1: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:47:06.52 ID:slrjrDJf0
~放課後

絵里「ことり!」

ことり「あ、絵里ちゃんどうしたの?」

絵里「…今日何の日か分かる?」

ことり「……知ってるよ、知ってて当たり前だよ」

絵里「そう…ならいいけど…」

絵里「ねぇあの言葉の意味…分かる?」

ことり「ううん…全然分からないよ…」

『一年経ったら、雨の季節に戻って…くるよ…!』

絵里「……幽霊になって戻ってくるなんてやめてよ…?」

ことり「あはは…はは…ははっ…」

絵里「今日で一年…よ?」

ことり「うん…」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1505220426

引用元: ことり「花になろう」 


2: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:47:46.02 ID:slrjrDJf0
絵里「みんなどうだった?気にしてた?」

ことり「ううん、みんなその話には触れなかった」

ことり「多分触れたくないんだと思う…」

絵里「…まぁそうよね」

絵里「希が言ってたのよ」

希「雨の季節にして今日、奇跡が起きる!」

希「ってカードが告げてるんや!!」

絵里「ってね…」

絵里「って、え?希?!」

希「今日で一年、だけどそんな暗い顔してちゃあ穂乃果ちゃんも悲しむよ?」

希「分かってても笑顔でいなきゃ」

ことり「そう…だよね!」

ことり「……もういくね!」ニコッ

ダダッ

絵里「…あんまり無理させても穂乃果は悲しむわよ?」

3: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:48:38.98 ID:slrjrDJf0
希「あはは…ことりちゃんは今でもはち切れんとばかりに溜め込んでるからまずいことしたかもね…」

絵里「穂乃果が死んで一年…か」

絵里「穂乃果が生きてたら今頃どうしてたのでしょうね?」

希「…きっと破天荒起こしてたんやろうなぁ」

絵里「ふふふ、そうね」

タッタッタッ

ことり「はぁ……」

ことり(穂乃果ちゃんが死んで一年が経った)

ことり(穂乃果ちゃんは病気で死んだ、当時の私はどうすることも出来なかった)

ことり(酷く重い病気でお医者さんもただ黙って首を横に振ってたのを今でも鮮明に覚えてる)


ことり(そんな頭に焼き付く記憶が怖くて仕方が無かった)


ことり(振り切れない絶望感、何を犠牲にしても欲しくなった恋しすぎる日常、どうにもできない過酷な未来…あの時を思い出すとそんなものが一緒にやってくる)

ことり(だから穂乃果ちゃんを記憶の片隅に置いてた、思い出さないように)

ことり(大事な人だけどそれだけ失った時の記憶は忌々しいものだったから)

4: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:49:40.58 ID:slrjrDJf0
ことり「……!」フルフル

ことり「いけないいけない!ことりがしっかりしてないと穂乃果ちゃんが悲しんじゃう!」

ことり(穂乃果ちゃんだってことりが悲しむことなんて望んでないはずだから、今日も“ことりらしく”していかなきゃ)

ことり「…あの言葉」


『一年経ったら、雨の季節に戻って…くるよ…!』


ことり「…なんなんだろう」

ことり(絵里ちゃんも言ってたあの言葉)

ことり(穂乃果ちゃんが死ぬ間際にことりの手を握って言ったんだ)

ことり(悪あがきだったのかな、穂乃果ちゃんが死んだ今じゃ答えなんて分からないないよ)

ことり「……」

ことり(そして穂乃果ちゃんが死んでから一年、今は丁度梅雨で雨の季節なんだ)

ことり(…その答えがそろそろ分かってもいいと思うんだ)


ことり「穂乃果ちゃん…」



5: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:50:56.53 ID:slrjrDJf0
~帰り道

ことり「るん♪るんるるん♪」

ことり「マカロン♪アルパカさん♪もふもふ♪」

ことり「あ、そうだ穂乃果ちゃんの為にも神社でお祈りしとこう」

ポツ…ポツポツ…

ことり「ひゃっ…今雨はないよぉ…」

ことり(鼻先にポツンと落ちた雨粒)

ことり(梅雨だし雨が突然降ってもおかしくないけど急すぎる雨だった)

ザーザーザーザー…

ことり「はぁ…近くに神社があって運よく雨宿り出来たけど…」

ことり「まだ帰れそうにないかな…?」

6: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:52:10.37 ID:slrjrDJf0
ことり「あ、そうだお祈りしなきゃ」

ことり「……濡れるの承知でダッシュ!」ダッ

タッタッタッ

ことり「うひゃあ…結構濡れた…」

ことり「と、取り合えずお賽銭だね!」

チャリン…パン…パン!

ことり「………」

ことり「…うん、これで穂乃果ちゃんも安心だね」


「隣、いいですか?」


ことり「あ、は…い…?」

7: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:53:35.87 ID:slrjrDJf0



「こんなところで会うなんて奇遇だね」ニコッ



ことり「ほ、穂乃果ちゃん?!」



「ちょっと雨宿りしようか」

ことり「う、うん…」

ことり(突然横から聞こえた声、その声はことりを照らして導いてくれる人の声だった)


ことり(私を変えてくれたかけがえのない人、私を永遠に照らしてくれるはずだった太陽の声)


グイッ

ことり「いたいっ…」

ことり(夢だと思ってほっぺをつねった、でも夢なんかじゃなかった)

ことり(今見てる夢みたいな景色が夢じゃないってことりのほっぺが言ってるんだ)

8: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:54:55.20 ID:slrjrDJf0
ことり「…あ、あの」

「ん?どうしたの?」

ことり「穂乃果ちゃん…だよね?」

「うん!そうだよ!」

ことり「…ホントに?」

「ホント!」

ことり「……」

ことり(確かにことりが見てるのは穂乃果ちゃんなんだろうけどそれでも信じられなかった)

ことり(だって死んだ人がここにいるんだよ?ことりは穂乃果ちゃんが死んだのをこの目で見たんだよ?)


ことり(それなのに今穂乃果ちゃんはことりの前にいる)


ことり(意味…わからないよ…)

9: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:56:17.81 ID:slrjrDJf0
ことり「ホント…?」

「もーどうしたのさーいつものことりちゃんらしくないよ?」

ことり「!」

ことり「い、いつもことりって…」

「何言ってるの?みんなに優しさを振りまくことりちゃんのことじゃん!」

ことり「う、うーん…」

ことり「…ホントに穂乃果ちゃん…?」

「もー!私は穂乃果だって!」


穂乃果「正真正銘!ことりちゃんと一緒にいた高坂穂乃果だよっ!!」


ことり「…!」

ことり(穂乃果ちゃんだと思う人が放った穂乃果だよっの言葉、前に聞いた時とそっくりだった)

ことり(中学の時何回、何十回と聞いたあの時とそっくりだったんだ)

10: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:58:06.47 ID:slrjrDJf0
ことり「穂乃果ちゃん…穂乃果ちゃんっ!」

ギューッ!

穂乃果「わーあはは苦しいよことりちゃーん」

ことり「なんで…なんで死んじゃったの…!」

ことり「私寂しくて…!寂しくて…!!」

穂乃果「…ごめんね、ことりちゃん」

ことり「うわああああん穂乃果ちゃあぁん……!」ギューッ

ことり(その時はいっぱい泣いた)

ことり(ことりが触れてたのは幻覚とか幻とかそんなものじゃない、確かな感触もあったし“温もり”だってあった)

ことり(どうして?何故?という気持ちはあってもその時は“また”穂乃果ちゃんに出逢えた嬉しさが心の底から溢れ出てた)

ことり(例えこの出逢いが偽物だとしてもことりはそれをかけがえのない出逢いと捉えよう)


ことり(きっとこの出逢いは人生で一番幸せな出来事だっただろうから…)


ことり「ふぇええええん…穂乃果ちゃあん…」

穂乃果「よしよし私はここにいるよー」ナデナデ

ことり(泣き始めてなお時間が経っても涙は枯れなかった)

ことり(穂乃果ちゃんに情けない声をずっと出してたと思う)

11: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 21:59:18.95 ID:slrjrDJf0
穂乃果「よしよし私はここにいるからもう泣かない、わかった?」

ことり「う、うん…」グスンッ

ザーザーザー…

穂乃果「雨、止まないね」

ことり「…梅雨だから」

穂乃果「そうだよね、梅雨だもんね」

ザーザーザー…

穂乃果「ことりちゃんはさ、この雨好き?」

ことり「雨…?」

ことり(灰色の雲を見つめて穂乃果ちゃんは言った)

ことり(雨ってどうだろう、景色として見るならすごく好きだけど濡れるし気分的にも晴れないし、雨なだけに…というのはともかく好きか嫌いかでいったらやっぱり…)


ことり「雨は…あんまり好きじゃないかな…」


穂乃果「…そっか」

12: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:00:54.17 ID:slrjrDJf0
穂乃果「実はいうとね、私も嫌い」

ことり「え?」

穂乃果「濡れるし気分もなんか晴れないし何より」


穂乃果「空の上の人が泣いてるみたいでやだじゃん」


ことり「う、うん…?」

穂乃果「帰ろっか」

ことり「えぇ?!今?!」

穂乃果「うん!ちょっと待ってて!」

スタスタスタ

ことり「ちょ、ちょっと濡れちゃうよ!」

ことり(大粒の雨が…いやこの場合は“涙”っていうべきなのかな、大粒の涙が打ち付ける外に穂乃果ちゃんは飛び出した)

穂乃果「………すぅ」


穂乃果「雨止めー!!!」



13: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:02:23.89 ID:slrjrDJf0
ことり「え……」

ことり(灰色の雲で覆われた空に向かって叫んでた)

ことり(その叫びは何重にもなって響いてた、風で靡く葉の音が共鳴してその声は透き通った声に変わってた)

ザー…ポツポツ……ポツッ…

キラキラキラ…

ことり「ウソっ…なんで…?!」

ことり(穂乃果ちゃんの叫びに反応したかのように雨は止んだ)

ことり(雲間から日が差し込みはじめてそれと同時に穂乃果ちゃんは振り向きことりに太陽と等しい笑顔を見せてくれた)


穂乃果「空、晴れたね!」ニコッ


ことり「…!」

ことり(驚きはあったけどその感情は弱かった、弾ける笑顔を見せてくれる穂乃果ちゃんに対して抱いた一番の感情は)


ことり(穂乃果ちゃんならなんでも出来るっていう穂乃果ちゃんへの期待と信頼だった)


ことり「うんっ!!」


ことり(そしてことりも涙を弾く笑顔を穂乃果ちゃんに見せた)



14: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:03:58.27 ID:slrjrDJf0
穂乃果「人間その気になればなんだって出来るよ!雨だって止ませることもできるし」


穂乃果「また私と会うことだって出来た!」


穂乃果「そしてそれはことりちゃんだって同じ!」

穂乃果「ことりちゃんだってその気になればなんだって出来るよ!」

ことり「ことりも…?」

穂乃果「うん!」

タッタッタッ!

ギュッ

穂乃果「帰ろっ!」

キラキラキラ

ことり「!!」

ことり(穂乃果ちゃんの瞳は輝いてた、何かに反射したわけでもなく穂乃果ちゃん自身の瞳が輝いてた)


ことり(何物にも囚われない一人だけでも輝ける瞳にことりは果てないほどの憧れを感じた)


ことり(そしてそのことりの憧れの全てを持つのが穂乃果ちゃんなんだから、いつまでも輝いてるのが穂乃果ちゃんなんだからまたことりもその輝く穂乃果ちゃんについていくんだ)

ことり「うんっ!帰ろ!」

15: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:05:24.00 ID:slrjrDJf0
タッタッタッ!

ことり(今止んだばかりというのにことりたちが走る向こう側には虹が出来てた)

ことり(ことりと穂乃果ちゃんはそれに向かって走ったんだ)

穂乃果「ねえことりちゃん!今日はことりちゃんの家に泊まっていい?」

ことり「えっ…」

ことり(ここで新たな疑問がことりの頭をグルグル回る)


ことり(まず前提として穂乃果ちゃんは“この世界では死んだ人”なはず、それを今になってことりが穂乃果ちゃんをつれて帰ったらどうなるんだろう?)


ことり(ただじゃ済まないよね、行方不明者が見つかった…ってことにもならないよね)

ことり(だって穂乃果ちゃんは病気で死んだんだもん、少なくとも穂乃果ちゃんの周辺にいる人は穂乃果ちゃんが死んだことを“周知の事実”として受け止めてる、またことりのお母さんもその一人だということ)

ことり(それはつまりどうだろう…生きてる穂乃果ちゃんを連れて帰ったら大問題だよね)

16: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:06:29.20 ID:slrjrDJf0
ことり「……そ、それはダメだよ」

穂乃果「どうして?」

ことり「だって…穂乃果ちゃんは…っ…」

ことり「………」

穂乃果「ことりちゃん?」

ことり(喉の辺りにまで上がった言葉が出てこなかった、仮にも今の穂乃果ちゃんは“生きている”)

ことり(そんな中でことりが穂乃果ちゃんは死んだんだよなんて言えるはずがないよね、死んだならここにいる穂乃果ちゃんは何なのさってことになるよね)

ことり(だから…言葉が出てこなかった、穂乃果ちゃんにどう説明してあげればいいかわからなかった)

17: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:07:57.43 ID:slrjrDJf0
ことり「…ううんなんでもない!いいよ!お泊りしよっか!」

穂乃果「わーい!やったー!」

穂乃果「このままことりちゃんのお家にいくね!」

ことり「う、うん!」

ことり(これについてはあえて追及しなかった、穂乃果ちゃんが死んでる状態のこの世界で穂乃果ちゃんの家族となんか会わせられないよ)

ことり(だからことりが穂乃果ちゃんを導いてあげないといけないんだ)


タッタッタッ!


ことり(今まで穂乃果ちゃんがことりを支えててくれたんだから)


ことり(今度はことりが支えてあげないといけないんだ)


18: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:09:05.65 ID:slrjrDJf0
~南家

ガチャッ

穂乃果「おじゃましま」

ことり「しーっ」

穂乃果「ん?どうしたの?」

ことり「う、ううんなんでもない、でもことりのお部屋にいくまで静かにしてて」

穂乃果「う、うん」

スタ…スタ…スタ…

ことり(私のお母さんは私の通う学校の理事長だけど今日お母さんは早く帰ってた、穂乃果ちゃんが死んでからちょうど一年だからね)

ことり(だからお母さんは今家にいる、そんな中で穂乃果ちゃんをみせることなんて出来ない)

ことり(ペットを飼うのを禁止されてる中秘密で野良猫を持ち帰る気分だった)

19: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:10:50.69 ID:slrjrDJf0
ガチャッ

ことり「!!」ビクゥッ!

ことりママ「あらことり」

ことり「お、お母さん…」ビクビク

ことりママ「…?なんでそんなに怯えてるの?」

ことり「あ、ううん…」

ことりママ「にしても…」チラッ

穂乃果「…あ」

ことり(お母さんと穂乃果ちゃんと目があった)


ことり(絶体絶命だと思った)


ことりママ「なんだ、穂乃果ちゃんじゃない、楽しんでいってね?」


穂乃果「はいっ!おじゃましてます!」

20: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:12:03.05 ID:slrjrDJf0
ことり「あっ…えっ…」

ことりママ「どうしたの?」

ことり「あ、ううんなんでもない!」

ことり「いこっか穂乃果ちゃん」

穂乃果「うんっ!」

スタスタスタ

ことり「…」

ことり(状況についていけなかった、どういうことなんだろう)

ことり「…」チラッ

穂乃果「?」

ことり(穂乃果ちゃんはこの世界では死人扱いのはずなのにお母さんはあたかもいつも通りのように振舞ってた)


ことり(何が起こってる?)


ことり(なんで怪しまれなかった?穂乃果ちゃんは死んでる人なんだよ?それなのに…それなのに…)

21: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:13:10.65 ID:slrjrDJf0
穂乃果「ことりちゃん?」

ことり「…ん?なぁに?」

穂乃果「さっきから難しい顔してるからさ、何かあった?」

ことり「う、ううんなんでもない!」


穂乃果「……嘘つき」ボソッ


ことり「え?」

穂乃果「ううんなんでもない」

ガチャッ

穂乃果「わー!ことりちゃんのお部屋久々に入ったなー」

ことり「えへへ、そう…だね?」

ことり(いまいち考えがまとまらず疑問形で返しちゃった、久しぶりも何も穂乃果ちゃんはあの時死んだんだから久々もクソもないよね)

ことり(穂乃果ちゃんの思考は一年前なのかな、それともパラレルワールドの穂乃果ちゃんなのかな)

ことり(分からない、けど直接聞くほどことりも無神経じゃない、ここは心の中だけに溜めておくことにする)

22: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:14:32.76 ID:slrjrDJf0
ことり「あ、飲み物持ってくるね」

穂乃果「うん!」

ガチャッ

ことり「………」

スタスタスタ

ことりママ「ことり、これ穂乃果ちゃんと食べなさい」

ことり「あ、ありがとう」

ことり(お母さんからお饅頭をもらった、やっぱりお母さんも何かおかしい)

ことり「ねえお母さん」

ことりママ「何?」

ことり「穂乃果ちゃんって…生きてるよね?」

ことりママ「何いってるの?当然じゃない」

ことり「う、うんそうだよね!」

23: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:17:05.25 ID:slrjrDJf0
ことり「あ、じゃあ去年のこの日のこと覚えてる?」

ことりママ「ええ覚えてるわよ、穂乃果ちゃんが病気から立ち直った日よね?」

ことり「!」

ことり「立ち直った…」

ことり(状況は把握できなかったけど理解にまでは至ってた)

ことり(過去が変わってる)


ことり(穂乃果ちゃんが生きてる世界になってるんだ)


ことり(どうやってそんなこと出来たの…?そもそも今思えばなんで穂乃果ちゃんがこの世界にいるの…?)

ことり(分からないよ…あの時は嬉しさのあまり焦点が当てられなかったけど今思えばおかしな話だよね…?)

ことり「……」

ことりママ「ことり?」

ことり「…あ、お饅頭ありがとう穂乃果ちゃんと食べるね」

ことりママ「ええ」

24: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:18:18.73 ID:slrjrDJf0
スタスタスタ

ことり(飲み物を取って二階へ上がった)

ことり(もう一生会えないと思ってた穂乃果ちゃんに会えたのはものすごく嬉しい、けどその裏側ではあまりにも不可解で現実離れしてて“魔法”でもないと説明がつかない超常現象に頭を悩ましてた)

ことり(きっとあの穂乃果ちゃんは本物、抱き着いた時の温もりもあの輝く瞳も穂乃果ちゃんしか持ってないモノだったから)


ことり(でもそんな本物の穂乃果ちゃんがどうして“今”ここにいるのかな)


ことり(それが分からないよ…)


ガチャッ

ことり「お待たせ穂乃果ちゃん」

穂乃果「あ、待ってたよー」

25: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:19:14.46 ID:slrjrDJf0
ことり「はい、これお母さんから食べてって」

穂乃果「わーお饅頭だ!」

ことり「うふふふっ」

ことり(でも、とりあえずは今を楽しんだ)

ことり(もしかしたらこれは夢なのかもしれない、そう思ったりすると今ある時間の中で楽しまなきゃって思うんだ)

ことり(だから、今は穂乃果ちゃんのことだけを考えて楽しんだんだ)


ことり(分からないこと全てを後回しにして…)


26: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:20:58.04 ID:slrjrDJf0
~次の日、学校

穂乃果「おっはよーう!」

ことり(次の日、穂乃果ちゃんは何事もなく学校へ来た)

海未「おはようございます、穂乃果、ことり」

穂乃果「おはよう海未ちゃん!」

ことり「おはよう海未ちゃんっ」

ことり(そして何事もなかったかのように海未ちゃんと会話してる)

ことり(やっぱりことり以外の人は穂乃果ちゃんが死んだことを知らないみたいなんだ)

海未「宿題やってきましたか?」

穂乃果「ふっふ~ん!昨日はことりちゃんの家に泊まったからやってきたよー!」

海未「ほう…珍しいですね」

海未「でもまぁことりが一緒にいるなら納得ですね」

穂乃果「えへへーでしょー?」

27: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:22:23.97 ID:slrjrDJf0
海未「なんでそんな自慢気なんですか!たるみすぎです!」

穂乃果「んもー…」

ことり「あはは…」

ことり(すごく見たことのある景色だった)

ことり(こうやってあの二人が言いあうのは何回も何十回も何百回も見た)

穂乃果「もー海未ちゃんになんかいってあげてよことりちゃーん!」

海未「ことりを盾にしないでください!」

ことり「ま、まぁまぁ二人とも…ねっ?」

穂乃果「はーい」

海未「まったく…」

ことり(そしてことりが二人を止めるんだ)

ことり「ふふふっ…」クスクス

ことり(こんなことするなんて久しぶりで思わず笑みが出てた)

28: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:23:56.92 ID:slrjrDJf0
穂乃果「あ、私絵里ちゃんと希ちゃんのところ行ってくるね!」

タッタッタッ!

穂乃果「じゃあ!」

海未「まったく穂乃果は…」

ことり「ふふふ」

海未「…にしても穂乃果ホントに元気ですね」

ことり「そうだねっ」

海未「一年前、病気だったのがウソみたいです」


海未「やはり穂乃果は強いのですね」クスッ


ことり「えっあ、うん…そうだね」

ことり(過去が変わってるだけに複雑な気持ちだった)

ことり(ごめん海未ちゃん、穂乃果ちゃんが強いのは否定しないけど)


ことり(ことりの元いた世界の穂乃果ちゃんは死んじゃったから…)


ことり(きっとパラレルワールドなんだよ、ここは)

29: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:25:03.02 ID:slrjrDJf0
海未「あの元気さに私たち惹かれていったのでしょうね」

ことり「うんっそうだね」

海未「一年前はホントにどうなるかと思いましたけどホントによかったですよ」アハハ

ことり「…うん」

海未「なのにまったくいつもだらしない生活で…少しは気を付けてほしいところですよ…」

ことり「う、うんそうだね…」

ことり(昨日まで穂乃果ちゃんが死んで一年だなんて悲しんでたのがウソみたいだった)


ことり(ねえ穂乃果ちゃん、どうしてこの世界では生きてるのにことりの世界では死んじゃったの?)


ことり(正直に言えばこの世界の過去なんてどうでもよかった、というか聞きたくなかった)


ことり(だってそうでしょ?例え今穂乃果ちゃんが生きてようとことりの世界の穂乃果ちゃんが死んで今に至るまでは空っぽなんだからさ)

ことり(ことりには“過去が変わってる事実”さえ知ってればどうでもよかったんだ)

30: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:26:00.18 ID:slrjrDJf0
海未「そういえばことり」

ことり「ん?何?」

海未「今日は保健委員の方で集まりがあるのでは?」

ことり「…あっ」

ことり「そ、そうだよ!どうして言ってくれなかったの海未ちゃんっ?!」ウルウル

海未「い、いや昨日言ったじゃないですか!明日忘れないでくださいよって!」

ことり「はっ…」


海未『あ、ことり!明日忘れないでくださいよー?』


ことり「そうだった…」

海未「とりあえず早くいかないと…」

ことり「う、うん!じゃあね!」

海未「はい、それでは」フリフリ

タッタッタッ!

ことり「…ん?」

ピタッ

ことり「昨日…?」

ことり(過去が変わってるなら昨日という過去も変わってるはずだと思うんだけどそこはどうなんだろう、ふと疑問に思う)

31: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:27:04.58 ID:slrjrDJf0
ことり「…ま、いっか」

ことり(集会に遅刻してるしとりあえずは後回しにした、今考えててもろくな答えなんて出てこないだろうから)

タッタッタッ

「絵里ちゃーん!!」

ことり「!」

穂乃果「絵里ちゃん絵里ちゃん!」ギューッ

絵里「わぁ…困った子ね」フフフ

穂乃果「希ちゃんにもぎゅー!」

希「まったく…大きな妹やなぁ」ナデナデ

ことり「ふふふっ穂乃果ちゃんらしいなっ」クスッ

穂乃果「えへへ~二人とも抱き着きたくなるオーラを出してるんだもーん!」

絵里「何よ抱き着きたくなるオーラって」クスッ

希「穂乃果ちゃんは相変わらずやなぁ」

穂乃果「とーぜん!せっかく希ちゃんと絵里ちゃんっていう優しい先輩がいるんだから抱き着かないわけにはいかないでしょー?」

32: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:28:11.45 ID:slrjrDJf0
絵里「ふふふっこんなにも愛されてて幸せね」クスッ

希「そうやなぁ」

ことり「ふふっ」

ことり(穂乃果ちゃんがいるだけこうも違うんだ、そう実感した)

ことり(私とあの二人じゃきっと浅く笑いあうだけなのに穂乃果ちゃんといるあの二人はとても楽しそうだ)

ことり「…すごいな、穂乃果ちゃんは」

ことり(もし空白の一年の中で穂乃果ちゃんという太陽がいたらあの景色も日常風景だったのかな、当たり前のように見てたのかな)

ことり(分からないな…でも穂乃果ちゃんがいるだけでみんなも違ってたからやっぱり)


ことり(穂乃果ちゃんには敵わないよ)


ことり「…あ、いけない集会だった」ダダッ


33: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:29:14.67 ID:slrjrDJf0
~昼

ことり「穂乃果ちゃん、お昼一緒に食べよ?」

穂乃果「うんっ!」

「ほっのかちゃーん!」

穂乃果「ん?」

ことり「あ、凛ちゃん」

凛「やっほー!一緒にお昼たーべよっ!」

花陽「だ、大丈夫かな?」

穂乃果「うん!全然おっけー!」

穂乃果「おーい!海未ちゃーん!海未ちゃんも一緒に食べよー!」

海未「はいっ!」

穂乃果「じゃあじゃあ屋上で食べよっ!」

凛「よーっしいっくにゃー!」

タッタッタッ

ことり「わ、待ってよー」

ことり(穂乃果ちゃんがいるだけでお昼も全然違ってた)

ことり(穂乃果ちゃんと凛ちゃんが眩しい笑顔を見せながら走っていってそれを後の三人が追う形、空白の一年と比べると賑やかすぎてなんだかな…)

34: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:30:55.40 ID:slrjrDJf0
タッタッタッ!

ガチャッ

穂乃果「ふうー!風が気持ちいいなー!」

凛「にゃー!」

ことり「はぁ…はぁ…」

花陽「疲れた…」

海未「ほんとあの二人は…」ヤレヤレ

ことり「あははは…」

ことり(その後は五人でお昼を食べた、昨日がまるで悪い夢であったと錯覚に陥ってしまうほど今日という日は明るく賑やかだった)

穂乃果「ことりちゃん!その卵焼きちょーだい!」

ことり「あ、うんいいよ」

穂乃果「あーん」

ことり「あ、あーん」

穂乃果「んっ」パクッ

穂乃果「ん~!おいしいっ!」

35: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:32:31.44 ID:slrjrDJf0
ことり「ならよかったよ」

穂乃果「これことりちゃんの手作り?」

ことり「そうだよ」

凛「おお~手作りなんてさっすがことりちゃーん!」

花陽「やっぱりことりちゃんはすごいね」

ことり「えへっそうかなっ?」

穂乃果「うん!そうだよっ!」

ことり「えへへありがとうみんな」

穂乃果「卵焼きくれたお礼にぎゅーっ!」


ギューッ!


ことり「わぁ…じゃあことりもぎゅー!」

穂乃果「あはははっ」

ことり「うふふふふっ」

ことり(この再度昇ってきた太陽はいつまでことりの上にいてくれるんだろう)

ことり(いつ、ことりに月のない夜が訪れるんだろう)

ことり(抱きしめ合ったこの瞬間が懐かしくて嬉しくてことりの中の全てが弾けてしまうほどに心地が良くて)


ことり(今度こそ穂乃果ちゃんを手放したくないって思ったんだ)


36: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:34:57.36 ID:slrjrDJf0
穂乃果「えへへーやっぱりことりちゃんの抱き心地はナンバーワンだよ!」


凛「おー流石みんなを抱いてる穂乃果ちゃんは言うことがすごいやー」

花陽「その言い方だと色々誤解を生むような…」アハハ

海未「わ、私を何番なのでしょうか…」

穂乃果「うーん海未ちゃんはねー…」


穂乃果「分からない!」


海未「わ、分からない?」

穂乃果「ことりちゃんが一番ってこと以外はよくわからないかなー」

海未「そ、そうですか…」

凛「ふーんじゃあ凛もことりちゃんにぎゅーっ!」

ことり「もー凛ちゃん苦しいよぉ」

凛「確かにこの抱き心地は…最高にゃ!」

凛「かよちんもきてきて!きてぎゅっとしてみてよ!」

花陽「え…で、でも…」

ことり「ふふふっいいよ花陽ちゃんおいでっ」

37: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:37:04.28 ID:slrjrDJf0
花陽「じゃあお言葉に甘えて…」

ギューッ

花陽「…あっなんだか温かい」

ことり「そ、そうなの?」

穂乃果「うんうん!なんだかは~んって感じ!」

海未「なんですかその“は~ん”って…」

凛「いやいやそんな感じだよ!は~んだよ!」

花陽「は~ん…うん、そんな感じだと思う」

海未「え、えぇ…?」

ことり「海未ちゃんもくる?」

海未「……分かりました、ぎゅっとしましょう」

ギュッー

穂乃果「どう?海未ちゃん」

海未「確かにこれは…」


海未「は~んですね…」


穂乃果「でしょー?」

38: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:38:15.84 ID:slrjrDJf0
ことり「あはは…なんだろは~んって…」


穂乃果「は~んはは~んだよっ!」


凛「そうだよっ!」

花陽「うんうん」

海未「ふふっそうですね、は~んですね」クスッ

ことり「も、もーは~んって何なの~?」

ことり(こんなに盛り上がったのもいつぶりだろう、ことりが、そしてみんながこんな本当の意味で笑いあえたのっていつぶりだろう)

ことり(いつもいつも海未ちゃんや希ちゃんがことりに見せる笑顔はことりを労わるような慰めの笑顔、凛ちゃんや花陽ちゃんが見せる笑顔はことりを悲しませないようにと無理をしてる作り笑顔)

ことり(ことりはみんなの笑顔の裏に気付いてたよ、だって海未ちゃんや花陽ちゃんの笑顔ってすごくわかりやすくて、希ちゃんが見せてくれた笑顔っていうのは海未ちゃんにそっくりだったから、それは凛ちゃんも同様に)

ことり(でも今はどうだろう、みんな心から笑えてると思う、慰めの笑顔もないし作り笑顔もない)

ことり(穂乃果ちゃん一人だけでこんなに違う、月のない夜に突然太陽が現れた)


ことり(だからことりは、ただその太陽に感謝をしたんだ)


39: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:39:36.06 ID:slrjrDJf0
~放課後

穂乃果「うへへへ…希ちゃーん」

ワシッ

希「ひゃんっ!」

希「…って穂乃果ちゃーん?ウチにワシワシをするとはいい度胸やね~」ニコニコ

穂乃果「えっ…あっ…それはー…」ダラダラ

希「悪い子にはお仕置きが必要やね!わしわしー!!」

穂乃果「やあああああああ!!!」

絵里「何やってるのよあの二人は…」

ことり「た、楽しそうだね」アハハ

絵里「それで穂乃果、何の用かしら?」

希「ほれほれー!」

穂乃果「やー!助けてことりちゃーん!!」

ことり「え、ええ?!え、えっと…」

絵里「こらっ希」ペシッ

希「あいてっ…もーいいところなのにー」

穂乃果「がくりっ…」

40: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:41:17.25 ID:slrjrDJf0
希「これに懲りたらウチにわしわしなんてしないことやね」ニッコリ

穂乃果「うー…肝に銘じます…」

絵里「それで、もう一回言うけどどうかしたの?」

穂乃果「あーあのねっ!クレープ食べに行こうって言おうとしたの!」

絵里「クレープ?」

穂乃果「そうそう!なんか気分的にクレープ食べたくなって丁度希ちゃんと絵里ちゃんがいたからさ!」

穂乃果「そしていったら希ちゃんの無防備な後姿が…これはやるしかないと思って」

絵里「いやそこは言わなくていいわよ」

希「んー流石に警戒はしてなかったけどまさか穂乃果ちゃんに後ろを取られるなんて…」

絵里「なんかバトル漫画の模擬戦後のセリフね、それ」

穂乃果「それでいいかな?クレープ!」

絵里「え、ええまぁいいけど」

希「ウチもいいよー」

穂乃果「わーい!やったー!」

41: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:42:44.69 ID:slrjrDJf0
ことり「よかったね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「うん!」

穂乃果「それじゃあクレープ屋さんにレッツゴー!レッツゴー!」ダッ

絵里「あっ!廊下は走っちゃダメよ穂乃果!」

穂乃果「分かってるよー!」タッタッタッ!

絵里「分かってないじゃない…」

ことり「穂乃果ちゃんらしいね…」アハハ

希「まぁとりあえずいこ?」

絵里「ええ」

ことり「うんっ」

ことり(穂乃果ちゃんがこの世界に帰ってきて初めての学校の帰りはこの四人で歩いた)

ことり(今思えばみんな小学校の頃からずっと一緒だった人達だ、小学生の頃は毎日この四人に海未ちゃんを入れて帰ってた)

ことり(今日は海未ちゃんは家の用事で早く帰っちゃったけどここに海未ちゃんがいれば、小学校の頃とまた同じだね)

42: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:44:16.30 ID:slrjrDJf0
ことり(そしてことりたちの足はクレープ屋さんに移る)

希「ほーなんか見ないうちに色々メニュー増えたねー」

絵里「そうね、バナナ雪見だいふく…ユニークね」

希「そうやねーアイスチョコなんてものもあるし」

希「穂乃果ちゃんは何にするんー?」

穂乃果「それはもちろんイチゴチョコ!」

希「おっやっぱりそれかー小さい頃から変わらんね」クスッ

穂乃果「伝統の味だからね」エッヘン

絵里「いやいやそこ威張るところじゃないわよ…」

穂乃果「えへへ…ことりちゃんは何にするの?」

ことり「んーどうしよっか、迷っちゃってて」

希「そうだよねー迷っちゃうよね」

絵里「んー私はこのバナナチョコでいいわ」

希「普通やね」

絵里「そりゃそうよ、希はこのツナアボカドでも食べてなさい」フフッ

希「もー酷いよえりちー」

43: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:45:28.73 ID:slrjrDJf0
希「じゃあウチはー…これっ!」

穂乃果「おー豪華…」

ことり「アイスティラミス…」

希「ふへへーたまにはこういうのもアリだよね」

絵里「まぁそうね」

絵里「ことりはどうする?」

ことり「うーん…そうだなー…」

ことり「うーん…うーん…」

希「迷ってるねー」クスッ

絵里「まぁことり甘いモノにはうるさいからね」フフフッ

穂乃果「ことりちゃんはこのイチゴショコラにしなよ!」

ことり「え、あ、うん!」

絵里「こら穂乃果は横やりを入れない」

穂乃果「あ、そうだよねごめんことりちゃん」

ことり「ううんいいよいいよ、どうせ決められなかったからこのイチゴショコラにするね」

絵里「いいの?」

ことり「うん、大丈夫」

44: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:46:28.73 ID:slrjrDJf0
穂乃果「よーし!けってーい!レジにいこいこ!」

絵里「もうっ穂乃果ちゃんははしゃぎすぎよ」

希「そういうえりちは堅すぎな気もするけどねー」クスクス

絵里「なんですってー?」

希「ひゃー!これが噂の鬼生徒会長やー!」

絵里「のぞみぃー!」

希「ことりちゃんウチは逃げる!クレープは頼んどいて後で取りに行くから!」ダッ

ことり「あ、うん!」

希「巫女のバイトで鍛えたウチの体力舐めるんやないでー!」

絵里「それならバレエで鍛えた私の体力舐めるんじゃないわよー!!」ダッ


絵里「待ちやがれー!!!」


希「ひええええええ!!!」

タッタッタッ…

ことり「あはは…あの二人はほんとに…」

45: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:48:00.50 ID:slrjrDJf0
穂乃果「ことりちゃーってあれ?二人は?」

ことり「鬼ごっこしにちょっと遠くに行っちゃった」

穂乃果「えー?!鬼ごっこなら私もしたかったよー!」

ことり「んー今は行かないほうがいいかも…なんて」クスッ

穂乃果「??」

穂乃果「あ、それでちょっと時間かかるって」

ことり「うん、分かった」

ことり(穂乃果ちゃんはことりが迷ってる時代わりに選んでくれる)

ことり(どうせことりじゃ選べないんだから穂乃果ちゃんが選んだ選択肢がことりの選択肢なんだ、穂乃果ちゃんがまたことりの前に現れてくれたからことりの足りないものが、欠けてたものが元通りになっていってるんだ)

穂乃果「時間かかるみたいだし座ろっか」

ことり「そうだね」

ストンッ

穂乃果「ふー…なんか歩いてるだけなのに疲れたー」

ことり「運動不足かもね」

穂乃果「どうかなー?」

46: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:49:39.03 ID:slrjrDJf0
穂乃果「…あ、あんなところに花がっ!」

ことり「ホントだ…あんな場所に咲くなんて力強いね」

穂乃果「ねっ」

ことり(公道の道沿いのコンクリートの隙間から白い花が咲いてた、その姿は弱さを感じさせないシャキっとした姿だった)

ことり「でもこんなところで咲いちゃったら…」

穂乃果「すぐ枯れちゃうかもね…」

ことり「なんか…不幸だね」

穂乃果「…まあね」

チリンチリンッ


グシャッ


ことり「…あ」

穂乃果「あっ…」

ことり(ことりの視界に自転車が入る、そして次の瞬間には視界から消える、そしてその一瞬の間で)


ことり(白い花が散った)


ことり「………」

穂乃果「………」

ことり「…あはは、そんなこともあるよ」

穂乃果「そ、そうだね」アハハ

ことり(穂乃果ちゃんの死もそうだった、それは突然すぎる出来事でまたそれはどうしようもない一瞬のことで)

ことり(考えすぎかもだけど、不思議なことにあの花には既視感を覚えてた)

47: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:52:09.07 ID:slrjrDJf0
タッタッタッ

希「はぁ…はぁ…」

ことり「あ、希ちゃん」

穂乃果「希ちゃん酷いよー!鬼ごっこするなら私も誘ってよ!」

希「いやいやそんな鬼ごっこなんてお子様の遊びをしてるわけやないんよ穂乃果ちゃん」

穂乃果「え?」

希「これは戦なんよ、死闘と書いてデスゲームって言うんよ」

穂乃果「なんかすごそうだね…」

ことり「た、大変そうだね…」

希「いやーあのポンコツ生徒会長には困ったものだよ、副生徒会長としては…」ハァ

絵里「へぇ~ポンコツ生徒会長ねぇ…」ニッコリ

希「!!」ビクゥッ!

希「あ、えっと今のは…あはっ…あははは…」アハハ

絵里「へぇ~副生徒会長さんがこの生徒会長である私に向かってポンコツ呼ばわりか~」ニッコリ


絵里「うふふふ…ちょ~っと絵里さん怒っちゃったかな~」


穂乃果「絵里ちゃんの顔が笑ってない…」

48: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:53:00.71 ID:slrjrDJf0
希「こ、ここはワシワシで対抗や!」

絵里「一瞬で終わらせるわ!」

ワイワイガヤガヤ ワシワシ

ことり「ちょ、ちょっと二人ともここ公共の場所だよ!!」アセアセ

穂乃果「は、破廉恥だね…」

「こぉら!こんな場所でなんてことしてんのよ!」

ことり「!」

穂乃果「ん?」

希「あ、にごっぢぃ…!」

絵里「にごぉ…!」

にこ「こんな場所で胸の揉み合いなんてあんたらはプライバシーの欠片も無いの?」

希「それとこれと話が別で!」

絵里「そうよ!」

にこ「ったくあんたらは本当に頭お花畑ね…」

49: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:53:56.82 ID:slrjrDJf0
絵里「はぁ?!なんでこんなスピリチュアル野郎と一緒にされなきゃならないのよ!」

希「なんやスピリチュアル野郎って!」

絵里「そのままの意味よ!」

にこ「あーまぁ確かにスピリチュアル野郎はあってるわ」

希「にこっちまでえりちの味方して!」

希「…んまぁにこっちには揉み合える胸が無いから仕方ないかー」クスッ

にこ「!」ピキッ


希「あっちゃーのんたん意地悪しちゃったなーいやーごめんなー?」


にこ「おうおう言ってくれるじゃない、じゃあ私はあんたの胸が潰れるまで揉んでやるわよ!!」ダッ

希「うひゃっ?!また死闘かいなー!」ダッ

にこ「待ちやがれー!このスピリチュアルおっぱい野郎おおお!!!!!」

希「なんやその怪物ー?!?!」

タッタッタッ!

50: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:55:40.42 ID:slrjrDJf0
絵里「これじゃあミイラ取りがミイラになってんじゃないの…」

穂乃果「あはは…仲いいねホントに」

絵里「あれは仲が良いっていうのかしら…?」

ことり「仲良しだよっ」

ことり(突然現れたのは希ちゃんと絵里ちゃんの親友のにこちゃん)

ことり(にこちゃんは絵里ちゃんと希ちゃん関係で知り合って体は小さいけどすごく頼りがいがあって穂乃果ちゃんが死んじゃってからもことりのこと熱心に励ましてくれたりしてとっても人情深い人)

ことり(穂乃果ちゃんが死んでことりが悲しんでる時まず最初にことりを抱きしめてくれたのがにこちゃん、にこちゃんって水臭いこととか後は暗い雰囲気とか苦手みたいで最近はことりも暗いオーラ駄々洩れだったからにこちゃんと関わらずにいた)

ことり(でも穂乃果ちゃんがきて一気に雰囲気は良くなってにこちゃんも気軽に入れる輪っかが出来上がってるのだと思う、これがきっとことりと希ちゃんと絵里ちゃんだけだったらにこちゃんも入りづらかったんだろうなってすごく思うから)

穂乃果「あ、クレープ出来たみたいだから取ってくるね!」

ことり「はーい」

絵里「はぁ…ほんとこの五人だとテンション上げ要員しかいないから困るわね」

ことり「こ、ことりもテンション上げ要員なの?」

絵里「いやことりはお味噌汁でいうダシよ、ことりは唯一のまとめ役、この絶望的アホしかいないメンツの希望だから頑張って」グッ

ことり「え、えぇ…」

絵里「ここに凛とか放り込んだらもうすごいことになるわね…」

ことり「小さい頃からのメンバー集めたら色々起こりそうだね」アハハ

絵里「ホントにね」

51: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:57:00.48 ID:slrjrDJf0
穂乃果「お待たせ!」

ことり「あ、ありがとう」

絵里「ありがとう」

希「ぜぇ…ぜぇ…」

穂乃果「あ、希ちゃんはいどうぞっ」

希「あぁ…どうも…」

にこ「待ち…なさいっ…」ガクッ

絵里「やれやれ」

穂乃果「絵里ちゃんがそれをいうのはなんか違うような…」

絵里「にこもそこでくたびれてないで座りなさい、そんなに苦しいなら」

にこ「ぜぇ…くだらない理由で走るんじゃなかった…」

穂乃果「鬼ごっこなら私も混ぜてほしかったよ」

にこ「鬼ごっことかそんなお子様がやるようなものじゃないのよこれは…」

ことり「希ちゃんと同じこと言ってる…」

穂乃果「はーこんなに盛り上がるなら凛ちゃんたちも誘えばよかったなー」

にこ「誘わなかったの?」

穂乃果「凛ちゃんたちの帰り道とこっちの道が逆方向だからさ、なんか悪いじゃん?」

にこ「なるほどね」

52: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:57:51.14 ID:slrjrDJf0
穂乃果「私とことりちゃんは遠回りしてく感じだし絵里ちゃんや希ちゃんに関しては寄り道程度だし」

にこ「なんで私を呼ばなかったの?」

穂乃果「呼ぼうと思ったけど教室にいなかったからだよ」

にこ「…まぁそうよね、でもまぁ今日はちょっと用事あったし誘われても断ってたと思うけど」

希「どうせにこっちのことやからアイドルアイドルちゅっちゅーって感じやろ?」

にこ「ぶっ飛ばすわよ?」

希「やーんやめてやークレープ持ってるんやし」

ことり「…」

穂乃果「どうしたの?そんな嬉しそうな顔して」

ことり「ん?ううんなんだか微笑ましいなって」

絵里「ほら希とにこの漫才が微笑ましいってよ、ことりのお墨付きよ」

にこ「勝手に漫才化させるな!」


希「なんでやねん!」ビシッ


にこ「定石か!」ビシッ


絵里「いや漫才でしょそれ…」

53: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 22:59:06.72 ID:slrjrDJf0
穂乃果「あははははっ!」

ことり「ふふふふっ」クスクス

ことり(まだ今日が終わったわけじゃないけど、今日という一日はもう既に満足出来たくらいだよ)

ことり(ホントに面白かった、そして今思えばことりたち中学生の頃はいつもこんな時間を過ごしてたんだ)

ことり(当時は何も思わなかったけど失ってからだと痛いほど感じるよ)


ことり(あの日常がどれだけ幸せで溢れていたのかが)


ことり(この今という今を楽しんでる半面心はその痛さが染みて過去と今の違いがハッキリ目に映ってた)

にこ「大体漫才なら絵里の方が向いてるから!」

絵里「いや私はやれないしやりたくないしやらないわよ」

希「拒否の三段構えやん…」

54: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:00:34.56 ID:slrjrDJf0
穂乃果「じゃあじゃあみんな!」

希「?」

にこ「ん?」

絵里「何かしら?」


穂乃果「凛ちゃんと言ったら~?」


のぞにこ「イエローだよおおお!」絵里「やっぱりラーメンが好きなところじゃないかしら」


穂乃果「じゃ、じゃあどんなに逃げてもずっと追いかけてくるものってなーんだ?」

希「やっぱりえりちやね」にこ「いやワシワシしようとしてるあんたでしょ」


絵里「死、かしら」


穂乃果「………」

のぞにこ「………」

穂乃果「…ぁえっとじゃあ最後におばあさんが川で洗濯をしてる時に川から何が流れてきたのでしょう?」

にこ「ももでしょ」希「ももやね」


絵里「川から流れてくるものなんてゴミくらいでしょ」


穂乃果「絵里ちゃん…」

絵里「…?何よ」

55: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:01:52.02 ID:slrjrDJf0
希「えりち、えりちは天才だよ」グッ

にこ「絵里、見直したと同時に見損なったわ」

絵里「えっ?!なにそれ?!どういうこと!」

希「自覚無し…やはりえりちはすごい人や…」

絵里「どういうことよそれ!」

にこ「あんたがお笑い体質だってことよ」

絵里「何よその不名誉な体質は!」

穂乃果「絵里ちゃんお笑い芸人になりなよ!」

絵里「ならないわよ!」

ことり「…」クスッ

ことり(ことりの目に映る光景が今と昔の違いだった)

ことり(今こうやってゲラゲラ笑いあえる環境が整ってるって思うと嬉しすぎて幸せ過ぎて舞い上がりたくなって)

ことり(でもここで舞い上がるなんて出来なくて、そんな自分の欲望を我慢してたらその欲望は思わぬ形で漏れ出した)

ことり「…」

ポロポロ…ポロポロ…

穂乃果「ん?ってことりちゃんどうしたの?!」

絵里「どうしたの?!どこか痛いの?!」

希「ごめんごめん!仲間外れにしてたわけじゃないんよ!」

にこ「そ、そうよ!ことりも大事な仲間よ?」

56: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:03:25.67 ID:slrjrDJf0
ことり「違うの…!違うの…!!」

絵里「違う!?何が違うの?!」

ことり「またっ…みんなとこうやって笑いあえるのが嬉しくて…!」

希「んん?ウチらはいつもこんな感じやん?」

絵里「違うわよ、きっと改めて身に染みたのよ」

希「おー理解があるねえりちは、そこは素直に感心やわ」

にこ「そもそもそれ当たってるの?」

ギューッ

希「寂しくなったらいつでも言ってな?ウチら親友以上の仲やん」

にこ「なにその怪しい言い方」

希「超超超ちょーう仲がいい関係って言ってほしいな~」

絵里「そもそもずっと一緒にいるし私たち全員恋人ですっていうのも悪くはないと思うけどね」

穂乃果「ありかも!」

ことり「うん…!うんっ…!ありがとうみんな…!!」

絵里「まったく急に泣きだしたから何かと思ったわよ」

希「μ’sのウチらはずっと一緒やん?」

にこ「何よミューズって」

希「穢れなき女神たちと書いて《ミューズ》!どうやウチのネーミングセンス!」

にこ「厨二ね」

57: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:05:21.65 ID:slrjrDJf0
穂乃果「永遠フレンズとかでよくない?」

絵里「いやなんでそこ永遠にする必要あるのよ」

穂乃果「そこはご愛嬌!!」

穂乃果「…まぁとにかくこんなにもみんな優しいんだからことりちゃんが気にする必要なんて何もないんだよ」

ことり「うん…!うん!」

ことり(なんてことりは幸せなんだろう)


ことり(人生の最大の不幸が人生の最大の幸せになって帰ってくるなんて)


ことり(穂乃果ちゃんの死が不幸であり穂乃果ちゃんとの出会いが幸せであった)

ことり(ことりが泣き止んだ後も会話は弾んで気付けば帰り道は穂乃果ちゃんと二人きりだった)

スタスタスタ

ことり「今日…ごめんね」

穂乃果「泣いたやつ?」

ことり「そうそう」

穂乃果「別にいいよ、私もことりちゃんの気持ち…すごくわかるから」

58: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:07:15.79 ID:slrjrDJf0
ことり「穂乃果ちゃんも?」

穂乃果「うんっ私も同じようなこと感じてたから」


穂乃果「…時間がないから痛いほどに」ボソッ


ことり「え?」

穂乃果「ん?どうしたの?」

ことり「あ、ううんなんでもない」

ことり「あ、もうすぐお別れだね」

穂乃果「そうだね~今日もことりちゃんの家にお泊りって流石に迷惑か」エヘヘ

ことり「あ、ううん別に」

穂乃果「ううんやっぱいいよ!ごめんことりちゃん私走るね!」

ことり「あ、う…うん」

穂乃果「じゃあね!また明日!」

ことり「また明日!」

タッタッタッ!

ことり(穂乃果ちゃんは背中を消す最後の最後まで明るい姿を見せてくれた)

ことり(そんな明るさを肌で感じてたらこの一人の時間がものすごく寂しくて自然と俯いてた)

59: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:07:58.64 ID:slrjrDJf0
ことり「…ううんダメダメ!“ことりらしく”いかないとっ!」

ことり(ことりらしく、そんな意味深な言葉を使ってことりの足を動かした)

ことり(その後は何もなかった、昨日と違う点があるっていうなら穂乃果ちゃんとメールしてたくらいかな)

ことり「ふぅ~おやすみぃ…」

ことり(今日は色々あって疲れちゃった)

ことり(だからすぐに眠りにつけたし見てた夢もいい夢だったと思う)

ことり(寝て起きるその間は感じた限りだと一瞬だから穂乃果ちゃんがいないあの時は明日になるのがイヤでよく夜更かししてたけど今はそんな抵抗がない)


ことり(これもまた、一つの違い)


ことり(早寝早起きも、悪くはないね♪)

60: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:09:16.98 ID:slrjrDJf0
~次の日、学校、昼

希「穂乃果軍曹!穂乃果軍曹!」

穂乃果「なんだね希隊長!」

希「お昼を一緒に共にしたいのですが!」

穂乃果「うむっ!よかろう!」

穂乃果「ことり司令部~ことり司令部~!」

ことり「は、はい!」

穂乃果「お昼を共にしてもらおう!」

ことり「は、はい!了解ですっ!」

海未「あなたたちは何をしているのですか…」

ことり(次の日、今日も何事もなく穂乃果ちゃんは来た)

ことり(今日穂乃果ちゃんがいることを実感するともう夢でないことに自覚を持つようになった)


ことり(そして穂乃果ちゃんが来てからは楽しいことばかりだ)



61: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:11:13.84 ID:slrjrDJf0
穂乃果「何って私たちではよくあることじゃん!」

海未「いやまぁ知ってますけど…」

希「そうだよ海未ちゃん、初めは小さい部隊だったよ…」

希「凛二等兵と希隊長の二人だけ…そこから穂乃果軍曹のおかげで絵里中将やにこ大佐…強力な仲間が増えていって…くぅ…!」

海未「なんか語りだしましたよ…」ハァ

希「えへへまぁウチらは少数精鋭部隊なんやからテンションあげてこ?」

海未「精鋭…なのでしょうか?」

穂乃果「精鋭だよ!!」

ことり「食い気味だね…」

海未「は、はぁ…そうですか…」

穂乃果「まぁいいや、そういえば絵里ちゃんは?」

希「今日はなんでも忙しいらしくてウチとなんか構ってられないって追っ払われたよ」

海未「まぁ生徒会長ですからね」

ことり「それをいうなら希ちゃんは副生徒会長だけど…?」

希「ん?あ、いや別に生徒会関係じゃないよ?生徒会ならウチもちゃんとやってるし」エッヘン

海未「そうなのですか?」

希「そうそう、まぁえりちの好きにさせてあげよ」

ことり「そうだねっ」

62: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:13:02.38 ID:slrjrDJf0
海未「じゃあ行きましょうか、屋上でも中庭でもいいので」


穂乃果「あ、待って待って一人呼びたい子がいるんだ」


ことり「呼びたい子?」

穂乃果「そうそう!ちょっと待ってて!」

タッタッタッ

海未「あ、ちょっと!」

希「行っちゃったね」

ことり「凛ちゃんとかかな?」

希「どうやろうね、名前を言わない辺り別人っぽいけど」

海未「それ外したら究極にダサい人ですよ」

希「ウチの占いは90%当たるから」ドヤ

海未「…それ占いと関係あります?」

希「ウチの心には小宇宙《コスモ》が存在してるからね、未来が見えるんよ」ニッ

海未「あっはい」

63: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:14:58.27 ID:slrjrDJf0
海未「では試しに私がこれから20秒以内にすることを予言してください」

希「海未ちゃんはこれから20秒以内に息を吸うよ」

海未「小学生ですか!」

希「強ち間違ってないやん?」

ことり「確かに…」

希「これが勝利の力《スピリチュアルパワー》やで?」

海未「一々ルビ振らなくていいですから…後それはハンドパワーのパチモンですか?」

希「パチモンとは人聞きの悪い!ウチの固有魔法やで?」

海未「そうですか…」

ことり「関心すらないし…」

希「こう見えても心理学は得意なんやけどな~…」

海未「…じゃあそのわけわからないルビと言葉の数々も心理学の何かですか?」

希「これはウチの個性《オリジナリティー》やで?」

海未「一々ルビ振ってるのに腹が立ちますね」

ことり「あはは…」

64: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:16:43.75 ID:slrjrDJf0
穂乃果「お待たせ!」

希「お、帰ってきた」

海未「どこに行ってたのですか?」

穂乃果「えへへちょっと一年生の教室に行っててね」

ことり「一年生の教室?」

穂乃果「はい、入っていいよ」

のぞことうみ「…?」

「あ、え、えっと……」

希「おっ?」

海未「穂乃果、この方は…」

ことり「お友達?」

穂乃果「そうそう!今日知り合ったばっかりの」


穂乃果「真姫ちゃんだよっ!」


真姫「よ、よろしくお願いします」ペコリ

希「ほうほう真姫ちゃんかーウチ東條希よろしくなー」

ことり「南ことりです♪よろしくね♪」

65: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:19:40.56 ID:slrjrDJf0
海未「園田海未と申します、後そこの希はちょっと頭にお花畑が咲いてるらしいのであまり気にしないであげてください」

希「なんでや!ウチは100%…ひゃっくぱー健全やで!!」

海未「希が健全なら私は200%健全ですよ」

希「じゃあウチは300%健全や!」

海未「なら私は1000%健全ですよ!」

希「一気に桁上がったね?!」

海未「限界は超えるためにあるんです」

希「おお…名言っぽい…」

海未「ふっ…」キリッ

希「…ないわ」

海未「あぁん?!」

穂乃果「も、もう二人とも!」

ことり「あははごめん、これがアットホームな雰囲気だからもしかしたら肌に合わないかも…」

真姫「い、いえ大丈夫ですよ」

ことり「ならいいけど…」

ことり(三人の前に現れたのは穂乃果ちゃんが今日知り合ったという真姫ちゃんという子)

ことり(つり目でなんだかちょっと怖いけどすごく常識はありそうな感じがする)

ことり(まぁとりあえずこの五人で中庭でお昼を食べた)

66: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:21:07.06 ID:slrjrDJf0
穂乃果「それでそれで~真姫ちゃんが音楽室にいてー」

希「それで出会ったと?」

穂乃果「そうそう!」

海未「へー…ピアノが出来るのですか」

真姫「は、はい少しですけど…」

穂乃果「少しじゃあんなに弾けないよ!真姫ちゃんはすごい人だよ!天才だよっ!」

真姫「うぇええ?!そ、そんな別に…普通よっ!」

海未「希希」ボソボソ

希「なんやなんや?」ボソボソ

海未「顔赤くしてますよ、真姫」

希「あぁあれは内心超嬉しがってるパターンやね」

海未「チョロいですね」

希「チョロイね」

67: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:23:00.37 ID:slrjrDJf0
ことり「希ちゃんと海未ちゃんって不思議な関係だよね…」

海未「何がですか?」

ことり「い、いやさっきのあの言い合いがウソみたいで…冗談なのは分かってるけど」

希「ウチらはああいう関係が望ましいんよ、ふざけられるときに思いっきりバカやってでも真面目な時は一心同体、海未ちゃんが死がウチの死と同義であるように協力し合うそんな仲間やろ?ウチら」

海未「ええ希にしては満点を上げたいくらいにいいことを言いますね」

希「せやろー?ちなみにテストの点数は海未ちゃんより勝ってるからな?」

海未「あ?」

希「負け惜しみべろべろべー」

海未「もしかして死にたいのですか?」ゴゴゴゴゴ

ことり「う、海未ちゃん抑えて」アセアセ

真姫「…ホントにあの人達私より先輩なんですか?」

穂乃果「う、うんそうだよ、でもすごく優しくて頼りになる人だから」

真姫「そ、そうなんですか…」

68: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:24:14.75 ID:slrjrDJf0
穂乃果「希ちゃんはいつもあんな感じだけど真面目な時は超がつくほど人が変わるよ、この中で一番頼りになる人なら絶対希ちゃんだし」

穂乃果「海未ちゃんはちょっと抜けてるところあるけどどんなことにも真摯に受け止めてくれる人だからすごく悩み事とか相談しやすいし」


穂乃果「ことりちゃんは私が一番信頼してる人だから、困ったらまずことりちゃんのところに行けばいいよ」


真姫「ことりさんのところに?」

穂乃果「うん!頼りないって思うかもだけどことりちゃんはすごい力を秘めてるからさ」

真姫「すごい力…?」

穂乃果「うんうん!もう言葉じゃ説明出来ないくらいにすごい力だよ!!」

真姫「そ、そうなんですか…」

希「いやー小さい頃の海未ちゃんはあんなに可愛かったのに…今も可愛いけど」シクシク

海未「な、なんですか急に」

希「真姫ちゃん聞いてよぉ~ウチの独り言だと思ってぇ」

真姫「えっは、はい…」

69: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:26:13.29 ID:slrjrDJf0
希「海未ちゃんはね…小さい頃は希お姉さまなんて呼んでくれて…ホントに可愛かったのに今じゃこんな…反抗期になってしまってお姉さん悲しいよ…」シクシク

海未「なっ…!」カアアア

海未「あ、あれ一時の気に身を任せてただけで!」

希「ほらほら見てよこれ…こんな堅物が希お姉さまなんて言ってたんやで?あり得んやろ??」

真姫「そ、そうですね…」

海未「大体ですね、今と昔は違うのですよ!希が本当の姉ならまだしも違うのであれば言わなくなることも何も不思議ではありません!」

希「ぐすんっ…小学校の頃はにこっちが長女でウチが次女でえりちが三女でそれからそれから…」

穂乃果「あーあったなー懐かしい!」

ことり「ねっやったね」

真姫「小さい頃から一緒なの?」

穂乃果「そうだよ!長い付き合いの人は幼稚園から、それ以外は小学校から!」

真姫「へ、へぇー…」

穂乃果「でもこれからは真姫ちゃんも一緒だからっ!」

希「そうやで!」

海未「ですねっ!」

ことり「うん!」

70: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:27:26.33 ID:slrjrDJf0
真姫「………」ウルウル

真姫「あ、ありがとう…!」

希「いいっていいって!」

ことり(真姫ちゃんは涙目ながらに笑顔を見せてくれた)

ことり(ことりたちのこの関係は切っても切れぬ強い絆で結ばれてる、それは穂乃果ちゃんが死んでもなお続いてたと思う)

ことり(ただそんな絆も知らないうちに手を当てただけですぐに綻んでしまいそうな絆に成り下がってた)

ことり(みんながみんなを支えてたから穂乃果ちゃんが死んだとき、穂乃果ちゃんの代わりがいなくて崩れちゃったんだ)


ことり(ただね、代わりなんて世界のどこにもいないよ)


ことり(私たちの穂乃果ちゃんは穂乃果ちゃんしか務まらない、海未ちゃんは海未ちゃんしか務まらない)

ことり(穂乃果ちゃんが帰って来て二日目になるけど感じるモノはまだ懐かしさとか昔がどれだけ幸せであったかとかことりでもくどいなと思うほどにしつこく思ってるんだ)

ことり(学校の帰り道、穂乃果ちゃんと二人っきりでお話ししてた)

71: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:29:23.96 ID:slrjrDJf0
スタスタスタ

穂乃果「……」

ことり「…」

穂乃果「真姫ちゃん、どうだった?」

ことり「すごく礼儀正しくて、それにしっかりものだったなって思ったよ」

穂乃果「そっか、ならよかったよ」

ことり「どうして?」

穂乃果「ことりちゃんがイヤな思いとかしてないかなって思ってさ、急な話だったから」

ことり「そんな気持ちは全然ないよ、むしろ私たちの輪に新しい人がきて嬉しいくらい」

穂乃果「そっかそっか」

穂乃果「…真姫ちゃんね、音楽室で一人ピアノを弾いててさ」

ことり「うん」

穂乃果「私はそのピアノの演奏を終わるまでドアの窓からじっと見つめてたけど終わったときにね俯いて悲しそうな顔をしててね」

穂乃果「私、それみただけで分かったんだ」

ことり「分かった?」

穂乃果「この子、独りぼっちなんだって」

ことり「!」

72: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:31:06.36 ID:slrjrDJf0
穂乃果「だから私が手を差し伸べなきゃって思って真姫ちゃんと知り合ってみんなのところに呼んだんだ」

ことり「…そっか」

ことり「………」

ことり(ことりもその穂乃果ちゃんの優しさに救われた)

ことり(穂乃果ちゃんがこんな何も出来ないことりを引っ張ってくれて今ことりが希ちゃんや絵里ちゃんなんかがいるあの輪に入れてることが奇跡でしかなかった)

ことり(絵里ちゃんが言ってたでしょ?ことりは唯一のまとめ役、この絶望的アホしかいないメンツの希望だって)


絵里『いやことりはお味噌汁でいうダシよ、ことりは唯一のまとめ役、この絶望的アホしかいないメンツの希望だから頑張って』グッ


ことり(絵里ちゃんにそんなつもりはないのは知ってるけどことり的にはただあの輪にしては異色の存在だ、と言われてるように感じた)

ことり(穂乃果ちゃんがいなかったらことりはあの輪にはいなかった、だってことりはみんなみたいにツッコミを入れることもボケを挟むことも出来ない、いうなればみんなのノリについていけない人だから)


ことり(絵里ちゃんのいうように私はみんなとは違う存在だったから)


ことり(だから余計に穂乃果ちゃんの優しさは“痛かった”)

ことり(長いこと感じていなかったその優しさはあまりにも鋭すぎる優しさだった、優しさに触れてるはずなのに痛みを感じるなんておかしな話だよね)

73: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:32:44.86 ID:slrjrDJf0
ことり(でもこの優しさはことりを救ってくれた時感じた優しさによく似てたから…また…)

ことり「………」


ポロポロポロ…


穂乃果「もう、ことりちゃんは泣き虫なんだからっ……」

ギューッ

ことり「うぅ…穂乃果ちゃあぁ…!!」

穂乃果「ことりちゃんは笑顔が可愛い人なんだから、笑顔でいようよ?」

ことり「ふぇええええええええええん!!」

穂乃果「あはは…」

ことり(感情が抑えきれなかった、今まで心の内に溜め込んだ感情にブレーキが無くて、あったとしても効かなくてとにかく涙が止まらなかった)

穂乃果「ほらほら泣かない泣かない、私はここにいるから」ヨシヨシ

ことり「ぐすっ…ひぐっ…」

穂乃果「よくわからないけどことりちゃんは色々溜め込みすぎだよ、私だけじゃなくて希ちゃんや海未ちゃんとかだっているんだからさっ」

ことり「そうだけど…そうだけどぉ…!」

穂乃果「もうっ泣かない、それ以上泣いちゃうとことりちゃんを置いてっちゃうぞ」

ことり「!」

ことり「な、泣き止むから、ま、待って…」グズグズ

穂乃果「ふふふっうんうん分かった分かった」クスッ

74: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:34:39.71 ID:slrjrDJf0
穂乃果「…でもまぁね、ことりちゃんが泣いた理由さっなんとなく分かるよ」

ことり「えっ…?」

穂乃果「過去、思い出しちゃったんでしょ?真姫ちゃんとことりちゃんが似てたから」

ことり「う、うん…」

穂乃果「やっぱり…今思えばことりちゃんの時もよく似てたね」

ことり「…」

穂乃果「でも、あの時は真姫ちゃんの時よりもっともっと運命的だったよね」

ことり「そう…かな…?」

穂乃果「そうだよ、道端で迷子のことりちゃんを私が見つけて、でも結局私も一緒に迷子になっちゃって夜遅くまで近くにあった公園で野宿したよね」

ことり「…あはは、あの時はね」

75: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:35:41.70 ID:slrjrDJf0
穂乃果「…私、すごく思うんだ」

ことり「何が?」


穂乃果「例えばの話をしない?」


ことり「例えばの話…?」


ビュンッ!

ことり「きゃっ?!」

ことり(突然ことりと穂乃果ちゃんの周りに突風が吹いた、思わず両の腕で顔を隠し目を瞑った)

ことり(そして少し経つとなんだろう、とても甘い香りがした)

ことり(身体に何かが当たってる感触もする、だけど風が止むまで目を開かなかった)

76: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:36:39.85 ID:slrjrDJf0
ことり「んん…?」

ことり「!」

ことり(そして目を開くとどうだろうか、地平線の彼方、無限に広がる花園に目先数十mの地点には湖があった)

ことり(穂乃果ちゃんはその湖の近くで黄昏てた、湖の先、白い花が咲く一面を見てた)

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「ことりちゃん」

ことり「ここって…ここはどこなの?!」

穂乃果「…ここはどこでもないよ」

ことり「どこでもない…?」

穂乃果「それより例えばの話をしようよ」

ヒラヒラヒラ

ことり「!」

ことり(ふとことりが触れたものに意識を向けるとこのお花畑は赤い花びらが舞ってるのに気が付いた)

77: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:38:15.60 ID:slrjrDJf0
穂乃果「よいしょっ」

ことり「穂乃果ちゃん…?」


穂乃果「今、この何百、何千とある花びらの中で掴んだこの一つの花びら」



穂乃果「これがことりちゃんだよ!」



ことり「それが私…?」

穂乃果「私とことりちゃんが出逢えたのはホントに奇跡だったんだよ、この花びらに、いやことりちゃんに出逢えたことが私の一番の幸せだよ!!」

ことり「!」

穂乃果「こんな数えきれない花びらがあるのにそんな中で私がことりちゃんという花びらを掴んだ、それってホントに夢みたいな出来事だと思わない?!」

穂乃果「何千、何億といる人の中で何十、何百とある国の中更に、何百、何千とある地域の中、そしてそして偶然という必然が重なって出来た私とことりちゃんの出逢い!」


穂乃果「これってキセキでしょ?!誰が何と言おうとそれをバカにすることなんて出来ないでしょ?!」


穂乃果「だからことりちゃんは一生忘れないでほしいんだ!」

78: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:38:56.47 ID:slrjrDJf0



穂乃果「穂乃果が一番大切してるのはことりちゃんだってこと!!!」



79: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:39:56.28 ID:slrjrDJf0
ことり「!!!」ウルウル

ことり(穂乃果ちゃんの瞳はまたしても輝いてた)

ことり(ことりの瞳はその輝きに反射し輝きを宿してた)

ことり(そして穂乃果ちゃんが“その言葉“を言った瞬間、地面に咲く花が花びらに変わっていった)

穂乃果「だからもう泣かないで!」

穂乃果「ことりちゃんは笑顔が一番だからっ!」ニコッ

ことり「うぅ…ううっ穂乃果ちゃん!」ダッ

タッタッタッ!

ことり(ことりは穂乃果ちゃんに向かって全力疾走をした)

穂乃果「ねえことりちゃーん!」

ことり(そんな中穂乃果ちゃんがこんなことを言ったんだ)


穂乃果「これだけは覚えといて」



穂乃果「今ここで起こってることは夢なんかじゃないよ」



ことり(穂乃果ちゃんがその言葉を言い終えた瞬間にことりの視界は)


ことり(暗転した)



80: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:41:19.84 ID:slrjrDJf0
ことり「はっ…!」バサッ

ことり「…」キョロキョロ

ことり「…家だ」

ことり(目覚めたら家だった、しかも外を見る限り朝だった)

ことり「…夢?」

ことり(あの、お花畑の出来事から今に至るまでの記憶がない)


穂乃果『今ここで起こってることは夢なんかじゃないよ』


ことり「いや…夢じゃないのかな」

ことり(穂乃果ちゃんは言った、あれは夢じゃないと)

ことり(当時考えても、今考えてもあそこは謎だらけの世界だった)

ことり(ただあれが夢じゃないっていうならあそこで平然としてた穂乃果ちゃんはなんなんだろう、疑問に思う)

ことり(よく分からない…けどあまり驚きはしなかった)


ことり(あそこにいたのが穂乃果ちゃんだったから、穂乃果ちゃんだから何が出来ても全然驚かないよ)


81: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:42:27.39 ID:slrjrDJf0
穂乃果『私とことりちゃんが出逢えたのはホントに奇跡だったんだよ、この花びらに、いやことりちゃんに出逢えたことが私の一番の幸せだよ!!』


ことり「ふふふっ」

ことり(穂乃果ちゃんのあの言葉が今も心の中をクルクルと回ってる)

ことり(あの言葉が一生ことりの宝物になるのをこの胸に秘めて確信した)

ことり「!」

ことり「そ、そうだ穂乃果ちゃんは…!」

ピッピッピッ

ことり(穂乃果ちゃんとのメールのやり取りを確認した、夢ってそもそも今までの穂乃果ちゃんの出逢いさえも夢なんじゃないかって思って焦りだした)

ことり「…ある」

ことり「よかった~…」ホッ

ことり「…行かなきゃ」

ことり(あの穂乃果ちゃんの言葉で胸が弾んだ)

ことり(あの言葉一つで清々しい朝になった、朝ごはんを食べて笑顔を振りまきながら走って学校へ向かった)

82: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:43:39.58 ID:slrjrDJf0


「こっとりちゃーん!」


ことり「!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「やーやー!朝から元気だねー!」

ことり「それは穂乃果ちゃんもねっ」クスッ

穂乃果「うふふっまぁ元気にやっていかないとね」

ことり(そろそろ感じなくなったよ)


ことり(穂乃果ちゃんが死んだ時の、そして後のお話)


ことり(あの言葉一つでこんなにも胸がときめいてたから今はイヤなこと、何も感じない)

ことり(だから思いっきり走った、この気持ちを胸も内側だけに止めとくなんてもったいなくてただ今は)


ことり(私の心の中から何かが弾けだしそうなくらいに幸せが溢れてたんだ)


83: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:45:42.41 ID:slrjrDJf0
~その後、学校


穂乃果「文化祭?!」


絵里「違う違う、文化祭じゃなくて音ノ木坂のお祭りみたいなものよ」

ことり「去年そんなのあったっけ?」

希「えりちがもっと音ノ木坂には熱気が必要だって理事長に提案したんやって」

にこ「熱気ぃ…?あんた何企んでんのよ」

絵里「いやー…私はただわいわい盛り上がりたいなって…」

にこ「うわー…陽キャの鑑じゃない」

希「違う違う、えりちは陽キャじゃなくてポンキャや」

にこ「あぁ…まぁ確かにそうね」

絵里「何よポンキャって」

海未「まぁ…そうですねポンキャですね」

ことり「あははは…」

84: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:46:32.34 ID:slrjrDJf0
穂乃果「絵里ちゃんは賢い可愛い」


絵里「えりーちか!」


希「えっ…」

海未「絵里…?」

絵里「……あ、えっち、違うのよ!口が勝手に動いたのよ!」

にこ「そう…」

穂乃果「絵里ちゃんはやっぱり可愛いね~」

ことり「そ、そうだね」アハハ

絵里「んむぅ…もういいわよ話を戻すわよ?」

希「戻したいの間違いじゃない?」クスクス

絵里「やかましい!!」

海未「ふっ…」

85: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:47:41.01 ID:slrjrDJf0
絵里「まぁ文化祭と差別化はするけどやることは文化祭とほぼ変わらないわ」

絵里「各クラスでお店出したり体育館で見せ物見せたりとかそんな感じよ」

ことり「気分は文化祭でやればいいんだねっ」

穂乃果「だねっ!」

海未「そういえばこの前クラスで話し合いがありましたね」

絵里「ええ、今は何をやるか決めて準備をする頃なの」

絵里「だからこれからは祭りに備えて各クラスで色々やると思うわ」

穂乃果「へー」

ことり「そっか」

希「そっかー祭りかー楽しみやなぁ」

にこ「ここはにこの魅力でお客さん呼んじゃうよ~!」

希「うーん10点」

にこ「ぬぁんでよ!」

86: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:49:09.91 ID:slrjrDJf0
絵里「それでなんだけど…」

ことり「?」

絵里「今日ここに集まってもらったのはもちろん本件が他にあってね」

穂乃果「なになに?」

希「ここで明らかになるえりちの野望《インサイド》…」

絵里「それはね…」


絵里「私たちで何か出し物をしない?」


にこ「はぁ?出し物?」

絵里「そう、凛と花陽も入れてやりたいの」

海未「出し物ですか…して何か案でも?」

絵里「いや特に決めてないの、というか私だけで決めちゃまずいかなって」

希「なるほどなー」

にこ「王道的には劇よね」

ことり「劇かー」

海未「劇…私たちだけじゃ絶対に完成度が高い劇は出来ないと思うのですが…」

絵里「まぁ劇じゃなくてもなんでもいいの、とりあえず私たちで楽しめる出し物をしたいの」


穂乃果「楽しめるもの…か」


87: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:50:26.00 ID:slrjrDJf0
希「マジックとかどう?」

にこ「それ私たちいる?」

希「人を使ったマジックみたいな?」

ことり「お金とかかからないかな?」

希「うーん…確かにそう言われるとキツイかもなぁ」

絵里「無理しない程度で行きましょう?」

希「そうやねぇ…」

海未「無理しない程度で私たちが楽しめるもの…劇しかないのでは?」

ことり「うーん確かにそうだね」

絵里「じゃあ劇をやるってことで話を進める?」


穂乃果「待って!」


絵里「ん?どうしたの?」

穂乃果「あるよ!みんなで出来る最高の出し物!」

にこ「なによ」

88: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:51:47.83 ID:slrjrDJf0



穂乃果「ライブだよ!ライブ!」



ことり「ライブ?」

穂乃果「ダンスと歌!アイドルみたいなものだよ!」

海未「あ、アイドル?!」

希「面白そうやね!」

絵里「でも歌はどうするのよ」

穂乃果「真姫ちゃんだよ!真姫ちゃんなら作曲出来る!」

絵里「真姫?」

にこ「誰?」

希「あ、そっかえりちとにこっちは知らないんだっけ」

海未「確かに真姫なら可能…かもしれませんね」

ことり「真姫ちゃんは昨日知り合ったお友達だよっ穂乃果ちゃんが連れてきてね」

穂乃果「そうそう!」

絵里「ふむ…まぁ確かに作曲出来るならアリかもしれないわね」

89: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:52:58.44 ID:slrjrDJf0
にこ「ダンスは?」

絵里「振り付け程度なら出来るわよ」

希「流石えりち!よっ!生徒会長!」

絵里「でしょ?」フフッ

にこ「調子いいわね…」

にこ「それで衣装は?」

ことり「衣装は私に任せて!曲にあった最高のやつ用意するよ♪」

穂乃果「よーしっ!そうと決まれば早速真姫ちゃんに相談だーっ!」ダッ

ガチャッ!

タッタッタッ!

海未「ちょ、ちょっと穂乃果!」

絵里「相変わらず穂乃果は行動が早いわね」クスッ

希「ウチらの先導役やからなぁ」

90: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:54:05.43 ID:slrjrDJf0
海未「はぁ…というか私はアイドルなんてしませんよ?!」

にこ「は?なんでよ」

海未「だ、だってアイドルなんて恥ずかしいですし…」

希「いやいや小学校の頃にやった漫才に比べたら微々たるものやろ?」

海未「や、やめてくださいもう思い出したくないんです!」

希「みんなのハートを打ち抜くぞ~♪」


希「ラブアローシュート!!」バァン


海未「うわあああああああああああ?!?!」ガタガタ

絵里「ちょっと海未!」

ことり「あははは…海未ちゃん昔は結構やんちゃだったからね…」

にこ「ここが生徒会室でよかったわね…」

91: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:55:50.20 ID:slrjrDJf0
ことり「よしよし…」ナデナデ

海未「うぅ…」

希「そんな角で頭抑えるほどなんか…」

絵里「悪いけど海未は強制参加だからね」

にこ「慈悲も容赦もないわね…」

海未「そんなぁ…!」

海未「ことりぃ…助けてくださいよぉ…!」

ことり「海未ちゃん…」


ことり「ファイトだよっ」


海未「うわあああああ!!」

にこ「やれやれ…」

希「海未ちゃんの破廉恥センサーは効き目がすごいからなぁ」

ことり「アイドルなんて面白そうじゃん!出来るかもしれないのにやらない手はないよ!」

絵里「その通りよ海未、凛や花陽を含めた私たちが集まるのは今日一年しかないんだからその間に思いっきり輝きたいでしょ?」

希「うむっえりちの言う通りだよ」

92: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:57:20.88 ID:slrjrDJf0
海未「ううううぅ…」

にこ「唸り始めたわよ」

希「今海未ちゃんは自分と戦ってるんよ、そう聖戦《ジハード》や!」

ことり「海未ちゃん頑張って!」

絵里「何の応援よ…」

トントン

絵里「あ、はーいどうぞ」

花陽「おじゃまします」

凛「おっじゃまー!」

にこ「りんぱなじゃない」

絵里「その呼び方はやめなさい」

花陽「面白そうなことするんだねっ」

絵里「ええそうよ」

ことり「真姫ちゃんはなんだって?」

花陽「いいけど歌詞がないと作れないって言ってた、でも穂乃果ちゃんはそのことより協力してくれることが嬉しかったみたいで真姫ちゃんにぎゅーってしてたよ」

希「おー協力してくれるんか、よかったよかった」

93: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/12(火) 23:58:54.97 ID:slrjrDJf0
にこ「それで歌詞ってどうするの?」

絵里「歌詞と言えば…」チラッ

海未「…な、なんですか?!」

希「やっぱ歌詞と言ったら海未ちゃんだよね~」ニッコリ

花陽「詩…とか小さい時よく読んでたもんね」

絵里「海未」

海未「な、なんでしょう…」

絵里「ますますしない理由が無くなったわね、もう諦めなさい」


絵里「これは生徒会会長の命令よ」


にこ「職権乱用もいいとこね…」

希「いや職権乱用に分類されるんかそれ…」

94: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:00:13.05 ID:Ohmi38x40
凛「頑張ってねー」

海未「何を…そんな他人事みたいに…!」


凛「だってアイドル、凛はやらないもん」


にこ「は?」

絵里「は?」

海未「は?」


花陽「は?」


凛「えっ…いや凛はやらないよ?知ってるでしょ?凛がみんなが着てるような服が着れないことくらい」

希「いやいや何を言ってるん?やるやらないの問題じゃないんよ、やるしかないんよ」

ことり「そ、そうだよ凛ちゃんもアイドルやろ?」

凛「い、いや…」

花陽「どうして!凛ちゃんは可愛いじゃん!可愛いからアイドルしてもいいんだよ!」

花陽「私みたいな人がしていいのかは分からないけど凛ちゃんはちゃんとやる権利があるんだから!」

凛「い、いやかよちんの方が可愛いよ…」

95: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:02:15.39 ID:Ohmi38x40
にこ「そういう問題じゃないでしょ」

絵里「そうよ」

海未「そうですよ!」

希「海未ちゃん、開き直ってやろうとしない凛ちゃんに口出ししてるやん…」

ことり「あはは…」

花陽「やろうよ!凛ちゃん!」

ギュッ

花陽「絶対楽しいから!こんな私でもやりたいって思えるんだから!」

希「そうやで!ウチらがついてるから!」

ことり「うんうんっ!」

海未「そうですよ!」

凛「…やだっ!凛は見てる方がいい!」ダッ

ガチャッ!

タッタッタッ!

にこ「あ、ちょっと!」

絵里「困ったわね…」

希「んまぁ当然と言えば当然かもしれないけどね」

ことり「そうだね…なんせ凛ちゃんは可愛いって言われるのが好きじゃないもんね…」

花陽「凛ちゃん…」

96: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:04:02.33 ID:Ohmi38x40
ガチャッ!

穂乃果「みんな!」

海未「穂乃果」

絵里「おかえりなさい」

穂乃果「なんか凛ちゃんがすごい勢いで走ってったけどなんかあったの?」

にこ「まぁ…察せられるでしょ?」

花陽「凛ちゃん可愛い服苦手だから…」

穂乃果「やっぱり…」

真姫「どうしたの?」

穂乃果「まぁちょっと身内でちょっとあってね」

絵里「その子が真姫?」

真姫「せ、生徒会長…」

絵里「あ、生徒会長だからそんないつもと違う対応とかはしなくていいのよ?私たちはアットホームな関係でありたいからね」

希「おーこのえりちは賢いわー」

絵里「いつだって賢いわよ?」フフッ

希「……賢くないわ」

97: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:05:55.89 ID:Ohmi38x40
絵里「それで曲を作ってくれると聞いてるのだけど」

真姫「は、はい歌詞さえあれば…」

希「大丈夫やで!歌詞を書いてくれる人がここにはいるから!」

ことり「じーっ」

海未「な、なんですか!」

にこ「この人が書いてくれるから作曲の方をお願い」

真姫「わ、分かりました」

穂乃果「あ、というかにこちゃん絵里ちゃんとか後花陽ちゃんも初対面だから簡単に自己紹介してよ!」

にこ「矢澤にこ、よろしくね」

絵里「絢瀬絵里よ、さっき言った通り生徒会長をしてるのだけどもっといつもの感じで接していいからね?」

花陽「小泉花陽ですっ一応真姫さんと同じクラスなんだけどよろしくねっ」

真姫「西木野真姫です、えっと…よろしくお願いします」

穂乃果「もー真姫ちゃんはもっといつもの感じでいいんだよ?後さんじゃなくてちゃん付けとか!」

穂乃果「花陽ちゃんもそうだよ!これからいっぱい関わるんだから真姫さんじゃなくて真姫ちゃんでいかないと!」

花陽「う、うん!真姫ちゃんっ!」

98: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:07:08.68 ID:Ohmi38x40
絵里「じゃあ私は真姫、馴れ馴れしいかもって思うけどごめんね」

真姫「い、いえ」

にこ「じゃあ私も真姫ちゃんで」

絵里「私たちのことはなんて読んでくれるのかしら?」

真姫「絵里…さんで」

絵里「それはダメよ」

希「そうやで?」

真姫「で、でも…」

絵里「いいから」

真姫「…絵里」

絵里「はいっよくいえました♪」

海未「子供をあやしてる時みたいですね…」

ことり「絵里ちゃん気を遣うのあんまり好きじゃないもんね」

にこ「くそ不器用な女だからねぇ…」

花陽「それはいいすぎじゃ…」

99: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:08:20.85 ID:Ohmi38x40
穂乃果「よしっ!じゃあ早速取りかかろう!」

海未「…ん?そういえばその音ノ木坂祭りはいつでしたっけ?」

絵里「えっとー約二週間後かしら、12日後よ」

海未「はぁ?!二週間で曲を完成させてダンス覚えて歌を歌えるようにしないといけないのですか?!」

絵里「ダンスは簡単でいいわ、それより必要なのは踊りきる体力とチームワークよ」

真姫「つ、ついでにいえばちゃんと人に聞かせられるレベルの歌唱力も必要…だと思います」

穂乃果「おーそれぞれ特化した人がいるからなんか困らなそうだね」

海未「楽観的すぎます!」

にこ「衣装は大丈夫なの?大変なら制服でもいい感じはあるけど」

希「ねっお金もかかるしすごく大変だし」

ことり「ううん大丈夫!せっかくの機会に遠慮なんていらないよっ!」

希「おっことりちゃんやる気やね!」

ことり「当然!」

ことり(これからに対して期待で胸がいっぱいだった)

ことり(再びみんなで何かが出来る喜び、これを感じれただけでことりは舞い上がりそうなくらいに心が弾んでた)

101: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:10:01.55 ID:Ohmi38x40
穂乃果「じゃあとりあえずこれからどうすればいいのかな?」

花陽「曲を作ることからかな?」

真姫「歌詞がないと作れないから海未…にお願いするわ」

希「おっタメ口になってきてる」

絵里「これからの変化に期待ね」

真姫「い、一々言わないでください!」カアアア

希「ほらー戻っちゃったじゃん」

絵里「なんで私の方みて言うのよ」

希「えりちが悪いからだよ」

絵里「は?」

にこ「はいはいストップ、海未、あんたから始まるから歌詞頼んだわよ?」

海未「は、はい…」

花陽「が、頑張ってね」

絵里「困ったことがあったらなんでもいうのよ?」

希「そうやで?」

真姫「む、無理はしないように…」


海未「はい……」


102: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:10:57.84 ID:Ohmi38x40
~その後、教室

海未「はあああ…」

ことり「あはは…やっぱり作詞は難しい?」

海未「難しいどころじゃないですよ…何を書けばいいのかまったく分かりません…」

穂乃果「ならみんなに言えばよかったじゃーん」

海未「あ、あんな期待の眼差しを向けられたら言うにも言い出せないでしょう!!」

ことり「海未ちゃん、小さいときから控えめだったもんね」

穂乃果「成長して弱気は直ったと思ったんだけどやっぱりまだふりきれてないんだね…」

海未「うぅ…」

103: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:12:01.19 ID:Ohmi38x40
ことり「よしっここは私たち三人で考えよう?」

穂乃果「うんっ!そうだね!」

海未「ことり…穂乃果…!」

ことり「困ったときはお互い様だもんねっ」

海未「ありがとうございます…!本当に…本当に…!!」


穂乃果「それでだけど……」





キーンコーンカーンコーン

穂乃果「結局なにも決まってないじゃん!」

ことり「お昼になっても何も決まってないなんて…」

海未「やっぱり作詞なんて無理ですよぉ!」

穂乃果「諦めたらそこで終わりだよ!」

ことり「そうだよ!」

104: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:13:55.62 ID:Ohmi38x40
海未「うぅ…ですがぁ…!」

穂乃果「うーんどうしよっか」

ことり「テーマとか決めた方がいいんじゃない?」

海未「テーマ…うーん…」

穂乃果「やっぱりさ、こう…なんていうか自分の気持ちを歌詞にしたらいいんじゃないかな?」

海未「自分の気持ちを…うーん…」

ことり「なんか簡単そうで難しいね…」

穂乃果「そっかなー?」

海未「穂乃果は何か案でも?」

穂乃果「ん?いやーせっかくみんなの前で披露するなら盛り上がれる歌がいいなって」

海未「なるほど…確かにしんみりしたようなものでは盛り上げに欠けるかもしれませんね」

ことり「いいね!盛り上がれる曲!」

穂乃果「でしょー?」

海未「ですがテーマを決めたらますます何を書けばいいか…」

穂乃果「んもーそれじゃあ一生作れないじゃん!」

海未「仕方ないでしょう!」

105: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:15:09.63 ID:Ohmi38x40
ことり「とりあえずお昼にしよっか?早くしないと終わっちゃうし」

海未「そうですね」

穂乃果「はーい」

スタスタスタ

ことり(昼、曲の歌詞を三人で考えてた)

ことり(歌詞って聞いて簡単なんじゃない?って思う人いるかもしれないけどこれが案外難しくてね、そもそも曲の方向性が決まってないし決まったとしてどんな言葉を使えばいいのか全然分からないんだ)


ことり(結果、歌詞作りは難航中だった)


ことり(昼が終わり放課後になっても歌詞作りに進行はほとんど見受けられなかった)


ことり(ただ、難航中なのは歌詞作りだけじゃないんだ)


106: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:16:04.26 ID:Ohmi38x40
花陽「凛ちゃん!」

凛「いやいやいや!」

希「もー…強情やなぁ…」

ことり「凛ちゃん…」

絵里「凛、お願いよ…こういう機会じゃないと私たち、一緒に何かが出来ないのよ…」

絵里「この音ノ木坂という、高校生という場所でしか私たち一緒が出来ないのよ…」

凛「い、いや…凛はそんなアイドルなんて似合わないから…」

希「似合うどうこうの問題じゃないんよ、やりたいんよウチら」

絵里「その通りよ、みんなでやりたいの」

凛「凛は…いい…」

絵里「んーもう!」

希「えりちイライラしちゃダメだよ」

絵里「分かってるって…!」

希「イライラしてるやん…」

ことり(凛ちゃんが頑なにことりたちのしようとしてることに参加しようとしなかった)

107: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:16:52.69 ID:Ohmi38x40
ことり(凛ちゃんは昔っからそうだった、女の子らしい服は着ないし女の子らしいこともしなかった)


ことり(昔っから男の子みたいだねって言われそしてバカにされ続けて自分が女の子のその一人だっていうことに抵抗を持っちゃったんだ)


ことり(小学校低学年以来凛ちゃんがスカートを穿いたのを見たことがない、ことり的には凛ちゃんがそれでいいならことりは何も言わないようにしてた)

ことり(だってことりが人の都合にあれこれいうことなんて出来ないから、ことりが望むのはいつだってみんなが笑いあえる平和だから)

ことり(でも、ことりがそんなこと思ってる今にその平和は消え去ろうとしてた)

花陽「凛ちゃん!」

凛「何さっ!凛には似合わないの!」


凛「そんなにやりたきゃ凛以外の人誘ってやってよ!!」


ことり「り、凛ちゃん…」

希「んー…」

花陽「みんなでやるんだから凛ちゃんも一緒がいいんだよ…」

108: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:18:09.26 ID:Ohmi38x40
絵里「…凛」

凛「…何?」

絵里「凛、お願いよ…みんなでやりたいのよ…」

凛「…やだ」

絵里「どうして…?!なんでなの?」

凛「凛には似合わない、凛がやることじゃない」

希「そんな凛ちゃんだからこそじゃん?」

ことり「そうだよ!」

凛「違う、凛は…出来ないしやらない」

バンッ!

凛「?!」ピクッ

絵里「こっちは…こっちは…」プルプル

ことり「え、絵里ちゃん…?」


絵里「こうやってみんなで立てるステージは最後になるかもしれないのに!それなのに一人でも欠けちゃ意味がないのよ!」


109: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:19:58.63 ID:Ohmi38x40
絵里「希だって!花陽だって!ことりだって!!」


絵里「やるのは今じゃなきゃいけないの!このみんなが当たり前のように集まれる今が好きだから今やりたいの!」



絵里「だから凛がどうであれ参加は絶対なのッ!!!いい?!」



凛「…!」ウルウル

凛「ひぐっ…うぅ…うわああああああああああん!!」ダッ

希「あ、凛ちゃん!」

希「もーえりち言い過ぎ!凛ちゃんにだって事情があるんだからそんな直球に言っても何のためにもならないよ!」

絵里「だ、だって仕方ないじゃない!」

希「仕方ないにしても不器用すぎるんよ!えりちは自分の気持ちだけでぶつかりすぎなんよ!」


希「もっと考えて口に出してや!!」


絵里「じゃあどうしろって言うのよ!」

花陽「ふ、二人とも…」

ことり(絵里ちゃんはすごく聡明で高校の時だけじゃない、中学の時も生徒会長をしたし小学生の時は学級委員長をしてた)

ことり(それだけ頭がいいし人格も優れてるし何より優しい)


ことり(けど絵里ちゃんは致命的に不器用だ)


110: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:20:59.08 ID:Ohmi38x40
ことり(まるでそれ以外が優れてるからそれだけが弱点であったかのように、それは良くも悪くも接し方に難があり言葉を選べない)

ことり(それに対して希ちゃんは人の気持ちを大切にする人、絵里ちゃんももちろん大切にはするけどそれに対しての反応が希ちゃんとは大分違う)

ことり(希ちゃんの温かい気持ちがあって絵里ちゃんの優れた計画性があってこそ二人の良さが出てくる、それは誰と誰を組み合わせても同じこと)

ことり(希ちゃんの優しさは誰かの行き過ぎた行動にブレーキをかけてくれたり絵里ちゃんの計画性は誰もが認めるものすごい未来を作ってくれる)

ことり(ただそれは隣に“誰か”がいないと発揮できないチカラ)

ことり(希ちゃんの優しさっていうのは常に独りじゃ生まれない、絵里ちゃんの計画性は誰かのためじゃないと生まれない)


ことり(ことりたちっていうのは独りじゃ輝けない、ことりだって海未ちゃんだって)



ことり(穂乃果ちゃんだって)



にこ「あんたたち何やってるのよ…」

ことり「あ、にこちゃん…」

にこ「花陽、凛を早く追いなさい」

花陽「あ、うん!」

ことり「ことりもいく!」

花陽「うん!」

ダッ

111: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:22:08.47 ID:Ohmi38x40
にこ「ったくあんたらはホントにめんどくさいわね…」

希「なんでウチも入るん?!」

にこ「当たり前でしょ、希は本音を言わなさすぎなのよ」

希「そ、それは…そうだけど…」

にこ「絵里は希の言う通り自分の気持ちだけでぶつかりすぎなのよ」

絵里「だ、だって…」

にこ「…廊下まで聞こえてたわよ?あんたらの声」

絵里「えっ…」

にこ「あんたら二人の不仲説浮上しても知らないわよ?」

希「…むぅ」

にこ「…ま、凛をどうにかするのはあんたらじゃなくて花陽やことりの役目でしょうよ」

絵里「どうしてよ?」


にこ「あんたら二人じゃ無理だから」


112: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:23:41.55 ID:Ohmi38x40
タッタッタッ

花陽「私は上の階を探すね!」

ことり「じゃ、じゃあことりは下の階を探すね!」

花陽「うん!それじゃあ!」

タッタッタッ

ことり「…まず下駄箱を見ようか」

ことり(帰っちゃったかもしれない、そう思って下駄箱へかけた)

ことり「あれ…靴はある…」

ことり「じゃあ…」

ことり(どこかの教室にいるのかな…)

タッタッタッ!

ことり(その後色々なところをしらみつぶしで探した)

ことり(でもどの教室にも凛ちゃんの姿は無くて、もしかしたら花陽ちゃんがもう見つけてたのかななんて思って走ってた足はスタスタとゆっくりになりそのうち探すのをやめてた)

113: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:25:14.97 ID:Ohmi38x40
スタスタスタ

ことり「凛ちゃん…大丈夫かな…」

ことり(ことりは凛ちゃんがイヤっていうだろうから何も言わなかったけどもし可愛い服を着てくれる気が少しでもあるんだったら着せてあげたい)

ことり(ことりは手芸が好き、だからことりは将来着る側じゃなくて作る側になりたいって思ってる、そんな作る側の端くれとしては凛ちゃんに思いっきり可愛い服着せてあげたい)


ことり(凛ちゃんに自分が可愛いんだって気付いてほしい)


ことり(ただ…やっぱり凛ちゃんがイヤっていうならことりはそれ以上は何も言わない…)


ことり(ことりにとってその人の一番がことりの一番だからさ…)


スタスタスタ

ことり「…!凛ちゃん!」

凛「!」

ことり(何を思ったのか体育館に寄ったらステージの上で凛ちゃんが座ってた)

ことり(寂しげに上の空をしててことりがふと声をかけるとピクっと動いて顔をごしごししてた)

114: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:26:19.92 ID:Ohmi38x40
凛「こ、ことりちゃん…」

ことり「…大変だったね」

凛「…うん」

スタスタスタ

ことり「隣、座っていい?」

凛「う、うん」

ことり「ふう」

ことり「…ことりたち、ここで踊ろうと思ってるんだ」

凛「…知ってる」

ことり「凛ちゃんは思わない?」

凛「何が?」

ことり「このステージに立って、ここで踊ってみたいって、輝きたいって思わない?」

凛「…ごめん、思わない」

ことり「そっか…」

ことり(案の定凛ちゃんは否定し続けてた)

ことり(まぁね、凛ちゃんがイヤって言うならことりは何も言わない…)


ことり(はずだったんだ…)


115: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:28:02.86 ID:Ohmi38x40
ことり「…あのさ、凛ちゃん」

凛「何?」

ことり「ことりね、すごく思うんだけど」


ことり「凛ちゃんがもし可愛い服着れたらきっと誰よりも可愛いんだろうなって思う」

ことり「女の子らしくないっていうけど反応や仕草なんかは誰よりも女の子らしくて、きっと幼い頃から一緒にいるみんなの中ならきっと、一番女の子らしい子は凛ちゃんだと思う」



ことり「ううん!絶対に凛ちゃんだよ!」



凛「ち、ちが」


ことり「違わないよ!」


凛「!」ピクッ

ことり「凛ちゃんが可愛いの!ことりが一番可愛いって言ったら可愛いのっ!!」

ことり「可愛い可愛い可愛い可愛い!」


ことり「可愛いのっ!!!」


ことり「こんなに可愛いのに自分のこと可愛くないだなんてそんなのみんなに失礼だよ!!」

ことり「凛ちゃんは何がなんでも可愛いの!!!」

凛「えっ…あっ…え、えっと…」

ことり「…あ、えっと…ごめん…」

116: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:29:12.74 ID:Ohmi38x40
凛「う、ううん大丈夫だよ」

ことり「………」

凛「………」

凛「…その、ありがとう」

ことり「うん…」

凛「なんか…正直ことりちゃんにはビックリした」

ことり「ごめんね…」

凛「あ、ううん!そういう意味じゃないよ!」

凛「なんか…穂乃果ちゃんみたいな感じになるんだなって…」

ことり「穂乃果ちゃん…」

凛「うん、とにかく前へ進みたい感じがすごくて…」

ことり「そ、そんなだったかな…」

凛「そんなだよ」

ことり「……」

ことり(抑えてたものが弾けでた感じだった)

ことり(ことりが抱く凛ちゃんに対しての気持ちが爆発してた)

117: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:31:36.71 ID:Ohmi38x40
ことり「その…昔っから凛ちゃんは可愛いのにどうしてって思ってたんだ」

凛「…」

ことり「それなのにこんなみんなで楽しめるいい機会を逃すだなんて、それも自分が可愛くないなんていう理由でやらないなんてそんなのもったいなくて…」

ことり「ちょっと言いすぎたかもしれないけど…でも…」


ことり「でもそれだけ凛ちゃんのことが好きだから!凛ちゃんは大切な仲間だからっ!」

ことり「それなのに、それなのに本音で言い合えないなんてそんなの…」


ことり「寂しいって思ったから…!!」


凛「!」

ことり「凛ちゃんが本当に、本当の意味で諦めたって言うまでことりは一生懸命凛ちゃんを素敵にしたい!」


ことり「凛ちゃんを幸せにしたい!」


凛「し、しあわせ…」

ことり「凛ちゃんに可愛い服着せたいんだ!凛ちゃんに可愛い服の良さを知ってもらいたいから!」


ことり(そしてその幸せはことりの幸せでもあって…みんなの幸せでもあるから…)


凛「…うん、うんっ…うんっ!」

凛「ありがとうことりちゃん、凛…凛ちょっとだけ頑張ってみる!」

ことり「!!」パアアア

ことり「うんっ!」

118: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:33:23.35 ID:Ohmi38x40
凛「じゃあ凛みんなのところに行ってくる!」

ことり「う、うん!」

凛「ことりちゃんも一緒いく?」

ことり「ことりは…もうちょっとここに残ってるよ」

凛「そっか!分かった!じゃあね!」

タッタッタッ!

凛「…あ、ことりちゃん!」

ことり「ん?なーに?」


凛「ありがとう!!」


ことり「うん!」

ことり(凛ちゃんはとびっきりの笑顔でみんなのところへ走っていった)

ことり(ことりの想いが届いたのかな、ただ一生懸命にことりの想いを伝えたけど、届いたのかな)

ことり(今思えばみんなにあんなわがままみたいな叫び、言ったことない)

ことり(ただことりが思ってることを言った、ことりが言いたいことをいった)

119: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:34:59.84 ID:Ohmi38x40
ことり「このステージで…きっと…」

ことり(みんなでこんな楽しいこと出来るんだから、楽しむことも一生懸命でありたい)


ことり(その一生懸命が“臆病”であったとしても、楽しみたいから)


ことり「…歌詞、ちょっと思いついたかも」


穂乃果『やっぱりさ、こう…なんていうか自分の気持ちを歌詞にしたらいいんじゃないかな?』


ことり「…自分の気持ち」

ことり(自分の気持ちを歌詞にしていいなら、きっとの今の気持ちは…)


ことり「一生懸命…」


120: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:36:41.36 ID:Ohmi38x40
スタスタスタ

ことり(ことりが踏み出した一歩は、力強い一歩だった)

ことり(ことりの心が弾ける、ことりの心に熱が宿る瞬間だった)

ことり(死んだはずの穂乃果ちゃんも今はちゃんといる、やる気がなかった凛ちゃんもちゃんとやる気を出してくれてる)


ことり(メンバーは揃ってる、楽しむには何も欠けてるものがないんだ)


ことり(そんな中で…いやそんな中だからこそ輝けるってホントにホントにほーんとに)


ことり(素晴らしいことだと思わない?)


タッタッタッ

ことり(だから走った、この気持ちのままずっとずっと走っていたくなった)

ことり(歌詞作りはまだまだ難航中だけど、メンバー問題は解決しそうだった)

ことり(大きな一歩を歩んだと思う、これからに向けて最高の出だしだったと思う)

121: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:37:43.85 ID:Ohmi38x40
ことり「みんなっ!」

希「おっ凛ちゃんを救ったヒーローさんが登場やで?」

にこ「よくやったわねことり」

花陽「ことりちゃん!やったね!」

絵里「ことり…ありがとう」


凛「ことりちゃんありがとう!」


ことり「う、うん!」


ことり「やりたいことはみんなでしないと!」


ことり「みんなでやるから面白くて頑張れる、凛ちゃんだって可愛いくせして頑張らないなんて損だよっ!」


ことり「私はただ…ただ凛ちゃんの背中を精一杯押しただけっ!」


ことり(大きな手振り素振りを使って表現した、それは姿は、そしてその瞳はいつしか)



ことり(穂乃果ちゃんに似てるかも、なんてことりの太陽と並べて自惚れてた)



ことり(でも、それでよかったのだと思う)

ことり(穂乃果ちゃんの後ろを歩くのじゃなくて隣を歩きたいと思ったから)

122: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:39:00.36 ID:Ohmi38x40
凛「ばいばいっ!」

花陽「三人ともさよなら~!」

希「ばいばーい!」

ことり「ばいばい!」

絵里「気を付けて帰るのよー!」

にこ「そうよー!」

凛「はーい!」

花陽「分かってますよー!」

花陽「ではっ!」

凛「またあっしたー!」

スタスタスタ

希「…大丈夫そうやね」

絵里「ええ」

にこ「一時はどうなるかと心配だったけどことりが凛の背中を押してくれたおかげでなんとか収まったわね」

ことり「えへへ…」

123: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:40:47.08 ID:Ohmi38x40
スタスタスタ

希「凛ちゃんになんて言ったん?」

ことり「んーえっとね、凛ちゃんは可愛いから絶対にやった方がいいって、ことりの我が儘で押し切っただけだよ」

絵里「なにそれ…」

希「ふふふ…そっか」

にこ「大したものねぇ…」

希「凛ちゃんを説得して帰ってきた時のことりちゃん、なんだか穂乃果ちゃんみたいだったね」

絵里「奇遇ね、私もそう思ったわ」

にこ「あ、それは私も」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん?」

希「なんだろうなー…理屈じゃ説明できないんよ、感覚というか…」


絵里「雰囲気?」


希「そう!」

希「あ、でもちょっと違うかな?」

124: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:42:23.06 ID:Ohmi38x40
にこ「私は目つき、というか弾け方がそっくりだなと思った」

希「あ、それもあるね」

希「ウチが思うのは瞳かな?」

ことり「瞳…」

希「穂乃果ちゃんの瞳は不思議だよね、いつもキラキラしててなんだか魅了されちゃうよ」


希「でも、さっきのことりちゃんも同じように輝いてた」


希「流石、穂乃果ちゃんと一番長い付き合いしてるだけあって似てるのかな?」

ことり「そ、それはないよ」

絵里「そうかしら?似た者同士がくっつくってよく言うじゃない、穂乃果とことりはよく似てると思うけど」

希「えぇ…?えりちみたいな鬼と一緒にはされたくないわ…」

絵里「あ?」ピキッ

にこ「あんたは一言余計なのよ…だから副生徒会長止まりなのよ…」

希「いやにこっちも一言余計やろ!!」

にこ「いやいや実際そうでしょ」

希「違うわ!!」

125: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:44:38.11 ID:Ohmi38x40
絵里「ねえ私が鬼っていうの説明してほしいんだけど」

にこ「いやあんたは鬼でしょ」

絵里「なんでよ?!」

にこ「鬼だからよ」

希「ほーらみろ!にこっちだって鬼っていってるやんこの鬼ー!!」

希「同志やでにこっちは…」

にこ「何よその変わり身の早さは…」

絵里「はああああ?!」

ことり「ちょ、ちょっと三人とも…」

にこ「…ぷっ」

希「あははははっ」

絵里「ふふふふっ」

ことり「あ、え…?」

にこ「ごめんなさいね、やっぱりことりは真面目ね」

希「ことりちゃんのその真面目さがウチは好きやで?」

絵里「ええその通りよ」

126: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:46:04.21 ID:Ohmi38x40
希「ことりちゃんのその真面目さが多分、凛ちゃんを救ったんだと思う」

希「何物にも真摯に受け止めるそのことりちゃんの真剣さが、ことりちゃんの強みだと思う」


希「ただしそれは強みであると同時に弱みでもあるよ」


ことり「弱み…?」

希「そう、ことりちゃんの考え方はとても筋が通ってて俗にいう常識中の常識がことりちゃんには備わってる、だけどそれを返せば考え方に柔軟性がなくて」


希「今みたいにウチらの冗談を冗談だと捉えられなかった」


希「ことりちゃんにはもっともっと自分に素直になった方がいいよ、自分の中の“普通”にいつまでも囚われてちゃダメ」



希「抜け出すことこそがことりちゃんが一番幸せになれる道だから」



希「…ってカードが告げてるんよ」クスッ

にこ「せっかくいいこと言ってたのにそうやってカードで濁すのね…」

絵里「ホント、希の素直になれないところは玉にキズだわ」

希「な、なんや二人して…」

希「…ま、そういうことだよ」

ことり「そっか、ありがとう希ちゃん」

127: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:47:45.57 ID:Ohmi38x40
希「いいっていいって」

希「というかウチじゃなくてカードのお告げやからね?」

にこ「はいはい分かった分かった」

希「もー!カードのお告げっていったらカードのお告げなんだから!」

絵里「我が儘か…」

にこ「…あ、ここでお別れね」

絵里「そうね」

ことり「うん、今日はありがと!」

ことり「じゃあねっ!」

希「気を付けて帰りなよー!」

ことり「はーい!」

タッタッタッ!

ことり(途中の帰り道が違うから三人と別れた)

ことり(今日は穂乃果ちゃんも海未ちゃんも早く帰っちゃった、だから今日は一人だ)

ことり(今思えば空白の一年はよく一人で帰ってた)

ことり(海未ちゃんといてもなんだか気まずくてね、話が弾まないからさ)

128: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:49:54.15 ID:Ohmi38x40


希『でも、さっきのことりちゃんも同じように輝いてた』

希『流石、穂乃果ちゃんと一番長い付き合いしてるだけあって似てるのかな?』


ことり「穂乃果ちゃんに似てる…か」

ことり(もしそうだとしたらすっごく嬉しい)

ことり(それと同時に凛ちゃんがことりの言葉を信じてくれたのもすごく嬉しい)

ことり(弱い私でも、誰かのために動くことくらいは出来る)

ことり(そうと自覚してやったこと、精一杯の本音を凛ちゃんにぶつけたんだ)


ことり「…大丈夫そうかな」


ことり(こうして、ことりたちは音ノ木坂祭りのライブ実行への道を出発した)

ことり(やることは山積みだけど、今はなんだか大丈夫な気がする)

ことり(穂乃果ちゃんも、凛ちゃんも、みんなもいる)

ことり(そんな中で何を不安がるのだろう?全てが揃ってるのに何を悩むんだろう?)

129: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:50:45.35 ID:Ohmi38x40
ことり「よしっ!」

ダッ!

タッタッタッ!

ことり(ただ、ことりはみんなを信じてまた走った)

ことり(ただただ、全力で走った)


ことり(ただただただ、ことりの目指す未来に向かって走ったんだ)


ことり(果ての無い未来を)


130: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:53:01.06 ID:Ohmi38x40
~二日後

海未「ふむ……」

にこ「むむむ…」

花陽「むー……」

絵里「ふーん……」

希「なるほど」

穂乃果「ほー…」

凛「ほーほー…」

ことり「………」

真姫「……どう?」


穂乃果「すっごくいいよ!!」


絵里「ええバッチリね!」

真姫「!」パアアア

海未「歌詞はどうなるかと思いましたがことりのおかげでなんとか終わりましたね…」

ことり「えへへ」

131: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:54:30.23 ID:Ohmi38x40
穂乃果「真姫ちゃんすごいよー!!」スリスリ

真姫「うぇええ?!」

希「ふふふっとりあえず第一段階突破やね」

絵里「そうね」クスッ

凛「これからどうするの?」

絵里「これからはダンスと歌の練習よ、ただ一週間でダンスなんてできるはずないから誰でも出来るくらいの簡単な振り付けにするわ、歌を集中的に練習しましょう」

にこ「そうね」

花陽「おぉ~!なんだか本格的!」

ことり「ねっ」

ことり(あれから二日後、ことりたちの曲が完成した)

ことり(ことりたちは確実に、前へ前へとその一歩を踏み出してた)

ことり(衣装は練習の合間や家にいる時に作ることになってる、ただことりだけじゃ手が足りないから絵里ちゃんとかにこちゃんとかと手伝ってギリギリ間に合わせるような形になると思う)


ことり(踊るのはもちろん小さい頃からのメンバーに真姫ちゃんを加えた九人だよ)


132: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:56:41.72 ID:Ohmi38x40
凛「よーし!張り切っていくにゃー!」

海未「張り切りすぎて体調を崩さないようにお願いしますよ?」

凛「わかってるわかってる!」

真姫「体力はあまりないから踊りは自信ないのよね…」

希「おっ弱気発言?これからって時なのにそれはいただけないなぁ」ニコニコ

真姫「ち、違うわよ!頑張りますってことよ!!!」

希「はいはいそうやね」ニコニコ

真姫「流し方腹立つわね…」

絵里「はいはいちょっと注目」

花陽「?」

にこ「何よ」

絵里「理事長に屋上の使用許可を貰ったの、だから放課後に一度練習がどんな感じなのかっていう流れだけでも掴みに行きましょう?」

海未「そうですね、それはいい案です」

穂乃果「流石絵里ちゃん!」

希「流石えりちは用意周到やね」

絵里「当然よ、なんてったって生徒会長なんだから」フンスッ

ことり(ひとまずやることが終わったけど、次やることはすぐにまわってきた)

133: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:58:13.72 ID:Ohmi38x40
ことり(音ノ木坂祭りまでのスケジュールは言うまでもなくぎゅーぎゅーであまり休めなさそうだなと、先のことを少し考えてた)


ことり(だけどそれはみんなと踊るため、思い出を作るためだから苦でもないよ)


ことり(ただそんな中でことりが思うのは)

ことり(これからのことで穂乃果ちゃんが隣に居て当たり前だなんて考えてるから)



ことり(こんなにも穂乃果ちゃんってことりの支えだったんだって思うんだ)



ことり(でも、当然と言えば当然だよね)

ことり(ことりの太陽だもん、こんなにもことりを大切にしてくれた人はまずいない)

ことり(一緒にセミを捕まえに行った、一緒に海に行った、一緒にお饅頭作った)

ことり(一緒に肝試しに行った、一緒にお風呂に入った)

ことり(一緒に寝た、一緒の学校に入った)


ことり(一緒に最期を共にした)


ことり(そんなことりのかけがえのない人、そんな感慨深いことりの気持ちがくるくると回ってた)

134: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 00:59:15.26 ID:Ohmi38x40
ことり(そして時刻は放課後…)

ガチャッ

凛「んー!気持ちいいにゃー!」

希「ちょっと暑いけどね」アハハ

にこ「ここで何するの?」

絵里「ダンスレッスンよ、まぁ今日は何も用意してないからちょこっとだけだけどね」

花陽「大変そうだね…」

絵里「最初はね、慣れれば全然よ」

ことり「絵里ちゃんが言うと説得力あるね」

絵里「でしょ?」フフンッ

絵里「それでなんだけどね、ごめんなさい先に言っておくわ」

にこ「…?何よ」

凛「どうしたの?」

絵里「今から言うことは決定事項、何がなんでも決まりだからね?」

花陽「う、うん?」

希「何のこと?」

135: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:00:53.14 ID:Ohmi38x40
絵里「…今回の歌は」



絵里「ことりがセンターを務めることになってるから」



ことり「?!?!?」

ことり「な、なんで?!」

絵里「曲作り始める時から決めてたの、ことりがセンターだって」

ことり「だからなんで?!」


穂乃果「私が提案した!」


ことり「ど、どうして?ことりがやるくらいなら穂乃果ちゃんがやったほうが」

穂乃果「ううん、ことりちゃんじゃないと務まらない」

136: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:03:34.53 ID:Ohmi38x40
穂乃果「海未ちゃんも、真姫ちゃんも、絵里ちゃんもことりちゃんにセンターを任せたいっていったら快く受け止めてくれた」

ことり「海未ちゃん…」

海未「あんな歌詞を私に渡してくるんですから、正直まいっちゃいましたよ」

海未「私なんかまだ何も決まってなかったのにことりはすらーっと書いてくるんですから」

ことり「真姫ちゃん…」

真姫「ん?私は別に…」

真姫「ライブをするんだしこういう歌詞が良いなと思ったの、それに穂乃果さんがことりさんのことすごく推してくるから信じてみたくなっただけ…」

ことり「絵里ちゃん…」

絵里「私もことりを推したい、確かに穂乃果もいいのかもしれない」


絵里「けどこの歌はことりが一番似合ってるから」


ことり「私が一番…」

穂乃果「そうだよっ!だからことりちゃんがセンター!」

穂乃果「みんなもその方がいいよねっ!」

凛「うんっ!凛もそう思う!」

花陽「ことりちゃんが考えた歌詞なんだもん、ことりちゃんがするべきだよっ」

希「そうやね!」

にこ「はーあっしょうがないわね~センターは譲るわよ」

137: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:07:25.82 ID:Ohmi38x40
ことり「みんなっ…」

ことり(今度歌って踊るこの曲はことりがセンターだった)

ことり(穂乃果ちゃんが提案し、それをみんなが何の疑問も否定も口にせずただただことりを認めてくれた)

ことり(ことりがセンターを務めるっていうのは穂乃果ちゃんにそしてみんなに認められた証でありことりが一番輝ける場所にいるってこと)

ことり(それはすごく嬉しい、またことりの中で何かが弾けそうってくらいに嬉しかった)

ことり(でもそれと同時に不安とか懸念とかマイナスな感情もあることは確かだった)


ことり(だってことりがセンターなんて務まる思う?)


ことり(無理だよね、絵里ちゃんみたいにダンスにも気持ち的な問題でも自信がないから胸を張れないし穂乃果ちゃんのような明るさや真っ直ぐな瞳のように魅力があるわけじゃない)

ことり(だから帰り道に至るまでの最終的な気持ちはプラス半分マイナス半分というのが最もだと思う)

スタスタスタ

ことり「穂乃果ちゃんと二人っきりで帰るのは…久々じゃないか、えへへ」

穂乃果「そうだねー」

138: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:10:34.24 ID:Ohmi38x40
ことり「…ねえ、聞いてもいいかな?」

穂乃果「なーに?」

ことり「なんでことりをセンターに薦めたの?」

ことり「ことりじゃないと務まらないってどういうことなの?」

穂乃果「そのままだよ、あの歌のセンターはことりちゃんじゃないと務まらないんだ」

穂乃果「私や絵里ちゃん、海未ちゃんがセンターをしても最終的には失敗に終わると思う」

ことり「ど、どうして?」

穂乃果「…ふふふっことりちゃんの持ってるチカラはすごいんだよ?」

ことり「ことりの持ってるチカラ…?」

穂乃果「そうそうっ!」

ことり「何なのそれって?」

穂乃果「それは口にするものじゃないよーことりちゃん自身で気付くもの」

ことり「ことり自身…」

穂乃果「そうそう!」

穂乃果「…でもまぁね、ことりちゃんをセンターに薦めたのはそれだけが全てじゃないよ」

ことり「え?」

139: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:12:29.89 ID:Ohmi38x40
穂乃果「ことりちゃんにもっと輝いてほしくてね、もっともっとことりちゃんのいいところ、みんなに見てほしくてさ」

穂乃果「余計なお世話って思ったかもだけどことりちゃんはしっかり者だし勉強も出来たし何よりものすごく可愛かったから小さい頃はよく劇の主役に推薦されてたよね」

ことり「う、うん…」

穂乃果「でも、ことりちゃんって引っ込み思案だからぜーんぶ主役の推薦を断ってやりたい人に譲ってた」

穂乃果「中学生の時のロミオとジュリエットとか、幼稚園の時のきよしこの夜とか全部、ぜーんぶ譲ってた」

穂乃果「…こんなこと自分で言うのも難だけどね私だってクラスの中心してたつもりだから主役に誘われるくらいの名声はあったと思う」

穂乃果「ただそんな私を凌いでことりちゃんは毎回毎回主役に抜擢されて、でもそんな主役の誘いを幾度となく断って私すごくもったいないなって、微量ながら怒りも感じてた」

ことり「い、怒り…」

穂乃果「だってそうじゃん!ことりちゃんみたいな可愛い子がなんでそんな臆病にしてるのさっ!もっと自分に自信もって動いた方がことりちゃんは輝けるしことりちゃん的にも楽しいから!」

穂乃果「だからことりちゃんをセンターにした!ことりちゃんに輝いてほしくて、もっと楽しんでほしくて!」



穂乃果「もう、臆病な自分を演じるのは飽きたでしょ?」



穂乃果「ことりちゃん」

ことり「!」

140: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:15:37.29 ID:Ohmi38x40
穂乃果「知ってるよ?ことりちゃんが本当はものすごいわがままな人だって、ことりちゃんは平和主義者だからその人のいいようにやらせてるようだけど本当はああしてほしいこうしてほしいって心の中ではお願いしてること」

穂乃果「皮肉なことにそのことりちゃんの考えてることが一番正しいんだから余計にもったいないよ」

穂乃果「その人にとってベストなことが考えられるんだから、私と違って完璧なことを考えられるんだからことりちゃんはもっと…自分を出していかないとさ」

ことり「自分…か」

穂乃果「そっ!自分!」

穂乃果「だから今回の歌、みんなで歌うステージは絶対絶対ぜーったいにことりちゃんがセンターじゃないとダメなの」

穂乃果「だからお願い、これは私からの一生のお願い」


穂乃果「ことりちゃんがセンターをしてくれれば私はもう救われるから」ボソッ


ことり「…?何?」

穂乃果「ううんなんでもない!」

穂乃果「とりあえずお願いっ!」

ことり「…うん、分かった!頑張ってみるっ!」

穂乃果「うん!」

141: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:17:51.08 ID:Ohmi38x40
ことり「よしっ明日から頑張ろうね!」

穂乃果「…あ、うん!」

ことり(帰り、穂乃果ちゃんがことりの背中を押してくれた)

ことり(やっぱり穂乃果ちゃんはすごいな、そう思った)

ことり(結局さ、ことりの持ってるチカラがすごいっていっても今みたいにことりを勇気づけてくれるそのチカラが本当に羨ましいよ)

ことり(…ううん違うね、きっと穂乃果ちゃんだからなんだ)

ことり(穂乃果ちゃんが言ってくれるからことりはまた頑張ろうって思える、穂乃果ちゃんだけにしかない、穂乃果ちゃんだけのチカラだよね)

ことり「…ねぇ穂乃果ちゃん」

穂乃果「なに?」

ことり「私の持ってるチカラ…ヒントだけでもくれないかな?」

ことり「とても…ことりだけじゃ気付けそうにないや」

ことり(穂乃果ちゃんのチカラは~って考えれば次に出てくるモノは“ことりのチカラ”だよね)

ことり(でもそんなことりの持ってるものなんて分かるわけないよね、だってことりにあるこれっていう魅力が見当たらないんだもん)

142: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:19:54.47 ID:Ohmi38x40
ことり(絵里ちゃんのような“強さ”はないし希ちゃんのような“頼り甲斐”もない)

ことり(花陽ちゃんのような“愛らしさ”もないし凛ちゃんのような天性の“可愛さ”もない)


ことり(そして穂乃果ちゃんのような何かを引っ張る“カリスマ性”もない)


ことり(こうしてみんなとことりを隣り合わせで比べるとスポットライトが自然とことりの隣の人に照らされていくような気がした)


ことり(ただ、ことりはそれに何とも思わないよ)


ことり(そんな輝いてる人の隣にいれるだけでことりは幸せだから、他人の幸せがことりの幸せだから)

穂乃果「そうだね~ヒントか」

ことり「ない…かな?」

穂乃果「ううんあるよ、そうだねヒントだよね」

穂乃果「うーんとね、自分のことを見るだけじゃ…分からないことかな?」

ことり「…?どういうこと?」

穂乃果「人のこと…うーんもっと限定的に友達とか家族の人、そのくらい身近な人のことを考えてみることが自分のチカラに気付く鍵だと私は思う」

143: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:23:04.16 ID:Ohmi38x40
穂乃果「ことりちゃん自身がどういうチカラを持ってるのか、なんて考えても答えは出ないと私は思う」

穂乃果「私はことりちゃんの全てを知ってるわけじゃないけど、少なくともことりちゃんのチカラをことりちゃんより知ってるつもり」

穂乃果「ただ私だってことりちゃんのチカラを本質的には知らないよ、でも自分のことの多くなんて自分で気付けるわけないよ、私だって私がどんなチカラを持ってるのか知らない」

穂乃果「でも、ことりちゃんは気付いてない?私のチカラ、ううん気付いてなくてもいい…ただ私に何かがあるって思うだけでもいいんだ、それってやっぱり分かってるんだ」


穂乃果「その人にしかない、その“何か”があるって」


ことり「…うん、ことりは穂乃果ちゃんのチカラ…分かると思う」

穂乃果「でしょ?自分に自惚れてるわけじゃないけど、人一人に必ずそういうものがあるんだよ」


穂乃果「私は最近それを知ったから」


ことり「最近…?」

穂乃果「そっ!最近!」

穂乃果「だからさことりちゃん、仕方ないから出血大サービスしちゃうよ!」

ことり「出血大サービス?」

144: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:24:54.35 ID:Ohmi38x40
穂乃果「ヒントだよっ私だって絵里ちゃんだって海未ちゃんだって真姫ちゃんだって」


穂乃果「ことりちゃんだって」


穂乃果「そのチカラは“何か”の為に使ってるチカラなんだよ?」



穂乃果「ただ、ことりちゃんはその何かが“誰か”のために、であること、これを忘れないで」



ことり「誰かのために…」

穂乃果「そう!誰かのために!」

穂乃果「ここまで言ったんだから気付いてよね、自分で気付くからこそ意味があるんだから!」ダッ

タッタッタッ!

ことり「あ、ちょっと穂乃果ちゃん!」ダッ

穂乃果「あははっ!走ろうよ!」

ことり「な、なんで急に?!」

穂乃果「走りたくなったから!だから走ろうよ!」

145: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:26:51.68 ID:Ohmi38x40
ことり「どこに?!」

穂乃果「走れるところまで!」

ことり「え、えええ?!」

穂乃果「あはははっ!ほらほらおいでよー!」

ことり「は、速いよぉ!」

穂乃果「ダンスは体力使うって絵里ちゃんも言ってたしこのくらいは走らなきゃ!」

ことり「そ、そうだけど!」

ことり(この強引さが穂乃果ちゃんの魅力なんだと思う、強引なのに、打算もないのについていきたいって思っちゃうんだからホントにすごいよ、穂乃果ちゃんは)

ことり(だから“今日も”穂乃果ちゃんの背中を追いかけてた)

ことり(穂乃果ちゃんと笑いあえる日々に帰ってきたことを実感してた)

146: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:28:11.58 ID:Ohmi38x40
ことり「ただいまー」

ことりママ「おかえりなさい」

ことりママ「最近楽しそうね?」

ことり「音ノ木坂祭りで出し物するからそれに励んでんだよっ」

ことりママ「へぇー出し物…何するの?」

ことり「それは知らなくてもいいでしょっ」

ことりママ「いやいやことりの母たるもの可愛い娘がすることくらい知りたいでしょ?」

ことり「もーなんでもいいでしょ!」

タッタッタッ

ことりママ「あ、ことり!」

ことりママ「まったく…反抗期かしら…」

ことりママ「でも…」

ことりママ(心なしか常に楽しそうに感じるわね、その出し物ってやつも順調なのかしら)

147: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:30:50.10 ID:Ohmi38x40
スタスタスタ

ことり「ふぅ…」

ことり「疲れたー…」

ボフッ

ことり(クッションとぬいぐるみがいっぱい置いてあるベッドにダイブした)

ことり「………」

ことり(毎日そうだけど、今日は頭も使ったし体力も使ったから特に疲れちゃって何も考えずに目を瞑ってた)

ことり(肌触りの良いクッションがとにかく気持ち良くて一瞬で眠りの世界へトリップしてた)

ピピピピピピピ!

ことり「…ん」

ことり(突然意識の外から音が聞こえた)

ことり「んん…」チラッ

『6:10』

ことり「…え?!なんでそんな…えぇ?!」

ことり(目が覚めたら朝だった)

ことり(夜ご飯を食べた記憶はない、感覚で言えばさっき寝て一瞬で起きたようなものだった)

148: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:32:43.83 ID:Ohmi38x40
ことり「こんな…早かったっけ…」

スタスタスタ

ガチャッ

ことりママ「あら、おはよう」

ことり「おはよう、ことり夜ご飯食べたっけ?」

ことりママ「食べてないわよ、起こしに行ったんだけどぬいぐるみ抱きしめて気持ちよさそうに寝てるからなんか悪いなって思って」

ことり「そ、そっか」

ことりママ「ええ」

ことり「…ってことりの寝てるところ見たの?!」

ことりママ「え、ええそうだけど」

ことり「もー!なんで入ってくるの!」

ことりママ「だって起こすためには部屋に入らないといけないじゃない」

ことり「そうだけど…そうだけど!」

149: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:33:51.45 ID:Ohmi38x40
ことりママ「ふふふっとりあえず朝ごはん食べなさい、遅れるわよ?」

ことり「まだ余裕はあるよ…」

ことりママ「ふふふっそうね」

ことりママ「あ、後夜食べなかったから朝はちょっと多くしておいたわ、たくさん食べなさいよ?」

ことり「う、うん」

スタスタスタ

ことり(今日に限った話じゃないけど、こうやってまず実感して思うことって)


ことり(穂乃果ちゃんがきて時の流れがすごく早くなってるってことなんだ)


ことり(楽しい時ほど時間を忘れて何か全うしちゃうよね、そんな最近のことりは常時楽しいって感じてるんだ、感じちゃってるんだ)

ことり(“あの時”とは違う日常がやってきて、新鮮味や懐かしさ、他にも新たに感じるものも数多くあってこの日常に飽きがこないんだ)

ことり(だから朝ごはんを食べて、登校して、みんなと会って、笑ってなんてことしてるだけで時間は早送りをしてるかのように過ぎ去っていった)

150: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:35:04.29 ID:Ohmi38x40
海未「穂乃果、太りました?」

穂乃果「えっ…そんなつもりはないんだけどなー…」アハハ

海未「まったく…ここからだっていうのに何をしてるのですか…」

穂乃果「んーごめんね、気を付けるよ」

海未「そうですよ、気を付けてください」

穂乃果「はーい」

海未「さて…もう三時間目ですか、なんだか早いですね」

穂乃果「あ、海未ちゃんも感じる?」

海未「感じる?」

穂乃果「時間の流れだよーなんか私も早いなーって最近思うんだ」

ことり「穂乃果ちゃんも?」

穂乃果「あれ?ことりちゃんも?」

ことり「うんっなんかすごく早くて…」

海未「ふむっ…私たち三人はきっと今を楽しんでるのかもしれませんね」

穂乃果「そうだねっ!」

ことり「うんっ!」

ことり(そしてこの楽しい時はみんな同じように感じてるようだった)

ことり(だって時の流れが早いっていうのはそういうことだから)

151: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:36:36.16 ID:Ohmi38x40
「では穂乃果さんここのところを答えてください」

穂乃果「え、ええ?!」

穂乃果「え、えぇっと…わかりません!」

アハハハハハハハ

海未「まったく穂乃果は…」

ことり「あはははは……」

穂乃果「だって難しいじゃん!」

海未「難しいから頑張って解けるようにするんですよ!」

ことり「ま、まぁ今授業中だから…ねっ?」

海未「し、失礼しました…」

穂乃果「むー…」

ことり(こういったことはよくあるけど、どんな顔をしていても心なしか楽しそうだった)

ことり(穂乃果ちゃんはムードメーカーだよ、先生だってくすくす笑ってて楽しそう)

穂乃果「…あ、えへへへ」

ことり(ことりと目が合いことりもニコッとした)

152: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:38:57.44 ID:Ohmi38x40
~昼、音楽室

凛「あーあーあーあー」

真姫「違う、もっと響かせるように」

真姫「私の真似をして」

真姫「あーあーあーあ」

凛「あーあーあーあー」

真姫「んー…何か違うのよね」

凛「えへへ…ごめんね…?」シュンッ

真姫「あ、いや!そうじゃないの!凛は悪くないのよ!」

凛「…んえへへへっ!なーんて!真姫ちゃんは優しいね!ちょっとシュンとしただけで気を使ってくれて!」クスクス

真姫「は…?はああああ?!」

凛「真姫ちゃんはちょろいなたちつてとー!!」

真姫「歯を食いしばる準備は出来てるでしょうね?!」ダッ

凛「うわあ?!ここは逃げるが勝ちだー!」ダッ

タッタッタッ!

花陽「い、いっちゃった…」パクパク

ことり「真姫ちゃんも大変だね…」パクパク

153: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:40:04.12 ID:Ohmi38x40
ことり「というか真姫ちゃんも凛ちゃんもお昼ご飯食べてないけど大丈夫なのかな…」

花陽「大丈夫…なんじゃないかな?」

ことり「どうして?」

花陽「なんか今は食べるというより歌ってた方があの二人は幸せそうだったから」

ことり「…!」

ことり(花陽ちゃんの顔は輝いてた、それは明らかに“何か”に気付いてる顔だった)

ことり(花陽ちゃんはあの二人の事、よく理解してるように見えたんだ)

花陽「私たちも発声練習頑張らないとね」

ことり「そうだねっ!」

凛「ふー逃げた逃げたー」

花陽「あ、凛ちゃん」

真姫「ぜえ…ぜえ…」

ことり「あはは、おかえり真姫ちゃん」

154: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:41:04.83 ID:Ohmi38x40
真姫「なん…なのこいつ…速すぎる…」

ことり「凛ちゃんは元陸上部だから…」

花陽「中学の時も一番速かったから…」

真姫「それを…先いってよ…」

ことり「言う暇もなくいっちゃってね…」

花陽「ドンマイ真姫ちゃんっ」

凛「勝利!ぶいっ!」

花陽「とりあえず凛ちゃんと真姫ちゃんもお昼ご飯食べなよ」

凛「うん!」

真姫「はぁ…ホント凛といると骨が折れるわ…」

花陽「あはは…凛ちゃんはやんちゃだから…」

ことり「凛ちゃんもほどほどにね?」

凛「はーい」

155: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:42:52.28 ID:Ohmi38x40
凛「でもでも最近はなんか早く時間が流れるように感じてるんだよねー」

花陽「あ、それは私も思う」

真姫「私も」

ことり「え…みんなも?」

凛「ことりちゃんも?」

ことり「う、うん」

凛「そっかーなんかもう一日があっという間でああやって真姫ちゃんと鬼ごっこしてる時もこうやってお話してる時も全てが一瞬で終わったって勘違いしちゃうんだ」

花陽「そうそう、寝たら起きるまでの感覚が一瞬なんだよね」

真姫「分かるわ、曲作りだって出来たと思ったら何時間も経ってた」

ことり「………」

ことり(やはり二年生のことりたちだけじゃない、一年生のみんなも感じてるようだった)

ことり(このみんな一緒にいる時間が幸せで、みんな同じように感じてる“新しさ”に胸を弾ませて、楽しい未来が目に視えるほどの希望に心を躍らせてた)

156: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:44:09.12 ID:Ohmi38x40
花陽「やっぱり今が楽しいのかな?」

真姫「そうね、そうかもしれないわ」

凛「凛はすっごく楽しい!」

花陽「うんっ!私もすごく楽しい!」


真姫「この時間が一生続いていたらいいわね」


ことり「!」

ことり「そ、そうだね!」

ことり(ことりも長らくはそう思い続けると思う)

ことり(穂乃果ちゃんといると、笑顔のみんなといるとその幸せを永遠にしたくなるんだ)


ことり(一度穂乃果ちゃんを失ってるのだから、その永遠が永遠でなくなる辛さはイヤというほど知ってる)


ことり(だから真姫ちゃんのいう思いを仮にことりたち全員が持ってるとしてもきっとその思いの強さはことりが一番強いのだと思う)


ことり(失うことの辛さ、再開して分かる幸せ)


ことり(この二つを経験してることりに勝る気持ちなんてないんだからっ)

157: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:45:14.91 ID:Ohmi38x40
~放課後、屋上

絵里「はい、そこで啓礼ポーズ」

ことり「け、啓礼?」

絵里「その名の通りよ、片方の手は横っ腹においてもう一つは啓礼よ」

ことり「わ、分かった」

絵里「よしっそのポーズ忘れないで、後笑顔も」

にこ「いい?笑顔っていうのは営業スマイルとかそういう笑顔じゃないんだからね?」

にこ「もっともっと素の笑いだからね?自分が楽しめてる時の笑いだからね?」

凛「おーにこちゃんがすごいまともなこといってる」

にこ「とーぜんよ!アイドルたるもの笑顔が一番大事なんだから!」

花陽「そうですよ!笑顔のアイドルこそ勝利を掴むんですから!」

海未「…笑顔もいいですけどあなたたち二人はまず」


海未「体力の方をなんとかしてくださいね?」


花陽「…はい」

にこ「思った以上にきついわこれ…」

158: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:46:23.90 ID:Ohmi38x40
凛「二人ともだらしないなー」

穂乃果「凛ちゃんはやっぱり余裕だねー」

真姫「化け物か…」

希「う~ん!ウチはバイトしてたからみんなより幾分かはマシかな~」

穂乃果「ずるーい!」

希「ふっふ~ん!」

絵里「はいはい希は威張らないの」

絵里「ことりはセンターなんだからみんなの見本になるようにやるのよ?踊りの初めはことりからスタートだし多くの人はセンターのことりを見るんだから自信が持てる出来に仕上げましょうね?」

希「あはは…大変だねことりちゃんも…」

ことり「は、はい…頑張ります…」

ことり(ダンスの進み具合をいえば良くも悪くも普通だった、みんな踊りなんてしたことないしその辺は運動神経とかセンスが問われるんだけど凛ちゃんや希ちゃんは体力使う経験をよくしてたから大丈夫そうで、絵里ちゃん海未ちゃんはもう余裕で、ことりと穂乃果ちゃんがちょっときついかもって感じで花陽ちゃんとにこちゃんと真姫ちゃんが体力面で非常にまずいみたい)

ことり(まぁダンスといってもそこまで本格的じゃないからまだ深刻な問題ではなさそうだった)

159: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:47:49.93 ID:Ohmi38x40
海未「朝練が必要ですねこれは…」

真姫「あ、朝練…」

海未「やはり体力が必要です、もちろんそれはそこの三人に限った話ではありません」

海未「ダンスでは技術を必要としますがそれ以前に体力が必要ですから、やるに越したことはありません」

絵里「でもみんな物覚えはよかったわよ、ダンスはちゃんとやれてるし一連の流れをするなら問題なく出来そうだけど」

絵里「それにダンスっていうのは完成度よりどれだけ見てる人を魅了するかが大事なのよ?そりゃあ大会とか本当のアイドルのステージに出れば技術も必要だけど私たちに必要なのはそれじゃないから」

穂乃果「うん!その通りだよ!」

花陽「絵里ちゃんが言うと頼もしいね!」

にこ「悔しいけど信憑性はめちゃめちゃあるわ…」

絵里「でしょ?」フフンッ

絵里「なんてったって賢い可愛いえりー」

希「はいポンコツ」

海未「マイナス100KKEポイントですね」

絵里「ちょっと?!なにそのポイントは?!」

160: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:49:14.67 ID:Ohmi38x40
海未「絵里の賢さを表すポイントです、今マイナス4300ポイントなのでなんとかプラスにしてくださいね」

絵里「なんか海未私だけにひどくない?!」

海未「気のせいですよ」

凛「あーあっ絵里ちゃんはあれさえなければ完璧なのになー」

花陽「おっちょこちょいだもんね」アハハ

真姫「確かにあのギャップはすごいわね…」

ことり「でもあれが絵里ちゃんの良さでもあるから…」

にこ「そうね、あれが絵里の良さでもあるわ」

凛「まぁね、あれがなかったら凛は絵里ちゃんには近づきたくなかったなー」

花陽「頼れる存在だけど厳しいと関わりづらいからね」

絵里「でしょ?この優しさが私のいいところなのよ?」

絵里「分かったら海未はそのKKEポイントだかをプラスにしなさい」

海未「マイナス300KKEポイントで」

絵里「なんで?!」

希「いやそれは賢くないわえりち…」

161: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:50:59.50 ID:Ohmi38x40
穂乃果「絵里ちゃんはもっとキリってしてよう!」

絵里「こう?」キリッ

海未「ふっ…」

絵里「あー!今鼻で笑ったわよね?!」

海未「気のせいですよ、ぷっくふふふ…!」

絵里「ほらー!!笑ってるー!!!」

凛「あはははは!!」ゲラゲラ

花陽「あははは…」

にこ「ったく真面目と言われてるあの二人があれだと先が思いやられるわね…」

真姫「やはりここのグループの良心はことり、あなた一人よ…」

ことり「え、えぇ?!」

希「というか教える側の二人が別のことしてたらこっちも何も出来ないやん…」

海未「そうですよ、絵里」

絵里「なんで私?!」

海未「ぷっふふふふ…すいません、からかうのが面白かったもので」

絵里「も、もう…」プクー

希「海未ちゃんもなんだかんだ凛ちゃんレベルのやんちゃもんだからね」アハハ

絵里「困ったものよ…」

162: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:52:44.10 ID:Ohmi38x40
絵里「まぁいいわ、さぁ休憩終わり、練習再開するわよー!」


「おー!!」


ことり(雰囲気は言うまでもなく最高、これは完成がますます楽しみになってきた)

ことり(みんな放課後という自由な時間を削ってやってるけど誰一人として嫌がってる人はいなかった)

ことり(これがことりの理想形であったんだ、みんな同じ気持ちを持って同じことに挑戦すること)


ことり(それが空白の一年に儚く抱いた叶わないはずだった願い)


ことり(それを今、感じているんだ)

163: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:54:22.36 ID:Ohmi38x40
穂乃果「ことりちゃん!一緒に帰ろう!」

ことり「うん!あ、じゃあ海未ちゃんも」

穂乃果「…あ、えっとね海未ちゃんは先帰っちゃったみたいで…」

ことり「そ、そっか…じゃあ一緒に帰ろっか」

穂乃果「うん!」


スタスタスタ

海未「…あれ?ことりと穂乃果知りません?」

凛「んー?ことりちゃんと穂乃果ちゃんなら先帰っちゃったけど」

海未「えっ…」

凛「何かあったんじゃない?」

海未「そうだといいですけど…」

花陽「あの二人に限って仲間外れなんて無いと思うから心配する必要はないと思うよ?」

真姫「ええそうよ」

海未「そ、そうですよね!」

164: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:55:16.05 ID:Ohmi38x40
海未「じゃあ私も帰りますね」

凛「はーい」

花陽「お疲れ様でした」

真姫「お疲れ様」

海未「お疲れ様でした、体調管理はしっかりしてくるように」

凛「はーい」

真姫「そっちこそね」

海未「当然です、それでは」

スタスタスタ



穂乃果「それでさことりちゃん、今日は神社寄ってかない?お祭り成功祈願!」

穂乃果「もうすぐだしどうかな?」

ことり「うん!いいよっ!」

穂乃果「じゃあいこっか!」

ことり「うん!」

ことり(帰り、穂乃果ちゃんと帰った)

165: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:56:37.75 ID:Ohmi38x40
ヒラヒラヒラ

ことり「あれ…」

穂乃果「ん?どうしたの?」

ことり「い、いやなんでもない」

穂乃果「?」

ことり(どこからともなく無数の花びらがひらひらと飛んでた)

ことり(別にそれに関しては何とも思わなかったけど、何か違和感を感じた)

ことり(空気の変化…なのかな、湿った空気が風と一緒に流れ出したような気がした)

穂乃果「後一週間だね…」

ことり「…あ、うん、そ、そうだね」

ことり「今日のダンス、大変だったね」

穂乃果「そうだね、でも頑張らないと!」

ことり「もちろん!」

穂乃果「…でもなんか安心したよ」

ことり「え?どうして?」

穂乃果「ことりちゃん、センターをちゃんとやってくれそうだなって思って」

ことり「もちろんだよっ」

166: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:57:52.27 ID:Ohmi38x40
穂乃果「頑張ってね、ことりちゃん」

ことり「うんっ!」

穂乃果「あ、階段だから気を付けてね」

ことり「分かってるよ」

スタスタスタ

ヒラヒラヒラ

ことり(神社に行くための階段を上ってる最中、何かを感じた)

ことり(ただその何かの正体が掴めない、ただ“さっきの何か”と違うのはもっと違和感が鮮明に感じられること)


ドクンッ


ことり(階段を一段上がるごとに、鼓動の音が大きく聞こえた)

ことり(最初こそ何も聞こえなかったのに、だんだんと…だんだんとだんだんと大きくなっていった)

穂乃果「よしっとーちゃくっ!」

ことり「!」ピタッ

穂乃果「ん?ことりちゃんどうしたの?」

ことり「あ、ううんなんでもない」

ことり(階段を上り終え境内に入ると急に違和感が消えた)

ことり(ことりの感覚がリキャストされたんだ)

167: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:58:51.30 ID:Ohmi38x40
スタスタスタ

穂乃果「…ねぇ覚えてる?」

ことり「何が?」

穂乃果「私とことりちゃんが会った時のこと」

ことり「う、うん覚えてるよお母さんが穂乃果ちゃんのお母さんが」


穂乃果「違うよ」


ことり「!」

穂乃果「そんな昔のことじゃない、もっと最近のことだよ」

ことり(ちょっぴり早く歩く穂乃果ちゃんを追いかけた)

ことり(さっきの穂乃果ちゃんと雰囲気が全然違ってそれはまるでいつもとは対極に存在する穂乃果ちゃんのようだった、ことりはその変化に困惑を隠せなかった)

168: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 01:59:53.07 ID:Ohmi38x40
ことり「な、何言ってるの?」

穂乃果「一週間経ったら言おうって思ったんだ」

ことり(穂乃果ちゃんの後ろを歩いてる最中)

穂乃果「だからお願い、ことりちゃん」

ことり(大きな赤い門をくぐろうとした時に)



穂乃果「真剣に聞いて」

ことり(ことりの見ていた世界は急に反転したんだ)



ことり「し、真剣に…?」

穂乃果「もう一回、そしてもっと詳しく言うよ」


穂乃果「ねえ覚えてる?私とことりちゃんが一週間前、ここで出会ったこと」


ことり「!」

ポツ…ポツポツ…


ザー…ザーザーザー…


ことり(雨が降り出した、これまた突然すぎる雨だった)

169: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:00:45.27 ID:Ohmi38x40
穂乃果「あの時もそうだったよね、雨が降ってた」

ことり「…」

穂乃果「その時、あそこのお賽銭を投げるところで雨宿りをしてたことりちゃんと何気ない感じで出会ったよね」

ことり「…うん」

穂乃果「疑問に思わなかった?」

ことり「何が…?」


穂乃果「私はどこから来たんだろうって」


ことり「!」

穂乃果「ことりちゃんは聞くべきだったんだ、いや聞かないほうがよかったのかもしれない…」

ことり「何…?どういうこと?!」

穂乃果「私はね…私はね…!」

ことり「穂乃果ちゃん…?」

ことり(胸をギュッと抑えて何かを言おうとしてた…いや、違う)


ことり(何かを吐き出そうとしてた)


ことり(もちろん吐瀉物とかそういうものじゃなくて、何か…そう何かを吐き出そうとしてた)

170: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:02:24.95 ID:Ohmi38x40
穂乃果「うっ…うぇっ…」

ことり「ちょ、ちょっと大丈夫?!」

穂乃果「ご、めんね…なんか急に気持ち悪くなって…」

ことり「と、とりあえず座ろう?」

穂乃果「いや…ダメ」

ことり「どうして?!」

穂乃果「ことりちゃんに言わなきゃならないことがあるから…」

ことり「言わなきゃならないこと…?」

穂乃果「ことりちゃん…私はね…」

穂乃果「………」ギリッ




穂乃果「後一週間しか生きられないのッ!!!」




ことり「はっ…?!」

穂乃果「…ごめん、最初は会ってから言うつもりだったんだ」

穂乃果「だけど、ことりちゃんの嬉しそうな顔見てたらそんなこと言うのが怖くなって…」

穂乃果「だから、一週間経ってから言おうって思ったんだ」

171: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:03:15.70 ID:Ohmi38x40


穂乃果「…ごめん、ことりちゃん」



穂乃果「私は後一週間しか生きられない」



ことり「何…どういうこと…?!」



ことり「どういうこと?!??!」



ことり(ことりの感情は一瞬にしてぐちゃぐちゃになった)

ことり(再び掴み取った穂乃果ちゃんという存在をまた、手放さなきゃならないなんてそんなの認められるわけないじゃん)

ことり(だから穂乃果ちゃんの両肩を掴んで迫るように言ったんだ)

172: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:04:16.38 ID:Ohmi38x40
穂乃果「元々私がこの世界にいられるのは二週間だけだった」

穂乃果「この、雨の季節…雨の季節の二週間だけ…この世界に帰ってくることが出来たんだ」

ことり「そんな…!せっかくまた会えたのに…!会えたのになんでまたいなくなるの?!」

ことり「ずっと一緒のはずだったじゃん!!」

穂乃果「ずっと一緒にいたかった…!私だってずっと一緒にいたかった!!」

穂乃果「だけど私はもう死んでる人だから!この世界にいることが間違ってるんだよ!」


ことり「間違ってないよ!!」


穂乃果「やめてよ!!!」


ことり「!」ピクッ

ことり(穂乃果ちゃんの間違ってるという言葉に対して間違ってないと食い気味に返したら同じように食い気味に返され突っぱねられた)

173: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:05:45.21 ID:Ohmi38x40
穂乃果「どうにか出来る問題じゃないの!だからこの一週間を、そして後の一週間を精一杯楽しもうとしたよ?!」


穂乃果「ねぇ私が病気を克服したって何なの?!私たちずっと一緒だったって何なのッ?!?!」


穂乃果「私知らないよ!!私は死んだ!私はあの一年間どこにもいなかった!」

穂乃果「それなのに…それなのに…!」ギリッ

穂乃果「なんでなの…?私をいじめるみたいにみんなが空白の一年のことべらべらと喋るんだ…!」

穂乃果「気持ちはことりちゃんと同じだったよ…?何が起こってるのか分からない、私自身だってそうだった」

穂乃果「でも…この二週間、どんな気持ちであっても私がいなくなることが決まってるっていうのなら、もし全てがまたなくなってしまうというのならこの二週間という奇跡の時間に」


穂乃果「精一杯感謝して、精一杯遊んで、精一杯本気を出すこと」



穂乃果「そして精一杯、死ぬまで、死んでもいいくらいに時間に抗いながら生きていくこと…それはなんも不思議ではないでしょ…?」



ポロポロ…


ことり「…っ」

ことり(穂乃果ちゃんの瞳は涙のせいで皮肉にも輝いてた)

ことり(何かの光に瞳に反射し、その光が左斜め上へと何回も何回も通過していった)

174: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:06:43.44 ID:Ohmi38x40
ことり「…」

ポロポロ…

ことり(怒り混ざった穂乃果ちゃんの涙とその顔が一つの剣となってことりの心に突き刺ささった)

ことり(そうするとことりは声も出せなくなって次第には…)


ことり「はっ……は…は…はっ…あぁ…はは…」


ことり(過呼吸になりだした、視界がぼやけ始めた)

ことり(動悸も酷くなり耳が遠くなった)


ことり(穂乃果ちゃんを確認する術が消えていった)


ことり「…いやっ!!!」

穂乃果「!」

ことり(ただ、前がよく見えなくても声が遠くなろうともコンディションが最悪だろうともことりも穂乃果ちゃんのように、死にもの狂いに抗った)


ことり(……考えるチカラを捨てて)


175: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:07:50.18 ID:Ohmi38x40
ことり「いやっ!いやいやいや!!いやっ!!!」

穂乃果「こ、ことりちゃん…」

ことり「いやー!いやだいやだ!やだ!!」

ギューッ

穂乃果「…ことりちゃん」

ことり「やだやだやだやだやだやだやだ!!!」

穂乃果「ことりちゃん」

ことり「いやだいやだ!やだっ!」


穂乃果「ことりちゃんっ!!」


ことり「!」ピクッ

穂乃果「やめてよ…やだっていってもどうしようもないんだから…!」

穂乃果「…でもことりちゃんが私に本音を言ってくれたのはすごく嬉しいよ」

穂乃果「だからさ、ことりちゃんの本音の気持ちに対して私も本音で答えるね」

ことり「…ぅえ……?」

176: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:09:18.37 ID:Ohmi38x40
穂乃果「…ことりちゃんはさ、小さい頃から自分が弱いって分かってるくせに人のことばっか心配してたよね」

穂乃果「何をやるにしてもまずは人の心配から、そうしていると自分のことなんか後回しにしちゃって自分が…ううんことりちゃんがどんどん他の人に埋もれていっちゃってたんだ」

穂乃果「それにことりちゃんはわがままだったよね、口にはしなかったけどいつも心の中でああしたいってこうしたいって思ってて、自分が意見を出していいって言われた時だけ色々いってさ」

穂乃果「…だからこそね、ことりちゃんが進んで本音を言ってくれるのはすごく嬉しい」

穂乃果「私たち、ずっと一緒にいたんだからさ…」


穂乃果「本音をぶつけあって仲良く出来る仲だと思うの、違う?」


ことり「…」

穂乃果「…ごめん、だからもう無理なんだ」

穂乃果「私は後一週間したらここにいないから」

ことり「…やだ」

穂乃果「ごめんね…」

ことり「いやだ」

穂乃果「どうしようも出来ないんだ」

ことり「いやだ」

穂乃果「ことりちゃんが何を言っても無理、それは変わらないよ…」

ことり「やだ」

177: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:11:04.62 ID:Ohmi38x40
穂乃果「お願い…もう…時間がないんだよ…」

ことり「やだ」

穂乃果「………」

ことり「や」

穂乃果「いい加減にして!!」

ことり「!!」

穂乃果「私だっていやだよ!家族と…みんなと…ことりちゃんともう一生会えなくなるなんてさっ!!」

穂乃果「やだなのは私だよ!ことりちゃんと同等に…ううんそれ以上に!!」


穂乃果「別れるのがイヤなのは私なの!穂乃果なのッ!!!!」


穂乃果「ことりちゃんだってさ…気付いたら私が消えてたなんていやでしょ…?」

穂乃果「だから今、一週間を残した今言ったんだから…!」

178: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:11:59.67 ID:Ohmi38x40
穂乃果「ことりちゃんだって…もう一生会えないってなった時、何も言わずに一生離れ離れなんていう…そんなさっ…」



穂乃果「そんな最悪の最後/最期はイヤでしょ!?」



穂乃果「お願いだよことりちゃんッ…!受け止めてよ…!」


穂乃果「受け止めてよぉ…!!」


ギューッ


ポロポロ…

ことり「……ぁ」

ことり(穂乃果ちゃんの本音、そして心からの叫びだった)

ことり(一生隣にいてくれると思ってたことりの太陽、ことりはそれをただの打ち上げ花火と錯覚してたのかもしれない)

ことり(ことりはずっと朝の来ない夜を見てたから、夜だからこそ打ちあがって弾ける花火はとてつもなく明るく感じたのかもしれない)

ことり(もし、夜の来ない朝を今まで描いてたっていうなら穂乃果ちゃんは笑ってくれるかな)

ことり(儚く散る打ち上げ花火を太陽だと思ってた話をみんなに聞かせたら、みんなはどう感じてくれるのかな)

ことり(分からない、分からないよ)

179: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:12:44.49 ID:Ohmi38x40
ことり(そしてことりはこの太陽が消えることを受け止められるのかな?)



ことり(答えは無理、そんなのできっこないよ)



ことり(…ただ、ことりがどうにか出来る問題じゃなかった)

ことり(助けたいのに、離れたくないのにことりはそれをただそんな今にも消えそうな泡沫の穂乃果ちゃんの傍にいることくらいしかできなかった)

ことり(そうこうしてるうちにこの何とも言えない二人だけの時間に楔が打たれた)




希「なに…して…るん……?」



180: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:14:02.39 ID:Ohmi38x40
ことり「!」

穂乃果「!」

希「きょ、今日バイトやったからここでお仕事してたんだけど急に怒鳴り声が聞こえて…」

穂乃果「あ、えっと…」

ことり(希ちゃんがやってきた、ここにきて場の空気の悪さに気付いたのか目を泳がせながらしゃべってた)

穂乃果「…ごめんなんでもない、ただちょっと喧嘩しちゃっただけ」

希「そ、そっか…仲直りはしたの?」

穂乃果「…まぁ」

ことり「ひぐっ……」

希「…してないよね?」

穂乃果「…まぁ」

ことり「ぐすっ…」

希「………」

181: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:16:23.04 ID:Ohmi38x40
穂乃果「…とりあえず今日は帰るよ」

穂乃果「ばいばい、希ちゃん、ことりちゃん」


穂乃果「ごめんね、ことりちゃん」ボソッ


ことり「ま、まっ…!!」

ことり(声がでなかった、足が震えてどこかに穴でもあるんじゃないかと思うくらいにスーッと力が抜けてった)

ズキッ

ことり「っ!!」

希「ことりちゃん?!」

ことり(胸が、心臓がすごく痛かった)

ことり(これが今のことりの傷の痛みとでもいうのかな)

ことり(溜まりに溜まってたのに気付かないふりをしていた分の傷が沁みてるのかな)

182: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 02:17:58.12 ID:Ohmi38x40
ことり「ま…まっ…て…!」

ことり(胸が痛いから下を向くたびに、雨に濡れる穂乃果ちゃんが遠ざかっていった)

ことり(ことりはその後ろ姿を追うことが出来なかった)

ことり(枯れた落ち葉がひらひらと飛んでた)

ことり(次第にことりの視界は黒くなった、穂乃果ちゃんがいなくなって意識を保とうと頑張る必要がなくなっちゃったから)

ことり「あ…ぁ…」

バタッ

希「こと…ちゃん?!…と…ちゃ…!!」

ことり(希ちゃんの声が遠ざかっていった、それだけでことりの意識も遠ざかっていく自覚が持てた)

ことり(そこからは何も知らない、ことりも完全に意識を切り離しちゃったから何が起こったのか全く分からないままだった)

186: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 19:53:48.79 ID:Ohmi38x40
ことり「ん……」

ことり「ここは…」キョロキョロ

ことり「…どこ?」

希「あ、目が覚めた?」

ことり「希ちゃん?!」

希「ここはウチの家、今日は泊まってっていいよ、ことりちゃんのお母さんにも言っといたから」

ことり「えっ…でも…」

希「大丈夫大丈夫、それに」


希「何があったか聞きたいし」


ことり「……」

希「ま、ゆっくりしてって?何かあったら言ってね、出来る限りのことはするから」

ことり「う、うん……」

ことり「…」

ことり(目が覚めたら希ちゃんの家にいた)

ことり(急に意識を失ったからきっと希ちゃんの家にまで連れてってもらったのだと思う)

ことり(可愛いお人形さんが置かれてるベッドで目覚めて、周りを見渡せば可愛らしい小物がいっぱいあって正直希ちゃんらしくないな、でもなんだか可愛いなって微笑んでた)

187: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 19:54:39.52 ID:Ohmi38x40
希「や、やめてやあんまり部屋じろじろ見るのは~」

ことり「ご、ごめん…でもなんか可愛いね、希ちゃん」クスクス

希「も、もー!からかうの禁止!」

ことり「はーい」

希「そ、それでさ話をぶった切って単刀直入に聞くけど」

ことり「…!」


希「何があったん?」


ことり「………」

ことり(穂乃果ちゃんの本当のこと、もとい後一週間しか生きられないという事実を話そうか迷った)

ことり(だってこれは空白の一年に創られた記憶が埋め込まれてる希ちゃんにとってはあまりにも無理矢理すぎる話、それに穂乃果ちゃんのためにも話すのは危ないこと)

ことり(そう頭の中で収束させたことりは希ちゃんにこういった)

ことり「…希ちゃん」

希「何?」

ことり「…ちょっと前に本を読んだんだ、一週間前」

希「…?う、うん」

188: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 19:56:16.87 ID:Ohmi38x40
ことり「その本にはね、こう書いてあったんだ」


ことり「後一週間しか生きられない親友がいたら、あなたはその親友と何をするのか」


ことり「…希ちゃんなら何をする?」

希「…ふむ」

希「んーと、その親友はもうどうしようも出来ないの?例えば過酷な山奥にある果実を食べたら寿命が延びる!みたいな」

ことり「そ、そんなファンタジーな話じゃないよ、ただ…そうだな…不治の病みたいなものだよ」

希「あーなるほどね」

希「じゃあ場所は現実世界なわけだ」

ことり「そうそう」

希「そっか、それならウチはその親友と残りの一週間、出来ることで精一杯楽しむかな」

ことり「えっ…」

希「ん?何かおかしいこと言った?」

ことり「悲しくないの…?」

希「うーん…悲しいけど、そこで立ち止まってたらその子の最期は最悪やん?」

ことり「!!」


穂乃果『そんな最悪の最後/最期はイヤでしょ!?』


希「その子のために、残りの一週間を一緒に楽しむのが親友としての役目じゃない?」


ことり「…うん」

189: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 19:58:20.48 ID:Ohmi38x40
ことり「どうしてそんな早く決められるの?」

希「そんなの簡単じゃん、答えがそれしかないからだよ」

希「今言った通りその子のために残りの一週間を楽しむことが親友の役目、逆に聞くけどことりちゃんはそれ以外に答え、あるの?」

ことり「えっ…」

ことり(答えなんてなかった、だから希ちゃんに救いの手を伸ばした)

ことり(それなのに希ちゃんはいとも簡単に答えを出してきた)


ことり(この差はなんだろう)


ことり(何が影響してこの差が出るんだろう)

ことり(それに、答えが一つしかないっていうのも驚きだ)

ことり「ことりは…答えなんてなかった…」

ことり「ただ…希ちゃんに聞きたくて…」

希「…そっか」

希「…分かった、ご飯にしよっか!」

ことり「え?」

希「もう言わなくてよしっ!ほらほら明日もダンスレッスンあるんだからよく食べなよー?」

ことり「あ、うん」

ことり(ことりの顔を見て察したのか、それとも話の内容で何かを感じ取ったのか、とにかくよく分からないけど希ちゃんはキッチンの方に向かっていった)

190: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:00:09.75 ID:Ohmi38x40
ことり「…!」

ことり(ふと、枕に下に写真があることに気付いた)

ことり(中学時代のことりたちの写真だった、みんな幸せそうな笑顔をしてた)

ことり(そんな写真を見てふと思ったんだ)


ことり(穂乃果ちゃんが消えてなくなるまでにことりと穂乃果ちゃんは何回笑いあえるんだろうって)


ことり(分かりそうで分からない疑問がことりの頭を駆け巡ってた)

ことり(だって答えなんて簡単じゃん)



ことり(答えは分からない、で済むはずなのに)



ことり(その答えさえも疑ってしまうほど、今の状況と心境は深刻なのかもしれない)

希「その写真、懐かしいね」

ことり「!」

希「勝手に人の枕の下を見ちゃダメだよ?」

ことり「ご、ごめん…」

希「別にいいよ、とりあえずもうご飯は作ってあるから食べよ?」

ことり「う、うん!」

スタスタスタ

ストンッ

希「今日はことりちゃんもいるから頑張ってカレー作ってみたんよ、召し上がれ」

ことり「いただきます」

191: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:02:16.09 ID:Ohmi38x40
希「はいっいただきます」

ことり「…」パクパク

希「どう?」

ことり「おいしいよ!」

希「えへへ…ならよかったよ」

ことり「ん」パクパク

希「ねえことりちゃん?」

ことり「ん、何?」

希「…ウチ今という一瞬でちょっとだけ考えたんだけど、話していいかな?」

ことり「…何を?」

希「あ、ごめんごめん、さっきことりちゃんが言った親友のお話」

ことり「あ、うんいいよ」

希「ありがとっじゃあ話すね」

希「まずさことりちゃんに聞きたいんだけど」

ことり「?」


希「その物語は最終的にどうなっちゃうの?」


ことり「……分からない、最後まで読んでないから」

希「…そっか、なるほどね、うんうんなるほどっ」

希「つまりことりちゃんは今、展開の読めないストーリーにもどかしい気持ちを抱いてるわけか」

ことり「…うん」

192: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:04:15.21 ID:Ohmi38x40
希「…そっか、それならやっぱりそうだよ、ことりちゃん」

ことり「何…?」

希「例えばさ、ことりちゃんが今からウチとそこのベランダから身を投げたとしよう」

ことり「…うん」

希「ことりちゃんとウチは地面に叩きつけられて即死、つまりこの世界にはもういないんだ」

ことり「…」

希「じゃあもし来世があるとしよう」

希「ウチとことりちゃんはほぼ同時に死んだから来世で産まれる時もほぼ同時で産まれる、という理屈で話を通したとして」



希「そこでウチらが出逢う確率って何%なんかな?」



ことり「なんぱーせんと…」

希「小数点はおろか、もっともっともーっと低い確率だと思うよ」

希「そうと分かって、来世で逢えるなんて確証がないのに今を無に帰させてるなんてただのバカがすることやん?」

希「残り一週間しかないなら、その出逢い/出会いに感謝しなきゃ」


希「その一週間を全力で楽しまなきゃ」


193: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:06:30.79 ID:Ohmi38x40
希「悲しいことなんて後回しでいいんだよ、夏休みの宿題だって最後の日にやればいいんだよ」

ことり「…!」ウルッ

希「…なんて、物語に夢中になっちゃったけど」エヘヘ


希「もし、本当にそういうことが起こったらウチはそうするかな」


希「それが相手のためでもあるし、自分のためでもあるから」

希「…これがウチの意見の全てかな!」

ことり「ありがとう…ありがとうっ!」

希「おおぅ…よ、よくわからんけど何かになったならよかったよ」アハハ

ことり「うんっ!」

ことり(全体的な解決になってないけど、気持ち的な面では救われた気がした)

ことり(希ちゃんにだいったんに背中を押してもらった)


ことり(これが希ちゃんのすごさだよ、これが希ちゃんのチカラだよ)


ことり’(改めてそう感じた)

希「さてっご飯に戻ろっか」

ことり「うん!」

希「ことりちゃんセンター頑張ってなー?」

ことり「う、うん!」

希「練習は真剣にやって本番楽しめばいいんよ」

希「ウチらも結構順調だから、ことりちゃんはことりちゃんの問題を抱えて頑張ってな?」

ことり「う、うん」

194: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:09:10.21 ID:Ohmi38x40
希「よーしっ!この後お風呂!ちゃちゃっと食べてちゃちゃっとお風呂入っていっぱいあそぼっ!」パクパクッ!

ことり「は、はやいよ~…」

ことり(その後、お風呂に入った)

ことり「ふう~…」チャプンッ

ことり(そして入ってる時に考えた)

ことり「…今思えば、自分のこと…全然見てなかったな……」


穂乃果『…ことりちゃんはさ、小さい頃から自分が弱いって分かってるくせに人のことばっか心配してたよね』


ことり「…」

ことり(ホントのこと言えば別にそんなつもりはなかった)

ことり(ただ単に、穂乃果ちゃんが、みんなが眩しくて綺麗で明るくて、そんな何かに魅了されてしまって自分のことになんか目も当てられなくて)

ことり(ふと下を見ても自分の足元さえ見えずに、ただ…ただただみんなの背中を追いかけてきたから自分の心配なんて出来るはずがなかった)

ことり「…よしっ」

ことり(とりあえず覚悟を決めて、明日…明日穂乃果ちゃんと真剣に話し合う…いや、違う)


ことり(明日は穂乃果ちゃんと全力でぶつかり合おうと思う)


グッ

ことり(今はちゃんと全身に力が入る、あの時みたいに置いていかれる心配もない)

195: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:10:28.51 ID:Ohmi38x40
ことり「………」

ガララ

希「おっじゃましまーす!」

ことり「?!」

希「いやー待てなくてきちゃった!」

ことり「い、いや来ちゃったじゃないよ?!」

希「いいやんいいやん女の子同士なんだから!」

ことり「そ、そういう問題じゃ!」

希「裸の付き合いっていうやろ?せっかく今日はお泊りしてくれるんだからお風呂だって一緒に入りたいやん」

ことり「そ、そうかなぁ…?」

希「そうやで?」

ことり「ま、まぁいいけど…」

希「よしよしっ」

ことり(希ちゃんが突然裸でお風呂に入り込んできた)

ことり(希ちゃんは一度心を開示するとどこまでも突っ走ってくるから、こういうところではデリカシーの欠片もない)

ことり(まぁとりあえず希ちゃんとお風呂に入った、日常会話をしてあははと笑いあってそんな中でやっぱり希ちゃんはすごいなってそう思うばかりだった)


ことり(だからみんな、そんなすごいチカラを持ってるんだろうな、なんてちょっと考えてた)


196: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:12:26.10 ID:Ohmi38x40
ことり(それでお風呂から出て勉強したり何気ないことをしてたらあっという間に深夜だった)

ことり(ベッドは一つしかないから希ちゃんの隣で寝ることになった)

ことり(そんな家の明かり全てを消して眠りにつこうと思った時のこと)

希「…ことりちゃん、起きてる?」

ことり「ん…何?」

希「今日、聞きたかったこと…実はもっといっぱいあったんだ」

ことり「…」

希「…でも、今はいいよ」

希「きっとことりちゃんにも事情があると思うから、今は聞かなくていい」

希「…だけどいつか聞かせてほしいな、いつか」


希「ウチもことりちゃんの言ってたストーリー、続きが、終わりが超気になるからさ」


希「完結したら、それも是非教えてな?」

ことり「…うん」

ことり(背を向け合ってたからあまり細かいことは分からないけど、希ちゃんは多分無理した笑顔をしてたと思う)

ことり(希ちゃんの声は実に儚げで、何故か切なく感じてしまう笑い混じりの声だった)

ことり(そう感じていると、希ちゃんも心底ことりと穂乃果ちゃんのことを心配しているようで、空元気ではないけどそれにものすごく近いものをことりはみせられてるのかもしれないと思った)

197: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:14:27.57 ID:Ohmi38x40
ことり「…ありがとう、希ちゃん」

ことり「でも…大丈夫だよっきっと明日には…解決してるから」

希「…そっか」

ことり「ことりの読んでた物語はね、ものすごく短いけど…でも一日にちょっとしか物語を進められなくて…読み終えるのに最低でも後一週間はかかるんだ」

希「分かった、じゃあそれまで待つよ」

希「聞きたいことも、ストーリーのことも」

ことり「…うんっ!」

ことり(希ちゃんも安心してくれたみたいで、無理してる感はなくなった)

ことり(だからことりも安心しちゃって今日の疲れがどっと押し寄せてきてすぐに眠りについちゃった)


ことり(そして気が付けばもう朝だった)

ことり「おはよう!」

希「おはよ~」

凛「あ、ことりちゃん希ちゃんおはよっ!」

花陽「おはようことりちゃん希ちゃん」

ことり「今日も練習頑張ろうねっ」

凛「もちろんっ!!」

希「ごめん、生徒会関係でちょこっとお仕事あるからウチは先にいくね」

ことり「あ、うん!」

凛「いってらっしゃい!」

花陽「いってらっしゃい」

希「あーいよ!」

タッタッタッ!

198: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:15:49.39 ID:Ohmi38x40
ことり「ことりたちもいこっか」

花陽「そうだね」

凛「うん!」

スタスタスタ

花陽「…あ、真姫ちゃんだ」

凛「ホントだ!おーい!真姫ちゃーん!」

タッタッタッ!

ことり「あ、ちょっと!」ダッ

グイッ

ことり「!」

花陽「待ってことりちゃん」

ことり「どうしたの?」

花陽「ねぇことりちゃんってさ」

ことり「…?」


花陽「何か問題を抱えてるでしょ?」


ことり「?!」

199: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:18:12.75 ID:Ohmi38x40
ことり「ど、どうしてそう思うの?」

花陽「なんか…苦しそうに笑ってるから」

ことり「苦しそうに…」

花陽「うん…私も何かあってもみんなの前じゃ普通を演じてたいから…ことりちゃんの気持ちは痛いほど分かるんだ」

ことり「そ、そっか…」

花陽「…何があったの?」

ことり「……」

ことり(返答に困った、穂乃果ちゃんと喧嘩したなんて言って花陽ちゃんに不安を抱かせたくない、そのためにはどう返答すればいいんだろう)

ことり「…あのね」

ことり(だからこう返答した、勘のいい花陽ちゃんならすぐ察してしまうかもしれないけどことりはこう返したんだ)

ことり「一週間前、物語を読んだんだ」

花陽「物語…?」

ことり「うん、親友が残り一週間しか生きられないとしたらあなたは何をするのかっていう物語」

花陽「余命一週間か…」

200: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:20:41.66 ID:Ohmi38x40
ことり「…うん、花陽ちゃんならどうする?」

花陽「え…私か…」


花陽「うーん…私は最後の最期まで楽しく過ごしたいかな」


ことり「!」

花陽「悲しいことは全部後にして、その人が死ぬまではずっとずっとずーっと!楽しい時間で一緒にいたい」

花陽「きっとその親友の人だって、最悪な最期は望んでないから…」


花陽「それに、その親友の人のためだけに出来ることなんてそのくらいしかないから」


ことり「!!」

ことり(ビックリした、希ちゃんと全く同じ答えを返された)

ことり(心の中だけに溜めておくことが出来なくて思わず目を丸くしてた)

花陽「…?もしかしてことりちゃんの友達にはそういう子がいるの?」

ことり「…その…えっと…どうだろうね…」

花陽「…そっか、なら答えは一つしないと思うよ」

201: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:22:55.92 ID:Ohmi38x40
ことり「えっ…」


花陽「その人のために最後の最期まで全力で走ることがその人に出来る唯一のこと」


花陽「無理なんて重々承知でとにかく前へ進むこと、むしろ限界なんて恐れないくらいに突っ走ること…」


花陽「いなくなっても悔いのないように楽しく過ごすことがことりちゃんにとって最高の選択だと私は思う」

ことり「最高の…選択…」

花陽「そうだよ」

花陽「…これが私の勘違いだったらただの痛い人だけどもしこれが違っても、ことりちゃんが別のことで悩んでいても私は…ううん…」


花陽「小泉花陽はことりちゃんを全力応援したい!」


ことり「!!」

花陽「私、いつもは言いたいことが言えなくて…心の内に溜めとくけどもし言いたいことが言えるならその人と本気でぶつかり合いたい、本気でぶつかって本気で笑いあって本気で怒り合って本気で泣きたい!」

花陽「だから…本気でことりちゃんに言うけど、私はことりちゃんのこと死ぬほど大好き!いいやみんなことりちゃんのことが超大好きだと思う!」

ギューッ

ことり「えっ…」

花陽「えへへ…もちろんそんな変な意味はないよ?でも私の大好きなお米より好き、だからそんなことりちゃんに悲しい顔をしてほしくないの」

花陽「ことりちゃんが今悩んでること、失敗とかそんなの恐れずにとにかく前へ走ってほしいの」

花陽「だってみんなが隣にいるんだもん!私たちは死なないから!死なないからこそ、失敗したんだったら、迷ったんだったらいつでも隣にいる私たちに頼ってほしいの!」

ことり「っ!」ウルッ

202: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:24:22.83 ID:Ohmi38x40
花陽「…えへへ、だから…頑張ってことりちゃん」




花陽「“本当の”小泉花陽は、みんなに“本気の”エールを送る人だから♪」




ことり「花陽ちゃん…!」

ギューッ

花陽「わぁ…苦しいよぉ」

ことり「ありがとう…ありがとう…!!」

ことり(これが花陽ちゃんのチカラだと思った、穂乃果ちゃんにも負けない前向きな心と素直な言葉で相手の背中を押す優しい心の持ち主だ)

ことり(このチカラは花陽ちゃんだけにしかないチカラだよね、本気で相手を思う気持ち、本気で相手を応援する気持ち、相手のこと本気で理解する気持ち、本気で何かをしてあげる気持ちを持ってること)


ことり(それは実に花陽ちゃんらしくて、花陽ちゃんの最高のチカラだと思う)


ことり(感受性がすごくて人を理解する心があって観察眼が凄まじくてとにかく心の広い持ち主だから、ただそれを表に出さないだけでもしいつでも表に出してる状態だったらきっと穂乃果ちゃん並みの名声があったと思う)

ことり(…だからちょっとだけもったいないな、なんて思っちゃった)

ことり(まぁとにかく希ちゃんに、そして花陽ちゃんにも背中を押してもらってことりという自分に自信が持てた)

ことり「ありがとう、花陽ちゃん」

ことり(だからこの背中を押してもらって進んだ二歩を無駄には出来ない)

203: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:26:02.71 ID:Ohmi38x40
タッタッタッ

ことり(急ぎ足で、そして走ることりの向こう側にいる穂乃果ちゃんの背中にぶつかってみようと思う)


希『その子のために、残りの一週間を一緒に楽しむのが親友としての役目じゃない?』


ことり(ことりも気持ちは同じ)


花陽『無理なんて重々承知でとにかく前へ進むこと、むしろ限界なんて恐れないくらいに突っ走ること…』


ことり(花陽ちゃんに勇気をもらったんだから、失敗なんて、限界なんて恐れない)

ことり(場所は正門ら辺から人気のない廊下へ移った)

ドンッ

穂乃果「ことりちゃん…?」

ことり「ご、ごめん前見てなくて…」

穂乃果「そ、そっか…」

ことり「うん…」

穂乃果「………」

ことり「………」

ことり「あのね」

穂乃果「あのさ」

ことほの「!」

204: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:27:30.99 ID:Ohmi38x40
穂乃果「…先いいよ」

ことり「……じゃあ先言うね」

穂乃果「うん…」

ことり「昨日のことで…いっぱい考えたんだ」

穂乃果「…」

ことり「ことりはこれからどうするべきなのかって、ことりは穂乃果ちゃんとどう向き合えばいいんだろうって」

ことり「…正直、ことりだけじゃよく分からなかった」

ことり「けど、ことりには仲間が、親友がいたから分かったんだ」

ことり「穂乃果ちゃん」

穂乃果「…はい」

ことり「ことりは…ことりは…」


ことり「ことりはこの一週間を穂乃果ちゃんと全力で楽しみたい!!」


穂乃果「!」

ことり「穂乃果ちゃんと本音でぶつかり合いたい!やり残しがないように精一杯遊びつくしたい!最後の最期まで突っ走っていたい!」

ことり「これがことりの答えだよ!どう?!」

穂乃果「…バッチリだよ、ずっと…ずっとそう言ってほしかったんだ…」

ポロポロ…

205: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:28:39.36 ID:Ohmi38x40
穂乃果「やっぱり…ことりちゃんが一緒にいてくれてよかった…!」

ギューッ

ことり「ことりも…!ことりも穂乃果ちゃんが一緒にいてくれてよかった!!」

穂乃果「私ね…怖かったんだ、ことりちゃんをまたイヤな気持ちにさせて…この二週間が最悪なものになっちゃうんじゃないかって…」

ことり「違う…!そんな、そんなことない!ことりだってあんなわがままみせちゃって…穂乃果ちゃんがイヤイヤになってると思ってずっと悩んでて…」

穂乃果「ううん、私だって違う」

穂乃果「…でもある意味私はことりちゃんを信じてたのかもしれない」

穂乃果「きっと私のこと受け止めてくれるって、きっと本当のことりちゃんに気付いてくれるって」

ことり「本当のことり…?」

穂乃果「うん!気付いてなくても、まだいいよまだ…」


穂乃果「きっと近いうちに気付くから」


ことり「う、うん…?」

穂乃果「…あはは、なんか安心して、嬉しくて涙が出ちゃうよ」

ポロポロ…

ことり「えへへ…ことりも…」

ポロポロ…

206: ◆iEoVz.17Z2 2017/09/13(水) 20:29:51.51 ID:Ohmi38x40
穂乃果「あははははっ」

ことり「えへへへへっ」

ことり(その時は本気で笑いあえてたと思う、それに本気で泣けてたと思う)

ことり(本気でうれし涙を流したとことりは思う、このことりの想い…届いたと思う)

ことり(穂乃果ちゃんも嬉しそうだった、だからとにかくその時は泣きながら笑いあった)

穂乃果「ことりちゃんがその気になら私も、精一杯楽しむ!」

穂乃果「ことりちゃんには本音でぶつかり合うし最後の最期まで突っ走るよ!」

穂乃果「だから…この残りの一週間…ホントに…ホントに…ほーんとに悔いのないようにしよう?」

ことり「…うんっ!」


穂乃果「残りの一週間、精一杯楽しめるようどうぞ、よろしくね」


ことり「もちろん!よろしくねっ!」

ギューッ

ことり(抱き合ってた状態だけど、抱き合うことりと穂乃果ちゃんに再び力が入った)

ことり(窓の外をチラッと見ると赤い花びらがひらひらと飛んでた)

ことり(すごく幻想的で、また誰かの心情を表してるようにも感じた)


次回 ことり「花になろう」 後編