1: 名無しさん@おーぷん 2017/08/16(水)10:57:58 ID:Rrw
私が好きなことは、寝る、ゲーム、寝る。
働かないことに越したことはないし、遊んで暮らせるのが一番気楽だ。
そんな私が何故かアイドルなどという多忙極まりない生活をしているのは何の冗談だろうか。

引用元: 杏「すきなこと」 



2: 名無しさん@おーぷん 2017/08/16(水)10:58:25 ID:Rrw
全ての発端は、買い物帰りに出会ったプロデューサーからの『ヒットしたら印税生活送れるよ』という甘い言葉だ。
思えば、ちょっとチョロすぎやしないかと自分で自分が心配になるが、いいじゃないか『不労所得』。なんと甘美な響きだろう。

しかし、その先に待っていたのは何だ。

3: 名無しさん@おーぷん 2017/08/16(水)10:58:57 ID:Rrw
まず、地獄のようなレッスンだ。運動神経はそこそこいいほうだとは自負するが、ニート街道まっしぐらの体力を舐めてはいけない。
……今ではどこかの誰かさんのお陰でマストレさんの地獄レッスンもギリで耐えられるようになってしまったが。

そして過密なスケジュールだ。イベントにライブ、撮影や収録……。
いくらどこかの誰かさんが敏腕だからって、ここまで働かせなくてもいいじゃないか。
私は週休8日希望だと言うのに、たまに週休0のときもあったりする。なんだこのブラックは。
……まぁ、夢の印税生活を送るために必要なキャリアを積ませてくれるのはホントありがたいけどさ。

4: 名無しさん@おーぷん 2017/08/16(水)10:59:17 ID:Rrw
……なんで私は文句を言ってるのにそのフォローまでしているのだろうか。
――あぁ、面倒だ。面倒だ。面倒だ。

だからこんなことはしたくなかったんだ。
だからこんなことになりたくなかったんだ。

5: 名無しさん@おーぷん 2017/08/16(水)10:59:41 ID:Rrw
静寂に包まれた私の牙城に耳障りの良い/聞きたくない音が聞える。
今日もこの時間が来てしまったか。

最低限、身だしなみを整える。
知ってるリズムがだんだん早くなる。今や先程までの静寂がウソのようだ。

6: 名無しさん@おーぷん 2017/08/16(水)10:59:54 ID:Rrw
のんびりしようよ、って言ってもきっと聞かないんだろうな。
それでも私は知っている。彼が、私の歩幅や歩く速度に合わせてくれることを。
のんびりゆったりな旅じゃないけども、のんびりゆったり二人三脚。

ゆっくり進んでも、早足ですすんでも結果が同じなら、ゆっくりと歩いたほうが疲れないよね?
疲れちゃったら何も出来ないからさ。それならゆっくり確実に一歩ずつ。
彼流に言うなら……そう、『お城の階段を登る』んだ。

7: 名無しさん@おーぷん 2017/08/16(水)11:01:03 ID:Rrw
――さぁ、面倒くさいけどその一歩を今日も踏み出そう。

ドアの向こうでしびれを切らした魔法使いさんと一緒に。

「あ、やっと起きたな杏! 早く用意しろ!」
「えー……杏、やる気でないしもうお休みにしようよー……」
「バカ言え! ほら、飴玉やるからさっさとする!」
「はぁーい。……おお、今日はいちごかぁ」

私の好きなものを勝手に増やした王子様と一緒に。

8: 名無しさん@おーぷん 2017/08/16(水)11:01:12 ID:Rrw
おわり