2: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:44:20.95 ID:gpsa2en60
今日は憧れの西住殿と一緒におうちに遊びに来ています。おうちといっても、下宿ではなく実家。つまり西住流総本山です。帰省に付き合わせていただきました。

大学選抜のときにぽつりと「行きたい」って零したこと、西住殿は覚えていてくれたのです。感激です。

一緒にパジャマパーティしたり戦車の訓練なんかもしてみたり。最早デートを通り越して夫婦生活じゃないですか!と冷泉殿に言ったら馬鹿を見る目をされましたが気にしません!

ちなみに、その冷泉殿は戦車免許取得者講習だかがあるらしくパス、五十鈴殿は華道関係の予定で、武部殿は年齢を偽って婚活セミナーに参加するそうです。つまり西住殿と二人っきり!

まあ、シチュエーション的には天国なのです。天国なのですが……


しほ「…………」ズモモモモモモ

優花里「…………」


お母さん、お父さん。わたしは今、地獄に来ています。

引用元: みほ「急用ができました」優花里「えっ」 



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3: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:46:08.07 ID:gpsa2en60
~回想~


みほ「あっ」

優花里「どうしました西住殿?スマホ見て固まっちゃって」

みほ「急用ができました」

優花里「えっ」

みほ「限定新作ボ…エリカさんが危篤になって最期にわたしに会いたいって」

優花里「こんなに誤魔化しがヘッタクソなひと初めて見ましたよ」

みほ「大丈夫!一時間くらいだから!パパっと帰るから!」

優花里「逸見殿が危篤だって設定はどこに行ったんですか!いくら逸見殿でも『はい顔見せましたさようなら』ってパパっと帰られたら泣くと思いますが!?」

みほ「一人じゃないからいいでしょ?」

優花里「それが問題なんですよおおおおおおお!!!」

みほ「ああ、うん。と、とにかくじゃあね!」ダダダダダ

優花里「西住殿おおおおおおおお!!!!」


~回想終わり~

4: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:47:13.37 ID:gpsa2en60
しほ「…………」ゴゴゴゴゴゴ

優花里(なぜ一言もしゃべらないのですかぁ!)ガタガタ

優花里(確かに言いましたけど!西住流家元を見てみたいって!でもそれは動物園でパンダを見たい的なものであってパンダと同じ檻に入りたいって意味じゃねえんですよ!)ポワポワポワ…


しほパンダ『うがー』バリバリバリ

優花里『あんぎゃー!!!』


優花里(早く帰ってきてくださいいいいいい!!!)

5: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:48:09.51 ID:gpsa2en60
しほ「…………」

しほ「秋山さんといったかしら」

優花里「ひゃ、ひゃい!」ビクッ

しほ「……みほは、どうかしら?」

優花里「…へ?どう、とは」

しほ「ああ、なんといいますか、大洗での生活ぶりについてです」

優花里「は、はぁ…」

6: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:48:55.13 ID:gpsa2en60
優花里「ええと…真面目に学業と戦車道に励んでいますよ」

しほ「そんなことはわかっています。私の娘なのですから」

優花里「そ、そうですよね…」

しほ「…食事はちゃんと摂っていますか?」

優花里「え、あ、はい。食事を抜いているところはあまり見ないです。コンビニ弁当が多いですが…」

しほ「……コンビニ弁当?」

優花里(余計なこと言ったかもしれないです)

しほ「そうですか……」

7: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:50:39.64 ID:gpsa2en60
しほ「…………」

優花里(また無言です…これってもしかして、わたしが話題振る感じなのでしょうか)

優花里「い、家元殿はお若いですよね~」

しほ「そう、ありがとう…」

優花里(なに言ってんですか私は!うっかり実家の理髪店の癖が!)

しほ「今でも夜の生活は欠かさないようにしているからかしらね。ホルモンが出てるのよ」

優花里「そ、そうですか…(娘の友人に何言ってんですか!)

しほ「みほはちゃんと夜寝ているのでしょうか。まさか、彼氏なんてできたり…」

優花里「いえ…そのような話は聞かないですね…」

しほ「そう」

優花里(…もしかしてただ西住殿が心配なだけなんでしょうか?)

8: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:51:45.30 ID:gpsa2en60
しほ「みほは…いじめられたりはしていないわよね?」

優花里「え、うーん…(いじめられたと言えば、いじめられたでしょうか。会長殿と最初に会ったときに)」

しほ「言い淀んでいるわね」ズイッ

優花里「おわっ!」

しほ「正直に言いなさい…」ゴゴゴゴゴゴ

優花里(怖い怖い怖い!)ガタガタガタ

優花里「そ、そのぉ~…戦車道をやるかやらないかって話になったとき、ちょーっと、ちょーっとだけ、ゴタゴタがあったかなぁ~、なんて」アハハ

しほ「わかったわ」ピッポッパ

優花里「え、なぜ電話を」

しほ「私よ。みほが戦車道を履修する際にトラブルがあったらしいわ。徹底的に洗いなさい。以上」ブツッ

優花里「……どちらに電話を」

しほ「気にしなくて結構よ。大洗に二十人ほど部下を送り込んでいるだけだから」

優花里「」

優花里(会長殿…ごめんなさい…せめて生きていてください…)

9: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:55:00.96 ID:gpsa2en60
しほ「ふう。そういえば、あなたの試合を見たことがあるわ」

優花里「え、そうなんですか?」

しほ「ええ。一応、全試合に目を通しています。あくまで西住流家元としての務めですが」

優花里「あ、ありがとうございます…(素直に西住殿が心配だって言えばいいですのに)」

しほ「…装填は貴方かしら?」

優花里「は、はい!ご存知だったのですか?」

しほ「いえ、勘よ。この道も長いですから。腕が太いですしね」

優花里「あ、確かに…着られる服が少なくなったことがちょっと不満ですかね」

しほ「ふふっ。懐かしいわね。私も若い頃は悩んでいました」

優花里「そうだったんですかぁ(家元殿にもそういう時代があったんだなぁ)」

しほ「あなた、かなり筋が良いわよ。これからも精進なさい」

優花里「! あ…ありがとうございます!!」ペコッ

10: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 18:55:56.99 ID:gpsa2en60
しほ「…案外、みほの指導が良かったのかしらね」

優花里「そりゃあもう…あ、他にも陸自の蝶野教官にも教わりましたね」

しほ「あら、懐かしい名前ね。蝶野は昔ここで戦車道を学んでいたのよ」

優花里「そうだったんですか」

しほ「小さい頃は『しほお姉ちゃんしほお姉ちゃん』って、トイレにまでついてきてかわいかったんですよ」

優花里「へえ、今の姿からは想像つかないです」

しほ「蝶野も立派になったわよねえ。あなたから見てどう感じた?ちゃんといい子してますか?」

優花里(あはは…いい子ですか…)

優花里「うーん…豪快なひとって感じでしたねえ。初めて会ったときも、戦車なんてバーッと動かしてドーンと撃てばいいって、いきなり戦車に乗っけちゃうくらいで」

しほ「…『戦車なんてバーッと動かしてドーンと撃てばいい』ですって?」

優花里「あっ」

しほ「成程。とてもよくわかりました。ありがとうございます」

優花里(ごめんなさい蝶野教官殿…骨は拾ってあげます…)

11: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 19:00:59.19 ID:gpsa2en60
チック タック チック タック


優花里(わ、話題が尽きたぁ~……どうすればいいんでしょう……)

しほ「……お茶は冷めていないかしら」ズズー

優花里「あ、お気遣いありがとうございます。大丈夫です。むしろわたしが淹れます!」

しほ「落ち着きなさい。あなた茶葉の場所とかわからないでしょ」

優花里「そ、そうでした…」

しほ「肩の力を抜きなさい。今の私は西住流家元ではなくみほの母親で、あなたはゲストなのですから」

優花里「肩の力を抜けですか……。……わかりました、お言葉に甘えさせていただきます」

しほ「どうぞ」

優花里「……あの」

しほ「なにかしら?お茶のおかわり?」

優花里「いえ…。家元殿は西住殿、ああ、みほさんのことが、その…心配なんですよね?」

しほ「……親ですからね」

優花里「…………部下に見張らせたりするよりもご自分で、その…心配してるということを伝えてもいいのでは?」

しほ「……」ダァン!

優花里「!?」ビクビクッ

優花里「い、いえ!あの、で、出過ぎた発言をしてしまいました!まことに申し訳ございません!!」ドゲザ

しほ「……いえ、あなたは正しいことを言っています」

優花里「へ?」

12: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 19:02:22.61 ID:gpsa2en60
しほ「ですが、西住流の頂点に立ち、西住流を体現し、西住流を背負って立たねばならない私は……母親ということを忘れねばならないときもあるのです」

優花里「……」

しほ「非常識。母親として失格。自覚はしているのですが、この地位に着くまでに多くの人間を倒しその屍を踏んできました。敵をつくり過ぎました」

しほ「……隙を見せれば、みほとまほもろとも、何もかも奪われてしまうかもしれないのです。……言い訳ですね」

優花里「……はい。言い訳です。みほさんとちゃんと話し合うことくらいは許されるのではないでしょうか…」

しほ「うん、そうよね…」

優花里「わたしはただの一般家庭の娘です。見える世界は違います。出過ぎた意見であることに変わりはありませんが…」

しほ「いいのよ、ありがとう。あなたが友達でみほは幸せね」

優花里「あ、ありがとうございます…///」

13: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 19:03:23.30 ID:gpsa2en60
ガラッ

みほ「ただいま~」

優花里「あ、みほさんがお帰りですよ家元殿」

しほ「そうね。ほら、おばさんはほっといて迎えに行ってあげなさい」

優花里「え、でも…」

しほ「…後で、後でね。みほとはちゃんと話し合うから大丈夫よ」

優花里「は、はぁ…わかりました…」


みほ「ごめんね優花里さん、ほっといちゃって」

優花里「ほんとですよ。びっくりしちゃいました」

みほ「あはは……ねえ、優花里さん」

優花里「はい?」

みほ「お母さんさ…わたしについてその…何か言ってなかった?」

優花里「……似たもの親子ですねぇ」

みほ「え?」

優花里「なんでもないです」

14: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 19:04:37.14 ID:gpsa2en60
菊代「奥様、ただいま戻りました」

しほ「ご苦労様。まったく…友達を呼んでおいて席を空けるような育て方をした覚えはありませんがね」

菊代「やはり気まずかったんじゃないですか?帰りの車の中でも、ぬいぐるみのクマを抱いたまま黄昏てましたし」

しほ「……そう」

菊代「ご友人は不幸でしたね」

しほ「どういう意味よ。でも、彼女はいい子ね。説教されちゃったわ」

菊代「あら、肝が据わってますね。私が初めて奥様とお会いしたときは震えが止まらなかったのに」

しほ「ちょっと」

菊代「お説教の内容もなんとなく察しがつきます。奥様と気が合うということは、みほお嬢様のこと大切に想っているでしょうしね」

しほ「……そうね。明日、みほと一緒に熊本を案内してあげるのもいいでしょう。あなたも来なさい」

菊代「ありがとうございます。何時ごろ、ご友人を連れまわして二人っきりにすればよいでしょうか」

しほ「菊代、よけいな気を遣わないの。みほとはちゃんと自分で話すから」

菊代「左様ですか。ではそのように」

15: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 19:08:54.12 ID:gpsa2en60
………………

『みほの部屋』


みほ「ついてきてくれてありがとね優花里さん、今日はすごく楽しかった」

優花里「いえ、わたしもお邪魔させていただいちゃって。さすがにタイマンでダウトは泥仕合にしかならないって早く気づくべきでしたが、それも思い出ですよね」

みほ「あはは、じゃあ、そろそろ寝よっか。明日はこの家をいろいろ見てみたいって言ってたけど、それでいいの?」

優花里「はい!戦車道本家ですから、戦車道に関わる者としては興味が尽きません!」

みほ「ならよかった。わたしが大洗に帰るまで、よろしくね。優花里さん」

優花里「もちろんです!」


しほ「…………」

菊代「なにドアの前に棒立ちしてんですか。ただ『明日一緒に熊本見て回りましょう』って言うだけでしょう」

しほ「菊代、お給料上げてあげるからあなたが代わりに言いなさい」

菊代「それじゃ意味ないでしょう奥様…それに今のままで十分お金には困っていませんので」

しほ「菊代」

菊代「それでは私は寝ます。おやすみなさいませ」

しほ「菊代、女中が主人より先に眠るんじゃありません」

菊代「ご息女のことに女中が深入りするのもよくないと思われますので。今度こそおやすみなさいませ奥様」トットットッ

しほ「…………」

16: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 19:09:31.17 ID:gpsa2en60
優花里「…あれ、ドアの隙間に何か挟まってます」ヒョイッ

『明日、熊本を案内してあげます。ついでに、ついでにですがみほも連れていきます しほ』

優花里「…素直じゃないですねえ」

みほ「優花里さんどうかしたの?」

優花里「家元殿って可愛らしい方ですね」

みほ「え」

優花里「ふふ」ニコニコ

みほ「ちょっと、なにがあったの!?教えてよ優花里さぁん!」



終わり

17: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 19:10:43.12 ID:gpsa2en60
おまけ


柚子「会長、謎の荷物が生徒会宛に届いていますが、注文しました?」

杏「いんや、何かが届くって報告はなかったけどなあ」ビリビリ

桃「ああ、会長!そんなの開けて大丈夫ですか?」

杏「大丈夫だってー。爆弾が出てくるわけじゃなし」パカッ


コードがたくさんついたゴツイ時計「チッチッチッチッチッチッチッ」


杏「え」

パーーーーーーーーン!!!


………………


おりょう「うーん、謎ぜよ」

カエサル「どうしたんだおりょう」

おりょう「いや、な。さっき生徒会室の近くを通ったら、会長たちがだらだら涙と鼻水垂らしながらのたうちまわっててな」

エルヴィン「なんじゃそりゃ」

左衛門佐 「コショウの塊でもかぶったのか?」

おりょう「さあ」

18: ◆.dsCc9AhxA 2017/10/18(水) 19:11:46.87 ID:gpsa2en60
蝶野「ふんふ~ん♪今日は合コン~♪」

しほ「あら、随分とご機嫌ね」

蝶野「ええ、そりゃあもう……って、え?」

しほ「久しぶりね蝶野。それとも昔みたいに亜美ちゃんって呼ぶ?」

蝶野「いえ、それは勘弁してください…あの、なぜここにいらっしゃるのでしょうか…」

しほ「ちょっとあなたに用事があったのよ。ご機嫌なところ邪魔して悪かったわね」

蝶野「いえそんな…家元も、なんだか機嫌が良いように見えますが」

しほ「ん、『区切りがついた』ってとこかしら」

蝶野「?」

しほ「こっちの話よ。ところで」

蝶野「はい」

しほ「あなた、大洗で戦車道を指導したときこーんなことを言ったらしいわねぇ。『戦車なんてバーッと動かしてドーンと撃てばいい』なんて」

蝶野「」

しほ「西住流というところはずいぶんと適当な指導をするのねえ。詳しく話を聞かないと」ズルズル

蝶野「やだあああああああああ!!!合コンがああああああ!!!」ズルズル