6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 18:40:55.95 ID:SFZtzbYA0
ゲンドウ「問題ない。私にはこのポケベルがある」

レイ「………」
的なものかと

引用元: 綾波「碇司令。携帯電話を買ってください」 



7: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:15) 2012/11/27(火) 18:42:03.49 ID:3n4jki2OP
ゲンドウ「……断る」

綾波「……分かりました」









冬月「待ちなさい、レイ。……碇、お前もだ」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 18:44:43.82 ID:3n4jki2OP
ゲンドウ「……なんだ」

冬月「なぜ、即座に断る。レイ、お前も諦めが早すぎる」

綾波「……」


ゲンドウ「しかし」

冬月「まぁ待て。まずはレイの言い分を聞いてからでもいいのではないか」

ゲンドウ「……」

冬月「良き上司とは、部下の言うことに耳を傾けるものだ」

ゲンドウ「……」

冬月「これはなにも上司と部下の関係に限ったことではなく、親と子でもだな」


ゲンドウ「……よかろう、レイ、お前の話を聞こう」

冬月「うむ」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 18:48:08.08 ID:3n4jki2OP
綾波「……」

冬月「レイ、なぜ携帯電話を欲しいと思ったのか、正直に話してみなさい」

綾波「……」

綾波「……みんなが、持っているから」


ゲンドウ「……理由が弱いな」

冬月「ふむ……まぁそれはたしかに」

綾波「……」


冬月「その、みんなとは、具体的に言うと誰なのだ」

綾波「……」

綾波「クラスの人、NERVの人、弐号機の人」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 18:50:16.84 ID:3n4jki2OP
綾波「……それと」

冬月「それと?」

綾波「……碇、君が」


冬月「……」

綾波「……」

ゲンドウ「……」


冬月「なるほど」

ゲンドウ「却下だ」

冬月「待て、碇」


綾波「わかりました」

冬月「レイ、お前もだ」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 18:52:35.42 ID:3n4jki2OP
冬月「本当に欲しいと思ったのなら、ちゃんと主張しなさい」

綾波「……」


冬月「……碇」

ゲンドウ「……なんだ」

冬月「今度は、お前がなぜレイの希望を無下にするのかを聞こうか」

ゲンドウ「……」


冬月「……」

ゲンドウ「……」

冬月「碇」

ゲンドウ「……中学生、だからだ」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 18:54:46.90 ID:3n4jki2OP
冬月「ふむ……しかし、クラスメイトは皆、持っているのだろう?」

綾波「はい」

冬月「碇、お前の息子だって持っている」

ゲンドウ「……」

冬月「時代は今、そういうものなのだよ。中学生だから、というのは理由にならんな」

ゲンドウ「……」

綾波「……」


ゲンドウ「……よそはよそ、うちはうち……」

冬月「碇」

ゲンドウ「……」

冬月「……」

ゲンドウ「……写真を、撮るだろう」

冬月「写真?」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 18:58:04.35 ID:3n4jki2OP
冬月「写メール、というやつか。別にいいだろう、それくらい」

ゲンドウ「……普通のものではない」

冬月「普通のものではない写メールとはなんだ」

ゲンドウ「……」

冬月「……」

ゲンドウ「……いかがわしいものだ」

冬月「なるほど、自画撮りの猥褻画像の心配をしているのか」

ゲンドウ「ああ」


綾波「……」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:00:14.50 ID:3n4jki2OP
冬月「しかしだな。レイがそのような画像を撮ると思うか?」

ゲンドウ「……若気の至り、というものもある」

冬月「なるほど。レイ、そのようなことはしないと誓えるか」

綾波「……」

冬月「レイ?」

綾波「自画撮りの猥褻画像、とはなんですか」

冬月「……」

綾波「……」

冬月「自らの裸体を、携帯電話に付属されたカメラで収めることだ」

綾波「……」

冬月「レイ?」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:02:30.92 ID:3n4jki2OP
綾波「その行為によって、私はなんらかの利益を得ることがありますか」

冬月「……お前は知らんが、性的興奮を覚える輩はいるようだな」

綾波「……」

冬月「……」


綾波「私は、自画撮りの猥褻画像を、携帯電話に付属されたカメラで収めないことを誓えます」

冬月「だそうだが?」

ゲンドウ「……レイにその気はなくても、周囲の人間は分からない」


冬月「周囲の人間……?」

ゲンドウ「……猥褻画像を送れ、と懇願してくる人間がいるかもしれない」

冬月「いないだろう。それにレイはお前の息子と……」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:04:42.76 ID:3n4jki2OP
冬月「……」

ゲンドウ「……」

冬月「まさか、碇。お前、ユイ君に―――」


ゲンドウ「レイ」

綾波「はい」

ゲンドウ「携帯電話の購入を許可しよう」

綾波「ありがとうございます」

ゲンドウ「職員の者を手配する。ショップへ同行させろ」

綾波「わかりました。失礼します」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:06:55.99 ID:3n4jki2OP
冬月「……」

ゲンドウ「……」


冬月「なぜ突然、購入を許可した」

ゲンドウ「……メリットがあると考えたからだ」

冬月「というと?」

ゲンドウ「定時連絡、緊急連絡時の使用。GPSによる場所把握などだ」

冬月「なるほど。それ故に携帯電話を持たせる親も多いと聞くから納得だ」

ゲンドウ「ああ……」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:09:09.43 ID:3n4jki2OP
冬月「碇」

ゲンドウ「……なんだ」

冬月「その理由でレイに購入を許可したと、神に誓って言えるか?」

ゲンドウ「……」

冬月「もしやと思うが、話を終わらせるために慌てて」


ゲンドウ「―――私は神など認めない」

冬月「……」

ゲンドウ「……」

冬月「そうだったな」

ゲンドウ「ああ」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:11:16.92 ID:3n4jki2OP
綾波「碇君」

シンジ「綾波、どうかしたの?」

綾波「……NERVに行くのね」

シンジ「うん。テストがあるから。綾波もだよね」

綾波「ええ」

シンジ「それじゃ、一緒に行こうか」

綾波「ええ」


綾波「……」

シンジ「……」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:13:24.22 ID:3n4jki2OP
シンジ「でも、珍しいね」

綾波「……?」

シンジ「あっ、ほら、綾波の方からさ、話しかけてきてくれるの」

綾波「……」

シンジ「用がある時は違うけど、こういう時にって、あんまりなかったから」

綾波「……迷惑?」

シンジ「ううん! そんなことないよ! むしろ嬉しいっていうか、その」

綾波「……」

シンジ「うん……その、嬉しかったんだ」

綾波「……そう」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:15:47.42 ID:3n4jki2OP
綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……」

シンジ「……」


綾波「碇君―――」

シンジ「綾波は―――」


綾波「……ごめんなさい」

シンジ「う、ううん! こっちこそ、ごめん……」

綾波「……」

シンジ「……」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:18:29.34 ID:3n4jki2OP
シンジ「……それで、なんだったの?」

綾波「え?」

シンジ「いや、ほら、なにか言いかけてたから」

綾波「……」

シンジ「……?」

綾波「……碇君は、なんて言おうとしたの?」

シンジ「え、僕?」

綾波「……」

シンジ「僕は、くだらないことだよ。他愛ないこと」

綾波「……」

シンジ「だからさ、綾波の話を聞かせてよ」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:20:38.28 ID:3n4jki2OP
綾波「……駄目」

シンジ「え?」

綾波「くだらないことでも、いいの。話を聞かせて」

シンジ「綾波……」

綾波「……駄目?」

シンジ「そんなことないよ、でも、本当に大した話じゃなくてさ」

綾波「……」

シンジ「セカンドインパクトでさ、日本の気候は夏だけになったでしょ」

綾波「ええ」

シンジ「もしも冬があったなら、綾波は……なんていうか、とても、その、冬に似合いそうだなって思ったんだ」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:22:41.09 ID:3n4jki2OP
綾波「私は、冬に似合う?」

シンジ「うん。本当に、なんとなくそう思っただけなんだけど」

綾波「……」

シンジ「ごめんね、変な話しちゃって」

綾波「いいえ。碇君の話、もっと聞きたいわ」

シンジ「……そうなの?」

綾波「ええ」

シンジ「そっか……」

綾波「……」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:24:44.13 ID:3n4jki2OP
シンジ「それで、綾波はなんの話だったの?」

綾波「……」

シンジ「……綾波?」

綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……携帯」

シンジ「え?」

綾波「携帯電話を買ったの」

シンジ「へぇ、そうなんだ」

綾波「……」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:26:48.73 ID:3n4jki2OP
シンジ「どういうのを買ったの?」

綾波「……これ」ゴソゴソ

シンジ「わっ、凄いや。最新のやつだね」

綾波「……そうなの?」

シンジ「うん、ほら、僕のやつはだいぶ古いんだ。数年前のやつだから」

綾波「……そう」

シンジ「でも、綾波が携帯電話を持つって、ちょっと意外だな」

綾波「……」

シンジ「あ、なんか失礼だったね。ごめん」

綾波「いいえ」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:28:59.26 ID:3n4jki2OP
シンジ「でも、どうして携帯電話を買ったの?」

綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……」

シンジ「綾波?」

綾波「……定時連絡」

シンジ「定時連絡?」

綾波「定時連絡をするために」

シンジ「そうなんだ。でも、定時には家に戻ってるから家電でいいんじゃないの?」

綾波「……緊急連絡も、出来るから」

シンジ「そっか。父さんたちも心配性だなぁ」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:31:27.21 ID:3n4jki2OP
綾波「……」



冬月『レイ、お前はもしかして碇の息子のために携帯電話が欲しいのか』

綾波『……』

冬月『安心しろ。碇にはなにも言わん』

綾波『……クラスの人が、携帯電話を使って連絡を取っていると』

冬月『電話や、メールなどだな』

綾波『親密な人は、そうすると』

冬月『ふむ、まぁ今時の若いものなら当たり前のコミュニケーションだろうな』

綾波『だから、私も……』

冬月『なるほど』

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:33:55.00 ID:3n4jki2OP
綾波「……」



冬月『好きにするといい』

綾波『はい、しかし……』

冬月『なんだ?』

綾波『私は、碇君の連絡先を知りません』

冬月『それは問題ない』

綾波『なぜですか』

冬月『碇の息子も、お前のことを憎からず思っている。携帯電話を買ったといえば、碇の息子の方から尋ねてくるだろう』

綾波『……』


綾波『……』

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:36:11.63 ID:3n4jki2OP
シンジ「でも、そうだね。携帯電話は便利だもんね」

綾波「……」

シンジ「最初はとっつきにくいところもあるかもしれないけど、すぐに生活の必需品になるよ」

綾波「……」

シンジ「僕も、最初は持ち歩くのも煩わしいとさえ思っていたんだけど」

綾波「……」

シンジ「今では、ないと不安になるくらいだよ」


綾波「……」

シンジ「……綾波?」

綾波「碇君」

シンジ「うん」

綾波「私、携帯電話を買ったの」

シンジ「…………うん、知ってるけど」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:38:23.53 ID:3n4jki2OP
シンジ「……」

綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……碇君」

シンジ「う、うん」

綾波「私、携帯電話を買ったの」

シンジ「……知ってるよ」


綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……私、携帯電話を」

シンジ「―――どうしちゃったんだよ、綾波!!」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:41:01.84 ID:3n4jki2OP
綾波「……」

シンジ「ど、どこか体の調子でも悪いの!?」

綾波「いいえ」

シンジ「熱があるとか」

綾波「いいえ」

シンジ「じゃあ、どうしてなんだよ!」


綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……私、携帯電話を」


シンジ「―――綾波ぃ!!」ガシィ

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:43:50.38 ID:3n4jki2OP
アスカ「ちょ、ちょ、ちょっと往来の場でなにやってんのよバカシンジ!!」


シンジ「あ、アスカ! 助けてよ! 綾波がなんか変なんだ!!」

アスカ「はぁ!? ファーストが変なのはいつものことでしょ!?」

シンジ「そういうことじゃなくて、なんか……とにかく、変なんだ!!」

アスカ「変なのはアンタの方だと思うけど……」


綾波「……」

アスカ「で、そこんとこどうなの、ファースト」

綾波「……特に変わりないわ」

アスカ「でしょうねぇ」

綾波「……」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:46:12.77 ID:3n4jki2OP
アスカ「あれ、その手に持ってるのってなに?」

綾波「……携帯電話。買ったの」

アスカ「へぇー。ファーストもちょっとは現代人っぽくなったじゃない!」

綾波「……」

アスカ「ま、せっかくだからこのアスカ様がアドレスの交換してあげるわ。やり方わかる?」

綾波「問題ないわ。説明書は全部読んだから」

アスカ「うげっ、あれを全部? そういうとこが変なのよねー……」

綾波「……」

アスカ「じゃあ、赤外線、ほら」

綾波「ええ」


アスカ「……」ピピッ

綾波「……」ピピッ

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:48:24.43 ID:3n4jki2OP
アスカ「ん、よし。ちゃんと登録しておきなさいよね」

綾波「ええ」

アスカ「じゃ、私は先に行くけど、あんたたちもさっさと来なさいよ。ぱぱっと終わらせてすぐ帰りたいんだから」

綾波「ええ」

シンジ「あ、うん……」


アスカ「ふんふふーん♪」スタスタ


綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……」

シンジ「……」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:50:34.20 ID:3n4jki2OP
シンジ「……えっと」

綾波「……」

シンジ「あ、そうだ、綾波。僕もアドレスのこうか―――」

綾波「―――かまわないわ」

シンジ「……そ、そっか。じゃあ交換しよう」

綾波「ええ」


シンジ「……」ピピッ

綾波「……」ピピッ

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:53:10.05 ID:3n4jki2OP
シンジ「うん、これで大丈夫みたいだね」

綾波「ええ」

シンジ「……綾波のアドレスが携帯にあるって、ちょっと変な気分だな」

綾波「……」

シンジ「もちろん嫌ってことじゃなくて、その」

綾波「嬉しい?」

シンジ「……そうだね。今日は嬉しいことがいっぱいみたいだ」

綾波「……そう」

シンジ「綾波は、どうかな」

綾波「……よくわからないわ」

シンジ「そっか」

綾波「ごめんなさい」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:55:18.00 ID:3n4jki2OP
綾波「碇君」

シンジ「……?」

綾波「今日、送ってもいい?」

シンジ「え?」

綾波「メール」

シンジ「ああ、うん、全然構わないよ!」

綾波「そう」

シンジ「うん、楽しみにしてる」

綾波「……ええ」



シンジ「……」テクテク

綾波「……」テクテク

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:57:26.53 ID:3n4jki2OP
綾波「……」

綾波「……」

綾波「……碇君に、メール」


綾波「……」ピッ

綾波「……」

綾波「……碇君の、アドレス」


綾波「……」ピタ

綾波「……」

綾波「…………送る内容が、分からない」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 19:59:43.49 ID:3n4jki2OP
綾波「……」

綾波「……」

綾波「……!」

綾波「説明書……」


綾波「……」ペラ

綾波「メール、送る内容」

綾波「……」

綾波「…………載ってない」


綾波「……」

綾波「なぜ」

綾波「……」

綾波「……不良品?」

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:03:02.19 ID:3n4jki2OP
シンジ「……そういえば綾波、後でメール送るって言ってたな……」

シンジ「……」

シンジ「……」ソワソワ


シンジ「……」

シンジ「……」

シンジ「……!!」ブルブル


シンジ「来た!」

シンジ「内容は……」



『       』



シンジ「……か、空メール?」

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:05:14.70 ID:3n4jki2OP
綾波「……!」ブルブル

綾波「……碇君から、返信」

綾波「……」ピッ

綾波「……」



『あ、綾波?』



綾波「……」

綾波「……?」

綾波「……」

綾波「返信」



『なに』

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:07:55.64 ID:3n4jki2OP
綾波「……!」ブルブル

綾波「碇君、メールを打つのが早いのね」

綾波「……」



『いや、空メールだったから』



綾波「……」

綾波「空メールとは、なに」

綾波「……」

綾波「説明書……」


綾波「……」

綾波「……載ってない」

綾波「……不良品」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:11:15.83 ID:3n4jki2OP
『空メールとは、なに』


綾波「直接聞けば、いいのね」

綾波「……」

綾波「……」

綾波「……」

綾波「……!」ブルブル


『なにも書いてないメールのことだよ』


綾波「……そう、あれが空メール」

綾波「……」

綾波「……」

綾波「覚えたわ」

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:13:48.12 ID:3n4jki2OP
シンジ「そっか、綾波は空メールを知らなかったんだ」

シンジ「……」

シンジ「実は嫌われてる? とか思っちゃった……」

シンジ「……」

シンジ「……!」ブルブル

シンジ「来た!」



『        』



シンジ「え」

シンジ「また……?」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:15:59.56 ID:3n4jki2OP
シンジ「なんだろ、これ」

シンジ「嫌がらせ……な訳ないよね」

シンジ「きっと、なにか意味が……」

シンジ「でも、そんなの分からないよ」

シンジ「どうすれば……」

シンジ「……!」ブルブル

シンジ「また、綾波から……三通も?」



『      』

『      』

『      』



シンジ「なんだよ……なんなんだよ!」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:18:18.33 ID:3n4jki2OP
『どうしちゃったんだよ、綾波!』


『なに』


『なに、じゃないよ! どうして空メールばっかり送るのさ!』


『いけない?』


『え……そ、そうだね。空メールは迷惑メールの一つだから』


『迷惑メール』


『うん』

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:21:07.93 ID:3n4jki2OP
綾波「迷惑メール」

綾波「それは、説明書に載っていたはず」


綾波「……」ペラ

綾波「……迷惑メール」

綾波「……」

綾波「……それは、嫌がらせのメール」

綾波「……それは、とてもよくないこと」

綾波「……」

綾波「碇君に、迷惑をかけてしまった」


綾波「……」

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:23:23.56 ID:3n4jki2OP
『ごめんなさい』


『あ、もしかして知らなかったの? それなら別にいいんだ』


『ごめんなさい』


『うん、気にしてないから』


『ごめんなさい』


『綾波』


『ごめんなさい』


『綾波!!』

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:32:20.96 ID:3n4jki2OP
『なに』


『連投はよくないよ!』


『連投』


『同じ文章を何度も送ることだよ!』


『連投、覚えたわ』


『う、うん、これからは気をつけてくれると嬉しいな』


『わかった』

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:35:29.02 ID:3n4jki2OP
『携帯電話には慣れた?』


『ええ』


『そういえば、説明書も全部読んだって言ってたもんね』


『ええ』


『すごいね、僕はなにか分からない時にたまに開く程度だよ』


『そう』


『色々な機能があるでしょ?』


『ええ』

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:37:35.77 ID:3n4jki2OP
『でも、中には全く使わない機能もあるよね』


『ええ』


『その機能をなくして、もうちょっと安くしてくれればいいのにって思っちゃうんだ』


『そう』


『でも、きっと僕が使わない機能を便利に思っている人がいるんだよね』


『ええ』


『僕がそう思うからって、なくなればって考えるのは、自分勝手かな』


『わからないわ』

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:40:21.27 ID:3n4jki2OP
『誰かにとって必要なものは、誰かにとって不必要なんだって考えると、ちょっと怖いよね』


『碇君』


『なに?』


『もう寝るから』


『あ、そうだね。もう遅いしね』


『おやすみなさい』


『おやすみ、綾波』

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:43:10.43 ID:3n4jki2OP
シンジ「なにか失礼なこと言ったかな」

シンジ「ちょっと強めに注意しちゃったし」

シンジ「でも、綾波っていつもこんな感じな気もするし」


シンジ「……」

シンジ「うう……胸がモヤモヤする」

シンジ「……」

シンジ「明日、学校で会う綾波は普通かな」

シンジ「なにも変わってないといいけど」

シンジ「……」

シンジ「……もう寝よう」


シンジ「…………」スゥ

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:45:26.60 ID:3n4jki2OP
綾波「メール」

綾波「初めてのメール」

綾波「碇君とのメール」

綾波「……」

綾波「碇君は、嬉しい?」

綾波「……」

綾波「……私は、よくわからない」

綾波「……」

綾波「もう寝ないと」

綾波「……」


綾波「…………」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:47:51.27 ID:3n4jki2OP
プルルル


綾波「!」ガバッ



綾波「メール……」

綾波「……ではない」

綾波「電話」

綾波「……碇司令?」


綾波「……」ピッ



綾波「もしもし」


『…………』


綾波「碇司令ですか」

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:50:11.11 ID:3n4jki2OP
『ああ』


綾波「なんですか」


『……』


綾波「……」


『レイ』


綾波「はい」


『携帯電話の調子はどうだ』

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:52:41.81 ID:3n4jki2OP
綾波「好調です」


『そうか』


綾波「はい」


『……』


綾波「……」


『……シンジ』


綾波「はい」


『シンジと連絡を取り合っているのか』

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:54:49.83 ID:3n4jki2OP
綾波「はい」


『そうか』


綾波「はい」


『……調子はどうだ?』


綾波「……」


『……』


綾波「……よく、わかりません」


『……そうか』


綾波「はい」

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 20:57:28.56 ID:3n4jki2OP
『……シンジに』


綾波「はい」


『シンジにも、新しい携帯電話を……』


綾波「……」


『……』


綾波「碇司令?」


『切るぞ』



綾波「……はい」プツッ

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:00:05.63 ID:3n4jki2OP
綾波「……?」


綾波「……携帯電話」

綾波「メールだけではない」

綾波「電話」

綾波「会話も、出来る……」


綾波「必要は、ある?」

綾波「分からない……」

綾波「……」

綾波「……もう、寝ないと」



綾波「…………」

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:02:28.71 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「……♪」


アスカ「なに、ニヤニヤしてんのよ!」スパン

ヒカリ「痛い!」

アスカ「馬鹿面しちゃってみっともない」

ヒカリ「酷いよ、アスカぁ……」

アスカ「で、なになに。なんで浮かれてるの?」

ヒカリ「浮かれてるって、別にそういう訳じゃないけど……」

アスカ「じゃあ、なによ」

ヒカリ「その、ちょっと思い出し笑い? っていうのかな、そんな感じ」

アスカ「あ、なーんか嫌なよかーん」

141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:05:21.69 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「なにそれ」

アスカ「どうせ『スズハラガー』とか言い出すんでしょ?」

ヒカリ「わ、ちょっと声が大きいよ!!」ガバッ

アスカ「痛い痛い! 分かったから手を離して!」

ヒカリ「アスカは、ホントにもう……」


アスカ「でも、そうなんでしょ」

ヒカリ「う、うーん、まぁそうかな? そうなのかも」

アスカ「もったいぶらない!」

ヒカリ「わ、わぁ、そうです! その通りです!」

アスカ「やっぱり……」

144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:08:31.99 ID:3n4jki2OP
アスカ「で、なにがあったの」

ヒカリ「昨日ね、勉強して、もうそろそろ寝ようって思ってたらね」

アスカ「うんうん」

ヒカリ「鈴原から、電話があって」

アスカ「おおー」

ヒカリ「どうしたの? って聞いたの」

アスカ「うん」

ヒカリ「『別に用はないんやけど』って」

アスカ「……」

ヒカリ「用もないのに電話してくるんだ、って言ったらさ」

アスカ「……」

ヒカリ「『用がなかったら電話しちゃあかんか?』って」

148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:11:30.69 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「ほんと、それだけでさ」

アスカ「……」

ヒカリ「その後は、特になにも言わずに、おやすみって言っただけなんだけど」

アスカ「……」

ヒカリ「どういうつもりだったのかなって」

アスカ「……」

ヒカリ「考えてたら、いつの間にかに寝ちゃってて」

アスカ「……」

ヒカリ「で、朝になって、学校に来たのはいいんだけど」

アスカ「……」

ヒカリ「なんか今も、鈴原からの電話を耳に当てている感触がね、離れなくて」

151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:14:02.53 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「ふふふ、それだけ」

アスカ「……」

ヒカリ「……アスカ?」

アスカ「鈴原は……まだ登校してきてないわよね」

ヒカリ「え? う、うん、まだみたいね」

アスカ「良かった……」

ヒカリ「どうして?」

アスカ「顔見たら、ぶん殴っちゃいそうだから」

ヒカリ「どうして!?」

152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:16:37.80 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「やめてよ、アスカ! 酷いよ!」

アスカ「私がうけた精神ダメージは一発分の拳をはるかに超えているわよ」

ヒカリ「自分で聞いてきたんじゃない」

アスカ「こんなに堂々と惚気られるとは思わなかったわ」

ヒカリ「惚気って……私は別に、そんな……」

アスカ「これが惚気じゃなかったらなんなのよ?」

ヒカリ「うう……どうせ否定しても認めてくれないんでしょ……惚気でいいよ、もう……」

アスカ「朝から胃がもたれそうだわ、まったく」



綾波「…………」

155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:19:17.52 ID:3n4jki2OP
綾波「……」


ヒカリ「わっ!」

アスカ「ファ、ファースト!? いつからそこに!?」


綾波「……」

アスカ「な、なによ、なんとか言いなさいよ!」

綾波「……」

アスカ「……?」


綾波「……電話」

ヒカリ「え?」

綾波「あなたは、電話をしているのね」

158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:21:39.91 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「う、うん、してる、かな」

綾波「なぜ」

ヒカリ「……え?」

綾波「なぜ電話をするの」

ヒカリ「なぜって」


綾波「用がないのに、なぜ電話をするの」

綾波「用がないのに、なぜ電話をされて嬉しそうなの」

綾波「用がないのに……」

綾波「わからない」


綾波「…………」

159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:24:03.51 ID:3n4jki2OP
アスカ「ふん、この色ボケちゃんの考えてることなんて、ファーストには一生わかりっこないわよ」

ヒカリ「あ、アスカ!」

綾波「……私には、一生、分からない」


アスカ「……」

ヒカリ「……」

綾波「……」


アスカ「…………ま、そうね、最近のアンタなら、分かんないでもないかもね」

ヒカリ「……!」

綾波「……」

160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:27:04.67 ID:3n4jki2OP
アスカ「してみたらいいじゃない、電話」

綾波「……」

アスカ「やってみて初めて気付くこともあるわよ」

綾波「……」

アスカ「少女よ、大志を抱けってね」

綾波「……そう」

綾波「……」

綾波「……」スタスタ



ヒカリ「アスカ、それ、なんか色々違う……」

アスカ「語感が伝わればいいの!」

162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:29:41.57 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「でも、ビックリしたなぁ。綾波さんから話しかけてくるなんて」

アスカ「そうねぇ」

ヒカリ「電話、なんで気になったんだろ?」

アスカ「……アイツ、最近、携帯電話を買ったのよ」

ヒカリ「え、そうなの!?」

アスカ「ええ」

ヒカリ「へー、そうなんだ、意外って言ったら悪いけど」

アスカ「意外よ。驚天動地。青天の霹靂ね」

ヒカリ「言い過ぎだよー」

アスカ「だって、そうじゃない」

164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:32:18.69 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「でも、そっか、綾波さんが……」

アスカ「……」

ヒカリ「ね、私、綾波さんにアドレス聞いてもいいと思う?」

アスカ「そんなの、好きにしたらいいじゃない」

ヒカリ「えー」

アスカ「なんなら、私が教えてあげるわよ」

ヒカリ「えっ、アスカは知ってるんだ」

アスカ「ま、ね」

ヒカリ「へー、そうなんだ~」

アスカ「ニヤニヤすなっ!」ポカッ

ヒカリ「いたっ」

167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:34:56.94 ID:3n4jki2OP
アスカ「で、どうすんの、ホラ」

ヒカリ「駄目だよ、自分で聞くもん」

アスカ「そうなの? なんで?」

ヒカリ「コミュニケーションって、そういうものでしょ?」

アスカ「ふぅん」

ヒカリ「自分から行動しないと、ね」

アスカ「あっそ。好きにしなさいよ」

ヒカリ「ふふっ、好きにするわ」



ヒカリ「―――ねぇ、綾波さん!」

168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:37:07.30 ID:3n4jki2OP
シンジ「もうすぐ六時か……」

シンジ「ちょっと遅くなっちゃったな」

シンジ「早く帰ってご飯作らないと」

シンジ「アスカに、怒られるし……」


シンジ「……!」ブルブル

シンジ「電話だ……」


シンジ「誰だろ」

シンジ「……綾波!?」ピッ

173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:54:49.09 ID:3n4jki2OP
猿です。書き込めてたら次から投下続き。ペース落とすかも。

177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:57:08.79 ID:3n4jki2OP
シンジ「も、もしもし?」


『……』


シンジ「綾波、だよね?」


『……』


シンジ「どうしたの?」


『……』


シンジ「……綾波?」

180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 21:59:45.69 ID:3n4jki2OP
『綾波レイ。午後4時半帰宅。午後六時現在、自宅にて待機中』


シンジ「……!?」


『作戦指示がなければ、このまま自宅にて待機を続行する』


シンジ「……」


『……』


シンジ「えっと……」


『……』


シンジ「それって、定時連絡……?」

184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:03:32.68 ID:3n4jki2OP
シンジ「もしかしてなんだけど……」


『……』


シンジ「電話番号、間違ってないかな……?」


『……』


シンジ「……」


『……あなたは、碇君』


シンジ「あ、うん、碇シンジです」


『……間違ってないわ』


シンジ「……そ、そうなんだ」

188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:06:18.03 ID:3n4jki2OP
『……電話、切るわ』


シンジ「えっと、うん、じゃあ、さよなら」プツッ








シンジ「……なんだったんだろ、今の」

189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:08:31.43 ID:3n4jki2OP
綾波「……」


綾波「電話」

綾波「用のない、電話」


綾波「……」


綾波「碇君は、嬉しい?」

綾波「……」

綾波「……」


綾波「…………」

194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:11:39.16 ID:3n4jki2OP
アスカ「シンジー」

シンジ「なに?」

アスカ「ご飯、まだ?」

シンジ「今、作り始めるところだけど」

アスカ「えー」

シンジ「えーって……まだ夕方だよ」

アスカ「今日の私は特別お腹が減ったの!!」

シンジ「そんなの知らないよ……」

アスカ「それくらい把握しなさいよ、このバカ」

シンジ「無茶言わないでよ」

196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:14:24.41 ID:3n4jki2OP
シンジ「……」ソワソワ

アスカ「……?」

シンジ「……」


アスカ「……なにソワソワしてんの?」

シンジ「あ、うん、そろそろ時間だから」

アスカ「時間……?」


シンジ「……!」ブルブル

シンジ「あ、もしもし」ピッ


アスカ「……?」

199: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:16:56.75 ID:3n4jki2OP
シンジ「うん、いつも御苦労さま」

アスカ「……」

シンジ「うん、それじゃあね」ピッ

アスカ「……」

シンジ「じゃあ、ご飯、作るね」

アスカ「……いや、待ちなさいよ」


シンジ「え?」

アスカ「今のなによ」

シンジ「電話のこと?」

アスカ「そうに決まってるでしょ」

200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:19:31.71 ID:3n4jki2OP
シンジ「ああ、綾波からの定時連絡」

アスカ「なんだファースト……って、え、なに?」

シンジ「だから、定時連絡」

アスカ「はぁ!? なんで定時連絡がバカシンジの携帯に来るのよ!」

シンジ「知らないけど、なんかそういうことみたい」

アスカ「……!? それをあんたはNERVに報告するの!?」

シンジ「しないけど……」

アスカ「じゃあ、なんの意味があるのよ!」

シンジ「ごめん、正直、僕にもわかんない……」

アスカ「なに、それ……」

203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:22:37.17 ID:3n4jki2OP
シンジ「もしかしたら、携帯電話を使ってみたいだけなのかも」

アスカ「……」

シンジ「それならさ、僕が相手になるくらい、いいだろ?」

アスカ「……」

シンジ「時間も短いから、綾波の電話代だって、大したことないだろうし」

アスカ「……」

シンジ「それに―――」


アスカ「―――黙って」

シンジ「……え?」

208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:26:01.69 ID:3n4jki2OP
アスカ「分かった、全部分かったわ、そういうことなのね」

シンジ「アスカ……?」

アスカ「もう、ほんと、あのバカ。思考回路どうなってんのよ」

シンジ「アスカ、一体なにが」

アスカ「知らない。バカとバカとで大バカやってるっていう話でしょ」

シンジ「なんの話だよ」


アスカ「いいから、さっさとご飯作りなさいよ!!」

シンジ「え、わ、わかったよ。もう、なんなんだよ……」


アスカ「……はぁ」

211: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:28:41.51 ID:3n4jki2OP
アスカ「……」ゴソゴソ

アスカ「……」

アスカ「……」

アスカ「……」ピッ

アスカ「……」

アスカ「……」



アスカ「……もしもし」


『……』

214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:31:10.39 ID:3n4jki2OP
アスカ「バカファースト?」


『……ええ』


アスカ「アンタって、ほんとバカね」


『……』


アスカ「アンタのやってること、ぜーんぶ! 無駄!」


『……』


アスカ「……アンタの電話じゃ、バカシンジは嬉しくなんか、なんないわよ」


『……!』

217: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:33:46.55 ID:3n4jki2OP
『……私は、間違ってる?』


アスカ「ええ、大間違い。ピクリとも正解に掠ってないわね」


『……』


アスカ「用のない電話って言うのは、無駄な電話のことを言うんじゃないの」


『……』


アスカ「その、中身がないけど、嬉しいっていうか……一緒に話すことが、目的っていうか……」


『……』


アスカ「あああああ!! アンタだってあるでしょ! バカシンジと他愛ない話をしたことくらい!!」

222: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:37:10.71 ID:3n4jki2OP
『他愛ない、話』


アスカ「そうよ」


『……』


アスカ「……」


『……冬』


アスカ「あん?」


『碇君が、私に……冬が似合うって言ったわ』


アスカ「……ふぅん」

225: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:41:39.69 ID:3n4jki2OP
アスカ「そういう話をすればいいよ」


『……弐号機の人も、他愛ない話は、嬉しい?』


アスカ「まぁ、悪くはない……っていうか、その弐号機の人っていう呼び方、止めなさいよ」


『……』


アスカ「私も、あんたのこと、ファーストじゃなくて、レ……レイって、呼ぶから」


『……』


アスカ「だから、あんたも、私のこと……」

228: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:43:53.72 ID:3n4jki2OP
『……』


アスカ「その……」


『……アスカ』


アスカ「……!!」


『……』


アスカ「……な、なによ」




『ありがとう』プツッ

233: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:46:12.87 ID:3n4jki2OP
アスカ「……はぁ」


アスカ「……」

アスカ「……なに、緊張してんだろ、私」


アスカ「……」

アスカ「……慣れあいとか」

アスカ「……」

アスカ「馬鹿らしいって、思ってたのに」


アスカ「……」

アスカ「一人が好きって、一人で大丈夫って、そう思ってたはずなのに」

236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:50:52.85 ID:3n4jki2OP
アスカ「……」

アスカ「……」

アスカ「……嬉しい、か」


アスカ「……」

アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「後は、アンタたちで勝手にしなさいよ」

アスカ「バカシンジ」


アスカ「……バカ、レイ」

239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:53:03.03 ID:3n4jki2OP
シンジ「……!」ブルブル

シンジ「……電話だ」

シンジ「……」

シンジ「綾波!?」


シンジ「また、どうして……」

シンジ「……」ピッ



シンジ「もしもし」


『……』

243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:55:15.87 ID:3n4jki2OP
シンジ「……綾波、だよね」


『……』


シンジ「どうしたの、なにか伝え忘れ?」


『……』


シンジ「……」


『……』


シンジ「……綾波?」


『…………今日は少し、風が強かったわ』

249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 22:58:04.43 ID:3n4jki2OP
シンジ「……え?」


『……』


シンジ「……えっと」


『……初号機って、紫色なのね』


シンジ「……うん」


『……』


シンジ「……」

251: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:00:48.36 ID:3n4jki2OP
『……分からないの』


シンジ「え?」


『なにを話せばいいのか、分からない』


シンジ「……そっか」


『……』


シンジ「じゃあ、綾波は、どうして僕に電話してきてくれるの?」


『……』

253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:03:07.40 ID:3n4jki2OP
綾波「なぜ」

綾波「……」

綾波「なぜ、私は碇君に電話するの」


綾波「……」

綾波「……」


綾波「会話」

綾波「……」

綾波「音」


綾波「……」

綾波「…………声」

255: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:05:55.53 ID:3n4jki2OP
『……声』


シンジ「え?」


『碇君の声、聞きたいから』


シンジ「……!」


『安心、するから』


シンジ「……そう、なんだ」


『……』


シンジ「……」

259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:09:27.65 ID:3n4jki2OP
シンジ「僕も」


『……』


シンジ「僕も、もっと、綾波の声が聞きたいよ」


『……』


シンジ「もっと、色んな事を話してみたい」


『……』


シンジ「綾波のこと、知りたいんだ。……もっと、もっと」


『……』

261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:11:36.26 ID:3n4jki2OP
シンジ「……」


『……』


シンジ「……あの―――」



ガチャ

「―――ただいまー」




シンジ「!」

シンジ「ミサトさん、帰ってきた……」

267: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:13:43.10 ID:3n4jki2OP
シンジ「……ごめん、早くご飯、作らないと」


『……ええ』


シンジ「……」


『……』


シンジ「こ、今度は、僕の方から、電話するから!」


『……!』


シンジ「また、ゆっくり話そう。……それじゃ」


『……ええ』プツッ

269: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:16:14.85 ID:3n4jki2OP
シンジ「……」プルプル


シンジ「……ははっ、手が震えてる」

シンジ「……」

シンジ「心臓も、ドクドクいってるし」

シンジ「足だって、ガクガクする」

シンジ「……」

シンジ「……でも、嫌じゃない」



シンジ「嫌じゃ、ないんだ……」

271: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:18:24.42 ID:3n4jki2OP
綾波「……」トクトク


綾波「……」

綾波「……鼓動が、早いわ」

綾波「……」

綾波「体の不調」

綾波「……」

綾波「では、ないのね」

綾波「……」


綾波「これが、きっと、嬉しいという気持ち」

272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/27(火) 23:20:42.09 ID:3n4jki2OP
綾波「……」

綾波「……携帯電話」

綾波「……」

綾波「……」


綾波「いつでも、聞こえる」

綾波「いつでも、話せる」

綾波「……」

綾波「……」




綾波「……いつでも、一緒」



終劇