2: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)00:13:38 ID:YbG
みんなのきもちになれる仁奈ちゃん。

色々な動物さんのきもちになれば、色々な動物さんの得意なことだってできちゃうんです。

おさるさんのきもちになれば木を登るのなんてちょちょいのちょい。

イルカさんのきもちになれば海だってスイスイ泳げるます。

そんな仁奈ちゃんは日々パトロールをしています。

動物のきもちになって困っている人たちを助けているんです。

「パトロールの開始ですよ! さーっ! ツバメのきもちになるですよ」

あんなに小さなツバメだけど、飛ぶスピードはとっても速いんです。

ツバメのきもちになった仁奈ちゃんは世界中どこだってひとっとび。

「いくですよー。とうっ!」

ツバメのキグルミでお空に飛び立った仁奈ちゃん。

風になったみたいにビュンビュンとお空を滑っていきます。

「えへへっ、やっぱり快適ですね。それそれもっと速く飛べちゃうぞー! それー!」

空中散歩を楽しむ仁奈ちゃんですが、目的は見失なわないえらい子です。

時おり地上に降りてはウサギさんのキグルミを着てモフモフでかわいらしい二つのお耳をピーンとさせ、みんなの声を聞いています。

引用元: 【デレマス】それいけ! 仁奈ちゃん 


3: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)00:13:58 ID:YbG
ウサギさんはとっても耳がいいのです。

「あっ!」

仁奈ちゃんが困っている人を見つけたみたいです。

声にみちびかれ、たどり着いたのは牧場でした。

あちこちで元気そうにヒツジさんがメーメーと鳴いています。

仁奈ちゃんが辺りを見渡すと、あたふたとしているおじさんを見つけました。

どうやらあのおじさんが助けを求めているようです。

仁奈ちゃんはおじさんに近づきます。

「困った困った」

「どうしたですか?」

仁奈ちゃんはたずねます。

「仁奈ちゃん、牧場のヒツジちがわたしの言うことを聞いてくれないんだ」

「それは大変ですねー。仁奈ちゃん、お手伝いしてーです」

「本当かい! なら、牧場に散り散りになってしまったヒツジたちをお家に入れてくれないかい?」

「お安いごよーですよ」

仁奈ちゃんは誇らしげに胸を手でぽんぽんと叩きました。

それにはおじさんも大喜びです。

4: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)00:17:03 ID:YbG
早速、仁奈ちゃんはイヌのキグルミに着替えるとヒツジさんたち目がけて草原を蹴りました。

「仁奈イヌでごぜーますよ。ワンワン!」

あちこちに散らばったヒツジさんが一匹、また一匹と仁奈ちゃんに吠えられると逃げていきます。

「ワンワン! ワンワン!」

右に左に。

仁奈ちゃんは牧場中を駆け巡ります。

「ワンワン! ワンワン!」

走っていたのが小走りに、小走りが歩みに変わった頃には、なんと、ヒツジたちは集まってまっしろでおっきなわたあめのようになっていました。

「ふっふっふ。集まりやがりましたね」

そう仁奈ちゃんにいじわるそうに言われると、メーメーと鳴いていたヒツジさんたちがとたんにだんまりとしてしまいました。

注目されているのを確認すると、仁奈ちゃんは叫びました。

「お家に帰らねーやつは食べちゃうぞー!」

再び静まり返ったと思ったら、次の瞬間、まっしろでおっきなわたあめが舎に流れ込んで行きました。

それを眺めて仁奈ちゃんは、

「仁奈にかかればこんなもんですよ」

とうなづきました。

5: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)00:17:20 ID:YbG
「おじーさんー! 仁奈、やりやがりましたよー!」

 舎の様子に満足しているおじさんも返事をして、歩みよってきました。

「仁奈ちゃんはイヌになれるんだね」

「そーですよ。仁奈はイヌのきもちになれますよ。では!」

 仁奈ちゃんはツバメのキグルミを着るとつばさで空間を切りながら浮かびました。

 そして、手を振るおじさんに見送られながらお空戻りました。

 仁奈ちゃんはこうして今日も多くの人たちの手助けしているのです。

 誰かを助けると自分まで笑顔になってしまう。

 誰かのきもちが仁奈ちゃんのきもちにもなる。

 そして、きっと仁奈ちゃんのきもちが誰かのきもちにもなる。

 暖かな太陽の光がさんさんと仁奈ちゃんを照らしていました。

6: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)00:17:32 ID:YbG
…………
…………
…………

7: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)02:29:08 ID:YbG
「プロデューサー! ただいま!」

 夕焼け色に染まった事務所に仁奈ちゃんが帰ってきました。

 仁奈ちゃんはキグルミは脱いで、今はネコのパーカーです。

「仁奈、おかえり」

スーツの男性。

黒いスーツを着こなし、仁奈ちゃんのアイドル活動を支える人物。

仁奈ちゃんのプロデューサーは楽し気な笑みを見ると、ノートパソコンを閉じました。

「パトロール終わりましたよ」

そう言って、仁奈ちゃんはプロデューサーの膝の上にちょこんと座りました。

プロデューサーの膝の上は仁奈ちゃんの特等席なのです。

「あぁ、お疲れ様」

 背中を預けてくる仁奈ちゃんをプロデューサーは優しく受け止めます。

「今日もですね、たくさんの人たちと会いましたよ」

「まったく、お仕事もあるっていうのに。仁奈は頑張り屋さんだな」

「えへへっ」

 仁奈ちゃんが振り返ってプロデューサーの顔を見据えます。

 ぱっちり瞳に桃のようにほんのりピンク色の頬。

 絹のように繊細な茶色の髪。

 夕日を背景にして、あどけなさに満ちた笑顔の仁奈ちゃんの姿にプロデューサーは思わず口を開きました。

8: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)02:30:48 ID:YbG
「仁奈が誰かのきもちを汲んであげられる子だ。だから、いっぱいいっぱいお仕事もほかのことも頑張りるんだろうな。
でも、おれは仁奈が嬉しそうにしているとただそれだけで、おれも心の底からうれしいくなる。おれには甘えてくれてもいいからな。思ったこと感じたこと、なんでも言っていいからな」

「知ってますよ! プロデューサーはいつでも仁奈のきもち分かってくれよーとしてるって! だって、さびしくなった時、いつも隣にいてくれるですから。……頭なでてくだせー」

「いいよ」

 仁奈ちゃんの頭をプロデューサーは優しく、愛おしいになでました。

9: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)02:31:48 ID:YbG
おわり

10: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)02:33:01 ID:YbG
以下完全なる蛇足です。

おやおや? 仁奈ちゃんがまた何かを発見したようです。
スーツの男性。

黒いスーツを着こなし、仁奈ちゃんのアイドル活動を支える人物。
プロデューサーです。

うつむいていていましたが、仁奈ちゃんが間違える訳がありません。

「プロデューサー! おーい! プロデューサー!」

お空から呼びかけますが、プロデューサーはうつむいたままです。

ビューン! とプロデューサーのもとに近づく仁奈ちゃんがですが、プロデューサーは一向に気づく気配がありません。

ただシクシクと泣くばかりです。

「えーんえーん」

「どうやら泣いてやがるよーですね。すぐにかけつけるですよ」

仁奈ちゃんはプロデューサーの目の前にやってきました。

「プロデューサー、どうして泣いてるですか?」

 仁奈ちゃんは心配そうに聞きますが、プロデューサーは仁奈ちゃんのことなどでどこ吹く風。

 我を忘れて泣いています。

「えーんえーん」

「聞く耳もたねーですか……。うーん」

「もう、もうダメだー! うわーん」

11: 名無しさん@おーぷん 2017/10/01(日)02:33:24 ID:YbG
「スマホ何て持ってどうしたですか?」

 そのことばでプロデューサーはピタリと電源が切れたように止まりました。

 しばし、呆然としていましたが弱弱しい声を絞り出しました。

「あのね、(ゲームでの)担当がでないの」

「……」

 仁奈ちゃんは目をそらしました。

「悲しいよー仁奈ちゃん。わーん」

「……」

 仁奈ちゃんは目をそらしたままです。

「うわーん」

 感情が高ぶったのかプロデューサーの涙はどんどんと頬を伝います。

「……仁奈ちょっといそがしーですよ。だから、この話はまた今度するですよ」

仁奈ちゃんは大人のきもちにだってなれるんです。

これ以上やっかいな相手に手間取られてしまえば、パトロールが終わりません。

仁奈ちゃんは心を鬼にしてプロデューサーの元を後にしました。

「仁奈には荷がおめーですよ……」

仁奈ちゃんは世の中にはどうしようもないこともあると、苦い思いを抱き、また一つ大人になりました。

おわり