1: ◆Xz5sQ/W/66 2017/12/31(日) 07:35:50.61 ID:KdYkCwkoo
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「クリームは~、口溶け滑らかクリーミ~♪」

そう口ずさんで、大きなシュークリームに口をつける。

「カスタード~、プリンと合わせるクリーム~♪」

さらに、右手に持ったスプーンですくったプリンもパクリと口の中。

「スイーツが~、合わさり奏でるハーモニーっ♪」

心底幸せそうな顔をして、歌う彼女には悪いけど。

「……ねぇ可奈、それは少し食べ過ぎじゃない?」

忠告。私は読み込んでいた台本から顔を上げると、
テーブルの上でお一人様スイーツパーティを開いていた可奈をできるだけ優しく睨みつけた。

……するとキョトンなんて音がしそうな顔をして、彼女が私の方を見る。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514673350

引用元: 【ミリマス】可奈、生クリームかな 


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2: ◆Xz5sQ/W/66 2017/12/31(日) 07:38:13.78 ID:KdYkCwkoo

「食べ過ぎ……てる? 志保ちゃん」

「訊き返して来るってことは、自覚が無いっていう証拠ね」

そうしてまた、そう言う私の目の前で可奈はシュークリームに齧りつくと。

「ひひゃふふぁふぁいっへひふぁれふぇほ――」

「お行儀。飲み込んでから喋りなさい」

「んぐんぐ、んっく! ……でも志保ちゃん。
自覚が無いって言われても、私シュークリームもプリンもこれが一つ目だし」

「そこ、"一つ目"じゃないでしょ。普通は一つで十分なの」

「……だからこうして、シュークリームとプリンを一つずつ」

「食べない。どちらか一つを一つで十分よ」

まるで子供みたいな屁理屈。

私は「呆れたわね」と言わんばかりに大げさなため息を一つつくと
丸めた台本で可奈を指した――正確には、彼女の前に広げられた沢山のお菓子たちを。

そう、彼女の前にはコンビニで売ってるシュークリームとクリームを乗せたカスタードプリン。

ホイップクリームを挟んだエクレアに、既に平らげられてしまったクリーム大福とクリームタルトの空き袋。

飲み物はストローが刺さった紙パック入りの生クリームシェイクという
実にクリームだらけのクリーム三昧クリームクリームクリームクリーム……!

3: ◆Xz5sQ/W/66 2017/12/31(日) 07:40:35.26 ID:KdYkCwkoo

「ああ、もう、見てるだけで胸やけしそう」

「はれっ!? 志保ちゃん胃が弱いの?」

そして、そうだ。思わず頭を抱えちゃう。

「確か、琴葉さんが胃薬を持ってたと思うけど……貰ってこようか?」
なんて心配してくれる可奈の優しさは嬉しい。

けどね? 違うじゃない?

私の言いたいことはそういうことじゃあ微塵も無くて。

私は肩にドッとした疲れを感じながら、
「別に胃薬は必要じゃない」とゆっくり首を横に振ると。

「あのね可奈。クリームの食べ過ぎは人間の体にも悪いって知ってるの?」

「知ってるよ」

「なら、アナタの前に並んだお菓子の量を見てみなさい」


私は返事を待つため両腕を組む。
なぜだか難しそうな顔で、可奈がクリーム軍団を睨みつける。

そうして彼女はしばらく考え込んだ後。


「うーん……ちょっとだけ量が少なかった?」

「逆よ! 多い、多すぎるっ!!」

「えぇっ!? な、なんで怒るの志保ちゃん~?」


この愛すべきお馬鹿さんは思わず大声で怒鳴った私に「まさか」って表情を返したのだ。


「このぐらい貴音さんならペロリだし、奈緒さんだってすぐ食べるし、
プロデューサーさんはお代わり持ってこいって言うだろうし」

「明らかに基準がおかしいでしょう!?」

「そうかな? 私も無理なく食べれるけど……」

「だからってアナタね、私の為にそれだけの量のクリームを一度に摂取する必要は――」

けれど、言葉はそこで遮られた。

楽屋の扉が音を立てて開き、最も恐れていた人物がこの場に顔を出したからだ。

4: ◆Xz5sQ/W/66 2017/12/31(日) 07:42:54.74 ID:KdYkCwkoo

「あー! やっぱりココでクリーム食べてる!」

それは765プロ劇場一……いいえ、全宇宙で最もクリームの味に敏感な。

生クリームと見れば思わず味見をしなくては気が収まらない困ったヤツ。

そんなヤツが、ああ、ほら!
言ってる傍から"私の"可奈の匂いを嗅ぎつけて!!

「未来ちゃん!」

「シュークリームに、プリンに、エクレア大福タルトにシェイク!」

春日未来。

純生クリーム星人である彼女は私の悲鳴を無視すると、
淀みない動きで可奈の隣までやって来て机の上のクリーム軍団に目を輝かせる。

そうして自身の人差し指を唇に当て、
「早速だけど……いいかな?」なんて上目遣いですぐおねだり。

すると可奈もしょうがないなといった風に肩をすくめ。

「いいけど、噛んじゃダメだよ?」

「それは大丈夫、最近はちゃんと我慢できてるから!」

自信満々に答えた彼女の口元に、可奈は自分の指を差し出した。
私が見ている目の前で、未来の唇に包まれていく指先と、ぴちゃ、ぺちゃ、と響く実に卑しい水音が。

「ん、……可奈の指、美味しい♪ 静香ちゃんも翼も、今日は劇場にいないでしょ?」

「えへへ、二人の代わりぐらいいつでもお安いご用だよ」

照れ臭そうに微笑む可奈。その指を、べたべたと涎まみれにしていく未来。

つぅっと手の甲に舌先を這わせながら、彼女は可奈に申し訳なさそうな視線を送る。

5: ◆Xz5sQ/W/66 2017/12/31(日) 07:44:30.03 ID:KdYkCwkoo

「でも、本当にごめんね可奈……他の人って言ったって、
貴音さんはラーメンの味が混ざるし、奈緒さんは青のりとソースの匂いがするし」

「そうなの?」

「うん。それにプロデューサーさんは法律違反だとかなんとか言って、絶対舐めさせてくれないもん。
だから、純粋に生クリームだひぇの味だっひゃら……ちゅっ♪ やっぱり可奈が一番だね」

言って、未来が「でへへ」とはにかんだ。

可奈はそんな彼女のために開封したばかりのエクレアのクリームに吸い付くと。

「れも、みらいひゃんたひもたいひゃんらね」

「ん~?」

「なみゃくりーふ、ほのままたへるほどふなんへひょ?」

可奈、お行儀! ……なんて注意する余裕は既にない。

それでも一応翻訳しておくと、最初のが「でも、未来ちゃんたちも大変だね」で、
次が「生クリーム、そのまま食べると毒なんでしょ?」だ。

そうしてまた、可奈がクリームを食べれば食べる程、
彼女の放つ生クリームフェロモンはどんどんその強さを増して行き……

生クリームを摂取した人間の汗が放つ、この鼻を刺激する甘い匂い!

濃縮されたクリームエキスを貪って、目の前で欲望を満たす未来の姿!

そんな彼女に触発され、この身を奥から疼かせる生き物としての食の衝動!

はぁ、もう、最低! 最悪っ!
我慢の効かない自分に猛烈な勢いで腹が立つ!!

6: ◆Xz5sQ/W/66 2017/12/31(日) 07:46:08.19 ID:KdYkCwkoo

「……あっ、志保ちゃん」

既に未来の"食事"は手首より上へ。

エクレアを食べ終わった可奈が私の方へ顔を向けた。

彼女は左手の親指についていたクリームを残さないよう「ちゅっ」と丁寧に舐めとると。

「苦しそうな顔してる。……志保ちゃんも、我慢、しなくていいからね」

差し出された彼女の左手の、鼻先に近づけられた親指の、
匂いをついつい嗅いじゃうのは私に流れる猫人(にゃじん)の本能。

それから抑えきれなくなった涎で一杯の口を開けて、彼女の左手に口付ける。

「かっ……にゃぁ……♪」

「あつっ! ……もう志保ちゃんってば、未来ちゃんは我慢できてるのにぃ」

さらにさらに、困りながら笑う彼女の指をだらしなく甘噛みしちゃうのは、
思わず噛み噛みしちゃうのは、私が猫人と生クリーム星人のハーフだから。


結局私は未来と二人で可奈を挟み、
楽屋でぺちゃくちゃと騒がしいお喋り行為にその身を溺れさすにょだった――。

7: ◆Xz5sQ/W/66 2017/12/31(日) 07:46:34.72 ID:KdYkCwkoo
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以上おしまい。正体がパンダやタヌキのアイドルもいるし、
思いついちゃったからこういうのもありかなって。……無しか。

では、お読みいただきありがとうございました。