1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:43:32.45 ID:a/qbeV9/o

私の名前は喪黒福造

人呼んで笑うセールスマン

ただのセールスマンじゃございません

私の扱う商品は『心』

人間の心でございます


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1496918612

引用元: 喪黒「なるほど。勤め先がブラック企業ですか」 


笑ゥせぇるすまん 約束の代償 (My First Big SPECIAL)
藤子 不二雄A
小学館 (2017-06-23)
売り上げランキング: 11,054
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:44:36.03 ID:a/qbeV9/o

この世は老いも若きも男も女も心の寂しい人ばかり

そんな皆さんの心のスキマをお埋めいたします

いいえお金は一銭もいただきません

お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:45:07.39 ID:a/qbeV9/o

さて、本日のお客様は……




黒木「……」カタカタカタ…

黒木「……」カタカタカタ…


『黒木 恭太郎(くろき きょうたろう)男24』

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:45:49.27 ID:a/qbeV9/o



「ブラック企業」


ホーッホッホッホッホ……


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:47:20.10 ID:a/qbeV9/o

黒木「……」カタカタカタ…

黒木「……」カタカタカタ…

黒木「はぁ~~……」カタカタカタ…

課長「おーい、黒木くん」

黒木「は、はい?」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:48:12.74 ID:a/qbeV9/o

課長「あと、これも頼むよ」

ドサッ

黒木「ええっ!?こ、これもですか?」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:50:39.82 ID:a/qbeV9/o

課長「いやー、すまないと思うがうちも人手不足でな」

黒木「それにしたって、これ全部だと終わるのが1時回っちゃいますよ?」

課長「いいじゃないか。それに君、明日休みだろう?」

黒木「え、ええ、確かにそうですけど」


黒木「でも僕、もう4日も家に帰ってないんですよ?」

課長「何だ、たった4日くらい」

黒木「けど……」

課長「嫌ならいいんだよ?君の代わりなんていくらでも居るんだからね」

黒木「……」


課長「このご時世、再就職は大変らしいなあ。田舎のお母さんも、さぞかし心配して…」

黒木「……わかりました。やりますから」

課長「おお、やってくれるかね。さすがは黒木君」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:52:18.10 ID:a/qbeV9/o

―街中、深夜1時半―


黒木「ふぅ、や、やっと家に帰れる……」フラフラ

黒木「くそう、入社前は残業のないホワイトな企業なんて言ってたのに」

黒木「実際はサービス残業だらけじゃないか!」

黒木「確かに残業代が発生しないから、会社的には残業はないだろうけどさ!」

黒木「何がホワイトだ。典型的なブラック企業じゃないか」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:53:03.35 ID:a/qbeV9/o

黒木「まあ、とにかく家にかえったら一眠りしよう、それから」

黒木「コンビニのパンやカップラーメンばかりだったからな、ちゃんと栄養のある物を食おう」

黒木「じゃないと体が持たないぞ、それから……」

黒木「う……」フラ

ドン

喪黒「おっと」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:55:14.73 ID:a/qbeV9/o

黒木「あ、す、すいません」

喪黒「どうしたんですか?何だか顔色がよろしくないようですが」

黒木「あ、いえちょっと仕事が忙しくて……」

喪黒「どうやら、あなたはずい分とお疲れのようですね」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 19:56:47.32 ID:a/qbeV9/o

黒木「え、ええまあ」

喪黒「なら、ちょいとそこで一休みしていきませんか?」

喪黒「何か悩んでる事がおありでしたら、私で良ければ話を聞きますよ」

黒木「はあ……」


喪黒「あ、申し遅れましたが私こういう者です」

黒木「心のスキマをお埋めします?喪黒……福造?」









12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 20:01:59.07 ID:a/qbeV9/o

―バー・魔の巣―



喪黒「……なるほど」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 20:02:29.96 ID:a/qbeV9/o

喪黒「勤め先がブラック企業ですか」

黒木「ええ。僕の勤めてる会社は、いわゆるそのブラック企業ってやつでして」

喪黒「ああ、この頃よく耳にしますなぁ」

黒木「残業代の出ない、長時間のサービス残業を社員に強要するような会社なんです」

喪黒「それは、さぞお辛いでしょう」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 20:06:58.11 ID:a/qbeV9/o

黒木「ええ、残業代が出ないのはもうしょうがないと諦めてるんですけれど」

黒木「やっぱり、睡眠時間が削られたりするのが一番辛いですね」

黒木「僕も、この所毎日3時間の仮眠ぐらいしか取ってなくて……。ふぁ~」

喪黒「毎日大変ですなぁ」


黒木「そもそも、こんなに残業しなきゃ回らないような会社なら」

黒木「経営が下手くそって事なんです」

喪黒「ほう?」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 20:11:19.22 ID:a/qbeV9/o

黒木「下っ端社員の犠牲の上に経営が成り立ってるんですから」

黒木「経営者が社員を使い潰してるのと一緒ですよ」

喪黒「ええ、そうかも知れませんねぇ」


黒木「仕事のスケジュールを調整するなりして時間の余裕を作れば」

黒木「新しい知識や技術なんかも学ぶ時間が出来て、能率も上がると思うんです」

黒木「社員の成長は、会社にとって絶対プラスになるはずなんです」

喪黒「ええ確かに。あなたの仰る通り」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 20:13:16.20 ID:a/qbeV9/o

黒木「今の環境じゃ、家に帰っても寝る時間を確保するのが精一杯で……」

黒木「何か新しい事をしよう、なんて気にはとてもなれませんね」

喪黒「それじゃ、モチベーションも上がりませんなぁ」


17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 20:14:13.32 ID:a/qbeV9/o

黒木「はぁ……。もし僕が経営者なら、絶対ブラック企業にしないのにな」

黒木「社員が成長していけるような、余裕のある環境の会社にするのに」

喪黒「えらい!素晴らしい心意気です」

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 20:15:50.85 ID:a/qbeV9/o

黒木「え?いやぁ、そんな」

喪黒「自分の事しか考えてない人間の多い昨今、あなたのような方はとても貴重です」

喪黒「私、あなたのその心意気に感心しました」


喪黒「ですので、あなたにいい所を紹介してあげましょう」

黒木「いい所?」

喪黒「これです。この名刺をあなたに差し上げます」

黒木「黒木商事…?僕と一緒の名前だ」

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 20:18:35.83 ID:a/qbeV9/o

喪黒「あなたがもし、どーしても今の環境に耐えられなくなったら」

喪黒「そこを尋ねてごらんなさい」

喪黒「あなたのその心のスキマが、埋まる事をお約束致しますよ」

黒木「はぁ……」









20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 21:52:00.37 ID:a/qbeV9/o

―アパート―


ガチャ…バタン

黒木「ふぅ、4日ぶりに帰ってこれた……」

黒木「久しぶりにゆっくり寝れる」ゴロン

黒木「よーし、午後までゆっくり寝て、あとは……」

黒木「zzz……」







21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 21:52:32.14 ID:a/qbeV9/o







PiPiPiPi!


黒木「うわっ!」

黒木「な、何だ、会社から着信?まだ朝の8時だぞ……」

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 21:53:15.53 ID:a/qbeV9/o

ピッ

黒木「……はい」

課長「黒木くぅーん。お休みの所悪いんだがねぇ」

課長「今日、これから出勤できないかな?」

黒木「は?」

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 21:54:26.90 ID:a/qbeV9/o

課長「いやねぇ、ちょっとトラブルがあってさ。手が回んないんだよ」

黒木「え?いやしかし2週間ぶりの休みですから」

課長「もちろん、代休はつけるよ?」

黒木「この前もそう言って、結局まだ貰ってないんですけど」


課長「いいから、今すぐ来なさい。これは命令だ」

課長「全く。普通は休みなんて遠慮して取らないもんだろう。近頃の若い者は…」ブツッ

黒木「……」

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 21:55:43.12 ID:a/qbeV9/o

―街中―


黒木「何なんだよ、折角の休みなのに」

黒木「全然、疲れが取れた気がしない」

黒木「はぁ~、行きたくないなぁ」

黒木「どうせ、行ったら行ったでそのまま明日の1時2時まで……」カサ

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 21:56:44.03 ID:a/qbeV9/o

黒木(ん?ポケットの中に名刺?これは……)





喪黒「あなたがもし、どーしても今の環境に耐えられなくなったら」

喪黒「そこを尋ねてごらんなさい」

喪黒「あなたのその心のスキマが、埋まる事をお約束致しますよ」





黒木(……)

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 21:58:46.72 ID:a/qbeV9/o

―雑居ビル3階―


黒木「ここか。名刺にあった黒木商事は。何だか誰もいないみたいだけど」

黒木「ここに、一体何が……?」

黒木「……とりあえず、入ってみよう」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 22:08:32.60 ID:a/qbeV9/o

ガチャ

黒木「お邪魔しまーす……」


社員1「あ、おはようございます黒木社長!」

社員2「社長、この件なんですけど……」

社員3「社長、例の契約、本決まりになりました!」

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 22:11:03.32 ID:a/qbeV9/o

黒木「え?え?なにこれどういう事?」


社員1「どうしたんですか社長?」

社員2「どうかされましたか?」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 22:23:55.96 ID:a/qbeV9/o

黒木「僕が、社長……?」


社員1「ええ、そうですよ?黒木社長」

社員3「社長は冗談がお好きだなぁ」

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 22:24:46.84 ID:a/qbeV9/o

黒木(そ、そうか……。喪黒さんが昨日言ってたのは、こういう事だったのか!)


社員1「あ、銀行から融資の案内が届いてますよ」

社員2「この件、こうした方がコストカットに……」

社員3「はい、黒木商事です。あ、お世話になっております」

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 22:36:02.46 ID:a/qbeV9/o

社員1「社長?」

黒木「あ、ああ大丈夫。何でもない」

黒木「それより、仕事上で何かトラブルや困ってる事はないかな?」


社員1「いえ、順調です社長」

社員2「ええ、業績も延びてますし」

社員3「今のところ、特に何もありませんよ」

黒木「それならよろしい。……ん?」

PiPiPiPi……

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/08(木) 22:36:40.01 ID:a/qbeV9/o

ピッ

黒木「はい」

課長「黒木君!君は一体何をやっとるんだね」

課長「もう9時を過ぎて……」

黒木「……チッ、うるさいな」

課長「なに?」


黒木「ええ、わかりました。今すぐ行きますんで」

課長「おい、黒」

ピッ

37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 16:58:59.36 ID:GgSzeoPLo

―会社―


黒木「どうも、遅くなりました」

課長「全く、何をやっていたんだね黒木君」

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 16:59:38.78 ID:GgSzeoPLo

課長「まあいい、早速業務に……」

黒木「課長、これを」スゥ

課長「ん?何だねこれは」


課長「え?じ、辞表?黒木君、これは一体どういう事だね?」

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:00:29.33 ID:GgSzeoPLo

黒木「今日かぎりでここを辞めさせて頂きます」

課長「何だって?そんな、急に!」

黒木「こんな、人を使い潰す事しか考えてない会社なんてもうウンザリです!」

課長「す、少し落ち着きたまえ黒木君」

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:01:26.66 ID:GgSzeoPLo

黒木「僕は、もっと人が人らしく扱われる環境で」

黒木「あなた方を超える結果を出したいと思ってます」

課長「何を夢みたいな事を言ってるんだね」

黒木「それでは。これで失礼します」

課長「あ、黒木君、ちょっと待ちたまえ、黒木君!」








41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:03:02.74 ID:GgSzeoPLo

―黒木商事―


バタン

黒木「ふぅ……」


社員1「あ、お帰りなさい社長」

社員2「何か用事があるんでしたら、私達に仰ってくれればいいのに」

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:04:51.21 ID:GgSzeoPLo

黒木「あ、いやいいんだ」

黒木「さぁ、それより働くぞー!」


社員1「ええ、頑張りましょう!」

社員2「よーし、やるぞ!」

社員3「さぁ、張り切るぞー!」

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:07:23.69 ID:GgSzeoPLo

黒木(業務は、前の会社でやっていた事とほぼ一緒)カタカタ…

黒木(だから戸惑わずにやれる。けど……)カタカタ

黒木(た、楽しい……。自分のために働くのが、こんなにやりがいがあるなんて!)

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:08:55.33 ID:GgSzeoPLo

―夕方5時―


黒木「……ん?もうこんな時間か」


社員1「ええ、そうですね」

社員2「えーと、ここがこうで」カタカタ

社員3「さーて、この書類を郵送して……」

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:09:49.22 ID:GgSzeoPLo

黒木「みんな、もう帰る時間だぞ」


社員1「ええ。これが片付いたら帰ります」カタカタ

社員2「はい、もう少しで終わりますよ」カタカタ

社員3「お、もうそんな時間ですか」

46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:11:12.42 ID:GgSzeoPLo

黒木「業務時間は5時までと決まっている」

黒木「決められた時間内に、仕事は終わらせるようにな?」


社員1「あ、ハイ!すいません!」カタカタ

社員2「ひえっ、怒られちゃった」カタカタ

社員3「スケジュールの管理も仕事の内ですからね!」カタカタ







47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:12:28.03 ID:GgSzeoPLo

―1ヵ月後―


社員1「社長、今月の決済です」

黒木「おう、ごくろうさん」

48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:13:25.01 ID:GgSzeoPLo

黒木「うん、順調だな」

社員1「ええ、仕事は忙しいですが時間内で終わらせるよう工夫してますから」

社員2「能率的に仕事をやるノウハウも蓄積して来てますし」

社員3「疲れもないですから全力で働けます」

49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:14:51.14 ID:GgSzeoPLo

黒木「無理はするな。ただし、常に工夫は考えろ」

社員1「社長の口癖ですね」

社員2「ええ、そのお陰で仕事の効率がだいぶ上がりました」

社員3「仕事が早いっていうんでわが社の評判も上々です」

50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:17:22.25 ID:GgSzeoPLo

黒木「みんな、良く働頑張ってくれた。これはボーナスを弾まなきゃな」

黒木「さて、みんな明日は休みだな?」

黒木「じゃあ、今日は俺のおごりで飲みにいくぞー!」

社員1「はい!」

社員2「いやー、社長の会社は素晴らしい!」

社員3「こんなホワイト企業、めったにありませんよ」









51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:20:00.94 ID:GgSzeoPLo

―夜半、街中―


黒木「うぃ~、ヒック」

黒木「この上なく順調、順調……」

黒木「どうだ、社員に無茶苦茶な残業なんかさせなくたって」

黒木「ちゃんとやれば、結果なんか出せるんだ……ヒック」


喪黒「どうやら、うまく行ってるようですなぁ黒木さん」

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:21:17.59 ID:GgSzeoPLo

黒木「あ、喪黒さん!お久しぶりです!」

喪黒「私の紹介した会社はいかがですか?」

黒木「ええ、もう最高です!急に社長になったんで、最初はびっくりしましたが……」

喪黒「ホッホッホ、まあそうでしょうなぁ」

54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:23:06.00 ID:GgSzeoPLo

黒木「自分だったらああするのに、こうするのにって思ってた事が全部試せて」

黒木「それが上手く行ってるんですから、最高ですよ!」

喪黒「それは私も紹介した甲斐がありました」

黒木「これからも、もっともっと会社を大きくして……」

喪黒「ええ、夢を大きく持つのは大変結構な事です」

55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:24:24.22 ID:GgSzeoPLo

喪黒「ただし、忘れてはいけませんよ」

黒木「え?な、何がですか?」

喪黒「今、順調に行ってるのは」

喪黒「全てあなたについてきてくれている従業員のお陰だという事を」

黒木「え、ええ……」

58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:27:04.12 ID:GgSzeoPLo

喪黒「やがて、利益を追求するために従業員を酷使し始めて」

喪黒「結局はあなたも同じ穴のムジナでしたー、なんて事になったら」

喪黒「何もかも、失う事になりますからね?」

黒木「や、やだなぁ、そんな事あるわけないじゃありませんか」

59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/10(土) 17:27:46.68 ID:GgSzeoPLo

喪黒「それを聞いて安心しました。では、くれぐれも私の言った事を」

喪黒「お忘れにならないでくださいね?」

黒木「え、ええ」







65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:03:01.04 ID:QQ++U4jVo

―3日後―


黒木「みんな、今日もよく頑張ってくれた」


社員1「いえ、当然ですよ」

社員2「働き甲斐を持ってやってますから」

社員3「業績も好調です。じきに業界のトップ10に入る所まで来てますよ」

66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:04:31.70 ID:QQ++U4jVo

黒木「え?本当か?」


社員1「ええ。社長の経営方針がそれだけ素晴らしいんですよ」

社員2「環境がいいと、みんなの力がフルに発揮できますからね」

社員3「この調子でいけば、まだまだ延びますよ」

67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:05:43.98 ID:QQ++U4jVo

黒木(業界でトップ10か……)

黒木(前に働いてた会社、あそこは確か業界8位くらいだったな)

黒木(よーし、あと少し……。あと少しで追い抜けるぞ!)


社員1「それじゃ社長、お疲れ様でした」

社員2「また明日も宜しくお願いします」

社員3「さーて、帰ったらゆっくり休んで明日に備えるか」

68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:06:54.71 ID:QQ++U4jVo

黒木(もうちょっとだ、もうちょっと業績を伸ばせれば……)

社員1「あれ?社長は帰らないんですか?」

黒木「ん?あ、ああ。少しだけ残務の整理をしてからな。終わったら帰るよ」

社員1「そうですか。それじゃ、お先に失礼します」

ガチャ、バタン

69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:09:58.02 ID:QQ++U4jVo



黒木(……)


黒木(……)カタカタカタ……



70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:13:03.06 ID:QQ++U4jVo

―1週間後―


社員1「社長、今日もまた帰らないんですか?」

黒木「うん、あ、ああ。今軌道に乗り始めた所だからな、今のうちにやれるだけやっておかないと」

社員2「無理しすぎじゃありませんか?」

黒木「大丈夫だ。少しだけだから。君たちは帰っていいよ」

社員3「社長……」

71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:15:13.44 ID:QQ++U4jVo

社員1「……じゃあ、僕たちも社長に付き合いますよ!」

黒木「え?」

社員2「社長ばかり働かせるわけには行きませんよ」

社員3「社長の力になります!」

黒木「みんな……」

72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:16:07.81 ID:QQ++U4jVo

黒木「……すまない。残業代はちゃんと出すから」

社員1「そんな、気にする事ありませんよ社長」

社員2「会社のためですもの」

社員3「頑張りましょう!」






73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 22:18:26.10 ID:QQ++U4jVo

―数週間後―


黒木「みんな悪い、今日も残って貰っていいかな?」

黒木「無理して大きな仕事を3つも取ったから、どうしても手が回らなくて……」

社員1「え、ええ」

社員2「……社長、何だか人が変わりましたね」

社員3「まぁ、社長が言うなら付いて行きますけど」







74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 23:54:34.26 ID:QQ++U4jVo

―1ヵ月後―


黒木「何だ、この業績は!」

黒木「全然伸びてないじゃないか!」


社員1「し、しかし社長」

社員2「仕事が詰まりすぎて、とてもこなし切れません」

社員3「連日深夜まで働いてますから、ミスも増えて能率も落ちてますし」

76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 23:55:10.81 ID:QQ++U4jVo

黒木「口答えするな!」

黒木「業績が伸びなかった分の穴埋めで、残業代はカットだ」


社員1「そんな……」

社員2「僕たち、一生懸命頑張ってるんですよ?」

社員3「もっとペースを考えて、前みたいに着実に行きませんか?」

77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 23:56:35.11 ID:QQ++U4jVo

黒木「何を言っている。ついにやっと、大きな所から仕事を貰えたんだ」

黒木「これが上手く行けば、一気に業績アップが見込める」


社員1「ま、また仕事が増えるんですか?」

社員2「もう限界ですよ」

社員3「これ以上忙しくなるのは、さすがに……」

78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 23:57:25.84 ID:QQ++U4jVo

黒木「甘えたことを言うな!」

黒木「みんな、今週の休みは返上するように」

黒木「ったく。誰のお陰で給料貰えると思ってるんだ」カタカタカタ……


社員1「……」

社員2「……」

社員3「……」







79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 23:58:45.50 ID:QQ++U4jVo

―帰宅途中―


黒木「全く、どいつもこいつも」

黒木「あとちょっとで前の会社の連中の鼻を明かしてやれるってのに」

黒木「気合が足りないんだ、気合が」

喪黒「黒木さん」

80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:00:17.02 ID:WNBqoP0eo

黒木「うわ!も、喪黒さん?」

喪黒「あなたは、私の言った事を守りませんでしたね?」

黒木「え……?」

81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:00:49.13 ID:WNBqoP0eo

喪黒「あなたは従業員を」

喪黒「休みを返上させ深夜までこき使い、おまけに残業代も払わずに」

喪黒「まるで、人を人とも思わないようなひどい扱いをしてますね?」

黒木「う……」

82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:11:35.19 ID:WNBqoP0eo

黒木「し、仕方ないじゃありませんか。仕事なんですから」

喪黒「あなたの会社が上手く行っていたのも」

喪黒「全ては、従業員が一人一人知恵をしぼり、能率的に働いてくれたお陰なのです」


喪黒「しかし、あなたはそれに感謝するどころか」

喪黒「目先の利益のために、皆さんを使い潰すようなマネをしました」

黒木「け、けど……」

83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:14:19.84 ID:WNBqoP0eo

喪黒「従業員は、物ではないんです」

喪黒「それを忘れたあなたには、罰を受けてもらいます」ビシ

黒木「う……」

84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:17:07.41 ID:WNBqoP0eo

喪黒「そんなに仕事がお好きなら……」

喪黒「心ゆくまで、仕事漬けになりなさい!」



「ドーーーーーーン!!!!」



黒木「わぁぁぁーーーーっ!?」











85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:18:07.26 ID:WNBqoP0eo

―自宅―


黒木「……う?」

黒木「あれ?昨日、確か……」

黒木「いけね、こんな時間だ!」

86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:19:31.89 ID:WNBqoP0eo

―黒木商事―

バタン

黒木「みんな、遅くなっ……」


黒木「あれ?誰もいない?」

黒木「ん?何だこりゃ」


黒木「えっ!?じ、辞表?」

87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:20:44.43 ID:WNBqoP0eo

黒木「一体、これはどういう……」

PiPiPiPi……

黒木「おっと、電話だ」

ガチャ

黒木「はい、黒木商事です。あ、お世話になっております。あ、その件は今日中に……」

PiPiPiPi……

88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:21:36.03 ID:WNBqoP0eo

黒木「え?ちょ、ちょっとお待ちください、はい、黒木商事です。あ、どうもこの前は……」

PiPiPiPi……

黒木「ま、また?すいません少々お待ちください、はい黒木商事……」

PiPiPiPi……

PiPiPiPi……

89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:22:07.87 ID:WNBqoP0eo

黒木「ちょ、ちょっと待って」

PiPiPiPi……

PiPiPiPi……

PiPiPiPi……

黒木「待ってくれ……!」

PiPiPiPi……

PiPiPiPi……

PiPiPiPi……

90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:22:43.29 ID:WNBqoP0eo

黒木「だ……誰かーーーー!」



PiPiPiPi……



PiPiPiPi……



PiPiPiPi……









91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:25:44.00 ID:WNBqoP0eo

喪黒「今日も忙しそうですねぇ黒木さん」

喪黒「やれやれ、あんなに焦らないでじっくり会社を育てていけば」

喪黒「いつかは、業界でも上位を目指せたでしょうに」

92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:26:45.79 ID:WNBqoP0eo

喪黒「それにしても、あんなに仕事が沢山あるのに従業員がだーれもいないなら」

喪黒「お好きな残業も、さぞかしたっぷりできるでしょう」

喪黒「……最も」

93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/28(水) 00:27:22.50 ID:WNBqoP0eo

喪黒「会社が潰れるより前に」

喪黒「黒木さんの方が、先に潰れてしまうかも知れませんねぇ~」



「オーッホッホッホッホ……」



終り