2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 03:29:25.57 ID:J6YXLJuC0
あれは大学生活も終わりに差し掛かる4年の秋だった
周りが続々と就職を決めているなか、中々決められなかった俺は焦りと不安で頭がいっぱいだった
その時、道端で声をかけられた
「ティンときた!キミィ!アイドルのプロデューサーをやってみないかね?」
そんな感じで俺はアイドルのプロデューサーになった

引用元: モバP「例え見えなくても」 


 
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 03:35:08.14 ID:J6YXLJuC0
設立したての会社だったため右も左も分からなかったが社長と事務員のちひろさんと3人で頑張った
アイドルの勧誘から始まり、テレビ局へ売り込みに行ったり、レッスンでアイドルを育てたり・・・
忙しかったが俺には楽しくてたまらなかった

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 03:39:48.71 ID:J6YXLJuC0
入社して4年がたった26歳のこと
いつものように仕事に追われていた
家に帰る日など月に1回程度、まともに6時間以上寝た日など思い出せないくらいであった
もちろんキツい毎日だったが心は充実していた
だが体がそれを許してくれなかった

6: >>4 ありがと。 2013/12/11(水) 03:43:38.77 ID:J6YXLJuC0
そしてそれは起こった

その日は確か拓海と一緒にテレビ局へグラビアの撮影に向かっていたと思う

突然頭が割れるような頭痛と眼球をえぐられるような痛み

そして視界が赤く染まっていく中俺は倒れてしまった

最後に見たのは拓海の泣きそうな顔と俺を呼ぶ声だった




3日ぶりに目が覚めた時、俺の視力は無くなっていた

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 03:49:13.10 ID:J6YXLJuC0
医者の話によると仕事のし過ぎによるストレスと疲れが原因だった

このまま一生治らないかもとまで言われた

仕事に一生を捧げていた俺にとってそれは死を宣告されたようなものだった

目が見えない自分に仕事などできるはずもない

その日のうちに社長に仕事を辞めると告げた

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 03:52:23.96 ID:J6YXLJuC0
しかしアイドルたち全員から辞めないでくれと言われ

社長からも君に合う仕事を探すからと引き止められてしまった

嬉しかった反面、迷惑をかけてしまうと不安になったが黙っておくことにした

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 03:57:23.32 ID:J6YXLJuC0
れから退院まで必死に点字を勉強した

暇を見つけては見舞いに来てくれるアイドルたちと一緒に覚えた

また退院してからすぐに社長が事務所のすぐ近くにバリアフリーの家を探してきてくれた

そこでアイドルやちひろさんに看病してもらいながらなんとか生活できるまでに回復した

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/11(水) 03:59:50.41 ID:J6YXLJuC0
家事から炊事から洗濯までほぼやってもらった

幸いアイドルには家事が得意なアイドルも多くまずい飯も食わなくて済んだ

一部のアイドルを除いてだが・・・

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 04:05:49.97 ID:J6YXLJuC0
朝7時に鳴る目覚まし。それを俺は手探りで探して止める

そして壁に手を添えてゆっくりと洗面台まで行き顔を洗い歯を磨く

それが終わると部屋でテレビをつけ耳を傾ける

今日は何日か。天気はどうなのか。なにかニュースがあったか

耳から入る情報は限られるため夢中になって聞かなければならない

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 04:09:47.28 ID:J6YXLJuC0
そうこうしてる間に誰かが迎えに来る

それはちひろさんだったり、事務所に来るアイドルだったり・・・

今日は誰がくるのかな。そう考えるのが毎朝の楽しみであった

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 04:13:10.50 ID:J6YXLJuC0
チャイムが鳴り誰かがおはよ。プロデューサーと言いながら入ってくる

声を聞き誰かを当てる

今日は凛だった

俺は声のする方に行きおはようと言いながら手を差し出し声の主を探す

するとアイドルは俺の手を掴んでくれる

そして俺は手を握りそこから肩、首と伝って頭を撫でる

これが毎日の俺の挨拶だった

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/11(水) 04:18:16.28 ID:J6YXLJuC0
最初は凛だって恥ずかしがってか手を差し出してくれなかったが今ではちゃんと差し伸べてくれる

今でも顔が見えないので恥ずかしいのかどうかはわからないが

そうして杖をつき、凛と歩きながらゆっくりと事務所に向かう

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 04:20:44.80 ID:J6YXLJuC0
仕事はプロデューサーからアイドルの話を聞く相談役となった

ついでに肩書はプロデューサーからプロデューサー兼相談員となった

今まで忙しかった毎日とはうってかわってアイドルとお話するだけになってしまったがそれでもまぁ楽しかった

今日は杏がきて仕事したくな~いと言いながら俺に愚痴を言っていただけだった

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/11(水) 04:27:15.26 ID:J6YXLJuC0
仕事ばかりと言っていたが唯一の趣味があった

お酒である

この事務所のアイドル達にはお酒好きが何人かいてその人達と酒を飲みながら話すのが好きだった

大体メンツは楓さんや志乃さんに早苗さんは絶対いた

それに礼子さんがいたりあいさんがいたり・・・

年少組や学生組と違った大人組とのアダルトの話も乙なものであった

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/11(水) 04:30:02.80 ID:J6YXLJuC0
体を壊してからは医者と相談し月に1回お酒は三杯タバコは3本までとなった

そう言うとみんな俺に付き合ってくれ3杯で後はジュースで乾杯となった

そして帰りはアイドルが家まで付き合ってくれる、周りから見たらなんとも望ましい状況となった

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/11(水) 04:32:51.47 ID:J6YXLJuC0
倒れてから1年ほど立ち、視力も少しは戻っていった

と言っても物体の輪郭がぼんやりと見える程度である

色彩はバラバラ、物は5重にも6重にもみえ遠近の判別もつかなかった

そして最近ある思いが浮かんでいた

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/11(水) 04:38:08.87 ID:J6YXLJuC0
俺が倒れて以降、新しいアイドルはあまりとらないようにしていた

そして今いるアイドルもどんどん仕事が増え忙しさが増している

俺はこの娘たちが自分から離れていくのがとても怖かった

彼女らも今は毎日甲斐甲斐しく世話をしてくれるが彼女らにもプライベートな時間はある

そして大人になっていくに連れそれはどんどんと増えていくだろう

こんな目も見えない自分などいつか忘れられていく

そう思うのが本当に怖かった

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/11(水) 04:44:24.88 ID:J6YXLJuC0
そして今現在

今も生活は変わっていない

俺の目は今後良くなるかもしれないし一生このままかもしれない

いろいろな思いが頭を駆け巡る

未来のことなんて誰にもわからない

でも最後まで希望を失いたくはない

たとえ目が見えなくても・・・

自分にはとても大きな楽しみがある

それはいつか目が見えたとき、大人になったみんなの顔を見ることだ


終わり