前回 モバP「だりやすかれんとロックの日」

1: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/26(月)23:59:41 ID:9Xv


―――事務所


しとしと……


加蓮「――はぁ……」


P「…………」カタカタ…


加蓮「…………」


P「…………」カチカチ カチッ


加蓮「……はぁ……」


P「…………。…………」カタカタ


加蓮「………………はぁぁぁ……」


P「……加蓮、ため息もう20回目だぞ? 梅雨だからってそんな」

加蓮「はぁぁぁぁあ……」

P「加蓮」

引用元: モバP「だりやすかれんとお留守番」【モバマスSS】 


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2: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:01:33 ID:YJi
P「まったく……そんなに雨嫌いだったか?」

加蓮「えー……? 別に、むしろ雨音は好きな方だけど……はぁ」

P「ならどうしたんだ……心配になるだろ」

加蓮「あ、ごめん……具合悪いとかじゃないよ」

P「……ああ、もしかして寂しいのか? 李衣菜も泰葉もいなくて」

加蓮「……うん。だって家族旅行とか実家に帰省とか……ずるい」ムスッ

3: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:02:39 ID:YJi
P「不貞腐れるなって。父の日だったんだし加蓮もご家族とどこか出かければ良かっ」

加蓮「お父さんお仕事」

P「おおう……ごめん」

加蓮「はぁ……あぁ……ああもう……っ!」プルプル…


加蓮「はーあ! 李衣菜はいいよね前々から予約取っててさ私も真似しよーって思ったら『ごめんね加蓮、お父さんその日お仕事なんだよ』ってなんなの泰葉も泰葉で長崎帰って親孝行とかほんともう私だけ置いてけぼりであーあつまんないっ!!」ガルル

P「悪かった俺が悪かったよ!」

4: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:04:12 ID:YJi
加蓮「なによなによ……寂しくなんかないんだからぁ……」イジイジ…

P「お、俺は助かってるよ。加蓮が来なかったら1人で事務仕事だったし」

加蓮「……そういえばちひろさんは?」

P「ちひろさんなら夏の祭典用の衣装作るんだーとかで休みもらってたぞ」

加蓮「夏の祭典? なにそれ」

P「さぁ。コスプレがどうとか言ってたな」

加蓮「ふーん……よく分かんない」

5: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:05:45 ID:YJi
P「まぁそんなわけで加蓮が来てくれて良かった」

加蓮「私も寂しさ紛らわすために来たんだけどさ……。Pさんと2人きり……この前のお仕事のご褒美だと思えばいいかな」

P「あのグラビアか。蓮の花の精……うん、加蓮はどんどん美人になっていくなぁ。綺麗だった」

加蓮「もー、直球すぎ。Pさんが私のことよく理解してくれてるから、ああして私以上の私が出せたんだよ。ありがとね」

P「そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」

6: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:08:00 ID:YJi
加蓮「えへへ、感謝の気持ちは素直に伝えないとね。ちょっと恥ずかしいけど」

P「顔赤いぞ?」

加蓮「そういうのは言わないのー。Pさんのバーカ」

P「なんだとー」ナデナデ

加蓮「やーんっ♪ っていつもなら横からヘッドホンとまん丸頭が睨んでくるんだけど……これならお留守番最高かも♪」

P「んじゃ帰ってきたらバラすか」

加蓮「やめてお願いご飯抜きにされてベッドがダンボールになっちゃう」

8: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:09:06 ID:YJi
P「ダンボールはないだろさすがに」

加蓮「それがあるの……ドールハウス作りで余ったダンボールが押し入れにたくさん」

P「なるほど。でも案外あったかいんじゃないかダンボール」

加蓮「やだってば!?」

P「ほら、組み立てて中に入って『拾ってください……』ってしたらかわいいと思う」

加蓮「…………」ポワワ


加蓮「……どこかにあったっけ」ゴソゴソ

P「残念だけどこの前ちひろさんがリサイクルに出しちゃったぞ」

9: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:10:29 ID:YJi
加蓮「じゃあもし私がこんな雨の日に道端で捨てられてたら拾ってくれる?」

P「ぴにゃこら太(ペット)いるしなぁ」

加蓮「ぴにゃ君とも仲良くするよ?」

P「餌代がな……」

加蓮「アイドルやってるし稼ぎは大丈夫!」

P「設定壊れたぞ」

加蓮「あ、私たち3人分のお給料でマンションいけるんじゃない? 一緒に住も!」

P「住まない住まない。いや待て、なんの話だっけ?」

10: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:12:46 ID:YJi
加蓮「加蓮ちゃん泰葉ちゃん李衣菜ちゃんという3匹の仔犬が小さなダンボールの中でくんくん鳴いていました。そういうお話だよ」

P「そうだったか……?」

加蓮「わん」ポフ

P「う」

加蓮「わふわふ。あのとき拾ってくれてありがとうのお手~」ポフポフ

P「お手は人の頭を撫でる芸じゃない」

加蓮「んふ、さっきのお返し♪」

11: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:13:46 ID:YJi
P「ならお返しのお返しを」ポフン

加蓮「んっ。それならお返しのお返しのお返しを……」

P「終わんないぞ」

加蓮「あは。じゃ手ぇ出して、爪のケアしてあげるから」

P「お、久しぶりだな」

加蓮「どうせお手入れしてないんでしょ?」

P「ちょ、ちょっとはしてるよ……お願いします」

加蓮「はーい♪」

12: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:15:26 ID:YJi
加蓮「――ん、ほんとだ。一応最低限はしてるんだね」ショリショリ

P「うん、切ったあとに軽く」

加蓮「爪ってすぐ傷んじゃうからね……優しくしてあげなきゃ」ショリショリ…

P「デリケートなんだな」

加蓮「そ、私たちみたいにね」

P「優しくしてないか?」

加蓮「うーん……基本的には超甘々だけど。プロデューサーとしては厳しいとこあるかな」ショリショリ

13: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:17:20 ID:YJi
P「甘々かどうかは置いといて……かわいい子には旅をさせたいんだよ」

加蓮「旅かぁ。それなら大冒険だね、アイドルって」クス

P「もっともっと大冒険しような」

加蓮「うん。色んな景色、私たちに見せてね」ショリショリ…

P「加蓮はどんな景色が見たい?」

加蓮「んー。綺麗なビーチとか、素敵な夜景とか? あ、もちろん海外のね!」

P「……行きたいだけだな?」

加蓮「違うヨ」プイッ ショリショリ

P「ちゃんと指先見てくれ危ないから」

14: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:18:49 ID:YJi
加蓮「一緒に出かけたい……旅行したい……なんで……どうして私を独り置いてったの……」ブツブツ…ショリショリ…

P「怖い怖い発作みたいになってる」

加蓮「はぁ……はああぁぁ……」

P「ほ、ほら。せっかくLINEだってしてるんだから寂しいなら構ってもらえば」

加蓮「家族水入らずなのに邪魔できないよ……ずっと見てない、未読スルー」

P「……加蓮ってそういうところあるよなぁ」

加蓮「だ、だって!」

15: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:21:02 ID:YJi
P「遠慮なんかしないでいつもみたいに甘えればいいんだよ」

加蓮「それとこれとは別なのっ。向こう雨降らないように祈るだけで充分だよ、うん!」

P「強がっちゃって」

加蓮「む、むぅ……。もう黙っててよ、爪綺麗にしてあげてるんだから」ショリショリ…

P「あはは。はいはい、悪かったよ。……やっぱり手際いいよな」

加蓮「そりゃ、昔からやってるし。ちょうどこんな雨音BGMにしてね」

P「うん……そっか」

16: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:22:22 ID:YJi
加蓮「昔はこうしてれば寂しさも紛れてたんだけど……もう3人でいるのが当たり前になっちゃったから」ショリショリ…

P「こういうとき弱くなっちゃうな」

加蓮「いいの。その代わり打たれ強くなったんだから」

P「うん、お陰でむしろ強くなったよ加蓮は。李衣菜も泰葉も、3人とも」

加蓮「でしょ? お互いに弱いところ補って、もっとアイドルの世界を冒険するんだ」ショリショリ

P「で、最後は大団円のハッピーエンドか」

17: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:23:54 ID:YJi
加蓮「そうっ。ハッピーエンドになるっていつも信じてるよ」

P「そうなるといいな。……いや、そうしよう。一緒に」

加蓮「ふふ、うんっ。頑張るよ私……ううん、私たち!」


しとしと……


加蓮「――はーあ。早く帰ってこないかなー♪」


―――

――


18: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:25:09 ID:YJi


―――2日後


泰葉「――ただいま帰りm」


加蓮「おかえりいいぃぃぃいっ」ドーンッ

泰葉「うっきゅうっ!?」

加蓮「ああああんさみしかったあぁぁぁぁあ!」ギュウウウウウウ

泰葉「くるし、くるじぃかれ、すとっぷやめてかれんんん……っ!!」バシバシ


李衣菜「ただいまです、Pさんっ。いやー静岡良かったですよー」

P「ああ、おかえり。家族旅行楽しめたみたいだな」

19: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:27:10 ID:YJi
李衣菜「はいっ。へへ、海鮮料理美味しかったなぁ……あ、それに予報じゃ雨マークだったのに晴れて海もよく見えて!」

P「あはは、分かった分かった。肝心のご両親は喜んでたか?」

李衣菜「もちろんです! 家族サービスするのもたまにはロックですね♪」


加蓮「なんで昨日帰ってきたの言ってくれなかったの! 突撃しようと思ったのに!」

泰葉「だからに決まってるでしょうっ! 疲れてるのに加蓮の相手なんてしたくな――」

加蓮「ひどいいいいい私はこんなに寂しかったのにいいいい」ギュギュギュ

泰葉「あああああっ」ギリギリ


P「助けた方がいいんじゃないか」

李衣菜「い、いやぁ……矛先私に向きそうだし……」

20: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:28:49 ID:YJi
泰葉「た、たすけてりいな……ぁあ」

李衣菜(こっち見ないで)

加蓮「――李衣菜」パッ

泰葉「う、げほっ……あうぅ」ドサ

李衣菜「げっ」

加蓮「…………」ジリ…ジリ…

李衣菜「…………」ズリズリ…


加蓮「――おかえりーな☆」

李衣菜「ただいーま☆」

21: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:30:00 ID:YJi
李衣菜「うわあああああ!!」ダダダッ

加蓮「待って李衣菜おかえりのハグしよおおおおっ」ダダダダー


泰葉「はぁ、ふぅ……。た、ただいま帰りましたPさん……」

P「お疲れ。久しぶりの帰省はどうだった?」

泰葉「そうですね……。まぁ、私としてはそれなりでした」

P「その反応はだいぶご両親に甘えてきたみたいだな」

泰葉「い、言わないでください……その通りですけどっ」

22: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:32:25 ID:YJi
P「のんびりできて良かったな、泰葉も。こっちは大変だったぞ、加蓮がずっと寂しい寂しいって」

泰葉「あ、本当ですか? LINE見てないみたいだったので李衣菜と予想してました」

P「予想? ってもしかして」

泰葉「はい。体調崩してるのかなとか、それとも私たちに気を遣ってるのかな、って」

P「ああ、やっぱりバレてたんだな……。『家族水入らずの邪魔したくない』ってさ、そう言ってたよ」

泰葉「ふふっ。じゃあ私の予想が当たりましたね」


加蓮「ぎゅーーーーっ」

李衣菜「うあぁぁぁ元気じゃん心配して損したぁぁぁっ!」ジタバタ

23: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:33:55 ID:YJi
ちひろ「――お待たせしました~♪ 李衣菜ちゃん土産のみかんジュースと泰葉ちゃん土産のカステラですよー」

P「お、来た来た。ありがとうございますちひろさん」

ちひろ「いえいえ。私も楽しみにしてましたから、お土産♪」

泰葉「甘いものと甘いもので甘々ですね。まるでPさんみたいに」

P「……思考回路も似てくるのかな、うちのアイドルは」

泰葉「?? なにがですか?」

P「いや、なんでも」

24: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:36:00 ID:YJi
ちひろ「加蓮ちゃん、李衣菜ちゃんっ。カステラ切りましたよ、食べましょう!」

加蓮「はーい食べる食べる~♪」パッ

李衣菜「っぶは、はぁ、はぁっ!? し、死ぬかと、思ったぁ……!」ヨロヨロ…

泰葉「だ、大丈夫李衣菜?」

李衣菜「うぅ、加蓮なんかきらいだぁ……」

ちひろ「よしよし李衣菜ちゃん。うふふ♪」ナデナデ

25: ◆5F5enKB7wjS6 2017/06/27(火)00:37:28 ID:YJi
加蓮「美味しい……泰葉の味……!」モグモグ

P「どんな味だ。……良かったな加蓮。無事に帰ってきてくれてさ」

加蓮「うんっ。ね、2人も私に会えなくて寂しかったでしょ?」


泰葉「…………」フイッ

李衣菜「…………」ムスーッ

加蓮「え? あれっ!?」

「「……ふふふっ♪」」

加蓮「ちょっと、も~っ!」



おわり


次回 モバP「だりやすかれんと真夏日」