1: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:47:36.46 ID:wxFeitSX0
「未来……ちゅーの練習しよ」
翼がそう言うとスッと目を閉じる。
えっ!? 私がする側なの!?
翼って改めてみるとまつ毛が長くて顔ちっちゃくて
ほんとにきれいだなって思う。
いやいやそんなこと考えている場合じゃない。
内心汗をダラダラとかきながら何でこんなことになってしまったか数分前までのことを思い出していた。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1501346856
翼がそう言うとスッと目を閉じる。
えっ!? 私がする側なの!?
翼って改めてみるとまつ毛が長くて顔ちっちゃくて
ほんとにきれいだなって思う。
いやいやそんなこと考えている場合じゃない。
内心汗をダラダラとかきながら何でこんなことになってしまったか数分前までのことを思い出していた。
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引用元: ・翼「練習しよ未来」【ミリマス】
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2: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:48:05.69 ID:wxFeitSX0
私が来たとき、事務所いたのは翼だけだった。
「あれ、今翼だけなんだ?」
「そうだよーもうすぐみんな帰ってくると思うからおしゃべりでもして待っていよ」
「ん、そうだね」
「あれ、今翼だけなんだ?」
「そうだよーもうすぐみんな帰ってくると思うからおしゃべりでもして待っていよ」
「ん、そうだね」
3: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:49:56.14 ID:wxFeitSX0
翼とのおしゃべりは好きだ。
私よりもずっと流行りものに詳しくってあの服屋さんがかわいいだとかあのスイーツ店はおいしいだとかいろいろ教えてくれる。
翼と話すときは基本的に聞き役になるんだけど、それでもホントーに楽しい。
ちょっとだけ可笑しいのが服屋さんに詳しいのに私服が結局いつもあんまり変わらなかったり、スイーツをたくさん知っていても感想はあまくて~おいしくて~っていつも同じだったりすること。
やっぱりおんなじ中学生の女の子なんだよねって感じられて、なんていうのかな……近くの距離にいられることがうれしかったりする。
翼はあんまり楽しそうに話すもんだからこっちもどんどん楽しくなる。
私よりもずっと流行りものに詳しくってあの服屋さんがかわいいだとかあのスイーツ店はおいしいだとかいろいろ教えてくれる。
翼と話すときは基本的に聞き役になるんだけど、それでもホントーに楽しい。
ちょっとだけ可笑しいのが服屋さんに詳しいのに私服が結局いつもあんまり変わらなかったり、スイーツをたくさん知っていても感想はあまくて~おいしくて~っていつも同じだったりすること。
やっぱりおんなじ中学生の女の子なんだよねって感じられて、なんていうのかな……近くの距離にいられることがうれしかったりする。
翼はあんまり楽しそうに話すもんだからこっちもどんどん楽しくなる。
4: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:50:51.14 ID:wxFeitSX0
ただ今日はいつもと会話の流れが違ってきてて。
「実はわたしドラマのヒロイン役に抜擢されました~」
「おお~」
翼が両手をピースサインにしながら報告してきた。
おお~とかいいつつ拍手をする。
ちょっと照れくさそうにしながら頭をかく翼。
「で、どんなドラマなの?」
「ちょっとイケてなかった女の子にふとモテ期がやってきてモテモテのハッピーライフを過ごす話~」
少女漫画かな? そういう話ってときどきあるよね。
「モテモテのハッピーライフ……?」
「そうだよー! ちょっと意地悪だけど実は優しい俺様系とか~お家がお金持ちでしかもとっても頭が良いメガネ男子とかが出てきて、しかもイトコが担任の先生やってて~みんなにモテてハッピーライフになるの」
「ふーん……」
「実はわたしドラマのヒロイン役に抜擢されました~」
「おお~」
翼が両手をピースサインにしながら報告してきた。
おお~とかいいつつ拍手をする。
ちょっと照れくさそうにしながら頭をかく翼。
「で、どんなドラマなの?」
「ちょっとイケてなかった女の子にふとモテ期がやってきてモテモテのハッピーライフを過ごす話~」
少女漫画かな? そういう話ってときどきあるよね。
「モテモテのハッピーライフ……?」
「そうだよー! ちょっと意地悪だけど実は優しい俺様系とか~お家がお金持ちでしかもとっても頭が良いメガネ男子とかが出てきて、しかもイトコが担任の先生やってて~みんなにモテてハッピーライフになるの」
「ふーん……」
5: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:51:38.58 ID:wxFeitSX0
なんとなく相槌をうつと翼は感想を求めてくる。
「どう? どう?」
「あはは……まぁ……よかったよね」
苦笑いで返す私。それでも翼はうれしいそうに「でしょー!」と
なんだこれ。あんまりうれしくない。翼にぴったりの役だし、翼なら上手に演じられそうだし、この仕事をとってきたプロデューサーさんもすごいと思う。
でも……やっぱりうれしくない。
だからちょっと意地悪な言い方をしてしまった。
「どう? どう?」
「あはは……まぁ……よかったよね」
苦笑いで返す私。それでも翼はうれしいそうに「でしょー!」と
なんだこれ。あんまりうれしくない。翼にぴったりの役だし、翼なら上手に演じられそうだし、この仕事をとってきたプロデューサーさんもすごいと思う。
でも……やっぱりうれしくない。
だからちょっと意地悪な言い方をしてしまった。
6: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:52:23.20 ID:wxFeitSX0
「翼ってそんなにモテモテになりたいんだ?」
「そうだよー。よく言ってるでしょ」
「じゃあ彼氏つくってハッピーライフを過ごしたら? なんて……」
「彼氏?」
私から発せられたちょっと珍しい単語に首をかしげる翼。
なんだかうれしくない気持ちの正体が分かった。翼の言うハッピーライフの中に『今』が入っていないんだ。それでモテたいモテたいって言って私の知らないところに行こうとしている。
私の生活はハッピーライフとまではいかなくても、みんながいて、頼れる静香ちゃんがいて、そして翼がいて、アイドルができてそこそこ充実してるって思ってる。
それなのに翼はハッピーライフとやらを望んでいる。今は違うってことかな。
「そうだよー。よく言ってるでしょ」
「じゃあ彼氏つくってハッピーライフを過ごしたら? なんて……」
「彼氏?」
私から発せられたちょっと珍しい単語に首をかしげる翼。
なんだかうれしくない気持ちの正体が分かった。翼の言うハッピーライフの中に『今』が入っていないんだ。それでモテたいモテたいって言って私の知らないところに行こうとしている。
私の生活はハッピーライフとまではいかなくても、みんながいて、頼れる静香ちゃんがいて、そして翼がいて、アイドルができてそこそこ充実してるって思ってる。
それなのに翼はハッピーライフとやらを望んでいる。今は違うってことかな。
7: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:53:13.53 ID:wxFeitSX0
「未来もそういうことに興味を持つお年頃なんだね」
翼が茶化すように言ってくる……というよりモロに茶化している。
「そういうのじゃないってば」
「ふーん……。じゃあ未来は彼氏を作るとしたらどんな人がいい?」
「えー分かんないよ、そんなの」
「例えばの話だから気楽にさー」
「うーん、優しくて……いつも私を助けてくれたり……したらうれしいかな?」
「え? プロデューサーさんのこと?」
「ちーがーうーよー!」
「そっかープロデューサーさんは頼りにならないんだー」
「いや……なる……と思うけど」
「じゃあプロデューサーさんだー」
「翼ってば―!」
言い返しながら翼の体を揺するとイタズラっぽい顔をしてニシシと笑い返してくる。
翼が茶化すように言ってくる……というよりモロに茶化している。
「そういうのじゃないってば」
「ふーん……。じゃあ未来は彼氏を作るとしたらどんな人がいい?」
「えー分かんないよ、そんなの」
「例えばの話だから気楽にさー」
「うーん、優しくて……いつも私を助けてくれたり……したらうれしいかな?」
「え? プロデューサーさんのこと?」
「ちーがーうーよー!」
「そっかープロデューサーさんは頼りにならないんだー」
「いや……なる……と思うけど」
「じゃあプロデューサーさんだー」
「翼ってば―!」
言い返しながら翼の体を揺するとイタズラっぽい顔をしてニシシと笑い返してくる。
8: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:54:01.92 ID:wxFeitSX0
「そっかー未来はプロデューサーさんが……」
「それはもういいってば! ……じゃあ翼はどんな男の子にモテモテになりたいの?」
「んー。たくさん!」
「……たくさん?」
「そう! 例えば……朝下駄箱を開けるとわたし宛てのラブレターがバサバサーって落ちてきて」
「えー下駄箱に入ってるってちょっとやだ。手渡しされたい」
「未来が乙女なのは分かったからー」
「むぅ……」
ちょっとだけ口をとがらせて翼をにらむと、翼はまた楽しそうに笑ってそれでねーと続ける。
「それはもういいってば! ……じゃあ翼はどんな男の子にモテモテになりたいの?」
「んー。たくさん!」
「……たくさん?」
「そう! 例えば……朝下駄箱を開けるとわたし宛てのラブレターがバサバサーって落ちてきて」
「えー下駄箱に入ってるってちょっとやだ。手渡しされたい」
「未来が乙女なのは分かったからー」
「むぅ……」
ちょっとだけ口をとがらせて翼をにらむと、翼はまた楽しそうに笑ってそれでねーと続ける。
9: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:55:36.42 ID:wxFeitSX0
「廊下にはビーっと一番後ろが見えないくらいの長蛇の列が並んでわたしに告白してくるの」
「へぇ……すごい」
「でしょ? でも言うんだ。ごめんなさーい、はい次の方―、ごめんなさーい、はい次の方―」
「病院の診察じゃないんだから」
「え? こんな病院ある?」
「ないよっ例えだよ!」
「分かってるって。それで下校時刻になったら親衛隊が来て危険から身を守ってくれるんだ」
「端からみれば翼と親衛隊の存在が危険な気がするけど……」
「そうかなー。でもこれがわたしの考えるハッピーライフ!」
「へぇ……すごい」
「でしょ? でも言うんだ。ごめんなさーい、はい次の方―、ごめんなさーい、はい次の方―」
「病院の診察じゃないんだから」
「え? こんな病院ある?」
「ないよっ例えだよ!」
「分かってるって。それで下校時刻になったら親衛隊が来て危険から身を守ってくれるんだ」
「端からみれば翼と親衛隊の存在が危険な気がするけど……」
「そうかなー。でもこれがわたしの考えるハッピーライフ!」
10: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:56:16.33 ID:wxFeitSX0
翼が両手を広げて宣言してくる。
だけど私は首を捻りながら
「そんなのあるかなー。マンガでもなさそうだよ」
「ん~未来っ。良い例! マンガの世界って読んでる人から見て、楽しー!ってことでしょ? ならマンガでありそうなことを起こしていけば……!」
あはは……と苦笑い。でも翼ならなんでもやっちゃいそうだからなー。なんかそういうパワーがある。
そして翼は意気揚々と告げる。
「そう!現実ではありえないことを巻き起こしていくんだよっ。絶対に……絶対に楽しい」
「でもそういうことならドラマの仕事は翼にぴったりかも」
だけど私は首を捻りながら
「そんなのあるかなー。マンガでもなさそうだよ」
「ん~未来っ。良い例! マンガの世界って読んでる人から見て、楽しー!ってことでしょ? ならマンガでありそうなことを起こしていけば……!」
あはは……と苦笑い。でも翼ならなんでもやっちゃいそうだからなー。なんかそういうパワーがある。
そして翼は意気揚々と告げる。
「そう!現実ではありえないことを巻き起こしていくんだよっ。絶対に……絶対に楽しい」
「でもそういうことならドラマの仕事は翼にぴったりかも」
11: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:57:22.10 ID:wxFeitSX0
「……でもドラマの仕事をやるのにちょっと困ったことがあるんだ」
ソファに座って足をバタバタさせながら翼はそう言う。翼が困るなんてこれまた珍しい。
「どうしたの?」
「じつはドラマの最終回でキスシーンがあって」
「……ほわ」
なんか変な声がでてしまった。口をポカンと開けてしまう。
「未来……アイドルがそんな顔しちゃダメだよ?」
そんな変な顔してるかな? 首をぶんぶんと振って表情を元に戻して、ポンと手を打ちながら
「あー分かった! キスと言ってもお魚の」
「……分かってるでしょ未来。ちょっと困ったときおバカな振りして流すのやめた方がいいと思うよ」
ソファに座って足をバタバタさせながら翼はそう言う。翼が困るなんてこれまた珍しい。
「どうしたの?」
「じつはドラマの最終回でキスシーンがあって」
「……ほわ」
なんか変な声がでてしまった。口をポカンと開けてしまう。
「未来……アイドルがそんな顔しちゃダメだよ?」
そんな変な顔してるかな? 首をぶんぶんと振って表情を元に戻して、ポンと手を打ちながら
「あー分かった! キスと言ってもお魚の」
「……分かってるでしょ未来。ちょっと困ったときおバカな振りして流すのやめた方がいいと思うよ」
12: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 01:58:46.45 ID:wxFeitSX0
……見抜かれていたんだ。翼って急にスルドイこというからちょっとアレなんだよね。
「でもあれでしょ? こう……ホントにキスするんじゃなくて真似だけみたいな」
「それが監督さんがかなり演技にこだわる人みたいでーそれは許してくれなさそうなんだよね」
「じゃあホントにするの?」
「うん」
かるーく言う翼。
ちょっと戸惑いを隠せない。
「でもあれでしょ? こう……ホントにキスするんじゃなくて真似だけみたいな」
「それが監督さんがかなり演技にこだわる人みたいでーそれは許してくれなさそうなんだよね」
「じゃあホントにするの?」
「うん」
かるーく言う翼。
ちょっと戸惑いを隠せない。
13: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:00:02.61 ID:wxFeitSX0
だからか変なことを聞いてしまった。
「……じゃあキスってどんなキス?」
「どんなって?」
「ほら……こう……いろいろ種類がある……よね?」
「へー。未来はどんないろんなキスを知ってるんだね~」
いじわるそうにムフフと笑う翼。顔が熱くなることを自覚しながら一生懸命反論する。
「しゅ、種類と言っても言葉のあれで……えー、あーもう! わかんない!」
「いーよいーよ。そういうことにしたげる。全く未来はおませさんだなぁ♪」
「違うってば……それで! 翼はいいの?」
「うん。これもお仕事だから」
お仕事って……レッスンとかいつもやる気なさそうなのに!
「……じゃあキスってどんなキス?」
「どんなって?」
「ほら……こう……いろいろ種類がある……よね?」
「へー。未来はどんないろんなキスを知ってるんだね~」
いじわるそうにムフフと笑う翼。顔が熱くなることを自覚しながら一生懸命反論する。
「しゅ、種類と言っても言葉のあれで……えー、あーもう! わかんない!」
「いーよいーよ。そういうことにしたげる。全く未来はおませさんだなぁ♪」
「違うってば……それで! 翼はいいの?」
「うん。これもお仕事だから」
お仕事って……レッスンとかいつもやる気なさそうなのに!
14: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:01:02.90 ID:wxFeitSX0
「そういえば翼は今までちゅーしたことある?」
何気ない感じを装って話題を切り出す。
どうしよ。キスって言おうとしたけどちゅーって言っちゃった。子どもっぽいかも
またからかわれると思ったけど、翼は気にも留めない感じで
「んー。ないなぁ」
「ということはファーストキスなんだ」
「そうなるね」
「いいの?」
「うん。さっきも言ったけどお仕事だし」
「……」
ふーん。何かアレだ。やっぱり……いいのかな? って思う。
何気ない感じを装って話題を切り出す。
どうしよ。キスって言おうとしたけどちゅーって言っちゃった。子どもっぽいかも
またからかわれると思ったけど、翼は気にも留めない感じで
「んー。ないなぁ」
「ということはファーストキスなんだ」
「そうなるね」
「いいの?」
「うん。さっきも言ったけどお仕事だし」
「……」
ふーん。何かアレだ。やっぱり……いいのかな? って思う。
15: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:01:59.27 ID:wxFeitSX0
「未来はファースト、とか初、とかけっこう気にするタイプなんだ」
「……そりゃあ」
「やっぱり乙女だ♪」
なんか悔しいけどなんにも動じてない翼もちょっと変だと思う。
「……だからといって」
「でも不安なんだよねー。ちゅーしたことないから相手の俳優さんに迷惑かけちゃうかもって」
「はあ……」
「だからね? わたしとちゅーの練習してくれない?」
「……はえ?」
「……そりゃあ」
「やっぱり乙女だ♪」
なんか悔しいけどなんにも動じてない翼もちょっと変だと思う。
「……だからといって」
「でも不安なんだよねー。ちゅーしたことないから相手の俳優さんに迷惑かけちゃうかもって」
「はあ……」
「だからね? わたしとちゅーの練習してくれない?」
「……はえ?」
16: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:03:03.60 ID:wxFeitSX0
そうして冒頭に戻るというワケ。
私が戸惑っていると翼が自分の唇を指さしながら
「ほーらほーら、ちゅー」
なんて言ってくる。
蜂が甘い蜜に誘われるように唇に視線がいってしまう。
それでも首をふって雑念をとっぱらって強めに言う。
「ダメだよ!」
翼も瞳を開けきょとんとしながら
「そうかな?」
「やっぱりそういうのは恋人同士でするもので……」
「じゃあ恋人同士になっちゃえばいいじゃん」
「えっ」
「じゃあ今から10分間わたしと未来は恋人です」
「え、ええ!?」
ハイッと手を叩く翼。役に入る合図だろうか。
私が戸惑っていると翼が自分の唇を指さしながら
「ほーらほーら、ちゅー」
なんて言ってくる。
蜂が甘い蜜に誘われるように唇に視線がいってしまう。
それでも首をふって雑念をとっぱらって強めに言う。
「ダメだよ!」
翼も瞳を開けきょとんとしながら
「そうかな?」
「やっぱりそういうのは恋人同士でするもので……」
「じゃあ恋人同士になっちゃえばいいじゃん」
「えっ」
「じゃあ今から10分間わたしと未来は恋人です」
「え、ええ!?」
ハイッと手を叩く翼。役に入る合図だろうか。
17: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:04:10.63 ID:wxFeitSX0
「ねえ未来?」
「な、何かな?」
さっきまでと変わって潤んだ視線と甘えた声で私を呼んでくる。
恋人モードに入ってるんだろう。
「ちゅー、しよ?」
「ええっと……」
「ダメぇ?」
「ダメじゃ……ない?」
どうしよ。ダメじゃないとか言ってしまった。これこそ翼の魔力。女の私でもおかしくなる。
「よかった」
さりげない感じを太ももを撫でてくる。ゾクゾクっときてしまった。
「な、何かな?」
さっきまでと変わって潤んだ視線と甘えた声で私を呼んでくる。
恋人モードに入ってるんだろう。
「ちゅー、しよ?」
「ええっと……」
「ダメぇ?」
「ダメじゃ……ない?」
どうしよ。ダメじゃないとか言ってしまった。これこそ翼の魔力。女の私でもおかしくなる。
「よかった」
さりげない感じを太ももを撫でてくる。ゾクゾクっときてしまった。
18: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:06:02.60 ID:wxFeitSX0
それでも何とか反論する。
「そのほら……やっぱり最初は段階的に……ね。手をつないだりとかハグとか」
「両方したことあるでしょ?」
諭すように言ってくる。たしかにダンスで手をつないだり、ライブ終わったときにお疲れーってハグしたことあるけど、そういうのじゃないよね!?
「あっわかった」
翼はふと席を立ち事務所の照明を消した。
「これで大丈夫だよね?」
「うー……」
予想外に予想外が重なって全然動けない。
照明を消しても完全に真っ暗にはならず、翼がだんだん迫ってくるのがなんとなくわかる。
翼はそっと両手を私の首の後ろに回した。
「未来は目をつぶってるだけでいいよ。あとはわたしに任せて」
「んっ」
目をつぶってしまう私。もしかして私って流されやすいタイプだったのかもしれない。
「そのほら……やっぱり最初は段階的に……ね。手をつないだりとかハグとか」
「両方したことあるでしょ?」
諭すように言ってくる。たしかにダンスで手をつないだり、ライブ終わったときにお疲れーってハグしたことあるけど、そういうのじゃないよね!?
「あっわかった」
翼はふと席を立ち事務所の照明を消した。
「これで大丈夫だよね?」
「うー……」
予想外に予想外が重なって全然動けない。
照明を消しても完全に真っ暗にはならず、翼がだんだん迫ってくるのがなんとなくわかる。
翼はそっと両手を私の首の後ろに回した。
「未来は目をつぶってるだけでいいよ。あとはわたしに任せて」
「んっ」
目をつぶってしまう私。もしかして私って流されやすいタイプだったのかもしれない。
19: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:07:42.19 ID:wxFeitSX0
そして……
「えいっ」
おでこにコツンとした感覚。
これってデコピンだよね……?
ちょっとヒリヒリするおでこを押さえていると、翼はいつの間にか電気をつけて
「どお? ドキドキしたでしょ」
なんて楽しそうに言ってくる。
「えいっ」
おでこにコツンとした感覚。
これってデコピンだよね……?
ちょっとヒリヒリするおでこを押さえていると、翼はいつの間にか電気をつけて
「どお? ドキドキしたでしょ」
なんて楽しそうに言ってくる。
20: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:08:54.52 ID:wxFeitSX0
「翼ぁ何でこんなことぉ……?」
涙目で訴えると翼は思いがけない返事をしてきた。
「だってさー未来ってズルいんだもん」
「ズルい?」
「そうだよ? だってちょっと大人っぽい話するとすぐ『私には分からないなー』とか言って逃げちゃう……もっと未来のこと知りたいのに」
口をとがらせながら言う翼。
「……知りたい?」
「そうだよー。だからドラマ出演ってのもウソ、どうしてもキスの話に持っていきたくて」
両手をパッと広げてへらへらしながらそんなことを言う。
涙目で訴えると翼は思いがけない返事をしてきた。
「だってさー未来ってズルいんだもん」
「ズルい?」
「そうだよ? だってちょっと大人っぽい話するとすぐ『私には分からないなー』とか言って逃げちゃう……もっと未来のこと知りたいのに」
口をとがらせながら言う翼。
「……知りたい?」
「そうだよー。だからドラマ出演ってのもウソ、どうしてもキスの話に持っていきたくて」
両手をパッと広げてへらへらしながらそんなことを言う。
21: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:10:09.42 ID:wxFeitSX0
……なんだが無性に翼に仕返したくなった。いつもからかわれてばっかりだもん。
だから……
「ごめんね。みら――んぐっ!」
無理やり唇で唇をふさいでやる。
ちょっとでも私をその気にさせたバツだ。
少女漫画みたいに唇がやわらかくてだとかレモンの味に似てるなんてロマンチックなことは思わなかったけど、ああ唇が当たったなというのは何となく分かった。
だから……
「ごめんね。みら――んぐっ!」
無理やり唇で唇をふさいでやる。
ちょっとでも私をその気にさせたバツだ。
少女漫画みたいに唇がやわらかくてだとかレモンの味に似てるなんてロマンチックなことは思わなかったけど、ああ唇が当たったなというのは何となく分かった。
22: ◆z80pHM8khRJd 2017/07/30(日) 02:11:51.15 ID:wxFeitSX0
顔を離すと翼は目をぱちくりとさせたあと徐々に顔を赤らめていく。
いい気味だ。私はくるりと背を向けて
「ちょっとは私のこと分かったよね? 次も変な話したらちゅーするから」
なんて自分でもわけの分からない捨て台詞を残し、さっさと給湯室に逃げ込むのだった。
……何であんなことしたんだろうと顔を手で覆って座り込んじゃったのは言うまでもない。
おわり
いい気味だ。私はくるりと背を向けて
「ちょっとは私のこと分かったよね? 次も変な話したらちゅーするから」
なんて自分でもわけの分からない捨て台詞を残し、さっさと給湯室に逃げ込むのだった。
……何であんなことしたんだろうと顔を手で覆って座り込んじゃったのは言うまでもない。
おわり
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