ「悪魔じゃありません!サイキッカーです!」ビシッ


リン「サイキッカー……?」



31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:02:54.83 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「リンちゃんは、もしかして都の退魔士さん?」


リン「……まぁね」


ユッコ「やっぱり!じゃあ雨神様を退治しに来たんですね!」


リン「ちがう」


ユッコ「よーし一緒に行きまっしょーう!」むんず グイーーッ


リン「ちょっと!ちがうってば!」


ユッコ「急がないと夜が明けちゃいます」ずんずんグイグイーッ


リン「私の任務は不審な結界の調査だよ!
天候を操るような化け物の相手なんか出来ない!」


ユッコ「私が倒すから大丈夫ですよ!」


リン「はあ!?アンタが何者か知らないけど、余計な事しないでよ!
雨神が暴れたらどうするの!」


ユッコ「大丈夫ですよー。そういうのはその、サイキックですからね」ずんずん


リン「話を……聞けっ!」ぶん


ユッコ「わ」



32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:03:37.07 ID:KjQkbm7AO

リン「いい?雨神は神様なんかじゃない。
退魔士の教科書に大きく載る様な、とびっきりの悪魔なんだよ」


ユッコ「あくま……」


リン「名前を「スカウト」って言う。
人里を結界で囲み、災厄をもたらし、生け贄を要求するの。
実際に見たわけじゃないけど、たぶん間違いない」


ユッコ「どうやったら退治出来ますかね?」


リン「退治?……フン」


ユッコ「むー?」


33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:04:43.47 ID:KjQkbm7AO

リン「スカウトに勝てるのは、退魔士の中でも一握りの何人かだけ。
少なくともこの国にはいない」


ユッコ「都には強い退魔士さんもたくさんいるでしょう?」


リン「アンタ、知らないの?都の退魔士は……、
サキュバスにおそわれて、名のある退魔士は皆やられてしまったよ」


ユッコ「あー、そんな事ありましたね」


リン「情けないって思わない!?
しかもそのサキュバスを退けたのは、退魔士でもなんでもない、普通の女の子らしいって」


ユッコ「……」



34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:05:24.11 ID:KjQkbm7AO

リン「生き残った退魔士なんて、もうただのカカシ。アテにするだけ無駄だよ」


ユッコ「じゃあ、この村はどうなるんですか?」


リン「……。諦めて」


ユッコ「諦める!?」


リン「村の人たちは確かに気の毒だよ。でも、どうにもならない事もある」


ユッコ「……」


リン「一応ね、私の連絡が途絶えたら、救助が来る事になってる。
いつになるか分からないけど……。

そのときまで生き延びられたら、一緒に逃げよう。
いま雨神に殺されるよりは、よほどマシだよ」


ユッコ「わかりました……」


リン「じゃあ、こっちに来て。私の隠れ家に──」


ユッコ「やっぱり私たちで倒しましょう!」グイグイーッ


リン「話聞いてた!?」



35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:05:51.89 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「聞きましたよ?その結果、私たちで倒すしかないなーって」ずんずんグイグイーッ


リン「冗談じゃない!サイキッカーだか何だか知らないけど、みすみす死人を増やす訳にはいかない。
承諾できない!離せ!」バシッ


ユッコ「雨神様がどこに現れるか、知ってます?」


リン「見当は付いてるよ。教えないけど」


ユッコ「じゃあ!行きましょーう!」


リン「行かない」


ユッコ「こっちかな」


リン「教えないってば」


ユッコ「こっちかな?こっちっぽいなー」


リン「……」


ユッコ「あれ、分かれ道だ。どっちだろ……。
んー。こっち」


リン(何でガンガン正解するかな!)イライラ



36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:06:40.24 ID:KjQkbm7AO


ユッコ「チラ」


リン「うっ?」


ユッコ「正解ですね」


リン「……!」カチン

リン「行ったらダメだって!待て!」ダッ


ユッコ「アンタじゃなくて、ユッコって名前で呼んでくれたら待ちますよ?」たたた


リン「ユッ……。……ユッコ、待って」


ユッコ「えへへ、リンちゃん!」ぴた


リン「もう……」


ユッコ「はい、待ちました。じゃあ行きましょうー!」たたた



37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:07:12.61 ID:KjQkbm7AO

リン「こらっ……本当にダメだって、死んじゃうんだよ!」


ユッコ「だいじょうぶですよ!私怒ってますし!リンちゃんもいるし!」


リン「どんな理屈!?私では勝てないし、普通の女の子では尚更でしょ!
止まれっ!見殺しにするのは気が引けるんだよ!」


ユッコ「捕まえてごらーん」


リン「この……!ハイもう知らない!
私は行かないよ!アンタと心中する気はない!
アンタが死んだって知ったことか!勝手にしろ!」


ユッコ「勝手にしまーす!」たたた


リン「……」


リン「……」


リン「もおぉぉお!!」ダッ



38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:08:17.73 ID:KjQkbm7AO

ガララッ!


村長「…………」


しーん


村長「……逃げられた、か」


村長「ふふ」


村長「ふっ、ふふ、ふ」ずる


村長「……」どさ


村長「ごめん、みんな、ごめんなさい……ごめん……」


村長「……」




村長「……」スクッ



39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:08:45.63 ID:KjQkbm7AO

村長(サーニャ、あとは頼むわね)


村長(村を頼むわね。絶対よ。絶対よ)


村長「……行ってきます」ぺこ


サーニャ「どこに行ってきます?」


村長「ぎょっ!?」


サーニャ「白装束なんか着ちゃって」


村長「散歩よ」


サーニャ「村長……」


村長「……」


サーニャ「生け贄は若い娘じゃなきゃダメよ」


村長「な、なによ」


サーニャ「若い娘じゃなきゃダメよ」


村長「何で2回言うのよ!!」ポカポカ


サーニャ「何回言えば分かるのよ!!」ポカポカ



40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:09:54.38 ID:KjQkbm7AO

村長「もうこれしかないじゃない!仕方ないでしょ!」


サーニャ「アンタ、雨神様がアンタを無視して帰ったらどうするの!?
最悪よ!恥ずかし過ぎて村に戻れないわよ!?」


村長「その時は雨神様をブッ殺すわ」


サーニャ「返り討ちよ!どっちにしても死ぬじゃない!」


村長「そうよ!死にに行くのよ!
もう決めたの。
明日から、あなたが村長をやってね。頼むわ」


サーニャ「それはムリよ」


村長「なんでよ!」


サーニャ「私も行くからよ」


村長「はあ!?」



41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:10:57.52 ID:KjQkbm7AO

サーニャ「28歳でも、2人いたらギリ行けるかも知れないじゃない」


村長「ダ、ダメよ……」


サーニャ「それにアタシ、アンタより童顔だし」


村長「バカッ、バカね……私、遠慮しないわよ?」


サーニャ「バカはお互い様よ」


村長「本当ね……。……きゃっ?」

ギュッ

サーニャ「よしよし。アンタはよくやったわよ。一人で背負わせちゃってゴメンねー……。
アタシも半分持つから。ね?ね、ミジュキ」



42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:11:25.09 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「きーーーん」たたたー


リン「ユッコ、あんた勢い良く走ってるけどさ!
勝算とかあるわけ!?」たったった


ユッコ「ありまぁす!」


リン「根拠は?」


ユッコ「サイキックです!」


リン「えーと……?それは武器?魔法?」 


ユッコ「サイキックです!」


リン「あれ、もう何言ってもムダかな?」


ユッコ「サイキックは奇跡なんです!」


リン「奇跡?要は運頼みって事か。
ばかやろう!」


ユッコ「リンちゃんは剣士さんなんですよねー。頼りにしてますからね!」


リン「そんなの困るよ!勝てないって言ってるでしょ!」


ユッコ「ふふふ。リンちゃんが断れない人なのはバレバレですよ?
私が心配で、身体が勝手に動いちゃうんでしょう!」


リン「ああそうだよ!止まれ、止まれ私の足!人情なんか捨てちまえ!」



43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:12:32.09 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「おっ……とっとー!?」コケッ びたーん!


リン「ダッサ」プッ


ユッコ「岩と石が多いんだもん……」


リン「ここは川なんだよ、涸れた川」


ユッコ「ここが川?」


リン「大きな渓谷……。水があれば、綺麗だったろうね。
周りには木も多いし、沢登りをしたら楽しそう」


ユッコ「リンちゃん、石の川の真ん中に舞台がありますよ」


リン「あれは祭壇だね。生け贄を捧げる……。
あぁ、とうとう着いちゃった。雨神はきっとここに来る」


ユッコ「もうすぐ夜明けです」


リン「どうする気なの?身を隠して待つ?」


ザワ


ユッコ「はっ」


44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:13:08.14 ID:KjQkbm7AO

リン「なに?」


ユッコ「リンちゃん。静かにして」


リン「何なのよ……」



ブォン……


ユッコ「……います」


リン「え?」


ズオオオオオ


ユッコ「……」


リン「あ……!?」ゾワゾワゾワ


ユッコ「…………!」ぎちぎちぎち


リン「何してんの!隠れて!!」ドン


ユッコ「どわぁ!?」ザザッ



45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:14:05.70 ID:KjQkbm7AO

ズズン……


ズズン……


ズズン……


ユッコ「あれが」


リン「雨神っ」



46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:15:12.21 ID:KjQkbm7AO

ズズン……


リン「大きい……!」


ユッコ「大きいですねー。リンちゃんで言えば5人ぶん……
5リンくらいありますね」


リン「何だその単位!言い直せ!言い直せ!」


47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:15:38.03 ID:KjQkbm7AO

ズズン……


リン「ああ、これは、ダメだ」


ズズン……


リン「私みたいな下っ端にも分かる圧倒的な力」


ズズン……


リン「人の命なんて、一瞬で、握り潰されそう」


ズズン……


リン「どうしよう。恐い……!くそっ、震える。何で来ちゃったんだ!」


ユッコ「みんなを助けるためですよ」


リン「アンタのこと、恨むからね……!たっぷりお返ししてもらう。生きて帰れたらだけど……」


ユッコ「死にませんってば」


リン「ユッコいい?あいつが近くに来た瞬間、一斉に飛びかかるよ」


ユッコ「分かりました……リンちゃんは剣で。私はサイキックで!」


リン「よし分かった。頼れるのは自分の剣のみだったね」


48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:16:07.09 ID:KjQkbm7AO

ズズン……


リン「はぁ、はぁ」


ズズン……


リン「ハッ、ハッ」


ズズン……


リン「ハッ、ハッ……!神様……!」




49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:16:38.49 ID:KjQkbm7AO

 \どかーん!/


リン「  」


 \ずずーん!/


リン「???」


ユッコ「……」


 \どどーん!/


リン「え、え?なに?なにこの轟音??」


ユッコ「てへ、私のお腹の音です」


リン「アンビリーバブル!!」



50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:17:25.48 ID:KjQkbm7AO

 \ぼーーん!/


リン「止めろーっ!!即 止めろ!許さーん!」


ユッコ「そんなこと言われてもなあ」


リン「止まらないなら私が止めてやる!」ドスン!


ユッコ「ぐっほーー!何するんですか!」


ズズン……


ヌッ……


雨神「ミ……ツ……ケ……タ……」


リン「¢§☆▲◎*$%!!」


51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:18:03.03 ID:KjQkbm7AO

雨神「ウゥ……?」


リン「逃っげっ……!……あ、足、動かない……」ガタガタ


雨神「……」じーっ


雨神「……」じーっ


リン「何だ……!?」


雨神「ム……スメ……」


リン「ムスメ?娘?
私を生け贄だと思ってる!?」


雨神「ワカ……イ……」ずい


リン(あぁあ、あぁあ!顔近付けて来た!)


52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:18:35.71 ID:KjQkbm7AO

雨神「スウ……イノチ……」ずい


リン(いやだっ、殺されるっ、私っ)ガタガタガタ


リン(私っ、私はっ)ガタガタガタ


リン(私はっ……)




リン(……退魔士!!)ピタ



53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:19:07.76 ID:KjQkbm7AO

リン(フー……ッ!)


リン(落ち着けリン。ここだ、ここにチャンスがある!)


リン(そのまま顔を近付けてこい)


リン(その瞬間、その瞬間に、私の最高の技を喰らわせてやる!)



54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:20:11.79 ID:KjQkbm7AO

雨神「ムスメ……!」ずい


リン「今だっ!」シャラン!


リン「アイオライトブル
『サ

 イ

 キ

 ッ

 ク

 ぅ』




55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:20:50.80 ID:KjQkbm7AO


ユッコ「雨を」




ユッコ「返せパンチーーーーーッッ!!!」フォッ


56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:21:39.66 ID:KjQkbm7AO

ゴリュンッ!!


雨神「グゥアアアアア!!!」


ドズン……!


リン「えっ──ユッコ……?」


ユッコ「ううぅぅぅう」


リン「ひっ」ぞわ


57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:22:15.56 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「よくも」


ユッコ「よくも」


ユッコ「あんな良い人たちを悲しませましたね」


ユッコ「あなたとは」


ユッコ「ぜったいに仲良く出来ません」


ユッコ「救いたくありません」


ユッコ「それでも私は許しますが」


ユッコ「私のサイキックはあなたを許しませんっ!!!」





ユッコ「念 動 光 線」




ユッコ「さぁいきっくうぅ」




ユッコ「ビーーーーーームッ!!」

バッキィッ!!


雨神「ギャアアァオオ!!」



58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:22:45.23 ID:KjQkbm7AO

リン「効いてる……!ユッコ、効いてるよ!すごい!
でもそれ蹴りじゃん!」


ユッコ「でもまだです!来ますよ!」


雨神「モ、」

雨神「モ、」


雨神「モバーーーーーーッ!!」

ドバ!!


ユッコ「鉄砲水っ!」


リン「取り込んだ雨を吐き出してる!?」

ドババババ……!
   
ユッコ「わっ、ガボゴボガボゴボボ!わわ、わあぁー……!」

ドドドドド……


リン「ユッコ!」

くるっ

リン「雨神っ!」


59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:23:47.89 ID:KjQkbm7AO

雨神「モバアァァァ!」ズアッ


リン「せーーーーーぇぇぇえあっ!!」ビュッ

ギィン!!


リン「ぐっ!剣が通らない!どうして!?」


『パンチーーーッッ!!』


リン「そうか、頭!?あの、Pみたいな頭の真ん中ならダメージが通るはず!」


雨神「ズガヴドォォォオ!!」ブワッ

グワッシャッン!!


リン「い、岩がバラバラになった……!」


ババババ……!


60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:24:30.38 ID:KjQkbm7AO

リン「ぐっ!高い!この身長差じゃ届かないよ!」


リン「どうする……!?」


雨神「モバアッ!!」

ドン!ガッシャッ!!


リン「やっ!……んっ!?」


ふわっ


リン「足場の岩が飛ばされて……!?きゃああっ!」

ぽーーん


リン「う、浮いちゃってえ!?」


雨神「モバ……?」


リン「!!ここっ、雨神の頭のうえ!?

ならこのまま……

斬るーーーっ!!!」

シュバッ!!


61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:25:18.64 ID:KjQkbm7AO


雨神「ブワァアアアア!!」


リン「通ったっ!」


ひゅうううぅぅん


バイン!


リン「うっ?」

ぴょーーん


リン「なに!?また跳んだ!
地面の枝でジャンプしたの!?
こうなったら……」


リン「運でも何でもーーーっ!!」


シュバッ!


62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:26:02.15 ID:KjQkbm7AO


リン「何これ!運良すぎじゃない!?奇跡!?」


『サイキックは奇跡です!』


リン「……。
ぶるるる!後で考える!」


雨神「ムスメ……!イノチ……!」


リン「そのままかがんでいてくれたら、とどめを刺す!」

タタタタ

リン「輝ける菫青よ……」ポゥ

タタタタタ

リン「我が手に集い」

タタタタタタ

リン「浄化の力を成せ!」キィイイイィィイイ

タンッ!


63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:26:47.49 ID:KjQkbm7AO

リン「蒼の剣を受けよ!アイオライトブルーッ!!」

ビュッ ドッ!

リン「決まっ──」

雨神「モバーーーーーーッ!!」

ズバドドドドドド!!


64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:27:14.12 ID:KjQkbm7AO

リン(水がっ)


ドドドドドドドド


リン(もう少しのところでっ)


ドドドドド……!


リン「雨神いいいっ!!」



65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:27:44.58 ID:KjQkbm7AO

リン「わあああああぁぁーーーーー……」
       パシッ
「……ーーーーーぁぁあああああ!!!!」ユッコ


66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:28:27.58 ID:KjQkbm7AO


リン「ユッコ!」

ザザザザザザ!

リン「鉄砲水で、サーフィンしてる!?
もう、何なのよこの子!」


ドシャッ!

リン「いっ……たぁ……っ!!」


ユッコ「リンちゃん、剣、借りましたよ!」



ユッコ「スプーンよ!!」


…………ひゅうううぅぅうん


リン「ユッコ、あぶない、切り株が飛んで……!」


ソンッ


リン「剣にささった」



ユッコ「とうっ!」ブワッ


雨神「……!!」



67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:29:05.95 ID:KjQkbm7AO


ユッコ「雨神様」


ユッコ「ここまでです」


ユッコ「あなたの身体も悪行も」


ユッコ「波動の中にぜんぶ消します!!」




ユッコ「ごめんなさい」




ユッコ「さい きっ くうううううううう」



ユッコ「スマァァーーーーーーッシュッッ!!!!」



68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:30:06.35 ID:KjQkbm7AO
ガッ!


ボオオォォオツッ!!


雨神「グアァァアアアア!!」


ドパッ


雨神「アアァァァァァア!」


ズドドドドドド


雨神「ァァァァァ……」


ドドドドド……


雨神「モ、バ……」


ユッコ「雨神様」


ユッコ「許してあげます」


雨神「ァ……」


シュン


69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:30:32.30 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「………………」


リン「………………かっ」


リン「勝っちゃった」へたっ


リン「……」



リン「何これぇ」




村長「……」

サーニャ「ミ、ミジュキ、いまの?」


村長「あの子、本当に、雨神様を」


サーニャ「ど、どうなったの。何が起こったのよ……」


ポタ



ポタ ポタ

ポタッ ポタタ


村長「……。終わったのよ……」


ざあぁぁぁぁ……


70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:30:59.27 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「あーあー!びしょびしょー!」


リン「降ったね」


ユッコ「私雨きらいなんですよ」


リン「身も蓋もないな」


ユッコ「リンちゃんは雨好きそうですよね」


リン「バカにしてる?」


ユッコ「好きなんだー。どうせ好きなんだー」


リン「バカにしてるね。よーし」バシャン!

ユッコ「なんとー!」びしゃ


71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:31:28.61 ID:KjQkbm7AO

リン「ユッコ、強いんだね。メチャクチャだね」


ユッコ「え?強くなんてないですよ」


リン「強かったよ。何あのパンチ。ゴリラより強いよ」


ユッコ「あははー。あんなの普段は出来ませんよ」


リン「どういうこと?」


ユッコ「ぜんぶサイキックのおかげです」


リン「はあ……?」


ユッコ「すごい奇跡が見れましたね!」


リン「そうか……。うん……。何言ってもムダだったね……」


サーニャ「ユッコちゃん!」


ユッコ「サーニャさーん!良い雨ですね!私はきらいですけど!」


リン「おい」


サーニャ「あなたに、何て言ったら良いんだろう」


ユッコ「うれしい言葉を期待してます!」


サーニャ「ふふ、もう……言葉もないわよ」


ユッコ「サーニャさん……。
ボキャブラリーがちょっとアレだったんですね」


リン「それはお前だ」


サーニャ「さあ、ミジュキも」


村長「……」


72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:32:02.34 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「村長さん!」


村長「ごめんなさい……。私、あなたに合わせる顔がないわ」


ユッコ「……」


村長「いえ、あなたにだけじゃない。村のみんなにだって……」


サーニャ「なに言ってるのよ。誰もあんたを責めやしないってば」


村長「私は責めるわ。生け贄を死なせた私を」


サーニャ「それは……あたしも一緒に背負うって言ってんじゃない!」


村長「それだけじゃないのよ」


サーニャ「何よ!?」


村長「ねえサーニャ、私、村のみんなとどう関わればいいのかしら。
村が守られたいま、私の役目は終わったけれど……。

だからって、村長じゃない私なんて忘れちゃった。
いま何を思うべきなのか……。前の私なら、どうした?喜んだ?
どんな顔で喜んだ?わからないわ。
何もわからないのよ……!」


サーニャ「ミジュキ……」



ユッコ「あの、村長さん!」


73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:34:25.14 ID:KjQkbm7AO

村長「……」


ユッコ「村長さん、私、友達からよく言われるんです。
「ユッコらしいね」って」


村長「え……?」


リン(何を言い出すのやら)


ユッコ「でも自分ではわかんないんですよねー。
「そうかな?」って言うと、「そうだよ」って。
友達の目を通さないと、自分なんて分かんないのかも」


村長「そんな、子供みたいな……」


ユッコ「もういっかい子供からやり直しです。
村長さんが分からないことは、サーニャさんが教えてくれます。
ミイユさんが、村のみなさんが知ってます。
元の村長さんの事が分からなくても、今の村長さんだって素敵です!
私すきです!」


村長「だって、でも……」


ユッコ「村長さん、サイキックって、みんなを幸せにするぱわーなんですよ。
村長さんにかけてあげますね」


村長「……」


ユッコ「サイキック~……まわれ右!」がし


村長「え?」くるっ



村長「あ……」



74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:35:55.57 ID:KjQkbm7AO


「いた!村長いたぞー!」

「ミジュキ村長!雨降ったよ、雨だよ!」

「ミジュキ!」


ミイユ「ミジュキさんっ……!」


村長「あ、あ」


ユッコ「村のみなさん、喜んでます。
それを見て、村長さん、いえ、ミジュキさんは、なにを思ってますか……?」


ミジュキ「……」


ミジュキ「うれしい」


ユッコ「……」


ミジュキ「うれしい。わたし、……サーニャ、私嬉しいの。すっごく……。
喜んで、いいのよね?」


サーニャ「いいのよ」


ミジュキ「う、う、ぁぁぁ、わあああああん……!わあああぁぁん!!」


ミイユ「ミジュキさぁん……!」


サーニャ「な、泣くんじゃ、ないわよ、い、いいどじなんだがら」


ざああぁぁぁぁ……


ユッコ「リンちゃん」


リン「はい」


ユッコ「雨もたまには良いことしますね」


リン「ん?」


ユッコ「涙をがぐじでぐればずぼんで」


リン「はいはい」



75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:36:32.28 ID:KjQkbm7AO

リン「はい、ですから、当面の食糧は大至急必要です」


リン「ええ、ポニーテールの。
大きなスプーン?持っていませんでしたが」


リン「はあ、シルエットはそう見えなくもなかったですが……
考え過ぎではないですか?」


リン「はい。……はい?
ユッコを……!?」


リン「イヤです。ムリです」


リン「イヤです!!イヤ!!あっコラ!!」


リン「ばかやろう!!」ガチャーン!


76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:37:22.69 ID:KjQkbm7AO

ミジュキ「便利ねそれ」


リン「良いことなんか一つもありませんよ!よければ差し上げます!」


ミジュキ「いいわ」


リン「あれ?ユッコは?」


ミジュキ「もう出発したわよ」


リン「はあ!?」


ミジュキ「ついさっきね」


リン「もおぉおお!」

リン「私もこれで失礼します。お元気で」


ミジュキ「あっ、待って退魔士さん。
あなたの名前を聞いていなかったわ」


リン「名乗るほどでは……。

……いえ、リン。リンです」


ミジュキ「ふふ、またね、リンちゃん」


リン「では!」


77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:37:48.65 ID:KjQkbm7AO


ミジュキ「行っちゃったわね」


サーニャ「何だったのかしら、あの子」


ミジュキ「そりゃあ……」



78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:38:17.89 ID:KjQkbm7AO


リン「ユッコ!待ってよ!」


ユッコ「あれっ?リンちゃんどうしたんですか!?
私と離れがたいあまり……?」


リン「ある意味ではそうかな……」


ユッコ「えっへっへー」むにゅ


リン「離れろ」


 \どかーん!/


ユッコ「あっ」


リン「もう、ほんと、アンタいったい何者なの?」


ユッコ「私ですか?」



79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 20:39:59.69 ID:KjQkbm7AO

ユッコ「通りすがりの、サイキッカーです!」ビシッ







 LIVEツアーカーニバル





    幻想公演




   セイバーズ!




 ユッコ────堀裕子


 リン─────渋谷凛


 サーニャ──片桐早苗


 ミイユ───三船美優


 飴神─────双葉杏


 雨神─────モバP


 ミジュキ──川島瑞樹





     FIN







ユッコと凛にささやかな栄光(1票)を賜りたく存じます。

過去作のユッコも可愛く仕上がっておりますよ。凛も出ております。


渋谷凛「え?ユッコースター?」

堀裕子のサイキックを解禁するものとする