前回 ぐだ男「おうち帰る」 マシュ「は?」 

2: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 21:02:55.71 ID:O+xFKZqK0
BB「……あー……あーあーあー……!」カタカタ

BB「やばいですー。処理が追い付かないですー。あーあー」カタカタ

巌窟王「……ふむ。お前がそこまで追い詰められているとは。薄ら笑いはどうした、ムーンキャンサー」

BB「あ。巌窟王さん……」

BB「いやー。実は今度、マスターが一週間くらいガッツリ休日取って家に帰ることになったんですよ」

巌窟王「なに?」

BB「で、それについていきたいから申請と許可の偽造を頼む、と言っているサーヴァントがたくさんいて……」

BB「ひとまず清姫さん、静謐さん、頼光さんの三人は無理やり適当な時代にレイシフトさせて封印しましたが……」

BB「それ以外にも色々と処理があって、頭が痛くなりそうなんですよー」ウィンウィン

巌窟王「既に痛そうだが」

BB「あー……ひとまずジャックさんとかは一緒に行かせても大丈夫かなー……」ブツブツ

巌窟王(既に大分キテるな。よりによってあの童女を同行させようとするとは……)

巌窟王「……」




巌窟王「その旅行、俺も同行させろ」

引用元: 巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」 


Fate/Grand Order アンソロジーコミック STAR(6) (星海社COMICS)
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3: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 21:11:08.39 ID:O+xFKZqK0
才囚学園 デスロード入口

赤松「なんでっ……どうして!」

最原「わざと出口をチラつかせておいて、希望を与えておいてからそれを奪う……」

最原「わかりやすく僕たちを追い詰めてるね」

王馬「あーあ。ガッカリだよ。赤松ちゃんの言葉を信用して損したなー」

赤松「そんな……もうちょっと頑張ってみようよ! みんなの力を合わせればきっと……!」

天海「……それは……どうっすかね。もうみんなも体力の限界っす」

白銀「滋味に無駄、じゃないかな……」

百田「て、テメェら……それでも男かッ!」

茶柱「女子もいますがッ!? 自分の基準で物事判断しないでください! これだから男死は!」


ギャースカギャースカ


赤松「み、みんな! 落ち着いて! 喧嘩しちゃダメだよ!」

王馬「まあ大体赤松ちゃんのせいだけどさ」

赤松「……わ、私の……」

最原「……どうしたらいいんだろう。もうこれ以上は、どうしようも」






アンジー「ねえねえー! アンジーにいい考えがあるよー!」

最原「えっ」

アンジー「さっき図書館からこんなもの持ってきたんだー!」キラキラキラ

真宮寺「……えーと、何々?」

夢野「英霊……召喚……?」

5: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 21:19:47.04 ID:O+xFKZqK0
カルデア

巌窟王「クハハハハハハ!」

巌窟王「着替え! 準備完了!」シャキーンッ

巌窟王「お土産! とらやの羊羹!」バァーンッ!

巌窟王「パスポート! BBが偽造済み!」ジャジャーンッ!

巌窟王「その他色々と準備は万端だ! いつでも行けるぞ!」ギンッ!

BB「ふう。これで仕事の一つが片付きましたね」

BB「そうだ。ちょっとコフィンに入って貰えますか?」

巌窟王「コフィンに? 行くのは現代の日本だろう?」

BB「あー。いや。ちょこーっとコフィンを改造して、一つだけ単純な瞬間移動装置に変えておいたものがあるんですよ」

BB「これの動作が上手く行けば、もっと簡単に、申請と許可を偽造するまでもなくサーヴァントたちをセンパイに同行させられるので」

BB「一回、試してもらえませんか?」

巌窟王「いいだろう。ここまで世話を焼いてもらった借りもある。それを今この場で清算してやろう!」

BB「じゃ、まず荷物から……これ全部入るかなー」

巌窟王「俺の収納術を! 舐めるな!」ギュムギュム

巌窟王「よし入れた!」ガシャンッ

BB「じゃあ、行っちゃいますよー! それ」ポチリッ



バチバチバチッ!


BB「……ん? 成功したんですかね?」

6: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 21:26:25.18 ID:O+xFKZqK0
真宮寺「……一応、興味はあるから魔法陣は僕が書いてみたヨ」

アンジー「おー! 凄い凄い! 是清やるねー!」

最原「うーん……無駄だとは思うんだけど……」

入間「召喚術、ねぇ……カルトブスに相応しいオカルティックな試みだな」

入間「どうせ何も起こらねぇだろうから、せいぜい大笑いしてやるぜ。ヒャーーッハッハッハ!」

王馬「入間ちゃん。お口臭い」

入間「」

獄原「なんか、段々わくわくしてきたよ! これが上手く行けば脱出できるんでしょ!?」ワクワク

東条「……魔法陣の掃除をするときは私に任せてちょうだい」

アンジー「じゃあ、行くよー!」

アンジー「――素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公……!」






最原(そう。このときの僕たちは、誰一人として思っていなかった)

最原(まさか、この召喚術がとんでもないものを喚んでしまうなんて……)

最原(まるで思っていなかったんだ)

赤松「……あれ。ねえ。なんか……魔法陣が光ってきてない?」

最原「えっ?」

7: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 21:32:08.36 ID:O+xFKZqK0
ブワッ

アンジー「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ!」

春川「……何これ。明らかに不自然な風が……?」

星「渦巻いて、纏まって……こいつァ、何かやべぇかもしんねぇぞ?」

キーボ「一度中止させた方がいいのでは!?」

真宮寺「いや。実に興味深い! このまま続けさせてみようヨ!」ワクワク

最原(アンジーさんは周囲の異変をまるで気に留めず、どんどん詠唱を完了させていく)





アンジー「……汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」

アンジー「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」


バチバチバチッ!


アンジー「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」


バチバチッ!


バシュウウウウウウウッ!

8: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 21:36:51.70 ID:O+xFKZqK0
茶柱「ぎやーーー! 眩しいーーー! 目がー! 目がーーー!」ジタバタ

夢野「こ、これは……魔法か!? 魔法なのか!? ウチのアイデンティティがクライシスか!?」ガタガタ

最原「げほっ……砂埃が酷い……アンジーさんは!?」

アンジー「――」

最原「あ、よかった、無事……」

春川「いや、あれ無事? ある一点を見て固まってるみたいだけど」

最原「え? ある一点って、何を……」



???「クハハハハハハハハ!」



ブワァッ!


最原(再度大きな風が吹き、周囲を覆っていた砂埃が急激に晴れていく)

最原(その中心に立っていたのは、アンジーさんと、もう一人)

最原(明らかに僕たちとは年齢が違う、大人。しかし一目見ただけで何か異質だと感じる……)

最原(人間ではないナニカだった)

巌窟王「ついたぞ! ここが! 東京かッ!」

最原「……」

巌窟王「……」

巌窟王「……?」キョロキョロ

9: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 21:40:41.41 ID:O+xFKZqK0
巌窟王「……東京ではないな! クハハハハハハ……」

巌窟王「間違えた!」ガビーンッ!

最原「何を!?」ガビビーンッ!




最原(これが出会いだった)

最原(そして、僕たちのロクでもない運命が、決定的に変わった瞬間だった)

最原(いや。その中でもひと際、変わった女子が一人)

アンジー「……」

アンジー「神様、ですか?」

巌窟王「……」

巌窟王「?」キョトン

最原(何を訊かれたのかわかってない顔してる……)

10: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 21:55:19.04 ID:O+xFKZqK0
巌窟王「む。その本は……なるほど。タイミング良く瞬間移動装置と、魔術師の英霊召喚が混線したか」

巌窟王「クハハハハ! 不幸だな、女! 俺は! 貴様のサーヴァントではない!」

アンジー「神様だー!」


ダキッ


巌窟王「……」

巌窟王「?」キョトン

最原(アンジーさんに抱き着かれて、猶更状況がわからなくなったって顔だ……!)

巌窟王「待て。違う。放せ。俺は神などではない」

巌窟王「俺は……ふむ。なんと名乗ればわかりやすいか……」

巌窟王「……モンテ・クリスト伯が一番わかりやすいか?」

最原「モンテ・クリスト……?」

真宮寺「アレク・サンドル・デュマ・ペールの書いた小説だネ。日本では巌窟王の名でも有名だヨ」

真宮寺「しかしまさか……実在していたとは思わなかったけどネ」

白銀「待って。そのモンテ・クリストが目の前にいるってことは……!」

赤松「召喚は……成功!?」ガーンッ!

入間「んなわけあるか! なんかのトリックに決まってんだろ!」

入間「おいそこのチ◯◯ハット!」

巌窟王「よもや俺のことか?」

入間「テメェがマジで英霊だとかなんだとか、そんな存在だって言うんなら証拠でもなんでも見せてみろっつーんだよ!」

巌窟王「……」

入間「なんだ? できねぇーのか? そりゃそうだ。魔術なんてものがこの世に存在するわけが」



ボォゥッ!


チュウンッ! バキィンッ!


最原「入間さんのゴーグルの右目部分が謎の光弾によって割れたーーーッ!」ガビーンッ!

巌窟王「これで証明になったか?」

入間「」

11: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/09/30(土) 22:00:50.06 ID:O+xFKZqK0
巌窟王「まあいい。こんなものは気まぐれに過ぎない。遊んで悪かったな、ショッキングピンクの女」

巌窟王「さて。それでは俺は帰らせてもらう。これから旅行だからな」

巌窟王「……」

巌窟王「いい加減放せ」

アンジー「はい」スッ

巌窟王「クハハハハハハハ……それでは俺は……」

巌窟王「……」

巌窟王「……どこに向かって帰ればいい?」ハテ

最原「知らないよ!?」ガビーンッ!

14: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 09:41:37.07 ID:3vs/2nbQ0
巌窟王「こういうときは……」ゴソゴソ

巌窟王「これだ!」

天海「携帯? でもここだと圏外のはずじゃあ……」

入間「俺様のゴーグル……俺様の万能ゴーグル……」ガタガタ

ピピーッ

BB『あ、どうでした? 東京につきましたか?』

巌窟王「トラブルが発生して変なところに出たぞ」

東条「……通信できてるようね?」

天海「えっ」

BB『あー……うーん……どうやら特異点に似て非なるどこかに飛んで行ってしまったようですねー』

BB『帰還のプログラムを組むのも難しそうです。しばらくそのまま適当にブラブラしておいてください』

巌窟王「しかし魔力供給がなければ近い内に消滅するぞ」

BB『供給? あ、確かにカルデアからの供給は途絶えてます……が……?』

BB『あれ。おかしいですね。巌窟王さんへ魔力が流れて行ってますよ?』

巌窟王「何? そんなバカな。マスターがこの場にいない上、カルデアからの供給もないのでは……」

アンジー「……?」ゴシゴシ

赤松「アンジーさん? 何してるの? 右手の甲こすって」

アンジー「いや、なんか……熱くって……」ゴシゴシ

巌窟王「……」

巌窟王「……!?」ガビーンッ!

15: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 09:48:56.29 ID:3vs/2nbQ0
シャキィィィンッ!

アンジー「あ、なんか出たー」

最原「何かの……紋章?」

巌窟王「……」

巌窟王「再びトラブル発生だ。どうもカルデアのマスターとは別の人間と契約を果たしてしまったようだ」

BB『まー。そういうこともありますって』

巌窟王「クハハ! あって! たまるかッ!」ギンッ!

巌窟王「……だが、まあいい! こうなってしまった以上、仕方がない!」

巌窟王「女! 名を告げるがいい! お前を我が仮初のマスターとして認めよう!」

巌窟王「契約に従い、我が炎をお前に預けよう。お前の敵の悉くを葬り去ってくれる!」

巌窟王「できるだけ短時間でな! こちらにも予定がある!」ギンッ!

アンジー「わーい! 神様に認められたよー!」キャピキャピ

アンジー「……こちらは、夜長アンジー! 超高校級の美術部なのだー!」

巌窟王「神ではない!」

最原(もう何がなにやら……)

16: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 10:00:03.43 ID:3vs/2nbQ0
かくかくしかじかとらやのようかん

巌窟王「なるほど……集められた超高校級の生徒……脱出不可能の檻……脱出のためのコロシアイ……」

巌窟王「事情はすべてわかった。わかった、が……」

巌窟王「聖杯戦争ではなかったのか。それなら誰も彼もを殺せばすぐに終わったものを」

最原(凄い物騒なこと言ってる)

巌窟王「しかしそれならば話は更に簡単になったな。アンジー。不幸だと言ったことを素直に訂正させてもらおう」

巌窟王「巌窟王は脱獄の英霊だ。この程度の牢獄を破壊することなど造作もない」

百田「マジか!」

巌窟王「さあ! 魔力を回せアンジー! 我が宝具でお前を縛ることごとくを破壊してみせよう!」

アンジー「うん!」

アンジー「……」

アンジー「魔力を回すってどうやるのー? ジャグリング?」

巌窟王「……」

巌窟王「計画は頓挫したな!」ギンッ

赤松「早ァッ!?」ガビーンッ!

17: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 10:07:39.12 ID:3vs/2nbQ0
巌窟王「待て。まだ最終手段が残っていたな」

巌窟王「確かここに」ゴソゴソ

真宮寺「……確かに彼が魔術の神秘の塊って点に関しては、もう疑いようがないんだろうけどさ」

真宮寺「なんか段々グダグダになってきたネ」

最原(思ったより使えないぞ、この人……)

巌窟王「あった。これだ!」

東条「羊羹と……水筒?」

巌窟王「本来なら旅行の手土産にするつもりだったのだが、致し方あるまい」

巌窟王「アンジー。これをやろう。そして健やかに育つのだ」

巌窟王「あとは訓練をこなせば、いつかは我が宝具で牢獄を打ち破ることもできるだろう」

アンジー「何日後くらいにー?」

巌窟王「クハハ! 気が早いな! 一流の魔術師になりたいのであれば、どんなに努力しようと数年はかかるであろうさ!」

白銀「地味に気が長いよ」

巌窟王「俺も不本意だ!」ギンッ

王馬「結局閉じ込められた人が一人増えただけだったね」

18: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 10:15:35.24 ID:3vs/2nbQ0
赤松「い、いやでも! 戦力が一人増えたんだよ! これならあのデスロードを攻略できるかも、だし……!」

茶柱「巌窟王さんが男死って時点で既に望み薄なんですが」

巌窟王「……ふむ。あの出口、と書かれた看板の向こう側に行けばいいのか?」

巌窟王「ちょっと待っていろ。ひとまずアンジーと俺だけで充分だ」

夢野「んあ? いやそれはそれで危険すぎじゃろ……」

巌窟王「まあ見ておくがいい。アンジー、ついて来い」スタスタ

アンジー「はーい!」スタスタ

最原「あ……行っちゃった……」


ドカァァァンッ!
ドゴォォォォンッ!


王馬「……なんか順調に進んでるみたいだね」

真宮寺「これなら意外と行けるかも、ネ?」

19: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 10:20:16.18 ID:3vs/2nbQ0
数時間後

巌窟王「クハハハハハハ! デスロードは攻略したぞ! 攻略! できたが!」

アンジー「電子的なロックがされてる大きな扉が最深部にあって、攻略したとしても先に進めないよー」

赤松「そ、それって……」

巌窟王「無駄骨だったな」

春川「……ま、その情報は収穫だよ。だってもう赤松に強要されることもなくなるわけだしさ」

赤松「……」

王馬「はいはーい! 解散解散! お疲れさまでしたー! 続きはまた来週ー!」

天海「続けたところで希望がなくなっちゃったんすけどね」

赤松(無駄……? そんな)

赤松(私は……)

最原「赤松さん……」

巌窟王「……」

23: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 13:55:39.41 ID:3vs/2nbQ0
モノクマ「やっほーーーう! オマエラ、元気ー?」

モノクマ「みんな揃って疲れているだろうから、栄養ドリンクの訪問販売に来たよー!」

モノクマ「飲むと二分の一の確率で永遠に嗅覚が失われる可能性があるから注意が必要だけど!」

百田「どんなドリンクだよ」

モノクマ「……あれ? あれあれ……なんか思ったより元気だね。一体どうし……?」

巌窟王「……?」



モノクマ&巌窟王(なんだコイツ……)



星「おい。よくわからないものが、よくわからないものに出会ったぞ」

白銀「モノクマ。この人は巌窟王さん。アンジーさんの召喚術で出てきたの」

モノクマ「へー……召喚術……へー……」

モノクマ「??????」

最原「まったく理解できてない……いや確かに理解しろという方が不可能だけど」

24: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 14:07:11.63 ID:3vs/2nbQ0
巌窟王「おいアンジー。これはなんだ?」

アンジー「モノクマ。アンジーたちにコロシアイを強要している謎のクマだよー」

巌窟王「なるほど。コイツが……コイツが……?」

巌窟王「??????」

赤松「こっちもこっちで混乱してるね」

真宮寺「確かに一瞬思考が止まるようなトンチキさだけどネ……」

茶柱「よくよく考えてみると、こんなのにコロシアイを強要されている転子たちが心底情けなく思えてきます」

モノクマ「ま、いいや。別にいても」

モノクマ「ただ、この学園の中にいる以上は、暫定的に校則を適用するよ」

モノクマ「殺すのも殺されるのも生徒と同じ処理だからね」

巌窟王「アンジーが望まない限りは元より何をする気もない」

モノクマ「あれ? それってアンジーさんが望めば人を殺すってこと?」

赤松「えっ!?」

巌窟王「……それを望むような人間と誰が契約するか」

アンジー「そうだよー! アンジーは神様が望まない限りは人を殺したいと思わないってー!」

赤松「……」

25: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 14:15:14.51 ID:3vs/2nbQ0
モノクマ「……うぷぷ。本当にそうかな? オマエラもこんなのを簡単に信じちゃっていいの?」

東条「それは……」

百田「確かに急に現れた、俺たちの知らない別の法則を持つ誰かを簡単に信じろって方が無理だろうな」

アンジー「……解斗?」

百田「だから俺たちは、コイツを知る必要があるんだ。そうだな? 最原!」

最原「……えっ。僕?」

百田「コイツの尋問はお前に任せたぜ! 超高校級の探偵なんだから調査くらいお手の物だろ!」ニカッ

最原「えっ」

真宮寺「じゃ、後のことは任せたよ。僕はもう寄宿舎に行って寝るからネ」スタスタ

最原「えっえっ……」

最原「……」

最原「え、えっと。尋問とか専門外だから、僕もこれで……」

ガシッ

巌窟王「いいだろう! 全力でオマエタチの信用を勝ち取ってやろうではないか!」ギンッ!

巌窟王「さあ! 尋問を開始しろ! 最原ァ!」

最原(名前覚えられちゃったよ!)ガビーンッ!

26: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 14:28:11.64 ID:3vs/2nbQ0
食堂

最原「……モンテ・クリスト伯爵」

最原「十九世紀半ば、無実の罪で収監された元船乗り」

最原「地獄のような酷い環境だったシャトー・ディフに十四年もの歳月囚われた後、紆余曲折あって脱獄」

最原「同じく無実の罪で投獄されていたファリア神父から託された財宝を手にし、復讐を開始」

最原「本名、エドモン・ダンテス。復讐の最後の最後において愛と人間性を取り戻した男……」

最原「ここまでで何か間違っていることは?」

巌窟王「俺はエドモンではない!」

最原「え。モンテ・クリスト伯爵なのに?」

巌窟王「モンテ・クリストだからこそだ! 最後の最後に愛を得た男ではなく、この身は永遠の復讐者」

巌窟王「なればこそ、俺は間違ってもエドモン・ダンテスなどではない!」

最原(妙なこだわりだな……)

巌窟王「……コーヒーが冷めるぞ。話が長くなるようなら先に飲んでおけ」

最原「あ、う、うん」

最原(おいしい……)

27: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 14:45:26.09 ID:3vs/2nbQ0
最原「あなたの人となりはある程度、モンテ・クリストの小説の方を読めばわかるとして……」

最原「じゃあ次はサーヴァントの法則について聞いておこうかな」

巌窟王「マスターがいなくなれば魔力の供給がなくなり現界が保てなくなり消滅」

巌窟王「召喚術の中では最上級に位置するので、ソースがある限り威力が段違いの魔術が使い放題」

巌窟王「令呪を持っているマスターの補助があれば更なる出力が可能」

巌窟王「その他、切り離せない要素として聖杯などがあるが……」

巌窟王「考えるだけ無駄だな。今回の召喚には事故と例外が多すぎる」

巌窟王「この場における我がマスターの名は……もう言わずともわかるだろう?」

最原「超高校級の美術部である夜長アンジーさん、だよね?」

最原「サーヴァントとしての巌窟王さんのスタンスを教えてくれないかな?」

巌窟王「……理不尽な現実に立ち向かおうとするアイツは興味深いな」

巌窟王「ただ、その点においては貴様らも同様か」ニヤァ

最原(……楽しまれても……なあ……)

28: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 15:09:02.89 ID:3vs/2nbQ0
最原「そういえばさっきどこかに電話してたけど」

巌窟王「アレか。外に連絡できるかも、などとくだらないことを考えるなよ」

巌窟王「お前たちにとっては死後の世界と同じくらい分厚い隔たりのある世界に通じているだけだからな」

最原「相変わらず助けは期待できない、か」

最原「……巌窟王さんは僕たちに協力してくれるんだよね?」

巌窟王「まさか。再度言っておくが、俺は夜長アンジーのサーヴァントだ」

巌窟王「アイツの意思がオマエタチへの協力を示すのであれば、もちろん協力するが……」

巌窟王「当然、それは正確にはオマエタチへの協力ではない。アンジーへの協力だ」

最原「……」

巌窟王「……これ以上話せることはこちらには特にないと思うが」

最原「こっちもなんちゃって尋問だから聞けることほぼないよ……」

巌窟王「クハハ! そうか!」

巌窟王「ならば最後に教えておいてやろう。俺の目的はこの場からの脱出だ」

巌窟王「それの邪魔をするものは主に二つ。アンジーとの契約。そして物理的に俺を閉じ込める果ての壁」

巌窟王「俺たちとお前たちの利害関係はほぼ一致していると言っていいだろう!」

最原(もうアンジーさんのことを自分の仲間だと思ってるよ。『俺たち』って……)

巌窟王「これからよろしく頼むぞ? 最原!」

30: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 18:17:09.81 ID:3vs/2nbQ0
巌窟王「最原。こちらからも問いを投げかけよう」

最原「……え?」

巌窟王「何故こちらを見ない?」

最原「ッ!」

巌窟王「……いや。答える必要はない。気になっただけだ」

最原「……」

最原(……鋭いな、この人は)

巌窟王(魔力量に大した不満はないのだが、宝具を撃つには不安が残る……)

巌窟王(さて。脱出は一体いつになるだろうな)



ガチャリンコ


アンジー「終一ー! もう尋問終わったー?」

最原「あ、アンジーさん。うん、もういいよ」

アンジー「じゃあ神様! 行こう! 行こう!」グイグイ

巌窟王「あまり引っ張るな。マントが伸びる」

最原(なんかもう仲良しだな?)

31: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 18:22:15.58 ID:3vs/2nbQ0
寄宿舎

春川(はあ……変なことに巻き込まれちゃったな)

春川(もしも私の本当の才能がバレたりしたら、真っ先に狙われたりするのかな……)

春川(……やめよう。考えれば考えるだけ不安になる)

春川(一旦外に出て考えよう)ガチャリンコ

アンジー「神様ー! こっちこっち! こっちがアンジーの部屋ー!」グイグイ

巌窟王「ふむ。悪くはないな?」

春川「……」

春川「……!?」ガビーンッ!



巌窟王とアンジーが同じ部屋に入る様を目撃した春川はしばらく様子を見ていたが、どちらも朝になるまで出てこなかった。
二人が一体何をしていたのか。それを考えて余計に不安に陥ったが、相談する相手がいなかったのでストレスは溜まる一方だった。

32: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 18:35:51.81 ID:3vs/2nbQ0
巌窟王「……さて。我が仮初のマスター、夜長アンジーよ。俺とお前の契約はひとまず『脱出が完了するまで』のものだ」

巌窟王「こちらにも既にマスターがいるのでな。二人分の面倒を見るのは骨が折れる」

巌窟王「そこだけは勘違いをするな。俺とお前の関係は絶対に長続きしない」

アンジー「いいよいいよー! 仮に傍から離れても、アンジーは勝手に祈ってるだけだからねー!」

巌窟王「……その祈り、というヤツだが。アンジー。そもそも神をどのように定義している?」

アンジー「指針。羅針盤。北極星、のような誰か」

巌窟王「……なるほどな」

巌窟王(それなら、このごっこ遊びにつきあってやるのも一興か?)

巌窟王「……いいだろう。お前の願い、この俺が受け取った。こうなった以上、最後まで導いてやる」

巌窟王「もちろん、その願いの先に何があるのかまでは保証しかねるがなァ!」

アンジー「……願い?」ピクッ

巌窟王「む? なんだ?」

アンジー「アンジーは願わないよ? むしろ神様がアンジーに願うんでしょ?」

巌窟王「……なにィ?」

アンジー「ずっとアンジーはそうしてきたよ。神様の言う通り、何もかも」

アンジー「月曜日と水曜日のイケニエは欠かしたことはないし、神様の言う通り何日も何日も踊りあかしたりもしたよ?」

アンジー「だから神様に祈ったりはするけど、願ったりはしない。神様が人間に願うから。逆だったらおかしいでしょ?」

巌窟王「――」

33: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 18:45:40.13 ID:3vs/2nbQ0
巌窟王「それは……」

巌窟王(……正気で言っているのか、などと。こんなことを言う義理などない、な)

巌窟王「……まあいい。今日はもう遅い。ゆっくりと休むがいい」

巌窟王「歯磨きは決して忘れるなよ! 虫歯になると怖くて赤い婦長がやってくるからなァ!」ギンッ!

アンジー「はーい!」セッセッ

巌窟王「絵本の読み聞かせは必要か? マッチ売りの少女(著:アンデルセン)や醜いアヒルの子(著:アンデルセン)があるぞ?」

アンジー「おやすみなさーい!」スヤァ

巌窟王「……」

巌窟王「……」←手のかからないマスターでちょっと寂しい

34: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 19:02:54.04 ID:3vs/2nbQ0
翌日

最原「ふあーあ……昨日は色んなことが起こりすぎて疲れたな……」

百田「おう! 最原! 昨日の尋問はどうだった?」

最原「あ、百田くん。うん、あの調子なら……ひとまず信用してもいいと思う」

最原「少なくとも今すぐにどうこう、っていう意思は一切感じられなかったかな」

百田「そうか。ならひとまずはそれを信じた方がいいかもしんねぇな」

百田「おう! 信じるぜ! お前の尋問をな!」

最原(いや、そんな信用されても……)

百田「じゃ、さっさと食堂に行こうぜ。東条が何か用意してるはずだ」

最原「うん」


食堂


ドカァァァァァンッ!


夢野「ぐぎゃああああああああ!」ジュッ

百田「食堂の中で何か爆発が起こったと思ったら夢野が吹っ飛んできたーーーッ!?」ガビーンッ!

最原「夢野さーーーんっ!?」ガビーンッ!

巌窟王「見たか。これこそが我が身を焦がす毒炎!」

巌窟王「俺が俺である所以! 我が宝具、巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー)である!」ギンッ!

百田「最原! アイツ何もしないって言ってたよな!? 最原ァ!」

最原「えっ? えっ? えっ……あれぇーーー!?」ガビーンッ!

35: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 19:10:30.19 ID:3vs/2nbQ0
夢野「く……お主、宝具の解放はできないのではなかったのか?」

巌窟王「クハハハハ! 勘違いをするな。これは未だ出力の五十%にも至っていない」

巌窟王「ただの人の身にして、まだ原型を保っているお前自身がいい証拠だろう!」

夢野「くっ……! 上には上がいる、ということか……!」ダンッ!

最原「ちょ……巌窟王さん!? なんでよりによって夢野さんをイジメてるの!?」

巌窟王「人聞きの悪いことを言うな。ただそいつに頼まれたから、我が宝具の一端を見せてやっただけのこと」

巌窟王「……何かヒントを得たようだな? 似非魔法使い」

夢野「似非ではない! 似非ではない……が……」

夢野「今の巌窟王に何を言っても空々しい、か」

夢野「いいじゃろう。今この時点では負けを認めてやるわ」

夢野「……必ず、脱出が終わるまでにお主に吠え面かかせてやるがの」

巌窟王「やれるものならやってみるがいい」ニヤァ

夢野「ふん……やれやれ。本当に面倒なことになったわい」フゥ


スタスタスタ


百田「……最原。アイツの背中、大きくなってないか?」

最原「うーん……なんでだろう。僕も今そう思ってた……」

36: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/01(日) 19:17:36.90 ID:3vs/2nbQ0
巌窟王「……さて。食事の時間が遅れたな。東条、手間をかけさせた。もう持ってきてもいいぞ」パチンッ

東条「食堂ではもう二度と暴れないと約束してくれない限りは料理は出さないわ」

巌窟王「!?」ガビーンッ!

王馬「ぷぷーっ! 巌窟王ちゃんってば東条ちゃんの尻に敷かれてやんのー!」

真宮寺「まあ……食堂全体が焦げ臭くなってて、料理の味が半減してるからネ。この程度の叱責はあって当然だヨ」

巌窟王「……約束しよう」

茶柱「一体何を食べたらあんな……手から炎とか……凄く恰好いい……」ブツブツ

茶柱「……ネオ合気道に取り込みたいですね……」ブツブツ

最原「なんか凄い馴染んでる! 昨日の今日なのに!」ガビーンッ!

40: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 18:55:50.18 ID:Jytdp+uh0
キーボ「……人間じゃないのに食事をとるのですか」

巌窟王「あった方がモチベーションが高まる。元人間の性だ。許せ」

巌窟王「なによりも、魔力供給元のアンジーが心もとないからな。外部からの供給があるのなら、それに越したことはない」

最原「あ、あれ。そういえばアンジーさんは?」

アンジー「ここにいるけどー?」ヒョコッ

百田「巌窟王のマントの後ろ部分から出てきやがった!」ガビーンッ!

最原「二人羽織!?」

アンジー「距離が近い方が魔力の供給っていいのかなーって思って、実験中ー!」

巌窟王「ほぼ意味がないことがついさっきわかったがな!」

最原(じゃあなんで今もやってるの? とか訊かない方がいいのかな……)

41: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 19:09:32.00 ID:Jytdp+uh0
巌窟王「さて。こちらもできる限り短期間で脱出したかったのだが、どうも長丁場になりそうだ」

巌窟王「改めてよろしく頼むぞ。才囚学園生徒一同!」ギンッ

百田「……確かに信用してもよさそうだな。あの素敵笑顔を見るに」

最原「毎度毎度いい笑顔だね……」

巌窟王「食事をとった後はアンジーの訓練に入る。せいぜい上手く行くように祈っておくがいい」

アンジー「祈ってー!」キラキラキラ!

東条「ラタトゥイユよ」コトリ

巌窟王「クハハハハハハ……ハハハ……」シュン

最原「あれ。フランス料理なのに露骨にテンション下がった……」

巌窟王「……閉鎖空間……閉鎖空間でラタトゥイユ……か」モソモソ

最原「?」


43: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 19:55:29.46 ID:Jytdp+uh0
BB『え? どうやったらサーヴァントが強くなるか、ですか?』

BB『そうですねー。場所によっては魂の改竄とかもできたのでしょうが……』

BB『ふむ。ひとまずド単純に言って、サーヴァントとマスターの絆を深めることが、そのままズバリ出力の上昇に寄与します』

BB『種火? QP? マネーイズパワーシステム? 時空によってサーヴァントの強化方法が違うのでなんとも言えません』

BB『現時点で巌窟王さんがいまいち全力を出せない理由として考えられるのは……』

BB『……』



BBの回想


クソしっちゃかめっちゃか宗教野郎「神! 最高ーーー!」ズガァァァンッ!

可哀想な星の触覚「ガトオオオオオオオオ!(怒)」

BBの回想終了


BB『……アレですね。マスターがサーヴァントの力を正しく認識できていない場合は酷いステータスダウンを引き起こします』

BB『そういう意味でも、絆を深めることは決してバカにできない修行方法になるかと』

44: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 20:05:10.86 ID:Jytdp+uh0
中庭

巌窟王「……理解したぞ。つまり……こういうことだな!?」シャキイイイン

アンジー「たかーい!」ワーイ

赤松「……何してるの? アンジーさんを肩車して」

巌窟王「魔術の修行だ!」ギンッ

アンジー「修行なんだってー!」ニコニコ

赤松「えっ? これが?」

巌窟王「我が征くは恩讐の彼方!」ダッ

アンジー「はやーい!」ワーイ

赤松「えっえっ……質問する前に行っちゃった……」

45: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 20:10:15.04 ID:Jytdp+uh0
最原「あ。赤松さん」

赤松「最原くん、何か用?」

最原「いや……ちょっと相談したいことがあって」

赤松「?」

最原「一緒に図書室まで来てくれるかな?」

赤松「う、うん……」スタスタ




巌窟王「クハハハハハハ! どうだ! 俺の力を理解できたか!」

アンジー「わかんない!」キラキラキラ

巌窟王「そうか! クハハハハハハ!」

巌窟王「失敗だ!」ギンッ!

最原「あれを邪魔しないようにこっそり行こう」

赤松「うん」

46: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 20:24:37.81 ID:Jytdp+uh0
翌日

巌窟王「俺には魔力の自己回復スキルがある。微量なのでこっちに頼るにしてもやはり心もとないが……」

アンジー「……?」ニコニコ

巌窟王「何一つとして理解できてないな」

アンジー「うん!」

巌窟王「失敗だ! 次!」ギンッ!


翌々日

巌窟王「微量の魔力をやりくりして、なんとか分身体を一体作ることができたぞ!」

巌窟王2「これを大量に作り出すことこそが、我が宝具の到達地点の一つだ!」

アンジー「なるほどー。ところで神様?」

巌窟王「なんだ?」

アンジー「なんか凄く疲れて来たんだけどー……」ゼェハァ

巌窟王「無理をさせたな! 失敗だ! 次!」ギンッ


翌々々日

巌窟王「アンジーよ。適当な五桁の数字を言え」

アンジー「37564ー!」

巌窟王「クハハ! 覚えたぞ! この俺には忘却補正というスキルがある!」

巌窟王「恨みを忘れないためのスキルだが……ひとまずこういう応用も可能だ」

巌窟王「数時間後にこの数字を言って見せよう。しょうもない活用方法だが、証明にはなる」

アンジー「あ、ごめん神様。こっちが先に忘れちゃった……」シュン

巌窟王「気にするな! 人間は多くを忘れる生き物だからな! 次だ!」ギンッ!




星「魔術だなんだとかは俺にはさっぱりわからんが」

天海「少なくとも巌窟王さんのやり口が引くほど甘いことだけは伝わってくるっす」

星「凄まじくポジティブだな、あの男……」

48: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 20:40:19.41 ID:Jytdp+uh0
天海「きっとあの二人には膝をつくって概念がそもそも存在しないんでしょうね」

星「ああ。ネタ抜きで尊敬するぜ。そこのところだけはな」

巌窟王「クハハハハハハ! 安心しろ! まだ時間は……」


prrr


巌窟王「む? メッセージか?」

BBからのメール『センパイがサーヴァント五騎を連れて旅行へと出発しちゃいました。お疲れ様です』

巌窟王「!?」ガクーンッ!

天海「膝をついたーーー!?」ガビーンッ!

星「あの巌窟王の膝をつかせるとは……どんな絶望的なメールだったんだ……?」

巌窟王「……いや……まだだ! これならば、猶更時間ができたと言えるだろう!」

星「ねーよ。そんなもん」

巌窟王「なに?」

天海「最近はアンジーさんにかかりっきりだった上に、モノクマが生徒だけしか集まってないときを見計らって言ったので無理ないっすけど」




天海「タイムリミットができたんすよ」

天海「……明日の夜十時までにコロシアイが起こらない場合は、俺たちは全員死亡するんす」

巌窟王「……アンジー? 本当か?」

アンジー「言い忘れちゃった。ごめんねー」

巌窟王「そうか」

天海「やっぱりなんか甘くないっすか?」

49: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 20:53:18.85 ID:Jytdp+uh0
巌窟王「……あの計画を始動させる必要があるかもしれないな」

天海「なにか考えでも?」

星「ふっ。聞かせてもらおうじゃねーか」

巌窟王「卒業アルバムを作る」

星「……」

星「ふっ。聞かせてもらおうじゃねーか」

天海「星くん。なかったことにしても始まらないっす」

巌窟王「俺はマスターにこう言った。確かにこの状況は地獄だが、多少の楽しみはあってもいい、と」

アンジー「だからアンジーは神様に提案したんだよー! なら卒業アルバムを作ろうって!」

アンジー「脱出した後で写真を眺めてさー! こんなこともあったなーって、みんなで笑いあうんだよー!」キラキラキラ

星「……なるほどな。外に出た後の希望、か」

天海「赤松さんの『外に出たらみんな友達に』と並ぶ、新たな目標っすね」

天海「でも誰が写真を撮るんすか?」

巌窟王「安心しろ。俺にアテがある。黄金律にすべてを任せるがいい!」ギンッ

アンジー「いえーい!」

天海「……ふふっ。やっぱ、退屈しないっすね。みんな」

星「ああ。こんな状況でなければ、確かに友達になれたかもしんねーな」

巌窟王「……」

50: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/02(月) 21:00:00.46 ID:Jytdp+uh0
カルデア

BB「……やっぱりこれ、私が観測していない間は妙に時空間が乱れていますね」

BB「いや、私が観測していない間に乱れるのは納得できるとして」

BB「『観測者が現れた途端に時空が安定する』のは一体どういう仕組みなんでしょうか」

BB「……『固有結界』? いや、まさかね……」

BB「……まあ、巌窟王さんなら大丈夫でしょう」



才囚学園

巌窟王「BBにメールだな。ゲオルギウスがいれば万事解決だろう」メルメル

54: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 19:02:47.86 ID:Ct3Je0M80
食堂の外のテラス席

巌窟王「……ふむ。しまった。閉鎖空間内だとタバコが手に入らない」

巌窟王「残りの数を考えて吸う必要があるか……」スパー

獄原「あ。巌窟王さん」

巌窟王「獄原か。こんなところで何をしている?」スパー

獄原「ええっと、ゴン太は虫さんを探しているところだけど……」

獄原「アンジーさんは傍にいないんだね?」キョロキョロ

巌窟王「四六時中一緒にいるわけではないさ。アイツもアイツでプライベートはある」

獄原「そっか。プライベートは大事だよね。紳士を目指しているから少しはわかるよ」

獄原「……モノクマのタイムリミットのことは聞いた?」

巌窟王「難儀な状況に陥ったな。お前たちも」

獄原「うん。でもいざというときは、ゴン太がみんなを守るよ」

獄原「そのときは巌窟王さんも協力してくれるよね?」

巌窟王「……ふん……」

巌窟王(この問題は流石に誤魔化すことはできない、か)

巌窟王(今の状態で、アンジーだけを守ることだけは辛うじて可能だろう)

巌窟王(だが……全員を守る、となったら少し難しいかもしれない)

巌窟王(ならば攻めるか? なお難しいな。迂闊なことをして我がマスターのアンジーの責任問題にでもされたら終わりだ)

巌窟王(となれば、生徒たちが団結して『守る対象』から『共闘する駒』へ変化するのを期待するしかない)

巌窟王(果たして、どのような結果を産むか……残念なことにこれは時間が経たねばわかるまい)

巌窟王「待て、しかして希望せよ、だ」

獄原「?」

55: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 19:19:55.41 ID:Ct3Je0M80
最原(各々、それぞれ思うことはありつつも時間は無常に過ぎていく)

最原(立ち向かう方法を模索する者。諦める者。状況をただ傍観する者……)

最原(僕は、立ち向かうことにした。勇気からではなく、何もしないことこそが怖かったからだ)

最原「この策が上手くいってくれれば……」

赤松「首謀者を捕まえることができるかもしれないね。凄いよ、最原くん!」

最原「……はは。ひたすら地味な小細工だけどね」

最原(あとは図書室で、首謀者が引っかかるのを待つだけだ……!)

最原(すべては図書室で決着する)

赤松「……」



その夜 アンジーの部屋


巌窟王「アンジー。一つ聞きたいのだが、図書室はどこにある?」

アンジー「んー? 地下ー! なんでー?」

巌窟王「……いや。なんでもない。まだな」

アンジー「?」

巌窟王(BBからの返事が来ない……大見得切ったが、断られる可能性を考えていなかったな)

巌窟王(その場合は独学でカメラの扱いを習得するか)

56: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 19:27:46.96 ID:Ct3Je0M80
その翌日 午後九時三十分前後

最原(僕たちの立てた計画はこうだ。まず図書室に入間さん作成の隠しカメラを設置)

最原(首謀者はモノクマを大量生産するために、図書室の隠し部屋に必ず向かう、と仮定)

最原(隠し扉は本棚で隠されているので、その本棚が動いたタイミングで、僕の手元の防犯ブザーが鳴るように設定)

最原(隠しカメラと、センサー。その両方を使って二重に証拠を押さえ、首謀者を確保する)

最原(ひとまず地下室に続く階段傍の教室で、僕たちは身を潜める)

赤松「……最原くん。時間がありそうだから、一ついい?」

最原「ん?」

赤松「……巌窟王さんがさ。卒業アルバム作るって話、聞いた?」

最原「えっ」

赤松「外に出たときに、写真を見て『こんなこともあったな』って思い出にするんだってさ」

最原「それは……随分と悠長だね……」

赤松「うん。でも天海くんとかは乗り気みたい。あ、彼から又聞きしたんだけどね?」

赤松「……」

最原「……赤松さん?」

57: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 19:39:13.18 ID:Ct3Je0M80
赤松「……あ、えーと、さ。なんだろ。その……こんなこと思っちゃいけないんだけどね?」

赤松「無力感……ってヤツ? そういうの感じちゃってさ」

赤松「まだ全然本調子じゃないんだって? 全然そんな感じしないよね。巌窟王さん」

最原「……もしかして、まだ気にしてるの? デスロードのこと」

赤松「気にしないって方が無理、だよね。だって……」

最原「強要されたって思ってないよ。僕は」

赤松「……無駄骨だったんだよ? 実質使えない出口に向かって頑張れって言ってたんだ。私」

赤松「だからさ。凄く嬉しかった。最原くんに『手伝って』って言われたときは」

最原「……もしかして、償いのために僕に協力を?」

赤松「はは。打算的すぎて失望させちゃったかな……」

最原「そんなことないよ! そんなことない、けど……」

最原「……そんなに気負わないでいいんじゃないかな」

最原「実はさ。巌窟王さんと会ってから、なんとなく気分が明るいんだ」

最原「『なんとかなるんじゃないか』って思えてきたんだよ」

赤松「え?」

最原「……実は図書室から、モンテ・クリスト伯を借りて来たんだ」

最原「結構面白くってさ。現実に起こったことなんだ、と思うとちょっと残酷なんだけど」

最原「この人と同一人物なんだ、って思うと、なんとなく心強く思えてきちゃって」

赤松「……」

最原「よかったら後で赤松さんにも」

赤松「そんな時間ないよ」

最原「え」

赤松「……」

最原(あれ……なにか気に障ること、言っちゃったかな……?)

赤松(……巌窟王さんが悪いわけじゃない。でも、私は……)

58: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 19:44:00.30 ID:Ct3Je0M80
最原「……あ、あれっ? なにか教室の外が賑やかだな……?」

ガチャリンコ

最原「あれは……ゴン太くん、百田くん、春川さん、茶柱さん、アンジーさん、夢野さん、天海くん……」

最原「みんなしてどうしたんだろう? どんどん地下に向かってる」

赤松「なにかあるのかな?」

最原「ちょっと下に行って様子を見てくるね!」ダッ

赤松「あ! 最原くん!」

赤松「行っちゃった……」

巌窟王「……」スタスタ

赤松「……ッ! 巌窟王……さんも? 下に……」

巌窟王(写真術の本はあるだろうか)スタスタ

59: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 19:47:09.65 ID:Ct3Je0M80
巌窟王「む? 最原。何をしている?」

最原「うわっ……!? 巌窟王さん!」

巌窟王「……賑やかだな? ゲームルームで何かやっているのか?」

最原「え、ええと……巌窟王さんは? 何をしに?」

巌窟王「野暮用だ!」ギンッ!

巌窟王「それで、質問に戻るが。お前、何をしている?」

最原「……」

最原「ちょっとね。大した用はないよ」スタスタ

巌窟王(……む。あの喧噪の中には入らないのか。上に戻っていく)

最原(ひとまず赤松さんのところに戻ろう)

巌窟王(まあいい。さっさと用を済ませてしまおう)スタスタ

60: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 19:49:35.68 ID:Ct3Je0M80
階段脇の教室

最原「ふうっ……危なかった!」

赤松「あ、最原くん! 巌窟王さんとすれ違わなかった?」

最原「すれ違ったよ。バレそうになったけど、なんとか誤魔化した」

最原「あ。先に地下に行ったみんなのことなんだけど、どうもゲームルームに集まっているみたいで」


ビービーッ!


最原&赤松「!」




図書室の中


巌窟王「……? なんだ? これは。本棚が勝手に……」

巌窟王「隠し扉か? これは」

61: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 19:53:44.82 ID:Ct3Je0M80
カシャッ

巌窟王「む? 今、本棚が光ったか?」

巌窟王「……!」



モノクマでもわかる写真術「」バァーーーンッ!



巌窟王「クハハハハハ! 見つけたぞ!」

巌窟王「む? 何故かカメラが設置されているな……まあいいか」

巌窟王「さて。早くこれを持ち帰って写真術を習得するとしよう」

グイグイ

巌窟王「むう。本と本の密度が強すぎて、無理に抜くと本を傷つけてしまいそうだ」

巌窟王「そーっと……そーっと」グイグイ


ガンッ!


63: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 21:01:43.53 ID:Ct3Je0M80
ちょっと時間は遡る

最原「……誰かが本棚を動かしたんだ! すぐに行かないと!」ダッ

赤松「……」

赤松「……ごめんね」


ゴロンッ


地下

最原「……!?」

謎の音声『モンハナシャコのパンチ力はすさまじく、その勢いは水槽のガラスすら破るほどで』キィィンッ!

最原「うるさっ!? なにこれ! どこから……」


ギャースカギャースカ


最原「ゲームルーム……の奥の方のAVルーム?」

百田「おいゴン太! 音量がデカすぎる! ちょっとは下げろ!」

獄原「ご、ごめん! あ、でもなんか音量のツマミが壊されてて……!」

茶柱「じゃあ電源を落として……って、コンセントが機材の後ろのなんかゴチャッとした部分のあたりに隠れてよく見えないです!」

天海「最悪の場合は壊した方がいいかもしれないっすね」

茶柱「は!? 天海さん、なんて!?」

天海「ぶっ壊した方が! いいかもしれないっすねッ!」

茶柱「うるさーーーいッ!」バシーンッ!

天海「理不尽ッ!」ドガシャアアアンッ!

最原(天海くんがAVルームの奥の方の扉を壊して吹っ飛んだ! 多分茶柱さんがぶん殴ったんだろうけど!)

天海「痛い。とても痛い」ピクピク

64: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/03(火) 21:12:49.55 ID:Ct3Je0M80
赤松「最原くん、早いって……ってうるさっ! 何これ!」

最原「ひとまずあっちは天海くんたちに任せよう! 僕たちは図書室へ!」


ガチャリンコッ!


隠し扉の本棚「」ゴゴゴゴゴ

最原「遅かった!? もう閉まってる!」ダッ

最原「……?」

最原「……え?」

赤松「あ……?」



赤松「巌窟王……さん……?」

最原(僕たちが図書室に飛び込んで、隠し扉の本棚に近づいたとき、背の低い本棚に隠れて見えなかった影を見つけた)

最原(それは……)

最原(特徴的な帽子とマント。絶対に死なないと思われた英霊。モンテ・クリスト伯爵の変わり果てた姿だった)

最原(頭をカチ割られて……無残に死んでいた……)



第一章
私と僕(と俺!)の学級裁判 非日常編

68: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 18:16:03.40 ID:6HR/+vkE0
最原「……う……」

最原「うわあああああああああああっ!?」



ガチャリンコ


天海「ど、どうしたんすか! こっちから叫び声が聞こえたんすけど」チミドローッ

赤松「きゃあああああああああああ!?」ガビーンッ!

巌窟王「天海、どうした? 傷だらけだぞ。他人のことを心配する余裕などあるのか?」シニカケー

天海「ぎゃあああああああああああああ!?」ガビビーンッ!

巌窟王「やめろ。傷に響く。騒ぐな。さわ……」

バタリッ

巌窟王「」チーン

最原(そこから僕が何を喚き散らしたのか、僕自身も覚えていない)

最原(ただ、気付いたら僕の周りには生徒たちが全員揃っていた)

最原(……長かったような、短いような時間だった)

69: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 18:22:16.43 ID:6HR/+vkE0
モノクマ「えー。ごほんごほん。いやー、長かったねー! 長かった! ここまでくるのにかなり時間かかった!」

モノクマ「かかったけど……」

巌窟王「……」

モノクマ「よりによって最初の犠牲者、コイツかよ……反応に困るんだけど」

モノクマ「まあいいや! それじゃあみんな! 最初に言った通り! これでリミットは解除だよ!」

モノクマ「そして! なんと! 彼を殺した人は初回特典で外に出ることができるのでーす!」ギンッ

巌窟王(初回特典?)ピクッ

最原(やっぱり彼、生きてるよね……?)

天海(都合がいいので黙っておくことにするっす)シラー

70: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 18:32:48.47 ID:6HR/+vkE0
アンジー「あーあー。初回特典! 初回特典ねー!」キラキラキラ

アンジー「……」

アンジー「なんだっけそれ」

キーボ「忘れたんですか? 最初の殺人においてのみ学級裁判は行われず、クロは外に出ることができる権利のことです」

アンジー「へー。聞いてなかったよー」

赤松「つい最近はずっと巌窟王さんと訓練(とは名ばかりのじゃれあい)を繰り返してたもんね」

モノクマ「それじゃあ、今回の被害者、モンテ・クリスト伯爵を殺した人は手をあげてー!」

巌窟王「……」

生徒一同「……」



……


モノクマ「……あれ?」

最原(なんで……誰も名乗り上げないんだ?)ゾワッ

71: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 18:36:39.23 ID:6HR/+vkE0
モノクマ「……初回特典を蹴られちゃった。仕方ないね」

百田「お、おい。ちょっと待てよ、モノクマ」

モノクマ「待つ! 待った! はいもう終わり!」


ピンポンパンポーン


アナウンス『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を始めます!』

最原「そ、そんな……!?」

巌窟王「始まるのか……学級裁判が!」ギンッ

茶柱「そんな! 巌窟王さんを殺した犯人を、命懸けで見つけろと!? そんなの……」

茶柱「……」

茶柱「……ん? なんか今、変じゃありませんでした?」

夢野「何がじゃ?」

茶柱「いや……まあいいんですけど……?」

72: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 18:42:43.43 ID:6HR/+vkE0
真宮寺(死んでなくない?)

白銀(死んでなくない?)

東条(死んでないわね?)

星(死んでねーじゃねーか)

獄原(あー、無事でよかったー!)キラキラキラ

モノクマ(なんかいまいち絶望感が足りないな……? まあいいや)

モノクマ「それじゃあ、オマエラ頑張ってー! 巌窟王さんを殺した犯人をバンバン見つけちゃってくださーい!」

最原「そ、そんなこと……僕には……!」

巌窟王「――諦めるのか?」ザッ

モノクマ「……」

モノクマ「えっ」

73: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 18:46:26.23 ID:6HR/+vkE0
巌窟王「それもいいだろう。つまらないが、結末は結末だ」

巌窟王「だがもしも! 貴様の心の中に恩讐の牙が残っているのであれば!」

巌窟王「俺はお前たちの手を取ろう! さあ! 血塗られたパズルを解き明かすのだ!」

最原「巌窟王さん……!」

アンジー「よーっし! 犯人をみんなで捕まえよー!」

生徒一同「おー!」

モノクマ「えっ。待って。待って。ねえ。誰が被害者だっけ? あれっ!?」

モノクマ「オマエなんで生きてるの!?」ガビーンッ

巌窟王「HPがギリギリ一桁くらいは残った」フラフラ

アンジー「令呪で回復させるねー」キンッ

モノクマ「」



巌窟王「……クハハハハハハ! 戻ったぞ!」シャキーンッ!

74: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 18:51:17.25 ID:6HR/+vkE0
東条「……被害者が生きていた場合も学級裁判は行われるのかしら?」

モノクマ「い、いや。待って! 待って! ありえなくない!? 絶対に死んだはずなのに!」

モノクマ「……まあいいや! 悪いんだけど、被害者が生き返ったとしても学級裁判は行われるよ!」

モノクマ「こっちにもこっちの事情があるからね!」

巌窟王「いいだろう! このまま引き続いて貴様の傲慢さをこそぎ取ってやる!」

巌窟王「せいぜい足掻いてみろよ? 暖簾に腕押しではこちらもつまらないからなァ!」ギンッ

巌窟王(……しかし、一度死んだはず、か?)

巌窟王(妙だな。サーヴァントだからその程度の奇跡や偶然はあってもおかしくないが……)

巌窟王(なぜ、頭を強く打っただけで死にかけた?)

巌窟王(サーヴァントに神秘性の薄い攻撃は効きが薄いはず……)

巌窟王(……学級裁判の後で考察するべきだな)


76: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 19:41:40.77 ID:6HR/+vkE0
モノクマ「なんか既にかなり吹っ飛んでる展開だけど……とりあえず渡しておくね」

モノクマ「ザ・モノクマファイルー!」テレレテッテレー!

赤松「何、これ?」

モノクマ「捜査に関してズブの素人のオマエラに対する救済処置」

モノクマ「死体に関する情報がつらつら書かれてるよ。読んでね!」

モノクマ「……アンジーさんが傷を回復させちゃった副作用として、もう『死体を調べる』ってことができないしね」

最原「あっ」

百田「巌窟王本人に聞けばいいんだから別にいいだろ」

百田「ていうか、巌窟王が生きてるんだから、今回の犯人はもうわかったも同然じゃねーか!」

巌窟王「見ていないぞ。死角から頭を打ちぬかれたようでな。残念なことだ」

百田「……」

春川「死人に口なし。あったとしても役には立たなそうだね」

77: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 19:52:32.94 ID:6HR/+vkE0
砲丸「」ゴロッ

巌窟王「なるほど。この砲丸で頭を打ちぬかれたのか」

巌窟王「……妙だな。やはり何一つとして魔力的要素を感じない」

巌窟王「これで一体どうやって俺の頭を砕けるというのか……」

巌窟王「む? 砲丸に何かついているな?」

最原「巌窟王さん。その血塗れの砲丸がどうかした?」

巌窟王「いや……何か、繊維のようなものがついていてな」

最原「繊維? あ、本当だ」

巌窟王「この色合い、どこかで見たことがあるような」

最原「……」

巌窟王「……」





最原&巌窟王「あっ」

アンジー「神様ー! そのいかにも凶器な砲丸がどうかしたかー?」キラキラキラ

最原「わーーー!?」アタフタ

巌窟王「……」

巌窟王「クハハハハハハ! 不愉快だ! 消え失せろ砲丸!」ボオオオオッ!

夢野「巌窟王が砲丸を燃やしおったーーーッ!?」ガビーンッ!

百田「うおおおおお! 大事な証拠になにやってんだテメェーーーッ!」

巌窟王「もう調べ終わった後だ。詳細を聞きたければ俺かもしくは最原に聞け!」

巌窟王「『特に怪しいものはなかった』と言う他ないがな!」ギンッ

最原「が、巌窟王さん!?」

巌窟王「……」

巌窟王「『アイツ』は……ここではないどこかを調べに行ったか」

巌窟王「最原。顔を貸せ。上の教室がいいだろう」

最原「……うん」

78: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 20:06:59.86 ID:6HR/+vkE0
地上一階 階段脇の教室

巌窟王「さて。俺は事態のすべてを見通したわけではないが、先ほどの砲丸の調査のせいで犯人がいち早くわかってしまった」

巌窟王「探偵の力を持っているお前ならば、猶更すべてが見通せただろう」

巌窟王「気分はどうだ? ああ、いや。いい。答えなくていい。どちらにせよお前は進むしかないのだ」

巌窟王「死にたいというのなら別だが?」

最原「……なんで……どうして彼女が巌窟王さんを……」

巌窟王「さて、な。それを知りたいのなら、やはり最後の最後まで真実を求めるしかなかろうさ」

巌窟王「……事件の全貌は掴めたのだろう?」

最原「うん。それは問題ないと思う」

巌窟王「ならば、お前がこれからやるべきことは一つ。倒叙法の推理小説を読んだことは当然あるだろう?」

巌窟王「それと同じく、ヤツのミスを調べることだ」

巌窟王「ひいてはそれが、ヤツの『殺意の行方』を知ることになるだろう」

最原「殺意の……行方?」

巌窟王「……喋り過ぎたな。さて。写真の現像が終わるまで、俺は地下に戻ることにする」

最原「え? 写真の現像?」

巌窟王「ああ。お前が呆然自失としている間に、赤松がカメラのすべてを回収していたぞ」

巌窟王「現像はモノクマに任せているそうだ」

巌窟王「……どうせ俺の予測通りのものしか映っていないだろうがな」

最原「……」

最原(殺意の行方……か)

79: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 20:20:59.71 ID:6HR/+vkE0
最原(その後、色々なゴタゴタはありつつも捜査は滞りなく進んだ)


地下一階

入間「おっしゃー! ドモーンでの空撮、完了だぜ!」

白銀「ドローンね」

入間「ん? んー……本棚が階段状になってるぞ?」

白銀「えっ?」


ゲームルーム

百田「俺たちはモノクマに対抗できるように、戦えそうなヤツで集まって作戦会議をしようと思ったんだが……」

春川「その途中あたりで、自分は役に立てそうにないからってそうそうにAVルームに引きこもった獄原が映像を見始めたんだよ」

春川「大爆音で」

獄原「え、ええっと……なんか、トレイには既にブルーレイが設置されてて、映写機から何から何まで待機状態だったんだ」

獄原「トレイの方を親指で押せば自動で映像が流れるようになってた、ってことなんだけど」

獄原「いきなり大音量でモンハナシャコさんの映像が始まるし、電源スイッチやら取り出しスイッチやらが壊されてて操作できないし焦ったよ」

獄原「しかもリモコンもどこにも見つからなかったし……どこ行っちゃったんだろう」

天海「最終的には勝手に止まったっすよね。なんか」

モノクマ「ああ、ボクが止めたんだよ! うるさかったから! 予備のリモコン持ってたし!」ジャジャーンッ

80: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 20:28:34.91 ID:6HR/+vkE0
最原(大体が予定調和だった)

倉庫

モノクマ「はい! 現像終了! これがあのカメラに収まってた写真だよ!」

百田「おーっし! これで巌窟王を襲った犯人の姿が見えるぜ! ……見え……?」

春川「……巌窟王が一人で図書室に入る写真」

春川「巌窟王の背後で隠し扉の本棚が動いて、巌窟王が目を丸くしてる写真」

春川「巌窟王が何故か上機嫌で本棚の隠しカメラの方に寄っている写真」

春川「その他は私たちが図書室へと入る写真とか、赤松がカメラを取り外す写真とか……」

入間「肝心の犯行の写真がねーじゃねーかよッ!?」ガビーンッ

巌窟王(やはりか……)

赤松「あれ? 最原くんは?」

入間「ダサイ原なら『ちょっと実験したいことがある』っつって地下室に残ってたぜ?」

巌窟王「俺が呼びに行こう」スタスタ

81: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 20:40:09.17 ID:6HR/+vkE0
階段脇の教室

最原「……」

最原「聞こえる……足音や自分の呼吸音で、かき消されちゃいそうなほどに小さい音だけど」

ガララッ

巌窟王「最原。ここにいたか。何をしている?」

モノクマ「実験だって!」

巌窟王「モノクマとか? 随分と酔狂なマネをする」

最原「……好きでやっているわけじゃない」

最原「あと第一段階ですぐに実験は終了だしね。モノクマ」

モノクマ「はいはい! これが件のリモコンですよ!」ポイッ

最原「……停止ボタンは、これか……」ポチリッ

最原「……」ポチリッポチリッ

最原「……」ポチポチポチッ

最原「……止まった。やっぱりギリギリ届くんだな」

モノクマ「無駄に高性能にしたからね! でもまさか、ここからも届くなんてボク自身ビックリだよ!」

巌窟王「?」

最原「……そうだ。巌窟王さん。後でアンジーさんに言い聞かせておいた方がいいよ」

最原「未成年でタバコはダメだって」

巌窟王「何ィ?」

モノクマ「あ! そうだ! 言い忘れてた!」

モノクマ「昨日、アンジーさんに『神様がタバコを欲しがってるんだー』って言われたから渋々アンジーさんにタバコを渡したんだけどね?」

モノクマ「何を思ったのか、アンジーさんその場でタバコに火を付けようとしたんだよ!」

巌窟王「!?」ガビーンッ!

モノクマ「流石に学園長として放っておけないから止めようとしたんだけど、逃げに逃げられて、三時間も鬼ごっこするハメになったよ!」プンプン

巌窟王「く、クハハハハハハ……」

巌窟王「……言葉もない。後でアンジーには言い含める」シュン

モノクマ「よろしくね!」プンスカ

82: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/04(水) 21:02:15.52 ID:6HR/+vkE0
最原「……」

最原「何かの間違いであってほしいって、思った」

巌窟王「……」

最原「でも調べれば調べるほど、出てくるのは無実の証拠じゃなくって、やったっていう証拠だ」

最原「しかも、この計画から感じられるのは」

巌窟王「圧倒的な殺意。そして覚悟。ここまでの計画性は、初めてでは中々できない」

巌窟王「流石は超高校級と言ったところか?」

最原「……モノクマの言うおしおきは、処刑だ。もしも真相を突きつけたら……!」

最原「そんなこと僕には、とてもできない」

巌窟王「……」

巌窟王「真相を突き止めなければ、ヤツの思いを踏みにじることになるとしてもか?」

最原「……」

巌窟王「……最原。お前はもう少し、前を見るべきだな」

巌窟王「自分の都合のいい方向に考える、という意味でも」

最原「僕は……!」


モノクマ『えー! ではでは! そろそろ始めちゃっていいっすかー?』


巌窟王「む?」

最原「あ、あれ。モノクマ?」

最原「……あっ! いない! いつの間にか消えてる!」

モノクマ『みなさんお待ちかね! 学級裁判の時間ですよーーーッ!』




巌窟王「……待て。しかして希望せよ、だ」

最原「!」

巌窟王「もしもお前が真相に辿り着いたそのときには、我が恩讐の炎を目の当たりにすることになるだろう」

巌窟王「その結果なにが起こるかは……お楽しみだな?」ギンッ

最原「……」

最原「信じるよ。巌窟王さん」

巌窟王「任せろ。と言っても、結局のところはアンジー次第だが?」

87: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/05(木) 19:19:31.44 ID:8GRVlwN60
モノクマ『それではみなさん! 中庭にある赤い扉へとお集まりください!』

モノクマ『裁判場が待ってるよ……うぷぷぷぷ』

巌窟王「さて。ヤツが呼んでいる。お望み通り姿を現して……」

巌窟王「……」

巌窟王「先に行っていろ、最原。俺は地下に用がある」

最原「え」

巌窟王「そんなに時間はかからない。早く行け」

最原「う、うん」スタスタ

巌窟王(誰もいない内に写真術の本を改めて回収するか)スタスタ

89: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/05(木) 19:25:06.38 ID:8GRVlwN60
図書室

巌窟王「さて。改めて写真術の本を」

王馬「あっ」

巌窟王「む? 王馬? そこで何をして……」

モノクマでもわかる写真術「」メラメラメラ

巌窟王「……」

王馬「聞いてくれ巌窟王ちゃん! ちょっとしたお茶目のつもりだったんだ!」

王馬「巌窟王ちゃんがここに帰ってきたときに、この本が燃えてたらどんな顔するかなーって思っただけなんだ!」

王馬「ギチギチに詰まった本棚の中でこの本だけが不自然に中途半端に引き出された状態になってたからもしかしてって思って!」

王馬「その反応を見ると、やっぱり巌窟王ちゃんはこの本が欲しかったんだね! いやあ最後の最後に捜査に協力できて俺、満足!」シャキーンッ

巌窟王「うぐおうあああああああああああああッ!」orz



ショックのあまりしばらく立てなかった

90: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/05(木) 19:34:20.67 ID:8GRVlwN60
十分後
赤い扉の向こう側

巌窟王「……」ズーン

赤松「巌窟王さんの顔が死んでない……?」

王馬「一体何があったんだろうねー」ケラケラ

アンジー「神様ー。神様ー。元気出そうー」ナデナデ

最原(ひたすらアンジーさんに背中を撫でられる巌窟王さん……悪いけどなんか笑えて来るな……)

最原(……)

最原「本当に……この中に犯人が……」

最原(いや、いるんだよな。僕はもうそれを知ってる)

最原(……前を向け、か。巌窟王さん、僕は……!)

モノクマ「それじゃあ! 裁判場に案内するよー! エレベーターに乗ってー!」

最原(覚悟を決めなければならない。そうでなければ僕たちは……ここで終わる……!)

92: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 05:33:11.06 ID:/vbeFqfC0
チーンッ

真宮寺「凄まじく深いところに裁判場を作ってるんだネ」

夢野「トイレはどこじゃ?」

茶柱「あっちに見えますね。一緒に行きましょうか?」

モノクマ「みんなー! 待ってたよー! じゃあ巌窟王さん以外の全員は自分の名前の書かれた席についてー!」

巌窟王「予測できていたことではあったが、俺の席はないのか」

モノクマ「仕方がないからモノクマーズを組体操させて即席の椅子作ったからそっち座っていいよ」

モノクマ「ずっと練習していたんだ……! ボクの息子たちを褒めておくれよ!」

モノクマー椅子「……」プルプル

巌窟王「……」

巌窟王「いいセンスだッ!」ギンッ!

最原「褒めるのド下手だね」

93: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 05:44:03.18 ID:/vbeFqfC0
最原(……巌窟王さん……)

最原(事故だったとはいえ、一方的に呼んでしまった僕たちに対して文句を言うでもなく、ずっと付き合ってくれていた大人)

最原(その巌窟王さんを、あんな方法で殺した人が……!)




最原(この中に、いる……!)

94: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 05:55:37.41 ID:/vbeFqfC0
学級裁判 開廷!

モノクマ「まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう!」

モノクマ「学級裁判では、誰が犯人かを議論し、その結果はオマエラの投票により決定されます」

モノクマ「正しいクロを指摘できればクロだけがおしおきですが、もし間違った人物をクロとしてしまった場合は……」

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、生き残ったクロのみに晴れて卒業の権利が与えられます!」

モノクマ「……ただし、巌窟王さんの処理をどうするかまでは、まだ考えてないんだよね」

モノクマ「投票権も用意してないしなー」

巌窟王「構わん。どうせ俺はアンジーのサーヴァントだ。彼女の意思に寄り添おう」

モノクマ「あ、じゃあアンジーさんの投票のみ『二票分』としてカウントするから、よろしくね!」

百田「ちょっと待て! さらっと決められたが、その処理はかなり重要じゃねーか!?」ガビーンッ!

王馬「万が一、アンジーちゃんが犯人だった場合は、二人分の票で裁判の結果がひっくり返る場合もあるよね?」

巌窟王「仮にそうだったとしても、重要な決定において俺を動かすものは原則としてアンジーの意思のみだ」

巌窟王「少なくとも、この空間においてはな」

赤松「そこまで言うってことは、巌窟王さんはアンジーさんを信じてるってことだよね」

赤松「……容疑者から外していいのかな?」

95: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 06:13:41.45 ID:/vbeFqfC0
春川「その点に関しては後で話せば? 議論を進めないと何とも言えないでしょ」

東条「そうね。ひとまず被害者である巌窟王さんの、事件前の行動から振り返ってみましょう」

東条「これは巌窟王さん本人に聞けばわかるから、普通の殺人事件よりは遥かに早く終わるはずよ」

巌窟王「その点に関し、俺から最初に言うことがある」

巌窟王「俺はお前たちの議論に本格的に参加するつもりは一切ない」

星「なに?」ピクッ

巌窟王「これはお前たちの議論であり、戦いだ。俺は俺の目的のために動く」

巌窟王「気まぐれに口を挟むことはあるかもしれんが、それだけだ」

天海「何のつもりっすか、巌窟王さん。被害者が生きている殺人事件なんて簡単だ、ってこっちは楽観してたんすけど」

巌窟王「タイムリミットの話を聞いたとき、俺は思っていた。お前たちは共に戦うに足る相手なのか、と」

巌窟王「アンジーに関しては、いい。俺のマスターだ。それ以外の選択肢など元から与えられていない」

巌窟王「ではお前たちは? 俺の力を貸すメリット……最低限でも足手纏いにならないだけの器はあるのか」

獄原「それは……!」

茶柱「確かに、転子たちは巌窟王さんと比べたら遥かに非力です」

茶柱「いえ、それどころかモノクマにすら負けているからこそ、コロシアイから抜け出すことができていないわけですしね……」

巌窟王「だから見極める必要があるのだ」

巌窟王「足掻いて見せろ。真相に辿り着け。その結果をもって、俺はお前たちを測ろう」

百田「へっ。なんてヤツだよ。こんな状況に陥ってまで俺たちを試そうってわけか」

百田「……いいぜ! 余裕ぶっこいたテメェに吠え面かかせてやる!」ニカッ

96: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 06:29:55.36 ID:/vbeFqfC0
赤松「事件直前の巌窟王さんの行動……」

赤松「首謀者の確保計画を立てていた最原くんは、階段を下りる巌窟王さんと鉢合わせしたんだよね?」

最原「うん。そのときには確か、百田くんたち……作戦会議に集まった七人の生徒がゲームルームに固まっていたんだ」

最原「僕は計画が誰かに漏れる可能性を恐れて、早々に巌窟王さんと別れて赤松さんのいる上の階の教室へ戻った」

最原「その後の巌窟王さんの行動は、隠しカメラを見る限りでは……」

最原「多分、すぐに図書室に向かったんだろうね。なんでかはまだわからないけど」

夢野「んあー……なんかキナ臭いのう。赤松から聞いたが、図書室には隠し扉があったんじゃろ?」

夢野「巌窟王が何故、その図書室に向かったのか。ウチにはどうも引っかかる」

茶柱「ハッ! わかりました! 実は巌窟王さんは首謀者で、赤松さんたちの予測通り、あの扉に入るために図書室に向かったのでは!?」

最原「それは違う、と言える根拠があるよ。モノクマが現像した写真を見てほしいんだけどさ」

最原「……ほら。あの本棚が開いて、隠し扉が露出したのは間違いないんだけど」

最原「そのときの巌窟王さんは本棚に背を向けてるよね」

茶柱「それが?」

春川「隠し扉の本棚を動かすには、当然本棚を直接いじる必要がある」

春川「それにしては巌窟王と本棚の位置関係がおかしい……ってことでしょ」

最原「それに、このときの巌窟王さんの顔を見て欲しいんだけど……どう見ても、動いた本棚に対して驚いてるよね」

白銀「驚いてる演技、とかじゃないの?」

真宮寺「『隠しカメラ』なんだヨ? どこに向かって演技するんだい?」

白銀「あ、そっか。カメラがしかけられているって発想に至る方がそもそも無理なんだ」

97: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 06:39:36.09 ID:/vbeFqfC0
キーボ「いえ。ちょっと待ってください。だとしたら猶更おかしいでしょう」

キーボ「巌窟王さんが一切本棚に触っていないのなら、何故本棚が勝手に動いたんですか?」

最原「……」

最原「首謀者が内側から開けた……そうは考えられないかな?」

赤松「えっ? そ、それって……!」

最原「僕たちが隠しカメラをセットしても無駄だった、ってことになるかな」

最原「だってもう、アレが機能しはじめたときには首謀者は中にいたんだからね」

赤松「……」

巌窟王「ふむ。ここから先は当事者ではないお前たちに解け、という方が無理な話だから補足だ」

巌窟王「本棚は確かに勝手に開いたが、その向こうにある扉は開かなかったぞ」

巌窟王「少なくとも、俺が目にした範囲では、な。開けられたのは本棚の部分のみだ」

最原「あ、じゃあつまり今の推理って……」

百田「正解ってことで間違いなさそうだな」

巌窟王「クハハ」

98: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 06:50:51.61 ID:/vbeFqfC0
天海「何故本棚が開いたのか。その点に関して俺に心当たりがあるっすけど、ひとまずそれは置いといて」

天海「事件直前の巌窟王さんの行動を最後まで推測してみましょうか」

天海「隠しカメラの写真を見る限り、巌窟王さんは何故か隠しカメラの方に嬉々として寄って行ってます」

天海「これは巌窟王さんが頭をカチ割られて倒れていた位置とほぼ一致する……で、いいんすよね? 第一発見者の二人とも」

最原「うん。それで間違いないよ」

天海「そこから先の写真は、少なくとも隠し扉に向いているカメラには、ない」

天海「何が起こったのかは不明っすけど、この後で巌窟王さんは頭を砲丸で叩かれて、この学級裁判が始まった」

真宮寺「犯人が初回特典を蹴ったことによって、ネ」

真宮寺「……不可解だネ。今回の事件は謎が多すぎる。初回特典狙いの殺人なら、ただ後ろから不意打ちで襲い掛かるだけで済むのに」

真宮寺「これは明らかに『バレないため』の工作が多く施された殺人事件だヨ。最初から初回特典なんてないものとして考えてたような」

王馬「よっぽど俺たちを殺したかったのかなー? 酷いヤツもいたもんだよ、まったく!」

99: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 06:55:47.67 ID:/vbeFqfC0
赤松「……」

赤松「ねえ。天海くん。さっき心当たりがあるって言ってたけどさ」

赤松「それってもしかして、犯人が首謀者である可能性のこと?」

最原「!」

天海「……鋭いっすね。その通りっすよ」

最原「……」

最原(犯人が首謀者、か)

最原(……だったら、ある意味救われてたんだけど)ハァ


101: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 07:53:40.86 ID:/vbeFqfC0
天海「この写真、そもそも『連射』の設定されてないんすよね。だったら確実に犯行の瞬間が捉えられてるはずっす」

入間「ああ! ダサイ原に渡したカメラには、切った後に三十秒のインターバルがあるからな!」

赤松「え。初耳だよ、それ」

最原「あれ? 言ってなかったっけ……?」

赤松「……最原くんって大事なところで抜けてるよね」

天海「なるほど。入間さんの証言を得て、なお確信したっす」

天海「犯人は間違いなく、このコロシアイの首謀者だとね」ズギャァァァンッ!

巌窟王「ほう……? 根拠を聞こうか」

天海「お言葉に甘えて」

天海「この本棚に近づく巌窟王さんの写真をよく見て欲しいんすけど……」

天海「不自然に明るくないっすか?」

天海「ほら。開きっぱなしの本棚に、巌窟王さんの影までできているっす」

アンジー「あ。本当だ。なんか光源がおかしいねー。これじゃあまるで、神様が向かっている本棚が光っているような……」

天海「実際間違いなく光ってたんすよ」

天海「……巌窟王さんが本棚に向かった理由がまさにこれっす」

102: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 08:01:06.29 ID:/vbeFqfC0
天海「赤松さん。隠しカメラがフラッシュなんて焚いたりしたらカメラの意味がなくなるっすよね」

天海「つまり、このカメラはフラッシュが焚かれない設定になっていたはずっす」

赤松「う、うん。間違いなく切ったはずだよ。最原くんに言われたもん」

天海「それにも関わらず本棚は……いや、カメラはフラッシュを焚いた」

天海「ということはつまり、カメラの方に何らかの仕掛けがされていたってことっす」

天海「そうっすよね! 入間さん!」ズガァァァンッ!

入間「……」

入間「はい?」

天海「キミがこのコロシアイの首謀者……俺はそう主張するっす」

入間「えっ」

最原「えっ」

巌窟王「えっ」

モノクマ「えっ」

赤松「えっ」


……


巌窟王&最原(いや、ないだろ……)

103: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 08:10:46.22 ID:/vbeFqfC0
王馬「そっかー。入間ちゃんが犯人だったのかー。よし、じゃあ投票しようか」

王馬「仮に犯人じゃなかったとしても口汚いメス豚女がこの世界から消えるのなら! 俺は喜んで投票するッ!」

入間「え? え? え? 何? なんて?」オロオロ

入間「ま、待て待て待て! 待って! お願い! 何が何だかわけわかんねーって!」アタフタ

天海「言い逃れはできないはずっすよ」

天海「赤松さんは上の階にいて、しかも最原くんとほぼ行動を共にしていたから犯行は不可能」

天海「下の階にいた人たちのアリバイは、俺が証明するっす。ゴン太くんは別室にちょっとだけいたっすけど」

天海「やっぱり犯行がほぼ不可能っすからね。AVルームから出るにはゲームルームを通るしかないんすから」

茶柱「あれ? AVルーム側にも扉があったはずじゃ……」

天海「忘れたんすか? あの扉、建付けが悪かったのか、ほとんど開かなかったんすよ」

茶柱「あ、そうでした。大爆音騒ぎのときに外側からガタガタしてましたね」

最原(……天海くんが吹っ飛んだ表紙に壊れた、あの扉のことかな?)

104: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 08:18:20.36 ID:/vbeFqfC0
天海「さて。入間さんのアリバイは?」

入間「え、えーと俺様は……地下にいたぜ……?」

百田「あ? 何言ってんだ。作戦会議に来なかっただろ、テメェ」

入間「そっちじゃねぇ! 別の地下だ!」

最原(別の? ……って、もしかして)

最原「まさか……裏庭のマンホールの中のこと言ってるの? デスロードに通じてる」

入間「そう! それだ! 巌窟王が外からやってきた魔法陣はそっくりそのまま残ってたからよ!」

入間「それを開けて、俺様たちが向こう側に行けないかどうかの実験をしてたんだ!」

巌窟王「間が悪すぎるぞ発明家……カッドルス級か」

天海「それを証明する人は?」

入間「……」

入間「お空のお星さま?」

天海「決まりっすね」

入間「わーーー! わーーー! 待て! 待ってくれーーー!」アタフタ

105: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 08:29:17.00 ID:/vbeFqfC0
最原「待ってよ天海くん。アリバイがないのと、カメラに細工できたのと……それだけしか根拠がないじゃないか」

赤松「そうだよ! 何より、私たちは巌窟王さんの死体を発見するまで入間さんが地下に降りるのを見てないんだよ?」

王馬「どころか、入間ちゃんは事件の後、間違いなく階段を通って地下に降りてきてたしね」

入間「そ、そうだ! モノクマにコロシアイが起こったって呼ばれて、裏庭から校舎に向かったんだぞ、俺は!」

入間「その途中で、俺様の姿を見たヤツが何人かいたはずだ! そうだろ!?」

星「……ああ。確かに、一人で地下に降りるのにまごついていた入間を、階段脇で見かけたが……」

キーボ「ボクと星くんと王馬くんを見て、微妙にホッとした顔をした後、悪態をついた彼女と合流して地下に向かいましたが……」

天海「ふむ。なるほど……」

入間「どうだチャラチャラ◯◯◯ン野郎! 俺様が犯人ってのは大間違いなんだよ! 今! 発言を撤回したら許してやるぜ! 半殺しで!」

天海「撤回……す……す……しないっす!」バァーンッ!

入間「何故ェ!?」ガビーンッ!

白銀「本当にね。なんで無駄にフェイント入れたのかな」

106: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 08:44:04.65 ID:/vbeFqfC0
天海「……赤松さん。最原くん。地下に向かう通路が一つだけ……どうしてそう言えるんすか?」

天海「俺たちは地下のすべてを捜査することは不可能だったんすよ?」

最原「……そうか。天海くんは、隠し扉の向こうに『地下に繋がる別の通路』の可能性を考えてるんだね?」

天海「まず間違いなくあったはずっすよ。そうでなければどうやって説明するって言うんすか?」

天海「巌窟王さんが本棚をいじくってない以上、あれは間違いなく首謀者が開けたとしか考えられない」

天海「そして、本棚が開けられたのをトリガーにして、カメラがフラッシュを焚き、巌窟王さんの注意を扉から逸らし」

天海「カメラのインターバルを縫って、隠し扉から入間さんが堂々登場!」

天海「巌窟王さんを真後ろから襲撃して、そのまま隠し扉に戻って逃走」

天海「これが事件の真実っす!」

最原(……あるいはそういう真相もあったのかもしれないけど……)

最原(いや、入間さんが首謀者。そういう可能性も確かに消えないんだけど)

最原(今回に限っては、違う。犯人=首謀者という図式は成り立たないんだ)

最原(でもどうやって納得してもらおう。可能性自体は間違いなくあるわけだし……)

最原(最大の証拠品だった砲丸は巌窟王さんが燃やしちゃったしなぁ……)

107: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 09:08:23.45 ID:/vbeFqfC0
アンジー「ねえー美兎ー。一つ聞きたいんだけどさー」

アンジー「終一と楓がカメラの作成を依頼したとき、その用途を聞いたりしたー?」

入間「あっ! そ、そうだ! 聞いてねぇ! この腐れアベックども、そこら辺はボカしてやがったんだ! な!」

赤松「腐れアベック……確かに言ってないけどさ」

天海「首謀者は何らかの方法を使って俺たちを、学園全体を監視しているはずっす」

天海「それで疑いを外すのは無理っすよ」

入間「ひ、ひいいいい……!」ガタガタ

巌窟王「……」

巌窟王「クハハハハハ! それはないぞ天海! 残念だったな!」

天海「えっ?」

巌窟王「実はな。視界の端でチラッと見ただけだが、あの本棚はすぐに閉まったのだ」

巌窟王「おそらく、俺が隠しカメラの仕掛けられた本棚の方に寄る、その写真のすぐ後にな」

最原&赤松「!」

天海「えっ?」

巌窟王「そうだな? 最原。赤松」

巌窟王「お前たちが図書室に入ったとき、既に本棚は『完全に閉まった後』だったのでは?」

最原&赤松「……」

赤松「うん! 確かにしっかり閉まってたよ!」

最原「ピクリともしてなかったよね! うん! うん!」

108: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 09:30:37.79 ID:/vbeFqfC0
茶柱「まあ『隠し扉』ですからね。何もしなければ自動的に閉まるのは道理ですけど」

茶柱「……見たのは『本棚が閉まった瞬間』だけですよね? その向こうの扉から誰かが出てきたのを見逃した可能性は?」

天海「いや……今の巌窟王さんの発言ですべてがひっくり返ったっす」

天海「もしも茶柱さんの言う通りの順序で殺人が行われたとしたらおかしいことが一つどころじゃすまないっすからね」

春川「①巌窟王が隠し扉に背を向ける。②犯人が隠し扉から出てくる。③隠し扉が閉まる。④犯人が巌窟王を殺害……確かにおかしいね」

百田「あ? それで⑤犯人が隠し扉に入って全部お終い、だろ?」

最原「いや。ダメだ。時間が足りなさすぎる。何よりも非効率すぎるんだ」

最原「犯人が首謀者だった場合、③の工程が無駄すぎるんだよ」

春川「①巌窟王が隠し扉に背を向けて②犯人が隠し扉から出てきて③巌窟王を殺害し④犯人は隠し扉に戻り⑤本棚が閉まって終了」

春川「この③と④の間は、本棚と扉は開けっ放しじゃないとおかしいよ。すぐに赤松と最原が来ることすら首謀者はわかってるんだからさ」

春川「⑤の時点で最原か赤松が、本棚が閉まる瞬間とかを見てれば全然不自然じゃなかった」

春川「あるいは、隠し扉以外の方法で逃げる途中の犯人を見かけていれば、ね」

獄原「それはもう逃げた後だったんじゃ……」

天海「それはないっすよ。だって、図書室の二つの出入り口は隠しカメラで撮影されてましたし」

天海「仮にそれを何らかの方法でクリアできたとしても、誰にも目撃されずに出ることは、やっぱり不可能っす」

最原「階段から見て正面の出入り口は僕と赤松さんが使うからノーカウント」

最原「もう一つの方の出入り口も、天海くんがAVルームの扉を壊して廊下に転げ出た時点で、やっぱりアウト」

真宮寺「最原くんと赤松さんが扉から入った後、扉の影に隠れていた犯人が入れ替わり外へ……とかは?」

最原「ないよ。巌窟王さんの死体を見つけた後は混乱しっぱなしだったけどさ。それ以前の見落としはない」

天海「超高校級の探偵の名にかけて、断言できるんすか?」

最原「……」

最原(ここはハッタリを利かせた方がいい、か)

最原「うん。断言するよ」

巌窟王(それでいい)ニヤリ

110: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 11:09:43.26 ID:/vbeFqfC0
最原(……)

最原(それにしても、やっぱりか。僕はともかく赤松さんには、巌窟王さんの嘘に乗る意味がない)

最原(このやり取りで完璧にわかったよ。犯人がわかっている人間は、現時点で砲丸を調べた僕と、巌窟王さんと、犯人自身のみ)




最原(やっぱり、砲丸を投げたのはキミだったんだね。赤松さん)

入間「ば、バカ松~~~! ダサイ原ぁーーー! もっと早くに言えよ、そういうことはよぉーーー!」

赤松「入間さんがそういう人柄でなかったら言ってたかもね……」

入間「ひ、ひでぇ!」ガビーンッ

赤松「よくそこまで自分を棚上げできるなって感心するよ……」

入間「……」

入間「あ、なんか気持ちよくなってきたかも……」ハァハァ

赤松「!?」ガビーンッ

111: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 11:22:45.34 ID:/vbeFqfC0
最原(……どうすればいい。教室の通気口と、図書室の通気口が繋がっていることを指摘できるのは僕だけだ)

最原(そこから砲丸を放り投げれば、あとは自動的に砲丸が転がって、巌窟王さんの頭上に直撃する)

最原(……転がるときの音は、どうにでもできる。そしてそのトリックこそが、彼女を追い詰める最後の証拠を指し示すはずだ)

最原(巌窟王さんは何かをするつもりだ。その計画に僕は乗れるのか……?)

最原(……信じるとは言った。ああ、そうだ。僕は巌窟王さんを信じることは辛うじてできる)

最原(今の僕が信じることができていないのは……紛れもなく僕自身だ……!)

巌窟王「……」

巌窟王(最原は黙ることを選んだか? ……それもいいだろう)

巌窟王(所詮はその程度だった、ということだ。成長性はあるかもしれないが、今は興味を向ける価値がない)

巌窟王(逆に赤松はまだ見どころがあるな。さて……何故自分の首を絞めるようなことを言った?)ニヤリ

巌窟王(このまま入間にすべてを被せる道もあったはずだぞ?)

赤松「……」

112: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 11:33:24.37 ID:/vbeFqfC0
赤松「とにかく、議論を続けてみようよ。そうしたら他の可能性が見えてくるかもしれないから」

天海「……結局、なんで本棚は動いたんすかね? こんなことをしたところで、首謀者に何の得が?」

赤松「……」

東条「そこは後回しにしましょう。現時点では突破口が見えないわ」

東条「他に何か、おかしいことは起こらなかったのかしら?」

夢野「まあ起こったのう。どう考えてもおかしいことが」

アンジー「ゴン太の大爆音ロードショー事件だねー! あれは本当に驚いたよー!」

真宮寺「聞かせてもらえるかな? 僕たちは一つでも情報が欲しいからネ」

獄原「うん! と、言っても本当に意味がわからないんだけど」

獄原「あのね。ゴン太がAVルームに入ったとき、映写機からトレイ、ブルーレイに至るまで全部用意された状態だったんだ」

獄原「電源はついてたし、トレイの上にブルーレイは乗ってたし、そのトレイを親指で押せばすぐにでも自動再生されるような状態でね?」

獄原「リモコンはなかったけど、まあ別にいいかって思って、ゴン太がトレイを親指で押して、映像が再生されたんだけど」

茶柱「……何故か大音量の設定になってたんですよ。お陰で耳が壊れるかと思いました」

アンジー「神った大爆音だったよねー! 音で平衡感覚を崩すって感覚を初めて味わったよー!」

113: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 11:44:07.74 ID:/vbeFqfC0
茶柱「実はその大爆音が響く直前に、天海さんが『ちょっと用事がある』ってゲームルームを出て行ったんですが」

茶柱「天海さん。元は一体何をするつもりだったんですか?」

茶柱「転子が驚いてゲームルームを飛び出して、廊下側からAVルームに入ろうとしたときに鉢合わせしましたけど」

天海「……図書室に行こうとしただけっすよ。兵法書でも置いてあるかと思って。その途中であの大爆音っす」

天海「首謀者が何かしかけてきたのか、と考えて行動を一旦中止して、音源を意識してみたらAVルームからの音だと気づいて……」

天海「で、AVルームのドアを開けようとしたら開かなかったので、急いでゲームルーム側からAVルームに入ろうと引き返したってわけっす」

赤松「私たちが地下に行ったとき、確かに凄い音がしてたよね……」

春川「止めるのに随分と手こずったからね」

春川「電源ボタン、音量操作のツマミ、取り出しのスイッチのすべてが壊されてたから」

百田「電源コードを抜くのにも、機材の後ろのなんかゴチャッとした部分に隠れてる上に、手が届かないほど狭くってよ」

百田「コードを抜くにしても、機材を大胆に動かさないといけないって話になりかけてたよな」

天海「そのゴタゴタの中、俺が茶柱さんに理不尽に殴られて、AVルームと廊下を繋げるドアが派手にぶっ壊れたんす」

天海「痛みに悶絶している内に、最原くんの叫び声が図書室から聞こえてきて……」

赤松「……で、血塗れの天海くんが私たちに合流した、ってことね」

赤松「ビックリしすぎて凄い悲鳴出しちゃったよ……」

天海「その節は本当にすみませんでした……」

114: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 11:51:19.19 ID:/vbeFqfC0
東条「……」

東条「待って。今、聞き逃せない情報が出たのだけど」

獄原「え?」

東条「天海くんはずっとあなたたちと一緒だったわけではなかったの?」

天海「……」

天海「あっ」ダラダラダラ

王馬「あれ。あれあれあれ? どうしたの天海ちゃん。凄い汗だよ?」ニヤニヤ

百田「あ、天海……まさかテメェ……!」

茶柱「天海さんが、犯人だったんですかッ!?」ガビーンッ!

巌窟王(クハハ。それみろ。最原。お前が口を開かないから愉快なことになってきたぞ?)

巌窟王(まあ、すぐに天海の容疑は晴れるだろうがな)

巌窟王(あのドアを開けるだけなら入口の隠しカメラは作動しない上に、砲丸を全力で投げれば俺を殺せるだろうが)

巌窟王(そのとき、隠し扉の本棚が障害物になって、天海が砲丸を投げたとしても俺に届かない……)

巌窟王(……)

巌窟王(あっ)

赤松「え? それは無理じゃない? だって……」

赤松「あっ」

最原「……」

最原「あっ」





三人(本棚は"なかったことになった"んだったーーー!)ガビーンッ!

116: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 12:52:47.32 ID:/vbeFqfC0
天海「は、ははははは……何を根拠に……」アタフタ

天海「そもそも! 俺が図書室に入って巌窟王さんの頭をカチ割ろうとしたら、図書室の中に入らないといけないっすよね!?」

天海「そうなったら図書室の出入り口の隠しカメラが作動して……!」

東条「待って。ドアを開ける必要はあるけど、中に入る必要はないわ」

東条「ドアを開けるだけなら隠しカメラは作動しないはずよ」

天海「いや、それは……!」

東条「そして、砲丸は本来投げるもの。巌窟王さんとあなたの距離が離れていることは大した問題にならないわ」

東条「ついでに、巌窟王さんの頭に砲丸が直撃する前に隠し扉の本棚は閉じている」

東条「これは第一発見者の最原くんと赤松さん、そして被害者である巌窟王さん本人が証言しているわ」ズバァァンッ!

天海「……」

天海「ぬがっは!?」ガビーンッ!

赤松「ま、待って! 天海くんは犯人じゃないよ! ね! 最原くん!」

最原「えっ、それは……!」

最原「……」

赤松「……最原くん?」

117: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 13:03:20.17 ID:/vbeFqfC0
最原(……天海くんを助けることは当然できる。しかも本棚が閉じていたという嘘を撤回せずに)

最原(そして、僕には助ける理由がある。天海くんは僕たちの仲間だからだ)

最原(……でも、僕は……!)

巌窟王「……」

巌窟王「迷うな、最原終一!」

最原「ッ!」

巌窟王「最後まで口を閉ざしていようかと思ったが、事がこう転んだ以上、仕方あるまい」

巌窟王「お前の力は確かに人を不幸にする。それをお前は恐れているのだろう」

巌窟王「だが、それがどうした! 悪のままでも正義は成せるぞ!」

巌窟王「……違う。訂正する。勝たなければ、歩みを止めたら正義になれない!」

最原「……巌窟王さん」

巌窟王「この状況はあまりにもおあつらえ向きだ」

巌窟王「天海を助けることを大義名分にして、真の犯人をお前は指摘できる!」

巌窟王「至極愉快。至極愉悦だろう! 何を迷うことがある!」ギンッ

アンジー「……さっきから何を言っているの? 神様」

百田「わかるように言え、巌窟王!」

巌窟王「いいだろう! つまりこういうことだ!」

巌窟王「真実から目を逸らすな! お前の戦いに手を貸すつもりはないが」

巌窟王「それ以外の部分では、俺がカタをつけてやる!」

最原「……」

最原「……東条さん」

東条「……?」





最原「それは違うぞ!」論破!

118: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 13:17:16.45 ID:/vbeFqfC0
最原「……そもそもの話、巌窟王さんが地下に降りたことを知ってたのは、赤松さんと僕だけだよ」

最原「だって、巌窟王さんと別れたとき、ゲームルームからは誰も出てこなかったからね」

最原「いや、そもそも巌窟王さんが図書室を訪れたこと自体、僕たちには予想のできない『気まぐれ』のようなものだったはずだよ!」

最原「だって! まさかわざわざ巌窟王さんが卒業アルバムのために写真術を習おうとするなんて、誰が予測できるの?」

巌窟王「!?」ガビーンッ

最原「あ、ごめん。秘密にしておきたかった……? 本棚から一つだけ飛び出てたからわかったんだけど……」

巌窟王「振り返るな……ただの致命傷だ……!」ガタガタ

最原「ほ、本当にごめん……」

東条「それすら首謀者なら、監視を通じてわかったかもしれないわ」

最原「仮にわかったとしよう。でも、そんな素振りを天海くんは見せたの?」

最原「僕たちが持ってた防犯ブザーみたいに、本棚に誰かが近づくことを知らせる機械を天海くんは持ってた?」

最原「百歩譲って、タイムリミット寸前に扉に近づく人間を仕留めようと首謀者が考えたとしても」

最原「それなら百田くんの作戦会議に同行しようなんて考えないよ!」

最原「だって、行動が全部バレちゃうんだからさ! 適当な理由つけて断って、さっき天海くんが言ってたような……」

最原「地下に通じる別の入口を経由して、素直に隠し扉から出てきて、こっそり巌窟王さんを仕留めるよ!」

東条「それじゃあ、天海くんは首謀者ではない、ただの殺人を計画した一般生徒だったとしたら?」

最原「猶更ダメだ。本棚が勝手に開くことと、隠しカメラの位置を知らない」

最原「隠しカメラを前提とした計画を立てられないよ」

東条「……なるほど。納得したわ」

119: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 13:27:09.70 ID:/vbeFqfC0
夢野「それ以前に、首謀者は隠し扉の中から本棚を操作した、という話ではなかったのか?」

真宮寺「いや。僕たちは向こう側を調べることができなかったからネ。他に可能性はいくらでもあるヨ」

真宮寺「遠隔操作説。センサー説。中から開けた説……本当にいくらでもネ」

最原「……本棚を動かしたのは間違いなく首謀者だよ。巌窟王さんが本棚を操作してないから」

最原「方法はわからない。真宮寺くんの言う通りだ」

最原「……でも今回はそれを考える必要はないよ」

最原「だって、首謀者と今回の犯人は完全に別人なんだから」

百田「……まさか、最原。お前……!」

キーボ「その口ぶり、犯人がわかったんですか!?」

最原(喉が渇く。唇が裂ける。目の焦点が定まらないし、運動しているわけじゃないのに呼吸が荒くなってきた)

最原(……それでも、もうこのまま慣性に任せて突っ走るしかない。巌窟王さんに背中を押された勢いが消える前に!)

最原「……巌窟王さんは、どうしてそんな大爆音の中、AVルームに顔を出さなかったのかな?」

天海「それは、そのときには既に巌窟王さんが死んでいたからでは?」

最原「違うんだ……そうじゃない。巌窟王さんにとって、その大爆音が『都合がよかった』からだよ」

アンジー「……都合がいい?」

120: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 13:33:56.76 ID:/vbeFqfC0
最原「巌窟王さんは、出来る限り秘密裏に写真術の本を手に入れようとしてた」

最原「だから、あの大爆音騒ぎは都合がよかったんだ。他の生徒たちが全員そっちに向かうからね」

最原「あと、巌窟王さんの用事はつまるところ『本を回収する』。それだけだ。回収した後でゆっくりと顔を出せばいい」

王馬「なるほどねー。そういうことか。本気であの本が欲しかったんだね、巌窟王ちゃん!」ニコニコ

巌窟王「……」

最原「……ねえ。天海くん。フラッシュの件で、無意識に可能性を除外したんだろうけどさ」

最原「そもそも、隠しカメラのフラッシュをONに出来る人間が、もう一人いたよね」

最原「入間さん以外に」

天海「……」

天海「ははは……まさか。だって、その人のアリバイは最原くんが……」

最原「証明できないよ。ずっと目を離さなかったわけじゃないから」

赤松「……ふふっ」

最原「……」

最原「赤松さん。キミがこの事件の犯人だ」

123: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 17:09:56.71 ID:/vbeFqfC0
赤松「……あははっ! そんなのおかしいよ」

赤松「確かに最原くんとずっと一緒にいたわけじゃないけどさ」

赤松「巌窟王さんの死体が発見されるまで、私は地下に行ってないんだよ? それでどうやって巌窟王さんを殺すの?」

最原「凶器が砲丸単体だけじゃなかったとしたらどう?」

赤松「……何のこと?」

最原「あの図書室全体が凶器だった。そう考えられるはずだよ」

入間「図書室全体が凶器だぁ……?」

入間「どういうことだ? 俺様はまさに全身が男子に対して特攻宝具だけどよ」

巌窟王「黙っていろ! 今は最原の見せ場だッ!」ギンッ

入間「ぎひい!」ビクウッ

アンジー(あ、なんか神様がめっちゃワクワクしてる……黙っとこ)

124: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 17:17:38.27 ID:/vbeFqfC0
最原「さっき入間さんのドローンの空撮でわかったことだけど、あの図書室の本棚、僕たちには見えないところが階段状になってたんだ」

最原「そしてその階段の頂上は、図書室の通気口に通じていた」

最原「……図書室の通気口は、教室の通気口に通じてるんだよ。そこから砲丸を投げれば……!」

天海「まさか、巌窟王さんがいる場所まで砲丸が転がっていくっていうんすか?」

最原「うん。そうやって犯人は現場に近づくことなく巌窟王さんを殺害したんだ」

百田「んなバカな! そんな都合よく行くわけねーだろ!」

キーボ「確かに。条件が厳しすぎますね」

キーボ「まず①巌窟王さんが本棚に近づいていること。次に②そのタイミングを見計らって砲丸を投げること。最後に③砲丸の存在が殺害対象にバレないこと」

キーボ「……ざっと上げただけでもかなりの難易度です。砲丸と図書室の二つの凶器だけではどうにも」

最原「なるよ。凶器はまだある」

最原「……まず前提がおかしかったんだけど、犯人は本当に巌窟王さんを殺す気だったのかな?」

百田「あ? 実際巌窟王が死んでたんだから、そうに決まってるんじゃねーのか?」

最原「そうじゃない。僕はそう考えるよ」

最原「この殺人事件のテーマは『殺意の行方』だ。砲丸の先に、本当は誰がいるべきだったのか……」

最原「……突き止めて見せるよ。巌窟王さん」

巌窟王「やってみろ」ニヤァ

125: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 17:27:10.87 ID:/vbeFqfC0
最原「まず第一のファクター。巌窟王さんを本棚に近づける方法だけど」

最原「これは赤松さんの仕掛けた『フラッシュをオフにしていない隠しカメラ』で可能だ」

最原「第二のファクター。そのタイミングを見計らう方法だけど……」

最原「これは赤松さんなら可能だよ。本棚が動いたタイミングで、僕の持ってた防犯ブザーが鳴るようになってたからね」

キーボ「……あれ? でも本棚が動いたのは首謀者が動かしたからで……巌窟王さんの意思とは無関係ですよね?」

最原「そこが問題だよ。『本棚が動くこと』がすべての始まりなのに、巌窟王さんは隠し扉を開ける術がない」

最原「この齟齬の正体は、巌窟王さんが首謀者ではなかったからなんだ」

最原「一体あそこには本当は誰がいるべきだったのか。ここまで来ればもう自明だよね?」

真宮寺「……ああ、そうか! そうか! 赤松さんは『首謀者を殺害したかった』んだネ!」

真宮寺「だからトリックの起点が隠し扉に集中してたんだヨ!」バァーーンッ!

巌窟王「……」ワクワク

モノクマ「あ。ポップコーンとコーラ用意してるけど、いる?」

巌窟王「頂こう!」

巌窟王「美味い!」テーレッテレー!

百田「おい。なんか巌窟王が超エンジョイし始めたぞ」

春川「自分の殺人事件なのに……」

126: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 17:35:45.71 ID:/vbeFqfC0
夢野「なるほどじゃのう。首謀者は監視によって赤松の殺人計画の乗っ取りを思いつき」

夢野「巌窟王が図書室を訪れ、いい感じの位置に来たときに本棚を動かし、赤松の殺人計画を始動させた……」

夢野「んあー……こうなってくると、果たしてクロを赤松として考えていいか微妙ではないか?」

夢野「首謀者が本棚を動かしたりしなければ、赤松はそんなことしなかったはずじゃぞ?」

巌窟王「それに関しては後でモノクマに問い合わせるといい。ゲームの処理がわからなくなったときこそゲームマスターの出番だろう?」ボリボリ

入間「顔が変形するほどポップコーンを食ってやがる……」

アンジー「でも問題はまだ残ってるよねー。第三のファクター、砲丸の存在の隠蔽がまだだよー」ボリボリ

アンジー「砲丸を転がしたとなると、本棚の上の部分からゴロンゴロンと音が出て、うわ何このポップコーン神ってるうっま」ボリボリ

茶柱「いつの間にかアンジーさんも食べてますしッ!」

巌窟王「俺が分けた」

アンジー「神様ありがとー!」

キーボ「ちょっとは空気を読んでくれませんか!?」ガビーンッ!

127: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 17:42:19.24 ID:/vbeFqfC0
獄原「待って。音なら大丈夫だよ。だってそのときはゴン太の大爆音騒ぎの最中だったんだからさ!」

茶柱「それです! ゴン太さんの見ていた映像が偶然、赤松さんの砲丸の音をかき消したんです!」

最原「……偶然? そんなものが存在するとしたら、そのときたまたま図書室を訪れた巌窟王さんだけだよ」

最原「あの大爆音騒ぎに関しても、赤松さんの計画の内だ」

赤松「ふーん」

アンジー「……」

アンジー「喉が渇いてきた……」

巌窟王「コーラもわけてやろう」シュンッ

アンジー「わーい!」

百田「もういい加減エンジョイするのやめろッ!」ガビーンッ!

星「ポップコーンのバター臭がひでぇ……」ゲンナリ

128: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 17:59:34.67 ID:/vbeFqfC0
最原「ちょっと話は逸れるかもしれないんだけど、ひとまずこう仮定してみて?」

最原「赤松さんの手にAVルームの映写機を自由自在に操れる方法があるとする」

最原「次に、赤松さんは首謀者を殺したい。それも一部の隙もなく完璧に」

最原「赤松さんの中の首謀者の行動予測は……最悪なことだけど、僕が言ったことそっくりそのままのはずだ」

最原「『リミット直前に、人目を憚って隠し扉に向かうはず』。これを念頭に置いてトリックを構築したからこそ巌窟王さんへと殺意が向かったんだ」

天海「……」

天海「そうか。そういうことっすね! あの大爆音は砲丸の音を消す物理トリックであると同時に……!」

最原「『人目を憚って図書室に向かっている人間のみを選別する心理トリック』としての意味もあったはずだよ」

最原「そして、僕たちの考えた首謀者のプロファイルと、現実の巌窟王さんの行動の方向が奇しくも重なったから」

最原「……あんなことになったんだ」

王馬「超高校級の探偵である最原ちゃんはともかくとして、天海ちゃんまでそこに気付くなんて」

王馬「もしかしてキミも『人目をはばかる必要のある秘密』の持ち主だったりして……?」

天海「……深読みっすよ」

129: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 18:08:46.77 ID:/vbeFqfC0
赤松「……うーん。本当にそうかな?」

赤松「最原くん、ちょっと考えが飛躍しすぎじゃない?」

最原「え?」

赤松「あのさ。思い出してほしいんだけど、最原くんが教室に戻ってきたときさ」

赤松「……そんな爆音、聞こえて来た?」

最原「……!」

赤松「聞こえてなかったはずだよ。だって私も聞いてないし」

モノクマ「地下の音は地上階へと届かないんだよ。構造上の理由でね!」

モノクマ「どんな大爆音も99.99%吸収する素材がそこかしこに使われてるから!」

星「つまりほぼ完璧な防音ってわけだ。仮に、最原の言う通り赤松の手に映写機の操作方法があったとして、だ」

星「……『地下で映写機が確かに動いている』という確信を得る方法が無ければ、それはトリックを瓦解させる大きな穴になるぜ」

最原「……あるよ。というか、モノクマが今言ったことがそのまま答えだ」

赤松「え?」

最原「音はわずかだけど、漏れる。確かに僕は聞いていない」

最原「でも、キミが聞いていないというのは嘘だろう? 超高校級のピアニスト、赤松楓さん!」

赤松「……!」

130: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 18:11:35.78 ID:/vbeFqfC0
東条「……あら? 夜長さんが消えてるわね?」

春川「お腹いっぱいになったら眠くなったって言って、ほら」

アンジー「すぴー」スヤァ

巌窟王「……(静かにしろ、のポーズ)」

春川「巌窟王の膝の上に座って寝てる」

東条「……」





モノクマー椅子「お、重い……!」プルプル

巌窟王「耐えろ」

132: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 18:49:18.60 ID:/vbeFqfC0
最原「みんながモノクマの現像した写真を受け取りに倉庫に行ったとき、僕は実験してたんだ」

最原「あの大爆音はどの程度、上の階まで響くのか。気になってさ」

最原「……僕も耳は良い方なんだ。かなり時間はかかったけど、ちゃんと聞こえたよ」

最原「下の階から響く、AVルームの大爆音がさ!」

赤松「……」

最原「あと、モノクマの持っていたAVルームの予備のリモコンも操作してみたよ」

最原「直線距離だとそんなに離れていない上に、モノクマが無駄に機能を高性能にしていたからか、教室からでもギリギリ指示が通った」

最原「ゴン太くんがトレイを押して、映写機を起動させたことこそが偶然だったんだよ! 本当は……!」

赤松「私が隠し持っていたリモコンで、AVルームの映写機を操作するはずだった、かな?」

赤松「うーん、それもやっぱり無理がないかな?」

白銀「え? 無理があるって、どこに?」

赤松「あのさ。そもそも犯人が、その発想に至ることができたのかなって」

赤松「普通教室からリモコンの指示が、地下のAVルームに通るなんて思わないよね?」

百田「……た、確かにそうだ。まさかモノクマに聞くわけにもいかねーしな」

百田「だって、今までの前提だと『赤松が殺したがってたのは首謀者』なんだろ?」

百田「モノクマにリモコンの有効範囲を聞くわけにはいかない。なら……!」

最原「赤松さんがリモコンの有効範囲や、そもそも大爆音が教室から聞けるってことを知る機会がない……か」

最原「……僕みたいに実験すればいいだけの話だよ。事件の前にね」

赤松「それ、いつのこと?」

最原「アンジーさんに聞いてみればわかるよ。アンジーさん!」

最原「あれ? 席にいない」

春川「最原。あっちあっち」

最原「……」

最原「寝てる!」ガーンッ

133: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 18:59:18.53 ID:/vbeFqfC0
巌窟王「……アンジー。起きろ。我がマスター、夜長アンジーよ。出番だぞ?」ユサユサ

アンジー「むにゃ……眠いー」ウトウト

最原「え、えーと。アンジーさん。昨日のことを話してほしいんだ」

最原「モノクマと鬼ごっこをしてた、あのときのことをさ」

アンジー「うー……」

アンジー「えっとねー……神様がタバコを欲しがってるってねー……聞いてねー……」ウツラウツラ

アンジー「でねー……モノクマに頼めばもしかしたらくれるかもーって……言われてねー……」ウトウト

アンジー「……」スピー

巌窟王「これだけ聞ければもう充分だろう?」ニヤァ

獄原「聞いた? 言われた?」

キーボ「それって、誰に。まさか……!」

最原「……赤松さん。キミだったりしない? アンジーさんをモノクマに焚きつけたのってさ」

赤松「あー……確かにアンジーさんにそんなことを言った気がするなー……まあ世間話の一環だけどさ」

赤松「で? それがどうかしたの?」ニコニコ

最原「この後、モノクマとアンジーさんは三時間も鬼ごっこしてたんだ」

最原「その三時間があれば、実験はいくらでも可能なはずだよ!」

最原「……どころか、隠し扉とモノクマの因果関係を調べることすら可能かもしれない!」

赤松「アンジーさんにかかりっきりだったモノクマが、実験中に急に私のところに来たら作戦はそもそもアウト」

赤松「もしかしたら隠しカメラの計画も、もっと早い段階でバレていたかもしれない。それを調べる意味も含めた実験」

赤松「……そういうこと?」

134: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 19:06:10.79 ID:/vbeFqfC0
赤松「は、はは……あはははははは!」

赤松「弱い……弱い弱い弱い弱いよ! ピアニッシモより更に弱く!」

赤松「ピアノ・ピアニッシモ級に本当に弱い!」

赤松「全部状況証拠じゃん! 何一つとして物的証拠がないでしょ!?」ゲラゲラゲラ

百田「お、おい。赤松?」

巌窟王「赤松、貴様……!」

巌窟王「アンジーが起きる。もうちょっと静かにしろ……!」

赤松「あ、ごめん」スンッ

茶柱「赤松さんも……大概弱いですね……」

135: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 19:15:00.02 ID:/vbeFqfC0
最原「赤松さん。キミが何を言おうと、もう僕は真実から目を逸らさない」

最原「……まだ僕は僕自身を信じることはできないけど……」

最原「それでも、巌窟王さんを信じることはできる。彼に背中を押された以上は、止まることはできないんだ!」

赤松「……」

赤松「……また巌窟王さん、か……寂しいな」

最原「えっ?」

赤松「いいよ。そこまで言うのなら証拠を出してみて」

赤松「それで決着を付けよう。そして終わりにしよう」

赤松「……全部ね」

最原「……赤松さん、キミは……!」

巌窟王「最原。望み通りにしてやれ」

最原「!」

巌窟王「……それが彼女のためだ」

最原「……うん。わかった」

最原「決着を付ける。この事件に、決定的な終止記号を刻む」

最原「それが僕の戦いだ! 巌窟王さん!」

136: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 19:21:01.88 ID:/vbeFqfC0
赤松「教えて。私が首謀者を殺す計画を立てた、その決定的な証拠って何?」

最原「……リモコンだ」

赤松「……」

獄原「それって、AVルームのリモコンのこと?」

王馬「そうか! 最原ちゃんはそれを、どこか重要な場所で見つけたんだね! 赤松ちゃんの部屋とか!」

王馬「だとしたらそれは重要で、決定的な証拠になるよ! 確かに!」

最原「いや? 見つかってないけど」

王馬「カーッ、ペッ」

百田「急にどうでもいい態度取るなよ! 最後まで聞け!」

最原「見つかってない、っていうのが重要でさ。さっきも言ったけど、赤松さんが犯人の場合はAVルームから大爆音が響かないとダメでしょ?」

最原「だとしたらリモコンは、砲丸を投げたその時点では確実に持ってたはずだ」

最原「その後は?」

東条「……処分するか……または……」

東条「ああ、そう。そういうこと、ね」

茶柱「えっ? 何? なんです?」オタオタ




最原「……すべてが終わるまで、ずっと肌身離さず持ち歩いているか、だ」

137: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 19:29:40.49 ID:/vbeFqfC0
天海「……」

天海「赤松さん。さっきからの態度を見る限り、正直もうまともに反論する気すらなくなってるっすよね?」

天海「……見せてくれるんすよね。バッグの中身」

赤松「……はあ」


バサッ


最原(赤松さんが無造作にバッグを脱ぎ、それをおもむろにひっくり返す)

最原(何度か上下に振った後、それはゴロリと外へ出てきた)


ゴトンッ


獄原「……ッ!」

真宮寺「これが?」

獄原「うん……ゴン太は何回かAVルームで虫さんの映像を見てたから……間違いないよ……!」

獄原「AVルームの……リモコンだ……!」

138: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 19:38:31.13 ID:/vbeFqfC0
巌窟王「……これで終わり、のようだな」

最原「うん。最後に僕が事件のすべてを振り返って……全部を明らかにして……」

最原「そうしたら、後は全部巌窟王さんに任せるよ」

最原「……そこから先は、巌窟王さんの戦いだ」

巌窟王「いいだろう。少なくとも、お前たちは合格だ」

巌窟王「……有終の美を飾れ。最原。それが勝者の権利だろう」

最原「うん」

赤松「……」

赤松(気に入らない。でも……仕方ない、か)ハァ

140: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 20:53:14.17 ID:/vbeFqfC0
クライマックス推理

最原「まずは事件を最初から振り返ってみよう」

最原「モノクマからの動機としてタイムリミットを告げられた僕と『ある人物』は、首謀者を確保するために一計を案じることにした」

最原「そのある人物こそが、今回の事件の犯人だよ」

最原「まず図書室に隠しカメラをいくつかセット。そのとき、隠し扉に向いたカメラのみは犯人がセットしたんだけど」

最原「そのとき、あえてカメラのフラッシュが焚かれるようにしたんだ」

最原「後で首謀者を隠しカメラに誘引するためにね」

最原「でも首謀者確保計画は、どの時点でかはわからないけど結果的に失敗することになる」

最原「首謀者が犯人の殺人計画に気付き、それを利用してコロシアイを発生させるように仕向けたからね」

141: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 21:01:01.87 ID:/vbeFqfC0
最原「次に、犯人は僕と別れた後、モノクマの気を引き付けて、更に殺人計画の精度を上げることにした」

最原「まずアンジーさんをモノクマに焚きつけて、その注意を逸らした後で……」

最原「地下のAVルームを使った実験を開始した」

最原「そのときにリモコンの有効範囲と、大爆音なら教室へと微かに音が届くことに気付き……」

最原「AVルームの機械一式に工作を仕掛けた後で、実験を終了したんだ」

最原「多分この時点で犯人は『首謀者は何かと理由を付けて、多くの人間を巻き込んで地下に行き、隙を見つけて隠し扉に行く』と想定してたんだろうね」

最原「そうでなかったら、こんな心理トリックは思いつかない」

最原「『地下に多数の人間が集まっていることが前提になった心理トリック』だからね」

最原「さて……ここから先は、犯人以外にも二人の人間の思惑が複雑に絡み合うことになる」

最原「それは首謀者と、被害者である巌窟王さんだ」

142: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 21:09:09.00 ID:/vbeFqfC0
最原「作戦会議に参加するため、七人の生徒が地下に降りて行った後、僕はそれの様子を見に下へ向かった」

最原「その後で降りてきた巌窟王さんとは、僕が鉢合わせしてる」

最原「彼は卒業アルバムの制作のために、写真術の本をこっそり図書室から持ち出そうと考えていたわけだけど……」

最原「このとき、彼は僕たちが予測していた首謀者のプロファイルと同じ特徴、『人目を憚って図書室へと向かう人間』の条件に偶然一致してしまっていた」

最原「これが最大の不幸だよ。その点を首謀者に利用されてしまったんだ」

最原「僕が巌窟王さんと別れて上の階へと戻った後、巌窟王さんは図書室へと入り……」

最原「犯人が起動させる前にゴン太くんが映像を再生させてしまった」

最原「当然、巌窟王さんもその音を聞いていただろうけど、用事が済んでいなかったから後回しにしようと考えたんだろうね」

最原「何より、彼にとって好都合だった。秘密裏に本を持ち出そうと考えていた巌窟王さんは、このとき『ラッキー』だとすら思ったかもしれない」

最原「でも実際のところ、それはすべて自分の身に降りかかる悲劇の序曲にしか過ぎなかった……」

143: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 21:19:44.42 ID:/vbeFqfC0
最原「巌窟王さんが図書室の奥のあたりまで本を探しに来たタイミングで、首謀者は隠し扉の本棚を開放した」

最原「その時点で、僕の手にあった防犯ブザーが鳴り始め、そして巌窟王さんに向かってカメラが切られ、フラッシュ」

最原「事件が大きく動き出すのはそこからだ」

最原「まずカメラの方に向かって……というより偶然そこにあった写真術の本に向かって巌窟王さんが接近」

最原「次に、僕が教室を急いで飛び出した後、犯人は地下から聞こえてくる微かな音を聞き取り、仕込みが既に終わっていることを確認した後……」

最原「教室の通気口に向かって砲丸を投げたんだ」

最原「砲丸は本棚の上に作られた階段を転がり、最終的に巌窟王さんの頭上へと落下」

最原「彼の命を無残に奪った……!」

最原「そして、大爆音騒ぎで右往左往している天海くんたちを後目に、僕たちは図書室へと直行」

最原「そこで事切れた巌窟王さんを目撃したとき、犯人が何を思ったのか……それはまだわからない」

最原「……でも、絶対に答えてもらうよ。最後の最後まで、僕は僕の戦いを貫く必要があるから」

最原「そうでなければ、僕は何も納得できないから……!」

144: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/06(金) 21:22:58.41 ID:/vbeFqfC0
最原「ここがキミの殺意の行方……その果てだ」

最原「超高校級のピアニスト、赤松楓さん!」


バキバキバキッ ガシャァァァァンッ!

COMPLETE!

146: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 07:23:35.93 ID:PPy7RJPH0
天海「それが……真相?」

天海「……いえ。そうとは限らないはずっすよ。やっぱり首謀者が巌窟王さんを殺したのでは?」

天海「例えばそう、赤松さんの殺人計画を利用するつもりなら、首謀者が自分で……!」

最原「ごめん。実はもうその可能性はとっくに消えてたんだ」

巌窟王「天海。お前のその推測はおそらく『首謀者が似たような砲丸を持って背後から襲撃』のようなものだろう」

巌窟王「だがその方法は前提として、赤松の砲丸が俺に直撃せずに外れる必要がある」

巌窟王「既に死んでいる人間を更に殺すことなどできないからな」

天海「……」

巌窟王「赤松が投げた砲丸は間違いなく俺に当たった。外れていない」

巌窟王「砲丸が外れていたとしたら、流石に俺も口を挟んでいるぞ」

最原(それに、巌窟王さんが燃やしちゃったけど、あの砲丸には一つの決定的な証拠が付いてた)

最原(赤松さんのベストと同じ色合いのピンク色の繊維。多分、彼女は替えのベストに砲丸を包んでたんだろうね)

147: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 07:31:55.63 ID:PPy7RJPH0
赤松「あーあ。バレちゃったか」

赤松「……」

赤松「本当に気に入らないなぁ。こんなの私が望んでた最良の結末とはかけ離れてる」

茶柱「赤松……さん?」

巌窟王「見事なトリックだったぞ、赤松」

巌窟王「図書室全体に本で作った階段を仕込んだことではない」

巌窟王「図書室に一切足を踏み入れずに殺人を犯したことでもない」

巌窟王「お前のトリックの一番のキモは、あの大爆音を利用した物理、心理両用トリック」

巌窟王「……ククク。殺人の一番厄介な性質を教えてやろう」

巌窟王「人はな。人を殺すとどうしても自慢したくなるのだ。例えそれで不利に陥ろうとな」

巌窟王「一応言っておくが、最原が教室から大爆音を聞けたのは『探偵だったから』だ」

巌窟王「それを犯行に転用しようと思ってもできん」

巌窟王「……ピアニストたる優秀な聴覚を持っているお前でなければ、あのトリックは成立しえないのだよ」

赤松「……被害者が犯人を褒めるってどうなの」

148: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 07:45:10.17 ID:PPy7RJPH0
モノクマ「議論の結果が出たようなら、投票タイムに行っちゃってもいいっすか!?」

赤松「そうだね。これ以上話すことは特にはないし」

最原「いや。まだあるはずだよ」

最原「……なんで初回特典を蹴ったの?」

赤松「……」

最原「罪悪感……なんておかしいよね。だってあのときモノクマ以外の全員は巌窟王さんが死んでないことに気付いてたんだ」

巌窟王「我が宝具の力が多少なりとも働いていたのかもしれんな。情報隠蔽、偽情報の開示など、その効果は多岐に渡る」

巌窟王「だが生徒一同にその力は向いていないぞ? よもや気付かなかったなどと言わないだろうな?」

赤松「……私もさ。ちょっとは役に立ちたかったんだ。巌窟王さんみたいに」

最原「えっ。それって……」

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰なのか」

モノクマ「その結果は、正解なのか不正解なのかーーーッ!」

モノクマ「さあ! どうなんだーーー!?」

149: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 07:52:44.08 ID:PPy7RJPH0
赤松楓:十七票

モノクマ「だーいせーいかーーーいっ! 巌窟王さんを殺した今回の事件の犯人は……」

モノクマ「超高校級のピアニスト、赤松楓さんだったのでしたーーーッ!」

百田「くっ……なんでだよ……!」

百田「首謀者を殺したかったっていうのはわかった。実際、俺たちもそのせいで随分苦しめられてるけどよ」

百田「テメェをそこまで駆り立てたものは、一体なんだったんだ?」

王馬「巌窟王ちゃんと最原ちゃんはずっと『殺意』って呼んでたものの正体って、要は『計画性』のことだよね?」

王馬「まあ確かに、相当な殺意に裏打ちされた集中力がないと、あそこまではできなかっただろうけどさ」

王馬「その殺意の源泉がなんだったのか。俺もちょーっと興味あるかな!」

白銀「……赤松さん。答えてよ。じゃないと私たち、何も納得できない……!」

赤松「……」

赤松「ずっと気に入らなかったんだ。急に学園にやってきて、デスロードをあっさり攻略されたときから」

最原「……!」

150: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 08:06:46.81 ID:PPy7RJPH0
赤松「巌窟王さんはさ、凄いよね。本当に凄い」

赤松「本当に凄すぎてさ……私、バカなこと考えちゃったんだ」

赤松「『頑張ってきたことを否定された』ってさ」

春川「実際そうでしょ。私たちの頑張りなんて巌窟王の小さじ一杯分の苦労にも満たない」

春川「人間とはほとんど違う存在相手なんだからさ」

赤松「私はそこまで割り切れなくってさ……だから最原くんの計画を持ち掛けられたとき、思ったんだよ」

赤松「私にだって、できることがあるって」

最原「……だから、あんな計画を?」

真宮寺「嫉妬心、ってこと? まあ、わかるけどネ。あの時点までは赤松さんは僕たちの中心だったから」

真宮寺「その立場が突然揺らいだとしたら……多少は動揺するヨ。それは」

巌窟王「すべては俺のせいだ、とでも言うつもりか?」

巌窟王「クハハハハハハ! これは滑稽だな! コロシアイの渦中において、聖女のごとき清らかさを持っていた乙女が!」

巌窟王「よりによって俺の恩讐の炎によって心を、身を焦がされていたというのだから!」

巌窟王「これは傑作だ! なんという悲劇だ! 誰も彼もがお前に同情するだろうよ!」

百田「わかるように言え! 巌窟王!」

巌窟王「ごめんなさい!」ギンッ

茶柱「そ、それだけェ!?」ガビーンッ!

夢野「思わせぶりな長文が一言に纏まってしまったぞ」

白銀「台無しだよ。いろんな情緒が」

152: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 08:18:29.71 ID:PPy7RJPH0
星「……本当にそれだけか?」

最原「え?」

星「巌窟王がカメラのフラッシュに誘引された……本当にそれだけだったのかと思ってよ」

星「そこには巌窟王の欲しかったものが間違いなくあった。だからこそトリックが上手く行ったんだぜ?」

最原「……星くん。まさか写真術の本を仕込んだのも赤松さんだって言うつもり?」

星「……可能性はあるのか。ないのか」

最原「ないよ。『トリックの起点が隠し扉』って点と『僕たちの味方でいるために卒業アルバムを作る巌窟王さん』の像が噛み合わない」

最原「あの本は正真正銘の偶然だったはずだ」

モノクマ「……」

最原「……そうだよね、赤松さん」

赤松「流石にそこまで計算できないし……」

赤松「それにさ。私は別に、巌窟王さんを殺したかったわけじゃなくって」

赤松「巌窟王さんを含んだ全員で外に出てさ……」

赤松「みんなで笑いあってさ。それを遠くから眺めて、自分のやったことを永遠に秘密にしてさ……」

赤松「その秘密があれば、みんなとだけじゃなくって、巌窟王さんとも対等に仲良くなれるって思って……」

巌窟王「なんだ。嫉妬心ではないぞ、それは」

赤松「えっ」

巌窟王「誰かに憧れ、誰かに近づこうとするその心は嫉妬心ではなく向上心だ」

巌窟王「……失望したぞ。思ったよりは醜くなかったな、赤松」

赤松「……」

赤松「ははっ。あーあ……なんかもう、完全に負けたって気分だな……」

153: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 08:30:09.97 ID:PPy7RJPH0
モノクマ「はいはい! 話も一段落したところで、そろそろやっちゃいましょうか!」

モノクマ「わくわくドキドキのおしおきたーいむ、をね!」

獄原「えっ。お、おしおきって……!」

白銀「あ、赤松さんを処刑するつもり!? じょ、冗談だよね! だって!」

モノクマ「巌窟王さんが生きてる? 扉を開けたのが赤松さんではなく別人?」

モノクマ「いやいや……そんなの言い訳にならないよ!」

モノクマ「だって、巌窟王さんは『間違いなく死亡した』し、実行犯も間違いなく赤松さんだしね!」

モノクマ「過失致死も、この才囚学園では立派な殺人だとカウントするんだ」

モノクマ「なによりも……殺意自体は間違いなく本物だったしね」

百田「やらせるわけねーだろ! 赤松は俺たちが守る!」

茶柱「そうです! 彼女がいなければ、結局転子たちはタイムリミットで死んでいたはずです!」

茶柱「どうせ死んだ身! ならばこの命、惜しくはありません! いや惜しいですけど!」

獄原「ゴン太は紳士を目指しているんだ……ここで立ち上がらなきゃ、紳士じゃない!」

赤松「み、みんな! やめて! そんなことをしてほしかったわけじゃ……!」

巌窟王「ではどういうつもりだったのだ?」

赤松「えっ?」

巌窟王「今まで散々うじうじ言っていたが、結局のところお前に嫉妬心などなかった」

巌窟王「あったのは純粋な殺意。そして、コイツらを守りたいと思う献身だけだ」

巌窟王「俺にはそうとしか見えなかったぞ?」

最原「……うん。なんか、赤松さん。無理して悪ぶってる感じだった!」

最原「だったらもう、僕たちは迷わないよ」

赤松「み、みんな……!」

巌窟王「……クハハ。俺の見たかったものとはズレがあるが、まあいいだろう」

巌窟王「合格だ。才囚学園生徒一同! 故に!」

巌窟王「……下がれ。後はお前たちの得手ではない」

百田「何っ!?」

巌窟王「……」





巌窟王「殺してみろ、モノクマ。できるものならな」


155: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:00:36.44 ID:PPy7RJPH0
三十秒後

エグイサルレッド「そいっと」バシッ

巌窟王「うわああああああ……」ヒューッ


ドカァァァンッ!


最原「が、巌窟王さーーーんッ!?」

百田「弱ぇーーーッ! あっさり吹っ飛んじまいやがった!」

王馬「まあ現実なんてこんなもんだよね」

モノクマ「それでは、張り切って参りましょう! おしおきターイム!」

赤松「ねえみんな。今回はこんな結果になっちゃったけどさ」

赤松「多分、巌窟王さんがいれば大丈夫だよ」

最原「赤松……さん……!」

赤松「信じてるよ。最原くん。最期くらい帽子を取ってる姿、見たかったな」


GAME OVER

アカマツさんがクロに決まりました。
おしおきを開始します。

156: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:07:55.67 ID:PPy7RJPH0
ガラガラッ

巌窟王「ぬうううう……! しまった! アンジーを起こすのを忘れた!」バッ

最原「あ、あれっ!? 傷一つない!」

巌窟王「本来サーヴァントに対して神秘性の薄い物理世界の攻撃は効きが薄い!」

巌窟王「そんなことよりアンジーを起こせ!」

巌窟王「そっとな!」ギンッ

百田「すぐ叩き起こすに決まってんだろッ!」ガビーンッ!

茶柱「起きてえええええ! お願い、アンジーさん起きてえええええ!」ガクガク

アンジー「んー……」パチリッ

アンジー「あ、転子ー。ぼんじゅーる」

茶柱「ぼんじゅーる。じゃないですよッ! なんでフランス語!?」

巌窟王「アンジー! 練習の成果をここで試すぞ。ありったけの魔力をよこせ!」

アンジー「いいよー!」

アンジー「……」

アンジー「……渡し方がわからないから、勝手に持ってっていいよー!」キラキラキラ

真宮寺「これダメじゃないかな」

春川「ダメでしょ」

百田「あんまりネガティブなこと言うなって! 俺も不安になってきちゃうだろッ!」

157: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:14:12.96 ID:PPy7RJPH0
ボォゥッ!

巌窟王「……ふむ……悪くないな」

最原「……あれ。なんかいつもより炎の出力が高いような……」

巌窟王「俺自身も驚いているが、意外とアンジーとの特訓に意味があったようだな」

最原「やっぱり薄々無意味なんじゃないかって思ってたんだね……」

百田「頼む! 巌窟王! 赤松を助けてくれ!」

茶柱「転子たちが助かったのも、全部彼女のお陰なんです! だから……!」

巌窟王「黙っていろ。そして目を離すな」

巌窟王「お前たちに、おおよそこの世のモノとは思えない、恩讐の炎の輝きを見せてやる!」ギンッ

158: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:20:28.98 ID:PPy7RJPH0
ねこふんじゃった
超高校級のピアニスト 赤松楓処刑執行

赤松「う、あ……っ!」

赤松(く、苦しい……息が……!)

モノクマ「ラストスパートォ!」ランラン

赤松(みんな……!)




ドカァァァンッ!


巌窟王「……来たぞ。モノクマ」

モノクマ「……」

巌窟王「その女を返せ。俺が連れて行く」

モノクマ「懲りないなぁ、キミも」

159: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:28:44.80 ID:PPy7RJPH0
モノクマ「モノキッド。やっちゃいなさい」

エグイサルブルー「ヘルイェーーーッ! フランス野郎のスムージーを作ってやるぜーー!」ガシャーンッ

モノクマ「……それ以上踏み込んだらエグイサルにうっかり踏みつぶされちゃうかもよ?」

モノクマ「わかったらさっさと後ろに下がって」

ザッ

巌窟王「何か言ったか?」

モノクマ「もういいや。やっちゃって」

エグイサルブルー「内臓を歯磨き粉のチューブみたいに捻り出してやるぜーーーッ!」ウイーーーンッ!

ガシッ

エグイサルブルー「……え。あれ。腕、片手で止められて……あれっ?」

巌窟王「邪魔だ」


ブチィィィィッ!


エグイサルブルー「ええーーーッ!?」

モノクマ「エグイサルの腕が引きちぎられたーーーッ!?」ガビーンッ!

巌窟王「クハハハハハハッ! これがサーヴァントの力だ!」

160: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:37:25.56 ID:PPy7RJPH0
巌窟王「消え失せろ鉄屑! 虎よ――!」

モノクマ「それ壊したら取り返しつかなくなるぞ! アンジーさんの研究教室未実装とか!」

巌窟王「!」ピタリ

巌窟王「……」


ビュンッ


ドカァァァァンッ!


赤松「……! う、げほっげほっ……うえ……?」

巌窟王「迎えに来たぞ赤松。いい様じゃないか」

赤松「巌窟王、さん……?」

モノクマ「に、逃がさないぞ! エグイサル全員出動だ!」

エグイサルs「おー!」ガシャガシャガシャコンッ!

巌窟王「ふん。何匹揃おうがザコはザコだ……」

巌窟王(……いや、下手に壊して、それを口実にアンジーの研究教室の実装が遅れたり、なかったことになったりしたら面倒だな)

巌窟王「ちィっ。面倒な……!」

161: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:41:22.87 ID:PPy7RJPH0
巌窟王(思ったよりまずいか? さっきの巨大ロボの腕を止めて引きちぎるコケ脅しの演出のせいで魔力は既に枯渇気味だ)

巌窟王(これを一体も壊さずに包囲網を突破するのは……)

エグイサルレッド「あれ? なにか、凄く困ってない?」

エグイサルピンク「チャンスよ! このままマグロの叩きにしちゃいましょ!」

エグイサルイエロー「モノキッドみたいな醜態を晒すわけにもいかんしのォ!」

巌窟王(調子に乗り過ぎたか……慎重に行かなければ、な)

162: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:47:55.17 ID:PPy7RJPH0
百田「……巌窟王……赤松……!」

天海「ここで祈るしか、俺たちにできることはないんすか……!」

アンジー「……」

アンジー「……」ギリッ




処刑場

ドクンッ


巌窟王(……ッ! 魔力の供給量が上がった!)

巌窟王(行けるぞ! 腹八分目にも満たないが、これなら!)

巌窟王「赤松! 舌を噛まないように気を付けろ! このまま突破する!」

赤松「えっ?」

巌窟王「宝具、限定解放……」ボォォォッ

エグイサルブルー「うおおおお! お前を潰して名誉挽回だぜーーーッ!」ガシャァァァンッ!

エグイサルレッド「モノキッドー! 死亡フラグバリバリだよーっ!」

巌窟王「虎よ、煌々と燃え盛れ――!」

シュンッ

163: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:53:24.62 ID:PPy7RJPH0
エグイサルブルー「お?」スカッ

エグイサルブルー「あ、あれ? ヤロー、どこ行きやがった!」キョロキョロ

モノクマ「……」

モノクマ(やば……ここちょっと危なさそうだから離れてよう)←巌窟王が何をしたか見えちゃった




エグイサルブルーのコクピット内

モノキッド「どこだ! どこ行きやがった、あのスカシ野郎ーーー!」

巌窟王「どこだろうな?」

赤松「え……ここ、どこ?」キョロキョロ

モノキッド「……」

モノキッド「……ええーーーッ!?」ガビーンッ

巌窟王「さっきダメージを与えた拍子にコクピットに隙間ができていたぞ? そして潜り込んだ」ニヤァ

モノキッド「あ、そ、そうか。それはよかったな」

モノキッド「それじゃあ俺は失礼するぜ! 優先席でなくとも優先的に席を譲る系男子だからなミーは!」

巌窟王「クハ。そんなタマにはとても見えないぞ?」ガシッ

モノキッド「あ」

巌窟王「燃え尽き果てろ。ここがお前の棺桶だ」ボォウッ

164: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 13:58:40.11 ID:PPy7RJPH0
エグイサルブルー「ぐぎゃああああああ!」ボオオオオオッ!

エグイサルレッド「ええーーーッ!?」ガビーンッ

エグイサルイエロー「エグイサルが内側から火ィ吹きよったーーーッ!?」

エグイサルピンク「モノキッド! どうしたのモノキッド! モノキッドーーーッ!」



シュンッ

巌窟王「さて。今のうちに帰るぞ」スタスタ

巌窟王「お前のことを待っている人間がいる」

巌窟王「……短時間で済んでよかったな。人間、十四年も経つと待つことをやめるらしいぞ? 例外もあるが」

赤松「……」

赤松(これが英霊、巌窟王……!)

165: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 14:05:17.06 ID:PPy7RJPH0
裁判場

巌窟王「戻ったぞ」

赤松「あ、み、みんな……!」

百田「赤松……ッ!」

茶柱「赤松さーーーんッ!」ダッ

最原(巌窟王さんが赤松さんを連れて来たとき、その周りに人だかりができるのは当たり前のことだった)

最原(……信じる、とは言った。でもまさか、ここまで上手く行くなんて誰も思っていなかった)

巌窟王「さて。処刑から帰ったお前は、帰りを喜ぶ生徒たちに応える義務がある」

巌窟王「俺はそんなものに連れ添う義理はないがな。至極面倒だ」

巌窟王「さあ。アンジー。帰るぞ。お前もきっと疲れただろう」

アンジー「神様」

巌窟王「なんだ?」

アンジー「祝ってー!」キラキラキラ

巌窟王「生還おめでとう赤松楓!」パァーンッ

天海「変わり身早いっすよ!」ガビーンッ!

東条「しかもそのクラッカー、どこから出したのかしら」

166: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 14:18:32.69 ID:PPy7RJPH0
入間「……本当にすげぇな巌窟王は」

入間「英霊召喚か……魔術ってヤツも案外バカにできねぇ」

入間「……この閉鎖空間も悪かねぇかもな。よし」

入間「ね、ねえ。巌窟王……俺様の研究教室に来てぇ……その凄いカラダ、もっと見たいのお」ハァハァ

巌窟王「気安く近寄るな。邪気を感じるぞ入間」

獄原「うっうっ……ありがとう巌窟王さん……ゴン太……ゴン太は……!」ポロポロ

巌窟王「……」

巌窟王「む? なんだ? いつの間にか俺が囲まれているな?」

巌窟王「赤松を囲え赤松を」

百田「そうは行くかよ! テメェのことも俺たちは祝うぜ!」

白銀「あ、ありがとう巌窟王さん! 凄いよ、本当に凄いよ!」

白銀「巌窟王さんは本当に無敵なんだね!」

真宮寺「ククク……段々と勝算が見えてきたネ」

王馬「よーっし! みんなで巌窟王ちゃんを胴上げだーーー!」

巌窟王「よせ。やめろ。やめるのだ。よせ」


ワーーッショイッ

ドスンッ


王馬「重っ……」

巌窟王「だから言ったのだ……!」ガタガタ

キーボ「巌窟王さんが落下によって予想外のダメージを負ってますね」

巌窟王「どういう仕組みかはわからんが、生徒からの攻撃のみモロに食らうらしい……」

巌窟王「頼むからこれから先、俺のことを殺そうなどとは思ってくれるなよ?」

167: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 14:24:27.13 ID:PPy7RJPH0
モノクマ「へぇ。それはいいことを聞いちゃったな」



才囚学園生徒一同「ッ!」ザワッ

巌窟王「モノクマ。何の用だ?」

モノクマ「何の用だって、酷いなぁ! 処刑を途中で滅茶苦茶にしたのそっちのくせにさ!」

モノクマ「しかも可愛い我が子が殺されちゃったし……およよ」

巌窟王「悲しむ演技はよせ。貴様、真っ先に事態を把握したくせに、避難しかしなかったろう」

モノクマ「だってボクの身が一番大事なんだよ! 子供よりも大事なモノクマより大事なものなんてこの世に存在しないんだ!」

モノクマ「それはさておいて、赤松さんを再度処刑するから、こっちに渡してくれない?」

赤松「……う……!」

最原「やっぱりそういう話になるよね……」

巌窟王「応じる気はないな」

モノクマ「ああ、そう。わかった。仕方ないね」

モノクマ「いいよ。赤松さんは見逃してあげる」

モノクマ「……でも、これで勝ったと思わないでね。オマエラに全員揃った脱出の目なんて万が一にもないし」

モノクマ「何よりも、こんな救出劇は徹頭徹尾無意味なんだからさ」

巌窟王「……負け惜しみにしか聞こえんな」

モノクマ「うぷぷ……せいぜい勝利に酔ってれば? すぐに足元を掬われることになると思うけど」

巌窟王「クハハハハ!」

168: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 14:31:51.10 ID:PPy7RJPH0
最原(こうして第一の学級裁判は終わった……)

最原(確かに、事態は何一つとして好転していない。マイナスだったものがゼロに戻っただけだ)

最原(巌窟王さんの力も、未だに戻らない)

最原(だけど……)

赤松「もう一度信じてみる」

最原「えっ?」

赤松「最原くんを……巌窟王さんを……みんなを……!」

赤松「今度こそ地に足の付いた、私にできるやり方で」

最原「赤松さん……」

巌窟王「それでいい。反省会など外に出た後でやればいいのだ」

巌窟王「モノクマ! 貴様は言った! 全員揃っての脱出の目などありえないと!」

巌窟王「ならば俺のやることは一つだけだ! その傲慢さを必ず圧し折り、叩き潰し、地に引きずり降ろして泥を付け……!」

巌窟王「絶望の淵に叩き込んでやる!」

百田「わかるように言え! 巌窟王!」

巌窟王「つまりこういうことだ! 全員揃って脱出する! それが! この場における俺の理念だ!」

最原「……!」

169: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 14:39:09.68 ID:PPy7RJPH0
巌窟王「……まあ個人的な目標は他にあるが……それはいい。追い追いな」チラッ

アンジー「んー? どしたの神様。なにかアンジーにしてほしいことがあるのかー?」

巌窟王「……やはり一朝一夕ではどうにもなりそうにないな、お前は」ナデナデ

アンジー「にゃははー! くすぐったいよー!」

巌窟王「さて。帰るぞ。特にアンジーは疲れただろうからな。早く休ませたい」

百田「お、そうだな! アンジーも功労者だ! ゆっくり休ませねぇと!」

最原「……ふう」



最原(みんなが巌窟王さんとアンジーさんに続いて外に出ていく)

最原(それについて行こうと歩みを進めたとき)

茶柱「最原さん。少しいいですか?」

最原「ん?」



最原(意外な人物に呼び止められた)

170: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 14:42:27.17 ID:PPy7RJPH0
茶柱「あんまり長くなると怪しまれますので簡潔に」

茶柱「……天海さんはどうして図書室に行こうとしたんでしょうか」

最原「それは、さっき天海くん本人が……」

茶柱「えっとですね。大爆音騒ぎのとき、天海さんは片手に何故かモノパッドを持っていたんですよ」

茶柱「……本当に理由がわからないんですけど、気になって仕方がなくって」

最原「……」

茶柱「……うう。男死と二人きりで話しているだけで寒気がしてきます。それじゃあ転子もこれで」


スタスタスタ


最原(モノパッドを……持ってた?)

最原(校則はあそこに書かれているから生徒なら確かに見ないといけないけど)

最原(そんな頻繁に見なきゃいけない項目なんてないはずなのに……)

最原「……」

最原「後で考えよう」

171: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 14:46:10.74 ID:PPy7RJPH0
謎の場所

??「……まさかあんなガバい計画が上手く行くなんて思わなかったなぁ」

??「ま、いいか。これはこれで面白いし」

??「最後の最後に全部ひっくり返す準備は既に整ってるしね」

??「……うぷぷ……うぷぷぷぷぷ……」

172: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 14:49:48.12 ID:PPy7RJPH0
第一章

私と僕(と俺!)の学級裁判

END


残り人数

十六人+一騎


TO BE CONTINUED



巌窟王のクラッカーを手に入れました!


174: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:00:38.96 ID:PPy7RJPH0
最原(誰一人として死なずに学級裁判とタイムリミットを乗り切った)

最原(そのあまりにも都合の良すぎる結末に、僕たちはつい楽観してしまったのかもしれない)

最原(僕たちは、勘違いをしてしまっていたんだ)

最原(巌窟王さんは希望だけど、僕たちと、この空間に希望はない)

最原(……あの最悪の事件が起こるまで、ずっと忘れていたんだ)


アンジーの私室

巌窟王(さて。そろそろBBに新しい学級日誌を送らねばな……)ガリガリ

巌窟王(後は誤字脱字のチェックを残すのみ。できるだけ早めにしなければ)

巌窟王「……」

巌窟王「ふむ。送信だけでなく受信もできないものか。何か物資でもあれば違うのだが……」

巌窟王「メールだけはしておくか」メルメル

アンジー「……すぴー」スヤァ

第二章
その限りなく地獄に近い天国に光は差すか

176: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:10:51.18 ID:PPy7RJPH0
朝 食堂

東条「本当にいつも通りの食事でいいの? せっかくリミットを乗り切ったのだから、少しくらい豪華にしてもいいと思うのだけど」

赤松「あはは……今更だけど、独断で凶行に及んだことが恥ずかしいしさ……」

赤松「それに、巌窟王さんなら『脱出の目途も立っていないというのに祝杯とは、呑気なものだな』とか笑顔で言いそうだし」

最原「テンションが高いけど字面だけだと完全に嫌味なんだよね、巌窟王さんの言動」

百田「その巌窟王なんだけどよ。今日は食堂に来てねーのか? アンジー」

アンジー「あー! なんかねー! 用事が済んだらすぐ来るから食事の準備だけはしといてくれって言ってたよー!」

東条「用事……? どこかに向かったの?」

アンジー「いや、アンジーの部屋にいるけど」

春川「!」ピクッ

最原(なんでアンジーさんの部屋に……?)

東条「……何なら届けてきましょうか?」

アンジー「あー。そっちの方がいいかもねー。じゃあ頼んだよ斬美ー!」

177: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:18:24.56 ID:PPy7RJPH0
アンジーの私室

BB『え? サーヴァントなのに普通に生徒に殺される?』

BB『いや殺されてる時点で普通じゃないんですけど、サーヴァントなのに普通に攻撃が利くのは確かにおかしいですね』

巌窟王「どうにか調査できないか?」

BB『んー。こっちもこっちで結構忙しいですしねー。旅行サーヴァントのみなさんのサポートとか』

巌窟王「そうか。なら自力でやる。元からそこに期待などしていないさ」

BB『む。なんか嫌味な言い方……』

巌窟王「それとは別に頼みたいことがあるのだが。物資をこちらに転送できないか?」

BB『……その程度なら、まあ。できなくもない、かな?』

BB『片手間にちょっと頑張ってみますね』

巌窟王「頼む」


コンコンッ


巌窟王「……通信を切る。せいぜい頑張るといい。どちらもな」

BB『はーいはいっ。言われなくともー。この手違いの責任くらい取りますってー』

プツンッ


巌窟王「……」ガチャリンコッ

東条「アンジーさんに頼まれて、食事を届けに来たわ」

巌窟王「ふむ。ご苦労なことだな。チップをはずもうか?」

東条「結構よ。食器は後で食堂まで届けてちょうだい。それじゃあ」スタスタ

巌窟王「クハハ。前回はラタトゥイユだったが、さて今日の食事は……」


激辛麻婆豆腐「」ドジャァァァァンッ!


巌窟王「……」

巌窟王「嫌われているのだろうか……」ズーン

178: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:23:13.30 ID:PPy7RJPH0
カルデア

BB「さーてとっ。ひとまず物資の転送のテストをしてみますか。基礎理論の構築はもう終わってるから、後はもう簡単なはずです!」

BB「うーん。まずそこまで大きくなくって手頃な……アレですね。アレ」

BB「アマデウスさーーーん! アレ貸してくださーい!」スタスタ




才囚学園 図書室

天海「……」

天海(確かに、この無力感には耐え難いものがあるっす)

天海(前回の学級裁判では、入間さんを犯人扱いしたり、東条さんに犯人扱いされたり……!)

天海(くそ……! 才能がわからないとは言え、醜態ばかり晒してるっす!)

天海(俺も……俺にも最原くんのような才能があれば……!)

シュンッ

コンッ

天海「いてっ」

天海「……ん? あれ。何かが降ってきた……? なんで?」

天海「……なんすか、これ。仮面……?」

アマデウスの仮面「」バァーーーンッ!

179: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:30:42.57 ID:PPy7RJPH0
昼あたり 中庭

巌窟王「さあ! 訓練の有用性は実証されている! アンジー! 続きをやるぞ!」

アンジー「おー!」

巌窟王「今回は特別ゲストも呼んでいる! 来い! 探偵!」ギンッ

最原「……なんで僕まで……?」

巌窟王「前回の学級裁判において、お前は重要な何かに気付いたようだったからな。その証言を今! ここでしろ!」

最原「え、えーと。わかった」

最原「といってもそんなに重要なことなのかわからないんだけど」

最原「……巌窟王さんが襲撃している途中で、ちょっと手こずってたときさ」

最原「アンジーさんがそれを見て、一瞬だけど確かに歯切りしたんだ」

最原「その瞬間から急に巌窟王さんの動きがよくなったんだけど……」

巌窟王「これだ! これこそが重要なのだアンジー! お前、あのとき何を考えていた?」

アンジー「……」

アンジー「にゃははー! 忘れちゃったよー!」

巌窟王「そうか! 忘れたなら仕方ないな!」ギンッ

巌窟王「……」

巌窟王「最原。推測してみろ」

最原「えっ」

巌窟王「もしもわからないなどと言ったときは……わかるな?」ゴゴゴゴゴ

最原「なんで僕にだけ厳しいの!?」ガビーンッ

180: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:35:13.36 ID:PPy7RJPH0
最原「え、えーと、多分、感情の並みによって魔力の供給量に差が出てるんじゃないかな」

最原「もしもこの推測が当たっていたとしたら、実はアンジーさんはそこまで魔術師として未熟ではないのかも」

巌窟王「ほほう?」

最原「例えばさ。僕たち人間って、脳や声帯に何の異常もなかったとしても、精神の不調で容易く声が出なくなるってことがあるでしょ?」

最原「それと同じように、魔術回路や経験の問題じゃなくって、精神の方の問題でアンジーさんは全力を出せていない……」

最原「その枷があの一瞬だけ外れた。だからこそ巌窟王さんの動きが一瞬だけ劇的に良くなったんだ」

最原「とか……」

巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴ

最原「思ったり、したん、だけど……」ガタガタ

巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

巌窟王「そういうこともあるかもしれんな!」ギンッ

最原(じゃあなんで無駄に威圧したんだよ! 怖いよ!)ガビーンッ!

181: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:45:19.06 ID:PPy7RJPH0
巌窟王「一瞬だけ外れるような枷なら、そこまで重要なものでもあるまい」

巌窟王「気長に訓練しながら、アンジーのことを知っていけばいつかはたどり着けるだろう」ナデナデ

アンジー「にゃははー」

最原(めっちゃ撫でてる……)

巌窟王「さあ! 始めるぞアンジー! そして最原!」

巌窟王「訓練を開始する!」

アンジー「おー!」

最原「ナチュラルに巻き込まれたッ!?」ガビーンッ!



??「ふっ……気長に? ちゃんちゃらおかしいっすね」

??「この空間で、そんな悠長なことを果たして言ってられるんすか?」

巌窟王「何ィ?」

182: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:48:07.87 ID:PPy7RJPH0
??「とーーーうっ!」


シュタッ


最原(草陰から出てきたのは……まあ声の時点でわかってたけど天海くんだった)

天海?「まだっすよ……まだあなたたちはベストを尽くしていないはずっす!」

天海?「さあ! 新兵訓練はもう終わりっす! 俺と一緒に新しい扉を開くとき!」ジャァァァンッ!

巌窟王「……」

アンジー「……」

最原「……」

最原(なんだかよくわからない仮面を付けている……天海くんだった……)

183: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 18:49:18.12 ID:PPy7RJPH0
巌窟王「十七人目の……高校生だと……!?」

アンジー「アンジー以外にも閉じ込められた高校生が……!?」

最原「!?」ガビーンッ!

天海(ふっ。完璧っすね。この仮面の効果は劇的っす)キラーンッ

186: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 19:30:27.48 ID:PPy7RJPH0
最原「え、い、いや。あれどう見ても天っ……」

天海?「そう! 俺こそがこの学園に閉じ込められた十七人目の高校生!」

天海?「キミたちを導くために現れたミステリアスボーイ!」

最原「いやだからキミ、天っ……」

天海?「才能不明! 本名不明! 素顔不明! すべてのミステリアスの生みの親ァァァァァァッッッ!!」

最原「だからキミって絶対に天海っ……!」

アマデウス斎藤「超高校級のミステリアス! アマデウス斎藤! ここに推参!」ドジャァァァンッ!

アマデウス斎藤「イエエエエエエエエエエエエエエエエイッッッ!!」ドカァァァァァンッ!

最原「……」

最原(救いようがないほどダサイーーーッ!)ガビーンッ!

巌窟王「アマデウス斎藤……!」

アンジー「気を付けてー、神様。敵か味方かまだわからないからねー」ゴクリ

最原(一丁前の注意力持ってるのに、なんで気付かないのかなぁ?)

187: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 19:38:50.35 ID:PPy7RJPH0
アマデウス斎藤「この学園は……狂気に満ちているっす!」

アマデウス斎藤「いつ誰が死ぬかわからない緊張感と、一歩間違えれば花開く疑心暗鬼の畑」

アマデウス斎藤「そんな中、いつかわかるはずなんて希望的観測を持つことが、果たして正解なんすかね?」

巌窟王「ふん。いきなり現れて随分な言い草だな」

巌窟王「ならば問おう! アマデウス斎藤とやら! 貴様に一体どんな案があると言うのか!」

アマデウス斎藤「思い出しライトっすよ」

巌窟王「……思い出しライト?」

最原「あれ。アンジーさん。巌窟王さんに言ってなかったの?」

アンジー「だって明らかに神様とは関係ないと思って」

最原「あー……確かにね……」

巌窟王「む?」

アマデウス斎藤「思い出しライトのこと、最初から説明するっすよ」


かくかくしかじかしかくいさいとう

188: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 19:45:45.16 ID:PPy7RJPH0
巌窟王「なるほど。生徒たちは記憶を奪われていた……そういうことか」

アンジー「でも神様には関係ないでしょ? 何も忘れないんだし」

最原「何より、明らかに別の世界から来てるしね。具体的にどこからとかはわからないけど、それだけはわかるよ」

アマデウス斎藤「もしも! 仮に! 他の思い出しライトを俺たちが見つけることができたなら!」

アマデウス斎藤「または! 思い出しライトによらずに記憶を取り戻すことができたなら!」

アマデウス斎藤「それはアンジーさんの中にある、何らかの欠落を補うカギになる可能性が高いっす!」

巌窟王「ふむ……」

最原「でも思い出しライトって、なんかあからさまな宝箱に入ってたし、管理は全部モノクマがやっているんじゃないかな」

最原「探せば見つかるって類のものだとは、とても思えないんだけど」

アマデウス斎藤「そこで俺は考えたっす! サーヴァントとマスターは不思議な絆で繋がっている!」

アマデウス斎藤「ときに! その絆はスキルを共有化することすらあるとか!」

天海(まあ図書室で読んだ知識の受け売りっすけど)

アマデウス斎藤「つまりこの閉鎖空間内で唯一、思い出しライトによらない記憶の復元を行うことができるとしたら」

巌窟王「我がマスターの夜長アンジーだけ……というわけか」

アマデウス斎藤「イィィィグザグトリィィィアッ!」ドカァァァンッ

最原(さっきから不自然にテンション高いなぁ)

189: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/07(土) 19:51:17.73 ID:PPy7RJPH0
アマデウス斎藤「と、いうわけで。お嬢さん、ちょっとこっちにおいでなさいっす」

アンジー「はーい!」

アマデウス斎藤「グンナイッ!」ガンッ

アンジー「ぐへあ」バタリッ

最原「アンジーさんが金属バットで殴られて気絶したーーーッ!?」ガビーンッ!

巌窟王「貴様……!」

アマデウス斎藤「こっちもグンナイッ!」ガンッ

巌窟王「」バタリッ

最原「巌窟王さんもーーーッ!」

アマデウス斎藤「ついでにグンナイッ!」ガンッ!

最原「何故ぶっ」バタリッ

アマデウス斎藤「……」

アマデウス斎藤「サーヴァントとマスターの絆は、ときに夢で繋がる」

アマデウス斎藤「ハブアナイスドリーム。三人とも」スタスタスタ

スチャ

天海「……俺にはこのくらいしかできないっすからね」

三人「」チーン

193: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 06:32:28.97 ID:bQ+cAlF70
???「ひとつ、昔話をしてやろう」

???「他愛のない話だ。だが世界で最高の復讐劇であると宣う者もいる」

最原「……どこからか、声が……?」ムクリ

最原「……薄暗いな。なんだろ、ここ」

最原「石造りの……監獄?」

最原(……声のところにいるのは、アンジーさんと巌窟王さん……?)

???「ある海の傍らに愚かな男がいた」

???「誠実な男だった。この世が邪悪に満ちているとは知らぬ男だった」

アンジー「……」

???「故に男は罠へと落とされた。無実の罪によってシャトー・ディフに囚われて」

アンジー「神様」

???「十四年。監獄の日々を乗り越えて、監獄塔から生還した男は復讐鬼となった」

アンジー「神様……」

アンジー「……こっちを見て話してよ」

最原「……え?」

最原(……そうだ。なにかおかしいと思ったら、巌窟王さんはアンジーさんの方を向いているだけだ)

最原(見ていない。なにかアンジーさんの位置に、本来なら別の人物がいるべきのような違和感がある)

最原(いつも巌窟王さんが見せているような甘さの『質』が決定的に違う)

最原(それ以前に……)

194: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 06:37:32.53 ID:bQ+cAlF70
アンジー「神様……アンジーはどうしたらいいの……?」

最原「……」

最原(アンジーさんと会話していない)

最原(あれは録画だ。ただの記憶を再生したもの)

最原(それも、目論見通りに行ってない。ただの巌窟王さんの記憶だ)

最原「……」

最原「いや、なんで僕まで見てるんだよ、これを!」ガビーンッ!

アンジー「あれ? 終一?」

最原(明らかに巻き込まれたッ! しかも特に何の伏線もなく無意味に!)

最原「アンジーさん! これは――!」



ザザザーッ!



アンジー「――!」

最原「――!」


最原(そこから先のことを僕は覚えていない)

最原(目覚めたときに、記憶を破損してしまったのかもしれない)

最原(ただ、それが本当に必要になったときには思い出すだろう)

最原(……僕たちは巌窟王さんの記憶を追体験した)

195: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 06:46:40.91 ID:bQ+cAlF70
百田「おい最原。こんなところで寝てたら風邪ひくぞ」

最原「……」

最原「……今、何時くらい?」

百田「十八時くらいだな」

最原(結構長い時間気絶してたな。頭がまだガンガンするけど)

最原(巌窟王さんとアンジーさんはもう消えてるか……)

百田「しかしお前、なんだって寝てるときまで帽子つけてんだよ」

最原「これは……もう大した意味はないんだけど」

最原(真実から目を逸らさない。前向きに生きるって巌窟王さんに誓ったし)

最原(赤松さんの言う通り、食事時や屋内にいるときくらいには外した方がいいかも、なんだけど)

最原「……」

最原「帽子の意味が変わったんだ」

百田「ん? んー。よくわかんねーが、そうか」

196: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 06:57:23.52 ID:bQ+cAlF70
翌日

アマデウス斎藤「はーーーっはっはっはっはっは!」

アマデウス斎藤「アマデウス斎藤提供の強化クエストはどうでしたか!?」

最原(また来てる!)←また呼ばれた

巌窟王「……奇妙なことなのだが……」

巌窟王「確かに出力が多少は上がった」ボォゥッ!

最原「えっ!? 嘘ォ!?」ガビーンッ

アマデウス斎藤「ふっ……満足っす。キミたちの成長を見れたことが、ね」パチーンッ

アマデウス斎藤「でもまだまだこんなもんじゃ終わらないっすよ!」

アマデウス斎藤「さあ! これからもレッツ! ダンシンッ!」

アンジー「踊るー!」

巌窟王「クハハハハハハ!」

最原「訓練はァ!?」ガビーンッ!



翌日も翌々日もアマデウス斎藤が来た。あと何故か最原は毎回巻き込まれた


198: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 10:36:14.58 ID:bQ+cAlF70
とある朝 最原の私室

最原「……ふあーあ……また巌窟王さんの訓練に付き合わされるのかなー……」

最原「ん? なんだろ、これ。モノクマーズ……パッド……?」

最原「……」ポチリッ


百田解斗の動機ビデオ「」ジャジャーンッ

最原「え……?」



アンジーの私室

アンジー「うーん……おはよう神様ー」

アンジー「ん? なんか部屋がコゲ臭くない?」

巌窟王「気にするな! お前には関係のないことだからな!」ギンッ

巌窟王(確かモノパッドの破壊は校則で禁止されていたが……モノクマーズパッドについての記述は一切なかったから問題あるまい)

巌窟王(裏庭に残骸を埋めるか)

巌窟王「さて。俺は用がある。アマデウス斎藤には少し遅れると言っておけ」ガチャリンコ

アンジー「はーい!」

199: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 10:41:12.15 ID:bQ+cAlF70
寄宿舎周辺

最原「大変だ! 今すぐ百田くんを探さないと!」ダッ

最原「ん? あれ。巌窟王さん?」

巌窟王「……」セッセッ

最原「え……そこで何してるの?」

最原「あれ。もしかして近くに落ちてるその、なんかブスブス言ってる残骸って……」

巌窟王「なんのことだ? 知らんな、モノクマーズパッドなど」ザッザッ

最原「こ、壊したの!? 校則は!?」

巌窟王「モノクマーズパッドだ。モノパッドならともかくとして、コレは問題あるまい」ウメルウメル

巌窟王「……あと最原。お前は何も見なかった。そうだな?」

最原「ええーーーッ!?」ガビーンッ!

200: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 10:49:01.28 ID:bQ+cAlF70
数分後 食堂

最原(どうも、それぞれの大切な人が映った動機となるビデオが、それぞれの私室に入れ替えられた状態で配られていたらしい)

最原(……たった一人の例外を除いて)

赤松「え、えっと……私のモノクマーズパッドだけは、私の動機ビデオだったんだけど」

最原「えっ」

春川「……」

春川「それってさ。入れ替えられた状態で配られてるんじゃなくって、単純にランダムに配ってるんじゃないの?」

春川「だとしたら……」

真宮寺「僕たちが気付いていないだけで、十六人の中に自分の動機ビデオを持っている人間が確率上はもっと存在するかもしれない」

真宮寺「そういうことになるネ」

アンジー「え? なになに? さっきからみんなが何を話してるのかサッパリだよー!」

キーボ「は? 何って……動機ビデオのことですよ?」

巌窟王「……」シラー

最原「……」ズーン

201: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 10:54:36.79 ID:bQ+cAlF70
星「……おい。十六人の中に、だと? 巌窟王はカウントしなくてもいいのか?」

最原「ええと、彼の場合はこの学園に来たのは例外でしょ? そもそも部屋に配られているんだから、パッドを配るべき場所が……」

最原「あれ」

最原(そうだ。巌窟王さんには私室がない。じゃああのモノパッドをどこで手に入れたんだ?)

最原(……)

最原(そういえば、そもそも巌窟王さんって夜はどこで眠ってたんだ?)

最原(……まさか……)ダラダラダラ

巌窟王「余計なことを言ったら……わかるな?」コソッ

最原「」

星「?」

202: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 11:08:29.79 ID:bQ+cAlF70
巌窟王「俺には関係のない話だ。ここは席を外した方がいいかもしれないな」

巌窟王「そうだ。アンジー」

巌窟王「……」ゴニョゴニョゴニョ

アンジー「……」

アンジー「アンジー、ハ、ランタロウ、ノ、動機ビデオ、ヲ、手ニ入レテタ」カタコト

アンジー「スッカリ、ワスレテタ、ヨ」カタコト

最原(言わされてる感しかない!)ガビーンッ!

天海「えっ。俺の……?」

天海「そ、そこには何が映ってたんすか!? 俺の才能に関して何かわかったりは……!」

王馬「おーっと! 天海ちゃんストップストップ!」

王馬「これ以上突っ込んだらダメだよー。モノクマの思うつぼだよー?」

天海「ぐ……!」

東条「……私の動機ビデオも、私のものだったわ」

赤松「えっ」

東条「……だから、あらかじめ言っておくわね」

東条「アレは絶対に見るべきじゃないわ」

赤松「……う、うん。気分が良くなるものじゃないから……」

赤松「それにあのビデオって……ううん、なんでもない」

百田「他に自分の動機ビデオを配られたヤツはいねーのか?」


シーン


百田「……そうか。それならこの話はここで終いだな」

王馬「え? 嘘吐いてる人がいるかもしれないから、誰がどのパッドを持っているかくらいは確認した方がいいんじゃない?」

百田「しめぇだ! これ以上は状況が悪化するだけだぜ!」

王馬「ふぅーん」

203: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 11:17:52.29 ID:bQ+cAlF70
最原「……?」

最原「赤松さん。言いたくなかったら別にいいんだけどさ。さっき何を言いかけたの?」

赤松「……」

赤松「あのビデオって多分……思い出しライトの効果もあるから、見ない方がいいと思う」



ギュンッ!


巌窟王「アンジーの動機ビデオを持っている者は今すぐ挙手しろ! そして動機ビデオをよこせ!」

巌窟王「さもなくば頭から湖沼をかけてやる! 残酷になァ!」ギンッ

最原「アンジーさんが絡んだ途端にコレだよ!」ガビーンッ

真宮寺「しかもおしおきが小学生のイタズラレベルだヨ」

巌窟王「最原! お前ならわかるだろう! アンジーの記憶は脱出に必須だ! ヤツもそう言っていただろう!」

巌窟王「手段を選んでいる場合か!?」

最原「いやまあ確かにそうだけど……!」

巌窟王「よもやお前か!? お前ではないだろうな!? いや、お前だ! お前が持っているのだな!?」ガクガク

最原「酔う! 酔うからやめて! そんなに激しく揺すらないで!」

入間「ああん、朝っぱらから激しいのなんて、最高ォ……!」





夢野「沈まれぇーーーいッ!」

最原&巌窟王「!」ピタリッ

204: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 11:27:04.01 ID:bQ+cAlF70
夢野「この緊張状態じゃ! 巌窟王! 出せと言われて素直に出すわけがないじゃろう!」

夢野「それとも何か? 巌窟王はアンジーを人殺しに仕立て上げたいのか?」

巌窟王「……」

星「ふん。意外なヤツが声を上げたもんだな」

星「だがよ。別に動機ビデオを見たからって、すぐに冷静さを失うわけじゃねーだろう」

星「赤松と東条は確かにショックは受けただろうが、な」

夢野「じゃが危険すぎる賭けになることだけは確かじゃ。なので……!」

夢野「この空間には、今すぐに笑顔が必要だとウチは考えるぞ!」

夢野「笑顔は心を癒す。癒しがあれば、まだ立ち上がれる!」

夢野「そうじゃろ!?」

最原「あれ? なんか話が変な方向に……」

夢野「巌窟王! アンジーを借りるぞ! その他、希望者はウチについて来い!」

夢野「ウチのマジカルショーで、モノクマの作ったこのギスギス空気を粉砕する!」

夢野「これがッ! ウチの恩讐の牙じゃ!」ギンッ!

最原(なんか明らかに巌窟王さんの影響を受けて、テンションが変になってるーーーッ!)ガビーンッ!

最原(笑顔が悪人のものだ!)

巌窟王「……」

巌窟王「く、クハ……」

巌窟王「クハハハハハハハハ! いいだろう! やってみるがいい!」

巌窟王「お前の恩讐の牙とやらがどこまで通用するのか、この俺が見届けてやろうではないか……!」ギンッ

最原(すんごい乗り気になってるしッ!)ガビーンッ!

205: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 11:36:05.49 ID:bQ+cAlF70
数十分後

最原「……結構な人数が夢野さんに付いてっちゃったね」

巌窟王「アンジーがいなければ訓練ができん。今日のところは訓練はなしだな」

巌窟王「アマデウス斎藤にその旨、伝える方法があるといいのだが……」

最原「……多分どこかから見てるから伝える必要はないんじゃないかな」

最原(というか天海くんも夢野さんの手伝いに行っちゃったし……)

巌窟王「さて。俺は……」カサリッ

最原(ん? 巌窟王さんのポケットから、紙が折れたみたいな音が……)

巌窟王「……適当に羽を伸ばすとしよう。子供のお守りなど、俺の得手ではない」

巌窟王「久しぶりにあの娘から解放されて清々としたしな」スタスタ

最原「……?」


207: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 13:44:05.14 ID:bQ+cAlF70
BB?『え? 女性にプレゼントするならどんなものがいいか、ですか?』

BB?『うーん、そうですねー。巌窟王さんからなら大体の女性は喜ぶと思いますけど』

BB?『お顔立ちは結構端正ですしね。綺麗な花でも、美味しいお菓子でも、ちょっとしたアクセサリーでも嬉しいと思いますよ?』

BB?『何よりも、あなたは私にそれを問いました。少しでも喜んでもらいたいという、その心が一番重要です』

BB?『……え? なに? お前本当にBBか? ですって?』

BB?『声色が白い? 不必要に清純すぎる。邪悪さはどこ行った……?』

BB?『……もう。そこまで言ったらBBさんに失礼ですよ。あの子だってそこまで悪い子じゃ……』

BB?『あっ』


ブツンッ ツーツー


巌窟王「……」

巌窟王「絶対にパールヴァティー……だったな……」

209: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 13:55:20.73 ID:bQ+cAlF70
巌窟王「……倉庫に行ってプレゼントを何かしら見繕うか」

巌窟王「そろそろ俺の食事を改善してもらわねば……朝から麻婆豆腐はいくらなんでもないだろう」

巌窟王「何らかの理由で嫌われているとしか思えん」

巌窟王「……いや、この世のすべての悪を体現せんとするアヴェンジャー故に、人々に嫌われるのはなんともないが」

巌窟王「あの女だけは敵に回すのは得策ではないからな。食事的な意味で」

巌窟王「なにかないものか……」スタスタ



体育館


夢野「かーっかっかっか! これじゃ! これこそが! 我が魔法の最終進化形態!」

夢野「やはりアンジーに協力を頼んだのは間違いではなかったぞ!」

アンジー「にゃははー! お褒めに預かり光栄だよー!」

天海「確かに美術的な観点から見ても、このステージは中々のモンっすね」

天海「あとは適当なBGMでもあればいいんすけど」

赤松「あ、私の研究教室から持ってくる?」

天海(……)

天海(やっぱみんないいヤツっすね。こんな素性のわからない俺を輪に入れてくれるんすから)

天海(いつかアマデウス斎藤ではない自分自身、天海蘭太郎のことも誇れたらいいんすけど……)

210: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 14:06:18.33 ID:bQ+cAlF70
ザクッザクッ

最原(うーん……やっぱり燃やすのは、なんとなく良くない気がするんだよな)

最原(見る見ないに関しては、まだ決めることはできないけど)

最原(一応掘り返して、入間さんに修理を頼もうかな……重要な部分が残ってたら見れるかもしれないし……)

最原(……)

最原「動機ビデオ、か……もうあんなこと起こらない、よな?」




裏庭周辺

獄原「え……王馬くん。今、なんて言ったの?」

王馬「うん! バカなゴン太のためにもう一度言うね!」

王馬「みんながゴン太の研究教室の虫さんたちを殺したがってるんだよ!」キラキラキラ

獄原「ええっ!? そ、そんな! 酷いよ!」

王馬「そうだよね! 酷いよね! だから俺に、いい考えがあるんだ……」ニヤァ


214: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 18:37:32.10 ID:bQ+cAlF70
超高校級の発明家の研究教室

入間「あー……? ダメだな。大雑把な理屈はわかるが、何がどうなってそうなるのかサッパリわっかんねー」

入間「英霊召喚……ただのテレポーテーションってわけじゃねーしな」

入間「おそらく魔法陣やアンジーの詠唱がどこか別の空間……大雑把に言えば集合的無意識にアクセスして」

入間「んでもって、そこに蓄えられた情報を基に英霊を呼び出したんだと思うんだが……」

入間「情報がどうやって血や肉、ついでに服になるんだっつの。情報熱力学が数百年進んでも絶対に再現不可能だぞオイ……」

コンコンッ

最原「入間さん? いる? ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

入間「確かに根本的に考えれば、この世の万物を構成する一番の下敷きは『概念』と言う名の情報だが……」

入間「その概念を自由自在に操ることなんて人間にできっこねー。ていうかこの世のどんな存在にもできてたまるか……」ブツブツ

入間「それに情報がそれ単体でエネルギーを持つっつってもエネルギー=質量×光速度の二乗……」

入間「言い換えるとエネルギーを物質に変えるためには信じられない莫大な量の……」

最原「入間さん! いーるーまーさーん!」

入間「……」

入間「ぷぎゃあ!? だ、ダダダダサイ原! いつからそこにいやがった!?」ガビーンッ!

最原「結構前からいたけど……」

215: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 18:47:29.28 ID:bQ+cAlF70
入間「な、何の用だ? ハッ! 二人きりの密室……何も起こらないはずもなく……!?」

入間「まさか俺様をブチ犯しに来たのか!?」ガビーンッ!

最原「そんなわけないだろッ!」

入間「ひいいいい。じゃあなんだよう……ハッ! 二人きりの密室。そして後に残ったのは俺様の死体……」

入間「お、俺様を殺しに来やがったのか!?」ガビーンッ!

最原「そうでもないよ! ほら、これ!」

入間「……なんだ、そのガラクタ」

最原「多分、燃やされたけど動機ビデオの入ってるモノクマーズパッドだと思うんだ」

最原「これを僕が『偶然に』見つけてさ。入間さんなら修復できないかなって」

入間「ざっけんな。なんで俺様がそんなことしなきゃなんねーんだよ」

入間「……と、普段なら言うところだが、さっきの赤松の発言を聞いてみた限り、俺様にメリットがないわけじゃねーな」

最原「え?」

入間「……貸せ。やったらァ。ただし交換条件がある」スタスタスタ

最原(入間さんは僕の方にズカズカと歩み寄り……)

ガンッ

最原(僕の傍の壁に乱暴に足を叩きつけて言った)

入間「……この仕事が終わるまで外に出るな。それが条件だ」

最原「え」

入間「何故? とかどうして? なんざ訊くなよ。テメェに許された返答はYESかNOかの二択のみだ」

最原「……い、イエス」

入間「いいぜ。取引成立だ。やってやらァ」ヒョイッ

最原(あ、残骸を持ってかれた……)

216: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 18:54:19.67 ID:bQ+cAlF70
入間「そうだ。条件を追加だ。『外から誰も入ってこないこと』」

最原「……え?」

入間「研究教室のドアの近くに、俺様が自作したストッパーがある。内側から起動させれば誰も入ってこねぇ」

入間「赤いボタンがあるだろ? 閉めるのマークがあるはずだ」

最原「ああ、これ……」

最原(……この閉めるのマーク、何をモチーフにしてるのかは聞かないでおこう)ポチリッ

ガシャァァアンッ!

入間「じゃ、始めっかー。ダサイ原。そこら辺でおったってるなり、座って俺様を視◯するなり好きにしてていいぜ」

入間「もちろん、俺様の邪魔をした場合も取引はナシだけどな」

最原「……?」

最原(なんだ? 入間さんは何を考えてる?)

217: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 18:59:46.36 ID:bQ+cAlF70
一方そのころ 外

獄原「みんなに虫さんの良さをわかってもらうッ!」ドォォォォンッ!

夢野「ぐぎゃああああああああ!」

アンジー「秘密子ーーーッ!」

獄原「ついでにアンジーさんも確保ッ!」バァァァンッ!

アンジー「がっはーーーッ!?」

獄原「すぐに研究教室に連行!」シュババババッ




百田(やべぇ……やべぇよ……)ガタガタ

天海(逃げ切ってやるっす……絶対に!)

218: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 19:08:03.05 ID:bQ+cAlF70
獄原「赤松さん確保!」シュババババッ

赤松「いやあああああああ!」


五分後

獄原「真宮寺くんとキーボくんを確保! キーボくん重ッ! いけどまあイケる!」シュババババッ

真宮寺「あー」

キーボ「重くないです! 重くないですよ!」

真宮寺「女子みたいな抗議だネ」


十分後

獄原「茶柱さん確保……星くんは……逃げられちゃったか」

茶柱「ああああああああ! 我魂魄百万回生まれ変わってもおおお!」

茶柱「星さんッ! 恨み晴らしますからねーーーッ!」

星(……やれやれだぜ)

219: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 19:11:55.57 ID:bQ+cAlF70
十五分後

獄原「よーーーっし! 白銀さんも捕まえた!」

白銀「きゃあああああああああああ!?」

獄原「ついでにそこにいる天海くんも!」

アマデウス斎藤「え? 俺のことっすか?」

獄原「……え? 誰?」

アマデウス斎藤「初めまして。アマデウス斎藤っす」

獄原「あ、どうもこちらこそ」

白銀「へぇー。天海くんに似てるなー」

獄原「人違いしてごめんなさい! じゃあ白銀さん! 行こうか」シュババババッ!

白銀「ああああああああああ……!」

アマデウス斎藤「危なかったっす」フー

220: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 19:19:13.53 ID:bQ+cAlF70
王馬「こうしてゴン太の研究教室には、ぞくぞくと生徒たちが集まってくるのでした」

王馬「にしし……さあて。お楽しみ会、そろそろ始めちゃおっかなー」



入間の研究教室

最原「……」

最原(気のせいかな。なんか外が騒がしかったような……?)

最原(まあ、いいか)


倉庫内

巌窟王「……」

巌窟王「……あまり悩むのも考え物だな。これにするか」


224: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 20:46:59.78 ID:bQ+cAlF70
午後九時

最原「……」

最原「まだ外に出ちゃダメ?」

入間「ダメに決まってんだろ。メシならそこに倉庫から持ってきた保存食あるから適当に持ってけ」

最原「……」

最原「いい加減教えてくれないかな? 僕と一緒に閉じこもって何のつもり?」

入間「……タイミングを計ってただけだっつの」

入間「テメェ、最近あの褐色ド貧◯とよくつるんでたろ?」

最原「なんか、いつの間にかだけどね」

入間「だからよ。ちょこーっとアイツから血液抜き取れないかって思ってよ」

最原「え?」

入間「あのな。テメェ、なんとも思わなかったのか?」

入間「魔術回路……サーヴァントへの魔力供給……んなもん普通の人間が日常的にやるもんだと思うか?」

入間「それをやっている内に、アイツの身体に何らかの変化が起こっているかも、とか考えなかったのかよ」

最原(……)

最原(まったく考えてなかった。全然平気そうだったから)

最原(でもそうか。普段使わない……それもまともな理から離れた業を使っていれば、何か不具合が起こってもおかしくない、か?)

225: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 20:53:25.11 ID:bQ+cAlF70
入間「今の俺様の興味の対象は主に巌窟王だが、次に興味があるのはアンジーだ」

入間「健康診断をするついでになんとかヤツの身体機能について解析してぇ」

入間「っつーわけで、なんとかヤツから血液を採ってこれねぇかと思ってよ」

入間「……つまりこれが取引だ。俺様はヤツを解析したい。ヤツは自分の体の変化を知ることができる」

入間「ギブ&テイクはこれ以上ないくらい成立してんだろ? 既婚者同士のセフレのような完璧な関係性だ」

最原「それちょっとしたきっかけで泥沼になる関係ナンバーワンだと思うけど……」

最原「でもなるほど。彼女の血液が欲しいけど、きっかけが今までなかったから僕に協力を、ってことか」

入間「その通りだ。悪くねー話だろ?」

最原「うーん」

226: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 20:58:54.75 ID:bQ+cAlF70
入間「まあベストなのはヤツが丸ごとこの研究教室に転がり込んでくるか、あるいは……」

入間「……いや。これはナシだな。後で巌窟王にぶっ殺されちまう」ブルリ

最原「?」

入間「あと四十分くらいで修理は終了だ。それまでは適当にマスかいてろ」

最原「……いや。この取引が主題ならもういよいよ帰っていいような気が……」

入間「ハッ! ダメだね。何故なら……!」

最原「何故なら?」

入間「俺様、見られてる方が興奮するから……! さっきからもう二回くらい◯◯ちゃってパンツの中も……」

最原「出してーーー! お願い! ここから出してーーー!」ガビーンッ!

227: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 21:06:47.85 ID:bQ+cAlF70
大体同時刻
超高校級の昆虫博士の研究教室

アンジー「うわーーー! 秘密子が虫に埋まっちゃってるよー!」

真宮寺「がっ……ぎっ……!」ビクンビクン

茶柱「え。どうしたんですか真宮寺さん! ただでさえ気持ち悪いのに、更に気持ち悪い動きしてますよ!」

赤松「耳の中に虫が入っちゃったんだって! どうしよう! 誰か助けて!」

白銀「うふふふふふふ。花畑の向こうでカナタが手を振って……」

キーボ「白銀さんが変な幻覚見てまーーーすッ!」

獄原「とっても和むよ。みんなもそう思うでしょ?」

一同「思うかァッ!」

228: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 21:11:56.45 ID:bQ+cAlF70
真宮寺「ぐ、は……! 王馬くんは確か、みんなの動機ビデオを取りに行ってるんだよネ……!?」ヒーッヒーッ

赤松「うん! でもなんか全然戻ってくる気配がないよね! なんか!」

真宮寺「し、仕方ない! もうこうなったら最後の手段だヨ……!」

真宮寺「夜長さん! 令呪でサーヴァントをマスターの手元に呼び寄せられるはずだヨ! だからそれ使って」

アンジー「え? やだ」

真宮寺「」

茶柱「な、なんでですかッ!? 巌窟王さんがいればこの状況をなんとかしてくれるはずですよ!?」

アンジー「だって令呪って三画しかなくって、前回の楓の件で一画使っちゃったから……」

アンジー「もう二画しかないんだよ。これ使ったら、もし次に神様が死んだら蘇ることができなくなっちゃう」

アンジー「だからやだ。アンジーが死んでも、コレだけは使わない」

赤松「……アンジーさん……」

真宮寺「その決意は美しいけどネ……! ひい! 服の中にむ、むむむむ……」

茶柱「いやーーー! お願い! 想像しちゃうから絶対に言わないでくださーーーい!」

229: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 21:20:52.44 ID:bQ+cAlF70
大体同時刻
超高校級のテニス選手の研究教室周辺

ギャーギャー

巌窟王「……あちらの方が騒がしいな。約束の時間までに全員散ってくれるといいのだが」

百田「お? 巌窟王。何やってんだよ、もう夜の九時だぜ?」

巌窟王「百田か。フン、何。向こうの方が騒がしいな、と思ってな」

巌窟王「俺が倉庫にいる間に何かあったのか?」

百田「……」

百田「まあ……致命的なことは何も……」

巌窟王「……?」

巌窟王(まあいい。アイツは二人きりで話がしたいと言っていたのだ。この周辺をウロつくのはやめておこう)

巌窟王「そういえば、春川が自分の研究教室から離れていないと聞いたが……」

巌窟王「……ちゃんと食事は摂っているのだろうな?」ニヤァ

百田「……テメェ、焚き付け方がド下手だな。消えろっつーんならもうちょっと素直に言ってもいいんだぜ?」

巌窟王「ふん」

百田「まあいい。確かにそこは俺も気になってたところだしよ」

百田「あばよ」スタスタ

巌窟王(このプレゼントを喜んでくれるといいのだが)

231: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/08(日) 21:28:47.39 ID:bQ+cAlF70
大体同時刻 中庭のあたり

星「……ふっ。今日はいい星空だな……ん?」

アマデウス斎藤「……フッ……ハッ……とりゃっ……!」

アマデウス斎藤「……違うっすねー。もっとこうー、決めポーズにミステリアスさが足りないんすよねー……」

星「……」

星「なんだアイツは……見ない顔だが……あんなところで何やってやがる……?」

天海(……ハッ! 星くんがこちらを見ている……?)

天海(これは迂闊なことができない。身が引き締まるっすね……!)


星はしばらく見ていたが、特に害はなさそうなので、夜時間を過ぎたあたりで監視をやめた

235: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 18:14:13.48 ID:3C1YDHcT0
午後十時ニ十分

最原「はあ……はあ……はあ……なんか凄い匂いしてきた辺りでどうにか逃げ出すことができたな……」

最原「四十分くらい時間を無駄にした。とっくに修理終わってたのに」

アマデウス斎藤「……さて。この辺で決めポーズの練習は終了っすかね」

スチャ

天海「明日のためにそろそろ寝ないと……」

最原「……」

天海「……見ました?」

最原「いやそれ以前にもう正体バレバレだったから……」

天海「ふっ……流石は超高校級の探偵っすね……」

最原(いやもうそんなの関係ないと思う……)ズーン

236: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 18:20:41.75 ID:3C1YDHcT0
天海「……前の学級裁判で大活躍だった最原くんにはわからないかもしれないんすけど」

天海「『誇れる自分』になりたかったんすよ。みんなの隣にいても霞まない自分に」

最原「……」

天海「だから仮面被って、自分自身の思い描く恰好いいヒーロー演じてみたりして……」

天海「……みんなの役に立ちたかったんすよ。それが俺の願いだったんす」

最原「別に。僕が活躍したのは、たまたま才能がその場に合致してたからでさ……」

最原「本当なら僕の力の出番がない方がいいんだ。羨ましがられてもさ……」

天海「……」

最原「……いや。ダメだな。ごめん。そんなことが言いたいわけじゃない」

最原「その気持ちが嘘でないのなら、凄く嬉しいし、心強いよ」

最原「心の底からそう思う」

天海「……!」

最原「次の訓練からは素顔でもいいんじゃないかな。協力者が増えたら、きっと喜んでくれるよ。二人とも」

天海「最原くん……!」

237: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 18:26:18.94 ID:3C1YDHcT0
最原「……そうだ。天海くん。実はさ、アンジーさんの持っていた天海くんの動機ビデオをたまたま入手したんだ」

天海「ッ!」

最原「もう知ってると思うけど、動機ビデオは最初に、その動機ビデオを向けた対象の才能をモノクマが言うんだよ」

最原「百田くんなら『超高校級の宇宙飛行士である百田解斗くんにはウンタラカンタラ』って感じで」

最原「……見るときに僕が隣にいていいのなら、ここでコレを再生するよ。どう?」

天海「ああ、それで構わないっす! 全然!」

天海「俺は俺の才能を今すぐにでも知りたいんすよ!」

最原(早まったかな。でもこのままでも天海くん思い詰めちゃいそうだし……)

最原(ごめん、巌窟王さん)

238: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 18:31:35.56 ID:3C1YDHcT0
最原「それじゃあ、再生するよ……!」

天海「お願いするっす……!」

ポチリッ

ザザーッ

最原「……あれ? 何も映らない?」

天海「えっ」

ザザッ

最原「あ、よかった映った映った」

天海「……ん? いや、あれ? これ本当に動機ビデオっすか?」

最原「……!?」



入間『お気の毒だが、この中の映像データは俺様が丸っと頂いたぜ! ヒャッハー!』

入間『中身を返してほしけりゃ、童貞ヶ原! さっきの俺様の取引内容を完遂してこい!』

入間『それまでデータは俺様にしかわからない秘密の場所に隠して誰にも手が届かないように保管しといてやっからよ!』

入間『じゃ、後は俺様のセクシーなピンク映像を入れといたから、それ見て奮い立て!』

入間『がーんばっ』キャルーンッ



最原「がーんばっ! じゃないよッ!」ガビーンッ!

天海「」

239: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 18:35:01.13 ID:3C1YDHcT0
天海「こ、こんな……こんなのって……」ガタガタ

最原「あ、天海くん! ごめん! こんなつもりじゃ……!」

入間『……いいよ……もっと、こっちに来てぇ……!』

二人「!」ピクッ

入間『……見たいの……? じゃあ、恥ずかしいけど……んっ……!』ヌギヌギ

天海「……」

天海「どんな取引があったのかわかんないっすけど、お願いします。入間さんからデータを取り返してください」

最原「あ、う、うん」

天海「それまでこのモノクマーズパッドは俺が預かっておくっす」ハァハァ

最原(目が血走ってない?)

最原(……まあ、口を開かなければ確かに入間さんって美少女だからなぁ……)

241: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 18:59:23.72 ID:3C1YDHcT0
寄宿舎

天海「……このピンクビデオ、なんかところどころ入間さんが『最原ァ』って甘い声で言ってるんすけど……」

天海「いや。なんとかしてみせるっす。『天海ィ』って言ってるように脳内再生させてみるっす」

天海「もしくは今すぐNTR属性を覚醒させてみせるっす」

最原「なんか僕取り返しの付かないことしちゃったかなぁ……?」

最原「あれ?」

アンジー「あ。終一ー。蘭太郎ー。やっはー」

最原「……アンジーさん。こんな時間に何してるの?」

天海「巌窟王さんに怒られちゃうっすよ?」

アンジー「あー。うん。それなんだけどさー」

アンジー「……」

アンジー「ううん、なんでもない。じゃ、おやすみ二人ともー!」

最原「……ん? うん。おやすみ、アンジーさん」

天海「おやすみなさいっす」

最原(そのときのアンジーさんに、何か違和感を覚えながらも、僕たちは自室へと帰って行った)

最原(……)

最原(もしも、ここでアンジーさんに疑問をぶつけていれば、少しは未来が変わったかもしれないのに)

242: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 19:10:21.76 ID:3C1YDHcT0
夜時間 某所

ピチャッ

東条「……これは……さっきまでこんなものなかったのに」

東条「巌窟王さんのポケットから落ちたのね。迂闊だったわ」

東条「……大丈夫ね。靴の端しか汚れてない」

東条「……」

東条「おやすみなさい、巌窟王さん。夜長さんのモーニングコールがかかるまで、ピラニアでも眺めて楽しんでいて?」スタスタ

243: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 19:29:05.77 ID:3C1YDHcT0
キーンコーンカーンコーン

最原「ん……八時か」

最原「ふあーあ……ひとまず体育館に行かないとなー」ガチャリンコッ

最原「ん?」

アンジー「……」ドヨーンッ

最原「!?」ガビーンッ

アンジー「あ、終一ー……やっはー……」

最原「どうしたのアンジーさん! なんか凄い衰弱しているっていうか……目のクマ凄いよ!? 大丈夫!?」

アンジー「あー、大丈夫大丈夫。ずっとここに突っ立ってただけだから」

最原「は!? まさか、昨日からずっと!?」

アンジー「うん、ちょっと……事情があって……」

最原「……」

最原「ねえ。巌窟王さんはどうしたの?」

アンジー「……」

アンジー「……秘密子のマジカルショーを見ながら話すよー。アレ、神様も楽しみにしてたから」

アンジー「見逃すわけにはいかないから」スタスタ

最原「……」

最原(あの分だと、昨日はアンジーさんのところに帰ってこなかったのか?)

最原(なんで?)

244: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 19:39:03.27 ID:3C1YDHcT0
体育館

夢野「かーっかっかっか! よく来たな生徒一同! 夢野秘密子のマジカルショー! いよいよ開演じゃあ!」

夢野「開演……」

夢野「……だというのに……」

夢野「……何故巌窟王がいないんじゃあ!?」ガビーンッ!

最原(先に来ている可能性を信じたかったけど、やっぱりこの場にも巌窟王さんはいなかった)

最原(どころか、何人か来ていない生徒もいる)

最原(春川さん、入間さん、百田くん、王馬くん、どういうわけだか東条さんもいない)

最原(ただその代わり、意外な人が来てたりするんだけど……)

星「……」

真宮寺「意外だね。キミも来るなんて」

星「フン。何、こんなこともあるさ。昨日の夜遅くに招待状まで用意して誘われりゃあ無下に出来んしな」

最原「え? 招待状?」

夢野「星は消極的じゃからのう。ここまでせんと絶対に来ないと思ったんじゃ」

夢野「なんかもう暗~いオーラがこっちにまで伝染しそうなくらいじゃしの」

星「酔狂な女だ。本物がいるっつーのに、まだやる気になれるんだな」

最原(……星くんにしては大人気ない物言いだな。イラついてるのかな?)

夢野「……」

245: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 19:46:38.36 ID:3C1YDHcT0
夢野「……これはウチが偽物ではない、という前提で話すぞ?」

星「……?」

夢野「偽物に本物が勝てない道理なぞ、どこにある?」

夢野「仮にそういう条理があったとして、それを振っ飛ばしてこその魔法じゃろ?」

夢野「ウチはな、確かに面倒くさがりじゃあ。本当にどうしようもなくの」

夢野「ついでにアンジーのような魔術回路とかそういうものも、ない。巌窟王に聞いた」

夢野「……じゃがそれがどうした! 本物じゃろうが偽物じゃろうが、人を笑顔にできなければ魔法じゃない!」

夢野「ウチはこの場で証明してやりたかったのじゃ。魔法のカタチは決して一つだけではない」

夢野「ウチだって本物の魔法使いなんじゃとなァ!」ギンッ

星「……」

最原(夢野さんが……初対面からは想像できないほど燃えている!)

最原(具体的に言うと熱い!)

最原(これは劣等感から来るものじゃなくって、純粋な闘争心だ!)

赤松「な、なんか。凄いね夢野さん。ちょっと感動しちゃったよ」

夢野「……ウチの魔法はもっとすごいぞ?」

夢野「上手く行ったら拍手喝采を! 絶対じゃぞ!?」

246: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 19:56:59.36 ID:3C1YDHcT0
真宮寺「……で。あの天井につり下がってる、魚がいっぱい泳いでる水槽は何かな?」

夢野「ああ、アレか? ピラニアじゃ」

最原「ぴ、ピラニア!?」

夢野「魔法の流れを説明するぞ?」

最原(まず、夢野さんが僕たちの眼前にある巨大水槽の上部にあるカウントダウンスイッチを押す)

最原(そして夢野さんが巨大水槽に入って、水槽の前面、つまり僕たちに見えている面のカーテンを閉める)

最原(カウントダウンは一分で切れるようになっており、切れた瞬間に天井の水槽からピラニアが降ってくる仕掛けになっていた)

最原(もちろん、ピラニアが降ってきたら夢野さんの水槽の中にすべてが入るだろう)

最原(夢野さんはピラニアが自分の入っている水槽にやってくる前に、水槽から脱出しなければならないというわけだ)

最原(典型的な水中大脱出マジックだが……実際に目の前で見るのは初めてだ)

赤松「……」

赤松「え? 危ないよね、それ。大丈夫?」

夢野「ウチを誰だと思っとるんじゃ! ウチを誰だと……思って……」

夢野「……ウチ、誰じゃっけ……?」ガタガタ

真宮寺「恐怖のあまり記憶の混濁が見られるネ」

茶柱「今からでもやめてもいいんですよ?」

夢野「いや! やる!」

247: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 20:05:45.86 ID:3C1YDHcT0
夢野「……」

夢野「アンジー。ウチの勇姿……後でしっかり巌窟王に教えておくんじゃぞ?」

アンジー「うんうんわかったー! わかっ……」

アンジー「……スヤァ」スピー

夢野「そして星」

最原(あれっ!? 寝ているアンジーさんはスルー!?)

星「なんだ?」

夢野「……目を離すな。一瞬たりともな。そして成功したら横着せずに拍手もするんじゃぞ?」

夢野「お主を笑わせることも一つの目的じゃからの」

星「……ふん」

夢野「それじゃあ、スタートじゃ! スイッチオーン!」ポチリッ

夢野「ふふふ……一分後が楽しみじゃなあ!」ガタガタ

獄原「青い顔だけど……アレ本音で言ってるよね?」

真宮寺「半分以上強がりだと思うヨ」

白銀「だよね」

夢野「……一分後が楽しみじゃなあ! 本当にッ!」

ザパーンッ

248: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 20:11:49.37 ID:3C1YDHcT0
残り三十秒

最原「……」

最原(まだ出てこない)

茶柱「ね、ねえ。アレ、大丈夫なんでしょうか」

天海「仮にも超高校級のマジシャン。これも演出の一つだと思うんすけど」


ガララッ


百田「わりーわりー! 寝坊しちまってすっかり遅れちまった!」

百田「……ん? なんだよ、もう始まってんのかよ」

東条「ごめんなさい。遅れてしまったようね」スタスタ

獄原「珍しいね。百田くんならともかく東条さんまで」

東条「……言い訳はしないわ」

249: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 20:16:40.64 ID:3C1YDHcT0
残り十秒

獄原「……もうダメだ! ゴン太は我慢できないよ!」ドンッ

最原(そう言うとゴン太くんは水槽の上部に一気に駆け上がり……ていうか一息で飛び上がり)

獄原「……えっ?」

最原(目を丸くした)

獄原「……えっ、えっ?」


タイムアップ!


ビシャビシャビシャッ ボチャンッ


キーボ「あっ! ピラニアが!」

獄原「……あれっ?」

白銀「あ、あれまずいよ! 早くカーテンを開けないと!」

茶柱「夢野さーーーんっ! 大丈夫ですかーーーッ!」


ジャッ

250: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/09(月) 20:20:27.34 ID:3C1YDHcT0
最原「……」

最原(僕は……悪夢でも見ているのだろうか?)

最原(今、目の前で起こっていることが何一つとして理解できない)

巌窟王「」プカー

最原「……巌窟王さん……?」

ピラニア「……」ガパァッ



ガブガブガブッ


最原(……気が遠くなりそうだった……)


その限りなく地獄に近い天国に光は差すか 非日常編

253: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/10(火) 18:30:46.28 ID:WgkwgLuY0
最原(……)

最原(気付いたら僕たちの目の前で、巌窟王さんが骨になっていた)

最原(ピラニアに体の大部分を食べられてしまった)

夢野「……はら……!」

最原(また始まってしまうのか……しかも今度は正真正銘、生徒同士での疑いあい)

最原(前回の赤松さんのときみたいに、必要に迫られて仕方なく起こったものではない……)

最原(言い訳が不可能の、コロシアイ……!)

夢野「……はら……最原……!」

夢野「最原ッ! しっかりするんじゃ!」

最原「ッ!」

夢野「……水槽のガラスを割るって話になっておるぞ。聞いておらんかったのか?」

最原「え……あ……ごめん」

最原(ショックのせいで棒立ちになっていたみたいだ。さっきまで何か喚いてた気がするけど、全然覚えてない)

茶柱「早く下がってください! 行きますよ! せーのっ!」

獄原「それっ!」

キーボ「ぐああっはーーー!?」ブンッ


ガシャアアアアンッ

254: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/10(火) 18:37:48.56 ID:WgkwgLuY0
東条「アンジーさん! これで準備は整ったわ!」

アンジー「ほい来たー!」

最原「えっ」

キィンッ

アンジー「令呪を持って我がサーヴァントに命ず。蘇って! 神様!」

最原「……」

最原(……流石に骨になったら、巌窟王さんでも……)

ポウッ

百田「あ。光はじめたぞ」

最原「えっ」

真宮寺「あ、遅いけど再生が始まったネ」

茶柱「なんか何とかなりそうですね」

天海「よかったよかった」

最原「ええっ!?」ガビーンッ!

255: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/10(火) 18:43:07.24 ID:WgkwgLuY0
最原「ほ、本当だ。確かに再生してる……!」

最原(巌窟王さん、不死身すぎるだろ……)

最原「ん?」

最原(なんだろう。巌窟王さんの骨……手足が酷いくらい折れてるな?)

最原「……」

最原(……もしかして……)


prrrr! prrrrr!


最原「……携帯の着信音?」

夢野「んあー。誰じゃ? マジカルショーのときにはマナーモードにするべきじゃろ」

白銀「いや、待って。この才囚学園で通信機器の類はほぼ全滅だったよね?」

東条「一つの例外を除いて、ね」

最原「あ。巌窟王さんの携帯……」

アンジー「神様の再生にはまだ時間がかかりそうだから代わりに誰か出ててー」

最原「ええー……」

256: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/10(火) 18:48:32.22 ID:WgkwgLuY0
ポチリッ

最原「……もしもし」

BB『あ! よかった! 出てくれましたね!』

BB『巌窟王さんは無事ですか!?』

最原(ん? なんか既に事情がわかってるみたいな口調だな)

最原(ていうか電話口の人って女の人だったのか)

最原「ええっと、令呪でどうにか復活しかけてるみたいですけど……」

BB『……よかった、と言っていいのやら何やら。おかしいですね。流石に彼にも許容できないダメージがあったら普通に復活不可なんですが』

最原「え?」

BB『まったくもう。女の子へのプレゼントだの何だの、ふざけたことにかまけてるから、こんな目に……』

最原「プレゼント?」

BB『おや。聞いてなかったのですか。彼は昨日、こちらに女性が喜ぶプレゼントとはなんぞやと電話かけてきたんですよ』

BB『てっきり生徒の方にも多少は相談しているものかと思いましたが……』

最原「……」

最原(女性へのプレゼント、か)

BB『……まあいいです。聞きたいことは聞きました。巌窟王さんにバレない内に電話を切りますね』

BB『このことはご内密に』

最原「……わかりました」


ブツリッ

260: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/10(火) 20:22:18.77 ID:WgkwgLuY0
モノクマ「……今度こそ死んだよね? 死んだはずだよね?」

最原「うわっ! モノクマ!?」

モノクマ「……うん。大丈夫。すぐに生き返りそうだけど死んでる死んでる。じゃあ……」


ピンポンパンポーン!


アナウンス『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を始めます!』

最原「……また始まるのか」

百田「二回目だからこの際聞きたいんだけどよ。被害者が生き返った場合でも学級裁判が始まるってのも変な話じゃねーか?」

モノクマ「あー。うん。そうだよね。そこ疑問に思うよね」

モノクマ「この点に関してボクもあんまり詳しいことは言えないんだけどさ」

モノクマ「『被害者が生き返った場合でも学級裁判の結果は無効にはならない』っていう規定がキチンとあるんだよ」

天海「なんすかそれ。まるで『人が生き返ることを想定していた』みたいな無茶苦茶な規定っすね」

モノクマ「……そうだね」

最原(歯切れが悪いな……?)

261: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/10(火) 20:30:18.73 ID:WgkwgLuY0
最原(その内に生徒全員が体育館へと集まった。集まったんだけど……)

入間「……回復に時間がかかってるみてーだな。やっぱり巌窟王からの証言はアテにできそうにねーか?」

アンジー「うーん。学級裁判までには間に合うと思うんだけどー」

王馬「それにしても不幸だよね、巌窟王ちゃんも。二回も殺されちゃうなんてさ……」

王馬「いっそのこと、アンジーちゃんが生き返らせずに、そのまま眠らせていた方が幸せだったんじゃないの?」

キーボ「王馬クン。言い過ぎです」

王馬「修理すれば元通りのロボットにわかってもらおうなんて思ってないよ!」

キーボ「うぐうっ」

白銀「とにかく、これで全員揃ったわけだし……」

モノクマ「そだね。それじゃあ……モノクマファイルー!」テレテッテレー!

夢野「おお! これじゃこれじゃ! これがあれば事件も多少は楽に解決……」


モノクマファイル『被害者は巌窟王。死体発見現場は体育館。以上』


夢野「ざっつゥ!」ガビーンッ!

赤松「な、何コレ! 何一つとして新情報が書いてないよ!?」

モノクマ「文句しか垂れない生徒の口は嫌いだ。具体的に言うとウンコだと思ってる」

夢野「罵倒も雑いぞ! モノクマ! どういうことじゃ!」

モノクマ「悪いんだけど、生徒の公平さを欠くから、今回の事件に関してはそれだけしかモノクマファイルに書けないの!」

262: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/10(火) 20:37:09.50 ID:WgkwgLuY0
春川「……まあそれならそれでいいよ。私には最初からどうでもいいことだし」ザッ

百田「おいハルマキ! どこ行こうとしてんだよ!」

春川「……」ピタッ

最原「え? ハルマキ?」

春川「……その名前で呼ばないで。研究教室に戻るだけだよ」

春川「誰もあそこに入れたくないからさ」スタスタ

最原「行っちゃった」

最原「……百田くん。春川さんと仲良くなったの?」

百田「まあな。つっても昨日巌窟王に焚きつけられた勢いで、だが」

百田「……巌窟王……なんでこんな……」

最原「……」

百田「ま、過ぎちまったことは仕方ねぇ。後で巌窟王からの恨み言はいくらでも聞けるしな」ケロリ

最原「立ち直り早い」

百田「じゃ、一緒に捜査するとすっかー!」ガシッ

最原「うん! ……えっ? 一緒に?」

百田「じゃあこの周辺を調べるぞ最原!」

最原(……)

最原(気を使わせちゃったかな。確かにかなり陰鬱な気分だったけど)

最原(……やるしかないんだもんな)

最原(やるしかないんだ)

264: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 20:25:24.98 ID:2NfLK3zz0
最原(とにかく立ち止まるわけにはいかなかったので捜査はしっかりと行った)

夢野「ウチは使ってないけど、この水槽は上部横の部分がカパッて開いて階段のあたりにかくかくしかじか!」

夢野「ウチは使ってないけどな!」

最原「なるほど。水中脱出のトリックはこうなってたのか」

夢野「ウチは使ってないぞ!」

最原「……そうだ。夢野さん。夜遅くに招待状を星くんに渡したって聞いたけど、それっていつごろ?」

夢野「十時五十分くらいじゃったかの。ゴン太の昆虫で和もう会が終わった後すぐに招待状の制作にとりかかったんじゃが……」

夢野「結局二通しか作れんかったわい。来そうにないヤツ全員に配る予定だったんじゃが」

最原「……ところでその二通目って、誰に渡したの?」

夢野「春川じゃぞ。位置が割れておるから朝の七時のあたりに渡した」

夢野「他に聞きたいことがあればいくらでも聞けい。ウチのマジカルショーを台無しにしたツケは必ず支払わせるからの」

最原(凄まじい気合だ)

265: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 20:34:07.17 ID:2NfLK3zz0
赤松さんの証言

最原「ところでその昆虫で和もう会って……」

赤松「おとーさんおとーさん! あそこに見えないのぉぉぉぉ!」マオオオオ!

最原「なんで急に魔王を唄い始めたの!?」ガビーンッ

赤松「……あ、ごめん。ちょっとトラウマが……!」ガタガタ

赤松「え、ええとね。昨日は王馬くんに騙されたゴン太くんが目に付いた生徒を片っ端から自分の研究教室に引きずり込んで……」

赤松「おとーさんおとーさん! 魔王が今、坊やを掴んで連れていくーーー!」マオオオオ!

最原「ごめん! 別の人に詳細聞くね! 思い出させてごめんなさい!」

最原(ひとまず結構な人間に、夜八時から夜時間の十時までのアリバイがあるらしかった)

最原(ザッと並べ立てると夢野さん、アンジーさん、赤松さん、真宮寺くん、キーボくん、茶柱さん、白銀さん……)

最原(それとホスト側のゴン太くん。王馬くんはしばらく研究教室に帰ってこなかったらしいけど……)

266: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 20:41:12.98 ID:2NfLK3zz0
東条さんの証言

東条「大雑把にみんなからの証言を纏めてみたわ」

東条「巌窟王さんの目撃証言だったけど、一番新しいものは百田くんの午後九時の証言よ」

東条「夜時間に巌窟王さんを見た人は誰もいないみたいね」

最原「……」

最原(体育館は夜時間には封鎖されちゃうわけだから当たり前……なのかな?)

最原(なにか引っかかる。そもそも『時間による制限』がかけられてる体育館で殺人を犯すメリットなんて……)



アンジーさんの証言

アンジー「昨日、アンジーは……神様が帰ってこなくって……」

アンジー「ずっと寄宿舎の自分の部屋の前で……」

アンジー「……スヤァ」

最原「後で聞くよ」



体育館の水槽周辺のなんやかんや

最原「手錠とか落ちてるな」

百田「ガラスの板とかも落ちてるぜ?」

百田「あと体育館の上部の窓になんか……凄い負荷がかかったみてーな痕があんぞ」

真宮寺「あれ? 水槽を釣り上げるときに使ったロープが見つからないネ……」

真宮寺「あ、あった。けど……なんでこんなところに」

267: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 20:51:51.41 ID:2NfLK3zz0
星「む……この手錠、見覚えがあるぞ」

最原「えっ?」

星「……興味があったら俺の研究教室に来な。面白いモンが見れるかもしれないぜ?」

スタスタ

百田「だってよ。どうする?」

最原「……行くしかないよ。もうここには証拠はないみたいだし」

百田「だな!」

赤松「あ、私もついてくよ!」


スタスタ……



キュインッ


巌窟王「クハハハハハハ! 戻ったぞ!」

茶柱「あ。復活しましたね」

巌窟王「さて! 我がマスター、夜長アンジーはどこか!?」キョロキョロ

真宮寺「そこでぶっ倒れてるけど」

アンジー「スヤァ」

巌窟王「そうか! クハハハハハハ!」

巌窟王「……マントを貸してやろう……硬い床では寝心地も最悪であろうからな」ファサッ

キーボ「服まで再生してるんですね……魔術というものはつくづく不思議です」

268: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 21:00:49.80 ID:2NfLK3zz0
星への研究教室に向かう道中

王馬「ママーーー! 俺の万年筆がどこかに行っちゃっだヴぇうヴぁうあああううんっっっ!」ビャーッ

東条「学級裁判の後で探してあげるわ」

王馬「倉庫に作った俺の秘密基地に隠しておいたはずなのにぃいんヴぁすっ」ビャーッ

東条「……飴をあげるわ」

王馬「わーい」

百田「何やってんだテメェーら」

赤松「ていうか倉庫に秘密基地なんて作ってたんだ……気付かなかった……」

王馬「あ。みんなも見つけたら報告してね。俺の秘密道具の万年筆」

王馬「一度どこかに付着したら三日間は絶対に洗い落とせない特殊インク使用だからすぐわかるよ」

百田「クソ迷惑すぎるインクだな……」

百田「……ん? 倉庫?」

百田「そういえば巌窟王も……」

最原「え?」

269: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 21:11:07.84 ID:2NfLK3zz0
星の研究教室 囚人の方

最原「……うっ!?」

赤松「何この臭い……!?」

百田「塩素系の漂白剤か? テニスウェアとか使うんなら、たまに世話になることもあるかもな?」

星「妙だな。前に来たときはこんな臭いはなかったはずなんだが……」

星「まあいい。とにかくあの手錠はこの研究教室から持っていったものだろう。調査するなら好きにしろ」

最原「ん……こっちの窓枠にも、なんか負荷がかかったような跡があるな」

最原(それに、この周辺の床にぶちまけられてるのってインク……?)

最原「……向こう側は……体育館の窓か」ズイッ

バキッ

最原「んっ?」

最原(窓枠に手をかけて少しだけ身を乗り出したとき、枠が少しだけ壊れてバランスを崩した)

最原「う、わっ……!」

最原(ただ壊れたのはあくまで少しだけだったので、すぐに体勢は整えることができたんだけど)

ヒラリッ

最原「あー……」

最原(帽子はプールへと落下した。あの分だとズブ濡れだろうな……)

270: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 21:20:55.59 ID:2NfLK3zz0
アフロと化した百田「おお。最原。あぶねーところだったな」

最原「う、うん。なんか異常に劣化してるね、この窓枠も……」

最原「……?」

最原「なんでアフロになってるの?」

赤松「さっき何故か感電して……」

最原「え? なんで?」

百田「テニスの送球装置のコードとコンセントが不自然に壊れてやがった。ここの調査も終わったんならさっさと次に行こうぜ」

星「おい。待て。その前に一つだけ教えたいことがある」

百田「あ?」

星「実はシンク周りだけじゃなくってな。テニス選手の研究教室の方にも一つ、漂白剤の臭いがするものがあるんだよ」

最原「それは?」

星「ウェイト可変式のダンベルだ」

最原「だ、ダンベル……?」

星「分解してみたらジョイント部分に、微かだが血液が残ってた」

最原「!」

星「……あのダンベルのデザインは見事だからな。まさか犯人も分解できる品物だなんて思いもしなかったんだろう」

星「これは奴さんの致命的なミスってヤツだろうな」

百田「……星……」

星「なんだ? キラキラした目で見つめやがって……俺はただ、お節介なお前さんたちに多少は報いようとしただけ……」

星「それだけだ……」

赤松「……最原くん。帽子を取りに行こう?」ニコニコ

最原「……うん。じゃあ僕たちは行くね。星くん」

星「おう」

271: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 21:30:10.06 ID:2NfLK3zz0
プール

最原「……」

最原「プールの方には特に目立つ証拠はない、かな?」

赤松「あれ……?」

最原「どうかした? 赤松さん」

赤松「えっと……道具置き場の浮き輪の取っ手部分に何か、激しく擦ったみたいな跡があって」

百田「お。マジだ。何か微妙に歪んでるような気もするな?」

最原「……」

最原(なんだ? 超高校級の囚人の研究教室と、体育館の窓枠に負荷がかかったような痕)

最原(その間にあるプールの浮き輪の取っ手部分にはやっぱり負荷がかかった痕)

最原(……そうか。トリックが見えて来たかもしれない)

最原「そうだ。どうにかして帽子を取らないと……」

赤松「……」

赤松「最原くんさ。もうこっちのことを見るのに、あんまり躊躇しなくなったよね?」

最原「えっ」

赤松「なんでまだ帽子を被ってるの?」

最原「!」

百田「?」

272: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 21:34:03.61 ID:2NfLK3zz0
最原「ええと、それは……」

百田「前に『帽子の意味が変わった』だのなんだの言ってたよな? それと関係あんのか?」

最原「ッ!」

赤松「帽子の意味が変わった……?」

赤松(……そういえば巌窟王さんも帽子被ってたっけ……ああ、そういうこと)

赤松「へぇー」ニヤニヤ

最原「な、何、赤松さん。その笑顔」

赤松「最原くんって意外にわかりやすいなって思って! あははっ!」

赤松「いや、わかるよ。巌窟王さん恰好いいもんね」

最原「……ああ、もう!」

百田「???」

273: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 21:48:27.07 ID:2NfLK3zz0
帽子回収後

最原「……やっぱりビッチョビチョだ」

百田「これもう今日の学級裁判では付けられねーだろ」

最原「……仕方ないから帽子はどこかに放置していくよ……」

最原「そうだ。そろそろ巌窟王さんが復活してるかもしれないから、体育館に行こうか」




体育館

最原「戻ってきた……のはいいけど」

最原「巌窟王さんは?」

獄原「えっと、アマデウス斎藤に会ってくるって言って、どこかに行っちゃった」

最原「天海くん?」

天海「……」サッ

最原(目を逸らされた。どうも言う機会逃したみたいだな)

最原(多分今日も訓練できない、って義理堅く言うつもりで行ったんだろうからなぁ)

最原「で。アンジーさんは……やっぱりまだ寝てるんだね」

アンジー「スヤァ」

百田「これ巌窟王のマントじゃねーか」

茶柱「あの人、本当にアンジーさんには甘いですね……」

274: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 21:52:12.79 ID:2NfLK3zz0
中庭

巌窟王「……いないな。やはりこういうときの鼻は利くらしいな」

巌窟王「アマデウス斎藤……食えないヤツだ」フッ


ピンポンパンポーン



アナウンス『えー! ではでは! そろそろ捜査も一段落したようですので!』

アナウンス『良い子のみんな、集まってー! 学級裁判の時間だよー!』

巌窟王「……」

巌窟王(……今回の事件……俺はどういうスタンスでいるべきだ?)

巌窟王(……)

巌窟王(……ふん。こんなことに心を砕くなどバカらしいな)

巌窟王(俺はただ、俺のやりたいようにやるだけだ)

275: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/11(水) 22:08:34.64 ID:2NfLK3zz0
体育館

百田「……んじゃあ、いっちょぶちかましてくるか」

赤松「……最原くんさ。やっぱり帽子取った方が恰好いいよ?」

最原「はは。でも、その……やっぱりさ……」

最原「……被っていたいんだ。いざってときこそ猶更」

赤松「うーん。やっぱり初回特典蹴ってて正解だったな」

赤松「……まだ心配だよ。最原くん」

最原(……確かに。僕は巌窟王さんほどには頼もしくない)

最原(でもだからこそ、少しでもマネしていたかったんだ)

最原(……これじゃあアマデウス斎藤になってた天海くんにどうこう言えないな)

最原「裁判場に行こう」

赤松「うん!」

最原(裁判が、始まる……!)

茶柱「アンジーさーん。起きてくださーい。裁判が始まりますよー」ユサユサ

アンジー「あと五分ー」

最原「……」

最原(始まるッ!)ギンッ

赤松「最原くん。無理にシメようとしなくってもいいんだよ」

百田「しまらねぇな……本当……」

277: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 18:14:24.90 ID:GaET0oAS0
赤い扉の中

巌窟王「……来たか。遅いぞ」

百田「そう言うなって。色々収穫はあったんだからよ」

百田「今回もお前を殺した犯人をバシッと捕まえてやるぜ。楽しみにしてな!」

巌窟王「……」ニヤ

最原(なんか上機嫌そうだ……割と相性いいのかな、この二人)

巌窟王「む。最原。帽子を取ったのか」

最原「うん。なんか事故っちゃって」

巌窟王「……」

巌窟王「……『悪意の在処』を見誤るなよ」コソッ

最原「……」

最原(悪意の在処……?)

茶柱「巌窟王さん。アンジーさんが起きないのでおんぶで連れてきたんですけど」

巌窟王「起きろアンジー。そろそろ正念場だぞ」

アンジー「ふああー……い」

夢野「ゆるゆるじゃのう。これから命懸けの頭脳戦だと言うに」

天海「ははっ。でもまあ気楽でいいじゃないっすか」

巌窟王「行くぞッ!」ギンッ

278: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 18:26:40.09 ID:GaET0oAS0
学級裁判 開廷!

モノクマ「えー! ではでは! 最初に学級裁判の簡単な説明から行いましょう!」

モノクマ「学級裁判では、誰が犯人かを議論し、その結果はオマエラの投票により決定されます!」

モノクマ「正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき。だけど、もし間違った人物をクロとしてしまった場合は……」

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、生き残ったクロだけに、晴れてこの才囚学園からの卒業の権利が与えられるのです!」

モノクマ「……なお。闖入者の巌窟王さんもこのルールが暫定的に適応されているのをお忘れなく」

春川「巌窟王が自殺だった場合は、ってこと? その可能性は……」

最原「ほぼ最初から除外していいと思う。万が一、アンジーさんが復活させなかった場合はそのまま死亡なわけだし」

最原「何より、あそこまで肉体を損傷した上で生き残れるなんて巌窟王さん自身も知らなかったはずだよ」

星「根拠があるみてーだな。聞かせてもらおうじゃねーか」

最原「……口止めされてたけど、この際言うよ。巌窟王さんの携帯電話に出たんだ」

巌窟王「何ィ?」

巌窟王「……何か吹き込まれなかったか? 正気を保てているか? 誰にも明かしていないはずの秘密を握られて脅されたりしていないだろうな?」

最原「そんなに危険な人だったの!?」ガビーンッ

最原「だ、大丈夫だったよ。それより電話の内容だったんだけどさ」

最原「巌窟王さんが復活不可避の損傷を負ったはずなのに、令呪で蘇ったことに意外そうな反応をしてたんだ」

最原「つまり厳密に言うと、巌窟王さんは復活できるはずがない。なのに、復活した。原理不明なままにね」

百田「仮にアンジーに対して絶対の信用を置いてたとしても、原理不明の仕掛けに命をかけるほど巌窟王もバカじゃねーってことか」

279: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 18:41:04.78 ID:GaET0oAS0
王馬「電話口のその人が嘘を吐いてる可能性は? 唯一、ホームとの連絡がつく巌窟王ちゃんの仲間でしょ?」

王馬「つまり生き残るのが一人だけっていうルールの範疇の外の存在だよ? 信じていいと思う?」

最原「仮に巌窟王さんが自殺するとして、ここまで大がかりなことをする必要があったのかな?」

最原「もうちょっとコンパクトかつ楽な方法があったような気がするけど……」

アンジー「もし仮に神様がクロになるんだとしたら、自分自身じゃなくってアンジーを真っ先に殺すと思うけどね」

巌窟王「……」

百田「おい。否定しろよ巌窟王」

巌窟王「無理だな。俺をこの空間に縛っているものの中には、確かにアンジーとの契約がカウントされているのだ」

巌窟王「まだその気になっていないだけで、脱出するだけならアンジーを殺した方が早い」

巌窟王「……まだな」

赤松「そんな気ないくせに、無駄に悪ぶるよね。巌窟王さん」

巌窟王「ふん」

最原「つまり巌窟王さんの合理性に照らし合わせるなら、いくらなんでも自殺なんて方法は取らないんだよ」

天海「そもそもイメージにあわないって理由で弾いていい可能性ではあったと思うんすけどね」

東条「一応、これで足場は固まったと見ていいわ。無駄ではないでしょう」

280: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 18:59:44.87 ID:GaET0oAS0
真宮寺「それじゃあ、次は何について話せばいいかな?」

白銀「うーん。モノクマファイル、今回は新情報がないからね……死因、死亡推定時刻、死体の細かな状態……」

白銀「前回は書かれていたことがスッポリ抜け落ちてる。これじゃあわからないことだらけだよ」

夢野「少なくとも、巌窟王がピラニアに食われた時点では、巌窟王は間違いなく死んでいたはずじゃぞ」

夢野「あのピラニアは死肉しか食らわんからのう」

茶柱「えっ? そうなんですか!?」


ポンッ


夢野「ここに比較的腹が膨れていないピラニアが一匹入った水槽がある」

茶柱「いつの間にッ!?」ガビーンッ

王馬「うわー。忘れたころにマジシャン設定をぶち込んで来るよね」

夢野「魔法じゃ魔法。で、この水槽にウチが手を入れても」チャポンッ

夢野「御覧の通りじゃ。まったく反応せん」

百田「っつーことはつまり、巌窟王が死んでいたのは相当前ってことだな」

赤松「私は夢野さんの手伝いに叩き起こされて、体育館のドアが開くまでずっとドアの前に立ってたんだ」

赤松「だから……巌窟王さんが死んだとしたら……」

天海「昨日の夜時間より前ってことになるはずっすよね」

巌窟王「……?」

王馬「それじゃあ、その線で議論を進めてみようか! 昨日の巌窟王ちゃんを最後に目撃したのは……?」

百田「俺だ!」

王馬「嘘……だろ……? 百田ちゃんっ、なんで巌窟王ちゃんを殺したんだよぉ!」ブワッ

百田「殺してねぇーよッ! 目撃したかって話だっただろッ!」ガビーンッ!

281: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 19:10:49.31 ID:GaET0oAS0
百田「俺は昨日の午後九時前後に、巌窟王が星の研究教室近くにいるのを見かけたぜ!」

百田「っつーことは巌窟王の死亡推定時刻は」

東条「午後九時から午後十時の夜時間までの間に限定されている、ということになるわ」

東条「もちろん、これは百田くんの証言を信じるならば、の話になるけど」

王馬「でも『生き残るのはクロ一人か、シロ全員か』ってルールがある以上、共犯はほぼ成立しないよね?」

王馬「つまり百田ちゃんの目撃証言より前の目撃証言は、いよいよ信用していいと思うよ?」

百田「俺の証言を信用されねーのは甚だ不満だが、俺より前に巌窟王を見たのは……」

白銀「あ。私だね。最後にゴン太くんに捕まった私が、巌窟王さんを倉庫で見てるよ」

白銀「あれは大体七時だったけど……そういえば、何か探していたみたいだったけど。何を探してたの?」

巌窟王「……言う必要があるか?」

白銀「ナイデスゴメンナサイ」ガタガタ

夢野「怖がりすぎじゃ怖がり過ぎ。これでも結構愛嬌あるぞ?」


283: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 20:10:26.05 ID:GaET0oAS0
最原(……巌窟王さんが倉庫にいた理由。多分、電話口の女の人の言う通り『女性へのプレゼント』を物色してたんだろうな)

最原(その途中で王馬くんの秘密基地を見つけて……秘密基地だとは知らずに万年筆を持っていったんだろう)

最原(待ち合わせの女性……まず間違いなくあの人だろうけど……)

最原(まだ決め手が足りないな。巌窟王さんの死亡推定時刻について異論はあるけど、このまま議論を進めよう)

最原(これが犯人の退路を断つ布石になるはずだ……!)

巌窟王「……」

巌窟王(俺が死んだのは夜時間の最中だ。そのことにあの探偵が気付かないはずがない)

巌窟王(何を考えている……?)

284: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 20:24:32.18 ID:GaET0oAS0
最原「ひとまず議論を進めてみよう。余程の矛盾が出ない限り、百田くんの証言は信用する方向で」

百田「最原……!」

最原「だって、百田くんの証言が本当だとすると謎が一気に簡単になるからね」

獄原「そっか。昆虫で和もう会に参加してた人たちは……」

キーボ「八時から十時までは完璧なアリバイができています」

キーボ「なお、アレのことを知らない人たちに説明しておくと、昆虫で和もう会そのものが始まった時間は八時ですが」

キーボ「ゴン太くんによる生徒の収集が始まったのは六時からです。早い人はそこからのアリバイがあることになりますね」

真宮寺「ひとまずそこは面倒だネ。今は省こう。昆虫で和もう会の参加メンバーは……」

赤松「夢野さん、アンジーさん、真宮寺くん、キーボくん、茶柱さん、白銀さん、あと私……」

赤松「最後にゴン太くん……あと一人の王馬くんは、動機ビデオを取りに行っちゃったからアリバイはほぼないんだ」

巌窟王「昆虫で和もう会……」

最原「?」

巌窟王「和めたか? アンジー」

アンジー「和めたよー!」キラキラキラ

巌窟王「獄原ァ!」ギンッ

獄原「えっ、な、何?」

巌窟王「……後でモンテ・クリストの財宝の一部をやろう」

獄原「え? 本当? やったぁ!」

茶柱「そんなおじいちゃんのお年玉感覚でェ!?」ガビーンッ!

最原(悔しいけど凄く興味ある!)ウズウズ

白銀「……議論を元に戻そう? 他にアリバイがあるのって誰?」

285: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 20:36:53.21 ID:GaET0oAS0
十分後

ゴン太は黄金律(E-)を手に入れた!

獄原「わーい」

最原「えーと、整理するね。昆虫で和もう会で完璧なアリバイができているのが八人」

最原「東条さんは午後八時からは王馬くんと追いかけっこしてたから、百田くんの証言が真実だとするとアリバイがある」

最原「僕と入間さんはずっと研究教室に引きこもってたから、こっちは白銀さんの証言がある限りはやっぱり完璧なアリバイ」

最原「次に――」

百田「巌窟王に焚きつけられた直後に、俺がハルマキのところに遊びに行ったんだよ」

百田「巌窟王と別れてから十分も経ってねぇ話だ。巌窟王の死体を体育館に仕込むのはちょっと無理がねぇか?」

春川「……そのときは大迷惑だと思ったけど、今からしてみると結構ラッキーだったのかな」

春川「バカとハサミは使いようってヤツ?」

百田「誰がハサミだ!」

春川「バカの方でしょ。どう考えても」

最原「これで十四人のアリバイがある。あとは……」

星「俺と天海のアリバイの確認……の番ってわけか」

天海「……!」

286: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 20:42:57.94 ID:GaET0oAS0
星「残念だが、俺にはこれと言ったアリバイはねぇな……少し妙なモンをずっと眺めてたからよ」

キーボ「妙なもの……ですか?」

星「信じられねーかもしれないが……見たことのない高校生が中庭で妙な動きをしてやがったんだ」

星「なんか変な仮面被ってハイテンションでボーダーのシャツの下にサルエルパンツを着込んだ天海っぽい印象を与える高校生だ」

最原「アマデウス斎藤じゃんッ!」ガビーンッ!

獄原「星くんもアマデウス斎藤に会ってたの?」

星「会ってたってのは違うな。九時前後の時間に、星でも見て気分転換しようと思ったら……いたんだよ」

星「月の光で仮面を輝かせながら妙な色香を纏った男子高校生……ありゃ只者じゃねぇ……!」

星「アマデウス斎藤っつーのか。一体、何者なんだ。ヤツは」

最原「天海くんだけどッ!?」ガビーンッ

裁判場全体「……」

裁判場全体「えっ?」

最原「えっ?」

287: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 20:50:09.98 ID:GaET0oAS0
巌窟王「最原。アマデウス斎藤の正体が、天海蘭太郎だと言ったか?」

巌窟王「……その根拠はあるのだろうな?」

最原「えっ」

獄原「そ、そうだよ! アマデウス斎藤が天海くん? どうしてそう思ったの?」

最原「えっ。えっ」

白銀「うーん……確かにアマデウス斎藤と天海くんは……一致している部分もなきにしもあらずな感じだけど……?」

白銀「最原くん。地味に発想が飛躍しすぎじゃないかな?」

最原「いや天海くんで間違いないし、なんでみんなわからないんだよッ!」

最原「ね! 天海くん!」

天海「えっ。何のことっすか?」

最原「!?」ガビーンッ

アンジー「終一ー」

最原「あ、アンジーさん……!」

アンジー「たまには推理が外れることも、あるぞ?」

最原「」

289: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 21:00:42.22 ID:GaET0oAS0
最原(そこからの議論はほぼ不毛な流れだった)


議論スクラム!
アマデウス斎藤の正体は?

天海だ!
最原
赤松
百田
春川
王馬
入間
キーボ
真宮寺


天海じゃない!
アンジー
夢野
獄原
白銀

東条
茶柱
天海


最原(これまでの人生で経験したことのない不毛さだった)

巌窟王「モノクマ! 俺も議論に参加させろ! 天海じゃない派の方だ!」ギンッ

モノクマ「ダメ」

最原陣営「これが僕(俺様)(私)(俺)たちの答えだッ!」

290: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 21:05:24.05 ID:GaET0oAS0
最原(しかも不毛なだけでなく滅茶苦茶長かった)


理論武装!


天海「どうして俺がアマデウス斎藤だと思ったんすか?」ブワァァーッ!

最原「くそっ! しかも無駄に難易度高い!」

最原(そしてすべてが決着に辿り着くころには……)



クライマックス推理!

割愛!


最原「これで証明できたはずだ……何か反論があるなら言ってみてよ」

最原「"超高校級のミステリアス"! アマデウス斎藤! ……いや、天海蘭太郎くん!」


バキバキバキッ!
ガシャァァァァンッ!

COMPLETE!

天海「ぐああああああああああ!」

最原(議論は三時間経過していた。モノクマは寝ていた)

モノクマ「ぐー」スヤァ

291: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 21:09:34.86 ID:GaET0oAS0
アンジー「そ、そんな……!」

巌窟王「バカな……バカな……!」

巌窟王「天海、お前が……アマデウス斎藤だと……!?」ワナワナ

最原「はあっ……はあっ……! あー、長かった! みんな、納得してくれた!? 天海くんがアマデウス斎藤なんだよ!」

巌窟王「黙れッ!」

最原「!?」ビクゥッ

巌窟王「……少し……時間をよこせ……!」クッ

夢野「うっ……うっ……」エグエグ

最原「ええーーーッ!? そこまでショックだった!?」ガビーンッ!

292: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 21:17:19.74 ID:GaET0oAS0
巌窟王「天海。答えてみろ。お前の口から直接聞きたい」

巌窟王「何故身分を偽ったりした? お前の手腕は確かだったのだぞ?」

巌窟王「……素顔でも、充分俺たちは受け入れたはずだ」

天海「……」

天海「自信が……なかったんす……!」

天海「二人の隣に立つ能力が、俺には欠如してたから……だからッ!」

アンジー「……蘭太郎ー」

アンジー「じゃあ、これからは素顔で一緒にいていいよー」

天海「えっ?」

アンジー「アンジーも、神様も、蘭太郎のことを全部許すよ」

アンジー「だからもう、泣かないで。これからもずっと私たちの傍にいてよ」

アンジー「……ダメ?」

天海「……うっ……」

天海「ううううう……!」ポロポロ

夢野「よかったのう! 天海! よかったのう!」





巌窟王「……アンジー。それでは事前に練習した通り、これを付けろ」ポイッ

アンジー「あいさー」パシッ

天海&夢野「えっ」

293: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/12(木) 21:23:22.36 ID:GaET0oAS0
巌窟王「クハハハハハ! アンジーは許すと言ったな!」

巌窟王「悪いが俺にそんな気はない! 復讐者だからな!」

アンジー「じゃあちょっと蘭太郎ー。動かないでねー!」ガシッ

天海「えっ。アンジーさん。なんで俺を羽交い絞めに?」

天海「ていうかそのガスマスクはなんなんすかッ!?」ガビーンッ!

巌窟王「地獄の底へと滑落していけ……」

巌窟王「くしゃみでッ!」ギンッ

天海「ちょ、その手に持ってるの、まさか」

巌窟王「疑似宝具、展開!」

巌窟王「粉よ、延々と降り注げ(オレフル・コショー・フル)!」パッパッ

天海「こしょうびんんんんぎゃあああああああああああ!」

茶柱「きゃあああああああ! くだらないけど超エグいーーーッ!」ガビーンッ

天海「あぎ、がああああ……ぐじょんっ……ぐじょんっ……!」

天海「息がっ、息ができなああああああっぐじょんっっっ!」

天海「あああああああああ……!」




最原「……」

最原「イヤな……事件だったね」

百田「現実逃避すんな」

春川「まだ終わってないしね。事件」

295: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 07:05:03.18 ID:p8j8ajbP0
天海「……ぐじゅんっ……ぐじゅんっ……」ビクンビクン

最原「あそこまで徹底的におしおきする必要あったのかな」

巌窟王「十七人目の高校生などと、一歩間違えれば場を混沌の渦に陥れかねない嘘を吐いた罪は重い」

赤松「まあ……一歩間違えたら取り返しが付かないかな……」

最原(というか混沌の権化みたいな巌窟王さんがそれ言うんだ……)

最原「えーっと、じゃあこれで……アリバイがあるのは……」

王馬「全員だよね。ただし、百田ちゃんの証言を信じるならば、の話だけど」

王馬「逆に言えば、百田ちゃんの証言が嘘だった場合は消去法で確実に百田ちゃんが犯人なんだけどね!」

百田「ああ!? な、なんだとっ!?」

最原「確かに、他の人のアリバイは実質完全に証明されたようなものだからね」

最原「だって、百田くんの証言が本当だった場合は昆虫で和もう会に参加してた人たちのアリバイは完璧だし」

最原「百田くんの証言が嘘だった場合は、百田くんが犯人ってことだから、その他の人間はどっちみち全員シロになっちゃう」

最原「……ただし。僕は百田くんが犯人だとはとても思えないんだ」

最原「最後の目撃者が怪しいって展開になることは誰にだってわかったはずだよ?」

最原「それにも関わらず百田くんは証言した。逆説的に百田くんの証言は真実味があるんだよ」

百田「最原……テメェ……」

王馬「探偵の最原ちゃんがそこまで無駄に先読みすることすら計算の内だったとしたら?」ニヤァ

最原「……」

最原(巌窟王さん自身が証言してくれればいいんだけど、果たして彼はそこまでしてくれるかな……?)

最原(頼むだけ頼んでみる、か?)

296: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 07:16:22.61 ID:p8j8ajbP0
最原(……いや。まだだな。最後の最後に確認すべきことが残ってる)

最原「ねえ。ゴン太くん。アンジーさんを捕まえたタイミングと、そのときの詳しい状況を教えてほしいんだけど」

獄原「えっ? なんで?」

最原「ごめん。今のうちに確認しておかなきゃいけない気がするんだ」

王馬「……ねえ。何のつもり? 話を逸らそうとしているの?」

最原「確認が済んだら、すぐに本筋に戻るよ」

獄原「え、ええと……」

獄原「アンジーさんは夢野さんと一緒に、体育館で捕まえたよ。一番最初だったから午後六時のことだったかな?」

獄原「場所がわかっていたから一番簡単だったんだ」

最原(マジカルショーの準備で頑張ってたからな、二人とも……)

最原(これで充分か)

最原「ありがとうゴン太くん。じゃあそろそろ百田くんの証言が本当かどうか確認しようか」

王馬「どうやって?」

最原「……巌窟王さんに聞くんだよ」

王馬「……教えてくれるかなー?」

巌窟王「……」

巌窟王「さっきから話を聞いていれば、お前たちは何を無駄なことをやっている?」

赤松「えっ?」

巌窟王「俺が死んだのは夜時間だぞ? 何故よりにもよって夜時間以前のアリバイを必死に証明している?」

百田「……」




百田「は?」

裁判場全体「はあああああああああっ!?」ガビーンッ

297: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 07:27:35.05 ID:p8j8ajbP0
モノクマ「……むにゃ……あ、そうだ。寝る前に忘れてたことあった」

モノクマ「巌窟王さん。自分の死亡推定時刻についての情報はもったいぶってね」

巌窟王「何ィ?」

モノクマ「だって今回のモノクマファイルの情報に死亡推定時刻に関する項目は入れてないんだ」

モノクマ「生徒同士の公平性を保つためにね」

巌窟王「つまり、今まで生徒たちが夜時間以前のアリバイの話題しか口にしていなかったのは……」

モノクマ「うん。犯人の偽装工作か、偶然の産物かはこの際置いておくけど、そういうふうに見えていたからなんだ」

モノクマ「だから裁判を盛り上げるためにも、この情報はあんまりみだりに出さないでね。もちろん巌窟王さんの協力次第だけど」

巌窟王「もう言ったぞ」

モノクマ「あ、遅かった。うぷぷぷぷ」

巌窟王「クハハハハハハハハ」

百田「テメェら実は仲いいだろッ!?」ガビーンッ

赤松「じゃあ、今までの議論は全部……!」

東条「すべて無意味だったようね」

最原(……)

最原(それはどうかな?)


299: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 12:58:26.05 ID:p8j8ajbP0
最原「ところで巌窟王さん。もしも『自分の死亡推定時刻が最大の謎だった』っていう事実を事前に知ってたら」

最原「……百田くんの目撃証言について訊かれたとき、どう答えてた?」

巌窟王「答えるわけがあるまい! それが犯人の偽装工作ならば、被害者の俺が答えるのは筋違いにもほどがある!」

巌窟王「後悔……義憤……怨恨……それらマイナスの感情はすべて俺の力の糧だが」

巌窟王「この場においては必ずしも当てはまらないのだからな!」ギンッ

百田「わかるように言え! 巌窟王!」

巌窟王「穴があったら入りたい」

白銀「あ、恥ずかしいんだ……」

巌窟王「犯人に対して非常に申し訳ないと思う」

茶柱「被害者なのに!?」ガビーンッ

アンジー「神様ファイトー! おー!」

300: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 13:06:07.69 ID:p8j8ajbP0
巌窟王「……遺憾だが、この場においては俺もモノクマと同じスタンスだ」

巌窟王「裁判の結果は、俺の行動を決める指針となるだろう」

巌窟王「一応言っておくが、アンジーの現状の魔力供給では、この場にいる全員を救うのにはとても足りない」

巌窟王「そして、犯人を救うかどうかはアンジーと俺の裁量一つだ」

入間「正しいクロを指摘できなければクロ以外の全員おしおきのルールが適応されたら……」

王馬「俺たちはみんな仲良くおしまい。ちゃんちゃん!」

入間「うええー。死にたくねぇー……」

王馬「でもそれって『生き残るだけ』ならクロ側が異常に有利なゲームだよね」

王馬「だって、もし仮にしくじっても巌窟王ちゃんが助けてくれるんだからさ……」

王馬「……おっとごめん。犯人の百田ちゃん! 気を悪くした?」

百田「だから俺は犯人じゃねーって言ってんだろッ!」

301: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 13:20:35.96 ID:p8j8ajbP0
百田「だが夜時間に犯行が行われたとしたら、かなり問題だぜ」

春川「ほとんどの人間は夜時間のアリバイなんてないわけだしね。全員寝静まっているだろうし」

春川「部屋の中に自分以外の誰かがいる場合は別だけど、そんな危険なマネをするヤツなんて……」

春川「……い、な、い……?」ガタガタ

アンジー「あれ。魔姫ー。なんでこっち見て震えてるのー?」

最原「……議論を進めて行けば見えてくるんじゃないかな。本当に夜時間に誰もアリバイがなかったのか」

百田「何か心当たりでもあんのか?」

最原「ひとまず巌窟王さんは夜時間の最中に死んだ。その前提で話を進めてみよう」

最原「もしそうだったとしたら、逆に絶対に犯行現場になり得ないのは体育館だよね」

最原「じゃあ巌窟王さんはどこで死んだんだろう?」

真宮寺「それ以前に、夜時間以降に死体を体育館に運ぶ方法があるかも疑問だヨ」

最原「……」

星「俺の研究教室で犯行があったんじゃねーか?」

最原「!」

302: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 13:32:39.02 ID:p8j8ajbP0
星「水槽の中に落ちていた手錠。あれは俺の研究教室にあったもんだ」

星「しかも、俺の研究教室と体育館には無視できない一つの関係性がある」

入間「肉体関係か?」

王馬「一生でいいから黙っててくれないかな」

入間「ぴぎい!」

最原「……単純に『近い』んだよね。もしもこの二つを繋げる方法があるとしたら……」

最原「……そうだよ! 実際に繋がってたんじゃないかな!」

赤松「繋がってた? それって、どういうふうに?」

最原「これまでの痕跡から考えてみると……多分、星くんの研究教室と体育館はロープウェイで繋がってたはずだよ」

春川「……ロープウェイ?」

303: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 13:41:18.04 ID:p8j8ajbP0
最原「多分、犯人は星くんの研究教室に巌窟王さんを呼んだ後で、巌窟王さんを殴るなりして奇襲」

最原「その後、星くんの研究教室にあった手錠を使って抵抗を弱め、溺死にでもさせたんだろうね」

最原「その後、犯人はどうにかして体育館へと巌窟王さんの死体を運び込もうとするわけだけど……」

最原「このとき、いくつか痕跡が残っているんだ。まず一つ目に、巌窟王さんが殺害現場に持ち込んだ、ある物が見逃せない証拠を作ったんだよ」

赤松「ある物?」

最原「巌窟王さんが倉庫で見繕って、犯人へと手渡そうとしたプレゼント……」

最原「王馬くんの秘密道具の万年筆だよ!」

王馬「えっ?」←初耳

巌窟王「んっ?」←青天の霹靂

304: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 13:44:47.58 ID:p8j8ajbP0
王馬「……巌窟王ちゃん? なんで俺の秘密基地から万年筆を持ってってるの?」

巌窟王「待て。あそこは秘密基地だったのか? ただのガラクタ置き場かと……」

巌窟王「それ以前に、待て最原! 何故お前がそれを知って……!」

prrrrrr!

巌窟王「なんだこんなときに」ピッ

BB『ごめんなさーい! 私が教えちゃいましたー! 許してください!』キャピンッ

巌窟王「」

最原「え、ええと……多分電話口でネタ晴らしされたんだよね。うん、実はその人から聞いたんだ……」

巌窟王「……」ズーン

最原「その人がどうやってこの状況を見ているのか、興味は尽きないけど今は置いておこうかな」

305: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 13:50:06.56 ID:p8j8ajbP0
白銀「巌窟王さんが誰かにプレゼントを渡そうとしてた? それって……」

白銀「……女性相手なら尊いし、男性相手なら……」

白銀「……」

白銀「ブッ!」ゴバッ

茶柱「急に鼻血吹き出しましたーーーッ!?」ガビーンッ

白銀「なんだよ……結構(私の性癖に)当たんじゃねぇか……」

白銀「止まるんじゃ……ねぇぞ……」キーボーオーノーハナー

茶柱「そして死んだーーーッ!」ガビーンッ



白銀は閉鎖空間のストレスから軽度に腐っていた

306: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 14:02:20.64 ID:p8j8ajbP0
最原「その万年筆のインクが曲者でさ。一度どこかに付着したら三日間は洗い落とせないらしいんだ」

最原「そのインクがどこについてたかっていうと……星くんの研究教室の窓付近の床なんだよ」

最原「多分、犯人がそこから巌窟王さんの死体を運び出すときに、ポケットからうっかり万年筆が落ちて」

王馬「万年筆が壊れて中身が全部出ちゃったんだね」

王馬「……ん? じゃあ俺の万年筆って」

東条「順当に考えれば今ごろどこかのゴミ箱の中でしょうね」

王馬「酷いよおおおおおおおおおお!」ビャーッ

最原「倉庫の中に秘密基地作った王馬くんも悪いと思うけど……」

最原「えーと。それで痕跡は他にもあるんだ」

最原「星くんの研究教室の窓枠にかかった負荷の痕跡。体育館の窓枠にかかった負荷の痕跡……」

最原「そしてプールの倉庫に仕舞われてた浮き輪の取っ手にも同様に負荷がかかった痕」

最原「……ピラニアの水槽を天井に釣り上げるのに使ったロープも不自然に位置が移動してた」

最原「これらを全部加味して考えてみるに……やっぱり結論は一つだけなんじゃないかな」

307: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 14:09:03.87 ID:p8j8ajbP0
最原「それに、僕の推理が正しければ、マジカルショーで急に巌窟王さんの死体が現れたことも説明が付くしね」

百田「そうか。あの窓枠とピラニアの水槽は位置が近い。犯人はピラニアの水槽に巌窟王の死体を入れたのか」

茶柱「えっ。待ってください。それだと巌窟王さんの死体がピラニアに……」

真宮寺「食べられないヨ。水槽の中に残ってた硝子の板で、ピラニアのいる部分と巌窟王さんの部分を仕切ってただろうからネ」

獄原「……そっか。ピラニアさんと一緒に何か大きなものが落ちて来たと思ったけど、あれって……巌窟王さんの死体だったんだ」

白銀「押し出されて密度が増したピラニアの影に隠れて、巌窟王さんの死体も見えなくなるだろうしね……」フラフラ

茶柱「……後でレバ刺しでも食べましょうか……」

最原「……」



最原「犯人は星くんの研究教室と、体育館の間をロープウェイで移動したんだ!」

星「なるほど。俺の研究教室と体育館の窓だと、俺の研究教室の方が高いからな。一方通行だがトリックは成立させられる」

百田「決まりだ! 犯人は巌窟王の死体を、星の研究教室から体育館まで直に運んだんだ!」

アンジー「……」

アンジー「うーん、本当にそうかなー?」

最原「えっ?」

308: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 14:12:01.44 ID:p8j8ajbP0
真宮寺「おや? 夜長さんには、何か反論があるみたいだネ」

アンジー「いや、痕跡は残っているから、トリックが使用されたという一点のみは賛成なんだけどさー……」

アンジー「それ、かなり難しくないかなって思っただけなんだよねー」

最原(難しい……?)

巌窟王「……アンジー。余計なことを言うな」

アンジー「おっと。ごめんなさい神様」

春川「……前から訊きたかったんだけど、夜長はなんでソイツのことを神様って呼んでるの?」

巌窟王「その説明は面倒だ! 省け!」ギンッ

最原「……」

巌窟王(……アイツはもう犯人の正体に目星はついている)

巌窟王(今の段階でも犯人を指摘できるはずだ。何故それをしない?)

最原(……待てよ。巌窟王さんを見て気付いたけど、アンジーさんが言った『難しい』の意味って……!)

309: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 14:13:21.35 ID:p8j8ajbP0
最原「体格……?」

巌窟王「!」ギクリ

最原「そうか。手作りのロープウェイで、ただでさえ足場が不安定なのに、巌窟王さんの体を乗せた状態でロープウェイを使うのは……!」

入間「犯人自身の体重も加わっていたはずだから、発車、走行中、停車のいずれにおいても危険度は高ぇーだろうな?」

入間「言うなれば……夜の田舎道を全裸で歩くようなスリル……あぁん、想像しただけで……!」

王馬「入間ちゃんって本当存在自体が不快だよね」

入間「」

アンジー「ちなみに神様の身長は185cm、体重は75kgだよー!」

巌窟王「アンジー!」

アンジー「……ごめんなさい」シュン

最原(……? なんだ? 巌窟王さんのさっきからの態度……)

最原(焦ってる?)

百田「確かに不可能じゃないにしろ、かなり難しそうだな……」

春川「そもそも、最原の推理が間違ってるって線は?」

赤松「痕跡がこれだけ残っているんだから、今更その線を考えるのは難しいと思うんだけど……」

巌窟王「どうでもいいではないか! 俺の死体はロープウェイで運ばれたのだ!」

巌窟王「その点を加味するに、既に怪しい人物を指摘することすら可能なはずだが!?」

最原「……」

最原(やっぱりだ……巌窟王さんは何かを隠している!)

最原(確かに今の段階でも犯人を指摘することは可能だけど……)

最原(……?)

最原(……そう、か! 巌窟王さんが隠したいのって、もしかして!)


313: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 18:46:07.78 ID:p8j8ajbP0
最原「……事件の全貌が見えたかもしれない」

茶柱「わかりました! やっぱり最原さんの推理が間違っていたんですね!」

最原「違くてさ。そもそもの話、僕たちが星くんの研究教室に目を付けたのって、水槽の中に手錠が落ちていたからだよね?」

最原「僕たちはさっきまで、巌窟王さんを溺死させるときに、抵抗を弱めるために手錠を付けたものだと思っていたけど……」

最原「だとしたら、どうして手錠が水槽の中に落ちてたのかな? 溺死させた後でしまえばよかったのに」

巌窟王「……」ギリッ

東条「そう言われると不自然ね……単純に鍵が見つからなかった、という可能性は?」

夢野「星に嫌疑をかけるため、あえて残しておいたとも考えられるのう」

最原「多分これは犯人のちょっとした工作の副産物だよ」

百田「ちょっとした工作、だと?」

最原「……ひとまず、最初から考えてみよう」

最原「巌窟王さんの、本当の『死因』からさ!」ズバァァァンッ!

巌窟王「ぐぅっ……!」グサッ

314: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 18:47:43.57 ID:p8j8ajbP0
入間「水の中にいたんだから溺死だろ? あったりまえじゃねーかダサイ原」

最原「それなんだけど、モノクマファイルには巌窟王さんの死因が書かれてなかったんだよ」

最原「というか全体的に、今回のモノクマファイルは当てにならないほど情報がなかったよね?」

百田「死亡推定時刻すらわかんなかったからな……犯人のトリックの要なんだから当然だけどよ」

キーボ「……この話運びからすると、最原クンにはもうわかっているんですね? 巌窟王さんの本当の死因が」

巌窟王「……話を脱線させるな。もう犯人など決まっているだろう」

最原「……」

最原「巌窟王さんの本当の死因は『失血死』だ」

巌窟王「ちぃっ……!」

赤松「し、失血死? 溺死じゃなくって……?」

最原「星くんの研究教室のシンクを調べた人ならわかると思うんだけど、あれって事件発覚後には過剰なほど洗浄されてたんだよ」

百田「ああ。すっげー薬品臭かったな。多分アレは漂白剤、か?」

最原「変だよね。ただの溺死なら、こんなにシンクを洗う必要なんかないのに」

最原「逆に言うと、あのシンクは洗われる前は、なにか取り返しの付かない汚れがビッシリ付いてたんじゃないかな?」

最原「つまり……巌窟王さんの血で汚れていたはずなんだ!」

最原「いや、それどころじゃない。多分、巌窟王さんの血でシンクが満たされていたはずだ!」ズバァァン!

茶柱「み、満たされていたッ!?」ガビーンッ

白銀「血液でッ!?」ガビーンッ!

315: 新しいアポのOP超いいな ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 18:48:52.25 ID:p8j8ajbP0
真宮寺「ククク……なるほどね。話が見えて来たヨ」

真宮寺「犯人は巌窟王さんの血液を抜き、体重をその分だけ削減した……最原くんはそう言いたいんだネ」

真宮寺「でも最原くん、その推理には穴があるヨ」

最原「犯人は血を抜いて巌窟王さんの体重を軽くしたいのに、人体から血液を抜くと死んでしまう……って点なら解決できるよ」

真宮寺「え?」

茶柱「えーっと……最原さんは当たり前のことを何しみじみと言っているんですか?」

春川「医学的に、人体から血液をすべて抜くのはほぼ不可能って話だよ」

春川「まず出血が起こるのは『心臓が動いている間のみ』だからね」

百田「終一の推理は『巌窟王の死体を軽くするためには血液を抜く必要があるが、血液を抜くと血流が止まる』っつー矛盾があるわけか」

最原「平気だよ。それでも人体はかなり軽くなるはずだ」

最原「巌窟王さんが死にそうになる度に『蘇生』させればいいんだからさ!」

巌窟王「よせ……その先は地獄だぞ」ギリィッ!

316: 具体的にどこがいいかと聞かれると困るけど ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 18:50:11.07 ID:p8j8ajbP0
最原「星くんの研究教室には送球装置があったんだけどさ。それのコンセントが不自然に切断されていたんだよ」

最原「多分、犯人は巌窟王さんの体を生きた状態でシンクに固定して、手首かどこかを切り裂いた後、水をためたシンクに手首を突っ込ませたんだ」

最原「おそらくそのときの巌窟王さんの姿勢は、傷が心臓の位置より低くなるように、身をシンクの淵に寄りかからせる形になっていたはずだよ」

最原「気絶させた巌窟王さんの死体から血液を抜いていく過程で、巌窟王さんが死にそうになったときに……」

最原「犯人は切断したコンセントを使って巌窟王さんの体にショックを与えたんだ」

入間「……は!? なんだその超原始的AED! マジで言ってんのか!?」ガビーンッ

最原「乱暴でも後遺症が残ってもどうでもよかったはずだよ。だって、最終的には殺すんだからさ。いくら乱暴でも構わない」

赤松「……ちょ、ちょっと待って。最原くん。何を言って……!」

最原「こうやって犯人は、巌窟王さんの体から血を抜き、死にそうになったらショックで蘇生させ……」

最原「また血を抜いて、死にそうになったらショックで蘇生させ……」

最原「それを何度も何度も繰り返して……!」

東条「待って。仮にそれで致死量を遥かに超える量の血を抜いたとしても、まだ彼の体はかなりの重さが残っていたはずよ?」

東条「そんな工作をしたところで、気休めにしかならないわ」

最原「……」

最原「折りたたんだんだ」

キーボ「は?」

巌窟王「ッ!」

317: なんかもうLISAっていいよね最高じゃん ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 18:52:25.05 ID:p8j8ajbP0
最原「巌窟王さんはマントを着こんでて、その体は水槽の中でもほとんど隠れてたけどさ」

最原「そのときの巌窟王さんの五体は、果たして無事だったのかな?」

白銀「ピラニアに食べられちゃったわけだから、地味に無事じゃないよね?」

最原「その前は?」

赤松「……ピラニアに食べられる前の、巌窟王さんの状態?」

王馬「うーん、わからないなー……『誰かさん』がアンジーちゃんを急かして、巌窟王ちゃんをさっさと蘇生させちゃったからね」

王馬「ほとんど検視はできなかったんだよねー。誰かさんのせいで!」

最原「……」

最原「僕は……覚えてるよ。巌窟王さんの骨、特に手足の関節や骨は、外れていたり折れていたり、酷い有様だった」

アンジー「アンジーも覚えてるよー! 神様のことを一瞬たりとも見逃せないからねー!」キラキラキラ!

アンジー「あ、なんならその光景を絵に描いたものを持ってきてるけど?」

赤松「い、いい。見たらなんか気分悪くなりそうだから……」

百田「……終一。折りたたんだって、まさか……!」

最原「重さを軽減できたら、次は大きさだ。そのときの巌窟王さんの状態が無事だったとは思えない」

最原「不自然に残ったあの手錠は、多分留め金の代わりに使われたんだ」

最原「巌窟王さんの死体は、あの時点では『自分の胴体を自分の手足でがんじからめに縛り付け、それを手錠でロックする』ような姿勢だったはずだよ」

赤松「えっ!?」

天海「……それは……想像もしたくないっすね……」

天海「だとすると、巌窟王さんがさっきから妙に焦っているのは、それを思い出したくないから?」

春川(いつの間にか復活してた……)

アンジー「神様には忘却補正があるから、元から何一つとして忘れないってー!」

巌窟王「……」

318: それにしても天草くんのラスボス感すげぇな ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 18:56:33.18 ID:p8j8ajbP0
王馬「にししっ! いやぁ、そうかそうか! わかっちゃった! 巌窟王ちゃんも優しいよねー!」

王馬「ねえみんな! 仮に最原ちゃんの推理が本当だったとしたら、犯人はどんな人物だと思う?」

茶柱「ど、どうって……」

赤松「ここから出るためだからって、私たちを信じてくれていた巌窟王さんを拷問じみた手段で殺して……」

赤松「しかも、殺した後も巌窟王さんの体をまるで物みたいに扱って……!」

赤松「……」

王馬「許せない。いや……そうは思ってないヤツも『怖い』とは思ったはずだよ」

王馬「思い出してほしいんだけど、巌窟王ちゃんの理念は『全員揃っての脱出』でしょ?」

王馬「だとしたら、間違っても言えないよねぇ……自分を殺した人間が、まさかそんな残酷なヤツだったなんて!」

巌窟王「……」

東条「確かに……ここまでの蛮行を犯した人間と、今まで通り接することができる人なんていないでしょうね」

春川「今回のクロもどうせ巌窟王が助けるんだと思っていたけど、この分だと考え直した方がいいかもね」

巌窟王「春川……」

319: ところで今までのアポ見てるとメインヒロインってどう見てもアス…… ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 18:58:50.26 ID:p8j8ajbP0
百田「で? どうなんだ巌窟王! お前、本当にそんな酷ェ殺され方したってのかよ!」

百田「それでもお前は黙ってるってのかよ!」

巌窟王「……」

赤松「巌窟王さん、答えて……! 全部覚えてるんでしょう? だったら……!」

最原「……その献身は、間違ってるよ」

巌窟王「何?」

最原「いくら僕たちを助けるためだからって……自分のことをそこまで犠牲にするなんて」

最原「自分の死の真相を隠そうとするなんて……!」

最原「そんな献身なら、僕たちはいらないんだ!」

巌窟王「――」

巌窟王「くは……は……」

巌窟王「クハハハハハハハハハハ」

巌窟王「クハハハハハハハハハハハハハハ!」



巌窟王「違う、違う違う!」反論!

320: マジでジクジャンエンドに落ち着くのかな ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 19:00:13.79 ID:p8j8ajbP0
巌窟王「献身……献身と宣ったか? よりにもよってこの俺にッ!」

最原「えっ?」

巌窟王「ならば答えてやろう。俺の死因は溺死だッ! それ以上でも以下でもない!」

最原「う、嘘だ! それなら何で、さっきの巌窟王さんは焦ってたんだよ!」

巌窟王「そんなことはどうでもいい! 被害者の俺自身が証人だ!」

巌窟王「お前の推理は間違っているぞ! 一丁前に調停者を気取るな、探偵!」ギンッ!

最原「……」

最原「曲げる気はない」

巌窟王「なにィ?」

最原「僕は……僕自身のために、この主張を曲げる気はない」

最原「真相を知らなきゃ、僕たちは前に進めない!」

最原「どんな罪を犯したのか知らないと、僕たちは何も許せない!」

最原「何よりも、あなたの名誉のためにも、この裁判は中途半端なところで終わらせちゃダメなんだッ!」

巌窟王「……許すため、と来たか。俺には永遠にない発想だな」

巌窟王「いいだろう。そこまで言うのならば覚悟を決めろ。俺は容赦はしない」

巌窟王「貴様の推理で! 俺の反論を! 見事斬り伏せてみせろッ! 最原終一ィ!」ボウッ!

321: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 19:03:00.40 ID:p8j8ajbP0
キーボ「……んっ?」

入間「どした、キーボ」

キーボ「いえ。何か……今まで視界に自分でも気づかないノイズがあったようなのですが」

キーボ「それが急に晴れたような……」

入間「は?」

百田「……」

赤松「最原くん……! 勝てるの?」

最原「勝つ? 違う……真実はいつも、たった一つだけだ」

最原「それをわかってもらう。巌窟王さんに」

最原(そうだ。僕は……!)

323: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 19:38:53.06 ID:p8j8ajbP0
反論ショーダウン真打!

巌窟王「シンクが過剰に洗われていたからなんだ!?」

巌窟王「送球装置の電源周りがどうした!?」

巌窟王「それが俺の証言を撤回するに足る証拠か!?」

巌窟王「弱い弱い弱い弱い……あまりにも!」

巌窟王「俺の証言を崩すには、何一つとして足りていないぞ!」

最原(引くわけに行かない!)

最原「でも逆に、巌窟王さんの証言を証明する証拠もないよね?」

最原「モノクマファイルにも死因は書いてなかったんだからさ!」

巌窟王「ふん。俺とお前の立場が対等なつもりか?」

巌窟王「俺は被害者で、お前は第三者だ」

巌窟王「つまり! 『決定的な証拠がない』限りは被害者の俺の証言の方が有効だ!」




最原「その言葉、斬らせてもらうッ!」ズバァァァッ!

325: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 19:50:27.48 ID:p8j8ajbP0
最原「巌窟王さんの証言を撤回させる決定的な証拠ならあるよ」

最原「星くんの研究教室にあったダンベルだッ!」

巌窟王「ぐうううう……っ!」

赤松「えっと、あの分解できるダンベルがどうかしたの?」

最原「犯人はシンクに巌窟王さんの身を乗り出させる形で、血を流させた」

最原「でもそれって、最低限手首の部分だけはシンクの底付近に固定しないとダメなんだよ」

最原「じゃあ、犯人は一体そのとき、どんな道具を使ったんだと思う? どんな方法で?」

百田「ロープでシンクに固定……いやダメだな。胴体はともかくとして、手首はシンクの底に固定しねぇとなわけだし」

百田「……あ、あああああっ! そうか! それでダンベルか!」

百田「ダンベルに巌窟王の手首を括りつけた状態でシンクの底に沈めれば……!」

最原「テグス。ロープ。ガムテープ……括りつけるときに使うものは、処分が簡単なものでいい」

最原「更に、蘇生させたときに巌窟王さんの意識が覚醒したとしても、そのときはダンベルを持ち上げられないくらい衰弱してるはずだから問題ない!」

巌窟王「……バカな。ダンベルが使われた痕跡があるのか?」

最原「あるよ。アレも漂白剤臭かった」

巌窟王「く、クハハハハハハ! 血の痕が残ってたわけではあるまいに、それでは何の証明にも……!」

赤松「いや、待って。あったよ、血の痕なら!」

巌窟王「な、にィ……!?」

赤松「あれってウェイト可変式だったから、分解ができるんだよ」

赤松「実際に星くんが私たちの目の前で分解したとき、ジョイント部分には間違いなく血の痕があった!」

赤松「なんであんなところに血の痕ができるのか、ずっと疑問だったけど……」

赤松「今わかったよ。血が溜められたシンクに丸ごと沈んでいたときに、ジョイント部分に血が沁み込んだんだ!」

巌窟王「ぐああああああっ……!?」

百田「巌窟王。もうお終いだ。ここまでの議論でハッキリわかった」

百田「……真実に近いのは終一の方だ! お前の優しい嘘じゃねぇ!」

最原「!」

326: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 19:58:56.58 ID:p8j8ajbP0
巌窟王「……そうか。なるほど。それが……お前たちの出した答えか……」

巌窟王「……」

巌窟王「で?」

最原「え?」

巌窟王「その証明に、一体どんな意味があったというのだ?」

百田「何って……お前の死因がわかったんだぞ。議論が発展したってことだ」

巌窟王「クハハハハ! 百田! お前は何も気づいていなかったようだな……!」

巌窟王「いいか! 先ほど東条が言ったように、そんなものは気休めにすぎない!」

巌窟王「つまり犯人がやったということを証明したところで、本筋とは何の関係もないのだ!」

巌窟王「第一、その漂白剤の臭いをお前たちは正しく認識していたのか?」

巌窟王「シンク周り……それだけではなかったはずだ」

最原「そうだね。今から考えると、多分あのインク周りも漂白剤で洗われていたはずだ」

巌窟王「犯人が漂白剤を使って現場を掃除した……それだけの証明でよかったのだ」

巌窟王「お前たちがやったことは、必要のない残酷な真実を無邪気に暴いただけに過ぎない!」

巌窟王「……それがどんな意味を持つかも知らずに、な」

327: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 20:06:14.79 ID:p8j8ajbP0
王馬「そだねー。最原ちゃんは今の推理で完全に暴いちゃったわけだ」

王馬「犯人が、自分の計画を成就させるためにはどんなことでもやる悪魔みたいなヤツだってね」ニヤァ

最原「……」

巌窟王「この時代に産まれた人間にはわかりづらいか? 無理もない。人口は七十億を超えたらしいからな」

巌窟王「いいか! いかに俺に強大な力があろうと! お前に! どれだけの才能と知性があろうと!」

巌窟王「絶対に曲げられない現実というものがある!」

巌窟王「『孤独こそが死、そのもの』。これは極限状態であれば絶対に誤魔化せない法則だ!」

星「……孤独が……死、か……」

巌窟王「許す。ハッ、それもいいだろう。やりたければやればいい」

巌窟王「だがお前一人の許し程度では、何も変えることはできないのだ」

巌窟王「何一つとして……何一つとして、なァ!」ギンッ

最原「……」

最原(僕のやったことは、間違いだったのか……?)

最原(僕は……!)

百田「……違ェな。巌窟王。一人じゃねぇ」

最原「!」

巌窟王「……?」

百田「俺も許してやるよ。終一が許すっつーんなら……俺もコイツの考えに乗ってやらァ!」

百田「前の学級裁判で言わなかったか? テメェに吠え面かかせてやるってよ!」

最原「……百田くん?」

巌窟王「……クハハ……」

328: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 20:13:15.83 ID:p8j8ajbP0
巌窟王「クハハハハハハ! 一人、二人、まだだな。まだ足りないぞ!」

巌窟王「まだ……まったく……!」

赤松「さ、三人なら、どう!?」

最原「赤松さん!」

赤松「……ねえ。もう、いいよ。巌窟王さん。見てられない」

赤松「もう見てられないよ……巌窟王さんが自分を責めるのを見るの……やだ……!」

巌窟王「……」

巌窟王「好きにしろ。もう呆れて物も言えん」

巌窟王「……若いとは恐ろしいものだな。お前たちは何も知らないのだ」

巌窟王「人間の残酷さも。酷薄さも」

巌窟王「……知らないままで良かったのだ」

アンジー「……神様……」

最原「……」

最原「もう、犯人はわかってるよ。多分、トドメも刺せると思う」

最原「巌窟王さん。僕たちは絶対にそんなものに負けたりしないよ」

最原「……絶対にだ!」

巌窟王「……」

331: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 21:33:20.18 ID:p8j8ajbP0
最原「……」

最原(と言っても決定的な証拠がないんだよな)

最原(議論の中で口を滑らせてくれることを期待したけど、それもなかったし)

最原(……間違ってはいないと思うんだよな……)

最原(……仕方ない。ちょっとだけカマをかけるか)

最原「あのぶちまけられたインク……わずかだけど飛び散った先で不自然に途切れてたんだ」

赤松(あれ? そうだったっけ?)

百田(そうだったのか? まったく気づかなかったぜ)

最原(嘘だけど)

最原「犯人は浮き輪をカゴの代わりにしたロープウェイで巌窟王さんを運んだ」

最原「だとしたらさ。犯人はそのとき、足はどうしてたんだろうね」

夢野「んあ? 足、じゃと?」

最原「犯人はおそらくヒールの高い、尖った靴を履いてたはずだ」

最原「だとしたら靴は星くんの研究教室側に置いておくしかない。そんな靴で浮き輪に乗って穴が開いたら取り返しが付かないんだから」

最原「どうせロープの回収のときに星くんの研究教室に寄ることになるわけだし、放置のデメリットは最初から無いも同然だ」

最原「……巌窟王さんの万年筆が落ちて壊れてインクがぶちまけられるなんて夢にも思ってないはずだし」

最原「……この中でヒールの高い靴を履いてたのは……誰?」

入間「……お?」

入間「お、お、おおおお!? 俺様ッ!」ガビーンッ

最原「あ、入間さんも履いてたね。そういえば」

入間「ひぎい!? 忘れられてた!?」

百田「ん? 入間じゃなかったのか? じゃあ他にヒールが尖った危険性の高い靴を履いてんのは……」

星「……」





星「おい東条。呼ばれているみたいだぜ?」

東条「……」

332: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 21:41:49.59 ID:p8j8ajbP0
東条「私が怪しいのかしら?」

東条「……そう。なら、私の靴を心行くまで調べてもいいわよ。何も出ないでしょうけど」

最原「うん。それじゃあちょっと脱いでもらっても構わないかな?」

ゴソゴソ

東条「はい。どうぞ」

最原(……体温が残ってて無駄にぬくいな……)

最原(でも確かにインクの痕は残ってない)

最原(ただ……やっぱりだな)

最原「綺麗な靴だね」

最原(不自然なくらいに)

最原「うん。じゃあ返すよ。ごめんね、こんなことして」

東条「いいのよ。みんなのためですもの」

最原「じゃあ改めて」

最原「東条さん。なんで巌窟王さんを殺したの?」

東条「……」ピクッ

333: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 21:50:33.23 ID:p8j8ajbP0
東条「……まだ疑っているのかしら? 私を?」

最原「いや、まあ……大きさと重さを軽減したって言っても、人体の総重量に対する血液の量なんてたかが知れてるからさ」

最原「さっき入間さんが言ったように不可能ではないにしろ、難しいんだよ。巌窟王さんを運ぶのって」

最原「東条さんも言ってたでしょ? 気休めにしかならないってさ」

最原「こんな難しい犯罪を成立させるには、東条さんみたいな完璧なメイドでもないと無理じゃないかなって」

東条「……それだけかしら?」

最原(まだある。まだあるけど、どの情報をどの程度出すかを考えてるところなんだ)

最原(……やっぱりアレだよな)

最原「東条さん。今日、マジカルショーに遅刻してきたけどさ。なんで?」

東条「……」

東条「目覚まし時計の電池がたまたま今日切れたのよ。それで起きれなかったの」

最原「百田くん。朝は東条さんと一緒だったよね? 何か気付かなかった?」

百田「あ? いや、別に、いつも通りだったぜ? 強いて言うなら……なんかいい匂いがしてたかもな?」

百田「風呂あがりみてーな?」

春川「なんかイヤだね。百田が女子の匂い云々言うのって」

茶柱「死んでください(絶望)」

百田「なんでだよっ!」ガビーンッ!

334: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 21:54:33.05 ID:p8j8ajbP0
最原「じゃあ次。アンジーさん。昨日のことを教えてほしいんだ」

アンジー「ほよ? 昨日? 昨日って言ったら……」

アンジー「あっ」

夢野「ん? なんじゃ今の『あっ』は。何かおかしなものでも見たのか?」

アンジー「……いや。見てないよー?」

夢野「なんじゃ。紛らわしいのう」

アンジー「……見てないのが問題なんだよ」

茶柱「は?」

アンジー「アンジー、昨日、斬美の姿を見てない」



裁判場全体「!」ドヨッ

335: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 22:01:11.42 ID:p8j8ajbP0
最原(最初から東条さんのことを疑っていたわけじゃない。むしろ、最初に僕が疑っていたのは春川さんだった)

最原(でも捜査を進めて行く内に『あれっ』て思ったんだ)

最原「アンジーさんが言ってる『昨日』ってさ。巌窟王さんを心配して、外に出てたあの夜のことだよね?」

アンジー「うん。色々あってゴン太の昆虫で和もう会が終わってねー、その後」

アンジー「すぐに思ったんだよ。『大変だー! 門限過ぎてるー! 神様に怒られるー!』って」

赤松「ああ。そんなこと言ってたね……青い顔で」

真宮寺「完璧に子供扱いだよネ」

アンジー「で。アンジーの部屋に帰ったんだけど神様がいなくってー!」

夢野「んあ? アンジーの部屋なんじゃから巌窟王がいなくて当たり前……」

夢野「……」

夢野「一緒に住んでおったのか?」




裁判場全体「!?」ザワザワッ

336: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 22:07:57.87 ID:p8j8ajbP0
巌窟王「……む? なんだ? 何故全員こちらを見る?」

茶柱「念のために訊いておきますが、手は出してませんよね?」

巌窟王「……は?」

白銀「あ、この反応は大丈夫だよ。何を訊かれたのかまるでわかってなさそうだし」

茶柱「どっちにしろ巌窟王さんは後で転子が処刑しますが、まあそれは置いといて……」

茶柱「そう、か。そうですね。アンジーさんは徹夜で寄宿舎の自分の部屋の前にいたんでした」

茶柱「八時より前に起きて、体育館もしくは食堂に向かった人たちは全員彼女の姿を見ていますよね?」

赤松「そ、そうか! じゃあアンジーさんって、もしかして!」

最原「証明困難な夜時間のアリバイを証明できる唯一の人間ってことになるんだ」

東条「それはどうかしら? 夜長さん自身が犯人である可能性だって……」

最原「ないよ」

東条「……!?」

最原「絶対にない」

337: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 22:13:10.12 ID:p8j8ajbP0
最原「確かに巌窟王さんが夜時間の内に死んだってことになって、それ以前のアリバイは重要ではなくなったけど」

最原「それにしたって限度はあるんだ。だって体育館に仕込みをする時間が犯人には必要だからね」

春川「ピラニアの水槽への細工。体育館の窓枠への仕込み……確かにこれは夜時間以前にやらないとダメだね」

最原「夢野さんとずっと一緒に行動してたアンジーさんには不可能だよ」

夢野「……そうじゃな。いくら何でもアンジーがウチの近くでそんなマネしたら気付くわい」

夢野「アンジーは犯人ではないとウチが証明してやろう」

最原「更に、アンジーさんはそのまま夢野さんと一緒に、夜時間になるまで昆虫で和もう会に監禁されてたんだ」

最原「……絶対にないんだよ。アンジーさんが犯人である可能性はさ!」

東条「……なるほどね」

338: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 22:19:50.57 ID:p8j8ajbP0
最原「その潔白のアンジーさんの証言なら、ほぼ完全に信用してもいいと思うよ」

東条「……」

アンジー「ちなみにー! アンジーが昆虫で和もう会から解放されたのが十時十分くらいでー」

アンジー「その後、全力疾走で寄宿舎に戻ったからー、帰還は十時十五分くらい!」

アンジー「確か斬美は夜時間になるまで小吉と追いかけっこしてたんだっけー?」

アンジー「……じゃあ、夜時間に入ってから、アンジーが帰ってくる十五分の間に斬美は自分の部屋に入って眠ったんだよね?」

アンジー「……そうじゃなかったらなんなの?」ギロリ

東条「それは……」

339: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 22:30:40.73 ID:p8j8ajbP0
東条「いえ。夜長さんが私の姿を見ていないことは問題ではないはずよ」

東条「私は間違いなく夜長さんの言う通り、その十五分の間に自分の部屋に帰って寝る支度を整えたのだから」

東条「本当に重要なのは……」

春川「……他に見ていない生徒がいないか、ってことでしょ。わかってたよ、こういう展開になることは」

アンジー「そだねー。大体みんな夜時間になってからはー、素直に寄宿舎に帰っておねんねしてたねー」

王馬「その理屈で言うと、夜時間以前のアリバイはほぼ東条ちゃん頼りだった俺は、夜時間以降のアリバイは完璧だよね!」

王馬「だって校舎ではゴン太とずっと一緒で、寄宿舎に帰るときもそうだったからさ……」

王馬「……虫嫌い」ボソッ

獄原「え。王馬くん、今なんて?」

王馬「虫大好きーーー!」

獄原「ゴン太も大好きだよ!」

アンジー「えっとねー。他に見てない生徒はー……」

アンジー「うん! 魔姫だね! それだけだよー!」

春川「……」

340: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 22:38:26.89 ID:p8j8ajbP0
王馬「つまり、犯人はこの二人に限定されたってことだね! いやー、お手柄だよ最原ちゃん!」

春川「……ッ!」

最原「いや。春川さんは犯人じゃないよ」

春川「え?」

百田「そうだ! ハルマキは犯人なんかじゃねー! コイツの目を見ろ! 綺麗じゃねーか!」

春川「バカでしょ」

最原「いや、そんな理由じゃなくってさ……」

最原「夢野さん」

夢野「んあ? ウチか?」

最原「春川さんに招待状を渡したとき、何か変なことはなかった?」

夢野「変なこと? いや、特に何もなかったが」

最原「本当に? 絶対に?」

夢野「……しつこいぞ。一体ウチに何を言わせたいんじゃ?」

最原「……」

夢野「……なかった。いつも通りの仏頂面で、招待状も迷惑そうに受け取っておったぞ」

夢野「来なかったがの」

春川「仕方ないじゃん……研究教室、離れたくなかったし……」

最原「じゃあやっぱり春川さんは犯人じゃないよ」

東条「何を言っているの? 一体、何の根拠があって……!」

最原「臭い」

東条「ぐぅ!」グサッ!

341: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 22:45:07.08 ID:p8j8ajbP0
最原「塩素系漂白剤の匂いって、一度付いたらしばらく取れないんだよ」

最原「特に、人体についた塩素系漂白剤の匂いは、短時間で落とすのならそれなりの準備が必要なんだ!」

最原「あんなに大がかりに漂白剤を使った掃除をしたら、使った本人もかなり臭ったはずだよ!」

最原「でも、春川さんに会った夢野さんは、そんな臭いを嗅いだの?」

夢野「いや? 別に、そんな臭いはしなかったぞ?」

最原「……そもそも夢野さんが春川さんに会えたこと自体がおかしいんだよ」

最原「だって、そんな臭いをさせているところを誰かに見られでもしたら一瞬でお終いだ!」

最原「それが取れるまでは絶対に、どこかに身を隠すはずだよ!」

東条「事件が起こったのはシャワールームだったのでしょう?」

東条「更に、寄宿舎でなくとも、私の研究教室には洗濯機があるわ。服の臭いもそちらで処理できる」

東条「わざわざ私室に戻らなくっても……!」

最原「そんなことをしている最中を見られたら、いよいよ終わりじゃないか!」

最原「間違いないよ! 犯人の私室には、体に付いた臭いを落とす準備が一式、全部用意されていたはずだ!」

342: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 22:58:18.21 ID:p8j8ajbP0
王馬「なるほどねー。俺も無駄な時間は使いたくなかったから東条ちゃんの私室までは入らなかったし」

王馬「全然気付かなかったや。そんな準備してたんだね、東条ちゃん」

赤松「あ、そっか。東条さんは自分の動機ビデオを持ってたからピッキングの必要がなかったんだね」

赤松「その理屈で言うと、私がなんで昆虫で和もう会に巻き込まれたのか疑問だけど……」

王馬「お題目上仕方なかったんだよ。みんなの虫さんを殺す気を無くそうって企画だったんだからさ」

最原「……」

最原「東条さん。巌窟王さんは『女性へのプレゼント』を倉庫で見繕ってたんだ」

最原「それって巌窟王さんが『女性と待ち合わせしていた』ってことだよね?」

最原「百田くん以外の全員の夜時間以前のアリバイが証明されたのは、キミにとって最大の不幸だったはずだ」

最原「だって百田くんは女性じゃないんだ! 巌窟王さんと待ち合わせしてないんだよ!」

真宮寺「逆に、その待ち合わせしていた女生徒が、事件と関係ない可能性は……」

真宮寺「ククク。あるわけないか。だって事件に関係なかったら、今ごろとっくに『待ち合わせしていたのに来なかったんだ』って証言してるからネ」

東条「……くぅっ!」

343: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 23:05:11.08 ID:p8j8ajbP0
最原「あるいは、平穏無事に自分の部屋に戻って、滞りなく臭いを除去することさえできたら、そう証言していたのかも」

最原「でもそれはできなかった。アンジーさんがずっと、翌朝の八時になるまで自室の前にいたから!」

最原「自分の身の潔白のためには『自室でずっと寝ていたんだ』って証言するしかない!」

最原「そうだよね! 東条さん!」

東条「私は……!」

東条「……」

東条「すべて……状況証拠だわ」

最原「決定的な証拠はない。そう言うつもり?」

最原「……」




最原(実はその通りなんだよなぁ。どうしよう)

344: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 23:21:54.46 ID:p8j8ajbP0
最原(僕が東条さんを疑うに至ったきっかけはたった一つ)

最原(東条さんが巌窟王さんと約束していた女生徒だったのはほとんど間違いないのに、その証言をしなかったから)

最原(昨日、巌窟王さんは何か紙のようなものを持ってたけど、多分あれが手紙だったんだろう)

最原(アレを誰にも気づかれずに渡せるのは、食事を配膳してた東条さんだけ。その他に巌窟王さんに何かを渡した素振りを見せた女生徒はいない)

最原(でもこれは僕の勝手な予測だし、手紙も当然処分されてるだろうしな……)

最原(あと一歩……足りない! なにか、決め手が……!)

星「なあ。東条。さっきの最原の言葉、覚えてるか?」

星「犯人はロープウェイを使ったとき、靴を脱いでたんだぜ?」

星「万が一、靴をプールに落としたら終わりだから持ち歩きもしてなかったはずだ」

星「犯人はわずかな重量すらも潔癖に削減しかかってたことは犯行手順を振り返れば明らかだしな」

東条「……!」

星「だとしたらその道中、足は無事だったんだろうな?」

星「いや……急いでいたからおそらく無事では済まなかったはずだ」

最原「えっ」

星「……裸足になってみろ。ちょっとでも荒れていたら終わりだ」

東条「……ううっ!」

最原「え? 嘘……あるの!? 傷が!」ガビーンッ!

345: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/13(金) 23:32:08.55 ID:p8j8ajbP0
東条「うう……うううううう……!」ダラダラ

星「……ふっ。美味しいところをうっかり持っていっちまった。悪いな、最原」

最原「い、いいんだよ。まごついてた僕が悪いし……」

最原「……」

最原「ありがとう、星くん」

星「いいさ。それに……ヤツを孤独にはさせないんだろ?」

星「その覚悟があるのなら……充分だ」

最原「……」

最原「東条さん。終わりにしよう」

最原「最後に僕が事件を振り返って……全貌を明らかにして……!」

最原「それでハッキリさせるんだ」

最原「『悪意の在処』……その正体を!」

349: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/14(土) 12:30:09.86 ID:E8+Aa0f80
CM

クレオパトラ「くっ……うおおおおおおおお!(HFのチケットを買いながら)」

映画館職員「はい。今日の午後十一時から上映となります。チケットのキャンセルはできないのでご注意ください」

白銀「なっ……何やってるんですか……クレオパトラさぁん!」

クレオパトラ「なんて声ェ……出してるんですの。白銀ェ……!」

白銀「だって……だってぇ……!」

クレオパトラ「私は……最後のファラオ……クレオパトラなのですよ……この程度の夜更かし……(美容には)なんてことない!」

クレオパトラ「行きますわよ……映画が……待ってるんです……!」

クレオパトラ「それに……!」

クレオパトラ(わかったのです。英霊には睡眠時間など不要。終電を逃すのも……まあ漫画喫茶とかに泊まればなんとか……)

クレオパトラ(え? 漫画喫茶にスパの類はない? 枕も布団も申し訳程度の薄さ? そんな!)

クレオパトラ(……まあ! なんとかなります!)

クレオパトラ(止まらない限り……映画は見れます!)

クレオパトラ(だから……!)


上映中


クレオパトラ「止まるんじゃあ……ないですわよ……」スヤァ

白銀「だから言ったのにーーー!」ガビーンッ


上映中の寝落ちは多大な損失を産みます。


劇場版Fate/staynight Heaven's feel
大好評上映中

クレオパトラ「劇場限定礼装も……忘れちゃあ……ダメですよ……」スヤァ

クレオパトラ「あと青少年は東京都青少年の健全な育成に関する条例によって深夜の映画館立ちよりは禁止されてます……」

白銀(地味に寝言が酷いな……)←本当は入っちゃダメ

353: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 09:59:51.89 ID:GpwPH0rj0
クライマックス推理

最原「それじゃあ、昨日の朝から事件を振り返ってみよう」

最原「動機ビデオや夢野さんのマジカルショーのゴタゴタで目が眩んでいる中、巌窟王さんを呼び出した女生徒がいた」

最原「多分、秘密裏に二人きりで会いたいとでも言ったんだろうね。そうしておけば巌窟王さんは秘密を洩らさないから」

最原「ただ、ここで犯人に一つ目の不運があった」

最原「巌窟王さんは確かに生徒に対して無防備に相談したりはしなかったけど、電話で『女性へのプレゼントの相談』をしてしまったんだ」

最原「巌窟王さん自身もそこから秘密はバレることはないとタカをくくってたんだろうけど、これが犯人に訪れた一つ目の不幸だよ」

最原「巌窟王さんが倉庫で何かを探しているのを白銀さんが目撃し」

最原「百田くんが『倉庫にいた』と巌窟王さんから聞いただけなら、この真相に辿り着けなかったかもしれない」

最原「犯人が女性だって真相にね」

最原「そして巌窟王さんが殺害現場に持ち込んだ万年筆が、後々犯人に最大の不幸を呼び込むことになるんだ」

354: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 10:08:29.40 ID:GpwPH0rj0
最原「犯人は約束通り呼び出し場所に現れた巌窟王さんに奇襲をかけ、気絶させたはずだ」

最原「その後、犯人は巌窟王さんの手首を切り裂き、シンクに水を溜め、ダンベルで手首をシンクの底に固定したんだ」

最原「そして巌窟王さんの体の中から血液を抜き出し、彼が死にそうになったところで蘇生させるということを繰り返す拷問じみた殺害を決行した」

最原「これは、後々行うトリックのために、犯人が少しでも巌窟王さんの体重を減らそうと考えた結果行われたものだよ」

最原「そのときの証拠は、血の溜められたシンクに沈んでいたダンベルのジョイント部分に血痕として残っている」

最原「こうして巌窟王さんの体重の削減を終えた犯人は、更なる削減を始めた」

最原「……巌窟王さんの『大きさ』の削減だ。死後硬直が始まる前に四肢を折りたたみ、手錠で固定して小さく纏めたんだよ」

最原「こうして二重に巌窟王さんの体へ工作を終えた犯人は、その死体を担いで星くんの研究教室の窓へと向かった」

最原「そこには犯人が事前に作ったロープウェイがあったはずだ。体育館、研究教室の窓枠と、浮き輪の取っ手に凄まじい負荷がかかった痕があったけど」

最原「あれはそのトリックを使った際にできたものなんだよ」

最原「犯人はヒールの高い尖った靴を履いていたから、星くんの研究教室でそれを脱いでから浮き輪に乗ったはずだよ」

最原「そしてそのとき、巌窟王さんのポケットから思いもよらないものが落ちた」

最原「それとは知らずに持ってきた王馬くんの秘密道具」

最原「三日間は絶対にインクの落ちない万年筆だよ」

355: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 10:18:21.53 ID:GpwPH0rj0
最原「ともあれ、犯人はロープウェイを使うことによって体育館に移動した」

最原「夜時間に生徒が立ち入るのはアウトの校則はおそらく死体には適応されないんだろうね」

最原「そうでなければ口を滑らせた巌窟王さんの証言と話が絶対に食い違うから」

最原「犯人は窓枠からできる限り体育館に入らないよう注意しながら、マジカルショーの要であるピラニアの水槽の中に巌窟王さんの死体を入れた」

最原「事前に仕切りを作って、ピラニアに死体が食べられないようにしてからね」

最原「そしてここから犯人の隠蔽工作が始まった」

最原「まずダンベル、シンクなどの『夥しい血のついたもの』を徹底的に塩素系漂白剤で洗浄」

最原「もしかしたらインクの方も洗おうとしたかもしれないけど……絶対に落ちないからね。諦めたんだ」

最原「隠蔽工作が終わったころには、犯人自身も相当漂白剤の臭いがついてただろうけど……」

最原「自分の部屋にはそれを落とす準備が一通りされていたから、自室にさえ帰ることができればまるで問題はない」

最原「……そう。問題はないはずだったんだ。最後の不幸がそこに待ち構えてさえなければ」

最原「帰ってこない巌窟王さんを心配したアンジーさんが、ずっと自室の扉の前で待ってたんだよ」

最原「もしも漂白剤の臭いを漂わせているところをアンジーさんに見られたら、計画はすべて台無しだ」

最原「……かと言って、シャワールームに戻るのも、超高校級のメイドの研究教室の洗濯機を使うのも論外」

最原「星くんの研究教室のシャワールームは事件現場だし、洗濯機で服を洗うとしても乾かす手間がある」

最原「仕方がないから犯人はアンジーさんが寄宿舎から立ち去るときを、身を潜ませてじっと待つことにしたんだ」

最原「それは夢野さんのマジカルショーが始まる八時のことだった」

356: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 10:30:14.13 ID:GpwPH0rj0
最原「やっとアンジーさんが立ち去った後、すぐに犯人は自室へと戻り」

最原「用意しておいたものを使って漂白剤の臭いを短時間で片付け」

最原「服は丸ごと着替えて急いで外に出て、途中で出会った百田くんとも合流し、マジカルショーに何食わぬ顔で現れた」

最原「……あとは夢野さんのマジカルショーのクライマックス、ピラニアが仕切りと死体ごと水槽に落ちればすべてカタが付く」

最原「時間制限の設けられた体育館での死体発見は、普通に上手く行けば『夜時間以前にアリバイのない人間』を狙い撃ちにできる最高のトリックだ」

最原「でもこれも不運に見舞われた。百田くん以外全員に、偶然にもアリバイができてしまったんだよ」

最原「巌窟王さんと約束していたはずのない、男子生徒の百田くんのみアリバイがない……」

最原「白銀さんが目撃した巌窟王さんはプレゼントを物色中で」

最原「百田くんが巌窟王さんを目撃したとき、つまり午後九時の女生徒は誰一人として約束に動いていない」

最原「なら消去法的に巌窟王さんが約束をしていた時間というのは夜時間ということになり、死亡推定時刻も完全に一致する」

最原「巌窟王さんが約束していた女生徒が事件に関係のない可能性は『その女生徒が名乗り出していない』という事実が裏付けてしまっている」

最原「……犯人は女生徒。そして漂白剤の臭いを身に纏っている。更に朝の八時まで自室に戻れていないから、それまで臭いは取れていない」

最原「アンジーさんが証明した夜時間以降のアリバイのない人間で、この条件に一致する人はたった一人しか存在しない」

357: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 10:33:25.98 ID:GpwPH0rj0
最原「……"超高校級のメイド"、東条斬美さん!」

最原「今回の犯人は、キミしかいないんだよ!」


ガシャガシャガシャッ

バキィィィンッ!



COMPLETE!

359: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 17:13:19.89 ID:GpwPH0rj0
東条「……」

東条「そう。それがあなたの出した答えなのね」

最原「うん。ここまで来ると、被害者に巌窟王さんを選んだ理由もなんとなくわかるよ」

アンジー「……取り返しが付くからじゃなかったのー?」

アンジー「ああ、いや。ちょっと真面目になるね」

アンジー「取り返しが付くからじゃなかったの?」

アンジー「……ねえ?」

東条「……」

最原「復讐されたくなかったから。でしょ?」

最原「東条さんは巌窟王さんが死なない可能性にかけてたんだ」

最原「アンジーさんを急かした理由も、死体の情報を隠滅するためじゃなくって」

巌窟王「……自分のやったことの成否の確認、か」

星「裸足になってくれるな?」

東条「もういいわ。ここまでにしましょう」

東条「……プールサイドって、滑らないように摩擦を付けて、ちょっとザラついていたでしょう?」

東条「体育館の窓枠から飛び降りて、着地したときに右足をちょっと擦過してしまったの」

東条「そこまで酷い傷にはなっていないけど……確かに傷にはなっているわ」

茶柱「……今のって」

獄原「認めた……ってことだよね?」

360: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 17:20:55.84 ID:GpwPH0rj0
東条「それに、この服は脱げないわ。メイドとしての誇りだし、それに」

東条「……恥ずかしいし」

最原「あ、う、うん。確かにそのタイツを脱ぐとなると、かなりスカートが……」

夢野「言わんでいい言わんでいい。転子にぶん投げられるぞ」

茶柱「がるるるるるるるる!」

最原「……」

最原「ご、ごめん」

巌窟王「クハハハハハハ! 良い趣味をしているな、最原!」

巌窟王「だがいいぞ! 男なら仕方のないことだ! 他者の肌を見たい、触れたいと思うのは当然の――」

茶柱「巌窟王さぁーん?」スタスタ

巌窟王「クハ?」

茶柱「キエエエエエエエエエエエ!」ブンッ

巌窟王「ぐあああああああああああ!?」


ドガシャアアアアンッ!


真宮寺「……終わったネ」

天海「事件? 巌窟王さん? どっちが?」

キーボ「いや、まあ……どっちもでしょうね……」

361: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 17:25:00.91 ID:GpwPH0rj0
モノクマ「ぐー……ハッ! 寝てた!」

モノクマ「あ、いい感じにもう議論の結果が出たみたいですね?」

モノクマ「それでは、お手元のスイッチで投票してください!」

モノクマ「必ず誰かに投票してくださいね。さもないと、死が与えられちゃうからね?」

モノクマ「……投票の結果、クロとなるのは誰か!」

モノクマ「その結果は、正解なのか不正解なのかーッ!」

モノクマ「さあ! どうなんだー!?」

巌窟王「……」←茶柱という血文字のメッセージを床に書いて事切れている

362: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 17:32:32.08 ID:GpwPH0rj0
東条:十六票
巌窟王:一票

結果は……大正解!

モノクマ「なんとっ! 今回もだいせいかーい!」

モノクマ「今回の事件の犯人は……超高校級のメイドである、東条斬美さんなのでしたーッ!」

東条「……」

茶柱「……改めて現実を突きつけられるとショックですね」

茶柱「東条さん。教えてくれませんか? 何故こんな凶行を……!」

茶柱「みんな、転子たちに世話を焼いてくれる東条さんのことが大好きだったんですよ?」

茶柱「きっと巌窟王さんだって……!」

入間「その巌窟王、そっちで死んでるぞ……?」

王馬「正確に言うと茶柱ちゃんに殺されたんだけどね」

赤松「生きてる! 生きてるよ! 痛みに耐えて大人しくなってるだけで!」

巌窟王「床が……硬い……」

アンジー「膝枕貸してあげようかー?」

巌窟王「厚意に甘えよう」

最原「ごめん! せめてこっちの話には最低限参加してくれないかな!?」ガビーンッ!

364: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 17:37:29.38 ID:GpwPH0rj0
東条「一刻も早く外に出なければならなかったのよ」

東条「……どうしても……何を犠牲にしたって……!」

白銀「それって、もしかして」

星「そうか。例の動機ビデオだな? そこには一体何が映ってたっていうんだ?」

星「……俺たちの最大の味方だったアンタが、一気に敵に変わっちまうような内容」

星「……聞かせてくれねーか?」

東条「言っても信じてくれないでしょうね。だから、動機ビデオを直接見た方が速いと思うの」

モノクマ「あ、映像データならこっちにあるから、それを裁判場上部のモニターに大写しにするね!」

モノクマ「これが! 東条さんの動機ビデオでーっす!」

365: 逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/15(日) 17:49:54.96 ID:GpwPH0rj0
五分後

最原「……」

最原「はあ?」

最原(思わず素っ頓狂な声を出してしまうような内容だった)

最原(とても現実味がなくて、ともすればバカバカしいとも言える内容)

最原(でもこれが現実だったとしたら、これ以上にない動機になってしまう)

赤松「東条さんが総理大臣……?」

赤松「え、つまり……えっ?」

王馬「そっか。なるほど。東条ちゃんはここにいる十六人の命と、外にいる国民の命を秤にかけたわけだ」

王馬「……ま。国民の方に秤が傾くのは当然かな。最大多数の最大幸福ってヤツだね」

巌窟王「なるほど。そして、国民の方に万全の状態で戻るのであれば俺の存在は邪魔だな」

巌窟王「どれだけ立派なお題目があろうと、我がマスターの命を危険に晒したのであれば復讐しないわけにもいくまい」

巌窟王「禍根を完全に断つためであれば理論上の最善手ではあったわけだ」

アンジー「痛いの痛いの飛んでけー」ナデナデ

キーボ「凄い頭撫でられてますが、患部ってあそこなんですかね?」

茶柱「いや。体全体がビターンッてなったので体全体です」

最原「ああもう! ちょいちょいアンジーさんに膝枕されてる巌窟王さんに意識が行って集中できない!」


次回 巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」 後編