2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 01:10:53.57 ID:DSP5RP9I0
陸奥「いつまでそうしてるつもりなの?」

長門「踏ん切りがつくまで、いつまでもだ」

陸奥「薬に片手に恐れおののく、日本の誇りなんて見たくなかったわ....。本当に情けないわよ」

長門「無論、承知している。だがな陸奥。一つだけはっきり申しておこう。断じて薬が飲めない訳ではない、ということを」

陸奥「じゃあ、薬一つも飲めない、情けないビッグ7の最弱さん。一体何が違うのかしら。教えてもらいたいわ」

長門「教える前に私の持論を聞いてほしい」

陸奥「言い訳は、端的に、ね」

長門「幼子に処方する飲み薬は、大抵シロップか粉薬だ。なぜだかわかるか?」

陸奥「それは飲みやすい、からかしら?」

長門「いや違う。粉の方が量が正確だからだ」

陸奥「へー、で?それが何に直結するのかしら」

長門「大人に処方される薬は、なんだと思う陸奥よ」

陸奥「錠剤ね」

長門「そうだ錠剤だ。つまりこう言える。錠剤は大人専用。粉薬は子供専用と。故に」

引用元: 【艦これ】薬が飲めない長門さん 


艦隊これくしょん -艦これ- 電撃コミックアンソロジー 佐世保鎮守府編15 (電撃コミックスNEXT)
着信なし殿 ゆーき ひかわ79 ほか
KADOKAWA (2017-11-25)
売り上げランキング: 935
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 01:11:21.21 ID:DSP5RP9I0
陸奥「故に胃腸薬の粉薬は子供専用で、大人の私には飲むことができない。そう言いたいのかしら」

長門「うむ」

陸奥「故に胃腸薬の粉薬を片手に恐れおののくのは、自然だと、自信を持って言えるのかしら?」

長門「....うむ」

陸奥「子供専用の薬に恐れおののく、それは大人のあるべき姿なの?」

長門「.....」

陸奥「飲みなさい」

長門「....うむ。時に陸奥よ。粉薬は先に口に含むべきなのか、水が先なのか、どちらだった?」

陸奥「好みよ」

長門「先き粉薬を含もうものなら、唾液と混ざり合い、半端に混ざり合う。あと苦い。しかし、水を先に入れようものなら、粉薬は水面に広がり、飲み込んだとしても薬は口に残ってしまう」

陸奥「そうね」

長門「卵が先か鶏か、まるで哲学的な問答だな」

陸奥「決めてほしいの?」

長門「いいや答えがほしい」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 01:12:02.73 ID:DSP5RP9I0
陸奥「ないわよ。まるで哲学ね」

長門「なら飲めんな」

陸奥「じゃあずっと腹痛で苦しむだけよ」

長門「不条理を飲み込むなんて、なんて屈辱的なんだ。いいだろう、この長門、まずは粉薬を口に含むのを選ぼう」

陸奥「そ、なるべく早く済ませてほしいわ。だいたい行く末を見守るこっちの身にもなってほしいわ」

長門「フゴォ!」

陸奥「うわ....。口に入れた瞬間粉塵撒き散らすのやめて....。粉塵....?粉塵爆発...?あぁ....」

長門「あぁ!!すまない陸奥!私が軽率だった!!粉塵爆発を連想させるように、口から粉塵を吹き上げてしまって!!」

陸奥「じゃあ、もう早く飲みなさいよ」

長門「粉も湿らせれば、だまとなる。粉塵を撒き散らすことはないだろう。故に粉塵爆発を連想はせんだろう」

陸奥「わざとね長門」

長門「では注水する」

陸奥「えぇ」

長門「.....」

陸奥「....長門、まさか水を飲み干したの?」

長門「不本意ながら」

陸奥「リトライよ」

長門「うむ」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 01:12:38.71 ID:DSP5RP9I0
陸奥「そもそも粉薬を飲むためなのに、なんで飲み干すのかしら」

長門「水を口に含めば飲む。何も間違えではないだろう」

陸奥「....また飲み干したの?」

長門「うむ」

陸奥「ねぇほんとに飲む気あるのかしら」

長門「あぁもちろんだ。しかし無意識に行ってしまえば、どうしようもないだろう」

陸奥「意志が弱いからよ」

長門「なに?意志が弱いだと?この長門、日々鍛錬を欠かさず精進を忘れたことはない」

陸奥「なら水を飲み干さない精進が必要よ」

長門「造作もない。やってのけよう」

陸奥「ええ今すぐに」

長門「......」

陸奥「......」

長門「......」

陸奥「その調子よ長門。あとは粉薬を入れるだけ」

長門「......」

陸奥「入れたわね。後は飲み込むだけ」

長門「.....」

陸奥「.....」

長門「......」

陸奥「.....ねぇいつまでそうしてるつもりなのかしら?」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 01:13:08.01 ID:DSP5RP9I0
長門「.....」

陸奥「手を振って無理と表しても、そこまで進んでしまったら、後戻りはできないわよ。飲み干しなさい」

長門「....」

陸奥「なに?リバースしたいの?コップに?品が疑われるわよ。そうだいいこと思いついたわ。口の中で混ぜればいいのよ」

長門「.....」グチュグチュ

陸奥「そうよ」

長門「オェ」

陸奥「ねぇ長門さん吐き出しそうだったわよね今?顎、抑えてあげるから、さっさと飲んで。ついでに上も向かせてあげるわ。頭も支えて」

長門「.....」ゴクリ

陸奥「飲んだのね。やっと」

長門「.....」

陸奥「長門。いつまでこうしてるつもりなのかって、思ってるわよね?ずっとよ」

長門「....」

陸奥「嘘よ。はい」

長門「....陸奥、水を....」

陸奥「あら、さっき自分で飲み干したわよ」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 01:13:37.90 ID:DSP5RP9I0

長門「耐え難きを耐え 忍び難きを忍び。なるほどこういう心情なのか」

陸奥「それで飲み終えた感想わ?」

長門「陸奥よ。困難を乗り越え、また一歩私は前進したようだ」

陸奥「どちらかと言うと後退ね。子供専用の薬に困難を感じたのだから」

長門「終わりよければ全て良しだ。勝者が語るのは、勝者の特権だ」

陸奥「まぁそれもそうね。腹痛の対策を講じるなら、まずは冬なのにその服装はやめることね」

長門「なら陸奥。お前もだな。今度腹痛になった時、粉薬を飲むだろう。その時この辛さがよくわかるはずだ」

陸奥「そう楽しみにしてるわ」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 01:15:36.34 ID:DSP5RP9I0
おしまい。初めての地の分なしでした。